(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】印刷システム、工程管理装置、及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240610BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2022505058
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003972
(87)【国際公開番号】W WO2021176938
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020034611
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】飽田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 宰
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074110(JP,A)
【文献】特開2019-006073(JP,A)
【文献】特開2015-077788(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044562(JP,U)
【文献】特開2002-169608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の成果物を作成する印刷システムであって、
印刷対象の媒体に対して所定の前処理を行う前処理工程を実行する装置である前処理機と、
前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を実行する印刷装置と、
作成しようとする前記成果物の条件に基づいて前記前処理工程の条件を提案する工程管理装置とを備え
、
前記媒体は、布の媒体であり、
前記前処理工程は、複数種類の物質を含む前処理剤を前記媒体に対して塗布する工程であり、
前記工程管理装置は、前記成果物の条件と前記前処理工程の条件とが対応付けられた情報である条件対応情報に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定し、
前記条件対応情報において、前記前処理工程の条件として、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質のそれぞれについて前記媒体の単位重量に対して前記媒体に付与すべき量を示す物質重量割合を用いることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記工程管理装置は、前記条件対応情報において前記前処理工程の条件として前記成果物の条件と対応付けられている前記物質重量割合に基づき、前記媒体の重量に対して前記前処理剤を塗布する重量の割合であるピックアップ率と、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質の組成を示す情報である前処理剤配合情報とを提案することを特徴とする請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記工程管理装置は、前記媒体の重量に対して前記前処理剤を塗布する重量の割合であるピックアップ率の指定を
ユーザから受け付け、前記条件対応情報において前記前処理工程の条件として前記成果物の条件と対応付けられている前記物質重量割合と、前記ピックアップ率とに基づき、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質の組成を示す情報である前処理剤配合情報を提案することを特徴とする請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷工程が行われた後の前記媒体に対して所定の後処理を行う後処理工程を実行する後処理機を更に備え、
前記作成しようとする成果物の条件は、前記後処理工程が行われた後の前記媒体の状態を示す条件であることを特徴とする請求項
1から3のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項5】
印刷の成果物を作成する印刷システムであって、
印刷対象の媒体に対して所定の前処理を行う前処理工程を実行する装置である前処理機と、
前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を実行する印刷装置と、
作成しようとする前記成果物の条件に基づいて前記前処理工程の条件を提案する工程管理装置とを備え、
前記前処理工程は、前記媒体に対して前処理のコーティングを行うコーティング工程であり、
前記成果物の条件の少なくとも一部として、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果を用い、
前記工程管理装置は、提案すべき前記前処理工程の条件となる前記コーティング工程の条件を、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果に基づいて決定することを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
前記工程管理装置は、前記成果物の条件と前記前処理工程の条件とが対応付けられた情報である条件対応情報に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定することを特徴とする請求項
5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記媒体は、布の媒体であり、
前記前処理工程は、前処理剤を前記媒体に対して塗布する工程であることを特徴とする請求項
5又は6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記前処理工程は、複数種類の物質を含む前記前処理剤を前記媒体に対して塗布する工程であり、
前記工程管理装置は、前記前処理工程の条件の少なくとも一部として、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質の組成を示す情報である前処理剤配合情報を提案することを特徴とする請求項
7に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記工程管理装置は、前記前処理工程の条件の少なくとも一部として、前記前処理機において前記前処理剤の塗布を実行する動作を指定する情報である前処理装置条件情報を提案することを特徴とする請求項
7又は8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記工程管理装置は、前記成果物の条件の指定をユーザから受け付け、前記ユーザから受け付けた前記成果物の条件に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定することを特徴とする請求項
1から9のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項11】
前記工程管理装置は、前記成果物の条件について、複数のパラメータを前記ユーザに提示して、前記複数のパラメータの少なくともいずれかの値を変更する指示を前記ユーザから受け付けることで、前記成果物の条件の指定を前記ユーザから受け付け、前記ユーザから受け付けた前記成果物の条件に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定することを特徴とする請求項
10に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記工程管理装置は、前記媒体に対して実行する少なくともいずれかの工程の実行に要する費用の予測結果と対応付けて、前記前処理工程の条件を提案することを特徴とする請求項1から
11のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項13】
前記工程管理装置は、複数の前記前処理工程の条件をユーザに対して提案し、
かつ、それぞれの前記前処理工程の条件について、当該前処理工程の条件を採用した場合に得られる前記成果物の状態と対応付けて提案することを特徴とする請求項1から
12のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項14】
印刷の成果物を作成する印刷システムにおいて用いられる工程管理装置であって、
印刷対象の媒体に対して前処理機により所定の前処理を行う前処理工程の条件を作成しようとする前記成果物の条件に基づいて提案
し、
前記媒体は、布の媒体であり、
前記前処理工程は、複数種類の物質を含む前処理剤を前記媒体に対して塗布する工程であり、
前記成果物の条件と前記前処理工程の条件とが対応付けられた情報である条件対応情報に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定し、
前記条件対応情報において、前記前処理工程の条件として、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質のそれぞれについて前記媒体の単位重量に対して前記媒体に付与すべき量を示す物質重量割合を用いることを特徴とする工程管理装置。
【請求項15】
印刷の成果物を作成する印刷方法であって、
印刷対象の媒体に対して所定の前処理を行う前処理工程を前処理機に実行させ、
前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を印刷装置に実行させ、
かつ、作成しようとする前記成果物の条件に基づいて前記前処理工程の条件を工程管理装置に提案させて、提案される前記前処理工程の条件に基づき、前記前処理機に前記前処理工程を実行させ
、
前記媒体は、布の媒体であり、
前記前処理工程は、複数種類の物質を含む前処理剤を前記媒体に対して塗布する工程であり、
前記工程管理装置に、
前記成果物の条件と前記前処理工程の条件とが対応付けられた情報である条件対応情報に基づき、提案すべき前記前処理工程の条件を決定させ、
前記条件対応情報において、前記前処理工程の条件として、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質のそれぞれについて前記媒体の単位重量に対して前記媒体に付与すべき量を示す物質重量割合を使用させることを特徴とする印刷方法。
【請求項16】
印刷の成果物を作成する印刷システムにおいて用いられる工程管理装置であって、
印刷対象の媒体に対して前処理機により所定の前処理を行う前処理工程の条件を作成しようとする前記成果物の条件に基づいて提案し、
前記前処理工程は、前記媒体に対して前処理のコーティングを行うコーティング工程であり、
前記成果物の条件の少なくとも一部として、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果を用い、
提案すべき前記前処理工程の条件となる前記コーティング工程の条件を、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果に基づいて決定することを特徴とする工程管理装置。
【請求項17】
印刷の成果物を作成する印刷方法であって、
印刷対象の媒体に対して所定の前処理を行う前処理工程を前処理機に実行させ、
前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を印刷装置に実行させ、
かつ、作成しようとする前記成果物の条件に基づいて前記前処理工程の条件を工程管理装置に提案させて、提案される前記前処理工程の条件に基づき、前記前処理機に前記前処理工程を実行させ、
前記前処理工程は、前記媒体に対して前処理のコーティングを行うコーティング工程であり、
前記工程管理装置に、
前記成果物の条件の少なくとも一部として、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果を使用させ、
提案すべき前記前処理工程の条件となる前記コーティング工程の条件を、前記コーティング工程の実行に要する時間の予測結果に基づいて決定させることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、工程管理装置、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において印刷装置が用いられている。また、印刷装置で印刷を行う場合、印刷の目的や使用する媒体(メディア)等によっては、印刷装置において実行する印刷工程に加えて、媒体に対して所定の前処理工程等を行う場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷工程に加えて前処理工程等を行う場合、例えば、それぞれの工程の条件を指定する生産条件に従って、それぞれの工程の動作を順次行うことになる。そして、この場合、各工程の動作について、より適切に管理することが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷システム、制御装置、及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、印刷工程の他に前処理工程を行って成果物を作成する印刷システムに関し、各工程の管理をより適切に行う構成について、鋭意研究を行った。そして、先ず、印刷工程を含む複数の工程について、工程毎に個別に管理するのではなく、複数の工程をまとめて管理することを考えた。このように構成した場合、複数の工程に対して一貫して生産管理を行うことで、例えば各工程を異なる管理者が管理する場合等と比べ、各工程の管理をより適切に行うことができる。また、より具体的に、本願の発明者は、印刷工程の前に所定の前処理工程を行う場合について、作成しようとする成果物の条件(例えば、印刷物の性能)に基づいて前処理工程の条件を決定することを考えた。また、そのための構成として、前処理工程の条件の提案を行う工程管理装置を用いることを考えた。このように構成すれば、例えば、作成しようとする成果物の条件に合わせて、前処理工程の条件を適切に決定することができる。
【0006】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、印刷の成果物を作成する印刷システムであって、印刷対象の媒体に対して所定の前処理を行う前処理工程を実行する装置である前処理機と、前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を実行する印刷装置と、作成しようとする前記成果物の条件に基づいて前記前処理工程の条件を提案する工程管理装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成すれば、例えば、作成しようとする成果物の条件に合わせて、前処理工程の条件を適切に決定することができる。また、これにより、例えば、前処理工程をより適切に実行することができる。
【0008】
この構成において、媒体としては、例えば布の媒体を用いることが考えられる。この場合、前処理工程としては、例えば、前処理剤を媒体に対して塗布する工程を実行することが考えられる。また、印刷工程としては、例えば、布の媒体に対してインクを吐出する工程を実行することが考えられる。このように構成すれば、例えば、布の媒体への印刷を適切に行うことができる。
【0009】
また、前処理剤としては、例えば、複数種類の物質を含む前処理剤を用いることが考えられる。この場合、工程管理装置では、例えば、前処理工程の条件の少なくとも一部として、前処理剤が含む複数種類の物質の組成を示す情報である前処理剤配合情報を提案すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、前処理工程において用いる前処理剤の組成について、作成しようとする成果物の条件に合わせて適切に決定することができる。
【0010】
また、前処理工程では、例えば、装置の動作等を指定するパラメータを指定して、前処理機に前処理剤の塗布を行わせることが考えられる。この場合、工程管理装置では、前記前処理工程の条件として、例えば、このようなパラメータにどのような値を指定すればよいかを示す情報を提案することが考えられる。この場合、工程管理装置では、例えば、前処理工程の条件の少なくとも一部として、前処理機において前処理剤の塗布を実行する動作を指定する情報である前処理装置条件情報を提案すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、前処理機に前処理工程をより適切に実行させることができる。
【0011】
また、この構成において、工程管理装置は、例えば、成果物の条件と前処理工程の条件とが対応付けられた情報である条件対応情報に基づき、提案すべき前処理工程の条件を決定する。このように構成すれば、例えば、前処理工程の条件を適切に決定することができる。この場合、工程管理装置は、例えば、工程管理装置における記憶手段に格納している条件対応情報に基づき、前処理工程の条件の決定を行う。また、工程管理装置は、他のコンピュータの記憶手段等に格納されている条件対応情報に基づき、前処理工程の条件の決定を行ってもよい。条件対応情報としては、例えば、成果物の条件と前処理工程の条件とが対応付けることで予め作成したライブラリ等を用いることが考えられる。
【0012】
また、条件対応情報において、前処理工程の条件としては、例えば、前処理剤が含む各物質を媒体に付着させる量を示す情報を用いること等も考えられる。より具体的に、この場合、条件対応情報において、前処理工程の条件として、例えば、前処理剤が含む複数種類の物質のそれぞれについて媒体の単位重量に対して媒体に付与すべき重量を示す物質重量割合を用いる。このように構成した場合、例えば、前処理剤が含む各物質をどの程度媒体に付着させるかについて、より確実に指定することができる。また、これにより、例えば、前処理工程での前処理剤の塗布の仕方の違い等で生じる影響等が生じにくいように、より適切に前処理工程の条件を提案することが可能になる。
【0013】
また、前処理工程の条件として物質重量割合を用いる場合、例えば、媒体の重量に対して前処理剤を塗布する重量の割合であるピックアップ率に応じて前処理剤配合情報を決定することが考えられる。より具体的に、この場合、工程管理装置では、例えば、条件対応情報において前処理工程の条件として成果物の条件と対応付けられている物質重量割合に基づき、ピックアップ率と、前処理剤配合情報とを提案することが考えられる。このように構成すれば、例えば、前処理工程の条件として物質重量割合を用いる条件対応情報に基づき、前処理剤の具体的な組成を適切に決定することができる。
【0014】
また、ピックアップ率については、例えば、ユーザの指定によって決定すること等も考えられる。この場合、工程管理装置では、例えば、ピックアップ率の指定をユーザから受け付ける。そして、条件対応情報において前処理工程の条件として成果物の条件と対応付けられている物質重量割合と、ピックアップ率とに基づき、前処理剤配合情報を提案する。このように構成した場合も、例えば、前処理工程の条件として物質重量割合を用いる条件対応情報に基づき、前処理剤の具体的な組成を適切に決定することができる。
【0015】
また、この構成において、印刷システムは、例えば、後処理機を更に備えてもよい。この場合、後処理機については、例えば、印刷工程が行われた後の媒体に対して所定の後処理を行う後処理工程を実行する装置等と考えることができる。また、この場合、作成しようとする成果物の条件については、例えば、後処理工程が行われた後の媒体の状態を示す条件等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、後処理工程を行う場合において、前処理工程の条件をより適切に決定することができる。後処理工程としては、例えば、印刷工程においてインクが吐出された後の媒体を洗浄する洗浄工程を実行することが考えられる。また、後処理工程として、例えば、印刷工程において用いるインクを発色させる発色工程を行うこと等も考えられる。
【0016】
また、工程管理装置においては、作成しようとする成果物の条件以外の条件と対応付けて前処理工程の条件を提案してもよい。この場合、例えば、印刷システムにおいて実行する少なくともいずれかの工程にかかる時間や費用(コスト)等を前処理工程の条件と対応付けることが考えられる。より具体的に、この場合、工程管理装置は、例えば、媒体に対して実行する少なくともいずれかの工程の実行に要する時間の予測結果と対応付けて、前処理工程の条件を提案する。また、工程管理装置は、例えば、媒体に対して実行する少なくともいずれかの工程の実行に要する費用の予測結果と対応付けて、前処理工程の条件を提案してもよい。これらのように構成すれば、様々な条件を考慮して、前処理工程の条件をより適切に決定することができる。
【0017】
また、この構成において、工程管理装置は、例えば、成果物の条件の指定をユーザから受け付け、ユーザから受け付けた成果物の条件に基づき、提案すべき前処理工程の条件を決定する。このように構成すれば、例えば、ユーザが求める成果物の条件に合わせて、前処理工程の条件を適切に決定することができる。また、この場合、成果物の条件としては、例えば、成果物の性能等を示す複数のパラメータを用いることが考えられる。この場合、工程管理装置は、例えば、成果物の条件等について、複数のパラメータをユーザに提示する。そして、例えば複数のパラメータの少なくともいずれかの値を変更する指示をユーザから受け付けることで、成果物の条件等の指定をユーザから受け付ける。また、これにより、工程管理装置は、例えば、ユーザから受け付けた成果物の条件等に基づき、提案すべき前処理工程の条件を決定する。このように構成すれば、例えば、作成しようとする成果物の条件等に合わせて、前処理工程の条件を適切に決定することができる。
【0018】
また、工程管理装置では、例えば、複数の前処理条件の提案をユーザに対して行ってもよい。また、この場合、工程管理装置において、それぞれの前処理工程の条件について、例えば、その前処理工程の条件を採用した場合に得られる成果物の状態等と対応付けて提案することが考えられる。このように構成すれば、例えば、所望の状態で成果物を作成するための前処理工程の条件について、ユーザに適切に選択させることができる。
【0019】
また、本発明の構成について、例えば、物質重量割合を用いることに着目して考えることもできる。この場合、本発明について、例えば、印刷の成果物を作成する印刷システムであって、印刷対象の布の媒体に対して複数種類の物質を含む前処理剤を塗布する前処理を行う前処理工程を実行する装置である前処理機と、前記前処理機により前記前処理が行われた後の前記媒体に対してインクを吐出することで印刷を行う印刷工程を実行する印刷装置と、前記前処理工程の条件を管理する工程管理装置とを備え、前記工程管理装置は、前記前処理剤が含む前記複数種類の物質のそれぞれについて前記媒体の単位重量に対して前記媒体に付与すべき重量を示す物質重量割合に基づき、前記前処理工程の条件を管理することを特徴とすると考えることができる。
【0020】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する工程管理装置や印刷方法等を用いることも考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば、前処理工程の条件を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図である。
【
図2】コーティング条件の決定の仕方の一例を簡略化して示す図である。
【
図3】コーティング条件の決定時に制御装置12において用いるライブラリの具体例を示す図である。
【
図4】前処理剤組成について更に詳しく説明をする図である。
【
図5】前処理剤の組成を変更することで生じる変化の例について説明をする図である。
【
図6】前処理剤組成と対応付ける安全性に関する情報の一例を示す図である。
【
図7】コーティング条件の決定の仕方の変形例を簡略化して示す図である。
【
図8】ライブラリが格納する情報の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム10について説明をする図であり、印刷システム10の構成及び動作の一例を示す。以下に説明をする点を除き、本例の印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の特徴を有してよい。また、以下に説明をする点を除き、本例の印刷システム10を構成する各装置は、公知の印刷システムを構成する各装置と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0024】
本例において、印刷システム10は、少なくとも印刷を行うことで得られる印刷の成果物(以下、印刷物という)を作成(生産)するシステムであり、印刷工程の他に所定の前処理工程及び後処理工程を行うことで、印刷物を作成する。より具体的に、印刷システム10は、布の媒体(メディア)に対してインクジェット方式での印刷を行うことで、印刷物を作成する。この場合、作成される印刷物について、例えば、テキスタイルの印刷物等と考えることができる。また、このような印刷物を作成するために、印刷システム10は、制御装置12、コーティング機14、プリンタ16、蒸し機18、及び洗い機20を備える。
【0025】
制御装置12は、印刷システム10において印刷物を作成するための生産条件を管理するコンピュータである。また、本例において、制御装置12は、工程管理装置の一例であり、生産条件として、印刷システム10における各装置において実行する工程の条件等を管理する。また、制御装置12は、印刷システム10における各装置とネットワーク(例えば、LAN)を介して通信可能に接続されており、必要に応じて、データやコマンド等の入出力を行う。この場合、コマンドとしては、例えば、MDLコマンド等を好適に用いることができる。MDLコマンドとは、株式会社ミマキエンジニアリングが提供するMDLコマンドSDKに基づいて作成されるコマンドのことである。
【0026】
また、本例の印刷システム10において、制御装置12は、必要に応じて、例えば図中に示すように、印刷システム10の管理者や作業の担当者との間で、情報の入力又は出力を行う。この場合、印刷システム10の管理者については、例えば、印刷システム10において作成する印刷物の決定等を行う上位のユーザ等と考えることができる。また、作業の担当者については、例えば、印刷システム10における各装置に対する操作等を必要に応じて行う現場の担当者となるユーザ等と考えることができる。
【0027】
また、この場合、制御装置12は、例えば印刷システム10の管理者の指示に応じて、生産条件の設定を行う。管理者の指示に応じて生産条件の設定を行うとは、例えば、管理者又は管理者の指示を受けた他のユーザの操作等に応じて、管理者が指定する生産条件の設定を行うことである。また、本例において、印刷システム10は、生産条件として、使用する布、コーティング条件、印刷条件、蒸し条件、及び洗い条件等を設定する。この場合、使用する布とは、印刷システム10において媒体として使用する布のことである。また、コーティング条件、印刷条件、蒸し条件、及び洗い条件は、コーティング機14、プリンタ16、蒸し機18、及び洗い機20において実行する工程の条件である。また、以下において説明をするように、本例において、制御装置12は、必要に応じて、印刷システム10において実行する各工程の条件を決定する。そのため、管理者の指示に応じて設定する生産条件については、例えば、生産条件の初期値等と考えることもできる。また、生産条件については、例えば、目標とする印刷物(所望の成果物)を作成するための条件等と考えることもできる。また、各工程の条件を決定することは、例えば、生産条件を構成する各工程の条件として予め用意された複数の条件から、いずれかの条件を選択することであってよい。また、制御装置12は、いずれかの工程の条件について、他の工程の条件等に基づいて決定してもよい。この場合、制御装置12において、初期値として設定する生産条件としては、条件の決定対象となる工程以外の工程の条件を設定してもよい。また、より具体的に、本例の制御装置12においては、例えば、コーティング条件の提案等を行う。コーティング条件を提案する動作等については、後に詳しく説明をする。
【0028】
また、制御装置12は、生産条件に基づき、印刷システム10における各装置の動作を制御する。この場合、制御装置12は、例えば、MDLコマンド等のコマンドを用いて、各装置の動作を制御する。また、各装置において行う工程の条件等によっては、コマンド等での制御が難しい場合もある。この場合、制御装置12は、例えばモニタへの表示等により作業の担当者への指示を行うことで、担当者の人手を介して、各装置の動作を制御する。また、本例において、制御装置12については、例えば、印刷システム10における各装置で実行する生産工程に対する管理及び制御を行うジョブコントローラ等と考えることもできる。
【0029】
コーティング機14は、前処理機の一例であり、プリンタ16で実行する印刷工程において印刷対象の媒体として用いる布に対して所定の前処理工程を実行する。前処理機については、例えば、印刷物を作成するために印刷工程の前に所定の前処理工程を実行する装置等と考えることもできる。また、本例において、コーティング機14は、プリンタ16において印刷工程を実行する前の媒体に対し、前処理工程の一例であるコーティング工程を実行する。コーティング工程とは、例えば、布の媒体に対して所定の前処理剤を塗布する工程のことである。また、コーティング機14は、制御装置12に対して設定されている生産条件において指定されている布に対し、同じく生産条件において指定されているコーティング条件で、コーティング工程を実行する。また、これにより、コーティング機14は、生産条件に従って、コーティング済の布を作成する。この場合、コーティング機14は、例えば、前処理剤を印刷前の布に対して塗布することで、布にインクの受理層を作成する。また、前処理剤としては、公知の糊剤等の公知のコーティング剤を好適に用いることができる。
【0030】
また、本例のコーティング工程において、コーティング機14は、複数種類の物質を含む前処理剤を用いる。また、コーティング工程に関する生産条件であるコーティング条件としては、少なくとも前処理剤組成を示す条件を用いる。この場合、前処理剤組成については、例えば、前処理剤の成分を指定する前処理剤レシピ等と考えることができる。また、本例において、前処理剤組成は、前処理剤が含む複数種類の物質の組成を示す前処理剤配合情報の一例である。また、コーティング条件としては、例えば、装置条件等を更に示す条件を用いてもよい。この場合、コーティング工程における装置条件については、例えば、コーティング機14の動作を指定する条件等と考えることができる。また、本例において、コーティング条件に対しては、コーティング工程における予測時間及び予測ランニングコストが対応付けられる。この場合、予測時間及び予測ランニングコストについては、例えば、対応付けられる生産条件(コーティング条件等)で工程を実行した場合に要する時間及びコスト(費用コスト)の予測値等と考えることができる。また、予測時間については、例えば、媒体に対して実行する各工程の実行に要する時間の予測結果等と考えることもできる。予測ランニングコストについては、例えば、媒体に対して実行する各工程の実行に要する費用の予測結果等と考えることもできる。
【0031】
プリンタ16は、印刷工程を実行する印刷装置である。また、本例において、プリンタ16は、インクジェットプリンタであり、インクジェット方式でインクを吐出することで、コーティング機14により作成されたコーティング済の布に対し、印刷を行う。この場合、コーティング済の布については、例えば、前処理機により前処理が行われた後の媒体の一例等と考えることができる。また、プリンタ16において印刷を行うことについては、例えば、印刷すべき画像を示す印刷データにより指定される吐出位置へインクを吐出することで画像を描くこと等と考えることができる。本例において、プリンタ16は、例えば、制御装置12から印刷データを受け取り、制御装置12に対して設定されている生産条件において指定されている印刷条件で、印刷工程を実行する。また、これにより、制御装置12は、生産条件に従って、印刷物を作成する。また、より具体的に、本例において、プリンタ16は、布に対する捺染用のインクを用いて、印刷工程を実行する。また、捺染用のインクとして、印刷工程の後に発色処理を行うインクを用いる。このようなインクとしては、公知の捺染用のインク等を好適に用いることができる。
【0032】
また、本例において、印刷工程に関する印刷条件としては、インク種類及び装置条件等を示す条件を用いる。この場合、インク種類については、例えば、プリンタ16において印刷時に使用するインクを指定する条件等と考えることができる。また、装置条件については、例えば、プリンタ16において実行する印刷の動作を指定する条件等と考えることができる。また、本例において、印刷条件に対しては、印刷工程における予測時間及び予測ランニングコストが対応付けられる。
【0033】
尚、本例のように、捺染用のインクを用いてインクジェット方式で印刷を行う場合、印刷工程において、インクジェット捺染を行っていると考えることができる。また、本例の印刷工程において、プリンタ16は、最終的に印刷物となる媒体に対し、直接、捺染用のインクを吐出する。そのため、本例において実行する印刷工程については、例えば、ダイレクト捺染を行う工程等と考えることもできる。
【0034】
蒸し機18及び洗い機20は、印刷工程の後に行われる後処理工程を実行する後処理機の一例である。後処理機については、例えば、後処理工程を実行する装置等と考えることができる。後処理工程については、例えば、プリンタ16で印刷工程が行われた後に媒体に対して所定の後処理を行う工程等と考えることができる。また、より具体的に、蒸し機18は、発色処理機の一例であり、印刷工程を行った後の媒体に対して蒸し工程(スチーミング工程)を実行する。この場合、蒸し工程については、例えば、捺染用のインクが付着している布を高温の蒸気で蒸すことでインクを発色させる発色処理を行う工程等と考えることができる。また、この場合、蒸し機18においては、例えば、印刷工程において用いるインクに対する発色工程を後処理工程として実行していると考えることができる。また、蒸し機18において行う発色処理については、例えば、布の媒体に対して捺染を行う場合の発色処理等と考えることができる。また、この発色処理については、例えば、印刷後の色を定着させる処理等と考えることもできる。また、本例において、蒸し機18は、制御装置12に対して設定されている生産条件において指定されている蒸し条件で、蒸し工程を実行する。また、これにより、蒸し機18は、生産条件に従って、蒸し済の印刷物を作成する。また、本例において、蒸し条件としては、装置条件等を示す条件を用いる。この場合、蒸し工程における装置条件については、例えば、蒸し機18の動作を指定する条件等と考えることができる。また、本例において、蒸し条件に対しては、蒸し工程における予測時間及び予測ランニングコストが対応付けられる。
【0035】
洗い機20は、発色処理が行われた後の印刷物を洗浄する洗い処理の工程である洗浄工程を実行する装置である。洗浄工程については、例えば、印刷工程においてインクが吐出された後の媒体を洗浄する工程等と考えることができる。また、この場合、洗浄工程について、例えば、布に付着している余剰なインクや前処理剤等を落とす工程等と考えることもできる。本例において、洗い機20は、制御装置12に対して設定されている生産条件において指定されている洗い条件で、洗浄工程を実行する。また、これにより、洗い機20は、生産条件に従って、洗い済の印刷物を作成する。また、本例においては、洗い済の印刷物について、印刷システム10において作成する印刷物と考えることができる。また、本例において、洗い条件としては、装置条件等を示す条件を用いる。この場合、洗い条件における装置条件については、例えば、洗い機20の動作を指定する条件等と考えることができる。また、本例において、洗い条件に対しては、洗浄工程における予測時間及び予測ランニングコストが対応付けられる。
【0036】
以上のように、本例によれば、例えば、印刷物を適切に作成することができる。また、制御装置12において生産条件を管理することで、例えば、印刷物を作成するために印刷システム10の各装置で行う各工程について、制御装置12において集中的に管理することができる。また、この場合、印刷システム10の中で制御装置12により各工程の条件を管理することで、例えば、作業の担当者への指示等を適切に行うことができる。また、これにより、担当者の側では、例えば生産条件等を意識することなく、印刷物を作成するために必要となる作業(例えば、各装置に対する手動の操作等)を容易かつ適切に行うことができる。
【0037】
ここで、例えば、従来の構成において、前処理工程、印刷工程、及び後処理工程等の複数の工程を経て印刷物を作成する場合、通常、各工程について、異なる拠点で、独立して行う。また、各工程の条件についても、個別に管理を行う。また、従来の構成では、各工程において、通常、作業の担当者の熟練したスキル等に依存して作業を行うことが多くなる。特に、前処理工程や後処理工程については、担当者の熟練したスキルや個人的に蓄積されたノウハウ等への依存が大きくなる。また、各工程に対して熟練したスキル等が必要になるため、従来の構成において、前処理工程や後処理工程については、通常、専門の業者への外注を行う。そのため、従来、印刷工程を行う事業者等において、前処理工程及び後処理工程も自社で行う内製化等を行うことは難しかった。また、工程毎に様々な条件やスキルが必要になるため、例えば複数の工程の作業を行える人材を育てようとすると、長い時間や多くのコストがかかることになる。そのため、従来の構成の延長で考えた場合、仮に、前処理工程及び後処理工程について内製化をしたとしても、前処理工程や後処理工程についての人への依存(作業の担当者の個人的な資質への依存)が大きくなることで、例えば、品質にムラが生じやすくなることが考えられる。
【0038】
これに対し、本例においては、制御装置12において生産条件を管理することで、例えば、作業の担当者の熟練したスキル等に依存せずに、各工程の条件を設定することが可能になる。より具体的に、本例においては、生産時の重要な事項等について、制御装置12のモニタへの表示等により、作業の担当者に的確に指示することが可能になる。また、この場合、従来の構成では担当者が個人的に記憶していた各工程でのノウハウや注意点について、人ではなく、制御装置12により管理することが可能になる。そのため、本例によれば、例えば、熟練したスキル等を有さない担当者であっても、各工程で用いる装置の操作等をより適切に行うことが可能になる。また、これにより、例えば、人材育成等に手間や時間をかけることなく、安定して印刷物を生産することが可能になる。また、この場合、作業の担当者が変わっても各工程を適切に実行することが可能になることで、例えば、一部の工程の担当者が不在になることで全体の生産動作が止まること等を防ぐことも可能になる。
【0039】
また、本例においては、例えば、各工程の条件について、制御装置12から各装置へ、ネットワークを介して送信(例えば、自動送信)すること等が考えられる。より具体的に、この場合、例えば消耗品の補充や物品の運搬等のような人手が必要となる作業のみを担当者が行い、装置条件の設定等については、制御装置12により直接的に各装置を制御することが考えられる。このように構成すれば、例えば、工程の自動化やヒューマンエラーの削減等を適切に行うことができる。また、例えば、一つの工程での作業を複数の担当者が交代で行う場合等にも、口頭指示等による問い合わせや確認等を行うことなく、印刷物の生産を適切に行うことができる。また、本例においては、例えば、印刷物の品質に影響する様々な条件(例えば、前処理工程や後処理工程での細かい条件等)を自動的に設定することで、印刷物の品質を安定化すること等も可能になる。また、これにより、例えば、作業の担当者の個人的なスキル等に依存することなく前処理工程や後処理工程を行うことが可能になる。
【0040】
また、印刷システム10を構成する各装置については、必ずしも同じ場所(拠点、工場等)に置くのではなく、離れた場所に置いて運用してもよい。この場合、例えば、前処理工程、印刷工程、及び後処理工程について、互いに異なる場所で実行すること等が考えられる。また、一部の複数の工程(例えば、後処理工程及び印刷工程)を同一の場所で行い、他の工程(例えば、前処理工程)を他の場所(例えば、遠隔地)で行うこと等も考えられる。このように構成すれば、例えば、必要に応じて、印刷システム10の規模をより容易に大規模化することができる。また、このような場合も、制御装置12を用いて各工程の条件等を管理することで、印刷物を適切に作成することができる。
【0041】
また、上記においても説明をしたように、本例において、制御装置12は、例えば印刷システム10の管理者の指示に応じて、生産条件の設定を行う。また、制御装置12は、必要に応じて、印刷システム10において実行する各工程の条件の調整を行う。より具体的に、本例において、制御装置12は、例えば、印刷システム10において作成しようとする印刷物の条件等に基づき、コーティング条件を決定する。この場合、印刷物の条件とは、少なくとも印刷工程を行った後の媒体の状態を示す条件である。本例において、印刷物の条件は、印刷の成果物の条件の一例である。また、コーティング条件は、前処理工程の条件の一例である。
【0042】
続いて、印刷システム10において行う各工程の条件の管理の例として、コーティング条件を決定する動作等について、詳しく説明する。
図2は、コーティング条件の決定の仕方の一例を簡略化して示す図である。本例において、制御装置12は、コーティング条件の決定に用いる様々な情報を格納しているライブラリを用いて、コーティング条件を決定する。この場合、コーティング条件を決定するとは、例えば、実際に用いるコーティング条件の候補となるコーティング条件を決定することであってもよい。また、候補となるコーティング条件を決定することについては、例えば、コーティング条件を提案すること等と考えることもできる。また、本例において、このライブラリは、印刷物の条件と前処理工程の条件とが対応付けられた条件対応情報の一例である。また、このライブラリについては、例えば、印刷システム10において実行する工程の管理に用いるライブラリ等と考えることもできる。
【0043】
また、本例において、制御装置12は、例えば、制御装置12の記憶手段(HDD等)に格納しているライブラリを用いて、コーティング条件の決定を行う。制御装置12は、例えば、他のコンピュータの記憶手段等に格納されているライブラリを用いて、コーティング条件の決定を行ってもよい。この場合、制御装置12は、他のコンピュータと通信することで、他のコンピュータの記憶手段に格納されているライブラリを使用する。また、ライブラリを格納する他のコンピュータは、印刷システム10の外部に設置されていてもよい。
【0044】
また、本例において、ライブラリとしては、例えば、コーティング条件の少なくとも一部である前処理剤組成について、印刷物の性能等を示す複数のパラメータと対応付けた情報を用いる。より具体的に、図中に示すライブラリの場合、情報1~5等として区別して示すように、前処理剤組成が互いに異なる複数種類の前処理剤について、それぞれの前処理剤の組成と、性能に関するパラメータとが対応付けられている。また、この場合、前処理剤組成については、図中で薬剤A~D等として区別して示す複数種類の物質及び水からなる前処理剤について、組成を示している。また、性能に関するパラメータとして、図中で性能A~D等として区別して示すように、複数種類の性能について、性能の高低等を数値で示すパラメータを用いている。
【0045】
また、ライブラリにおいて、前処理剤組成と対応付ける性能としては、その前処理剤組成で作成した前処理剤を用いる場合に得られる印刷物の性能を示す印刷物性能情報等を用いることが考えられる。この場合、性能に関するパラメータについて、例えば、所望の印刷物の条件を示すパラメータ等と考えることもできる。所望の印刷物の条件については、例えば、印刷システム10において作成しようとする印刷物の条件等と考えることができる。また、ライブラリにおいては、前処理剤組成に対し、印刷システム10における各装置の装置条件等と更に対応付けてもよい。この場合、例えば、コーティング工程を実行するコーティング機14(
図1参照)の装置条件等を更に対応付けること等が考えられる。また、前処理剤組成に対し、例えば、印刷システム10における各装置で実行する各工程に関する予測時間や予測ランニングコスト等を更に対応付けてもよい。これらの場合、ライブラリについて、例えば、これらの情報を複合して記録した情報等と考えることができる。
【0046】
また、コーティング条件の決定時において、制御装置12は、これらの性能に対する所望の状態等をユーザから受け付ける。より具体的に、この場合、制御装置12は、例えば、モニタへの表示等により、印刷システム10の管理者又は担当者等のユーザに対し、複数種類の性能のそれぞれにそれぞれが対応付けられる複数のパラメータを提示する。この場合、ユーザに提示するパラメータについては、例えば、印刷物の性能等に対応する入力用のパラメータ等と考えることができる。また、これらの入力用のパラメータについては、例えば、ライブラリにおいて用いられている性能に関するパラメータと同様にして性能を示す入力用のパラメータ等と考えることができる。また、制御装置12は、更に、制御装置12における入出力手段等を介して、複数のパラメータ(入力用のパラメータ)の少なくともいずれかの値を変更する指示をユーザから受け付ける。また、これにより、制御装置12は、例えば、所望の印刷物の条件等の指定をユーザから受け付ける。
【0047】
また、所望の印刷物の条件等の指定をユーザから受け付けた後、制御装置12は、ライブラリに対して検索を行うことで、所望の印刷物の条件等に適合する情報を絞り込む。そして、例えば絞り込んだ情報をモニタへ表示すること等により、所望の印刷物の条件等に適合する情報の候補を提案する。この場合、所望の印刷物の条件等に適合する情報の候補については、例えば、制御装置12が提案するコーティング条件の例等と考えることができる。また、所望の印刷物の条件等に適合する情報については、例えば、ライブラリに格納されている情報の中でユーザにより指定される所望の印刷物の条件等に所定の精度で適合する情報等と考えることができる。また、本例において、制御装置12は、例えば図中に示すように、所望の印刷物の条件等に適合する情報の候補として、複数の情報をユーザへ提案する。また、この場合において、図中に示す情報3、5のような各情報について、前処理剤組成と性能に関するパラメータの値とを対応付けて示すことで、それぞれの前処理剤組成について、その前処理剤組成を採用した場合に得られる印刷物の状態等と対応付けて提案する。
【0048】
また、情報の候補をユーザに提案した後、制御装置12は、候補の中からいずれかの情報(最適情報)を選択する指示をユーザから受け付ける。このように構成すれば、例えば、所望の状態で印刷物を作成するためのコーティング条件について、ユーザに適切に選択させることができる。また、この場合、制御装置12は、例えばモニタへの表示等により、ユーザにより選択された情報(選択情報)をユーザに通知する。本例によれば、例えば、ユーザへのコーティング条件の提案等を適切に行うことができる。また、この場合、コーティング機14では、例えば、制御装置12により提案されたコーティング条件(選択情報)を反映させて、コーティング工程を実行する。また、より具体的に、この場合、コーティング工程において、提案された前処理剤組成に従って作成される前処理剤を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、所望の状態の印刷物を適切に作成することができる。
【0049】
ここで、上記においては、説明の簡略化のため、ライブラリを用いて決定するコーティング条件について、主に、前処理剤組成に着目をして、説明をした。しかし、上記においても説明をしたように、コーティング条件としては、コーティング工程における装置条件等を考えることもできる。そのため、制御装置12においては、コーティング条件として、装置条件の提案を更に行ってもよい。この場合、ライブラリとして、装置条件に関するパラメータを更に用いた情報を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、図中に示す性能A~D等のいずれかに対応するパラメータとして、装置条件と対応付けられた性能を示すパラメータを用いてもよい。
【0050】
また、より具体的に、コーティング工程においては、例えば、コーティング機14の動作等を指定するパラメータを指定して、コーティング機14に前処理剤の塗布を行わせることが考えられる。この場合、制御装置12では、コーティング条件の少なくとも一部として、例えば、このようなパラメータにどのような値を指定すればよいかを示す情報を提案することが考えられる。このように構成すれば、例えば、制御装置12により、前処理工程の条件の少なくとも一部として、コーティング機14の装置条件を適切に提案することができる。また、この場合、コーティング機14の装置条件は、前処理装置条件情報の一例である。前処理装置条件情報については、例えば、コーティング機14において前処理剤の塗布を実行する動作を指定する情報等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、コーティング機14にコーティング工程をより適切に実行させることができる。
【0051】
また、コーティング条件として装置条件の提案を制御装置12が行う場合、例えばモニタへの表示等により制御装置12から提案された装置条件に基づき、ユーザがコーティング機14を操作することで、装置条件に従ったコーティング工程をコーティング機14に実行させることが考えられる。また、この場合、コーティング機14の動作について、例えば、ユーザにより設定されるコーティング工程の条件に従ってコーティング工程を実行すると考えることができる。このように構成すれば、例えば、制御装置12が提案するコーティング条件に基づき、コーティング機14にコーティング工程を適切に実行させることができる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例において、制御装置12は、コーティング条件に関し、複数の情報の候補をユーザへ提案して、候補の中からいずれかの情報をユーザに選択させることで、コーティング条件の決定を行う。これに対し、制御装置12の動作の変形例においては、例えば、複数の候補からの選択をユーザに行わせることなく、1つの候補のみをユーザに提案してもよい。また、コーティング条件として提案される装置条件については、例えば、ユーザの手を介さずに、制御装置12からコーティング機14へ直接提案すること等も考えられる。この場合、制御装置12は、例えば、ネットワーク等を介して装置条件に対応する設定をコーティング機14に対して行うことで、コーティング条件の提案を行う。また、この場合、コーティング機14は、例えば、制御装置12により設定されるコーティング条件に従って、コーティング工程を実行する。
【0053】
また、上記においても説明をしたように、本例において、制御装置12は、例えば、所望の印刷物の条件等の指定をユーザから受け付ける。そのため、制御装置12の動作については、例えば、ユーザから受け付ける印刷物の条件に基づき、提案すべきコーティング条件を決定していると考えることができる。また、制御装置12においては、例えば、所望の印刷物の条件以外の条件を更に考慮できるように、コーティング条件の提案や決定を行ってもよい。この場合、例えば、印刷システム10において実行する少なくともいずれかの工程にかかる時間や費用(コスト)等と対応付けてコーティング条件を提案すること等が考えられる。より具体的に、この場合、制御装置12は、例えば、媒体に対して実行する少なくともいずれかの工程に関する予測時間及び予測ランニングコストの少なくともいずれかと対応付けて、コーティング条件の提案を行う。各工程に関する予測時間及び予測ランニングコストについては、例えば、提案するコーティング条件を用いた場合の予測時間及び予測ランニングコスト等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、様々な条件を考慮可能にすることで、コーティング条件をより適切に決定することができる。また、この場合、各工程の実行に要する時間やコストについては、所望の性能として考慮すること等も考えられる。この場合、例えば、図中に示す性能A~D等のいずれかに対応するパラメータとして、各工程の実行に要する時間やコストに対応するパラメータを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な条件に合わせて、コーティング条件をより適切に決定することができる。
【0054】
また、このような様々な条件を考慮してコーティング条件を決定する場合、コーティング条件について、例えば、コーティング工程以外の工程の条件に基づいて決定していると考えることもできる。そのため、このようにしてコーティング条件を決定する動作については、例えば、いずれかの工程の条件を他の工程の条件等に基づいて決定する動作の一例等と考えることもできる。また、コーティング条件については、コーティング条件の一部に更に基づいて決定してもよい。この場合、コーティング条件の一部に基づいてコーティング条件を決定する動作については、例えば、コーティング条件を構成する一部の条件に関する指定をユーザから受け付けて、受け付けた情報に基づいてコーティング条件を構成する他の少なくとも一部の条件を決定する動作等と考えることができる。また、この場合、例えば、図中に示す性能A~D等のいずれかに対応するパラメータとして、コーティング条件の一部に対応するパラメータを用いることが考えられる。
【0055】
また、制御装置12においてコーティング条件を提案する動作については、例えば、工程の条件を検索する検索システムの動作等と考えることもできる。また、この場合、制御装置12の動作について、例えば、コーティング工程の担当者等のユーザが欲しい項目を検索システムに入力(インプット)することで、入力された情報に基づいてライブラリを検索して、候補となる前処理剤組成や印刷物性能情報等の候補を出力(アウトプット)していると考えることができる。また、この場合、欲しい項目については、例えば、印刷システム10において作成する印刷物の性能に関する希望や、印刷システム10における各工程の各動作に関する希望等を示す入力項目等と考えることができる。より具体的に、欲しい項目としては、例えば、印刷物の性能を向上させる希望、各装置の動作完了までの時間を短縮させる希望、又は、各装置のランニングコストを低減する希望等を示す項目を用いることが考えられる。また、ユーザに入力させる項目としては、例えば、追加で欲しい項目や低下させたくない項目等を更に用いてもよい。この場合、追加で欲しい項目については、例えば、低い優先度の希望に対応する項目等と考えることができる。また、低下させたくない項目については、例えば、少なくとも所定のレベル以上の性能を得たい項目等と考えることができる。このような項目を更に用いることで、例えば、ユーザが希望する条件に適合するコーティング条件の検索をより適切に行うことが可能になる。
【0056】
以上のように、本例によれば、例えば、コーティング条件の決定を容易かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、捺染に関するノウハウ等が少ない担当者がコーティング機14のユーザになる場合等にも、コーティング工程をより適切に実行することができる。また、これにより、例えば、印刷物の品質を一定に保つことや、印刷物の性能の調整を行うこと等をより容易に行うことが可能になる。また、この場合、ユーザの個人的な技術やノウハウ等に依存せずにコーティング条件の決定を行うことで、例えば、従来の方法でコーティング条件を決定する場合等と比べ、条件の調整の幅をより広い範囲に広げること等も可能になる。
【0057】
より具体的に、例えば、従来の方法でコーティング条件を決定する場合、実際に印刷物を作成し、その状態に基づいてコーティング条件の調整を行うことが考えられる。そして、この場合、印刷システム10において作成する様々な印刷物に合わせたコーティング条件を決定するためには、作成する印刷物が変わる度に確認及び調整が必要になり、多大な手間やコストを要することになる。また、この場合、作業の担当者等のユーザが印刷物の状態を確認することになるため、ユーザが個人的に有している技術やノウハウ等に対する依存が大きくなる。また、その結果、例えば、担当者によってコーティング条件の調整の仕方に差が生じ、印刷物の品質が不安定になること等も考えられる。これに対し、本例によれば、例えば、実際に印刷物の作成を行うことなく、コーティング条件を適切に決定することができる。また、この場合、例えば、作業の担当者が個人的に有している技術やノウハウ等に依存することなく前処理工程の条件を決定することで、作業の担当者が変わった場合等にも、より適切にコーティング条件を決定することができる。また、これにより、例えば、場所やユーザによらず、世界中どこでも誰でも、同じ品質の印刷物を作成することが可能になる。
【0058】
また、本例においては、コーティング条件の調整をより容易に行うことが可能になることで、例えば、従来の方法のように複数回の検討を行わなくても、コーティング条件を適切に決定することが可能になる。また、これにより、例えば、検討時に必要となる作業時間、媒体の費用、及び前処理剤の費用等を適切に低減することができる。また、本例においては、例えば上記において説明をしたように、各工程における予測時間や予測ランニングコスト等を考慮してコーティング条件を決定すること等も考えられる。そして、この場合、例えば、各装置の動作時間やランニングコスト等の管理をより容易かつ適切に行うこと等も可能になる。
【0059】
続いて、コーティング条件の決定の仕方等について、更に詳しく説明をする。
図3は、コーティング条件の決定時に制御装置12において用いるライブラリの具体例を示す図であり、ライブラリが格納する情報の一例を示す。また、
図3においては、ライブラリが格納する情報の少なくとも一部について、1~13の番号(#1~13)を付して区別して、13種類の情報を示している。また、図示した場合において、これらの情報のそれぞれは、前処理剤組成、コーティング工程の作業性、コーティング工程のコスト、及び印刷物の性能を対応付けた情報である。
【0060】
また、それぞれの情報において、前処理剤組成は、図中に示した各物質の組成比(重量組成比)を示している。コーティング工程の作業性及びコストは、同じ番号の情報に示されている前処理剤組成の前処理剤を用いる場合の作業性及びコストを示している。コーティング工程の作業性及びコストについては、例えば、制御装置12でのコーティング条件の提案時等に、前処理剤組成と対応付けてユーザに提示すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、コーティング条件の選択をユーザにより適切に行わせることができる。また、この場合、コーティング工程の作業性及びコストについては、例えば、前処理剤組成に対応する参考情報等と考えることができる。また、コーティング工程の作業性及びコストについては、例えば、コーティング工程の性能を示すと考えることもできる。この場合、制御装置12においてライブラリに対して行う検索時において、コーティング工程の作業性及びコストに対応する入力用のパラメータを用いること等も考えられる。また、コーティング工程の作業性としては、例えば図中に示すように、前処理剤の粘度、pH、及び溶解性を前処理剤組成に対応付けることが考えられる。この場合、前処理剤の溶解性については、例えば、前処理剤組成に示される組成の前処理剤において薬剤が完全に溶解するか否かを示すことが考えられる。また、コーティング工程のコストについては、例えば、前処理剤の単価を前処理剤組成に対応付けることが考えられる。
【0061】
また、図中に示す場合において、印刷物の性能としては、印刷濃度、色相(ガマットの広さ)、及び滲みに関する性能を、5段階評価により示している。また、印刷濃度としては、印刷に使用する各色のインクについて、表面濃度及び裏面濃度を示している。この場合、表面濃度及び裏面濃度は、印刷システム10において印刷物の作成が完了した時点での媒体の表面及び裏面におけるインクの濃度である。印刷システム10において印刷物の作成が完了した時点については、例えば、プリンタ16において印刷工程を実行した後、更に、蒸し機18及び洗い機20において後処理工程を実行した後の時点等と考えることができる。印刷物の性能としてこれらの情報を用いることにより、例えば、ライブラリに基づき、所望の印刷物を得るためのコーティング条件を適切に決定することができる。また、これにより、例えば、印刷システム10において、所望の印刷物を適切に作成することができる。
【0062】
また、ライブラリが格納する情報については、上記において説明をした情報に限らず、様々に変更が可能である。また、情報の管理の仕方等についても、様々に変更が可能である。より具体的に、前処理剤組成としては、例えば、より多様な物質を用いた組成を考えることもできる。また、前処理剤組成において用いる様々な物質について、例えば
図4に示すように、物質の機能や用途等に応じた分類を行って管理すること等も考えられる。
図4は、前処理剤組成について更に詳しく説明をする図であり、
図3に示す場合よりも多種類の物質を用いる場合について、物質の機能や用途等に応じた分類を行って管理する方法の一例を示す。
【0063】
前処理剤の成分としては、例えば、糊剤、pH調整剤、促染剤、保水剤、濃染剤(キレート剤)、及び還元防止剤のそれぞれとして機能する物質を用いることが考えられる。そして、この場合、前処理剤の成分として用いる物質について、例えば図中に大分類として示すように、糊剤、pH調整剤、促染剤、保水剤、濃染剤(キレート剤)、及び還元防止剤に分類して管理することが考えられる。また、この場合、大分類の少なくとも一部の項目について、更に中分類に分類して管理してもよい。例えば、図中に示す場合、糊剤について、中分類に分類して管理している。また、中分類として、天然糊、加工糊、半合成糊、及び合成糊に分類を行っている。また、前処理剤の成分として用いる具体的な物質としては、図中の小分類の欄に示すように、大分類又は中分類毎に対し、様々な具体的な物質を用いることが考えられる。
【0064】
前処理剤の成分としてこのような様々な物質を用いることにより、例えば、コーティング条件について、様々な条件をより適切に決定することができる。また、この場合、例えば図中に示すような段階的な分類を用いることで、前処理剤の成分について、物質の機能や用途等に応じて適切に分類することができる。また、これにより、例えばコーティング条件の決定時等に、様々な組成の前処理剤をより容易かつ適切に提案することが可能になる。
【0065】
ここで、コーティング工程の実行時には、例えば、決定したコーティング条件により指定される前処理剤組成に従い、前処理剤を作成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な組成の前処理剤を適切に用いることができる。また、前処理剤組成によっては、例えば、コーティング条件の決定後に前処理剤の作成を行うのでなく、予め作成されている前処理剤を用いてもよい。また、前処理剤の成分としては、図示した物質に限らず、他の物質を更に用いることも考えられる。
【0066】
また、コーティング条件を変更した場合、印刷システム10において実行する各工程や最終的に得られる印刷物の性能等について、様々な変化が生じることが考えられる。より具体的に、前処理剤の組成を変更した場合、例えば
図5に示すような様々な事項において、変化が生じることが考えられる。
図5は、前処理剤の組成を変更することで生じる変化の例について説明をする図であり、前処理剤の組成を変更することで各工程や印刷物の性能に生じる変化の例について、対応する変動パラメータの例を図示している。また、
図5においては、変動パラメータの例について、工程及び成果物性能の2つの区分に分けて図示をしている。この場合、工程の区分については、例えば、印刷システム10において実行する各工程に関連する区分等と考えることができる。
【0067】
また、
図5においては、工程の区分について、全体、前処理工程、印刷工程、蒸し工程、及び洗浄工程のそれぞれに対応する大分類に分けている。この場合、全体とは、印刷システム10において実行する全ての工程のことである。また、全体に対応する大分類については、更に、全体としてかかる時間、全体としてかかるコスト、及び全体としての安全性のそれぞれに対応する中分類に分けている。また、中分類の各項目に対し、図中に示す変動パラメータを対応付けている。また、前処理工程に対応する大分類については、更に、前処理剤及び装置条件のそれぞれに対応する中分類に分けている。そして、これらの中分類の各項目について、更に、図中に示す小分類の各項目に分けている。また、小分類の各項目に対し、図中に示す変動パラメータを対応付けている。印刷工程に対応する大分類については、更に、インク及び装置条件のそれぞれに対応する中分類に分けている。そして、これらの中分類の各項目について、更に、図中に示す小分類の各項目に分けている。また、小分類の各項目に対し、図中に示す変動パラメータを対応付けている。蒸し工程及び洗浄工程のそれぞれに対応する大分類については、装置条件の中分類のみを用いている。そして、中分類の各項目について、更に、図中に示す小分類の各項目に分けている。また、小分類の各項目に対し、図中に示す変動パラメータを対応付けている。
【0068】
また、成果物性能の区分については、例えば、印刷物の性能に関する区分等と考えることができる。図中に示す場合において、成果物性能の区分に対しては、図中に示す変動パラメータを対応付けている。
図5に図示した事項等から理解できるように、前処理剤の組成を変化させた場合、コーティング工程のみならず、その後に実行する各工程や印刷物の性能においても、様々な影響が生じることになる。そのため、前処理剤の組成を変更する場合には、このような様々な影響を考慮することが必要になる。これに対し、本例によれば、例えば、上記において説明をしたライブラリを用いてコーティング条件を決定することで、このような様々な影響を適切に考慮することができる。また、これにより、例えば、コーティング条件の決定を容易かつ適切に行うことができる。また、前処理剤の組成の変化により生じる影響については、例えば、前処理剤の組成の変化により生じる性能の変化等と考えることもできる。
【0069】
また、各項目と対応付けられる変動パラメータのうち、コスト及び時間の変動パラメータについては、例えば、あるコーティング条件を採用した場合に各項目に対応して必要となるコストや時間等を示すパラメータ等と考えることができる。安全性の変動パラメータについては、例えば、あるコーティング条件を採用した場合における所定の安全上の規制との関係を示すパラメータ等と考えることができる。また、成果物性能の区分に対応する変動パラメータについては、例えば、図中に示す各項目での評価結果を示すパラメータ等と考えることができる。
【0070】
また、コーティング条件の変更に伴って変化する事項としては、
図5に図示した事項以外の事項を考慮することも考えられる。また、
図5に図示した事項の少なくとも一部について、より詳細に考慮すること等も考えられる。この場合、例えば、前処理剤の成分として用いる様々な物質(薬剤)について、安全性を考慮すること等が考えられる。より具体的に、前処理剤の成分として用いる物質に対しては、例えば、様々な規制等に従って安全性を考慮することが必要になる場合がある。また、前処理剤における各物質の配合率によって、規制に該当するか否かに差が生じる場合もある。そして、この場合、例えば、前処理剤組成が示す前処理剤の組成に対し、例えば
図6に示すように、安全性に関する情報を対応付けることが考えられる。また、この場合、例えば、コーティング条件の提案時等において、前処理剤組成と対応付けて安全性に関する情報をユーザに示すことが考えられる。
【0071】
図6は、前処理剤組成と対応付ける安全性に関する情報の一例を示す図であり、前処理剤組成についての1つの具体例に対し、対応付ける安全性の情報の一例を示す。この場合、安全性としては、例えば、各国の規制により定められている使用制限、輸出入制限、又は禁止に関する情報等を考慮することが考えられる。また、このような事項としては、例えば、RoHS、REACH、その他各国の化学物質インベントリ規則(例えば、EC、TSCA、 化審法)等を考慮することが考えられる。また、安全性として、例えば、前処理剤の成分として使用する物質、及びそれらから配合される前処理剤の危険有害性情報等を考慮することも考えられる。また、このような事項としては、例えば、GHS、CLP、Ames試験等で得られる情報を考慮することが考えられる。また、この場合、前処理剤の成分として使用するそれぞれの物質に関する情報に基づき、前処理剤としての安全性を判定することが考えられる。
【0072】
より具体的に、
図6においては、図中に示す前処理剤組成の具体例に関し、前処理剤の成分として使用するそれぞれの物質の配合率を考慮して、物質毎及び前処理剤全体の安全性に関する情報の例を示している。また、安全性に関する情報の例として、図中に示す複数の規制等に基づいて判断される情報を示している。また、
図6においては、参考情報として、前処理剤の成分として使用するそれぞれの物質のコスト(単価)についても示している。また、配合率及びコストについては、図示の便宜上、具体的な数値に変えて、文字a~h、及びA~Hを用いて図示をしている。このようにして安全性を考慮することにより、例えば、コーティング条件をより適切に決定することができる。
【0073】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明を行う。また。以下においては、説明の便宜上、上記において説明をした様々な変形例等を含めて、本例という。上記においても説明をしたように、本例の印刷システム10においては、制御装置12においてライブラリを用いてコーティング条件を決定し、そのコーティング条件に従って、コーティング機14においてコーティング工程を実行する。そして、この場合、コーティング機14においては、例えば、コーティング条件に従って、公知のコーティング工程と同一又は同様にして、媒体に対してコーティング工程を実行する。より具体的に、コーティング工程については、例えば、前処理剤へ媒体を浸漬する方法(浸漬方式)や前処理剤を媒体へスプレー噴射する方法(スプレー方式)等で実行することが考えられる。また、コーティング工程について、例えば、ローラーやディスペンサ等を用いて媒体へ前処理剤を塗布する方法(ローラー方式、ディスペンサ方式)等で実行することも考えられる。
【0074】
そして、この場合、例えば従来の方法でコーティング条件を調整しようとすると、通常、作業の担当者等に熟練したスキル及びノウハウが必要になり、かつ、多数回の試行錯誤が必要になる。また、担当者が有しているスキルやノウハウの違い等により、担当者の違いによる品質のムラ等が生じやすくなる。また、前処理剤に用いる薬剤の材料選定や組成を決定することが難しくなることで、例えば、コーティング工程が必要となる事業への新規参入が難しくなること等も考えられる。これに対し、本例によれば、上記においても説明をしたように、例えば、担当者が有しているスキルやノウハウ等に依存せずに、より容易かつ適切にコーティング条件を決定することができる。また、これにより、例えば、担当者の違いによる品質のムラ等の人による影響を生じにくくして、印刷物の再現性を高めることができる。更には、人に依存するノウハウ等ではなく、ライブラリに蓄積された情報(ノウハウ化されたライブラリ)を用いることで、例えば、コーティング工程や捺染に関するノウハウを有していない新規のユーザであっても、適切に捺染がされた印刷物を手軽に得ることが可能になる。また、これにより、例えば、コーティング工程が必要となる事業への新規参入をより容易にすること等も可能になる。
【0075】
また、コーティング機14でのコーティング工程については、例えば、インクジェットヘッドを備えるコーティング機14を用いることで、インクジェット方式で行うことも考えられる。このように構成すれば、例えば、コーティング機14に対し、デジタル方式での高精度の制御を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、コーティング条件に従って実行するコーティング工程について、担当者のスキルやノウハウ等に依存せずに適切に実行することができる。
【0076】
しかし、インクジェットヘッドを用いてコーティング工程を実行する場合、前処理剤の粘度について、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲の粘度にすることが必要になる。また、前処理剤のpH等に制限が生じる場合もある。そのため、この場合、前処理剤の様々な特性について、取り得る範囲が極めて狭くなることが考えられる。また、インクジェットヘッドでの吐出用に前処理剤を最適化する場合、脱気性、乾燥性、及び表面張力等の調整も必要になる。そして、この場合、熟練したスキルやノウハウを有している担当者等であっても、前処理剤の組成等のコーティング条件を調整することが困難になると考えられる。これに対し、本例においては、予め用意されたライブラリ等を用いて制御装置12によりコーティング条件を決定することで、インクジェット方式でコーティング工程を実行する場合においても、より容易かつ適切にコーティング条件を決定することができる。
【0077】
また、上記においては、ライブラリで印刷物の条件と対応付けられる前処理工程の条件の例として、主に、コーティング条件における前処理剤組成等を説明した。これに対し、ライブラリの構成の変形例においては、印刷物の条件と対応付けられる前処理工程の条件として、前処理剤組成以外の条件を用いることも考えられる。この場合、例えば、前処理剤組成に代えて、例えば、前処理剤が含む各物質を媒体に付着させる量を示す情報を用いること等が考えられる。
【0078】
より具体的に、この場合、ライブラリにおいて、前処理工程として行うコーティング工程のコーティング条件の少なくとも一部として、例えば、前処理剤が含む複数種類の物質のそれぞれについて媒体の単位重量に対して媒体に付与すべき重量を示す物質重量割合を用いることが考えられる。物質重量割合については、例えば、媒体として用いる布の生地重量に対する薬剤の重量割合(%o.w.f値)等と考えることができる。また、このようなライブラリについては、例えば、薬剤毎の%o.w.f.値が予め入力されている情報等と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、前処理剤が含む各物質をどの程度媒体に付着させるかについて、より確実に指定することができる。また、これにより、例えば、コーティング工程での前処理剤の塗布の仕方の違い等で生じる影響等が生じにくいように、より適切にコーティング工程の条件を提案することが可能になる。また、このようなライブラリを用いてコーティング条件を決定する動作については、例えば、前処理剤の性能を生地上の薬剤量に対する成果物性能で管理する動作の一例等と考えることができる。
【0079】
また、このようなライブラリを用いる場合も、
図2等を用いて上記において説明をした動作と同様にして、コーティング条件を決定することができる。
図7は、コーティング条件の決定の仕方の変形例を簡略化して示す図であり、印刷物の条件と物質重量割合とが対応付けられたライブラリを用いてコーティング条件を決定する動作の一例を示す。また、以下において説明をする点を除き、本変形例においてコーティング条件を決定する動作は、
図2を用いて上記において説明をした動作と同一又は同様である。
【0080】
本変形例においては、コーティング条件の少なくとも一部として、前処理剤が含む各物質(薬剤)についての物質重量割合を用いる。また、ライブラリとして、印刷物の性能等を示す複数のパラメータと物質重量割合とを対応付けた情報を用いる。より具体的に、図中に示すライブラリの場合、情報1~5等として区別して示すように、互いに異なる複数種類の物質重量割合のそれぞれと、性能に関するパラメータとが対応付けられている。また、この場合、物質重量割合については、図中で薬剤A~Cとして区別して示す複数種類の物質及び水からなる前処理剤について、薬剤A~Cのそれぞれについて、媒体の単位重量に対して媒体に付与すべき重量(%o.w.f値)を示している。また、性能に関するパラメータとして、図中で性能A~D等として区別して示すように、複数種類の性能について、性能の高低等を数値で示すパラメータを用いている。ライブラリにおいて、物質重量割合と対応付ける性能としては、その物質重量割合に従って作成した前処理剤を用いる場合に得られる印刷物の性能を示す印刷物性能情報等を用いることが考えられる。また、性能に関するパラメータについては、
図2を用いて説明をした場合と同様に、例えば、所望の印刷物の条件を示すパラメータ等と考えることができる。
【0081】
また、コーティング条件の決定時において、制御装置12は、例えば
図2を用いて説明をした場合と同様にして、所望の印刷物の条件等の指定をユーザから受け付ける。また、所望の印刷物の条件等の指定をユーザから受け付けた後、制御装置12は、ライブラリに対して検索を行うことで、所望の印刷物の条件等に適合する情報を絞り込む。そして、例えば絞り込んだ情報をモニタへ表示すること等により、所望の印刷物の条件等に適合する情報の候補を提案する。また、本変形例においても、制御装置12は、例えば図中に示すように、所望の印刷物の条件等に適合する情報の候補として、複数の情報をユーザへ提案する。また、この場合において、図中に示す情報3、5のような各情報について、物質重量割合と性能に関するパラメータの値とを対応付けて示すことで、それぞれの物質重量割合について、その物質重量割合を採用した場合に得られる印刷物の状態等と対応付けて提案する。
【0082】
また、情報の候補をユーザに提案した後、制御装置12は、候補の中からいずれかの情報(最適情報)を選択する指示をユーザから受け付ける。このように構成すれば、例えば、所望の状態で印刷物を作成するためのコーティング条件について、ユーザに適切に選択させることができる。また、この場合、制御装置12は、例えばモニタへの表示等により、ユーザにより選択された情報(選択情報)をユーザに通知する。また、本変形例においても、コーティング機14では、例えば、制御装置12により提案されたコーティング条件(選択情報)を反映させて、コーティング工程を実行する。
【0083】
また、本変形例では、コーティング工程において、選択された物質重量割合を実現できるように前処理剤を作成して、用いることが考えられる。この場合、例えば、コーティング工程でどのようにして前処理剤を塗布するかを指定する条件等を更に考慮して、物質重量割合に基づいて前処理剤組成を決定し、その前処理剤組成に従って前処理剤を作成することが考えられる。コーティング工程でどのようにして前処理剤を塗布するかを指定する条件としては、例えば、コーティング機14の動作等を指定するパラメータを用いることが考えられる。また、より具体的に、コーティング工程でどのようにして前処理剤を塗布するかを指定する条件としては、例えば、媒体の重量に対して前処理剤を塗布する重量の割合であるピックアップ率を用いることが考えられる。この場合、制御装置12では、例えば、印刷物の性能の要求スペック等に応じてユーザが選択するコーティング条件に基づき、物質重量割合及びピックアップ率をユーザに示す。また、この場合、ユーザは、例えば、物質重量割合及びピックアップ率に基づき、前処理剤組成を決定する。このように構成すれば、例えば、ライブラリに記憶されている物質重量割合に基づき、コーティング条件を適切に決定することができる。
【0084】
また、制御装置12では、物質重量割合及びピックアップ率ではなく、ユーザに選択されたコーティング条件における物質重量割合を実現するためのピックアップ率及び前処理剤組成をユーザに示すことも考えられる。より具体的に、この場合、制御装置12では、例えば、ライブラリにおいて前処理工程の条件として印刷物の条件と対応付けられている物質重量割合に基づき、ピックアップ率と、前処理剤組成とを提案する。このように構成すれば、例えば、前処理工程の条件として物質重量割合を用いるライブラリに基づき、前処理剤の具体的な組成をより適切に決定することができる。また、この場合、ユーザが直感的に理解しやすいピックアップ率及び前処理剤組成をユーザに示すことで、例えば、ライブラリにおいて記憶されている物質重量割合を実現する前処理剤をユーザが作成することをより容易にすることができる。
【0085】
ここで、ピックアップ率については、例えば、前処理剤を媒体に塗布した直後の状態での媒体の重量に対する前処理剤の重量の割合等と考えることができる。また、前処理剤を媒体に塗布した直後の状態については、例えば、前処理剤を媒体に塗布した後、媒体を絞らない状態等と考えることができる。また、ピックアップ率について、例えば、前処理剤を塗布することで生じる媒体の重量の増加分を前処理剤を塗布する前の媒体の重量で除した値等と考えることもできる。
【0086】
ピックアップ率については、例えば、コーティング工程で用いるコーティング機14の性能や仕様等に応じて、制御装置12において決定することが考えられる。また、制御装置12では、1種類の物質重量割合に対して、複数のピックアップ率をユーザに提案してもよい。この場合、1種類の物質重量割合とは、ライブラリにおける1つの情報(例えば、情報1~5等のうちのいずれか1つ)において印刷物の性能に関するパラメータと対応付けられている物質重量割合のことである。また、この場合、複数のピックアップ率のそれぞれに対応付けて、そのピックアップ率を採用する場合の前処理剤組成をユーザに示すことも考えられる。このように構成すれば、例えば、ユーザが希望するピックアップ率に合わせた前処理剤組成をユーザに適切に示すことができる。
【0087】
また、ピックアップ率については、例えば、制御装置12においてピックアップ率の指定をユーザから受け付けることで、より直接的なユーザの指定によって決定すること等も考えられる。この場合、ユーザは、例えば、媒体を乾燥させる条件や媒体の搬送性等を考慮して、ピックアップ率を指定する。そして、制御装置12は、例えば、ライブラリにおいてコーティング条件として印刷物の条件と対応付けられている物質重量割合と、ユーザに指定されるピックアップ率とに基づき、前処理剤組成をユーザに提案する。このように構成した場合も、例えば、コーティング条件として物質重量割合を用いるライブラリを用いて、前処理剤の具体的な組成を適切に決定することができる。
【0088】
本変形例においても、生地上の薬剤量を示す物質重量割合を印刷物の条件等と対応付けてデータベース化したライブラリを用いることで、例えば、ユーザ毎の要求に合わせて最適化したコーティング条件を適切に決定することができる。また、本変形例のように、物質重量割合を示すライブラリを用いる場合、コーティング工程を実行するコーティング機14において媒体に前処理剤を塗布する方法(コーティング機14の方式)や性能が変わる場合にも、同じライブラリを用いて、より適切にコーティング条件を決定することができる。より具体的に、上記においても説明をしたように、コーティング機14としては、浸漬方式、スプレー方式、ローラー方式、ディスペンサ方式、又はインクジェット方式等の様々な方式の装置を用いることが考えられる。また、コーティング工程で媒体に塗布される前処理剤の量については、コーティング機14の方式や性能によって差が生じることが考えられる。そのため、例えば同じ組成の前処理剤を用いたとしても、コーティング機14の方式や性能が異なると、前処理剤を塗布する効果に差が生じる場合がある。
【0089】
これに対し、本変形例においては、物質重量割合を示すライブラリを用いることで、例えば、コーティング工程で媒体に塗布される前処理剤の状態をより適切に示すことができる。この場合、コーティング機14の方式や性能については、例えば、物質重量割合に基づいて前処理剤組成を決定する動作(物質重量割合に合わせて前処理剤組成を調整する動作)において考慮することが考えられる。このように構成すれば、例えば、所望の品質の印刷物をより適切に作成することができる。
【0090】
また、本変形例のようにコーティング条件として物質重量割合を用いる場合にも、物質重量割合について、印刷物の性能以外の条件と更に対応付けてもよい。また、この場合、例えば、
図8に示す事項を示すライブラリを用いることが考えられる。
図8は、
図7を用いて上記において説明をした動作で用いるライブラリが格納する情報の具体例を示す。以下において説明をする点を除き、本変形例において用いるライブラリは、
図3を用いて上記において説明をしたライブラリと同一又は同様の特徴を有する。また、
図8においては、
図3と同様に、ライブラリが格納する情報の少なくとも一部について、1~13の番号(#1~13)を付して区別して、13種類の情報を示している。また、図示した場合において、これらの情報のそれぞれは、物質重量割合、コーティング工程の作業性、コーティング工程のコスト、及び印刷物の性能を対応付けた情報である。
【0091】
また、それぞれの情報において、物質重量割合は、図中に示した各物質について、媒体の単位重量に対して媒体に付与すべき重量(%o.w.f値)を示している。コーティング工程の作業性及びコストや、印刷物の性能は、
図3を用いて説明をしたライブラリと同一又は同様の事項を示している。このようなライブラリを用いることで、例えば、所望の印刷物の条件等を実現するための物質重量割合を適切に提案することができる。また、例えば、コストや印刷物の品質等をユーザの要求に合わせて柔軟にカスタマイズすること等も可能になる。
【0092】
また、この場合も、
図3を用いて説明をした場合と同様に、ライブラリが格納する情報について、様々に変更が可能である。情報の管理の仕方等についても、様々に変更が可能である。より具体的に、好ましいコーティング条件については、例えば、使用する媒体の種類や性質によって異なること等も考えられる。また、求められる印刷物の品質等によっては、物質重量割合について、例えば、媒体の種類や性質によって異ならせることがより好ましいこと等も考えられる。また、同じ繊維でつくられた媒体であっても、繊維の織り方、厚さ、又は単位体積あたりの重さ等によって、物質重量割合を異ならせることがより好ましいこと等も考えられる。そして、このような場合、ライブラリにおいて、物質重量割合に対し、媒体の種類や性質等を示すパラメータを更に対応付けること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、使用する媒体に合わせて、コーティング条件をより適切に決定することができる。また、この場合、媒体の種類や性質を考慮することで、例えば、同じ媒体を用いる条件でのユーザの様々な要求(要求スペック)に対しても、より適切にコーティング条件を決定することができる。
【0093】
また、上記においては、印刷システム10の構成に関し、主に、前処理工程(コーティング工程)、印刷工程、及び後処理工程(蒸し工程、洗い工程)を行う場合の構成について、説明をした。しかし、印刷システム10の構成の変形例においては、これらの工程の一部が不要なインクを用いて、印刷物を作成すること等も考えられる。より具体的に、例えば、後処理工程として洗い工程を行うことが不要な顔料インクを用いて、印刷物を作成すること等も考えられる。また、例えば、印刷工程の後に発色処理を行う必要がないインクを用いる場合、蒸し工程を行わないこと等も考えられる。これらの場合にも、例えば、上記と同様にして、コーティング条件を適切に決定することができる。
【0094】
また、上記においても説明をしたように、制御装置12は、印刷システム10における各装置とネットワークを介して通信可能に接続されており、必要に応じて、データやコマンド等の入出力を行う。しかし、印刷システム10の構成の変形例においては、少なくとも一部の工程を実行する装置について、印刷システム10と接続しないこと等も考えられる。このような場合にも、上記と同様にして、コーティング条件を適切に決定することができる。また、この場合、例えば、制御装置12に接続されていない装置に対する装置条件等については、作業の担当者の手作業等で装置に反映させることが考えられる。このように構成した場合も、例えば、その装置に関する性能の増減等を適切に調整することができる。
【0095】
また、上記においても説明をしたように、制御装置12では、ライブラリ等を用いて、コーティング条件の提案等を行う。この場合、ライブラリに対して適宜情報を追加可能に構成することが好ましい。この場合、例えば、新たな前処理剤組成等に関する新たな情報の新規登録や、既存の情報の変更(カスタマイズ)等を可能に構成することが考えられる。より具体的に、例えば、媒体として新たな生地を用いることで求められる性能に変化が生じた場合や、従来と異なる量や組成の前処理剤を用いる場合等において、新たな条件に対応する情報をライブラリに追加することで、容易かつ適切にライブラリを更新(アップデート)することができる。このように構成すれば、例えば、ライブラリが格納する情報の充実化を適切に行うことができる。また、この場合、例えば、任意のユーザにより情報を追加可能にしてもよい。また、いずれかのユーザが管理しているライブラリに対して行う新規登録や既存の情報の変更の結果については、例えば、他のユーザが管理しているライブラリにも反映可能にすることが考えられる。この場合、例えば、追加又は変更された情報をクラウドサーバに登録(エクスポート)することで、全世界に提供可能にすること等が考えられる。また、ライブラリに格納する情報については、上記において説明した事項に限らず、様々な変更を行うこと等も考えられる。より具体的に、ライブラリに対し、例えば、前処理剤組成における各物質の投入順、前処理剤の使用期限、又は前処理剤の作成時に行うべき下準備に関する事項等を格納すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、印刷システム10や制御装置12に対するユーザビリティーを適切に高めることができる。
【0096】
また、制御装置12において行うコーティング条件の提案や決定については、例えば、人工知能を利用して行うこと等も考えられる。この場合、制御装置12は、例えば、印刷物の性能等とコーティング条件とを対応付けて学習をさせた学習済モデルに基づき、コーティング条件の提案又は決定を行う。この場合、学習済モデルでの学習としては、例えば機械学習を行うことが考えられる。また、機械学習としては、例えば、深層学習を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、コーティング条件の提案又は決定に用いる学習済モデルを適切に作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、印刷システムに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
10・・・印刷システム、12・・・制御装置、14・・・コーティング機、16・・・プリンタ、18・・・蒸し機、20・・・洗い機