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特許7500575マルチコアファイバ伝送システムにおける適応的復号及びコアスクランブリングのための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ伝送システムにおける適応的復号及びコアスクランブリングのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/00 20060101AFI20240610BHJP
   H04B 10/69 20130101ALI20240610BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20240610BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240610BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H04J14/00
H04B10/69
H04B10/079 150
H04L27/26 400
G02B6/02 461
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021538912
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073610
(87)【国際公開番号】W WO2020057981
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】18306214.0
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510229496
【氏名又は名称】アンスティテュ・ミーヌ・テレコム
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レカヤ,ガーヤ
(72)【発明者】
【氏名】アブーセイフ,アクラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャウエン,イーブ
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0195052(US,A1)
【文献】米国特許第09948364(US,B2)
【文献】特表2014-531149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0314410(US,A1)
【文献】特表2017-502587(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179604(WO,A1)
【文献】S. Chandrasekhar et al.,WDM/SDM transmission of 10 × 128-Gb/s PDM-QPSK over 2688-km 7-core fiber with a per-fiber net aggregate spectral-efficiency distance product of 40,320 kmb/s/Hz,2011 37th European Conference and Exhibition on Optical Communication Date of Conference,IEEE,2011年09月18日,pages 1-3
【文献】Akram Abouseif et al.,Core Mode Scramblers for ML-Detection Based Multi-Core Fibers Transmission,2017 Asia Communications and Photonics Conference (ACP),IEEE,2017年11月10日,pages 1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/00
H04B 10/69
H04B 10/079
H04L 27/26
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のコアによる、光ファイバ伝送チャネル(13)内のマルチコアファイバに沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルのベクトルの推定を決定するためのデコーダ(151)であって、前記デコーダ(151)は、光受信器(15)内に実装され、前記光信号は、時空間符号化方式を使用して符号化され、且つ/又は予め定められたスクランブリング関数に従い、前記光ファイバ伝送チャネル(13)内に配置された少なくとも1つのスクランブリング装置(133)によってスクランブルされ、前記デコーダ(151)は、適応的に、
時間的条件に応答して、前記光信号からの1つ又は複数のチャネル品質指示子を決定すること;
サービスメトリックの目標品質に従い、且つ前記1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて復号アルゴリズムを決定すること;
サービスメトリックの前記目標品質及び前記1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて、前記予め定められたスクランブリング関数及び/又は前記時空間符号化方式を更新すること
を行うように構成された処理ユニット(1511)を含み、
前記デコーダは、前記光信号に前記復号アルゴリズムを適用することにより、情報シンボルのベクトルの推定を決定するように構成されたシンボル推定ユニット(1515)をさらに含む、デコーダ(151)。
【請求項2】
サービスメトリックの前記目標品質は、目標シンボル誤り率及び目標伝送速度を含む群において選択される、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項3】
前記チャネル品質指示子は、信号対雑音比、前記光ファイバ伝送チャネルを表すチャネル状態行列の条件数、チャネル故障停止確率、前記チャネル状態行列の直交性欠陥因子及びコア依存損失値を含む群において選択される、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項4】
前記復号アルゴリズムは、ゼロフォーシング復号アルゴリズム、ゼロフォーシング判定帰還型復号アルゴリズム、最小平均二乗誤差復号アルゴリズム及びパラメータ化スフェリカルバウンドスタックデコーダを含む群において選択される、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項5】
前記復号アルゴリズムは、格子縮小アルゴリズム及び/又は最小平均二乗誤差一般化判断帰還型等化器フィルタリングを適用することを含む前処理段を含む、請求項4に記載のデコーダ。
【請求項6】
サービスメトリックの品質の値の組、チャネル品質指示子の値の間隔の組、ランダム及び確定論的スクランブリング関数の組並びに復号アルゴリズムの組を含む参照テーブルを格納するように構成されたストレージユニット(1513)を含み、各スクランブリング関数は、チャネル品質指示子の値の1つ又は複数の間隔に関連付けられ、チャネル品質指示子の値の各間隔は、1つ又は複数の復号アルゴリズムに関連付けられ、前記1つ又は複数の復号アルゴリズムのそれぞれは、サービスメトリックの品質の値に関連付けられ、前記処理ユニット(1511)は、前記1つ又は複数のチャネル品質指示子が値を取るチャネル品質指示子の値の間隔に関連付けられた前記復号アルゴリズムの組の中から、サービスメトリックの前記目標品質以上のサービスメトリックの品質の値に関連付けられる前記復号アルゴリズムを選択することにより、前記予め定められたスクランブリング関数のための前記復号アルゴリズムを決定するように構成される、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項7】
前記処理ユニット(1511)は、前記参照テーブル内に格納された前記スクランブリング関数の組の中から、前記サービスメトリックの品質の値の組に関するサービスメトリックの前記目標品質に基づいて、且つ前記チャネル品質指示子の値の間隔の組に関する前記1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて、スクランブリング関数を選択することにより、前記予め定められたスクランブリング関数を更新するように構成される、請求項6に記載のデコーダ。
【請求項8】
時間的条件に応答してサービスメトリックの品質を測定するように構成されたサービスメトリックの品質更新ユニット(1517)を含み、前記ストレージユニット(1513)は、サービスメトリックの前記測定された品質から、前記参照テーブル内に格納された前記サービスメトリックの品質の値の組を更新するように構成される、請求項6に記載のデコーダ。
【請求項9】
処理ユニット(1511)は、サービスメトリックの測定された品質に関するサービスメトリックの前記目標品質の値に基づいて、サービスメトリックの目標品質を更新するように構成され、サービスメトリックの前記目標品質の前記更新は、
サービスメトリックの前記目標品質がサービスメトリックの前記測定された品質より低い場合、サービスメトリックの前記目標品質を増加させること、及び
サービスメトリックの前記目標品質がサービスメトリックの前記測定された品質より高い場合、サービスメトリックの前記目標品質を減少させること
を含む、請求項8に記載のデコーダ。
【請求項10】
前記マルチコアファイバに含まれる各コアは、コアタイプ及びコア損失値を含む群において選択される1つ又は複数のパラメータに関連付けられ、スクランブリング関数は、前記2つ以上のコアに関連付けられた前記コアパラメータの1つ又は複数に基づいて、前記2つ以上のコアの順序を変えるように適用される、請求項1に記載のデコーダ。
【請求項11】
前記2つ以上のコアは、前記2つ以上のコアに関連付けられた前記コア損失値の所与の順序に従って順序付けられ、前記スクランブリング関数は、前記2つ以上のコアに関連付けられた前記コア損失値の前記順序に依存する、前記2つ以上のコアの2×2置換に対応する、請求項10に記載のデコーダ。
【請求項12】
前記マルチコアファイバは、不均一であり、且つ異なるコアタイプに関連付けられた少なくとも2つのコアを含み、前記スクランブリング関数は、少なくとも第1のコアと第2のコアとの置換による前記2つ以上のコアの2×2置換に対応し、前記第1のコア及び前記第2のコアは、異なるコアタイプに関連付けられる、請求項10又は11に記載のデコーダ。
【請求項13】
2つ以上のコアによる、光ファイバ伝送チャネル(13)内のマルチコアファイバに沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルのベクトルの推定を決定する復号方法であって、前記光信号は、時空間符号化方式を使用して符号化され、且つ/又は予め定められたスクランブリング関数に従い、前記光ファイバ伝送チャネル(13)内に配置された少なくとも1つのスクランブリング装置(133)によってスクランブルされ、前記復号方法は、適応的に、
時間的条件に応答して、前記光信号から1つ又は複数のチャネル品質指示子を決定すること;
サービスメトリックの目標品質に従い、且つ前記1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて、復号アルゴリズムを決定すること;
サービスメトリックの前記目標品質及び前記1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて、前記予め定められたスクランブリング関数及び/又は前記時空間符号化方式を更新すること
を含み、前記復号方法は、前記光信号に前記復号アルゴリズムを適用することにより、情報シンボルのベクトルの前記推定を決定することをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光通信に関し、特にコアスクランブリングマルチコアファイバ伝送システムにおける光信号を復号するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なモバイル端末及びデータサービスの世界的拡散は、継続的に増加しており、より大きいネットワーク容量のトラフィック需要の高まりを生じている。光ファイバ伝送は、グローバル電気通信インフラストラクチャにおけるより高い伝送データレートのこのような継続的要求を満たすキー技術として出現している。
【0003】
光ファイバとは、光スペクトルの電磁波を案内する光学導波路を表す。光は、ファイバ内で内部全反射の連続に追従して伝播する。光は、データを搬送し、ワイヤベース又は無線通信システムより高いバンド幅で長距離の伝送を可能にする。
【0004】
従来のシングルモードシングルコアファイバの伝送容量は、多様な先端技術及び信号処理技術を使用することにより、過去数十年で増加してきた。最新のシングルモードシングルコア伝送システムは、最大100Tb/sの伝送容量を実現している。しかし、従来のシングルモードシングルコアファイバのこのような容量は、その基本的限界に近づいており、したがってより高いネットワーク容量の高まる要求を最早満足し得ない。
【0005】
ファイバ容量をさらに増加させるとともに、シングルモードシングルコアファイバの容量飽和の問題に対処するために、空間分割多重化(SDM)が“T.Morioka,“New generation optical infrastructure technologies:“EXAT initiative”towards 2020 and beyond,”presented at the OptoElectronic Communication Conference,Hong Kong,2009,Paper FT4”において提案された。SDM伝送システムでは、ファイバ内の空間は、独立したデータストリームが多重化され且つ同時に送信され得る独立空間チャネルの組の生成のための多重化次元として使用される。
【0006】
SDMシステムは、高速通信のための容量の増加を可能にする。空間分割多重化は、従来のシングルモードシングルコアファイバが直面する将来の容量限界に対処し、且つ将来の5G通信ネットワーク、モノのインターネット装置及びマシンー・マシン通信ネットワークなどの様々なネットワークから発生する様々なトラフィックに対処することができる持続可能な光ネットワークを提供するためのキー技術であると期待される。
【0007】
空間分割多重化をファイバ内に導入することは、2つの手法を使用して行われ得る。フューモードファイバ(FMF)又はマルチモードファイバ(MMF)と呼ばれる第1の手法は、ファイバ内の複数の様々なモードを使用することを含む。マルチコアファイバ(MCF)と呼ばれる第2の手法は、複数の別々のコアを単一ファイバ内に取り込むことを含む。マルチコアファイバの各コアは、単一モード又は2つ以上のモードを含み得る。
【0008】
マルチモードファイバにより、異なる空間伝播モードによる光の伝播が可能となる。マルチモードファイバのコアは、複数の空間モードの伝播を可能にするように拡大される。光がコア内を通過する際になされる反射の回数が増え、所与の時間スロットでより多くのデータを伝播させる能力が増大する。
【0009】
マルチモードファイバは、シングルモードファイバより速い伝送速度を提供する。しかしながら、マルチモードファイバは、主として光学コンポーネント(例えば、ファイバ、増幅器、空間マルチモードプレクサ)の不完全さ、空間モード間のクロストーク効果及びモード依存損失(MDL)として知られるノンユニタリクロストーク効果による幾つかの障害により影響を受ける。
【0010】
マルチコアファイバは、1つのファイバ内に複数の同じ又は異なるコアを内蔵している。マルチコアファイバは、非結合型及び結合型MCFに分類できる。
【0011】
非結合型MCFでは、各コアは、コア間クロストークを長距離伝送応のためのために十分に小さく保ち、各コアからの信号を別々に検出できるように配置されなければならない(すなわち、受信器において、多入力多出力等化は、不要である)。コア配置の違いによって何種類かの非結合マルチコアファイバが設計されている。これらの設計は、「均一MCF」及び複数の同じコアを内蔵する「トレンチ付加型均一MCF」並びに何種類かの複数のコアを内蔵する「不均一MCF」を含む。
【0012】
結合型MCFでは、幾つかのコアは、それらが相互に強く且つ/又は弱く結合するように設置される。1つの空間モード及び複数の空間モードに対応する結合型MCFは、高出力ファイバレーザ応用で使用できる。
【0013】
マルチコアファイバは、コア依存損失(CDL)を誘発するミスアラインメント損失及びクロストーク効果による幾つかの障害によって影響を受ける。CDLは、マルチモードファイバに影響を与えるMDLと同様の障害効果である。
【0014】
ミスアラインメント損失は、スライス及びコネクタ部における光ファイバの不完全さによって生じる。3種類のミスアラインメント損失が存在し、これには、長さ方向変位損失、横方向変位損失及び角度変位損失が含まれる。
【0015】
クロストーク効果は、1つのクラッド内に複数のコアが存在することによるものであり、これは、隣接コア間のクロストークを発生させる。クロストークは、コア間距離が短くなると増大し、光信号の品質及びマルチコアファイバの内部に組み込まれるコアの数の点で容量に対する主な限定を表す。
【0016】
クロストーク効果を減少させるための光学的解決策は、光ファイバの製造中に適用できる。
【0017】
第1の手法は、コア間距離を増大させることを含む。この手法では、クロストーク効果を削減できるが、これは、クラッドの直径によってファイバの内部のコアの数を限定し、その結果、コア密度及び容量が低下する。
【0018】
第2の手法は、トレンチ付加型均一マルチコアファイバの使用によるトレンチ付加に基づく。トレンチ付加は、各コアを低屈折率のトレンチ層で取り巻くことによって結合係数を低くする。トレンチ付加型ファイバ設計のクロストークは、コア間距離に依存しない。
【0019】
第3の手法は、不均一MCFを用いるものであり、隣接コア間に固有屈折率差が導入されて、クロストーク効果を軽減できる。
【0020】
さらに、“A.Abouseif,G.Rekaya.Ben-Othman,and Y.Jaouen,Core Mode Scramblers for ML-detection based Multi-Core Fibers Transmission,in Asia Communications and Photonics Conference,OSA Technical Digest,2017”で開示されているランダムコアスクランブリング方式は、不均一トレンチ付加型MCFにおけるCDLを緩和し、システム性能を高めるために最近提案されている。ランダムコアスクランブリングは、誤りの確率の点で性能を改善できることが実証されているが、ランダムスクランブリングには、多数のランダムスクランブラを取り付ける必要があり、それによって伝送システムの実装の複雑さ及びコストが増大する。
【0021】
信号処理の観点から、光伝送システムにおける信号符号化に関する既存の取り組みは、MIMOシステム全体を考慮しており、光信号を復号するための光受信器における最大尤度(ML)復号の使用に基づく。ML復号は、復号誤り確率の観点で最適性能を提供する。しかし、ML復号の高計算複雑性が現実伝送システム内へのML復号の実装を妨げている。
【0022】
既存のスクランブリング解決策は、マルチコアファイバ内のクロストークの低減を可能にする。しかし、これらの解決策は、CDL影響の完全な緩和を可能にしない。さらに、コアスクランブリングが使用される光ファイバベース伝送チャネル上で送信される光信号のML復号は、受信器側における高計算複雑性を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【文献】T.Morioka,“New generation optical infrastructure technologies:“EXAT initiative”towards 2020 and beyond,”presented at the OptoElectronic Communication Conference,Hong Kong,2009,Paper FT4
【文献】A.Abouseif,G.R.Ben-Othman,and Y.Jaouen,Core Mode Scramblers for ML-detection based Multi-Core Fibers Transmission,in Asia Communications and Photonics Conference,OSA Technical Digest,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、低複雑性復号を必要とするとともにCDL影響の完全な緩和を可能にする一方、マルチコアファイバベースSDMシステム上で送信される光信号の復号を可能にする改善された復号技術の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これら及び他の問題に対処するために、2つ以上のコアによる、光ファイバ伝送チャネル内のマルチコアファイバに沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルのベクトルの推定を判断するためのデコーダが提供される。デコーダは、光受信器内に実装される。光信号は、時空間符号化方式を使用して符号化され、且つ/又は所定のスクランブリング関数に従い、光ファイバ伝送チャネル内に配置された少なくとも1つのスクランブリング装置によってスクランブルされる。デコーダは、適応的に、
- 時間的条件に応答して、光信号からの1つ又は複数のチャネル品質指示子を判断すること;
- サービスメトリックの目標品質に従い、且つ1つ又は複数のチャネル品質指示子に基づいて復号アルゴリズムを判断すること;
- サービスメトリックの目標品質及び1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して、前記所定のスクランブリング関数及び/又は時空間符号化方式を更新すること
を行うように構成された処理ユニットを含む。
【0026】
デコーダは、光信号に復号アルゴリズムを適用することにより、情報シンボルのベクトルの推定を判断するように構成されたシンボル推定ユニットをさらに含む。
【0027】
幾つかの実施形態によると、サービスメトリックの目標品質は、目標シンボル誤り率及び目標伝送速度を含む群において選択され得る。
【0028】
幾つかの実施形態によると、チャネル品質指示子は、信号対雑音比、前記光ファイバ伝送チャネルを表すチャネル状態行列の条件数、チャネル故障停止確率、チャネル状態行列の直交性欠陥因子及びコア依存損失値含む群において選択され得る。
【0029】
幾つかの実施形態によると、復号アルゴリズムは、ゼロフォーシング復号アルゴリズム、ゼロフォーシング判定帰還型復号アルゴリズム、最小平均二乗誤差復号アルゴリズム及びパラメータ化スフェリカルバウンドスタックデコーダを含む群において選択され得る。
【0030】
幾つかの実施形態によると、復号アルゴリズムは、格子縮小アルゴリズム及び/又は最小平均二乗誤差一般化判断帰還型等化器フィルタリングを適用することを含む前処理段を含み得る。
【0031】
幾つかの実施形態によると、デコーダは、サービスメトリックの品質の値の組、チャネル品質指示子の値の間隔の組、ランダム及び確定論的スクランブリング関数の組並びに復号アルゴリズムの組を含む参照テーブルを格納するように構成されたストレージユニットを含み得る。各スクランブリング関数は、チャネル品質指示子の値の1つ又は複数の間隔に関連付けられ得る。チャネル品質指示子の値の各間隔は、1つ又は複数の復号アルゴリズムに関連付けられ得る。1つ又は複数の復号アルゴリズムのそれぞれは、サービスメトリックの品質の値に関連付けられ得る。このような実施形態では、処理ユニットは、1つ又は複数のチャネル品質指示子が値を取るチャネル品質指示子の値の間隔に関連付けられた復号アルゴリズムの組の中から、サービスメトリックの目標品質以上のサービスメトリックの品質の値に関連付けられる復号アルゴリズムを選択することにより、所定のスクランブリング関数のための復号アルゴリズムを判断するように構成され得る。
【0032】
幾つかの実施形態によると、処理ユニットは、参照テーブル内に格納されたスクランブリング関数の組の中から、サービスメトリックの品質の値の組に関するサービスメトリックの目標品質に依存して、且つチャネル品質指示子の値の間隔の組に関する1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して、スクランブリング関数を選択することにより、所定のスクランブリング関数を更新するように構成され得る。
【0033】
幾つかの実施形態によると、デコーダは、時間的条件に応答してサービスメトリックの品質を測定するように構成されたサービスメトリックの品質更新ユニットを含み得、ストレージユニットは、サービスメトリックの測定された品質から、参照テーブル内に格納されたサービスメトリックの品質の値の組を更新するように構成される。
【0034】
幾つかの実施形態によると、処理ユニットは、サービスメトリック測定されたの品質に関するサービスメトリックの目標品質の値に依存して、サービスメトリックの目標品質を更新するように構成され得、サービスメトリックの目標品質の更新は、
- サービスメトリックの目標品質がサービスメトリックの測定された品質より低い場合、サービスメトリックの目標品質を増加させること、及び
- サービスメトリックの目標品質がサービスメトリックの測定された品質より高い場合、サービスメトリックの目標品質を減少させること
を含む。
【0035】
幾つかの実施形態によると、マルチコアファイバに含まれる各コアは、コアタイプ及びコア損失値を含む群において選択される1つ又は複数のパラメータに関連付けられ得、スクランブリング関数は、2つ以上のコアに関連付けられたコアパラメータの1つ又は複数に依存して、2つ以上のコアの順序を変えるように適用される。
【0036】
幾つかの実施形態によると、2つ以上のコアは、2つ以上のコアに関連付けられたコア損失値の所与の順序に従って順序付けられ得、スクランブリング関数は、2つ以上のコアに関連付けられたコア損失値の順序に依存する、2つ以上のコアの2×2置換に対応する。
【0037】
幾つかの実施形態によると、マルチコアファイバは、不均一であり、且つ異なるコアタイプに関連付けられた少なくとも2つのコアを含み得る。このような実施形態では、スクランブリング関数は、少なくとも第1のコアと第2のコアとの置換による2つ以上のコアの2×2置換に対応し得、第1のコア及び第2のコアは、異なるコアタイプに関連付けられる。
【0038】
2つ以上のコアによる、光ファイバ伝送チャネル内のマルチコアファイバに沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルのベクトルの推定を判断する復号方法も提供される。光信号は、時空間符号化方式を使用して符号化され、及び/又は所定のスクランブリング関数に従い、光ファイバ伝送チャネル内に配置された少なくとも1つのスクランブリング装置によってスクランブルされる。復号方法は、適応的に、
- 時間的条件に応答して、光信号から1つ又は複数のチャネル品質指示子を判断すること;
- サービスメトリックの目標品質に従い、且つ1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して、復号アルゴリズムを判断すること;
- サービスメトリックの前記目標品質及び1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して、所定のスクランブリング関数及び/又は時空間符号化方式を更新すること
を含む。
【0039】
復号方法は、光信号に復号アルゴリズムを適用することにより、情報シンボルのベクトルの推定を判断することをさらに含む。
【0040】
有利には、本発明の実施形態は、最大尤度復号を適用することにより取得される最適性能に近づく復号性能を実現する一方、マルチコアファイバベース伝送システムに影響を与えるCDL影響の完全な緩和を可能にする光受信器内に実装される低複雑性コアスクランブリング技術、低複雑性符号化方式及び復号方式を提供する。
【0041】
有利には、本発明の実施形態は、光受信器内に実装される低複雑性復号アルゴリズムの効率的な適応的選択と、伝送チャネルの品質を考慮して目標サービス品質を達成することを可能にする低複雑性コアスクランブリング技術及び/又は時空間符号化技術の適応的選択とを提供する。
【0042】
本発明の他の利点は、図面及び詳細な説明をよく参照することで当業者に明らかとなるであろう。
【0043】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本発明の各種の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】光通信システムへの本発明の例示的な応用の概略図である。
図2】例示的なマルチコアファイバの断面図を示す。
図3】幾つかの実施形態による、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア均一マルチコアファイバ及び中心コアを含む2次元グリッド状に配置された19のコアを含む19コア均一ファイバを有するマルチコアファイバの断面図を示す。
図4】マルチコアファイバが12コア均一トレンチ付加型マルチコアファイバである幾つかの実施形態によるマルチコアファイバの断面図である。
図5】マルチコアファイバが、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア不均一マルチコアファイバである幾つかの実施形態によるマルチコアファイバの断面図である。
図6】実施形態による、7つのコアを含む7コア不均一ファイバと、3つの集合のコアを含み、異なる集合の各々のコアが異なるタイプである19コア不均一ファイバとを有するマルチコアファイバの断面図を示す。
図7】幾つかの実施形態による、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア不均一トレンチ付加型マルチコアファイバ及び7コア不均一トレンチ付加型を有するマルチコアファイバの断面図を示す。
図8】本発明の幾つかの実施形態による光送信器の構造を示すブロック図である。
図9】本発明の幾つかの実施形態による光受信器の構造を示すブロック図である。
図10】スネイルスクランブリング方式が考慮される幾つかの実施形態によるマルチコアファイバの断面図を示す。
図11】回転スクランブリング方式が考慮される幾つかの実施形態によるマルチコアファイバの断面図を示す。
図12】スネークスクランブリング方式が考慮される幾つかの実施形態によるマルチコアファイバの断面図を示す。
図13】スネイルスクランブリング技術及びゼロフォーシング復号が7コア不均一ファイバベース伝送システム内に使用される幾つかの実施形態において取得された信号対雑音比に応じたビット誤り率(BER)性能を表す図を示す。
図14】スネイルスクランブリング技術及びゼロフォーシング復号が12コア不均一ファイバベース伝送システム内に使用される幾つかの実施形態において取得された信号対雑音比に応じたビット誤り率(BER)性能を表す図を示す。
図15】幾つかの実施形態によるマルチコアファイバ伝送チャネル上で送信される光信号の適応的復号及びスクランブリングのための方法を描写するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態は、低複雑性スクランブリング装置(ランダム又は確定論的)を実装するマルチコア光ファイバ伝送システムを提供する。本発明の実施形態は、マルチコアファイバに影響を与えるクロストーク及びミスアラインメント損失の低減を可能にする方法をさらに提供する。準ML復号性能を達成する一方、サービス品質要件/仕様に従い、且つ伝送チャネルの品質を考慮して復号アルゴリズムの適応的選択を可能にする低複雑性復号装置及び方法も提供される。本発明の実施形態は、サービス仕様の目標品質に従い、且つ伝送チャネル品質に依存したコアスクランブリング及び/又は時空間符号化の適応的選択のためにスクランブリング装置内に実装される、コアスクランブリング関数の適応的選択/更新をさらに提供する。
【0046】
本発明の様々な実施形態による装置及び方法は、幅広い種類の用途に適用される光ファイバ伝送システム内に実装され得る。例示的用途は、限定しないが、光ファイバ通信(例えば、データセンタ伝送ケーブル、チップ間通信)、航空宇宙及び航空電子工学、データストレージ、自動車産業、撮像、輸送、感知(例えば、3D形状感知、石油探索用途における油井穴感知)、次世代光増幅器、監視(例えば、パイプライン監視、構造的健康監視)及びフォトニクスを含む。
【0047】
例示的な通信用途は、デスクトップコンピュータ、端末、アクセス、メトロ及び全国規模の光ネットワークを含む。光ファイバは、光及びしたがって情報/データを短距離(1メートル未満)又は長距離(例えば、メトロポリタンネットワーク、ワイドエリアネットワーク、大洋横断リンク上の通信では数百又は数千キロメートル)にわたり伝送するために使用され得る。このような用途には、音声(例えば、電話通信)、データ(例えば、ファイバトゥザホームとして知られる家庭及びオフィスへのデータ供給)、画像若しくはビデオ(例えば、インターネットトラフィックの転送)又はネットワークの接続(例えば、スイッチ若しくはルータの接続及び高速ローカルエリアネットワークにおけるデータセンタ接続性)の転送が関わり得る。
【0048】
航空宇宙及び航空電子工学業界の分野における本発明の例示的な実装形態では、光ファイバ系製品は、軍事及び/又は民生用途で使用され得る。光ファイバ技術及び製品は、このような用途では、過酷な環境及び条件下での厳しい試験及び認証に関する要求事項を満たすように設計される。
【0049】
データストレージ応用における本発明の例示的な実装形態では、光ファイバは、ネットワーク内及び/又はストレージシステムの一部としての複数の装置間のリンクとしてデータストレージ機器内で使用され得る。光ファイバ接続性は、長距離であっても非常に高いバンド幅を提供する。
【0050】
自動車業界への本発明の他の例示的な応用では、光ファイバ技術は、例えば、通信並びに安全及び制御装置及びシステムのための検出において使用され得る。
【0051】
イメージング用途(例えば、遠隔医療)への本発明のまた別の例示的応用において、光ファイバの光伝送特性は、標的又は対象エリアの画像を分析及び/又は解釈するためにイメージビューエンドに転送するために使用され得る。
【0052】
本発明は、運輸システムでも使用され得、その場合、インテリジェントトラフィックライト、自動料金所及び可変情報板を備えるスマートハイウェイは、光ファイバに基づくテレメトリシステムを使用し得る。
【0053】
本発明は、検出用途にさらに使用され得、この場合、光ファイバセンサは、温度、変位、振動、圧力、加速度、回転及び化学種の濃度等の何れかの数量を検出するために使用される。光ファイバセンサの例示的な用途は、高電圧及び高出力マシンにおける又は遠隔モニタ(例えば、飛行機の翼、風力タービン、橋、パイプラインのモニタ)のための建物のマイクロ波、温度及び歪の分布における検出、石油探査応用におけるダウンホール検出等を含む。
【0054】
光工学への本発明の他の応用では、光ファイバは、光ファイバ装置内のコンポーネント、例えば干渉計及びファイバレーザを接続するために使用され得る。このような用途では、光ファイバは、電気ワイヤが電子機器で果たすものと同様の役割を果たす。
【0055】
特定の実施形態の以下の説明は、単に例示を目的として、通信応用に関して行われる。しかしながら、当業者であれば、本発明の各種の実施形態が、異なる用途のための他の種類のシステムにも応用され得ることが容易にわかるであろう。
【0056】
図1は、光ファイバ伝送に基づく光伝送システム100(「光通信システム」とも呼ばれる)における本発明の例示的実装形態を示す。光伝送システム100は、少なくとも1つの光送信器装置11(以下では「光送信器」とも呼ばれる)を含み、これは、入力されたデータシーケンスを光信号に符号化し、光信号を光学的に少なくとも1つの光受信器装置15(以下では「光受信器」とも呼ばれる)へと、光をある距離にわたり伝送するように構成された光ファイバ伝送チャネル13(以下では「光ファイバリンク」とも呼ばれる)を通じて伝送するように構成される。
【0057】
光通信システム100は、システムを動作的に制御するためのコンピュータ及び/又はソフトウェアを含み得る。
【0058】
光ファイバ伝送チャネル13は、複数のファイバセクション131(「ファイバスパン」又は「ファイバスライス」とも呼ばれる)のコンカンチネーションを含むマルチコアファイバを含む。ファイバセクション131は、アラインメントの状態又はミスアラインメントの状態であり得る。
【0059】
マルチコアファイバは、円筒形の非線形光学導波路であり、2つ以上のコア、2つ以上のコアを取り巻くクラッド及びコーティングを含む。各コアは、屈折率を有する。光送信器11により送信される光信号は、多重化され、コアの屈折率とクラッドの屈折率との間の差により、内部全反射を通じてマルチコアファイバの各コア内を案内される。
【0060】
マルチコアファイバが非結合ファイバである幾つかの実施形態において、マルチコアファイバの各コアは、別々の導波路として機能し得、それにより、光信号は、コアを通じて個別に伝播すると考えることができる。
【0061】
マルチコアファイバが結合型ファイバである幾つかの実施形態において、結合は、2つのコア間の距離が非常に小さく、異なるコアに沿って伝播する光信号が重複しない場合、コア間に存在し得る。
【0062】
光ファイバは、典型的には長距離伝送のためにガラス(例えば、シリカ、クオーツガラス、フッ化ガラス)で製造され得る。短距離伝送の場合、光ファイバは、プラスチック光ファイバであり得る。
【0063】
マルチコアファイバは、幾何学パラメータ及び光学パラメータにより特徴付けられ得る。幾何学パラメータは、クラッド径、コア間距離、コア外面-クラッド外面間距離を含み得る。光学パラメータは、波長、マルチコアファイバの異なるコア間のクロストークを表すクロストーク係数及び各コアとクラッドとの間の屈折率差を含み得る。
【0064】
幾つかの実施形態では、光ファイバ通信システム100は、以下を含む群において選択される領域に対応する波長領域で動作し得る:
- 近距離伝送に好適な800~900nmの範囲の波長の窓;
- 例えば、Fiber To The Frontage用途に使用される約1.3μmの波長の窓;及び
- シリカファイバの損失がこの波長領域において最も低いため、例えば長距離伝送においてより使用される約1.5μmの波長の窓(最低減衰窓)。
【0065】
図2は、6コアファイバの断面図を示し、Dcladは、クラッド径を表し、dc-cは、コア間距離を表し、dc-Cladは、コア外面-クラッド外面間距離を表す。
【0066】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバ内のコアは、ファイバ軸の周囲にリング状に、例えば六角形の辺上に配置され得る。他の実施形態において、コアは、ある2次元グリッド上に配置され得る。
【0067】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、同一のタイプの2つ以上のコアを含む均一マルチコアファイバであり得る。
【0068】
図3は、2つの例示的な均一マルチコアファイバの2つの断面図を示し、第1の12コアファイバは、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された同一のタイプの12のコアを含み、第2の19コアファイバは、六角形の辺上に配置された18のコア及び中央のコアを含む。
【0069】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、均一トレンチ付加型マルチコアファイバであり得、各コアは、低屈折率トレンチ層により囲まれている。
【0070】
図4は、同一のタイプの12のコアを含む例示的なトレンチ付加型均一マルチコアファイバの断面図を示す。
【0071】
他の実施形態において、マルチコアファイバは、複数のコアを含み、その少なくとも2つのコアは、異なるタイプの不均一マルチコアファイバであり得る。
【0072】
図5は、12のコアを含み、その2i+1番(i=0,...,5)のコアが同一であり、2i+2番(i=0,...,5)のコアが同一であり、2i+1番のコアが2i+2番(i=0,...,5)のコアタイプと異なるコアタイプである例示的な不均一マルチコアファイバの断面図である。このような不均一マルチコアファイバの各コアは、2つの隣接コアを有し、各コアは、その隣接コアのコアタイプと異なるコアタイプを有する。
【0073】
図6は、2つの例示的な7コアファイバ及び19コア不均一ファイバの2つの断面図を示す。7コアファイバは、六角形の辺上の1~6番の6つのコアと、7番の中央のコアとを含む。この7コアファイバは、3種類の異なるコアタイプを含み、中央のコアは、六角形の辺上のコアのタイプと異なるコアタイプを有し、六角形の辺上に配置された各コアは、隣接コアのコアタイプと異なるコアタイプを有する。19コアファイバは、3種類の異なるコアタイプを含み、中央のコアは、六角形の辺上のコアのタイプと異なるコアタイプを有する。
【0074】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、トレンチ付加型不均一マルチコアファイバであり得る。
【0075】
図7は、2つの例示的な12コア及び7コアトレンチ付加型不均一マルチコアファイバの断面図を示す。
【0076】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバの各コアは、1つの空間伝播モードを含むシングルモードであり得る。
【0077】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバは、2つ以上の空間伝播モードを含む少なくとも1つのマルチモードコアを含み得る。
【0078】
幾つかの実施形態では、ファイバ内の各コアは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられ得、コアパラメータは、コアタイプ及びコア損失値、コア間クロストーク(例えば、コアとその隣コアとの間のクロストーク)の観点でコアにより経験される損失を定量化するコア値及びミスアラインメント損失を含む群において選択される。
【0079】
光ファイバ伝送チャネル13は、光学パワーを再増幅し、ファイバ減衰を補償するためにファイバに挿入された1つ又は複数の増幅器132をさらに含み得、光信号を周期的に増幅する必要のある長距離にわたって十分な信号パワーを保持できるように光信号を再生成する必要がない。
【0080】
増幅器132は、ファイバスライス131の各ペア間に挿入され得る。特に、光ファイバ伝送チャネルの端に挿入された増幅器132は、受信器15での信号検出前に信号増幅を行う。
【0081】
各増幅器132は、マルチコアファイバ内の複数のコアに対応する光信号を同時に増幅するように構成され得る。
【0082】
幾つかの実施形態において、増幅器132は、1つのコアファイバ増幅器の複製を含み得る。
【0083】
他の実施形態において、増幅器132は、光マルチコア増幅器であり得る。例示的な光増幅器は、マルチコアエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)、例えばコア励起型マルチコアEDFA及びクラッド励起型EDFA増幅器を含む。コア励起型及びクラッド励起型増幅器は、1つ又は複数の励起ダイオードを使用し得る。特にEDFA増幅器では、コアごとの励起ダイオードが使用され得る。
【0084】
幾つかの実施形態において、光信号増幅は、非線形誘導ラマン散乱効果を利用して分散式に行われ得る。このような実施形態において、ファイバは、伝送リンク及び増幅媒質の両方として使用される。
【0085】
他の実施形態において、信号増幅は、規則的に配置された光増幅器及び誘導ラマン散乱効果の共同使用によって実現され得る。
【0086】
さらに別の実施形態において、信号増幅は、光/電気変換(図1では図示せず)を通じて電気ドメインで行われ得る。このような実施形態では、光ファイバ伝送チャネル13は、各増幅ステージにおいて、
- 光信号を電気ドメインに再び変換するフォトダイオード、
- 変換された電気信号を増幅する電気増幅器、及び
- 増幅された電気信号に対応する光信号を発生するレーザダイオード
を含み得る。
【0087】
幾つかの実施形態(図1では図示せず)によれば、光伝送チャネル13は、
- 波長分散の効果に対抗する分散補償装置であって、例えば受信器15における光信号の検出前に波長分散を取り消すか又は分散を補償するように構成された分散補償装置、
- 波長分割多重化システムで実装される光分岐挿入装置等の光スイッチ及びマルチプレクサ、
- 電子及び光再生器等、光信号を再生するための1つ又は複数の装置
の1つ又は複数をさらに含み得る。
【0088】
コアスクランブリングが光学装置を用いて光ドメインで行われる幾つかの実施形態では、光マルチプレクサがコアスクランブラとして使用され得る。
【0089】
図8は、幾つかの実施形態による光送信器11のコンポーネントを示す。光送信器11は、入力データシーケンスを、光伝送チャネル13を通じて送信されることになる光信号に変換するように構成され得る。したがって、光送信器11は、以下を含み得る:
- 長さkの(すなわちk個のシンボルを含む)入力データシーケンスを、少なくとも1つの順方向誤り訂正符号(FEC)(「誤り補正符号」とも呼ばれる)を適用することにより、長さn>kのコードワードベクトルの形態の符号化シーケンスに符号化するように構成された順方向誤り訂正符号(FEC)エンコーダ81(「誤り補正符号エンコーダ81」とも呼ばれる)、
- 符号化シーケンスを混合して、変調前にバースト誤りに対する保護層を符号化シンボルに追加するように構成されたインタリーバ83、
- 変調スキームをインタリーブされた符号化シーケンスに(又は送信器11がインタリーバを含まない実施形態ではコードワードベクトルに)適用することにより、変調シンボルベクトルsの形態の変調シンボルの組を特定するように構成された変調器85。2個のシンボル又は状態を有する2-QAM又は2-PSK等、異なる変調スキームが実装され得る。変調ベクトルsは、各シンボルがqビットのK個の複素数シンボルs,s,...,sを含む複素数ベクトルであり得る。2-QAM等の変調フォーマットが使用される場合、2個のシンボル又は状態は、整数フィールド
【数1】
の部分集合を表す。対応するコンステレーションは、異なる状態又はシンボルを表す2個の点で構成される。加えて、二乗変調の場合、情報シンボルの実数部及び虚数部は、同じ有限アルファベットA=[-(q-1),(q-1)]に属する。
- 時空間符号を適用することにより、時間伝送間隔(TTI)中に光伝送チャネル13を通じて送信されることになるデータシンボルを搬送するコードワード行列を特定するように構成された時空間エンコーダ87。時空間エンコーダ25は、Q個の変調シンボルs,s,...,sの受信シーケンス(又はブロック)の各々を次元N×Tのコードワード行列Xに変換するように構成され得る。コードワード行列は、N行及びT列に配置された複素数を含み、ここで、Nは、光信号の伝播に使用される伝播コアの数を示し、Tは、時空間符号の時間的長さを示し、時間チャネルの使用回数に対応する。コードワード行列の値の各々は、したがって、使用時間及び信号伝播に使用される伝播コアに対応する。
【0090】
時空間エンコーダ87は、線形時空間ブロック符号(STBC)を用いてコードワード行列を生成し得る。このような符号の符号化速度は、チャネル使用1回あたり
【数2】
の複素シンボルに等しく、Kは、この場合、次元Kのベクトルs=[s,s,...,sを構成する符号化複素数シンボルの数である。フルレート符号が使用される場合、時空間エンコーダ87は、K=NTの複素数シンボルを符号化する。STBCの例は、完全符号である。完全符号は、複素情報シンボルの数
【数3】
を符号化することによってフル符号化速度を提供し、非消失行列特性を満足させる。
【0091】
幾つかの李実施形態において、時空間エンコーダ87は、異なる伝播コアで受信した複素数情報シンボルを多重化することによる、V-BLASTスキームと呼ばれる空間多重化スキームを使用し得、時間次元での符号化を行わない。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、入力データシーケンスは、kビットを含むバイナリシーケンスであり得る。FECエンコーダ81は、このような実施形態において、少なくとも1つのバイナリFECコードを適用することにより、入力バイナリシーケンスを、nビットを含むバイナリコードワードベクトルに符号化するように構成され得る。
【0093】
他の実施形態では、入力データシーケンスは、ガロア体の順序を表すガロア体GF(q)(q>2)の値を取るシンボルを含み得る。このような実施形態において、FECエンコーダ22は、入力データシーケンスを、n個のシンボルを含むコードワードベクトルに符号化するように構成され得、コードワードベクトルに含まれる各シンボルは、ガロア体GF(q)内の数値を取る。この場合の符号化プロセスは、GF(q)(q>2)で構成された非バイナリFEC符号を用いて実行され得る。
【0094】
符号化動作を行うことにより、FECエンコーダ81は、入力バイナリシーケンスに冗長ビット(一般に冗長シンボル)を追加し、受信器は、一般的な伝送誤りを検出及び/又は訂正できる。FEC符号の使用は、伝送誤りに対する追加の保護及びイミュニティを提供し、符号化されない伝送(すなわちFEC符号化を行わない変調データの伝送)に関する性能の大幅な改善が可能となる。
【0095】
誤り確率についての追加の改善及び削減は、2つ以上のFEC符号のコンカンチネーションを通じて実現され得る。符号のコンカンチネーションは、直列、並列又はマルチレベルアーキテクチャに従い得る。FECエンコーダ81は、したがって、2つ以上のFEC符号を実装するように構成され得る。
【0096】
光送信器11は、多数の直交サブキャリアを含む各光キャリア内でマルチキャリア変調技術を実装することにより、マルチキャリアシンボルを生成するように構成された複数のマルチキャリア変調器88をさらに含み得る。さらに、マルチキャリア変調器は、ファイバの分散及びマルチコアファイバ内の各種のコア間のクロストークから生じるシンボル間干渉に対するよりよい抵抗を提供するために実装され得る。例示的なマルチキャリア変調フォーマットは、直交周波数分割多重化(OFDM)及びフィルタバンクマルチキャリア(FBMC)を含む。
【0097】
マルチキャリア変調器88により伝達される周波数ドメイン信号は、その後、受信した周波数ドメイン信号を光ドメインに変換するように構成されたデジタル光学フロントエンド89により処理され得る。デジタル光学フロントエンド88は、所与の波長の多数のレーザ並びにマルチコアファイバのコア中の使用される偏波状態及び空間伝播モードに関連付けられた複数の光変調器(図8では図示せず)を用いて変換を実行し得る。レーザは、波長分割多重化(WDM)技術を用いて同じ又は異なる波長のレーザビームを発生するように構成され得る。異なるレーザビームは、その後、光変調器によってOFDMシンボルの異なる出力(又はシングルキャリア変調を使用する実施形態ではコードワード行列の異なる値)を用いて変調され、ファイバの異なる偏波状態に従って偏波され得る。例示的な変調器は、マッハツェンダ変調器を含む。位相及び/又は振幅変調が使用され得る。加えて、異なる光信号を変調するために各種の光変調器によって使用される変調スキームは、同様であるか又は異なり得る。
【0098】
光変調器及びレーザの数は、使用される偏波状態の数、マルチコアファイバの各コアで使用される伝播モードの数及びファイバ内のコアの数に依存する。
【0099】
デジタル光学フロントエンド88は、生成された光信号をマルチコアファイバの各コアに注入し、各コア中で利用可能な伝播モードに従って伝播させるように構成されたFAN-IN装置(図8では図示せず)をさらに含み得る。FAN-IN装置の出力端とマルチコア光伝送チャネル13の入力端とを接続するために、光コネクタが使用され得る。
【0100】
上述の実施形態の何れかにより生成される光信号は、ファイバに沿って伝搬し、その後、光伝送チャネル13の反対の端に到達し得、そこで光受信器15によって処理される。
【0101】
図9は、幾つかの実施形態による光受信器15のブロック図である。光受信器15は、光送信器11により伝送チャネル13を通じて伝送された光信号を受信し、当初の入力データシーケンスの推定を生成するように構成される。したがって、光受信器15は、以下を含み得る:
- 例えば、1つ又は複数のフォトダイオードを用いて光信号を検出し、これらをデジタル信号に変換するように構成された光学デジタルフロントエンド91。光学デジタルフロントエンド91は、FAN-OUT装置(図9では図示せず)を含み得る。
- サイクリックプレフィックスを除去し、時空間デコーダ93に送達されることになる決定変数の組を生成するように構成された複数のマルチキャリア復調器92。
- 復号アルゴリズムを適用することにより、決定変数の組から変調データシーケンスの推定を生成するように構成されたデコーダ93。
- デコーダ93により推定された変調データシーケンスの変調を実行することにより、バイナリシーケンスを生成するように構成された復調器94。
- 復調器94により送達されたバイナリシーケンス内のビット(一般にはシンボル)の順序を再配置して、ビットの当初の順序を回復するように構成されたデインタリーバ95。
- デインタリーバ95により送達される再整列されたバイナリシーケンスに軟又は硬判定FECデコーダを適用することにより、光送信器11により処理される入力データシーケンスの推定を送達するように構成されたFECデコーダ96(「誤り訂正符号デコーダ96」とも呼ばれる)。例示的な軟判定FECデコーダは、ビタビアルゴリズムを含む。
【0102】
シングルキャリア変調を使用する実施形態において、複数のマルチキャリア変調器92は、1つの変調器に置き換えられ得る。同様に、マルチキャリア復調器92は、1つの復調器に置き換えられ得る。
【0103】
FECエンコーダ81が2つ以上の順方向誤り訂正符号のコンカンチネーションを実装する幾つかの実施形態において、対応する構造は、FECデコーダ96により実装され得る。例えば、内符号及び外符号の直列コンカンチネーションに基づく実施形態では、FECデコーダ96は、内符号デコーダ、デインタリーバ及び外符号デコーダ(図9では図示せず)を含み得る。並列アーキテクチャの2つの符号を含む実施形態では、FECデコーダ96は、デマルチプレクサ、デインタリーバ及びジョイントデコーダ(図9では図示せず)を含み得る。
【0104】
本発明の実施形態は、光ファイバ伝送チャネル100内のマルチコアファイバスパン131に沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルsのベクトルの推定
【数4】
を判断するために光受信器15内に実装される低複雑性デコーダ93を提供し、光信号は、時空間符号(「時空間符号化方式」とも呼ばれる)を使用して符号化され、且つ/又はπで表記される所与/所定のスクランブリング関数に従って1つ又は複数のスクランブリング装置133によってスクランブルされる。具体的には、本発明の実施形態は、デコーダ93において実装される復号アルゴリズムが低計算複雑性を必要とする一方、規定サービス品質要件を達成することを可能にする方法において、低複雑性デコーダ93の適応的実装と、サービス品質要件/仕様に従い、且つ光ファイバ伝送チャネル13の品質に依存する、光送信器11において実装される所定のスクランブリング関数π及び/又は時空間符号化方式の適応的更新とを提供する。光ファイバ伝送チャネル13は、Hで表記される複素数チャネル状態行列により表される。
【0105】
サービス品質要件/仕様は、光ファイバ伝送システム100が使用される用途に依存して設定され得る。サービス品質要件は、システムマネージャ/コントローラにより事前に決められた/定義された(QoS)により指定されたサービスメトリックの目標品質により定義され得る。
【0106】
本発明の幾つかの実施形態を理解しやすくするために、以下で使用する幾つかの注釈及び/又は定義を以下に記す:
- Lは、光ファイバ伝送チャネル13におけるマルチコアファイバの全長を指す。
- Kは、マルチコアファイバ内にコンカンチネートされるファイバセクション(「ファイバスライス」又は「ファイバスパン」とも呼ばれる)の数を指す。
- dは、相関長さを指す。
- Rは、曲げ半径を指す。
- N≧2は、マルチコアファイバ内のコア総数を指し、コアは、コアがコア-nとして指定され、nが1~Nの値を取るように番号が付けられる(すなわち、各コアは、1~Nで変化する1つのコア番号に関連付けられる)。
- Rは、コア-nの半径を指す。
- 各コアcore-n(n=1,...,N)は、{T;λn,p}で表されるコアパラメータに関連付けられ、Tは、コア-nのコアタイプを指し、λn,pは、コア-nに関連付けられ、コアスクランブリングの結果であるコア損失値を指す。
- XTn,mは、コア-nとコア-m(n≠m)との間のクロストーク(「コア間クロストーク」とも呼ばれる)を定量化するクロストーク係数(「コア間クロストーク係数」とも呼ばれる)を指す。
- kn,mは、コア-nとコア-m(n≠m)との間の結合(「コア間結合」とも呼ばれる)を定量化する結合係数(「コア間結合」とも呼ばれる)を指す。
- Δβnmは、コア-nとコア-m(n≠m)との間の伝播定数差を表す。
- πは、コアスクランブリングに使用されるスクランブリング関数を示す。
【0107】
図1を参照すると、光受信器15内に実装されたデコーダ151が提供され、デコーダ151は、適応的に、
- 時間的条件に応答して、受信された光信号から、CQIで表記される1つ又は複数のチャネル品質指示子を判断すること;
- サービスメトリックの目標品質(QoS)及び判断された1つ又は複数のチャネル品質指示子CQIに依存して、Dで表記される復号アルゴリズムを判断すること;
- サービスメトリックの目標品質(QoS)及び判断された1つ又は複数のチャネル品質指示子CQIに依存して、光送信器11において使用される所定のスクランブリング関数π及び/又は時空間符号化方式を更新すること
を行うように構成された処理ユニット1511を含む。これは、光ファイバ伝送チャネル13内に配置されたスクランブリング装置133内に当初実装された所定のスクランブリング関数π及び/又は光送信器11において使用される時空間符号が、伝送チャネルの品質を考慮して規定サービス品質要件を達成するために伝送システム100の操作可能中に更新され得ることを意味する。デコーダ151は、更新されたスクランブリング関数を、直接リンクを介して又はスクランブリング構成装置17を介してスクランブリング装置133に伝達するように、且つ更新された時空間符号を、フィードバックリンクを介して光送信器11に伝達するように構成され得る。
【0108】
スクランブリング構成装置17は、例えば、ファイバ特徴に依存して、所定のスクランブリング関数πを事前に判断するように構成され得る。
【0109】
デコーダ151は、光受信器15において受信される、Yで表記される光信号に復号アルゴリズムDを適用することにより、情報シンボルsのベクトルの推定
【数5】
を判断するように構成されたシンボル推定ユニット1515をさらに含む。
【0110】
幾つかの実施形態によると、時間的条件は、光ファイバ伝送チャネル13上の光信号の各送信/受信において、1つ又は複数のチャネル品質指示子の連続的計算又は例えば固定、周期的若しくはランダムであり得る、例えば所定時間間隔における1つ又は複数のチャネル品質指示子の定期的計算に対応し得る。
【0111】
幾つかの実施形態では、所定時間間隔は、伝送チャネルを表すチャネル状態行列の実現が変わらないままである時間により定義された伝送チャネルのコヒーレンス時間の関数であり得る。
【0112】
幾つかの実施形態によると、チャネル品質指示子は、チャネル行列の成分の平均推定に基づいて判断され得、したがって時空間符号化方式の更新が光送信器11において情報シンボルを符号化するために選択されることを可能にする。
【0113】
幾つかの実施形態によると、サービスメトリックの目標品質(QoS)は、SERで表記される目標シンボル誤り率及びRで表記される目標伝送速度を含む群において選択され得る。
【0114】
目標サービス品質が誤り確率の観点で測定される実施形態では、サービスメトリックの目標品質SERは、単位時間あたりのシンボル誤りの数に対応し得る。メトリックSERは、シンボル誤り率の期待値を指示するPe,sで表記されるシンボル誤り確率に関連付けられ得、次式により与えられる。
【数6】
式(1)において、s及び
【数7】
は、送信された推定されたシンボル(i=1,...,к)をそれぞれ表す。
【0115】
伝送速度は、どの程度速くデータが光ファイバ伝送チャネル13上で送信され得るかを指示する。伝送速度は、利用可能な帯域、送信された信号(すなわち符号方式及び変調方式)及び伝送チャネルに影響を与える雑音のレベルに依存する。目標伝送速度Rは、光送信器において、使用された符号化方式及び変調方式に従って事前に定義され得る。
【0116】
幾つかの実施形態によると、チャネル品質指示子CQIは、SNRで表記される信号対雑音比、光ファイバ伝送チャネル13の状態を表すチャネル状態行列Hの条件数(τ(H)で表記される)、Pout(R)で表記されるチャネル故障停止確率、チャネル状態行列Hの直交性欠陥因子及びCDLで表記されるコア依存損失値を含む群において選択され得る。
【0117】
信号対雑音比SNR(光受信器における)は、雑音電力に対する受信信号の電力の比として測定される。
【0118】
チャネル状態行列Hの条件数τ(H)∈[0,1]は、次式により与えられる。
【数8】
【0119】
式(2)において、σmin及びσmaxは、それぞれ行列Hの最小及び最大特異値に対応する。所与の行列の条件数は、その列ベクトルの直交性を指示する直交性測度を指定する。
【0120】
チャネル故障停止確率Pout(R)は、所与伝送速度R(ビット/使用チャネル)がチャネルの変動に起因して支援され得ない確率を指示する。チャネルの故障停止確率Pout(R)は、次のよう表現される。
out(R)=Pr(C(H)<R) (3)
【0121】
式(3)において、C(H)は、次式により表現される瞬間的チャネル容量を指定する。
【数9】
【0122】
チャネルの故障停止確率は、伝送チャネルの品質に従って元のシンボルを復号する能力を指示する。瞬間的チャネル容量が所与の伝送速度Rに関してC(H)<Rを満足すれば、チャネル品質が悪いことが指示される。その結果、光受信器は、元のシンボルを正しく復号できないことがあり得る。瞬間的容量がC(H)≧Rであれば、チャネルは、受信器側において元のシンボルの正しい再生を可能にする高品質のものであることが指示される。
【0123】
チャネル状態行列の直交性欠陥(δ(H)で表記される)は、チャネル状態行列の列ベクトルの直交性を測定し、
【数10】
として表現され、ここで、hは、チャネル状態行列Hのi番目列ベクトルを指定する。コア依存損失値は、マルチコアファイバベース光伝送チャネルに影響を与えるミスアラインメント損失及びクロストーク影響を測定する。ミスアラインメント損失は、スプライス及びコネクタ部分における光ファイバの不完全性に起因して上昇する。長さ方向変位損失、横方向変位損失及び角度変位損失を含む3種類のミスアラインメント損失が存在する。クロストーク影響は、隣接コア間のクロストークを生成する1つの被覆内の複数のコアの存在に起因して上昇する。
【0124】
幾つかの実施形態によると、復号アルゴリズムDは、ゼロフォーシング復号アルゴリズム、ゼロフォーシング判断帰還型(ZF-DFE)復号アルゴリズム、最小平均二乗誤差(MMSE)復号アルゴリズム及びパラメータ化スフェリカルバウンドスタックデコーダ(SBスタック)を含む群において選択され得る。
【0125】
ZF復号アルゴリズムは、BZFで表記され次式により与えられるZF前処理行列による受信信号Yの予測によりなされる符号間干渉除去を介して、独立に情報ストリームの復号を可能にする線形復号アルゴリズムである。
ZF=(HH)-1 (5)
【0126】
式(5)において、Hは、チャネル状態行列Hの転置共役行列を指定する。ZF復号アルゴリズムは、マルチコアファイバの様々なコアに対応するすべてのチャネル内のクロストークを除去することを可能にする。ZF復号アルゴリズムは、チャネル反転操作に対応するとともに、フルレート時空間符号に関して、
【数11】
により与えられる一定の計算複雑性を必要とし、ここで、N=TxNである。
【0127】
MMSE復号アルゴリズムも、BZFで表記され、次式により与えられるMMSE前処理行列による受信信号の予測に基づく線形復号アルゴリズムである。
【数12】
【0128】
式(6)において、ρは、デシベルで評価される信号対雑音比値を指定する。
【0129】
ZF-DFE復号アルゴリズムは、チャネル行列HのQR分解に基づく情報シンボルの再帰的推定を使用する非線形復号方式である。したがって、シンボル推定ユニット1515は、H=QRのようにチャネル行列HのQR分解を行うように構成され得、ここで、Qは、ユニタリー行列であり、Rは、上三角行列である。チャネル行列のQR分解を所与として、受信信号Yは、
【数13】
により与えられる補助信号
【数14】
により均等に与えられ得る。次に、補助信号の上三角行列構造は、
【数15】
及び再帰的推定シンボルs
【数16】
(i=к-1,...,1))により与えられるシンボルsкにより始まる情報シンボルの推定を判断するために利用される。ここで、
【数17】
は、フロア演算子を指定する。ZF、MMSE及びZF-DFE復号アルゴリズムに関連して与えられる情報シンボルの表現は、整数値に対応することに留意すべきである。
【0130】
幾つかの実施形態によると、復号アルゴリズムDは、格子縮小アルゴリズム及び/又は最小平均二乗誤差一般化判断帰還型フィルタリングを適用することからなる前処理段を含み得る。格子縮小アルゴリズムの例は、“A.K.Lenstra,H.W.Lenstra,and L.Lovasz,Factoring Polynomials with Rational Coefficients,Mathematic Annals,Volume 261,pages 515-534,1982”において開示されるLLL縮小である。
【0131】
幾つかの実施形態によると、デコーダ151は、サービスメトリックの品質の値の組、チャネル品質指示子の値の間隔の組、スクランブリング関数の組及び復号アルゴリズムの組を含む参照テーブルを格納するように構成されたストレージユニット1513をさらに含み得る。参照テーブルにおいて、π(F=1,...,Ftot)で表記される各スクランブリング関数(Ftot≧2は、参照テーブル内に格納された様々なスクランブリング関数の総数を指定する)は、
【数18】
により指定されたチャネル品質指示子の1つ又は複数の値の間隔に関連付けられ得、ここで、Iは、スクランブリング関数πに関連付けられたチャネル品質指示子の値の間隔の総数を指定する。チャネル品質指示子Inti,F(i=1,...,I、F=1,...,Ftot)の各値の間隔は、Dd,i,F(d=1,...,dtot,i,F)で表記される1つ又は複数の復号アルゴリズムに関連付けられ得、ここで、dtot,i,Fは、スクランブリング関数πがスクランブリング装置133において適用される場合と、チャネル品質指示子がチャネル品質指示子の値の間隔Inti,F内の値を取る場合とに適用され得る復号アルゴリズムの総数を指定する。各復号アルゴリズムDd,i,Fは、復号アルゴリズムDd,i,Fが、スクランブリング関数πに従って光ファイバ伝送チャネル上の送信中にスクランブルされた光信号を復号するためにシンボル推定ユニット1515において適用され、且つチャネルの品質が、間隔Inti,F内の値を取るチャネル品質指示子CQIにより評価されると達成され得る(QoS)d,i,Fで表記されるサービスメトリックの品質の値に関連付けられ得る。
【0132】
このような実施形態では、処理ユニット1511は、前記参照テーブル内に格納された復号アルゴリズムの組Dd,i,F(d=1,...,dtot,i,F,i=1,...,I,F=1,...,Ftot)の中から、所定のスクランブリング関数に関連付けられたチャネル品質指示子の値の間隔
【数19】
に関する1つ又は複数のチャネル品質指示子CQIに依存して、且つスクランブリング関数π=πに関連付けられたチャネル品質指示子
【数20】
の値の間隔に関連付けられたサービスメトリックの品質(QoS)d,i,Fの値の組に関するサービスメトリックの目標品質(QoS)に依存して、復号アルゴリズムDd,i,Fを選択することにより、所定のスクランブリング関数πのための復号アルゴリズムDを判断するように構成され得る。換言すれば、処理ユニット1511は、所定のスクランブリング関数に対応するスクランブリング関数π=πに関して、且つ判断されたチャネル品質指示子が値を取るチャネル品質指示子Inti,Fの値の間隔に関して、サービスメトリックの目標品質(QoS)以上のサービスメトリックの品質(QoS)d,i,Fに関連付けられた復号アルゴリズムDd,i,Fを選択し得る。
【0133】
2つ以上の復号アルゴリズムが目標のサービスメトリック(すなわちサービスメトリックの目標品質(QoS)以上のサービスメトリックの品質(QoS)d,i,Fに関連付けられた)を達成することを可能にする幾つかの実施形態では、最も低い復号複雑性を有する復号アルゴリズムが選択され得る。
【0134】
幾つかの実施形態によると、処理ユニット1511は、前記参照テーブル内に格納されたスクランブリング関数πの組(F=1,...,Ftot、ここで、Ftot≧2である)の中から、参照テーブル内に格納されたサービスメトリックの品質の値の組に関するサービスメトリックの目標品質に依存して、且つチャネル品質指示子の値の間隔の組に関する1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して、スクランブリング関数πを選択することにより、所定のスクランブリング関数πを更新するように構成され得る。例えば、サービスメトリックの目標品質(QoS)が、判断された1つ又は複数のチャネル品質指示子に関して且つ所定のスクランブリング関数πに関して達成可能でなければ、処理ユニット1511は、選択されたスクランブリング関数πが、1つ又は複数のチャネル品質指示子に関して、少なくとも1つの復号アルゴリズムを使用してサービスメトリックの目標品質(QoS)を達成することを可能にするように、所定のスクランブリング関数πを更新/修正するように構成され得る。
【0135】
幾つかの実施形態によると、デコーダ151は、時間的条件に応答してサービスメトリックの品質を測定するように構成されたサービスメトリックの品質更新ユニット1517をさらに含み、ストレージユニット1513は、測定されたサービスメトリックの品質から、参照テーブル内に格納されたサービスメトリックの品質の値の組を更新するように構成される。時間的条件は、伝送チャネル13上の光信号の各送信において連続測定、例えば特定時間間隔における定期的測定又はスライドウィンドウ上の測定を行うことに対応し得る。
【0136】
幾つかの実施形態によると、処理ユニット1511は、(QoS)で表記される測定されたサービスメトリックの品質に関するサービスメトリックの目標品質(QoS)の値に依存して、サービスメトリックの目標品質(QoS)を更新するようにさらに構成され、サービスメトリックの目標品質の更新は、
- サービスメトリックの目標品質が、測定されたサービスメトリックの品質より低い場合(すなわち(QoS)>(QoS)の場合)、サービスメトリックの目標品質を増加させること、及び
- サービスメトリックの目標品質が、測定されたサービスメトリックの品質より高い場合(すなわち(QoS)<(QoS)の場合)、サービスメトリックの前記目標品質を減少させること
を含む。
【0137】
光ファイバ伝送チャネル13は、マルチコアファイバ内のコアをスクランブルするためのランダム又は確定論的スクランブリング関数(所定のスクランブリング関数又は更新されたスクランブリング関数)を適用するように構成された少なくとも1つのスクランブリング装置133を含む。光ファイバがK個のファイバスライスの連節である実施形態では、スクランブリング装置133は、Kscrで表記されるスクランブリング期間に従って光ファイバ伝送チャネル13内に定期的に配置され得る。したがって、スクランブリング装置133は、kがスクランブリング期間の倍数であれば、k番目ファイバスライス内に配置され得る。
【0138】
スクランブリング関数πは、
【数21】
に従って2次元形式で表され得、ここで、コアcoreは、コアcore=π(core)により置換される。
【0139】
スクランブリング関数πは、Pで表記される置換行列により行列形式で表され得、置換行列のエントリは、次式により与えられる。
【数22】
【0140】
幾つかの実施形態によると、参照テーブル内に格納された所定のスクランブリング関数π及びスクランブリング関数π(F=1,...,Ftot)は、マルチコアファイバのコアに関連付けられたコアパラメータの1つ又は複数に依存するランダムスクランブリング又は確定論的スクランブリング判断基準を使用し得、コアcoreに関連付けられたコアパラメータは、コアタイプT及びコア損失値λn,pを含む群において選択される。
【0141】
幾つかの実施形態によると、様々なコアにより経験される損失を平均化するためのコアスクランブリングがコア損失値に依存して行われ得、コア依存損失値の縮小を可能にするために有利である。
【0142】
このような実施形態では、マルチコアファイバの2つ以上のコアは、番号付きリストC内の各コアcoreが、コアを順序付けるように考慮された所与の順序に依存して、コアcorei+1,pに関連付けられたコア損失値λi+1,pより大きい又は小さいコア損失値λi,pに関連付けられるように、2つ以上のコアに関連付けられたコア損失値の所与の順序(昇順又は降順)に従い、
【数23】
で表記される番号付きリストで順序付けされ得る。
【0143】
例えば、コア損失値の昇順に関して、コアcoreは、コアcoreに関連付けられたコア損失値λi,pが、コアcorei+1に関連付けられたコア損失値λi+1,p以下(すなわちλi,p≦λi+1,p、i=1,...,N-1)であるようにリスト内で順序付けられる。
【0144】
コア損失値の降順を使用する実施形態では、コアcoreは、コアcoreに関連付けられたコア損失値λi,pが、コアcorei+1に関連付けられたコア損失値λi+1,p以上(すなわちλi,p≧λi+1,p、i=1,...,N-1)であるようにリスト内で順序付けられ得る。
【0145】
したがって、確定論的スクランブリング基準は、コアcore-n(n=1,...,N)に関連付けられるとともに、番号付きリスト内のコアcoreとコアcoreとを置換するために適用されるスクランブリング関数に対応したコア損失値λn,pの順序に依存し得、ここで、iは、1~Nの値を取り、j=N-i+1である。したがって、スクランブリング関数πは、一番高いコア損失値に関連付けられたコアが、一番低いコア損失値に関連付けられたコアにより置換され、2番目に高いコア損失値に関連付けられたコアが、2番目に低いコア損失値に関連付けられたコアにより置換される等となるように、コアcore及びコア
【数24】
、コアcore及びコア
【数25】
等の2×2置換を可能にする。
【0146】
マルチコアファイバ内のコアの数N≧2が偶数である幾つかの実施形態では、確定論的スクランブリング基準及び対応するスクランブリング関数は、i番目に高いコア損失値に関連付けられたコアcoreと、i番目に低いコア損失値に関連付けられた
【数26】
との置換に従って2つ以上のコアを2×2置換することに対応し得、iは、1~マルチコアファイバ内のコアの数の1/2に含まれる(すなわち、
【数27】
である)。
【0147】
マルチコアファイバ内のコアの数N≧2が奇数である他の実施形態では、確定論的スクランブリング基準及びスクランブリング関数は、i番目に高いコア損失値に関連付けられたコアcoreと、i番目に低いコア損失値に関連付けられた
【数28】
との置換に従って2つ以上のコアを2×2置換することに対応し得、iは、1~前記マルチコアファイバ内のコアの数の1/2の床関数部に含まれ(すなわち、
【数29】
である)、演算子
【数30】
は、床関数処理を示す。したがって、コア
【数31】
は、置換されなくてよい。特に、コアが2Dグリッドに従ってファイバ内に配置される幾つかの実施形態では、コア
【数32】
は、中央のコアに対応し得る。
【0148】
マルチコアファイバが不均一であり、且つ異なるコアタイプに関連付けられた少なくとも2つのコアを含む幾つかの実施形態では、確定論的スクランブリング基準及びスクランブリング関数は、2つ以上のコアに関連付けられたコアタイプT(n=1,...,N)に依存し得、且つ少なくとも第1のコアcoreと第2のコアcore(n≠m)との置換に基づく2つ以上のコアの2×2置換に対応し、第1のコアcore及び第2のコアcoreは、異なるコアタイプT≠Tに関連付けられる。
【0149】
コアタイプベースのスクランブリング判断基準は、限定しないが、例えばスネイルスクランブリング技術、回転スクランブリング技術又はスネークスクランブリング技術を使用して適用され得る。
【0150】
スネイル、回転及びスネークスクランブリング方式の1つを適用するために、コアcore-i(iは、1~Nの値を取る)は、番号付きリストC内の各コアcoreがコアcorei+1(i=1,...,N)と比較して異なるコアタイプに関連付けられるように、番号付きリスト
【数33】
内で分類され得る。
【0151】
集合Cにおけるコアの番号付けを使用し、またスネイル、回転又はスネークスクランブリング方式のいずれかに従い、スクランブリング関数πは、集合C内の各コアcore(i=1,...,N-1)とコアπ(core)=corei+1との置換と、コア
【数34】
とコア
【数35】
との置換とに対応し得る。
【0152】
第1の例では、スネイルスクランブリング方式は、その1つのコアが中央のコアであり、残りのコアが六角形の辺に配置される奇数のコアを含む不均一マルチコアファイバにおけるスクランブリングルールπ(core)=corei+1(i=1,...,N-1)及び
【数36】
の適用に対応する。特に、集合C内のコアの順序に依存して、コアcoreは、中央のコアに対応し得る。
【0153】
図10は、中央のコアが、右側に配置されるその隣接コアと置換され、残りのコアのそれぞれが、異なるタイプのその左側の隣接コアと置換され、中央のコアの左側に配置されるコアが中央のコアと置換されるように、7つのコアが時計回り方向によるスネイルスクランブリング方式を用いてスクランブルされる7コア不均一マルチコアファイバの断面図である。スクランブリング関数は、この例では、coreが中央のコアに対応するように、
【数37】
として2次元形式で、且つ
【数38】
による行列表現で記述され得る。したがって、シンボルs,s,...,sは、スクランブリング関数の適用後、シンボルsがコアcoreを通して伝播し、各シンボルs(i=2,...,6)がコアcorei+1を通して伝播し、シンボルsが中央のコアを通して伝播するように置換される。
【0154】
図11は、12個のコアが時計回り方向に従って回転スクランブリング方式を用いて置換される12コア不均一マルチコアファイバの断面図を示す。コアは、リング形式で配置される。回転スクランブリング方式を使用することにより、各コアは、π(core)=corei+1(i=1,...,11)となり、コアcore12がコアcoreと置換されるように、異なるタイプのその右側の隣接コアと置換される。
【0155】
図12は、コアが時計回り方向に従ってスネークスクランブリング方式を用いて置換される32コア不均一マルチコアファイバの断面図を示す。コアは、6つの層を含む2次元グリッドで配置される。第1の上層は、core、core、core、coreとして番号が付けられた4つのコアを含む。第1の層の下側にある第2の層は、core~core10と番号が付けられた6つのコアを含む。第2の層の下側にある第3の層は、core11~core16と番号が付けられた6つのコアを含む。第3の層の下にある第4の層は、core17~core22と番号が付けられた6つのコアを含む。第4の層の下にある第5の層は、core23~core28と番号が付けられた6つのコアを含む。最後に、下層は、core29~core32と番号が付けられた4つのコアを含む。スネークスクランブリング方式によれば、各層内の各コアは、異なるタイプの右側の隣接コアと置換され、各層の最後のコアは、前記各層の下にある層の第1のコアと置換され、コアcore32(すなわち下層の最後のコア)は、コアcore(すなわち上層の第1のコア)と置換される。
【0156】
図10、11及び12は、時計回り方向に基づくコアの置換によるスネイル、回転及びスネークスクランブリング方式の応用の例を示す。しかし、スネイル、回転及びスネークスクランブリング方式は、反時計回り方向のコアの置換によっても適用され得ることに留意すべきである。
【0157】
マルチコアファイバが不均一マルチコアファイバである幾つかの実施形態では、確定論的スクランブリング基準及び対応するスクランブリング関数は、N個のコアに関連付けられたコアタイプT(n=1,...,N)及びコア損失値λ(n=1,...,N)に依存し得、前記2つ以上のコアの少なくとも第1のコアcoreの第2のコアcore(n≠m)との置換に基づく2×2置換に対応し、第1のコアcore及び第2のコアcoreは、異なるコアタイプT≠T及び異なるコア損失値に関連付けられる。
【0158】
幾つかの実施形態によれば、少なくとも1つのスクランブリング装置133は、スクランブリング関数を電場内で適用するように構成され得る。
【0159】
他の実施形態では、少なくとも1つのスクランブリング装置133は、スクランブリング関数を光場内で適用するように構成された光学装置であり得る。例示的な光スクランブリング装置は、コンバータ、光マルチプレクサ、光多重化装置及びフォトニックランタンを含む。
【0160】
本発明の特定の実施形態の以下の説明は、単に例示の目的のために、単一偏波、単一波長、単一キャリア変調、時空間符号化を有する単一誤り訂正符号及びシングルモードマルチコアファイバを使用する光通信システム100を参照してなされる。しかし、当業者は、本発明の様々な実施形態が、2つの偏波を使用する偏波多重化と組み合わせて、且つ/又は複数の波長を使用する波長多重化と組み合わせて、且つ/又はマルチモードファイバコアを使用するモード多重化と組み合わせて、且つ/又はマルチキャリア変調フォーマットと組み合わせてマルチコアファイバにおいて適用され得ることを容易に理解するであろう。
【0161】
光ファイバ伝送チャネル13がコア間クロストーク影響及びミスアラインメント影響を経験する実施形態では、光伝送チャネル13は、次の関係式により記述される光マルチ入力マルチ出力(MIMO)システムにより表され得る。
Y=H.X+N (8)
【0162】
式(8)中、
- Xは、n番目のシンボルがcore(n=1,...,N)上で伝送されるように光伝送チャネル13上で伝送されるN個のシンボルを含む長さNの複素数ベクトルを指し、
- Yは、光受信器15における受信信号を指定する長さNの複素数ベクトルであり、
- Hは、光チャネル行列を指定する次元N×Nの複素数行列であって、経験された減衰と、ミスアラインメント損失に加えてマルチコアファイバ内の異なるコア上の光信号伝播中にコアにより経験される損失とを表す次元N×Nの複素数行列であり、
- Nは、光チャネル雑音を指定する長さNの実数ベクトルである。
【0163】
幾つかの実施形態によれば、光チャネル雑音は、零中央値及び分散Nの白色ガウス雑音であり得る。
【0164】
幾つかの実施形態において、ミスアラインメント損失は、光ファイバのファイバスパンにおける及びコネクタ(例えば、FAN-IN/FAN-OUT装置と光ファイバ伝送チャネルの入力/出力端との間のコネクタ)の不完全性によって生じ得る。ミスアラインメントは、長さ方向ミスアラインメント、横方向ミスアラインメント及び角度ミスアラインメントを含む群において選択されるミスアラインメントを含み得る。
【0165】
幾つかの実施形態によれば、ミスアラインメント損失は、ガウス確率変数としてモデル化され得る。より具体的には、コア-nに関連付けられたミスアラインメント損失は、中央値ゼロ及びσ(x,y),nで示される標準偏差のガウス確率変数としてモデル化され得、以下のように表現される。
【数39】
【0166】
式(9)中、rは、「x」及び「y」方向へのマルチコアファイバの横方向の変位を示す。
【0167】
実施形態では、スクランブリング装置が各k番目ファイバスライス内に配置される。ここで、kは、スクランブリング期間の倍数であり、各ファイバスパンは、クロストークチャネル行列と、ミスアラインメントチャネル行列と、k番目スクランブリング装置133によるk番目ファイバスパン内のスクランブリング関数πの適用を表すN×N行列である置換行列P(k)=Pとの乗算と均等である。このような実施形態では、式(8)の光MIMOシステムは、以下により均等に表現できる。
【数40】
【0168】
式(10)中、
- Lは、光ファイバのリンク損失を補償するために使用される正規化係数を示し、
- HXT,kは、k番目のファイバスパンに関連付けられたクロストークチャネル行列を示し、
- Mは、k番目のファイバスパンに関連付けられたミスアラインメントチャネル行列を示す。
【0169】
コア間クロストーク効果は、以下により表現されるHXTにより示されるクロストークチャネル行列によって表され得る。
【数41】
【0170】
式(11)中、クロストークチャネル行列の対角成分は、XT=1-Σn≠mXTn,mで与えられる。クロストークは、コア間の交換エネルギーを表し、当業者の間で知られているパワー結合理論に基づいて推定できる。
【0171】
マルチコアファイバが均一である幾つかの実施形態によれば、各コア-n及びコア-m(n≠m)間のクロストークを定量化するクロストーク係数XTn,mは、以下により表現される。
【数42】
【0172】
式(12)中、
【数43】
は、コア間距離を指し、βは、伝播定数を示す。
【0173】
マルチコアファイバが不均一である幾つかの実施形態によれば、各コア-n及びコア-m(n≠m)間のクロストークを定量化するクロストーク係数XTn,mは、以下により表現される。
【数44】
【0174】
チャネル行列は、次式の特異値分解に従って分解され得る。
【数45】
【0175】
処理ユニット1511は、式(14)内に与えられたチャネル行列表現を使用して、マルチコアファイバの各コアと関連付けられてコア損失値を判断することにより、チャネル品質指示子としてコア依存損失値を判断するように構成され得る。
【0176】
ファイバスパンへのファイバ分解を用いると、ミスアラインメント損失係数αi,pは、以下により与えられ得る。
【数46】
【0177】
式(15)中、cは、一定の増倍率を示し、
【数47】
(i=1,...,N)は、1自由度、(σ(x,y),iに等しい中央値及び2(σ(x,y),iに等しい分散のカイ二乗分散確率変数を示す。
【0178】
マルチコアファイバのコアのタイプTを考慮し、マルチコアファイバでのK個のスライスのコンカンチネーションを用いると、変数Zi,pは、以下のように表現できる。
【数48】
【0179】
式(16)中、
- Tは、マルチコアファイバのコアに関連付けられた異なるタイプのコアの総数を示し、
- K(j=1,...,T)は、マルチコアファイバのコアに関連付けられた異なるタイプのコアの総数のj番目のコアタイプのコアの数を示し、
- X(j=1,...,T)は、それぞれ以下により表現される中央値
【数49】
及び分散
【数50】
の正規分布変数を示す。
【数51】
【0180】
ファイバスパンの数Kが高い実施形態を考慮し、本発明者らは、各変数Zi,pを中央値
【数52】
及び分散
【数53】
の正規分布変数としてモデル化できることを示した。したがって、全損失係数αi,pは、以下により与えられる中央値
【数54】
及び分散値
【数55】
の対数正規確率変数によりモデル化できる。
【数56】
【0181】
光チャネル行列の特異値分解の微分により、式(10)の光MIMOシステムは、以下に従って表現できる。
【数57】
式(21)によれば、処理ユニット1511は、各コアcore-n(n=1,...,N)に関連付けられ、スクランブリング関数πの適用の結果であるコア損失値λn,pを、コア損失値λn,pが中央値
【数58】
及び分散
【数59】
の対数正規分布変数であるように特定するように構成され得、各コア損失値の中央値及び分散は、前記各コアに関連付けられた全クロストーク係数XTを含むファイバパラメータ、全損失係数αi,pの対数正規分布の中央値及び分散において生じるミスアラインメント損失及びスクランブリング関数πに依存する。より具体的には、マルチコアファイバの各コアcore-nに関連付けられた各コア損失値λn,pの中央値
【数60】
は、第1の値と第2の値との間の積であり、第1の値
【数61】
は、コアcore-nに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数αの中央値に対応し、第2の値XTは、前記コアcore-nに関連付けられた全クロストーク係数に対応する。マルチコアファイバの各コアcore-nに関連付けられた各コア損失値λn,pの分散値
【数62】
は、コアcore-nに関連付けられた全クロストーク係数の二乗値XT
【数63】
と、コアcore-nに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数αの分散
【数64】
に対応する第3の値との間の積である。
【0182】
マルチコアファイバが不均一である幾つかの実施形態において、処理ユニット1511は、CDLheterで示されるコア依存損失値を、λmax,pにより示される第1のコア損失値と、λmin,pで示される第2のコア損失値との比として特定するように構成され得、第1の値は、マルチコアファイバのコアの各々に関連付けられたコア損失値の最も高いコア損失値により与えられ、第2の値は、マルチコアファイバのコアの各々に関連付けられたコア損失値の最も小さいコア損失値により与えられる。コア依存損失CDLheterは、以下による対数目盛で表現できる。
【数65】
【0183】
マルチコアファイバのコアの各々に関連付けられた特定されたコア損失値λn,pを考慮して、処理ユニット1511は、それぞれ以下により与えられるμCDLにより示される中央値及び分散σ CDLのガウス分散による対数目盛でコア依存損失値を特定するように構成され得る。
【数66】
【0184】
式(23)及び(24)中、imax及びiminは、それぞれ第1のコア損失値λmax,p及び第2のコア損失値λmin,pに関連付けられたコアのナンバリングインデックス、コア-imax及びコア-iminをそれぞれ指す。
【0185】
マルチコアファイバが均一である他の実施形態によれば、処理ユニット1511は、式(22)により与えられる理論上の推定を使用するのではなく、信頼区間の設定に基づいて、CDLhomにより示されるコア依存損失値の推定を行うように構成され得る。実際に、均一マルチコアファイバのコア損失値λn,pは、中央値
【数67】
及び分散
【数68】
の同じ対数正規分布を有し、αn,totalは、光ファイバリンクの端における全ミスアラインメント損失を示し、これは、それぞれ以下により与えられる中央値
【数69】
及び分散
【数70】
の対数正規分布を有する。
【数71】
【0186】
式(25)及び(26)中、Zは、中央値μ=-2Kb(σ(x,y)及び分散
【数72】
の正規分布を有する変数である。
【0187】
信頼区間は、ランダムパラメータの最良推定として機能する値の範囲である。所望/目標信頼レベルは、事前に定義される。最も一般的に使用される信頼レベルは、68%、90%、95%及び99%である。ガウス分布の信頼区間Cの境界値γは、以下による累積分布関数Φの逆数を用いて得ることができる。
【数73】
【0188】
式(27)中、θは、
【数74】
に等しい。
【0189】
均一マルチコアファイバの場合、コア依存損失値は、事前に定義された信頼レベルに対応する対数正規分布の信頼区間の上限及び下限との比として特定され得る。処理ユニット1511は、第1のステップにおいて、ガウス分布Zの上限及び下限を特定するように構成され得る。第2のステップでは、処理ユニット1511は、特定された上限及び下限を、指数関数を用いて変換するように構成され得る。
【0190】
信頼レベルが90%に設定される幾つかの実施形態において、それぞれImax,p及びImin,pにより示される信頼区間の上限及び下限は、本発明者らにより、以下によって特定される。
max,p=XTmaxexp(N(μ+1.645σ)) (28)
max,p=XTminexp(N(μ+1.645σ)) (29)
【0191】
対数ドメインにおけるコア依存損失値は、以下のように特定される。
【数75】
【0192】
本発明の実施形態は、MLデコーダを使用することにより、関与する計算複雑性と比較して低い複雑性を必要とする一方、準最適ML復号性能を提示する線形又は非線形復号アルゴリズムの使用を可能にする。具体的には、確定論的コアスクランブリング判断基準に基づくコアスクランブリングの存在下の線形又は非線形復号アルゴリズムの使用は、伝送チャネルに影響を与えるCDL影響の除去を可能にする。
【0193】
本発明の様々な実施形態において提供される復号技術の効率は、スネイルスクランブリング技術が適用される7コア不均一マルチコアファイバと、回転(「循環」とも呼ばれる)スクランブリング技術が適用される12コア不均一マルチコアファイバとに関して評価された。非符号化16QAM変調が送信器において使用され、ZF又はML復号が受信器において使用される。
【0194】
図13は、受信器において7コア不均一ファイバ及びML復号又はZF復号を使用する様々な実施形態に関して取得された信号対雑音比に応じたビット誤り率(BER)性能を評価する図を示す。ZF符号化及びスネイルスクランブリングを使用して取得されたビット誤り率性能は、最適ML符号化を使用して取得された性能と比較される。図13の図は、スクランブリングがマルチコアファイバのコアに適用されない幾つかの実施形態のものを示し、ZF符号化は、BER=10-3において3.5dB信号対雑音比ペナルティのみが最適ML符号化より悪い。しかし、Ksrc=50を有するスネイルスクランブリング技術を適用することは、CDL影響を低減することを可能にし、ZF符号化がBER=10-3において0.4dBのみの信号対雑音比ペナルティで最適ML符号化とほぼ同じ性能を有することを可能にする。
【0195】
図14は、受信器において12コア不均一ファイバ及びML復号又はZF復号を使用する様々な実施形態に関して取得された信号対雑音比に応じたBER性能を評価する図を示す。図14の結果は、図13において取得された結果を確認し、ZF符号化の存在下の循環コアスクランブリングの適用が準ML性能を提供することを示す。Ksrc=150を使用する循環スクランブリングを適用することは、ZF符号化アルゴリズムとML符号化アルゴリズムとの間のSNRペナルティをBER=10-3において0.2dBまで低減することを可能にする。
【0196】
図15を参照すると、光ファイバ伝送チャネル内のマルチコアファイバの2つ以上のコアに沿って伝播する光信号によって搬送される情報シンボルのベクトルの推定を判断する復号方法であって、光信号は、所定のスクランブリング関数πに従ってスクランブルされる、方法も提供される。
【0197】
ステップ1501では、光ファイバ伝送チャネルの出力を表す光信号と、サービスメトリックの目標品質(QoS)とが受信され得る。
【0198】
ステップ1503では、1つ又は複数のチャネル品質指示子CQIが、時間的条件に応答して、受信された光信号から判断され得る。
【0199】
ステップ1505では、復号アルゴリズムDがサービスメトリックの目標品質(QoS)及び判断された1つ又は複数のチャネル品質指示子CQIに依存して判断され得る。
【0200】
ステップ1507では、情報シンボルのベクトルの推定が、受信された光信号に復号アルゴリズムDを適用することにより判断され得る。
【0201】
ステップ1509では、所定のスクランブリング関数及び/又は時空間符号化方式に関する更新がサービスメトリックの目標品質及び判断された1つ又は複数のチャネル品質指示子に依存して行われ得る。
【0202】
幾つかの実施形態は、単一偏波、単一波長及び単一キャリア変調が使用されるマルチコアマルチモードファイバに関連して説明されているが、本発明は、2つの偏波を用いる偏波多重化と組み合わせて、且つ/又は幾つかの波長を使用する波長多重化の使用と組み合わせて、且つ/又はマルチキャリア変調フォーマットを用いて、マルチコアマルチモードファイバでも応用できることに留意すべきである。
【0203】
さらに、本発明は、通信の用途に限定されず、データストレージ及び医療用イメージング等の他の応用に組み込まれ得る。本発明は、複数の光伝送システム内において、例えば自動産業用、石油又はガス市場、航空宇宙及び航空電子工学、検出用途等でも使用され得る。
【0204】
本発明の実施形態を様々な例の説明によって解説し、これらの実施形態をかなり詳細に説明したが、本出願人は、付属の特許請求の範囲をそのような詳細に限定することを意図しておらず、又は決して限定することを意図していない。他の利点及び改良も当業者に容易に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、その最も広い態様において、図示及び説明された特定の詳細、代表的方法及び例示的な例に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15