(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】被検体の検査に関連する処理装置、被検体の検査システム、被検体の検査に関連する処理方法、及び、被検体の検査に関連する処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240610BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2021144006
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 暢克
(72)【発明者】
【氏名】大賀 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 義之
(72)【発明者】
【氏名】大明 準治
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英明
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】神川 卓大
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158499(JP,A)
【文献】特開2017-134617(JP,A)
【文献】国際公開第2021/014752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 7/00-G06T 7/90
G05D 1/00-G05D 1/87
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体に接続され、かつ、前記可動体の動作に対応して位置及び姿勢が変化する撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理装置であって、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ、前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出し、
算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ、前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出し、
前記複数の撮影点のそれぞれから前記次の移動先となる前記撮影点までの前記移動コストを、前記撮影部の
前記位置の変化、及び前記撮影部の
前記姿勢の変化
に加えて、前記撮影部への前記可動体の接続部分の位置の変化、前記撮影部への前記可動体の前記接続部分の姿勢の変化、及び前記可動体の制御量の変化のいずれか1つ以上に基づいて、計算する、
プロセッサを具備する、処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記複数の撮影点を1つずつ順次に通過し、かつ、前記複数の撮影点のそれぞれを1回のみ通過することを制約条件として、前記移動コストの前記総和を最小化する前記経路について解析する、請求項1の処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ、前記移動コストの前記総和を最小化する経路についての最適化問題の最適解、局所最適解及び近似解のいずれかを、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる前記経路として算出する、請求項1又は2の処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数の撮影点において前記撮影部が撮影した画像を画像処理することにより、前記被検体の前記表面の状態を判定する、請求項1乃至3のいずれか1項の処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記被検体の前記表面に存在すると判定した欠陥を示す画像、及び、前記欠陥についての判定結果を前記形状データに反映させた画像のいずれかを表示させる、請求項4の処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、算出した前記経路に沿って前記複数の撮影点の間で前記撮影部が移動している状態において、前記撮影部のリアルタイムの位置及び姿勢を再現した画像、前記撮影部がリアルタイムで撮影している画像、及び、前記被検体の前記表面においてリアルタイムで撮影されている範囲の前記法線ベクトルに関する情報を示す画像のいずれかを表示させる、請求項1乃至5のいずれか1項の処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項の処理装置と、
結像光学系を備え、前記結像光学系を用いて前記被検体を結像することにより、前記被検体を撮影する前記撮影部と、
前記撮影部に接続され、動作することにより、前記撮影部の前記位置及び前記姿勢を変化させ、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動可能にする可動体と、
を具備する、前記被検体の検査システム。
【請求項8】
前記撮影部は、前記被検体の前記表面に対する前記結像光学系の光軸の角度が所定の角度範囲になる姿勢で、前記複数の撮影点のそれぞれにおいて前記被検体を撮影する、請求項7の検査システム。
【請求項9】
前記撮影部は、
前記結像光学系の結像面を形成し、前記結像光学系を通して入射された光を撮像する撮像素子と、
所定の波長範囲の光を透過させる波長選択領域を備えるとともに、前記結像光学系を通して前記撮像素子に入射される光の光路上に配置され、前記波長選択領域を透過した前記所定の波長範囲の光を前記撮像素子に入射させるカラーフィルタと、
を備える、請求項7又は8の検査システム。
【請求項10】
可動体に接続され、かつ、前記可動体の動作に対応して位置及び姿勢が変化する撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理方法であって、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ、前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出することと、 算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ、前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出することと、
前記複数の撮影点のそれぞれから前記次の移動先となる前記撮影点までの前記移動コストを、前記撮影部の
前記位置の変化、及び前記撮影部の
前記姿勢の変化
に加えて、前記撮影部への前記可動体の接続部分の位置の変化、前記撮影部への前記可動体の前記接続部分の姿勢の変化、及び前記可動体の制御量の変化のいずれか1つ以上に基づいて、計算することと、
を具備する、処理方法。
【請求項11】
可動体に接続され、かつ、前記可動体の動作に対応して位置及び姿勢が変化する撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理プログラムであって、コンピュータに、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ、前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出させ、
算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ、前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析させ、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出させる、
前記複数の撮影点のそれぞれから前記次の移動先となる前記撮影点までの前記移動コストを、前記撮影部の
前記位置の変化、及び前記撮影部の
前記姿勢の変化
に加えて、前記撮影部への前記可動体の接続部分の位置の変化、前記撮影部への前記可動体の前記接続部分の姿勢の変化、及び前記可動体の制御量の変化のいずれか1つ以上に基づいて、計算させる、
処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体の検査に関連する処理装置、被検体の検査システム、被検体の検査に関連する処理方法、及び、被検体の検査に関連する処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の表面における傷等の欠陥の検査では、目視による検査の代わりに、結像によって撮影を行う撮影装置(光学装置)を用いて検査を行うことがある。撮影装置を用いた検査では、カメラ等の撮影装置(撮影部)にロボットアーム等の可動体を接続することにより、撮影装置の位置及び姿勢を可動体の動作に対応させて変化可能にする。そして、可動体の動作によって複数の撮影点の間で撮影装置を移動させるとともに、複数の撮影点のそれぞれで被検体の表面を撮影する。また、複数の撮影点のそれぞれでは、被検体の表面に対する結像光学系の光軸の角度が直角又は略直角になる姿勢等の被検体の表面に対する結像光学系の光軸の角度が所定の角度範囲になる姿勢に、撮影装置の姿勢が調整され、調整された姿勢で撮影装置は被検体を撮影する。
【0003】
前述のように撮影装置及び可動体を用いた被検体の表面における欠陥の検査では、複数の撮影点の間での撮影装置の移動時間を短縮したり、複数の撮影点のそれぞれでの撮影装置の姿勢の調整時間を短縮したりして、被検体の表面において検査対象となる範囲を検査する検査時間を短縮することが、求められている。すなわち、被検体の表面において検査対象となる範囲を迅速に検査することが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-190509号公報
【文献】特開2019-124542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被検体の表面において検査対象となる範囲を迅速に検査可能にする処理装置、検査システム、処理方法、及び、処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、可動体に接続され、かつ、可動体の動作に対応して位置及び姿勢が変化する撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理装置が提供される。処理装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ、被検体の表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が点群を用いて規定される形状データに基づいて、撮影部によって被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出する。プロセッサは、算出した複数の撮影点の全てを通過し、かつ、複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、複数の撮影点の間で撮影部を移動させる経路として算出する。プロセッサは、複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストを、撮影部の位置の変化、及び撮影部の姿勢の変化に加えて、撮影部への可動体の接続部分の位置の変化、撮影部への可動体の接続部分の姿勢の変化、及び前記可動体の制御量の変化のいずれか1つ以上に基づいて、計算する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る検査システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る検査システムの制御系統等を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る検査システムにおいて、撮影部の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る処理装置において、データ記憶部に記憶される被検体の表面の形状データの一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る処理装置の撮影点算出部によって行われる、複数の撮影点を設定(算出)する処理の一例について説明する概略図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る処理装置の撮影点算出部によって行われる、角度差微小部分に配置される複数の三角形から形成される1つの多角形に基づいて複数の撮影点の1つ以上を設定(算出)する処理の一例について説明する概略図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る処理装置の撮影点算出部が、
図4の一例の形状データを用いて算出した複数の撮影の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る処理装置の経路算出部による撮影部の移動経路の算出に用いられる、撮影点を通過する順番に関連するパラメータと移動コストの総和に関連するパラメータとの関係の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る処理装置の経路算出部が、
図7の一例の複数の撮影点に基づいて算出した撮影部を移動させる経路の一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る処理装置の処理実行部によって実行される、処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、ある変形例に係る処理装置において、ユーザインタフェースの表示画面に表示される画像の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、検査システムの一例として、第1の実施形態の検査システム1を概略的に示す。
図2は、本実施形態の検査システム1の制御系統等を概略的に示す。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の検査システム1は、検査対象のなる被検体Dの検査に用いられる。1回の検査では、検査システム1を用いて、被検体Dの表面について検査される。ある一例では、被検体Dの表面の全体が1回の検査で検査されてもよく、別のある一例では、被検体の表面において所定の範囲(一部)のみが1回の検査で検査されてもよい。検査システム1は、撮影部(撮影装置)2、可動体3及び処理装置5を備える。処理装置5は、処理実行部6、データ記憶部7及びユーザインタフェース8を備え、処理実行部6は、撮影点算出部11、経路算出部12、画像処理部13及び動作制御部15を備える。
【0010】
処理装置5は、例えば、コンピュータ等から構成され、プロセッサ(処理回路)及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。
【0011】
処理装置5では、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。処理装置5では、プロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。また、処理装置5のプロセッサによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介して処理装置5に接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、プロセッサは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。処理装置5では、撮影点算出部11、経路算出部12、画像処理部13及び動作制御部15を含む処理実行部6による後述の処理は、プロセッサ等によって実行され、記憶媒体が、データ記憶部7として機能する。
【0012】
なお、検査システム1に、互いに対して別体の複数の処理装置(コンピュータ)が設けられてもよい。この場合、複数の処理装置のそれぞれは、プロセッサ及び記憶媒体を備える。そして、処理実行部6による後述の処理は、複数の処理装置のプロセッサによって実行される。ある一例では、撮影点算出部11及び経路算出部12による後述の処理が、ある1つの処理装置のプロセッサによって、実行される。そして、画像処理部13及び動作制御部15による後述の処理が、撮影点算出部11及び経路算出部12による処理を実行する処理装置とは別体の処理装置のプロセッサによって、実行される。
【0013】
また、処理実行部6による処理の少なくとも一部が、クラウド環境に構成されるクラウドサーバによって実行されてもよい。クラウド環境のインフラは、仮想CPU等の仮想プロセッサ及びクラウドメモリによって、構成される。ある一例では、撮影点算出部11及び経路算出部12による処理が、仮想プロセッサによって実行され、クラウドメモリが、データ記憶部7として機能する。そして、画像処理部13及び動作制御部15による処理が、コンピュータ等の処理装置のプロセッサによって実行される。また、データ記憶部7は、処理実行部6が設けられる処理装置5とは別体のコンピュータに設けられてもよい。この場合、処理装置5は、データ記憶部7等が設けられるコンピュータに、ネットワークを介して接続される。
【0014】
また、ユーザインタフェース8は、検査システムを用いた検査において作業者等によって操作指令が入力される操作部、及び、作業者等に検査に関連する情報を告知する告知部を備える。告知部では、例えば、画面表示及び音声等のいずれかによって、情報が告知される。なお、ユーザインタフェース8は、処理装置5とは別体で設けられてもよい。
【0015】
撮影部2は、カメラ等の撮影装置である。可動体3は、例えば、1つ以上の関節を備えるロボットアーム、及び、直動機構等のいずれかである。可動体3は、撮影部2に機械的に接続され、
図1等の一例では、可動体3の一端に、撮影部2への接続部分が形成される。可動体3が動作することにより、撮影部2の位置及び姿勢が変化する。したがって、撮影部2の位置及び姿勢は、可動体3の動作に対応して、変化する。ここで、可動体3の位置は、例えば、3次元における位置で示される。
【0016】
図3は、撮影部2の構成の一例を示す。
図3等に示すように、撮影部2は、結像光学系21を備える光学装置であり、結像光学系21による結像によって、撮影を行う。結像光学系21は、光軸Oを有し、例えば、1つ又は複数のレンズから形成される。そして、撮影部2では、結像光学系の光軸Oに沿う光軸方向が規定される。また、撮影部2は、撮像素子22を備える。被検体Dの検査では、撮像素子22は、光軸方向について、結像光学系21に対して、被検体Dが位置する側とは反対側に配置される。撮像素子22は、結像光学系21の結像面23を形成し、撮像素子22の結像面23には、被検体Dの表面の像等が結像光学系21によって結像される。また、撮像素子22は、結像光学系21の焦点位置に比べて、結像光学系21から離れて配置され、撮像素子22までの結像光学系21からの距離Lは、結像光学系21の焦点距離fに比べて、大きい。
【0017】
結像光学系21は、被検体Dからの光を撮像素子22に入射させる。結像光学系21は、レンズ、組レンズ、導光レンズ、屈折率勾配レンズ、反射ミラー等でよく、光を結像するものであればよい。したがって、被検体Dの検査では、被検体Dから結像光学系21を通して、撮像素子22の結像面23に光が入射される。撮像素子22は、結像面23に入射された光を撮像する。これにより、撮像素子22において、結像された像に関する情報を示す電気信号が生成され、被検体Dが撮影される。
【0018】
図3等の一例では、撮影部2は、光源25及びミラー26を備え、光源25からの光が、ミラー26を介して被検体Dに入射される。ただし、ミラー26のサイズに特に制限はなく、あくまでも
図3は一例である。そして、被検体Dで反射した光が、結像光学系21によって撮像素子22に入射される。また、ある一例では、光源からの光を、1つ以上のレンズから形成される照明光学系を用いて、被検体に入射させ、被検体を透過した光を、結像光学系によって撮像素子に入射させてもよい。被検体を透過した光の撮像素子への入射は、例えば、特許文献2(特開2019-124542号公報)と同様にして実現される。
【0019】
また、撮影部2では、カラーフィルタ27が、光軸方向について、結像光学系21と撮像素子22との間に配置される。したがって、カラーフィルタ27は、結像光学系21を通して撮像素子22に入射される光の光路上に、配置される。カラーフィルタ27は、光軸方向について、結像光学系21の焦点位置からずれることなく又はほとんどずれることなく配置され、結像光学系21からカラーフィルタ27までの距離は、結像光学系21の焦点距離fと同一又は略同一の大きさになる。
【0020】
カラーフィルタ27は、1つ以上の波長選択領域を備え、
図3の一例では、3つの波長選択領域U1~U3を備える。
図3の一例では、カラーフィルタ27は、光軸Oを中心として回転対称又は略回転対称に形成される。そして、カラーフィルタ27では、光軸Oが通過する中心領域に波長選択領域(第1の波長選択領域)U1が形成され、波長選択領域U1の外周側に隣接して波長選択領域(第2の波長選択領域)U2が形成され、波長選択領域U2の外周側に隣接して波長選択領域(第3の波長選択領域)U3が形成される。
図3の一例では、波長選択領域U3によって、カラーフィルタ27の最外周が形成される。
【0021】
波長選択領域U1は、第1の波長範囲(所定の波長範囲)の光のみを透過させる。波長選択領域U2は、第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲の光を透過させる。また、波長選択領域U3は、第1の波長範囲及び第2の波長範囲とは異なる第3の波長範囲の光を透過させる。ある一例では、第1の波長範囲は、赤色光の波長範囲と一致又は略一致し、第2の波長範囲は、緑色光の波長範囲と一致又は略一致し、第3の波長範囲は、青色光の波長範囲と一致又は略一致する。
【0022】
撮像素子22には、カラーフィルタ27の波長選択領域U1~U3のそれぞれを透過した光が、入射する。また、撮像素子22で生成される電気信号では、結像された像に関する情報として、波長選択領域U1~U3のそれぞれから撮像素子22に入射した光の強度に関する情報、すなわち、第1の波長範囲乃至第3の波長範囲のそれぞれの光についての撮像素子22への入射強度に関する情報が、示される。したがって、本実施形態では、撮像素子22で生成される電気信号において、1つ以上の波長範囲のそれぞれの光についての撮像素子22への入射強度に関する情報が、示される。
【0023】
また、被検体を透過した光を撮像素子に入射する構成では、前述したように被検体と撮像素子との間に第1のカラーフィルタを設けるとともに、光源と被検体との間に第2のカラーフィルタが設けられてもよい。この場合、特許文献2と同様にして、第1のカラーフィルタ及び第2のカラーフィルタが配置されるとともに、特許文献2と同様にして、2つのカラーフィルタのそれぞれに波長選択領域が形成される。ある一例では、2つのカラーフィルタのそれぞれにおいて、少なくとも中心領域に、波長選択領域が形成される。そして、第1のカラーフィルタの中心領域を透過可能な光は第2のカラーフィルタの中心領域を透過不可能であり、かつ、第2のカラーフィルタの中心領域を透過可能な光は第1のカラーフィルタの中心領域を透過不可能な状態に、2つのカラーフィルタの波長選択領域のそれぞれを透過させる光の波長が、規定される。
【0024】
前述のように、本実施形態では、カラーフィルタ27又は前述の第1のカラーフィルタを設ける等して、被検体Dから撮像素子22へ入射させる光の光路上に、カラーフィルタが配置される。また、前述の第2のカラーフィルタを設ける等して、光源から被検体に入射させる光の光路上に、カラーフィルタを設けてもよい。そして、本実施形態では、カラーフィルタのそれぞれに、所定の波長範囲の光のみを透過させる波長選択領域が形成される。また、カラーフィルタのいずれか1つ以上では、複数の波長選択領域が形成されてもよい。この場合、複数の波長選択領域では、透過させる光の波長範囲が、互いに対して異なる。ただし、これら複数の波長範囲において、一部互いに重なる部分があってもよい。また、カラーフィルタのいずれか1つ以上では、1つ以上の波長選択領域に加えて、全ての波長の光を透過させる領域、及び、全ての波長の光を透過させない領域の少なくとも一方が形成されてもよい。
【0025】
可動体3は、アクチュエータが作動することにより、動作する。動作制御部15は、可動体3を動作させるアクチュエータの作動を制御することにより、可動体3の動作を制御する。動作制御部15によって可動体3の動作が制御されることにより、撮影部2への可動体3の接続部分の位置及び姿勢が調整される。また、撮影部2への可動体3の接続部分の位置及び姿勢が調整されることにより、撮影部2の位置及び姿勢が調整される。撮影部2によって被検体Dを撮影している状態では、動作制御部15は、被検体Dの表面に対する結像光学系21の光軸Oの角度が所定の角度範囲になる状態に、撮影部2の姿勢を制御する。
図3等の一例では、被検体Dの撮影において、被検体Dの表面に対する結像光学系21の光軸Oの角度が直角又は略直角になる姿勢に、撮影部2の姿勢が調整される。
【0026】
画像処理部13には、撮像素子22で生成された電気信号が入力される。このため、撮影部2によって撮影が実行されている状態では、画像処理部13は、撮像素子22に結像された像に関する情報を取得し、例えば、被検体Dからカラーフィルタ27の1つ以上の波長選択領域U1~U3のそれぞれを通って撮像素子22に入射した光の強度に関する情報を取得する。また、画像処理部13は、撮像素子22からの電気信号に基づいて、撮影部2の撮影範囲の画像として、撮影部2による撮影画像を生成する。そして、画像処理部13は、撮影部2の撮影した画像を画像処理することにより、撮影画像に基づいた演算及び判定等を実行する。
【0027】
図3等の一例では、画像処理部13は、電気信号が入力されることにより、波長選択領域U1~U3のそれぞれから撮像素子22に入射した光の強度に関する情報を取得する。そして、画像処理部13は、波長選択領域U1~U3のそれぞれから撮像素子22に入射した光の強度に関する情報に基づいて、被検体Dの表面での拡散反射に関する情報を算出する。そして、画像処理部13は、被検体Dの表面での拡散反射に関する情報に基づいて、被検体Dの表面の凸凹状態を含む被検体Dの表面の形状に関する情報を算出する。また、被検体Dの表面での拡散反射に関する情報に基づいて、被検体Dにおける光の散乱に関する情報を算出してもよい。
図3等の一例では、画像処理部13は、被検体Dの表面の形状に関する情報に基づいて、被検体Dの表面の状態を判定する。画像処理部13は、被検体Dの表面の状態の判定において、例えば、被検体Dの表面における傷等の欠陥について判定する。これにより、被検体Dの表面における欠陥の有無等について、判定される。
【0028】
また、ある一例では、前述したように、第2のカラーフィルタを通して光が被検体に入射され、被検体を透過した光が、第1のカラーフィルタを通して撮像素子22に入射される。そして、画像処理部13は、電気信号が入力されることにより、第1のカラーフィルタの1つ以上の波長選択領域のそれぞれから撮像素子22に入射した光の強度に関する情報を取得する。そして、画像処理部13は、1つ以上の波長選択領域のそれぞれから撮像素子22に入射した光の強度に関する情報に基づいて、被検体での光の偏角に関する情報を算出する。被検体での光の偏角に関する情報は、特許文献2と同様にして算出される。そして、画像処理部13は、被検体での光の偏角に関する情報に基づいて、被検体の表面の形状に関する情報を算出し、被検体の表面における欠陥について判定等を実行する。
【0029】
検査システム1を用いた検査では、被検体Dの表面の検査範囲において、互いに対して異なる複数の撮影点(撮影位置)で、撮影部2が撮影を行う。そして、複数の撮影点において撮影した画像を画像処理する等して、画像処理部13は、被検体Dの表面の欠陥等について判定する。また、動作制御部15は、可動体3の動作を前述のように制御することにより、撮影部2の位置及び姿勢を変化させ、複数の撮影点の間で撮影部2を移動させる。
【0030】
撮影点算出部11は、検査において撮影部2によって被検体Dを撮影する位置として、前述の複数の撮影点を算出する。撮影点算出部11は、データ記憶部7等に記憶される被検体Dの表面の形状データに基づいて、複数の撮影点を算出する。形状データでは、被検体Dの表面の3次元形状等の形状が、多数の点から構成される点群によって示される。また、形状データでは、被検体Dの表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が、点群を用いて規定される。撮影点算出部11は、例えば、撮影部2によって全ての撮影点で撮影が行われた場合に、被検体Dの表面の検査範囲のいずれの部分も撮影点のいずれかで撮影される状態に、複数の撮影点を算出する。また、撮影部2の撮影範囲(画角)は、全ての撮影点で一定でもよく、撮影点ごとに変化させてもよい。
【0031】
図4は、被検体Dの表面の形状データの一例を示す。
図4の一例では、形状データは、STL(standard triangulated language)形式で示される。
図4の一例の形状データでは、被検体Dの表面の形状が、多数の点Pから構成される点群によって示される。また、
図4の一例の形状データでは、点群に基づいて、被検体Dの表面が、多数の三角形Tに分割される。多数の三角形Tのそれぞれでは、点群を構成する点Pの対応する3つが、頂点となる。
図4の一例の形状データでは、被検体Dの表面における位置に関する情報として、点群を構成する点Pのそれぞれの3次元位置等の位置が、示される。そして、形状データでは、被検体Dの表面における位置に関する情報として、多数の三角形Tのそれぞれの法線ベクトルが、示される。
【0032】
ここで、法線ベクトルとは、被検体Dの表面に対して直交し、かつ、被検体Dの外側を向く。
図4では、法線ベクトルは、省略して示す。また、形状データでは、例えば、被検体Dの表面が多数の四角形に分割される等、被検体Dの表面が三角形以外の複数(多数)の多角形に分割されてもよい。この場合も、多角形のそれぞれの頂点は、点群を構成する点Pの対応する4つ以上から形成され、形状データでは、被検体Dの表面における位置に関する情報として、複数の多角形のそれぞれの法線ベクトルが、示される。
【0033】
撮影点算出部11は、データ記憶部7から前述の形状データを読出す。そして、撮影点算出部11は、形状データに基づいて、検査範囲における被検体Dの表面の形状に関する情報を取得する。また、撮影点算出部11は、データ記憶部7に記憶された情報、及び、ユーザインタフェース8で設定された情報等に基づいて、撮影部2が撮影可能な面積、撮影部2と被検体Dとの間の距離、撮影部2の解像度、及び、撮影部2及び可動体3を配置可能な位置等を含む、撮影部2及び可動体3に関する情報を取得する。撮影点算出部11は、形状データ、及び、撮影部2及び可動体3に関する情報に基づいて、検査範囲において撮影を行う複数の撮影点を算出する。
【0034】
例えば、前述のように、形状データにおいて被検体Dの表面が、点群に基づいて複数の三角形T等の複数の多角形に分割されているものとする。この場合、被検体Dの表面の検査範囲に配置される多角形(三角形T)のそれぞれにおいて、その多角形のいずれの部分も複数の撮影点のいずれか1つ以上での撮影範囲に含まれる状態に、複数の撮影点が算出される。すなわち、被検体Dの表面の検査範囲に配置される多角形(三角形T)のそれぞれにおいて、その多角形のいずれの部分も複数の撮影点のいずれか1つ以上で撮影される状態に、複数の撮影点が算出される。なお、複数の撮影点のそれぞれでの撮影範囲の一部は、他の撮影点での撮影範囲の一部と重なってもよい。
【0035】
図5では、複数の撮影点を設定(算出)する処理の一例について、説明する。
図5の一例では、予め設定される検査範囲から複数の撮影点Fとして、3つの撮影点Fa~Fcが少なくとも算出される。そして、撮影点Faでの撮影範囲Ra、撮影点Fbでの撮影範囲Rb、及び、撮影点Fcでの撮影範囲Rcが、規定される。また、
図5の一例では、検査範囲に配置される三角形Tの1つである三角形Taが示され、三角形Taでは、いずれの部分も、撮影範囲Ra~Rcのいずれか1つ以上に含まれる。このため、三角形Taのいずれの部分も撮影点Fa~Fcのいずれか1つ以上で撮影される状態に、複数の撮影点Fが算出される。また、検査範囲に配置される三角形Ta以外の三角形Tのそれぞれについても、その三角形Tのいずれの部分も複数の撮影点Fのいずれか1つ以上で撮影される状態に、複数の撮影点Fが算出される。
【0036】
また、
図5の一例では、撮影点Fa~Fcの算出において、三角形Taを3つの多角形に分割する。そして、3つの多角形のそれぞれに撮影点Fa~Fcの対応する1つが含まれる状態に、三角形Taが分割される。また、3つの多角形のそれぞれの重心が撮影点Fa~Fcの対応する1つと一致又は略一致する状態に、三角形Taが分割される。これにより、撮影点Fa~Fcのそれぞれとして、三角形Taから分割された3つの多角形の対応する1つの重心が、算出される。分割された多角形のそれぞれの重心を撮影点の対応する1つとして算出する場合、重心ボロノイ分割(centroidal Voronoi tessellation)法又は周知の長方形分割(rectangle partition)法等を用いて、撮影点のそれぞれが算出される。
【0037】
また、被検体Dの検査範囲では、互いに対して隣接する複数の三角形Tの間での被検体Dの表面の角度差が微小又はゼロになる角度差微小部分が、存在することがある。ここで、撮影部2によって被検体Dを撮影している状態では、被検体Dの表面に対する結像光学系21の光軸Oの角度は、前述のように所定の角度範囲において調整される。角度差微小部分での隣接する複数の三角形Tの間の角度差は、前述の所定の角度範囲の角度幅以下となる。角度差微小部分では、隣接する複数の三角形Tの間の角度差は、ゼロでない場合でも、例えば、数度程度である。このような場合、角度差微小部分では、例えば、被検体Dの表面に対する結像光学系21の光軸Oの角度についての前述の所定の角度範囲の大きさに比べて、隣接する三角形Tの間での被検体Dの表面の角度差が小さい。また、検査範囲に角度差微小部分が存在する場合は、角度差微小部分に配置される複数の三角形T(多角形)が互いに対して同一の平面上に位置するものとして、複数の算出点を算出される。ある一例では、角度差微小部分に配置される複数の三角形Tから形成される1つの多角形に基づいて、複数の撮影点の1つ以上が算出及び設定される。そして、角度差微小部分に配置される複数の三角形Tから形成される1つの多角形において、その多角形のいずれの部分も複数の撮影点のいずれか1つ以上での撮影範囲に含まれる状態に、複数の撮影点が算出される。
【0038】
図6では、角度差微小部分に配置される複数の三角形Tから形成される1つの多角形に基づいて複数の撮影点の1つ以上を設定(算出)する処理の一例について、説明する。
図6の一例では、4つの三角形Tb~Teが角度差微小部分に配置され、三角形Tb~Teの間での互いに対する被検体Dの表面の角度差は、微小又はゼロである。そして、角度差微小部分に配置される三角形Tb~Teから、多角形αが形成される。また、
図6の一例では、複数の撮影点Fとして、2つの撮影点Fd,Feが少なくとも算出され、撮影点算出部11は、多角形αに基づいて、撮影点Fd,Feを設定する。そして、撮影点Fdでの撮影範囲Rd、及び、撮影点Feでの撮影範囲Reが、規定される。
【0039】
図6の一例では、三角形Tb~Teから形成される多角形αのいずれの部分も、撮影範囲Rd,Reのいずれか1つ以上に含まれる。このため、多角形αのいずれの部分も撮影点Fd,Feのいずれか1つ以上で撮影される状態に、複数の撮影点Fが算出される。また、
図6の一例では、撮影点Fd,Feの算出において、多角形αを2つの多角形に分割する。そして、2つの多角形のそれぞれに撮影点Fd,Feの対応する1つが含まれる状態に、多角形αが分割される。そして、前述した撮影点Fa~Fcの算出と同様にして、撮影点Fd,Feのそれぞれとして、多角形αから分割された2つの多角形の対応する1つの重心が、算出される。
【0040】
撮影点算出部11は、複数の撮影点のそれぞれについて、被検体Dの表面における位置を算出する。また、撮影点算出部11は、複数の撮影点のそれぞれについて、被検体Dを撮影する方向を算出する。複数の撮影点のそれぞれについて、被検体Dを撮影する方向(結像光学系21の光軸Oの姿勢)は、被検体Dの表面の角度、及び、被検体Dの表面に対する結像光学系21の光軸Oの角度についての所定の角度範囲に基づいて、算出される。
【0041】
図7は、
図4の一例の形状データを用いて算出した複数の撮影点Fの一例を示す。
図7の一例では、被検体Dの表面が多数の三角形Tに分割された形状データを用いて、前述のようにして、複数の撮影点Fが算出される。そして、撮影点Fのそれぞれについて、被検体Dの表面における位置、及び、被検体Dを撮影する方向が、算出される。
【0042】
経路算出部12は、撮影点算出部11によって算出された複数の撮影点Fに関する情報を取得する。経路算出部12は、複数の撮影点Fのそれぞれについて、被検体Dの表面における位置、及び、被検体Dを撮影する方向に基づいて、撮影部2の位置及び姿勢を算出する。また、経路算出部12は、複数の撮影点Fのそれぞれについて、算出した撮影部2の位置及び姿勢等に基づいて、撮影部2への可動体3の接続部分の位置及び姿勢、及び、可動体3の制御量を算出する。ここで、1つ以上関節を備えるロボットアームが可動体3となる場合は、可動体3の制御量として、関節のそれぞれの角度等が挙げられる。また、直動機構が可動体3となる場合は、可動体3の制御量として直動機構の動作による移動量が挙げられる。
【0043】
経路算出部12は、検査範囲での被検体Dの検査において複数の撮影点Fの間で撮影部2を移動させる経路を、算出する。撮影部2の移動経路の算出では、検査範囲の撮影点Fの全てを通過する経路が算出される。そして、複数の撮影点Fを1つずつ順次に通過し、かつ、複数の撮影点Fのそれぞれを1回のみ通過する経路が、撮影部2の移動経路として算出される。また、経路算出部12は、複数の撮影点Fのそれぞれから次の移動先となる撮影点Fまでの移動コストcに基づいて、撮影部2の移動経路を算出する。なお、算出される撮影部2の移動経路は、始点となる撮影点と終点となる撮影点とが同一の巡回路(閉路)であってもよく、始点となる撮影点と終点となる撮影点とが異なる経路であってもよい。
【0044】
撮影部2の移動経路の算出では、経路算出部12は、複数の撮影点Fの全てを通過し、かつ、複数の撮影点Fのそれぞれから次の移動先となる撮影点Fまでの移動コストcの総和を最小化する経路について、解析する。すなわち、経路算出部12は、複数の撮影点Fの全てを通過し、かつ、移動コストcの総和を最小化する経路についての最適化問題を、解析する。そして、経路算出部12は、最適化問題の解析結果に対応する経路を、複数の撮影点Fの間で撮影部2を移動させる経路として算出する。
【0045】
また、複数の撮影点Fのそれぞれから次の移動先となる撮影点Fまでの移動コストcは、撮影部2の位置、撮影部2の姿勢、撮影部2への可動体3の接続部分の位置、撮影部2への可動体3の接続部分の姿勢、及び、可動体3の制御量のいずれか1つ以上の対象となる2つの撮影点Fの間での変化に基づいて、算出される。移動コストcの算出では、前述したパラメータの全ての対象となる2つの撮影点Fの間での変化を用いてもよく、前述したパラメータの一部の対象となる2つの撮影点Fの間での変化を用いてもよい。また、前述したパラメータごとに重要度に対応する重み付けをして、移動コストcを算出してもよい。
【0046】
ある一例では、経路算出部12は、算出されたn個の撮影点F1~Fnの全てを通る撮影部2の経路を算出する。そして、経路算出部12は、撮影部2の経路の算出において、式(1)で示されるパラメータHを最小化させる最適化問題(最小化問題)を解析する。そして、最適化問題では、式(2)で示される条件、及び、式(3)で示される条件が、制約条件となる。そして、最適化問題の解析結果に対応する経路が、複数の撮影点F1~Fnの間で撮影部2を移動させる経路として、算出される。
【0047】
【0048】
ここで、式(1)~(3)において、cijは、撮影点Fi,Fjの間での移動コストを示す。また、nk,iは、経路の順番を示すパラメータであり、全ての撮影点F1~Fnの中でk番目に撮影点Fiを通る場合は1となり、それ以外の場合は0となる。また、式(2)で示される条件では、kが1~nのそれぞれになる場合において、パラメータnk,iが1となる撮影点が1つのみであることが、制約される。すなわち、撮影部2の移動経路においてk番目に通過する撮影点は1つのみであることが、制約され、撮影部2は複数の撮影点F1~Fnを1つずつ順次に通過することが、制約される。
【0049】
また、式(3)で示される条件では、iが1~nのそれぞれになる場合において、パラメータnk,iが1となる順番は1つのみであることが、制約される。すなわち、複数の撮影点F1~Fnのそれぞれを1回のみ通過することが、制約される。なお、始点となる撮影点と終点となる撮影点が同一の巡回路が撮影部2の移動経路として算出される場合は、n0,i=nn,iを満たすとともに、n1,i=nn+1,iを満たす。また、始点となる撮影点と終点となる撮影点とが異なる経路が撮影部2の移動経路として算出される場合は、n0,i=0を満たすとともに、nn+1,i=0を満たす。
【0050】
また、ある一例では、撮影部2の経路の算出において、式(1)で示されるパラメータHの代わりに、パラメータHに式(2)及び式(3)で示される制約条件の要素を含めたパラメータHaを用いてもよい。この場合、パラメータHaは、式(4)のようにして算出される。式(4)で示されるパラメータHaを算出する評価関数では、式(2)及び式(3)で示す制約条件が、ペナルティ関数として含まれる。また、式(4)では、A1,A2は、重みを示すパラメータである。本一例では、経路算出部12は、撮影部2の経路の算出において、式(4)で示されるパラメータHaを最小化させる最適化問題(最小化問題)を解析する。そして、最適化問題の解析結果に対応する経路が、複数の撮影点F1~Fnの間で撮影部2を移動させる経路として、算出される。
【0051】
【0052】
また、ある一例では、撮影点Fi,Fjの間での移動コストcijは、式(5)のようにして算出される。式(5)では、撮影点Fiについてパラメータには、iの添え字が付され、撮影点Fjについてのパラメータには、jの添え字が付される。そして、式(5)では、撮影点Fi,Fjのそれぞれについて、撮影部2の位置を示すベクトル(位置ベクトル)がp、撮影部2の姿勢(光軸Oの姿勢)を示すベクトルがa、撮影部2への可動体3の接続部分の位置を示すベクトル(位置ベクトル)がy、撮影部2への可動体3の接続部分の姿勢を示すベクトルがb、可動体3の制御量を示すベクトルがqとなる。
【0053】
【0054】
また、式(5)では、z1~z5のそれぞれは、重みを示すパラメータであり、0以上の実数である。2つの撮影点Fi,Fjの間でのベクトルp,a,v,b,qのそれぞれの差分量は、パラメータz1~z5の対応する1つによって重み付けされる。また、パラメータz1~z5の一部が0である場合は、0となるパラメータ(z1~z5のいずれか)に対応するベクトル(p,a,v,b,qのいずれか)については、撮影点Fi,Fjの間での差分量を無視して、移動コストcijが算出される。
【0055】
また、ある一例では、移動コストの総和を最小化させる前述した最適化問題(最小化問題)の解析において、撮影点を通過する順番に関連するパラメータβが設定され、前述したパラメータH,Haのいずれかがパラメータβの関数として示される。この場合、最適化問題の解析では、例えば、関数H(β)を最小化させるパラメータβの値について解析される。
【0056】
また、撮影部2の移動において通過する撮影点Fの数が多くなると、すなわち、式(1)等で示されるnが大きくなると、移動コストの総和を最小化させる前述した最適化問題の最適解を、多項式時間(polynomial time)では導出できない可能性がある。このため、複数の撮影点の間で撮影部2を移動させる経路としては、移動コストの総和を最小化させる前述した最適化問題の最適解を必ずしも算出する必要はなく、最適化問題の局所最適解及び近似解のいずれかが算出されてもよい。
【0057】
図8は、撮影点を通過する順番に関連するパラメータβと移動コストの総和に関連する前述のパラメータHとの関係の一例を示す。
図8の一例では、パラメータHは、パラメータβを変数とする関数H(β)として示される。また、
図8では、横軸にパラメータβを示し、縦軸にパラメータHを示す。
図8の一例では、移動コストの総和を最小化させる前述の最適化問題として、関数H(β)を最小化させる最適化問題が解析される。そして、値βaが、最適化問題の最適解となる。また、値βbが、最適化問題の局所最適化となる。そして、値βaから僅かにずれた値が、最適化問題の近似解となり、例えば、値βc,βdのそれぞれが、最適化問題の近似解となる。
図8の一例では、撮影部2を移動させる経路として、値βaに対応する経路が算出されてもよく、値βb,βc,βdのいずれかに対応する経路が算出されてもよい。
【0058】
また、移動コストの総和を最小化させる経路についての最適化問題をイジングモデルに変換して、撮影部2を移動させる経路についての解析及び算出が行われてもよい。この場合、イジングモデルでは、スピン系のエネルギーを最小化させるスピンのそれぞれの向きについて、解析される。また、移動コストの総和を最小化させる経路についての最適化問題の解析では、遺伝的アルゴリズム(GA:genetic algorithm)及びシミュレーテッドアニーリング(SA:simulated annealing)等のヒューリスティックなアルゴリズムが用いられてもよい。
【0059】
図9は、
図7の一例の複数の撮影点Fに基づいて算出した撮影部2を移動させる経路γの一例を示す。
図9の一例では、全ての撮影点Fを1つずつ順次に通過し、かつ、全ての撮影点Fのそれぞれを1回のみ通過する経路として、経路γが算出される。また、
図9の一例でも、移動コストの総和を最小化させる経路について前述のように解析され、解析結果に対応する経路として、経路γが算出される。
【0060】
動作制御部16は、撮影部2を移動させる経路として経路算出部12によって算出された経路を取得する。そして、動作制御部16は、算出された経路に基づいて可動体3の動作を制御し、算出された経路に沿って撮影部を移動させる。また、動作制御部16は、可動体3の動作を制御することにより、撮影点のそれぞれにおいて、撮影点算出部11によって算出された姿勢に撮影部2を調整する。そして、撮影部2は、撮影点のそれぞれにおいて、調整された姿勢で被検体Dの表面を撮影する。そして、画像処理部13は、複数の撮影点のそれぞれで撮影された画像を画像処理するとともに、撮影された画像に基づいて、前述した被検体Dの表面の欠陥についての判定等を実行する。
【0061】
ある一例では、画像処理部13によって被検体Dの表面に欠陥が存在すると判定された場合、画像処理部13を含む処理実行部6は、被検体Dの表面に存在すると判定した欠陥を示す画像を、ユーザインタフェース8に設けられる表示画面等に表示させる。また、ある一例では、画像処理部13等は、被検体Dの表面の欠陥についての判定結果を形状データに反映させ、欠陥についての判定結果を形状データに反映させた画像が、ユーザインタフェース8の表示画面等に表示させる。この場合、被検体Dの表面に存在すると判定された欠陥が形状データの対応する位置に示された状態で、欠陥を形状データに反映した画像が表示される。
【0062】
図10は、本実施形態において処理装置5の処理実行部6によって実行される処理の一例を示す。
図10の処理は、被検体D等について検査を1回実行するたびに、実行される。
図10の処理を開始すると、撮影点算出部11は、被検体Dの形状データに基づいて、前述のようにして複数の撮影点Fを算出する(S101)。そして、経路算出部12は、算出した複数の撮影点Fの全てを通過し、かつ、複数の撮影点Fのそれぞれから次の移動先となる撮影点Fまでの移動コストcの総和を最小化する経路について、前述のようにして解析する(S102)。そして、経路算出部12は、移動コストcの総和を最小化する経路についての解析結果に対応する経路を、複数の撮影点Fの間で撮影部2を移動させる経路として算出する(S103)。
【0063】
そして、動作制御部15は、複数の撮影点F及び撮影部2を移動させる経路についての算出結果に基づいて、可動体3の動作を制御する(S104)。これにより、算出した経路に沿って撮影部2が移動するとともに、撮影点Fのそれぞれにおいて、撮影部2の姿勢等が調整される。また、画像処理部13等を含む処理実行部6は、撮影部2が算出した経路に沿って移動している状態において、複数の撮影点Fのそれぞれで、撮影部2によって被検体Dの表面を撮影させる(S104)。そして、画像処理部13は、複数の撮影点Fのそれぞれで撮影された画像を画像処理する(S105)。そして、画像処理部13は、撮影点Fのそれぞれで撮影された画像等に基づいて、被検体Dの表面の欠陥等について、前述のようにして判定する(S106)。
【0064】
ある一例では、S104~S106の処理は、1つの撮影点Fでの撮影の度に、繰返し実行される。また、別のある一例では、全ての撮影点Fで撮影が行われた後、S105の画像処理、及び、S106の判定処理が実行される。
【0065】
前述のように本実施形態では、複数の撮影点の全てを通過し、かつ、複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストcの総和を最小化する経路について、解析が実行される。そして、経路についての解析結果に対応する経路が、複数の撮影点の間で撮影部2を移動させる経路として算出される。このため、複数の撮影点で撮影された画像に基づいて被検体Dの表面の欠陥等を検査する検査では、前述のように算出された経路に沿って撮影部2を移動させることにより、被検体Dの表面において検査対象となる範囲を迅速に検査可能になる。
【0066】
また、前述のように撮影部2を移動させる経路が算出されるため、検査において、撮影部2の移動についての指令を作業者等がユーザインタフェース8等で入力する必要がない。また、本実施形態では、複数の撮影点のそれぞれについて、被検体Dを撮影する方向が算出される。そして、複数の撮影点のそれぞれについて、被検体Dを撮影する方向に基づいて、撮影部2の姿勢が算出される。被検体Dの検査では、撮影点のそれぞれにおいて、算出された姿勢に撮影部2が調整された状態で、被検体Dの表面が撮影される。したがって、被検体Dの表面が平面状の場合に加えて被検体Dの表面が曲面状の場合も、撮影点のそれぞれで適切に撮影が行われ、適切に検査が行われる。
【0067】
また、複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストcは、撮影部2の位置、撮影部2の姿勢、撮影部2への可動体3の接続部分の位置、撮影部2への可動体3の接続部分の姿勢、及び、可動体の制御量のいずれか1つ以上の変化に基づいて、算出される。このため、移動コストcの総和に基づいて撮影部2を移動させる経路が算出されることにより、撮影部2の移動経路は、複数の撮影点の間での撮影部2の移動時間に加えて、複数の撮影点のそれぞれでの撮影部2の姿勢の調整時間も考慮して、算出される。したがって、検査において、算出された経路に沿って撮影部2を移動させることにより、撮影点の間での撮影部2の移動時間を短縮可能となるとともに、撮影点のそれぞれでの撮影部2の姿勢の調整時間も短縮可能となる。
【0068】
また、移動コストcの総和を最小化する経路について前述の解析では、複数の撮影点を1つずつ順次に通過し、かつ、複数の撮影点のそれぞれを1回のみ通過することが、制約条件となる。このため、1つの撮影点を複数回通過する経路等が撮影部2の移動経路として算出されることが、有効に防止され、撮影部2を移動させる経路として適切な経路が算出される。
【0069】
また、本実施形態では、撮影部2を移動させる経路として、複数の撮影点の全てを通過し、かつ、移動コストcの総和を最小化する経路についての前述の最適化問題の最適解、局所最適解及び近似解のいずれかが、算出される。したがって、最適化問題の解析(移動経路の算出)に必要な処理時間の間に最適解が導出できない場合でも、最適化問題の局所最適解又は近似解が、撮影部2を移動させる経路として算出される。したがって、検査する検査時間を適切に短縮させる撮影部2の移動経路が、演算処理に要する時間を増大させることなく、算出される。
【0070】
(変形例)
ある変形例では、前述のようにして算出した経路に沿って複数の撮影点の間で撮影部2が移動している状態において、画像処理部13は、ユーザインタフェース8の表示画面30に、
図11の一例に示す画像を表示させる。画像処理部13は、
図11に示す画像を表示画面30に表示させることにより、算出した経路に沿って複数の撮影点の間で撮影部2が移動している状態を、表示画面30において再現する。
【0071】
本変形例では、表示画面30の表示領域ε1において、撮影部2のリアルタイムの位置及び姿勢を再現した画像が表示される。また、表示領域ε1では、可動体3のリアルタイムの状態が再現され、撮影部2への可動体3の接続部分のリアルタイムの位置及び姿勢等が、再現される。また、表示領域ε1では、被検体Dのリアルタイムの状態が再現される。
図11の一例では、表示領域ε1に示される被検体Dにおいて、形状データの点群を構成する多数の点Pが示される。また、表示領域ε1に示される被検体Dでは、被検体Dの表面は、前述した多数の三角形Tに分割される。
【0072】
また、本変形例では、表示画面30の表示領域ε2において、撮影部2がリアルタイムで撮影している画像が表示される。すなわち、表示領域ε2には、被検体Dの表面においてリアルタイムで撮影されている部分の画像が、表示される。
図11の一例では、表示領域ε2に示される画像おいて、形状データの点群を構成する多数の点Pが被検体Dの表面に示される。また、表示領域ε2に示される画像では、被検体Dの表面は、前述した多数の三角形Tに分割される。
【0073】
また、本変形例では、表示画面30の表示領域ε3において、被検体Dの表面においてリアルタイムで撮影されている範囲の法線ベクトルに関する情報を示す画像が表示される。リアルタイムで撮影されている範囲の法線ベクトルに関する情報は、リアルタイムで撮影されている撮影画像、及び、形状データに基づいて算出される。表示領域ε3に示される画像では、リアルタイムで撮影されている範囲の複数の箇所のそれぞれについて、被検体Dの表面に対する法線ベクトルNが示される。また、
図11の一例では、表示領域ε3に示される画像おいて、形状データの点群を構成する多数の点Pが被検体Dの表面に示される。そして、表示領域ε3に示される画像では、被検体Dの表面は、前述した多数の三角形Tに分割される。
【0074】
本変形例でも前述の実施形態等と同様に、被検体Dの表面において検査対象となる範囲を迅速に検査可能にする経路が、撮影部2を移動させる経路として適切に算出される。また、本変形例では、表示画面30に表示される画像によって、算出した経路に沿って複数の撮影点の間で撮影部2が移動している状態が、適切に再現される。
【0075】
また、前述の実施形態等では、可動体3を動作させることにより、撮影部2の位置及び姿勢が変化するが、ある変形例では、経路算出部12で算出された経路に撮影部2の被検体Dに対する位置が対応する状態に、撮影部2に対して被検体Dを移動させてもよい。この場合、可動体3を動作させることにより、撮影部2の姿勢が変化する。また、算出された経路に撮影部2の被検体Dに対する位置が対応する状態に被検体Dを移動させながら、複数のそれぞれの撮影点で撮影部2は被検体を撮影する。また、ある変形例は、経路算出部12で算出された経路に撮影部2の被検体Dに対する位置が対応する状態に、撮影部2及び被検体Dの両方を移動させてもよい。
【0076】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、算出した複数の撮影点の全てを通過し、かつ、複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、複数の撮影点の間で撮影部を移動させる経路として算出する。これにより、被検体の表面において検査対象となる範囲を迅速に検査可能にする処理装置、検査システム、処理方法、及び、処理プログラムを提供することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
[1]撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理装置であって、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出し、
算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出する、
プロセッサを具備する、処理装置。
[2]前記撮影部は、可動体に接続されるとともに、可動体の動作に対応して位置及び姿勢が変化し、
前記プロセッサは、前記複数の撮影点のそれぞれから前記次の移動先となる前記撮影点までの移動コストを、前記撮影部の前記位置、前記撮影部の前記姿勢、前記撮影部への前記可動体の接続部分の位置、前記撮影部への前記可動体の前記接続部分の姿勢、及び、前記可動体の制御量のいずれか1つ以上の変化に基づいて算出する、
[1]の処理装置。
[3]前記プロセッサは、前記複数の撮影点を1つずつ順次に通過し、かつ、前記複数の撮影点のそれぞれを1回のみ通過することを制約条件として、前記移動コストの前記総和を最小化する前記経路について解析する、[1]又は[2]の処理装置。
[4]前記プロセッサは、前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ前記移動コストの前記総和を最小化する経路についての最適化問題の最適解、局所最適解及び近似解のいずれかを、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる前記経路として算出する、[1]乃至[3]のいずれか1つの処理装置。
[5]前記プロセッサは、前記複数の撮影点において前記撮影部が撮影した画像を画像処理することにより、前記被検体の前記表面の状態を判定する、[1]乃至[4]のいずれか1つの処理装置。
[6]前記プロセッサは、前記被検体の前記表面に存在すると判定した欠陥を示す画像、及び、前記欠陥についての判定結果を前記形状データに反映させた画像のいずれかを表示させる、[5]の処理装置。
[7]前記プロセッサは、算出した前記経路に沿って前記複数の撮影点の間で前記撮影部が移動している状態において、前記撮影部のリアルタイムの位置及び姿勢を再現した画像、前記撮影部がリアルタイムで撮影している画像、及び、前記被検体の前記表面においてリアルタイムで撮影されている範囲の前記法線ベクトルに関する情報を示す画像のいずれかを表示させる、[1]乃至[6]のいずれか1つの処理装置。
[8][1]乃至[7]のいずれか1つの処理装置と、
結像光学系を備え、前記結像光学系を用いて前記被検体を結像することにより、前記被検体を撮影する前記撮影部と、
前記撮影部に接続され、動作することにより、前記撮影部の位置及び姿勢を変化させ、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動可能にする可動体と、
を具備する、前記被検体の検査システム。
[9]前記撮影部は、前記被検体の前記表面に対する前記結像光学系の光軸の角度が所定の角度範囲になる姿勢で、前記複数の撮影点のそれぞれにおいて前記被検体を撮影する、[8]の検査システム。
[10]前記撮影部は、
前記結像光学系の結像面を形成し、前記結像光学系を通して入射された光を撮像する撮像素子と、
所定の波長範囲の光を透過させる波長選択領域を備えるとともに、前記結像光学系を通して前記撮像素子に入射される光の光路上に配置され、前記波長選択領域を透過した前記所定の波長範囲の光を前記撮像素子に入射させるカラーフィルタと、
を備える、[8]又は[9]の検査システム。
[11]撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理方法であって、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出することと、
算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析し、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出することと、
を具備する、処理方法。
[12]撮影部を用いた被検体の検査に関連する処理プログラムであって、コンピュータに、
前記被検体の表面の形状が点群によって示され、かつ前記被検体の前記表面における位置及び法線ベクトルに関する情報が前記点群を用いて規定される形状データに基づいて、前記撮影部によって前記被検体を撮影する位置として複数の撮影点を算出させ、
算出した前記複数の撮影点の全てを通過し、かつ前記複数の撮影点のそれぞれから次の移動先となる撮影点までの移動コストの総和を最小化する経路について解析させ、解析結果に対応する経路を、前記複数の撮影点の間で前記撮影部を移動させる経路として算出させる、
処理プログラム。
【符号の説明】
【0078】
1…検査システム、2…撮影部(撮影装置)、3…可動体、5…処理装置、6…処理実行部、7…データ記憶部、8…ユーザインタフェース、11…撮影点算出部、12…経路算出部、13…画像処理部、15…動作制御部、21…結像光学系、22…撮像素子、27…カラーフィルタ、D…被検体、U1~U3…波長選択領域。