(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240610BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240610BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240610BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20240610BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240610BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240610BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/894
A61K8/895
A61K8/39
A61Q1/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021208549
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0182168
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521560665
【氏名又は名称】コスメッカ コリア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ホン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ダ ソル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ フン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヨン ソン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン デ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156808(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139092(WO,A1)
【文献】特開2003-095847(JP,A)
【文献】特開2019-156824(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177140(WO,A1)
【文献】特開2020-114848(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104696(WO,A1)
【文献】特開2020-075881(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095757(WO,A1)
【文献】特開2011-213677(JP,A)
【文献】特開2017-119698(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003973(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/153706(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/081532(WO,A1)
【文献】特表2013-522226(JP,A)
【文献】特表2013-522227(JP,A)
【文献】国際公開第2010/146616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物であって,
前記固形状化粧料組成物は,油ゲル化剤を含み,
前記油ゲル化剤は,ジブチルラウロイルグルタミドを溶質とすると共に,化粧料組成物総重量の0.5重量%~1.7重量%含有され,
前記油ゲル化剤は,脂肪族アルコールであるオクチルドデカノールを溶媒として構成され,
前記油ゲル化剤の溶媒は,前記溶質の含有量に対して5倍~9倍の含有量で含有され,
前記溶質は,前記溶媒に溶解され,
前記固形状化粧料組成物は,油中水型であると共に,乳化剤を含み,
前記乳化剤は,前記化粧料組成物総重量の0.2重量%~0.8重量%のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンと前記化粧料組成物総重量の0.2重量%~0.4重量%のPEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーからなるもの,前記化粧料組成物総重量の0.2重量%~0.8重量%のポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなるもの,前記化粧料組成物総重量の0.4重量%~0.8重量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3と前記化粧料組成物総重量の0.1重量%~0.2重量%のジイソステアリン酸ポリグリセリル-3からなるもののうち,いずれか1つであることを特徴とする高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物。
【請求項2】
油溶性成分をさらに含み,
前記油溶性成分は,脂肪,ワックス,炭化水素,天然油,エステル,シリコン,有機紫外線吸収剤,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載の高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物。
【請求項3】
前記油溶性成分は,化粧料組成物の総重量に対して20%~60%含まれることを特徴とする請求項2記載の高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物及びその製造方法に係り,より詳細には,高温でも内容物の構造が維持されて高温安定性の確保が可能であるうえ,化粧料の使用感が重くなくて軽く,するすると伸びが良い,高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美しさを追求する女性の本能は昨日今日のことではないが,最近になって自分をよりきれいに見せるための体型管理や美容又は化粧品への関心がさらに高まる傾向にある。
【0003】
女性だけでなく男性も皮膚管理のために化粧品に関心を置くにつれて,化粧品市場は拡大しつつあり,様々な種類の化粧品が市場に発売されている。
【0004】
一般的に,化粧品は,基礎化粧品とメーキャップ化粧品に大別され,固形,液状又はゲル状の化粧料で製造され,これらを保管する化粧品容器も,多様に適用されている。
【0005】
最近では,保湿や美白,シワ改善,紫外線カット,ニキビ緩和,アトピー緩和,抗炎症,角質溶解などの多様な機能を行うことが可能な機能性化粧品も広く消費されている。
【0006】
一方,様々な化粧品の中でも,固形状化粧品は,容器に応じた成形が必要な製品である。特に,固形状のメーキャップ及び紫外線カット製品の容器の種類としては,通常,バーム(balm)タイプとスティックタイプがある。このような容器のタイプに合わせて化粧料を収容するためには,化粧料の適切な硬度形成が必要である。
【0007】
一般的な固形状のバームタイプの製品は,露出した固形状の内容物を消費者が手又はパフでペイオフ(取り出し)して使用する。そのため,固形状のバームタイプの製品は,消費者がペイオフして使用することができる程度に内容物の硬度形成がなされなければならない。内容物の硬度があまりにも低ければ,崩れてしまい,内容物の硬度があまりにも高ければ,ペイオフができなくて製品を塗ることができない。
【0008】
特に,グラインディングパクト容器は,容器の回転切削刃で内容物を削って吐出させるように構成されている。一般のパクト容器とは異なり,内容物に物理的な外力が加わるので,高温での熱ストレスだけでなく,物理的なストレスにも耐えなければならない。
【0009】
一般的な固形状の化粧品は,油相成分を分散させた状態である油分散剤形や油中水型剤形が大部分であり,これらの剤形の硬度形成のために油相の構造化剤を使用する。
【0010】
前記油相(oily phase)の構造化剤は,極性ワックス(polar wax),例えば,酸素,窒素,シリコン又はリン(phosphorus)などの1種以上の異種元素を含むワックス,炭化水素非極性ワックス,例えば,炭素原子と水素原子のみを含み,酸素,窒素,シリコン又はリンなどの異種元素を含まないワックス,シリコン非極性ワックス,例えば,シリコン異種原子を含むワックスなどが使用され,シリコンポリマーも適用され得る。
【0011】
固形状化粧品は,約50℃程度の高温でも構造が崩れてはならず,発汗現象がなければ安定な製品であるといえる。製品の高温安定性を高めるためには,構造化剤の含有量を高めたり融点の高い構造化剤の割合を高めたりすればよいが,このような方法は,化粧料がワックス状になり,伸びが良くなく,重い使用感を形成するという問題点がある。
【0012】
昨今,消費者が好む使用感は,薄くて柔らかくしっとりと伸び,滑々した仕上がり感である。特に,COVID-19によりマスク着用がニューノーマルな時代が来て,厚い化粧ではなく自然な化粧がトレンドになっているからである。
【0013】
したがって,このような要求に応えて,高温でも内容物の構造が維持されて高温安定性の確保が可能であるうえ,化粧料の使用感が重くなくて軽く,するすると伸びが良い,高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物の必要性が台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の実施形態は,化粧料の融点を高くして約50℃程度の高温でも内容物の構造を維持し,高温安定性を確保しようとする。
【0015】
また,高温での熱ストレスだけでなく,外力による物理的なストレスにも耐えることができる化粧料を提供しようとする。
【0016】
また,グラインディング容器に適用される場合でも,高温下で回転切削刃によって正常に掻き取られて吐出できる化粧料を提供しようとする。
【0017】
また,硬度を上げながらも使用感が重くなくて軽く,するすると伸びが良い化粧料を提供しようとする。
【0018】
また,薄くて柔らかい使用感を提供することにより,最新メイクのトレンドである自然な肌表現を実現しようとする。
【0019】
また,ワックス系のみで構成された従来の構造化剤の代わりに,少量でも硬度形成を可能にすることにより,化粧料の組成設計の自由度を高めようとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば,油ゲル化剤を含む,高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物が提供できる。
【0021】
前記油ゲル化剤は,ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド,ジブチルラウロイルグルタミド,パルミチン酸デキストリン,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0022】
前記油ゲル化剤がジブチルエチルヘキサノイルグルタミドである場合,前記ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.5重量%~1.7重量%含有できる。
【0023】
前記油ゲル化剤がジブチルラウロイルグルタミドである場合,前記ジブチルラウロイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.5重量%~1.7重量%含有できる。
【0024】
前記油ゲル化剤がジブチルエチルヘキサノイルグルタミドとジブチルラウロイルグルタミドとの混合物である場合,前記ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.25重量%~0.85重量%含有され,前記ジブチルラウロイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.25重量%~0.85重量%含有され得る。
【0025】
前記油ゲル化剤は,脂肪族アルコールであるオクチルドデカノールを溶媒として構成できる。
【0026】
前記油ゲル化剤の溶媒は,溶質の含有量に対して5倍~9倍の含有量で含有され,110℃~120℃の温度下で溶解させるように構成できる。
【0027】
本発明に係る高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物は,油溶性成分をさらに含み,前記油溶性成分は,脂肪,ワックス,炭化水素,天然油,エステル,シリコン,有機紫外線吸収剤及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0028】
前記油溶性成分は,化粧料組成物の総重量に対して20%~60%含有できる。
【0029】
前記固形状化粧料組成物が油中水型である場合に含まれる乳化剤は,セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン,PEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー,ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン,ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3,ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0030】
0.2重量%~0.8重量%のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン及び0.2重量%~0.4重量%のPEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーが含まれることができる。
【0031】
0.2重量%~0.4重量%のポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン0.2重量%~0.8重量%が含まれることができる。
【0032】
0.4重量%~0.8重量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3及び0.1重量%~0.2重量%のジイソステアリン酸ポリグリセリル-3が含まれることができる。
【0033】
本発明の他の態様によれば,高温安定性と使用感が向上した油中水型固形状化粧料組成物の製造方法において,油相成分である油ゲル化剤,脂肪族アルコール,エステル油及び色素ベースをミキサーを用いて900rpm~1100rpmにて一定時間混合するステップと,前記ステップで混合された混合物をホモミキサーを用いて75℃~80℃の温度で1400rpm~1600rpmにて一定時間混合しながら,水溶性成分を投入してエマルジョンを作るステップと,前記エマルジョンに,顔料を含むパウダー成分と添加物を投入して,1400rpm~1600rpmで一定時間混合するステップと,を含む,高温安定性と使用感が向上した油中水型固形状化粧料組成物の製造方法が提供できる。
【0034】
前記エマルジョンを作るステップで使用される乳化剤は,セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン,PEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー,ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン,ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3,ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0035】
本発明の別の態様によれば,高温安定性と使用感が向上した油分散固形状化粧料組成物の製造方法において,油相成分である油ゲル化剤,脂肪族アルコール,エステル油及び色素ベースをミキサーを用いて900rpm~1100rpmで一定時間混合するステップと,前記ステップで混合された混合物をホモミキサーを用いて75℃~80℃の温度で1400rpm~1600rpmにて一定時間混合するステップと,顔料及びパウダー成分と添加物を投入して1400rpm~1600rpmで一定時間混合するステップと,を含む,高温安定性と使用感が向上した油分散固形状化粧料組成物の製造方法が提供できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の実施形態は,化粧料の融点を高くして約50℃程度の高温でも内容物の構造を維持し,高温安定性を確保することができる。
【0037】
また,高温での熱ストレスだけでなく,外力による物理的なストレスにも耐えられる化粧料を提供することができる。
【0038】
また,グラインディング容器に適用される場合でも,高温下で回転切削刃によって正常に掻き取られて吐出できる化粧料を提供することができる。
【0039】
また,硬度を上げながらも使用感が重くなく軽く,するすると伸びが良い化粧料を提供することができる。
【0040】
また,薄くて柔らかい使用感を提供することにより,最新メイクのトレンドである自然な肌表現を実現することができる。
【0041】
また,ワックス系のみで構成された従来の構造化剤の代わりに,少量でも硬度形成を可能とすることにより,化粧料の組成設計の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下,添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。しかしながら,本発明は,ここで説明される実施形態に限定されず,他の形態で具体化されてもよい。むしろ,ここで紹介される実施形態は,開示された内容が徹底的で完全になることができるように,かつ当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。明細書全体にわたって,同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0043】
本発明の一実施形態による高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物は,油ゲル化剤(oily gelling agent)を含んで構成できる。
【0044】
前記油ゲル化剤は,ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド,ジブチルラウロイルグルタミド,パルミチン酸デキストリン,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0045】
前記油ゲル化剤がジブチルエチルヘキサノイルグルタミドである場合,前記ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.5重量%~1.7重量%含有できる。
【0046】
前記油ゲル化剤がジブチルラウロイルグルタミドである場合,前記ジブチルラウロイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.5重量%~1.7重量%含有できる。
【0047】
前記油ゲル化剤がジブチルエチルヘキサノイルグルタミドとジブチルラウロイルグルタミドとの混合物である場合,前記ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.25重量%~0.85重量%含有され,前記ジブチルラウロイルグルタミドは,化粧料組成物の総重量の0.25重量%~0.85重量%含有され得る。
【0048】
前記油ゲル化剤は,脂肪族アルコールであるオクチルドデカノールを溶媒として構成できる。
【0049】
前記油ゲル化剤の溶媒は,溶質の含有量に対して5倍~9倍の含有量で含有され,110℃~120℃の温度下で溶解させるように構成できる。
【0050】
本発明に係る高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物は,油溶性成分をさらに含み,前記油溶性成分は,脂肪,ワックス,炭化水素,天然油,エステル,シリコン,有機紫外線吸収剤,及びこれらの混合物よりなる群から選択された少なくとも1種からなることができる。
【0051】
前記油溶性成分は,化粧料組成物の総重量に対して20%~60%含有できる。
このような高温安定性と使用感が向上した固形状化粧料組成物は,以下の方法で製造できる。
【0052】
まず,固形状化粧料が油中水型である場合には,次のステップを経る。
-油相成分である油ゲル化剤,脂肪族アルコール,エステル油,色素ベースなどを高温でミキサーを用いて900rpm~1100rpmにて一定時間混合する。
-上記のステップで混合された混合物をホモミキサーを用いて75℃~80℃の高温で1400rpm~1600rpmにて一定時間混合しながら,水溶性成分を投入してエマルジョンを形成する。
-前記油中水型エマルジョンに,顔料を含むパウダー成分と添加物を投入して,1400rpm~1600rpmで一定時間混合する。
【0053】
特に油中水型中のウォータードロップの場合,乳化剤成分の1種又は2種以下を低含有量で使用する。
【0054】
前記乳化剤としては,PEG系乳化剤,ポリグリセリル系乳化剤がある。この中でも,PEG系乳化剤としては,セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン,PEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーがある。ポリグリセリル系乳化剤としては,ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン,ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3,ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3がある。
【0055】
固形状化粧料が油分散である場合には,次のステップを経る。
-油ゲル化剤,脂肪族アルコール,エステル油,色素ベースなどを高温でミキサーを用いて900rpm~1100rpmにて一定時間混合する。
-上記のステップで混合された混合物をホモミキサーを用いて75℃~80℃の高温で1400rpm~1600rpmにて一定時間混合する。
-顔料及びパウダー成分と添加物を投入し,1400rpm~1600rpmで一定時間混合する。
【0056】
下記表1及び表2は,サイクル(cycle)テスト条件と,硬度を測定するための基準及び方法について示すものである。
【0057】
【0058】
【0059】
[実施例1,2及び3と比較例1]
下記表3に記載された組成に従って,実施例1,2及び3と比較例1の油ゲル化剤混合物を製造した。混合物は,溶質と溶媒の比率を1:9にして高温(90℃~140℃)で溶解して製造した。
【0060】
【0061】
実施例1,2及び3と比較例1の脂肪族アルコールに溶解した油ゲル化剤の種類による製造直後の溶解温度,混合物の融点及び硬度を確認し,その結果を下記表4に示した。
【0062】
【0063】
上記表4の結果より,油ゲル化剤の各種類別に溶解温度,混合物の融点及び硬度を確認することができる。混合物の融点が100℃以上である場合,製造時に精製水又は揮発成分を入れることができないため,工程が制限的であるしかない。よって,適正な製造が可能な高温工程の温度は85℃以下であり,このような条件を適用するとき,実施例3と比較例1の油ゲル化剤が適切である。実施例3と比較例1の硬度値を比較すると,実施例3がさらに高く硬度形成されたことを確認することができる。
【0064】
[実施例3と比較例2及び3]
下記表5に記載の溶媒に従って,実施例3と比較例2及び3の混合物を製造した。混合物は,溶質と溶媒の比率を1:9にして高温(100℃以上)で溶解して製造した。
【0065】
【0066】
実施例3の溶媒である脂肪族アルコールの他に,比較例2のエステル系オイル,比較例3のシリコン系オイルを溶媒として製造し,製造直後の混合物の融点及び硬度を確認した。その結果を下記表6に示した。
【0067】
【0068】
上記表6の結果より,比較例2は,硬度が高く形成されるものの,混合物の融点があまりに高く,比較例3は,溶解温度があまりに高いため溶媒が揮発するので,溶媒として適さなかった。よって,実施例3の溶媒である脂肪族アルコールが溶媒として適したことを確認することができる。
【0069】
[実施例4~9]
下記表7に記載の溶媒の含有量に従って実施例4~9の混合物を製造した。混合物は100℃以上で溶解して製造した。
【0070】
【0071】
実施例4~9は,処方に適用するのに最も適した油ゲル化剤と溶媒の比率を確認するためのものであり,溶媒の含有量別の混合物の融点を下記表8に示した。
【0072】
【0073】
上記表8の結果より,処方に活用するのに良い含有量比率は少ないほど良く,融点は製造工程と剤形の高温安定性を考慮して80℃~90℃の範囲であることが好ましい。このため,融点の適切な範囲内で含有量が最も少ない実施例7が,最も適した油ゲル化剤と溶媒との混合比率であることを確認することができる。
【0074】
[実施例10~14]
下記表9に記載の組成に従って,実施例10~14の油中水型化粧料を製造した。
【0075】
【0076】
実施例10~14のゲル化剤混合物の含有量による製造直後及び温度による経時変化を確認し,その結果を下記表10に示した。
【0077】
【0078】
上記表10の結果より,油中水型化粧料組成物における最適な油ゲル化剤混合物の含有量を確認するとともに,保管温度別の安定度及び吐出テストで実施例12及び実施例13が最適な含有量であることを確認することができる。また,実施例11よりもゲル化剤混合物の含有量が低くなると,高温で切削刃によって硬度が崩れ,実施例14のように実施例13よりもゲル化剤混合物の含有量が高くなると,油ゲル化剤混合物の融点が高くなって乳化が不安定になる。よって,ゲル化剤の適正含有量は,0.5重量%~1.7重量%であるといえる。
【0079】
[実施例15と比較例4及び5]
下記表11に記載の組成に従って,実施例15と比較例4及び5の油中水型ウォータードロップ化粧料を製造した。
【0080】
【0081】
実施例15と比較例4及び5のPEG系の乳化剤によるウォータードロップの製造直後及び温度による経時変化を確認し,その結果を下記表12に示した。
【0082】
【0083】
上記表12の結果より,ウォータードロップ剤形におけるPEG系乳化剤の適正含有量を確認した。比較例4は,乳化剤の含有量が少なくて撥水は良好であるものの,乳化状態が不安定であり,比較例5は,乳化剤の含有量が増加しながら乳化粒子のサイズが小さくなって撥水効果が減少した。よって,PEG系乳化剤の適正含有量は,セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン0.2重量%~0.8重量%,PEG-10ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー0.2重量%~0.4重量%であるといえる。
【0084】
[実施例16及び17と比較例6~9]
下記表13に記載の組成に従って,実施例16及び17と比較例6~9の油中水型ウォータードロップ化粧料を製造した。
【0085】
【0086】
実施例16及び17と比較例6~9のポリグリセリル系乳化剤の種類及び含有量による製造直後及び温度による経時変化を確認し,その結果を下記表14に示した。
【0087】
【0088】
上記表14の結果より,ウォータードロップ剤形におけるポリグリセリル系乳化剤の適正含有量を確認した。比較例6及び8は,乳化剤の含有量が少ないため撥水は良好であるものの,乳化状態が不安定であり,比較例7及び9は,乳化剤の含有量が増加しながら乳化粒子のサイズが小さくなって撥水効果が減少した。したがって,ポリグリセリル系乳化剤の適正含有量は,0.2重量%~0.8重量%のポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン又は0.4重量%~0.8重量%のポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3と0.1重量%~0.2重量%のジイソステアリン酸ポリグリセリル-3であるといえる。
【0089】
[実施例18~22]
下記表15に記載の組成に従って実施例18~22の油分散化粧料を製造した。
【0090】
【0091】
実施例18~22のゲル化剤混合物の含有量による製造直後及び温度による経時変化を確認し,その結果を下記表16に示した。
【0092】
【0093】
上記表16の結果より,油分散化粧料組成物における最適な油ゲル化剤混合物の含有量を確認し,保管温度別の安定度及び吐出テストで実施例19と実施例20が最適な含有量であることを確認することができる。
【0094】
これまで説明した本発明の実施形態による高温安定性及び使用感が向上した固形状化粧料組成物及びその製造方法によれば,化粧料の融点を高くして約50℃程度の高温でも内容物の構造を維持し,高温安定性を確保することができ,高温での熱ストレスだけでなく,外力による物理的なストレスにも耐えられる化粧料を提供することができる。
【0095】
また,グラインディング容器に適用される場合でも,高温下で回転切削刃によって正常に掻き取られて吐き出されることができ,硬度を上げながらも使用感が重くなく軽く,するすると伸びが良い化粧料を提供することができる。
【0096】
また,薄くて柔らかい使用感を提供することにより,最新メイクのトレンドである自然な肌表現を実現することができ,ワックス系のみで構成された従来の構造化剤の代わりに,少量でも硬度形成を可能にすることにより,化粧料の組成設計の自由度を高めることができる。
【0097】
以上,本発明の一実施形態を参照して説明したが,当該技術分野における当業者は,下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱することなく,本発明を種々に修正及び変更実施することができる。よって,変形実施が基本的に本発明の特許請求の範囲の構成要素を基本的に含む場合であれば,いずれも本発明の技術的範囲に含まれると見なすべきである。