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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】皮膚の基礎アクセスポータル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20240610BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B17/34
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021556773
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020057404
(87)【国際公開番号】W WO2020193303
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】16/362,488
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンス・ジェイ・ライリー
(72)【発明者】
【氏名】ラムゼイ・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ガマシュ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブールマン・エリック
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324044(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310975(US,A1)
【文献】特開平10-290797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61B 17/34
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備えており、
前記パッドが、前記ロック機構を受容するように構成された、前記パッドを貫通して延在する開口部を有しており、
前記開口部が、細長いスロットである、システム。
【請求項2】
前記開口部が、前記パッドの中央に位置する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記パッドが、前記パッドの撮像を補助するための撮像特徴部を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記パッドが、前記外科用アクセス装置のナビゲーションを補助するためのナビゲーション特徴部を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備えており、
前記パッドが、少なくとも1つの放射状指状部を有する中心部分を有する、システム。
【請求項6】
前記パッドが、可撓性布、エラストマー、及びポリマーのうちのいずれかから作製されている、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備えており、
前記ロック機構が、前記パッドの前記近位対向面に沿った方向への、前記外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる、システム。
【請求項8】
前記ロック機構が、前記パッドの前記近位対向面に対して横断方向への、前記外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ロック機構が、前記外科用アクセス装置の回転運動及び前記外科用アクセス装置の角運動のいずれかを選択的にロックすることができる、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ロック機構が、少なくとも1つのロックリングを更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備えており、
前記ロック機構が、剥離性接着剤及び面ファスナーのうちのいずれかを更に含む、システム。
【請求項12】
外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備えており、
前記ロック機構が、前記外科用アクセス装置を受容する開口部を有する取り付け構成要素と、アームと、を含み、前記アームの第1の端部が、前記取り付け構成要素に多軸結合されるように構成され、前記アームの第2の端部が、前記パッドに結合されるように構成されている、システム。
【請求項13】
前記パッドが、前記外科用アクセス装置から遠隔に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記外科用アクセス装置は、前記アームが前記外科用アクセス装置を前記パッドから分離するように、前記パッドから離れた距離の位置に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記パッドには、その中を貫通して形成された開口部がない、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記アームの前記第1の端部が、前記取り付け構成要素と係合するように構成されたボールジョイントを含む、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外科用アクセス安定化装置及び関連する方法、例えば外科手術中に患者に対してポート又は他の外科用アクセス装置を安定化するための方法が、本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
多くの場合で、器具や物体を安定化させることが望ましい場合がある。外科用途においては、例えば、外科手術中に患者に対して、例えばポートなどの外科用アクセス装置を安定化させることが望ましい場合がある。更なる例として、手術部位に向かってアクセス装置を経皮的に貫通する器具や物体(例えば、インプラント)などを収容するため、外科手術中に、外科用アクセス装置の所望の軌道を確立、安定化、及び維持することが望ましい場合がある。更に、外科手術との干渉を最小限に抑え、必要な場合、手術中に、外科用アクセス装置の容易かつ迅速な調節を可能にする方法で、外科用アクセス装置を安定化させることが望ましい場合がある。
【0003】
現在の慣例では、外科用器具又は物体は、一般に別の器具又は物体への接続又は連結によって安定化される。多くの場合、剛性コネクタを使用して、それを支持体に接続又は連結することによって外科用器具を安定化させる。例えば、機械的アームコネクタを使用して、外科用アクセス装置を外科用ベッド又は剛性インプラントポストなどの支持体に接続し、外科手術中にこのアクセス装置を安定させることができる。先行技術の安定化方法及び装置は、外科用アクセス装置に連結するために、手術部位又はその近くの少なくとも1つの追加の静止物体に依存する。このようなシステムは、動作域の寸法が小さく、操作のための空間量が限られている低侵襲外科手術においては特に厄介である場合がある。
【0004】
更に、外科用アクセス装置を安定化させるための剛性の機械的アームコネクタを使用することにより、いくつかのやり方で外科手術を制約する。例えば、支持体(例えば、外科用テーブル又は剛性インプラントポスト)の位置は、機械的コネクタの寸法及び構成に基づいてアクセス装置の位置を決定付ける。同様に、先行技術の剛性機械的コネクタは、支持体に接続されると、アクセス装置の移動の範囲を制限する可能性がある。多くの場合、外科医は、手術の解剖学的形態に基づいて、少なくとも1つの好ましい方向で外科手術中により大きな可動域を望む。例えば、脊椎手術では、外科医は、脊柱を横断する方向へのより大きなポート運動を可能にする能力を望む場合が多い。剛性コネクタは、このコネクタ及び付随する支持構造体の物理的制約により、この所望の動きを防止する。更に、外科手術の流れは、外科医の専門知識の作用ではなく従来技術のコネクタ安定化システムによって決定され得る。例えば、外科用アクセス装置が椎弓根スクリュー又は他のインプラントポストへの接続によって安定化される場合、対側スクリュー(contralateral screw)は、アクセス装置の挿入及び安定化の前に患者に最初に配置されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、外科手術中に、外科用器具、特に外科用アクセス装置の所望の軌道及び位置決めを、より容易なかつ制約の少ない方法で確立、安定化、及び維持するための装置及び技術に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般には、外科用アクセス装置を安定化するための装置及び方法を提供する。具体的には、ポートなどの外科用アクセス装置は、本明細書に記載される装置及び方法を使用して、アンカー表面、例えば患者の皮膚に対して外科的切開部内で安定化され得る。本発明の一態様では、近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、パッドに結合された外科用アクセス装置と、パッドに対する外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするロック機構と、を備える、外科用アクセス安定化装置が提供される。
【0007】
上述した外科用アクセス安定化装置は、本発明の範囲内において様々な修正を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、パッドは、ロック機構を受容するために、パッドを貫通して延在する開口部を有することができる。更に、いくつかの実施形態では、開口部は細長いスロットであってもよい。いくつかの実施形態では、開口部は、パッド上の中央に配置されてもよい。パッドは、パッドの撮像を補助するための撮像特徴部を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、パッドは、外科用アクセス装置のナビゲーションを補助するためのナビゲーション特徴部を含んでもよい。特定の実施形態では、パッドは、少なくとも1つの放射状指状部を有する中心部分を有してもよい。いくつかの実施形態では、パッドは、可撓性布、エラストマー、及びポリマーのうちのいずれかから作製されていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、ロック機構は、パッドの近位対向面に沿った方向への、外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる。いくつかの実施形態では、ロック機構は、パッドの近位対向面に対して横断方向への、外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる。更に、いくつかの実施形態では、ロック機構は、外科用アクセス装置の回転運動及び外科用アクセス装置の角運動のいずれかを選択的にロックすることができる。本発明のロック機構は、様々な形態をとることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ロック機構は、少なくとも1つのロックリングを含むことができる。更に他の実施形態では、ロック機構は、剥離性接着剤及び面ファスナーのうちのいずれかを含むことができる。
【0009】
別の態様では、近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、作業チャネルを画定する外科用アクセス装置と、パッドと外科用アクセス装置との間に結合されて、パッドから離れた位置に外科用アクセス装置を配置する接続機構と、を備える、外科用アクセス安定化システムが提供される。
【0010】
上述した外科用アクセス安定化システムは、本発明の範囲内において様々な修正を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、接続機構は、第1の端部で外科用アクセス装置に結合され、かつ第2の端部でパッドに結合されたアームを含むことができる。更に、いくつかの実施形態では、アームは、第2の端部に対する第1の端部の配置を調節するように屈曲可能であり得る。
【0011】
更に別の態様では、患者に切開部を作ることと、患者にパッドを接着することと、切開部を通して外科用アクセス装置を患者に挿入することと、外科用アクセス装置をパッドに結合することと、パッドに対する外科用アクセス装置の位置を選択的にロックすることと、を含む、外科用アクセス装置を安定化する方法が提供される。
【0012】
上述した外科用アクセス安定化方法は、本発明の範囲内において様々な修正を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、パッドに対して外科用アクセス装置を並進移動、回転、及び角度付けすることのうちの少なくとも1つによって、切開部内で外科用アクセス装置を位置決めすることを更に含み得る。
【0013】
他の実施形態では、外科用アクセス装置の位置を選択的にロックすることによって、パッドに対する外科用アクセス装置の更なる並進、回転、又は角度付けを防止することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、切開部を作った後に、パッドを患者に接着してもよい。いくつかの実施形態では、切開部を作る前に、パッドを患者に接着してもよい。特定の実施形態では、パッドは、切開部から離れた位置で患者に接着されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、外科用アクセス装置をパッドに結合することは、パッドの開口部内に外科用アクセス装置を位置決めすることを含み得る。他の実施形態では、外科用アクセス装置をパッドに結合することは、コネクタアームを用いて外科用アクセス装置をパッドに連結することを含み得る。
【0016】
他の実施形態では、外科用アクセス装置安定化方法は、外科用アクセス装置が切開部を通して挿入された後に、パッドの少なくとも一部分を、外科用アクセス装置から配備することを更に含み得る。
【0017】
上述した特徴又は変形例のいずれも、多くの異なる組み合わせで、本開示の任意の特定の態様又は実施形態に適用することができる。任意の特定の組み合わせの明確な記述はないが、それは単に本概要での重複を回避するためである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
上述の本発明の態様及び実施形態は、添付の図面と共になされる以下の詳細な説明によって、更に十分に理解されよう。
図1】内部に外科用アクセス装置が配設された、基礎パッド及びロック機構を有する外科用アクセス安定化装置の一実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用アクセス安定化装置の斜視図である。
図3】内部に外科用アクセス装置が配設された状態での、図1の外科用アクセス安定化装置の断面図である。
図4】内部に外科用アクセス装置が配設された状態での、図1の外科用アクセス安定化装置の斜視図である。
図5図1の基礎パッドの斜視図である。
図6図1のロック機構の基部が係合された、パッドの斜視図である。
図7図6の基部が係合された、基礎の分解組立図である。
図8図6の基部の斜視図である。
図9図6の基部の上面図である。
図10】内部に外科用アクセス装置が配設された状態での、図1の外科用アクセス安定化装置のロック機構の基礎並びに基部、スカート、及び分割リングの斜視図である。
図11図10のスカートの斜視図である。
図12図10の分割リングの斜視図である。
図13】内部に外科用アクセス装置が配設された状態での、図1のロック機構のスカート及び分割リングの斜視図である。
図14図1のロック機構の基部、スカート、分割リング、及び保持リングの斜視図である。
図15図14のロック機構構成要素の断面図である。
図16図14の保持リングの上面図である。
図17図16の保持リングの斜視図である。
図18図1のロック機構の基部と係合された、保持リングの上面図である。
図19図19の断面図である。
図20】内部に外科用アクセス装置が配設された状態での、図1の外科用アクセス安定化装置の斜視図である。
図21図20のロック機構の断面図である。
図22】第1のロック部品の一実施形態の斜視図である。
図23】第2のロック部品の一実施形態の斜視図である。
図24図23の第2のロック部品の断面図である。
図25】スカートと係合された、図22の第2のロック部品の断面図である。
図26】外科用アクセス安定化装置の、一実施形態の例示的な外科用用途を表したものである。
図27】外科用アクセス安定化装置の、別の実施形態の例示的な外科用用途を表したものである。
図28】内部に剛性ポートチューブが配設された状態での、脊椎手術で使用中の本発明の外科用アクセス安定化装置を図で表したものである。
図29】内部に可撓性バリアポートが配設された状態での、脊椎手術で使用中の本発明の外科用アクセス安定化装置を図で表したものである。
図30】外科用アクセス安定化装置の、別の実施形態の例示的な外科用用途を表したものである。
図31】外科用アクセス安定化装置の、別の実施形態の例示的な外科用用途を表したものである。
図32】外科用アクセス安定化装置の、別の実施形態の例示的な外科用用途を表したものである。
図33】内部に外科用アクセス装置を有する、外科用アクセス安定化装置の別の実施形態の斜視図である。
図34図33の外科用アクセス安定化装置の、例示的な基礎パッドを表したものである。
図35】内部に外科用アクセス装置を有する、外科用アクセス安定化装置の別の実施形態を表したものである。
図36図35の外科用アクセス安定化装置の別の図である。
図37図35の外科用アクセス安定化装置の、別の例示的な外科用用途を表したものである。
図38図35に示す外科用アクセス安定化装置の、別の例示的な外科用用途を表したものである。
図39】本発明の外科用アクセス安定化装置の外科用アクセス装置の、別の実施形態の図である。
図40】本発明の外科用アクセス安定化装置のハンドルの、別の実施形態の斜視図である。
図41図40のハンドルの分解組立図である。
図42図40のハンドルの本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願で開示する装置、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、特定の例示的実施形態について、これから説明する。これらの実施形態のうちの1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に図示される。当業者であれば、本明細書で詳細に説明され、添付の図面に示される装置、システム、及び方法は、非限定的な例示的実施形態である点を理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して図示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような修正及び変形例は、本開示の範囲内に含まれるものとする。
【0020】
更に、直線又は円形の寸法が、開示される装置及び方法の説明で使用される限りにおいて、このような寸法は、このような装置及び方法と共に使用され得る形状のタイプを限定することを意図しない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。更に、装置の寸法及び形状、並びにその構成要素は、装置が使用されることになる患者の解剖学的形態、装置と共に使用されることになる構成要素の寸法及び形状、並びに装置が使用されることになる方法及び手技に少なくとも依存し得る。
【0021】
図示された実施形態及び付随する説明は、脊椎手術処置における用途、特に低侵襲脊椎手術、本明細書に記載される装置、システム、及び方法は、これらの用途に限定されない。むしろ、記載される装置、システム、及び方法は、物体の安定化を必要とするか、又は利益をもたらす様々な用途において利用することができ、外科手術の過程で、1つ又は2つ以上の所望の位置、軌道、又は配向で患者に対する外科用アクセス装置を安定化させる、外科用途に特に適している。
【0022】
図1図4は、外科用アクセス安定化装置100の、第1の例示的実施形態を示す。装置100を使用して、外科用アクセス装置、例えば患者の切開部を通して挿入されたポート又はアクセス装置10を安定化することができる。好ましくは、本発明の外科用アクセス安定化装置は、患者に対して外科用アクセス装置を安定化させるために、患者取り付け型であり得る。装置100は、患者に対するポートの並進運動、回転運動、又は角運動のうちのいずれか1つを選択的に制限することができる。更に、外科用アクセス安定化装置100を使用して、外科手術中に所望の軌道で外科用アクセス装置を確立、安定化、及び維持し、必要に応じて容易な調節を提供することができる。
【0023】
図1は、本発明による外科用アクセス安定化装置の好ましい実施形態を示す。内部に外科用アクセス装置、例えばポート又はアクセス装置10が係合された状態での、外科用アクセス安定化装置100が示されている。外科用アクセス安定化装置100は、以下でより詳細に説明される、基礎パッド102及びロック機構104を含むことができる。ロック機構104は、ポート10をパッド102に結合及び固定するように構成されることができる。ロック機構は、ポート10の位置決め及び調節を容易にするように更に構成することができ、パッドに対するポートの移動を選択的にロックすることができる。パッド102は、アンカー表面に接触して接着するように構成された、接着遠位対向面を有することができる。好ましい実施形態では、アンカー表面は患者の皮膚であってもよく、パッドの遠位対向面は、患者の接触面であり得る。パッドの近位対向面は、ユーザに露出させることができ、外科手術中にパッドの配置及びポート10の調節を容易にするための特徴部を含むことができる。
【0024】
図2は、内部に外科用アクセス装置が配設されていない状態での、図1の外科用アクセス安定化装置を示す。中央開口部101は、外科用アクセス安定化装置100を貫通して延在することができ、ポート10を受容するように構成することができる。図2に示されるように、いくつかの実施形態では、中央開口部101は、ロック機構104及びパッド102を貫通して延在することができる。外科用アクセス安定化装置の中心軸A1は、中央開口部101を貫通して、パッドの近位対向面に対して垂直に延在することができる。ポート10は、ポート10が外科用アクセス安定化装置内に受容されるように、中央開口部101を貫通して、軸A1に沿って遠位に挿入されることができる。図3は、ポート10が中央開口部101を貫通して挿入された状態での、図1の外科用アクセス安定化装置100の断面図を示す。ここでは、ロック機構104の一実施形態を編成する様々な構成要素を、組み立てられた構成で見ることができる。一実施形態では、ロック機構104は、基部200と、保持リング202と、スカート204と、分割リング206と、第1のロック部品208と、第2のロック部品210とを含むことができ、これらの各々は以下の追加の図面を参照してより詳細に説明する。
【0025】
ポート10は、近位端10p及び遠位端10dを有することができ、それらの間に、長手方向軸A2を有する内側ルーメン20が延在する。ポート10が外科用アクセス安定化装置100内に挿入されると、ポート10の近位端10pは、外科用アクセス安定化装置の近位に留まることができ、一方、ポート10の遠位端10dは、外科用アクセス安定化装置を越えて、患者の切開部を通って手術部位まで遠位に延在することができる。図1及び図3に示される配向では、外科用アクセス安定化装置の長手方向軸A1及びポート軸A2は、外科用アクセス装置100に対するポート10の描写された配向の結果として、同一線上にあることが理解されるであろう。より詳細には、ポート10が、ポート軸A2が外科用アクセス装置100の長手方向軸A1と一直線になるように、パッド102に対していかなる角度形成をすることなく外科用アクセス装置100内に挿入されて、示されている。ポート10が外科用アクセス装置100に対して角度付けされると、長手方向ポート軸A2は、外科用アクセス安定化装置の長手方向軸A1に対してオフセット又は角度付けされ得る。これは、パッド102に対するポート10の移動が、ポート軸A2と安定化装置の軸A1との間の角度を調節することができるからである。例えば、図4に見られるように、ポート10は、ポート軸A2が外科用アクセス安定化装置の長手方向軸A1から角度αだけ移動するように、パッド102に対してロック機構104内に角度付けされることができる。角度αがゼロ度であることは、ポート10と外科用アクセス安定化装置の長手方向軸との共線的配向に対応することが理解されるであろう。
【0026】
図3に戻ると、ポート10は、操作者がポート10を外科用アクセス安定化装置内で操作することを可能にするハンドル12を有することができる。ハンドル12は、把持部14とポート延長部16とを含むことができる。ポート延長部16は、ポート延長部の内側ルーメンがポートルーメン20と一直線になるように、近位ポート端10pと係合するように軸方向に延在することができる。ハンドル12に係合することによってルーメン20を延在させることにより、ポート10の内側ルーメン20を通るインプラントなどの器具の挿入をより容易にすることができる。一実施形態では、ポート10の外側表面は、ポートを所望の長手方向位置に固定するためにハンドル12の相補的な係合特徴部と嵌合するように構成された、係合特徴部18を有することができる。例えば、ポート10の外側表面は、複数の長手方向に整列した溝18を有してもよい。一実施形態では、ハンドル12のポート延長部16は、ポート10の溝18のうちの少なくとも1つと選択的に係合するように構成された、少なくとも1つの内向きに延在する突起部を有してもよい。このようにして、ハンドルは、ポート延長部と複数の溝18との間の係合を調節することによって、ポート10上の所望の位置に配置されることが可能となる。当業者であれば、ハンドル12をポート10と係合するための代替的な係合方法が利用可能であることを理解するであろう。ハンドル12がポート10に固定された状態で、グリップ14を使用して、ポート10を、パッド102及び軸A1に対して回転方向、角度方向、又は並進方向のうちのいずれかで移動させることができる。あるいは、ポートの近位端10pは、ポートの移動を容易にするために、ハンドルを取り付けることなく直接操作されてもよい。
【0027】
把持部14は、ポート軸A2を実質的に横断する方向に延在することができ、ユーザによるポートの操作を容易にするように構成されることができる。把持部14は、任意の様々な形状を包含することができる。図1及び図3に示される1つの実施形態では、把持部14は、半円形の端部を有する傾斜レバー形状を有してもよい。好ましくは、グリップ本体は、近位方向に傾斜し得る。把持部14は、ユーザによる容易な把持及び操作の手助けとなるように成形することができる。例えば、把持部14の傾斜部分は、ユーザの手又は指を快適に受容することができる輪郭を有してもよい。
【0028】
図5図25は、安定化装置100の様々な例示的構成要素を示す。図5は、基礎パッド102の例示的な一実施形態を示す。パッドは、近位対向面102pと、図示されていない接着遠位対向面とを有し得る。接着遠位対向面は、パッド102がアンカー表面に固定されるように、アンカー表面に接着され得る。例えば、パッド102は、パッド102が患者に対してしっかりと固定されるように、患者の皮膚に接着されることができる。しかしながら、他の実施形態では、パッド102は、任意の様々な表面に接着されてもよい。パッド102は、好ましくは、パッドがアンカー表面にぴったり合わせることができるように、可撓性材料から作製することができる。可撓性パッド102は、様々な適用位置のうちのいずれかで、パッドが患者の皮膚に密着することを可能にし得る。パッド102の接着遠位対向面は、遠位接着層を有することができる。例えば、接着層は、医療用の接着剤であってもよい。
【0029】
非限定的な例として、パッド102は、可撓性布、エラストマー、及びポリマーのうちのいずれかから作製されてもよい。例示的な材料としては、合成ゴム又は天然ゴムが挙げられる。一実施形態では、パッド102は、例えば、ゴム、ネオプレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの薄いポリマーから作製することができる。いくつかの実施形態では、薄いポリマーパッドは、1mm~5mmの厚さを有してもよい。他の実施形態では、薄いポリマーパッドは、1.5mm~3.5mmの厚さを有してもよい。
【0030】
パッド102は、任意の様々な寸法及び形状を有することができ、特に外科手術又は用途に適するように調整することができる。例えば、パッド102の形状は、無菌ドレープ開口部全体を覆うように構成することができる。一実施形態では、図5に示すように、パッド102は、角が丸みを帯びた概ね四角形状を有することができる。あるいは、パッドは、小柄な患者の腰部などの解剖学的構造の中に合うように、薄い形状を有することができる。更に、パッド102は、特定の用途又は外科手術のための配置を補助するように、切断、トリミング、又は他の形で成形されることができる。例えば、パッド102は、手術部位又は手術部位の近くに配置され得る障害物又は物体に適合するように切断されてもよい。
【0031】
パッド102は、パッドを貫通して近位対向面102pから遠位対向面まで延在する開口部106を有することができる。開口部106は、様々な異なる形状及び寸法のうちのいずれかであり得ることが理解されるであろう。加えて、開口部106は、パッド102上の様々な異なる位置に配置されることができる。例えば、開口部106は、概ね円形であってもよく、かつ図5に示されるようにパッド102の中央部分に位置されてもよい。あるいは、開口部106は、パッド102の縁部の中心から外れて、又はより近くに位置されてもよい。パッド102は、開口部106を取り囲む凹部108を有してもよい。凹部108は、ロック機構104とパッド102との間のよりスムーズな係合及び相対運動を促進することができる。一実施形態では、パッド102の凹部108は、本明細書でより詳細に議論されるように、ロック機構104の遠位対向部分と同様の形状又は湾曲を有することができる。
【0032】
パッド102は、パッドをロック機構に取り外し可能に取り付けるように構成された、1つ又は2つ以上の係合特徴部を有することができる。一実施形態では、1つ又は2つ以上の突起部110が、パッド102の近位対向面から近位に延在することができる。突起部110は、パッド102とロック機構104との間の確実な接続を容易にするために、ロック機構104の相補的な部分と係合するように構成することができる。一実施形態では、突起部110は、概ね矩形又は楕円形であってもよく、パッド102の近位対向面上に離れて延在することができる。一実施形態では、パッド102は、開口部106の外周の周りに離間配置された複数の突起部110を含むことができる。ロック機構104をパッド102と安定的に嵌合させることができるように、パッド102上に任意の数の突起部110が形成されてもよい。突起部110は開口部106の外周の周りに配置されて示されているが、突起部110は、パッド102上の様々な位置のうちのいずれかに配置されてもよい。当業者であれば、他の係合特徴部及び方法を使用してロック機構104をパッド102に固定することができることを認識するであろう。係合特徴部の非限定的な例としては、スナップ機構、鍵錠機構、任意の様々なねじ又は他のねじ特徴部などが挙げられる。
【0033】
パッドは、ユーザを補助又は手助けするための様々な特徴部を更に含むことができる。パッドは、位置決め中にパッドの撮像を補助するための撮像特徴部を有することができる。例えば、パッド102は、位置決め中の蛍光透視鏡の識別を補助するための、放射線不透過性マーキング112を含むことができる。放射線不透過性マーキングは、パッド102の配置に関する正確なフィードバックを提供するために、撮像システムによって識別することができる。一実施形態では、マーキング112は、パッド102内に係合されたロック機構、又はパッド102の開口部106を、患者の正中線から特定の既知の距離だけ離れて位置決めするのを補助することができる。パッド102は、パッドに結合された外科用アクセス装置のナビゲーションを補助するための、ナビゲーション特徴部を含むことができる。例えば、パッドは、結合された外科用アクセス装置の軌道又は軸配置の外科的ナビゲーションを補助するために、反射性基準又はマーカを有することができる。
【0034】
一実施形態では、開口部106の一部分とロック機構104の中央開口部とが位置合わせされて、外科用アクセス安定化装置の中央開口部101を形成するように、ロック機構104を開口部106を介してパッド102に取り付けることができる。例示的な実施形態では、ロック機構104の基部200は、図6に示すようにパッド102に接続することができる。基部200は、ロック機構104とパッド102との間の一次接触として機能することができる。基部200は、パッド開口部106の少なくとも一部分と位置合わせすることができる、開口部216を含むことができる。基部200は、概ねリング形状を有するものとして示されているが、基部200は任意の様々な形状を有し得ることが理解されるであろう。基部200及びパッド102は、外科手術の前に単一ユニットとして予め組み立てられ得る。あるいは、パッド102及び基部200は、パッド102をアンカー表面に接着する前又は接着した後のいずれかで、外科手術中に取り付けられ得る2つの別個の構成要素として構成されてもよい。例えば、パッド102は、所望の位置でアンカー表面に接着され得る。パッドが固定された状態で、基部200がパッド102にしっかりと取り付けられるように、基部200の係合特徴部はパッド102の係合特徴部と係合することができる。
【0035】
非限定的な例として、図7に示されるように、基部200の係合特徴部は、スロット209として構成されてもよい。スロット209は、基部200を貫通して延在することができ、パッド102の突起部110を受容するように構成することができる。基部200は、パッドの突起部110を基部のスロット209内に配置して、基部とパッドとの間にスナップ嵌めを形成することによって、パッド102にしっかりと取り付けられることができる。代替的な取り付け機構が、基部200をパッド102に固定するために利用可能であることが理解されるであろう。基部200は、基部200の外側部分から開口部216まで内側に延在するテーパ部218を有することができる。好ましくは、テーパ部218は、パッド102の凹部108の形状と相補的な形状を有してもよい。基部200がパッド102に取り付けられると、基部200のテーパ部218及びパッド102の凹部108は、パッド102内に基部200を着座させるように整列され得る。
【0036】
図8は、基部200の斜視図を示す。テーパ部218と外側リム壁222との間に、プラトー220を形成することができる。外側リム222は、プラトー220から近位に延在して、基部の外縁の周囲にリングを作り出すことができる。一実施形態では、外側リム222は、プラトー220との接合部で、遠位端から対向する近位端まで先細になることができる。外側リム222は、リム222の近位端に上部リップを有し、プラトー220の上に半径方向内向きに延在する、1つ又は2つ以上の延長部224を含んで、延長部224の上方リップとプラトー220の表面との間に溝225が形成されるようにすることができる。移行部226は、各延長部224の一端に形成されることができる。好ましい実施形態では、移行部226は、基部200の外周に沿って時計回り方向に測定されるように、各延長部224の遠端に形成され得る。移行部226は、上部リップからプラトー220まで遠位に延在する固体部分であり得る。換言すれば、移行部226は、周方向溝225内に停止部を形成する。移行部226はまた、延長部224と凹部228との間の移行を画定することができる。凹部228は、外側リム222を越えて半径方向内側に延在する任意の部分は有さない。したがって、移行部226は、延長部224の半径方向内側位置からリムの内側表面の位置まで、半径方向外側に傾斜する外縁を有することができる。凹部228は、2つの延長部224の間に凹状又はポケット状の領域を形成することができる。
【0037】
図9の基部200の上面図から分かるように、基部200の一実施形態は、3つの凹部によって分離された3つの延長部224を含み得る。好ましくは、凹部のうちの1つは、変形凹部229であり得る。タブ部230は、基部200に挿入され時計方向に回転する物体によって、半径方向外側に付勢され得る。タブ部230は、図9に示すように、一旦外向きの力が取り除かれると、中立位置に戻ることができる。タブ部230は、リム222の外縁から半径方向内側に延在し、プラトー220に沿った周方向の距離を継続する、チャネル232によって形成することができる。タブ部230は、上述した移行部226と同様に、プラトー220まで遠位に延在する停止部227を含むように形成されてもよい。後述するように、保持リング202は、保持リングがロック状態とロック解除状態との間で回転できるように、保持リング202を基部200内に回転可能に受容されることができる。タブ230は、保持リングをロック位置に固定することができ、保持リングがロック解除状態に戻ることを所望しない回転を防止することができる。識別特徴部234は、ユーザが外科用アクセス安定化装置を配向及び組み立てるのを補助するために、タブ230の一部分から延在することができる。例えば、識別構造234は、タブ部230の停止部227から近位に延在し得る。一実施形態では、保持リングをロック状態からロック解除状態に戻すために、ユーザは、タブ230を識別構造234によって配置し、同時にタブ230に力を加えることによってタブ230を外側に付勢し、保持リング202をロック解除位置まで回転させることができる。
【0038】
ロック機構104の追加の例示的特徴部をここで説明する。図10は、ポート10をパッドに結合するロック機構104の、いくつかの構成要素を有するパッド102の斜視図である。基部200に加えて、図10は、ロック機構104のスカート204及び分割リング206を示す。基部200がパッド102に結合されている状態で、基部200の近位対向面の上部にスカート204を配置することができる。図11及び図15に最も良く示されるように、スカート204は、好ましくはテーパ面318を有することができる。表面318は、基部200のテーパ面218に相補的な表面テーパを有することができる。スカート204は、スカート204のテーパ面318が基部200のテーパ面218内に着座するように配置され得る。スカート204のテーパ面318は、スカート204の外縁から開口部316に向かって内側に延在することができる。一実施形態では、テーパ面318は、概ねリング形状であり、スカート204の本体を形成することができる。スカート204は、任意の様々な形状を有し得ることが理解されるであろう。スカート204が基部200内に着座されると、スカート204の開口部316は、基部200の開口部216及びパッド102の開口部106のうちの少なくとも一部分と位置合わせすることができる。
【0039】
スカート204は、開口部316を画定するために表面318から近位に延在する、延長部320を有することができる。一実施形態では、開口部316を画定する延長部320の内側表面324は、好ましくは、開口部の近位端から開口部の遠位端までテーパが付けられた平滑な表面であってもよい。後述するように、滑らかなテーパ面324は、スカート204に対する分割リング206、及びその内部に受容された外科用アクセス装置の回転運動及び角運動を容易にすることができる。延長部320は、ロック機構104の別の部分と係合するように、かつ好ましくは、ロック機構104のロック部品と係合するように構成された係合特徴部を含むことができる。一実施形態では、係合特徴部は、延長部320の外側表面上に形成された、雄ねじ322であってもよい。スカート204をロック機構104のロック部品に係合するための他の手段もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0040】
スカート204は、好ましくは、ポリマー又は他の可撓性材料から作製することができる。スカート204は、スカートが、外科用アクセス安定化装置100によって受容される外科用アクセス装置の並進運動に従って並進することができるように構成される。スカート204の厚さは、好ましくは、基部200と保持リング202との間に形成された空洞の高さよりもわずかに小さくてもよい。以下に詳細に説明するように、スカート204の外側部分は、スカート204が基部200に沿って任意の半径方向に並進することができるように、空洞内に摺動可能に受容され得る。
【0041】
図12は、スカート204の開口部316内に受容され、ロック機構104によってパッド102への外科用アクセス装置の結合を容易にすることができる、分割リング206を示す。分割リング206は、外科用アクセス装置を受容するように構成された、開口部416を有することができる。開口部416は、外側表面402及び内側表面404を有する周壁400によって画定され得る。一実施形態では、外側表面402及び内側表面404は、外周壁400が不均一な厚さを有するように、異なる形状を有してもよい。非限定的な例として、外側表面402は概ね円形であってもよく、内側表面404は楕円形又は卵形であってもよい。好ましい実施形態では、内側表面は、内部に受容される外科用アクセス装置の形状に対応する、周辺部を有し得る。分割リング206の外側表面402は、湾曲した輪郭を有することができ、内側表面404は、線形輪郭を有することができる。外側表面402の湾曲した輪郭は、分割リング206がスカート開口部316に対してより容易に動くことを可能にすることができる。このようにして、分割リング206は、スカート及び外科用アクセス安定化装置の長手方向軸A1に対して回転又は角度付けされ得る。図13は、分割リングの開口部416を通して受容されたポート10を有する分割リング206を備えたスカート204を示す。見て分かるように、ポートは、分割リング206の内側表面404の形状に反映される卵形状の外側表面を有する。
【0042】
図12に戻ると、周壁400を通って延在するチャネル410を形成することができる。チャネル410は、分割リング206に可撓性を持たせることができ、そのため、分割リングは、開口部416内のより多くの数の外科用アクセス装置を収容するように拡張することができる。分割リング206は、開口部416内に受容された外科用アクセス装置10の選択的な長手方向の位置決めを補助するように構成された、1つ又は2つ以上の係合特徴部を有することができる。一実施形態では、少なくとも1つの内方に突出する突起部408は、内側表面404上に形成されて、複数の溝18などの外科用アクセス装置の外側表面上に形成された相補的な特徴部と係合することができる。外科用アクセス装置が開口部416を通って遠位に通過するとき、外科用アクセス装置の外側表面上に形成された分割リング係合特徴部と相補的な特徴部との相互作用によって、内側リングに対する外科用アクセス装置のより容易な整列及び長手方向の調節を提供することができる。挿入された外科用アクセス装置と分割リング206の係合特徴部を係合することにより、この2つの構成要素間の確実な接続を提供することができ、それによって分割リング206は、外科用アクセス装置への力の印加に従って移動することができる。加えて、分割リング及び外科用アクセス装置の相補的な係合特徴部は、外科用アクセス装置の内側リングとの整列及び係合に関する有益な触覚フィードバックをユーザに提供することができる。
【0043】
図14は、組み立てられた基部200、スカート204、分割リング206、及び保持リング202を含む、ロック機構の斜視図を示す。図示されるように、分割リング206の開口部416は、組み立てられたロック機構の様々な構成要素を通って延在することができる。図15の断面図は、ロック機構104の様々な構成要素が互いに対してどのように組み立てられ得るかを示す。スカート204は、スカートの外側部分が、基部200の近位対向面と保持リング202との間に形成された空洞212内に摺動可能に受容されるように配置され得る。スカート204は、したがって、ユーザによって印加される力で空洞212内で並進することができる。分割リング206は、スカート204の延長部320によって画定される開口部内に配置することができる。上述したように、分割リング206の外側湾曲面402は、延長部320の内側表面324によって回転可能に受容され得る。したがって、分割リング206は、スカート204の開口部316内の全可動域にわたって角度付け又は回転させることができる。
【0044】
ここで、保持リング202について、図15図19を参照してより詳細に説明する。図16は、本発明の保持リングの、一実施形態における上面図を示す。一実施形態において、保持リング202は、径方向に延在する少なくとも1つの突起部502を有するリム504を持つ環状本体500を有することができる。保持リング202は、保持リングが基部200内に配置され固定され得るように構成されることができる。一実施形態では、径方向に延在する突起部は、基部200の特徴部と係合して、基部200内の保持リングの配置を固定することができる。本体500は、少なくとも一部分がロック機構の他の構成要素と位置合わせされて、中央貫通開口部101を形成することができる開口部516を画定することができる。保持リング202は、保持リングが基部内に嵌合するように寸法決めされ得る。更に、保持リング本体500は、基部200の表面から離れた距離で半径方向内側に延在して、基部200と本体500との間に周方向空洞212を形成し、スカート204を摺動可能に受容するように構成されている。一実施形態では、開口部516は、概ね円形であり、保持リング202の中心位置に形成されてもよい。好ましくは、開口部516は、基部200の開口部216の直径よりも大きく、スカート204の開口部316の直径よりも大きい直径を有することができる。
【0045】
本体500は、外側リム504から、近位に延在する部分506、及び横方向に延在する部分510から形成された概ね階段状の輪郭を有することができる。近位に延在する部分506は、リム504から近位に延在し得る。図15で最も良く分かるように、近位に延在する部分506は、本体500の径方向厚さよりも小さい半径方向の厚さを有する、本体500の外周リングを形成することができる。横方向に延在する部分510は、近位に延在する部分508の近位端から開口部516に向かって半径方向内側に延在し得る。具体的には、横方向に延在する部分510は、空洞212が、本体500の内側半径方向点から近位方向に延在する部分506の内側対向面まで、横方向に延在する部分510の下に形成されるように、近位に延在する部分508の遠位端からある距離だけ高くすることができる。
【0046】
換言すれば、本体500は、一枚壁の円周、すなわち、近位に延在する部分508、及び張り出した、すなわち横方向に延在する部分510を有することができるが、これは、一枚壁の円周の完全な遠位長を延長するのではなく、保持リング202の遠位部分に半径方向のギャップを作成するものである。横方向に延在する部分510は、横方向に延在する部分510の高さが半径方向内側方向に沿って増加するように、テーパ形状を有し得る。好ましくは、横方向に延在する部分510のテーパは、基部200のテーパ状部218に相補的であり得る。このようにして、横方向に延在する部分510の遠位対向面と基部200の近位対向面、特に基部200のテーパ部218の近位対向面、との間に形成される半径方向空洞212は、半径方向に沿って一定の高さを維持することができる。保持リング202を基部200内に配置することにより、径方向空洞212が形成される。ロック機構104の構成要素は、スカート204が空洞212内に摺動可能に嵌ることができるように寸法決めすることができる。
【0047】
横方向に延在する部分510の半径方向内側に対向する表面は、ロック機構104の別の構成要素と係合するように構成された、ねじ山512を有することができる。以下で詳細に説明するように、ねじ山512は、好ましくは第1のロック部品208のねじ山と係合し得る。第1のロック部品208が保持リング202に対して選択的に締め付けられるか又はロックされ得る限り、保持リング202と第1のロック部品208との間の代替的な係合機構が可能であることが理解されよう。
【0048】
図17を参照すると、径方向に延在する突起部502は、リム504から半径方向外側に延在し、基部200の溝225と係合するように構成することができる。基部200内に保持リング202を挿入することは、突起部502が溝225と位置合わせされるように、径方向に延在する突起部502を基部200の凹部228と位置合わせすることを含み得る。挿入されると、径方向に延在する突起部502の先端縁部518が基部200の移行部226の縁部に当接するように、保持リング202を回転させることによって、基部200内に固定することができる。主に横方向に延在する部分510の近位対向面は、保持リング202を近位対向面から把持しかつ回転するのを補助するために、少なくとも1つの突起部514を有することができる。このようにして、突起部502を延長部224内に収容することができる。図18に見られるように、先端縁部518及び移行部226は、先端縁部518が移行部226と嵌合するように相補的な形状を有し得る。先端縁部518が移行部226に当接すると、基部200の延長部224は、径方向に延在する突起部502の上に延在し、それによって、基部200に対する保持リング202の長手方向の移動を抑制する。好ましい実施形態では、基部200の延長部224は、延長部224の内側対向面と本体500の外側対向面との間に小さい隙間240を形成することができるように、半径方向距離内向きに延在することができる。
【0049】
図19は、基部200と係合し、突起部502が延長部224と整列するように回転された保持リング202を示す、図18の断面上面図である。このロック位置において、各突起部502の先端縁部518は、基部200の移行部226に当接していることが見られる。スカート204を摺動可能に受容するように構成された空洞212が、横方向に延在する部分510の内側表面と基部200との間に見られる。
【0050】
図20は、第1のロック部品208と第2のロック部品210とを有するロック機構104を有する外科用アクセス安定化装置100を示す。図示した実施形態では、ロック機構104は、外科用アクセス装置の位置を基礎パッドに対して選択的にロックするための、第1及び第2のロック部品を含むことができる。好ましい実施形態では、第1及び第2のロック部品、例えば、208及び210は、ロックリングであり得る。他の実施形態では、ロック機構104は、例えば、少なくとも1つの剥離性接着剤部位、ねじ付きロックノブ、又はレバー動作締め付けホイールを含むことができる。本明細書に開示されるロック構成要素のいずれも、パッドに対する外科用アクセス装置の動作を選択的にロックするために、単独で又は組み合わせて使用することが企図されることが理解されるであろう。例示的な実施形態では、図21の断面図に示すように、第1のロック部品208は、ポート10などの挿入された外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックするために、保持リング202と係合するように構成されたロックリングであり得る。第2のロック部品210は、分割リング206内に挿入されたポート10などの外科用アクセス装置の回転運動、角運動、及び並進運動を選択的にロックするために、スカート204と係合するように構成されたロックリングであり得る。
【0051】
図22は、第1のロック部品208の一実施形態の斜視図である。好ましくは、一実施形態では、第1のロック部品は、壁602及び開口部608を有する、概ねリング形状であり得る。第1のロック部品の外径は、好ましくは、保持リング202の内径と実質的に同じであるか、又はわずかに小さくてもよい。壁602の外側表面は、保持リング202の相補的な係合特徴部と係合するように構成された、係合特徴部604を有することができる。好ましくは、係合特徴部は、壁602の外側表面上に形成されたねじ山604であってもよい。タブ606は、第1のロック部品208を回転させるか、若しくは別の方法で移動させるのを補助するために、壁602の上部から半径方向に延在することができる。一実施形態では、タブ606は、ユーザがタブ606を把持しかつ第1のロック部品208を回転させることを容易にするような寸法及び形状にすることができる。
【0052】
図21は、それぞれ保持リング202及びスカート204と係合された、第1及び第2のロック部品208、210の断面図を示す。基部200及び分割リング206も示されている。第1のロック部品208は、保持リング202に対して第1の方向に回転されて、第1のロック部品208を基部200に向かって遠位に移動させることができる。第1のロック部品208は、保持リング202に対して第2の方向に回転されて、第1のロック部品208を基部200から離れるように近位に移動させることができる。第1のロック部品208が基部200に向かって遠位に移動すると、空洞212内に配置されたスカート204は、スカート204の並進運動が制限されるように、基部200と第1のロック部品208との間にクランプされ得る。一方、第1のロック部品208が第2の方向に回転され、保持リング202の内周に沿って基部200から離れて近位に移動すると、スカート204上の圧縮力が解放され、スカート204が基部200に対して任意の半径方向に並進することを可能にする。より具体的には、スカート204が第1のロック部品208によってクランプされていないときには、スカート204の外側部分が空洞212内で移動できるように、外科医又はユーザがスカート204に力を加えることができる。この構成では、スカート204の運動は、空洞212の半径方向深さ及びスカート204の寸法によって制約される。
【0053】
図23は、中央開口部706を有する壁702によって形成されたロックリングとして構成された、第2のロック部品210の例示的な実施形態を示す。壁702の外側表面は、湾曲した下部及びテーパ状の上部を有するように成形され得る。図24を参照すると、壁702は、第2のロック部品210の内側表面704の上にフードを形成する、半径方向内側に延在する上部708を有することができる。開口部706は、近位端においては上部708の内側表面によって、かつ遠位端においては内側表面704によって、画定され得る。このようにして、開口部706は、遠位端における開口部706の第2の直径よりも小さい、近位端における第1の直径を有することができる。以下で詳細に説明するように、開口部706の遠位端のより大きな直径の開口部により、物体、すなわち第2のロック部品と係合されたスカート204の延長部320、の半径方向の移動を可能にすることができ、外科用アクセス安定化装置100内に受容された外科用アクセス装置の動作を選択的に制限することができる。
【0054】
好ましくは、内側表面704は、スカート204の相補的な係合特徴部と係合するように構成された、係合特徴部712を有することができる。一実施形態では、第2のロック部品は、スカート延長部320の外面上のねじ山322と係合するように構成された内側表面704に沿って形成された、雌ねじ712を有し得る。第2のロック部品210は、スカート204に対して第1の方向に回転されて、第2のロック部品210をスカート204に対して遠位に移動させることができる。第2のロック部品210は、スカート204に対して第2の方向に回転されて、第2のロック部品210をスカート204に対して近位に移動させることができる。タブ710は、壁702の外側表面から近位に延在することができる。第1のロック部品のタブ606と同様に、タブ710は、ユーザによる第2のロック部品210の回転又は移動を補助することができる。好ましくは、タブ710は、ユーザがタブ710を把持することを容易にするような寸法及び形状であり得る。
【0055】
図25は、スカート204と係合する第2のロック部品210の一実施形態の断面図を示す。見て分かるように、第2のロック部品210の内部の雌ねじ712は、スカート204の延長部320の雄ねじ322と係合することができる。第2のロック部品210が第1の方向に回転すると、第2のロック部品210はスカート204に対して遠位方向に移動し、この第2のロック部品210が半径方向内側方向に圧縮力を及ぼして、スカート204の延長部320が半径方向内側に付勢される。一方、第2のロック部品210が第2の方向に回転すると、第2のロック部品はスカートに対して近位方向に移動し、それによってスカート204上の第2のロック部品によって加えられる任意の内側圧縮力が低減される。このようにして、スカート204によって形成された開口部内に外科用アクセス装置が受容されるとき、第2のロック部品は、スカート延長部320上に内側圧縮力を選択的に印加及び除去することによって、外科用アクセス装置とスカートとの間の移動を選択的に制限することができる。図25から分かるように、スカート204の開口部を画定するテーパ状内側表面324は、半径方向内向きの圧縮力によって、テーパ面324の上部がより直線的な輪郭に向かって半径方向内側に移動され、その内部に受容された器具又は物体の外側表面に当接され得るように、テーパ付けされる。例示的な実施形態では、図21を再び参照すると、分割リング206は、外科用アクセス装置を受容するためにテーパ面324内に保持され得る。第2のロック部品210によってスカート延長部320に付与された半径方向圧縮力は、延長部320を分割リング206に対して内側に圧縮させることができる。この内側圧縮は、分割リング206の動作、ひいては受容された外科用アクセス装置の動作を、スカート204に対して制限することができる。
【0056】
図26は、本発明の外科用アクセス安定化装置100の第1の例示的な外科的適用を示す。図26は、内部にポート10が受容された状態で完全に組み立てられた、外科用安定化装置100を示す。パッド102の遠位対向面は、患者の皮膚に接着される。この実施形態では、パッド102は、概ね楕円形又は卵形状を有する完全なパッチとして形成される。
【0057】
図27は、外科用アクセス安定化装置100の例示的な使用方法の一部を示す。図27では、パッド102は、外科的切開部120がパッド102の開口部106内に位置するような位置で、患者の皮膚などのアンカー表面に取り付けられて示されている。パッド102に固定された基部200が示されている。一実施形態では、パッド102は、独立型構成要素としてアンカー表面に取り付けることができる。一旦取り付けられると、基部200は、ユーザによってパッド102の近位対向面に固定され得る。例えば、外科医は、パッド102を、最初に選択、切断、又は操作して、特定の外科用用途のために所望の形状及び寸法にすることができる。次に、パッド102の接着遠位対向側を、患者の皮膚上の所望の位置に配置することができる。パッドがしっかりと取り付けられた状態で、基部200は、パッド102上で遠位に移動することができ、基部とパッドとの相補的な係合特徴部を係合することによってパッド102に固定することができる。例えば、基部200のスロット209は、パッド102の突起部110と整列することができる。次いで、基部をスナップ嵌めでパッド102に固定することができる。
【0058】
あるいは、パッド102をアンカー表面に接着する前に、基部200をパッド102に固定することができる。一実施形態では、パッド及び基部は、外科手術で使用するための単一の一体構成要素として予め組み立てられてもよい。あるいは、パッド及び基部は、外科手術の前に取り付けられる2つの別個の構成要素として構成されてもよい。このようにして、パッド及び基部は、単一の組み立てられたユニットとして外科手術中に配置され得る。
【0059】
図27に示されるように、外科医は、パッド102が係合表面に固定され、基部200がパッド102に取り付けられた状態で、切開部120を通して挿入された器具15を使用して組織を操作している(例えば手術部位にナビゲートする、切開部120を拡げる、など)。切開部120は、パッド102がアンカー表面に固定される前又は後のいずれかで作られ得ることが理解されるであろう。加えて、切開部120は、パッド102が係合面に固定される前又は後のいずれか、かつ基部200がパッド102に取り付けられる前又は後のいずれかに、様々な器具を収容するために拡げることができる。切開部がポート10などの外科用アクセス装置を収容するように拡げられると、ポートは切開部を通して挿入されることができる。この場合も、外科用アクセス装置の挿入は、パッド102が係合表面に固定される前又は後のいずれかで起こり得、かつ基部200又はロック機構104の任意の他の構成要素が取り付けられる前又は後のいずれかに起こり得る。
【0060】
1つの例示的な方法では、切開部120は、患者の所望の位置に作ることができる。特定の外科手術又は用途の要件を満たすように予め寸法決めされ成形されたパッド102は、次いで、パッド102の接着遠位面を皮膚の表面に対して配置することによって、患者の皮膚に固定することができる。他の実施形態では、標準的な寸法及び形状のパッドは、特定の外科手術又は用途の要件を満たすように、手術中に切断されるかそうでなければ別の方法で操作され得る。パッド102は、基部200が取り付けられた状態で予め組み立てられ得る。あるいは、パッド102が患者の皮膚に固定されると、基部200をパッド102に取り付けることができる。好ましい実施形態では、パッド102は、切開部120がパッド102の開口部106内に中央に位置するように位置合わせされ得る。切開部120を取り囲むパッド及び基部により、切開部120は、ポート10を受容するように準備することができる。例えば、切開部120は、所望の切開開口部を得るために、一組の拡張管を使用して拡張されてもよい。あるいは、切開部120は、当技術分野において既知の他の方法を使用して、外科用アクセス装置を受容するために準備されてもよい。次いで、ポート10を、一般的な外科的技術を用いて切開部120に挿入することができる。
【0061】
ポート10が挿入され、基部200がパッド102上に固定された状態で、ロック機構104を基部200内に配置することができる。ロック機構104は、保持リング202、スカート204、分割リング206、保持リング202と係合するように構成された第1のロック部品208、並びにスカート204と係合するように構成された第2のロック部品210からなることができる。ポート10は、分割リング206の開口部416に位置付けられることができ、ロック機構104の遠位対向面が基部200の近位対向面に接触するまで、ロック機構104をポート10に沿って遠位に移動することができる。一実施形態では、スカート204の遠位対向面は、基部200の近位対向面に接触することができ、保持リング202は、基部200とロック解除位置で整列され得る。ロック機構104を固定するために、保持リング202をロック解除位置からロック位置へと回転させることができる。ロック解除位置では、保持リングの径方向に延在する突起部502は、上述したように、基部の凹部228と位置合わせされ得る。次いで、保持リング202は、突起部502が回転して基部延長部224の移行部226と係合するように、第1の方向に回転され得る。基部200のタブ部530は、保持リング突起部502によって半径方向外側に付勢され得、突起部502が延長部224内に完全に通過する際に、外向きの位置に留まることができる。保持リング202及び基部200は、ロック位置において、すなわち突起部502の先端縁部が移行部226と係合するときに、突起部502がタブ部230をクリアして、タブ230がもはや半径方向外向きに付勢されずその中立構成に戻ることができるように、構成されることができる。このようにして、タブ230及び移行部226がロック位置の突起部502のいずれかの端に配置されるので、タブ部分230は、外科適用中に保持リング202がロック位置から回転するのを防止するための、固定機構として機能することができる。ユーザは、基部に対する保持リングの滑らかかつ容易な回転を手助けするために、特徴部514を把持することができる。上記の説明は、ポートの挿入後のロック機構104などの様々な構成要素の組み立てに関連して提供されるが、いくつかの実施形態では、ポートは、ロック解除構成にある間に、既設のロック機構を通して挿入され得ることを理解されたい。
【0062】
ロック機構104が基部内に配置され、ポート10がそこを貫通して延在する状態で、ポート10は、所望の軌道、配向、及び位置に調整され得る。ポート10は、複数の自由度でパッド102に対して調整することができる。例えば、ポート10は、パッド102に対して任意の半径方向に並進することができる。一実施形態では、外科医は、ポート10の近位部又はそれに取り付けられたハンドルを把持し移動させることによって、ポート10の近位部に並進力を加えることができる。スカート204は、ポート10に加えられた並進力に従って移動することができる。スカート204は、基部200と保持リング202との間の空洞212内で並進又は摺動することができる。ポート10の所望の位置決めを達成した後、第1のロック部品208を第1の方向に回転させて、スカート204を空洞212内の所望の位置にクランプし、それによってスカート、ひいては取り付けられたポート10の、半径方向の更なる並進運動を制限する。第1のロック部品208を第2の方向に回転させることにより、第1のロック部品を基部から近位側に移動させることができ、ひいてはクランプされたスカート204を解放することができ、これによりスカートの、ひいては取り付けられたポート10の並進運動を可能にする。
【0063】
ポート10はまた、パッド102に対して角度を付ける、回転させる、又は長手方向に並進させることもできる。例えば、ポート10は、ポート10の近位部分を把持し、ポートを回転させることによって、360度回転させることができる。丸みを帯びた外縁402を有する分割リング206は、スカート204の開口部316のテーパ状内側表面324内で360度回転することができる。更に、ポート10は、ポート10の近位部分を把持し、パッド102に対してポートを角度付けすることによって、様々な所望の配向に角度付けすることができる。ここでも、分割リング206の丸みを帯びた外縁402は、スカート204の開口部316のテーパ状内側表面324に対して角度付けされ得る。
【0064】
ポート10はまた、ポート10がパッド102に対して近位又は遠位方向に並進するようにポート10の近位端に近位又は遠位方向に力を加えることによって、パッド102に対して長手方向に並進させることができる。ポート10の所望の配向及び位置決めがパッド102に対して達成されると、第2のロック部品を第1の方向に回転させて、更なる回転運動、角度運動、又は並進運動を制限することができる。一実施形態では、第2のロック部品が第1の方向に回転すると、第2のロック部品は遠位方向に移動し、スカート延長部320に内側圧縮力を加える。スカート延長部320が半径方向内側に圧縮されると、スカート延長部は、内部にポート10が配置された状態で分割リング206上に圧縮される。第2のロック部品を第1の量回転させた後、第2のロック部品によって印加される圧縮力は、ポートの長手方向への並進運動を制限する。第2のロック部品を更に第2の量まで回転させた後、第2のロック部品によって印加される圧縮力は、内側リング206がスカート204の内側延長部320に対して回転する能力を制限することによって、パッドに対するポートの回転運動を制限することができる。第2のロック部品を更に第3の量まで回転させると、第2のロック部品によって印加される圧縮力は、分割リング206がスカート204の延長部320に対して角度付けする能力を制限することによって、パッドに対するポートの角運動を制限することができる。第2のロック部品を第2の方向に回転させることにより、スカート304の内側拡張部320に対して第2のロック機構を近位方向に移動させ、かつスカート204上、ひいては分割リング206及びポート10上で受容される内側圧縮力を低減させる。第2のロック部品が第2の方向に回転すると、ポート10はパッド102に対して移動することができる。このようにして、第2のロック部品を使用して、パッドに対するポートの並進運動、回転運動、及び角運動を選択的に制限することができる。ロック機構104は、外科手術中にロック解放状態にすることによってポート10の調節を可能にし、所望であれば、ポートを異なる位置又は軌道に固定するために、再ロックすることができる。
【0065】
ポート10が所望の位置及び軌道で確立及び安定化された状態で、ポート10を通って手術部位に様々な器具、インプラントなどを経皮的に通過させることができる。例えば、図28に示すように、外科用アクセス装置は、脊椎領域32に位置する手術部位にアクセスするために使用される、ポートチューブ30であってもよい。器具34は、ポートチューブ30を通して挿入することができる。器具34は、カメラ又はインプラントなどの任意の様々な器具であり得る。一実施形態では、ポートチューブ30は、例えば、より大きなインプラントを含む任意の様々な物体を収容するように寸法決めされた、15mmの剛性ポートであり得る。ポートチューブ30の内側ルーメンは、様々な形状を有する様々な器具、インプラントなどの挿入を容易にするように寸法決めすることができる。したがって、非円形ルーメン形状が好ましい場合がある。
【0066】
図29は、可撓性メッシュポート40を受容するように構成された外科用アクセス安定化装置100の、例示的な適用を示す。図29の実施形態では、ロック機構104は、開口部を外科用アクセス装置に固定し、選択的に閉じるためのキャップ部材44を含むことによって、可撓性ポート又は他の外科用アクセス装置を受容するように適合され得る。キャップ部材44は、器具、インプラントなどが手術部位42に経皮的に通過し得るように、外科用アクセス装置の近位端から取り外すことができる。いくつかの手技では、周囲の組織への外傷を最小限に抑えるために可撓性ポートを使用することが望ましい場合がある。一実施形態では、可撓性ポートは5mmの可撓性ポートであってもよく、とりわけ、可視化器具、光学トロカール、及び中型のインプラントを受容するように寸法決め及び構成され得る。別の実施形態では、可撓性ポートは4mmの可撓性ポートであってもよく、とりわけ、小型拡張インプラント、光学トロカール、及び可視化器具を受容するように寸法決め及び構成され得る。
【0067】
上述の方法及び装置に変更を行うことができ、本発明の範囲内であると考えられる。例えば、ロック機構104は、基部200内に配置され、ポート10が切開部120内に挿入される前にその内部に固定されてもよい。このような実施形態では、ポート10は、ポートを外科用アクセス装置の中央開口部101を通して遠位方向に移動させることによって、切開部120内に挿入され得る。更なる実施例として、第1及び第2のロック部品は、ロックリング以外の形態をとることができ、第1及び第2のロック機構を操作する回転以外の手段によって、パッドに対してポートを選択的にロックすることができる。非限定的な例として、本発明のロック機構は、任意の数の取り外し可能な接着調節部位、ねじ付きロックノブ、又はレバー動作締め付けホイールを含むことができる。更に、上記で参照したように、ロック機構104は、別個の第1及び第2のロック部品を有する必要はない。一実施形態では、単一のロック部品を使用して、パッド102に対するポート10の移動を選択的に制限することができる。使用される構成にかかわらず、ロック機構104は、パッドに対して外科用アクセス装置を結合し、かつ選択的にロックするように構成される。
【0068】
本発明の外科用アクセス安定化装置では、基礎パッドは、適用領域の幾何学的形状又はユーザの必要性に応じて、様々な形状及び寸法を有することができる。外科用途において、パッドの特定の形状及び寸法は、患者の寸法、手術部位の位置、切開部の寸法、処置される領域の寸法、外科医が処置を完了するために必要とされる可動域などを含む、様々な要因に依存し得る。図30に、パッド1002と、パッド1002の中央部分に配置されたロック機構1014(図示せず)とを含む、外科用アクセス安定化装置1000の一実施形態を示す。パッド1002は、中央部分から延在する少なくとも1つの放射状指状部1004を有することができる。ナビゲーションマーキング1008は、少なくとも1つの放射状指状部1004のうちの1つに含まれ得る。示される実施形態では、パッド1002は、8本の放射状指状部1004を有する。各放射状指状部1004は、特定の用途による所望の、又は必要に応じた寸法及び形状にされることができる。
【0069】
図31に示される別の例示的な実施形態では、外科用アクセス装置1020は、接着遠位対向面を有する薄いポリマーから形成されたパッド1022を含むことができる。一実施形態では、薄いポリマーパッドは、ゴム、ネオプレン、PTFEなどであり得る。パッド1022は、約1mm~約5mmの厚さを有することができ、いくつかの実施形態では、約1.5mm~約3.5mmの厚さを有することができる。図31に示される実施形態では、ロック機構1024の少なくとも一部分は、アンカー表面、すなわち患者の皮膚と、パッド1022の接着遠位対向面との間に配置することができる。例えば、ロック機構1024の基部1026は、基部1026の遠位面がアンカー表面と接触するように配置されてもよい。次いで、パッド1022は、基部1026がパッド1022によってアンカー表面に固定された状態に保持されるように、アンカー表面及び基部1026にわたって配置することができる。ロック機構1024は、上述した方法で基部1026に取り付けることができる。
【0070】
図32は、本発明の外科用安定化装置1030の更なる別の例示的な実施形態を示す。外科用アクセス安定化装置1030は、概ね矩形の形状を有する完全なパッチとして構成されたパッド1032を含む。ロック機構1034がパッド1032の中心位置に示されている。あるいは、ロック機構1034は、パッド1032上の任意の位置に受容されてもよい。パッド1032は、外科的又は解剖学的構造に対するパッド1032の整列及び配置を補助するための、マーキング1036などのナビゲーションマーキングを含むことができる。
【0071】
図33及び図34は、本発明の外科用アクセス安定化装置の第2の例示的な実施形態を示す。図33に示すように、外科用アクセス安定化装置1100は、外科用アクセス装置、例えばポート1110を受容するように構成されたパッド1102を含み得る。ロック機構は、ポート1110をパッド1102に結合し、それらの間の移動を選択的にロックすることができる。パッド1102は、アンカー表面に接触するように構成された、接着遠位対向面を有することができる。好ましい実施形態では、パッド1102の接着遠位対向面は、患者の皮膚に接触する医療用の接着剤接触層を含むことができる。
【0072】
パッド1102は、外科用アクセス装置を受容するように構成された開口部1106を有することができる。好ましい実施形態では、開口部1106は、パッド1102に沿って延在する細長いスロットであってもよい。例えば、図34を参照すると、パッド1102は、パッドの長手方向軸に沿って延在する、開口部1106を有することができる。一実施形態では、パッド1102は、概ね矩形の形状であってもよい。図34に示すように、開口部1106は、パッド1102と同様又は相補的な形状を有することができる。あるいは、開口部1106は、パッド1102の形状とは異なる形状を有してもよい。当業者であれば、パッド1102及び開口部1106は、様々な形状のいずれかを有し得ることを理解するであろう。
【0073】
細長いスロット開口部1106は、外科手術中に、横断面における外科用アクセス装置の調節を有益に有利にすることができる。このような調節により、外科用アクセス装置の角度付けに対する全体的な変化が可能となる。例えば、脊椎手術用途では、外科用アクセス装置を横断方向に移動させることが望ましい場合がある。したがって、パッド1102は、細長い開口部1106が横断面に延在するように(例えば、内側横方向に延在する)ように配置することができる。このようにして、角形成における全体的な変化を可能にするようにポートを調整することができる。例えば、ポートは、脊椎手術部位への25度のTLIFアクセス又は45度のKambinアクセスのために配置され得る。
【0074】
基部1108は、基部の中央開口部を通してポート1110を受容するように構成することができる。あるいは、基部1108は、ポート1110の近位端から延在するフランジの形態でポート1110と一体形成され得る。更に、基部1108は、例えば図33に示すような単一の構成要素とすることができ、又は基部1108は、複数の構成要素とすることができる。例えば、基部1108は、上述したスカート104と同様に構成することができ、上述した内側分割リング106と同様の分割リングを用いて、ポート1110を受容するように構成することができる。
【0075】
ロック機構は、パッド1102に対するポート1110の移動を選択的に制限するように構成することができる。一実施形態では、ロック機構1104は、取り外し可能な接着剤であってもよい。非限定的な例として、ロック機構は、フックアンドアイクロージャとすることができる。例えば、フックアンドアイクロージャの一方の側は、開口部1106の少なくとも一部分の近くのパッド1102の近位対向面上に配置することができる。フックアンドアイクロージャの対応する側を、基部1108の遠位対向面上に配置することができる。このようにして、フックアンドアイクロージャの2つの対応する部分を係合することによって、基部1108をパッド1102に取り外し可能に固定することができる。ポート1110が挿入された基部1108は、所望に応じて、開口部1106に沿った多数の位置に反復可能に配置及び除去することができる。任意の他の形態の取り外し可能な接着剤が、同様の方法で使用され得ることが理解されるであろう。
【0076】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの付加ロック部品1112を使用して、パッド1102に対するポート1110の移動を更に選択的に制限することができる。一実施形態では、ロック部品1112は、基部1108の内側表面上の対応するねじ山と係合するように構成された雄ねじ1114を有する、ロックリングであり得る。把持部1116は、ユーザがロック部品1112を回転させて、パッド1102に対するポートの回転、角度付け、及び長手方向の並進運動を選択的に制限するように、このロック部品から近位に延在することができる。ロック部品1112は、本明細書で前述したように、第1及び第2のロック部品のうちの1つと同様に構成され得ることが理解されるであろう。
【0077】
図34は、第2の実施形態の外科用アクセス安定化装置の例示的な位置決めを示す。パッド1102は、パッド1102が患者の横軸に沿って横方向に延在するように配置することができる。脊椎手術部位を含む1つの用途では、パッド1102は、患者の腰部内に横方向に配置され得る。開口部1106は、内部にポートが受容された基部1108が横断面に沿って選択的に移動及び調節され得るように、パッド1102に沿って横方向に延在することができる。このようにして、外科医は、安定化装置を除去する必要なく、又は更なる切開部を形成する必要なく、外科手術中にポートの角度を変えるための全体的な変化を達成することができる。
【0078】
本発明の外科用アクセス安定化装置の別の例示的実施形態を、図35及び図36に示す。いくつかの用途では、接着パッドを、手術部位の近く、又は同様にそれにアクセスするために使用される切開部の近くに配置することが望ましくない場合がある。このような状況のために、本発明の外科用アクセス安定化装置を使用して、外科用アクセス装置を遠隔に配置された基礎パッドに結合して、パッドから離れた距離の位置に外科用アクセス装置を配置することができる。
【0079】
外科用アクセス安定化装置1200は、外科用アクセス装置、例えばポート1210をパッド1202に接続するように構成された接続機構1204を有することができる。一実施形態では、接続機構1204は、コネクタ1208及び取り付け構成要素1214を有するアーム1206を含むことができる。取り付け構成要素1214は、外科用アクセス装置1210を受容する中央開口部を有することができる。コネクタ1208は、アーム1206の第1の端部に位置することができ、取り付け構成要素1214の一部分と係合するように構成することができる。アーム1206の第2の端部は、アーム1206が外科用アクセス装置をパッドに結合するように、パッド1202に取り付けられることができる。
【0080】
図36に示すように、パッド1202は、上述したパッドと同様であり得る。一実施形態では、パッド1202は、接着遠位対向面を有する膨張性の可撓性パッドであり得る。パッド1202は、後述するように、接続機構1204の一部分と結合するように構成された、取り付け部1212を有することができる。パッド1202及びアーム1206は、1つの構成要素として一体的に形成することができ、又は1つ又は2つ以上の接続特徴部を介して接続されるように構成することができる。一実施形態では、開口部1216は、取り付け部1212内に形成することができ、アーム1206のファスナー1218を受容するように構成することができる。パッド1202及び開口部1216は、特定の用途によって要求される任意の様々な形状及び寸法をとることができることが理解されるであろう。パッド1202は、任意の数の既知の結合方法でアーム1206に結合することができる。一実施形態では、図36に示されるように、ファスナー1218はねじ付きスクリューファスナーであり得る。ファスナー1218は、開口部1216内に配置され、ファスナー1218のねじ特徴部を使用してその内部に係合され得る。代替的なファスナーの非限定的な例としては、スナップ機構、相補的な雄型及び雌型構成要素の締まり嵌め、ねじ、ねじ付きファスナーなどが挙げられる。
【0081】
アーム1206は、アームが屈曲して第2の端部に対する第1の端部の位置決めを調節することができるように、可鍛性材料で作製することができる。このようにして、アームの第1の端部に接続された外科用アクセス装置は、アームを所望の構成に屈折させることによって、アームの第2の端部に結合されたパッドに対して所望の位置に配置され得る。一実施形態では、コネクタ1208は、アーム1206の第1の端部に位置して、取り付け部品1214と係合して、ポート1210をアームの第1の端部に結合することができる。コネクタ1208は、当技術分野において既知であるように、任意の接続手段によって、取り付け部品1214と係合することができる。例えば、一実施形態では、コネクタ1208はボールジョイントコネクタであってもよく、取り付け部品1214をアーム1206に固定するために、ボールジョイントコネクタの凹部内に取り付け部品1214の延長部を受容することができる。
【0082】
ハンドル1220は、ポート1210と関連付けられ、ポートの移動、例えば回転運動を補助することができる。一実施形態では、ポート1210は、ハンドル1220の開口部を貫通して挿入され得る。ハンドルは、開口部から半径方向外側に延在する把持部1222を有することができる。把持部1222は、ポート1210の回転運動を容易にするための特徴部を含むことができる。例えば、把持部は、ユーザが把持するための器具又はタブのためのスロットを有してもよい。把持部の回転運動は、挿入されたポートの付随する回転運動に並進することができる。
【0083】
図37及び図38は、本発明の外科用アクセス安定化装置を使用して、安定化された位置に配置された後のポートの例示的な使用を示す。図37及び図38は、ポートに接続された屈曲可能なアームを有する実施形態の外科用アクセス安定化装置を示すが、本明細書に記載される実施形態のいずれも、ポートを安定化させるために使用され得ることが理解されるであろう。図37及び図38は、安定化されたポートを通して目標手術部位に経皮的に、様々な器具、インプラント、又は物体のうちのいずれかを通過させるために、ポートが使用され得ることを示す。例えば、図37に示すように、ポート1310は、外科用アクセス安定化装置1300によって固定され得る。ポート1310が安定化された状態で、ナビゲーションアレイ1350を有する細長いツール又は他の器具を、ポート1310を通して目標部位に経皮的に挿入することができる。更なる非限定的な例として、図38に、外科用アクセス安定化装置1400によって固定されたポート1410を示す。ポート1410が固定された状態で、保護メッシュ1450をポートを通して目標部位に挿入して、周囲の組織への外傷を低減することができる。次いで、針1460又は他の物体などの更なる器具が、ポート1410及びメッシュ1450を通って経皮的に通過され得る。
【0084】
上述の方法及び装置の別の可能な変形例では、外科用アクセス装置は、パッドがアンカー表面に接着するように配備され得るように、外科用アクセス装置の近位部分にパッドを取り付けることができる。一実施形態では、図39に示すように、外科用アクセス装置ポート1510は、ポートの近位端1512に取り付けられた接着パッド1520を有することができる。接着パッド1520は、ポートの近位部分1512に取り付けられてもよく、これにより、ポートが患者の切開部内に挿入された後に、パッドがポートの近位部分から配備されて、例えば患者の皮膚などのアンカー表面に接着することができる。接着パッド1520は、上述したパッドのうちのいずれかであってもよい。例えば、一実施形態では、パッド1520は、パッドが展開状態で、無菌ドレープ開口部全体を覆うことができる連続パッドであってもよい。他の実施形態では、接着パッドは、展開又は非展開状態で配置され得る1つ又は2つ以上の延長部、指状部、又はテザーを含むことができる。
【0085】
非展開状態又は挿入状態では、接着パッドは、コンパクトに配置することができ、ポートが切開部を通って挿入されている間に、ポートの近位部分に取り付けられるか又は固定され得る。あるいは、パッドは、ポートが切開部内に挿入された後に、非展開状態でポートの近位部分に取り付けられるか、又は固定され得る。例えば、パッドは、ポートが切開部内に挿入される前又は挿入された後に、非展開状態のポートの近位部分にスナップ嵌めすることができる。次いで、パッドが展開されて、これによってパッドの遠位対向接着面がアンカー表面に接着され得るようにすることができる。一実施形態では、パッドは、パッド又はパッドの一部分をアンカー表面に向かって遠位に回転又は移動させることによって、展開されることができる。あるいは、パッドとポートとの間の係合機構は、パッド又はパッドの一部分がもはやポートに固定されず、外科医によって操作されて、パッドの遠位対向接着側をアンカー表面に固定するように解放することができる。非限定的な例として、係合機構は、当技術分野において既知のスナップ、ねじ、レバー、張力部材、又は他の係合機構であってもよい。
【0086】
図40図42は、本発明の外科用アクセス安定化装置のハンドル1600の、別の実施形態を示す。例えば、図40図42のハンドルは、外科用アクセス装置と関連付けることができるが、これは図35図36においてポート1210に関してハンドル1220が示され、かつ説明されたものと同様である。ハンドル1600は、延長部1620及びレバー1630を有する本体部分1610を含むことができる。一実施形態では、延長部1620は、概ね円筒形であってもよく、ハンドルの本体1610から遠位に延在し得る。延長部1620は、貫通孔1640を画定することができ、この貫通孔を通して、例えばポートなどの外科用アクセス装置を挿入することができる。貫通孔1640が、所望の外科用アクセス装置がそこを通過できるように、様々な形状のうちのいずれかを有し得ることが理解されるであろう。図42で最も良く分かるように、ハンドル1600は、外科用アクセス装置の特徴部と係合して、外科用アクセス装置とハンドル1600との間の相対的な位置決めを選択的に維持できる、ロック部分1650を含むことができる。一実施形態では、ロック部分1650は、外科用アクセス装置の外側表面上の特徴部と係合することができる1つ又は2つ以上の歯1652を有する、ジップタイ又はラチェット/ポール式のスナップレバーとすることができる。例えば、一実施形態において、ロック部分1650の1つ又は2つ以上の歯1652は、外科用アクセス装置が貫通孔1640内に配設されたときに、外科用アクセス装置の外側表面上に形成された1つ又は2つ以上の溝と選択的に係合することができる。いくつかの実施形態では、ロック部分1650は、ユーザ相互作用することなく外科用アクセス装置と係合するように付勢された、タブ又はレバーを含むことができる。また、いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の歯1652は、第1の方向への移動を可能にする一方で、第2の方向への移動を防止する(例えば、近位後退を防止しながら、貫通孔1640を通る外科用アクセス装置の遠位前進を可能にする)ように構成され得る。
【0087】
図41は、本体1610から分離された、図40のレバー1630を示す。レバー1630は、ロック部分をハンドル1600の貫通孔1640内の外科用アクセス装置との係合から外して移動させるために、ロック部分1650と選択的に係合することができ、それによって、ハンドルに対する外科用アクセス装置の調節を可能にする解放として動作する。一実施形態では、レバー1630は、その遠位対向面から延在する少なくとも1つの係合特徴部を有する概ね平面的な要素であり得る。図41に示す実施形態では、第1のポスト1632は、第1の平面部1636の遠位対向面から延在することができ、本体1610内のスロット1612内に受容され得る。第2のポスト1634は、第2の平面部1638の遠位対向面から延在することができ、本体の孔1614内に受容することができる。レバー1630を本体1610に挿入するために、ポスト1632、1634などのレバー係合特徴部を、スロット1612及び孔1614などの本体受容特徴部に移動させることができる。一実施形態では、レバーの係合特徴部は、本体の受容特徴部にスナップ嵌めすることができる。本体のスロット1612は、第1の端部1616及び第2の端部1618を有することができる。スロット1612の第1の端部1616は、スロットの第2の端部1618よりも本体1610の縁部に近接して配置することができる。換言すれば、スロット1612は、本体1610の縁部に近い位置から本体の中心に向かって横方向内側に延在することができる。図41に示されるハンドル1600の実施形態は、2つの係合特徴部及び対応する受容特徴部を有するが、ハンドルのレバー及び本体は、任意の数の係合特徴部及び受容特徴部を有し得ることが理解されるであろう。
【0088】
例えば、図40に示されるように、レバー1630が本体1610に挿入された状態で、ユーザはレバーを係合させて、レバーがロック部分1650を移動させて、貫通孔1640内に配置された外科用アクセス装置と選択的に係合するようにできる。例えば、第1のポスト1632がスロット1612内で並進するように、レバー1630に力を印加することができる。レバーの第2のポスト1634は、本体1610内のスロット1612内で第1のポスト1632が並進する際に、レバーが第2のポストの周りを枢動することができるように、本体の孔1614内に固定されたままであってもよい。一実施形態では、ユーザは、レバーの第1の平面部1636に内側方向、すなわち、本体1610の中心線に向かって力を印加することによってレバーを押し下げ、第1のポスト1632をスロット1612内で並進させ、レバーを第2のポスト1634の周りで軸回転させることができる。レバーが押し下げられた状態で、レバーの第2の平面部1638は本体1610のロック部分1650と係合して、ロック部分を、1つ又は2つ以上の歯1652が、貫通孔1640内に配設された外科用アクセス装置上に形成された1つ又は2つ以上の溝から係合解除される位置に偏向させることができる。一実施形態では、レバー1630は、ユーザが上述の力を解放すると、図40に示す位置に戻ることができる。すなわち、レバー1630は、第1の平面部1636が半径方向外側に移動するように、ポスト1634を中心に枢動することができる。このような移動によって、1つ又は2つ以上の歯1652が、貫通孔1640内に配設された外科用アクセス装置上に形成された1つ又は2つ以上の溝又は他の特徴部と係合する位置に、ロック部分1650が(例えば付勢力などによって)戻ることを可能にする。
【0089】
図40図42のハンドル1600、及びその様々な構成要素が、本発明の範囲内の多数の異なる方法でポートと関連付け得ることが理解されるであろう。例えば、ジップタイ又はラチェット/ポール式のスナップレバーを、分割リングの代わりに本発明のロック機構の構成要素として使用して、外科用アクセス装置の軸方向運動を選択的に制限してもよい。更なる例として、ハンドル1600は、本明細書に記載される様々な実施形態のうちのいずれかで使用することができる。更に、レバーの係合特徴部及び本体の受容特徴部が任意の相補的な特徴部として形成されてもよく、これによりレバーはハンドルの本体に結合され、ハンドルのロック部分が係合されない開放位置と、ハンドルのロック部分が係合される閉鎖位置との間で移動可能となり得る。
【0090】
上記の例示的な実施形態は、脊椎外科用用途を説明する。これは1つの企図される使用法であるが、本発明の方法及び装置は、患者の身体の他の領域での使用に同等に適合させることができる。したがって、本明細書に記載の装置は、患者の身体の様々な領域での使用に適した様々な寸法及び材料で形成することができる。
【0091】
当業者は、上記で説明された実施形態に基づき、更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に明示的に援用する。
【0092】
〔実施の態様〕
(1) 外科用アクセス安定化装置であって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
前記パッドに結合された外科用アクセス装置と、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックするように構成されたロック機構と、を備える、装置。
(2) 前記パッドが、前記ロック機構を受容するように構成された、前記パッドを貫通して延在する開口部を有する、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記開口部が、細長いスロットである、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記開口部が、前記パッドの中央に位置する、実施態様2又は3に記載の装置。
(5) 前記パッドが、前記パッドの撮像を補助するための撮像特徴部を含む、実施態様1~4のいずれかに記載の装置。
【0093】
(6) 前記パッドが、前記外科用アクセス装置のナビゲーションを補助するためのナビゲーション特徴部を含む、実施態様1~5のいずれかに記載の装置。
(7) 前記パッドが、少なくとも1つの放射状指状部を有する中心部分を有する、実施態様1~6のいずれかに記載の装置。
(8) 前記パッドが、可撓性布、エラストマー、及びポリマーのうちのいずれかから作製されている、実施態様1~7のいずれかに記載の装置。
(9) 前記ロック機構が、前記パッドの前記近位対向面に沿った方向への、前記外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる、実施態様1~8のいずれかに記載の装置。
(10) 前記ロック機構が、前記パッドの前記近位対向面に対して横断方向への、前記外科用アクセス装置の並進運動を選択的にロックすることができる、実施態様1~9のいずれかに記載の装置。
【0094】
(11) 前記ロック機構が、前記外科用アクセス装置の回転運動及び前記外科用アクセス装置の角運動のいずれかを選択的にロックすることができる、実施態様1~10のいずれかに記載の装置。
(12) 前記ロック機構が、少なくとも1つのロックリングを更に備える、実施態様1~11のいずれかに記載の装置。
(13) 前記ロック機構が、剥離性接着剤及び面ファスナーのうちのいずれかを更に含む、実施態様1~11のいずれかに記載の装置。
(14) 外科用アクセス安定化システムであって、
近位対向面及び接着遠位対向面を有するパッドと、
作業チャネルを画定する外科用アクセス装置と、
前記パッドと前記外科用アクセス装置との間に結合されて、前記パッドから離れた位置に前記外科用アクセス装置を配置する接続機構と、を備える、システム。
(15) 前記接続機構が、第1の端部で前記外科用アクセス装置に結合され、かつ第2の端部で前記パッドに結合されたアームを更に備える、実施態様14に記載のシステム。
【0095】
(16) 前記アームが、前記第2の端部に対する前記第1の端部の配置を調節するように屈曲可能である、実施態様15に記載のシステム。
(17) 外科用アクセス装置を安定化する方法であって、
患者に切開部を作ることと、
前記患者にパッドを接着することと、
前記切開部を通して、前記外科用アクセス装置を前記患者に挿入することと、
前記外科用アクセス装置を前記パッドに結合することと、
前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の位置を選択的にロックすることと、を含む、方法。
(18) 前記パッドに対して前記外科用アクセス装置を並進移動、回転、及び角度付けすることのうちの少なくとも1つによって、前記切開部内で前記外科用アクセス装置を位置決めすることを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記外科用アクセス装置の前記位置を選択的にロックすることによって、前記パッドに対する前記外科用アクセス装置の更なる並進移動、回転、又は角度付けを防止する、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記パッドが、前記切開部を作った後に前記患者に接着される、実施態様17~19のいずれかに記載の方法。
【0096】
(21) 前記パッドが、前記切開部を作る前に前記患者に接着される、実施態様17~19のいずれかに記載の方法。
(22) 前記パッドが、前記切開部から離れた位置で前記患者に接着される、実施態様17~21のいずれかに記載の方法。
(23) 前記外科用アクセス装置を前記パッドに結合することが、前記パッドの開口部内で前記外科用アクセス装置を位置決めすることを更に含む、実施態様17~22のいずれかに記載の方法。
(24) 前記外科用アクセス装置を前記パッドに結合することが、コネクタアームを用いて前記外科用アクセス装置を前記パッドに連結することを更に含む、実施態様17~23のいずれかに記載の方法。
(25) 前記外科用アクセス装置が前記切開部を通して挿入された後に、前記パッドの少なくとも一部分を、前記外科用アクセス装置から配備することを更に含む、実施態様17~24のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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