(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】互いに比較される、第1の屈折補正及び第2の屈折補正を対象者の少なくとも一方の眼に提供するための方法及び機器
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61B3/028
(21)【出願番号】P 2021572034
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2020065429
(87)【国際公開番号】W WO2020245247
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジルダ・マラン
(72)【発明者】
【氏名】アデール・ロンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ジロデ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ブティノン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ピノー
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/202713(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに比較される、第1の屈折補正及び第2の屈折補正を対象者(5)の少なくとも一方の眼(4)に提供するための方法であって、
光学系(2)がターゲットオブジェクト(7)から到来する光線(6)を前記対象者の前記眼(4)に送り、
前記方法が、前記光学系(2)を、
- 前記光学系(2)が前記第1の屈折補正を前記対象者の前記眼(4)に提供する、第1の屈折度数状態から、
- 前記光学系(2)が前記第2の屈折補正を前記対象者の前記眼(4)に提供する、第2の屈折度数状態に、切り替えるステップを含み、
前記切り替えが、前記光学系(2)によって送られる前記光線(6)を中断することなく行われ、
前記光学系(2)の各屈折度数状態が、座標系において対応する点(P、P1、P2、P
0、P
I)によって表され、前記点(P、P1、P2、P
0、P
I)の座標(M、J0、J45)が、前記光学系(2)の前記屈折度数状態に対して、前記光学系の異なる屈折度数特徴(M、J0、J45)の値を表し、前記光学系(2)の任意の屈折度数状態に対して、前記点(P、P1、P2、P
0、P
I)の前記座標が、
- 前記屈折度数状態における前記光学系(2)の球面度数(S、M)、第1の円柱度数特徴(J0、C)、及び第2の円柱特徴(J45、α)のうちの少なくとも2つ、又は
- 前記屈折度数状態における前記光学系(2)によって出力された波面のゼルニケ多項式分解の2次係数(c
o
2、c
2
2、c
-2
2)のうちの少なくとも2つ、
を含む、前記座標系における前記屈折度数状態を表し、
前記座標系において、前記第1の屈折度数状態が第1の点(P1)によって表され、前記第2の屈折度数状態が第2の点(P2)によって表され、線分が前記第1の点(P1)において開始し、前記第2の点(P2)において終了し、前記対象者の前記眼(4)に対する最適な屈折補正が、前記座標系において最適な屈折点(P
0)によって表され、前記最適な屈折補正が、前記対象者の前記眼(4)の屈折異常を補償する前記屈折補正であり、
ここで、
前記線分の内側部分に位置する中間点(P
I)が、前記第1及び第2の点(P1、P2)それぞれよりも前記最適な屈折点(P
0)に近いか、又は前記最適な屈折点(P
0)から遠い場合、
前記切り替えが実行され、それによって、
- 前記切り替えを表す軌道(T1、T2、T3、T4、T5)の各点(P)に対して、前記点(P)と前記中間点(P
I)との間の前記座標系における距離(d)が、前記第1の点(P1)と前記中間点(P
I)との間の第1の距離(d1)、及び前記第2の点(P2)と前記中間点(P
I)との間の第2の距離(d2)、のうちの最小値(d
m)の4分の1以上であるか、又はそれによって、
- 前記中間点(P
I)に最も近い前記軌道(T6)の前記点(P
I)において、前記光学系(2)の屈折度数の変動速度(s
V)が、それを超えると前記対象者(5)が屈折度数変動を知覚することができない変動限界速度(v
L)よりも大きく、前記変動限界速度(s
L)が、前記対象者(5)が屈折度数変動を知覚することができる屈折度数変動の最高速度である、方法。
【請求項2】
前記切り替えが、
-所与の関数(f)の、前記切り替えを表す前記軌道(T1、T2、T3、T4、T5、T6)に沿った、前記切り替えの開始(t1)から終了(t2)までの時間(t)にわたる積分であって、その引数が、前記軌道の現在の可変点(P)と前記中間点(P
I)との間の距離(d)である、積分が、
-その引数が前記第1の距離(d1)及び前記第2の距離(d2)のうちの最小値(d
m)の4分の1に等しい場合、近接時間スパン制限(Δ
T)に前記関数(f)の値を掛けたものよりも小さい、ように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記近接時間スパン制限(Δ
T)が、1ミリ秒~1秒との間で構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記切り替えが、前記座標系における前記切り替えを表す前記軌道(T2、T3、T4、T5)の各点(P)に対して、前記点(P)と前記中間点(P
I)との間の距離(d)が前記第1の距離(d1)及び前記第2の距離(d2)のうちの最小値以上であるように行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間点(P
I)が、前記線分の中央であり、前記座標系において前記切り替えを表す前記軌道(T2、T4、T5)が前記中間点(P
I)を中心とする半円である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学系(2)の球面度数(M)が、前記切り替え中ずっと、前記光学系がその第1の屈折度数状態を有する第1の球面度数(M1)、及び前記光学系がその第2の屈折度数状態を有する第2の球面度数(M2)のうちの最小値よりも大きいままで変化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の屈折度数状態から前記第2の屈折度数状態に切り替える前に実行される、以下:
- 前記対象者(5)が屈折度数変化に反応する応答速度(RSD)に関連するデータを取得するステップと、
- 前記データ(RSD)に基づいて前記変動限界速度(s
L)を判定するステップと、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変動限界速度(s
L)が、毎秒20ジオプタ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記座標系における前記切り替えを表す前記軌道(T6)が、前記線分であり、前記光学系(2)の前記屈折度数の前記変動速度(s
V)が、前記光学系の前記屈折度数状態を表す前記点(P)が前記中間点(P
I)を通過するときの前記変動限界速度(s
L)よりも大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
その第2の屈折度数状態にある前記光学系(2)が、その第1の屈折度数状態(M1)と同じ球面度数(M2)を有し、前記光学系(2)の少なくとも1つの円柱度数特徴(J0、J45)が、その第2の屈折度数状態において、その第1の屈折度数状態とは異なる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記線分の内側部分が、前記線分の長さの半分に等しい長さを有し、前記内側部分の中央が、前記線分の中央と一致する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記軌道(T1、T2、T3、T4、T5、T6)の各点(P)に対して、前記切り替えではずっと、
前記眼(4)の理論モデル及び前記対象者(5)の視力に基づいて、且つ前記対象者の前記眼(4)が前記点(P)に関連する前記屈折度数状態に対応する屈折補正を提供されることを考慮に入れて判定された、ぼやけレベル(BL)が、
- 前記光学系(2)の前記第1の屈折度数状態に関連する第1のぼやけレベル(BL1)、及び前記光学系(2)の前記第2の屈折度数状態に関連する第2のぼやけレベル(BL2)のうちの最小値によるマージン係数(k)との積よりも大きく、
- 前記マージン係数(k)だけ、前記第1のぼやけレベル(BL1)及び前記第2のぼやけレベル(BL2)のうちの最大値の比率よりも小さく、
前記第1及び第2のぼやけレベル(BL1、BL2)が、前記眼(4)の前記理論モデル及び前記対象者(5)の視力に基づいて、且つ前記眼(4)が前記第1の屈折補正及び前記第2の屈折補正をそれぞれ提供されることを考慮に入れて、判定されており、
前記マージン係数(k)が、0.5~1の間で構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中間点(P
I)が、前記線分の中央である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
互いに比較される、第1の屈折補正及び第2の屈折補正を対象者の少なくとも一方の眼(4)に提供するための機器(1)であって、
- ターゲットオブジェクト(7)から到来する光線(6)を前記対象者の前記眼(4)に送るように設定された光学系(2)と、
- 前記光学系(2)を制御するための制御ユニット(3)であって、前記光学系(2)を、
- 前記光学系(2)が前記第1の屈折補正を前記対象者の前記眼(4)に提供する、第1の屈折度数状態から、
- 前記光学系(2)が前記第2の屈折補正を前記対象者の前記眼(4)に提供する、第2の屈折度数状態に、切り替えるようにプログラムされている制御ユニット(3)と、を備え、
前記光学系(2)が、前記切り替え中に、前記光学系(2)によって送られた光線(6)が遮断されないように構成されており、
前記光学系(2)の各屈折度数状態が、座標系において対応する点(P、P1、P2、P
0、P
I)によって表され、前記点(P、P1、P2、P
0、P
I)の座標(M、J0、J45)が、前記光学系(2)の前記屈折度数状態に対して、前記光学系の異なる屈折度数特徴(M、J0、J45)の値を表し、前記光学系(2)の任意の屈折度数状態に対して、前記点(P、P1、P2、P
0、P
I)の前記座標が、
- 以下のうち少なくとも2つ、すなわち、前記屈折度数状態における前記光学系(2)の球面度数(S、M)、第1の円柱度数特徴(J0、C)、及び第2の円柱特徴(J45、α)のうちの少なくとも2つ、又は
- 前記屈折度数状態における前記光学系(2)によって出力された波面のゼルニケ多項式分解の2次係数(c
o
2、c
2
2、c
-2
2)の少なくとも2つ、
を含む、前記座標系における前記屈折度数状態を表し、
前記座標系において、前記第1の屈折度数状態が第1の点(P1)によって表され、前記第2の屈折度数状態が第2の点(P2)によって表され、線分が前記第1の点(P1)において開始し、前記第2の点(P2)において終了し、前記対象者の前記眼(4)に対する最適な屈折補正が、前記座標系において最適な屈折点(P
0)によって表され、前記最適な屈折補正が、前記対象者の前記眼(4)の屈折異常を補償する前記屈折補正であり、
前記制御ユニット(3)が、前記光学系(2)を制御するためにプログラムされており、それによって、
前記線分の内側部分に位置する中間点(P
I)が、前記第1及び第2の点(P1、P2)それぞれよりも前記最適な屈折点(P
0)に近いか、又は前記最適な屈折点(P
0)から遠い場合、
前記切り替え中に、
- 前記座標系において前記切り替えを表す軌道(T1、T2、T3、T4、T5)の点(P)それぞれに対して、前記点(P)と前記中間点(P
I)との間の前記座標系における距離(d)が、前記第1の点(P1)と前記中間点(P
I)との間の第1の距離(d1)、及び前記第2の点(P2)と前記中間点(P2)との間の第2の距離(d2)のうちの最小値の4分の1以上であるか、又は
- 前記中間点(P
I)に最も近い前記軌道(T6)の前記点(P
I)において、前記光学系(2)の屈折度数の変動速度(s
V)が、それを超えると前記対象者(5)が屈折度数変動を知覚することができない変動限界速度(v
L)よりも大きく、前記変動限界速度(s
L)が、前記対象者(5)が屈折度数変動を知覚することができる屈折度数変動の最高速度である、機器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者によって互いに比較される、第1の屈折補正及び第2の屈折補正を対象者に提供するための方法に関する。
【0002】
本発明はまた、そのような方法を実施するように構成された検眼機器に関する。
【背景技術】
【0003】
主観的屈折測定プロトコルの間、この眼の屈折異常の球面度数など、対象者の眼の屈折特徴を判定するために、一般に、異なる屈折補正が対象者の眼に提供される。次いで、対象者は、これらの屈折補正のうちのどれが、最小量のぼやけで対象者がターゲットオブジェクトを最良に見ることを可能にするかを示す。
【0004】
対象者の眼の屈折異常を最良に補償する最適な屈折補正に徐々に近づけるために、対象者の眼に第1の屈折補正を連続的に提供し、次いで第1の屈折補正に近い第2の屈折補正を提供するのが通常である。次に、対象者は、これら2つの補正のうちのどちらが、対象者がターゲットオブジェクトへの最良の視力を有することを可能にするかを示すように求められる。
【0005】
これら2つの補正の比較結果に応じて、この第1と第2の屈折補正のセットの平均屈折度数は、対象者がこれら2つの補正が同様且つ少量のぼやけにつながることを示すまで、増大又は減少され得る。この状況では、第1と第2の補正により同様の量のぼやけにつながるが、上記の平均屈折度数は、対象者の眼の屈折異常を最良に補償するものに近くなる。
【0006】
いくつかの検眼機器では、第1の屈折補正から第2の屈折補正に切り替えるために、最初にユーザの眼の前に配置された所与のレンズのセットが、別のレンズのセットと交換される。このレンズ交換中、ターゲットオブジェクトは一時的に、対象者に対してマスクされる。このように対象者の眼の視野をカットオフすると、対象者は第1及び第2の屈折補正を細かく比較することができなくなる。換言すれば、このカットオフのために、対象者は、前述のカットオフの結果として対象者の知覚がある程度リセットされるため、それらが互いに十分に異なる場合にのみに、どちらが最良であるかを示すように第1と第2の屈折補正を比較することができる。
【0007】
他の検眼機器は、対象者がターゲットオブジェクトを見る光学系を有し、これにより、視野をカットオフすることなくユーザの眼に提供される屈折補正を変更することを可能にする。そのような光学系は、例えば、文献、国際公開第2017/013343号パンフレットに記載されているように、調整可能な屈折度数を有する連続的に変形可能なレンズによって実現することができる。そのような検眼機器は、それらが互いに接近しているときでさえ対象者が前記補正を比較することを可能にし、それによってより良好な精度を有する眼の屈折特徴の推定をもたらすべきである。
【0008】
しかしながら、屈折補正がカットオフなしで連続的に変化するこのような検眼機器を用いても、実際には、前記第1の屈折補正と第2の屈折補正との間の比較は、対象者にとって依然として困難であり、これらの屈折補正が互いに接近している場合、特に最適な屈折補正の近傍では、十分に再現可能ではないことがわかっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本開示の1つの目的は、互いに比較される、第1の屈折補正及び第2の屈折補正を対象者の少なくとも一方の眼に提供するための方法を提供することであり、ここで、第1の屈折補正から第2の屈折補正への切り替えが、対象者の眼の視野をカットオフすることなく行われ、それらが互いに接近している場合でも、対象者がこれらの第1及び第2の屈折補正を細かく比較することを可能にする。これは、第1から第2の屈折補正への切り替え中に、ぼやけ変動を適切に制御することによって達成される。
【0010】
光学系がターゲットオブジェクトから到来する光線を対象者の眼に送るこの方法は、光学系を、
-光学系が前記第1の屈折補正を対象者の眼に提供する、第1の屈折度数状態から、
-光学系が前記第2の屈折補正を対象者の眼に提供し、前記切り替えが光学系によって送られる光線を中断することなく行われる、第2の屈折度数状態に、
切り替えるステップを含み、
光学系の各屈折度数状態は、座標系において対応する点によって表され、前記点の座標は、光学系の前記屈折度数状態に対して、光学系の異なる屈折度数特徴の値を表し、
前記座標系において、第1の屈折度数状態は第1の点によって表され、第2の屈折度数状態は第2の点によって表され、線分は前記第1の点において開始し、前記第2の点において終了し、対象者の眼に対する最適な屈折補正は、前記座標系において最適な屈折点によって表される。
【0011】
注目すべきことに、この方法では、
前記線分の内側部分に位置する中間点が、前記第1及び第2の各点よりも最適な屈折点に近いか、又は最適な屈折点から遠い場合、
前記切り替えが実行され、それによって、
-前記切り替えを表す軌道の各点に対して、前記点と中間点との間の前記座標系における距離は、前記第1の点と前記中間点との間の第1の距離、及び前記第2の点と前記中間点との間の第2の距離、
のうちの最小値の4分の1以上であり、又はそれによって、
-前記中間点に最も近い前記軌道の点において、前記光学系の屈折度数の変動速度は、それを超えると対象者が屈折度数変化を知覚することができない変動限界速度よりも大きい。
【0012】
それらの間の漸進的又は連続的な切り替えの場合、第1及び第2の屈折補正を比較することの難しさの1つの説明は、前記切り替え中に、前記眼の最適な屈折補正の近傍にある場合、前記切り替え中に対象者の眼に提供される、前記中間点に対応する中間屈折補正が、多くの場合、対象者によって知覚されるぼやけレベルに対応し、これが、比較される第1と第2の屈折補正に対応するぼやけレベルよりも著しく低くなる、ことである。
【0013】
前記第1及び第2の屈折補正から切り替える過程において、そのように減少したぼやけレベルを知覚することが、対象者にとって第1及び第2の屈折補正の比較をより困難にすることが判明した。
【0014】
同様に、前記中間点が前記第1及び第2の点よりも最適な補正点から遠い場合(すなわち、前記座標系において、中間点と最適な屈折点との間の距離が、第1の点と最適な屈折点との間の距離よりも大きく、且つ第2の点と最適な屈折点との間の距離よりも大きい場合)、前記切り替え中に中間点を通過することが、ぼやけレベルが大幅に増大させる。換言すれば、この場合、光学系が静的にその中間屈折状態にあるときに対象者によって知覚されるぼやけレベルは、第1及び第2の屈折状態に対応するぼやけレベルよりも大きい。またそれが、対象者を乱し、対象者にとって第1及び第2の屈折補正の比較をより困難にすることが判明した。
【0015】
中間点から離れたままで、又は(少なくとも前記切り替えの一部の間)その変動限界速度よりも大きい速度で、光学系をその第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えることにより、対象者が、上記の場合では、第1及び第2の屈折補正に対応するぼやけレベルとは実質的に異なる(より低い又はより高い)前記中間屈折補正に対応するぼやけレベルを知覚することを妨げる。
【0016】
したがって、この特徴は、前記座標系において(したがって、前記中間点をゆっくりと通過する)、低速又は中速で直線軌道に沿って実行される切り替えと比較して、前記切り替え中に、不必要で潜在的に妨害するぼやけ変動を低減することを可能にする。そして、これらのぼやけ変動を低減することが、対象者によるこれらの第1及び第2の屈折補正の比較の精度及び再現性を改善することが判明した。
【0017】
前記第1及び第2の屈折補正を提供するための方法の任意選択の非限定的な特徴は、本発明によれば、請求項2~14によって定義されている。
【0018】
そのうえ、この方法はまた、対象者の眼に前記第1及び第2の屈折補正を提供する前に実行される以下のステップ、すなわち、
-対象者に関連する個人データを取得することと、
-前記個人データに基づいて、前記第1及び第2の屈折度数状態を表す第1及び第2の点の座標を判定することと、を含み得る。
【0019】
上記の目的はまた、請求項15に定義された機器を提供することによって、本発明に従って達成される。上記の方法の任意選択的な特徴はまた、このデバイスに適用され得る。
【0020】
付随する図面を参照する以下の説明により、本発明が何から構成されるか、及び本発明をどのように達成できるかが明らかになるであろう。本発明は、図面に図示する実施形態に限定されるものではない。したがって、請求項で言及された特徴に参照符号が続く場合、そのような符号は、請求項の理解度を高める目的でのみ含まれ、請求項の範囲を制限するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】対象者によってテストされる屈折補正を対象者の眼に提供するための機器のいくつかの要素を、上方から概略的に表す図である。
【
図2】
図1の機器の光学系を第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えるための異なる軌道を概略的に表す図である。
【
図3】
図1の機器の光学系を第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えるための異なる軌道を概略的に表す図である。
【
図4】
図1の機器の光学系を第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えるための異なる軌道を概略的に表す図である。
【
図5】
図4に対応する切り替えに対して、光学系の円柱度数特徴の経時変化を概略的に表す図である。
【
図6】主観的屈折プロトコルのいくつかのステップを概略的に表す図である。
【
図7】前記光学系の屈折度数の変動限界速度を判定するためのいくつかのステップを概略的に表す図である。
【
図8】2つの屈折補正間の距離に依存するコスト関数の概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
対象者によってテストされる屈折補正を対象者の眼に提供するための機器
図1は、対象者の視力をテストし、対象者の眼4の少なくとも1つの屈折特徴を判定するために、調整可能な屈折補正を眼4に提供する光学系2を通してターゲットオブジェクト7を見ている対象者5を概略的に表している。
【0023】
この光学系2は、機器1の一部であり、眼の検査中に対象者に提供される屈折補正を変更するために光学系2を制御するための制御ユニット3も含む。機器は、対象者のもう一方の眼4’の屈折異常を判定するために、上記のものと同様の別の光学系(図には表されていない)を備えてもよい。
【0024】
ターゲットオブジェクト7は、1つ以上の視標を表示する画面若しくはパネル、又は対象者の視力をテストするのに適切な任意の画像であってもよい。
【0025】
光学系2は、この眼の乱視特徴を判定するために、調整可能な円柱屈折補正を対象者の眼4に提供するように構成されている。したがって、光学系2は、その「円柱」及びこの「円柱」の軸のような、その円柱屈折度数特徴を調整することができるように構成されている。
【0026】
ここで説明される実施形態では、光学系2は、調整可能な球面屈折補正をこの眼4に提供するように更に構成されている。換言すれば、光学系2の球面屈折度数もまた、調整可能である。
【0027】
光学系2は、上記の屈折度数特徴を、小さなステップで又は更に連続的に、徐々に調整できるように構成されている。
【0028】
光学系2はまた、その屈折度数特徴が、ターゲットオブジェクト7から到来し、光学系2を通過して対象者の眼4に到達する光線6を遮ることなく変更され得るように構成されている。この光線6は、ターゲットオブジェクト7から到来し、光学系2によって収集され、次いで対象者5の眼4に送られる光の一部によって構成されている(この光は、最初にターゲットオブジェクトによって放出、拡散、又は反射されている)。したがって、光学系2は、その屈折度数特徴が、対象者の眼4の視野をカットオフすることなく変更され得るように構成されている。換言すれば、ターゲットオブジェクト7は、そのような屈折度数変更の過程で、対象者の眼4に対してマスクされていない、すなわち妨げられないままである。特に、光学系2は、所与のレンズを別のレンズに置き換える(ターゲットオブジェクトを対象者の眼に対して一時的にマスクする)ことなく、そのような屈折度数特徴の調整を達成できるように構成されている。
【0029】
光学系2は、1つ以上のレンズ及び/又はミラーを備える。これらのレンズ及び/又はミラーのうちの少なくとも1つは、
-移動可能であり、機器1の制御ユニット3によって制御され得るターゲットオブジェクトに対する相対位置を有し、又は
-制御ユニット3によって制御され得る調整可能な形状を有する。
したがって、光学系2の構成は、光学系2の屈折度数特徴の少なくとも一部を変更するために、制御ユニット3によって制御される方法で変更され得る。
【0030】
光学系2は、例えば、欧州特許第3096677号明細書に開示されているような、前記調整可能な形状を有する単一の変形可能な液体レンズを備え得る。光学系2はまた、そのような変形可能なレンズ、及び追加の光学構成要素、並びに/又は変形可能なミラー、アルバレスレンズ、若しくはライトフィールドディスプレイを備え得る。光学系2はまた、少なくとも1つのレンズと、調整可能である対象者の眼4からの距離においてターゲットオブジェクト7の画像を形成するために、ターゲットオブジェクトをこのレンズに結合する光路の長さを変更する変位系と、を含むバダル様系を備え得る。
【0031】
ここで説明する実施形態では、光学系2は、調整可能である対象者の眼4からの距離においてターゲットオブジェクト7の画像を形成し、それによってこの眼が近視か、遠視か、或いはそれ以外かをテストすることを可能にする。光学系2によってこの眼4に提供される球面屈折補正である(バダル様系の場合、一種の有効な球面屈折度数である)、光学系2の球面屈折度数は、光学系2がターゲットオブジェクト7の画像を形成する距離に直接関連している。光学系2の球面屈折度数は、対象者の眼4と、光学系2によって形成されるターゲットオブジェクト7の画像との間の代数的距離の逆数に等しい、又はほぼ等しいものとして定義され得る。
【0032】
より一般的には、光学系2は、対象者の眼4の前、眼4の近く(3センチメートル以下)に配置され、対象者の前方の固定された長い距離(数メートル、又は更に無限遠に)に配置されたオブジェクトの画像をこの眼4に提供する、単一のレンズと光学的に同等であり、この有効レンズは調整可能な屈折度数特徴を有する。光学系2の円柱屈折度数特徴は、この等価レンズの円柱屈折度数特徴である。同じことが、光学系の球面屈折度数にも当てはまる。例えば、光学系2が上記の単一の変形可能な液体レンズを含み、ターゲットオブジェクト7が対象者から数メートル離れて配置される特定の場合では、上記の等価レンズはこの単一の液体レンズ自体である。
【0033】
光学系2の「屈折度数状態」という表現は、光学系2が所与の構成にあるときに有する屈折度数特徴の集合体を指し、対象者の眼4に所与の屈折補正を提供している。光学系2の各屈折度数状態は、ここでの場合のように、光学系2の少なくとも3つの異なる屈折度数特徴の値の集合体によって定義することができ、光学系はこの所与の構成にある。これらの3つの屈折度数特徴のうちの1つは、光学系2の球面屈折度数に関連するか、又は更にはそれを代表している。上記の他の2つの屈折度数特徴は、光学系2の第1の円柱屈折度数特徴、及び光学系2の第2の別個の円柱屈折度数特徴を表している。
【0034】
したがって、光学系2の各屈折度数状態は、座標系における対応する点によって表され得る。この点の座標は、光学系の前記屈折度数状態に対して、上記の3つの異なる屈折度数特徴の値を表している。
【0035】
これらの3つの座標は、例えば、
-光学系の球面Sとも呼ばれる、光学系2の球面屈折度数、
-光学系2の円柱C、
-光学系2の円柱の軸の配向を表す角度α、
であり得る。
【0036】
球面Sは、この等価レンズの前面及び背面の形状の球面成分によって与えられる、上記の等価レンズの屈折度数(光学度数と呼ばれることもある)として定義することができる。
【0037】
円柱Cは、この等価レンズの前面及び背面の形状の円柱成分によって与えられる、この等価レンズの屈折度数として定義することができる。
【0038】
角度αは、固定された基準方向と、上記の円柱成分の中心となる軸との間に形成される。
【0039】
光学系2の円柱成分の別のベクトル分解を使用して、上記の大きさ及び配向分解の代わりに(すなわち、円柱、及び円柱の配向を指定する代わりに)、光学系2の円柱屈折度数特徴を特徴付けることができる。
【0040】
例えば、光学系2の屈折度数状態は、3つの球面円柱成分(球面S、円柱C、配向α)の代わりに、3つの直交成分(M、J0、J45)によって表すことができ、ここで、J0及びJ45は、光学系2の円柱屈折度数特徴を表す2つのジャクソン交差円柱レンズの屈折度数であり、Mは、球面Sに等しい球面等価に円柱Cの半分を加えたものであって、M=S+C/2である。これら2つの「ジャクソンレンズ」の第1の円柱は、これらの「ジャクソンレンズ」のもう一方の円柱から45度に配向されている。第1の「ジャクソンレンズ」が上記の基準方向に位置合わせされている場合、すなわち、その交差する円柱のうちの1つがこの方向に位置合わせされている場合、第1の交差した円柱度数J0は、(-C/2)×cos(2×α)に等しく、第2の交差した円柱度数J45は、(-C/2)×sin(2×α)に等しい。
【0041】
光学系2の屈折度数状態を表すために使用できる別の座標系は、ターゲットオブジェクト7の代わりに点光源によって照らされるときに光学系2が出力する特徴的な波面のゼルニケ多項式分解に基づいており、この点光源は、ターゲットオブジェクト7と同じ位置に配置されている。上記の3つの成分は、このゼルニケ多項式分解の3つの2次係数co
2、c2
2、及びc-2
2である。この座標系は、以下で更に引用するThibosらの記事の式1により、3つの2次係数co
2、c2
2、及びc-2
2がそれぞれM、J0、及びJ45に比例するため、3つの直交成分M、J0、及びJ45に基づく座標系と等価であることに留意されたい。
【0042】
光学系2の屈折度数状態を表すために、上述のもの以外の座標系を使用することができる。
【0043】
制御ユニット3は、対象者の眼4の屈折異常を判定するために、屈折プロトコル、例えば
図6の屈折プロトコルに従って、様々な屈折補正を対象者の眼4に提供するように光学系2を制御するようにプログラムされている。
【0044】
特に、制御ユニット3は、以下に説明する互いに比較される第1及び第2の屈折補正を対象者の眼4に提供するための方法を実施するようにプログラムされている。この方法によれば、光学系2は、
-光学系2がこの第1の屈折補正を対象者の眼4に提供する、第1の屈折度数状態から、
-光学系2がこの第2の屈折補正を対象者の眼4に提供する、第2の屈折度数状態に、
切り替える。
【0045】
次いで、対象者5は、例えば、機器1のユーザインターフェースを用いてこの情報を入力することによって、これらの第1及び第2の補正のうちのどれが、対象者がターゲットオブジェクト7を最良に(ターゲットオブジェクトをより鋭く、より暗く、及び/又はより歪みが少ない視力で)見ることを可能にするかを指定する。
【0046】
そのような比較ステップは、いくつかの屈折プロトコルにおいて重要な役割を果たす。それにより、例えば、
図6を参照して以下で更に説明するように、対象者の眼4の屈折異常を最良に補償する最適な屈折補正に徐々に近づくことを可能にする。
【0047】
光学系が切り替わる間の第1及び第2の屈折度数状態は、上記の座標系において、それぞれ第1の点P1及び第2の点P2によって表されている(
図2~
図4)。
【0048】
従来技術の機器では、そのような切り替えが対象者の視野のカットオフなしに連続的に行われる場合、切り替えを表す軌道は通常、直線であり、第1の点P1から開始して第2の点P2で終了する線分[P1P2]からなる。
【0049】
しかし、第1及び第2の補正が対象者の眼4の最適な屈折補正の近傍にある場合、この線分の内側部分に位置する中間点PIは、例えば、この線分の中央では、大部分の場合、第1の点P1及び第2の点P2よりも、最適な屈折補正を表す最適な屈折点POに近くなる。換言すれば、そのような状況では、中間点PIによって表される中間屈折補正は、第1の屈折補正及び第2の屈折補正よりも良好に対象者の屈折異常を補正する。したがって、上記の従来技術の機器では、第1の屈折補正から第2の屈折補正に切り替えることにより、切り替え中に、対象者によって知覚されるぼやけレベルが一時的に低減される。実際に、中間屈折補正に対応するぼやけレベルは、第1の屈折補正に対応するものよりも低く、且つ第2の屈折補正に対応するものよりも低い。これは、対象者5を混乱させ、対象者の第1の屈折補正と第2の屈折補正の信頼できる再現可能な比較を妨げる。「最適な屈折補正」という表現は、主観的屈折プロトコルの結論において、対象者の眼4の屈折異常を最適に補正するものとして判定される屈折補正を指す。
【0050】
逆に、最適な屈折補正とはいくらか逆の状況では、直線経路をたどりながら第1から第2の屈折補正に切り替えることにより、切り替え中に対象者が知覚するぼやけレベルが(一時的に減少する代わりに)一時的に増大させる場合があり、これもまた対象者を混乱させる。
【0051】
本発明による方法では、これらの望ましくない影響を回避するために、機器1の制御ユニット3は、光学系2を制御して、それによって、
上記の線分の内側部分に位置する中間点PIが、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近い場合、或いは、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0から遠い場合、
前記切り替え中に、
i)前記座標系における前記切り替えを表す軌道の各点Pに対して、前記座標系における前記点Pと中間点PIとの間の距離dは、前記第1の点P1と前記中間点PIとの間の第1の距離d1、及び前記第2の点P2と前記中間点PIとの間の第2の距離d2、
のうちの最小値の4分の1以上であるか、又は
ii)前記中間点PIに最も近い前記軌道の点において、光学系2の屈折度数の変動速度sVは、それを超えると対象者5が屈折度数変化を知覚することができない変動限界速度sLよりも大きい。
【0052】
中間点PIから離れたままで、又は少なくとも前記切り替えの一部の間、前記変動限界速度sLよりも大きい速度で、光学系2をその第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えることにより、対象者5が、上記の場合では、第1及び第2の屈折補正に対応するぼやけレベルとは実質的に異なる(より低い又はより高い)前記中間屈折補正に対応するぼやけレベルを知覚することを防止する。
【0053】
したがって、この特徴は、前記切り替え中に、不必要で潜在的に妨害するぼやけ変動を低減することを可能にし、それによって対象者5によるこれらの第1及び第2の屈折補正の比較の精度及び再現性を改善する。
【0054】
代替例として、又は補完として、制御ユニット3は、中間点PIと最適な屈折点P0との間、又は中間点PIと最適な屈折点の推定値との間の距離が、第1の距離及び第2の距離のうちの最小値の4分の1、或いは半分よりも小さい場合、特徴i)又はii)に従って切り替えが実行されるように、光学系2を制御することができる。
【0055】
ここで説明する実施形態では、前記座標系における点間の距離はそれぞれ、考慮される点間のユークリッド距離に等しく、すなわち、「通常の」直線距離に等しい。しかしながら、他の実施形態では、前記座標系における点間の距離は、他の測定メトリクスに従って、例えば、
-考慮される第1の点の第1の座標と第2の点の第1の座標との差、
-この第1の点の第2の座標とこの第2の点の第2の座標との差、及び
-この第1の点の第3の座標とこの第2の点の第3の座標との差、
のそれぞれの絶対値の合計に等しいものとして、判定することができ、
この種の距離は、「街区距離」又は「マンハッタン距離」と呼ばれることがある。
【0056】
上記に表されている、光学系2の第1から第2の屈折度数状態に切り替える特定の方法は、以下の「第1の屈折補正から第2の屈折補正への切り替え」のセクションで詳細に説明され、第1及び第2の屈折度数状態の同じセットに対応する、6つの異なる切り替えによって示されている。次に、
図6に表されている主観的屈折プロトコルは、上記の第1及び第2の屈折補正を対象者の眼4に提供する方法に基づいて、「主観的屈折プロトコル」のセクションでより一般的な観点から説明されている。
【0057】
第1の屈折補正から第2の屈折補正への切り替え
実際には、座標系においてこれら2つの補正を表す第1の点P1と第2の点P2との間の距離d12は、通常、0.1~2ジオプタの範囲である。
【0058】
この距離d12は、対象者に関係なく、一定の値に設定することができる。それはまた、屈折変動に関する対象者の感度に応じて設定してもよい。この感度は、(本特許出願の出願日においてまだ公開されていない)出願人が所有する欧州特許出願第18305996.3号明細書に記載されているものなどの感度パラメータの値によって特徴付けることができる。この感度パラメータは、例えば、対象者5によって知覚され得る、対象者の眼4の前に配置されたレンズの1つ以上の光学的特徴の最小変動に等しいことを表す。上記の距離d12は、この感度パラメータが小さいため、全てより小さくなり得る。
【0059】
更に、ここで説明される実施形態では、制御ユニット3は、線分[P1P2]の中央が、第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも、最適な屈折点P0に近いか、或いは遠い場合に、光学系2が上記の特徴i)又はii)に従って第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替えるようにプログラムされていることに留意されたい。この場合、切り替えを表す軌道によって迂回される、又はその近傍をこの軌道が迅速に通過する中間点PIは、この線分の中央にある。
【0060】
この状況は、とりわけ、線分[P1P2]の中央が、第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P
0に近い(すなわち、前記座標系において、線分の中央と最適な屈折点P
0との間の距離が、第1の点P1と最適な屈折点P
0との間の距離よりも小さく、第2の点P2と最適な屈折点P
0との間の距離よりも小さい)、
図2~
図4に表される場合に対応する。
【0061】
次に、中間点PIが線分[P1P2]の中央に位置するため、第1の距離d1(点P1とPIとの間の距離)は第2の距離d2に等しく、ベース距離dm、すなわち「第1の距離d1及び第2の距離d2のうちの最小値」は、d1又はd2と無差別に等しくなり、dm=d1=d2である。
【0062】
しかしながら、他の状況では、線分[P1P2]の中央は、第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近くないか、又は遠い場合があり、一方、この線分の内側部分の他の点は、第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも、最適な屈折点P0に近いか、又は遠くなることに留意されたい。そのような場合、切り替えを表す軌道によって迂回される、又はその近傍をこの軌道が迅速に通過する中間点は、この別の点になる。
【0063】
そのうえ、制御ユニット3は、光学系2を制御するように更にプログラムすることができ、それによって、
中間点PIが、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近い場合、或いは、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0から遠い場合、
前記切り替え中に、前記切り替えを表す軌道の各点Pに対して、前記点Pと中間点PIとの間の距離dは、接近距離閾値dapよりも大きく、この接近距離閾値dapは、0.05ジオプタまで大きく、又は0.125ジオプタまで更に大きくなる。
【0064】
制御ユニット3はまた、光学系2を制御するようにプログラムすることができ、それによって、
中間点PIが、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近い場合、或いは、前記第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0から遠い場合、
前記切り替え中に、
i’)前記切り替えを表す軌道の各点Pに対して、前記点Pと線分[P1P2]の内側部分の各点との間の距離は、(以下に説明する軌道T2~T5の場合のように)ベース距離dmの4分の1以上であり、又は
ii’)光学系2の屈折度数の変動速度sVは、(軌道T6に対応する切り替えの場合のように)ベース距離dmの4分の1、又は更には半分よりも小さい中間点PIの距離に位置する前記軌道の各点に対して、上記の変動限界速度sLよりも大きい。
【0065】
したがって、この最後の特徴によれば、迂回されるのは中間点PIだけでなく、又はその近傍を系が迅速に通過するだけでなく、線分[P1P2]の内側部分全体である。
【0066】
線分[P1P2](それ自体は「より小さい」線分である)の内側部分は、この線分の長さの半分に等しい長さを有する。この内側部分の中央は、線分の中央と一致する。或いは、線分の内側部分の長さをより短く、例えば、線分の長さ[P1P2]の4分の1に等しくすることができる。
【0067】
図2~
図4に表される6つの軌道T1~T6は、本発明による、機器1によって達成され得る光学系2のより具体的な異なる切り替えを示している。
【0068】
これらの軌道が表される座標系の3つの座標は、光学系2の球面等価M、並びに第1及び第2の交差した円柱度数J0及びJ45である。しかしながら、上記のように、他の座標系を使用して、光学系2の屈折度数状態を表すことができる。
【0069】
これらの軌道T1、T2、T3、T4、T5、T6のそれぞれが開始する第1の点P1、及びそれが終了する第2の点P2は、これらの6つの軌道に対して同じである。第1の点P1によって表される第1の屈折度数状態であるか、又は第2の点P2によって表される第2の屈折度数状態であるかにかかわらず、光学系2は、これらの6つの切り替えに対して、同じ球面等価度数M(換言すれば、同じ全球面度数)を有する。実際に、ここでは、対象者による第1及び第2の屈折補正の比較が、対象者の眼4の乱視特徴を判定するために行われる。
【0070】
これらの図に示されている特定の状況では、第1及び第2の点P1及びP2は、実質的にゼロに等しい球面等価Mの値と、また実質的にゼロに等しい座標J45の値との両方に対応する。球面等価Mの値は、最適な補正点P0に対してわずかに負であり、そうでなければ線分[P1P2]の中央に近くなる。
【0071】
もちろん、ここで説明される切り替え技術はまた、他の第1及び第2の屈折度数状態のセットにも適用される。例えば、光学系2の円柱の軸の同じ配向と、(図に表されている場合のように)この円柱の異なる値とに対応する代わりに、対象者により比較される2つの屈折度数状態は、光学系2の円柱Cの同じ値に対応し得るが、この円柱の2つの異なる配向(角度αの2つの異なる値)にも対応し得る。
【0072】
最初の5つの軌道、T1~T5は、中間点P
Iから離れたままの軌道である(
図2及び3)。
【0073】
最初の軌道T1(
図2)の各点Pに対して、この点と中間点P
Iとの間の距離dは、ベース距離dmの半分と、このベース距離との間に含まれ、dm/2≦d≦dmである。変形例として、距離dは、ベース距離d
mの4分の1と、このベース距離との間に含まれ得る。
【0074】
第2、第4、及び第5の軌道T2、T4、T5のいずれかの場合、考慮される軌道の各点に対して、この点と中間点P
Iとの間の距離dは、ベース距離d
mに等しく、d=dmである。したがって、これらの軌道T2、T4、及びT5のそれぞれは、中間点P
Iを中心とする半円である(
図2及び
図3)。そのような半円軌道により、切り替え中に生じる一時的なぼやけレベル変動を最小化することが可能になり、第1及び第2の屈折度数状態での非常に快適で信頼性の高い比較がもたらされる。より一般的には、この有利な効果は、距離dがベース距離d
mの0.8倍とベース距離d
mの1.2倍との間に含まれたままのような軌道に対して取得され得る。
【0075】
その結果、第3の軌道T3は、この軌道の各点に対して、この点と中間点PIとの間の距離dは、ベース距離dm以上であり、d≧dmである。より具体的には、第1及び第2の点P1、P2を除いて、距離dはdmよりも大きく、d>dmである。
【0076】
第1の軌道T1ではずっと、光学系2の球面等価Mは一定のままである。同じことが、第2及び第3の軌道T2及びT3に当てはまる。したがって、ここで検討される座標系において、これらの軌道は平面である。
【0077】
第4及び第5の軌道T4及びT5もまた平面であるが、それに沿って、光学系2の球面等価Mは変化し、一方、光学系2の円柱屈折度数特徴のうちの1つ(J45で表されている)は一定のままである。
【0078】
第4の軌道T4は、球面等価Mを増大させ、次いで減少させることによって中間点PIを迂回し、一方、光学系2の円筒屈折度数特徴のうちの1つ(J0で表されている)は、第2の点P2に到達するように変化する。
【0079】
したがって、この軌道ではずっと、光学系2の球面等価Mは変化し、一方、第1の点P1に対応する球面等価Mの第1の値、M1、及び第2の点P2に対応する球面等価Mの第2の値、M2のうちの最小値よりも大きいままである。この特徴は、対象者の眼4が順応することを有利に防ぐ。換言すれば、この機能のおかげで、前記切り替えではずっと、対象者の眼4は、この眼から可能な限り遠くに位置する点に焦点を合わせる。
【0080】
第5の軌道T5は第4の軌道と同様であるが、球面等価Mを減少させ、次いで増大させることによって中間点PIを迂回し、一方、上記の円柱屈折度数特徴(J0)は、第2の点P2に到達するように変化する。
図4では、第5の軌道は破線で表され、第4の軌道は切れ目のない線で表されている。
【0081】
軌道T1~T5とは異なる、中間点PIを迂回する他の軌道をたどって、第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態、特に非平面軌道に切り替えることができる。
【0082】
そのうえ、中間点PIを回避する代わりに、第1から第2の屈折補正への切り替えを表す軌道は、第6の軌道T6のように、しかし高速でこの点を通過することができる。
【0083】
この第6の軌道T6は直線であり(
図4)、したがって、線分[P1P2]と一致する。
【0084】
この第6の切り替えの間、中間点PIにおける(すなわち、前記軌道が前記中間点を通過するときの)光学系の屈折度数の変動速度sVは、変動限界速度sLよりも大きい。
【0085】
より具体的には、この切り替えの間、中間点PIと光学系2の屈折度数状態を表す点Pとの間の距離dが小さくなるにつれて、変動速度sVは全て大きくなる。
【0086】
光学系2の屈折度数の変動速度sVは、光学系2の現在の屈折度数状態を表す点Pが、座標系において、切り替えを表す軌道上を移動する速度である。それは、例えば、毎秒のジオプタで表すことができる。
【0087】
したがって、例えば、光学系2の円柱Cの値が、その配向が変化する間一定のままである場合、変動速度は、C(dα/dt)(ここでαはラジアンで表される)に等しい。
【0088】
また、
図4に示されている特定の場合では、球面等価M及び座標J45が切り替え中に一定のままであるため、変動速度S
Vは、d(J0)/dtに等しい。したがって、この場合、例えば中間点P
Iにおいて、時間tにわたる座標J0の変動を表す曲線Cに接する線Lの傾きは、変動限界速度S
Lよりも大きい。この曲線は、
図5に表されている。
【0089】
変動限界速度sLは、対象者5が屈折度数変動を知覚することができる屈折度数の変動の最高速度である。
【0090】
換言すれば、対象者の眼に提供される屈折補正の屈折度数が、変動限界速度sLよりも大きい速度で経時的に変化する場合、対象者は、この変動を知覚することができない。
【0091】
そして、対象者の眼に提供される屈折補正の屈折度数が、変動限界速度sLよりも遅い速度で経時的に変化する場合、対象者は、少なくとも部分的にこの変動を知覚することができる。
【0092】
対象者の変動限界速度sLを判定するために、熟練した視覚科学者である検眼士は、第1の屈折度数に設定された光学系2を通して見える画像を対象者に提示し、初期変動速度sIで屈折度数を第2の屈折度数に変更することができる。対象者は、2つの代替的な強制選択肢、すなわち、応答の2つのオプションである、「はい、変化が見えます」、「いいえ、見えません」のみを有する。対象者が「はい」と答えた場合、第1と第2の屈折度数は同じに維持されるが、変動速度は増大する。対象者が「いいえ」と答えると、速度は低減される。古典的な精神物理学的階段法を使用して、速度変動限界sLを各個人に対してそのように定義され得る。
【0093】
ほとんど全ての対象者に対して、屈折度数の変動速度が毎秒20ジオプタよりも大きい場合、対象者は対応する屈折度数変動を知覚できないことがわかっている。したがって、実際には、毎秒20ジオプタが、変動限界速度sLの適切な値である。実際に、第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態への切り替えがこの値よりも大きい速度で行われる場合、たとえ光学系2がたどる軌道が中間点PIを通過したとしても、対象者5は、対応する減少したぼやけレベル、或いは、中間点に対応する増大したぼやけレベルを知覚することができない。
【0094】
毎秒10ジオプタもまた、変動限界速度sLの適切な値であるが、この値は依然として十分に高いため、軌道がそのような速度でこの点を通過するときに、大部分の対象者は、中間点PIに対応するぼやけレベルの減少/増大を認識することができない。
【0095】
ここで説明される方法の実施形態では、変動限界速度s
Lは、第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態に切り替わる前に、ステップS200の間に判定される(
図7)。このステップは、光学機器1の制御ユニット3によって実行され得る。ステップS200は、以下:
-対象者5が屈折度数変化に反応する応答速度に関連するデータを取得するステップ(ステップS201)と、
-前記データに基づいて変動限界速度s
Lを判定するステップ(ステップS202)と、
を含む。
【0096】
RSDと呼ばれる、対象者の応答速度に関連するデータには、
-対象者の年齢5、眼内環境の透明性、病状の存在、視覚性能などの眼の状態/特性、すなわち、高コントラスト及び低コントラストの視力、屈折異常のタイプ及びレベル、対象者の設置に関連するデータ、例えば、系の倍率に影響を与え得る頂点距離、したがって刺激の見かけのサイズ、したがって潜在的なRSD、刺激に関連するデータなど、ターゲットのタイプ、及び対象者に対してターゲットが置かれる距離、
-前記方法の前に実現された他のテスト中に判定された応答速度の以前の値であって、この以前の値は、例えば、リモートサーバからロードされるか、又は対象者5の電子健康カードに読み込まれ、
-同じ屈折プロトコルの過程で(例えば、
図6の屈折プロトコルの過程で)以前に実行されたテスト中に対象者5が反応した応答時間のセット、を含み得る。
【0097】
ステップS202では、対象者の応答速度RSDに関連するデータが上記の応答速度の以前の値を含む場合、変動限界速度sLの値は、この以前の値と等しくなるように設定され得る。
【0098】
このデータが上記の応答時間のセットを含む場合、これらの応答時間は短いため、変動限界速度sLは、全てがより高くなるように判定され得る。
【0099】
そして、このデータが対象者の年齢を含む場合、変動限界速度sLは、光学系2の公称最大変動速度smax及び対象者の年齢に応じて、以下に説明するように判定され得る。
【0100】
光学系2の公称最大変動速度smaxは、光学系2が設計されている光学系2の光学度数の最大変動速度である。換言すれば、それは、光学系2が、光学系を損傷したり、又は過度の加熱をしたりすることなく、繰り返し達成できる最大変動速度である。公称最大変動速度smaxは、例えば、考慮される光学系2に応じて、毎秒15~50ジオプタで構成され得る。
【0101】
次いで、変動限界速度sLは、この公称最大変動速度smaxの一部に等しくなるように判定され、この部分は、対象者が若いほど高くなる。
【0102】
例えば、対象者の年齢が20歳未満である場合、変動限界速度sLは、公称最大変動速度smaxに、好ましくは毎秒20ジオプタよりも高く、設定され得る。
【0103】
対象者の年齢が20歳~50歳の間にある場合、変動限界速度sLは、公称最大変動速度smaxの70パーセント(70%)に、好ましくは毎秒10ジオプタよりも高く、設定され得る。
【0104】
そして、対象者の年齢が50歳を超える場合、変動限界速度sLは、公称最大変動速度smaxの50パーセント(50%)に、好ましくは毎秒5ジオプタよりも高く、設定され得る。
【0105】
変動限界速度sLは対象者の年齢に適合されているため、光学系2の光学度数は、必要な場合にのみ(対象者が若い場合にのみ)その公称最大変動速度smaxにおいて変化し、それによって光学系の不必要な加熱又は摩耗を防止する。
【0106】
変動限界速度sLの値はまた、ステップS202において、対象者の年齢、応答速度の以前の値、及び/又は上記の応答時間のセットから推定された値に基づいて判定された値を組み合わせることによって、判定されてもよい。この組み合わせは、例えば、これら3つの値を平均することによって達成され得る。
【0107】
変動限界速度sLの値はまた、対象者の感度パラメータを考慮に入れることができる。特に、対象者が検出できる最小屈折変動が小さいため、変動限界速度sLの値を更に高く設定することができる。実際には、対象者が屈折変動に非常に敏感である場合、(対象者が自身に提供される屈折の値に非常に敏感であるために)対象者は最適な屈折点P0の近接によって引き起こされる一時的なぼやけレベル変動にはっきりと気付くため、変動限界速度sLを大きい値に設定することが好ましい。
【0108】
ステップS201における(例えば、対象者の応答速度RSDに関連するデータが利用可能でないための)失敗の場合、又は制御ユニット3がこれらのデータが十分/十分に信頼できないと判定した場合、変動限界速度sLは、ステップS202において、デフォルト値、例えば、毎秒20~10ジオプタに等しく、又は光学系2の公称最大変動速度smaxに設定され得る。
【0109】
或いは、ステップS200は、対象者の応答速度データを取得し、次いでこのデータから変動限界速度sLの適切な値を推定するステップを含む代わりに、上記の反応速度テストを含むことができる。換言すれば、ここで説明する方法では、対象者の変動限界速度sLは、この反応速度テストを実行することによって直接評価でき、次いで、上記の切り替えが測定された変動限界速度に応じて実行される。
【0110】
上述のように、軌道T1~T5の場合、座標系において、中間点PIから離れたままでいることにより、切り替え中に対象者5によって知覚されるぼやけレベルの一時的な低下が回避される。そして、第6の軌道T6に対応する切り替えの場合、軌道は、中間点PIの近くを通過し、更にはそれを通って通過するが、高速である。
【0111】
上記の一時的なぼやけレベル変動はまた、上記の幾何学的及び時間的特徴を組み合わせることによって、すなわち、中間点PIから離れたままであり、且つ同時に、高速で、少なくとも中間点の近傍で切り替えを達成することによって、回避又は少なくとも低減することができる。特に、切り替え中にたどる軌道の各点Pの場合、この点Pが中間点PIに近いため、屈折度数の変動速度sVは、中間点PIの近傍に長時間とどまることを回避するために、更に速くなり得る。
【0112】
より具体的には、本発明による方法では、中間点PIの近傍に長時間とどまることを回避するために、切り替えを実行することができ、それによって、
-所与のコスト関数fの、前記切り替えを表す軌道に沿った、前記切り替えの開始から終了までの時間tにわたる積分Intであって、その引数が、前記軌道の現在の可変点Pと前記中間点PIとの間の距離dである、積分Intは、
-その引数が前記第1の距離d1及び前記第2の距離d2のうちの最小値の4分の1に等しい場合、すなわちその引数が前記ベース距離dmの4分の1
に等しい場合、近接時間スパン制限ΔTに前記コスト関数fの値を掛けたもの
よりも小さい。
【0113】
したがって、この基準によれば、以下のようになる。
【数1】
【0114】
式F1の積分Intは、ある種の平均切り替え時間に対応し、ここで、軌道の所与の点Pの近くで系によって費やされた時間が、コスト関数f(d[P])によって重み付けされる。
【0115】
コスト関数fは、その引数dが小さいため、全てより大きくなる。換言すれば、点Pが中間点PIに近づくにつれて、コスト関数は増大する。これにより、積分Intでは、対応する重みが高いため、中間点PIに近い点に強くペナルティを課すことが可能になる。したがって、式F1が満たされる切り替え中に、低速又は中速で中間点の近くを通過することが回避され、したがって、そうでなければ発生するであろう対象者によって知覚されるぼやけレベルの一時的な変動が回避される。
【0116】
実際には、近接時間スパン制限ΔTの値は、通常、1ミリ秒~1秒、好ましくは10ミリ秒~0.3秒、又は更に、ここでのように25~250ミリ秒の範囲である。そのような値は、大部分の全ての対象に対して、中間点PIに対応する一時的に減少したぼやけレベル(又は逆に、一時的な増大したぼやけレベル)が対象者によって知覚されないように、十分に小さいことがわかる。
【0117】
切り替えの開始は、切り替えが開始する時間t1であり、すなわち、光学系2の屈折度数特徴が、第1の屈折補正に対応するものと異なるようになる時間である。同様に、切り替えの終了は、光学系2の屈折度数特徴が第2の屈折補正に対応するものと等しくなる時間t2である。これらの開始時間及び終了時間t1及びt2は、上述の第6の切り替えの場合での
図5に表されている。
【0118】
コスト関数fの値は、例えば、
-距離dが近接距離dpを上回る場合はゼロに等しく、この近接距離dpは、例えば、ベース距離dmの半分に等しく、
-距離dがこの近接距離dpを下回る場合は正、であり得る。
【0119】
より具体的には、
図8に表されるように、コスト関数fの値は、dがd
pを上回る場合はゼロであり、そうでなければ正の定数Coに等しくなり得る。
【0120】
式F1では、点Pが
図8のものよりも中間点P
Iに近づくと、より漸進的に増大する他のコスト関数を使用することができる。
【0121】
例えば、
図8のコスト関数fを考慮すると、上記の5つの最初の軌道T1~T5に対して、積分Intがゼロに等しいため、式F1の基準が満たされ、したがって、f(d
m/4).Δ
Tよりも小さくなることに留意されたい。
【0122】
そして、第6の軌道T6に対応する切り替えの場合、屈折度数の変動速度sVが、例えば、線分[P1P2]の内側部分に対応する軌道の部分上で一定であり、毎秒vo=20ジオプタに等しい場合、積分IntはCo.dm/voに等しく、これは、dm/voが0.5ジオプタの一般的なdmに対して25ミリ秒に等しいため、f(dm/4).ΔT=Co.ΔTよりも小さく、一方、ΔTは、25~250ミリ秒で構成されることが見いだされる。したがって、この第6の軌道、及び様々なパラメータのそのような値に対して、式F1の基準もまた満たされる。
【0123】
本発明による方法の任意選択の特徴によれば、光学系2の第1の屈折度数状態から第2の屈折度数状態への切り替えが実行され、それによって、前記切り替えを表す軌道の各点Pに対して、ぼやけレベルBLが、眼4の理論モデル及び対象者5の視力に基づいて、且つ対象者の眼4が前記点Pに関連する屈折度数状態に対応する補正を提供されることを考慮に入れて、判定され、ぼやけレベルBLは、
-光学系の第1の屈折度数状態に関連する第1のぼやけレベルBL1、及びその第2の屈折度数状態に関連する第2のぼやけレベルBL2のうちの最小値によるマージン係数kとの積よりも大きく、
-マージン係数kだけ、第1のぼやけレベルBL1と第2のぼやけレベルBL2のうちの最大値の比率よりも小さい、ことに更に留意されたい。
【0124】
換言すれば、前記切り替えを表す軌道の各点Pに対して、対応するぼやけレベルBL(P)は次いで、以下の式F2に準拠する。
BL(P)>k×Min(BL1,BL2)、且つBL(P)<[Max(BL1,BL2)]/k (式F2)
【0125】
マージン係数kは、0.5~1の間、又は更に好ましくは0.8~1の間で構成される。
【0126】
第1及び第2のぼやけレベルBL1及びBL2は、上記の眼4の理論モデル及び対象者5の視力に基づいて、且つ対象者の眼4がそれぞれ、第1の屈折補正又は第2の屈折補正を提供されることを考慮に入れて、ぼやけレベルBLとして判定される。
【0127】
式F2の基準を満たすために、この最後の基準が満たされる軌道は、切り替えの前に計算されてもよく、光学系2は次いで、この事前に計算された軌道に従うように、制御ユニット3によって制御される。
【0128】
このモデルに基づいて判定されたぼやけレベルは、切り替えの最初、その過程、及びその最後に対象者により知覚されると想定されるぼやけレベルを現実的且つ正確に表す。
【0129】
上記の基準が満たされるように切り替えを達成することにより、対象者によって知覚されるぼやけ変動が切り替え中に厳しく制限され、対象者によって知覚されるぼやけレベルが、切り替えの開始点と終了点に対応する第1のぼやけレベルBL1と第2のぼやけレベルBL2との間でほぼ制限されたままであることが確実になる。
【0130】
上記の理論モデルは、中間点PIに対応する中間屈折補正が提供される場合、或いは、対象者の眼に最適であると考えられる他の屈折補正が提供される場合に、対象者の眼4が光学的観点から完全に補正され、その光学的解像度が例えば回折によってのみ制限されると想定することができる。この他の屈折補正は、最適な屈折点P0、又は最適な屈折補正の推定値に対応し得る。したがって、この理論モデルによれば、点スプレッド関数の幅などの眼4の光学分解能は、考慮される各屈折補正に対して、この補正と中間屈折補正との差に基づいて(或いは、評価される屈折補正と上記の最適と見なされる屈折補正との差に基づいて)計算され、基準の完全な補正として考慮される。
【0131】
この想定の下で、ぼやけレベルBLは次いで、
-点スプレッド関数の幅、
-光学変調伝達関数の空間周波数カットオフ、
-上記で説明されるように考慮され、モデル化される屈折補正を提供された、対象者の眼4のストレール率、
のうちのいずれかの関数として判定され得る。
【0132】
したがって、ぼやけレベルBLが、前記屈折補正を提供されたこの理論上の眼の点スプレッド関数の幅として判定される場合、例えば、対象者の眼に中間点に対応する屈折補正が提供される場合、この点スプレッド関数は回折限界であると想定される(対象者の眼は完全に補正されると考えられる)。
【0133】
眼4の理論モデル及び対象者5の視力には、対象者の視力応答の神経的特徴を考慮に入れてもよい。例えば、対象者により最良に知覚される空間周波数は、必ずしも最低のものではないことが知られている。したがって、ぼやけレベルBLは、例えば、L.N.Thibosらによる、記事
「Accuracy and precision of objective refraction from wavefront aberrations」,Journal of Vision(2004)4,329~351頁のAppendixに記載されているように、眼4の光学的及び神経的特徴と対象者の視力との両方を考慮に入れて、視力変調伝達関数の空間周波数カットオフとして判定され得る。
【0134】
同様に、ぼやけレベルBLは、(上記の記事で説明したように)眼4の光学的及び神経的特徴と対象者の視力との両方を考慮に入れて、対象者の眼に考慮される屈折補正が提供された、視覚的ストレール率として判定することができる。
【0135】
主観的屈折プロトコル
図6は、機器1を用いて実施され、上述の方法に基づいて、対象者の眼4に第1及び第2の屈折補正を提供するための、主観的屈折プロトコルのいくつかのステップを概略的に表している。
【0136】
このプロトコルは、予備的なデータ取得ステップSoから開始し、その間に対象者5に関連する個人データが機器1によって取得される。これらの個人データには、例えば、
-対象者5に関する以前の屈折処方であって、この処方は、例えば、機器1のユーザインターフェースによって入力され、リモートサーバからロードされ、対象者5の電子健康カードに読み込まれ、又は対象者5が通常着用する眼科用レンズから判定され、
-ここで説明される主観的屈折プロトコルの前に客観的屈折プロトコルを実行することによって取得される予備的な屈折処方、
のような、対象者の眼4の屈折異常に関連するデータを含む。
【0137】
これらのデータはまた、上述の対象者の応答速度(RSD)に関連するデータを含み得る。
【0138】
これらのデータはまた、屈折変動に対する対象者の感度を表す、対象者の感度パラメータに関連するデータを含み得る。
【0139】
プロトコルはまた、上記の反応速度テストを含み得、その間に、変動限界速度sLの個々の値が、視力がテストされている対象者5に対して判定される。
【0140】
このデータ取得ステップSoの後、プロトコルは、ステップS1によって表される球面屈折サブプロトコルを備える。この球面屈折サブプロトコルの間に、対象者の眼4の球面屈折異常を最良に補正する最適な球面屈折補正Mopが判定される。この目的のために、対象者の眼には、(最適な球面屈折補正Mopよりも高い球面補正によって)対象者の視界を曇らせるのに適切な屈折補正が提供され、次いで、対象者がターゲットオブジェクト7を可能な限り鮮明に見ていることを対象者が示すまで、対象者の視界の曇りを徐々にとらせ得る。次に、このようにして得られた球面屈折は、デュオクロームテストによって精緻化又は確認することができる。
【0141】
この球面屈折サブプロトコルが実行される方法では、最適な球面屈折補正Mopに迅速に、及び/又は対象者の感度パラメータの観点から適切な精度で収束するために、ステップSoにおいて取得された個人データの少なくとも一部を考慮に入れることができる。
【0142】
ステップSo及びS1は、どちらも任意選択である。実際には、プロトコルを監督するアイケア専門家は、ステップSoのみ、ステップS1のみ、又はその両方を実行することを選択してもよい(必ずしも上記の順序である必要はない)。
【0143】
とにかく、以下に説明するステップS2の前に、最適な球面屈折補正Mop、又は少なくともその推定値が取得又は判定される。
【0144】
ステップS2の間に、円柱屈折サブプロトコルが実行される。この円柱屈折サブプロトコルの間に、対象者の眼4の球面屈折異常を最良に補正する円柱屈折補正が判定される。この目的のために、対象者に提供される球面屈折補正は、最適な球面屈折補正Mopと比較してわずかに増大されて(例えば、+0.5ジオプタがMopに追加され得て)、対象者の視界をわずかに曇らせ得る。次いで、評価される様々な円柱屈折補正が、対象者に提供される。
【0145】
より具体的には、この円筒形屈折サブプロトコルは、互いに比較される第1の、次いで第2の屈折補正を対象者の眼4に提供するステップS23を含む。次に、対象者5は、ステップS24において、これらの第1及び第2の補正のうちのどれが、対象者がターゲットオブジェクト7を最良に見ることを可能にするかを指定する。
【0146】
第1の屈折補正を対象者に提供し、次いで第2の屈折に切り替える前に(ステップS23中に)、制御ユニット3は、
-ステップS21において、これらの第1と第2の屈折補正の座標を判定し、
-ステップS22において、この第1の屈折補正からこの第2の屈折補正への切り替えの特徴を判定する。
【0147】
ここで説明する実施形態では、ステップS21~S24のセットは、制御ユニット3が対象者の眼4の最適な屈折補正に到達したと判定するまで、又は、ステップS24の連続的な実行中に対象者によって提供された回答に基づいて、制御ユニットがこの最適な屈折補正を判定するまで、連続して数回実行される。
【0148】
より具体的には、制御ユニット3は、対象者がステップS24において、対象者が知覚するぼやけレベルが第1及び第2の屈折補正に対して同一であり、且つそれらが低いことを示すまで、第1及び第2の屈折補正の平均に対応する平均屈折補正の異なる値に対してステップS21~S24のセットが繰り返されるように、機器1を制御するようにプログラムされ得る。
【0149】
次いで、最適な屈折補正が、この最後の状況における平均屈折補正に等しいものとして制御ユニット3によって判定されてもよく、その場合、第1及び第2の屈折に対応するぼやけレベルは同一である。制御ユニットは、この最後の平均屈折に基づいて最適な屈折補正を判定することができるが、プロトコルの過程において対象者5によって提供された以前の回答もまた考慮に入れる。
【0150】
ステップS21~S24のセットのこの繰り返しのシーケンスでは、ステップS21が再び実行されると、第1及び第2の屈折補正の座標(すなわち、第1の点P1及び第2の点P2の座標)は、ステップS24の1つ以上の以前の実行中に対象者5によって提供された1つ又は複数の回答の関数として判定される。
【0151】
例えば、ステップS24の以前の実行中に対象者によって提供された回答が、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近かったことを示す場合、制御ユニット3は、ステップS21~S24のセットの前の繰り返し中よりもこれらの新しい屈折補正が以前の屈折補正に近くなるように、第1及び第2の屈折補正の新しい座標を判定することができる。換言すれば、ステップS23の以前の実行中に提供された以前の第1の屈折補正と、ステップ23の次の実行中に提供される次の第1の屈折補正との間のギャップは、この屈折補正が最適な屈折補正に近づくにつれて減少する。
【0152】
制御ユニット3は、ステップS24において対象者により提供された回答が、第1及び第2の屈折補正のうちのどれが対象者の視力を最良に補正するかに関する対象者の高度の不確実性を表すと、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近づいたと判定することができる。
【0153】
制御ユニット3はまた、前記第1及び第2の屈折補正の中から対象者の視力を最良に補正する屈折補正の「反転」を検出すると、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近づいたと判定することができる。そのような反転は、ステップS21~S24のセットの連続的な実行のシーケンスの過程で起こり得、その間、平均屈折補正は単調に増大する(又は単調に減少する)。この反転は、ステップS24の新たな実行中に、対象者5が、もはや対象者の視力を最良に補正するのは第2の屈折補正ではなく、ここでの第1の屈折補正である、又はその逆であることを合図するという事実に対応する。そのような反転は、座標系において、上記の平均屈折補正が最適な屈折補正の一方の側からもう一方の側に通過するときに生じる。したがって、そのような反転は、第1及び第2の補正屈折が最適な屈折補正に近いことを明らかにする。
【0154】
制御ユニット3はまた、以前の屈折処方に基づいて、又はステップSoにおいて取得された対象者5に関する予備的な屈折処方に基づいて、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近いことを判定することができる。
【0155】
ここで、互いに比較される第1の屈折補正と第2の屈折補正との間のギャップに関して、制御ユニット3は、セクション「第1の屈折補正から第2の屈折補正へ切り替え」の冒頭で説明したように、ステップS21において、対象者の感度パラメータの関数として、第1の点P1と第2の点P2との間の距離d12を判定するようにプログラムされ得る。
【0156】
制御ユニット3はまた、ステップS21において、距離d12を判定するようにプログラムされてもよく、それによって、制御ユニット3が、第1と第2の屈折補正が最適な屈折補正からかけ離れていると考えられる場合よりも、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近いか、又はそれに近づいていると判定すると、その値はより小さくなる。例えば、距離d12は、1ジオプタの初期値に設定されてもよく、次いで、いったん制御ユニット3が、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近いか、又は最適な屈折補正に近づいていると判定すると、0.5ジオプタに設定され得る。
【0157】
ここでステップS22に関して、ここで説明される実施形態では、制御ユニット3は、
-制御ユニット3が、例えば上述の基準のうちの1つに従って、第1及び第2の屈折補正が最適な屈折補正に近いか又は近づいていると以前に判定した場合に、
-制御ユニットは、線分[P1P2]の内側部分の中間点が、前記第1の点P1及び第2の点P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いと結論付ける、
ようにプログラムされている。
【0158】
そして、制御ユニット3が、線分[P1P2]の内側部分のこの中間点が、前記第1及び第2の点P1、P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いと判定した場合、制御ユニット3は、上述の特徴i)又は特徴ii)に従って、すなわち、前記切り替えを表す軌道が中間点PIを回避するか、又はその近傍を高速で通過するように、第1の屈折補正からこの第2の屈折補正への切り替えの特徴を判定する。
【0159】
そして、制御ユニット3が、線分[P1P2]の内側部分の中間点が、前記第1及び第2の点P1、P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いことを判定していない限り、制御ユニット3は、特定の制約なしに前記切り替えの特徴を判定し、切り替えを表す軌道は、例えば直線的であって、何らかの必要ではない高速で実行され続ける。
【0160】
或いは、制御ユニット3は、線分[P1P2]の内側部分の中間点が、第1の点P1の座標、第2の点P2の座標、及び最適な屈折点P0Eの推定に基づいて、前記第1の点P1及び第2の点P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いか、或いはそこから遠いかを判定するようにプログラムされ得る。最適な屈折点のそのような推定P0Eは、例えば、対象者5の以前の又は予備的な屈折処方に対応する屈折度数状態を表す。この推定に基づいて、制御ユニット3は次いで、
-中間点PIと最適な屈折点P0Eの推定値との間の距離dPI、
-第1の点P1と最適な屈折点P0Eの推定値との間の距離dP1、及び
-第2の点P2と最適な屈折点P0Eの推定値との間の距離dP2、
の値を計算することができる。
【0161】
距離dPIがdP1及びdP2よりも小さい(或いは大きい)場合、制御ユニット3は、考慮される中間点が、前記第1の点P1及び第2の点P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近い(或いはそこから遠い)と判定する。
【0162】
上述の例示的なプロトコルでは、制御ユニットは、線分[P1P2]の内側部分の中間点が、切り替え中に、特徴i)又はii)の基準が満たされるように光学系2を制御する前に、前記第1及び第2の点P1、P2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いか、或いはそこから遠いかをテストするようにプログラムされている。
【0163】
しかしながら、他の実施形態では、制御ユニット3は、任意の条件に関係なく、すなわち常に、上述の特徴i)又は特徴ii)に従って、第1の屈折補正から第2の屈折補正への切り替えの特徴を体系的に判定するようにプログラムされ得る。
【0164】
この場合、光学系2が第1の屈折補正から第2の屈折補正に切り替わるたびに(したがって、とりわけ、線分の内側部分に位置する中間点が、第1及び第2の点P1及びP2のそれぞれよりも最適な屈折点P0に近いか又は遠い状況において)、特徴i)又は特徴ii)に対応する条件が満たされる。したがって、これらの最後の実施形態では、任意の条件に関係なく、ステップS23が実行されるたびに、特徴i)又は特徴ii)に対応する条件が満たされる。
【0165】
そのうえ、変動限界速度sLの判定、又は距離d12の判定のような、ステップS21又はS22において実行されるいくつかの動作が、これらのステップが実行されるたびではなく、一度だけ実行され得る。
【符号の説明】
【0166】
2 光学系
3 制御ユニット
4 眼
5 対象者
6 光線
7 ターゲットオブジェクト