(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】液体蓄積を検出するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240610BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240610BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/11 200
A61B10/00 H
A61B5/00 N
A61B5/00 101N
(21)【出願番号】P 2021534235
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2019084722
(87)【国際公開番号】W WO2020126764
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブルト ムルタザ
(72)【発明者】
【氏名】ファン リースハウト ロン マルティヌス ラウレンチウス
(72)【発明者】
【氏名】デリーモア キラン ハミルトン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーシ ロハン
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-532072(JP,A)
【文献】米国特許第04899758(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0371635(US,A1)
【文献】国際公開第2017/140663(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064392(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319724(US,A1)
【文献】特表2014-507213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/11-5/113
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の身体領域における液体蓄積を検出するためのシステムであって、前記システムは、
前記被検者の心臓の拍動によって誘起される力、動き又は圧力の信号を取得するためのセンサ装置であって、前記信号が前記身体領域の密度分布に依存して変化する
ように、前記力、動き又は圧力の信号が、前記心臓から前記センサ装置へ前記身体領域を通じて送信される、センサ装置と、
時間にわたり前記センサ装置の前記信号の変化を分析し、前記密度分布の変化を検出することに基づいて液体蓄積が生じたことを決定するプロセッサと
を有する、システム。
【請求項2】
前記センサ装置が、
前記
身体領域に対して前記
被検者の心臓と反対側に配置されるためのものであり、
前記
身体領域に対して前記
被検者の心臓と反対側から感知するためのものであり、又は、
前記被検者に結合された物体の動きを、該物体の動きが前記心臓の拍動により誘起されるようにして感知するためものである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサ装置が、1以上の圧力センサ及び/又は1以上の慣性センサを有する、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサ装置が、
頭部に装着するためのセンサ装置、
腰の周りに装着するためのセンサ装置、
背中に装着するためのセンサ装置、
脚若しくは足に装着するためのセンサ装置、
前記被検者が立つ、座る若しくは横たわるセンサ装置、及び/又は
非接触センサ
を有する、請求項1から3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、
特徴抽出を実行して、心弾動記録信号の関心特徴を分離し、
前記センサ装置の信号の関心特徴のパラメータを決定し、及び
前記決定されたパラメータの変化から、液体蓄積が生じたことを決定する、
請求項1から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記パラメータが、信号エネルギ、信号強度又は信号分散の尺度を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記心弾動記録信号を周波数成分に分解するための分解アルゴリズムを有し、前記関心特徴が、固定された下限閾値より上に又は前記被検者の決定された心拍数周波数より上に位置する周波数帯域内の周波数成分を有する、請求項5又は請求項6に記載
のシステム。
【請求項8】
前記パラメータが抽出された前記関心特徴のヒルベルト変換を有すると共に、前記プロセッサが該ヒルベルト変換を実行するためのヒルベルト変換ユニットを有するか、又は
前記パラメータが抽出された前記関心特徴のエネルギ、強度、分散若しくは振幅の測定値を有する、
請求項5から7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記パラメータが生のセンサ装置の信号のヒルベルト変換を有すると共に、当該システムが該ヒルベルト変換を実行するためのヒルベルト変換ユニットを有するか、又は
前記パラメータが前記生のセンサ装置の信号のエネルギ、強度、分散若しくは振幅の測定値を有する、
請求項5又は請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、液体蓄積が生じたことを決定するために機械学習又は深層学習アルゴリズムを適用する、請求項1から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、少なくとも2分の時間枠にわたって前記センサ装置の前記信号の変化を分析する、請求項1から10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサ装置の前記信号が、
前記被検者の身体の頭部-つま先方向に平行な方向のベクトル量若しくは一群のベクトル量の測定、
前記被検者の身体の頭部-つま先方向に垂直な方向のベクトル量若しくは一群のベクトル量の測定、又は
異なる方向の複数のベクトル量の組み合わせ
に基づくものである、請求項1から11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサ装置からの前記信号が、2.5Hzと7.5Hzとの間に入る予め定義された人間の共振周波数範囲のみを含むようにフィルタ処理される、請求項1から12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
被検者の身体領域における液体蓄積を検出するための
システムの作動方法であって
、
センサ装置が、前記被検者の心臓の拍動によって誘起される力、動き又は圧力の信号を取得するステップであって、該信号が前記身体領域の密度分布に依存して変化する
ように、前記力、動き又は圧力の信号が、前記心臓から前記センサ装置へ前記身体領域を通じて送信される、ステップと、
プロセッサが、時間にわたり前記信号の変化を分析し、該密度分布の変化を検出することに基づいて液体蓄積が生じたことを決定するステップと
を有する、
システムの作動方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行された場合に請求項14に記載の
システムの作動方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体における液体(体液)蓄積、例えば出血による内出血を検出するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出血は、術後ケア、救急部門、急性期医療環境、及び脳卒中患者の主要な問題である。特に、ベッドサイドでの内出血のタイムリーで確実な監視及び検出は、複数の現場にわたり依然として重要な課題である。
【0003】
健康な人が1000mlを超える血液を失うと、身体は心拍数(HR)を上昇させることにより反応し、その結果として血圧が変化する。しかしながら、投薬(ベータ遮断薬等)中の患者及び神経障害(糖尿病等による)を患っている患者は、失血を補う能力が低下しており、バイタルサインの変化が限定され得る。更に、若い患者は血液量の変動に対する補償メカニズムが大きいため、失血に伴うバイタルサインの変化は後で発生する。
【0004】
バイタルサインの持続的な変化が臨床的に観察された場合、典型的に、内出血の確認がX線、CT又は超音波を使用したスキャンを実行することによって行われる。出血の症状と後遺症は、組織の灌流に関連する。
【0005】
血液量の15%以下の損失は、如何なるバイタルサインの変化にも関連しない場合がある。その結果、大量の失血が起こるまで、出血は診断されないままとなる。
【0006】
例えば、補償される出血性ショックは、1000ml未満の失血に相当し、それを下回る場合、心拍数、血圧、呼吸及び毛細血管再充満は正常のままである。軽度のショックは、1000~1500mlの失血に相当するが、生理学的パラメータの僅かに小さな変化しか観察されない。中程度のショックは、1500~2000mlの失血に相当する。この場合、血圧の著しい低下、心拍数の増加(>120bpm)、毛細血管再充満の遅延及び中等度の頻呼吸が起こる。この段階において、被検者は典型的に混乱する。
【0007】
重度のショックは、2000mlを超える失血に相当する。この場合、血圧が大幅に低下し、心拍数が大幅に増加し(>140bpm)、毛細血管再充満が遅れ、著しい頻呼吸(呼吸器虚脱)が起こる。被検者は、次いで、無気力になり、昏睡状態になる。
【0008】
診断用の既知のベッドサイド警告システムは心拍数及び血圧の尺度に依存しているが、これらのバイタルは内出血に固有のものではなく、特定の患者グループ(例えば、ベータ遮断薬を使用しているグループ)には鈍感でさえもあり得る。心拍数の上昇は、1000mlを超える失血後にのみ発生するため、遅い目印である。加えて、心拍数の上昇は他の多くの要因(ストレス、投薬等)によっても引き起こされる可能性があり、したがって内出血に特有のものではない。
【0009】
上述したように、出血が疑われる場合、CTスキャン等の決定的な放射線医学的確認のための高度な撮像法を使用して診断を確認することができる。これにより、検出の遅延が更に増加する。更に、これらの方法は、高価であり、時間がかかり(臨床的ワークフローが複雑であるため)、患者に負担がかかり、ワークフローに適合させるのが困難である。これら方法は、連続した測定も提供しない。
【0010】
大手術を受けた患者等の、特定の患者の搬送にはリスクがないわけではなく、ベッドサイドで内出血を診断する際の信頼性を向上させる必要性が更に高まることにも言及する価値がある。
【0011】
Sela I他による文献“Measuring Left Ventricular Ejection Time using Under-the-Mattress Sensor”は、マットレス下の圧電センサを使用して心臓弾道効果を測定することにより左心室駆出時間(LVET)を測定することを開示している。LVETの短縮は、内出血中の血液損失の結果であると考えられている。当該センサは、できる限り心臓に近くなるように胸骨の下に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
内出血(血液量減少性ショック又は出血性ショックとしても知られる)を検出し、より一般的に体内の液体蓄積を検出するための、より特定的で感度の高い指標(指示情報)に対する要求が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、請求項によって定義される。
【0014】
本発明の一態様による例によれば、被検者の身体領域における液体蓄積を検出するためのシステムが提供され、該システムは:
- 前記被検者の心臓の拍動によって誘起される力、動き又は圧力の信号を取得するためのセンサ装置であって、前記信号が前記身体領域の密度分布に依存して変化するセンサ装置;及び
- 時間にわたり前記センサ装置の信号の変化を分析し、前記密度分布の変化を検出することに基づいて液体蓄積が生じたことを決定するプロセッサ;
を有する。
【0015】
このシステムは、センサ装置の信号の変化を追跡するもので、液体の蓄積によって引き起こされる物質の異なる密度の分布の変化の検出に基づくものである。
【0016】
本発明は、密度分布の変化を検出するためのセンサ装置の信号の処理に基づいている。言い換えれば、身体領域内の密度分布に変化があり、他の全ての生理学的パラメータ及び応答が等しい場合、この変化が検出され、液体蓄積の指示情報として使用される。この処理は、液体蓄積の原因を検出すること、又は実際に発生し得る他の生理学的反応に基づくものではない。代わりに、本発明は、身体を介しての力、圧力又は動き信号の伝播の分析に基づくもので、特に心拍の特性を解釈する必要なしに、身体内の密度分布を決定できるようにする。
【0017】
液体の蓄積は、例えば、内出血の結果である可能性があり、密度の変化が、循環系からの血液の損失及び他の場所における血液の存在の結果として生じる。特に、密度分布の変化は、心臓によって引き起こされる圧力パルスが身体(特に関心領域)を通ってセンサ装置まで伝播する態様を変化させる。
【0018】
当該センサ装置は、例えば心弾動記録(BCG)センサのように機能する。心拍数及び呼吸の検出のためにBCG信号を使用することが知られており、本発明は、液体蓄積に関して、BCG信号、又は一層一般的には圧力、動き(運動)又は力に基づくセンサ装置の信号の分析を利用する。本発明は、当該信号における傾向の検出に基づくと共に時間的分析によるもので、自然に発生する変化を、例えば内出血によって引き起こされる病状を示す液体蓄積と区別できるようにする。したがって、一般に、本発明は、圧力、力及び/又は動きの信号を時間にわたり測定すること(センサ装置を使用して)、及び経時的に観察された差に基づいて、液体の蓄積が生じたかを決定することを含む。
【0019】
当該センサ装置の信号は、心臓の拍動によって引き起こされたパルス状圧力が当該身体領域を経て(好ましくは直接)通過した結果として変調された成分を少なくとも有する。当該信号処理は、身体領域の密度分布(3D空間における)の変化を検出するためのものである。このことは、如何なる密度値も出力として供給されることを意味するのではなく、該信号処理が、心拍特性が一定のままであっても、密度の変化に応答することを意味する。
【0020】
当該センサ装置は:
- 前記被検者の心臓に対して前記身体領域の反対側に配置するためのもの;
- 前記被検者の心臓に対して前記身体領域の反対側から感知するためのもの;又は
- 前記被検者に結合された物体の動きを、該物体の動きが前記心臓の拍動により誘起されるようにして感知するためもの;
であり得る。
【0021】
幾つかの例において、前記関心領域は心臓とセンサとの間に位置し、心拍圧力波が該関心領域を経て伝播し該センサに到達するようにする。
【0022】
このような例において、センサは、心臓から横方向に、例えば少なくとも10cm、好ましくは少なくとも20cm、より好ましくは少なくとも30cm、変位されて配置されることが好ましい。横方向に変位されるとは、身体の一般面に平行で心臓を通過する平面に投影された場合に、センサの位置が該平面内の心臓の位置から変位されていることを意味する。したがって、心臓からセンサまでの身体を通る主要な経路の少なくとも幾つかは、当該関心身体領域を含み、該関心領域自体は、通常、心臓の真上又は真下ではない(即ち、上記平面に垂直な方向においいて)。
【0023】
同じ概念が非接触センサにも適用され、その場合、特定の領域からの感知が依然として存在し得る。このようなケースにおいても、感知が行われる位置は、心臓から横方向に、例えば少なくとも10cm、好ましくは少なくとも20cm、より好ましくは少なくとも30cmだけ変位される。しかしながら、液体の蓄積がセンサ信号に測定可能な影響を与える限り、どのような構成も使用可能であるという点で、経路は直接的である必要はない。拍動する心臓は、他の物体(ベッドフレーム等)の動きを誘起さえし得る。
【0024】
該物体への振動の結合は、この場合も、被検者の身体における例えば少なくとも10cm、好ましくは少なくとも20cm、より好ましくは少なくとも30cm心臓から横方向に変位された位置におけるものであり得る。
【0025】
一般的に、当該関心領域は心臓ではなく、目的は、心臓から離れた場所の液体の蓄積を、それ自体が心臓から離れている関心領域を経て伝搬した圧力波の分析に基づいて検出することである。したがって、当該センサは、心臓と該センサとの間の圧力波の伝播に対する測定可能な影響、特に圧力波が伝播した媒体の密度分布の変化によって引き起こされる影響が存在するように配置する必要がある。
【0026】
本発明は、個々の心拍の特徴の分析を必要とするものではない。代わりに、本発明は全体的な(累積的な)心拍圧力パルスの伝播、及び全体的な圧力パルスが身体を介して伝達される態様に依存する。このように、必要とされる信号分析は、心臓の特性を測定することを目的とするのではなく、身体の特性を測定することを目的とする。
【0027】
心臓の特性(LVET等)を推定するためには、心拍間隔又は心拍周波数等の心周期又は心拍に関連するパラメータの抽出を実行できる信号が必要である。このように、当該分析は周期的成分の検出に基づくものである。したがって、当該信号分析は、拍動する心臓によって取得される信号の、この周期的な挙動に関連する特徴を強調又は計算するための前処理を必要とする。
【0028】
本発明によるより一般的なパルス伝播の分析により、捕捉された信号から周期的挙動を抽出する、又は個々の心周期又は心拍周期性に特に関連するパラメータを決定する必要がないという点で、より単純な信号処理が可能になる。
【0029】
例えば、当該分析は単一の心拍のみを有する期間(例えば、0.5秒)に関するデータのサンプルに基づいて実行することができ、かくして、心拍に関する周期性情報は必要とされない。当該分析は、より長い期間(例えば、数秒又は数十秒)のデータのサンプルに基づいて実行することができる。しかしながら、当該分析は依然として心拍の周期性に関する情報を利用することはなく、実際に、そのような周期性に関連する周波数成分は、可能性のある信号処理の幾つかの例では、当該信号処理から特に除外される(ハイパス又はバンドパスフィルタ処理により)。
【0030】
当該センサ装置は:
- 1以上の圧力センサ;及び/又は
- 1以上の慣性センサ;
を好ましくは有する。
【0031】
当該センサ装置は、心臓の関心領域とは反対側に配置され、従って、心臓によって生成される圧力波は、感知する前に関心領域を通過する。光学的感知も可能であり、実際にBCGセンサのための光学的感知アプローチが提案されていることに注意されたい。上記慣性センサは、加速度計、ジャイロスコープ又は他のジャイロセンサを有し得る。
【0032】
当該センサ装置は:
- 例えば脳の出血を監視するための、頭部に装着するためのセンサ装置;
- 例えば胴体内の出血を監視するための、腰の周りに装着するためのセンサ装置;
- 例えば肺内の体液蓄積を監視するための、背中に装着するためのセンサ装置;
- 例えば心臓より下の任意の位置における体液蓄積を監視するための、脚若しくは足に装着するためのセンサ装置;
- 前記被検者が立つ、座る若しくは横たわるセンサ装置;及び/又は
- 非接触センサ;
を有し得る。
【0033】
信号処理アプローチの一例において、前記プロセッサは:
- 特徴抽出を実行して、前記センサ装置の信号の関心特徴を分離し;
- 前記センサ装置の信号の関心特徴のパラメータを決定し;及び
- 前記決定されたパラメータの変化から、液体蓄積が生じたことを決定する;
ように構成することができる。
【0034】
抽出されるべき関心特徴は、事前にわかっている場合には事前に定義若しくは事前に選択でき、又は例えば機械学習アルゴリズム等によって動的に決定することができる。
【0035】
前記センサ装置の信号の特性が変化したかを分析するために、特定の通知された特徴を抽出でき、これらの特徴値の変化を評価できる。
【0036】
信号の形状又は他の特性の変化を経時的に監視する、より一般的な時系列分析を行うことができる。時間領域信号から多くの特徴を抽出でき、これらの特徴を使用して、機械学習ツールを液体の蓄積が発生したかを判定するために使用できる。これは、機械学習又はデータ駆動型のアプローチである。これには、液体の蓄積がある場合とない場合のセンサ装置の信号を使用したトレーニングが含まれる。代わりに又は加えて、機械学習を、抽出された特徴を使用してクラスタを形成できるかを評価する、教師なし態様で適用することができる。
【0037】
深層学習法では、特徴を事前に計算する必要はない。代わりに、生のセンサ装置の信号を入力として使用でき、液体の蓄積を検出できる。深層学習法のニューラルネットワークは、最初に注釈付きのセンサ装置データでトレーニングされる。
【0038】
特徴ベースのアプローチにおいて、前記パラメータは、例えば、信号エネルギ、信号強度又は信号分散の尺度を有する。したがって、これは、心臓とセンサ装置との間の信号減衰(又は増幅又は変動)のレベルに関連する。
【0039】
前記プロセッサは、好ましくは、少なくとも2分の時間枠にわたってセンサ装置の信号の変化を分析するように構成される。
【0040】
この時間枠は、被検者が監視される期間に関連する。これは、監視の開始と終了との間に十分な液体が蓄積されていることを保証するために十分に長くなければならない。液体蓄積(例えば、出血)の強度に依存して、この時間枠は、通常、数分から数時間の範囲であり得る。被検者は、この時間枠内で継続的に監視され得る。例えば、液体蓄積の尺度を導出するための前記信号の処理は、数分の1秒(例えば0.5秒)から数秒、数秒から数分(例えば1分)まで変化し得る時間窓(ウィンドウ)内で行われる。
【0041】
順次のパラメータ決定のための時間窓は、オーバーラップし得る。したがって、分析が実行される移動時間窓が存在し得る。上記オーバーラップは、例えば、50%(例えば、30秒毎の新しい測定値の場合、1分の時間枠の30秒のオーバーラップ)と95%(例えば、1秒毎の新しい測定値の場合、20秒の時間枠の19秒のオーバーラップ)との間である。
【0042】
一群の例において、前記プロセッサは前記センサ装置の信号を周波数成分に分解することにより前記特徴抽出を実施するための分解アルゴリズムを有することができ、前記関心特徴は、1.67Hzより上に又は前記被検者の決定された心拍数周波数より上に位置する周波数帯域内の周波数成分を有する。
【0043】
(心拍数に関連する)高周波成分は、内出血又は他の液体蓄積によって引き起こされる密度分布の変化を表す上で特に重要であることがわかっている。
【0044】
前記分解アルゴリズムは、例えば、経験的モード分解を実施するように構成される。これは、周波数分析に適したアプローチの1つである。他のアプローチには、ウェーブレット変換、又はバンドパスフィルタ処理(即ち、フィルタバンクの使用)が含まれる。
【0045】
特徴ベースのアプローチにおいて、前記パラメータはヒルベルト変換又は抽出された周波数ベースの特徴のエネルギを有することができ、その場合、前記プロセッサはヒルベルト変換を実行するためのヒルベルト変換ユニットを有し得る。
【0046】
他の群の例において、前記パラメータは生のセンサ装置の信号(したがって、先行する周波数分解なしの)のエネルギ又はヒルベルト変換を有し、その場合、当該システムはヒルベルト変換を実行するためのヒルベルト変換ユニットを有し得る。このように、周波数ベースの分解は必須ではなく、当該処理は生信号に対して実行されてもよい。上記生信号は、特徴又はパラメータを計算する前に処理される必要があり得る(例えば、分析前の該生信号の変換又はフィルタ処理)ことに注意されたい。したがって、「生信号」という用語は、周波数成分には分解されていないが、何らかの信号の前処理が行われた信号として理解されるべきである。このことは、取得された生の信号にノイズが含まれている場合、又はアーティファクトが含まれているため、更に分析する前にクリーニングする必要がある場合に重要である。
【0047】
この生信号の処理は、信号分解が適用される前に適用されてもよい。
【0048】
前記センサ装置の信号は:
- 前記被検者の身体の頭部-つま先方向に平行な方向のベクトル量の測定;
- 前記被検者の身体の頭部-つま先方向に垂直な方向のベクトル量の測定;又は
- 異なる方向の複数のベクトル量の組み合わせ;
に基づくものであり得る。
【0049】
したがって、加速度計の測定等の、1軸、2軸、又は3軸の測定を使用することができる。更に、当該センサ装置は、センサのアレイ、例えば圧力マットを形成するセンサの2Dアレイを有し得る。このようなケースにおいては、時間とともに変化する2D信号が存在し得る。
【0050】
当該液体蓄積は、例えば、内出血を有する。
【0051】
本発明は、被検者の身体領域における液体蓄積を検出するための方法も提供し、該方法は:
- 前記被検者の心臓の拍動によって誘起される力、動き又は圧力信号を取得するステップであって、該信号が前記身体領域の密度分布に依存して変化するステップ;及び
- 時間にわたり前記信号の変化を分析し、該密度分布の変化を検出することに基づいて液体蓄積が生じたことを決定するステップ;
を有する。
【0052】
本発明は、コンピュータ上で実行された場合に、上述された方法を実施するように適合されたコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムも提供する。
【0053】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、これら実施形態を参照して説明されるであろう。
【0054】
本発明をよりよく理解し、本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、添付図面を例示としてのみ参照する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、ECG信号とBCG信号との間の関係を示している。
【
図2】
図2は、被検者における液体蓄積を検出するための本発明によるシステムを示す。
【
図3】
図3は、時間の経過に伴う3軸加速度計の生の加速度計信号を示している。
【
図4】
図4は、IMFとして知られるEMDプロセスの出力を示している。
【
図5】
図5は、
図4のIMFに関するフーリエ変換振幅を示している。
【
図6】
図6は、圧力マット、ECG電極、呼吸測定バンド及び3軸加速度計を備えた実験構成を示している。
【
図7】
図7は、測定信号から計算された2つの異なる特徴を示している。
【
図8】
図8は、生信号の短時間ベースの分析から計算された種々の特徴を使用した信号特性の変化を示している。
【
図9】
図9は、3つの異なる加速度計の位置のエネルギの変化を示している。
【
図10】
図10は、力の感知に基づく重量測定アプローチの結果を示している。
【
図11】
図11は、摂取量の関数としての被検者のIMF2エネルギの傾向線、及びベースラインに対して正規化された2つのプロットを示している。
【
図12】
図12は、液体蓄積が生じたことを決定する方法を示す。
【
図13】
図13は、当該方法の有効性の周波数ベース分析の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明を、図面を参照して説明する。
【0057】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付請求項及び添付図面からよりよく理解されるであろう。図は単に概略図であり、縮尺通りに描かれていないことを理解すべきである。同一又は類似の部分を示すために、全図にわたって同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0058】
本発明は、被検体(被検者)における液体(体液)蓄積を検出するためのシステムを提供する。心臓の拍動によって引き起こされる動きが、動き、圧力又は力を監視することにより時間にわたり分析される。液体蓄積による密度の変化が、センサ装置の信号の変化につながる。変化が、内出血等の体液の蓄積が起こった可能性があることを示すために使用される。
【0059】
本発明は、心臓の拍動から生じる身体の動きの分析を利用する。
【0060】
心弾動図(BCG)は、心臓からの血液の駆出に対する身体の反応(変位、速度又は加速度)として定義される。したがって、これは、心臓内、動脈(主に大動脈)内の血液の動き、及び心臓自体の動きに関連する複数の力の統合である。したがって、本発明は、心弾動図に類似した信号の分析を利用する。このタイプの信号は、通常、センサが心臓の可能な限り近くに配置されて、心拍数又は呼吸の測定に使用されるが、本発明では、このタイプの運動信号を心臓から離れた場所で検出し、心臓圧力波の伝播が身体の関心領域を介して検出されることを可能にする。
【0061】
心弾動図(及び本発明による運動、力又は圧力感知によりピックアップされる信号)は、本質的に多次元信号であり、全ての方向及び全ての側で測定することができる。これらの信号は頭部-足先方向で最も強いため、殆どのBCG測定技術は縦方向の頭部-足先成分に焦点を当てている。
【0062】
患者の心臓を測定するために特にSCG(心理心電図:seismocardiography)を実施する際に、BCG信号を使用することが知られており、感知電極は可能な限り心臓の近くに配置される。更に、当該システムから呼吸数を導き出すことができる。後者は、背腹方向に最大の力を有する。しかしながら、BCG信号は、より一般的には、異なる側で、且つ、心臓から離れた場所において測定できる。また、これら信号は、センサをベッド、背もたれ又は椅子等の被検者が接触する物体に配置して測定することもできる。
【0063】
本発明は、BCG信号等の運動/圧力信号は液体蓄積の結果として変化する特性を有するという洞察に基づいている。このことは、拍動する心臓及び移動する血液によって発生される力に起因する身体部分の動き、振動又は共振が液体の蓄積の結果として変化する故に発生する。
【0064】
言い換えると、通常、内部臓器は心臓の拍動の結果として特定の態様で振動するが、これは液体が蓄積されるために変化し、これら臓器の振動特性(例えば、減衰及び剛性)が変化し、このことは、身体の外部から測定されるBCG信号も変化させる。
【0065】
図1は、被検者12が立っている圧力マット10により測定されたECG信号とBCG信号との間の関係を示している。
【0066】
本発明は、内出血等の内部液体蓄積を測定するためにBCGタイプの情報を使用することに基づいている。身体の動きを検出し、これによりBCGタイプの信号を取得するために、任意の適切な方法を使用することができる。例としては、加速度計、ジャイロスコープ、力センサ及び圧力センサがある。例えば、重量計はロードセルを使用する。
【0067】
加速度計は、例えば呼吸センサ等の身体センサにおいて既に広く使用されている。圧力センサ又はロードセルは、被検者の下等の、被検者と接触して配置できるマットに組み込むことができる。カメラを使用してBCG信号を測定することも知られており、このようなシステムも使用できる。カメラは非接触的感知アプローチを提供する。モーションセンサを使用して、被検者と接触している物体の動きを監視することにより、非接触感知(センシング)を実施することもできる。このような物体は、吊り下げ式ベッド、可撓性脚上に配置されたベッド、又は可撓性背もたれ付きの座席であり得る。例えば、間にマットレスがある場合、直接接触する必要はない。したがって、より一般的には、その動きがBCGによって引き起こされる物体の動きを監視することが可能である。
【0068】
このような場合、当該センサ装置は被検者の身体上には位置されないが、たとえ感知が非接触であっても、身体の既知の領域から感知するためのものである。
したがって、本発明は、異なるタイプのセンサに適用可能である。
【0069】
図2は、被検者12の内出血等の液体蓄積を検出するための本発明によるシステムを示す。このシステムは、被検者の動きに関するセンサ信号を取得するためのセンサ装置20を有する。便宜上、この時点以降、該信号は単に心弾動記録信号と呼ばれる。センサ装置20は、例えば、身体の振動を測定するために加速度計、圧力センサ又はこれらの組み合わせを有する。
【0070】
プロセッサ22は、上記センサ装置の信号の分析を実行する。該プロセッサは、例えば機械学習又は深層学習アルゴリズムを使用して、時間にわたり生のセンサ装置の信号を単に分析することができる。しかしながら、本発明の根底にある概念をより明確に示すために、より識別可能で構造化された信号分析に基づく処理アプローチについて説明する。
【0071】
この例の場合、プロセッサ22は以下のものを備えている:
- 信号前処理のための第1の信号処理ユニット24。この処理は、例えば、当該信号成分のノイズ除去及び抽出を可能にするフィルタリング及び分解を含む;
- 当該心弾動記録信号の関心のある特徴を分離するための特徴抽出ユニット26;
- 該心弾動記録信号の関心特徴のパラメータを決定するための特徴分析ユニット28。この関心特徴は、特にエネルギ又は信号強度に関連する特徴である;
- 決定された上記パラメータの変化から内出血が起こったことを決定するための出力ユニット30。これは、内出血が発生したことを示すためのアラート32を生成するために使用され得る。
【0072】
前述したように、身体内の臓器は、心臓の拍動、大きな動脈(特に大動脈)内の血流による及び呼吸による振動力を受ける。これらの振動を捕捉するために、患者の身体の動きを測定することができる、該動きは、患者の動き、心拍数成分及び呼吸成分(即ち、振動力)から構成される。
【0073】
心臓の拍動及び胴体の動き(呼吸)は、身体を介して進む力を誘起する。身体内にある如何なる区画(臓器、組織、体液等)も、密度及びサイズ、並びに減衰及び剛性特性等の、当該区画の性質に応じて異なる反応をする。捕捉される振動信号の周波数領域を見ると、より低い周波数は被検者の動き及び患者の呼吸(≒0.4Hz)に由来し、心拍数は約1Hzであり、測定される心拍数より高い周波数成分は主に心臓の拍動によって生じる力による身体の振動である。
【0074】
当該技術思想は、内出血等の液体蓄積の結果としての(局部的)身体密度の変化を検出することに基づくものである。身体密度は、実際に:
- 膀胱内の尿の蓄積;
- 敗血症による血液漏出;
- 食物の摂取;
- 液体の摂取又は追加(例えば、投薬又は静脈内輸液);
- 内出血;
- 炎症;
等の種々の理由により変化し得る。
【0075】
身体密度の変化は、異なる時間枠、及び振動に対する異なる影響を有する。例えば、食物の摂取は大きく突然の変化を引き起こす。この突然の変化は、ベースラインを修正することにより、基本的には、低周波数成分を除去するためにハイパスフィルタ処理を実施することにより当該システムからフィルタ除外できる。
【0076】
静脈内点滴による液体の追加は、血流を介して体全体に再分配される緩やかなプロセスであり(したがって、液体の蓄積はない)、炎症は組織の局所的密度を変化させる (即ち、より高い灌流、腫れ)比較的ゆっくりとしたプロセスである。固形食品(即ち、水分含有量が少ない)の摂取は、変化が反対方向であるため、出血や又は液体の摂取と明確に区別できる。
【0077】
ここで、この特定の例で使用される異なる処理ステップを、より詳細に説明する。
[第一信号処理]
【0078】
第1の信号処理ユニット24は、5秒から60秒、例えば30秒等の予め定められた持続時間の分析ウィンドウを実施化する。この所定の持続時間は、複数の心周期をカバーする。該ウィンドウは、関心信号特性が測定されるのに十分なデータを収集する。
【0079】
これらのウィンドウは、分析期間全体、例えば、5分等の、少なくとも2分にわたって分析される。したがって、期間[t1 t2]内の1以上の加速度計信号等の生のセンサデータは、[t1 t1+30]、[t1+1 t1+31]等々の30秒の分析期間に分割される。全体の期間は、液体の蓄積レベルが変化するのに十分なものである。
【0080】
また、当該分析期間は、例えば50%オーバーラップするウィンドウ等のように、部分的にオーバーラップし得る。
[特徴抽出]
【0081】
特徴抽出ユニット26は、第1の信号プロセッサによってウィンドウ処理された信号の特徴を計算する。一例において、該計算は、元の信号を構成周波数成分に分解するステップを有する。これらの周波数成分を加算すると、元の信号になる。呼吸及び心拍の周波数は大幅に異なるため、周波数分解により、呼吸及び心拍のみに対応する周波数特性が、拍動する心臓の活動による振動に対応する他の特性(前述のとおり)と一緒に導き出される。
【0082】
周波数分解には、経験的モード分解(EMD)を使用できるが、代わりにウェーブレット変換及びフィルタバンク分析を使用することもできる。これら2つの手法に対する EMDの利点は、EMDがノンパラメトリックであることである。
【0083】
EMDを使用した結果としての分解信号は、固有モード関数(IMF)と呼ばれる。
【0084】
例示として、
図3は、時間の経過に伴う3軸加速度計の生の加速度計信号を示している。
【0085】
該生の信号は、EMDを適用する前に、該信号を自身の平均により除算すると共に1 を減算することにより、ゼロ平均を有するように正規化される。該EMD処理の出力は、
図4に示されたIMFである。
【0086】
これらのIMFは時間領域の信号であるが、異なる周波数帯域に分割されている。即ち、x軸は時間を秒単位で示している。
【0087】
IMFの数は、当該生信号に依存する。これらIMFは減少する周波数成分を有し、最初のIMF(
図4の上部)は高周波ノイズをモデル化し、最後のIMF(
図4の下部)は当該生信号のDCをモデル化している。
【0088】
IMFの計算には、短い時間枠(例えば、60秒)の処理が使用される。ウィンドウは時間的にシフトされる(秒の桁のシフト量であるが、ウィンドウの長さより短い)。例えば、10秒から60秒まで変化するウィンドウ長を使用して、同等の結果を得ることができる。最適なウィンドウ長は測定される周波数に依存し、より長いウィンドウは低い周波数に適し、より短いウィンドウは高い周波数に適している。
【0089】
図5は、
図4のIMFのフーリエ変換振幅を示している。
【0090】
これらのフーリエ変換振幅は、周波数領域信号である。即ち、x軸は周波数をHz で示している。
【0091】
図5からわかるように、最初の2つのIMFは高い周波数成分を含み、これらは、このアプリケーションのための関心成分である。3番目(この特定の例における)及びそれ以降の成分は心拍数を含む。
【0092】
当該IMFの周波数コンテンツは、高い周波数から低い周波数へと並べられる。言い換えると、最初のIMFは最高の周波数を含み、周波数はIMF番号が増加するにつれて減少する。心拍数は、例えば、3番目の成分に見られるが、これは信号の特性に依存する。
【0093】
呼吸数も測定できる。この例の場合、これは6番目の成分で観察される。心拍数より上の成分が対象なので、心拍数自体を使用して正しい特徴を抽出できる。
【0094】
前述したように、当該処理はカットオフ周波数の正確な選択にあまり敏感ではない。このことは、1.67Hzより高い、又は被検者の決定された心周波数を超える全ての成分を使用できることを意味する。ノイズの多い状況では、選択した周波数帯域に焦点を合わせ、これらの帯域の特徴を計算することが望ましい。
[特徴分析]
【0095】
特徴分析ユニット28は、エネルギ等の代表的な特徴を抽出するために、心拍数よりも高い周波数の分解信号を分析するために使用される。特に、信号の振幅に結び付けられるエネルギ特徴は、液体の蓄積に関連する。エネルギ及び/又はヒルベルト変換を、時間の経過に伴う振動の変化を測定及び調査するために使用できる。
【0096】
図4のIMFの各々に関して、正規化された時間領域信号のエネルギ成分が、「エネルギ」尺度又は「ヒルベルト」変換を適用することによって取得される。
【0097】
当該エネルギ尺度は、当該(正規化された)信号の二乗平均平方根エネルギである。当該信号は、例えば、エネルギを計算する前にゼロ平均を有するように正規化される。この場合(即ち、正規化後)、エネルギ尺度は当該信号の標準偏差に類似する。しかしながら、エネルギを計算する前に信号を正規化することは、厳格に必要というものではない。
【0098】
エネルギコンテンツに関連する代替的尺度は、選択されたIMF信号に適用されるヒルベルト変換である。
【0099】
ヒルベルト特徴の計算には、局部的包絡線検出のためにヒルベルト変換(HT)が使用される。HT特徴は、考慮中のウィンドウから取得した複素分析信号のモジュラスの平均値として定義される。該解析信号は、元の信号と該信号のヒルベルト変換とを有する複素信号の和として定義される。
【0100】
ヒルベルト変換は、基本的に、信号の包絡線の追跡を容易にする変換である。該包絡線は、振幅の変動、即ち信号のエネルギを表す。
【0101】
これらの特徴は、心拍数よりも高い周波数を持つ(心拍数自体に基づく、又は閾レベルに基づく)IMFについて計算される。
[出力ユニット]
【0102】
出力ユニット30は、上記特徴分析により特定された特徴に適合する傾向線の推定を実施する。身体内部の変化に起因する特徴の如何なる(徐々の)変化も検出するために、これらの特徴の移動平均がなされる。該傾向線の傾きに基づいて、アラートが生成される(例えば、当該傾きが負の場合、潜在的な内出血に対してアラートが生成される)。
【0103】
前述のように、当該特徴分析は安静時心拍数よりも高い周波数帯域に焦点を当て得る。実験的に、詳細は後述するが、これらの周波数帯域は、身体密度の局所的な変化に対してより敏感であり、したがって、より優れた区別を提供できることが示されている。正確な下限カットオフ周波数は、心拍数よりも低い周波数だけが含まれているわけではない限り、重要ではない。例えば1.67Hz等の心拍数より高い又は実際の心拍数より高い(固定下限閾値の場合)若しくは実際の心拍数に基づく下限閾値で帯域内の周波数に焦点を当てることが適切である。
【0104】
フィルタバンクを使用する等の周波数領域分析方法の場合、カットオフ周波数が設定される(例えば、1.67Hzから5Hzの範囲に)。正確な心拍数の測定値が利用できる場合、該心拍数を入力として使用して、より適切なカットオフ周波数を導き出すことができる。
【0105】
フィルタリングは必須ではない。代わりに、高い側の周波数が当該分析に含まれる必要があるだけである。しかしながら、例えば周波数分解を伴わない生信号処理の場合のように、高い側の周波数及び低い側の周波数の両方とも含まれる場合でも、当該検出は可能である。
【0106】
このように、当該信号を処理することが可能な多数のやり方が存在する。1つのオプションは心拍数よりも高い周波数のみを使用することであり、他のオプションは心拍数も含む全ての周波数を使用することである。
[周波数領域対時間領域]
【0107】
上記例は、
図4のIMF信号を導出するために時間領域分析に基づいている。しかしながら、当該分解は周波数領域で実行することもできる。
【0108】
周波数分解なしで時間領域分析も可能である。
【0109】
例えば、エネルギ特徴は、生信号を異なる周波数の成分に分解することなく、生信号から直接計算することができる。患者が静止している低ノイズ条件では、この単純な方法が適している。心拍信号を除外しなくても、観察される効果は存在する。心拍数信号を除外すると、状態の区別が一層明確になるが、必要ということではないであろう。
【0110】
当該時間領域方法は、例えば、以下のステップを有する:
分析のためのウィンドウ期間が定義される。例えば、20秒の移動平均ウィンドウを 1秒ごとの計算で使用できる(95%のウィンドウオーバーラップを与える)。これらのウィンドウは、5分等の分析期間全体にわたって分析される。
【0111】
加速度計の場合、該加速度計の1以上の軸を分析のために選択できる。複数の軸を選択した場合、これら軸のデータを加算して組み合わせることができる。
【0112】
エネルギ尺度(例えば、各データポイントの平方和の平方根)が計算されるか、又は当該信号のヒルベルト変換が使用され得る。当該信号のフィルタリング又は変換が、特徴の計算の前にオプションとして考えられ得る。
【0113】
上記例は、当該信号の異なる周波数コンテンツを持つ時間領域信号への分解、及び該分解された信号の1以上からの特徴の計算に基づいている。これらの特徴は、液体の蓄積又は液体の無蓄積を区別するために使用される。
【0114】
該分解ステップは必ずしも必要ではない。一部の被検者については、信号を周波数帯域に分解しなくても、状態の違いを観察できる。しかしながら、当該方法は、通常、分解により一層ロバストになる。
【0115】
したがって、好ましい実施形態では、第2のIMFが選択され、その信号から特徴が計算される。より適応的なアプローチは、分解が必要かどうかを最初に判断し、もし必要なら、何の周波数帯域が使用されるべきかを決定することである。言い換えれば、信号特性に応じて、特徴が信号全体から、又は(1以上の)分解信号の選択されたセットから計算される適応処理方法を使用することができる。
【0116】
周波数領域及び時間領域の両方の方法に関し、特定の加速度計の軸を選択し、これらの軸のみに関して特徴を計算することが望ましいであろう。これら軸の1以上を使用して、当該信号のノイズを減らすことができる。例えば、被検者の動き及び/又は外部振動を1つの軸から導出し、頭部-つま先方向を捕捉する軸に沿った信号を修正するために使用できる。他のオプションは、低周波数信号エネルギに対する高周波数信号エネルギの比率が最も高いチャネルを選択することである。
【0117】
拍動する心臓に起因する振動は主に身体に平行な方向(即ち、頭部からつま先への方向)であるから、同じ方向の軸が変化を検出するには一層適している。したがって、好ましい実施形態では、身体と整列した軸が選択され、その信号から抽出されたエネルギ特徴が使用される。
【0118】
しかしながら、場合によっては、全ての加速度計軸を使用する(即ち、それらを合計する)ことも可能である。
[実験結果]
【0119】
このBCGベースのアプローチ(特に、加速度計及び圧力センサに基づいた)を使用して身体内の液体蓄積を測定できることを示すために実験が行われた。
【0120】
該実験では、身体内の液体蓄積を模擬するために水の摂取量が使用された。この場合、液体の蓄積は胃及び小腸内であることは自明であり、したがって、当該センサ装置は胃及び小腸の下、例えば下腰部及び股関節部の周りに配置される。被検者が静止したまま(直立又は横たわった状態で)で約5分の測定時間が用いられた。
【0121】
図6は、圧力マット60、ECG電極62、呼吸測定バンド64及び3軸加速度計 66を備えた実験設定構成を示している。当該ワークフローにおいては、ベースラインが測定され、次いで、水(異なる量の)の摂取及び続く測定が行われた。該測定は立った姿勢及び横たわった姿勢の両方で行われた。
【0122】
先ず、加速度計の使用に基づく結果について説明する。これらは、被検者が仰向けである一層臨床的に適用可能な状況を提供する。しかしながら、体重計測定値を使用しても同様の結果が得られ得る。
【0123】
身体に平行な方向の加速度信号が使用された。
【0124】
図7は、当該信号から計算された2つの異なる特徴を示している。各特徴は、2つのベースライン測定値BL1及びBL2並びに2つの液体蓄積状態FL1及びFL2について示されている。これらは、反復測定1及び2に対する、横たわった姿勢のみにおける同一の被検者に関する信号である。
【0125】
該信号から、2つの異なるエネルギ尺度特徴が計算される。
【0126】
この例において、エネルギ(Energy)は、信号全体に対する、即ち、周波数分解無しでのエネルギ尺度である。
【0127】
ヒルベルト(Hilbert)は、信号全体のヒルベルト変換の計算に基づいた、信号エネルギの尺度を表す。
【0128】
上記エネルギ尺度及びヒルベルト変換は、共に、ベースライン(BL)と対応する液体蓄積(FL)状態との間を適切に区別する。言い換えると、時間にわたり監視される信号の変動は、身体内の液体に依存して大きく変化する。
【0129】
少量(300ml)の蓄積された体液でさえも観察できる該大きな変化により、信号エネルギ又は信号強度の変化が監視され、液体蓄積(この例では胃及び小腸内の水であるが、内出血の検出の可能性を検証するために使用される)に関するアラートを生成するために使用される。
【0130】
図8は、生信号の短時間ベースの分析から計算される種々の特徴を使用した信号特性(特にエネルギ尺度)の変化を示している。
【0131】
上側のプロットは、5分間の合計測定時間における処理ウィンドウ(60秒)毎の平均エネルギ特徴を示している。真ん中のプロットは、4つのテスト条件(BL1、BL2、FL1、FL2)に関するエネルギ特徴の平均(ライン)及び標準偏差(エラーバー)を示し、下側のプロットは該4つのテスト条件に関するエネルギ特徴の箱ひげ図を示している。液体蓄積の結果としてのエネルギの減少が、これらの結果から明瞭に見られ、定量化できる。
【0132】
予想通り、心臓を振動源として使用する場合、加速度計の位置が信号に影響を与える。
【0133】
図9は、3つの異なる加速度センサの位置、即ち、acc-0(左肩)、acc-1(左太もも)及びacc-2(胃)に関するエネルギの変化を示している。一般的に、心臓とつま先との間の加速度計位置は、BCG信号の起点及び伝播に基づいて特に適切な位置である。この特定のケースでは、液体が胃の中であるため、心臓より下の位置が最良の結果をもたらす。もちろん、心臓より上の体液蓄積の場合、これは当てはまらない。
【0134】
左の列は或る被検者に関するものであり、右の列は他の被検体に関するものである。各被検者について、BL1及びBL2は反復されたベースライン測定値であり、FL1及びFL2は液体蓄積状態に関して反復された測定値である。これらは全て、横たわっている被検者に関するものである。
【0135】
図9は、測定が異なる時間に行われた故に、信号のロバストさを示している。加速度計の較正(即ち、ベクトル解析)及び位置決めが信号品質に影響を与えることに注意されたい。
【0136】
被検者が立った姿勢である間に圧力センサを使用する場合の感度を測定する実験も行われた。同じ被検者に対して同時に実行された測定は、圧力センサ信号の信号特性が加速度計信号の信号特性に匹敵することを示している。したがって、同様の感度尺度が、圧力信号に対するのと同様に加速度計信号にも適用可能である。
【0137】
図10は、体重計のロードセルにより得られる力測定に基づく信号解析の結果を示している。
【0138】
重量計内のロードセルセンサが、300mlの水により液体蓄積が増加された場合のBCG信号を測定するために使用された。BL1及びBL2は、被検者に対する2つの反復されたベースライン測定値を表す。FL1及びFL2は、300mlの水の最初の摂取後の被検者の反復測定である。FL3及びFL4は、2番目の300mlの水の摂取後の第2組の2つの反復測定である。FL5及びFL6は、3番目の300mlの水の摂取後の第3組の2つの反復測定である。
図10からわかるように、重量(左上の画像)は水の摂取とともに増加し、IMF2のエネルギ(右上のプロット)は減少傾向を示している。
【0139】
左下のプロットはIMF2信号の周波数(x60、即ち1分あたりのサイクル数) を示し、右下のプロットは推定された心拍数を示している。
【0140】
2つの測定の結果は、IMF2信号のエネルギの同様の減少を示している。限られた量の繰り返しでも、300mlの体液蓄積はベースラインとは大きく異なる。
【0141】
このように、IMF2信号のエネルギは傾向線を作成するために使用でき、その場合、該傾向は内出血があるという警告を提供するために使用される。
【0142】
図11の上側の画像は、実線として、
図10に示された被検者に関するIMF2エネルギの傾向線を摂取量(ボリューム)の関数として示している。
【0143】
点線は他の被検者に関するデータを示している(基礎となるデータは示されていない)。ベースライン(ボリューム=0)に正規化すると、2つのデータソースは、
図11の下側の画像(上側の画像の両方のプロットを示しているが、ベースライン補正により重なっている)に示されるように摂取量との良好な相関関係を示す。
【0144】
該傾向線の勾配は、例えば該勾配が特定の閾値を超える(即ち、特定の負の閾値よりも小さい)場合、アラートのトリガとして使用できる。
【0145】
閾値を超えるベースラインと測定条件との間の振幅差も、トリガとして使用できる。実際に、このことはベースライン測定値使用して正規化することで達成できる。x%(2.5%等)を超える偏差を、アラートをトリガするために使用できる。
【0146】
適切なトリガは、検出方法に依存する。一般的な特徴ベースの検出の場合、変化のパターン又は傾向の分析を使用できる。
【0147】
特定の特徴が身体内の液体蓄積と相関される特定の特徴ベースの方法については、閾値ベースの方法を使用することができる。言い換えると、この特徴が特定の値を示したら、アラートが生成され得る。
【0148】
機械学習アプローチ(深層学習も含む)が適用されるデータに基づくモデルの場合、分類器の出力における確率が観察され、アラートをトリガするか否かを決定するために使用される。
【0149】
時系列ベースのアプローチの場合、信号特性の傾向を探すことが望ましいであろう。
【0150】
図12は、被検者における液体蓄積を検出するための方法を示しており、以下を有する:
- ステップ50において、被検者の心臓に対して身体領域の反対側の位置から得られる、該被検者の心臓の拍動によって誘起される力、運動又は圧力信号を取得するステップ;及び
- ステップ52において、時間にわたる前記信号の変化を分析し、これにより液体蓄積が生じたことを決定するステップ。
【0151】
上記特定の例の場合、ステップ52は次のステップに分解できる:
- ステップ53において特徴抽出を実行し、心弾動記録信号の関心特徴を分離するステップ;
- ステップ54において、複数の心周期の期間にわたる前記心弾動記録信号の関心特徴のパラメータを決定するステップ;及び
- ステップ56において、該決定されたパラメータの変化から液体蓄積が起こったことを決定するステップ。
【0152】
次いで、ステップ58においてアラートが供給される。
【0153】
特定の周波数範囲を分析する場合に、このBCGベースのアプローチを使用して身体内の液体蓄積を一層良い結果で測定できることを示すために、更なる実験が実行された。BCGの前後関係において、人体の基本共振周波数は3~7Hzの範囲にあることが知られている。
【0154】
当該設定構成は、BCG信号を取得するための異なるセンサの使用を目立たなく組み合わせた。これらは以下のものを含むものであった:
- 3つの電気的に絶縁された3軸加速度計;
- 正方形のプレートの4つの角部に配置された4つの歪ゲージタイプの圧力センサからなる特注の体重計であって、4つの測定値の合計によって参加者の瞬間的な総体重が得られる体重計;及び
- ベッド上に配置され、参加者の胴体に対応して位置される電気機械式フィルム(EMFi)センサマット(志願者の解剖学的構造に依存して、大凡、肩から腰まで延在する)。
【0155】
当該実験プロトコルは、わずかに異なるプロトコルを持つ2つの別個の検査ラウンドからなり、各参加者に対して、最大で7日間隔てられた異なる日に実行された。参加者は、検査前の2時間は飲食を控え、検査開始直前に膀胱を空にするように求められた。両検査ラウンドにおいて、プロトコルの最初の部分は同じであり、2つの異なる監視姿勢(即ち、センサを備えたベッドに横たわった姿勢及び体重計上に立った姿勢)でベースライン測定を繰り返し行うことから成るものであった。各記録の持続時間は3分であり、立った状態と横たわった状態の計測は合計で4つの計測の間で入れ換えられた。該検査の最初の部分が完了した後、参加者は最大10分の期間内で500mLの静水を飲むように求められた。
【0156】
検査ラウンド1の間において、加速度計1は下腹部の左側(臍の高さから約3cm下)に配置され;加速度計2は右大腿部の外側(膝頭の約2cm上)に配置され;加速度計3は右ふくらはぎの後ろ(足首から約2cm上)に配置された。検査ラウンド2の間において、加速度計1は前のラウンドと同じ場所に維持され;加速度計2は、胸上部の左側(鎖骨から約1cm下)に配置され;加速度計3は腰の右側(加速度計1とほぼ同じ高さ)に配置された。
【0157】
該実験は、同じ信号に関して異なる特徴を分析することを含み、各特徴は、分析される周波数帯域又は信号の分析方法を変更することによって他の特徴とは異なるものであった。全ての特徴が、最初に、重なりのない10秒のスライディングウィンドウに対して計算された。調査された特徴の完全なリストは、異なる周波数帯域及び経験的モード分解ベースの特徴を含む。
【0158】
特徴1(F1):標準偏差が前処理なしで完全な信号から取得される。
【0159】
特徴2(F2):呼吸帯域を除く。標準偏差を計算する前に、当該信号は0.6Hzにカットオフを持つ6次ハイパスバタワースフィルタでフィルタされる。これにより、BCG信号の呼吸成分がフィルタリングされる。
【0160】
特徴3(F3):呼吸及び心拍数帯域を除く。この特徴は更に選択的であり、BCG信号の一層高い周波数に焦点を当てる。標準偏差が計算される前に、2Hzにカットオフを持つ6次ハイパスバタワースが当該信号をフィルタ処理するために使用される。
【0161】
特徴4(F4):「共振帯域」。この帯域は、身体の固有周波数に密に合致する、従って応答振動を強化する共振状態に入るBCG信号の周波数を含むと考えられる。この特徴のための通過帯域は、2.5Hz及び7.5Hzにカットオフを有すると定義されている。使用されるフィルタは、ここでも、6次バターワースである。
【0162】
特徴5(F5):経験的モード分解(EMD)でノイズ除去された標準偏差。
【0163】
特徴6~9(F6~F9):IMF2、3、4及び5の各々の標準偏差。これらの特徴はEMDに基づいており、標準偏差を選択的に計算する。
【0164】
特徴10~18(F10~F18):中央絶対偏差(MAD)ベースの特徴セット。これらの9つの特徴は、特徴1から9と同じ前処理手順を含むが、標準偏差の代わりに MADを使用してエネルギを計算する。MADは、データの中央値からの絶対偏差の中央値として定義される。これは標準偏差に似た尺度であるが、標準偏差よりも外れ値に対してよりロバストである。
【0165】
全ての特徴は、利用可能な12の信号(8つの加速度計チャネル、EMFi、及び各加速度計の軸の合計によって得られる追加の3つの信号)のそれぞれから計算された。
【0166】
図13は、12の信号の平均から算出されたt検定(仮説検定の一種)による、ベースライン測定から摂取後測定までの各特徴に関する減少を示している。最も有望な特徴は、特徴4(即ち、共振ベースの特徴)及び対応するMADベースの特徴13のようである。
【0167】
したがって、当該システムの一構成例は、センサ装置からの信号を、例えば3Hzから7.5Hz、例えば2.5Hzから7.0Hz、例えば3Hzから7Hz等の、2Hzから7.5Hzの間に入る予め定義された人の共振周波数範囲のみを含むようにフィルタリングするステップ(13)を含むことができる。
【0168】
主な用途は内出血であるが、他の用途分野も予想される。それらの用途の1つは、出血とは関係のない液体の蓄積/再分配である。例えば、心不全患者の体液の蓄積、又は妊娠中の体液の再分布である。ここでも、立位での測定が可能である。立位での測定では、下限値が5Hz、上限値が11Hz、12Hz及び/又は13Hzの特徴帯域が好ましいであろう。これは横になった位置からのわずかなずれとなる。このずれは、身体の組織/臓器/区域の圧縮に基づいて変化する身体の機械的反応によるものである。身体は、圧縮時に線形ではない「バネ」と「ダンパ」によってリンクされた一連の要素として見ることができる。
【0169】
最適な帯域を決定するために、特徴4の開始周波数及び終了周波数の周辺で周波数スイープを実行し、最も優れた性能の周波数帯域を最終的な特徴として選択することができる。種々の体位及び参加者に適用可能なロバストな特徴を持たせるために、性能を低下させることなく、可能な限り広い周波数帯域を選択できる。
【0170】
人間のBCG及び集中質量機械モデルの組み合わせに基づいて、個人化された共振周波数を体重、体型(一部は男女差にも組み込まれる)及び体長に基づいて、計算できる。このモデルは、共振周波数に関する一般化された関係を、体質量及び体質量指標の関数として示す。性別及び年齢も上記モデルに組み込むことができる。
【0171】
姿勢に対する共振周波数の適応化も実行できる。(このような適応化は、代表的な実験データを収集して学習することにより、又は既存の(体位が異なる)モデルを使用し、これらモデルを実験データでシミュレーションし、該シミュレーション結果を分析することにより可能である。)
【0172】
異なる体位の人は僅かに異なる共振周波数を有することが知られている。精度及び検出感度を高めるために、加速度計を使用して被検者の姿勢(例えば、仰向け、立っている、座っている等)を推定し、その姿勢情報を使用して、個人化された共振帯域を決定することができる。このような適応化により、当該検出アルゴリズムを一層固有のものに、且つ、特定の条件に的を絞ったものにすることができ、このことは一層高い精度及び感度を可能にする。
【0173】
上述したように、当該システムはプロセッサを利用してデータ処理を実行する。該プロセッサは、必要なさまざまな機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアにより種々の態様で実施化できる。該プロセッサは、通常、必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムできる1以上のマイクロプロセッサを使用する。該プロセッサは、いくつかの機能を実行する専用のハードウェア、並びに他の機能を実行する1以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路の組み合わせとして実施化することができる。
【0174】
本開示の様々な実施形態で使用できる回路の例には、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0175】
様々な実装において、当該プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ等の1以上の記憶媒体と関連され得る。該記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されたときに必要な機能を実行する1以上のプログラムで符号化することができる。さまざまな記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されるか、又は格納されている1以上のプログラムをプロセッサにロードできるように移動可能であってもよい。
【0176】
上記では時系列ベースの処理方法について説明したが、機械学習を使用できることも言及される。機械学習分類器は、液体の蓄積が検出されたか否かに関する確率スコアを継続的に生成する。深層学習ベースの方法も使用できる。
【0177】
開示された実施形態の変形は、図面、開示、及び添付の請求項の精査から、請求項に記載の発明を実施する当業者によって理解され、実行され得る。請求項において、「有する」という言葉は他の要素及びステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載されているいくつかの項目の機能を果たすことができる。相互に異なる従属請求項に特定の手段が記載されているという事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体で格納/配布することができるが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形態で配布することもできる。請求項における参照記号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。