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特許7500652再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法
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  • 特許-再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/52 20060101AFI20240610BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20240610BHJP
   C07C 67/56 20060101ALI20240610BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20240610BHJP
   C07C 67/54 20060101ALI20240610BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20240610BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20240610BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240610BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240610BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240610BHJP
   B01D 15/02 20060101ALI20240610BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20240610BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20240610BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
C07C67/52
C07C69/82 B
C07C67/56
C07C67/03
C07C67/54
C08J11/16
C08J11/24
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01D15/00 M
B01D15/02 102
C08G63/91
C08G63/183
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022082777
(22)【出願日】2022-05-20
(65)【公開番号】P2023041608
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】110133988
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 章鑑
(72)【発明者】
【氏名】曾 郁迪
(72)【発明者】
【氏名】陳 政▲勳▼
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088096(JP,A)
【文献】特開2020-176258(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109535478(CN,A)
【文献】特開2000-053802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する工程と、
化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、
蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、
前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成し、活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着するによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する吸着工程と、
前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含み、
前記吸着工程において、前記活性炭材料のpH値(pH value)は、4~7であり、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET):水(重量比)は、1:3~1:20であり、前記水相液体が70℃~150℃の吸着温度に加熱されることで、前記活性炭材料で前記吸着温度において前記不純物を吸着する、ことを特徴とする再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項2】
前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有し、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率は85%以上である、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項3】
前記解重合工程において、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液は、金属触媒(metal catalyst)である解重合触媒の存在で、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項4】
前記解重合工程において、前記化学解重合液が180℃~260℃の解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う、請求項3に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項5】
前記蒸発工程において、前記解重合物が150℃~250℃の蒸発温度に加熱されることで、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留される、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項6】
前記吸着工程において、前記活性炭材料の比表面積は、400m/g~4,000m/gである、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項7】
前記吸着工程において、前記活性炭材料の細孔容量(micropore volume)は、0.20ml/g~2.00ml/gである、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項8】
前記吸着工程において、前記活性炭材料:前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)(重量比)は、1:10~1:200である、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項9】
前記結晶工程において、前記水相液体を前記吸着温度から5℃~25℃の結晶温度に冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出される、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル材料を回収する方法に関し、特に、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、ポリエステル織物(PET fabric)の化学的再生法では、主に化学解重合液(例えば、エチレングリコール)を用いてポリエステル織物に化学解重合を行うことで、解重合物を形成する。また、当該解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate,BHET)を含む。しかし、前記化学的再生法の過程において、複雑な精製工程を行う必要がある。即ち、ポリエステル織物に元々存在した染料などの不純物を除去した後に、BHETを再重合して、高品質の再生ポリエステル粒子(r-PET)を形成する。
【0003】
上述したBHETの精製プロセスにおいて、従来の精製方法では、活性炭材料又はイオン交換樹脂を用いて、エチレングリコール(EG)を含むBHET粗生成物における染料などの不純物を吸着するか、若しくは、蒸留法によってBHETを分離する。
【0004】
しかしながら、前記2つの精製方法はいずれも、BHET回収品質(例えば、色合いが不良)が不良で回収のコストが高いとの欠点を有する。
【0005】
特許文献1には、ポリエステル織物の解重合法が開示されているが、前記解重合法において、染料などの不純物を除去すると共に、触媒を回収することができるが、BHETを精製する際に複雑な精製工程を行う必要があるため、BHETの回収率が低くなると共に、BHETの回収品質が不良である。
【0006】
特許文献2には、ポリエステル織物の解重合法が開示されているが、前記解重合法において、複雑な精製工程を行う必要があるため、材料の回収のコストが高すぎると共に、BHETの回収品質が不良である。
【0007】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9,255,194号明細書
【文献】中国特許第100,344,604号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、再生ビス
(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供する。再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する工程と、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成し、活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着するによって、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する吸着工程と、前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含む。
【0011】
好ましくは、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有する。また、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率は85%以上である。
【0012】
好ましくは、前記解重合工程において、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液は、金属触媒(metal catalyst)である解重合触媒の存在で、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。
【0013】
好ましくは、前記解重合工程において、前記化学解重合液が190℃~260℃の解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。
【0014】
好ましくは、前記蒸発工程において、前記解重合物が150℃~250℃の蒸発温度に加熱されることで、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留される。
【0015】
好ましくは、前記吸着工程において、前記活性炭材料の比表面積は、400m/g~4,000m/gであり、前記活性炭材料のpH値(pH value)は、4~7である。
【0016】
好ましくは、前記吸着工程において、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET):水(重量比)は、1:3~1:20である。
【0017】
好ましくは、前記吸着工程において、前記活性炭材料:前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)(重量比)は、1:10~1:200である。
【0018】
好ましくは、前記吸着工程において、前記水相液体が70℃~150℃の吸着温度に加熱されることで、前記活性炭材料で前記吸着温度において前記不純物を吸着する。
【0019】
好ましくは、前記結晶工程において、前記水相液体を前記吸着温度から結晶温度に冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出され、なかでも、前記結晶温度は、5℃~25℃であり、即ち、終了温度は、5℃~25℃である。
【0020】
好ましくは、前記吸着工程において、前記吸着温度は、80℃~130℃である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有利な効果として、本発明に係る再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、「化学解重合液で再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、化学解重合液及び不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、水と前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート及び前記不純物とを混合させることで水相液体を形成し、活性炭材料を水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記不純物を吸着するによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの前記水相液体での純度を向上する吸着工程と、前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含む」といった技術特徴により、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質及び回収率を向上する。なお、本発明の実施形態に係る方法は、コストが低いとの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0024】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0025】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0026】
[再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法]
通常、ポリエステル織物には、染料及び撥水剤などの不純物が付いている。ポリエステル織物を回収するために、従来の技術において、主に化学解重合液(例えば、エチレングリコール)を用いてポリエステル織物を化学解重合することで、解重合物を形成する。また、当該解重合物は主に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl)terephthalate,BHET)を含む。
【0027】
なお、BHETを精製するために、従来の精製方法では、活性炭又はイオン交換樹脂を用いて、エチレングリコール(EG)を含むBHET粗生成物における染料などの不純物を吸着した後に、水を入れることで、BHET結晶を析出させる。しかしながら、このよ
うな精製方法で得たBHETの色合い及び品質が不良であり(L値の最大値が約80であり、a値は約-4~4であり、b値は約-6~6である)、また、BHETの最高の回収率は、約80%である。
【0028】
もう1つの従来の精製方法は、3回の蒸留法によってBHETを分離する。しかしながら、このような精製方法は、3つの薄膜蒸発器を増加する必要となるため、投資設備のコストが高すぎると共に、BHETの回収率が(約65%のみ)それほど高くない。
【0029】
上記の技術的課題を解決するために、図1に示すように、本発明の実施形態において、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率を向上する方法を提供する。当該方法は、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質及び回収率を効果的に向上すると共に、コストが低いとの利点を有する。なお、前記方法は、工程S110、工程S120、工程S130、工程S140及び工程S150を含む。説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0030】
前記工程S110は、再生すべきポリエステル織物(recycled polyester fabric)を提供する。また、前記再生すべきポリエステル織物に不純物(impurities)を付けている。なかでも、前記不純物は、例えば染料(dye)又は撥水剤(water repellent)を含むが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0031】
例えば、前記再生すべきポリエステル織物は、染料で染色によって、色(例えば、黒色、赤色、青色…など)を与える。なお、前記再生すべきポリエステル織物は例えば、撥水剤処理によって、撥水性が与えられる。
【0032】
前記染料は例えば、天然染料及び合成染料の少なくとも1つであってもよく、若しくは、前記染料は例えば、物理染料及び化学染料の少なくとも1つであってもよい。
【0033】
なお、前記撥水剤は、ポリマーネットワーク架橋構造を有し、また、前記撥水剤は例えば、ケイ素(Si)を含む撥水剤、フッ素(F)を含む撥水剤、フッ素とケイ素を含む撥水剤、又は水性ポリウレタン(PU)撥水剤であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、前記再生すべきポリエステル織物は、染色によって、0超え30未満のL値を有する。即ち、前記再生すべきポリエステル織物は、比較的に深い色を有するが、本発明はこれに制限されるものではない。説明すべきことは、前記L値は、Lab色空間(Lab color space)における明度(若しくは色の白色度)を示すパラメータである。
【0035】
前記工程120は、解重合工程(de-polymerization operation)を行うことを含む。前記解重合工程は、化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、解重合物を形成することを含む。なかでも、前記解重合物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis-2-hydroxylethyl terephthalate,BHET)、オリゴマー(oligomer)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む。
【0036】
より具体的に説明すると、前記化学解重合液は例えば、エチレングリコール(ethylene glycol,EG)であってもよい。また、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う方法として、例えば、前記再生すべきポリエステル織物がビス(2
-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を主に含む解重合物に解重合される、エチレングリコールの解重合法が挙げられる。なお、前記解重合物は、ポリエステル織物の解重合で形成されたオリゴマー(oligomer)、前記解重合に用いる化学解重合液(例えば、エチレングリコール)及び再生すべきポリエステル織物に元々存在する不純物を更に含む。
【0037】
特筆すべきことは、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)は、テレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)の中間体である。なお、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、ポリエステル(PET)を合成するための原料として用いられる。また、他のモノマーと共に、ポリエステル共重合体を形成することができる。
【0038】
本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液は、解重合触媒(de-polymerization catalyst)の存在で、再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。なかでも、前記解重合触媒として、例えば、金属触媒(metal catalyst)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。特筆すべきことは、前記解重合触媒は、化学解重合液でポリエステル織物に化学解重合を行う活性化エネルギーを低減させるという役割を果たせる。換言すると、前記解重合触媒は、化学解重合液の再生すべきポリエステル織物に対する化学解重合の反応速度を向上させることができる。
【0039】
本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、酢酸亜鉛(zinc acetate)、酢酸鉛(lead acetate)、酢酸カドミウム(cadmium
acetate)、酢酸カルシウム(calcium acetate)、酢酸バリウム(barium acetate)、酢酸ナトリウム(sodium acetate)、水酸化リチウム(lithium hydroxide)、酢酸水銀(mercury acetate)、酢酸銅(copper acetate)、及び酢酸鉄(iron acetate)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0040】
若しくは、本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、有機チタン系金属触媒(organo titanium metal catalyst)であってもよい。若しくは、本発明の一つの実施形態において、前記金属触媒は例えば、イオン液体触媒(ionic liquid catalyst)であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0041】
本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液は、解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う。なかでも、前記解重合温度は、180℃~260℃であることが好ましく、190℃~240℃であることが特に好ましい。前記解重合温度において、前記化学解重合液で再生すべきポリエステル織物に行う化学解重合の効率は効果的に向上すると共に、前記金属触媒の作用は、触媒の作用をより顕著に発揮する。
【0042】
本発明の一つの実施形態において、前記化学解重合液は、再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う解重合圧力は、1.0bar~3.0barである。また、前記化学解重合液で再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う解重合時間は、1.0時間~8.0時間である。
【0043】
前記工程S130は、蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)と前記化学解重合液とを
分離する、蒸発工程(evaporation operation)を行うことを含む。
【0044】
より具体的に説明すると、前記蒸発工程において、前記解重合物が蒸発温度に加熱されることで、前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留される。なかでも、前記化学解重合液はエチレングリコール(EG)である。なお、前記蒸発温度は、150℃~250℃であることが好ましく、160℃~220℃であることが特に好ましい。
【0045】
特筆すべきことは、前記解重合工程(工程S120)で形成された解重合物において、前記化学解重合液の沸点は通常、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の沸点より低い。具体的に説明すると、前記化学解重合液の沸点は、約180℃~220℃であり、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の沸点は、約380℃~420℃であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
このように、前記蒸発工程において、混合液体における各成分の沸点が異なることによって、低い沸点を有する化学解重合液は、蒸発で前記解重合物から先に蒸留される。それによって、前記解重合物におけるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の純度は効果的に向上される。説明すべきことは、前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物は、蒸発工程を行った後でも解重合物に存在し、前記不純物は、この後の活性炭で吸着することで除去される必要がある。
【0047】
前記工程S140は、吸着工程(adsorption operation)を行うことを含む。前記吸着工程は、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで、水相液体(water phase liquid)を形成する。次に、前記吸着工程は、活性炭材料(activated carbon material)を前記水相液体に添加することで、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物(例えば、有機染料、着色物質など)を吸着することを更に含む。このように、前記不純物が解重合物から除去され、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の前記水相液体での純度を向上させることができる。
【0048】
特筆すべきことは、前記活性炭材料は、多孔質の炭素を含む物質であり、高度に発達した細孔構造を有する。前記活性炭材料の構成物質は、炭素以外に、少量の水素、窒素、酸素、及び灰を含む。前記活性炭材料の構造は、炭素によって形成される六環式化合物で堆積されてなる。六環式炭素の不規則な配置によって、活性炭材料に高い細孔容量及び高い表面積を有するという特性を有する。前記活性炭材料は、水及び有機溶剤に溶解されることはない。前記活性炭材料は、有機高分子物質(例えば、有機染料、着色物質など)に対して高い吸着力を有する。前記活性炭材料の吸着作用は、物理的な吸着力及び化学的な吸着力によって達成する。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、活性炭材料の不純物(例えば、有機染料)に対する吸着効率を向上するために、前記活性炭材料の比表面積(specific surface area)は、400m/g~4,000m/gであることが好ましく、800m/g~2,000m/gであることが特に好ましい。前記活性炭材料のpH値(pH value)は、4~7であり、5~6.5であることが特に好ましい。なお、前記活性炭材料の細孔容量(micropore volume)は、0.20ml/g~2.00ml/gであることが好ましく、0.80ml/g~1.50ml/gであることが特に好ましい。
【0050】
本発明の一つの実施形態において、活性炭材料の不純物(例えば、有機染料)に対する吸着効率を向上するために、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHE
T):水(重量比)は、1:3~1:20であることが好ましく、1:4~1:15であることが特に好ましい。
【0051】
即ち、前記水相液体において、水の重量は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の重量の3倍~20倍であることが好ましく、4倍~15倍であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、活性炭材料の不純物(例えば、有機染料)に対する吸着効率を向上するために、前記活性炭材料:前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)(重量比)は、1:10~1:200であることが好ましく、1:20~1:150であることが特に好ましい。
【0053】
即ち、前記水相液体において、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の重量は、活性炭材料の重量の10倍~200倍であることが好ましく、20倍~150倍であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0054】
本発明の一つの実施形態において、活性炭材料の不純物(例えば、有機染料)に対する吸着効率を向上するために、前記水相液体は、吸着温度に加熱されることで、前記活性炭材料は、前記吸着温度において前記不純物を吸着する。なかでも、前記吸着温度は、70℃~150℃であることが好ましく、80℃~130℃であることが特に好ましい。特筆すべきことは、本発明の発明者は、前記吸着温度が80℃~130℃である場合、活性炭材料の不純物に対する吸着効果がより優れることを意外に発見した。
【0055】
本発明の一つの実施形態において、前記吸着工程(工程S140)は、前記蒸発工程(工程S130)の後に行うことを更に限定する。即ち、前記解重合物における化学解重合液はまず、蒸発で蒸留されることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)と前記化学解重合液(例えば、EG)とを分離する。次に、前記不純物(例えば、有機染料)は、活性炭材料で水相液体から吸着されて除去される。それによって、その後の工程で得た再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、良好な品質及び色合いを有する。
【0056】
また、特筆すべきことは、その後の結晶工程に有利となるため、前記活性炭材料は先に、フィルターでろ過されることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)と、不純物を吸着した活性炭材料とを分離させる。
【0057】
前記工程S150は、前記水相液体を冷却させることによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)が、前記水相液体から結晶として析出されて、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(recycled BHET)を得る結晶工程(crystallization operation)を行うことを含む。
【0058】
本発明の一つの実施形態において、前記水相液体は、前記吸着温度(例えば、70℃~150℃)から結晶温度(crystallization temperature)に冷却されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)が前記水相液体から結晶として析出されることによって、固体の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(recycled BHET)を得る。なかでも、前記結晶温度は、5℃~25℃であることが好ましく、即ち、終了温度は、5℃~25℃である。
【0059】
例えば、前記水相液体は、150℃の吸着温度から25℃の結晶温度に冷却されるか、若しくは、前記水相液体は、100℃の吸着温度から5℃の結晶温度に冷却されることに
よって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を前記水相液体から結晶として析出させる。
【0060】
上述した構成により、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(recycled BHET)は、良好な色合い、回収品質及び回収率を有する。なお、本発明の実施形態に係る方法は、コストが低い利点を有する。具体的に説明すると、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有する。また、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率は85%以上である。
【0061】
説明すべきことは、Lab色空間(Lab color space)は補色空間の一種で、明度を意味する次元Lと補色次元のa及びbを持ち、CIE XYZ色空間の座標を非線形に圧縮したものに基づいている。
【実施例
【0062】
[実験データ及び測定結果]
本発明に係る再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、良好な回収効果及び色合いを改良する効果を有することを証明するために、以下の実施例1~3及び比較例1~3で説明する。
【0063】
実施例1:
10Lの三つ口フラスコに、1kgの白色PET織物、6kgのエチレングリコール及び20gの酢酸亜鉛触媒を入れた後に、190℃に加熱して6時間撹拌し、次に再加熱して反応液を沸騰状態(195℃~210℃)に維持させることで、過剰のEGを蒸留させ、反応液のEG残留量を5%未満にした。
【0064】
反応液を90℃に冷却した後に18kgの水を添加して、90℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、90℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に、ろ過で活性炭及び不純物を除去し、透明水溶液を5℃に冷却させてBHETを析出させ、BHETをろ過・乾燥した。
【0065】
BHETの品質について、L=92%、a=1.4、b=2.4であり、回収率が90.0%である。
【0066】
実施例2:
実施例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を90℃から95℃に変更した以外は、実施例1と同様にした。
【0067】
BHETの品質について、L=91%、a=1.5、b=2.6であり、回収率が89.4%である。
【0068】
実施例3:
実施例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を90℃から85℃に変更した以外は、実施例1と同様にした。BHETの品質について、L=91%、a=0.7、b=2.7であり、回収率が89.7%である。
【0069】
実施例4:
実施例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を90℃から125℃に変更した以外は、実施例1と同様にした。BHETの品質について、L=92%、a=0.1、b=1.3であり、回収率が86.2%である。
【0070】
比較例1:
10Lの三つ口フラスコに、1kgの白色PET織物、6kgのエチレングリコール及び20gの酢酸亜鉛触媒を入れた後に、190℃に加熱して6時間撹拌し、次に再加熱して反応液を沸騰状態(195℃~210℃)に維持させることで、過剰のEGを蒸留させ、反応液のEG残留量を5%未満にした。
【0071】
反応液を90℃に冷却した後に18kgの水を添加して、65℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、65℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に、ろ過で活性炭及び不純物を除去し、透明水溶液を5℃に冷却させてBHETを析出させ、BHETをろ過・乾燥した。
【0072】
BHETの品質について、L=78%、a=2.4、b=7.0であり、回収率が89.0%である。
【0073】
比較例2:
比較例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を65℃から55℃に変更した以外は、比較例1と同様にした。
【0074】
BHETの品質について、L=76%、a=2.2、b=7.4であり、回収率が60.0%である。
【0075】
比較例3:
比較例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を65℃から180℃に変更した以外は、比較例1と同様にした。
【0076】
BHETの品質について、L=92%、a=1.8、b=3.4であり、回収率が78.0%である。
【0077】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法は、「化学解重合液で再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、化学解重合液及び不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、水と前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート及び前記不純物とを混合させることで水相液体を形成し、活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記不純物を吸着するによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの前記水相液体での純度を向上する吸着工程と、前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含む」といった技術特徴により、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収品質及び回収率を向上する。なお、本発明の実施形態に係る方法は、コストが低いとの利点を有する。
【0078】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
図1