(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】核酸を検出する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20240610BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240610BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240610BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240610BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6876 Z
C12N15/55 ZNA
C12N15/11 Z
C12N9/16 Z
(21)【出願番号】P 2021515554
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2018118457
(87)【国際公開番号】W WO2020056924
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】201811099146.0
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512256605
【氏名又は名称】インスティテュート オブ ズーオロジー、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チー
(72)【発明者】
【氏名】テン,フェイ
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/233385(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/011022(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107488710(CN,A)
【文献】Linxian Li et al.,CRISPR-Cas12b-assisted nucleic acid detection platform.,BioRxiv,2018年07月06日,doi: 10.1101/362889
【文献】LI, Linxian et al,"CRISPR-Cas12b-assisted nucleic acid detection platform", BioRxiv,2018.7.6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中の標的核酸分子の存在及び/又は量を検出する方法であって、
(a)生物学的試料を、(i)Cas12bタンパク質、(ii)標的核酸分子中の標的配列を対象とするガイドRNA(gRNA)、及び(iii)切断された後に検出可能なシグナルを生成する一本鎖DNAレポーター分子と接触させ、それにより反応混合物を生成するステップ、
(b)反応混合物において生成した検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルを検出するステップ
を含み、検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルが標的核酸分子の存在及び/又は量に相当し、Cas12bタンパク質がアリシクロバチルス・アシディフィラス由来のAaCas12bであ
り、Cas12bタンパク質が、
(1)配列番号1と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号1と比べて1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個のアミノ酸残基が置換されている、欠失している又は付加されているアミノ酸配列、又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列
を含む、方法。
【請求項2】
標的核酸分子が二本鎖DNA分子又は一本鎖DNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガイドRNAがsgRNAである、請求項1から
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
sgRNAが、配列番号11~66のうちの1つから選択される核酸配列によってコードされるスキャホールド配列を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
sgRNAが、標的配列又は標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズするスペーサー配列をスキャホールド配列の3'末端に含む、請求項
3又は
4に記載の方法。
【請求項6】
スペーサー配列が、標的配列との少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを有する、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
一本鎖DNAレポーター分子が、一本鎖DNAの両末端にフルオロフォア及び対応する消光基をそれぞれ含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
フルオロフォアが、FAM、TEX、HEX、Cy3又はCy5から選択され、消光基が、BHQ1、BHQ2、BHQ3又はTAMRAから選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
一本鎖DNAレポーター分子が2~100ヌクレオチド長である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一本鎖DNAレポーター分子がポリA、ポリC、又はポリTである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)の前に生物学的試料中の核酸分子を増幅するステップをさらに含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記増幅が、PCR増幅又はリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅がリコンビナーゼポリメラーゼ増幅である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅が10分間~60分間行われる、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
生物学的試料との前記接触の前に、Cas12bタンパク質をgRNAと事前に合わせてCas12b-gRNA複合体を形成させている、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)の前記反応が、20分~180分にわたって行われる、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)が、NEBuffer(商標)2、NEBuffer(商標)2.1又はCutsmart(登録商標)バッファーのバッファー中で行われる、請求項1から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
生物学的試料が全血、血漿、血清、髄液、尿、便、細胞又は組織抽出物から選択される、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
生物学的試料が細胞又は組織から抽出された核酸試料である、請求項1から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
Cas12bタンパク質を含む、請求項1から
19のいずれか一項に記載の方法において使用するためのキットであって、Cas12bタンパク質がアリシクロバチルス・アシディフィラス由来のAaCas12bであ
り、Cas12bタンパク質が、
(1)配列番号1と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号1と比べて1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個のアミノ酸残基が置換されている、欠失している又は付加されているアミノ酸配列、又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列
を含む、キット。
【請求項21】
gRNA又はgRNAを作製するための試薬、一本鎖DNAレポーター分子、バッファー、及び/又は核酸増幅試薬をさらに含む、請求項
20に記載のキット。
【請求項22】
ガイドRNAがsgRNAである、請求項
21に記載のキット。
【請求項23】
sgRNAが、配列番号11~66のうちの1つから選択される核酸配列によってコードされるスキャホールド配列を含む、請求項
22に記載のキット。
【請求項24】
sgRNAが、標的配列又は標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズするスペーサー配列をスキャホールド配列の3'末端に含む、請求項
22又は
23に記載のキット。
【請求項25】
スペーサー配列が、標的配列との少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを有する、請求項
24に記載のキット。
【請求項26】
一本鎖DNAレポーター分子が、一本鎖DNAの両末端にフルオロフォア及び対応する消光基をそれぞれ含む、請求項
21から
25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
フルオロフォアが、FAM、TEX、HEX、Cy3又はCy5から選択され、消光基が、BHQ1、BHQ2、BHQ3又はTAMRAから選択される、請求項
26に記載のキット。
【請求項28】
一本鎖DNAレポーター分子が2~100ヌクレオチド長である、請求項
21から
27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
一本鎖DNAレポーター分子がポリA、ポリC、又はポリTである、請求項
21から
28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
NEBuffer(商標)2、NEBuffer(商標)2.1又はCutsmart(登録商標)バッファーのバッファーを含む、請求項
21から
29のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子工学分野に関する。特に本発明は、CRISPR系に基づく新規な核酸検出方法に関する。より詳細には本発明は、Cas12bが媒介するDNA検出方法及び関連したキットに関する。
【背景技術】
【0002】
迅速かつ携帯可能な核酸検出は、臨床診断及び検疫検査において多くの利用が見込まれる。CRISPRヌクレアーゼCas12a及びCas13は、それらがssDNA又はssRNAトランス切断活性を持つことから、RNA及びDNAを高感度でかつ高い特異性で迅速に検出するために開発されてきた。CRISPR-Cas13に基づくRNA検出プラットホームはSHERLOCKと呼ばれ、Cas12aに基づくDNA検出プラットホームはDETECTRと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
感度及び特異性がより高い核酸検出プラットホームをさらに開発することは、本分野において非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、Cas12aより高い特異性でかつアトモル濃度のレベルまでの高感度でDNAを検出することができる、CDetectionと称されるCas12bに基づく核酸検出方法を提供する。本発明はまた、1つの一塩基多型だけが異なる2つの標的を区別可能な強化された(enhanced)CDetection(eCDetection)を提供する。CRISPR-Cas12bに基づくCDetection技術は、衛生及びバイオテクノロジーへの利用の領域において迅速かつ簡便なDNA検出方法を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】Cas12タンパク質の保存された標的認識により非特異的単鎖DNA(ssDNA)切断が活性化されることを示す図である。(a)Cas12bが、dsDNAのカノニカルな標的認識及び切断能力、並びにssDNAの非カノニカルなコラテラル切断能力を有することを示す概略図。(b)M13ファージと相補的なオンターゲットガイドRNA(OT-gRNA)と組み合わせた精製AaCas12b、ArCas12a、HkCas12a、PrCas12a及びSpCas9を用いたM13mp18 ssDNA切断の経時変化。(c)M13ファージと配列相同性がないノンターゲットガイドRNA(NT-gRNA)及び相補的ssDNAアクチベーターと組み合わせた精製AaCas12b、ArCas12a、HkCas12a、PrCas12a及びSpCas9を用いたM13mp18 ssDNA切断の経時変化。
【
図2】Cas12bのRuvCドメインがssDNAトランス切断に関与することを示す図である。(a~b)オンターゲットgRNA(OT-gRNA)若しくはノンターゲットgRNA(NT-gRNA)(a)と、又はM13ファージともpUC19とも配列相同性がないNT-gRNA及び相補的ssDNAアクチベーター(b)と組み合わせた精製WT AaCas12b及びRuvC触媒変異体(R785A又はD977A)を用いたM13mp18 ssDNA基質及びpUC19 dsDNA切断の経時変化。
【
図3】Cas12bが媒介するトランス活性化型切断の非特異的ssDNAに対する選択性を示す図である。(a)AaCas12bが媒介するトランス切断の、A、T、G又はC塩基のホモ多量体を含むssDNAレポーターに対する塩基選択性。AaCas12bを、合成ssDNA標的1又は標的2を標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位。(b)AaCas12bが媒介するトランス切断活性に対する影響について、様々なバッファーを試験する。AaCas12bを、合成ssDNA1を標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。(c)オンターゲット-ssDNA(OT-ssDNA)、ノンターゲット-ssDNA(NT-ssDNA)、オンターゲット-dsDNA(OT-dsDNA)及びノンターゲット-dsDNA(NT-dsDNA)をアクチベーターとして用いたAaCas12bに関するトランス切断活性分析。AaCas12bを、合成ssDNA2を標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図4】Cas12bが媒介するDNA検出の特異性及び感度を示す図である。(a)示されている単一ミスマッチを有するssDNA又はdsDNAアクチベーターを用いたAaCas12bのトランス切断活性の特徴付け。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位。PT、パーフェクトターゲット(perfect target);mPAM、変異PAM。(b)示されている連続ミスマッチを有するssDNA又はdsDNAアクチベーターを用いた、AaCas12bのトランス切断活性の特徴付け。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(c)合成HPV16アクチベーターを用いた、dsDNA識別性におけるAaCas12b、PrCas12a及びLbCas12aの特異性の比較。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(d)dsDNAアクチベーターを用いた、AaCas12bに関するトランス切断活性及び前増幅により増強されるトランス切断活性(CDetection)の比較。AaCas12bを、合成dsDNA1を標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。RPA、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅。(e)RPA前増幅を行うAaCas12b、PrCas12a及びLbCas12aに基づくDNA検出から得られる最大蛍光シグナル。Cas12を、バックグラウンドゲノムと混合した合成HPV16 dsDNAを標的とする同族gRNAとともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(f)RPA前増幅を行うAaCas12b及びLbCas12aに基づくDNA検出から得られる蛍光の経時的動態。Cas12を、ヒト血漿中で最終濃度10
-18Mに希釈された、合成HPV16 dsDNAを標的とする同族ガイドRNA(gRNA)とともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図5】AaCas12bが媒介するDNA検出の感度及び特異性を示す図である。(a)前増幅を行わずにssDNA又はdsDNAアクチベーターを用いた、AaCas12bに関するトランス切断活性の比較。AaCas12bを、合成ssDNA又はdsDNAを標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。(b)AaCas12b-sgRNAがCaMV DNAの存在を検出することを示す蛍光の経時的動態。(c)AaCas12bは2つの合成HPV配列を識別し、これらの配列は6個のヌクレオチド多型を有する。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(d)合成HPV18アクチベーターを用いた、dsDNA識別性におけるAaCas12b、PrCas12a及びLbCas12aの特異性の比較。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(e)dsDNAアクチベーターを用いたAaCas12bに関するトランス切断活性及び前増幅により増強されるトランス切断活性の比較。AaCas12bを、合成ssDNA2又はdsDNA2を標的とするsgRNAとともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図6】CDetectionが、DNA検出においてアトモル濃度以下の感度を達成することを示す図である。(a)CDetectionは、バックグラウンドゲノムと混合したHPV16及びHPV18 dsDNAの検出においてアトモル濃度以下(0.1aM)の感度を達成する。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位。(b)RPA前増幅を行うAaCas12b及びLbCas12aに基づくDNA検出から得られる蛍光の経時的動態。Cas12を、ヒト血漿中で最終濃度10
-18Mに希釈された合成HPV18 dsDNAを標的とする同族gRNAとともにインキュベートする。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図7】CDetectionプラットホームの利用を示す図である。(a)CDetectionにより検出されるABO式血液型の遺伝子型解析を示す概略図。6つの一般的なABOアレル及び3つの標的化sgRNAを示す。それぞれのsgRNAが、検出可能なシグナルにより同一のアレルを識別する。すべての3つのsgRNAがシグナルを発生させなければ、そのアレルはA101又はA201である。(b)CDetectionを用いたABO式血液型の遺伝子型検出において得られた蛍光シグナル(Fluorescence single)。CDetectionは、1つの一塩基多型だけが異なる2つのdsDNAアクチベーターを識別することができない(オン-B101対オフ-B101、オン-O01対オフ-O01、オン-O02/03対オフ-O02/03)。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位。(c)チューニングされた(tuned)gRNA(tgRNA)の導入によるeCDetectionの開発を示す概略図。sgRNAを用いたCDetectionは、単一ミスマッチにより異なる2つのdsDNAアクチベーターを識別することができないが、スペーサー配列内にミスマッチを有するtgRNAを用いたeCDetecionは、一塩基レベルの分解能でのDNA検出を実現することができる。
【
図8】強化されたCDetection(eCDetection)に関する広範な利用を示す図である。(a)tgRNAと組み合わせたCDectionは、1ヌクレオチドレベルの分解能での特異性でABO式血液型の遺伝子型検出を実現する。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位;tgRNA、チューニングされたガイドRNA。(b-c)(上)BRCA1遺伝子内の配列バリエーション並びに標的化sgRNA及びtgRNAを示す概略図。(下)sgRNA及びtgRNAを用いたヒトBRCA1(b)3232A>G及び(c)3537A>G変異検出に関する、RPAを行わないCDetectionの特異性を示す最大蛍光シグナル。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。(d)tgRNA(3232-1)を用いたヒトBRCA1 3232A>G変異検出に関する、RPAを行うCDetectionの感度及び特異性を示す蛍光の経時的動態。野生型BRCA1又はBRCA1 3232A>G dsDNAを、ヒト血漿中に最終濃度10
-18Mに希釈する。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図9】CDetectionプラットホームを用いた正確なDNA検出を示す図である。(a)(上)TP53遺伝子内の配列バリエーション並びに標的化sgRNA及びtgRNAを示す概略図。(下)sgRNA及びtgRNAを用いたヒトTP53 856G>A変異検出に関する感度を示す最大蛍光シグナル。エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す(n=3)。RFU、相対蛍光単位;tgRNA、チューニングされたガイドRNA。(b~c)(上)BRCA1遺伝子内の配列バリエーション並びに標的化sgRNA及びtgRNAを示す概略図。(下)sgRNA及びtgRNAを用いたヒトBRCA1(b)3232A>G及び(c)3537A>G変異検出に関する感度を示す最大蛍光シグナル。(d)tgRNA(3232-1)を用いたヒトBRCA1 3232A>G変異検出に関する、RPAを行うCDetectionの感度及び特異性を示す蛍光の経時的動態。野生型BRCA1又はBRCA1 3232A>G dsDNAを、ヒト血漿中に最終濃度10
-16Mに希釈する。エラーバーはs.e.m.を示す(n=3)。
【
図10】CDetectionの迅速かつ正確な診断への利用を示す図である。臨床診断及び検疫検査用に直接溶解した様々な試料からゲノムDNAを得る。様々な目的のために、RPA有り又は無しのDNAを、sgRNA又はtgRNAと組み合わせたCas12bに基づく検出に適用した。
【
図11】ゲノム編集試験のために選択した非縮重C2c1オルソログの系統樹及びそれらの遺伝子座を示す図である。(a)この研究で試験されたC2c1オルソログの進化的関係を示す近隣結合系統樹。(b)(a)においてマーカーで強調表示されている8つのC2c1タンパク質に対応する細菌ゲノム遺伝子座のマップ。crRNA DR及び推定tracrRNAのインシリコでのコフォールディングは安定な二次構造を示す。DR、ダイレクトリピート。それぞれの細菌ゲノムスペーサーの数はそれらのCRISPRアレイの上又は下に示している。
【
図12】C2c1オルソログのタンパク質アラインメントを示す図である。この研究で試験された10個のC2c1オルソログのアミノ酸配列の多重配列アラインメント。保存された残基は赤色の背景色で強調表示し、保存された変異は枠で囲んだ赤色フォントで強調表示している。
【
図13】ヒト293T細胞におけるC2c1オルソログが媒介するゲノム標的化を示す図である。(a)ヒトゲノムにおけるそれらの同族sgRNAと組み合わせた8つのC2c1タンパク質のゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。(b)ヒト293T細胞におけるその同族sgRNA(Bs3sgRNA)と組み合わせたBs3C2c1が媒介する同時多重ゲノム標的化を示すT7EIアッセイ結果。(c)Bs3sgRNAと組み合わせたBs3C2c1により誘導される代表的なインデルを示すサンガーシーケンシング。PAM及びプロトスペーサー配列はそれぞれ赤色及び青色である。インデル及び挿入はそれぞれ紫色のダッシュ及び緑色の小文字で表している。
【
図14】RNAガイド付きゲノム編集のためのオルソゴナルなC2c1タンパク質を示す図である。(a)この研究で試験された10個のC2c1オルソログの概要図。大きさ(アミノ酸数)が示されている。(b)ヒト293T細胞におけるそれらの同族sgRNAが対象とする8つのC2c1オルソログのゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。(c~d)ヒト293T細胞におけるAasgRNA(c)及びAksgRNA(d)が対象とする8つのC2c1オルソログのゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。
【
図15】C2c1のsgRNAのDNAアラインメントを示す図である。この研究において試験された10個のC2c1遺伝子座に由来する8つのsgRNAのDNA配列の多重配列アラインメント。
【
図16-1】C2c1オルソログとそれらのsgRNAとが交換して使用可能であることを示す図である。ヒト293T細胞におけるAasgRNA(a)、AksgRNA(b)、AmsgRNA(c)、Bs3sgRNA(d)及びLssgRNA(e)が対象とする8つのC2c1オルソログのゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。
【
図16-2】C2c1オルソログとそれらのsgRNAとが交換して使用可能であることを示す図である。ヒト293T細胞におけるAasgRNA(a)、AksgRNA(b)、AmsgRNA(c)、Bs3sgRNA(d)及びLssgRNA(e)が対象とする8つのC2c1オルソログのゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。
【
図17】人工sgRNAが媒介する多重ゲノム標的化を示す図である。(a)DiC2c1及びTcC2c1に対応する細菌ゲノム遺伝子座のマップ。この2つのC2c1遺伝子座はCRISPRアレイを有さない。(b~c)ヒト293T細胞におけるAasgRNA(b)及びAksgRNA(c)が対象とするAaC2c1、DiC2c1及びTcC2c1のゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。(d)ヒト293T細胞におけるAksgRNAと組み合わせたTcC2c1が媒介する同時多重ゲノム標的化を示すT7EIアッセイ結果。(e)人工sgRNAスキャホールド13(artsgRNA13)の二次構造を示す概略図。(f)ヒト293T細胞におけるartsgRNA13と組み合わせたTcC2c1が媒介する同時多重ゲノム標的化を示すT7EIアッセイ結果。
【
図18】ゲノム編集のためのC2c1を対象とするオルソゴナルなsgRNAを示す図である。ヒト293T細胞におけるAasgRNA(a)、AksgRNA(b)、AmsgRNA(c)、Bs3sgRNA(d)及びLssgRNA(e)が対象とするAaC2c1、DiC2c1及びTcC2c1のゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。
【
図19】TcC2c1が媒介する多重ゲノム編集を示す図である。(a)ヒト293T細胞におけるAmsgRNAと組み合わせたTcC2c1が媒介する同時多重ゲノム標的化を示すT7EIアッセイ結果。(b~c)AksgRNA(b)及びAmsgRNA(c)と組み合わせたTcC2c1によって誘導される代表的なインデルを示すサンガーシーケンシング。PAM及びプロトスペーサー配列はそれぞれ赤色及び青色である。インデル及び挿入はそれぞれ紫色のダッシュ及び緑色の小文字で表している。
【
図20-1】ゲノム編集のためのTcC2c1を対象とする人工sgRNAを示す図である。(a)36個の人工sgRNA(artsgRNA)スキャホールド(スキャホールド:1~12及び14~37)の二次構造を示す概略図。
【
図20-2】(b)ヒト293T細胞におけるartsgRNAが対象とするTcC2c1のゲノム標的化活性を示すT7EIアッセイ結果。赤色の三角は切断されたバンドを示す。(c)ヒト293T細胞におけるartsgRNA13と組み合わせたAaC2c1が媒介する同時多重ゲノム標的化を示すT7EIアッセイ結果。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明において、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、別途明記されていない限り当業者により一般的に理解される意味を有する。また本明細書で使用されているタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学関連の用語、並びに検査法は、該当する分野で広く使用されている用語及び通常のステップである。例えば、本発明において使用される標準的な組み換えDNA及び分子クローニング技術は当業者によく知られており、以下の文書にさらに十分に記載されている:Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, 1989(本明細書において以後「Sambrook」と称する)。その一方で、本発明をよりよく理解するために、関連する用語の定義及び説明を下記に示す。
【0007】
第1の態様において、本発明は、生物学的試料中の標的核酸分子の存在及び/又は量を検出する方法であって、
(a)生物学的試料を、(i)Cas12bタンパク質、(ii)標的核酸分子中の標的配列に対するgRNA、及び(iii)切断された後に検出可能なシグナルを生成する一本鎖DNAレポーター分子と接触させ、それにより反応混合物を生成するステップ、
(b)反応混合物において生成した検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルを検出するステップ
を含み、検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルが標的核酸分子の存在及び/又は量に相当する方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、標的核酸分子は二本鎖DNA分子である。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は一本鎖DNA分子である。標的核酸分子は、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNAなど、又はその断片であってもよい。
【0009】
「Cas12b」、「Cas12bヌクレアーゼ」、「Cas12bタンパク質」、「C2c1」、「C2c1ヌクレアーゼ」及び「C2c1タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、微生物学的CRISPR系のRNA依存性配列特異的ヌクレアーゼを指す。Cas12bは、ガイドRNAの誘導のもとでDNA標的配列を標的化及び切断して、カノニカルなdsDNA切断活性としても知られているDNA二本鎖切断(double-strand break)(DSB)を形成することができる。より重要なことに、Cas12bとgRNAの複合体は、対応する標的DNA配列を認識しそれに結合した後、非カノニカルなバイパスssDNA切断活性としても知られているその非特異的ssDNA切断活性を活性化させることができる。非カノニカルなバイパスssDNA切断活性を使用して切断時に検出可能なシグナルを生成する一本鎖DNAレポーター分子の切断は、標的DNAの存在及び/又は量を反映し得る。本明細書において、Cas12bの非特異的一本鎖DNA切断活性を活性化させるCas12b及びgRNAの複合体により認識され結合されるDNA分子はまた「アクチベーター」とも称される。
【0010】
いくつかの実施形態では、Cas12bタンパク質はアリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)由来のAaCas12b、アリシクロバチルス・カケガウェンシス(Alicyclobacillus kakegawensis)由来のAkCas12b、アリシクロバチルス・マクロスポランジーダス(Alicyclobacillus macrosporangiidus)由来のAmCas12b、バチルス・ヒサシイ(Bacillus hisashii)由来のBhCas12b、バチルス属(Bacillus)由来のBsCas12b、バチルス属(Bacillus)由来のBs3Cas12b、デスルフォビブリオ・イノピナタス(Desulfovibrio inopinatus)由来のDiCas12b、レイシーラ・セディミニス(Laceyella sediminis)由来のLsCas12b、スピロヘータ・バクテリウム(Spirochaetes bacterium)由来のSbCas12b、又はツベリバチルス・カリダス(Tuberibacillus calidus)由来のTcCas12bである。いくつかの好ましい実施形態において、Cas12bタンパク質はアリシクロバチルス・アシディフィラス由来のCas12bタンパク質(AaCas12b)である。出願人は、これらのCas12bタンパク質を、哺乳動物におけるゲノム編集並びに本発明の核酸検出方法に使用できることを見出した。
【0011】
例えば、Cas12bタンパク質はアリシクロバチルス・アシディフィラスNBRC 100859由来のAaCas12b、アリシクロバチルス・カケガウェンシスNBRC 103104由来のAkCas12b、アリシクロバチルス・マクロスポランジーダスDSM 17980株由来のAmCas12b、バチルス・ヒサシイC4株由来のBhCas12b、及びバチルス属NSP2.1由来のBsCas12b、バチルス属V3-13コンティグ_40由来のBs3Cas12b、デスルフォビブリオ・イノピナタスDSM 10711由来のDiCas12b、レイシーラ・セディミニスRHA1株由来のLsCas12b、スピロヘータ・バクテリウムGWB1_27_13由来のSbCas12b、ツベリバチルス・カリダスDSM 17572由来のTcCas12bである。いくつかの好ましい実施形態において、Cas12bタンパク質はアリシクロバチルス・アシディフィラスNBRC 100859由来のCas12bタンパク質である。
【0012】
アリシクロバチルス・アシディフィラスのCas12b遺伝子座には、配列決定されたダイレクトリピート(DR)アレイがないため、当業者は遺伝子編集を行うことは不可能であり、CRISPRヌクレアーゼスクリーニングにおいて遺伝子編集は行わないと認識するだろう。しかしながら、本発明者らは驚くべきことに、アリシクロバチルス・アシディフィラスのCas12bタンパク質が、遺伝子編集及び核酸検出に使用できるカノニカルな標的化dsDNA切断活性及び非カノニカルなバイパスssDNA切断活性も有することを見出した。同様に、同定されている他のCas12bタンパク質のうちのいくつか、例えばDiCas12b又はTcCas12bタンパク質などは、それらの天然の遺伝子座はCRISPRアレイを有さないものの、意外なことに本発明で有用である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、その天然の遺伝子座がCRISPRアレイを有さないCas12bタンパク質である。いくつかの実施形態において、その天然の遺伝子座がCRISPRアレイを有さないCas12bタンパク質はAaCas12b、DiCas12b又はTcCas12bである。
【0014】
いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと比べて1つ以上のアミノ酸残基が置換されている、欠失している又は付加されているアミノ酸配列を含む。例えばCas12bタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと比べて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸残基が置換されている、欠失している又は付加されているアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は保存的置換である。いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。例えばAaCas12b、AkCas12b、AmCas12b、BhCas12b、BsCas12b、Bs3Cas12b、DiCas12b、LsCas12b、SbCas12b、TcCas12bは、配列番号1~10のいずれか1つに記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む。いくつかの好ましい実施形態において、Cas12bタンパク質は配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明者らは、Cas12bタンパク質のRuvCドメインがその非カノニカルなバイパスssDNA切断活性に重要であることを実証した。いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、例えば配列番号1~10のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む野生型Cas12bタンパク質のRuvCドメインを含む。当業者は、例えばNCBIが提供しているツールによって、Cas12bタンパク質のRuvCドメインを容易に特定することができる。
【0016】
配列「同一性」は当技術分野において認識されている意味を有し、2つの核酸又はポリペプチド分子又は領域の間の配列同一性のパーセンテージは、開示されている技術を用いて計算することができる。配列同一性は、ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの全長に関して、又はその分子のある領域に関して測定することができる。(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照されたい)。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間の同一性を測定する方法は多数存在するが、「同一性」という用語は当業者によく知られている(Carrillo, H.&Lipman, D., SIAM J Applied Math 48: 1073(1988))。
【0017】
ペプチド又はタンパク質における好適な保存されたアミノ酸置換は当業者に知られており、一般に、結果として得られる分子の生物学的活性を変えることなく行うことができる。一般に、当業者は、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変えないことを認識している(例えばWatson et al., Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub.co., p.224を参照されたい)。
【0018】
特に、当業者は、同じ細菌種の異なる株におけるCas12bタンパク質が、アミノ酸配列にいくらか違いを有し得るが実質的に同じ機能を果たし得ることを理解するであろう。
【0019】
いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は組み換えにより作製される。いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質は、融合タグ、例えばCas12bタンパク質の単離及び/又は精製用のタグなどをさらに含む。タンパク質の組み換え作製方法は、当技術分野において知られている。タンパク質を単離及び/又は精製するために使用できる、Hisタグ、GSTタグなどを含むがそれらに限定されない様々な標識が当技術分野において知られている。一般に、これらのタグは、対象とするタンパク質の活性を変えない。
【0020】
「ガイドRNA」及び「gRNA」は、本明細書において互換的に使用することができ、典型的には、互いに部分的に相補的であり複合体を形成するcrRNA分子及びtracrRNA分子で構成され、crRNAは標的配列と十分に同一であることで標的配列の相補鎖にハイブリダイズし、CRISPR複合体(CRISPRヌクレアーゼ+crRNA+tracrRNA)を誘導して標的配列に配列特異的に結合させる配列を含む。しかしながら、crRNA及びtracrRNA両方の特性を含む単一のガイドRNA(sgRNA)を設計及び使用することができる。異なるCRISPRヌクレアーゼは異なるgRNAに対応する。例えば、Cas9及びCas12bは通常、crRNA及びtracrRNAの両方を必要とするが、Cas12a(Cpf1)はcrRNAのみを必要とする。
【0021】
「標的核酸分子の標的配列に対するgRNA」は、gRNAが標的配列を特異的に認識可能であることを意味する。例えば、いくつかの実施形態(標的核酸分子が二本鎖DNAである)において、gRNAは、標的配列の相補配列に特異的にハイブリダイズできるスペーサーを含む。いくつかの実施形態(標的核酸分子が一本鎖DNAである)において、gRNAは、標的配列に特異的にハイブリダイズできるスペーサー配列を含む。
【0022】
A.アシディフィラスCRISPR遺伝子座にはダイレクトリピート(DR)アレイはない。したがって、AaCas12bは対応するcrRNAを有さない。しかしながら、本発明者らは、AaCas12bが別の生物のCas12bタンパク質由来の対応するgRNAも採用できることを見出した。例えば、AaCas12bは、それ自身のtracrRNA及びA.アシドテレストリス(acidoterrestris)のCRISPR遺伝子座のcrRNA配列をgRNAとして使用することができる。本発明者らは、AaCas12bに利用可能なgRNAを最適化した。
【0023】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、ガイドRNAは、crRNA及びtracrRNAの部分的な相補鎖により形成される複合体である。いくつかの実施形態において、tracrRNAは、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる:5'-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTCTGAC-3'。いくつかの実施形態において、crRNAは、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる:5'-GTCGGATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3'(NxはX個の連続したヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を表し、NはA、G、C及びTから独立に選択され、Xは18≦X≦35の整数である)。好ましくはX=20である。いくつかの実施形態において、Nxは、標的配列(標的核酸分子はdsDNAである)の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができるスペーサー配列である。いくつかの実施形態において、Nxは、標的配列(標的核酸分子は一本鎖DNAである)の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができるスペーサー配列である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、ガイドRNAはsgRNAである。いくつかの実施形態において、sgRNAは5'末端スキャホールド配列及び3'末端スペーサー配列を含む。スペーサー配列は、標的配列又は標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができる。スペーサー配列は典型的には18~35ヌクレオチド長、好ましくは20ヌクレオチドである。
【0025】
いくつかの特定の実施態様において、sgRNAは、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる:
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTCTGACGTCGGATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-AACTGTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTCTGACGTCGGATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-CTGTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTCTGACGTCGGATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAGCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAACTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAGCGAGAAGTGGCAC-Nx-3’;
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTAAGCAGAAGTGGCAC-Nx-3’;及び
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’
(NxはX個の連続したヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を表し、NはA、G、C及びTから独立に選択され、Xは18≦X≦35の整数である)。好ましくはX=20である。いくつかの実施形態において、Nxは、標的配列(標的核酸分子はdsDNAである)の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができるスペーサー配列である。いくつかの実施形態において、Nxは、標的配列(標的核酸分子は一本鎖DNAである)の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができるスペーサー配列である。いくつかの実施形態において、sgRNAは、配列番号11~21のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされるスキャホールド配列を含む。
【0026】
いくつかの特定の実施形態において、sgRNAは、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされる:
5’-GTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCTCAAAAAGAACGCTCGCTCAGTGTTCTGACGTCGGATCACTGAGCGAGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’(AasgRNA);
5’-tcgtctataGGACGGCGAGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGCTTCAAGATGACCGCTCGCTCAGCGATCTGACAACGGATCGCTGAGCGAGCGGTCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’(AksgRNA1);
5’-ggaattgccgatctaTAGGACGGCAGATTCAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGGCTTCAACATGATCGCCCGCTCAACGGTCCGATGTCGGATCGTTGAGCGGGCGATCTGAGAAGTGGCAC-Nx-3’ (AmsgRNA1);
5’-GAGGTTCTGTCTTTTGGTCAGGACAACCGTCTAGCTATAAGTGCTGCAGGGTGTGAGAAACTCCTATTGCTGGACGATGTCTCTTTTATTTCTTTTTTCTTGGATGTCCAAGAAAAAAGAAATGATACGAGGCATTAGCAC-Nx-3’(BhsgRNA);
5’-CCATAAGTCGACTTACATATCCGTGCGTGTGCATTATGGGCCCATCCACAGGTCTATTCCCACGGATAATCACGACTTTCCACTAAGCTTTCGAATGTTCGAAAGCTTAGTGGAAAGCTTCGTGGTTAGCAC-Nx-3’ (BssgRNA);
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGATTATCTTATTTCTGCTAAGTGTTTAGTTGCCTGAATACTTAGCAGAAATAATGATGATTGGCAC-Nx-3’ (Bs3sgRNA);
5’-GGCAAAGAATACTGTGCGTGTGCTAAGGATGGAAAAAATCCATTCAACCACAGGATTACATTATTTATCTAATCACTTAAATCTTTAAGTGATTAGATGAATTAAATGTGATTAGCAC-Nx-3’ (LssgRNA);又は
5’-GTCTTAGGGTATATCCCAAATTTGTCTTAGTATGTGCATTGCTTACAGCGACAACTAAGGTTTGTTTATCTTTTTTTTACATTGTAAGATGTTTTACATTATAAAAAGAAGATAATCTTATTGCAC-Nx-3’ (SbsgRNA)
(Nxは、X個の連続したヌクレオチドからなるヌクレオチド配列(スペーサー配列)を表し、NはA、G、C及びTから独立に選択され、Xは18≦X≦35の整数である)。好ましくはX=20である。いくつかの実施形態において、配列Nx(スペーサー配列)は、標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができる。sgRNAにおけるNx以外の配列はsgRNAのスキャホールド配列である。いくつかの実施形態において、sgRNAは、配列番号22~29のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされるスキャホールド配列を含む。
【0027】
本発明者らは驚くべきことに、異なるCas12b系におけるCas12bタンパク質及びガイドRNAを互換的に使用することができ、それによりユニバーサルなガイドRNAを人工的に設計することが可能になることを見出した。
【0028】
したがっていくつかの実施形態において、sgRNAは以下からなる群から選択される人工sgRNAである:
5’-GGTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA1) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA2) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA3) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA4) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA5) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA6) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA7) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA8) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA9) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA10) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA11) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA12) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA13) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA14) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA15) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA16) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA17) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA18) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAATTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA19) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA20) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAAAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA21) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA22) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA23) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA24) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA25) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA26) ;
5’-GGTGACCTATAGGGTCAATGAATCTGTGCGTGTGCCATAAGTAATTAAAAATTACCCACCACAGGATTATCTATGATGATTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA27) ;
5’-GGTCTAAAGGACAGAACAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA28) ;
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGCAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA29) ;
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA30) ;
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA31);
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTCAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGACTTCAAGCGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA32);
5’-GGTCTAAAGGACAGAACAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA33);
5’-GGTCGTCTATAGGACGGCGAGCAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA34);
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTTTTTTCAACGGGTGTGCCAATGGCCACTTTCCAGGTGGCAAAGCCCGTTGAGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA35);
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTGACAACGGGAAGTGCCAATGTGCTCTTTCCAAGAGCAAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRN36A);又は
5’-GGAATTGCCGATCTATAGGACGGCAGATTCAACGGGATGTGCCAATGCACTCTTTCCAGGAGTGAACACCCCGTTGGCTTCAAAGAAGTGGCAC-Nx-3’(artsgRNA37)
(Nxは、X個の連続したヌクレオチドからなるヌクレオチド配列(スペーサー配列)を表し、NはA、G、C及びTから独立に選択され、Xは18≦X≦35の整数であり、好ましくはX=20である)。いくつかの実施形態において、配列Nx(スペーサー配列)は、標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができる。sgRNAにおけるNx以外の配列はsgRNAのスキャホールド配列である。
【0029】
いくつかの実施形態において、人工sgRNAは、配列番号30~66のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされるスキャホールド配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、gRNAのスペーサー配列は、標的配列又はその相補鎖に正確に対応するように設計される。いくつかの実施形態において、gRNAのスペーサー配列は、標的配列又はその相補鎖に対して少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチ、例えば1つのヌクレオチドミスマッチを有するように設計される。そのようなgRNAはまた、チューニングされた(tuned)gRNAとも称され、そのヌクレオチドミスマッチもまたチューニング部位と称される。sgRNAと標的との間の様々なミスマッチに対するCas12bにおける許容範囲の違いを考慮して、標的配列又はその相補鎖とともにヌクレオチドミスマッチを有するように設計されたgRNAは、標的配列における一塩基多型バリエーションを識別することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチの位置は、一塩基多型バリエーションの位置とは異なる。例えば、チューニングされたsgRNAは標的配列1のポジション1にヌクレオチドミスマッチを有し、標的配列1及び標的配列2はポジション2に一塩基多型を有し、すなわちチューニングされたsgRNAと標的配列2との間に2つのヌクレオチドミスマッチが存在する。ミスマッチの数に対するCas12bの許容範囲の違いのために、Cas12bは標的配列1の存在下でのみ検出可能なシグナル(1つだけのミスマッチ)を発生させるが、標的配列2では検出可能なシグナル(2つのミスマッチの存在による)は生成せず、それにより一塩基多型を含む標的配列1及び標的配列2を識別することができる。当業者は、特定の標的配列に基づいて好適なチューニング部位についてスクリーニングすることができる。
【0031】
本発明において、gRNAにおけるスペーサー配列以外の配列はgRNAスキャホールドとも称される。
【0032】
いくつかの実施形態において、gRNAはインビトロ転写により作製される。いくつかの実施形態において、gRNAは化学合成により作製される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、標的配列は18~35ヌクレオチド長、好ましくは20ヌクレオチドである。本発明のいくつかの実施形態、特に二本鎖DNAに関連する検出において、標的配列の5'末端フランキングは、5'TTTN-3'、5'ATTN-3'、5'GTTN-3'、5'CTTN-3'、5'TTC-3'、5'TTG-3'、5'TTA-3'、5'TTT-3'、5'TAN-3'、5'TGN-3'、5'TCN-3'及び5'ATC-3'から選択されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、好ましくは5'TTTN-3'である。
【0034】
「切断された後に検出可能なシグナルを生成する一本鎖DNAレポーター分子」は例えば、一本鎖DNAの両末端にそれぞれフルオロフォア及びその消光基を含んでもよい。一本鎖DNAが切断されない場合、消光基が存在するためにフルオロフォアは蛍光を発さない。Cas12b-gRNA複合体が標的核酸分子によって活性化された場合、及び一本鎖DNAレポーター分子のDNA一本鎖がその非カノニカルなバイパスssDNA切断活性により切断される場合、フルオロフォアが放出されて蛍光を発する。好適なフルオロフォア及びそれらの対応する消光基、並びにその核酸分子を標識化する方法は、当技術分野において知られている。好適なフルオロフォアはFAM、TEX、HEX、Cy3又はCy5を含むがこれらに限定されない。好適な消光基はBHQ1、BHQ2、BHQ3又はTAMRAを含むがこれらに限定されない。好適なフルオロフォア-消光対は、FAM-BHQ1、TEX-BHQ2、Cy5-BHQ3、Cy3-BHQ1又はFAM-TAMRAを含むがこれらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、検出可能なシグナルは蛍光シグナルである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアはFAMであり、クエンチャー基はBHQ1である。
【0035】
一本鎖DNAレポーター分子中の一本鎖DNAの長さは約2~100ヌクレオチド、例えば2~5、2~10、2~15、2~20、2~25、2~30、2~40又は2ないしさらにそれ以上のヌクレオチドであってよい。一本鎖DNAレポーター分子中の一本鎖DNAは、任意の配列を含むことができるが、いくつかの実施形態ではポリG(ポリグアニル酸)は除外される。いくつかの実施形態において、一本鎖DNAレポーター分子中の一本鎖DNAはポリA(ポリアデノシン)、ポリC(ポリシチジン)、又はポリT(ポリチミジン)からなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、一本鎖DNAレポーター分子は、5'-FAM-AAAAA-BHQ1-3'、5'-FAM-TTTTT-BHQ1-3'、及び5'-FAM-CCCCC-BHQ1-3'からなる群から選択される。
【0037】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、ステップ(a)の前に生物学的試料中の核酸分子を増幅するステップがさらに含まれる。そのような増幅は、PCR増幅又はリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を含むがこれらに限定されない。好ましくはこの増幅はリコンビナーゼポリメラーゼ増幅である。
【0038】
いくつかの実施形態において、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅は約10分間~約60分間行われる。
【0039】
いくつかの実施形態において、Cas12bタンパク質を、生物学的試料との接触の前にgRNAと事前に合わせてCas12b-gRNA複合体を形成させている。
【0040】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)の反応は、約20分~約180分、例えば約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約90分、約120分、又はそれらの間の任意の時間にわたって行われる。
【0041】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)は好適なバッファー中で行われる。例えばバッファーはNEBuffer(商標)2、NEBuffer(商標)2.1又はCutsmart(登録商標)バッファーである。いくつかの実施形態において、バッファーは最終濃度50mMのNaCl、10mMのTris-HCl、10mMのMgCl2、1mMのDTTを含み、pH7.9である。いくつかの実施形態において、バッファーは最終濃度50mMのNaCl、10mMのTris-HCl、10mMのMgCl2、100μg/mlのBSAを含み、pH7.9である。いくつかの実施形態において、バッファーは最終濃度50mMの酢酸カリウム、20mMのTris-酢酸、10mMの酢酸マグネシウム、100μg/mlのBSAを含み、pH 7.9である。
【0042】
本発明の方法において使用することができる生物学的試料は、全血、血漿、血清、髄液、尿、便、細胞又は組織抽出物などを含むがこれらに限定されない。生物学的試料は、細胞又は組織から抽出された核酸試料を包含する。
【0043】
本発明の範囲はまた、本発明の方法において使用するためのキットも含み、キットは本発明の方法を行うための試薬、及び使用するための指示を含む。例えばキットは、Cas12bタンパク質(例えば本発明のCas12bタンパク質)、gRNA(例えば本発明のgRNAスキャホールドを含む)又はgRNAを作製するための試薬(例えば本発明のgRNAスキャホールドを含む)、一本鎖DNAレポーター分子(例えば本発明の一本鎖DNAレポーター分子)、好適なバッファー、及び/又は核酸増幅試薬を含み得る。キットは一般に、意図される用途及び/又はキットの内容物の使用方法を表示するラベルを含む。ラベルという用語は、キットに若しくはキットと一緒に提供される、又は別の方法でキットとともに提供される任意の書面による又は記録された資料を含む。
【0044】
本発明は、本発明の方法のためのキットの調製における、上記で規定されたCas12bタンパク質及び/又は本発明のスキャホールドを含むgRNA及び/又は本発明のスキャホールドを含むgRNAを作製するための薬剤の使用をさらに提供する。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]生物学的試料中の標的核酸分子の存在及び/又は量を検出する方法であって、
(a)生物学的試料を、(i)Cas12bタンパク質、(ii)標的核酸分子中の標的配列を対象とするgRNA、及び(iii)切断された後に検出可能なシグナルを生成する一本鎖DNAレポーター分子と接触させ、それにより反応混合物を生成するステップ、
(b)反応混合物において生成した検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルを検出するステップ
を含み、検出可能なシグナルの存在及び/又はレベルが標的核酸分子の存在及び/又は量に相当する、方法。
[実施形態2]標的核酸分子が二本鎖DNA分子又は一本鎖DNA分子である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]Cas12bタンパク質が、アリシクロバチルス・アシディフィラス由来のAaCas12b、アリシクロバチルス・カケガウェンシス由来のAkCas12b、アリシクロバチルス・マクロスポランジーダス由来のAmCas12b、バチルス・ヒサシイ由来のBhCas12b、バチルス属由来のBsCas12b、バチルス属由来のBs3Cas12b、デスルフォビブリオ・イノピナタス由来のDiCas12b、レイシーラ・セディミニス由来のLsCas12b、スピロヘータ・バクテリウム由来のSbCas12b、ツベリバチルス・カリダス由来のTcCas12bであり、好ましくはCas12bタンパク質がアリシクロバチルス・アシディフィラス由来のAaCas12bである、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]Cas12bタンパク質が、
(1)配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(2)配列番号1~10のいずれか1つと比べて1つ以上のアミノ酸残基が置換されている、欠失している又は付加されているアミノ酸配列、又は
(3)配列番号1~10のいずれか1つに記載のアミノ酸配列
を含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]ガイドRNAがsgRNAである、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]sgRNAが、配列番号11~66のうちの1つから選択される核酸配列によってコードされるスキャホールド配列を含む、実施形態5に記載の方法。
[実施形態7]sgRNAが、標的配列又は標的配列の相補鎖に特異的にハイブリダイズするスペーサー配列をスキャホールド配列の3'末端に含む、実施形態5又は6に記載の方法。
[実施形態8]スペーサー配列が、標的配列との少なくとも1つのヌクレオチドミスマッチを有する、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]一本鎖DNAレポーター分子が、一本鎖DNAの両末端にフルオロフォア及び対応する消光基をそれぞれ含み、例えばフルオロフォアは、FAM、TEX、HEX、Cy3又はCy5から選択され、消光基はBHQ1、BHQ2、BHQ3又はTAMRAから選択される、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]一本鎖DNAレポーター分子が約2~約100ヌクレオチド長であり得る、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]一本鎖DNAレポーター分子がポリA、ポリC、又はポリTである、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]ステップ(a)の前に生物学的試料中の核酸分子を増幅するステップをさらに含む、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]前記増幅が、PCR増幅又はリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を含むがこれらに限定されず、好ましくは前記増幅がリコンビナーゼポリメラーゼ増幅である、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]リコンビナーゼポリメラーゼ増幅が約10分間~約60分間行われる、実施形態13に記載の方法。
[実施形態15]生物学的試料との前記接触の前に、Cas12bタンパク質をgRNAと事前に合わせてCas12b-gRNA複合体を形成させている、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]ステップ(a)の前記反応が、約20分~約180分、例えば約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約90分、約120分、又はそれらの間の任意の時間にわたって行われる、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
[実施形態17]ステップ(a)が、NEBuffer(商標)2、NEBuffer(商標)2.1又はCutsmart(登録商標)バッファーのバッファー中で行われる、実施形態1から16のいずれかに記載の方法。
[実施形態18]生物学的試料が全血、血漿、血清、髄液、尿、便、細胞又は組織抽出物から選択され、例えば生物学的試料が細胞又は組織から抽出された核酸試料である、実施形態1から17のいずれかに記載の方法。
[実施形態19]実施形態1から18のいずれかに記載の方法において使用するためのキット。
【0045】
[実施例]
材料及び方法
タンパク質発現及び精製
SpCas9及びLbCas12aタンパク質は市販品を購入した(New England Biolabs)。AaCas12b、ArCas12a、HkCas12a及びPrCas12aタンパク質は以前の報告に従って精製した。手短に述べると、BPK2014-Cas12-His10タンパク質を大腸菌(E.coli)株BL21(λDE3)において発現させ、16℃で16時間にわたって0.5mMのIPTGで発現を誘導した。細胞ペレットを回収及び溶解し、続いてHis60 Ni Superflow Resin(Takara Bio Inc.)を用いて洗浄及び溶出した。精製したCas12タンパク質を透析し、濃縮し、最後にBCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用して定量した。
【0046】
核酸調製
DNAオリゴは市販品を購入した(Genscript)。二本鎖DNAアクチベーターをPCR反応によって得、Oligo Clean & Concentrator Kit(ZYMO Research Corporation)を使用して精製した。ガイドRNAはHiScribe(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs)を使用してインビトロで転写し、MicroElute RNA Clean Up Kit(Omega Bio-tek, Inc.)を使用して精製した。
【0047】
示されている反応において使用したバックグラウンドゲノムDNAは、Mouse Direct PCR Kit(Bimake.com)を使用してヒト胎児腎293T細胞から粗精製した。無細胞(cell-free)DNA(cfDNA)を模倣するために、示されている濃度でヒト血漿(Thermo Fisher Scientific Inc.)中にdsDNAを希釈した。
【0048】
フルオロフォアクエンチャー(FQ)標識されたレポーターアッセイ。
30nMのCas12、36nMのgRNA、40ngのバックグラウンドゲノムDNA(示されている反応において)中に混合した40nMのアクチベーター(特に明記されない限り)、200nMのカスタム合成されたホモ多量体ssDNA FQレポーター(表1)及びNEBuffer(商標)2(特に明記されない限り)を用いて、Corning 384ウェルPolystyrene NBS Microplateにおいて20μlの反応液中で検出アッセイを行った。蛍光プレートリーダー(BioTek Synergy 4)において37℃で示されている時間にわたって反応液をインキュベートし、蛍光動態を5分ごとに測定した(λex=485nm;λem=528nm、透過ゲイン(transmission gain)=61)。蛍光の結果をSigmaPlotソフトウェアによって分析した。
【0049】
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)反応。
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)反応は、製造業者のプロトコールに従ってTwistAmp Basic(TwistDx Inc.)を使用して進めた。様々な投入量のDNAを含有する50μlのRPA反応系を37℃で10分間インキュベートした。16μlのRPA産物を20μlの前述の検出アッセイに直接移した。
【0050】
[実施例1]
Cas12bのトランスssDNA切断活性の特徴付け
アリシクロバチルス・アシディフィラスNBRC 100859由来のCRISPR-Cas12bヌクレアーゼ(AaCas12b、配列番号1に示すアミノ酸配列)は最近、そのカノニカルdsDNAを標的とした切断能力に関して哺乳動物のゲノム編集に利用されている(
図1a)。Cas12bの非カノニカルなトランス切断活性を特徴付けるために、本発明者らは、それらの同族ガイドRNA(gRNA)と別個に組み合わせたCas12b、Cas12a及びCas9を使用してインビトロでのssDNA切断アッセイを行った。結果が示唆するように、AaCas12b及びCas12a(LbCas12a、ArCas12a、HkCas12a及びPrCas12a)は一本鎖M13 DNAファージの急速な分解を誘導することができたが、SpCas9は誘導できなかった(
図1b)。同様に、AaCas12b及びCas12aはまた、ノンターゲットgRNA及びM13ファージゲノムと配列相同性を有さないその相補的ssDNA「アクチベーター」の存在下でM13分解を達成する(
図1c)。非カノニカルなコラテラルssDNA切断活性は触媒活性のないバリアント(R785A及びD977A)では消失しており、RuvCドメイン依存的な機序を示唆した(
図2)。これらの結果により、AaCas12b-sgRNA複合体が、ガイド相補的ssDNAにより誘発されると、非特異的ssDNAトランス切断活性を獲得できることが明らかである。
【0051】
[実施例2]
Cas12bが媒介するDNA検出系の開発
Cas12bが媒介するDNA検出系を開発するために、本発明者らはまず、フルオロフォアクエンチャー(FQ)標識されたホモ多量体レポーターに対するAaCas12b-sgRNA複合体の切断選択性のプロファイルを調べ、AaCas12bはチミン多量体(ポリT)並びにポリA及びポリCに対する選択性を有し、一方でポリGには全く選択性を有さないことを見出した(
図3a)。同時に、切断効率を最適化し、NEBuffer(商標)2において最大値に達することができる(
図3b)。その後本発明者らは、NEBuffer(商標)2においてポリTレポーターを使用してAaCas12bが媒介する切断アッセイを行った。sgRNA相補的なOT-ssDNA及びOT-dsDNA(OTはオンターゲットを表す)又はsgRNA非相補的なNT-ssDNA及びNT-dsDNA(NTはノンターゲットを表す)をアクチベーターとして使用して、本発明者らは、OT-ssDNA及びOT-dsDNAがAaCas12bを誘発してFQレポーターを切断することができたが、OT-dsDNAアクチベーターは効率が低かったことを見出した(
図3c)。
【0052】
本発明者らは次に、様々なミスマッチを有するssDNA又はdsDNAアクチベーターのいずれかを使用してトランス切断活性化の特異性を試験し、PAM配列がAaCas12bに関してはdsDNAアクチベーターに誘発されるトランス切断活性に重要であり、ssDNAアクチベーターに関しては必須でない(dispensable)ことを見出した(
図4a、b)。同時に、本発明者らはまた、アクチベーターとsgRNA間のミスマッチがdsDNAアクチベーターのみによって誘発されるトランス切断活性を妨げる、又はさらに消失させることを見出した(
図4a、b)。
【0053】
次いで本発明者らはAaCas12b-sgRNA-アクチベーター系の感度を測定し、前増幅を行わない場合、AaCas12bはssDNA-及びdsDNA-アクチベーターに関してそれぞれ投入濃度<1.6nM及び8nMで検出可能なシグナルを生成しなかったことを見出した(
図5a)。
【0054】
dsDNAアクチベーターはより高い特異性を有していたため(
図4a、b)、本発明者らは検討して、DNA検出プラットホームとなるようにAaCas12b-sgRNA-dsDNA-アクチベーター系を改変した(Cas12bによるDNA検出、CDetection)。本発明者らは、1つのカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)dsDNA及び2つのヒトパピローマウイルス(HPV)dsDNA(HPV16及びHPV18)を検出反応におけるアクチベーターとして合成した。アクチベーターの投入濃度が10nM以上である場合、AaCas12b-sgRNAは検出可能なシグナルを生成することができただけでなく(
図5b、c)、2つのdsDNAウイルスHPV16及びHPV18を識別可能でもあった(
図5c)。
【0055】
AaCas12bは両方の検出部位においてCas12aに基づくDNA検出より高い検出感度を示したため、CDetectionの生成したシグナルレベルはより高く、バックグラウンドレベルはより低かった(
図4c及び5d)。
【0056】
感度を強化するために、本発明者らはリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を用いた前増幅を行い、1aMでの単一分子検出を可能にした(
図4d及び5e)。これらの結果により、Cas12bが媒介するDNA検出(CDetection)が、Cas12aに基づく検出プラットホームを超える高い特異性及びアトモル濃度の感度でDNA検出を実現できることが示唆された(
図4e)。
【0057】
[実施例3]
強化されたCas12bが媒介するDNA検出系の開発
分子診断への利用においてCDetectionの利用を拡大及び模倣するために、本発明者らは合成HPV dsDNAをヒトゲノムDNA中に希釈した。結果により、CDetectionがアトモル濃度以下の規模(0.1aM)で感染性ウイルス標的を特定できることが示された(
図6a)。
【0058】
ヒト血漿におけるAaCas12bの高い感度により、本発明者らはcfDNAに基づく非侵襲的診断におけるCDetectionの利用を試験することにした。以前使用されたcfDNA分析は10
8分の1の感度を達成したが、これらの方法は比較的多量のcfDNA(5~10ng/血漿ml)を要し、多くの時間を必要とする。cfDNA検出におけるCDetectionプラットホームの利点を示すために、本発明者らはHPV dsDNAをヒト血漿中に希釈し、この新しく確立された方法の感度を調べた。結果は、CDetectionが1aMの濃度でヒト血漿におけるHPV DNAの存在を検出できたことを示し(
図4f及び6b)、ほんの1滴の血液において感染性ウイルスを迅速に検出する可能性を示唆した。
【0059】
正確な診断におけるCDetectionの利用を拡大するために、本発明者らは、3つの標的化sgRNA及び対応するdsDNAアクチベーター(オンアクチベーター対オフアクチベーター)を使用して実験を設計して、6個の共通のヒトABOアレルを特定した。理論的には、3つのsgRNAのそれぞれを有するCDetectionは、それぞれO01、O02/O03及びB101を特定することができる。そしてすべてのsgRNAについて蛍光シグナルを検出できなければ、そのアレルはA101/A201であるはずである(
図7a)。結果により、オン及びオフdsDNAアクチベーター群間で識別不能な蛍光シグナルを生成した(
図7b)ので、CDetectionは異なるABOアレルを識別できなかったことが示された。
【0060】
CDetectionの特異性を向上させるために、本発明者らは、単一の塩基が異なる2つの類似した標的の識別不能な状態を識別可能にする、スペーサー配列中に単一ヌクレオチドミスマッチを含有するチューニングされたガイドRNA(tgRNA)を導入した(
図7c)。
【0061】
強化されたCDetection(eCDetection)の一塩基レベルの分解能を有する感度を解明するために、本発明者らはABO式血液型の遺伝子型解析試験を再度行った。結果が示唆するように、eCDetectionは高い精度で血液型を判定することができ、一方CDetectionは判定することができなかった(
図8a)。
【0062】
疾患に関連する点変異は通常、シーケンシング及びプローブ検出によって検出された。しかしながら、シーケンシングは費用と時間がかかり、その感度は、シーケンス深度に依存している。プローブによる方法は単一ヌクレオチドバリエーションに関して感度が不十分である。本発明のeCDetection法は高い特異性及び感度を有するため、eCDetectionを使用して、ヒトゲノムにおいて少ない割合の単一塩基変異を検出することができる。
【0063】
本発明者らはがんに関連するTP53 856G>A変異を選択して実現可能性を試験した。結果により、CDetectionは選択したtgRNAを使用して野生型アレルと点変異したアレルを正確に識別できることが示された(
図9a)。
【0064】
さらに本発明者らは、乳がん関連BRCA1遺伝子における2つのホットスポットの検出(3232A>G及び3537A>G)においてCDetectionプラットホームを利用した。選択したtgRNA(tgRNA-3232-1及びtgRNA-3537-4)を用いたCDetectionは非常にうまく機能して点変異を識別したが、sgRNAは点変異検出にほとんど役立たなかった(
図8b、c、及び
図9b、c)。
【0065】
さらにCDetectionによるcfDNAを用いた原疾患の臨床での早期検出を模倣するために、本発明者らはBRCA1 3232A>G dsDNAをヒト血漿中に希釈した。結果により、CDetectionは単一塩基レベルの分解能で点変異検出を実現できることが実証された(
図8d及び
図9d)。本発明のeCDetectionは、臨床研究において単一塩基レベルの分解能で迅速なDNA検出を実現することができる。
【0066】
総合して、本発明は、Cas12bヌクレアーゼの非カノニカルなコラテラルssDNA切断特性に基づくCDetectionプラットホームを提供し、これはアトモル濃度の感度でDNA分子を検出することを可能にする。同時に、チューニングされたgRNAと組み合わせて、本発明者らは、強化された方法(eCDetection)を開発して一塩基レベルの分解能を有する感度を実現する。本発明のCDetection及びeCDetectionプラットホームは、広範囲の分子診断への利用において核酸の存在を検出すること、及び臨床研究における遺伝子型アッセイを容易にするであろう(
図10)。
【0067】
[実施例4]
別のCas12bタンパク質の特定
6つの代表的なCas12bタンパク質を選択し、多様な細菌からデノボ合成して、ヒト胎児腎293T細胞並びに4つの以前に報告されているCas12bオルソログにおいてゲノム編集を行った(
図11、12、及び配列番号1~10)。これら10個のCas12bオルソログのうち、D.イノピナタス(DiCas12b)及びT.カリダス(TcCas12b)由来のCas12bは予測可能なプレカーサーCRISPR RNA(プレ-crRNA)もアンチリピートトランス活性化crRNA(tracrRNA)も有さず(
図11b)、これら2つのCas12bタンパク質はゲノム編集への利用に適さない可能性があることを示唆する。
【0068】
哺乳動物のゲノム編集を行うために、本発明者らは293T細胞を個々のCas12b酵素及び適切なPAMを含むヒトの内在性遺伝子座を標的とするそれらの同族のキメラ単一ガイドRNA(sgRNA)でコトランスフェクトした(
図11)。T7エンドヌクレアーゼ(T7EI)アッセイの結果により、以前の報告に加えて、AaCas12b、AkCas12b、AmCas12b、BhCas12b、Bs3Cas12b及びLsCas12bは、それらの標的化効率は様々なオルソログ間で及び様々な標的化部位において異なっていたものの、ヒトゲノムを強力に編集できることが示された(
図11b及び
図13a)。本発明者らはまた、単に複数のsgRNAを使用することによってヒトゲノムにおける4つの部位を同時に編集するようにBs3Cas12bをプログラムすることにより、多重ゲノムエンジニアリングも実現した(
図13b、c)。これらの新たに特定されたCas12bオルソログは、Cas12bによるゲノムエンジニアリングのための選択肢を広げる。
【0069】
[実施例5]
異なるCas12bとデュアルRNAとの間の交換可能性
デュアルRNA(crRNA及びtracRRNA)とCas12b系中のタンパク質成分との互換性を調べるために、本発明者らはまず、Cas12bタンパク質及びデュアルRNA両方の保存性を分析した。Cas12bオルソログの保存されたアミノ酸配列(
図14a及び
図12)のほかに、プレ-crRNA:tracrRNA二重鎖のDNA配列及びそれらの二次構造もまた高い保存性を示した(
図11b及び15)。次に、本発明者らは、8つのCas12b系のそれぞれのsgRNAと別個に複合体形成した8つのCas12bオルソログを用いて293T細胞においてゲノム編集を行った。T7EIアッセイの結果が示したように、AaCas12b、AkCas12b、AmCas12b、Bs3Cas12b及びLsCas12b遺伝子座由来のsgRNAは、それらの活性は異なるCas12bオルソログ間及びsgRNA間で異なるものの、哺乳動物のゲノム編集に関して元のsgRNAを置換することができた(
図14c、d及び
図16)。これらの結果は、異なるCas12b遺伝子座由来のCas12bとデュアルRNAとの交換可能性を示した。
【0070】
[実施例6]
ゲノム編集のための、天然の遺伝子座においてCRISPRアレイを有さないCas12bオルソログの使用
本発明者らの仮説をさらに実証するために、本発明者らはその遺伝子座がCRISPRアレイを有さない2つのCas12bオルソログ(DiCas12b及びTcCas12b)を選択し(
図17a)、それらのcrRNA:tracrRNA二重鎖の配列を予測不能にしてその後の実験を行った。本発明者らは、DiCas12b及びTcCas12b並びに293T細胞における異なるゲノム部位を標的化する別の8つのCas12bオルソログの遺伝子座由来のsgRNAと組み合わせたAaCas12bをコトランスフェクトした。T7EIアッセイ結果は、AaCas12b、AkCas12b、AmCas12b、Bs3Cas12b及びLsCas12b由来のsgRNAによりTcCas12bはヒトゲノムを強力に編集することが可能となることを示した(
図17b、c及び
図18)。さらに、TcCas12bはAasgRNA又はAksgRNAのいずれかが同時に対象とする多重ゲノム編集を容易にすることができた(
図17d及び
図19)。これらの上記の結果により、異なる系由来のCas12bとデュアルRNAとの互換性は、天然の遺伝子座においてCRISPRアレイを有さないCas12bオルソログに、哺乳動物ゲノムを改変する能力を与えることができた。
【0071】
[実施例7]
Cas12bが媒介するゲノム編集のための人工sgRNAの設計
異なるCas12b系におけるCas12b及びデュアルRNAとの交換可能性から勢いを得て、本発明者らはさらに、Cas12bが媒介するゲノム編集を容易にするための新規な人工sgRNA(artsgRNA)スキャホールドを設計した。Cas12bオルソログ間でのDNA配列及び二次構造の保存性を考慮して(
図11b及び13)、本発明者らはヒトCCR5遺伝子座を標的化する37個のsgRNAスキャホールドを設計及びデノボ合成した(
図17e及び20a)。T7EIアッセイの結果により、22個のartsgRNAスキャホールドが有効に機能できることが示唆された(
図20b)。本発明者らのartsgRNAの一般化を検証するために、本発明者らはartsgRNA13が対象とするTcCas12b又はAaCas12bを使用した多重ゲノム編集を活用した(
図20a)。T7EIアッセイ結果により、artsgRNA13は、TcCas12b及びAaCas12b両方を用いた多重ゲノムエンジニアリングを同時に促進することができることが示された(
図17f及び
図20c)。結果は、Cas12bが媒介する多重ゲノム編集を容易にするためのartsgRNAを設計及び合成することが可能であることを示唆した。
【0072】
【0073】
【0074】
【配列表】