(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】造波低減装置及びこれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 1/40 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B63B1/40 Z
(21)【出願番号】P 2022517623
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015469
(87)【国際公開番号】W WO2021220815
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020078219
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】窪田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】川淵 信
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136780(JP,A)
【文献】特許第5103687(JP,B2)
【文献】実開昭59-121293(JP,U)
【文献】特開2001-247075(JP,A)
【文献】国際公開第2004/019302(WO,A1)
【文献】特開2006-137309(JP,A)
【文献】黒田麻利子ら,波浪中抵抗増加低減のための船首水面上STEPの効果について,日本船舶海洋工学会論文集,日本,日本船舶海洋工学会,2011年12月,第14号,pp.105-110,DOI: 10.2534/jjasnaoe.14.105,ISSN 1881-1760(online), 1880-3717(print)
【文献】黒田麻利子ら,自動車運搬船のための波浪中省エネ装置STEPの開発,日本船舶海洋工学会論文集,日本,日本船舶海洋工学会,2012年12月,第16号,pp.17-23,DOI: 10.2534/jjasnaoe.16.17,ISSN 1881-1760(online), 1880-3717(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/40, 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船首側にて船側外板から前記船舶の幅方向に突出するとともに前記船首から船尾に向かって延在する複数の突出部材を備え、
複数の前記突出部材は、前記船舶の深さ方向において満載喫水線よりも上方に設けられ、
一の突出部材は、前記深さ方向において他の突出部材の上方に設けられ、
前記他の突出部材の突出量は、前記一の突出部材の突出量よりも小さくされ
、
前記一の突出部材の前記突出量は、Loaの0.5%以内の量とされ、
前記他の突出部材の前記突出量は、前記一の突出部材の前記突出量の20%以上75%以下の量とされ、
前記一の突出部材の前記突出量及び前記他の突出部材の前記突出量は、前記船舶の長さ方向に沿って略一定量とされている造波低減装置。
【請求項2】
複数の前記突出部材の前記船首側における端部は、前記船舶の長さ方向において前記船首の前縁から前記Loaの1%以内の位置に設けられ、
複数の前記突出部材の前記船舶の船尾側における端部は、前記長さ方向において前記船首の前縁から前記Loaの10%以内の位置に設けられている請求項
1に記載の造波低減装置。
【請求項3】
前記一の突出部材は、複数の前記突出部材のうち、前記深さ方向において最も上方に設けられた前記突出部材とされ、
前記一の突出部材の前記船首側における端部は、前記深さ方向において前記満載喫水線から前記Loaの3%以内の位置に設けられ、
前記一の突出部材の前記船尾側における端部は、前記深さ方向において前記満載喫水線から前記Loaの2%以内の位置に設けられている請求項1
又は2に記載の造波低減装置。
【請求項4】
前記他の突出部材は、複数の前記突出部材のうち、前記深さ方向において最も下方に設けられた前記突出部材とされ、
前記他の突出部材の前記船首側における端部は、前記深さ方向において前記満載喫水線から前記Loaの2%以内の位置に設けられ、
前記他の突出部材の前記船尾側における端部は、前記深さ方向において前記満載喫水線から前記Loaの1%以内の位置に設けられている請求項
3に記載の造波低減装置。
【請求項5】
複数の前記突出部材は、前記幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、前記船側外板から水平方向に突出している請求項1から
4のいずれかに記載の造波低減装置。
【請求項6】
複数の前記突出部材は、前記幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、前記船側外板から水平方向に対して下方に傾斜するように突出している請求項1から
4のいずれかに記載の造波低減装置。
【請求項7】
複数の前記突出部材は、断面視したときに楔形とされている請求項1から
6のいずれかに記載の造波低減装置。
【請求項8】
前記突出部材は、該突出部材の下面と前記船側外板とのなす角度が135°を越え165°未満とされている請求項1に記載の造波低減装置。
【請求項9】
前記突出部材の前記下面と前記船側外板との交点を前記突出量の下側起点としたとき、
前記下側起点から前記突出量の50%の位置における前記下面の接線と前記下側起点における前記船側外板の接線とのなす角度が135°を越え165°未満とされている請求項
8に記載の造波低減装置。
【請求項10】
前記突出部材は、該突出部材の上面と前記船側外板とのなす角度が90°以上160°以下とされている請求項1、
8、
9のいずれかに記載の造波低減装置。
【請求項11】
前記突出部材の前記上面と前記船側外板との交点を前記突出量の上側起点としたとき、
前記上側起点から前記突出量の50%の位置における前記上面の接線と前記上側起点における前記船側外板の接線とのなす角度が90°を越え160°未満とされている請求項
10に記載の造波低減装置。
【請求項12】
前記船舶を底面から見たとき、
前記突出部材の突出方向の中心線と前記船尾側の前記突出部材の縁部との交点における前記縁部の接線と、前記船舶の前記長さ方向に垂直な面と、のなす角度が60°を越え90°未満とされている請求項1、
8から
11のいずれかに記載の造波低減装置。
【請求項13】
船舶の船首側にて船側外板から前記船舶の幅方向に突出するとともに前記船首から船尾に向かって延在する突出部材を備え、
前記突出部材は、該突出部材の下面と前記船側外板とのなす角度が135°を越え165°未満とされている造波低減装置。
【請求項14】
前記突出部材の前記下面と前記船側外板との交点を突出量の下側起点としたとき、
前記下側起点から前記突出量の50%の位置における前記下面の接線と前記下側起点における前記船側外板の接線とのなす角度が135°を越え165°未満とされている請求項
13に記載の造波低減装置。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれかに記載の造波低減装置を備えている船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、造波低減装置及びこれを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶が航走する際、船首近傍では引き波によって造波抵抗が発生する。この造波抵抗を低減するために、例えば、特許文献1から特許文献4に示すような板状の部材(フィン)を喫水線よりも上方の船首近傍に設けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-189098号公報
【文献】特開2001-247075号公報
【文献】特開2004-136780号公報
【文献】特開平4-238788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航走姿勢は船速によって異なるため、具体的には、
図23に示すように、低速航走時は船首側が沈み込み、高速航走時には船首側が浮き上がるため、船舶の深さ方向において複数のフィンを設けることで、複数の船速に対応して造波抵抗を低減させることが期待できる。
【0005】
しかしながら、高速航走時において波返しが期待できる下方のフィンは、船首側が沈み込む低速航走時においてその一部(例えば、船首側の端部)が没水する可能性がある。下方のフィンの一部が没水した場合、没水した部分が水から抵抗を受けるので、船体に対して抵抗として作用してしまう。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、造波を抑制して造波抵抗を低減しつつ船首側が沈み込む低速航走時においても船体に対して作用する抵抗を低減できる造波低減装置及びこれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の造波低減装置及びこれを備えた船舶は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る造波低減装置は、船舶の船首側にて船側外板から前記船舶の幅方向に突出するとともに前記船首から船尾に向かって延在する複数の突出部材を備え、複数の前記突出部材は、前記船舶の深さ方向において満載喫水線よりも上方に設けられ、一の突出部材は、前記深さ方向において他の突出部材の上方に設けられ、前記他の突出部材の突出量は、前記一の突出部材の突出量よりも小さくされている。
【0008】
また、本開示の一態様に係る船舶は、上記の造波低減装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る造波低減装置及びこれを備えた船舶によれば、造波を抑制して造波抵抗を低減しつつ船首側が沈み込む低速航走時においても船体に対して作用する抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る船舶の側面図である。
【
図6】フィンが設けられていない船舶における引き波を示す図である。
【
図7】本開示に係る船舶における引き波を示す図である。
【
図8】
図1に示す切断線VIII-VIIIにおける断面図である。
【
図9】フィンの突出量と抵抗との関係を示すグラフである。
【
図10】上段に設けられたフィンの各種寸法を示した側面図である。
【
図11】下段に設けられたフィンの各種寸法を示した側面図である。
【
図14】本開示の第2実施形態に係るフィンの斜視図である。
【
図15】
図14に示す切断線XV-XVにおける断面図である。
【
図16】角度θとフィンの面積との関係及び角度θと摩擦抵抗との関係を示すグラフである。
【
図17】フィンの下面が曲面の場合におけ角度θを示す図である。
【
図18】本開示の第3実施形態に係るフィンの断面図である。
【
図19】角度φとフィンの面積との関係及び角度φと摩擦抵抗との関係を示すグラフである。
【
図20】フィンの上面が曲面の場合におけ角度φを示す図である。
【
図21】本開示の第4実施形態に係るフィンを船舶の底面から見た図である。
【
図22】角度αとフィンの面積との関係及び角度αと摩擦抵抗との関係を示すグラフである。
【
図23】船速と船首の位置との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態に係る造波低減装置及びこれを備えた船舶について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、造波低減装置20は、船舶10の船首10A側における船側外板11に設けられた2枚のフィン(突出部材)21,22を備えている。
フィン21,22は、例えば船側外板11と同じ金属材料からなり、溶接によって船側外板11に対して固定される。
【0013】
フィン21,22は、船首10Aから船尾10Bに向かう方向(以下、「長さ方向」という。)に延在して設けられている。
また、フィン21,22は、船舶10の満載喫水線Llよりも船舶10の深さ方向において上方に設けられている。ここで、満載喫水線Llとは、載貨による船舶10の水中沈下が許される最大限度の喫水線である。
【0014】
以下、フィン21,22について詳細に説明する。
図2から
図5に示すように、フィン21,22は、船舶10の両側の船側外板11から船舶10の幅方向に突出するようにそれぞれ設けられている。
【0015】
フィン21は、船舶10の長さ方向に沿って延在して船舶10の深さ方向に所定の厚みを持つ薄い部材とされている。フィン21の厚みは、船舶10の長さ方向に沿って一定でもよいし流線状に変化してもよい。フィン21の厚みが一定の場合、単なる板材からフィン21を製作できるので製作コストが低減できる。一方、フィン21の厚みが流線状に変化する場合(例えば翼形状の場合)、船舶10の航走に伴う空気抵抗、水抵抗を低減できる。
【0016】
フィン22は、船舶10の長さ方向に沿って延在して船舶10の深さ方向に所定の厚みを持つ薄い部材とされている。フィン22の厚みは、船舶10の長さ方向に沿って一定でもよいし流線状に変化してもよい。フィン22の厚みが一定の場合、単なる板材からフィン22を製作できるので製作コストが低減できる。一方、フィン22の厚みが流線状に変化する場合(例えば翼形状の場合)、船舶10の航走に伴う空気抵抗、水抵抗を低減できる。
【0017】
フィン21は船側外板11の両側で対をなし、フィン22も船側外板11の両側で対をなしている。対をなしているフィン21及び対をなしているフィン22は、それぞれ船舶10の深さ方向において同程度の位置に設けられている。このとき、フィン21は、船舶10の深さ方向においてフィン22よりも上方に位置している。なお、フィン21,22の取付位置の詳細については後述する。
【0018】
フィン21は、船舶10の航走する際に船首10A近傍にて発生した引き波をはね返すことで、船舶10に作用する造波抵抗を低減する。例えば、
図6に示すフィンが設けられていない比較例としての船舶100と
図7に示すフィン21が設けられた船舶10とでは、引き波が到達する高さ位置が異なることが分かる。これは、引き波がフィン21によってはね返されることによる効果である(いわゆる波返し)。
フィン21は、特に、船首10Aが沈み込む低速航走時において波返しの効果が発揮される(
図23参照)。
【0019】
フィン22は、船舶10の航走する際に船首10A近傍にて生ずる引き波をはね返すことで、船舶10に作用する造波抵抗を低減する。
フィン22は、特に、船首10Aが浮き上がる高速航走時において波返しの効果が発揮される(
図23参照)。
【0020】
図8に示すように、フィン22の船側外板11からの突出量P2は、フィン21の船側外板11からの突出量P1よりも小さい。具体的には、フィン22の突出量P2は、フィン21の突出量P1の20%以上75%以下とされることが好ましい。
【0021】
上記のフィン21の突出量P1及びフィン22の突出量P2の関係について、発明者らは解析等によって以下の知見を得た。
すなわち、
図9に示すように、フィン21の突出量P1をLoa(船舶10の全長)の0.5%として、フィン22の突出量P2を突出量P1の75%(Loaの0.375%に相当)とした場合、フィン21,22が没水したと仮定したとき、フィン21に作用する水抵抗(同図に示す●)に比べてフィン22に作用する水抵抗(同図に示す▲)を約75%程度まで減少させることができる。このとき、フィン22の突出量P2をフィン21の突出量P1の75%よりも大きくしてしまうと、没水時における水抵抗低減の効果が期待できない。このため、フィン22の突出量P2の上限値は、フィン21の突出量P1の75%が好ましい。
また、フィン21の突出量P1をLoaの0.5%として、フィン22の突出量P2を突出量P1の20%(Loaの0.1%に相当)とした場合、フィン21,22が没水したと仮定したとき、フィン21に作用する水抵抗(同図に示す●)に比べてフィン22に作用する水抵抗(同図に示す■)を約20%程度まで減少させることができる。このとき、フィン22の突出量P2をフィン21の突出量P1の20%未満としてしまうと、高速航走時(非没水時)におけるフィン22による波返しの効果が期待できない。このため、フィン22の突出量P2の下限値は、フィン21の突出量P1の20%が好ましい。
上記解析の条件は、Loaが100m、フィン21,22の厚さが0.1m、船速が10m/sである。また、上記解析において、フィン21の突出量P1はLoaの0.5%としたが、実際にはLoaの0.5%以下であってもよく、船舶10の仕様等に応じて適宜変更できる。
なお、上記説明においてはフィン21が没水した場合を仮定しているが、これは実際の航走時にフィン21が没水することを意図するものではない。
【0022】
突出量P1及び突出量P2は、船舶10の長さ方向に沿って略一定量とされることが好ましい。すなわち、船側外板11の外形状に沿ってフィン21及びフィン22の外形状が変化するように構成されることが好ましい。
【0023】
図10に示すように、上記のように構成されたフィン21は、船首10A側において所定の範囲に設けられる。具体的には、次に示す通りである。
すなわち、前端21Aは、船舶10の長さ方向において点D1AからLoaの1%以内の位置に設けられ(X1A≦Loa×1%)、船舶10の深さ方向において満載喫水線LlからLoaの3%以内の位置に設けられる(Y1A≦Loa×3%)。
ここで、点D1Aとは、前端21Aから満載喫水線Llに対して平行に延びる直線L1Aと船舶10の船首前縁11Aとの交点である。
また、後端21Bは、船舶10の長さ方向において点D1BからLoaの10%以内の位置に設けられ(X1B≦Loa×10%)、船舶10の深さ方向において満載喫水線LlからLoaの2%以内の位置に設けられる(Y1B≦Loa×2%)。
ここで、点D1Bとは、後端21Bから満載喫水線Llに対して平行に延びる直線L1Bと船舶10の船首前縁11Aとの交点である。
フィン21は、上記の範囲を満足するとともに、船舶10の長さ方向に沿った長さが突出量P1の2倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
なお、
図10では、説明の簡単のために下段のフィン22の図示を省略している。
【0024】
フィン21は、上記範囲内であれば、任意の寸法を採ることができ、また、任意の位置に設けることができる。例えば、フィン21の長さ寸法とフィン22との長さ寸法を異ならせたり、船舶10の側面視(例えば
図5)でフィン21及び/又はフィン22を傾斜させたりしてもよい。
【0025】
フィン21の寸法としては、次のものが例示される。すなわち、Loaが200mの場合、X1A=2m、Y1A=6m、X1B=20m、Y1B=4mとなる。なお、満載喫水線Llは底面から11mの位置にある。
【0026】
図11に示すように、上記のように構成されたフィン22は、船首10A側において所定の範囲に設けられる。具体的には、次に示す通りである。
すなわち、前端22Aは、船舶10の長さ方向において点D2AからLoaの1%以内の位置に設けられ(X2A≦Loa×1%)、船舶10の深さ方向において満載喫水線LlからLoaの2%以内の位置に設けられる(Y1B≦Loa×2%)。
ここで、点D2Aとは、前端22Aから満載喫水線Llに対して平行に延びる直線L2Aと船舶10の船首前縁11Aとの交点である。
また、後端22Bは、船舶10の長さ方向において点D2BからLoaの10%以内の位置に設けられ(X2B≦Loa×10%)、船舶10の深さ方向において満載喫水線LlからLoaの1%以内の位置に設けられる(Y2B≦Loa×1%)。
ここで、点D2Bとは、後端22Bから満載喫水線Llに対して平行に延びる直線L2Bと船舶10の船首前縁11Aとの交点である。
フィン22は、上記の範囲を満足するとともに、船舶10の長さ方向に沿った長さが突出量P1の2倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。
なお、
図11では、説明の簡単のために上段のフィン21の図示を省略している。
【0027】
フィン22は、上記範囲内であれば、任意の寸法を採ることができ、また、任意の位置に設けることができる。例えば、フィン21の長さ寸法とフィン22との長さ寸法を異ならせたり、船舶10の側面視(例えば
図5)でフィン21及び/又はフィン22を傾斜させたりしてもよい。
【0028】
フィン22の寸法としては、次のものが例示される。すなわち、Loaが200mの場合、X2A=2m、Y2A=4m、X2B=20m、Y2B=2mとなる。なお、満載喫水線Llは底面から11mの位置にある。
【0029】
以上のように構成されたフィン21,22は、
図8に示すように、船舶10の幅方向に沿って互いに平行となるように、かつ、水平方向に突出するように設けられてもよいし、
図12に示すように、船舶10の幅方向に沿って互いに平行となるように、かつ、水平方向に対して下方に傾斜しながら突出するように設けられてもよい。フィン21,22を水平方向に対して傾斜させる場合、水平方向に対して45°以下であることが好ましい。
【0030】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
船舶10の船首10A側にて船側外板11から船舶10の幅方向に突出するとともに船舶10の長さ方向に延在する板状のフィン21,22を備え、フィン21,22は、船舶10の深さ方向において満載喫水線Llよりも上方に設けられているので、フィン21,22によってあらゆる範囲の船速において造波を抑制して造波抵抗を低減できる。
また、フィン21は、船舶10の深さ方向においてフィン22の上方に設けられ、フィン22の突出量P2は、フィン21の突出量P1よりも小さくされているので、船首10A側が沈み込む低速航走時においてフィン22が没水したとしても、フィン22が水から受ける抵抗を低減できる。これによって、船舶10の船体に対して作用する抵抗を低減できる。
【0031】
また、フィン21の突出量P1は、Loaの0.5%以内の量とされ、フィン22の突出量P2は、フィン21の突出量P1の20%以上75%以下の量とされているので、フィン21の突出量P1及びフィン22の突出量P2をLoaに基づいて決定できる。
【0032】
また、フィン21,22の前端21A,22Aは、長さ方向において船首前縁11AからLoaの1%以内の位置に設けられ、フィン21,22の後端21B,22Bは、長さ方向において船首前縁11AからLoaの10%以内の位置に設けられているので、フィン21,22の船舶10の長さ方向に沿う寸法(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0033】
また、フィン21の前端21Aは、深さ方向において満載喫水線LlからLoaの3%以内の位置に設けられ、フィン21の後端21Bは、深さ方向において満載喫水線LlからLoaの2%以内の位置に設けられているので、最も上方に設けられたフィン21の高さ位置(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0034】
また、フィン22の前端22Aは、深さ方向において満載喫水線LlからLoaの2%以内の位置に設けられ、フィン22の後端22Bは、深さ方向において満載喫水線LlからLoaの1%以内の位置に設けられているので、最も下方に設けられたフィン22の高さ位置(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0035】
また、フィン21,22は、幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、船側外板11から水平方向に突出しているので、フィン21,22が没水したとしても、フィン21,22が水から受ける抵抗を低減できる。これによって、船舶10の船体に対して作用する抵抗を低減できる。
【0036】
また、フィン21,22は、幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、船側外板11から水平方向に対して下方に傾斜するように突出させてもよい。この場合、フィン21,22による波返しの効果を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、
図13に示すように、フィン21,22の断面形状を楔形にしてもよい。これによって、フィン21,22の強度を向上させることができる。
また、フィン21,22に他のフィン(船側外板11の両側で対をなすもの)を追加して3段以上の構成としてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
以下、本開示の第2実施形態に係る造波低減装置について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態の造波低減装置は、第1実施形態に対してフィン21,22の形状が異なり、その他の構成は同一である。このため、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
また、以下の説明では、フィン21を例にするが、フィン22も同様の構成を採ることができる。
【0039】
図14及び
図15に示すように、フィン21の延在方向の中央位置において、フィン21の下面21Cと、この下面21Cが接続された船側外板11とがなす角度をθとする。すなわち、下面21Cと船側外板11との交点を点CAとしたとき、点CAを中心として下面21Cと船側外板11とがなす角度をθとする。このとき、θは、135°を越え165°未満とされている。
【0040】
このように構成することで、次のような効果が得られる。
すなわち、下面21Cが水平面上にある場合において(
図15の符号21Chで図示)、水平下面21Chと船側外板11との仮想的な交点を点CAhとしたとき、水平下面21Chの面積と点CAhから点CAまでの船側外板11の面積との合計面積(以下、「仮想面積A0C」という。)よりも、下面21Cの面積ACを小さくすることができる。
【0041】
これを導くにあたって、発明者らは、θを変化させた場合における仮想面積A0Cと面積ACとを比較する解析を行った。
その結果、
図16に示すように、面積ACは、θが120°を越えたとき、仮想面積A0Cよりも小さくなることが分かった(減少した面積をΔACとする)。
【0042】
このとき、以下の数式(1)を用いて仮想面積A0Cをもってフィン21が波から受ける摩擦抵抗Rf0を求め、数式(2)を用いて減少面積ΔACによって減少した摩擦抵抗低減量ΔRfを求め、ΔRf/Rf0を算出した。
【0043】
【数1】
ここで、
Re:レイノルズ数
ρ :海水密度
A :仮想面積
である。
【0044】
【数2】
ここで、
Re:レイノルズ数
ρ :海水密度
ΔA:減少面積
である。
【0045】
その結果、
図16に示すように、ΔRf/Rf0は、135°<θ<165°で10%以上低減され、θ=150°で最小値(-14%)を示すことが分かった。
なお、上記解析の条件は、Loaが200m、フィン21の突出量が1m、フィン21の長さが18m、船速が20kn、船首フレア角が30°である。
【0046】
以上の結果から、135°<θ<165°とすることで、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面21Cが波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0047】
[変形例]
図17に示すように、下面21Cは、上に凸の曲面であってもよい。
このとき、フィン21の下面21Cの起点(下側起点)を点CAとして、点CAから水平方向に沿って突出量P1の50%に位置する下面21Cの位置を点CBとする。この場合において、点CAにおける船側外板11の接線と点CBにおける下面21Cの接線とがなす角度をθとすることができる。ここで、θが取り得る範囲は、上記と同様である。
【0048】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
θが135°を越え165°未満とされているので、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面21Cの面積の増加を抑制することができる。これによって、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面21Cが波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0049】
なお、本実施形態は、第1実施形態から独立して適用することもできる。
【0050】
[第3実施形態]
以下、本開示の第3実施形態に係る造波低減装置について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態の造波低減装置は、第1実施形態及び第2実施形態に対してフィン21,22の形状が異なり、その他の構成は同一である。このため、以下の説明において、第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
また、以下の説明では、フィン21を例にするが、フィン22も同様の構成を採ることができる。
【0051】
図18に示すように、フィン21の延在方向の中央位置において、フィン21の上面21Dと、この上面21Dが接続された船側外板11とがなす角度をφとする。すなわち、上面21Dと船側外板11との交点を点DAとしたとき、点DAを中心として上面21Dと船側外板11とがなす角度をφとする。このとき、φは、90°を越え160°未満とされている。
【0052】
このように構成することで、次のような効果が得られる。
すなわち、上面21CD水平面上にある場合において(
図18の符号21Dhで図示)、水平上面21Dhと船側外板11との仮想的な交点を点DAhとしたとき、水平上面21Dhの面積と点DAhから点DAまでの船側外板11の面積との合計面積(以下、「仮想面積A0D」という。)よりも、上面21Dの面積ADを小さくすることができる。
【0053】
これを導くにあたって、発明者らは、φを変化させた場合における仮想面積A0Dと面積ADとを比較する解析を行った。
その結果、
図19に示すように、面積ADは、φが60°を越えたとき、仮想面積A0Dよりも小さくなることが分かった(減少した面積をΔADとする)。
【0054】
このとき、上記の数式(1)を用いて仮想面積A0Dをもってフィン21が波から受ける摩擦抵抗Rf0を求め、数式(2)を用いて減少面積ΔADによって減少した摩擦抵抗低減量ΔRfを求め、ΔRf/Rf0を算出した。
【0055】
その結果、
図19に示すように、ΔRf/Rf0は、90°<φ<160°で25%以上低減され、φ=130°で最小値(-40%)を示すことが分かった。
なお、上記解析の条件は、Loaが200m、フィン21の突出量が1m、フィン21の長さが18m、船速が20kn、船首フレア角が30°である。
【0056】
以上の結果から、90°<φ<160°とすることで、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、上面21Dが波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0057】
[変形例]
図20に示すように、上面21Dは、下に凸の曲面であってもよい。
このとき、フィン21の上面21Dの起点(上側起点)を点DAとして、点DAから水平方向に沿って突出量P1の50%に位置する上面21Dの位置を点DBとする。この場合において、点DAにおける船側外板11の接線と点DBにおける上面21Dの接線とがなす角度をφとすることができる。ここで、θが取り得る範囲は、上記と同様である。
【0058】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
φが90°を越え160°未満とされているので、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、上面21Dの面積の増加を抑制することができる。これによって、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、フィン21の没水時に上面21Dが波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0059】
なお、本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態の少なくともいずれか1つから独立して適用することもできる。
【0060】
[第4実施形態]
以下、本開示の第4実施形態に係る造波低減装置について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態の造波低減装置は、第1実施形態から第3実施形態に対してフィン21,22の形状が異なり、その他の構成は同一である。このため、以下の説明において、第1実施形態から第3実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
また、以下の説明では、フィン21を例にするが、フィン22も同様の構成を採ることができる。
【0061】
図21に示すように、フィン21を船舶10を底面から見たとき、フィン21の突出方向(すなわち、フィン21の幅方向)における中心線C1とフィン21の後端縁(縁部)21Baとの交点を点Eとする。この場合において、点Eにおける後端縁21Baの接線と船舶10の長さ方向に垂直な面とがなす角度をαとする。このとき、αは、60°を越え90°未満とされている。
【0062】
このように構成することで、次のような効果が得られる。
すなわち、α=0°の場合における下面21Cの面積(以下、「仮想面積A0E」という。)よりも、下面21Cの面積AEを小さくすることができる。
なお、α=0°の場合とは、後端縁21Baが船舶10の長さ方向に垂直な面と平行の状態である。
【0063】
これを導くにあたって、発明者らは、αを変化させた場合における仮想面積A0Eと面積AEとを比較する解析を行った。
その結果、
図22に示すように、面積AEは、αを設定することによって仮想面積A0Eに対して小さくなることが分かった(減少した面積をΔAEとする)。
【0064】
このとき、上記の数式(1)を用いて仮想面積A0Eをもってフィン21が波から受ける摩擦抵抗Rf0を求め、数式(2)を用いて減少面積ΔAEによって減少した摩擦抵抗低減量ΔRfを求め、ΔRf/Rf0を算出した。
【0065】
その結果、
図22に示すように、ΔRf/Rf0は、αが60°を越えたとき、急激に低減されることが分かった。ただし、αを90°以上にすると、後端縁21Baが流線と略平行になり、造波抵抗低減の効果が低減してしまう。
なお、上記解析の条件は、Loaが200m、フィン21の突出量が1m、フィン21の長さが18m、船速が20kn、船首フレア角が30°である。
【0066】
以上の結果から、60°<α<90°とすることで、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面21Cが波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0067】
なお、本実施形態は、第1実施形態から第3実施形態の少なくともいずれか1つから独立して適用することもできる。
【0068】
以上の通り説明した各実施形態に係る造波低減装置及びこれを備えた船舶は、例えば以下のように把握される。
すなわち、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)は、船舶(10)の船首(10A)側にて船側外板(11)から前記船舶(10)の幅方向に突出するとともに前記船首(10A)から船尾(10B)に向かって延在する複数の突出部材(21,22)を備え、複数の前記突出部材(21,22)は、前記船舶(10)の深さ方向において満載喫水線(Ll)よりも上方に設けられ、一の突出部材(21)は、前記船舶(10)の深さ方向において他の突出部材(22)の上方に設けられ、前記他の突出部材(22)の突出量(P2)は、前記一の突出部材(21)の突出量(P1)よりも小さくされている。
【0069】
本態様に係る造波低減装置(20)よれば、船舶(10)の船首(10A)側にて船側外板(11)から船舶(10)の幅方向に突出するとともに船首(10A)から船尾(10B)に向かって延在する板状の複数の突出部材(21,22)を備え、複数の突出部材(21,22)は、船舶(10)の深さ方向において満載喫水線(Ll)よりも上方に設けられているので、複数の突出部材(21,22)によってあらゆる範囲の船速において造波を抑制して造波抵抗を低減できる。
また、一の突出部材(21)は、船舶(10)の深さ方向において他の突出部材(22)の上方に設けられ、他の突出部材(22)の突出量(P2)は、一の突出部材(21)の突出量(P1)よりも小さくされているので、船首(10A)側が沈み込む低速航走時において他の突出部材(22)(下方の突出部材)が没水したとしても、他の突出部材(22)が水から受ける抵抗を低減できる。これによって、船舶(10)の船体に対して作用する抵抗を低減できる。
【0070】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記一の突出部材(21)の前記突出量(P1)は、Loaの0.5%以内の量とされ、前記他の突出部材(22)の前記突出量(P2)は、前記一の突出部材(21)の前記突出量(P1)の20%以上75%以下の量とされている。
【0071】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、一の突出部材(21)の突出量(P1)は、Loaの0.5%以内の量とされ、他の突出部材(22)の突出量(P2)は、一の突出部材(21)の突出量(P1)の20%以上75%以下の量とされているので、一の突出部材(21)の突出量(P1)及び他の突出部材(22)の突出量(P2)をLoaに基づいて決定できる。
【0072】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、複数の前記突出部材(21,22)の前記船首(10A)側における端部(21A,22A)は、前記船舶(10)の長さ方向において前記船首(10A)の前縁(11A)から前記Loaの1%以内の位置に設けられ、複数の前記突出部材(21,22)の前記船舶(10)の船尾側における端部(21B,22B)は、前記長さ方向において前記船首(10A)の前縁(11A)から前記Loaの10%以内の位置に設けられている。
【0073】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、複数の突出部材(21,22)の船首(10A)側における端部(21A,22A)は、長さ方向において船首(10A)の前縁(11A)からLoaの1%以内の位置に設けられ、複数の突出部材(21,22)の船舶(10)の船尾側における端部(21B,22B)は、長さ方向において船首(10A)の前縁(11A)からLoaの10%以内の位置に設けられているので、複数の突出部材(21,22)の船舶(10)の長さ方向に沿う寸法(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0074】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記一の突出部材(21)は、複数の前記突出部材(21,22)のうち、前記船舶(10)の深さ方向において最も上方に設けられた前記突出部材とされ、前記一の突出部材(21)の前記船首(10A)側における端部(21A)は、前記深さ方向において前記満載喫水線(Ll)から前記Loaの3%以内の位置に設けられ、前記一の突出部材(21)の前記船尾側における端部(21B)は、前記深さ方向において前記満載喫水線(Ll)から前記Loaの2%以内の位置に設けられている。
【0075】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、一の突出部材(21)は、複数の突出部材(21,22)のうち、船舶(10)の深さ方向において最も上方に設けられた突出部材とされ、一の突出部材(21)の船首(10A)側における端部(21A)は、深さ方向において満載喫水線(Ll)からLoaの3%以内の位置に設けられ、一の突出部材(21)の船尾側における端部(21B)は、深さ方向において満載喫水線(Ll)からLoaの2%以内の位置に設けられているので、最も上方に設けられた突出部材(21)の高さ位置(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0076】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記他の突出部材(22)は、複数の前記突出部材(21,22)のうち、前記船舶(10)の深さ方向において最も下方に設けられた前記突出部材とされ、前記他の突出部材(22)の前記船首(10A)側における端部(22A)は、前記深さ方向において前記満載喫水線(Ll)から前記Loaの2%以内の位置に設けられ、前記他の突出部材(22)の前記船尾側における端部(22B)は、前記深さ方向において前記満載喫水線(Ll)から前記Loaの1%以内の位置に設けられている。
【0077】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、他の突出部材(22)は、複数の突出部材(21,22)のうち、船舶(10)の深さ方向において最も下方に設けられた突出部材とされ、他の突出部材(22)の船首(10A)側における端部(22A)は、深さ方向において満載喫水線(Ll)からLoaの2%以内の位置に設けられ、他の突出部材(22)の船尾側における端部(22B)は、深さ方向において満載喫水線(Ll)からLoaの1%以内の位置に設けられているので、最も下方に設けられた突出部材(22)の高さ位置(範囲)をLoaに基づいて決定できる。
【0078】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、複数の前記突出部材(21,22)は、前記幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、前記船側外板(11)から水平方向に突出している。
【0079】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、複数の突出部材(21,22)は、幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、船側外板(11)から水平方向に突出しているので、突出部材(21,22)が没水したとしても、突出部材(21,22)が水から受ける抵抗を低減できる。これによって、船舶(10)の船体に対して作用する抵抗を低減できる。
【0080】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、複数の前記突出部材(21,22)は、前記幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、前記船側外板(11)から水平方向に対して下方に傾斜するように突出している。
【0081】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、複数の突出部材(21,22)は、幅方向に沿って互いに平行に設けられるとともに、船側外板(11)から水平方向に対して下方に傾斜するように突出しているので、突出部材(21,22)による波返しの効果を向上させることができる。
【0082】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、複数の前記突出部材(21,22)は、断面視したときに楔形とされている。
【0083】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、複数の突出部材(21,22)は、断面視したときに楔形とされているので、突出部材(21,22)の強度を向上させることができる。
【0084】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記突出部材(21)は、該突出部材(21)の下面(21C)と前記船側外板(11)とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされている
【0085】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、突出部材(21)は、突出部材(21)の下面(21C)と船側外板(11)とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされているので、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面(21C)の面積の増加を抑制することができる。これによって、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面(21C)が波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0086】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記突出部材(21)の前記下面(21C)と前記船側外板(11)との交点を前記突出量(P1)の下側起点(CA)としたとき、前記下側起点(CA)から前記突出量(P1)の50%の位置における前記下面(21C)の接線と前記下側起点(CA)における前記船側外板(11)の接線とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされている。
【0087】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、突出部材(21)の下面(21C)と船側外板(10)との交点を突出量(P1)の下側起点(CA)としたとき、下側起点(CA)から突出量(P1)の50%の位置における下面(21C)の接線と下側起点(CA)における船側外板(11)の接線とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされているので、下面(21C)が曲面の場合であっても、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、下面(21C)が波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0088】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記突出部材(21)は、該突出部材(21)の上面(21D)と前記船側外板(11)とのなす角度(φ)が90°を越え160°未満とされている。
【0089】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、突出部材(21)は、突出部材(21)の上面(21D)と船側外板(11)とのなす角度(φ)が90°を越え160°未満とされているので、上面(21D)の面積の増加を抑制することができる。これによって、突出部材(21)の没水時に突出部材(21)の上面(21D)が波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0090】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記突出部材(21)の前記上面(21D)と前記船側外板(11)との交点を前記突出量(P1)の上側起点(DA)としたとき、前記上側起点(DA)から前記突出量(P1)の50%の位置における前記上面(21D)の接線と前記上側起点(DA)における前記船側外板(11)の接線とのなす角度(φ)が90°を越え160°未満とされている。
【0091】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、突出部材(21)の上面(21D)と船側外板(11)との交点を突出量(P1)の上側起点(DA)としたとき、上側起点(DA)から突出量(P1)の50%の位置における上面(21D)の接線と上側起点(DA)における船側外板(11)の接線とのなす角度(φ)が90°を越え160°未満とされているので、上面(21D)が曲面の場合であっても、突出部材(21)の没水時に突出部材(21)の上面(21D)が波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0092】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記船舶(10)を底面から見たとき、前記突出部材(21)の突出方向の中心線(C1)と前記船尾(10B)側の前記突出部材(21)の縁部(21Ba)との交点における前記縁部(21Ba)の接線と、前記船舶(10)の前記長さ方向に垂直な面と、のなす角度(α)が60°を越え90°未満とされている。
【0093】
本態様に係る造波低減装置(20)によれば、船舶(10)を底面から見たとき、突出部材(21)の突出方向の中心線(C1)と船尾(10B)側の突出部材(21)の縁部(21Ba)との交点における縁部(21Ba)の接線と、船舶(10)の長さ方向に垂直な面と、のなす角度(α)が60°を越え90°未満とされているので、造波抵抗低減の効果を維持しつつ、突出部材(21)の縁部(21Ba)が波から受ける摩擦抵抗を低減することができる。
【0094】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)は、船舶(10)の船首(10A)側にて船側外板(11)から前記船舶(10)の幅方向に突出するとともに前記船首(10A)から船尾(10B)に向かって延在する突出部材(21)を備え、前記突出部材(21)は、該突出部材(21)の下面(21C)と前記船側外板(11)とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされている。
【0095】
また、本開示の一実施形態に係る造波低減装置(20)において、前記突出部材(21)の前記下面(21C)と前記船側外板(11)との交点を前記突出量(P1)の下側起点(CA)としたとき、前記下側起点(CA)から前記突出量(P1)の50%の位置における前記下面(21C)の接線と前記下側起点(CA)における前記船側外板(11)の接線とのなす角度(θ)が135°を越え165°未満とされている。
【0096】
また、本開示の一実施形態に係る船舶(10)は、上記のいずれかに記載の造波低減装置(20)を備えている。
【符号の説明】
【0097】
10 船舶
10A 船首
10B 船尾
11 船側外板
11A 船首前縁
20 造波低減装置
21 フィン(一の突出部材)
21A 前端
21B 後端
21Ba 後端縁(縁部)
21C 下面
21D 上面
22 フィン(他の突出部材)
22A 前端
22B 後端
100 比較例の船舶