(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】細胞の微小液滴検出のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240610BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240610BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240610BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240610BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20240610BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240610BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20240610BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
C12M1/34 B
C12Q1/04
G01N37/00 101
G01N35/08 D
G01N21/64 E
G01N21/78 C
G01N21/76
(21)【出願番号】P 2021528854
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 GB2019053168
(87)【国際公開番号】W WO2020104769
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521217482
【氏名又は名称】ライトキャスト ディスカバリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTCAST DISCOVERY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】トム アイザック
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン フレイリング
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0076692(US,A1)
【文献】国際公開第2016/174523(WO,A1)
【文献】特表2017-519620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0143312(US,A1)
【文献】国際公開第2017/117567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル内に含まれる細胞の1以上の特性を操作および/または決定するためのデバイスであって、以下を含む、デバイス:
細胞含有微小液滴を空虚なそれ(4)から細胞含有第1微小液滴(5)の集団へと分離するように構成されたソーティングコンポーネント(3);
現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を使用して第1微小液滴を操作するように構成された微小液滴操作コンポーネントであって、以下を含む、微小液滴操作コンポーネント:
光学検査のために第1微小液滴をアレイに配置するように構成された、第1ゾーン(8);
第1ゾーン内またはそれに隣接して位置し、1以上の検出ウィンドウ内の微小液滴を検出するように構成された、第2ゾーン;および
各微小液滴の内容物を分析して当該微小液滴内に含まれる細胞またはマイクロビーズの1以上の特性を決定するために、1以上の検出窓を介して、併合された微小液滴からの光信号を検出するように構成された光学検出系(11)。
【請求項2】
微小液滴操作コンポーネントが、微小液滴を細分し、後でデバイスから回収するために単離することができる、第3ゾーンをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
微小液滴操作コンポーネントの第1ゾーンが、微小液滴併合によって各第1微小液滴にレポーター系(7)を導入するようにさらに構成され、併合された微小液滴(9)について、光学検出系によって検出された信号が、レポーター系と細胞またはその発現産物との間の相互作用から生じる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光学検出系(11)が、明視野顕微鏡、暗視野顕微鏡、化学発光を検出するための手段、フェルスター共鳴エネルギー移動を検出するための手段、および蛍光を検出するための手段から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス
【請求項5】
デバイスと一体化(integral)であるか、またはソーティングコンポーネント(3)の前または後に別個に配置され、内部に含まれる細胞が培養されている間に微小液滴を保持するように構成された細胞培養コンポーネントをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
細胞培養コンポーネントが、光学的に媒介されるエレクトロウェッティング力を使用して、各微小液滴の内容物を撹拌(agitate)するようにさらに構成される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
細胞培養コンポーネント中の微小液滴の温度を25~40℃に制御するように構成された加熱器および温度制御器をさらに含む、請求項5または6に記載のデバイス。
【請求項8】
生物学的サンプルから不混和性キャリア流体中に微小液滴(2)のエマルジョンを生成するように構成された、デバイスと一体化(integral)であるか、またはソーティングコンポーネント(3)の前に別個に配置されたサンプル調製コンポーネントをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
ソーティングコンポーネント(3)、細胞培養コンポーネント、およびサンプル調製コンポーネントのうちの少なくとも1つが、液滴がその中および/またはそれらの間で操作されることを可能にするエレクトロウェッティング電極位置を有するように構成される、請求項5~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記
サンプル調製コンポーネントが、エレクトロウェッティング伸張力が前記生物学的サンプルに印加される少なくとも1つの位置を含み、前記生物学的サンプルから前記キャリア流体に微小液滴を切断するように構成される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記光学検出
系(11)が、前記1つ以上の検出窓(10)内の前記第1微小液滴に衝突するように適合された第1電磁放射源を含み、前記微小液滴から放出された蛍光を検出するための検出器をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
微小液滴操作コンポーネントが、以下を含まれる1以上のOEWOD構造を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス:
以下を含まれる第1コンポジット壁:
第1基板(14)
基板上の第1透明導体層(15)であって、厚さが70~250nmの範囲の、第1透明導体層;
導体層上の波長400~850nmの電磁放射によって活性化される光活性層(17)であって、300~1500nmの範囲の厚さを有する、光活性層
および
光活性層上の第1誘電体層(18)であって、厚さが30~160nmの範囲の、第1誘電体層;
以下を含まれる第2コンポジット壁:
第2基板(13);
前記基板上の第2導体層(15)であって、70~250nmの範囲の厚さを有する、第2導体層
であって、第1および第2の誘電体層の露出表面が、20~180μm離れて配置され、微小液滴を含むように適合された微小流体空間を画定する、第2コンポジット壁;
第1および第2の導体層を接続する第1および第2の複合壁の両端間に電圧を提供する、A/C源(16);
第1の誘電体層の表面上の対応する仮想エレクトロウェッティング位置を誘導するために光活性層上に衝突するように適合された光活性層のバンドギャップよりも高いエネルギーを有する、少なくとも1つの電磁放射線源(20);および
仮想エレクトロウェッティング位置の配置を変化させ、それによって微小液滴を移動させることができる少なくとも1つのエレクトロウェッティング経路を生成するように、光活性層上の電磁放射の衝突点を操作するための、手段。
【請求項13】
第2コンポジット壁が、第2導体層上の第2誘電体層(18)であって、30~160nmの範囲の厚さを有する、第2の誘電体層をさらに含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1ゾーン(8)が、第1の微小液滴保持部位のアレイと、前記レポーター系(7)を含む第2微小液滴を導入するためのポート(6)とを含むリザーバを含み、前記第1ゾーンが、第1および第2の微小液滴が合流するように、仮想エレクトロウェッティング電極の1つ以上の経路を介して、前記第1微小液滴保持部位を横切って前記第2微小液滴を駆動するようにさらに構成される、請求項
3に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスが、連続的な水流で、前記ポート(6)に接続された前記デバイスの第1領域(8)に前記第2微小液滴を導入するように構成され、前記第1領域に重なり合う前記デバイスの第2領域が、さらなる操作のために、前記デバイスの第1領域(8)から第3領域に微小液滴を導くように構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1誘電体層(18)の少なくとも前記表面には、防汚コーティング(19)が設けられている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ソーティングコンポーネント(3)の性能、
および前記第1のゾーン(8)への前記第1の微小液滴の導入
速度のうちの1つまたは複数を制御するようにフィードバックループによって適合されたマイクロプロセッサ(24)をさらに備える、
請求項1~16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記マイクロプロセッサ(24)が、前記光学検出系(11)によって供給される信号に応答した前記第1および第2の微小液滴の併合速度を制御するようにフィードバックループによってさらに適合されている、請求項14または15を引用する場合の請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
生物学的サンプル中の細胞型の1つ以上の特性を操作および/または決定するために、請求項1~
18のいずれか一項に記載のデバイスを使用するための方法であって、以下の工程:
生物学的サンプルから不混和性キャリア流体中に水性の第1微小液滴(2)を創出することであって、その少なくともいくつかが、特定の細胞型の細胞を含むと確信される、創出すること;
第1微小液滴を前記現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を使用して経路に沿って少なくとも1つの微小液滴併合位置(8)に移動させること;
現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を用いて微小液滴融合位置までの経路に沿ってその特性が調査されている細胞型に特徴的なレポーター系(7)を含有する水性第2微小液滴を移動させること;
第1および第2の微小液滴を併合位置(8)で併合して、併合微小液滴(9)を産生すること;および
各併合された微小液滴(9)の内容物を光学検出系(11)により分析し、細胞とレポーター系との間の相互作用に特徴的な光信号を検出すること
を含む、方法であって、
前記細胞型に特徴的となる前記細胞と前記レポーター系との間の相互作用が、前記生物学的サンプル中の細胞の性質を識別する、
方法。
【請求項20】
前記第1微小液滴(5)を創出する工程が、細胞含有微小液滴および空虚な微小液滴(4)の両方を含む微小液滴の集団(2)から細胞含有第1微小液滴を分離する工程をさらに含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1微小液滴を創出する工程が、細胞増殖および分裂を引き起こす条件下で前記微小液滴の集団を培養する工程をさらに含む、請求項
19または
20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の微小液滴を創出する工程が、エレクトロウェッティング延伸力の適用によって、前記生物学的サンプルから微小液滴を切断する工程をさらに含む、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
不混和性キャリア流体が、炭化水素、またはシリコーンオイル、またはフルオロカーボン油である、請求項
19~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
不混和性キャリア流体が、水性ミセルまたは二次微小液滴で水和されたものである、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
微小液滴の集団を培養することが、非混和性キャリア流体中の微小液滴の集団を、細胞培養栄養素および/または、酸素、窒素および二酸化炭素の1以上からなる溶解ガスを含有するキャリア流体の流れと接触させることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
前記非混和性キャリア流体が、前記細胞の培養に有害なガスを定期的にパージされる、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
微小液滴の集団を培養することが、微小液滴が保持される仮想エレクトロウェッティング電極位置で光学的に媒介されるエレクトロウェッティング力を適用することによって微小液滴を撹拌(stirring)または撹拌(agitating)することを含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記レポーター系が、求められる細胞型の細胞によって発現される酵素または抗体に対して選択的なレポーター遺伝子、細胞表面バイオマーカーまたはレポーター分子であるか、または、求められる細胞型の細胞によって発現される酵素または抗体の存在に選択的に反応する発光レポーター細胞である、請求項
19~
27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
微小液滴が、電磁波を使用して仮想エレクトロウェッティング電極の経路を生成するように適合されたOEWOD構造を使用して、デバイス上の位置の間で輸送される、請求項
19~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
微小液滴が、汚れ防止コーティングおよび/または生体適合性コーティングとともに提供される、請求項
29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、細胞(cells)の迅速な同定、操作および選択のためのデバイスおよび関連する方法が提供される。それは、不死化細胞培養サンプルから、または組織サンプルから直接のいずれかでの、哺乳動物細胞の操作に特に有用である。それはまた、感染のエビデンスを含むと考えられる患者検体の迅速かつ平行なスクリーニングにも特に有用である。
【背景技術】
【0002】
液滴または磁気ビーズを操作するためのデバイスは当該分野において以前に記載されている;例えば、US6565727、US20130233425およびUS20150027889を参照のこと。液滴の場合、この結果は、典型的には例えば、不混和性キャリア流体の存在下で、液滴を、カートリッジまたは微小流体チューブの2つの対向する壁によって規定される微小流体空間を通って移動させることによって達成され得る。これらの壁の一方または両方内に埋め込まれた微小電極は、誘電体層で覆われ、それぞれの誘電体層は層の電場特性を修正するために、間隔をおいて迅速にオン/オフされることができるA/Cバイアス回路に接続される。これは、1つ以上の所定の経路に沿って液滴を操縦するために使用され得る、微小電極の近傍における局所化された指向性毛管力を生じる。以下、本発明に関連して「現実」エレクトロウェッティング電極と呼ぶものを使用するこのようなデバイスは、略語EWOD(Electrowetting on Dielectric)デバイスによって当技術分野で知られている。
【0003】
エレクトロウェッティング力が光学的に媒介され、当技術分野ではオプトエレクトロウェッティングとして公知であり、以下では対応する略語OEWODでこのアプローチの変形例が例えば、US20030224528、US20150298125、US20160158748、US20160160259、およびApplied Physics Letters 93 221110(2008)に開示されている。特に、これらの3つの特許出願のうちの第1のものは、第1および第2の壁によって画定されるマイクロ流体キャビティを含み、第1の壁が複合設計であり、基板、光導電層および絶縁(誘電)層から構成される、各種微小流体デバイスを開示する。この片面実施形態では、光導電層と絶縁層との間に、互いに電気的に絶縁され、光活性層に結合され、その機能が絶縁層上に対応する電気濡れ電極位置を生成することである導電性セル(cells)のアレイが配置される。これらの位置では、液滴の表面張力特性が上述のようにエレクトロウェッティング分野によって変更することができる。次いで、導電性セルは、光導電層に衝突する光によって、一時的にオンにされてもよい。このアプローチはその有用性が電極の配置によってある程度依然として制限されるが、スイッチングがはるかに容易かつ迅速になるという利点を有する。さらに、液滴を移動させることができる速度、および実際の液滴経路を変化させることができる程度に関して制限がある。
【0004】
この後者のアプローチの両面実施形態は、PeiによるUniversity of California at Berkeley論文UCB/EECS-2015-119に開示されている。一例では、電気的にバイアスされたアモルファスシリコン上のライトパターンを用いて誘電体層上に堆積されたテフロン(登録商標)AFの表面にわたるオプトエレクトロウェッティングを用いて、粒度範囲100~500μmの比較的大きな液滴の操作を可能にするセルが記載されている。しかしながら、例示のデバイスでは、誘電体層が薄く(100nm)、光活性層を軸受壁上にのみ配置される。
【0005】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる、我々の公開された出願WO2018/234445において、我々は、原動力を提供するためにオプトエレクトロウェッティングを使用する、微小液滴を操作するためのデバイスを記載した。この光学的に媒介されるエレクトロウェッティング(OEWOD)デバイスでは、マイクロ液滴が壁を含むことによって画定されるマイクロ流体空間、例えば、マイクロ流体空間を間に挟んだ一対の平行プレートを通って移動される。収容壁の少なくとも1つは、内部に埋め込まれた半導体層の領域を選択的に照射することによって生成される、以下で「仮想」エレクトロウェッティング電極位置と呼ばれるものを含む。別個の光源からの光で層を選択的に照射することによって、仮想エレクトロウェッティング電極位置の仮想経路を一時的に生成することができ、それに沿って微小液滴を移動させることができる。
【0006】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる、我々の対応する公開特許WO2018/234448には、核酸シーケンサーの動作部分としてのこのデバイスの使用が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、細胞を含む生物学的サンプルの迅速なスクリーニングおよび操作のために、本発明者らの以前に記載されたシーケンサーの基礎をなすものと同様の微小液滴法を適用するためのデバイスを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明によれば、生物学的サンプル内に含まれる細胞を分析する1つ以上の特性を操作および/または決定するためのデバイスであって、以下を含む、デバイスが提供される:
細胞含有微小液滴を空虚なそれから細胞含有第1微小液滴の集団へと分離するように構成されたソーティングコンポーネント;
現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を使用して第1微小液滴を操作するように構成された微小液滴操作コンポーネントであって、以下を含む、微小液滴操作コンポーネント:
光学検査のために第1微小液滴をアレイに配置し、任意で、微小液滴併合によって各第1微小液滴にレポーター系を導入するように構成された、第1ゾーン;
第1ゾーン内またはそれに隣接して位置し、1以上の検出ウィンドウ内の併合された微小液滴を検出するように構成された、第2ゾーン;および
任意に、微小液滴を細分し、後で機器から回収するために単離することができる、第3ゾーン;および
1以上の検出窓を介して、併合された微小液滴からの光信号を検出するように構成された光学検出系であって、併合された微小液滴について、信号が、レポーター系と細胞またはその発現産物との間の相互作用から生じる、光学検出系。
【0009】
発明の別の態様によれば、本発明によるデバイスを使用して、生物学的サンプル中の細胞型の1以上の特性を操作および/または決定する方法であって、以下の工程を含む、方法が提供される:
生物学的サンプルから不混和性キャリア流体中に水性の第1微小液滴を創出することであって、その少なくともいくつかが、特定の細胞型の細胞を含むと確信される、創出すること;
第1微小液滴を、現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を使用して経路に沿って、少なくとも1つの微小液滴検査位置に移動させること;および
各微小液滴の含有量を光学検出系により分析して、その微小液滴に含まれる細胞の1以上の特性を決定することであって、前記1以上の特徴が、以下:細胞形態、細胞運動、または細胞膜一体性(integrity)の少なくとも1つを含む、分析して決定すること。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明によるデバイスを使用して、生物学的サンプル中の細胞型の1以上の特性を操作および/または決定する方法であって、以下の工程を含む、方法が提供される:
生物学的サンプルから不混和性キャリア流体中に水性の第1微小液滴を創出することであって、その少なくともいくつかが、当該細胞型の細胞を含むと確信される、創出すること;
第1微小液滴を仮想エレクトロウェッティング電極を使用して経路に沿って少なくとも1つの微小液滴併合位置に移動させること;
仮想エレクトロウェッティング電極を用いて微小液滴融合位置までの経路に沿ってその特性が調査されている細胞型に特徴的なレポーター系を含有する水性第2微小液滴を移動させること;
第1および第2の微小液滴を併合位置で併合して、併合微小液滴を産生すること;および
各併合された微小液滴の含有量を光学検出系により分析し、細胞とレポーター系との間の相互作用に特徴的な光信号を検出すること。
【0011】
この方法は最初に、1以上のソーティング、培養、および液滴調製の初期工程を含み得る。これらの初期工程は、以下の1以上を含み得る:
(a)細胞含有微小液滴および空虚な微小液滴の両方を含む微小液滴の集団から細胞含有第1微小液滴を分離すること;
(b)初期工程(a)が行われる前または後に細胞増殖および分裂を引き起こす条件下で微小液滴の集団を培養すること;
(c)エレクトロウェッティング伸張力の適用によって生物学的サンプルから微小液滴を切断することによって微小液滴の集団を生成すること。
【0012】
初期工程(c)のいくつかの実施形態において、微小液滴は油を含む非混和性キャリア流体に切断された増殖培地成分を含有し、それによって、初期工程(b)において続いて培養され得るエマルジョンを作製する。別には、微小液滴が空気または別のガス混合物、例えば、二酸化炭素および窒素の混合物に切断され、その後、互いに別々に培養される。いくつかの実施形態では、細胞の培養に有害なガスのキャリア流体を定期的にパージすることが有利であり得る。
【0013】
初期工程(b)の一実施形態において、微小液滴の集団の培養は、エマルジョン中、および炭化水素またはフッ素化油、特にフッ素化油などの非混和性キャリア流体の流動流の存在下で実施される。このオイルは微小液滴の安定性を維持するために、界面活性剤および他の添加剤を任意にさらに含んでもよい。オイルはまた、培養段階の間に細胞増殖を維持するために必要とされる低レベルの栄養素および気体を含み、この実施形態の適用は、微小液滴の栄養素含有量を、界面拡散によって周期的にまたは連続的に補充させる。あるいは、栄養素および気体の補充がこれらの成分を含有する二次水性微小液滴の併合によって直接達成することができ、例えば、キャリア流体が空気または不活性ガスである場合である。
別の実施形態では、細胞に低酸素環境を提供するために、油から特定の溶解ガスをパージする。
【0014】
初期工程(b)の一実施形態において、我々は、細胞増殖を維持するために、微小液滴中の特定の大気ガスの最適レベルを維持することが必要であることを見出した。そうしないと、例えば、微小液滴媒体のpHに有害な変化を引き起こす可能性がある。したがって、一実施形態では初期工程(b)において、不混和性キャリア流体の流れは1つ以上の飽和レベルの窒素、酸素、または特に二酸化炭素を含有する。
【0015】
初期工程(b)の別の実施形態において、微小液滴の含有量は、微小液滴が保持される位置でエレクトロウェッティング力を適用することによって撹拌(stirred)または撹拌(agitated)される。適切には、これは例えば、以下に記載されるタイプのOEWOD構造によって送達される光学的に媒介されるエレクトロウェッティング力を使用して達成される。本発明者らはこのアプローチもより広い有用性があると考えており、したがって、本発明の別の一般的に適用可能な第2の態様では微小液滴の含有量を撹拌するか、またはそわなければ撹拌する方法が提供され、この方法は以下の工程を含む:
微小液滴を、仮想エレクトロウェッティング電極位置に位置付けること;および
電磁放射源をその場所に適用し、それによって対応する仮想エレクトロウェッティング電極を活性化し、電磁放射源がその場所の周りを移動して、微小液滴の対応する移動およびその内容物の対応する撹拌(stirring)または攪拌(agitation)を引き起こすことを特徴とする、関連するエレクトロウェッティング力を生成すること。
【0016】
いくつかの実施形態では、生物学的サンプルが1以上の雄性および/または雌性配偶子を含み得、この方法は、インビトロ受精ワークフローの一部として、雄型および/または雌性配偶子の操作および検査をさらに含み得る。
【0017】
例えば、この器具を用いて、ヒトまたは動物精子細胞のような雄性配偶子細胞に対して検査、選択およびアッセイ工程を行うことが可能である。1つの例手順において、精子細胞のサンプルは、希釈された精液から調製され、液滴にカプセル化される。液滴をチップ上にロードし、次いで明視野顕微鏡を用いて検査する。次いで、配偶子を含まない液滴を廃棄し、そして任意の含有精子細胞を検査のために保持する。いったん、配偶子のサンプルが分析のために選択されると、静止画像と共に配偶子のビデオが撮られる。光学検出系からの出力に適用されるパターン認識アルゴリズムは、運動性、身体形態および核形態についての配偶子の特徴付けを可能にする。この特徴付けの結果は特定の液滴にマッピングすることができ、この液滴は、その後、さらなる処理のために取り出される。この処理は、レポーター試薬の添加などのオンチップアッセイ工程を含む。
【0018】
別の例では、ヒトまたは動物の卵子などの雌性配偶子をカプセル化することによって、卵子の受精を行うことが可能である。雄性配偶子と同様に、雌性配偶子を液滴中に封入し、チップにロードすることが可能である。いったんデバイス上に置かれると、細胞は、モルフォロジーの欠陥について検査され得、そしてレポーター試薬を用いてアッセイされ得る。検査またはアッセイ後、雌性配偶子細胞は、任意の処理工程(例えば、液滴運動を介して適用される機械的なせん断によるか、またはさらなる試薬の添加による胚上皮細胞の除去)に供され得る。
【0019】
なお別の例では、雄性配偶子および雌性配偶子を単一のマイクロ流体デバイス上に装填することによって、2つの配偶子を一緒に含む液滴を併合させ、それらを結合させることが可能である。一例では、多数の雄性配偶子小滴が単一の卵子と併合される;配偶子間の従来の相互作用は、受精および胚盤胞オンチップの生成を導く。別の例では、単一の選択された雄性配偶子および単一の選択されかつ処理された雌性配偶子をオンチップで組み合わせ、相互作用させる。
【0020】
別の適用例では、両性の配偶子をマイクロ流体チップから回収し、ICSIまたはIVFなどの当技術分野で知られている従来の取扱い技法を使用して組み合わせる。
【0021】
いくつかの実施形態では、上で詳述した方法によって、または当技術分野で知られている従来の手段によって形成され得る胚盤胞を液滴中に封入し、オンチップで培養することもできる。オンチップ培養は、以下に記載される画像化および検出系を使用して、形成の間の胚盤胞の検査を可能にする。液滴併合操作を使用して、胚盤胞環境は、緩衝溶液、塩、栄養素、タンパク質および細胞外マトリックス材料のような余分な材料の添加によって制御され得る。胚盤胞形成の間、胚盤胞から細胞のサンプルを除去し、さらなる分析のためにそれらを回収するために、レーザー顕微解剖のような技術を使用することがしばしば望ましい。いくつかの実施形態では、胚盤胞が液滴操作ゾーンに輸送される。この操作ゾーンはピラー、後、エレクトロウェッティングプレート間の物理的制限、またはPCT/EP2019/062791に記載されているようなエレクトロウェッティングプレート間のギャップの楔状変化などのマイクロ流体チップ上の物理的特徴を含むことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。いったん、胚盤胞が操作ゾーンに積み込まれると、それは、効果的に固定される。次いで、レーザー顕微解剖を進行させることができ、そのプロセスは胚盤胞の一部を除去するために、文献に十分に記載されている。いったん、液滴の一部が切除されると、本明細書中に記載されるような液滴分割操作は、胚盤胞からサンプル部分を分離するために使用され得る。分裂後の2つの液滴間の物質の分布の繰り返しの分裂および再併合操作ならびに機械視覚検査によって、胚盤胞および試料部分が正しく分離されたことを検証することが可能である。分離後、胚盤胞のサンプル部分は、ポリメラーゼ連鎖反応またはDNA配列決定を含む遺伝子試験などによるさらなる分析のために回収することができる。
【0022】
適切には、この方法で使用される電磁放射線源は、以下に記載される第2の電磁放射線に対応し、位置の周辺内または周辺の円形経路を描写する急速に点滅する回転光の源を含む。別の実施形態では、光源の移動は、1つまたは複数の横方向の運動の経路を含み得る。一示現では、位置は、直径が少なくとも0.5ミクロンの領域によって画定され、運動は、円形、半径方向、またはその2つの混合である。その運動は、微小液滴の内容物の対応する遠心混合を生成するために半径方向である。
【0023】
工程(4)において第1の微小液滴に導入され得るレポーター系は、原則として、生物学的サンプル中の所与の細胞型または細胞挙動の存在をアッセイするために特徴的であるか、または使用され得る任意の系であり得る。このようなレポーター系としては、例えば、求められている細胞型の細胞によって発現される酵素、タンパク質または抗体に対して選択的なレポーター遺伝子、細胞表面バイオマーカーまたはレポーター分子が挙げられる。関連するクラスのレポーター系は、探索されている細胞によって発現される関連材料存在に応答する第2レポーター細胞であり得る。多くのこのようなアッセイが公知であり、そして使用のための適切な候補は、多くの場合、当業者に明らかである。さらに、複数の異なるレポーター系を、1つ以上の第2の微小液滴型の併合によって第1の微小液滴に導入することによって、この方法は多様な異なる特性および挙動に関連する範囲の異なるセル型についての平行なおよび同時の検索を実行するように、多重化され得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1を参照して、デバイスの例と関連するワークフローの例を示す。
【
図2】
図2は、25℃で5センチストークス以下の粘性を有するフルオロカーボンオイルに乳化された水性微小液滴2の迅速な操作に適した、非閉じ込め状態で120μm(例えば、80~120μm)の径を有するoEWOD構造を例示的なデバイスの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法ならびにその種々の工程および最初のサブ工程は、以下に記載されるタイプの分析デバイスを使用して、好都合に実施され得る。その方法に適用可能な光学検出系の例をまた、以下に説明する。いくつかの実施形態では、このデバイスは、以下を含む:
細胞含有微小液滴を空虚なそれから細胞含有第1微小液滴の集団に分離するためのソーティングコンポーネント;
現実または仮想のエレクトロウェッティング電極を使用して第1の微小液滴を後で操作するための微小液滴操作コンポーネントであって、以下を含む、微小液滴操作コンポーネント:
微小液滴併合によって各第1微小液滴にレポーター系を導入するための手段を含む、第1ゾーン;
併合された微小液滴がその後1以上の検出窓内で検出される第1ゾーン内またはそれに隣接して位置する、第2ゾーン
および
前記レポーター系と、明視野顕微鏡、暗視野顕微鏡、化学発光検出手段、フェルスター共鳴エネルギー移動検出手段又は蛍光検出手段から選ばれた細胞又はその発現産物との相互作用に起因する併合微小液滴からの光信号を検出する、光学検出系。
【0026】
このような実施形態で使用されるソーティングコンポーネントは、1以上の細胞を含む微小液滴(以下、「充填された微小液滴」)を、そのいくつかが空であるより大きな母集団から分離するための手段である。選択されたソーティングコンポーネントのタイプに応じて、微小液滴は、それらが充填されているか空虚であるかに応じて、2つの異なる微小流体経路または受容位置のうちの1つに向かって、または下方に向けられる。いくつかの実施形態では、これらのうちの1つまたは他のへのアクセスが分析窓内の各微小液滴の分析に応答して作用する電気機械ゲートの仕切りまたは作動によって制御される。別の実施形態では、ソーティングは、分析窓内の応答する光学的に媒介されたエレクトロウェッティング力を微小液滴の流れに適用して、選択されたものが保持領域またはアレイ内に引き込まれるようにすることによって達成される。次いで、拒絶された微小液滴は気流中に残り、その後、廃棄することができる。別の実施形態では、ソーティング決定は、光学現象、例えば明視野顕微鏡法に基づくか、または細胞に関連する光学特性、例えば蛍光タグまたはマーカーの存在を検出することによる。別の実施形態では、ソーティングは、一時的な電場を分析窓に印加して、各微小液滴を仕切りのいずれかの側の2つの異なる経路の一方に向かって順に偏向させる誘電泳動法によって達成することができる。一実施形態では、ソーティングコンポーネントは、分析室内で終端する第1微小流体チャネルと、その少なくとも1つが第1微小液滴を運び去る下流側の分析室に接続された少なくとも2つの第2微小流体チャネルと、分析室を照明するための光源と、分析室内の各照明された微小液滴からデータを取得するための明視野顕微鏡または蛍光検出器と、2つの第2チャネルのうちの1つに微小液滴を導くように動作可能な少なくとも1つのOEWOD構造と、顕微鏡または蛍光分析器から受け取ったデータに適用された識別アルゴリズムからの結果に応答して構造を動作させるように適合されたマイクロプロセッサとを備える。
【0027】
一実施形態では、デバイスは、デバイス自体の一体化(integral)コンポーネントであるか、またはソーティングコンポーネントの前または後に、好ましくはソーティングコンポーネントの後に別個に配置される培養コンポーネントをさらに含む。ここで、微小液滴は、保持されるが、内部に含まれる任意の細胞は細胞分裂および増殖を刺激するように培養される。好適には、培養コンポーネントは、微小液滴が最適な培養条件下、典型的には25℃を超える温度(例えば、25~40℃)で1時間~1週間保持される容器と、微小液滴をその中に導入するための入口とを含む。一実施形態では、培養コンポーネントは、サーモスタット制御されたヒーターと、任意で、デバイスの充てん放電サイクルサイクルを制御するタイマーとをさらに含む。一実施形態では、デバイスの含有量が非混和性キャリア流体中の微小液滴のエマルジョンを含み、デバイスはキャリア流体が経時的に置換されることを可能にする、それを通ることができる入口および出口をさらに含む。一実施形態では、不混和性キャリア流体がHFE7500、HFE7700、またはFC-40などのフルオロカーボン油である。このようなオイルは、微小液滴の安定性を維持し、成長を維持するのに必要な栄養分および気体のレベルを低く維持するために、界面活性剤および他の添加剤をさらに適切に含有する。
【0028】
油に対する水性微小液滴の重量比が低い、特に有用な一実施形態では微小液滴が時間とともに収縮する傾向があり、この現象は微小液滴内の反応性の損失につながり得る。この効果を打ち消す1つの方法は、水和された油を使用することである。一般に、上記のオイルは水を溶解するための高い能力を有さないので、水和はオイル相内に水または水性緩衝液のミセルまたは二次微小液滴を生成することによって適切に達成される。この緩衝液は、微小液滴自体の組成と同じまたは異なる組成を有する可能性がある。いくつかの実施形態では、これらのミセルまたは二次微小液滴が微小液滴自体の塩含有量の5倍までを含有してもよく、任意でグリセリンを含有してもよい。典型的には、これらのミセルおよび二次微小液滴は、1桁小さい。
【0029】
一実施形態では、容器は、光学的に媒介されるエレクトロウェッティング力を使用して、微小液滴を配置し、撹拌して、それらの含有量を撹拌することができる複数の位置を備える表面をさらに含む。
【0030】
デバイスはさらに、デバイス自体と一体化であるか、または生物学的試料のアリコートから非混和性キャリア流体中に微小液滴のエマルジョンを作製するための手段を含む、培養コンポーネントの上流に別々に配置されるかのいずれかの試料調製コンポーネントを含む。
【0031】
この試料調製コンポーネントは、生物学的試料からキャリア流体中に微小液滴を切断するための切断手段を含み、この切断手段は、生物学的試料に電気湿潤延伸力が印加される少なくとも1つの位置を含む。一実施形態では、切断手段は、以下を含む:
生物学的サンプルを受容するように適合された、第1エレクトロウェッティング位置;
第1および第2のエレクトロウェッティング電極位置が方向性エレクトロウェッティング力を使用して試料から切断された微小液滴を輸送することができる経路を画定するように配置された、少なくとも1つの第2エレクトロウェッティング位置;
第1のエレクトロウェッティング位置に配置され、かつ、電極および関連するAC電気回路、または電磁光の衝突によって活性化される半導体ゾーンのいずれかからなる、AC駆動回路
および
第1エレクトロウェッティング位置に配置され、生物学的サンプルの表面を静電的に帯電させるように適合された、DC帯電回路。
【0032】
一実施形態では、切断手段は、適切にAC回路及びDC回路である駆動回路と充電回路とをそれぞれ切り換えるための制御回路をさらに含む。別の実施形態では、切断手段が生物学的試料から生成された各微小液滴の含有量を分析するための分析器をさらに含む。この点において、生物学的サンプルは、血液、血漿、痰、尿、または組織生検に由来する物質などの任意の水性物質の形成であり得る。適切な切断手段についてのさらなる情報は、読者が指向する我々の同時係属出願EP18201162.7に見出すことができる。この切断手段に関連する微小液滴切断方法が、上記の最初の工程(c)を実行する基準を形成することができることが容易に理解されるであろう。
【0033】
ソーティングコンポーネントによって生成された第1微小液滴を後に操作するために使用される微小液滴操作コンポーネントに目を向けると、これは、適切には第1ゾーンと、第2ゾーンと、第1微小液滴が空気力および/またはエレクトロウェッティング力によってそれに沿って駆動される1つまたは複数の微小流体経路によって互いに連結された、実際のまたは仮想のエレクトロウェッティング電極から構成される光学検出系とを備える微小流体チップである。好適には、エレクトロウェッティング電極は仮想的であり、1つ以上のOEWOD構造内の位置に確立される。一般に、これは本方法において微小液滴を操作する方法であり、一実施形態ではこれらのOEWOD構造が以下から含まれる:
以下を含まれる第1コンポジット壁:
第1基板
基板上の第1透明導体層であって、厚さが70~250nmの範囲の第1透明導体層;
導体層上の波長400~850nmの電磁放射によって活性化される光活性層であって、300~1500nmの範囲の厚さを有する、光活性層
および
光活性層上の第1誘電体層であって、厚さが30~160nmの範囲の第1誘電体層;
以下を含まれる第2コンポジット壁:
第2基板;
前記基板上の第2導体層であって、70~250nmの範囲の厚さを有する、第2導体層
および
任意で、第2導体層上の第2誘電体層であって、30~160nmの範囲の厚さを有する、第2の誘電体層
であって、第1および第2の誘電体層の露出表面が、20~180μm離れて配置され、微小液滴を含むように適合された微小流体空間を画定する、第2コンポジット壁;
第1および第2の導体層を接続する第1および第2の複合壁の両端間に電圧を提供する、A/C源;
第1の誘電体層の表面上の対応する仮想エレクトロウェッティング位置を誘導するために光活性層上に衝突するように適合された光活性層のバンドギャップよりも高いエネルギーを有する、少なくとも1つの電磁放射線源;および
仮想エレクトロウェッティング位置の配置を変化させ、それによって微小液滴を移動させることができる少なくとも1つのエレクトロウェッティング経路を生成するように、光活性層上の電磁放射の衝突点を操作するための、手段。
【0034】
一実施形態では、これらの構造の第1および第2の壁は、マイクロ流体空間を間に挟んで透明である。別には、第1基板および第1導体層は、電磁放射源(例えば、多重レーザービーム、ランプまたはLED)からの光が光活性層に衝突することを可能にするように透明である。別には、第2基板、第2導体層および第2誘電体層は、同じ対物レンズが得られるように透明である。なお別の実施形態では、これらの層は、すべて透明である。
【0035】
適切には、第1および第2の基板は、機械的に強い材料、例えばガラス金属またはエンジニアリングプラスティックから作られる。一実施形態では、基板は、ある程度の可撓性を有することができる。さらに別の実施形態では、第1および第2の基材は、100~1000μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、第1の基材は、シリコン、溶融シリカ、およびガラスのうちの1つから構成される。いくつかの実施形態では、第2の基材は、石英ガラスおよびガラスのうちの1つで構成される。
【0036】
第1および第2の導体層は、第1および第2の基板の一方の表面上に位置し、典型的には、70~250nm、好ましくは70~150nmの範囲の厚さを有する。一実施形態では、これらの層のうちの少なくとも1つは、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明導電材、銀などの導電性金属の非常に薄膜、またはPEDOTなどの導電性高分子から作製される。これらの層は、連続シートまたはワイヤなどの一連の離散構造として形成されてもよい。あるいは、導体層は、電磁放射がメッシュの間隙の間に向けられる導電性材料のメッシュであってもよい。
【0037】
光活性層は、第2電磁放射源による刺激に応答して局所的な電荷領域を生成することができる半導体材料から適切に構成される。例としては、300~1500nmの範囲の厚さを有する水素化アモルファスシリコン層が挙げられる。一実施形態では、光活性層が可視光の使用によって活性化される。
【0038】
第1壁の場合の光活性層および第2壁の場合の任意選択の導電層は、典型的には30~160nmの範囲の厚さである誘電体層でコーティングされる。この層の誘電特性は、>10^7 V/mの高誘電強度および>3の誘電率を含むことが好ましい。好ましくは、それは、絶縁破壊を回避することと一致してできるだけ薄い。一実施形態では、誘電体層は、アルミナ、シリカ、ハフニア、または薄い非導電性ポリマーフィルムから選択される。
【0039】
これらの構造の別の実施形態では、少なくとも第1の誘電体層が好ましくは両方とも、各種仮想エレクトロウェッティング電極位置で所望のマイクロ液滴/キャリア流体/表面接触角を確立するのを助け、さらに、マイクロ液滴の含有量が表面に付着し、マイクロ液滴がチップを通って移動することにつれて減少するのを防止するために、防汚層でコーティングされる。第2の壁が第2の誘電体層を含まない場合、第2の防汚層は、第2の導体層に直接塗布されてもよい。最適な性能のために、汚れ防止層は、25℃で空気-液体-表面三点界面として測定した場合に50~170°の微小液滴/キャリア流体/表面接触角を確立するのを助けるべきである。一実施形態では、これらの層が10nm未満の厚さを有し、典型的には単分子層である。別の実施形態では、これらの層は、が親水性基、例えばアルコキシシリルで置換されたアクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチルまたはその誘導体の重合体からなる。汚れ防止層の一方または両方は、最適な性能を保証するために疎水性である。いくつかの実施形態では、化学的に両立架橋を提供するために、20nm未満の厚さのシリカの格子間層を防汚コーティングと誘電体層との間に介在させることができる。
【0040】
第1および第2の誘電体層、したがって第1および第2の壁は、幅が少なくとも10μm、好ましくは20~180μmの範囲であり、その中に微小液滴が含まれる微小流体空間を画定する。好ましくは、それらが含まれる前に、微小液滴自体は、微小液滴空間の幅よりも10%を超える、適切には20%を超える固有直径を有する。この手段により、チップに入ると、マイクロ液滴は圧縮され、例えば、より良好なマイクロ液滴併合能力を介して、エレクトロウェッティング性能が向上する。
【0041】
一実施形態では、第1および第2の誘電体層がフルオロシランなどの疎水性コーティングでコーティングされる。
【0042】
別の実施形態では、マイクロ流体空間が第1の壁と第2の壁とを所定の量だけ離して保持するための1つまたは複数のスペーサを含む。スペーサのオプションとしては、光パターニングによって生成された中間レジスト層から生成されたビードまたはピラー、リッジが挙げられる。あるいは、酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの堆積材料を用いてスペーサを作製してもよい。代替的に、接着剤コーティングの有無にかかわらず、可撓性プラスチックフィルムを含むフィルムの層を使用して、スペーサ層を形成することができる。様々なスペーサ形状を使用して、ピラーの線によって画定される狭い先細りのチャネル付きチャネル、または部分的に囲まれたチャネルを形成することができる。注意深い設計によって、これらのスペーサを使用して、微小液滴の変形を助けることができ、続いて、微小液滴の分割および変形した微小液滴に対する効果操作を実施することができる。同様に、これらのスペーサを使用して、チップのゾーンを物理的に分離し、液滴集団間の相互汚染を防止し、液圧下でチップに負荷をかけるときに液滴の正しい方向への流れを促進することができる。
【0043】
第1および第2の壁は導電体層に取り付けられたA/C電力源を使用してバイアスされ、それらの間に電圧電位差を提供し、適切には10~50ボルトの範囲である。
【0044】
これらのOEWOD構造は、典型的には400~850nm、好ましくは660nmの範囲の波長、および光活性層のバンドギャップよりも高いエネルギーを有する第2の電磁放射源と関連して使用される。好適には、光活性層が使用される照射の入射強度さが0.01~0.2 Wcm-2である仮想エレクトロウェッティング電極位置で活性化される。電磁放射線源は、一実施形態では同じく画素化される光活性層上に対応する光励起領域を生成するように画素化される。この手段によって、画素化された仮想エレクトロウェッティング電極位置が、第1の誘電体層上に誘導される。
【0045】
電磁放射源が画素化される場合、LEDまたは他のランプからの光によって照射されるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などの反射スクリーンを使用して、直接的または間接的に、電磁放射源が適切に供給される。これにより、仮想的な電気濡れ電極位置の高度に複雑なパターンが第1誘電体層上に迅速に作成され、破壊されることが可能になり、これにより、密接に制御された電気濡れ力を用いて、マイクロ液滴を本質的に任意の仮想経路に沿って精密に操縦することが可能になる。これは、チップが複数経路に沿って数千のこのような微小液滴を同時に操作する必要がある場合にも特に有利である。このようなエレクトロウェッティング経路は、第1の誘電体層上の仮想的なエレクトロウェッティング電極位置の連続体から構築されていると見ることができる。
【0046】
電磁放射源の光活性層への衝突点は、従来の円形または環状を含む任意の好都合な形状とすることができる。一実施形態では、これらの点の形態が対応するピクセル化の形態によって決定され、別には、マイクロ流体空間に入ったマイクロ微小液滴の形態に完全にまたは部分的に対応する。一実施形態では衝突点、したがって、電気濡れ電極位置は三日月形であってもよく、微小液滴の意図された進行方向に配向されてもよい。好適には、電気濡れ電極位置自体が第1の壁に付着する微小液滴表面よりも小さく、液滴と表面誘電体との間に形成される接触線を横切る最大の電界強度勾配を与える。
【0047】
OEWOD構造の一実施形態では、第2の壁が同じまたは異なる電磁放射源によって第2の誘電体層上にも仮想的な電気濡れ電極位置を誘導することを可能にする光活性層も含む。第2の誘電体層の添加は、構造の上面から下面への微小液滴のウェットエッジの転移、および各微小液滴へのより多くのエレクトロウェッティング力の適用を可能にする。
【0048】
デバイスの一部を形成する第1のゾーンは、一実施形態では第1の微小液滴を導入するための入口と、エレクトロウェッティング経路によって第2のゾーンに取り付けられた出口とを備える保持リザーバである。第1のゾーンはレポーター系を導入するためのポートをさらに含み、このレポーター系は、1つの適切な実施形態において、第1の微小液滴に含まれる細胞の性質を同定するように設計されたレポーター系を含む第2の水性微小液滴を導入するための第2の入口である。1つの実施形態ではリザーバが第1の微小液滴を保持することができ、第2の微小液滴がそれらの上を駆動される位置のアレイをさらに含み、このプロセスでは第1および第2の微小液滴のある程度の併合を引き起こす。次いで、併合された第1/第2の微小液滴(以下、「併合された微小液滴」)は、レポーター系が細胞と十分に相互作用して、その後、それらがエレクトロウェッティングによって第2のゾーンに輸送される最適な光信号を生成するまで、その位置に保持され得る。ある場合には、時間分解測定を用いて光信号の成長をモニターすることが望ましい場合がある。一実施形態では、第1および第2のゾーンの両方の役割を包含する単一のゾーンが例えば、上記で言及した併合位置で併合した微小液滴を検出することによって使用される。
【0049】
第2のゾーンは好適には1つ以上の検出窓を含み、それを通して、光学検出系を使用して、併合された微小液滴を分析することができる。一実施形態では、第2のゾーンがチップの透明部分である。別の実施形態では、光学検出系がレポーター系と細胞またはその発現産物との間の相互作用から生じる微小液滴からの光信号を検出するように設計されたものである。適切には、光学検出系が明視野顕微鏡、暗視野顕微鏡、化学発光を検出するための手段、フェルスター共鳴エネルギー移動を検出するための手段、または蛍光を検出するための手段から選択される。一実施形態では、検出系が合流した微小液滴および/または検出器のうちの1つから信号を受け取り、例えば視覚ディスプレイまたはカウントの形態でユーザにデータを提供するためのマイクロプロセッサを照射するための光源も含む。一実施形態では、マイクロプロセッサがソーティングコンポーネントの性能、第1のゾーンへの第1の微小液滴の導入速度、および光学検出系によって検出された信号に応答した第1およびレポーター系含有微小液滴の合体速度のうちの1つ以上を制御するために、フィードバックループによってさらに適合される。
【0050】
液滴操作を行うためのoEWOD構造を使用する器具の特別な利点は、試料に焦点を合わせた光学アドレッシング系が器具に内蔵されていることである。oEWOD制御に必要な照明と共に、光検出に必要な励起光および発光光を多重化および脱多重化することによって、光学的な機能の多くを1つのより単純で低コストのアセンブリに集約することが可能である。例えば、ロングパスダイクロイックミラーを用いてアセンブリからの発光を脱多重化し、操作カラムからの光をそらすことや、高感度検出カメラにすることが可能となる。別の実施形態は2つのダイクロイックミラーを使用する。第1のミラーがランプからの蛍光励起光を多重化するために、第2のミラーは、蛍光発光を多重化するために使用される。時間分解フェルスター共鳴エネルギー移動のようなより高度な照明スキームを必要とする実施形態の場合、時間依存性および空間的に変化する照明パターンを適用するためにoEWOD操作パターンに対処する同じ構造化照明系を採用することが好ましい。また、これらの多重化操作のためにダイクロイックミラーを使用することと同様に、分散フィルター、分散レンズまたは回折格子のような要素を使用することが可能である。用途によっては、構造化照明系が励起源間を迅速に切り替えるために使用される時間的多重化を実行することが好ましい。
【0051】
いくつかの実施形態では、デバイスが第1および/または第2のゾーンから微小液滴を回収するための第3のゾーンをさらに含む。ここで、第1の微小液滴は例えば、より詳細な、または確認分析のために、器具からの後の回収のために、細分され、単離され得る。一実施形態では、第3のゾーンが一時保管容器に接続された第2のゾーンからの1つまたは複数の出口ポートから構成される。oEWODトランスポートメカニズムを用いて第1および第2のゾーンを補充することによって、微小液滴の多くの回収を順次実行することが可能であり、複数の液滴が1つのポートから別々に回収されることを可能にする。
【0052】
OEWOD構造内の流体の光学的に媒介される操作と同様に、デバイスはまた、種々の入口ポートおよび出口ポートに液圧を選択的に適用することによって、デバイス内部の流れを操作するためのポンプおよびバルブのネットワークを含み得る。好ましくは、このネットワークが各出口に接続された2位置弁、および同じ弁に接続された1組の圧力源(ポンプなど)、収集容器、およびリザーバを備える。各弁の構成を変更することによって、リザーバおよび収集容器を介してデバイス内に正圧または負圧を加えることが可能であり、したがって、デバイス内への材料の流入、デバイス外への材料の流出、またはデバイス内の材料の流入を引き起こす。
【0053】
上述の本発明のデバイスおよび関連する方法は、多くの有益な用途を有する。以下に、アプリケーションの例と関連するワークフローをいくつか説明する。
【0054】
開示されるデバイスおよび方法の1つの適用例は、遺伝的に改変された細胞株の開発である。
【0055】
この適用において、標的細胞は、サンプル調製コンポーネントの光学的に媒介されるエレクトロウェッティングに基づく切断手段を介して、第1の微小液滴中にカプセル化される。トランスフェクション試薬(例えば、改変レンチウイルス)は、別個の第2の微小液滴中にカプセル化される。
【0056】
次いで、第1および第2の微小液滴は上記のようなマージ操作においてOEWODデバイス上でマージされて、マージされた微小液滴を形成し、標的細胞をトランスフェクション試薬に曝露させる。併合された微小液滴中の細胞は、細胞集団が液滴間で分割される併合および分割操作のサイクルにかけられ、そして細胞を取り囲む培地は連続希釈によって新鮮な培地と交換され、枯渇した物質を補充し、そして液滴内に蓄積した任意の細胞排泄物を除去する。
【0057】
例えば、アッセイの間の顕微鏡検査によって、微小液滴集団における各セルの位置を追跡することは、共通の祖先由来の細胞がソーティング目的のために同定されることを可能にし、培養された細胞集団のモノクローナル性を確実にする。
【0058】
記載されたプロセスの間に、細胞の生存率を低下させることが知られている凍結融解、分配、手動操作、または繰り返しの長期継代の有害な工程がないので、細胞保持はまた、従来の細胞系現像方法と比較して増加する。同様に、細胞を液滴中に封入したままにすることにより、クローンを液体処理器具表面に失う可能性が除去される。さらに、非生存細胞は、プロセスの初期に発見され、代わりに生存細胞と置換され得る。
【0059】
いったん、融合された微小液滴中の細胞が十分な長さの時間培養されたことが決定されると、レポーターアッセイを含む第3の試薬がOEWODデバイスに導入され、標的細胞を含む微小液滴と併合される。レポーターアッセイの結果は例えば、検出された蛍光、化学発光、またはフェルスター共鳴エネルギー移動に従って測定され得る。
【0060】
レポーターアッセイの結果に基づいて、細胞の1つ以上の第1のサブセットを廃棄し得、そして細胞の1つ以上の第2のサブセットをさらに増殖させ得る。試料は培養されたターゲット細胞サブセットから回収され、さらなるオフチップ分析のために、チップからウェルプレート、例えば、標準1536ウェルプレートに分配される。培養されたサブセットの残りの前駆細胞は、オンチップでのさらなる培養のために保持される。
【0061】
次いで、回収された試料は1つ以上のオフチップ分析(例えば、DNA配列決定、RNA配列決定、PCR分析、遺伝子プロファイリング、およびマイクロアレイ測定)に供される。オフチップ分析の結果に基づいて、オンチップの細胞のさらなるサブセットを選択し、回収し、さらに培養することができる。
【0062】
本発明の別の適用例は、免疫機能について細胞をスクリーニングすることである。
【0063】
疾患に特徴的な毒素またはバイオマーカーなどの抗原で免疫した後、B細胞、T細胞または樹状細胞などの天然免疫細胞のサンプルを、マウス、ヒト、または霊長類などの生物から採取することができる。次いで、細胞を、宿主生物からの周囲組織、リンパ、血液細胞および他の成分から分離するために、処理および精製する。これは、切開、遠心分離、免疫沈降、濾過および透析法の混合物によって達成され得る。
【0064】
精製された免疫細胞は、微小液滴中にカプセル化され、OEWODデバイス上にロードされる。次いで、イムノアッセイ試薬、FRETレポーター、またはレポーター細胞株などの試薬を、第1のアッセイにおいて標的細胞を含有する微小液滴に導入する。これは、上述のように、試薬の第2の微小液滴を生成し、併合操作を実行することによって実行することができる。
【0065】
第1のアッセイの結果は例えば、光学的検出または顕微鏡検査によって調べられ、抗体のようなタンパク質が、イムノアッセイ試薬に応答してターゲット細胞によって排泄されるかどうかを決定する。第1のアッセイの結果に基づいて、標的細胞を含む微小液滴のサブセットはデバイスから廃棄され得、そして別のサブセットはさらなる試験のために保持される。
【0066】
次いで、オフターゲットレポーターのような第2の試薬を、第2のオンチップアッセイにおいて、残りの細胞含有微小液滴と同様の様式で導入してもよい。第2のアッセイの結果は、蛍光分光法のような光学的技術を用いて測定され、第2ラウンドの微小液滴サブセットの選択および廃棄を導く。上記の処理は一連の異なるレポーターアッセイを使用して標的細胞を問い合わせ/スクリーニングし、オン標的、オフ標的、および無関係な標的に対する標的細胞の応答を測定するために繰り返され得る。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「オンターゲット」は端部の組織または抗原をいい、標的細胞が応答抗体を産生している。例えば、オンターゲットはがん性組織であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「オフターゲット」は望ましくない効果が観察されるかまたは予想される組織をいう。例、オフターゲットはがん性組織に近いかまたは関連する健康な組織であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「無関係なターゲット」は抗体との生物学的相互作用を有さないと予想されるが、例えば、有用な末端への大量の抗体の結合、または交絡測定によって、アッセイ結果の正確さに負の効果を有し得る物質をいう。
【0068】
スクリーニングアッセイの測定結果に基づいて、細胞の最終サブセットを選択する。次いで、最終サブセットを含む残りの細胞含有微小液滴を、選択された溶解試薬およびcDNA合成試薬に導入して、標的細胞において現在発現されている遺伝子のライブラリーを形成する。目的の細胞をチップ外で回収し、チップ上での表現型アッセイで観察された挙動に関与するコードDNAを示す遺伝子アッセイに供する。
【0069】
本発明の別の適用例は、免疫調節薬および腫瘍抑制のための薬物を含む、薬物の機能性および有効性についてのスクリーニングである。
【0070】
この適用において、薬物ターゲット細胞のパネルは、第1の微小液滴中にカプセル化され、そしてOEWODデバイス上にロードされる。試験のための薬物化合物のパネルを含む第2の微小液滴のセットもまた、負荷される。
【0071】
線量測定パネルはそれぞれの薬物化合物のある範囲の希釈を含有する微小液滴のパネルを作製するために、第2の微小液滴に対して行われる併合および分割操作によって形成される。薬物化合物は、マイクロビードの形成であっても、小胞中にカプセル化されていても、液滴中にカプセル化された産生細胞によって発現されていてもよい。
【0072】
薬物線量測定パネルは、併合操作によってターゲット細胞に導入される;薬物線量測定パネルの微小液滴を含む第1の細胞と微小液滴との間の網羅的なペアワイズの組合せプロセスは、パネル全体が反復してあらゆる細胞型に曝露されることを確実にする。エフェクター細胞(例えば、Tキラー細胞またはマクロファージ)はまた、免疫反応を調節する際の薬物の効果を試験し、そして異なる組織の存在下での免疫反応の詳細な断面比較を行うために、薬物パネルおよび標的細胞とともに導入され得る。
【0073】
薬物パネルに対する標的細胞の応答は例えば、顕微鏡検査、蛍光レポーター染色またはレポーターアッセイによってモニターされ得る。スクリーニングプロセスの結果を使用して、種々の細胞およびエフェクター細胞条件における試験薬物の効力について情報を与えることができる。
【0074】
本発明の別の適用例は、標的幹細胞の分化を誘導することである。
【0075】
この適用において、標的幹細胞(例えば、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉幹細胞または造血幹細胞)は、第1の微小液滴中にカプセル化され、そしてOEWODデバイス上にロードされる。
【0076】
例えば、成長因子、環境刺激物質、細胞から細胞へのシグナル伝達化合物、およびモルフォゲンなどの制御試薬化合物のパネルは、第2の微小液滴中にカプセル化され、また、OEWODデバイス上にロードされる。
【0077】
第1の微小液滴のサブセットは第1の微小液滴に含まれる幹細胞を試薬に暴露し、したがって標的経路に沿った幹細胞の分化を促進するために、対照試薬を含有する第2の微小液滴と併合される。
【0078】
幹細胞分化プロセスは例えば、顕微鏡画像、表現型レポーター化合物の検出、およびレポーターアッセイを行うことによってモニターされる。併合された微小液滴中の分化した細胞は、さらなる培養または処理のための分注工程を介してOEWODデバイスから回収され得る。
【0079】
本発明のさらに別の適用例は、オルガノイド構造の制御された形成におけるものである。
【0080】
この適用において、オルガノイド前駆細胞(例えば、腫瘍細胞または幹細胞)は、第1の微小液滴中にカプセル化され、そしてOEWODデバイス上にロードされる。例えば、成長因子、環境刺激剤、細胞間シグナル伝達化合物、およびモルフォゲンなどの制御試薬のパネルは、第2の微小液滴中にカプセル化され、また、OEWODデバイス上にロードされる。
【0081】
第1の微小液滴に含まれるオルガノイド前駆細胞集団のサブセットはオルガノイドおよび組織構造の形成を促進するために、併合操作を介して対照試薬に曝露される。このようにして形成されたオルガノイドは、OEWODデバイス上の専用領域オンチップに保存され、液滴マージ操作を介して栄養素および任意の他の必要な増殖培地が供給され得る。この様式でチップ上に保存されたオルガノイドは上記の例示的な適用に関連して記載されるように、薬物スクリーニングアッセイに供され得る。
【0082】
本発明の別の適用例は、CRISPR-Cas9遺伝子改変スクリーニングにおけるものである。
【0083】
この適用において、標的細胞は、第1の微小液滴中にカプセル化され、そしてOEWODデバイス上にロードされる。gRNAペアのパネルを含む微小液滴の第2のセットもまた、デバイス上にロードされる。gRNAペアのパネルを装填することは、凍結乾燥されたgRNAをデバイス表面の標的領域上にスポットし、続いて、微小液滴をそれらの上を通過させることによってパネルを含む領域を再水和する準備工程を含み得る。
【0084】
これは、gRNAがマイクロビーズに結合され、これらのビーズがスポットされ、流体の表面上に凍結乾燥されるビーズプレップ工程の形成であり得る。
【0085】
gRNAはマージ操作を介してターゲット細胞に導入され、これは、ターゲット細胞に、プログラマブル制限酵素(例えば、Cas9)およびターゲット細胞における遺伝子改変を誘導するために必要とされる試薬と共に、gRNAを取り込ませる。
【0086】
併合された微小液滴中の細胞は、細胞集団が液滴間で分割され、細胞を取り囲む媒体が連続希釈によって交換される併合および分割操作のサイクルにかけられる。
【0087】
微小液滴集団中の各セルの位置を追跡することにより、共通祖先由来の細胞をソーティング目的で同定することが可能となり、培養細胞集団の単クローン性が増加する。細胞保持も増加する。
【0088】
いったん融合された微小液滴中の細胞が十分な長さの時間培養されたことが決定されると、レポーターアッセイを含む第3の試薬がOEWODデバイスに導入され、標的細胞を含む微小液滴と併合される。レポーターアッセイの結果は例えば、検出された蛍光、化学発光、またはフェルスター共鳴エネルギー移動に従って測定され得る。
【0089】
レポーターアッセイの結果に基づいて、細胞の1つ以上の第1のサブセットを廃棄し得、そして細胞の1つ以上の第2のサブセットをさらに増殖させ得る。試料は培養されたターゲット細胞サブセットから回収され、さらなるオフチップ分析のために、チップからウェルプレート、例えば、標準1536ウェルプレートに分配される。培養されたサブセットの残りの前駆細胞は、オンチップでのさらなる培養のために保持される。
【0090】
次いで、回収された試料は1つ以上のオフチップ分析(例えば、DNA配列決定、RNA配列決定、PCR分析、遺伝子プロファイリング、およびマイクロアレイ測定)に供される。オフチップ分析の結果に基づいて、オンチップの細胞のさらなるサブセットを選択し、回収し、さらに培養することができる。
【0091】
図1を参照して、デバイスの例と関連するワークフローの例を示す。
【0092】
流体入口1は、フルオロカーボン油中の空の細胞含有第1微小液滴の混合物のエマルジョン2を入れる。次に、これらの第1の微小液滴は、OEWOD構造(図示せず)によってソーティングゾーン3に移され、そこで、光学的手段または上記のような他のソーティング手段によって、空虚なもの4および細胞を含むもの5にソートされる。その後、細胞含有微小液滴5の各々はやはりOEWOD構造によって、合流ゾーン8に移され、そこで、それらは各々の中での細胞増殖および分裂を促進する条件下で、規定された期間保持される。この期間の端部に、第2の入口6は目的の細胞型7に対して選択的な蛍光レポーター系を含む第2の微小液滴を入れ、次いで、これらは合流ゾーン8で細胞含有第1の微小液滴5と合流されて、合流微小液滴9を形成する。次いで、併合された微小液滴9は、OEWOD構造によって光学窓10に移され、そこで、レポーター系に特徴的な蛍光信号がLED光源、光検出器、およびマイクロプロセッサからなる光学検出器具11を用いて検出される。光学検出器11は、光学操作プロジェクタ12と部分的に組み合わされる。
【0093】
図2は、25℃で5センチストークス以下の粘性を有するフルオロカーボンオイルに乳化された水性微小液滴2の迅速な操作に適した、非閉じ込め状態で120μm(例えば、80~120μm)の径を有するoEWOD構造を例示的なデバイスの断面図を示す。それは、130nmの厚さを有する導電性インジウムスズ酸化物(ITO)15の透明層でそれぞれ500μmの厚さに被覆された上部および下部ガラスプレート(13および14)を含む。15の各々はA/C源16に接続され、14上のITO層は接地されている。14は800nmの厚さのアモルファスシリコン17の層で被覆されている。13および17は、それぞれ、160nmの厚さの高純度アルミナまたはハフニア18の層で被覆され、次いで、トリクロロ(1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクチル)シラン19の層を支持する二酸化ケイ素の格子間層で被覆されて、18の疎水性の表面をもたらす。13および17はデバイスに導入されたときに微小液滴がある程度の圧縮を受けるように、スペーサを使用して80μm離間される。LED光源20によって照明された反射型画素化画面の画像は、一般に14の下に配置され、0.01Wcm
-2の可視光(波長660または830nm)がそれぞれのダイオード21から放射され、14および15を通る多数の上方向矢印の方向に伝搬することによって17に衝突させられる。
【0094】
衝突の種々の点において、充電22の光励起領域が、対応するエレクトロウェッティング位置23において18に修飾された液体-固体接触角を誘起する17に生成される。これらの改良された特性は、マイクロ液滴2をある点23から別の点に推進するのに必要な毛管力を提供する。20は、事前にプログラムされたアルゴリズムによって一時点にアレイ中のどちら21が照射されるかを決定するマイクロプロセッサ24によって制御される。