(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】疎水性被膜のコーティング組成物及び疎水性表面を有する物品
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240610BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240610BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240610BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240610BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240610BHJP
C09D 123/00 20060101ALI20240610BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20240610BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20240610BHJP
C09D 129/10 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C09D201/00
B32B27/20 Z
C09D5/02
C09D7/62
C09D7/63
C09D123/00
C09D127/12
C09D129/04
C09D129/10
(21)【出願番号】P 2021557663
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020025988
(87)【国際公開番号】W WO2020205879
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】グ、フェン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102575433(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第01640419(EP,A1)
【文献】特開2002-038102(JP,A)
【文献】国際公開第2019/232351(WO,A1)
【文献】特開平10-036702(JP,A)
【文献】特表2018-506622(JP,A)
【文献】特表2018-508242(JP,A)
【文献】特表2009-541033(JP,A)
【文献】特開2003-206477(JP,A)
【文献】特開2011-072993(JP,A)
【文献】特表2018-522089(JP,A)
【文献】特開2008-069365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
B32B 27/20
C09D 5/02
C09D 7/62
C09D 7/63
C09D 123/00
C09D 127/12
C09D 129/04
C09D 129/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水化ケイ酸アルミニウム粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒と、
を含むコーティング組成物であって、
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、
50Å~500Åの細孔直径を有するケイ酸アルミニウム粒子と、前記ケイ酸アルミニウム粒子の表面上の疎水性コーティングと、を含
み、
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、非晶質ケイ酸アルミニウム粒子である、
コーティング組成物。
【請求項2】
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、
60Å以上の細孔直径を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記疎水化コーティングが、前記ケイ酸アルミニウム粒子と前記疎水化層との総重量に基づいて、10重量%以下の量である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物中の、前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の、前記被膜形成性結合剤に対する重量比が、1:2.5
~1:1である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記溶媒が、1種以上の有機溶媒又は水を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、
0.5~50μmの範囲のメジアン粒径を
有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記ケイ酸アルミニウム粒子のBET表面積が、
150m
2/g未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムを含
み、
a)前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属を含有し、
b)前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ土類金属を少なくとも含有し、又は
c)前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ケイ酸ナトリウムマグネシウムアルミニウムである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記ケイ酸アルミニウム粒子の前記表面上の前記疎水性コーティングが、前記ケイ酸アルミニウム粒子の表面シラノール基と化学反応する少なくとも1つの反応性官能基を含有する疎水性シラン又はシロキサンと、前記ケイ酸アルミニウム粒子を接触させることによって形成され、
前記疎水性シラン又はシロキサンが、少なくとも200の分子量を有し
、
a)前記疎水性シラン又はシロキサンが
、(ペルフルオロ)アルキルシラン、(ペルフルオロ)アルキルシロキサン、又はこれらの混合物である、
b)前記疎水性シラン又はシロキサンが、オクタデシルトリメトキシシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、又はシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、又は
c)前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、溶液による改質プロセス、乾燥による改質プロセス、又はミル粉砕及び改質プロセスによって、前記疎水性シラン又はシロキサンと接触させられ、
前記ミル粉砕及び改質プロセスにおいては、前記ケイ酸アルミニウム粒子が
、螺旋ジェットミル内でミル粉砕され、前記疎水性シラン又はシロキサンにより改質され、
0.1~50μmの範囲のメジアン粒径を有する前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を得る、
請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記被膜形成性結合剤が、C
2~C
6ポリオレフィン、C
8~C
36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、C
4~C
36アルキル基と、C
1~C
36アルキルビニルエーテルと、C
1~C
36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記被膜形成性結合剤が、フッ素含有ポリマーを含み、前記溶媒が1種以上の有機溶媒を含み
、
a)前記フッ素含有ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、又はこれらの組み合わせたものであり、
b)前記コーティング組成物が、前記被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含み、前記コーティング組成物が
、開始剤を更に含み、前記架橋剤が2つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、又は
c)前記被膜形成性結合剤が、ゲル化剤を更に含み、前記被膜形成性結合剤が
、水性ワックスエマルション又は前記疎水性ポリマーの水性エマルションを
更に含み、前記溶媒が水を含
む、
請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記被膜形成性結合剤が、前記コーティング組成物の重量に基づいて、
1~30重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記コーティング組成物が、少なくとも1種の噴射剤を更に含むエアゾールの形態である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の前記コーティング組成物から形成される疎水性被膜であって、
室温で、脱イオン水に対して
140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示し、
スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法に
よって製造される、
疎水性被膜。
【請求項15】
請求項1に記載のコーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つの
疎水性表面を備える物品であって
、
a)前記
疎水性表面が、脱イオン水に対して
140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示し、
又は
b)前記物品が、ガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される材料を含む、
物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ぬれにくい性質を有する表面を生成するための疎水性粒子の製造及び使用に関する。特に、本発明は、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子、これらの疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を含むコーティング組成物、これらのコーティング組成物を使用してコーティングされたぬれにくい表面、及びこのようなぬれにくい表面を生成するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の表面は、一般に、水などの液体によってぬれる。ぬれの程度は、液体の凝集力と、液体と表面との間の付着力との間の相互作用の結果である。
【0003】
多くの場合、表面が液体によってぬれていることは望ましくない。例えば、表面を水でぬらした結果、その表面上に水滴が保持され、更にそれらの水滴が蒸発すると、水に懸濁又は溶解した固体が、その表面上に見苦しい残留物として残ることになる。この問題は、特に雨水に暴露された表面について存在する。表面が水でぬれているということは、しばしば、その表面の腐食を誘発するものとなり、又は微生物及び、藻類、地衣類、コケ、二枚貝類などの増殖物による侵襲を誘発するものとなる。
【0004】
液体の包装及び貯蔵容器の文脈では、包装容器又は保管容器が空になったときに、液体が全く残っていないか又は少量しか残っていないようにするため、内側表面のぬれ性が低いことが望ましい。装置及びプラント建設の分野では、液体と接触する構成要素のぬれ性が低いことが望ましい。もし実際に、構成要素のぬれ性が高い場合、被覆物及び付着物の形成が増大するおそれがある。更に、ぬれ性が高くなると、一般に、パイプライン中の液体の流れ抵抗が増加するという結果となる。
【0005】
親水性液体による表面のぬれ性は、表面の疎水性コーティングによって低減され得ることが知られている。この文脈における好適なコーティング材料の例としては、疎水性ワックス、ポリアルキルシロキサン、及びペルフルオロポリマー、特に極めて疎水性の高いポリテトラフルオロエチレン(Teflon)が挙げられる。コーティングは、液体とぬれた表面との間の付着力を低減する。
【0006】
更に、構造化された疎水性表面を有することが好ましいことが判明している。この種類の表面構造は、一般に、ナノメートル又はマイクロメートルスケールの規則的又は不規則な隆起部又は凹部を有する。これらの構造は、多くの場合、表面粗さと呼ばれ、水などの液体をはじくために空気を関与させる。以下にキャシーバクスター式を示す:
cosθCB=f*cosθ-(1-f)
【0007】
式中、θCBは、水滴に対する、コーティングされた層内の特定の疎水性材料で作製された粗面の接触角であり、θは、水滴に対する、平滑な表面材料自体の接触角であり、fは、総表面積に対する水が接触している表面積の比率であり、したがって(1-f)は、水が接触していない領域(空気ポケット)の総表面積に対する比率である。180°に近いθCBを達成するために(すなわち、cosθCBが-1に近く、cosθが0に近いとき)、非常に小さいf値を有することが望ましい。
【0008】
超疎水性表面とは、水滴による接触角が150°を超える表面であり、一般に、超疎水性表面が疎水性の材料及び疎水性の表面粗さの両方を必要とすることが認識されている。本質的に、超疎水性及び自己洗浄特性を有する蓮の葉の単ミクロ構造モデルは、1997年に報告されており(Barthlott,W.;Neinhuis,C.,「Purity of the sacred lotus,or escape from contamination in biological surfaces,」Planta 1997,202(1),1-8)、マイクロメートルスケールの乳頭突起及び疎水性の表角皮のワックスによって引き起こされるものと説明された。
【0009】
米国特許第6683126号は、ぬれにくい表面を製造するためのコーティング組成物を開示している。コーティング組成物は、疎水性表面と、BET表面積が少なくとも1m2/gであることによって特徴付けられる多孔質構造とを有する少なくとも1つの微細粉末、及び表面張力が50mN/m未満であることによって特徴付けられる少なくとも1種の被膜形成性結合剤を含み得る。粉末の結合剤に対する重量比は、少なくとも1:4である。
【0010】
米国特許出願公開第2009/0018249号は、自己洗浄性の疎水性コーティング組成物を開示している。コーティング組成物は、組成物と溶媒又は溶媒混合物との総重量に基づいて最大5.0重量%の有効量で、1000~4,000ナノメートルの範囲のサイズの疎水性ヒュームドシリカを含み得る。コーティング組成物は、少なくとも165度の水による接触角を有するコーティング表面をもたらすが、これに対して、コーティングされていない表面上では、水による接触角は10~15度である。
【0011】
米国特許第8354160号は、高い疎水性の表面、極めて高い疎水性の表面、又は超疎水性の表面を形成する方法を開示している。その方法は、疎水性微粒子、疎水性ナノ粒子、又はこれらの混合物と、結合剤とを、隆起部分、凹部、又はこれらの組み合わせを有するマイクロパターン化表面を有する基材上に、疎水性又は超疎水性表面を提供するのに十分な量で含む組成物を堆積させることを含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書では、特定の粒径及び細孔直径を有し、しかも疎水性有機分子又はポリマーによって疎水化されている多孔質ケイ酸アルミニウム粒子と、少なくとも1つの疎水性ポリマー結合剤と、を含むコーティング組成物を開示する。
【0013】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、疎水化多孔質ケイ酸アルミニウム粒子と、被膜形成性の疎水性結合剤と、溶媒と、を含む。疎水化多孔質ケイ酸アルミニウム粒子は、約50A以上の細孔直径を有し、かつ疎水性有機分子又はポリマーで改質されたケイ酸アルミニウム粒子を、その多孔質のケイ酸アルミニウム粒子の表面上に含む。
【0014】
本発明の別の例は、物品である。その物品は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、本開示の技術的解決策に対するより良好な理解を当業者に提供するために、付随する実施形態を参照して更に詳細に説明するものである。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の定義を有する。
【0017】
本明細書において「約」により修飾された数値範囲は、数値範囲の上限及び下限がその10%だけ変化し得ることを意味する。本明細書における「約」により修飾された数値は、数値がその10%だけ変動し得ることを意味する。
【0018】
用語「疎水化された」は、本明細書では、長鎖炭化水素、ペルフルオロカーボン、又はシロキサン基を含む疎水性分子又はポリマーで改質されているケイ酸アルミニウム粒子を指すために用いられている。
【0019】
用語「疎水性」は、水でぬらすことが困難な表面、被膜、又はコーティングに言及するものである。表面は、少なくとも90°の静的な水接触角を示した場合には、疎水性であると見なされ、少なくとも110°の静的な水接触角を示した場合には、高疎水性と見なされるであろう。用語「超疎水性」は、水で極めてぬれにくい表面、被膜、又はコーティングに言及するものである。超疎水性表面又はコーティングは、通常、130°を超える、多くの場合140°を超える静的な水接触角を有する。
【0020】
用語「多孔質」は、粒子が、少なくとも1cc/gの窒素細孔容積を有すること(BJH法により測定。なお、Barrett et al.,J.Am Chem.SOC.,73,373~380,1951)を指して用いられる。
【0021】
用語「細孔直径」(PD)は、円筒形モデルに基づいて、PD(A)=40,000*PV/SAとして定義され、ここで、PVは、粒子の窒素細孔容積(単位はcc/g)を表し、SAは、BET表面積(単位はm2/g)を表す(Brunauer et al.,J.Am Chem.SOC.60,309~319,1938を参照)。
【0022】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、i)疎水化多孔質ケイ酸アルミニウム粒子、ii)被膜形成性の疎水性結合剤、及びiii)溶媒を含む、ぬれにくい表面を生成するための組成物、特にコーティング組成物の形態の組成物を提供する。一実施形態において、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、ケイ酸アルミニウム粒子と、そのケイ酸アルミニウム粒子の表面上の疎水性コーティングとを含む。ケイ酸アルミニウム粒子は、約50A以上、好ましくは約60A以上、より好ましくは約70A以上の細孔直径を有する。一実施形態において、細孔直径は、約50A~約1000A、好ましくは約55A~約500Aの範囲であり、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の被膜形成性の結合剤に対する重量比は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%である。一実施形態では、溶媒は、1種以上の有機溶媒又は水を含む。
【0023】
ケイ酸アルミニウム粒子は、非晶質の多孔質粒子である。本明細書における用語「非晶質」は、固体形態の材料又は複数の材料が、非結晶性である、又は結晶の特徴である長距離秩序を欠いていることを意味する。典型的には、X線回折では、非晶質固体は、多方向にX線を散乱させ、結晶性固体での高強度のより狭いピークの代わりに、広範囲に分布する大きな隆起をもたらす。本発明のいくつかの実施形態において有用なアルミノケイ酸塩としても知られる非晶質ケイ酸アルミニウムは、酸化アルミニウム(Al2O3)及び二酸化ケイ素(SiO2)に由来する化学化合物である。非晶質ケイ酸アルミニウムは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を更に含有する、非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムであり得る。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウムである。非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムはまた、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有してもよい。一実施形態では、アルカリ土類金属は、マグネシウムである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態による組成物中に存在するケイ酸アルミニウム粒子は、特定の粒径を有し得るが、それらは光散乱法によって測定される。本発明のいくつかの実施形態によるコーティング組成物中に存在する粉末粒子は、好ましくは、約0.5μm~約50μmの範囲のメジアン粒径D50を有し、特特に好ましくは約1μm~約15μmである。D50は、サンプルの質量の50%が、それより小さい粒子で構成される直径である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態による組成物中に存在するケイ酸アルミニウム粒子は、その疎水性表面及び高い比表面積により証明されているその多孔質構造によって実質的に特徴付けられる。比表面積は、DIN 66131に従って決定されるBET表面積である。本発明のコーティング組成物中に存在するケイ酸アルミニウム粒子は、当該領域内において、好ましくは少なくとも5m2/gの、特に少なくとも10m2/gの、特に好ましくは少なくとも20m2/gのBET表面積を有する。特に、疎水性粒子のBET表面積は5~500m2/gの範囲であり、特に好ましくは10~400m2/gの範囲であり、特に非常に好ましいのは20~350m2/gの範囲である。
【0026】
好ましい一実施形態では、非晶質アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムは、非晶質ナトリウムケイ酸アルミニウムである。これらの粒子の調製は、当該技術分野において公知である。例えば、欧州特許第0701534号は、ケイ酸アルミニウム、特に高い表面積と高いアルミナ含有量とを有するケイ酸アルミニウムの製造プロセスを教示している。
【0027】
一実施形態では、ケイ酸アルミニウム粒子は、その粒子の表面にて疎水性分子又はポリマーで改質され、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を形成する。疎水性分子又はポリマーは、ケイ酸アルミニウム粒子の表面に対して、物理的にコーティングされても、又は化学的に改質されてもよい。好ましくは、疎水性分子又はポリマーは、粒子の表面上に共有結合的に改質される。
【0028】
疎水性分子又はポリマーは、非極性有機分子を含んでもよい。疎水性分子又はポリマーの例としては、ワックス、シラン、及びシロキサンポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、疎水性分子は、多数のアルキル基(-CH2-)又は(ペル)フルオロアルキル基(-CF2-)を有するシランを含む。アルキル基又は(ペル)フルオロアルキル基は、少なくとも4個の炭素原子を含んでもよい。一実施形態では、疎水性ポリマーは、ポリジアルキルシロキサン基(-OSi(R2)-、例えば、ポリジメチルシロキサン基(-OSi(Me)2-)を含むシロキサンポリマーであり、これは、例えば共有結合によって、ケイ酸アルミニウム粒子と結合し得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によるケイ酸アルミニウム粒子は、ケイ酸アルミニウム粒子を、アルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラン、及び/又は酸化物担体粒子の表面のシラノール基と化学反応をすることができるシロキサンポリマーで処理することによって一般に得られる。アルキルシラン又は(ペルフルオロ)アルキルシランは、少なくとも200の分子量を有し得る。ポリジアルキルシロキサンは、少なくとも800の分子量を有し得る。疎水性シラン又はシロキサンの例としては、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、又はシラノール末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0030】
疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、溶液による改質プロセス、乾式の改質プロセス、又はミル粉砕及び改質プロセスによって調製され得る。一実施形態では、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、一種類の有機溶媒中又は複数種の有機溶媒の混合物中の疎水性シラン及び/又はシロキサンの溶液との混合を伴う、溶液による改質プロセスによって調製される。その後、混合物を、ケイ酸アルミニウム粒子上の表面のシラノール基と疎水性シラン及びシロキサン上の官能基との間の反応を可能にするのに十分な時間及び温度で、撹拌しながらブレンドする。好ましくは、混合物は、約5~約20時間、最も好ましくは少なくとも8時間にわたり、周囲温度~約120℃の範囲の温度でブレンドされる。
【0031】
別の実施形態では、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、乾式の改質プロセスによって調製されてもよく、これは、溶媒の存在なしで、粒子と液体シラン及びシロキサンとの連続混合を伴う。混合は、好ましくは、ケイ酸アルミニウム粒子上の表面のシラノール基と疎水性シラン及びシロキサン上の官能基との間の反応を達成するのに十分な時間及び温度で、例えば、約5~約20時間にわたり、周囲温度~約120℃の範囲の温度で実施される。好ましくは、乾燥結合された混合物は、高温、例えば120℃で、約5~約15時間にわたって加熱される。
【0032】
更に別の実施形態では、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、連続的な混合及びミル粉砕プロセスによって、好ましくは螺旋ジェットミルプロセスを使用して調製される。ケイ酸アルミニウム粒子を粉砕し、疎水性シラン又はシロキサンポリマーで改質して、約0.5μm~約50μmのメジアン粒径を有する疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が得られる。好ましい実施形態では、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子は、約1μm~約15μmの範囲のメジアン粒径を有し得る。
【0033】
本発明において有用な被膜形成性結合剤は、所望の最終用途に応じて異なり得る。被膜形成性結合剤は、典型的には、表面上に固体被膜を形成し得るワックスなどの有機ポリマー又は他の疎水性有機物質である。被膜形成性結合剤は、例えば、組成物が粉末として、又は成形物品を製造するために使用されるときに、コーティングされる基材の表面上に粉末粒子を固定する、又は粉末の表面どうしを互いに固定する役割を果たす。結合剤によって形成される被膜は、十分に疎水性であり得る(すなわち、少なくとも80°の水接触角を有し得る)。しかしながら、耐久性が良好なコーティングされた被膜では、ポリマー又は他の有機基材の種類が重要である。いくつかの実施形態では、ポリマー又は有機物質は、いくつかの架橋剤の存在下で架橋することができ、架橋後、コーティングされた被膜は非常に大きな耐久性を持ち得る。
【0034】
結合剤の疎水性は、その表面張力を用いて特徴付けられる。これは、例えば、結合剤でコーティングされた滑らかな表面上の水の静的接触角を測定することによって決定することができる。疎水性結合剤は、水の静的接触角が少なくとも80°であることを特徴とする。
【0035】
一実施形態において、被膜形成性結合剤は、表面張力が50mN/m未満であることによって特徴付けられる。また、被膜形成性結合剤は、C2~C6ポリオレフィン、C8~C36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、C4~C36アルキル基と、C1~C36アルキルビニルエーテルと、C1~C36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される。
【0036】
結合剤は、有機溶媒に対して可溶性を有する熱可塑性ポリマーを含んでもよい。あるいは、結合剤は、小さい粒径形態(50nm~1μmの範囲の粒径を有する)では、イオン性又は非イオン性界面活性剤を有する又は有さない、水又は他の溶媒中に分散させることもできる。使用される結合剤はまた、熱、酸化、又は光化学的硬化プロセスによって架橋され、粒子により固体コーティングを形成する有機プレポリマーを含んでもよい。
【0037】
更に、結合剤は、8個超の炭素原子を有する脂肪酸、特にエチレン性不飽和脂肪酸、及びそれらのエステルで、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、グルコース、スクロース、又はトリメチロールプロパンなどの多官能アルコールを有するものであり得る。それらの脂肪酸及びそれらのエステルは酸化的に硬化するので、プレポリマーの部類に含まれる。結合剤として好適であるのは、例えばパラフィンワックス、蜜蝋、カルナウバ蝋、羊毛蝋、キャンデリラ蝋などの天然ワックス、例えばモンタン酸ワックス、モンタンエステルワックス、アミドワックス(例えば、ジステアロイルエチレンジアミン)、フィッシャー・トロプシュワックス、及びエチレン及びプロピレンのワックス様ポリマー(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)である。上述のように、これらのワックスは、特定の界面活性剤と共に水中に分散されたワックス粒子であり得る。
【0038】
被膜形成性結合剤は、C2~C24オレフィン、C5~C8シクロオレフィン、フルオロオレフィン、フルオロクロロオレフィン、ビニル芳香族、ジオレフィン(例えばブタジエン、イソプレン、及びクロロブタジエンなど)、及び少なくとも1つのC2~C36アルキル基を含有する、様々なモノエチレン性不飽和モノマーなどから選択される、疎水性モノマーから形成されてもよい。
【0039】
好ましい疎水性モノマーの例は、C2~C24オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン、n-ヘキセン、n-オクテン、イソオクテン、n-デセン、及びイソトリデセン)、C5~C8シクロオレフィン(例えば、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン及びα-メチルスチレンなど)、フルオロオレフィン及びフルオロクロロオレフィン(例えば、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなど)、2~36個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルカンカルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びステアリン酸ビニル)、直鎖又は分枝鎖C2~C36アルカノールを有するアクリル酸及びメタクリル酸のエステル(例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート)、並びに、C2~C36アルカノールのビニルエーテル及びアリルエーテル(例えば、n-ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなど)のフッ素化モノマーが挙げられる。
【0040】
被膜形成性結合剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチルメタクリレート、ポリ-n-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)、ポリエチルアクリレート、ポリ-n-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、及びマレイン酸とC3~C6オレフィン、C1~C36アルキルビニルエーテル、及び脂肪族C1~C36カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つの疎水性モノマーとのコポリマーが挙げられ得る。
【0041】
更なる好適な被膜形成性結合剤としては、ポリC1~C4アルキレンオキシド(例えば、ポリオキシメチレン、ポリプロピレンオキシド、及びポリブチレンオキシド)、ポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、及び例えばポリジメチルシロキサン(シリコーン)などの直鎖又は分枝鎖ポリジアルキルシロキサンが挙げられる。シリコーンは、触媒としてスズ錯体化合物を用いてオルトケイ酸テトラエチルで架橋することができる。
【0042】
更なる好適な被膜形成性結合剤としては、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、及び脂肪族及び/又は芳香族ジオールから作られる部分的に芳香族のポリエステル、例えば、2~18個の炭素原子を有する脂肪族ジアルコール(例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール)と、3~18個の炭素原子を有するジカルボン酸(例えば、アジピン酸及びデカンジカルボン酸など)とから合成されるポリエステルが挙げられ、また、ビスフェノールA及び3~18個の炭素原子を有する上記ジカルボン酸から合成されるポリエステルや、テレフタル酸と、2~18個の炭素原子を有する脂肪族ジアルコールと、3~18個の炭素原子を有するジカルボン酸と、から合成されるポリエステルも挙げられる。
【0043】
それらのポリエステルは、任意選択的に、例えば2-エチルヘキサノール又はオクタデカノールなどの、4~24個の炭素原子を有する長鎖モノアルコールによって末端化されてもよい。更に、ポリエステルは、4~24個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸、例えばステアリン酸で末端化されてもよい。
【0044】
被膜形成性結合剤ポリマーの重量平均分子量は、広範囲にわたって変化してもよく、一般に、1000~1000万g/モルの範囲、好ましくは2500~600万g/モル、特に2500~500万g/モルの範囲である(粘度法により測定)。結合剤ポリマーがポリオレフィン、特にポリイソブテンである場合、その重量平均分子量は、3万~600万g/モルの範囲であることが好ましく、又は50万~500万g/モルの範囲であることが好ましい。ポリオクタデシルビニルエーテルの場合、分子量は2000~1万g/モルの範囲であることが好ましく、特に2500~5000g/モルの範囲であることが好ましい。
【0045】
いくつかの実施形態では、被膜形成性結合剤は、光化学的及び/又は熱架橋性結合剤であるが、それらは、放射線硬化性コーティング材料を調製するために使用される、エチレン性不飽和二重結合を有するポリマー及びオリゴマーである。これらの結合剤としては、例えば、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアリレート、ポリウレタンアクリレート、縮合無水マレイン酸単位を有するポリエステル、及びエポキシ樹脂(例えば芳香族エポキシ樹脂)の流動性配合物が挙げられる。なお、これらのオリゴマー及び/又はポリマーは、所望に応じて、それらの流動性を向上させるために、溶液中、有機溶媒中、及び/又は反応性希釈剤中に存在する。反応性希釈剤としては、低分子量のエチレン性不飽和液体が挙げられ、このエチレン性不飽和液体が架橋されると、エチレン性不飽和ポリマーと共にコーティングを形成する。
【0046】
また、被膜形成性結合剤として、ビスフェノール系エポキシ樹脂系を用いることもできる。これらの樹脂は、アミン及びジアミンで架橋及び硬化させることができ、特に、それらのアミン及びジアミンは、長い炭化水素鎖(>6)からなり、硬化したエポキシ表面を疎水性にすることができる。
【0047】
放射線硬化性結合剤、及びこれらの結合剤を含む配合物は、例えば、P.K.T.Oldring(Ed.)「Chemistry and Technology of UV&EB Formulation for Coatings,Inks&Paints」,Vol.2,1991,Sita Technology Londonから、当業者に周知であり、かつ商標名Laromer.RTM.P084F、Laromer.RTM.LR8819、Laromer.RTM.PE55F、Laromer.RTM.LR8861で市販されている(いずれも、BASF株式会社(ルートヴィヒスハーフェン)から)。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態による結合剤としては、C2~C6ポリオレフィン、特にポリイソブテン、アタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、また、C4~C36アルキル基、特にC8~C22アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー及びコポリマー、所望であればそれらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマー、更にC3~C4ポリアルキレンオキシドが挙げられる。これらのうち、C8~C36アルキルビニルエーテル、例えばポリオクタデシルビニルエーテルの、ホモポリマー及びコポリマーが特に好ましい。
【0049】
一実施形態では、被膜形成性結合剤はフッ素含有ポリマーを含み、溶媒は1種以上の有機溶媒を含む。フッ素含有ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、又はこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0050】
一実施形態では、コーティング組成物は、被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含む。一実施形態では、コーティング組成物は、開始剤を更に含み、架橋剤は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む。一実施形態では、被膜形成性結合剤は、ゲル化剤を更に含む。
【0051】
一実施形態では、被膜形成性結合剤は、水性ワックスエマルション又は疎水性ポリマーの水性エマルションを含み、溶媒は水を含む。一実施形態では、コーティング組成物は、界面活性剤の存在下で、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を水中に分散させて、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の懸濁液を形成し、次いで、疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の懸濁液と、ワックスエマルション又は疎水性ポリマーのエマルションとを混合することによって調製される。一実施形態では、被膜形成性結合剤は、コーティング組成物の重量に基づいて、約1~約30重量%の量で存在する。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態に従って所望される、ぬれ性を低くする効果を達成するために、組成物中における、i)疎水性ケイ酸アルミニウム粒子の、ii)結合剤に対する重量比は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%であってよく、特に好ましくは少なくとも40%、非常に特に好ましくは少なくとも50%であってよい。この重量比は、好ましくは、75%の値、特に80%の値を超えない。非常に特に好ましくは、i)とii)との重量比が、40~60%の範囲内である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によるコーティング組成物は、乾燥形態で使用され得るが、それはすなわち、i)微粉化疎水性粒子と、ii)疎水性ポリマー結合剤との両方を含む粉末配合物として使用され得ると言うことである。
【0054】
一実施形態では、コーティング組成物は、処理温度では流体である形態で使用される。コーティング組成物は、当然のことながら、配合物の性質に応じて、室温、及び例えば、0~150℃の範囲内の温度といった室温より高い又は低い温度の両方で、処理され得る。
【0055】
流体形態では、本発明のいくつかの実施形態のコーティング組成物は、一般に、i)粉末及びii)結合剤だけでなく、所望であれば、希釈剤又は溶媒を含むが、好ましくは、ポリマー結合剤を溶解させるがi)微粉化された粉末を溶解させない溶媒がよい。あるいは、結合剤はまた、1種以上の界面活性剤の助けを借りて、溶媒又は水に均質に分散させることもできる。これにより、コーティングの形成が改善される。
【0056】
好適な溶媒は、コーティングの塗布後に、加熱することにより又は加熱することなく、蒸発する揮発性有機溶媒又は水であり、それにより、結合剤ポリマーの均一な被膜の形成を可能にする。好適な溶媒の例は、アセトン及びエチルメチルケトンなどのケトン、酢酸エチル及び酢酸n-ブチルなどの酢酸の揮発性エステル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、並びに例えばテレビン油、石油、石油スピリット、トルエン、及びキシレンなどの脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素である。極性溶媒も使用することができる。例えば、疎水性熱可塑性ポリウレタンはジメチルホルムアミド(DMF)中にのみ溶解することができるが、この場合には、DMFを配合物中に使用することができる。
【0057】
液体配合物では、固形分の含量(配合物の総重量に基づいた、i)粒子及びii)ポリマー結合剤の総重量)は、0.5~80重量%の範囲である。コーティング組成物において、固形分の含量は、しばしば10~50重量%の範囲内であり得る。噴霧可能なコーティング材料の場合、上記の含量はまた、上記のレベル未満、例えば、0.5~10重量%の範囲であり得る。
【0058】
本発明の別の例は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から形成された疎水性被膜であり、その疎水性被膜は、室温で脱イオン水に対する約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点を示す。一実施形態では、疎水性被膜は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法によって製造される。
【0059】
ぬれにくい表面を製造するために、本発明のいくつかの実施形態によるコーティング組成物は、コーティングされる基材に従来の方法で塗布される。原則として、全ての従来の表面は、本発明のコーティング組成物でコーティングされてもよい。従来の表面の例は、木材、金属、ガラス、及びプラスチックの表面である。本発明のコーティング組成物は、言うまでもなく、例えばコンクリート、石膏、紙、織布などの、粗い及び/又は多孔質の表面をコーティングするためにも使用されてもよい。例としては、衣類、傘、テント、及び大天幕用の織物織布、同等の用途の織物織布、並びに皮革及び毛髪も同様にコーティングされるために使用されてもよい。
【0060】
コーティングされる表面(以下では、基材とも呼ばれる)へのコーティングの塗布は、コーティング組成物の実施形態及び基材の性質に応じて、コーティング技術において慣例的に実行されている塗布技術に従ってなされる。溶媒を含有する流動性コーティング組成物の場合、塗布は、一般に、刷毛による塗布や、例えばエアブラシによるスプレーや、浸漬や、又はローリングによって行われ、その後、コーティングが乾燥されるが、その間に溶媒が蒸発する。
【0061】
使用されるii)結合剤が、熱的、酸化的、又は光化学的に架橋可能なプレポリマーである場合、コーティング組成物は、多くの場合、溶媒を添加しない状態でさえ流動性を有しており、上記技術によって塗布されてもよく、場合によってはその塗布は、反応性希釈剤で希釈した後に実施され得る。この場合、実際のコーティングは、プレポリマーの熱的、酸化的、又は光化学的な硬化(架橋)によって形成される。1つのとりわけ好適な例は、エポキシプレポリマー及びエポキシポリマーの硬化である。
【0062】
所望の効果を達成するために、コーティング組成物は、コーティングされる表面に、コーティング組成物の固体の構成成分に基づいて、好ましくは少なくとも0.01g/m2、特に少なくとも0.1g/m2、とりわけ少なくとも0.5g/m2、好ましくは1000g/m2以下の量で塗布される。この文脈における固体の構成成分は、本質的に構成成分i)及びii)である。これは、揮発性成分の蒸発後、少なくとも0.01g/m2、特に少なくとも0.1g/m2、とりわけ少なくとも0.5g/m2の、コーティングの実重量に相当する。多くの場合、コーティングは、コーティングされる表面に対して、最大100g/m2の量(固体の構成成分に基づいて)で塗布されるが、他の形態の塗布では、より多くの量のコーティング組成物が塗布されるであろう。例えば、コンクリート用塗料の形態のコーティングの場合、又はコンクリート屋根葺きスラブのコーティングの文脈においてそのように適用されるであろう。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態による別の一実施形態は、ぬれにくい表面を有する成形物品を製造するための組成物の使用に関する。一実施形態では、物品は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を含む。そのぬれにくい表面は、室温で脱イオン水に対する、約140°以上の静的接触角、及び0~3のスケールで少なくとも1の、ローリング評点を示し得る。物品は、ガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される、少なくとも1種の材料で作製されてもよい。
【0064】
本発明に従ってコーティングされた表面と同じ有利な特性はまた、本発明の組成物から製造される成形物品によっても保有されている。更に、成形物品は、驚くべきことに、例えばそれらの表面が、粗い扱い又は引っ掻きによって、破壊される場合であっても、これらの特性を失うことはない。この特性により、表面が経年劣化しても、有利な表面特性を再生することが可能となる。
【0065】
更に、液体、特に水及び水溶液の流れ抵抗は、本発明のいくつかの実施形態によるコーティングでコーティングされたパイプ、毛管、又はノズルを通って流れるときに低減される。それらの有する特性に基づいて、本発明の組成物は、多様な用途に塗布することができる。
【0066】
例えば鋼鉄補強コンクリートを含むコンクリート、木材、又は金属などの、腐食を受けやすい材料は、本発明のコーティング組成物でコーティングすることにより、腐食に対して効果的に保護され得る。本発明のいくつかの実施形態による組成物は、更に、紙、カード、又はポリマー被膜の表面仕上げに好適である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態による組成物が提供されている布地、特に織物布地は、高レベルの不透過性と、低レベルの吸水性と、汚れをはじくことと、に注目すべきである。本発明のいくつかの実施形態による組成物での処理により、布地は、全くの撥水性になる。汚れの粒子は、水を有意に吸収することなく、容易に水で洗い流すことができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態による組成物は好適であり、例えば、衣類、テント、大天幕、ターポリン、傘を製造するため、例えば自動車産業では、コンパートメント(例えば自動車の車内)の裏打ちをするため、座席エリアの裏打ちをするために使用することができる布地用の撥水性及び防汚性仕上げとして使用することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態による組成物で処理された皮革は、撥水性及び防汚性といった特性を有する皮革製衣類及び靴を製造するのに好適である。化粧品の分野では、本発明のいくつかの実施形態による組成物は、ヘアトリートメント組成物として使用されてもよく、例えば、化粧用として適合性のあるi)結合剤、例えば、この目的のために一般的に用いられるポリマーを含むならば、ヘアスプレーの形態で使用され得る。構成要素及び成形物品は、同様の方法で使用することができる。
【0069】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示を目的として提示されたものであり、包括的であることを意図するものでも、開示された実施形態に限定されるものでもない。記載された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実用的又は技術的改良、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【0070】
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に述べる。但し、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0071】
材料
表1は、実施例で使用される粒子の、メジアン粒径(PS)D50、BET表面積(BET)、細孔容積(PV)、及び計算された細孔直径(PD)などの、特性を列挙する。メジアン粒径を、Malvern Instrument Ltd.から入手可能なMalvern Mastersizer 2000又は3000を使用して、ASTM B822-10に準拠したレーザー光散乱法によって測定した。メジアン粒径D50を報告した。粒子の「BET表面積」は、ブルナウアー・エメット・テラー窒素吸着法(Brunauer et al,J.Am.Chem.Soc.,1938,60(2),309~319)により測定し、窒素細孔容積は、DIN66134に記載されるバレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)窒素気孔率法を使用して測定される、複数の粒子の平均細孔容積を指すものである。粒子の炭素含有量は、LECO Corp.から入手可能なLECO Carbon Analyzer SC-632を使用して測定する。
【表1】
【0072】
表1において、P-1、P-2、P-5、及びP-10は、沈殿した非晶質ケイ酸ナトリウムマグネシウムアルミニウム粒子である。P-3、P-4、P-6~P-9は、沈殿した非晶質ケイ酸ナトリウムアルミニウム粒子である。これらの粒子の一般的な調製方法は、以下のように説明される。
【0073】
典型的には、欧州特許第0701534号に記載されている調製方法に、いくつかの修正を施しつつ準拠した。沈殿した非晶質ケイ酸アルミニウムは、硫酸アルミニウム溶液を強力に撹拌しつつ、pHを一定に維持しながらケイ酸ナトリウム溶液に添加することによって調製した。溶液を、任意選択的に加熱してもよい。任意選択的に、様々な量の塩化マグネシウム溶液を硫酸アルミニウムと混合した。典型的な反応時間は、1~2時間であった。添加が完了した後、沈殿した粒子を濾過し、脱イオン水で5回洗浄し、次いで120℃で一晩乾燥させ、流体エネルギーミル若しくはジェットミル、又は小規模分析ミルを利用して、所望の粒径に粉砕した。以下の表2には、P-1~P-10の調製のための反応条件を列挙する。
【表2】
【0074】
表3には、以下の実施例及び比較例で使用される疎水化剤を列挙する。以下の実施例では、シリコーン油とポリジメチルシロキサン又はPDMSとは、互換的に使用される。
【表3】
疎水化粒子の改質手順
溶液による改質:
【0075】
100mLのNalgene(登録商標)ボトルに、オーブンで乾燥させた2gの粒子(表1の粒子)と、0.2gのシラン(C18又はF13シラン)と、40mLの無水トルエンとを充填した。ボトルのキャップをしっかりと閉じた。次いで、ボトル内部の材料を、機械的回転機である、Cole-Parmer社製のRoto-Torqueモデル7637で、少なくとも10時間混合した。
乾燥による改質:
【0076】
500mL丸底フラスコ及び出発粒子の両方を、例えば120℃で約12時間にわたってオーブンで乾燥させた。フラスコに、オーブンで乾燥させた出発粒子を充填した。次に、出発粒子及びPDMSを可能な限り均質に混合するように、フラスコを頻繁に振盪させつつ、ピペットを使用して、5~55重量%のPDMSをフラスコに滴加した。シリコーン油が粘稠すぎる場合、少量のトルエンを使用してPDMSを溶解し、次いで溶解させたPDMSを添加した。PDMSと粒子との混合物を、回転蒸発装置で、少なくとも約5時間~約12時間にわたり室温で回転させた。次いで、PDMSと粒子との混合物を結晶皿に移し、次いで、数時間にわたってドラフト内に載置して、トルエンを使用する場合は蒸発させた。最後に、PDMSと粒子との混合物を含有する結晶皿をオーブンに入れ、120℃で約12時間にわたって焼成した。
ミル粉砕及び改質:
【0077】
8個の0.011インチの研削孔を有する10インチの螺旋ジェットミルを使用した。この螺旋ジェットミルの粉砕チャンバは、0.8mmのノズルを研磨リング壁の外側から内側に挿入することができるように修正した。このノズルを、PDMS中の測定に使用した計量ポンプに接続した。
【0078】
具体的には、結合手順は、以下の工程を含む。最初に、ミル過熱器を、例えば、300F~340Fの範囲の温度に上げた。Acrison Loss-in-weightフィーダーには、粉砕する粒子が充填された。フィーダーを、40lb/時間の一定速度に設定した。結合中、ミル粉砕過熱器の温度は、制御システムによって常に調節されて、ミル出口温度を300~340Fに維持し、ミルの粉砕圧力及び射出圧力を、それぞれ18及び80psiに制御した。次いで、予め較正された計量ポンプをオンにして、ノズルを通してミル粉砕チャンバ内にPDMSを注入した。したがって、粒子及びPDMSは、同時にミルに添加された。このプロセスは、所望の量のミル粉砕された疎水性生成物が生成されるまで継続した。
コーティング組成物の調製
【0079】
以下に詳細に記載されるように、疎水化粒子を、溶媒中の8種類の異なる種類の被膜形成性結合剤系と別々に混合して、コーティング組成物を作製した。
結合剤系1:
【0080】
フッ素含有ポリマーであるフルオロ-エラスマーDAI-EL(登録商標)G802(Daikin America,Inc.(ニューヨーク州、Orangeburg)から入手)を、膜形成結合剤として使用した。G802は、フッ素含有量が約66%であり、1.81の比重を有する、過酸化物硬化性コポリマーである。アセトン中の10重量%溶液を、アセトン中のポリマーを約2時間にわたって加熱及び撹拌することによって調製し、溶液を原液として使用した。
【0081】
いくつかの所定量の疎水化粒子を、上記溶液と混合した。トルエン又はアセトンを添加して、混合物を、所望の割合及び濃度とした。混合物を音波浴内で、1時間にわたって超音波処理した。次いで、この混合物を使用して、基材上にコーティングされた被膜を作製した。
【0082】
いくつかの実施例では、コーティングされた被膜の耐久性を改善するために、架橋剤を使用した。具体的には、コーティングを塗布する直前に、約4%のトリアリルイソシアヌレート及び3%のジクミルペルオキシド(いずれも使用されるG802ポリマーの重量に対する重量パーセント)を、コーティング組成物に溶解させた。コーティングされた被膜を120℃で1時間にわたって加熱処理することにより、コーティングされた被膜中の結合剤分子どうしの間で、架橋反応を起こすことが可能であった。
結合剤系2:
【0083】
被膜形成性結合剤として、疎水性ポリウレタンを使用した。IROGRAN(登録商標)A 85 P 4394は、ポリエーテル系の疎水性熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。この製品は、Huntsman Corporation(テキサス州、Woodlands)によって製造される。適切な量のポリマーを、音波浴中で1時間にわたって超音波処理しながらジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させることにより、DMF中の2.9重量%原液を調製し、この溶液を原液として使用した。
【0084】
いくつかの所定量の疎水化粒子を上記溶液に添加して、混合物を所望の比率とした。混合物を音波浴内で、1時間にわたって超音波処理した。次いで、この混合物を使用して、基材上にコーティングされた被膜を作製した。
【0085】
コーティング後、コーティングされた被膜を120℃で4時間にわたって加熱処理することにより、コーティングされた被膜の層がTPU中に均一に分布した粒子を有することが可能になる。
【0086】
結合剤系3:
被膜形成性結合剤として、ワックスエマルションを使用した。API-WP30Cは、Advanced Polymer,Inc.(ニュージャージー州、Carlstadt)から入手した。API-WP30Cは、アニオン性界面活性剤によって安定化された、水性パラフィンワックスエマルションである。AW-703は、A&W Products,Inc.(ジョージア州、Bishop)から入手したが、それも、アニオン性界面活性剤によって安定化された、水性ポリエチレンワックスコエマルションである。上記のエマルションは共に、木材又はコンクリートなどの多孔質基材上にコーティングされた被膜を作製するために使用することができる。
【0087】
水中でのワックスエマルション粒子と疎水化粒子との良好な混合を得るためには、まず、疎水化粒子を水に分散させるのが必要であった。この目的のために、190gの水中で、10gの疎水化粒子を、約0.42g(4.2重量%)のTriton X-100(Dow Chemical Company製)と、高剪断混合(Silverson mixerを、約6000rpmで用いた)で、約30分間にわたって混合した。これによって、水中に分散させた粒子をワックスエマルションと混合することができた。続いて、混合液を水で希釈して、コーティングステップ前に所望の濃度を有する配合剤を作製した。
結合剤系4:
【0088】
被膜形成性結合剤としてポリマーエマルションを使用した。具体的には、ポリオレフィン(PO)エマルションであるCANVERARA(商標)1110は、Dow Chemical Company(ミシガン州、Midland)から入手した。これは、水性酸変性ポリオレフィン分散体である。
【0089】
水中でのPOエマルション粒子と疎水化粒子との良好な混合を得るためには、まず、疎水化粒子を水に分散させるのが必要であった。この目的のために、190gの水中で、10gの疎水化粒子を、約0.42g(4.2重量%)のTriton X-100(Dow Chemical Company製)と、高剪断混合(Silverson mixerを、約6000rpmで用いた)で、約30分間にわたって混合した。次いで、水中の分散粒子をワックスエマルションと混合して、コーティングステップ前に所望の濃度とした。
結合剤系5:
【0090】
被膜形成性結合剤はまた、コーティング後にその場で、重合又はゲル化によって形成され得るが、これは、ゴム状の材料に特に当てはまるものである。具体的には、シラノール末端PDMSである、CRTV942(粘度4000cP、Momentive Company(ニューヨーク州、Waterford)から入手可能)と、5重量%(PDMSの重量に対して)のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)と、2.5重量%(PDMSの重量に対して)のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とをトルエン中で混合し、次いで、いくつかの所望の量の疎水化粒子を添加した。混合物を10時間にわたり静置した後、音波浴で30分間にわたって超音波処理し、それに続いてコーティング手順を行って、コーティングされたシリコーンゴム被膜を形成した。
結合剤系6:
被膜形成性結合剤はまた、コーティング後に、その場でかつラジカル重合開始剤の存在下で、重合及び架橋によって形成することもできる。具体的には、20mLのガラスバイアル瓶中で、0.5gのペンタエリスリトールテトラアクリレートと、3gのポリエステルアクリレート03-849(アセトン中33%溶液)(Rahn USA Corp.(イリノイ州、Aurora)製)と、0.5gのCN4002(Sartomer USA社(ペンシルベニア州Exton)製)と、1.4gの疎水化粒子と、3gのアセトンとを一緒に混合し、音波浴中で1時間にわたって超音波処理した。次いで、混合物を氷浴中で、5℃まで冷却した。次いで、0.3gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)開始剤を添加した。配合物を、スプレーによってガラス又は金属表面に塗布した。コーティング後、基材を100℃のオーブン内で、3時間にわたって窒素下で乾燥させた。
結合剤系7:
被膜形成性結合剤はまた、疎水性アクリル樹脂中に配合することによって形成することもできる。具体的には、20mLのガラスバイアル瓶中で、0.05gのオクタデシルアミンを2mLのアセトンに溶解させ、1.06gのAC2403アクリル結合剤(Alberdingk Boley,Inc.(ノースカロライナ州、Greensboro)製)を添加した。沈殿が形成された。その混合物に、2mLのトルエンを添加し、固体が溶解するまで混合物を渦式攪拌及び/又は超音波処理した。混合物を1mLのアセトンで更に希釈し、次いで、0.5gの疎水性粒子を添加した。配合物を、スプレーによってガラス又は金属表面に塗布した。コーティング後、基材を150℃のオーブン内で2時間にわたって乾燥させた。
結合剤系8:
被膜形成性結合剤はまた、エポキシ樹脂系から、樹脂に何らかの疎水性改質を施して形成することもできる。具体的には、20mLのガラスバイアル瓶中で、0.7gのオクタデシルアミンを15mLのアセトンに溶解させ、その溶液にEpon 862樹脂(Hexion Inc.(オハイオ州、Columbus)製)を添加した。混合物を渦式攪拌し、超音波処理した。混合物に、0.65gのEK3370硬化剤(これもHexion社製)を添加し、その結果形成された配合物を、スプレーによってガラス又は金属表面に塗布した。コーティング後、基材を120℃のオーブン内で1時間にわたって乾燥させた。
コーティング方法
スピンコーティング
【0091】
スピンコーティングは、平坦な表面を有する基材に使用される。基材は、例えばガラススライド、アルミニウム、高密度ポリエチレン(HDPE)などの非多孔質基材であるか、又は例えば木材又はコンクリートなどの多孔質基材である。具体的には、基材を3インチ×3インチのサイズで切断して、それらをコータに嵌合させた。コーティングには、Ni-L0 Scientific社(カナダ、Ottawa)製の、Ni-Lo 4 Spin Coater(真空ホルダー内蔵)を使用した。コーティング前に、基材を溶媒又は水で洗浄し、次いでブロー乾燥させた。木材の場合には、コーティングステップの前に、サンドペーパーを使用して表面を平らにしてもよい。
【0092】
基材をコータ上に配置し、吸引をかけて、基材をコータ上に保持させた。先述のセクションに記載のコーティング組成物を約5~8mL、ピペットで基材上に移した。表面全体がコーティング組成物で覆われていることを確実にするように、注意を払った。次いでコーティングを、500rpm又は1000rpmで1分間にわたって実施した。このステップの後、溶媒を蒸発させ、次いで、コーティングされた基材を120℃の温度のオーブン内に、1時間にわたって置いた。
ドローダウン
【0093】
表面の大きな面積を有する基材に対して、ドローダウンを使用した。Gardner Company製巻線付きラボロッド(ワイヤサイズは40)を使用して、ドローダウンが実施された。このサイズでは、ぬれ被膜の厚さは約100μmであった。各ドローダウンの手順は以下のとおりであった。
a.塵埃を含まないクリーンルームにて、平坦な基材を、真空ホルダに設置した。
b.約5~10mLの十分に混合されたコーティング組成物を、サンプルシート上及びその近くに、ピペットを用いて配置した。
c.ドローダウンロッドの端部を速やかに把持した。サンプルから離れてロッドが撓んだり屈曲したりしないように両手の親指を使用し、液体プールを介してドローダウンロッドを引き下ろし、サンプルシートの端から端まで流体を展着及び計測した。所与のドローダウンを行った後、ドローダウンロッドを使用後洗浄トレイに浸漬した。
d.ドローダウン後、溶媒を蒸発させるためにサンプルを室温で放置し、次いで、コーティングされた基材を、120℃の温度のオーブン内に1時間にわたって置いた。
ディップコーティング
【0094】
例えば織物(例えば、布)又は紙などの可撓性を有する基材の場合には、材料の全体をコーティング組成物に浸漬した。次いで、基材を取り出し、溶媒を蒸発させた。次いで、サンプルを120℃の温度のオーブン内に1時間にわたって置いた。
スプレーコーティング
【0095】
コーティングを、塗料噴霧器を用いて基材上に塗布した。PowRyte社(カリフォルニア州、La Puente)製の、0.8mmのノズルを有する2部品のHVLP Gravity Feed Air Spray Gut Kitを使用した。コーティング配合物をサンプル瓶に入れ、次いで、スプレーを30psiの空気流下で様々な表面に塗布した。
基材上にコーティングされた被膜の評価
コーティングされた被膜のローリング評点
【0096】
コーティングされた層に対するコーティング実施及び時には熱処理の実施後、表面の超疎水性を、脱イオン水の液滴を用いて、0、1、2、及び3のローリング評点範囲で評価した。
0:水滴が基材に付着している。
1:60°で傾斜したときに、液滴は、一部の部分でのみスライドする。
2:30°で傾斜したときに、液滴がスライドする。
3:5°で傾斜したときに、液滴は、全ての部分で完全にスライドする。
コーティングされた被膜の静的な水接触角:
【0097】
「ピニング」法を使用して、液滴を表面上に配置した。具体的には、22ゲージの尖っていない先端の針から、プローブ液(蒸留水)の液滴を、2.5mmの距離だけ離れた位置から表面上に配置した。液滴を、4秒間にわたって、サンプル表面と接触させた状態で保持した。次いで、液体を、自立液滴が形成されるまで、表面からゆっくりと回収した。次いで、液滴を36倍のデジタルカメラで直ちに撮影した。典型的な液滴体積は3μLであった。少なくとも6つの異なる液滴を、各表面及び各液体について撮影した。次いで、デジタル画像処理ソフトウェアであるImageJを、接触角測定プラグインと共に用いて、液滴写真を処理した。角度は、最良の楕円形のフィッティング結果を使用して測定した。以下の表4は、ガラススライド上のコーティングされた層の結果を示し、水滴接触角測定値と評点との対応は、上記の基準を用いて与えられた。
【表4】
個々の実施例
実施例1及び2
【0098】
実施例1及び2は、溶液相中での疎水性シランによるケイ酸アルミニウムの疎水性改質の利用、及びコーティングされた疎水性層を形成するための配合物中の改質された粒子の直接使用を実証した。
【0099】
具体的には、実施例1では、2.7μmのメジアン粒径を有する粒子(P-1)を、上述の「溶液による改質」方法を用いて、トルエン中の10重量%のペルフルオロオクチルトリメトキシシラン(F13)を用いて改質した。次いで、2%の疎水化粒子を、アセトン中の1%のG-802結合剤(結合剤系1、架橋剤を含まないもの)と混合した。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラススライド上で評点3を得た。
【0100】
実施例2では、2.7μmのメジアン粒径を有する粒子(P-1)を、上記の「溶液による改質」方法を用いて、トルエン中の10重量%のオクタデシルトリメトキシシラン(C18)と結合させた。次いで、2%の疎水化粒子を、アセトン中の1%のG-802結合剤(結合剤系1、架橋剤を含まないもの)と混合した。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラススライド上で評点3を得た。
実施例3
【0101】
実施例3は、溶媒を用いない疎水性シランによるケイ酸アルミニウムの疎水性改質の利用、及びコーティングされた疎水性層を形成するための配合物中での改質粒子の使用を実証した。
【0102】
具体的には、実施例3では、5.5μmのメジアン粒径を有する粒子(P-2)を、10重量%のCRTV944シリコーン油と乾燥結合させた(乾燥改質方法)。次いで、2%の疎水化粒子を、アセトン中の1%のG-802結合剤(結合剤系1)と混合した。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラススライド上で評点3を得た。
実施例4~11
実施例4~11では5.5μmのメジアン粒径を有するP-1粒子をミル粉砕し、10重量%のCRTV944シリコーン油と、FEMで結合した(ミル粉砕及び改質法)。疎水化粒子は、約4.0μmのメジアン粒径を有した。疎水化粒子は、下記の実施例で以下に示されるような様々な配合物で利用されて、超疎水性表面を作製した。
【0103】
具体的には、実施例4では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、4%の疎水化粒子を、5%のG-802結合剤と、既に説明したように、架橋剤としての0.2%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、アセトン中で混合した(結合剤系1、架橋を伴うもの)。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス、木材、金属、及びHDPE基材上で評点3を得た。ドローダウンもまたこれらの基材を用いて実施され、同様の超疎水性評点が得られた。別の実験セットでは、同じコーティング配合物を使用して布地及び紙をディップコーティングし、乾燥後、コーティングされた布地及び紙は、超疎水性評点3を得た。
【0104】
具体的には、実施例5では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、5%の疎水化粒子を、5%のG-802結合剤と、実施例5に記載のように架橋剤と共に、アセトン中で混合した。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点3を得た。
【0105】
具体的には、実施例6では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、1.9%の疎水化粒子を、DMF中の2.86%のIROGRAN(登録商標)A 85 P 4394(TPU結合剤)(結合剤系2)と混合した(結合剤に対する粒子の割合は66.6%であった)。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、1つのコーティングを有する木材上で評点2を得て、2つのコーティングを有する木材上では評点3を得た(なお、それぞれのコーティング後、1時間にわたる120℃での熱処理を行った)。
【0106】
具体的には、実施例7では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、疎水化粒子を、高剪断下で、Triton X-100と共に水中に分散させた後、WP-30C水性結合剤と、既に述べたように、粒子の最終濃度が2%、結合剤の最終濃度が5%となるように混合した(結合剤系3)。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得たが、木材上では評点3を得た。
【0107】
具体的には、実施例8では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、疎水化粒子を、高剪断下で、Triton X-100と共に水中に分散させた後、WP-30C水性結合剤と、既に述べたように、粒子の最終濃度が2%、結合剤の最終濃度が5%となるように混合した(結合剤系3)。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得たが、木材上では評点3を得た。
【0108】
具体的には、実施例9では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子(実施例4に説明したように調製したもの)を使用し、改質された粒子を、高剪断下で、4.2%のTriton X-100と共に水中に分散させた後、CANVERA(商標)1110(PO水性エマルション結合剤)と、既に述べたように、粒子の最終濃度が2%、結合剤の最終濃度が2%となるように混合した(結合剤系4)。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得たが、木材上では評点2を得た。
【0109】
具体的には、実施例10では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、疎水化粒子を、方法セクションに説明したように、CRTV942シリコーン油、5%のTEOS架橋剤、及び2.5%の触媒と混合した(結合剤系5)。コーティング組成物は、5%の最終濃度の粒子と、5%の最終濃度の結合剤とを含有した。混合物をガラス及び木材基材上にコーティングして、それぞれ評点3を得た。
【0110】
具体的には、実施例11では、4.0μmのメジアン粒径を有する疎水化粒子を使用し、疎水化粒子を、方法セクションに説明したように、疎水化粒子を、CRTV942シリコーン油、5%のTEOS架橋剤、及び2.5%の触媒と混合した(結合剤系5)。コーティング組成物は、10%の最終濃度の粒子と、10%の最終濃度の結合剤とを含有した。混合物を木材基材上にコーティングして、それぞれ評点3を得た。
実施例12~17
【0111】
実施例12~17では、疎水性改質粒子と結合剤との重量比が、超疎水性性能に対して有する影響を調べた。
【0112】
具体的には、実施例12では、5.5μmのメジアン粒径を有するP-1粒子をミル粉砕し、FEM中の10重量%のCRTV944シリコーン油と結合させた。疎水化粒子は、約4.0μmのメジアン粒径を有した。疎水化粒子とG-802結合剤とをトルエン/アセトン溶媒混合物中でブレンドした。表5は、粒子の重量%と、異なる量の結合剤とについて、スライドガラス上にスピンコーティングしたものの超疎水性評点を示す。
【表5】
【0113】
上の表に示されるように、一実施形態では、コーティングされた層の超疎水性を得るためには、粒子対結合剤の重量比は、1:2.5以上(全乾燥コーティング被膜中、約28重量%)である。
実施例18~29
【0114】
実施例18~29は、化学的に改質された粒子を利用するコーティング被膜の超疎水性性能に対する粒子孔径の重要性を示す。
【0115】
実施例18~29では、粒子の改質方法は乾燥による改質であり、配合方法は、調製方法1であった(共に前述のとおりである)。粒子と結合剤との重量比は、1:1(配合物中それぞれ5重量%)であり、コーティング方法としては、スライドガラス上にスピンコーティングした。
【0116】
表6は、粒子改質で使用されるPDMSの量と、及びコーティングされた、これらの改質粒子を利用した被膜から得られた結果を示す。
【表6】
【0117】
具体的には、実施例18及び19では、100Å未満の細孔直径を有するケイ酸ナトリウムアルミニウム粒子を、45%又は53%のPDMSで処理し、次いで、5%の改質粒子を、5%のG-802結合剤と、既に説明したように、架橋剤としての0.2%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、アセトン中で配合した。両方のコーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得た。
【0118】
具体的には、実施例20~24では、100Å超の細孔直径を有するケイ酸ナトリウムアルミニウム粒子又はケイ酸ナトリウムマグネシウムアルミニウム粒子を、異なるレベルのPDMS(表7に示される量のPDMS)で処理した。次いで、5%の改質粒子を、5%のG-802結合剤と、既に説明したように、架橋剤としての0.2%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、アセトン中で配合した。このコーティング組成物のスピンコーティングされた層は全て、ガラス上で評点3を得た。
【0119】
具体的には、実施例25~29では、148Åの細孔直径を有するケイ酸ナトリウムマグネシウムアルミニウム粒子を、異なるレベルのPDMS(粒子の重量に対して、5~50重量%のPDMS)で処理した。次いで、5%の改質粒子を、5%のG-802結合剤と、既に説明したように、架橋剤としての0.2%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、アセトン中で配合した。コーティング組成物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で、10~35重量%のPDMSで処理された粒子の場合には評点3を、5%及び50%のPDMSで処理された粒子の場合には、評点2を得た。
実施例30~32
【0120】
実施例30~32は、代替的配合物の実現可能性を実証した。5.5μmのメジアン粒径を有する粒子(P-2)を、10重量%のCRTV944シリコーン油と乾燥結合させた(乾燥改質方法)。
【0121】
具体的には、実施例30では、疎水性改質粒子を、結合剤系6を利用した配合物に、既に説明した手順で使用した。ガラス表面及び金属表面上のコーティング表面は、評点3を得た。
【0122】
具体的には、実施例31では、疎水性改質粒子を、結合剤系7を利用した配合物に、既に説明した手順で使用した。ガラス表面及び金属表面上のコーティング表面は、評点3を得た。
【0123】
具体的には、実施例32では、疎水性改質粒子を、結合剤系8を利用した配合物に、既に説明した手順で使用した。ガラス表面及び金属表面上のコーティング表面は、評点3を得た。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
コーティング組成物であって、
疎水化ケイ酸アルミニウム粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒と、
を含み、
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、約50Å以上の細孔直径を有するケイ酸アルミニウム粒子と、前記ケイ酸アルミニウム粒子の表面上の疎水性コーティングと、を含む、
コーティング組成物。
[2]
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、
約60Å以上の細孔直径を有する、1に記載のコーティング組成物。
[3]
前記疎水化コーティングが、前記ケイ酸アルミニウム粒子と前記疎水化層との総重量に基づいて、10重量%以下の量である、1に記載のコーティング組成物。
[4]
前記コーティング組成物中の、前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の、前記被膜形成性結合剤に対する重量比が、少なくとも約1:2.5である、1に記載のコーティング組成物。
[5]
前記溶媒が、1種以上の有機溶媒又は水を含む、1に記載のコーティング組成物。
[6]
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、約0.5~約50μmの範囲のメジアン粒径を有する、1に記載のコーティング組成物。
[7]
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、約1~約15μmの範囲のメジアン粒径を有する、1に記載のコーティング組成物。
[8]
前記ケイ酸アルミニウム粒子のBET表面積が、約150m
2
/g未満である、1に記載のコーティング組成物。
[9]
前記ケイ酸アルミニウム粒子が、アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムを含む、1に記載のコーティング組成物。
[10]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、7に記載のコーティング組成物。
[11]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類金属を含有する、7に記載のコーティング組成物。
[12]
前記アルカリ金属/アルカリ土類金属ケイ酸アルミニウムが、ケイ酸ナトリウムマグネシウムアルミニウムである、7に記載のコーティング組成物。
[13]
前記ケイ酸アルミニウム粒子の前記表面上の前記疎水性コーティングが、前記ケイ酸アルミニウム粒子の表面シラノール基と化学反応する少なくとも1つの反応性官能基を含有する疎水性シラン又はシロキサンと、前記ケイ酸アルミニウム粒子を接触させることによって形成される、1に記載のコーティング組成物。
[14]
前記疎水性シラン又はシロキサンが、少なくとも200の分子量を有する、13に記載のコーティング組成物。
[15]
前記疎水性シラン又はシロキサンが、(ペルフルオロ)アルキルシラン、(ペルフルオロ)アルキルシロキサン、又はこれらの混合物である、14に記載のコーティング組成物。
[16]
前記疎水性シラン又はシロキサンが、オクタデシルトリメトキシシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、又はシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、14に記載のコーティング組成物。
[17]
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、溶液による改質プロセス、乾燥による改質プロセス、又はミル粉砕及び改質プロセスによって、前記疎水性シラン又はシロキサンと接触させられる、14に記載のコーティング組成物。
[18]
前記ミル粉砕及び改質プロセスにおいて、前記ケイ酸アルミニウム粒子がミル粉砕され、前記疎水性シラン又はシロキサンと共に螺旋ジェットミル内で改質されて、約0.1~約50μmの範囲のメジアン粒径を有する前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を得る、17に記載のコーティング組成物。
[19]
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、約1~約15μmの範囲のメジアン粒径を有する、18に記載のコーティング組成物。
[20]
前記被膜形成性結合剤が、C2~C6ポリオレフィン、C8~C36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、C4~C36アルキル基と、C1~C36アルキルビニルエーテルと、C1~C36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される、1に記載のコーティング組成物。
[21]
前記被膜形成性結合剤が、フッ素含有ポリマーを含み、前記溶媒が1種以上の有機溶媒を含む、1に記載のコーティング組成物。
[22]
前記フッ素含有ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、又はこれらを組み合わせたものである、21に記載のコーティング組成物。
[23]
前記被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含む、21に記載のコーティング組成物。
[24]
前記コーティング組成物が、開始剤を更に含み、前記架橋剤が2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、23に記載のコーティング組成物。
[25]
前記被膜形成性結合剤がゲル化剤を更に含む、21に記載のコーティング組成物。
[26]
前記被膜形成性結合剤が、水性ワックスエマルション又は前記疎水性ポリマーの水性エマルションを含み、前記溶媒が水を含む、25に記載のコーティング組成物。
[27]
前記コーティング組成物が、前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子を、界面活性剤の存在下で水中に分散させて、前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の懸濁液を形成し、次いで、前記疎水性ポリマーの前記ワックスエマルション又は前記エマルションを、前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子の前記懸濁液と混合することによって調製される、26に記載のコーティング組成物。
[28]
前記被膜形成性結合剤が、前記コーティング組成物の重量に基づいて、約1~約30重量%の量で存在する、1に記載のコーティング組成物。
[29]
前記コーティング組成物が、少なくとも1種の噴射剤を更に含むエアゾールの形態である、1に記載のコーティング組成物。
[30]
1に記載の前記コーティング組成物から形成される疎水性被膜であって、室温で脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示す、疎水性被膜。
[31]
前記疎水性被膜が、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法によって製造される、30に記載の疎水性被膜。
[32]
コーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を備える物品であって、前記コーティング組成物が、
疎水化ケイ酸アルミニウム粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒と、を含み、
前記疎水化ケイ酸アルミニウム粒子が、約50Å以上の細孔直径と、前記ケイ酸アルミニウム粒子の表面上の疎水性コーティングとを有するケイ酸アルミニウム粒子を含む、物品。
[33]
前記ぬれにくい表面が、室温で脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示す、32に記載の物品。
[34]
前記物品が、ガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される材料を含む、32に記載の物品。