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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20240610BHJP
   B66B 23/24 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
B66B31/02 A
B66B23/24 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021125850
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020465
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2021-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 イクハク
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124660(JP,A)
【文献】特開2006-193319(JP,A)
【文献】特表2005-523860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0217971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巡回移動する踏段と、前記踏段と連動して巡回移動する、断面が略C字形状の手摺ベルトと、を備える乗客コンベアに設けられる除菌装置であって、
前記乗客コンベアの内部経路を移動する前記手摺ベルトに対して紫外線を照射する照射装置と、
前記手摺ベルトの幅方向の周囲を包囲する反射部材と、を備え、
前記略C字形状の凹部に嵌まって、前記手摺ベルトを案内する案内部材と、
前記案内部材を支持する支持部材、を備え、
前記手摺ベルトの外周面は、外底面と、2つの外側面と、前記外底面から前記2つの外側面にそれぞれ向かう2つの第1外面と、前記支持部材を挟んで形成される2つ外上面と、前記2つの外側面のそれぞれから前記2つの外上面のそれぞれに向かう2つの第2外面と、で形成されており、
前記反射部材の内壁面は、前記外底面に対向する底面と、前記底面の両端のそれぞれに連続し、かつ前記2つの第1外面のそれぞれに対向する2つの下部傾斜面と、前記2つの下部傾斜面のそれぞれに連続し、かつ前記2つの外側面のそれぞれに対向する2つの側面と、前記2つの側面のそれぞれに連続し、かつ前記第2外面のそれぞれに対向する2つの上部傾斜面と、前記2つの上部傾斜面のそれぞれに連続し、かつ前記2つの外上面のそれぞれの一部と対応する2つの上面と、で形成され、
前記照射装置は、前記反射部材の底面に複数設けられ、複数の前記照射装置のうち前記底面と前記2つの下部傾斜面のそれぞれの境界側に配置された二つの前記照射装置の照射方向が、前記支持部材の軸方向に対して外方に傾斜し、かつ前記手摺ベルトの前記第1外面に向かう角度で傾斜するように、設けられている
除菌装置。
【請求項2】
前記反射部材は、アルミニウムで形成されている、
請求項1に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアにおいて、手摺ベルトの表面に細菌、ウィルスや手垢などが残留する場合がある。特に最近のコロナ禍のため、利用者が乗客コンベアを乗る際に手摺ベルトを掴まない傾向がある。このように手摺ベルトを掴まない行為は、バランスが崩れ、転倒の恐れがある。このため、利用者の手摺ベルトへの抵抗を軽減させ、手摺ベルトを掴みやすくするため、手摺ベルトを除菌する除菌装置を乗客コンベアに設置する技術がある。
【0003】
このような除菌装置としては、手摺ベルトの表面をアルコール消毒で除菌を行うものがある。例えば、手摺ベルトの近傍に吹出口を設け、吹出口から乗客の手に向けてアルコール消毒剤を噴出する除菌装置が知られている。このような従来技術では、消毒剤を噴出した後、吹出口からアルコール消毒液の漏れが生じたり、除菌装置内のアルコール消毒液の交換が必要となる。このため、手摺ベルトの表面に紫外線を照射して除菌する技術がある。例えば、手摺ベルトの出入口に、紫外線等を発生させるプラズマ源を収納する筐体を設け、手摺ベルト表面の近傍でプラズマを生成して手摺ベルトに対して紫外線を照射し、フィルタープレートでウィルスや手垢などを除去する除菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-82054号公報
【文献】特開2012-197154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手摺ベルトに紫外線を照射する技術では、紫外線の除菌率がそれほど高くないことから、除菌効率を高めるためには、照射装置を手摺ベルトの幅方向の周囲全域に亘って多数設置する必要があり、コストが高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる除菌装置は、巡回移動する踏段と、前記踏段と連動して巡回移動する、断面が略C字形状の手摺ベルトと、を備える乗客コンベアに設けられる除菌装置であって、前記乗客コンベアの内部経路を移動する前記手摺ベルトに対して紫外線を照射する照射装置と、前記手摺ベルトの幅方向の周囲を包囲する反射部材と、を備え、前記略C字形状の凹部に嵌まって、前記手摺ベルトを案内する案内部材と、前記案内部材を支持する支持部材、を備え、 前記手摺ベルトの外周面は、外底面と、2つの外側面と、前記外底面から前記2つの外側面にそれぞれ向かう2つの第1外面と、前記支持部材を挟んで形成される2つ外上面と、前記2つの外側面のそれぞれから前記2つの外上面のそれぞれに向かう2つの第2外面と、で形成されており、前記反射部材の内壁面は、前記外底面に対向する底面と、前記底面の両端のそれぞれに連続し、かつ前記2つの第1外面のそれぞれに対向する2つの下部傾斜面と、前記2つの下部傾斜面のそれぞれに連続し、かつ前記2つの外側面のそれぞれに対向する2つの側面と、前記2つの側面のそれぞれに連続し、かつ前記第2外面のそれぞれに対向する2つの上部傾斜面と、前記2つの上部傾斜面のそれぞれに連続し、かつ前記2つの外上面のそれぞれの一部と対応する2つの上面と、で形成され、前記照射装置は、前記反射部材の底面に複数設けられ、複数の前記照射装置のうち前記底面と前記2つの下部傾斜面のそれぞれの境界側に配置された二つの前記照射装置の照射方向が、前記支持部材の軸方向に対して外方に傾斜し、かつ前記手摺ベルトの前記第1外面に向かう角度で傾斜するように、設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係る乗客コンベアの一例を示す側面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、実施形態1の除菌装置の外観を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態1の除菌装置およびその周辺の構造を示す拡大断面図である。
図5図5は、実施形態1の制御装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態1の制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態1の乗客コンベアによる制御処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態1の変形例にかかる除菌装置の一例の断面図である。
図9図9は、変形例2にかかる除菌装置の一例の断面図である。
図10図10は、変形例3にかかる乗客コンベアの制御処理の一例のフローチャートである。
図11図11は、実施形態2にかかる制御装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図12図12は、実施形態2の乗客コンベアによる制御処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、変形例4にかかる乗客コンベアの制御処理の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、本実施形態にかかる乗客コンベアの一例を示す側面図である。図2は、図1のA-A断面図である。本実施形態の乗客コンベア1は、例えば、建物の上下階に跨って傾斜して設置されたエスカレータである。この乗客コンベア1は、図1に示すように、多数の踏段2を上階側の乗降口8と下階側の乗降口9との間で循環移動させることで、踏段2の上面である踏み面2aに搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送するものである。本実施形態では、踏段2が下階側の乗降口9から上階側の乗降口8に上昇して巡回する乗客コンベア1を例として説明する。
【0010】
多数の踏段2は、無端状の踏段チェーン3によって連結されており、建物の床下に設置されたトラスと呼ばれる主枠4内に配置されている。
【0011】
主枠4の内部の上階側にはスプロケット5と駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置6と制御装置30とが配置され、主枠4の内部の下階側にはスプロケット7が配置されている。
【0012】
上階側のスプロケット5と下階側のスプロケット7との間には、踏段チェーン3が架け渡されており、駆動装置6がスプロケット5を回転駆動させることに伴って、踏段チェーン3がスプロケット5及びスプロケット7の間を循環移動し、踏段2も踏段チェーン3と一体に循環移動する。
【0013】
制御装置30は、駆動装置6や後述する除菌装置20の照射装置20b(図2,3,4参照)を制御する。
【0014】
踏段2の両側部には左右一対の欄干10が設けられ、これら欄干10の外周部に、駆動装置6によって踏段2と同期して循環移動する手摺ベルト12が装着されている。欄干10の下部には、踏段2の側面との間に隙間Sをあけてスカートガードパネル14が取り付けられており、踏段2がスカートガードパネル14の長手方向に沿って移動する。スカートガードパネル14は、分割された複数枚の例えば鋼板製のパネルを欄干10の長手方向に沿ってつなぎ合わせることで構成されている。
【0015】
手摺ベルト12は、欄干10の上部側および側部側の外周では、外部に露出して利用者の手で掴むことが可能となっている。一方、欄干10の下部側の外周では、乗客コンベア1の内部、具体的には主枠4の内部に収容される。そして、主枠4の中央部から下階側に、手摺ベルト12を除菌する複数の除菌装置20が連続して設けられている。主枠4の中央部から上階側には、駆動装置などの各種機器が収容されているため、除菌装置20は、上階側よりも下階側に設けることが好ましい。本実施形態では、図1に示すように、3個の除菌装置20が設けられているが、除菌装置20の数は一つ以上であればこれに限定されるものではない。除菌装置20の詳細については後述する。
【0016】
下階側の乗降口9の乗降板端部(コム部ともいう)近傍には、利用者検出センサ18aが設けられている。利用者検出センサ18aは、乗降口9から乗り込んでこようとする利用者をそれぞれ検出する。上階側の乗降口8の乗降板端部(コム部ともいう)近傍には、利用者検出センサ18bが設けられている。利用者検出センサ18bは、乗降口8から乗り込んでこようとする利用者を検出する。
【0017】
下階側の乗降口9から上階側に所定距離だけ離間した位置には、乗込確認センサ19aが設けられている。乗込確認センサ19aは、両側のスカートガードパネル14の下部で踏段2の踏み面2a付近に、それぞれ発光部と受光部とが設けられ、発光部から発光される赤外線を受光部で受光して、受光の有無により利用者が乗降口9から乗り込んできたことを検出するようになっている。
【0018】
上階側の乗降口8から下階側に所定距離だけ離間した位置には、乗込確認センサ19bが設けられている。乗込確認センサ19bは、両側のスカートガードパネル14の下部で踏段2の踏み面2a付近に、それぞれ発光部と受光部とが設けられ、発光部から発光される赤外線を受光部で受光して、受光の有無により利用者が乗降口8から乗り込んできたことを検出するようになっている。
【0019】
以下、利用者検出センサ18a、18bを総称するときには、利用者検出センサ18という。また、乗込確認センサ19a、19bを総称するときには、乗込確認センサ19という。利用者検出センサ18および乗込確認センサ19は、センサ部の一例である。
【0020】
図2に示すように、欄干10は、建屋に設けられた主枠4に取り付けられて垂直に支持されており、この欄干10の下部にスカートガードパネル14と内デッキ16とが配設されている。内デッキ16は、スカートガードパネル14の上端部と欄干10の内側(踏段側)との間に取り付けられ、スカートガードパネル14に向かうほど低くなるように傾斜した形状をなしている。
【0021】
図2に示すように、手摺ベルト12は、欄干10の外周に支持部32、支持部32に固定されたガイド部31を介して設けられている。この下側の手摺ベルト12の近傍に除菌装置20が設けられている。図3は、実施形態1の除菌装置20の外観を示す斜視図である。図3では、ガイド部31は省略して示している。図4は、実施形態1の除菌装置20およびその周辺の構造を示す拡大断面図である。
【0022】
図2,4に示すように、ガイド部31は、ボルト等で支持部32に固定されている。ガイド部31は、下部に外方に突出した突出部分をする。手摺ベルト12の断面は、略C字形状となっている。手摺ベルト12のC字形状の凹部にガイド部31の突出部が嵌まり、手摺ベルト12は、ガイド部31に沿って巡回移動可能となっている。
【0023】
図2、3に示すように、断面が逆L字形状の主梁15に、断面が略U字形状の支え板17aが固定されており、その支え板17aのU字部分の底部に逆L形状の取付部17bが装着されている。除菌装置20は、この取付部17bに装着されている。
【0024】
除菌装置20は、手摺ベルト12の近傍に設けられており、複数の照射装置20bと、反射板20aとを備えている。本実施形態の照射装置20bは、3個の照射装置20b1、20b2、20b3と、これらを覆うカバー20bcとから構成される。
【0025】
3個の照射装置20b1、20b2、20b3は、反射板20aの底面に手摺ベルト12の幅方向の周面の一部に対向して設けられている。本実施形態では、3個の照射装置20b1、20b2、20b3は、手摺ベルト12おの下面にのみに対向して略平行に並んで設けられている。言い換えれば、3個の照射装置20b1、20b2、20b3は、手摺ベルト12の側面、上面側には設けられていない。
【0026】
3個の照射装置20b1、20b2、20b3のそれぞれは、例えば、波長200mm以上280mm以下の近紫外線(UVC)を照射して、手摺ベルト12の幅方向の面を除菌する。3個の照射装置20b1、20b2、20b3を総称する場合には、照射装置20bという。なお、本実施形態では、3個の照射装置20b1、20b2、20b3を設けているが、照射装置20bの数はこれに限定されるものではない。照射装置20bは、配線28によって制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によって照射制御される。
【0027】
反射板20aは、反射部材の一例である。反射板20aは、手摺ベルト12の幅方向の面の少なくとも一部を包囲する。本実施形態の反射板20aは、図4に示すように、底面201aの両端から、それぞれ下部傾斜面201b1、201b2が約60度の角度で外方に傾斜して延在する。下部傾斜面201b1、201b2のそれぞれの頂部から、側面部201c1、201c2が垂直方向に立設して延在する。そして側面部201c1、201c2のそれぞれの頂部から、上部傾斜面201d1、201d2が約60度の角度で内方に傾斜して延在する。さらに、上部傾斜面201d1、201d2の夫々の内側端部から、上面201e1、201e2が平面201aと平行に、ガイド部31の手前、かつ手摺ベルト12の面の終端から少し外方の位置まで延在する。
【0028】
このように、本実施形態の反射板20aは、その底面201a、下部傾斜面201b1、201b2、側面201c1、201c2、上部傾斜面201d1、201d2、上面201e1、201e2によって、手摺ベルト12の幅方向の面のほぼ全域を包囲する。このため、照射装置20bから照射される近紫外線は、図4に示すように、反射板20aを反射して、手摺ベルト12の表面に照射される。このため、照射装置20bを、手摺ベルト12の幅方向の全周を包囲するように多数設ける必要がなくなり、少数の照射装置20bで効率的に手摺ベルト12の除菌を実現することができる。
【0029】
反射板20aは、アルミニウム等の材料で形成される。これにより、近紫外線の反射率を向上させることができる。反射板20aの材質は、アルミニウムに限定されるものではない。反射率の高い材質で反射板20aを形成することが好ましい。
【0030】
次に、制御装置30の詳細について説明する。図5は、実施形態1の制御装置30の機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の制御装置30は、図5に示すように、駆動制御部302と、照射制御部303と、を備える。
【0031】
駆動制御部302は、第1の運転モードとしての通常運転モードでは、踏段2および手摺ベルト12を第1の速度としての高速で駆動する。駆動制御部302は、第2の運転モードとして低速運転モードでは、踏段2および手摺ベルト12を、第1の速度より低速である第2の速度としての低速で駆動する。
【0032】
駆動制御部302は、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合に、通常運転モードで踏段2および手摺ベルト12を駆動する。また、駆動制御部302は、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって一定時間、利用者が検知されない場合には、低速運転モードで踏段2および手摺ベルト12を駆動する。
【0033】
照射制御部303は、踏段2および手摺ベルト12の巡回する移動速度に基づいて、照射装置20bの照射強度を制御する。具体的には、照射制御部303は、通常運転モードでは、第1の強度としての通常強度で近紫外線を照射するように照射装置20bを制御する。また、照射制御部303は、低速運転モードでは、通常強度より強い第2の強度としての高強度で近紫外線を照射するように照射装置20bを制御する。
【0034】
照射制御部303は、駆動制御部302が低速運転モードでの駆動を所定時間継続した後、近紫外線の照射を停止する照射装置20bを制御する。照射制御部303は、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合に、近紫外線を通常強度で照射するように照射装置20bを制御する。
【0035】
図6は、実施形態1の制御装置30のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)313、ROM(Read Only Memory)313、RAM(Random Access Memory)311、及び記憶装置314等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0036】
ROM312には、例えば、駆動制御プログラム及び照射制御プログラム等の各種プログラムが格納されている。ROM312に格納されたこれらのプログラムが読み出されてRAM311に展開され、それらのプログラムをCPU313が実行することにより、制御装置30の機能が実現される。
【0037】
これらの駆動制御プログラム及び照射制御プログラムがCPU313により実行されることで、上述の駆動制御部302、照射制御部303が実現される。
【0038】
ここで、駆動制御プログラム及び照射制御プログラム等は、コンピュータで実行可能な、エレベータの制御に関する複数の命令を含むコンピュータ読み取り可能かつ非遷移的な記録媒体(Non-transitory Computer Readable Recording Medium)を有するコンピュータプログラムプロダクトである。駆動制御プログラム及び照射制御プログラム等は、例えばモジュール構成となっており、これらのモジュールがRAM311上にロードされる。
【0039】
駆動制御プログラム及び照射制御プログラム等は、例えばコンピュータでの読み取りが可能なように記録媒体等に格納されて提供される。記録媒体は、例えば磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、またはフラッシュメモリ等である。ただし、駆動制御プログラム及び照射制御プログラム等は、ネットワークに置かれたサーバ等により配信され、または、ダウンロード可能なように構成されることで、他の様々な手法により提供されてもよい。
【0040】
次に、上述した本実施形態の乗客コンベア1で実行される制御処理について説明する。図7は、実施形態1の乗客コンベア1による制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
乗客コンベア1に電源が投入されると、まず、駆動制御部302は、通常運転モードでの駆動を実行する(S101)。そして、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、通常強度で近紫外線を照射させる(S102)。
【0042】
利用者検出センサ18または乗込確認センサ19は、利用者が検知されたか否かを判断する(S103)。この判断は、一定時間ごとに行われている。そして、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合には(S103)、駆動制御部302は、通常運転モードでの駆動を継続する(S104)。そして、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、通常強度で近紫外線を照射させ(S105)、かかる照射を一定時間継続する(S106)。そして、電源オフとなるまで(S111:No)、S103へ戻り、S103からの処理を繰り返し実行する。
【0043】
S103において、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が所定時間検知されなかった場合には(S103:No)、駆動制御部302は、通常運転モードから低速運転モードでの駆動に切り替えて実行する(S107)。そして、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、高強度で近紫外線を照射させる(S108)。
【0044】
そして、一定時間、高強度での照射を継続し(S109)、その後、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、近紫外線の照射を停止する(S110)。そして、電源オフとなるまで(S111:No)、S103へ戻り、S103からの処理を繰り返し実行する。ここで、S103で利用者が検知された場合には、低速運転モードから通常運転モードへの切替えが行われる。S111で電源オフとなった場合には(S111:Yes)、処理は終了する。
【0045】
このように本実施形態では、除菌装置20の反射板20aが、手摺ベルト12の幅方向のほぼ全域を包囲して設けられているので、照射装置20bから照射される近紫外線は、反射板20aを反射して、手摺ベルト12の表面に照射される。このため、照射装置20bを、手摺ベルト12の幅方向の全周を包囲するように多数設ける必要がなくなり、本実施形態によれば、少数の照射装置20bで効率的に手摺ベルト12の除菌を実現することができ、コスト削減も図ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、除菌装置20が主枠の中央部から下側に連続して設けられているので、間隔をおいて設置する場合に比べて、集中的に、手摺ベルト12を除菌することができ、除菌効率を向上することができる。
【0047】
また、実施形態1では、通常運転モードの際に、近紫外線を通常強度で手摺ベルト12に照射し、利用者がいない低速運転モードの際に、近紫外線を高強度で手摺ベルト12に照射し除菌を行っているので、低速運転モードでの運転時の除菌効率を向上させることができる。
(変形例1)
照射装置20bの配置は実施形態1の配置に限定させるものではない。図8は、実施形態1の変形例1にかかる除菌装置120の一例の断面図である。本変形例の除菌装置120では、照射装置20bの配置が実施形態1と異なっている。3つの照射装置220b1、20b2、220b3のうち、図8における左右の2つの照射装置220b1、220b3が外方に傾斜して設けられている。これにより、この2つの照射装置220b1、220b3から近紫外線の照射方向も実施形態1の照射装置20b1、20b3に比べてやや外方に向くことになる。これにより、手摺ベルト12の下部傾斜面201b1、201b2側の面にもより確実に近紫外線を照射することができ、除菌効果を向上させることが可能となる。
【0048】
(変形例2)
また、反射板20aの形状も実施形態1に限定されるものではない。実施形態1の反射板20aは、その上面201e1、201e2の端部が、ガイド部31の手前、かつ手摺ベルト12の面の終端から少し外方の位置まで延在している。このため、実施形態1の反射板20aは、手摺ベルト12の幅方向の面のほぼ全域を包囲するが、全域を完全に包囲するものではない。言い換えれば、実施形態1の反射板20aは、手摺ベルト12の幅方向の面の一部を包囲している。
【0049】
図9は、変形例2にかかる除菌装置220の一例の断面図である。本変形例の除菌装置220では、反射板220aの側面1201c1、1201c2は、実施形態1に比べてさらに高いガイド部31の上面より上の位置まで延在し、その側面1201c1、1201c2のそれぞれ頂部から上面1201e1、1201e2のそれぞれが底面201aと平行に内方に延在する。そして、上面1201e1、1201e2のガイド部31側の端部が、手摺ベルト12の面の終端およびガイド部31の周面より内側で支持部32の周面付近の位置まで延在している。このため、本変形例の反射板120aは、手摺ベルト12の幅方向の全域を包囲することになるとともに、反射板220aの上面1201e1と支持部32との間隙、上面1201e2と支持部32との間隙が小さくなる。このため、本変形例によれば、近紫外線の間隙からの漏れを最小限に抑えることができ、少ない数の照射装置220で、より効率的に、手摺ベルト12の除菌を行うことが可能となる。
【0050】
(変形例3)
実施形態1では、低速運転モードで近紫外線を高強度で一定時間照射した後、照射が停止し、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合に、通常運転モードに切り替えて通常強度で近紫外線を手摺ベルト12に照射していた。この変形例では、利用者が検知された場合でも、利用者が踏段2および手摺ベルトの移動方向と逆方向に乗り込んでくる場合には、照射の停止を継続するものである。
【0051】
図10は、変形例3にかかる乗客コンベアの制御処理の一例のフローチャートである。電源がオンとされると、S101からS103までは実施形態1と同様に実行される。S103で利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合(S103:Yes)、照射制御部303は、検知された利用者が逆侵入してきたか否かを判断する(S201)。具体的には、照射制御部303は、例えば、踏段2および手摺ベルト12が上昇移動している状態で、上階側の利用者検出センサ18bまたは乗込確認センサ19bが利用者を検知した場合には、利用者が逆侵入しようとしていると判断する。なお、逆侵入の判断手法はこれに限定されるものではない。
【0052】
そして、利用者が逆侵入しようとしていると判断された場合には(S201:Yes)、S110へ移行し、照射制御部303は、近紫外線の照射を停止する(S110)。すなわち、低速運転モードで照射が停止中に利用者が検知された場合でも、逆侵入の場合には、照射停止が継続される。一方、通常運転モードでの運転中に利用者の逆侵入の場合には、照射が停止されることになる。
【0053】
これにより本変形例によれば、余分な照射を削減することができ、除菌効率をより向上させることができる。
【0054】
(実施形態2)
実施形態1では、通常運転モードの際に、近紫外線を通常強度で手摺ベルト12に照射し、低速運転モードの際に、近紫外線を高強度で手摺ベルト12に照射していた。この実施形態2では、逆に、通常運転モードの際に、近紫外線を高強度で手摺ベルト12に照射し、低速運転モードの際に、近紫外線を通常強度で手摺ベルト12に照射するものである。
【0055】
乗客コンベア1および除菌装置20の構成は実施形態と同様である。本実施形態では、制御装置1030の機能的構成が実施形態1と異なっている。図11は、実施形態2にかかる制御装置1030の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0056】
本実施形態の制御装置1030は、図11に示すように、駆動制御部302と、照射制御部1303と、を備える。駆動制御部302の機能は、実施形態1と同様である。
【0057】
照射制御部1303は、踏段2および手摺ベルト12の巡回する移動速度に基づいて、照射装置20bの照射強度を制御する。具体的には、照射制御部1303は、通常運転モードでは、第1の強度としての高強度で近紫外線を照射するように照射装置20bを制御する。また、照射制御部1303は、低速運転モードでは、高強度より弱い第2の強度としての通常強度で近紫外線を照射するように照射装置20bを制御する。
【0058】
照射制御部1303は、駆動制御部302が低速運転での駆動を所定時間継続した後、近紫外線の照射を停止する照射装置20bを制御する。照射制御部303は、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合に、近紫外線を高強度で照射するように照射装置20bを制御する。
【0059】
次に、上述した本実施形態の乗客コンベア1で実行される制御処理について説明する。図12は、実施形態2の乗客コンベア1による制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
乗客コンベア1に電源が投入されると、実施形態1と同様に、まず、駆動制御部302は、通常運転モードでの駆動を実行する(S101)。そして、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、通常強度で近紫外線を照射させる(S102)。
【0061】
利用者検出センサ18または乗込確認センサ19は、利用者が検知されたか否かを判断する(S103)。この判断は、一定時間ごとに行われている。そして、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合には(S103)、駆動制御部302は、実施形態1と同様に、通常運転モードでの駆動を継続する(S104)。そして、照射制御部1303は、照射装置20bを制御して、高強度で近紫外線を照射させ(S305)、かかる照射を一定時間継続する(S106)。そして、電源オフとなるまで(S111:No)、S103へ戻り、S103からの処理を繰り返し実行する。
【0062】
S103において、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が所定時間検知されなかった場合には(S103:No)、駆動制御部302は、実施形態1と同様に、通常運転モードから低速運転モードでの駆動に切り替えて実行する(S107)。そして、照射制御部1303は、照射装置20bを制御して、通常強度で近紫外線を照射させる(S108)。
【0063】
そして、一定時間、通常強度での照射を継続し(S109)、その後、照射制御部303は、照射装置20bを制御して、近紫外線の照射を停止する(S110)。そして、電源オフとなるまで(S111:No)、S103へ戻り、S103からの処理を繰り返し実行する。ここで、S103で利用者が検知された場合には、低速運転モードから通常運転モードへの切替えが行われる。S111で電源オフとなった場合には(S111:Yes)、処理は終了する。
【0064】
このように本実施形態では、実施形態1と同様の効果を奏する他、通常運転モードの際に、近紫外線を高強度で手摺ベルト12に照射し、低速運転モードの際に、近紫外線を通常強度で手摺ベルト12に照射して除菌を行っているため、低速運転時に高強度で照射を行う場合に比べて、低速運転モード時の運転における手摺ベルト12への負担を軽減することができる。このため、本実施形態によれば、手摺ベルト12の寿命を長く維持することができる。
(変形例4)
実施形態2では、低速運転モードで近紫外線を通常強度で一定時間照射した後、照射が停止し、利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合に、通常運転モードに切り替えて高強度で近紫外線を手摺ベルト12に照射していた。この変形例では、利用者が検知された場合でも、利用者が踏段2および手摺ベルトの移動方向と逆方向に乗り込んでくる場合、すなわち逆侵入してくる場合には、照射の停止を継続するものである。
【0065】
図13は、変形例4にかかる乗客コンベアの制御処理の一例のフローチャートである。電源がオンとされると、S101からS103までは実施形態2と同様に実行される。S103で利用者検出センサ18または乗込確認センサ19によって利用者が検知された場合(S103:Yes)、照射制御部1303は、検知された利用者が逆侵入してきたか否かを判断する(S201)。具体的には、逆侵入の判断手法は変形例3と同様である。
【0066】
そして、利用者が逆侵入しようとしていると判断された場合には(S201:Yes)、S110へ移行し、照射制御部303は、近紫外線の照射を停止する(S110)。すなわち、低速運転モードで照射が停止中に利用者が検知された場合でも、逆侵入の場合には、照射停止が継続される。一方、通常運転モードでの運転中に利用者の逆侵入の場合には、照射が停止されることになる。
【0067】
これにより本変形例によれば、余分な照射を削減することができ、除菌効率をより向上させることができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…乗客コンベア、2…踏段、2a…踏み面、10…欄干、12…手摺ベルト、14…スカートガードパネル、16…内デッキ、18,18a,18b…利用者検出センサ、19,19a,19b…乗込確認センサ、20,120,220…除菌装置、20a…反射板(反射部材)、20b,20b1,20b2,20b3,120b1,120b3…照射装置、30…制御装置、302…駆動制御部、302,1302…照射制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13