(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】分散性アイオノマー粉末及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 14/18 20060101AFI20240610BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08F14/18
C08F2/22
(21)【出願番号】P 2021523482
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019080087
(87)【国際公開番号】W WO2020094563
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メルロ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】オルダーニ, クラウディオ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070420(WO,A1)
【文献】特表2018-528316(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167189(WO,A1)
【文献】特開2013-245237(JP,A)
【文献】特開昭53-082684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 14/00-14/28
C08F 214/00-214/28
C08F 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-SO
3X
a、-PO
3X
a及び-COOX
a(ここで、X
aは、H、アンモニウム基又は一価金属である)からなる群から選択される複数のイオン化可能な基を含む少なくとも1種のイオン化可能なポリマー[アイオノマー(I
X)]の複数の粒子から構成される粉末状材料[材料(P)]を製造する方法であって、
工程(1):乳化剤が使用されない水性媒体中での乳化重合から得られ、-SO
2X
X、-PO
2X
X及び-COX
x(ここで、X
xは、ハロゲン、特にF又はClである)からなる群から選択される複数の加水分解性基を含む少なくとも1種のアイオノマー前駆体[前駆体(I
P)]の粒子を含む、重合されたままの水性ラテックス[ラテックス(I
p)]を提供する工程と;
工程(2):アイオノマー(I
X)の粒子の水性ラテックス[ラテックス(I
x)]を得るために、いかなる有意な凝固も引き起こすことなく、前記基-SO
2X
X、-PO
2X
X及び-COX
x(ここで、X
xは、F又はClである)を対応する基-SO
3X
a、-PO
3X
a及び-COOX
a(ここで、X
aは、H、アンモニウム基又は一価金属である)に少なくとも部分的に転化するような条件において、前記重合されたままの水性ラテックス[ラテックス(I
p)]を塩基性加水分解剤[試剤(B)]と接触させる工程と;
工程(3):試剤(B)及び/又は他の汚染物質の残渣を少なくとも部分的に除去するために、前記ラテックス(I
x)を少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させる工程と;
工程(4):前記材料(P)を得るために、場合により精製後に前記ラテックス(I
x)を噴霧乾燥させる工程と
を含み、
工程(3)の前記イオン交換樹脂は、少なくとも1種のアニオン交換樹脂を含み、前記アニオン交換樹脂のプラスに帯電されたイオン交換部位は、
(式中、出現ごとに等しいか又は異なるRは、独立して、C
1~C
12炭化水素基又は水素原子であり、及び出現ごとに等しいか又は異なるEは、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む二価の炭化水素基である)
からなる群から選択され、
工程(3)は、前記ラテックス(I
X)を、アニオン交換樹脂と接触させる前又は接触させた後にカチオン交換樹脂と接触させる工程を含み、カチオン交換樹脂のマイナスに帯電されたイオン交換部位は、
からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
工程(2)において、前記ラテックス(I
p)は、無機塩基から選択される、より好ましくはKOH、NaOH、LiOH、Mg(OH)
2及びCa(OH)
2からなる群から選択される塩基性加水分解剤[試剤(B)]と接触され、及び/又は工程(2)は、試剤(B)とラテックス(I
P)との接触を行った後、結果として生じた前記ラテックス(I
X)を、前記試剤(B)と異なる少なくとも1種の中和剤[試剤(N)]と接触させる工程をさらに含み得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料(P)は、-SO
3X
a、-PO
3X
a及び-COOX
a(ここで、X
aは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)からなる群から選択される複数のイオン化可能な基を含む少なくとも1種のフッ素化アイオノマー[アイオノマー(I
X)]の複数の粒子から構成され、
前記粒子は、素粒子の擬球状中空凝集塊を含み、
- 前記擬球状中空凝集塊は、1~150μmの平均粒径を有し;及び
- 前記素粒子は、15nm~150nmの平均径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アイオノマー(I
X)は、複数の-SO
3X
a基を含むアイオノマー(I
SO3X)であり、且つ式-SO
3X
a(ここで、X
aは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)の少なくとも1つの基を含む1種若しくは2種以上のモノマー(X
SO3X)に由来する複数の繰り返し単位の配列から本質的になるか、又は1種若しくは2種以上のモノマー(X
SO3X)に由来する複数の繰り返し単位と、モノマー(X
SO3X)と異なる1種若しくは2種以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むかのいずれかであり;及び好ましくは、アイオノマー(I
SO3X)は、少なくとも1つの-SO
3X
a基(ここで、X
aは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)を含み、且つ少なくとも1つの-SO
2X
X基(ここで、X
Xは、ハロゲンである)を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[以下ではモノマー(A)]に由来する複数の加水分解された繰り返し単位と;上記で詳述されたような-SO
2X
X基を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽
和フッ素化モノマー[以下ではモノマー(B)]に由来する複数の繰り返し単位とから本質的になるポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モノマー(A)は、
- 式:CF
2=CF(CF
2)
pSO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは、2又は3に等しい)のスルホニルハライドフルオロオレフィン;
- 式:CF
2=CF-O-(CF
2)
mSO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
- 式:CF
2=CF-(OCF
2CF(R
F1))
w-O-CF
2(CF(R
F2))
ySO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくは、F又はCl、より好ましくはFであり;wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるR
F1及びR
F2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC
1~C
10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、R
F1は、-CF
3であり、yは、1であり、及びR
F2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
- 式CF
2=CF-Ar-SO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、Arは、C
5~C
15芳香族又はヘテロ芳香族基である)のスルホニルハライド芳香族フルオロオレフィン
からなる群から選択され;及び好ましくは、モノマー(A)は、式CF
2=CF-O-(CF
2)
m-SO
2F(ここで、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)のスルホニルフルオリドフルオロビニルエーテルの群から選択され、及びより好ましくは、モノマー(A)は、CF
2=CFOCF
2CF
2-SO
2F(パーフルオロ-5-スルホニルフルオリド-3-オキサ-1-ペンテン)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モノマー(B)は、
- C
2~C
8パーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8水素含有フルオロオレフィン、例えばトリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8クロロ
含有フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE);
- C
2
~C
8
ブロモ
含有フルオロオレフィン、例えばブロモトリフルオロエチレン;
- C
2
~C
8
ヨード含有フルオロオレフィ
ン;
- 式CF
2=CFOR
f1(ここで、R
f1は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- とりわけ式CF
2=CFOCF
2OR
f2(ここで、R
f2は、C
1~C
3フルオロ(オキシ)アルキル基、例えば-CF
2CF
3、-CF
2CF
2-O-CF
3及び-CF
3である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF
2=CFOX
0(ここで、X
0は、1つ又は2つ以上のエーテル酸素原子を含むC
1~C
12フルオロオキシアルキル基である)のフルオロオキシアルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)
のフルオロジオキソール
からなる群から選択され;
好ましくは、モノマー(B)は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)及
びヘキサフルオロプロピレン(HFP)から選択されるC
2~C
8パーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)及びフッ化ビニル(VF)から選択されるC
2~C
8水素含有フルオロオレフィン;及び
- それらの混合物
の中で選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のモノマー(B)は、テトラフルオロエチレン(TFE)であり、アイオノマー(I
TFE
SO3X)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(I
TFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に50~99モル%、好ましくは52~98モル%の量の繰り返し単位と;
(2)少なくとも1つの-SO
3X
a基を含み、且つ
(j)式:CF
2=CF-O-(CF
2)
mSO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF
2=CF-(OCF
2CF(R
F1))
w-O-CF
2(CF(R
F2))
ySO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるR
F1及びR
F2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC
1~C
10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、R
F1は、-CF
3であり、yは、1であり、及びR
F2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;及び
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する加水分解された繰り返し単位であって、アイオノマー(I
TFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して1~50モル%、好ましくは2~48モル%の量の加水分解された繰り返し単位と;
(3)任意選択的に、少なくとも1種の含水素モノマー及び/又はTFEと異なるフッ素化モノマー、好ましくはヘキサフルオロプロピレン、式CF
2=CFOR’
f1(ここで、R’
f1は、C
1~C
6パーフルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;例えば式CF
2=CFOCF
2OR’
f2(ここで、R’
f2は、C
1~C
6パーフルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7又は-C
2F
5-O-CF
3のような1つ以上のエーテル基を有するC
1~C
6パーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルを含む、式CF
2=CFOR’
O1(ここで、R’
O1は、1つ以上のエーテル基を有するC
2~C
12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から一般に選択されるパーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(I
TFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に0~45モル%、好ましくは0~40モル%の量の繰り返し単位と
から本質的になるポリマーから選択され;
アイオノマー(I
TFE
SO3X)は、好ましくは、前記アイオノマー(I
TFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルを基準として、
(k)55~95モル%、好ましくは65~93モル%の、TFEに由来する繰り返し単位;
(kk)5~45モル%、好ましくは7~35モル%の、少なくとも1つの-SO
3X
a基を含み、且つ上記で詳述されたようなモノマー(2)に由来する加水分解された繰り返し単位;
(3)0~25モル%、好ましくは0~20モル%の、上記で詳述されたようなTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する繰り返し単位
から本質的になる、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のモノマー(B)は、フッ化ビニリデン(VDF)であり、アイオノマー(I
VDF
SO3X)は、
(1)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(I
VDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に55~99モル%、好ましくは70~95モル%の量の繰り返し単位と;
(2)少なくとも1つの-SO
3X
a基を含み、且つ
(j)式:CF
2=CF-O-(CF
2)
mSO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF
2=CF-(OCF
2CF(R
F1))
w-O-CF
2(CF(R
F2))
ySO
2X
X(ここで、X
Xは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるR
F1及びR
F2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC
1~C
10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、R
F1は、-CF
3であり、yは、1であり、及びR
F2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;及び
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する加水分解された繰り返し単位であって、アイオノマー(I
VDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に1~45モル%、好ましくは5~30モル%の量の加水分解された繰り返し単位と;
(3)任意選択的に、少なくとも1種の含水素モノマー又はVDFと異なるフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(I
VDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に0~30モル%、好ましくは0~15モル%の量の繰り返し単位と
から本質的になるポリマーから選択され;
アイオノマー(I
VDF
SO3X)は、好ましくは、前記アイオノマー(I
VDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルを基準として、
(1)55~95モル%、好ましくは70~92モル%の、VDFに由来する繰り返し単位;
(2)5~40モル%、好ましくは8~30モル%の、少なくとも1つの-SO
3X
a基を含み、且つ上記で詳述されたような少なくとも1種のモノマー(2)に由来する加水分解された繰り返し単位;
(3)0~15モル%、好ましくは0~10モル%の、上記で詳述されたような含水素モノマー又はVDFと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する繰り返し単位
から本質的になるポリマーである、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月5日出願の欧州特許出願公開第18204459.4号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特定の分散性アイオノマー粉末、それらの製造方法及びとりわけコーティング用途のためにそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カルボン酸基又はスルホン酸基を有するフッ素化アイオノマー、より具体的にはパーフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーは、厳しい条件(すなわち水中圧力下で250℃)を用いない限り、溶媒に溶解/分散させることが非常に困難であることが知られている半結晶性材料である。
【0004】
実際に、重合されたままの材料は、典型的には、イオン交換能力を達成するための加水分解を受ける必要があるポリマー前駆体のラテックスの形態下で提供される。凝固及び加水分解すると、酸形態材料は、単に広範な熱処理により、場合により少量のアルコール溶媒との混合物で水に再分散させ、前記水相中の分散粒子を提供することができるであろう。
【0005】
現在、エンドユーザーは、例えば、様々な支持体に含浸させるために、水以外の溶媒をベースとするコーティング組成物として前記酸形態材料を配合する必要があり得、そのため、前記フッ素化アイオノマーの容易に分散可能な粉末の利用可能性は、市場空間において非常に有益であろう。
【0006】
この領域において、そのため、文献米国特許出願公開第2008/0227875号明細書は、スルホネート官能基を有する高フッ素化イオン交換ポリマーの粒子を含有する固体及び液体組成物を開示している。液体水性組成物は、高温及び高撹拌の過酷な条件下で前記ポリマーを水性媒体中に分散させることによって製造される。固体組成物は、前記液体組成物から、組成物中のイオン交換したポリマーの合体温度未満の温度での蒸発により、水性液体組成物の液体成分を除去することによって製造することができる。「合体温度」とは、ポリマーの乾燥固体が、穏和な条件、すなわち室温/大気圧下で水又は他の極性溶媒に再分散できない安定した固体に硬化する温度を意味する。この文献は、合体温度がポリマー組成物と共に変わり、ここで、好ましい条件が、約100℃未満の温度に加熱することによって液体成分が除去されるものであることを教示している。この除去を行うための技術の中でも、凍結乾燥及び合体温度未満の温度での噴霧乾燥が挙げられる。この方法の結果は、フルオロアイオノマーの再分散性の粉末組成物である。
【0007】
同様に、文献米国特許出願公開第2008/0160351号明細書は、高フッ素化イオン交換ポリマーの分散系を製造する方法であって、前記ポリマーの有機液体中の分散系を加熱ガス中で噴霧し、且つそのように得られた粒子を第2液体に再分散させる工程を含む方法に向けられている。実施例において、フルオロアイオノマー分散系は、まず、比較的厳しい条件下で水中において、約20~25%の量のアルコール(NPA)を含む液体媒体中で調製され;アルコール/水分散系は、次いで、170~210℃の温度に保たれた窒素フローガス中で噴霧乾燥され、約4~5重量%の残存水分、約25~40μmの粒径及び30~50g/lの嵩密度を有する粒子を生じさせた。そのように得られた粉末は、室温で異なる組成の液体媒体に容易に再分散された。
【0008】
さらに、文献中国特許第103044698B号明細書は、膜を製造する方法であって、パーフッ素化スルホン酸樹脂を低沸点溶媒に溶解させて、3~15重量%の低い固形分の溶液を得;第2工程において、溶液の濾過及び噴霧乾燥を行って、パーフッ素化スルホン酸樹脂粉末を提供し;後続の工程において、そのように得られた粉末を高沸点溶媒に再溶解させて、25~50重量%の高い固形分の溶液を調製し;且つ溶液に関して泡を除去し、溶液を固体表面上にコートしてフィルムを形成し、乾燥させ、圧延してパーフルオロスルホン酸イオン交換膜を得る方法に向けられている。
【0009】
さらに、文献米国特許出願公開第2011/0240559号明細書は、SO3H基を有するPFSAの固体微粒子と接触させることによる、液体PFSA分散系を精製する方法を記載しており;酸基を有するこの固体微粒子PFSAは、乳化重合によって調製され、且つスルホニルフルオリド基を有し、且つ凝固、加水分解及び乾燥にさらにかけられるパーフルオロスルホン酸前駆体から得られる。この文献は、ラテックス形態でのPFSA前駆体の加水分解も噴霧乾燥技術も記載していない。
【0010】
ここで、再分散性フッ素化アイオノマー粉末を提供するという課題は、先行技術において既に取り組まれているが、コーティング組成物を配合するための結果として生じた分散系のコハンドリングは、達成できる濃度が低いままであり、且つ液体状態での対応する粘度が、非常に多くの場合、標準的なコーティング液体配合技術に適合するには低すぎ、そのため、結果として生じた調合物の粘度が、最終被覆/含浸物品中にその後取り込まれたままとなり得る粘度調整剤及び/又は増粘剤の添加によって是正されなければならないため、課題のままである。
【0011】
そのため、容易な製造方法論により、様々な溶媒中の高固形分、高粘性調合物の提供を含む、市場の満たされていない必要性に対処することができるであろう、分散性フルオロアイオノマー粉末及びそれからのフルオロアイオノマー粉末を提供する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
この技術的問題に直面して、本出願人は、アイオノマー粉末を製造する方法であって、厳しい条件の使用を回避する点において特に有利であり、且つ特にそれからの調合物の達成可能な液体粘度の観点から特に有利な特性を有する粒子をもたらす方法を見出した。
【0013】
したがって、第1態様において、本発明は、-SO3Xa、-PO3Xa及び-COOXa(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)からなる群から選択される複数のイオン化可能な基を含む少なくとも1種のイオン化可能なポリマー[アイオノマー(IX)]の複数の粒子から構成される粉末状材料[材料(P)]を製造する方法であって、
工程(1):-SO2XX、-PO2XX及び-COXx(ここで、Xxは、ハロゲン、特にF又はClである)からなる群から選択される複数の加水分解性基を含む少なくとも1種のアイオノマー前駆体[前駆体(IP)]の粒子を含む、重合されたままの水性ラテックス[ラテックス(Ip)]を提供する工程と;
工程(2):アイオノマー(IX)の粒子の水性ラテックスを得るために、いかなる有意な凝固も引き起こすことなく、前記基-SO2XX、-PO2XX及び-COXx(ここで、Xxは、F又はClである)を対応する基-SO3Xa、-PO3Xa及び-COOXa(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は一価金属である)に少なくとも部分的に転化するような条件において、前記重合されたままの水性ラテックス[ラテックス(I
p
)]を塩基性加水分解剤[試剤(B)]と接触させる工程と;
任意選択的に、工程(3):試剤(B)及び/又は他の汚染物質の残渣を少なくとも部分的に除去するために、前記ラテックス(Ix)を少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させる工程と;
工程(4):前記材料(P)を得るために、場合により精製後にラテックス(Ix)を噴霧乾燥させる工程と
を含む方法に関する。
【0014】
第2態様において、本発明は、上記で詳述されたような方法によって得ることができる粉末状材料[材料(P)]であって、-SO3Xa、-PO3Xa及び-COOXa(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)からなる群から選択される複数のイオン化可能な基を含む少なくとも1種のフッ素化アイオノマー[アイオノマー(IX)]の複数の粒子から構成され、
前記粒子は、素粒子の擬球状中空凝集塊を含み、
- 前記中空凝集塊は、1~150μmの平均粒径を有し;及び
- 前記素粒子は、15~150nmの平均径を有する、粉末状材料[材料(P)]に関する。
【0015】
特に、本出願人は、凝固、次いで前駆体/アイオノマーの再溶解のいかなる工程も伴わない本発明の方法が、経済的観点から特に有効であり、前駆体を粉末状材料に処理するためにより穏和な条件を用い、そのため、それ自体非常に有利であることを見出した。さらに、上記で詳述されたような本方法は、特に有利な粒子微細構造を有する粉末状材料を提供し、微細構造により、前記粉末状材料は、容易に再溶解し、且つ誤った粘度エンハンサー及び/又は増粘剤の添加の必要性なしに、それからの調合物を多数のコーティング/液体処理技術の粘度要件にマッチすることができるようにするために、増加した液体粘度を提供する。
【0016】
イオン化可能なポリマー[アイオノマー(IX)]及びアイオノマー前駆体[前駆体(IP)]
本発明の別名アイオノマー(IX)と呼ばれるイオン化可能なポリマー及びその前駆体(IP)は、一般に、フッ素化されており、すなわち少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーに由来する繰り返し単位を含み、且つ少なくとも1種の含水素モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含み得、ここで、用語「含水素モノマー」は、少なくとも1つの水素原子を含み、且つフッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味する。
【0017】
前記のように、アイオノマー(IX)は、-SO3Xa、-PO3Xa及び-COOXa(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)からなる群から選択される複数のイオン化可能な基を含む一方、前駆体(Ip)は、-SO2XX、-PO2XX及び-COXx(ここで、Xxは、ハロゲン、特にF又はClである)からなる群から選択される複数の加水分解性基を含む[前駆体(IP)]。
【0018】
アイオノマー(IX)のイオン化可能な基における対イオンXaとして好適な好ましい一価金属の例として、Li、K、Naを挙げることができ、ここで、Liは、例えば、Li+/Liレドックス対をベースとする二次電池及び他の電気化学デバイスのドメインにおけるその使用に関連して、アイオノマー(IX)の特定の使用分野のために好ましいことがあり得る。
【0019】
一般に、アイオノマー(IX)は、前記イオン化可能な基を、官能性モノマー(本明細書において以下ではモノマー(X))に由来する加水分解された繰り返し単位に共有結合されたペンダント基として含む。同様に、一般に、前駆体(IP)は、前記加水分解性基を、前記官能性モノマー(本明細書において以下では、モノマー(X))に由来する繰り返し単位に共有結合されたペンダント基として含む。
【0020】
特定のモノマーに関連して、表現「に由来する加水分解された繰り返し単位」は、前記特定のモノマーを重合させることから最初に誘導され/直接得られ、次いで加水分解によるそのさらなる修飾/仕上げによって誘導される/得られる繰り返し単位を指すことが意図される。
【0021】
アイオノマー(IX)は、上記で詳述されたような1種若しくは2種以上のモノマー(X)に由来する加水分解された繰り返し単位の配列から本質的になり得るか、又は1種若しくは2種以上のモノマー(X)に由来する加水分解された繰り返し単位と、モノマー(X)と異なる1種若しくは2種以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むコポリマーであり得る。同様に、それからアイオノマー(IX)が得られる前駆体(IP)は、上記で詳述されたような1種若しくは2種以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位の配列から本質的になり得るか、又は1種若しくは2種以上のモノマー(X)に由来する繰り返し単位と、モノマー(X)と異なる1種若しくは2種以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むコポリマーであり得る。
【0022】
一般に、モノマー(X)は、フッ素化モノマーであり、モノマー(X)と異なるさらなる1種又は2種以上の追加のモノマーは、フッ素化モノマーであり得る。表現「フッ素化モノマー」は、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを包含することが意図される。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、アイオノマー(IX)は、上記で詳述されたような複数の-SO3Xa基を含み、すなわちアイオノマー(ISO3X)である。これらの実施形態によれば、前駆体(IP)は、上記で詳述されたような複数の基-SO2XXを含み、すなわち前駆体(PSO2X)である。
【0024】
アイオノマー(ISO3X)は、上記で詳述されたような式-SO3Xaの少なくとも1つの基を含む1種若しくは2種以上のモノマー(XSO3X)に由来する複数の繰り返し単位の配列から本質的になり得るか、又は1種若しくは2種以上のモノマー(XSO3X)に由来する複数の繰り返し単位と、モノマー(XSO3X)と異なる1種若しくは2種以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むことができる。
【0025】
同様に、前駆体(PSO2X)は、上記で詳述されたような式-SO2XXの少なくとも1つの基を含む1種若しくは2種以上のモノマー(XP
SO2X)に由来する複数の繰り返し単位の配列から本質的になり得るか、又は1種若しくは2種以上のモノマー(XP
SO2X)に由来する複数の繰り返し単位と、モノマー(XP
SO2X)と異なる1種若しくは2種以上の追加のモノマーに由来する繰り返し単位とを含むことができる。複数の-SO3Xa基を含む好適な好ましいアイオノマー(ISO3X)は、少なくとも1つの-SO3Xa基(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)を含み、且つ少なくとも1つの-SO2XX基(ここで、Xxは、ハロゲンである)を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[以下ではモノマー(A)]に由来する複数の加水分解された繰り返し単位と;上記で詳述されたような-SO2XX基を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[以下ではモノマー(B)]に由来する複数の繰り返し単位とから本質的になるそれらのポリマーである。対応する前駆体(PSO2X)は、少なくとも1つの-SO2XX基を含み、且つ上記で詳述されたような少なくとも1種のモノマー(A)を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマーに由来する複数の繰り返し単位と;上記で詳述されたような少なくとも1種のモノマー(B)に由来する複数の繰り返し単位とから本質的になるそれらのポリマーである。
【0026】
既に前記のように、特定のモノマー(A)に関連して、表現「に由来する加水分解された繰り返し単位」は、前記特定のモノマーを重合させることから最初に誘導され/直接得られ、次いで前記少なくとも1つの-SO2XX基(ここで、XXは、ハロゲンである)を前記少なくとも1つの-SO3Xa基(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)に変換する、加水分解によるそのさらなる修飾/仕上げによって誘導される/得られる繰り返し単位を指すことが意図される。
【0027】
語句「少なくとも1種のモノマー」は、タイプ(A)及び(B)の両方のモノマーに関して、各タイプの1種又は2種以上のモノマーがアイオノマー(ISO3X)及び/又は前駆体(PSO2X)中に存在できることを示すために本明細書で用いられる。以下では、用語「モノマー」は、与えられたタイプの1種及び2種以上のモノマーの両方を指すために用いられる。
【0028】
好適なモノマー(A)の非限定的な例は、
- 式:CF2=CF(CF2)pSO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、pは、0~10、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは、pは、2又は3に等しい)のスルホニルハライドフルオロオレフィン;
- 式:CF2=CF-O-(CF2)mSO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
- 式:CF2=CF-(OCF2CF(RF1))w-O-CF2(CF(RF2))ySO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC1~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CF3であり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;
- 式CF2=CF-Ar-SO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、Arは、C5~C15の芳香族又はヘテロ芳香族基である)のスルホニルハライド芳香族フルオロオレフィン
である。
【0029】
好ましくは、モノマー(A)は、式CF2=CF-O-(CF2)m-SO2F(ここで、mは、1~6、好ましくは2~4の整数である)のスルホニルフルオリドフルオロビニルエーテルの群から選択される。
【0030】
より好ましくは、モノマー(A)は、CF2=CFOCF2CF2-SO2F(パーフルオロ-5-スルホニルフルオリド-3-オキサ-1-ペンテン)である。
【0031】
タイプ(B)の好適なエチレン性不飽和フッ素化モノマーの非限定的な例は、
- C
2-C
8パーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8水素含有フルオロオレフィン、例えばトリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレン;
- C
2~C
8クロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード含有フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びブロモトリフルオロエチレン;
- 式CF
2=CFOR
f1(ここで、R
f1は、C
1~C
6フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)のフルオロアルキルビニルエーテル;
- とりわけ式CF
2=CFOCF
2OR
f2(ここで、R
f2は、C
1~C
3フルオロ(オキシ)アルキル基、例えば-CF
2CF
3、-CF
2CF
2-O-CF
3及び-CF
3である)のフルオロメトキシアルキルビニルエーテルを含む、式CF
2=CFOX
0(ここで、X
0は、1つ又は2つ以上のエーテル酸素原子を含むC
1~C
12フルオロオキシアルキル基である)のフルオロオキシアルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか又は異なるR
f3、R
f4、R
f5、R
f6のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1つ以上の酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6フルオロ(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7、-OCF
3、-OCF
2CF
2OCF
3である)
のフルオロジオキソール
である。
【0032】
好ましくは、モノマー(B)は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)及び/又はヘキサフルオロプロピレン(HFP)から選択されるC2~C8パーフルオロオレフィン;
- トリフルオロエチレン(TrFE)、フッ化ビニリデン(VDF)及びフッ化ビニル(VF)から選択されるC2~C8水素含有フルオロオレフィン;及び
- それらの混合物
の中で選択される。
【0033】
これらの実施形態によれば、好ましくは、アイオノマー(ISO3X)は、複数の-SO3Xa官能基を含み、且つ少なくとも1つのスルホニルフルオリド官能基(基-SO2F)を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素モノマー(A)に由来する複数の加水分解された繰り返し単位と、少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー(B)に由来する複数の繰り返し単位との配列を本質的に含む。これらの実施形態において、前駆体(PSO2X)は、少なくとも1つのスルホニルフルオリド官能基(基-SO2F)を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素モノマー(A)に由来する複数の繰り返し単位と、少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー(B)に由来する複数の繰り返し単位との配列を本質的に含む。
【0034】
場合により、末端基、不純物、欠陥及び限定量(繰り返し単位の全モルに対して1モル%未満)の他の誤った単位は、イオノマー(ISO3X)又は前駆体(PSO2X)の特性に実質的に影響を及ぼすことなく、列挙された繰り返し単位に加えて、好ましいアイオノマー(ISO3X)中及び/又は好ましい前駆体(PSO2X)中に存在し得る。
【0035】
特定の実施形態によれば、アイオノマー(ISO3X)又は対応する前駆体(PSO2X)の少なくとも1種のモノマー(B)は、TFEである。前記少なくとも1種のモノマー(B)がTFEであるアイオノマー(ISO3X)は、本明細書により、アイオノマー(ITFE
SO3X)と呼ばれる一方、対応する前駆体(PSO2X)は、前駆体(PTFE
SO2X)と呼ばれるであろう。
【0036】
好ましいアイオノマー(ITFE
SO3X)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(ITFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に50~99モル%、好ましくは52~98モル%の量の繰り返し単位と;
(2)少なくとも1つの-SO3Xa基を含み、且つ
(j)式:CF2=CF-O-(CF2)mSO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
(jj)式:式:CF2=CF-(OCF2CF(RF1))w-O-CF2(CF(RF2))ySO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC1~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CF3であり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;及び
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する加水分解された繰り返し単位であって、アイオノマー(ITFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に1~50モル%、好ましくは2~48モル%の量の加水分解された繰り返し単位と;
(3)任意選択的に、少なくとも1種の含水素モノマー及び/又はTFEと異なるフッ素化モノマー、好ましくはヘキサフルオロプロピレン、式CF2=CFOR’f1(ここで、R’f1は、C1~C6パーフルオロアルキル、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;例えば式CF2=CFOCF2OR’f2(ここで、R’f2は、C1~C6パーフルオロアルキル、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7又は-C2F5-O-CF3のような1つ以上のエーテル基を有するC1~C6パーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルを含む、式CF2=CFOR’O1(ここで、R’O1は、1つ以上のエーテル基を有するC2~C12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から一般に選択されるパーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(ITFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に0~45モル%、好ましくは0~40モル%の量の繰り返し単位と
から本質的になるポリマーから選択される。
【0037】
矛盾することなく、前記好ましいアイオノマー(ITFE
SO3X)がそれから得られ得る好ましい前駆体(PTFE
SO2X)は、
(1)テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位であって、前駆体(PTFE
SO2X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に50~99モル%、好ましくは52~98モル%の量の繰り返し単位と;
(2)(j)式:CF2=CF-O-(CF2)mSO2XX(ここで、Xは、ハロゲン、好ましくはF又はClであり、より好ましくはFであり;mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF2=CF-(OCF2CF(RF1))w-O-CF2(CF(RF2))XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり;wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC1~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CF3であり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;及び
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位であって、前駆体(PTFE
SO2X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に1~50モル%、好ましくは2~48モル%の量の繰り返し単位と;
(3)任意選択的に、少なくとも1種の含水素モノマー及び/又はTFEと異なるフッ素化モノマー、好ましくはヘキサフルオロプロピレン、式CF2=CFOR’f1(ここで、R’f1は、C1~C6パーフルオロアルキル、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7である)のパーフルオロアルキルビニルエーテル;例えば式CF2=CFOCF2OR’f2(ここで、R’f2は、C1-C6パーフルオロアルキル、例えばCF3、-C2F5、-C3F7又は-C2F5-O-CF3のような1つ以上のエーテル基を有するC1~C6パーフルオロオキシアルキルである)のパーフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテルを含む、式CF2=CFOR’O1(ここで、R’O1は、1つ以上のエーテル基を有するC2~C12パーフルオロ-オキシアルキルである)のパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテルからなる群から一般に選択されるパーフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、前駆体(PTFE
SO2X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に0~45モル%、好ましくは0~40モル%の量の繰り返し単位と
から本質的になるポリマーから選択される。
【0038】
特定の実施形態によれば、好ましいアイオノマー(ITFE
SO3X)は、一般に、前記アイオノマー(ITFE
SO3X)の繰り返し単位の全モルを基準として、
(k)55~95モル%、好ましくは65~93モル%の、TFEに由来する繰り返し単位;
(kk)5~45モル%、好ましくは7~35モル%の、少なくとも1つの-SO3Xa基を含み、且つ上記で詳述されたようなモノマー(2)に由来する加水分解された繰り返し単位;
(3)0~25モル%、好ましくは0~20モル%の、上記で詳述されたようなTFEと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する繰り返し単位
から本質的になる。
【0039】
それらの対応する加水分解された対応物の代わりに、上記で詳述されたようなモノマー(2)に由来する単位が含まれる好ましい前駆体(PTFE
SO2X)について、変更すべきところは変更して同じことが当てはまる。
【0040】
特定の他の実施形態によれば、アイオノマー(ISO3X)又は対応する前駆体(PSO2X)の少なくとも1種のモノマー(B)は、VDFである。少なくとも1種のモノマー(B)がVDFであるアイオノマー(ISO3X)は、アイオノマー(IVDF
SO3X)と本明細書によって呼ばれる一方、対応する前駆体(PSO2X)は、前駆体(PVDF
SO2X)と呼ばれるであろう。
【0041】
好ましいアイオノマー(IVDF
SO3X)は、
(1)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(IVDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に55~99モル%、好ましくは70~95モル%の量の繰り返し単位と;
(2)少なくとも1つの-SO3Xa基を含み、且つ
(j)式:CF2=CF-O-(CF2)mSO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数であり、さらにより好ましくは、mは、2に等しい)のスルホニルハライドフルオロビニルエーテル;
(jj)式:CF2=CF-(OCF2CF(RF1))w-O-CF2(CF(RF2))ySO2XX(ここで、XXは、ハロゲン、好ましくはF又はCl、より好ましくはFであり、wは、0~2の整数であり、互いに等しいか又は異なるRF1及びRF2は、独立して、F、Cl又は1つ以上のエーテル酸素で任意選択的に置換されたC1~C10フルオロアルキル基であり、yは、0~6の整数であり;好ましくは、wは、1であり、RF1は、-CF3であり、yは、1であり、及びRF2は、Fである)のスルホニルフルオリドフルオロアルコキシビニルエーテル;及び
(jjj)それらの混合物
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する加水分解された繰り返し単位であって、アイオノマー(IVDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に1~45モル%、好ましくは5~30モル%の量の加水分解された繰り返し単位と;
(3)任意選択的に、少なくとも1種の含水素モノマー又はVDFと異なるフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位であって、アイオノマー(IVDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルに対して一般に0~30モル%、好ましくは0~15モル%の量の繰り返し単位と
から本質的になるポリマーから選択される。
【0042】
特定の実施形態によれば、好ましいアイオノマー(IVDF
SO3X)は、一般に、前記アイオノマー(IVDF
SO3X)の繰り返し単位の全モルを基準として、
(1)55~95モル%、好ましくは70~92モル%の、VDFに由来する繰り返し単位;
(2)5~40モル%、好ましくは8~30モル%の、少なくとも1つの-SO3Xa基を含み、且つ上記で詳述されたような少なくとも1種のモノマー(2)に由来する加水分解された繰り返し単位;
(3)0~15モル%、好ましくは0~10モル%の、上記で詳述されたような含水素モノマー又はVDFと異なるフッ素化モノマー(3)に由来する繰り返し単位
から本質的になるポリマーである。
【0043】
アイオノマー(IX)及び/又はそれらの前駆体(IP)は、式:RARB=CRC-T-CRD=RERF(ここで、互いに等しいか又は異なるRA、RB、RC、RD、RE及びRFは、H、F、Cl、C1~C5アルキル基及びC1~C5(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択され、及びTは、好ましくは、少なくとも部分的にフッ素化されている、1つ以上のエーテル酸素原子を任意選択的に含む直鎖若しくは分岐C1~C18アルキレン若しくはシクロアルキレン基又は(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)の少なくとも1種のビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位をさらに含み得る。
【0044】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)及び(OF-3):
(式中、jは、2~10、好ましくは4~8に含まれる整数であり、及び互いに等しいか又は異なるR1、R2、R3及びR4は、H、F、C
1~C
5アルキル基及びC
1~C
5(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択される);
(式中、互いに且つ出現ごとに等しいか又は異なるAのそれぞれは、H、F及びClからなる群から独立して選択され;互いに且つ出現ごとに等しいか又は異なるBのそれぞれは、H、F、Cl及びOR
B(ここで、R
Bは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化され得る分岐又は直鎖アルキル基である)からなる群から独立して選択され、Eは、エーテル結合が挿入され得る、任意選択的にフッ素化されている、2~10の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは、-(CF
2)
m-基(ここで、mは、3~5に含まれる整数である)であり;(OF-2)型の好ましいビス-オレフィンは、F
2C=CF-O-(CF
2)
5-O-CF=CF
2である);
(式中、E、A及びBは、上記で定義されたものと同じ意味を有し、互いに等しいか又は異なるR5、R6及びR7は、H、F、C
1~C
5アルキル基及びC
1~C
5(パー)フルオロアルキル基からなる群から選択される)
のいずれかのものからなる群から選択される。
【0045】
アイオノマー(IX)又はそれらの前駆体(IP)が、少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位をさらに含む場合、前記アイオノマー(IX)又はそれらの前駆体(IP)は、場合により、アイオノマー(IX)又はそれらの前駆体(IP)の繰り返し単位の全モルを基準として0.01モル%~1.0モル%、好ましくは0.03モル%~0.5モル%、より好ましくは0.05モル%~0.2モル%に含まれる量において、前記少なくとも1種のビス-オレフィン(OF)に由来する繰り返し単位を典型的に含む。
【0046】
場合により、アイオノマー(IX)中又はそれらの前駆体(IP)中の前記イオン化可能な基又は加水分解性基の量は、場合により、アイオノマー(IX)又は前駆体(IP)の総重量に対して少なくとも0.55、好ましくは少なくとも0.65、より好ましくは少なくとも0.75meq/gのイオン化可能な基又は加水分解性基の全体量を提供するようなものである。
【0047】
アイオノマー(IX)中又は前駆体(IP)中に含まれる前記イオン化可能な基又は加水分解性基の最大量に関して、実質的な制限はない。場合により、前記イオン化可能な基又は加水分解性基は、アイオノマー(IX)又は前駆体(IP)の総重量に対して一般に最大で3.50meq/g、好ましくは最大で3.20meq/g、より好ましくは最大で2.50meq/gの量で存在することが一般に理解される。
【0048】
本発明の方法の工程(1)において、前駆体(IP)の粒子を含む重合されたままの水性ラテックスが提供される。
【0049】
表現「重合されたままの水性ラテックス」は、この分野におけるその一般的な意味を本明細書によって与えられ、乳化重合から得られるようなポリマーの安定分散した粒子を含む水性分散系を意味する。前記ラテックスを製造するために用いられる特有の乳化重合技術は、特に限定されない。前記ラテックスが1種又は2種以上の乳化剤の存在下での水性媒体中の乳化重合によって製造される技術及び乳化剤が使用されない技術が等しく有効であり得る。
【0050】
ラテックス(I
P)の製造のための水性重合媒体中での乳化重合に使用するための、且つ前記ラテックス(I
p)中に含まれ得る乳化剤、特にフッ素化乳化剤の非限定的な例としては、とりわけ、以下:
(a’)CF
3(CF
2)
n0COOM’(ここで、n
0は、4~10、好ましくは5~7の範囲の整数であり、好ましくは、n
0は、6に等しく、M’は、NH
4、Na、Li又はK、好ましくはNH
4を表す);
(b’)[R
1-O
n-L-A
-]Y
+(ここで、R
1は、エーテル結合を含有し得る直鎖又は分岐の部分的又は完全フッ素化脂肪族基であり;nは、整数であり;Lは、非フッ素化、部分的フッ素化又は完全フッ素化であり得、且つエーテル結合を含有し得る直鎖又は分岐アルキレン基であり;A
-は、カルボキシレート、スルホネート、スルホンアミドアニオン及びホスホネートからなる群から選択されるアニオン基であり;及びY
+は、水素、アンモニウム又はアルカリ金属カチオンである)であって、クラス(b’)の中でも、
(b’-1)T-(C
3F
6O)
n1(CFYO)
m1CF
2COOM’’(ここで、Tは、Cl原子又は式C
xF
2x+1-x’Cl
x’O(ここで、xは、1~3の範囲の整数であり、及びx’は、0又は1である)のパーフルオロアルコキシド基を表し、n
1は、1~6の範囲の整数であり、m
1は、0又は1~6の範囲の整数であり、M’’は、NH
4、Na、Li又はKを表し、及びYは、F又は-CF
3を表わす);
(b’-2)R
f-(OCF
2CF
2)
k-1-O-CF
2-COOX
a (IA)(ここで、R
fは、1つ以上のエーテル酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
3パーフルオロアルキル基であり、kは、2又は3であり、及びX
aは、一価金属及び式NR
N
4(ここで、出現ごとに等しいか又は異なるR
Nは、水素原子又はC
1~C
3アルキル基である)のアンモニウム基から選択される)、
(b’-3)F-(CF
2CF
2)
n2-CH
2-CH
2-X*O
3M’’’(ここで、X*は、リン又は硫黄原子であり、好ましくは、X*は、硫黄原子であり、M’’’は、NH
4、Na、Li又はKを表し、及びn
2は、2~5の範囲の整数であり、好ましくは、n
2は、3に等しい)
が特に挙げられ得る、[R
1-O
n-L-A
-]Y
+;
(c’)A-R
bf-B二官能性フッ素化界面活性剤(ここで、互いに等しいか又は異なるA及びBは、式-(O)
pCFY’’-COOM*(ここで、M*は、NH
4、Na、Li又はKを表し、好ましくは、M*は、NH
4を表し、Y’’は、F又は-CF
3であり、及びpは、0又は1であり、及びR
bfは、A-R
bf-Bの数平均分子量が300~1800の範囲であるような二価の(パー)フルオロアルキル鎖又は(パー)フルオロポリエーテル鎖である);
(d’)式(II):
(式中、互いに等しいか又は異なるX
1、X
2及びX
3は、H、F及び1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を任意選択的に含むC
1~C
6(パー)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基であり、及びYは、アニオン性官能基である)
の環状フロオロ化合物;及び
(e’)それらの混合物
が挙げられる。
【0051】
前記ラテックスは、水性ラテックス、すなわち前駆体(IP)の粒子が水性媒体、すなわち主に水からなる媒体中に分散されている液体媒体であり;少量の他の溶媒及び/又は重合に使用された原料/補助剤(開始剤、連鎖移動剤、安定剤、乳化剤等の残渣)は、それにもかかわらず、前記ラテックス中に存在し得る。
【0052】
工程(2)において、テックス(Ip)は、アイオノマー(IX)の粒子の水性ラテックスを得るために、いかなる有意な凝固も引き起こすことなく、前記基-SO2XX、-PO2XX及び-COXx(ここで、Xxは、F又はClである)を対応する基-SO3Xa、-PO3Xa及び-COOXa(ここで、Xaは、H、アンモニウム基又は金属、好ましくは一価金属である)に少なくとも部分的に転化するような条件において塩基性加水分解剤[試剤(B)]と接触される。
【0053】
前記塩基性加水分解剤の選択は、それが、期待される加水分解反応を有効に引き起こすことができることを条件として特に限定されない。
【0054】
一般に、有機塩基もこの目的のために有効であり得るが、無機塩基、特にアルカリ又はアルカリ土類金属の無機水酸化物を使用することができる。有用であると分かっている無機塩基の中でも、KOH、NaOH、LiOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2を挙げることができる。
【0055】
一般に、前記試剤(B)は、加水分解される基の当量の全体量に対して過剰に使用される。
【0056】
工程(2)における温度及び撹拌は、元のラテックス(IP)及び結果として生じるラテックス(IX)のいかなる有意な凝固も防ぐために、試剤(B)の全体濃度と組み合わせてとりわけ制御される。
【0057】
それにもかかわらず、凝固物及び/又は沈殿物の少ない形成が起こり得ることが理解される。工程(2)において、凝固が、元のラテックス(IP)又は結果として生じるラテックス(IX)の全固形分の5重量%未満の量での凝固物及び/又は沈殿物の形成をもらす状況は、任意の有意な凝固物が生じている実施形態と見なされる。
【0058】
工程(2)中、有利には、前記元のラテックス(Ip)中に分散した前駆体(Ip)の粒子の平均粒径は、有意に変更されず、その結果、有利には、前記結果として生じたラテックス(IX)中に分散したアイオノマー(Ix)の粒子の平均粒径は、前記元のラテックス(Ip)中に分酸した前駆体(Ip)の粒子のものと本質的に同じである。
【0059】
一般に、前記元のラテックス(Ip)中に分散した前駆体(Ip)の粒子の平均粒径は、有利には、15~150nmの範囲であり;より特に、前記平均粒径は、有利には、少なくとも30nm、好ましくは少なくとも50nmのもの及び/又は有利には最大で140nm、好ましくは最大で120nm、最も好ましくは最大で100nmのものである。
【0060】
同様に、前記結果として生じたラテックス(IX)中に分散したアイオノマー(IX)の粒子の平均粒径は、有利には、15~150nmの範囲であり;より特に、前記平均粒径は、有利には、少なくとも30nm、好ましくは少なくとも50nmのもの及び/又は有利には最大で140nm、好ましくは最大で120nm、最も好ましくは最大で100nmのものである。
【0061】
ラテックス(Ip)及び/又はラテックス(IX)中に分散した粒子の平均一次粒径は、ISO 13321標準に従う、B.Chu「Laser light scattering」Academic Press,New York(1974)に記載されている方法に従った光子相関分光法(PCS)(動的レーザー光散乱(DLLS)技術とも呼ばれる方法)によってとりわけ測定することができる。
【0062】
PCSが平均流体力学的径の推定を与えることは、当業者に周知である。本発明の目的のために、用語「平均粒径」は、流体力学的径の測定に関連したその最も広い意味で意図される。ISO 13321標準の目的に従い、一次粒子の「平均粒径」という用語は、ISO 13321の付属文書Cの方程式(C.10)によって決定されるような調和強度平均粒径XPCSを意味することが意図されることも理解されるべきである。
【0063】
例として、平均一次粒径は、10mV He-Neレーザー源を使用する、90°散乱角度でのMalvern Zetasizer 3000 HS設備及びPCSソフトウェア(Malvern 1.34バージョン)を用いることによって測定することができる。平均粒径は、二回蒸留水で好適に希釈され、Milliporeフィルターにおいて0.2μmで濾過されたラテックス検体に関して好ましくは測定される。
【0064】
工程(2)は、試剤(B)とラテックス(IP)との接触を行った後、結果として生じたラテックス(IX)を、試剤(B)と異なる少なくとも1種の中和剤[試剤(N)]と接触させる工程をさらに含み得る。試剤(N)の選択は、特に限定されず;一般に、試剤(N)と接触させるこの工程は、場合により、それらの酸性形態、すなわちそれらの-SO3H、-PO3H及び-COOHにおけるラテックス(IX)のイオン化可能な基を復元するのに有効である。有用性を見出した試剤(N)には、有機及び無機酸が含まれる。
【0065】
そのため、本発明の方法の工程(2)の結果は、試剤(B)及び/又は他の汚染物質の残渣を含み得るラテックス(IX)である。表現「汚染物質」は、ラテックス(IX)の液体媒体中に溶解している/含有され得る、アイオノマー(IX)以外のいずれの誤った原料/化合物も包含すると本明細書によって理解される。これらの原料/化合物の例示的な実施形態は、ラテックス(IP)を製造するために使用されたものであり得、実際に、ラテックス(IX)中にイオン化/イオン化可能な化学種として存在することが知られている、重合開始剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝剤及び他の補助剤に由来する残渣であり得る。
【0066】
特定の実施形態によれば、そのため、本発明の方法は、試剤(B)及び/又は他の汚染物質の前記残渣を少なくとも部分的に除去するために、前記ラテックス(Ix)を少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させる工程(3)を含むことが適切であり得る。
【0067】
本文の残りにおいて、表現「イオン交換樹脂」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解され、イオン交換と呼ばれるプロセスでイオンを容易に捕捉及び放出する(すなわち交換する)活性部位(イオン交換部位)がその表面上にある、有機ポリマー基材から一般に製作される、通常減少したサイズ(例えば、0.1~5mm)のビーズの形態における固体の不溶性マトリックス(又は支持構造物)を意味することが意図される。
【0068】
イオン交換は、一般に、イオン交換の工程(3)において構造変化を受けない。
【0069】
イオン交換樹脂は、それ自体のイオンを、接触される液体中に存在するイオンと交換することができる天然又は合成物質であり得る。
【0070】
したがって、工程(3)中、イオンは、有利には、ラテックス(IX)とイオン交換樹脂との間で交換される。したがって、例えば、ラテックス(IP)の製造のために使用された任意の乳化剤に由来するアニオンは、有利には、ラテックス(IX)からイオン交換樹脂に移される。同時に、イオン交換樹脂に最初に固定されていたアニオンは、有利には、ラテックス(IX)に移される。
【0071】
イオン交換樹脂は、通常、合成ビーズから構成される。各ビーズは、表面上及びマトリックス自体内にイオン交換部位を含有するポリマーマトリックスである。
【0072】
好ましくは、イオン交換樹脂のポリマーマトリックスは、スチレンに由来する繰り返し単位(いわゆるポリスチレンマトリックス)又は(メタ)アクリルエステルに由来する繰り返し単位(いわゆるアクリルマトリックス)を含む。必要とされる交換部位は、重合後に導入することができるか、又は置換モノマーを使用することができる。好ましくは、ポリマーマトリックスは、架橋マトリックスである。架橋は、通常、少ない割合のジビニルベンゼンを重合中に加えることによって達成される。非架橋ポリマーは、結合するイオンに応じて寸法を変えるそれらの傾向のためにほとんど使用されない。より好ましくは、ポリマーマトリックスは、架橋ポリスチレンマトリックスである。
【0073】
1つ又は幾つかの異なるタイプのイオンを選択的に好むために製作されている多数の異なるタイプのイオン交換樹脂がある。
【0074】
アニオンは、他のアニオンと、カチオンは、他のカチオンと交換できるにすぎない。使用されるイオン交換樹脂は、そのため、ラテックス(IX)から除去される汚染物質/残渣のタイプに対して特異的である。前記汚染物質/酸基は、イオン交換と異なるメカニズムによってイオン交換樹脂上に吸着され得ることも理解される。
【0075】
アニオン交換樹脂は、アニオンがそれに結合されている、プラスに帯電されたイオン交換部位を有し、カチオン交換樹脂は、カチオンがそれに結合されている、マイナスに帯電されたイオン交換部位を有する。イオン交換樹脂は、通常、交換部位に対して低い親和性を有する結び付いたイオンを有してもたらされる。アニオンを含有するラテックス(IX)がイオン交換樹脂と接触すると、交換部位に対して最も大きい親和性を有するアニオンは、一般に、最低の親和性を有するものに取って代わる。そのため、イオン交換樹脂は、交換される必要があるものよりも低い親和性を有するアニオンを含有することが重要である。アニオン交換樹脂は、多くの場合、交換部位に対するそれらの低い親和性のためにクロリド(Cl-)又はヒドロキシル(OH-)イオンを使用する。
【0076】
好ましくは、本発明の方法の工程(3)において使用されるイオン交換樹脂は、上記で詳述されたようなアニオン性汚染物質/残渣を除去するために、上記で定義されたような少なくとも1種のアニオン交換樹脂を含む。一般に、ラテックス(IP)の製造に使用される乳化剤は、アニオン、好ましくはフッ素化化学種の金属塩又は第四級アンモニウム塩であり、したがって、アニオン交換樹脂は、それらの隔離及び除去のためにより適切であると通常考えられる。
【0077】
アニオン交換樹脂のプラスに帯電されたイオン交換部位の非限定的な例は、以下:
(式中、出現ごとに等しいか又は異なるRは、独立して、C
1~C
12炭化水素基又は水素原子であり、及び出現ごとに等しいか又は異なるEは、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む二価の炭化水素基である)
に図示される。
【0078】
好ましくは、アニオン交換樹脂のプラスに帯電されたイオン交換部位は、
の中で選択される。
【0079】
プラスに帯電されたイオン交換部位に固定されるアニオンの選択は、除去される汚染物質/残渣のアニオンに対して前記部位への典型的により小さい親和性を有することを条件として、決定的に重要であるわけではない。
【0080】
アニオンイオン交換樹脂は、好ましくは、そのプラスに帯電されたイオン交換部位上において、以下:F-(HFのpKaは、3.17である);OH-(H2OのpKaは、15.75である);CH3O-(CH3OHのpKaは、15.5である);((CH3)2CHO-((CH3)2CHOHのpKaは、16.5である);(CH3)3CO-((CH3)3COHのpKaは、17である)の中で選択されるアニオンを連結している。
【0081】
アニオン交換体は、好ましくは、少なくとも5、さらにより好ましくは少なくとも7のpKa値の酸に対応する対イオンを有する。
【0082】
最も好ましい対イオンは、OH-である。
【0083】
工程(3)において、ラテックス(IX)がアニオン交換樹脂と接触されると、樹脂ビーズは、一般に、それらのプラスに帯電されたイオン交換部位に汚染物質/残渣の望ましくないアニオンを吸着又は固定し、ビーズに結び付いていた元のイオンは、精製されたラテックス(IX)中に見出すことができる。
【0084】
アニオン交換樹脂が、そのプラスに帯電されたイオン交換部位に固定されたOH-アニオンを含む場合、前記OH-アニオンは、最終的に、一般には精製された水性分散系中に存在する。そのため、ラテックス(IX)は、感知できるpH上昇を受け得る。予見される使用に応じて且つ確実に凝固現象を回避する目的のために、pH調整が必要とされ得る。
【0085】
工程(3)は、ラテックス(IX)をカチオン交換樹脂と接触させる工程を含み得;工程(3)は、アニオン交換樹脂との接触前、接触後又は接触の代わりに、カチオン交換樹脂とのそのような接触を含み得る。それにもかかわらず、残渣/汚染物質を徹底的に除去し、且つイオン化可能な基が適切な形態で提供されることを確実にするために、カチオン交換樹脂との接触は、アニオン交換樹脂との接触後に起こる。
【0086】
本発明の方法で使用するのに好適なカチオン交換樹脂のマイナスに帯電されたイオン交換部位の非限定的な例は、以下:
に図示される。
【0087】
マイナスに帯電されたイオン交換部位に固定されるカチオンの選択は、除去されなければならないラテックス(IX)中に含まれるカチオンに対して前記部位への典型的により小さい親和性を有することを条件として、決定的に重要であるわけではない。例えば、カチオン交換樹脂は、通常、交換部位に結び付いたナトリウム(Na+)又は水素(H+)イオンを備える。これらのイオンの両方は、それらの部位への低い親和性を有する。カチオン交換樹脂と接触するほとんどいかなるカチオンも、より大きい親和性を有し、且つ交換部位で水素又はナトリウムイオンに取って代わるであろう。
【0088】
カチオン交換樹脂は、好ましくは、そのマイナスに帯電されたイオン交換部位上において、水素(H+)イオンを連結している。
【0089】
カチオン交換樹脂が、そのマイナスに帯電されたイオン交換部位に固定されたH+カチオンを含む場合、前記H+カチオンは、最終的に、一般にはラテックス(IX)中に存在し、そのため、H+カチオンを有するカチオン交換樹脂とのそのような接触は、場合により、それらの酸形態、すなわちそれらの-SO3H、-PO3H及び-COOHにおけるアイオノマー(IX)のイオン化可能な基を確保するのに有効である。
【0090】
したがって、ラテックス(IX)を、水素(H+)カチオンを有するカチオン交換樹脂と接触させると、ラテックス(IX)のpHが低下し、それは、公知の方法によるpH調整を必要とし得る。
【0091】
工程(4)において、ラテックス(IX)は、噴霧乾燥にかけられる。
【0092】
噴霧乾燥は、乾燥室に分散し、且つ乾燥ガス流と接触する小滴から液体媒体を蒸発させることにより、液体容積/懸濁液を乾燥粉末に変換するための周知の技術である。
【0093】
そのため、本発明の方法の工程(4)は、ラテックス(Ix)を、場合により精製後、その小滴を生成するためのノズルを通過させ、前記小滴を乾燥室中に分散させる工程を含む。
【0094】
小滴サイズが穴のサイズ及び圧力に基づいて調整され得る、とりわけ圧力ノズルなどの任意のタイプのノズル;又は小滴サイズが回転要素の直径及び回転速度に基づいて調整され得る回転噴霧装置が使用され得る。
【0095】
乾燥ガスに関して、工程(4)において、他のガス、例えばとりわけ窒素などが等しく有効であり得るが、加熱空気の流れを有利に使用することができる。
【0096】
乾燥ガスの流れの方向は、重力によって達成されるような垂直下向きにある、小滴流に対して並行又は対向であり得る。並行乾燥ガス流と対向乾燥ガス流との組み合わせが材料(P)のサイズ分布を最適化するために好ましいことがあり得る。
【0097】
工程(4)において、ラテックス(Ix)の小滴は、乾燥室における温度が少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃、最も好ましくは少なくとも85℃のものであるような温度での乾燥ガスを使用して有利に乾燥される。ラテックス(IX)の素粒子の合体を回避するために、工程(4)における乾燥ガスの温度は、乾燥室の温度が最大で125℃、好ましくは最大で120℃、より好ましくは最大で115℃のものであるように一般に調節される。理想的には、90~110℃の乾燥室温度を保つ乾燥ガスが好ましいであろう。
【0098】
本発明の方法の結果は、上記で詳述されたようなアイオノマー(IX)の複数の粒子から構成される粉末状材料[材料(P)]であり、それは、本発明の別の目的である。
【0099】
本発明の材料(P)は、1~150μmの平均粒径を有する中空凝集塊の形態下の粒子から構成され;好ましくは、前記粒子の平均粒径は、少なくとも3μm、より好ましくは少なくとも5μm及び/又は最大で100μm、好ましくは最大で50μm、さらにより好ましくは最大で40μmのものである。
【0100】
さらに、材料(P)は、擬球状である粒子から構成される。
【0101】
擬球状は、本発明に従い、粒子が球状又はほぼ球状を有することを意味する。幾何学的に、球は、同一の長さの軸であって、共通起源から出発し、及び空間に向かい且つ全ての空間的定位で球の半径を画定する軸で説明される。球状粒子は、そのため、その形状がこの幾何学的要件を満たす粒子である。他方で、擬球状粒子では、それらの形状を特徴付ける軸の長さは、理想的な球状から1%~40%だけ逸脱し得る。好ましくは、25%以下、特に好ましくは15%以下の逸脱の擬球状粒子が得られる。粒子の擬球状又は球状は、顕微鏡法、例えば電子顕微鏡法により得られた適切な拡大図の画像解析によって決定することができる。
【0102】
粒子は、素粒子の中空凝集塊である。実際に、それらの中空特性は、走査電子顕微鏡法を用いて証明することができ、すなわち十分な圧力強度での圧縮前後の中空凝集塊の拡大写真を撮りながら、中空特性の証拠となる中空凝集塊の崩壊を容易に証明することができる。
【0103】
顕微鏡法拡大図の画像解析は、前記擬球状粒子が、実際に、それらが起源とする元のラテックス(IX)の素粒子に対応する素粒子の凝集塊であることを示す。
【0104】
より具体的には、前記素粒子は、15~150nmの平均径を有し;より特に、前記平均径は、有利には、少なくとも30nm、好ましくは少なくとも50nm及び/又は有利には最大で140nm、好ましくは最大で120nm、最も好ましくは最大で100nmのものである。
【0105】
前記素粒子の平均径は、走査電子顕微鏡法、引き続く画像解析によって決定することができる。拡大画像のセクションが目視検査又はコンピューター支援検査され、素粒子がカウントされる。カウントされた粒子は、前記素粒子を取り囲む球を提供する最小径を直径として有する球としてモデル化される。平均径は、そのため、算術平均としてそのように決定される。
【0106】
本発明の方法を考慮するアイオノマー(IX)に関連して上記で開示されている特徴の全ては、本発明の材料(P)のアイオノマー(IX)に当てはまる特徴でもある。
【0107】
本発明は、コーティング組成物を提供する方法であって、上記で詳述されたような材料(P)を液体媒体と接触させる工程を含む方法にさらに関する。
【0108】
液体媒体の選択は、特に限定されず;液体媒体が水を含み、且つ好ましくは主成分として水を含むことが好ましいが、有機溶媒が使用され得る。少量の有機溶媒、例えばアルコール、特に脂肪族アルコール(一般にグリコール又はポリオールを含む)などが水性コーティング組成物の液体媒体中に含まれ得る。
【0109】
そのように得られたコーティング組成物は、様々な支持体のコーティング及び/又は含浸について実用性を見出す。
【0110】
そのため、液体媒体及び上記で詳述されたような材料(P)を含むコーティング組成物を使用することを含む、支持体のコーティング又は含浸方法は、依然として本発明の範囲内である。
【0111】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0112】
ここで、本発明が以下の実施例に関連して説明され、その範囲は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0113】
材料:
調製実施例1 - -SO2F形態でのTFE-VEFSポリマーラテックスの製造
22Lのオートクレーブ中に以下の試薬:
- 9.3Lの脱塩水;
- 700gの式:CF2=CF-O-CF2CF2-SO2Fのモノマー(VEFS);
- 650gのClF2O(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOK(平均分子量=521、比n/m=10)の5重量%水溶液
を装入した。
【0114】
470rpmで攪拌されるオートクレーブを66℃に加熱した。9g/Lの過硫酸カリウムの水性溶液を170mlの量で加えた。圧力を、テトラフルオロエチレン(TFE)を供給することによって14.4バール(絶対)の値に維持した。重合中、反応器に160gのテトラフルオロエチレン毎に100gのVEFSのアリコートを繰り返し加えた。撹拌を中断し、オートクレーブを冷却し、TFEをガス抜きすることによって内部圧力を低下させることにより、240分後に反応を停止し;反応器に供給されたTFEの合計質量は、3200gであった。そのように得られた前駆体ラテックスは、30重量%の固形分を有した。このように得られたラテックスの少量試料を、次いで凍結及び解凍することによって凝固させ、回収されたポリマーを水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させた。対応するポリマーの当量(EW)は、FT-IR測定によって967g/モルであると決定された。得られたラテックス中に分散したポリマーの粒子は、50~100nmの粒径を有することが分かった。
【0115】
調製実施例2 - TFE-VEFS水性分散系の調製
調製実施例1の前駆体ラテックスを凍結及び解凍することによって凝固させ、回収された粉末を水で十分に洗浄し、次いで80℃で48時間乾燥させた。まず、そのように得られた前駆体アイオノマー粉末の一部(100g)を14重量%の水酸化カリウム、30重量%のジメチルスルホキシド及び56重量%の脱塩水の溶液(1L)で撹拌下において80℃で8時間処理した。脱塩水で数回洗浄した後、そのように回収された固体ポリマーを室温で2時間、1Lの20重量%硝酸溶液で酸性化した。こうして得られた粉末を脱塩水で再び洗浄し、最終的にオーブン中において80℃で8時間乾燥させた。-SO2Fの-SO3H官能基への定量的転化をFT-IR分析によって確認した。そのような加水分解されたアイオノマー粉末(60g)をチタン250mlオートクレーブ中で脱塩水(160g)と混合した。混合物を180℃超の温度で加熱し、750rpmで撹拌した。4時間後に混合物を冷却し、水分散系を2時間にわたり遠心分離(10,000rpm)によって精製した。アイオノマーの澄んだ及び透明の分散系は、22.7重量%の固形分を有した。
【0116】
調製実施例3 - TFE-VEFS前駆体ラテックスの加水分解及びアイオノマーラテックスの提供
1リットルの調製実施例1で調製された前駆体ラテックスを室温で5日間、73.5gのNaOH/H2O 2重量%溶液と、次いで室温で2日間、73.5gのNaOH/H2O 20重量%と接触させた。無垢の-SO2F基の-SO3Naへの転化は、固体状態核磁気共鳴(NMR)によって評価した。混合物を、次いでLewatit Monoplus M800 OHアニオン交換樹脂を固定相として有する精製カラムにおいて処理し、これに、Lewatit Monoplus S 108 Hカチオン交換カラムを固定相として有するカラムでの最終処理が続いた。イオン化可能な-SO3Na基の-SO3Hへの完全な変換は、ICP-OES分析によって確認した。そのため、15重量%の固形分を有する-SO3Hでのアイオノマーの精製ラテックスを回収した。得られたラテックス中に分散したアイオノマーの粒子は、50~100nmの粒径を有することが分かった。
【0117】
比較例4 - 実施例2からのTFE-VEFS分散系の噴霧乾燥
事前に凝固されたアイオノマー前駆体の水への再分散により、固相での加水分解にかけられた、調製実施例2において調製されたアイオノマー分散系(200g)を、約100℃の乾燥室平均温度をもたらす、約190℃の加熱空気入口温度及び0.7mmの直径の並流二頭流体ノズルを有する噴霧乾燥機デバイスで噴霧乾燥させて、乾燥粉末(約44g)を得た。顕微鏡法分析すると、得られた粉末の粒子は、球状であることが分かり、約30μmの平均サイズを有した。前記粒子は、素粒子の凝集塊のような構造化を示さなかった。むしろ、それらは、連続的な均一粒子として見出された。
【0118】
実施例5 - 実施例3からのアイオノマーのラテックスの噴霧乾燥
実施例3において調製されたアイオノマーラテックス(200g)を、約100℃の乾燥室平均温度をもたらす、約190℃の加熱空気入口温度及び0.7mmの直径の統合並流二頭流体ノズルを有する噴霧乾燥機デバイスで噴霧乾燥させて、乾燥粉末(約30g)を得た。得られた粉末の粒子は、球状であり、約10μmの平均サイズを有し;前記粒子は、中空であることが分かった。さらに、各粒子は、約80nmの平均径及び約60~約100nmの範囲の直径を有するより小さい素粒子で構成された。
【0119】
比較例4及び実施例5からの粉末の水への再分散及び粘度測定
比較例4及び実施例5に記載されたように得られた粉末を室温及び撹拌下において脱塩水に溶解させ、25重量%の固形分を有する2つの水性調合物を得た。
【0120】
両方の場合において、粉末は、容易に及び迅速に可溶化され、測定可能な固体残渣は、なかった。水性調合物を、100~1000秒-1のせん断速度掃引でCouetteジオメトリーの粘度計を用いて、室温(23℃)で液体粘度測定にかけた。結果を下の表にまとめる。
【0121】
【0122】
上の表にまとめられたデータは、本発明の方法が、とりわけ水性媒体中に容易に再分散可能であり、且つそれらから得られるコーティング/含浸物品の全体性能を概して損ない得る増粘剤又は他の粘度エンハンサーの添加を必要とすることなく、それを典型的なコーティング技術に適合させるように、特に低いせん断速度で増加した液体粘度を有する液体調合物をもたらす能力を有する発明粉末を提供することを十分に実証している。