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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240610BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240610BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240610BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240610BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/73
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021514608
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2019076866
(87)【国際公開番号】W WO2020074375
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】18199403.9
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク-エディンガー, クリスティーン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-280005(JP,A)
【文献】特開昭54-129114(JP,A)
【文献】Pure Milky Lotion,ID1662438,Mintel GNPD[online],2011年11月,[検索日2023.10.16],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K31/33-33/44
C09K23/00-23/56
Mintel GNPD
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB6又はその誘導体を含む局所用組成物の変色を抑制するための、ヒアルロン酸ナトリウムと組み合わせたPEG乳化剤の使用であって、
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール又はピリドキサミンであり、
前記PEG乳化剤は、ステアリン酸PEG-100、ヤシ油脂肪酸PEG-20及び/又はステアレス-21を含有し、
前記ヒアルロン酸ナトリウムの量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.01~5重量%である、使用
【請求項2】
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記PEG乳化剤は、ヤシ油脂肪酸PEG-20ステアレス-21、又は、ステアリン酸グリセリルと組み合わせたステアリン酸PEG-100である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記PEG乳化剤は、ヤシ油脂肪酸PEG-20又はステアレス-21である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記PEG乳化剤は、ヤシ油脂肪酸PEG-20である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項6】
前記局所用組成物中の前記ビタミンB6又はその誘導体の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.02~6重量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記局所用組成物中の前記ビタミンB6又はその誘導体の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.02~0.1重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記PEG乳化剤の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.02~6重量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記局所用組成物は、前記PEG乳化剤の存在下で水相中に分散された油性相を含むO/W型エマルジョンである、請求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ビタミンB6又はその誘導体を含有する局所用組成物の変色を低減するための方法であって、
ビタミンB6又はその誘導体、PEG乳化剤、ヒアルロン酸ナトリウム及び化粧的に許容される担体を含む局所用組成物を調製することを含み、
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール又はピリドキサミンであり、
前記PEG乳化剤は、ステアリン酸PEG-100、ヤシ油脂肪酸PEG-20及び/又はステアレス-21を含有し、
前記ヒアルロン酸ナトリウムの量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.01~5重量%である、方法。
【請求項11】
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PEG乳化剤は、ステアリン酸グリセリルと組み合わせて使用されるステアリン酸PEG-100である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記PEG乳化剤は、ヤシ油脂肪酸PEG-20又はステアレス-21である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記局所用組成物中の前記ビタミンB6又はその誘導体の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.02~6重量%である、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PEG乳化剤の量は、前記局所用組成物の総重量を基準として0.02~6重量%である、請求項1014のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビタミンB6又はその誘導体を含む局所用組成物の変色を抑制するための、任意選択的にヒアルロン酸又はその塩と組み合わせたPEG乳化剤の使用に関する。更に、本発明は、ビタミンB6又はその誘導体を含有する局所用組成物の変色を低減するための方法であって、ビタミンB6又はその誘導体、PEG乳化剤並びに任意選択的にヒアルロン酸又はその塩及び化粧的に許容される担体を含む局所用組成物を調製することを含む方法に関する。
【0002】
ビタミンB6又はその誘導体、例えばピリドキシン塩酸塩は、浴用製品、石鹸及び洗浄剤、清浄化製品、スキンケア製品及びヘアケア製品の配合に幅広く使用されている。しかしながら、ビタミンB6又はその誘導体、特にピリドキシン塩酸塩等を含有する特にO/W型エマルジョン等の局所用組成物は、保管時に変色する傾向があり、対応する製品の外観が不快感を与えるものになるため、非常に望ましくない。
【0003】
驚くべきことに、本発明によれば、ビタミンB6又はその誘導体、特にピリドキシン塩酸塩等を含有する局所用組成物の変色は、より好ましくは、ヒアルロン酸又はその塩と組み合わせてPEG乳化剤を使用することにより、ヒアルロン酸ナトリウムを添加することで変色が更に低減されるため、抑制され得ることが見出された。
【0004】
したがって、一態様において、本発明は、ビタミンB6又はその誘導体を含む局所用組成物の変色を抑制するための、任意選択的にヒアルロン酸又はその塩と組み合わせたPEG乳化剤の使用に関する。
【0005】
他の実施形態において、本発明は、ビタミンB6又はその誘導体を含有する局所用組成物の変色を低減するための方法であって、ビタミンB6又はその誘導体、PEG乳化剤、任意選択的にヒアルロン酸又はその塩及び化粧的に許容される担体を含む局所用組成物を調製することと、任意選択的に各組成物を少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも2ヶ月間、最も好ましくは少なくとも3ヶ月間にわたって保管することとを含む方法に関する。
【0006】
更なる態様において、本発明は、保存安定性を有する局所用組成物を調製するための、ビタミンB6又はその誘導体と、PEG乳化剤と、任意選択的にヒアルロン酸又はその塩との組み合わせの使用に関する。この組成物は、変色を防止/抑制する点で非常に優れた保存安定性を示す。
【0007】
ビタミンB6及びその誘導体という語は、特に、ピリドキシン塩酸塩[58-56-0]、ピリドキサール[CAS-Nr.66-72-8]及びピリドキサミン[CAS-Nr.85-87-0]を指す。本発明の全ての実施形態において、例えばPyridoxine hydrochloride又はPyridoxine Hydrochloride 98 DCとしてDSM Nutritional Products AG(4303 Kaiseraugst、Switzerland)から市販されている、ビタミンB6塩酸塩又はビタミンB6としても知られるピリドキシン塩酸塩を使用することが特に好ましい。
【0008】
好ましくは、本発明による組成物中のビタミンB6又はその誘導体、特にピリドキシン塩酸塩等の量は、組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される。
【0009】
PEG乳化剤という語は、当業者によく知られている、ポリエチレングリコールをベースとする乳化剤を指す。この種の乳化剤は、少なくとも1つのポリエチレングリコール含有(PEG)乳化剤を、任意選択的に好適な共乳化剤、例えばステアリン酸PEG-100、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-54水添ヒマシ油及び/又はPEG-6(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ、ステアリン酸PEG-9、ステアリン酸PEG-20、ステアリン酸PEG-30、ステアリン酸PEG-40、パーオレイン酸PEG-40ソルビタン、ステアリン酸グリセリルとステアリン酸PEG-30、ステアリン酸PEG-40との組み合わせ、(PEG-22ドデシルグリコール)コポリマー、ポリグリセリル-2PEG-4ステアレート、ステアリン酸PEG-20、ステアレス-2、ステアレス-21、ステアレス-100、ステアレス-2とジステアリン酸PEG-8との組み合わせ、(PEG-45/ドデシルグリコール)コポリマー、(メトキシPEG-22/ドデシルグリコール)コポリマー、パーオレイン酸PEG-40ソルビタン、パーイソステアリン酸PEG-40ソルビタン、ステアリン酸PEG-20グリセリル、ステアリン酸PEG-20グリセリル、PEG-8ミツロウ、セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース、セチルステアリルアルコールとステアリン酸PEG-20、ステアリン酸PEG-30、ステアリン酸PEG-40及び/又はステアリン酸PEG-100との組み合わせ、セテス-2、セテス-20、セテアレス-12、ラウレス-4、オレス-2、PEG-40水添ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸PEG-8、ジイソステアリン酸PEG-2、ジラウリン酸PEG-4、ステアリン酸PEG-10グリセリル、PEG/PPG-18/6ジメチコン、ビス(PEG/PPG-18/6)ジメチコン並びにヤシ油脂肪酸PEG-20との混合物として含む。全ての実施形態において、少なくとも1つのPEG脂肪酸、例えばステアリン酸PEG-100、ヤシ油脂肪酸PEG-20及び/又はステアレス-21を含有するPEG乳化剤が特に好ましい。
【0010】
本発明の全ての実施形態において最も好ましいPEG乳化剤は、ステアリン酸PEG-100であり、これは、更に好ましくは、ステアリン酸グリセリルと組み合わせて使用される。この混合物は、例えば、Arlacel 165[CAS No:31566-31-1、9004-99-3]としてCrodaから市販されている。
【0011】
本発明による局所用組成物は、有利には、リン酸セチル乳化剤を含有せず、更に好ましくはアニオン性乳化剤を含まないことが十分に理解されるであろう。最も好ましくは、本発明の全ての実施形態において、局所用組成物は、PEG乳化剤のみを(唯一の乳化剤として)、任意選択的に少なくとも1つの脂肪アルコール共乳化剤、特にセチルアルコール及び/又はセテアリルアルコール等との混合物として含む。
【0012】
したがって、好ましい実施形態において、局所用組成物は、PEG乳化剤以外の更なる乳化剤を含まない。
【0013】
好ましくは、本発明の組成物中のPEG乳化剤の量は、組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される。
【0014】
ステアリン酸グリセリルが存在する場合、本発明による組成物中のステアリン酸グリセリルの量は、有利には、組成物の総重量を基準として0.02~5重量%の範囲、好ましくは0.1~4重量%の範囲、最も好ましくは0.25~3重量%の範囲、例えば0.25~2重量%の範囲において選択される。
【0015】
組み合わせて使用される場合のステアリン酸PEG-100対ステアリン酸グリセリルの比(w/w)は、好ましくは、70:30~30:70の範囲、より好ましくは60:40~40:60の範囲、例えば約55:45の範囲において選択される。
【0016】
ヒアルロナンとも称されるヒアルロン酸は、アニオン性の硫酸化されていないグリコサミノグリカンであり、非常に優れた保湿性を有することから、化粧用途に幅広く使用されている。これは、遊離酸として又は化粧的に許容されるその塩の形態、特にナトリウム塩(即ちヒアルロン酸ナトリウム、CAS No 9067-32-7として)等の形態のいずれかで使用される。
【0017】
本発明の全ての実施形態において、DSM Nutritional Products Ltdから市販されている、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液であるHyasol PFを使用することが特に適している。このヒアルロンポリマーの分子量は、約1.6MDaである。
【0018】
本発明による更なる好適なヒアルロン酸としては、A&E Connockから市販されているAEC Hyaluronic Acid、AEC Sodium Hyaluronate、Spec-Chem Industry Inc.から市販されているSpecKare HA、Givaudan Active Beautyから市販されているBashyal Poudre、Evonic Nutrition&Careから市販されているHyaCare Poudre、HTLから市販されているHyaluronate F100、CEP Solabia Groupから市販されているHyaluronic Acid 1% 5P Poudre、キューピー株式会社(Kewpie Corporation)から市販されているヒアルロンサン(Hyaluronsan)HA-Q Poudre及びTri-K Industriesから市販されているSodium Hyaluronate 1% Poudreが挙げられる。
【0019】
好ましくは、本発明による組成物中のヒアルロン酸又はその塩の量は、組成物の総重量を基準として0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.02~3重量%の範囲、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲において選択される。
【0020】
他の態様において、本発明は、ビタミンB6又はその誘導体、例えばピリドキシン塩酸塩と、PEG乳化剤と、任意選択的にヒアルロン酸と、化粧的に許容される担体とを含む、保存安定性を有する局所用組成物に関する。この組成物は、変色を防止/抑制する点で非常に優れた保存安定性を示す。
【0021】
本明細書において用いられる「局所用組成物」という語は、特に、哺乳動物のケラチン質組織、例えばヒトの皮膚又は毛髪、特にヒトの皮膚等に局所的に適用することができる化粧用組成物を指す。
【0022】
本出願において使用される「化粧用組成物」という語は、Roempp Lexikon Chemie,10th edition 1997,Georg Thieme Verlag Stuttgart,New Yorkにおいて「Kosmetika」の表題で定義されている化粧用組成物及びA.Domsch,“Cosmetic Preparations”,Verlag fuer chemische Industrie(ed.H.Ziolkowsky),4th edition,1992に開示されている化粧用製剤を指す。
【0023】
「化粧的に許容される担体」(本明細書では「担体」とも称する)という語は、化粧用組成物に従来使用されている、即ちケラチン質組織に局所的に適用するのに適しており、美容性に優れ、組成物中に存在する活性物質と適合性があり、安全性又は毒性に関する不合理な問題が生じないであろうあらゆる媒体/担体を指す。この種の担体は、当業者によく知られている。
【0024】
担体の正確な量は、活性成分及び当業者が担体と区別して分類するであろう他の任意の任意選択的な成分(例えば、他の活性成分)の実際の量に依存する。
【0025】
有利な実施形態において、本発明による組成物は、組成物の総重量を基準として約50%~約99%、好ましくは約60%~約98%、より好ましくは約70%~約98%、例えば特に約80%~約95%の担体を含む。
【0026】
有利な実施形態において、担体は、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%の水、例えば特に約55~約90重量%の水から更に構成される。
【0027】
本発明による局所用組成物は、一般に、ペン型塗布具で美顔用パックとして又はスプレーとして適用することも可能である、エマルジョン若しくはミクロエマルジョン(特にO/W又はW/O型)、PITエマルジョン、多相エマルジョン(例えば、O/W/O又はW/O/W型)、ピッカリングエマルジョン、ヒドロゲル、アルコール性ゲル、親油性ゲル、単相若しくは多相溶液又はベシクル分散液の形態である。この局所用製剤がエマルジョンであるか又はエマルジョンを含む場合、それは、1つ又は複数のアニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性界面活性剤も含有することができる。
【0028】
本発明による組成物は、有利には、PEG乳化剤の存在下で水相中に分散された油性相を含む水中油(O/W)型エマルジョンの形態である。この種のO/W型エマルジョンの調製は、当業者によく知られている。
【0029】
この種のエマルジョン中に存在する油性相の量は、好ましくは、組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%の範囲、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0030】
本発明によるO/W型エマルジョンの油性相は、好ましくは、ジ(カプリル/カプリン酸)BG、(カプリル/カプリン酸)PG、ジカプリリルエーテル、安息香酸アルキルC12~15、C18~38脂肪酸トリグリセリド、アジピン酸ジブチル、シクロメチコン、ジメチコン、安息香酸2-フェニルエチル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル及びこれらの混合物から選択される油を含む。
【0031】
本発明による局所用組成物は、液体、ローション、濃稠化ローション、ゲル、クリーム、乳液、軟膏、ペースト、粉末、メークアップ用化粧料又は筒形容器入り固形スティックの形態であり得、任意選択的にエアゾールとして包装することができ、エアゾールムース等のムース、フォーム又はスプレーフォーム、スプレー、スティックの形態で提供することができる。
【0032】
本発明の局所用化粧用組成物は、通常の化粧品用補助剤及び添加剤、例えば化粧用組成物に従来配合されている更なるUV遮蔽物質、防腐剤、酸化防止剤、脂肪質物質、油、水、アルコール、ポリオール、有機溶媒、電解質、シリコーン、増粘剤、皮膜形成剤、軟化剤、乳化剤、錯形成剤、消泡剤、保湿剤、香料等の美容成分、界面活性剤、フィラー、金属イオン封鎖剤、アニオン性、カチオン性、非イオン性若しくは両性ポリマー又はこれらの混合物、噴射剤、酸性化若しくは塩基性化剤、染料、着色剤、研磨剤、吸収剤、精油、皮膚感覚刺激剤、収斂剤、消泡剤、顔料若しくはナノ顔料、化粧有効成分又は他の任意の成分、担体及び/或いは賦形剤又は希釈剤等も含有することができる。
【0033】
スキンケア産業において慣用されている、本発明の化粧用組成物中に使用するのに適した化粧品用賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤及び活性成分の例は、これらに限定されるものではないが、例えばオンラインのINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)からアクセス可能なInternational Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook by Personal Care Product Council(http://www.personalcarecouncil.org/)に記載されている。
【0034】
活性成分の必要量に加えて、賦形剤、希釈剤、補助剤、添加剤等の必要量は、所望の製品形態及び用途に基づいて当業者が容易に決定することができる。追加の成分は、適切な場合、油性相に、水相に又は別個に添加することができる。
【0035】
本明細書において有用な化粧有効成分は、幾つかの例では、2つ以上の利点を提供するか又は2つ以上の作用機序を介して作用することができる。
【0036】
本発明による好ましい局所用組成物は、1つ又は複数の酸化防止剤を更に含む。本発明による局所用組成物に組み込むのに適した酸化防止剤は、全て化粧用途に適した酸化防止剤である。ビタミン類等の水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸及びその誘導体等、例えばDSM Nutritional Products LtdからのStay C(アスコルビルモノリン酸ナトリウム)等のリン酸アスコルビル等が特に好ましい。
【0037】
更なる好ましい酸化防止剤は、BHT、ビタミンE及びその誘導体並びにビタミンA及びその誘導体である。
【0038】
本発明による局所用組成物中の(1つ又は幾つかの)酸化防止剤の量は、好ましくは、局所用組成物の総量に対して約0.001~30重量%の範囲、特に約0.05~20重量%の範囲、その中でも特に約0.1~10重量%の範囲において選択される。
【0039】
ビタミンE誘導体が本発明による局所用組成物中に使用される場合、好ましくは酢酸トコフェリルが使用される。酢酸トコフェリルは、局所用製剤中に約0.05~25重量%、特に0.5~5重量%の量で存在することができる。他の特筆すべきビタミンE誘導体は、リノール酸トコフェリルである。リノール酸トコフェリルは、スキンケア組成物中に約0.05~25重量%特に0.5~5重量%の量で存在し得る。
【0040】
ビタミンA及び/又はその誘導体、特にパルミチン酸レチニル又はプロピオン酸レチニル等のレチノイド誘導体は、好ましくは、本発明による局所用製剤中に0.01~5重量%の量、特に0.01~0.3重量%の量で使用される。
【0041】
好ましくは、本発明による局所用組成物は、少なくとも1つの脂肪アルコール(共乳化剤)、特にセチルアルコール、セテアリルアルコール及び/又はベヘニルアルコール等を更に含む。本発明による局所用組成物中の1つ又は複数の脂肪アルコールの総量は、好ましくは、局所用組成物の総重量に対して約0.1~10.0重量%の範囲、特に約0.5~6.0重量%の範囲において選択される。
【0042】
本発明による好適な化粧有効成分には、皮膚の美白;日焼け防止;セルフタンニング;色素沈着過剰の治療;ざ瘡の予防又は低減;シワ、小ジワ、萎縮及び/又は炎症の治療;セルライトの治療(例えば、フィタン酸)、引締め、賦活化、皮膚の鎮静に適した作用物質並びに皮膚の弾力性及び皮膚バリアを改善する作用物質が包含される。
【0043】
本明細書における有用な化粧有効成分は、幾つかの例では、2つ以上の利点を提供するか又は2つ以上の作用機序を介して作用することができる。
【0044】
本発明による局所用組成物に組み込むための化粧有効成分の好ましい例には、ビタミンB、ビタミンB12、ビオチン、補酵素Q10、EGCG、アルファ-リポ酸、フィトエン、ヒドロキシチロソール及び/若しくはオリーブ抽出物、シヤ脂、藻類抽出物、カカオ脂、アロエ抽出物、ホホバ油、エキナセア抽出物、カモミール抽出物、アルファ-グルコシルルチン、カルニチン、カルノシン、天然及び/若しくは合成イソフラボノイド、クレアチン、タウリン、アラニン、グリチルレチン酸、甘草並びに/又は新疆甘草が包含される。
【0045】
化粧活性成分は、通常、局所用製剤の総重量を基準として少なくとも0.001重量%の量で含まれる。一般に、追加の化粧活性剤は、約0.001重量%~約30重量%の量、好ましくは約0.001重量%~約10重量%の量で使用される。更に好ましくは、本発明による局所用組成物は、保湿剤を更に含む。保湿剤は、例えば、経皮水分蒸散量(TEWL)を測定することにより求めることができる皮膚の水和(水分含有量)を向上させることにより、皮膚の外層(表皮)をより軟かく且つよりしなやかにすることを専らの目的として設計された化学的作用物質である。本発明による好適な保湿剤は、例えば、グリセリン、乳酸及び/又は乳酸塩、特に乳酸ナトリウム等、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ビオサッカリドガム-1、ツルマメ、エチルヘキシルオキシグリセリン、ピロリドンカルボン酸、異性化糖及び/又は尿素である。
【0046】
好ましくは、本発明による局所用組成物は、特に局所用組成物がエマルジョン形態である場合、製品に適切な粘稠性を付与することを促進する増粘剤を含む。好ましい増粘剤は、ケイ酸アルミニウム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸エステル、例えばcarbopole(登録商標)(例えば、Carbopole 980、981、1382、2984、5984)又はこれらの混合物である。更なる好ましい増粘剤には、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10~30))コポリマー(例えば、NOVEONからのPemulen TR 1、Pemulen TR 2、Carbopol 1328等)及びAristoflex AVC(INCI:(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー(Ammonium Acryloyldimethyltaurate/VP Copolymer))が包含される。
【0047】
本発明による化粧用組成物は、有利には、防腐剤を含む。本発明の全ての実施形態において特に好適な防腐剤は、ヒドロキシアセトフェノン、フェノキシエタノール及びエチルヘキシルグリセリン並びにこれらの混合物である。防腐剤は、存在する場合、好ましくは組成物の総重量を基準として0.1~2重量%の量、より好ましくは0.5~1.5重量%の量で使用される。
【0048】
本発明による組成物のpHは、一般に、3~10の範囲であり、好ましくは、pHは、4~8の範囲であり、最も好ましくは、pHは、5~8の範囲である。pHは、当技術分野における標準的な方法に従い、適切な酸、例えばクエン酸等、又は塩基、例えば水酸化ナトリウム(例えば、水溶液として)、トリエタノールアミン(TEA Care)、トロメタミン(Trizma Base)及びアミノメチルプロパノール(AMP-Ultra PC 2000)を用いて、要求に従って容易に調整することができる。
【0049】
皮膚に適用される組成物の量は、決定的に重要ではなく、当業者が容易に調整することができる。好ましくは、この量は、0.1~3mg/皮膚cmの範囲、例えば好ましくは0.1~2mg/皮膚cmの範囲、最も好ましくは0.5~2mg/皮膚cmの範囲において選択される。
【0050】
以下に示す実施例は、本発明の組成物及び効果を更に例示するために提供するものである。これらの実施例は、例示のみを目的とし、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0051】
[実施例1]
表1に概要を示す配合物を調製し、40℃で3ヵ月間保管した。参照用として、リン酸セチル乳化剤を含む同じ組成物を調製した。t0及び3ヵ月保管後の色安定性を、試料の変色の指標値であるb値(L値/CIELAB系)(b値が高いほど変色が大きい)を測定することにより評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
驚くべきことに、PEG乳化剤を使用することにより、変色の問題が解消され、ヒアルロン酸ナトリウムを添加することにより、この効果が一層増強された。配合物の色は、保管期間全体を通してクリームホワイト色を維持したが、リン酸セチル乳化剤を含む配合物は、黄色に変化した。
【0054】
[実施例2]
表2及び3に概要を示す配合物を調製し、膳板の上で6週間保管した。PEG乳化剤に替えてリン酸セチル乳化剤を含むものを参照用とした。表2は、2重量%の乳化剤及び0.5重量%のビタミンB6を含む実施例の概要を示し、表3は、2重量%の乳化剤及び0.1重量%のビタミンB6を含む実施例の概要を示す。
【0055】
t0及び6週間保管した後の色安定性を、L値を測定することにより評価した。次いで、t0に対する6週間保管後のΔE値を算出した。
【0056】
測定により、配合物の色変化(色変化がある場合)が求められる。L系は、CIELAB系とも称される。これは、円筒座標方式で可視化することができ、円筒の軸は、0%~100%の範囲で変化する明度の変数Lであり、半径は、色度の変数a及びbである。変数aは、緑(負方向)から赤(正方向)の軸であり、変数bは、青(負方向)から黄(正方向)の軸である。
【0057】
これらの値に基づいてΔE値を算出することができる。ΔE値は、保管期間にわたる配合物の全体的な色の差を反映する。ΔE値が高いほど色の差が大きい。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
驚くべきことに、PEG乳化剤を含有する配合物は、より小さいΔE値を示し、これは、配合物の変色が、乳化剤としてリン酸セチルを含有する配合物と比較して小さかったことに対応する。
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
ビタミンB6又はその誘導体を含む局所用組成物の変色を抑制するための、任意選択的にヒアルロン酸又はその塩と組み合わせたPEG乳化剤の使用。
[実施形態2]
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩である、実施形態1に記載の使用。
[実施形態3]
前記PEG乳化剤は、任意選択的にステアリン酸グリセリルと組み合わせたステアリン酸PEG-100、ヤシ油脂肪酸PEG-20及び/又はステアレス-21である、実施形態1又は2に記載の使用。
[実施形態4]
ヒアルロン酸又はその塩は、存在し、前記ヒアルロン酸又はその塩は、ヒアルロン酸ナトリウムである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の使用。
[実施形態5]
前記局所用組成物中の前記ビタミンB6又はその誘導体の量は、前記組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の使用。
[実施形態6]
前記PEG乳化剤の量は、前記組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の使用。
[実施形態7]
前記ヒアルロン酸又はその塩の量は、前記組成物の総重量を基準として0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.02~3重量%の範囲、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲において選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の使用。
[実施形態8]
前記局所用組成物は、前記PEG乳化剤の存在下で水相中に分散された油性相を含むO/W型エマルジョンである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の使用。
[実施形態9]
ビタミンB6又はその誘導体を含有する局所用組成物の変色を低減するための方法であって、ビタミンB6又はその誘導体、PEG乳化剤並びに任意選択的にヒアルロン酸又はその塩及び化粧的に許容される担体を含む局所用組成物を調製することを含む方法。
[実施形態10]
前記ビタミンB6又はその誘導体は、ピリドキシン塩酸塩である、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]
前記PEG乳化剤は、ステアリン酸グリセリルと組み合わせて使用されるステアリン酸PEG-100である、実施形態9又は10に記載の方法。
[実施形態12]
ヒアルロン酸又はその塩は、存在し、前記ヒアルロン酸又はその塩は、ヒアルロン酸ナトリウムである、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態13]
前記局所用組成物中の前記ビタミンB6又はその誘導体の量は、前記組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される、実施形態9~12のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態14]
前記PEG乳化剤の量は、前記組成物の総重量を基準として0.02~6重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される、実施形態9~13のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態15]
前記ヒアルロン酸又はその塩の量は、前記組成物の総重量を基準として0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.02~3重量%の範囲、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲において選択される、実施形態9~14のいずれか1つに記載の方法。