(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】配向非依存性コマ補償液体レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 3/12 20060101AFI20240610BHJP
G02C 7/08 20060101ALI20240610BHJP
G02B 15/00 20060101ALI20240610BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240610BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240610BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240610BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G02B3/12
G02C7/08
G02B15/00
G02B7/04 Z
G02B7/28 Z
G02B7/02 F
G02B26/08 H
(21)【出願番号】P 2021509920
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2019072524
(87)【国際公開番号】W WO2020039047
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515100639
【氏名又は名称】オプトチューン スウィツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】ニーデラー,デイヴィッド アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】スモルカ,ステファン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/181419(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/176898(WO,A1)
【文献】特表2007-518132(JP,A)
【文献】特表2007-538338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0195882(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007004080(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0168603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/12
G02C 7/08
G02B 15/00
G02B 7/04
G02B 7/28
G02B 7/02
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第1の質量密度(ρ
1)及び第1の屈折率(n
1)を備える第1の透明な液体(L1)で充填される第1のチャンバー(C1)、
- 第2の質量密度(ρ
2)及び第2の屈折率(n
2)を備える第2の透明な液体(L2)で充填される第2のチャンバー(C2)
、
- 前記2つのチャンバー(C1、C2)を互いに分離し、かつ第1の液体(L1)及び第2の液体(L2)に接触する透明かつ弾性変形可能な第1の膜(12)であって、
前記第1の質量密度(ρ
1)は、前記第2の質量密度(ρ
2)よりも大きく、かつ前記第1の屈折率(n
1)は、前記第2の屈折率(n
2)よりも小さい、又は、前記第1の質量密度(ρ
1)は、前記第2の質量密度(ρ
2)よりも小さく、かつ前記第1の屈折率(n
1)は、前記第2の屈折率(n
2)よりも大きい、前記第1の膜(12)
、
- 第2の透明かつ弾性変形可能な第2の膜(22)であって、周囲の空気から第2のチャンバー(C2)を区切る役割を果た
し、調整可能な曲率を有する、前記第2の膜(22)
、
- 円周方向の第1の側壁(10)であって、第1の側面(10a)及び第2の側面(10b)を備え、前記第2の側面(10b)は第1の側面(10a)から離れた方向を向く、前記第1の側壁(10)、及び
- 第1の透明かつ硬質のカバー要素(11)であって、前記第1の側壁(10)の前記第1の側面(10a)に接続され、かつ前記第1の膜(12)は前記第1のチャンバー(C1)を包囲するために前記第1の側壁(10)の前記第2の側面(10b)に接続される、前記第1のカバー要素(11)
を備える、レンズ(1)。
【請求項2】
前記レンズ(1)の光軸(A)が水平位置にある場合、前記第1の膜(12)は、前記第1の液体(L1)に面している表面(120)に、少なくとも凸部(12d)と、少なくとも凹部(12e)とを形成することを特徴とする、請求項1に記載のレンズ(1)。
【請求項3】
前記第1の膜の剛性s
1、及び前記第2の膜の剛性s
2は、次式:
【数1】
によって与えられる、請求項1~
2のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項4】
前記レンズ(1)は、円周方向の第1の側壁(10)を備え、前記第1の側壁(10)は、第1の側面(10a)及び第2の側面(10b)を備え、前記第2の側面(10b)は、前記第1の側面(10a)から離れる方向を向き、かつ前記レンズ(1)は、第1の透明なカバー要素(11)を備え、前記第1のカバー要素(11)は、前記第1の側壁(10)の第1の側面(10a)に接続され、かつ前記第1の膜(12)は、前記第1のチャンバー(C1)を形成するために、前記第1の側壁(10)の前記第2の側面(10b)に接続され、及び/又は前記レンズ(1)は、前記第1の側壁(10)に接続される第2の側壁(20)を備え、前記第2の側壁(20)は、第1の側面(20a)及び第2の側面(20b)を備え、前記第2の側壁(20)の前記第2の側面(20b)は、前記第2の側壁(20)の第1の側面(20a)から離れる方向を向き、かつ前記第2の側壁(20)の第1の側面(20a)は、前記第1の膜(12)に接続され、かつ前記第2の側壁(20)の第2の側面(20b)は、前記第2のチャンバー(C2)を形成するために、前記第2の膜(22)に接続されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項5】
前記第1の側壁(10)の前記第2の側面(10b)の円周方向の縁(31a)、及び/又は前記第2の側壁(20)の前記第1の側面(20a)の円周方向の縁(31b)は、前記第1の膜(12)の部分(12a)を規定する第1のレンズ成形器を形成し、前記第1の膜(12)の前記部分(12a)は、調整可能な曲率を備え、かつ前記第2の側壁(20)の第2の側面(20b)の円周方向の縁(31c)は、前記第2の膜(22)の部分(22a)を規定する第2のレンズ成形器を形成し、前記第2の膜(22)の前記部分(22a)は、調整可能な曲率を備えることを特徴とする、請求項
4に記載のレンズ(1)。
【請求項6】
前記レンズ(1)は、前記第1の膜(12)に接続される第1のレンズ成形器(30a)及び前記第2の膜(22)に接続される第2のレンズ成形器(30b)を備え、前記第1及び第2のレンズ成形器(30a、30b)は、前記第2のチャンバー(C2)内の前記第2の液体(L2)に浸漬され、かつ前記第1のレンズ成形器(30a)は、前記第1の膜(12)の部分(12a)を規定する円周方向の内縁(31a)を備え、前記第1の膜(12)の前記部分(12a)は、調整可能な曲率を備え、かつ前記第2のレンズ成形器(30b)は、前記第2の膜(22)の部分(22a)を規定する円周方向の内縁(31b)を備え、前記第2の膜(22)の前記部分(22a)は、調整可能な曲率を備えることを特徴とする、請求項
4に記載のレンズ(1)。
【請求項7】
前記第1の側壁(10)は、
弾性的に変形可能であることを特徴とする、請求項
4、又は請求項
4を参照する場合の請求項
5又は
6のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項8】
前記レンズ(1)は、円周方向の
縁(31)を備えるレンズ成形器(30)を備え、前記レンズ成形器(30)の円周方向の縁(31)が前記第2の膜(22)の部分(22a)、並びに前記第1の膜(12)の部分(12a)を規定するように、前記レンズ成形器は、前記第2の膜(22)の円周方向の境界領域(22c)に接続され、かつ前記第2の膜(22)の前記境界領域(22c)は、前記第1の膜(12)の円周方向の境界領域(12c)に接続され、それぞれの前記部分(12a、22a)は、調整可能な曲率を備え、かつ2つの前記膜(12、22)は、前記第2のチャンバー(C2)を包囲することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項9】
前記第1の膜(12)及び前記第2の膜(22)が第2のチャンバー(C2)を形成するように、前記第1の膜(12)は、前記第1の側壁(10)の第2の側面(10b)に接続される円周方向の境界領域(12c)を備え、かつ前記第2の膜(22)は、前記第1の膜(12)の境界領域(12c)に接続される円周方向の境界領域(22c)を備えることを特徴とする、請求項
6に記載のレンズ(1)。
【請求項10】
前記第1の側壁(10)は、レンズ成形器を形成し、前記第1の側壁(10)の前記第2の側面(10b)の円周方向の、
縁(31)は、前記第1の膜(12)の部分(12a)、並びに前記第2の膜(22)の部分(22a)を規定し、前記第1の膜(12)の前記部分(12a)は、調整可能な曲率を備え、かつ前記第2の膜(22)の前記部分(22a)は、調整可能な曲率を備えることを特徴とする、請求項
4~
8のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項11】
前記第1の膜(12)の剛性、前記第2の膜(22)の剛性、
前記質量密度(ρ
1、ρ
2)及び前記屈折率(n
1、n
2)は、前記第1及び前記第2の膜(12、22)の重力誘発コマ収差が補償されるように適合されていることを特徴とする、請求項1~
10のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項12】
前記レンズ(1)は、アクロマートを形成し、
前記カバー要素(11)は、前記第1の膜(12)に対面する凹表面(11b)を備える平凹のカバー要素(11)であることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【請求項13】
前記レンズ(1)は、円周方向の第1の側壁(10)を備え、前記第1の側壁(10)は、第1の側面(10a)及び第2の側面(10b)を備え、前記第2の側面(10b)は、前記第1の側面(10a)から離れる方向を向き、かつ前記レンズ(1)は、第1の透明なカバー要素(11)を備え、前記第1のカバー要素(11)は、前記第1の側壁(10)の前記第1の側面(10a)に接続され、かつ前記第1の膜(12)は、前記第1のチャンバー(C1)を形成するために、前記第1の側壁(10)の前記第2の側面(10b)に接続され、かつ前記レンズ(1)は、第2の側壁(20)を備え、前記第2の側壁(20)は、第1の側面(20a)及び第2の側面(20b)を備え、前記第2の側壁(20)の前記第2の側面(20b)は、前記第2の側壁(20)の前記第1の側面(20a)から離れる方向を向き、かつ前記第2の側壁(20)の前記第1の側面(20a)は、前記第1の膜(12)に接続され、かつ前記第2の側壁(20)の前記第2の側面(20b)は、前記第2のチャンバー(C2)を形成するために、前記第2の膜(22)に接続されることを特徴とする、請求項1~
2のいずれか一項に記載のレンズ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体レンズに関する。
【0002】
特に、本発明の目的は、液体レンズの重力コマの問題を解決すること、すなわち、球面収差の低減、特に重力誘発波面収差の低減を提供することである。
【背景技術】
【0003】
重力誘発垂直コマ収差(本明細書では重力コマともいう)は、非回転対称の膜形状をもたらす静水圧差によって引き起こされる。言い換えれば、レンズ内の液体の重量により、レンズの下部での膜の変形が上部よりもいくらか高くなる。
【0004】
例えば、
図1に示すとおり、断面Aでは、断面Bよりも光路(レンズの厚み)がより小さい。容器から同じ距離にある異なる位置で生じる局所的な偏向/屈折力は、光学収差を誘発する液体レンズ全体で異なる。これまでのところ(例えば
図2を参照)、重力コマは、硬質の非調整可能なコマプレートで補正される。しかし、これは1つの固定された配向及び特定の膜の偏向に対してのみ機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、重力コマを低減するための、より特にいずれの重力誘発性収差を低減するための改良されたレンズを提供することである。
【0006】
「重力誘発収差」という用語は、特に、加速が不在の場合に適合される球形の、円筒形の、又は任意のゼルニケ項の組み合わせなどの膜形状からの膜形状の偏りによって引き起こされる加速依存の収差を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載のレンズによって解決される。本発明に従ったレンズの好ましい実施形態は、下位請求項に記載され、かつ以下において記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】液体レンズにおける重力コマの発生を説明するための液体レンズの図式的な断面図である。
【
図2】硬質の光学的要素を用いて重力誘発コマを補償する一般的な方法を示す。
【
図3】本発明に従うレンズの実施形態の図式的断面図を示し、レンズは、中立状態の2つの膜、及び第1のチャンバー内の第1の液体、及び第2のチャンバー内の第2の液体を封入するための硬質のカバー要素を備え、カバー要素に隣接する第1のチャンバーに第1の液体をポンプして出し入れすることによって焦点距離が調整される。
【
図4】
図3に記載のレンズを示し、ここでは、膜は、第1のチャンバーにポンプされる第1の液体に起因する偏向状態にある。
【
図5】
図3に示される実施形態の改変の図式的断面を示し、膜は偏向状態にある。
【
図6】
図3に示される実施形態の更なる改変の図式的断面を示し、膜は偏向状態にある。
【
図7】
図3に示される実施形態の更なる改変の図式的断面図を示し、ここでは、第2の液体は、レンズの外側の第2の膜に隣接して配置される第2のチャンバーにポンプして出し入れする。
【
図7A】
図3に示される実施形態の更なる改変の図式的断面図を示し、ここでは、第1のカバー要素11は、2つの曲面を有する。
【
図8】重力誘発コマ収差を示す液体レンズを形成するために、液体レンズの側壁に取り付けられているカバー要素の図式的断面図を示す。
【
図9】重力誘発コマ収差の補償を含むレンズを形成するために、
図8の側壁に取り付けられている改変されたカバー要素の図式的断面図を示す。
【
図10】
図3に示される実施形態の更なる改変の図式的断面図を示し、ここでは、レンズは、2つの対向する硬質のカバー要素を備える。
【
図11】本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示し、レンズは、2つの対向する硬質のカバー要素を備え、特に、組み合わされるレンズの重力誘発コマ収差の補償を提供するために、更なるレンズに取り付けられるように構成される独立した補正要素として機能するように構成される。
【
図12】2つの対向する硬質のカバー要素及び弾性変形可能な側壁を備える本発明に従うレンズの更なる実施形態(A)及び実施形態(B)の図式的断面図を示す。
【
図13】本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示し、レンズは、レンズの焦点距離を調整するための可動レンズ成形器を備える。
【
図13A】本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示し、レンズは、レンズの焦点距離を調整するための可動レンズ成形器及び作動膜を備える。
【
図14】レンズの焦点距離を調整するための可動レンズ成形器を備える、本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示す。
【
図15】浸漬レンズ成形器を備える本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示す。
【
図16】アクロマートとして構成される本発明に従うレンズの更なる実施形態の図式的断面図を示す。
【
図17】コマ補償なしの液体レンズの外膜上の重力誘発コマ収差に関するデータを示す。
【
図18】本発明による全体的なコマ補償の最適化を例示するデータを示す。
【
図19】40mmの開口レンズの重力誘発コマ収差の補償に関する実験データを示す。
【
図20】光学ズームの構成要素としての本発明に従う2つのレンズを示し、(A)は広角ズーム状態を示し、(B)は望遠ズーム状態を示す。
【
図21】本発明に従うレンズの更なる実施形態を示し、これは、コマ補償を含む凸レンズ又は凹レンズを形成するように調節することができるレンズの実装に対応し、(A)は、負の焦点距離を有するレンズの状態を示し、(B)は、正の焦点距離を有するレンズの状態を示す。
【
図22】異なるサイズの開口部分を有する膜を有する実施形態を示す。
【
図23】異なるサイズの開口部分を有する膜を有する実施形態を示す。
【
図24】レンズの開口部を制限するための開口要素を有する実施形態を示す。
【
図25】重力誘発コマを負う弾性膜、及び楕円膜を有する従来の焦点調整レンズについてのシミュレーション結果を示す。
【
図26】眼鏡の形態における本発明の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
請求項1によれば、レンズが開示され、前記レンズは以下を備える:
- 第1の質量密度(ρ1)及び第1の屈折率(n1)を備える第1の透明な液体(L1)で充填される第1のチャンバー(C1)、
- 第2の質量密度(ρ2)及び第2の屈折率(n2)を備える第2の透明な液体(L2)で充填される第2のチャンバー(C2)、及び
- 2つのチャンバー(C1、C2)を互いに分離し、第1の液体(L1)及び第2の液体(L2)に接触する、透明かつ弾性変形可能な第1の膜(12)であって、前記質量密度(ρ1、ρ2)及び前記屈折率(n1、n2)は、レンズ(1)の加速依存収差、特に重力誘発収差、特に重力誘発コマ収差が低減又は防止されるように選択される、前記第1の膜(12)。
【0010】
本発明の独立した実現において、本発明は、以下に開示されるとおり請求することができる:
レンズであって、以下を備える:
- 第1の質量密度及び第1の屈折率を備える第1の透明な液体で充填される第1のチャンバー、
- 第2の質量密度及び第2の屈折率を備える第2の透明な液体で充填される第2のチャンバー、及び
- 2つのチャンバーを互いに分離し、第1の液体及び第2の液体と接触する、透明かつ弾性的に変形可能な第1の膜であって、前記質量密度及び前記屈折率は、レンズの重力誘発コマ収差が低減又は防止されるように選択される、前記第1の膜。
【0011】
特に、一実施形態では、レンズの光軸が水平位置にある場合に、第1の膜は、レンズの前記重力誘発コマ収差を低減又は防止するように、第1の液体に対面する表面上に少なくとも凸部及び少なくとも凹部を形成する。
【0012】
さらに、本発明の一実施形態によれば、質量密度及び屈折率は、レンズの重力誘発コマ収差が、レンズの光軸の配向とは無関係に低減又は防止されるように選択される。
【0013】
本発明に従うレンズが重力誘発コマ収差を補償又は低減する一方で、前記レンズはさらに、焦点距離を調整するための弾性膜を有するレンズに内在する任意の重力誘発の表面の収差又は変化を黙示的に補償及び低減することに留意されたい。
【0014】
特に、本発明に従うレンズは、任意の外部、特に液体の加速を引き起こす時間変化する力によって誘発される膜表面収差を補償及び/又は低減するように暗黙的に構成される。
【0015】
したがって、例えば、本発明に従うレンズが眼鏡に備えられる場合には、例えば歩行時などの装着者の動き(すなわち加速)に起因する収差も同様に低減又は防止される。
【0016】
さらに、非円形の膜について、「コマ」という用語は、重力などの外力に起因して膜に誘発される収差として理解される必要があることに留意されたい。
【0017】
丸い膜の場合、コマだけでなく、傾きも本発明に従うレンズによって補償及び/又は低減される。
【0018】
本発明はまた、レンズに代えて光学素子にも適用することが可能である。このような光学素子は、請求項1の特徴を含むことが可能である。
【0019】
さらに、「重力誘発コマ」又は「重力誘発コマ収差」という用語は、下位請求項において、又は本明細書に記載される個々の実施形態において、例えば「加速依存性収差」と置き換えることが可能である。
【0020】
明示的に異なるように指定されない限り、本明細書全体を通して、本発明に従うレンズの任意の膜又は膜の調整可能な部分は、非円形の、丸くない形状を有することができることが明示的に言及されている。
【0021】
さらに、一実施形態によれば、第1の質量密度は第2の質量密度よりも小さく、かつ第1の屈折率は第2の屈折率よりも大きい。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、第1の質量密度は第2の質量密度よりも大きく、かつ第1の屈折率は第2の屈折率よりも小さい。
【0023】
さらに、一実施形態によれば、レンズは、第2の透明かつ弾性変形可能な膜を備え、第2の膜は第1の膜に対面している。
【0024】
さらに、第1のチャンバー内に第1の液体を保持するために、レンズは、実施形態に従って円周方向の第1の側壁を備える。さらに、前記第1の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備えることが可能であり、この第2の側面は第1の側面から離れた方向を向いている。さらに、一実施形態によれば、レンズは、第1の透明なカバー要素を備えることが可能であり、このカバー要素は、側壁に(すなわち、一体的に又は別個の要素として)接続されている。特に、第1の透明なカバー要素は、第1の側壁の第1の側面に接続することが可能であり、この第1の膜は、第1のチャンバーを包囲する第1の側壁の第2の側面に接続されている。しかしながら、カバー要素はまた、側壁と一体的に形成することができ、この第1の膜は、次いで側壁の側面部(上記第2の側面と称される)に接続される。
【0025】
特に、カバー要素は、第1の膜又は第2の膜とは対照的に、硬質のカバー要素である。
【0026】
さらに、一実施形態によれば、レンズは、第1の側壁に接続される第2の側壁を備え、第2の側壁は、第1の側面と第2の側面を備え、第2の側壁の第2の側面は、第2の側壁の第1の側面から離れる方向を向き、かつ第2の側壁の第1の側面は、第1の膜に接続され、かつ第2の側壁の第2の側面は、第2のチャンバーを包囲するように、特に第1の膜は、第1の側壁と第2の側壁との間、特にカバー要素と第2の膜との間に配置されるように、第2の膜に接続される。
【0027】
例えば、「接続される」という用語は、特に、例えば、第2の側壁への第1の側壁の機械的な連結のように、2つの部品の機械的な連結又は接合されるアセンブリを指す。機械的な連結は、特定の実施形態における第1の側壁及び第2の側壁のような、同心性に配置され、かつ等しい直径を有する、2つの部品、例えば2つの環形状の要素によって、対面する直接的な当接によってもたらされる。
【0028】
さらに、同じ文脈において、「接続される」という用語は、特に、特定の実施形態に従う第1及び第2の側壁などの、異なる直径の2つの環形状の要素の間の機械的連結又は接続を指す。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の特に環形状の壁などの第1の要素の外径は、第2の特に環状の側壁などの第2の要素の内径よりも大きく、又はその逆もある。
【0030】
さらに、「接続される」という用語に関してなお同じ文脈において、第1の側壁と第2の側壁との間、又はより全般的に第1の要素と第2の要素との間の機械的連結は、この第1の側壁と第2の側壁との間(又はより全般的に第1の要素と第2の要素との間)の機械的連結、すなわち接続を容易にする第3の構成要素を備え、かつ含む。この第3の構成要素は、例えば、1つ又は複数の:弾性クリップ;リング、例えばエラストマー材料のリング;糸を含むリング;1つ以上の弾性クリップ構成要素を備えるリング;膜材料及び/又は膜部分;接着材料;及びハンダ付け材料を含む。いくつかの実施形態では、膜材料は、第1の側壁と第2の側壁との間で圧縮される。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の側壁が第2の側壁の内径よりも小さい外径を有する場合、第3の構成要素は、例えば、第2の側壁の開口部と第1の側壁の対向する開口部とを包囲する円状バッフルとして、第1の環と第2の環との間の機械的接続を確立する膜又は膜部分である。
【0032】
例えば、この膜は、第1の側壁の開口部にシールを形成し、かつ第2の側壁の開口部にシールを形成する。
【0033】
例えば、第1の側壁と第2の側壁とを接続する膜の環状部分には、引っ張り応力、例えば半径方向の応力に供される。
【0034】
例えば、1つ又は複数のこの接続構成要素には、1つ又は複数の:弾性クリップ;ねじ山;低挿入力ソケット;ゼロ挿入力機構、例えばレバー、リベット、ねじ、クランプ、接着剤、バイオネット(bayonet)コネクタ、スロット、及び磁石を含む。
【0035】
第1の部品と第2の部品との間の接続を形成する方法は、非限定的に:例えば力を挿入するステップ;例えば接着剤を使用する接着ステップ;ろう付けステップ;溶接ステップ、例えばプラズマ溶接;ハンダ付けステップ;磁化場を形成することを含むステップ;クランプステップ;真空成形ステップ;第1の環と第2の環との間の1つ又は複数の第3の構成要素を配置することを含むステップ;第1の環と第2の環との間に1つ又は複数の第3の構成要素を延伸することを含むステップ;及び第1の環と第2の環との間に1つ又は複数の第3の構成要素を圧縮することを含むステップ、を含む1つ又は複数のステップが挙げられる。
【0036】
更なる実施形態によれば、第1の側壁の第2の側面の円周方向の、特に円形の縁、及び/又は第2の側壁の第1の側面の円周方向の、特に円形の縁が、第1の膜の部分を規定する第1のレンズ成形器を形成し、前記第1の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備え、かつ第2の側壁の第2の側面の円周方向の、特に円形の縁が、第2の膜の前記部分を規定する第2のレンズ成形器を形成し、前記第2の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備える。この膜のこれらの部分に作用することで、それぞれの曲率を変化させるように、レンズの焦点距離を調整することができる。
【0037】
さらに、代替的な実施形態によれば、レンズは、第1の膜に接続される第1のレンズ成形器及び第2の膜に接続される第2のレンズ成形器を備え、この第1及び第2のレンズ成形器は、第2のチャンバー内の第2の液体に浸漬され、かつ第1のレンズ成形器は、第1の膜の部分を規定する円周方向の、特に円形の内縁を備え、第1の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備え、かつ第2のレンズ成形器は、第2の膜の部分を規定する円周方向の、特に円形の内縁を備え、第2の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備える。
【0038】
さらに、一実施形態によれば、第2の側壁は、第2の側壁の第1の側面に形成された円周方向の窪みを備え、第1の側壁及び第1の側壁の第2の側面に接続される第1の膜は、前記窪みに挿入される。
【0039】
特に、この実施形態は、前記窪みに挿入される硬質のカバー要素が、重力コマ補正を可能にする代替要素によって前に置き換えられている場合に有利である。次いで、この置換要素は、第1の側壁と、カバー要素及びそれに接続される第1の膜とによって形成することができる。
【0040】
さらに、一実施形態によれば、第1の側壁は、特にレンズが第1及び/又は第2の液体の熱膨張を補償することを可能にするように、弾性変形可能であり、特にベローズとして形成される。
【0041】
さらに、一実施形態によれば、レンズは、例えば円周方向の、特に円形の内縁を備える環状レンズ成形器を備え、レンズ成形器の円周方向の、特に円形の縁が第2の膜の部分並びに第1の膜の部分を規定するように、前記レンズ成形器は、第2の膜の円周方向の境界領域へ接続され、かつ第2の膜の境界領域は、第1の膜の円周方向の境界領域に接続され、それぞれの前記部分は、調整可能な曲率を備え、かつ前記2つの膜は、第2のチャンバーを包囲している。
【0042】
さらに代替的な実施形態によれば、第1の膜及び第2の膜が第2のチャンバーを包囲するように、第1の膜は、第1の側壁の第2の側面へ接続される円周方向の境界領域を含み、かつ第2の膜は、第1の膜の境界領域へ(例えば、合同の様式で)接続される円周方向の境界領域を含む。
【0043】
特に、一実施形態では、第1の側壁は、(例えば、環状の)レンズ成形器を形成し、第1の側壁の第2の側面の円周方向の、特に円形の縁は、第1の膜の部分、並びに第2の膜の部分を規定し、前記第1の膜の部分は、調整可能な曲率を備え、かつ前記第2の膜の部分は、調整可能な曲率を備える。
【0044】
さらに、本発明に従うレンズの一実施形態によれば、第1の膜の剛性、第2の膜の剛性、第1のチャンバーの体積、第2のチャンバーの体積、前記質量密度及び前記屈折率は、第1の膜及び第2の膜の重力誘発コマ収差が、特にゼロに補償されるように適合されている。
【0045】
特に、一実施形態によれば、第1の膜の表面形状Z
7
(1)及び第2の膜の面形状Z
7
(2)のゼルニケ係数は次式のように選択される:
【数1】
【0046】
特に、当該最新技術に従う硬質の補償と比較して、結果として得られる波面は、液体レンズと同一の重力依存性を有し、すべての方向でコマを補償する。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、第1の膜及び第2の膜は、同じ材料から生成される。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、第1の膜は第1の開口部を備え、第2の膜は第2の開口部を備え、第1の開口部及び第2の開口部は、光が伝播することができるそれぞれの膜上の領域によってそれぞれ規定される。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、第1の開口部分及び第2の開口部分は、同じ大きさを有し、特に、第1の質量密度ρ1は、第2の質量密度ρ2よりも大きく、かつ第1の屈折率n1は、第2の屈折率n2よりも小さい。
【0050】
さらに別の実施形態によれば、第1の膜の剛性s
1及び第2の膜の剛性s
2は、次式により与えられる:
【数2】
特に、第1の開口部分及び第2の開口部分は、同じ大きさ、特に同じ半径を有する場合、又はレンズが本質的にコリメート光を投射又は受けるように構成されている場合であり、特に、ここで、第1の質量密度ρ
1は、第2の質量密度ρ
2よりも大きく、かつ第1の屈折率n
1は、第2の屈折率n
2よりも小さい。
【0051】
この実施形態は、入射光の開口角は比較的小さい、すなわち、入射光は本質的にコリメートされている望遠レンズ系などの光学系において、コマ補償レンズを可能にする。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、第1の開口部分は第2の開口部分よりも小さく、特に、第1の質量密度ρ1は、第2の質量密度ρ2よりも大きく、かつ第1の屈折率n1は、第2の屈折率n2よりも小さい。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、第1の膜の剛性s1及び第2の膜の剛性s2は、次式によって与えられる:
【数3】
式中、R
1は、第1の開口部分の半径であり、R
2は、第2の開口部分の半径であり、特に第1の開口部分又は第1の半径は、第2の開口部分又は第2の半径よりも小さいサイズであり、特に、第1の質量密度ρ
1は、第2の質量密度ρ
2よりも大きく、かつ第1の屈折率n
1は、第2の屈折率n
2よりも小さい。
【0054】
この実施形態は、入射光の開口角が比較的大きい、すなわち入射光が発散する広角レンズ系などの光学系において、コマ補償レンズを可能にする。
【0055】
この実施形態はさらに、膜剛性比率
【数4】
が低減されたコマ補正レンズを可能にし、したがって、物理的な膜要件を緩和する。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、第1の膜の厚さt
1及び第2の膜の厚さt
2は、次式によって与えられる:
【数5】
式中、R
1は、第1の開口部分の半径であり、R
2は、第2の開口部分の半径であり、特に、第1の開口部分又は第1の半径は、第2の開口部分又は第2の半径よりも小さいサイズの場合であり、特に、第1の質量密度ρ
1は、第2の質量密度ρ
2よりも大きく、かつ第1の屈折率n
1は、第2の屈折率n
2よりも小さい。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、第1の側壁は、第1の開口部分を規定又は形成し、第2の側壁は、第2の開口部分を規定又は形成する。
【0058】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、第1の開口部分は、調整可能な曲率を備える第1の膜の部分であり、及び/又は第2の開口部分は、調整可能な曲率を備える第2の膜の部分である。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、レンズは、第1の開口要素を備え、第1の開口要素は、第1の膜の光学開口部、特に第1の開口部分を制限する。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、レンズは第2の開口要素を備え、第2の開口要素は、第2の膜の光学的開口部、特に第2の開口部分を制限する。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、第1及び/又は第2の開口要素は、第1及び/又は第2のレンズ成形器に備えられる、又はそれと一体的に形成される。
【0062】
本発明の別の実施形態によれば、レンズは、第1の透明なカバー要素に備えられる開口要素を備える。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、第1の開口要素は、第1の透明なカバー要素に備えられる。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、第2の開口要素は、第2の透明なカバー要素に備えられる。
【0065】
さらに、一実施形態によれば、レンズはアクロマートを形成し、特に第1のカバー要素は、第1の膜に対面する凹面を備える平凸カバー要素である。特に、第1のカバー要素は、ポリカーボネートから形成することができ、n=1.58の屈折率を備えることができる。特に、第1のカバー要素に隣接する第1のチャンバー内の第1の液体は、第2の液体よりも大きな分散及び/又は屈折率を備える。特に、第1の液体の第1の屈折率はn1=1.57であり得、一方、第2の液体の第2の屈折率はn2=1.3であり得る。
【0066】
さらに、本発明の実施形態によれば、レンズは、円周方向の第1の側壁を備え、第1の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備え、第2の側面は、第1の側面から離れる方向を向き、かつレンズは、透明な第1のカバー要素を備え、かつ第1のカバー要素は、第1の側壁の第1の側面に接続され、かつ第1の膜は、第1のチャンバーを包囲するために第1の側壁の第2の側面に接続され、かつレンズは、第2の側壁を備え、第2の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備え、第2の側壁の第2の側面は、第2の側壁の第1の側面から離れる方向を向き、かつ第2の側壁の第1の側面は、第1の膜に接続され、かつ第2の側壁の第2の側面は、第2のチャンバーを包囲するために透明な第2のカバー要素に接続され、その結果、特に、第1の膜は、第1の側壁と第2の側壁との間に、特に2つのカバー要素の間に配置される。特に、第1の膜とは対照的に、カバー要素は硬質のカバー要素である。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、第1のカバー要素は、第1の液体に面する第1の曲面、及び特に、大気などのレンズの外側に面する第1の曲面の反対側に配置される第2の曲面を有し、第1及び/又は第2の曲面は、第1のカバー要素が硬質のレンズを形成するように曲率を示す。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、第1のカバー要素は、第1の液体に面する第1の曲面、及び特に大気などのレンズの外側に面する第1の曲面の反対側に配置される第2の曲面を有し、特に、第1及び第2の曲面は、同じ曲率、特に同じ曲率半径を有する、又は第1及び第2の曲面は、正のメニスカスレンズ又は負のメニスカスレンズのいずれかを形成する異なる曲率を有する。
【0069】
この実施形態は、調節可能な焦点屈折力(focal power)の範囲をオフセットすることを可能にする。例えば、カバー要素に負の屈折力を提供する負のメニスカスを提供することによって、レンズは、純粋に正の屈折力の範囲を有することからシフトすることができ(カバー要素の表面が例えば平面である場合のように)、例えば、0.5dpt~3dptから、純粋に負の屈折力の範囲、例えば-3dpt~-0.5dptである。
【0070】
別の実施形態によれば、カバー要素の第1及び/又は第2の表面は、円錐又は円柱などの収差の光学的補正を提供するように形成される。
【0071】
本発明の更なる実施形態によれば、レンズは、第1のチャンバーと流動接続(flow connection)するアクチュエータ及びポンプリザーバを備え、アクチュエータは、第1の膜の前記部分及び/又は第2の膜の前記部分の曲率を調整し、それによりレンズの焦点距離を調整するために、第1の液体をポンプリザーバから第1のチャンバーに、又は第1のチャンバーからポンプリザーバにポンプするように構成されている。
【0072】
特に、一実施形態では、第2のチャンバーは、アクチュエータによって生成される第1のチャンバー内の第1の液体の圧力変化を補償するために、弾性変形可能な壁部分によって少なくとも部分的に区切られる。
【0073】
さらに、本発明の代替的な実施形態によれば、レンズは、第2のチャンバーと流動接続するアクチュエータ及びポンプリザーバを備え、アクチュエータは、第1の膜の前記部分及び/又は第2の膜の前記部分の曲率を調整するために、第2の液体を、ポンプリザーバから第2のチャンバーに、又は第2のチャンバーからポンプリザーバにポンプするように構成される。
【0074】
特に、一実施形態では、第1のチャンバーは、アクチュエータによって生成される第2のチャンバー内の第2の液体の圧力変化を補償するために、弾性変形可能な壁部分によって少なくとも部分的に区切られている。
【0075】
さらに、本発明によるレンズの実施形態によれば、レンズは、更なるレンズに取り付けられるように構成され、更なるレンズは、透明なカバー要素、透明かつ弾性的に変形可能な膜、及び側壁を備え、更なるレンズのカバー要素及び更なるレンズの膜は、更なるレンズのチャンバーを包囲するために、更なるレンズの側壁に接続され、更なるレンズのチャンバーは、透明な第3の液体で充填され、かつレンズは、レンズの第1のカバー要素と、更なるレンズの膜との間に空隙が形成されるように、更なるレンズに取り付けられるように構成される。
【0076】
本明細書では、特に、この実施形態では、レンズは、例えば、重力コマを補償するために別のレンズに取り付けることができるスタンドアロンの補正レンズ要素を形成する。
【0077】
特に、本発明の一態様によれば、レンズ及び更なるレンズを含むレンズ系(system)が開示され、レンズの第1のカバー要素と、更なるレンズの膜との間に空隙が形成されるように、更なるレンズがレンズに取り付けられる。
【0078】
さらに、本発明の実施形態によれば、レンズの側壁は、特に、第1及び第2の(特に硬質)カバー要素に形状変化荷重を付与することなく、第1及び第2の液体の熱膨張を可能にするように、弾性変形可能である。
【0079】
特に、一実施形態によれば、レンズの側壁は、レンズの光軸に平行な方向に、及び/又は前記光軸に垂直に延びる半径方向に弾性変形可能である。
【0080】
特に、一実施形態では、第1の側壁はベローズとして形成される。さらに、一実施形態によれば、第2の側壁は、ベローズとして形成される。
【0081】
さらに、一実施形態によれば、第1の側壁の剛性及び第2の側壁の剛性は、第1の液体の体積熱膨張係数及び第2の液体の体積熱膨張係数に対して、レンズの焦点屈折力及び/又はコマ収差補償が液体の温度に対して一定のままであるように、適合される。特に、前記側壁の前記剛性は、等しくすることができる。
【0082】
さらに、代替的な実施形態によれば、第1のチャンバーの体積及び第2のチャンバーの体積は、第1の液体の体積熱膨張係数に対して、及び第2の液体の体積熱膨張係数に対して、レンズの焦点屈折力及び/又はコマ収差補償が液体の温度に対して一定のままであるように適合される。特に、本明細書では、側壁の剛性を等しくすることができる。
【0083】
さらに、代替的な実施形態によれば、第1のチャンバーは、第1のカバー要素に形状変化荷重を与えることなく第1の液体の熱膨張を可能にするように、弾性変形可能な第1の容器と流動接続し、かつ第2のチャンバーは、第2のカバー要素に形状変化荷重を与えることなく第2の液体の熱膨張を可能にするように、弾性変形可能な第2の容器と流動接続している。
【0084】
本発明のさらに別の実施形態によれば、レンズは、円周方向の第1の側壁を備え、第1の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備え、第2の側面は、第1の側面から離れる方向を向き、かつレンズは、第1の透明なカバー要素を備え、第1のカバー要素は、第1の側壁の第1の側面に接続され、かつ第1の膜は、第1のチャンバーを包囲するために、第1の側壁の第2の側面に接続され、かつレンズは、可動レンズ成形器の第1の側面で第1の膜に接続される環状可動レンズ成形器を備え、かつ第2の膜は、2つの膜及び可動レンズ成形器が第2のチャンバーを包囲するように、円周方向の境界領域で可動レンズ成形器の第2の側面に接続され、可動レンズ成形器の第2の側面は、可動レンズ成形器の第1の側面から離れる方向を向いている。
【0085】
さらに、一実施形態によれば、可動レンズ成形器は、第1の膜の一部を規定する第1の円周方向の、特に円形の縁、及び第2の膜の一部を規定する反対側の第2の円周方向の、特に円形の縁を備え、第1の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備え、かつ第2の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備える。
【0086】
本明細書では、特に、両方の膜は同じ様式で全調節範囲にわたって変形することができ(膜が同じ予ひずみ又は初期条件を備えると仮定して)、したがって、正味のレンズコマは調整範囲を通して一定のままである。これはまた、コマの影響を受ける光路の距離を最小化する可能性もあり、さらに、より柔らかい膜を(アクチュエータによって作用される)作動膜として使用することを可能にし、それによってレンズを作動させるのに必要な力の量を低減する。
【0087】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、第2の側壁の第2の側面の円周方向の、特に円形の縁は、第2の膜の部分を規定する第2のレンズ成形器を形成し、第2の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備える。
【0088】
さらに、可動レンズ成形器を備える代替的な実施形態によれば、レンズは、円周方向の第1の側壁を備え、第1の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備え、第2の側面は、第1の側面から離れる方向を向き、かつレンズは、第1の透明なカバー要素を備え、第1のカバー要素は、第1の側壁の第1の側面に接続され、かつ第1の膜は、第1のチャンバーを包囲するために第1の側壁の第2の側面に接続され、かつレンズは、第2の側壁を備え、第2の側壁は、第1の側面及び第2の側面を備え、第2の側壁の第2の側面は、第2の側壁の第1の側面から離れる方向を向き、かつ特に、第1の膜は、第1の側壁と第2の側壁との間に、特にカバー要素と第2の膜との間に配置されるように、第2の側壁の第1の側面は、第1の膜に接続され、かつ第2の側壁の第2の側面は、第2の膜に接続されて第2のチャンバーを包囲する。
【0089】
さらに、可動レンズ成形器を備える別の実施形態によれば、可動レンズ成形器は、第2の膜の形状のみを調整するように構成及び配置される。
【0090】
特に、一実施形態では、第1の側壁は、固定レンズ成形器を形成し、第1の側壁の第2の側面の円周方向の、特に円形の縁は、第1の膜の部分を規定し、第1の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備え、かつレンズは、可動レンズ成形器の第1の側面を有する第2の膜に接続される可動レンズ成形器を備え、可動レンズ成形器の第1の側面は、第2の膜の部分を規定する円周方向、特に円形の縁部を備え、第2の膜の前記部分は、調整可能な曲率を備える。
【0091】
さらに、本発明の一実施形態によれば、第1のチャンバー内の第1の液体の体積及び第2のチャンバー内の第2の液体の体積は、レンズの焦点距離の熱ドリフトが低減又は防止されるように適合される。言い換えれば、前記体積は、体積熱膨張の差及び2つの液体の屈折率の差に依存する。特に、一実施形態では、第2の液体の屈折率は、第1の液体の屈折率よりも大きい。
【0092】
さらに、一実施形態によれば、レンズは、第1及び第2の膜の前記部分の曲率を変化させ、それによって、レンズの焦点距離を変化させるように、第1及び/又は第2の側壁に対して可動レンズ成形器を移動させるように構成されるアクチュエータを備える。
【0093】
さらに、本発明によるレンズのさらに別の実施形態によれば、レンズの第1又は第2のチャンバーを区切る壁は、それぞれの液体の熱膨張を可能にする少なくとも1つの可撓性領域を含む。
【0094】
さらに、例えば第2のチャンバー内の第2の液体の、例えば正のゲージ圧を選択することによって、例えば第1の液体をポンプするためのアクチュエータが非作動(オフ)の場合に、第2のチャンバー内の第2の液体は、第1のチャンバーが凹レンズ部分を形成し、かつレンズの全焦点距離が負であるような圧力を備えるように、かつアクチュエータが作動(オン)の場合に、ポンプリザーバから第1のチャンバーに第1の液体をポンプして、第2のチャンバーは凸レンズ部分を形成し、かつレンズの焦点距離は正であるように(ここで特に、第1の膜は平面であり得、レンズの透明な(第1の)カバー要素に平行に延びることができる)、チャンバーの形状に影響を与えることが一実施形態に従って可能である。好ましくは、一実施形態によれば、第2のチャンバーの凸形状にもかかわらず(アクチュエータがオフの場合)レンズは、第2のチャンバーの凹形状に起因する全体的に負の焦点距離を有するように、第1の液体は、第2の液体よりも高い屈折率を備える。
【0095】
本明細書の文脈における「非作動」という用語は、特に、アクチュエータがオフにされる、又はアクチュエータに作用する平衡力によってアクチュエータが移動する位置に適合することを指し、例えば、1つ又は複数のレンズ、及び1つ又は複数の液体の圧力の機械的特性によって与えられる。したがって、例えば、非作動のアクチュエータは、例えば、アクチュエータによって力が生成されない初期アクチュエータの位置に戻る。
【0096】
次に、「作動」という用語は、特に、アクチュエータが力を生成し、例えば、選択されたアクチュエータ位置に作動される状態を指す。
【0097】
本発明の更なる態様によれば、眼鏡、特に仮想現実及び拡張現実のための眼鏡が開示され、この眼鏡は、本発明に従って、眼鏡ごとに(又は眼鏡を装着する人間の眼ごとに)1つ又は複数のレンズ(レンズの数は構成によって異なる)を備える。レンズは、導波路、波反射器、バードバス(bird bath)設計など、仮想コンテンツを表示するための、さまざまな方法と組み合わせることができる。
【0098】
さらに、本発明に従うレンズは、光学ズーム装置にも使用することができる。本明細書では、このような2つのレンズは、ズーム装置の光路に沿って、例えば、2つのレンズの共通の光軸の方向に互いに向くように配置されている。
【0099】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、レンズはコンタクトレンズとして形成される。さらに、本発明の実施形態、及び本発明の更なる特徴及び利点は、図を参照して以下に記載する。
【0100】
多くの実施形態及び実施例では、レンズのいくつかの構成要素は、1つ又は複数の円形の形状、開口部、縁、及び輪郭を有するように開示されているが、任意の前記実施形態及び実施例は、1つ又は複数の卵形、楕円形、及び多角形の開口部、縁、又は輪郭などの非円形を有する前記構成要素を有することも可能であることが明示的に記載されている(例えば、
図25を参照)。
【0101】
図1は、側壁10及び透明なカバー要素11と共に透明な液体Lを収容するためのチャンバーを包囲する膜12の非理想の、特に非回転対称の形状をもたらす静水圧差によって、液体レンズにおいてどのように重力誘発コマ収差が引き起こされるかを例示する。いくつかの実施形態では、カバー要素11は、屈折力を有することができることに留意されたい。
【0102】
例えば、断面Aでは、光路(レンズの厚さ)は断面Bよりも小さい。レンズの容器から同じ距離にあるさまざまな位置での結果として生じる局所的な偏向/屈折力は、非球形、特に非理想的な膜形状に起因する光学収差を誘発する液体レンズ全体で異なる。このような波面誤差は、膜12を変形させる液体Lの重量の結果である。
【0103】
図2に示されるとおり、そのような重力コマは、通常、硬質の調整不可能なコマプレート11aを用いて補償される。しかし、これは1つの固定の方向及び特定の膜の偏向に対してのみ機能する。
【0104】
この問題を解決するために、本発明は、例えば、
図3に示すとおりのレンズ1を提案する。レンズ1は、第1の質量密度ρ
1及び第1の屈折率n
1を備える第1の透明な液体L1で充填される第1のチャンバーC1、第2の質量密度ρ
2及び第2の屈折率n
2を備える第2の透明な液体L2で充填される第2のチャンバーC2、及び2つのチャンバーC1、C2を互いに分離し、第1の液体L1及び第2の液体L2に接触する、透明かつ弾性的に変形可能な第1の膜12を備える。さらに、レンズは、第2の透明かつ弾性変形可能な膜22を備えることができ、第2の膜22は、第1の膜12に対面し、第2のチャンバーC2を区切る役割も果たす。
【0105】
好ましくは、前記質量密度ρ1、ρ2及び前記屈折率n1、n2は、前記レンズ1の重力誘発コマ収差が低減又は防止されるように選択される。特に、レンズ1の光軸Aが水平位置にある場合、レンズ1の前記重力誘発コマ収差を低減又は防止するように、第1の膜12は、第1の液体L1に面する表面120上に、少なくとも凸部12d及び少なくとも凹部12eを形成する。特に、レンズ1の光軸Aの向きに関係なく、レンズ1の重力誘発コマ収差が低減又は防止されるように、質量密度ρ1、ρ2及び屈折率n1、n2が選択される。
【0106】
特に、
図3に示す実施形態では、第1の質量密度ρ
1は第2の質量密度ρ
2よりも大きく、第1の屈折率n
1は第2の屈折率n
2よりも小さい。
【0107】
本発明の実施例によれば、第1の液体L1は、屈折率n1=1.30、かつ質量密度ρ1=1900kg/m3を備え、第2の液体は、屈折率n2=1.38、かつ質量密度ρ2=1200kg/m3を備える。さらに、一実施例によれば、第2の膜22は、第1の膜12の剛性より5~10倍大きい剛性を備える。
【0108】
特に、本明細書に記載の剛性は、ポアソン比、それぞれの膜の材料の厚さ、及びヤング率によって定義され、特に、適用された工学的応力に対する工学的ひずみに対応する。
【0109】
「剛性」という用語は、特に、所与の圧力又は圧力勾配に対する1つ又は複数の第1及び第2の膜の膨張の大きさを指す。
【0110】
特に、第1の液体L1及び第2の液体L2の特性を交換することができ、液体レンズチャンバーC1、C2のパラメータを調整した後、コマ補償機能を同じ様式で維持することができる。
【0111】
図3に示されるとおり、レンズ1は中立状態で示されており、一方、
図4は、アクチュエータ51によって第1の液体L1をポンプリザーバ50から第1のチャンバーにポンプすることによって達成することができる膜の偏向状態(すなわち、レンズ1の焦点距離の低減)を示している。しかしながら、本発明の重力誘発コマ収差の補償はまた、レンズ/膜の凹状態の場合にも機能する。
【0112】
特に、
図4は、チャンバーC1、C2の断面Aに関して、光路(レンズの厚さ)が、断面B下よりも小さいことを示している。しかしながら、平均屈折率は、断面Bの場合のように高い(より大きな偏向)。したがって、全体として、システム1は、チャンバーC1、C2から同じ距離で結果として生じる偏向がすべての断面で類似し、これにより、光学収差を抑制する。
【0113】
特に、
図3及び
図4に示す実施形態では、レンズ1は、円周方向の第1の側壁10を備え、第1の側壁10は、第1の側面10a及び第2の側面10bを備え、第2の側面10bは、第1の側面10aから離れる方向を向き、かつレンズ1は、第1の透明なカバー要素11を備え、この硬質のカバー要素11は、第1の側壁10の第1の側面10aに接続され、かつ第1の膜12は、第1のチャンバーC1を包囲するために第1の側壁10の第2の側面10bに接続される。あるいは、硬質のカバー要素11はまた、第1の側壁10と一体的に形成され得る(これは、第1の側壁10及びカバー要素11を備える他の実施形態にも適用され得る)。次いで、第1の膜12は、側壁10の側面部10b(又は第1のチャンバーC1を包囲するための第1の側壁10のその他の部分)に接続される。
【0114】
さらに、レンズ1は、第1の側壁10に接続される第2の側壁20を備え、第2の側壁20は、第1の側面20a及び第2の側面20bを備え、第2の側壁20の第2の側面20bは、第2の側壁20の第1の側面20aから離れる方向を向き、かつ第2の側壁20の第1の側面20aは、第1の膜12に接続され、かつ第2の側壁20の第2の側面20bは、第2のチャンバーC2を包囲するために第2の膜22に接続される。したがって、第1の膜12は、第1の側壁10と第2の側壁20との間、特にカバー要素11と第2の膜22との間に配置される。
【0115】
特に、
図4に示すとおり、第1の側壁10の第2の側面10bの円形の縁31a及び/又は第2の側壁20の第1の側面20aの円形の縁31bは、第1の膜12の部分12aを規定する第1のレンズ成形器を形成し、第1の膜12の前記部分12aは、調整可能な曲率を備える。さらに、第2の側壁20の第2の側面20bの円形の縁31cは、第2の膜22の部分22aを規定する第2のレンズ成形器を形成し、第2の膜22の前記部分22aもまた、調整可能な曲率を備える。
【0116】
膜12、22のこれらの部分12a、22aに作用してそれぞれの曲率を変化させることで、レンズの焦点距離を調整することができる。特に、既に上記されるとおり、それぞれの曲率は、第1の液体L1をポンプリザーバ50から流動接続50Fを介して第1のチャンバーに、又はその逆にポンプで送ることによって調整することができる。
【0117】
さらに、本発明は、例えば、
図3に示すとおり、外側(第2)の液体L2は、内側(第1)の流液L1が第1の膜12を透過することから保護し、互換の液体L1、L2の数及び屈折率、粘度、熱膨張、密度、アッベ数などの新しい物理的特性の範囲を増加させるという利点を提供することができる。特に、例えば
図3に示すとおり、第1の液体L1は環境から完全に被包化されることが可能である。特に、
図3に示す実施形態は、界面配列が第1の液体-膜 膜-空気である従来の液体レンズ(例えば
図1を参照)を、上記の利点を提供する界面配列である第1の液体-膜 膜-第2の液体に置き換える。
図5及び
図6では、代替的なレンズ形跡の構成を含む本発明に従うレンズ1の実施形態を示す。
【0118】
図5によれば、レンズ1は例えば円形内縁31を含む環状レンズ成形器30を備え、このレンズ成形器30は、第2の膜22の円周方向の境界領域22cに接続され、かつ第2の膜22の境界領域22cは、次に、レンズ成形器30の円形の縁31が第2の膜22の前記部分22a、並びに第1の膜12の前記部分12aを規定するように、第1の膜12の円周方向の境界領域12cに接続され、ここでは2つの膜12、22は、第2のチャンバーC2を包囲する。したがって、2つの膜は、(単一の)第1の側壁10とレンズ成形器30との間に固定されている。
【0119】
さらに、あるいは、
図6に示されるとおり、第1の膜12及び第2の膜22がまた第2のチャンバーC2を包囲するように、第1の膜12は、第1の側壁10の第2の側面10bに接続される円周方向の境界領域12cを備え、かつ第2の膜22は、第1の膜12の境界領域12cに(例えば、合同の様式で)接続される円周方向の境界領域22cを備える。ここで、特に、第1の側壁10自体が、例えば、環状レンズ成形器を形成して、第1の側壁10の第2の側面10bの円形の縁31は、第1の膜12の前記部分12a、並びに第2の膜22の前記部分22aを規定する。
【0120】
さらに、
図7に示すとおり、本発明に従う設計では、非常に柔軟であり、また、レンズの焦点距離を調整する代わりに第2のチャンバーC2を作動させることも可能であり、すなわち、ここでは、アクチュエータ51を用いて第2の液体L2が第2のチャンバーC2内に又は第2のチャンバーC2の外にポンプされることが可能であるように、ポンプリザーバ50は、第2のチャンバーとの流動接続50Fの状態にある。
【0121】
さらに、
図7Aに示すとおり、本発明に従う設計では、第1のカバー要素11が湾曲することによって提供される付加的な屈折力をレンズが示すように、第1のカバー要素11は、第1のチャンバー内の第1の液体L1に面する第1の曲面11-1、及びレンズの外側、例えば大気に面する第2の曲面11-2を有する。さらに、
図8及び
図9によれば、本発明に従うレンズは、コマ補償機能をレンズ1のカバー要素11に大部分組み込むことができる。
【0122】
これに関して、
図8は、重力誘発コマ収差を示す液体レンズを形成するために膜22を備える通常の液体レンズの側壁20に取り付けられるカバー要素110の図式的断面図を示す。
【0123】
本発明では、そのような通常のカバー要素110を、第1のチャンバーを包囲するために第1の側壁及び第1の膜12に取り付けられているカバー要素11で置き換えることを可能にしている。
図8に示されるとおり、重力誘発コマ収差の補償を含むレンズ1を形成するためにこの構造が第2の側壁20に取り付けられることが可能となる。特に、第2の側壁20は、第2の側壁20の第1の側面20aに形成される円周方向の窪み21を備え、第1の側壁10及び第1の側壁10の第2の側面10bに接続される第1の膜12は、補償されるレンズ1を形成するために前記窪み21に挿入される。
【0124】
さらに、
図10に示されるとおり、レンズが2つの可撓性膜12、22を備える必要はない。特に、第2の膜22は、レンズ1の光軸の方向において第1のカバー要素11に面する、更なる透明かつ硬質のカバー要素22によって置き換えることができる。
【0125】
ここでは、第1のチャンバーC1と流動接続50Fの状態にあるポンプリザーバ50に加えて、レンズ1は、ポンプリザーバ50の圧力変化を考慮に入れるために、弾性変形可能な容器60又は可撓性側壁60を備える。特に、第1の液体L1及び第2の液体L2の特性を交換することができ、液体レンズチャンバーC1、C2のパラメータの調整後、コマ補償機能が再び保証される。
【0126】
図11は、本発明に従うレンズ1のさらに別の実施形態を示し、ここでは、レンズ1は、特に独立した補正要素を形成する。
【0127】
特に、
図11によれば、レンズ1は、円周方向の第1の側壁10を備え、第1の側壁10は、第1の側面10a及び第2の側面10bを備え、第2の側面10bは、第1の側面10aから離れる方向を向き、かつレンズは、透明な第1のカバー要素11を備え、第1のカバー要素11は、第1の側壁10の第1の側面10aに接続され、かつ第1の膜12は、第1のチャンバーC1を形成又は包囲するために、第1の側壁10の第2の側面10bに接続され、かつレンズ1は、第2の側壁20を備え、第2の側壁20は、第1の側面20a及び第2の側面20bを備え、第2の側壁20の第2の側面20bは第2の側壁20の第1の側面20aから離れる方向を向き、かつ第1の膜12が第1の側壁10と第2の側壁20との間に、特に、2つのカバー要素11、22との間に配置されるように、第2の側壁20の第1の側面20aは、第1の膜12に接続され、かつ第2の側壁20の第2の側面20bは、第2のチャンバーC2を形成又は包囲するために透明な第2のカバー要素22に接続される。
【0128】
特に、2つの側壁10、20は、好ましくは、弾性変形可能であり、レンズ1の焦点屈折力及び/又はコマ収差の補償を変化させることなく、液体L1及びL2の熱膨張を可能にする。
【0129】
特に、
図11の右側に示されるとおり、レンズ1は、更なるレンズ2に取り付けられるように構成され、更なるレンズ2は、カバー要素110、膜42、及び側壁100を備え、更なるレンズ2のカバー要素110、及び更なるレンズ2の膜42は、更なるレンズ2のチャンバーC3を包囲するように、更なるレンズ2の側壁100に接続され、更なるレンズ2のチャンバーC3は、透明な第3の液体L3で充填され、かつレンズ1は、レンズ1の第1のカバー要素11と、更なるレンズ2の膜43との間に空隙43が形成されるように、更なるレンズ2に取り付けられるように構成される。特に、
図11に示す実施形態では、レンズ1及びレンズ2を備えるシステム全体の重力誘発コマ収差を補償するために、第1の液体L1の質量密度は第2の液体L2の質量密度よりも大きく、かつ第1の液体L1の屈折率n
1は第2の液体の屈折率n
2よりも小さい。
【0130】
図11に示される組み合わされたレンズの焦点距離を調整するために、第3の液体L3がチャンバーC3内に、又はチャンバーC3外に、例えば本明細書で記載されるとおりのポンプリザーバを使用して、ポンプすることができるようにレンズ1、2は構成されることが可能である。
【0131】
図12は、硬質の対向するカバー要素11、22、及びカバー要素11、22の間に配置された(単一の)第1の膜12を備える更なる実施形態(例えば、独立した矯正要素の形態)を示し、レンズ1は、特にベローズとして(又は他としては弾性変形可能な側壁として)形成され、環状レンズ成形器30を関連するカバー要素10、20にそれぞれ接続する側壁10、20をさらに備え、第1の膜12は、透明な膜12の光学的に作動(曲率調整可能な)部分12aを規定するためにレンズ成形器30に接続される。膜12はまた、他の方法で側壁10、20に接続され得る。一実施形態では、別個のレンズ成形器30が省かれ得る。
【0132】
ここで、レンズ1の側壁は、外側カバー要素(例えばガラス/プラスチック構造物)11、22に形態変化荷重を付与することなく、液体L1、L2の熱膨張を可能にするように、順応性である。側壁10、20は、それぞれの側壁10、20の軸方向及び/又は半径方向の拡張を可能にするように設計され得る。あるいは、側壁10、20は、順応性のある流体容器60、61へのチャネルを備えて堅くてもよく、それによって熱膨張を可能にする。特に、順応性のある側壁10、20の剛性は、レンズ1の焦点屈折力及び/又は重力コマ補償が液体L1、L2の温度にわたって一定のままであるように、封入された液体L1、L2の体積熱膨張係数に対して相対的に調節されてもよい。
【0133】
さらに、
図12の下部に示されているとおり、チャンバーC1、C2内の液体L1、L2の体積は、例えば同等の剛性を有する順応性のある壁10、20を利用する場合に、膜12が温度範囲にわたって一定の形状を維持するように、液体L1、L2の体積熱膨張係数に関して調節されてもよい。
【0134】
さらに、
図13は、本発明によるレンズ1の実施形態を示しており、両方の膜12、22が調整範囲を通して同等に剛性を増加させ(同じ初期の膜特性と仮定する)、したがって、正味のレンズコマは調整範囲を通して一定のままであるように、両方の液体L1、L2は、作動部分の一部分である。特に、これはまた、コマの影響を受ける光路の距離を最小化する可能性もあり、これは、より広い視野(FOV)及び大きなレンズ偏向にとって重要である可能性がある。さらに、これはまた、より柔らかい膜を作動膜として使用することを可能にし、それにより、レンズ1を作動させるのに必要な力の量を低減する。
【0135】
「作動膜」という用語は、特に、例えば、硬い膜で使用される力よりも小さい力でレンズ成形器30を動かすことを含む方法によるチャンバーの圧縮が可能である可撓性の、前記チャンバーの特に側面の壁の部分として使用される膜12又は22を指す。
【0136】
特に、
図13に示すとおり、レンズ1は、円周方向の第1の側壁10を備え、第1の側壁10は、第1の側面10a及び第2の側面10bを備え、第2の側面10bは、第1の側面10aから離れる方向を向き、レンズ1は、第1の透明かつ硬質のカバー要素11を備え、この第1のカバー要素11は、第1の側壁10の第1の側面10aに接続され、かつ第1の膜12は、第1のチャンバーC1を形成/包囲するための第1の側壁10の第2の側面10bに接続され、かつレンズ1は、可動レンズ成形器30の第1の側面300で第1の膜12に接続される環状可動レンズ成形器30を備える。さらに、第2の膜22は、2つの膜12、22及び可動レンズ成形器30は、第2のチャンバーC2を包囲するように、円周方向の境界領域22cで、可動レンズ成形器30の第2の側面301へ接続され、ここで可動レンズ成形器30の第2の側面301は、可動レンズ成形器30の第1の側面300から離れる方向を向いている。
【0137】
特に、可動レンズ成形器30は、第1の膜12の部分12aを規定する第1の円形の縁31a、及び第2の膜22の部分22aを規定する対向する第2の円形の縁31bを備え、第1の膜12の前記部分12aは、調整可能な曲率を備え、かつ第2の膜22の前記部分22aは、調整可能な曲率を備える。
【0138】
レンズ1の焦点距離を変更するために、レンズ1は、可動レンズ成形器30を第1の側壁10に対して動かして、第1及び第2の膜12、22の前記部分12a、22aの曲率を変更し、それによるレンズ1の焦点距離を変更するように構成されるアクチュエータ51をさらに備える。
【0139】
レンズ成形器がチャンバーC1、C2を圧縮する場合(又はそのような圧縮が削減される場合)、部分12a、22aが弾性的に変形するように液体L1、L2が非圧縮性である事実によって、前記部分12a、22aの曲率の変化が及ぼされる。
【0140】
図13Aは、本発明に従うレンズ1の別の例示的な実施形態を示す。レンズ1は、円周方向の第1の側壁10を備え、第1の側壁10は、第1の側面10a及び第2の側面10bを備え、第2の側面10bは、第1の側面10aから離れる方向を向き、かつレンズ1は、第1の透明かつ硬質のカバー要素11を備え、第1のカバー要素11は、第1の側壁10の第1の側面10aに接続され、かつ第1の膜12は、第1のチャンバーC1を形成/包囲するために、第1の側壁10の第2の側面10bに接続される。第1の膜12は、第1の側壁10を越えて横方向に延びる。可動レンズ成形器30は、可動レンズ成形器30の第1の側面300で第1の膜12に接続される。さらに、第2の膜22は、2つの膜12、22及び可動レンズ成形器30が第2の液体L2で第2のチャンバーC2を包囲するように、可動レンズ成形器30の第2の側面301に接続され、可動レンズ成形器30の第2の側面301は、可動レンズ成形器30の第1の側面300から離れた方向を向いている。
【0141】
第1の膜12と同様に、第2の膜22は、第1の側壁10を越えて横方向に延びる。可動レンズ成形器30は、レンズ1の外周に配置される。第1の膜12はまた、作動膜として機能する。
レンズ1の焦点距離を変更するために、レンズ1は、可動レンズ成形器30を第1の側壁10に対して動かして、第1及び第2の膜12、22の前記部分12a、22aの曲率を変更し、それによるレンズ1の焦点距離を変更するように構成されるアクチュエータ51をさらに備える。
【0142】
図14は、可動レンズ成形器を使用する本発明に従うレンズ1の更なる実施形態を示す。ここでは、特に、チャンバーC1、C2内の液体の体積は、レンズ1の正味の熱焦点屈折力ドリフトを最小にするように選択される。特に、前記体積は、液体L1、L2の体積熱膨張係数、及び2つの液体L1、L2の相対屈折率n
1、n
2の関数である。
図13に示す実施形態では、第2の液体L2は、好ましくは、より高い屈折率の液体である。
【0143】
特に、
図14に示されるとおり、レンズ1は、円周方向の第1の側壁10を備え、第1の側壁10は、第1の側面10a及び第2の側面10bを備え、第2の側面10bは、第1の側面10aとは反対側を向き、レンズ1は、第1の透明なカバー要素11を備え、第1の透明なカバー要素11は、第1の側壁10の第1の側面10aに接続され、かつ第1の膜12は、第1のチャンバーC1を形成/包囲するために第1の側壁10の第2の側面10bに接続され、かつレンズ1は、第2の側壁20を備え、第2の側壁20は、第1の側面20a及び第2の側面20bを備え、第2の側壁20の第2の側面20bは、第2の側壁20の第1の側面20aから離れる方向を向き、かつ第2の側壁20の第1の側面20aは、第1の膜12に接続され、かつ第1の膜12が第1の側壁10と第2の側壁10との間、特にカバー要素11と第2の膜22との間に配置されるように、第2のチャンバーC2形成/包囲するために第2の側壁20の第2の側面20bは、第2の膜22に接続される。
【0144】
特に、第1の側壁10は、固定のレンズ成形器を形成し、第1の側壁10の第2の側面10bの円形の縁31aは、第1の膜12の部分12aを規定し、第1の膜12の前記部分12aは、調整可能な曲率を備え、かつレンズ1は、可動レンズ成形器30の第1の側面300で、第2の膜22へ接続される前記可動レンズ成形器30を備え、可動レンズ成形器30の第1の側面300は、第2の膜22の部分22aを規定する円形の縁31bを備え、第2の膜22の前記部分22aは、調整可能な曲率を備える。
【0145】
また、ここでは、レンズ1は、好ましくは、第1及び/又は第2の側壁10、20に対して可動レンズ成形器30を動かして、第1及び第2の膜12、22の前記部分12a、22aの曲率を変化させ、それによりレンズ1の焦点距離を変化させるように構成されるアクチュエータ51を備える。
【0146】
さらに、
図15は、特に浸漬レンズ成形器を備えるレンズ用のコマ補正のカバー要素の形態において本発明に従うレンズ1の更なる実施形態を示す。特に、浸漬レンズ成形器(例えば、眼鏡(spectacles)又は拡張現実眼鏡(augmented reality glasses))を備えるレンズ1に対して受動コマ補償を生成するために、第1の膜12の第2の浸漬レンズ成形器を導入することが有利であり、特に2つのレンズ成形器、すなわち、第1及び第2のレンズ成形器30a、30bは、好ましくは、互いに対して整列している。
【0147】
特に、
図15によれば、レンズ1は、第1の膜12に接続される第1のレンズ成形器30a、及び第2の膜22に接続される第2のレンズ成形器30bを備え、第1及び第2のレンズ成形器30a、30bは、第2のチャンバーC2内の第2の液体L2に浸漬され、かつ第1のレンズ成形器30aは、第1の膜12の部分12aを規定する円形の内縁31aを備え、第1の膜12の前記部分12aは、調整可能な曲率を備え、かつ第2のレンズ成形器30bは、第2の膜22の部分22aを規定する円形の内縁31bを備え、第2の膜22の前記部分22aは、調整可能な曲率を備える。また、ここでは、焦点距離は、本明細書に記載されるとおり(例えば、ポンプリザーバを使用することによって)第1の液体を第1のチャンバーC1内に、若しくは第1のチャンバーC1外にポンプすることによって、又は第2の液体を第2のチャンバーC2内に、若しくは第2のチャンバーC2外にポンプすることによって調整することができる。
【0148】
図16にさらに示されるとおり、本明細書に記載の各レンズはまた、アクロマートを形成することができ、特に第1のカバー要素11は、第1の膜12に対して面する凹面11bを含む平凹カバー要素11として設計することができる。特に、第1のカバー要素11は、ポリカーボネートから形成することができ、n=1.58の屈折率を備えることができる。特に、第1のカバー要素11に隣接する第1のチャンバーC1内の第1の液体L1は、第2の液体L2よりも大きな分散及び/又は屈折率を備えることができる。特に、第1の液体L1の第1の屈折率n
1はn
1=1.57であり得、一方、第2の液体L2の第2の屈折率n
2はn
2=1.3であり得る。
【0149】
最後に、
図17~19は、コマ収差補償のない通常の液体レンズ設計と比較して、本発明がどれほど良好に機能するかを例示している。
【0150】
特に、
図17は、2つの液体L1、L2を(硬質のカバー要素11と共に)閉じ込める2つの膜12、22を備える液体レンズの重力誘発コマ収差を示す。
【0151】
ここで、外膜22は、最初は平面の膜を有する容器を使用して、2.2μmのコマを含む。光学伝達関数(OTF)を示す右側のグラフによると、明らかな光学品質の劣化が観察される。
【0152】
さらに、
図18は、本発明に従うレンズ1に対応するデータを示し、外膜22上に2.2μmのコマが存在し、一方、補償のために内膜12上に10μmのコマが使用される。光学伝達関数(OTF)を示すグラフからも推察できるように、
図17に示すコマ収差を補償しない場合に比べて、残留収差のみ見ることができ、光学画質の劣化が非常に小さくなっていることが観察される。
【0153】
さらに、
図19は、本発明を使用することにより、重力誘発コマ収差の10倍を超える減少が達成することができることを示している。
【0154】
さらに、
図20は、本発明に従う第1のレンズ1及び本発明に従う第2のレンズ1’を含む光学ズーム装置4を示す。両レンズ1、1’は、したがって、重力コマを減少させる。
【0155】
特に、両レンズ1、1’は、
図20に示されるとおり、第1の液体L1、L1’で充填される第1のチャンバーC1、C1’、及び第2の液体L2、L2’で充填される第2のチャンバーC2、C2’を形成する、透明なカバー要素11、11’、並びに第1及び第2の膜12、22;12’、22’を備える。両方のレンズ1、1’において、第1の液体L1、L1’は、カバー要素11、11’、及び外側の第2の膜22、22’を有する第2のチャンバーC2、C2’から第1のチャンバーC1、C1’を分離する第1の膜12、12’との間に配置される。
【0156】
2つのレンズ1、1’は、光学ズーム装置4の光軸A方向に互いに対面している。
【0157】
光学ズーム装置4は、第1のレンズ1と第2のレンズ1’との間に配置される第1の硬質のレンズスタック400、並びに第2のレンズ1’とイメージセンサ403との間に配置される第2の硬質のレンズスタック401をさらに備えることができる。さらに、IRフィルタ402は、イメージセンサ403の前方、すなわちイメージセンサ403と第2の硬質のレンズスタック401との間に配置することができる。
【0158】
特に、各レンズ1、1’の各カバー要素11の外面は、イメージセンサ403とは反対側を向き、すなわち、第2の膜22のそれぞれの外面は、イメージセンサ403の方を向き得る。
【0159】
特に、
図20(A)は、レンズ1、1’が、焦点距離に関して光学ズーム装置4が広角状態を想定するように調整される場合の光学ズーム装置4を示しており、第2の膜22は凹状の曲率を備える。
【0160】
これとは対照的に、
図20(B)は、レンズ1、1’が、焦点距離に関して、光学ズーム装置4が望遠状態を想定するように調整される場合の光学ズーム装置4を示している。ここで、一実施形態では、第2のレンズ1’の第2の膜22’は、例えば、顕著な凹状の曲率を備え、一方、第1のレンズ1の第2の膜22は、例えば、凸状の曲率を備える。
【0161】
最後に、
図21に示されるとおり、本発明はまた、コマ補償を含む凸凹状のレンズ1の形態におけるレンズ1、すなわち、
図21(A)に示される状態から(特にアクチュエータ51がオフにされる場合に、レンズ1が負の焦点距離を備える)別の状態(
図21(B)参照)(レンズ1が正の焦点距離を備える)へ調整され得るレンズ1の実施形態を実装することも可能にする。一実施形態によれば、これは、例えば、アクチュエータ51がオフに調節される場合に(
図21(A)を参照)レンズ1が負の焦点距離を備えるように、かつアクチュエータが作動される場合に焦点距離が正の値に切り替わるように(
図21(B)を参照)、第2のチャンバーC2内の第2の液体L2に正のゲージ圧を与えることによって達成される。
【0162】
特に、
図3と同様に、
図21によるレンズは、透明なカバー要素11と、第1の膜12との間に配置される第1のチャンバーC1を備え、第1のチャンバーC1に存在する第1の液体L1は、第2のチャンバーC2に配置される第2の液体L2の屈折率n
2よりも大きい屈折率n
1を備え、この第2のチャンバーC2は、一方の側が第1の膜12によって区切られ、かつ他方の側が第2の膜22によって区切られている。両方の透明な膜12、22は、ポンピングによって、例えば、アクチュエータ51を使用して、ポンプリザーバ50から流動接続50Fを介し、第1のチャンバーC1内へ、又は第1のチャンバーC1からポンプリザーバ50内へ、第1の液体L1をポンプすることによって調整することができる曲率を有する部分12a、22aを含む。特に、第1の液体L1のポンピングは、ポンプリザーバ50を覆う第1の膜12の部分上でアクチュエータ51によって動かされるピストン51aで作用することによって達成することができる。横方向に、ポンプリザーバ50は、第1の側壁10によって区切ることができる。後者の第1の側壁10は、第1のチャンバーC1を形成するために第1の膜12に接続される側面10bを備えることができる。さらに、第1の側壁10は、カバー要素11と一体的に形成されることが可能である。カバー要素11はまた、別個の要素であってもよい(上記も参照)。さらに、第1の膜12は、(第1の膜12が接続可能な)第2の側壁20と、第2の側壁20に接続される第2の膜22と共に、第2のチャンバーC2を区切る。
【0163】
アクチュエータ51が非作動状態にある場合は、第2のチャンバーC2内の第2の液体L2の圧力は、第2のチャンバーC2の両凸形状、及び例えば第1のチャンバーC1の平凹形状を導く正のゲージ圧に対応するように調整される。後者は高屈折率の液体L1を含み、レンズ1は負の焦点距離を想定し、すなわち凹レンズ1に対応する(
図21(A)参照)。しかし、アクチュエータ51が作動状態にある場合には、ピストン51aを引っ張り、それに伴ってポンプリザーバ50から第1のチャンバーC1内に第1の液体L1をポンプする。これで、第1チャンバーC1が平坦になり、第2液体L2が第2膜22に向かって押し出される。その結果、第2のチャンバーC2はこれ以降凸状のレンズ部分を形成し、一方で、第1のチャンバーC1は、レンズ1の正の焦点距離を導く平面形状を備える。よって、この時、レンズ1は、凸レンズ1に相当している。
【0164】
特に、アクチュエータ51は、電気永久磁石、ボイスコイル磁石であり得る、若しくは備え得る、又はリラクタンスアクチュエータとして形成され得る。記載の様式におけるピストン51aを移動させることができる他の形態のアクチュエータもまた考えられる。
【0165】
チャンバーC1、C2が凹レンズ1から凸レンズ1に、又はその逆に切り替わるように作用するために、第1の液体L1をポンプする代わりに、第2の液体L2をポンプすることもまた考慮することができる。
【0166】
図22は、
図3及び
図4に示されるものと類似の実施形態を示す。したがって、
図3及び
図4との相違点のみを精査する。
図3及び
図4の対応する部分で既に詳しく説明されている特徴についてはここでは繰り返さず、対応する部分が参照される。
図3及び
図4とは対照的に、
図22に示す実施形態では、第1の側壁10の円周方向の縁よりも小さい円周方向の縁を有する第2の側壁20を有するレンズ1が提供され、例えば、第2の側壁20の開口部の半径は、第1の側壁10の開口部の半径よりも小さい。
【0167】
この形状は、半径R1を有する第1の膜12上の第1の開口部(半径R1を制限する水平の破線で示される)、及び第2の膜22上の第2の開口部(半径R2を制限する水平の破線で示される)を規定する。開口部は、特に、レンズ1を通して伝搬する入射光又は出射光の開口角又は発散角(円錐形の破線で示されるとおり)によって規定される。
【0168】
第1の壁10は、第1のレンズ成形器として機能し、かつ第2の壁20は第2のレンズ成形器として機能する。
【0169】
図23では、
図3、
図4及び
図22の実施形態と類似の実施形態が示される。したがって、ここでは新しい機能又は異なる機能のみを詳しく説明し、一方で、他の機能については、
図3、4、及び22の対応する段落が参照される。
【0170】
図22とは対照的に、
図23に示される実施形態は、第1の側壁10の円周方向の縁よりも大きな円周方向の縁を有する第2の側壁20を有するレンズ1、例えば、第2の壁20の開口部の半径は、第1の壁10の開口部の半径よりも大きいレンズ1を提供する。
【0171】
この形状は、半径R1を有する第1の膜12上の第1の開口部(半径R1を制限する水平の破線で示される)、及び第2の膜22上の第2の開口部(半径R2を制限する水平の破線で示される)を規定する。開口部は、特に、レンズを通して伝搬する入射光又は出射光の開口角又は発散角(円錐形の破線で示されるとおり)によって規定される。
【0172】
第1の壁10は、第1のレンズ成形器として機能し、かつ第2の壁20は第2のレンズ成形器として機能する。
【0173】
この実施形態では、
図22及び
図3に示すレンズと比較して剛性比を低減することを可能にし、一方で、同様のコマ補償をなお実現することができる。第2の膜22の剛性は、第1の膜12の剛性よりも(約5~10倍と比較して)約3~5倍小さくすることができ、これにより、相当する良好な膜厚比につながる。
【0174】
図24では、
図5及び
図6と類似の実施形態が示される(
図5及び
図6の参照符号は、
図24と同じ特徴を指す)。
図24は、第2の膜22上に配置される特化した第2の開口要素42を有するレンズを示す。第2の開口要素42は、第2の(及びしたがって第1の)開口部分、及び全体的なレンズの光学的な開口を定義及び制限する。レンズに出入りする発散光の開口角(2本の円錐形の破線で囲まれている)は、前記開口素子42によって制限される。
【0175】
図25は、従来の液体レンズのための非円形である楕円形のレンズ成形器のシミュレーションを示しており、液体レンズの弾性膜は本質的にx軸及びy軸に沿って延びる。色分けは、z軸(光軸)に沿った膜の拡張を指す。重力は負のy値に沿って示される。この図からわかるとおり、レンズの液体は、高い膜の外観を有する(正のz値)レンズの下半分に凸状の突出、及びレンズの上半分に凹状の窪み(負のz値)をもたらす。本発明によるレンズを用いることで、非円形レンズ形状における重力誘発コマも同様に補償することができる。
【0176】
非円形の膜を有する非円形の調整可能なレンズの形状が与えられることで、重力効果は、第1の膜と同じ又はスケーリングされた領域、及び等方的に増加又は減少した形態を有する第2の膜を用いて補償することができる。
【0177】
図26は、拡張現実又は仮想現実の表示のための眼鏡を備える本発明の実施形態を示す。
【0178】
眼鏡3は、眼鏡を着用するためのテンプル2616、2626を備える。また、眼鏡は、着用時に眼鏡3の着用者の目の前に配置される第1の眼鏡2610及び第2の眼鏡2620を接続するノーズブリッジ2601を備える。
【0179】
第1及び第2の眼鏡2610、2620は、それぞれ、本発明に従う第1のレンズ2611、2621、並びに本発明に従う第2のレンズ2612、2622を備える。レンズ2611、2621、2612、2622はそれぞれ、液体レンズにおいて一般的に発生する加速依存性収差を防止する、又は少なくとも低減するように構成される。
【0180】
各眼鏡の第1及び第2のレンズは、それらの光軸A1、A2が整列するように配置されている。各眼鏡2610、2620の第1及び第2のレンズ2612、2622は、光軸A1、A2に沿ってスタックを形成し、各眼鏡2610、2620の第1のレンズ2611、2621と、第2のレンズ2621、2622との間には、導波路2615、2625が配置され、導波路2615、2625、特に第1及び第2のレンズ2611、2621、2612、2622それぞれは、眼鏡3を着用する着用者の各眼に仮想コンテンツを表示するように配置及び構成される。
【0181】
本発明によるレンズはまた、コンタクトレンズとして使用及び形成することもできる。