(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】車両本体を表面処理するための表面処理設備及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/18 20180101AFI20240610BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20240610BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B05B12/18
B05B16/60
B62D65/00 Z
(21)【出願番号】P 2021540905
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074237
(87)【国際公開番号】W WO2020058063
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】102018123270.5
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521118488
【氏名又は名称】アイゼンマン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト シュルツェ
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/178317(WO,A1)
【文献】特開平01-115469(JP,A)
【文献】特開2005-280582(JP,A)
【文献】特開2009-154145(JP,A)
【文献】特開昭60-034761(JP,A)
【文献】特開昭59-069174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/16-12/36
14/00-16/80
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体(12)を表面処理するための表面処理設備(10)であって、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)であって、前記車両本体(12)を固定することができるそれぞれ1つの固定装置(18)を有し、各移送台車(20)が、該移送台車
(20)に搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動可能である、少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)と、
b)実質的に気密にハウジング(15)によって仕切られた処理室(14)であって、該処理室(14)内で前記車両本体(12)の表面が処理され、前記固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置
(18)に固定された前記車両本体(12)とが、各移送台車(20)によって少なくとも一時的に前記処理室(14)内で動かされる、処理室(14)と、
c)前記ハウジング(15)の外側に配置された走行領域(22)であって、該走行領域(22)内で前記移送台車(20)が少なくとも一時的に移動可能であり、前記固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置
(18)に固定された車両本体(12)とが前記処理室(14)内に位置しているときに、各移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置している、走行領域(22)と、
d)開口(30)であって、前記ハウジング(15)内で前記走行領域(22)と前記処理室(14)との間に形成され、前記移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置しているときに、各移送台車(20)の
前記固定装置(18)が前記開口
(30)を貫通している、開口(30)と、を備え、
前記走行領域(22)内で第1雰囲気が生成され、前記処理室(14)内で前記第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が生成され、
前記少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)は前記走行領域(22)の少なくとも外側で無軌道に移動することができ、
物及び/又は人に対する前記移送台車(20)の間隔制御のための監視領域(U)を有する監視装置(34)が、前記移送台車(20)に配置され、
前記監視領域(U)の大きさ及び/又は前記移送台車(20)に対する前記監視領域(U)の位置が可変であり、
前記移送台車(20)は、前記走行領域(22)内に位置しているときに、前記監視領域(U)はより小さい、表面処理設備(10)。
【請求項2】
前記第1雰囲気は少なくとも1つのパラメータによって前記第2雰囲気とは異なっており、前記パラメータが、温度、圧力、空気湿度、流動速度、流動方向、及び粒子負荷から成るグループから選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理設備(10)。
【請求項3】
雰囲気分離装置(32;38;40)を備え、該雰囲気分離装置
(32;38;40)は少なくとも前記処理室(14)から前記走行領域(22)への雰囲気交換を困難にするか又は阻止することを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面処理設備(10)。
【請求項4】
前記雰囲気分離装置
(32;38;40)は前記開口(30)内又は前記開口(30)に配置されたシール具(32)であることを特徴とする、請求項3に記載の表面処理設備(10)。
【請求項5】
前記雰囲気分離装置(32;38;40)はブロワ(38)であり、該ブロワ
(38)によって空気流を生成することができ、前記空気流は少なくとも前記処理室(14)から前記走行領域(22)への雰囲気交換を困難にするか又は阻止することを特徴とする、請求項3に記載の表面処理設備(10)。
【請求項6】
前記空気流はエアカーテンであり、該エアカーテンが前記開口(30)を少なくとも実質的に気密に閉鎖することを特徴とする、請求項5に記載の表面処理設備(10)。
【請求項7】
前記走行領域(22)内において、前記移送台車(20)は、前記走行領域(22)内に設けられ、且つ搭載可能な
前記駆動装置から独立した駆動システム(41)によって、少なくとも一時的に動かされることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の表面処理設備(10)。
【請求項8】
前記駆動システム(41)は、前記走行領域(22)の少なくとも一部内で、前記移送台車(20)とポジティブロック的に結合していることを特徴とする、請求項7に記載の表面処理設備(10)。
【請求項9】
調節装置(24)を備え、前記調節装置
(24)は、前記固定装置(18)と前記固定装置
(18)に固定された前記車両本体(12)とを可変の高さで前記処理室(14)内に提供するように構成されていることを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の表面処理設備(10)。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の表面処理設備(10)を有する、車両を製造するための製造設備。
【請求項11】
車両本体(12)の表面処理方法であって、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)が、車両本体(12)が固定されるそれぞれ1つの固定装置(18)を有し、各移送台車(20)を該移送台車(20)に搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動させ、
b)前記固定装置(18)の少なくとも一部と前記固定装置(18)に固定された前記車両本体(12)とを、前記移送台車(20)によって、実質的に気密にハウジング(15)によって仕切られた処理室(14)内で少なくとも一時的に動かし、前記車両本体(12)を前記処理室(14)内で処理し、
c)前記ハウジング(15)の外部に配置された走行領域(22)で前記移送台車(20)を少なくとも一時的に移動させ、各固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置
(18)に固定された車両本体(12)とが前記処理室(14)内に位置しているときに、各移送台車(20)を前記走行領域(22)に位置させ、
d)前記移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置しているとき、各移送台車(20)の前記固定装置(18)を、前記ハウジング(15)内で、前記走行領域(22)と前記処理室(14)との間に形成される開口(30)を貫通させ、
前記走行領域(22)内で第1雰囲気を生成し、前記処理室(14)内で前記第1雰囲気とは異なる第2雰囲気を生成する、表面処理方法において、
前記少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)は前記走行領域(22)の少なくとも外側で無軌道に移動し、
前記移送台車(20)に配置された監視装置(34)は、監視領域(U)を有して、前記移送台車(20)の物及び/又は人に対する間隔を制御し、前記監視領域(U)の大きさ及び/又は前記移送台車(20)に対する監視領域(U)の位置が可変であり、
前記監視領域(U)が前記移送台車(20)の前記走行領域(22)内への進入時には縮小され、且つ/又は前記走行領域(22)からの進出時には拡大される、ことを特徴とする車両本体(12)の表面処理方法。
【請求項12】
前記走行領域(22)内の互いに連続する
前記移送台車(20)の間隔、及び/又は前記移送台車(20)の運動方向が変化させられる、請求項11に記載の車両本体(12)の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体の表面処理であって、専用の搭載可能な駆動装置を有する床支持型(flurgebunden)の移送台車が車両本体を処理室を通して移送する車両本体の表面処理に関する。
【背景技術】
【0002】
車両本体は、その製造中に数多くの種々の作業工程を通る。これらの作業工程において、種々異なる種類の作業が車両本体に施される。このような作業には、車両本体に積極的に作用する手段を含む。積極的な作業には、例えば塗装前のいわゆるホワイトボディにおける個々の部分の組み立て、ラッカー又は他の材料の塗布、又は前に被覆された層の乾燥を含む。この他に、例えば車両本体を蒸発させるときのように、車両本体に対して積極的な手段が行われない処置もある。表面処理設備内では、車両本体は、ホワイトボディの組立後に、種々異なる領域において、種々異なる形式で積極的又は消極的に処理される。
【0003】
従来より公知の表面処理設備の場合、軌道支持型(spurgebunden)の移送システムは、車両本体を十分に不変の順序で、種々の作業ステーションを通して移送する。しかしながら、作業工程が不動の順序であることは、製造時のフレキシビリティを制限する。
【0004】
処理順序の変更は、このような軌道支持型移送システムでは、たとえ可能であったとしても、転換装置が設けられている場合に限られる。この際には、相応の支線区間を提供しなくてはならず、これにより構造上の手間及びこれに伴うコストが著しく高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような考えを考慮に入れた、車両本体を表面処理するための表面処理設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題は、車両本体を表面処理するための表面処理設備によって解決される。 すなわち、
車両本体を表面処理するための表面処理設備であって、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車であって、車両本体を固定することができるそれぞれ1つの固定装置を有し、各移送台車を搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動させることができる、少なくとも2つの床支持型の移送台車と、
b)処理室であって、実質的に気密にハウジングによって仕切られ、車両本体の表面を処理することができ、固定装置の少なくとも一部と、固定装置に固定された車両本体とを、それぞれの移送台車によって、少なくとも一時的に処理室内で動かすことができる、処理室と、
c)走行領域であって、ハウジングの外側に配置され、移送台車が少なくとも一時的に走行可能であり、各固定装置とこの固定装置に固定された車両本体とが処理室内に位置しているときに、それぞれの移送台車が走行領域内に位置している、走行領域と、
d)開口であって、ハウジング内で走行領域と処理室との間に形成されており、移送台車が走行領域内に位置しているときに、それぞれの移送台車の固定装置が開口を通して突き出ている、開口と、が設けられており、
走行領域内で第1雰囲気を生成することができ、処理室内で、第1雰囲気とは異なる第2雰囲気を形成することができる、車両本体を表面処理するための表面処理設備。
【発明の効果】
【0007】
移送台車が、搭載可能な専用の搭載駆動装置を有しているので、それぞれの移送台車に固定された被処理車両本体をフレキシブルに互いに無関係に移送することができる。これにより、個々の車両本体の製造経過の短期且つ個別の変更を実現することもできる。
【0008】
さらに、処理室内及び走行領域内に相異なる雰囲気を形成することにより、移送台車が処理室内に形成された第2雰囲気に晒されるのを回避することができる。これにより、移送台車の鋭敏な構成部分の損害を回避することができ、また爆発のおそれを低減することもできる。さらに、移送台車は、処理室内へ導入されるか又はそこで発生する処理物質を免れたままである。このような処理物質は例えば、ラッカー塗装時に回転式アトマイザーによって発生するオーバースプレイであり得る。このような処理物質は移送台車の車輪には堆積しないので、移送台車の車輪と走行床との付着は損なわれない。火災に対する付加的な安全性のために、移送台車は消火装置を搭載することができる。
【0009】
さらに、異なる雰囲気を形成することによって、走行領域内の移送台車のメンテナンスが容易になる。被覆設備の場合、例えば処理室に人が立ち入る前に被覆設備の急速脱気を行わなければならない。これにより、人間にとって有害な物質を処理室の雰囲気から除去する。走行領域内の第1空気が処理室から独立して形成されるので、走行領域には有害物質が含有されておらず、これにより人の立ち入り前に走行領域の急速脱気を行う必要はない。
【0010】
移送台車は連続的又は周期的に走行領域内を走行することができる。周期的な走行の場合、移送台車は同時に又は時間的にずらされた状態で走行することができる。
【0011】
移送台車は走行領域内で、有利には走行領域内の構造物に光学的に合わせて、例えば走行領域の床のマーキングに合わせて配向される。あるいは、電子的なマーカー及び/又は無線システムが設けられていてもよい。これにより、移送台車は走行領域内で配向される。さらに、バーコードシステムが走行領域内に設けられていてもよい。これにより移送台車の位置及び速度が制御される。走行領域内で移送台車を位置決めするために、走行領域内に機械的なガイドを配置することも考えられる。移送台車上の信号発生器又はカメラシステムの代わりに、又はこれに加えて、定置のカメラシステム又は他のセンサが設けられていてもよい。これらは、移送台車の場所及び/又は速度を検出し、中央制御装置に伝送する。
【0012】
第1雰囲気及び/又は第2雰囲気は特に積極的に形成することができる。積極的な形成の場合、表面処理設備は、有利にはエネルギーで作動させられる手段を有している。この手段は、周囲と比較して且つ/又はそれぞれ他方の雰囲気と比較して第1及び/又は第2雰囲気を変化させる。さらに、「形成する(Erzeugen)」という概念は、既存の雰囲気の消極的な維持を意味することもできる。このような場合、既存の雰囲気、例えば製造工場内に存在する雰囲気が当該領域(通常は走行領域)内で維持される。このことは状況次第では、障壁、通気路、又は貫通路のような手段を必要とし得る。これらは、外部雰囲気を当該領域内へ広めるのを可能にする。大抵の場合、処理室内では第2雰囲気は積極的に形成される一方、走行領域内にある第1雰囲気は消極的に形成される。しかしながら、第1雰囲気も第2雰囲気も積極的に形成される事例も考えられる。
【0013】
表面処理設備は処理室の入口及び出口に、ゲート又はロックを有することができる。ゲート又はロックを通って、被処理車両本体が動かされる。
【0014】
ハウジングによってほぼ気密に仕切るという表現は、処理室内に含有されたガスが、少なくともゲート又はロックの閉鎖時にはせいぜいのところ無視し得るほどの僅かな量しか処理室から(例えば開口を通して)流出し得ないことを意味する。
【0015】
第1雰囲気が、少なくとも1つのパラメータによって前記第2雰囲気とは異なっており、パラメータが、温度、圧力、空気湿度、化学組成、流動速度、流動方向、及び粒子負荷から成るグループから選択されていると有利である。
【0016】
上述のように、被覆設備の場合には、移送台車の領域内の粒子負荷を僅かに保つことが有利である。これにより、特に走行領域の床及び/又は移送台車自体におけるオーバースプレイの沈殿が回避される。
【0017】
処理室室が乾燥のために作用する場合、移送台車領域内の温度を処理室内よりも低く保持することにより、移送台車の電子構成部分又は他の鋭敏な構成部分の場合によっては生じ得る損害を阻止することが望ましい。これにより、移送台車の大きな手間のかかる冷却処置又は断熱処置は必要でなくなる。さらに、処理室及び走行領域の相異なる温度調節によって、必要な加熱及び冷却を個別に適合させることができる。これにより設備のエネルギー消費量が低減される。
【0018】
一実施例の場合、雰囲気分離装置が設けられており、雰囲気分離装置が、少なくとも処理室から走行領域への雰囲気交換を困難にするか又は阻止する。
【0019】
反対方向の、すなわち走行領域から処理室への雰囲気交換を困難にするか又は阻止することもこれに加えて可能ではあるものの、雰囲気を分離するための目的は、移送台車にとって状況次第では有害な処理室の第2雰囲気を、移送台車から遠ざけておくことである。したがって通常は、走行領域の雰囲気の処理室への侵入を困難にするか又は阻止することは必要でない。
【0020】
雰囲気分離装置は積極的なものであってもよいし、又は消極的なものであってよい。
【0021】
消極的な雰囲気分離装置として、開口内又は開口に配置されたシール具が設けられていてよい。このような消極的な雰囲気分離装置は特に薄板、フラップ、シールスリーブ、シールブラシ、サンドカップシール(Sandtassendichtung)、又はこれらのシール具の組み合わせを含むことができる。
【0022】
このような消極的なシール具が弾性を有していると有利である。これにより、移送台車の固定装置の一部が開口内に位置していない場合には、開口はシール具によって完全に閉じられている。移送台車が設備を通って走行するときには、シール具は固定装置の一部によって変向させられる。
【0023】
積極的な雰囲気分離装置としてブロワが設けられていてよく、ブロワによって空気流を形成することができる。空気流は少なくとも処理室から走行領域への雰囲気交換を困難にするか又は阻止する。ブロワはそれぞれの移送台車に配置され、固定されていてよいが、しかし走行領域に定置に組み付けられたブロワも考えられる。
【0024】
空気流がエアカーテンであり、エアカーテンが開口を少なくともほぼ空気密に閉鎖すると有利である。エアカーテンという概念は、閉じられた面の形態を成すほぼ層状の流れを意味する。この流れは1つのスリットノズル、又は1つの直線又は曲線に沿って配置された2つ以上のノズルによって形成される。空気に加えて、他のガス混合物又は純ガスがノズルから出ることもできる。
【0025】
エアカーテンの場合、空気流は、圧力低下時に空気が処理室と走行領域との間で流れることになる、その方向に対して横方向に延びる。
【0026】
エアカーテンは例えば、定置のブロワによって開口の全長を超えて形成することができる。シール具が開口をシールする場合、移送台車によって連行されるブロワによってエアカーテンを局所的に形成することにより、移送台車領域内のシール作用を高めることもできる。
【0027】
あるいは、空気流を処理室内へ吹き込むことにより、処理室の空気の走行領域内への進入を阻止することもできる。この場合、空気流は、圧力低下時に空気が処理室と走行領域との間で流れることになる、その方向とは逆の方向に延びる。これにより、吹き込まれた空気のパルスは処理室内へ作用し、これにより、処理室内の空気はより強く押し戻される。これにより、空気が処理室から走行領域内へ侵入するのを阻止することができる。
【0028】
一実施例では、走行領域内で、走行領域内に設けられ且つ搭載可能な駆動装置から独立した駆動システムによって、移送台車を少なくとも一時的に動かすことができる。このような付加的な駆動システムによって、表面処理設備による移送台車の駆動は、移送台車の車輪と走行床との間の摩擦状態とは無関係である。これにより、移送台車の車輪と走行床との間の摩擦状態が悪いときに、移送台車のスリップなしの駆動が可能である。このことは、例えば処理室に配置された塗布装置に対する、処理室内の車両本体の正確な位置決めを容易にする。加えて、カメラシステムが処理室内に配置されていてよい。カメラシステムは車両本体の位置決めを支援する。
【0029】
両駆動装置を同時に作動させ得ることも有利である。これにより、同時に高レベルの位置決め精度で、移送台車の可変の速度及び相互間隔を設定することもできる。さらに、移送台車の車輪と走行床との間の付着摩擦が僅かな環境では、より高い速度が可能である。
【0030】
付加的な駆動システムは走行領域の少なくとも一部内で、移送台車とポジティブロック的に結合されていると有利である。これにより、移送台車の特に信頼性が高い正確な駆動が、走行領域の摩擦状態とは無関係に得られる。さらにこれにより、より大きい勾配も移送台車によって克服することができる。このような種類の駆動装置としては、鎖コンベヤ、歯車コンベヤ、又はドラッグコンベヤが有利である。
【0031】
搭載可能な駆動装置には外部からエネルギーを供給することができる。移送台車によって搭載可能で、搭載可能な駆動装置にエネルギーを供給するエネルギー蓄積器が設けられていると一般にはより好都合である。これにより、設備の動作中に障害及び危険であり得る、移送台車へのエネルギー供給のためのラインが必要とされない。
【0032】
一実施例では、調節装置が設けられており、調節装置は、固定装置とこの固定装置に固定された車両本体とを可変の高さで処理室内に提供するように構成されている。これにより、被処理車両本体の特にフレキシブルなハンドリングが可能になる。これにより、処理室内の処理を行う塗布装置が車両本体の表面により良好にアクセスすることができる。このような調節装置は、処理室内での処理時に車両本体を安定化するために利用することもできる。この場合、車両本体を沈めこむことにより、レール又は他のガイドエレメント上に降ろし、又は持ち上げることによりレール又は他のガイドエレメントに押し付ける。
【0033】
処理の種類いかんでは、調節装置が車両本体を付加的に傾倒させ回転させることができると好都合であり得る。
【0034】
調節装置は空気圧式に作動させられると有利ではあるものの、調節装置を1つ又は2つ以上の電動モータによって駆動させることもできる。
【0035】
保持装置は調節装置の部分であってよいが、しかし構造的に分離されたユニットを考慮に入れることもできる。
【0036】
調節装置を省く場合には、塗布装置はより可変であり且つよりフレキシブルなハンドリング装置を有することができる。
【0037】
一実施例では、物及び/又は人に対する移送台車の間隔制御のための監視領域Uを有する監視装置が、移送台車に配置されており、監視領域の大きさ及び/又は移送台車に対する監視領域Uの位置が可変である。これにより、移送台車と他の移送台車、表面処理設備の部分、又は人との衝突が回避される。監視領域とは、物及び/又は人が当該領域に位置している場合に、監視装置が警告メッセージを発する領域を意味する。監視装置は移送台車の制御システムに、移送台車がその位置を適合させるように命令を与える。
【0038】
走行領域内での移送台車の動作時と、移送台車が処理室から遠ざけられた走行領域外部にあるときの動作時との間で監視領域の大きさ及び/又は位置を適合させると有利である。例えば、移送台車が走行領域内に位置しているときには監視領域をより小さくすることができる。それというのもそこでは移送台車と物及び/又は他の移送台車との間隔が、走行領域外よりも小さいからである。走行領域が大抵は直線状に延び、走行領域内の移送台車の速度が大抵は均一であることに基づき、衝突のおそれは小さくなるので、監視装置を走行路内では完全にスイッチ・オフすることさえ考慮に入れられる。監視領域をより小さくすることにより、移送台車間の間隔をより小さく設定することができ、これにより、表面処理設備をより効率的に作動させることができる。
【0039】
本発明の対象はさらに、本発明による表面処理設備を備えた、車両を製造するための製造設備である。
【0040】
本発明の課題はさらに、冒頭で述べた考えを考慮に入れた、車両本体の表面処理方法を提供することである。
【0041】
本発明によれば、このような課題は、車両本体の表面処理方法によって解決される。
すなわち、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車が、車両本体が固定されたそれぞれ1つの固定装置を有しており、各移送台車がこの移送台車に搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動させられ、
b)固定装置の少なくとも一部と固定装置に固定された車両本体とを、移送台車によって、実質的に気密にハウジングによって仕切られた処理室内で少なくとも一時的に動かし、車両本体が処理室内で処理され、
c)ハウジングの外部に配置された走行領域内で移送台車を少なくとも一時的に移動させ、それぞれの固定装置の少なくとも一部と固定装置に固定された車両本体とが処理室内に位置しているときに、それぞれの移送台車が走行領域内に位置しており、
d)移送台車が走行領域内に位置しているときには、それぞれの移送台車の固定装置が、ハウジング内で走行領域と処理室との間に形成された開口を貫通しており、
走行領域内で第1雰囲気を生成し、処理室内で第1雰囲気とは異なる第2雰囲気を生成する、車両本体の表面処理方法によって解決される。
【0042】
一実施例では、雰囲気分離装置によって、少なくとも処理室から走行領域への雰囲気交換が困難にされるか又は阻止される。
【0043】
一実施例では、雰囲気分離装置はブロワであり、ブロワによって空気流が形成される。空気流は少なくとも処理室から走行領域への雰囲気交換を困難にするか又は阻止する。
【0044】
他の実施例では、移送台車は、走行領域内に設けられ且つ搭載可能な駆動装置から独立した駆動システムによって、走行領域内で少なくとも一時的に動かされる。
【0045】
さらなる実施例では、移送台車に配置された、監視領域を備えた監視装置が、移送台車の物及び/又は人に対する間隔を制御し、監視領域の大きさ及び/又は移送台車に対する監視領域の位置が可変であり、そして監視領域が移送台車の走行領域内への進入時には縮小され、且つ/又は走行領域からの進出時には拡大される。
【0046】
一実施例では、走行領域内の互いに連続する移送台車の間隔が変化させられる。これにより、最適な空間利用、及び異なる大きさの車両本体への適合が可能になり、そして移送台車及び/又は車両本体と、物及び/又は人との衝突が阻止される。
【0047】
あるいは、移送台車間の相互間隔は輸送される車両本体の大きさに応じて予め設定し、そして動作中に維持することもできる。
【0048】
一実施例では、移送台車の運動方向が変化させられる。これにより、製造ラインの特にフレキシブルな構成が得られる。それというのも、処理ステーションが必ずしも互いに前後に整合して一列に配置されていなくてもよいからである。その代わりに処理ステーションは、利用可能な面上に自由に配置することができ、その運動方向を変えることにより、移送台車によって接近することができる。
【0049】
本発明のさらなる態様では、走行領域は、欠陥を有する移送台車を危険なしにメンテナンスするために、バリアによって周りを閉じられているメンテナンス領域を有している。メンテナンス領域は、機能する移送台車の動作がメンテナンス中に可能であるように配置されている。バリアは扉を有していると有利である。扉によってメンテナンス人員又はメンテナンス装置、例えばロボットが欠陥移送台車にアクサスすることができる。
【0050】
さらに、走行領域は推動又は牽引装置を有している。この装置によって欠陥移送台車を走行領域から取り除くことができる。あるいは、機能する移送台車が、欠陥移送台車を走行領域から取り除くように構成されていてもよい。機能する移送台車は欠陥移送台車を走行領域から押すか又は引張ることができる。
【0051】
図面に基づき本発明の実施例を以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は第1実施例に基づく本発明による表面処理設備を移送方向Fに沿って示す断面図である。
【
図2】
図2は
図1に示された表面処理設備を移送方向Fに対して横方向で示す断面図である。
【
図3】
図3は
図2の表面処理設備の一実施例を表面処理設備が付加的に堆積空間を有する状態で示す図である。
【
図4】
図4は
図3の表面処理設備を雰囲気分離装置としてブロワを有する状態で示す断面図である。
【
図5】
図5は
図4の表面処理設備をブロワがエアカーテンを形成する状態で示す断面図である。
【
図6】
図6は
図4の表面処理設備をブロワが走行領域からの空気を吸引する状態で示す断面図である。
【
図7】
図7は
図3の表面処理設備を移送台車がポジティブロック的に駆動するための歯車を有する状態で示す断面図である。
【
図8】
図8は
図7の表面処理設備の1つの領域を示す側面図である。
【
図9】
図9は
図3の表面処理設備を移送台車がポジティブロック的に駆動する鎖を有する状態で示す断面図である。
【
図11】
図11は
図3の表面処理設備を移送台車を駆動するコンベヤベルトを有する状態で示す断面図である。
【
図13】
図13は本発明による移送台車を監視装置の監視領域と一緒に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
1. 第1実施例
図1は、車両本体12を表面処理するための本発明による表面処理設備10を示している。表面処理設備10は例えばラッカー塗装設備であってよい。車両本体12は処理室14内に配置されている。処理室はハウジング15によってほぼ気密に制限されている。ハウジング15は天井6と床7と側壁8とを有している。処理室14内には、車両本体12の表面を処理するための塗布装置16が配置されている。塗布装置は例えばロボットであってよい。ロボットの可動アームは回転式アトマイザーを支持している。処理室14の上方にはプレナム17が配置されている。
【0054】
車両本体12は固定装置18に分離可能に固定されている。固定装置は移送台車20に結合されており、移送台車によって支持される。移送台車20は、走行床23を備えた走行領域22内に配置されている。走行領域22は処理室14の下方に配置されており、そしてハウジング15の床7によって処理室14から分離されている。床7は図示の実施例では、塗布装置16をも支持している。この代わりに処理室内には、塗布装置16を支持する長手方向支持体又はこれに類するもののような付加的な支持構造が延びていてもよい。さらに、塗布装置16は、ハウジング15の他の部分に、例えばハウジング15の側壁8又は天井6に懸吊する状態で固定されていてもよい。
【0055】
移送台車20は車輪26を有している。これらの車輪によって移送台車20は走行領域22の走行床23上を移送方向Fに動かされる。車輪は全方向性の走行車輪であると有利である。これにより、移送台車20は、最も狭い空間上でも特にフレキシブルに操縦することができる。さらに、移送台車20は、搭載可能な専用の駆動装置21を有している。
【0056】
移送台車20は、引き出し可能な調節装置24を有している。調節装置によって処理室14内の車両本体12の位置を変えることができる。
図1では、処理室14内に配置された移送方向Fで見て前側の車両本体20は、引き出された調節装置24によって別の車両本体20よりも高くされている。車両本体20のより高い位置は、塗布装置16の車両本体20へのより良好な処理アクセスを可能にする。
【0057】
調節装置24は、1つ又は2つ以上の軸線を中心として固定装置18を旋回させるように構成されていてもよい。調節装置24はこの代わりに、例えばシザーリフトテーブルのように、固定装置18内へ組み込まれていてもよい。シザーリフトテーブルには、車両本体12を直接に固定することができる。
【0058】
走行領域22の出口には、ロック25が配置されている。ロック25は特に機械的な要素、例えばフラップであってよい。しかしながらエアカーテンもロック25として考えられる。
【0059】
このようなロックは走行領域22内の図示されていない入口にも位置していてよい。ロックは処理室14の入口及び出口に配置されていてもよい。
【0060】
移送台車20は、搭載可能な専用の駆動装置によって移送方向Fに走行領域22を通走する。車両本体12は、移送台車20によって処理室14を通して輸送され、そして塗布装置16によって処理される。調節装置24は必要な場合に、処理室内の車両本体12を持ち上げるか又は沈めこむことができる。
【0061】
続いて、車両本体12は移送台車20によって処理室14から搬出され、そしてさらなる処理ステーションに供給することができる。
【0062】
図2は、
図1に示された表面処理設備10の移送方向Fに対して横方向の断面を示している。
図1とは異なり、
図2にはさらに開口30が設けられていることが判る。開口は処理室14のハウジング15の床7内に形成されている。開口30はシール具32によって閉じられている。シール具は、処理室14と走行領域22との間の雰囲気交換を阻止するか又は困難にする。これにより、走行領域22内へ進入する処理室14の雰囲気量は全く又はほとんどない。これにより、車両本体12の処理時に発生するか又は処理のために必要とされる物質(例えばラッカー粒子)は、実質的に走行領域22へは到達しない。シール具32はこれにより、移送台車20の損傷、及び走行床23の汚染を回避する。
【0063】
さらに、
図2に示された実施例では、移送台車20には監視装置34が配置されている。監視装置は、移送台車20と、別の物及び/又は人との間隔を制御する。監視装置34は、1つ又は2つ以上の間隔監視センサを有している。間隔監視センサは、監視領域U内で移送台車34及び/又は別の物を認識する。移送台車34及び/又は別の物が監視領域U内に位置しているときには、監視装置34は移送台車20の制御装置に命令を伝送する。移送台車20の制御装置は命令を処理し、移送台車20の位置及び/又は速度を駆動装置21によって訂正することにより、移送台車20と、検出された移送台車34及び/又は別の物との間隔を大きくする。移送台車34及び/又は別の物が監視装置34の監視領域U内に位置していないときには、監視装置は移送台車20の制御装置に命令を伝送しない。
【0064】
2つ以上の間隔監視センサが設けられている場合には、移送台車20の表面上に、例えば移送台車20の前・後側及び側方に分配した状態で間隔監視センサを配置することにより、それぞれの移送台車20の周りで広い面積にわたって監視することができる。
【0065】
2. 第2実施例
図3は、乾燥設備としての表面処理設備10の実施例を示している。
図3の表面処理設備は実質的に
図1の表面処理設備10の構成要素を有している。さらに、
図3の表面処理設備10は、処理室14内で放出された物質、例えばオーバースプレイを沈殿させるための沈殿空間36を有している。沈殿空間36は走行床23の下方に、ひいては走行領域22及び処理室14の下方に配置されている。しかしながら、沈殿空間36は走行領域22に並んで、又は処理室14に並んで配置されることも考えられる。
【0066】
3. 第3実施例
図4は、
図3の表面処理設備10の断面を示している。加えて、表面処理設備10はブロワ38を有している。ブロワは移送台車20の走行領域に空気を供給する。
【0067】
走行領域内へ空気を供給することにより、正圧が走行領域22内に発生する。これにより、処理室14の走行領域22内への雰囲気の侵入が阻止され、又は困難にされる。あるいは、正圧は移送台車20の近くで少なくとも局所的に、移送台車20によって搭載される圧縮ガス蓄積器によって発生させることもできる。圧縮ガス蓄積器内に含有されるガスは窒素、又は別の防爆性ガスであることにより、爆発を回避する。
【0068】
4. 第4実施例
図5は、
図4の表面処理設備10の断面を実質的に示している。しかしながら、
図4とは異なり、
図5では、ブロワ38によって形成される空気流の空気ガイドは、エアカーテンが開口30のところで形成されるように配向されている。これにより、開口30は少なくともほぼ空気密に閉じられる。表面処理設備10内には吸引具40も配置されている。吸引具は、ブロワ38によって形成された空気流を開口のところで吸引する。
【0069】
5. 第5実施例
図6は、
図4の表面処理設備10を実質的に示しているが、しかし
図6のブロワ38は
図4とは異なり、走行領域22からの空気を吸引する。空気を開口30に供給することにより、処理室14から走行領域22への雰囲気交換を困難にし、又は阻止する。このことの利点は、走行領域22全体には正圧が形成されないことである。走行領域22内での空気の吸引はブロワの吸い込み個所に負圧を形成する。空気は正圧個所から負圧個所に流れることにより、圧力差を補償する。これにより、吸い込まれ、吹き付けられた空気の循環が走行領域22内で形成される。こうして、吹き付けられた空気は、
図4に示された実施例とは異なり、開口30を通って処理室14内に流れることはない。
【0070】
このことの利点は、
図4と比較して、走行領域から処理室への雰囲気交換も阻止されることである。走行領域22内の常に循環する空気はさらに、移送台車20及びその構成部分を冷却する。
【0071】
6. 第6実施例
図7及び8は、本発明によるポジティブロック的な駆動システム41の実施例を示している。ポジティブロック的な駆動システム41は、走行領域22内に定置に組み付けられた2つの歯付きロッド42を有している。移送台車20はさらに歯車44とモータ46とを有している。モータ46は歯車44を駆動する。これにより、歯車44はポジティブロック的に歯付きロッド42に噛み合い、そして歯付きロッド42に沿って転動する。移送台車20はこれにより移送方向Fに沿ってポジティブロック的に駆動され、車輪26上で走行床23に沿って進む。
【0072】
しかしながら、逆に複数の歯車44が走行領域に沿って定置に組み付けられていることも考えられる。歯車44は例えば電動モータによって駆動される。歯付きロッド42はこの場合、移送台車20に組み付けられている。歯車44はやはり歯付きロッド42内にポジティブロック的に噛み合う。歯車44が駆動され、移送台車20に固定された歯付きロッド42とポジティブロックすることにより移送台車20は走行領域22に沿って移動させられる。
【0073】
7.第7実施例
図9及び10は、本発明によるポジティブロック的な駆動システム41の第2実施例を示している。ポジティブロック的な駆動装置は、連行体50が固定された鎖48と、駆動ユニット54とを有している。移送台車20は係合要素52を有している。係合要素内に連行体50が係合する。駆動ユニット54は鎖48を駆動し、これにより移送台車が走行領域22を通って動くようにする。
【0074】
図11及び12は外部の駆動装置の別の実施例を示している。この実施例では、移送台車20は、並進運動させられる輸送手段によって支持され、移送される。
図11は、2つのこのような輸送手段を示している。これらの輸送手段は輸送ベルト58として形成されている。輸送ベルト58を動かすために、駆動装置はローラ56を有している。これらのローラは輸送ベルト58とポジティブロックされている。ポジティブロックのために、ローラ56に形成された把持要素が、輸送ベルト58の凹部又は開口内に係合する。ローラ56はモータ46によって駆動される。これにより、輸送ベルト58は、移送台車20を移送するために動かされる。あるいは、ローラ56は輸送ベルト58と摩擦結合されていてもよい。
【0075】
図12はこれとは別に、移送台車20を移送するための輸送手段として、鎖58’を示している。鎖58’は歯車56’によってポジティブロック的に駆動される。
【0076】
8. 第8実施例
図13及び14は、
図1~12に示された移送台車20を固定装置18と一緒に示している。移送台車20には、
図13では車両本体12が積載されており、移送台車20は走行領域22の外部に位置している。
【0077】
図14は非積載の移送台車20を示している。移送台車は、走行領域22の外部に位置している。
図13の移送台車20の操縦時には車両本体12による付加的な危険があることに基づき、監視領域Uは、
図14の非積載の移送台車20の監視領域Uよりも大きく設定されている。
【0078】
図15は、走行領域22内の、車両本体12を積載された移送台車20を示している。
図13の積載済移送台車と比較して、監視領域はより小さく設定されており、これにより移送台車20を走行領域22内でより正確に位置決めすることができ、監視装置34が永久的にエラーメッセージを発することはない。これにより、走行領域22内の隣接する移送台車20間の間隔をより小さく設定することができ、このことは、表面処理設備10のより効率的な空間利用を可能にする。走行領域22内のより小さな監視領域Uは走行領域22の外側よりもそれほど危険ではない。それというのも、走行領域22内部での人及び物との衝突のおそれが僅かであるからである。
【0079】
監視領域Uの大きさは処理プロセスに依存させることができる。例えば、車両本体12を比較的大きく互いに離隔しようとする被覆設備の監視領域Uは、乾燥設備の監視領域Uよりも大きくてよい。
なお、本発明の構成として以下に示すものがある。
[構成1]
車両本体(12)を表面処理するための表面処理設備(10)であって、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)であって、前記車両本体(12)を固定することができるそれぞれ1つの固定装置(18)を有し、各移送台車(20)が、該移送台車に搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動可能である、少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)と、
b)実質的に気密にハウジング(15)によって仕切られた処理室(14)であって、該処理室(14)内で前記車両本体(12)の表面が処理され、前記固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置に固定された前記車両本体(12)とが、各移送台車(20)によって少なくとも一時的に前記処理室(12)内で動かされる、処理室(14)と、
c)前記ハウジング(15)の外側に配置された走行領域(22)であって、該走行領域(22)内で前記移送台車(20)が少なくとも一時的に移動可能であり、前記固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置に固定された車両本体(12)とが前記処理室(14)内に位置しているときに、各移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置している、走行領域(22)と、
d)開口(30)であって、前記ハウジング(15)内で前記走行領域(22)と前記処理室(14)との間に形成され、前記移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置しているときに、各移送台車(20)の固定装置(18)が前記開口を貫通している、開口(30)と、を備え、
前記走行領域(22)内で第1雰囲気が生成され、前記処理室(14)内で前記第1雰囲気とは異なる第2雰囲気が生成される、表面処理設備(10)。
[構成2]
前記第1雰囲気は少なくとも1つのパラメータによって前記第2雰囲気とは異なっており、前記パラメータが、温度、圧力、空気湿度、流動速度、流動方向、及び粒子負荷から成るグループから選択されていることを特徴とする、構成1に記載の表面処理設備(10)。
[構成3]
雰囲気分離装置(32;38;40)を備え、該雰囲気分離装置は少なくとも前記処理室(14)から前記走行領域(22)への雰囲気交換を困難にするか又は阻止することを特徴とする、構成1又は2に記載の表面処理設備(10)。
[構成4]
前記雰囲気分離装置は前記開口(30)内又は前記開口(30)に配置されたシール具(32)であることを特徴とする、構成3に記載の表面処理設備(10)。
[構成5]
前記雰囲気分離装置(32;38;40)はブロワ(38)であり、該ブロワによって空気流を生成することができ、前記空気流は少なくとも前記処理室(14)から前記走行領域(22)への雰囲気交換を困難にするか又は阻止することを特徴とする、構成3に記載の表面処理設備(10)。
[構成6]
前記空気流はエアカーテンであり、該エアカーテンが前記開口(30)を少なくとも実質的に気密に閉鎖することを特徴とする、構成5に記載の表面処理設備(10)。
[構成7]
前記走行領域(22)内において、前記移送台車(20)は、前記走行領域(22)内に設けられ、且つ搭載可能な駆動装置から独立した駆動システム(41)によって、少なくとも一時的に動かされることを特徴とする、構成1~6の何れか一項に記載の表面処理設備(10)。
[構成8]
前記駆動システム(41)は、前記走行領域(22)の少なくとも一部内で、前記移送台車(20)とポジティブロック的に結合していることを特徴とする、構成7に記載の表面処理設備(10)。
[構成9]
調節装置(24)を備え、前記調節装置は、前記固定装置(18)と前記固定装置に固定された前記車両本体(12)とを可変の高さで前記処理室(14)内に提供するように構成されていることを特徴とする、構成1~8の何れか一項に記載の表面処理設備(10)。
[構成10]
物及び/又は人に対する前記移送台車(20)の間隔制御のための監視領域(U)を有する監視装置(34)が、前記移送台車(20)に配置されており、前記監視領域(U)の大きさ及び/又は前記移送台車(20)に対する前記監視領域(U)の位置が可変であることを特徴とする、構成1~9の何れか一項に記載の表面処理設備(10)。
[構成11]
前記移送台車(20)は、前記走行領域(22)内に位置しているときに、前記監視領域(U)はより小さいことを特徴とする、構成10に記載の表面処理設備(10)。
[構成12]
構成1~11の何れか一項に記載の表面処理設備(10)を有する、車両を製造するための製造設備。
[構成13]
車両本体(12)の表面処理方法であって、
a)少なくとも2つの床支持型の移送台車(20)が、車両本体(12)が固定されるそれぞれ1つの固定装置(18)を有し、各移送台車(20)を該移送台車(20)に搭載可能な専用の駆動装置によって独立して移動させ、
b)前記固定装置(18)の少なくとも一部と前記固定装置(18)に固定された前記車両本体(12)とを、前記移送台車(20)によって、実質的に気密にハウジング(15)によって仕切られた処理室(14)内で少なくとも一時的に動かし、前記車両本体(12)を前記処理室(14)内で処理し、
c)前記ハウジング(15)の外部に配置された走行領域(22)で前記移送台車(20)を少なくとも一時的に移動させ、各固定装置(18)の少なくとも一部と該固定装置に固定された車両本体(12)とが前記処理室(14)内に位置しているときに、各移送台車(20)を前記走行領域(22)に位置させ、
d)前記移送台車(20)が前記走行領域(22)内に位置しているとき、各移送台車(20)の前記固定装置(18)を、前記ハウジング(15)内で、前記走行領域(22)と前記処理室(14)との間に形成される開口(30)を貫通させる、表面処理方法において、
前記走行領域(22)内で第1雰囲気を生成し、前記処理室(14)内で前記第1雰囲気とは異なる第2雰囲気を生成する、ことを特徴とする車両本体(12)の表面処理方法。
[構成14]
前記移送台車(20)に配置された監視装置(34)は、監視領域(U)を有して、前記移送台車(20)の物及び/又は人に対する間隔を制御し、前記監視領域(U)の大きさ及び/又は前記移送台車(20)に対する監視領域(U)の位置が可変であり、前記監視領域(U)が前記移送台車(20)の前記走行領域(22)内への進入時には縮小され、且つ/又は前記走行領域(22)からの進出時には拡大されることを特徴とする、構成13に記載の車両本体(12)の表面処理方法。
[構成15]
前記走行領域(22)内の互いに連続する移送台車(20)の間隔、及び/又は前記移送台車(20)の運動方向が変化させられる、構成13又は14に記載の車両本体(12)の表面処理方法。