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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
G02C7/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022522527
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021006984
(87)【国際公開番号】W WO2021229889
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020085298
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】祁 華
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-500328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上に収束させるベース領域と、
ベース領域と接するデフォーカス領域であって、デフォーカス領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜に入射する性質を持つ複数のデフォーカス領域と、
を備え、
デフォーカス領域の光束の広がり角(Defocus Spot Angle:DSA)は、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に増加し、
デフォーカス領域は、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での大きさが等しい一方、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向けてデフォーカスパワーが大きくなる、眼鏡レンズ。
【請求項2】
眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に、デフォーカス領域のDSAは5.0~50.0分の範囲で変化する、請求項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
全デフォーカス領域のうち少なくともいずれかは軸回転対称形状であり、
軸回転対称形状のデフォーカス領域において、中心箇所から周辺箇所に向けて屈折力が増加する、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での中心箇所の屈折力は等しい、請求項1~のいずれか一つに記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
眼鏡レンズは近視進行抑制レンズである、請求項1~のいずれか一つに記載の眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視等の屈折異常の進行を抑制する眼鏡レンズとして、レンズ上複数の処方屈折力よりプラスの屈折力を持つ島状領域が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。以下、この島状領域をデフォーカス領域と呼ぶ。この構成の眼鏡レンズによれば、物体側の面から入射し眼球側の面から出射する光束が、原則的には装用者の網膜上に焦点を結ぶが、デフォーカス領域の部分を通過した光束は網膜上よりも手前の位置で焦点を結ぶようになっており、これにより近視の進行が抑制されることになる。
【0003】
本明細書において、光軸方向において視認すべき物体が存在する前方方向のことを手前側と称し、手前側の逆方向であって、光軸方向において後方すなわち眼鏡レンズから眼球に向かう奥行き方向のことを奥側と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国出願公開第2017/0131567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、以下の新規の観点に基づいて本発明を知見した。
【0006】
図1は、網膜上1mmあたりの桿体・錐体の細胞数を縦軸とし、視角(単位:度)を横軸としたときのグラフである。
【0007】
網膜上には光センサーに相当する細胞が分布している。光センサーに相当する細胞は、網膜上に一様に分布されているわけではない。例えば、網膜における中心窩部分には錐体細胞が分布し、中心窩部分から離れた周縁部分には桿体細胞が分布している。
【0008】
中心窩部分に主に分布する錐体は、小さいサイズの光斑に対して敏感である。周縁部分に主に分布する桿体は、大きいサイズの光斑に対して敏感である。つまり、錐体と桿体の分布の相違により、網膜における中心窩部分と周縁部分とでは、光斑の変化に対する感度が異なると考えられる。
【0009】
本発明の一実施例は、網膜上の細胞の分布を活用した近視進行抑制技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図2は、眼鏡レンズの中央部を通して物体を見るとき、眼鏡レンズの中央部を通過した光が網膜の中心窩部分に到達すると共に、眼鏡レンズの周辺部を通過した光が網膜の周縁部分に到達する様子を示す概略図である。
【0011】
網膜における中心窩部分には錐体細胞が分布し、網膜の中心窩部分から離れた周縁部分には桿体細胞が分布している。そして、図2に示すように、網膜の中心窩部分に到達する光は、主に、眼鏡レンズの中央部を通過した光であり、網膜の周縁部分に到達する光は、主に、眼鏡レンズの周辺部を通過した光である。
【0012】
つまり、眼鏡レンズの中央部に設けられるデフォーカス領域では、主に錐体細胞が光を受けることを想定し、比較的小さいサイズの光斑が生じる構成を採用すると共に、眼鏡レンズの周辺部に設けられるデフォーカス領域では、主に桿体細胞が光を受けることを想定し、比較的大きいサイズの光斑が生じる構成を採用することを想到した。
【0013】
上記知見に基づき想到されたのが以下の各態様である。
本発明の第1の態様は、
物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上に収束させるベース領域と、
ベース領域と接するデフォーカス領域であって、デフォーカス領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜に入射する性質を持つ複数のデフォーカス領域と、
を備え、
眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域では主として錐体向けの大きさの光斑をもたらす光束の広がり角(Defocus Spot Angle:DSA)が設定され、眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域では主として桿体向けの大きさの光斑をもたらす光束の広がり角(Defocus Spot Angle:DSA)が設定された、眼鏡レンズである。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に、デフォーカス領域のDSAは増加する。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の態様であって、
眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に、デフォーカス領域のDSAは5.0~50.0分の範囲で変化する。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに記載の態様であって、
デフォーカス領域は、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での中心箇所のデフォーカスパワーが等しい一方、眼鏡レンズの中心部から周辺部に向けてデフォーカス領域が大きくなる、眼鏡レンズである。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに記載の態様であって、
デフォーカス領域は、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での大きさが等しい一方、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向けてデフォーカスパワーが大きくなる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに記載の態様であって、
全デフォーカス領域のうち少なくともいずれかは軸回転対称形状であり、
軸回転対称形状のデフォーカス領域において、中心箇所から周辺箇所に向けて屈折力が増加する。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに記載の態様であって、
全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での中心箇所の屈折力は等しい。
【0020】
本発明の第8の態様は、第1~第7のいずれかの態様に記載の態様であって、
眼鏡レンズは近視進行抑制レンズである。
【0021】
本発明の第9の態様は、
物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上に収束させるベース領域と、
ベース領域と接するデフォーカス領域であって、デフォーカス領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜に入射する性質を持つ複数のデフォーカス領域と、
を備え、
眼鏡レンズの中心部から周辺部に向けて、各デフォーカス領域が大きくなる、眼鏡レンズである。
好適には、デフォーカス領域は、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上の数のデフォーカス領域での中心箇所のデフォーカスパワーが等しい。
【0022】
上記の態様に対して組み合わせ可能な本発明の他の態様は以下の通りである。
【0023】
デフォーカス領域の平面視での配置の一例としては、各凸部領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各デフォーカス領域の中心が配置)する例が挙げられる。
【0024】
眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に向けて、デフォーカス領域のDSAを増加させる際、デフォーカス領域所在位置の眼鏡レンズ中心からの距離を変数とした関数としてDSAを決めるとよい。この関数は連続単調増加の関数、ステップ関数のように段階的に増加する関数、又は両者の組み合わせが考えられる。DSAの増加量には限定は無いが、例えば5.0~50.0分の範囲であってもよいし、好ましくは8.0~30.0の範囲である。
【0025】
区域の数及び形状には限定は無いが、後掲の実施例の項目で挙げるようにデフォーカス領域を設ける区域の数は2~4が好ましく、区域の形状は同心円状又は同心楕円状であるのが好ましい。
【0026】
但し、本発明は、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かうに従ってデフォーカス領域のDSAが段々と増加するだけでなく、一部のデフォーカス領域のDSAが減少することを排除しない。その場合、各区域内でのDSAの平均値が、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かうに従って大きくなるよう設定すればよい。
【0027】
眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAは5.0~15.0分の範囲内とするのが好ましく、7.0~13.0分の範囲内とするのがより好ましく、8.0~12.0分の範囲内とするのが更に好ましい。また、好適には、最も中央寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAが本段落に記載の範囲内である。
【0028】
眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAは10.0~50.0分の範囲内とするのが好ましく、12.0~25.0分の範囲内とするのがより好ましく、14.0~20.0分の範囲内とするのが更に好ましい。また、好適には、最も周辺寄り(すなわちデフォーカス領域のうち最も眼鏡レンズ外縁)に配置されたデフォーカス領域のDSAが本段落に記載の範囲内である。
【0029】
デフォーカス領域のうち最大のDSAの値と最小のDSAの値との差が4.0~10.0分であるのが好ましく、5.0~9.0分であるのがより好ましい。この範囲であれば、DSAの差が大きすぎることに起因する違和感を低減できる。
【0030】
全デフォーカス領域の平均DSAは10.0~14.0分であるのが好ましく、11.0~13.0分であるのがより好ましい。
【0031】
デフォーカス領域が形成された各区域1~3が同心で形成される場合、デフォーカス領域が形成された区域のうち眼鏡レンズの中央(例:芯取り中心)から最も近い区域1であって中央から4.50~9.75mmの環状の区域1では、DSA又は該区域1内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、5.0~15.0分の範囲内とするのが好ましく、7.0~13.0分の範囲内とするのがより好ましく、8.0~12.0分の範囲内とするのが更に好ましい。このとき、眼鏡レンズの中央を含む区域1の内側にデフォーカス領域が形成されている場合、該デフォーカス領域のDSA又はその平均値は、区域1でのDSA又はその平均値よりも低い値とするのが好ましい。
【0032】
区域1に隣接する環状の区域2であって中央から9.75~13.00mmの区域2では、DSA又は該区域2内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、8.0~30.0分の範囲内とするのが好ましく、9.0~20.0分の範囲内とするのがより好ましく、10.0~15.0分の範囲内とするのが更に好ましい。
【0033】
区域2に隣接する環状の区域3であって中央から13.00~16.25mmの区域3では、DSA又は該区域3内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、9.0~30.0分の範囲内とするのが好ましく、12.0~25.0分の範囲内とするのがより好ましく、15.0~19.0分の範囲内とするのが更に好ましい。
【0034】
区域2のDSAの値(又はその平均値)から区域1のDSAの値(又はその平均値)を差し引いた値、すなわち区域1から区域2への増加量は、2.5~5.0分であるのが好ましく、3.0~5.0分であるのがより好ましく、3.5~5.0分であるのが更に好ましい。
【0035】
区域3のDSAの値(又はその平均値)から区域2のDSAの値(又はその平均値)を差し引いた値、すなわち区域2から区域3への増加量は、2.5~5.0分であるのが好ましく、3.0~5.0分であるのがより好ましく、3.5~5.0分であるのが更に好ましい。
【0036】
後掲の実施例では各区域内のデフォーカス領域は同一形状としている。その一方、本発明はこの態様に限定されない。例えば、4.50~9.75mmの環状の区域1内のデフォーカス領域の形状は同一でなくともよい。例えば区域同士の境界が、中央から13.00~16.25mmの範囲内に存在しても構わず、区域同士の境界は適宜設定可能である。その場合でも、各区域において、DSAの平均値が上記各数値範囲内に収まるのが好ましい。
【0037】
後掲の実施例1が示すように、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上(好適には90%以上、より好適には95%以上、更に好適には99%以上、特に好適には100%)の数のデフォーカス領域でのデフォーカスパワーの変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)である一方、眼鏡レンズの中心部から周辺部に向けてデフォーカス領域(径)を大きくしてもよい。径の具体的な数値に限定は無いが、例えば、眼鏡レンズ上のデフォーカス領域の直径の最小値は0.5~1.0mmの範囲内、最大値は0.8~1.3mmの範囲内であるのが好ましい。最大値と最小値の差は0.3~0.6mmの範囲内であるのが好ましい。
【0038】
後掲の実施例2が示すように、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上(好適には90%以上、より好適には95%以上、更に好適には99%以上、特に好適には100%)の数のデフォーカス領域での大きさの変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)である一方、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向けてデフォーカスパワーを大きくしてもよい。デフォーカスパワーの具体的な数値に限定は無いが、例えば、眼鏡レンズ上のデフォーカス領域がもたらすデフォーカスパワーの最小値は1.5~4.5D[単位:ディオプター]の範囲内、最大値は3.0~10.0Dの範囲内であるのが好ましい。最大値と最小値の差は1.0~5.0Dの範囲内であるのが好ましい。
【0039】
各デフォーカス領域の中心箇所の屈折力の変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)であるのが好ましい。なお、本段落の記載に限らず、本明細書で述べる上記変動幅の範囲に収まるものは「等しい」又は「一定」と称する。変動幅を正の値とする場合、変動幅は100×(最大値-最小値)/最大値であってもよい。
【0040】
軸回転対称形状を有するデフォーカス領域の断面パワープロット(縦軸:DSA[分]、横軸:デフォーカス領域の中心箇所からの半径位置[mm])は、実施例3、4のように連続でもよいし、実施例5のように不連続でもよい。また、断面曲線が連続な場合、実施例3のように断面パワープロットが一つの数式により表されてもよいし、実施例4のように複数の数式により表されてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一実施例によれば、網膜上の細胞の分布を活用した近視進行抑制技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、網膜上1mmあたりの桿体・錐体の細胞数を縦軸とし、視角(単位:度)を横軸としたときのグラフである。
図2図2は、眼鏡レンズの中央部を通して物体を見るとき、眼鏡レンズの中央部を通過した光が網膜の中心窩部分に到達すると共に、眼鏡レンズの周辺部を通過した光が網膜の周縁部分に到達する様子を示す概略図である。
図3図3は、処方屈折力の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、眼鏡レンズの1つのデフォーカス領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。
図4図4は、各デフォーカス領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置された様子を示す概略平面図である。
図5図5は、実施例1の眼鏡レンズ上デフォーカス領域の分布を示す概略平面図である。
図6図6は、実施例2~5の眼鏡レンズ上デフォーカス領域の分布を示す概略平面図である。
図7図7(a)は、実施例3のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図7(b)は、実施例3のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図8図8(a)は、実施例3のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図8(b)は、実施例3のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図9図9(a)は、実施例4のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図9(b)は、実施例4のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図10図10(a)は、実施例4のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図10(b)は、実施例4のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図11図11は、実施例5のデフォーカス領域の断面概略図である。
図12図12(a)は、実施例5のリング1のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図12(b)は、実施例5のリング1のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図13図13(a)は、実施例5のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図13(b)は、実施例5のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
図14図14(a)は、実施例5のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。図14(b)は、実施例5のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について述べる。以下における図面に基づく説明は例示であって、本発明は例示された態様に限定されるものではない。本明細書に記載の無い内容は、特許文献1、特許文献1に記載の無い内容(特に製造方法に関する内容)はWO2020/004551号公報の記載が全て記載されているものとする。特許文献1の記載内容と該公報の記載内容に齟齬がある場合は該公報の記載を優先する。
【0044】
本明細書で挙げる眼鏡レンズは、物体側の面と眼球側の面とを有する。「物体側の面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側の面」とは、その反対、すなわち眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。この関係は、眼鏡レンズの基礎となるレンズ基材においても当てはまる。つまり、レンズ基材も物体側の面と眼球側の面とを有する。
【0045】
本明細書において「~」は所定の値以上且つ所定の値以下を指す。
【0046】
<眼鏡レンズ>
本発明の一態様に係る眼鏡レンズは、以下の通りである。
「物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上に収束させるベース領域と、
ベース領域と接するデフォーカス領域であって、デフォーカス領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜に入射する性質を持つ複数のデフォーカス領域と、
を備え、
眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域では主として錐体向けの大きさの光斑をもたらす光束の広がり角(Defocus Spot Angle)が設定され、眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域では主として桿体向けの大きさの光斑をもたらす光束の広がり角(Defocus Spot Angle)が設定された、眼鏡レンズ。」
【0047】
ベース領域とは、装用者の処方屈折力を実現可能な形状の部分であり、特許文献1の第1の屈折領域に対応する部分である。
【0048】
デフォーカス領域とは、その領域の中の少なくとも一部がベース領域による集光位置には集光させない領域である。デフォーカス領域とは、特許文献1の微小凸部に該当する部分である。本発明の一態様に係る眼鏡レンズは、特許文献1に記載の眼鏡レンズと同様、近視進行抑制レンズである。特許文献1の微小凸部と同様、本発明の一態様に係る複数のデフォーカス領域は、眼鏡レンズの物体側の面及び眼球側の面の少なくともいずれかに形成されればよい。本明細書においては、眼鏡レンズの物体側の面のみに複数のデフォーカス領域を設けた場合を主に例示する。
【0049】
本発明の一態様におけるデフォーカス領域は、デフォーカス領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜に入射する性質を持つ。「発散光」とは、発散光束(発散波面を有する光束)のことである。発散光束については、後掲の<本発明に至るまでの知見>にて説明する。
【0050】
本明細書における光斑の視野上の広がり角(Defocus Spot Angle)は、デフォーカス領域を透る光が網膜に生成する光斑の大きさを視角[単位:分]で表す指標である。以降、省略してDSAと称する。DSAは光束の広がり角ともいう。本明細書では、DSAが大きい場合、光斑が大きいことを意味する。
【0051】
本発明の一態様においては、眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域では主として錐体向けの大きさの光斑をもたらすDSAが設定される。
【0052】
特許文献1の図10に記載のように、眼鏡レンズの中央部にデフォーカス領域を形成する場合、該デフォーカス領域において、主として錐体向けの大きさの光斑をもたらすDSAが設定される。
【0053】
その一方、特許文献1の図1に記載のように、眼鏡レンズの中央部にデフォーカス領域を形成しない場合、眼鏡レンズの周辺部であって比較的中央部に近い部分に形成されたデフォーカス領域において、主として錐体向けの大きさの光斑をもたらすDSAが設定される。
【0054】
「眼鏡レンズの中央部」とは、眼鏡レンズの幾何中心、光学中心又は芯取り中心及びその近傍を指す。本明細書では、芯取り中心及びその近傍の場合を例示する。
【0055】
上記のいずれの場合も含めるべく、「眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域」という表現を使用する。
【0056】
それと共に、本発明の一態様においては、眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域では主として桿体向けの大きさの光斑をもたらすDSAが設定される。
【0057】
「眼鏡レンズの周辺寄り」とは、上記眼鏡レンズの中央寄りの配置よりも外周側のことを意味する。
【0058】
本発明の一態様においては、「主として錐体向けの大きさの光斑」は、「主として桿体向けの大きさの光斑」よりも小さい。つまり、主として錐体向けの大きさの光斑をもたらすDSAは、主として桿体向けの大きさの光斑をもたらすDSAよりも小さい。この条件を満たせば、光斑の大きさには限定は無いし、DSAの値にも限定は無い。DSAの値の好適例は後述する。
【0059】
「主として錐体向け」とは、図1に示すように、中心窩部分には錐体のみが存在するわけではなく、桿体も存在することを考慮しての表現である。「主として桿体向け」についても同様の考慮のうえでの表現である。
【0060】
本発明の一態様によれば、網膜上の細胞の分布を活用した近視進行抑制技術を提供できる。一例としては、網膜の錐体細胞と桿体細胞とを十分活用し、効果的に眼球成長を抑制し、近視進行を遅らせることができる。
【0061】
<眼鏡レンズの好適例及び変形例>
本発明の一態様における眼鏡レンズの好適例及び変形例について、以下に述べる。特に、DSAについて詳述する。DSAについて説明する前に、本発明に至るまでの知見について説明する。
【0062】
(本発明に至るまでの知見)
特許文献1に記載の発明は、第2の屈折領域である複数のデフォーカス領域を通過した光束が網膜の手前に集光することにより近視進行を抑制する、というものである。特許文献1に記載の発明が近視進行抑制効果を発揮する際のメカニズムに関し、本発明者は再度検討した。
【0063】
本明細書に記載の「集光」とは、必ずしもほぼ無収差の光が一点にあつまる狭義の集光に限らず、たとえば回折レンズのフレア光の密度が高い位置などの広義の集光も含む。
【0064】
近視進行抑制効果のメカニズムを理解するためには、近視進行のメカニズムを理解するのが近道である。
【0065】
児童期の近視進行のメカニズムとして、像の位置(ピントが合う位置)が網膜の手前にあるか、それとも網膜の奥にあるかによって眼球の成長が抑制されるか、それとも促進されるかを決めるといわれている。像が常に網膜の奥にある場合、眼球の成長が促進され、網膜に像を映るようにする。像が常に手前にある場合、眼球の成長が抑制され、網膜に映るようにする。像が常に網膜の奥にある状態は、児童が近方視の時間が長く、調節が不十分 (調節ラグ発生)が原因とされている。特許文献1に記載の発明は、眼に入る一部の光を網膜の手前に集光させ、眼球成長を抑制することを意図している。
【0066】
光を感知する仕組みとしては上記網膜上の錐体及び桿体等が知られているが、見る対象物の像が網膜の奥に存在するか手前に存在するかを直接検知する仕組みは眼には無いと考えられている。すると、別の仕組みで像の位置を検知する何らかの仕組みが人間に存在するはずである。
【0067】
その仕組みの一つの可能性として、調節微動による網膜上に映る光斑の変化を検知することが考えられる。本明細書の「光斑」とは、物体点の光が眼鏡レンズの一部と眼球光学系を通して網膜にできた光の分布のことで、ピントが合っている場合は一点に相当する分布となり、ピントが合わない場合(デフォーカスの場合)は大きさを持つ光の分布となる。
【0068】
例えば、該像が網膜の奥に存在する場合、物体からの光束が網膜において収束光束として入射している。眼球内の水晶体の調節力が緩められる(毛様体が緩められて水晶体が薄くなる)と像が更に奥に移動し、網膜上での光斑が大きくなる。逆に調節が強まる(毛様体が緊張して水晶体が厚くなる)と網膜上での光斑が小さくなる。調節微動による光斑の大きさの変化が視神経やその後の皮質による情報処理により検知され、眼球成長を促す信号が出され、近視が進む仕組みがあると考えられる。
【0069】
網膜上の像の変化を検知する仕組みのもう一つの可能性として、光斑の光量密度の検知が挙げられる。
【0070】
照射する光量が一定の場合、光斑の面積が小さいほど、光量密度が大きい。眼球内の水晶体の調節力が緩められると像が更に奥に移動し、網膜の光斑の光量密度が低くなる。逆に調節が強まると網膜の光斑の光量密度が高くなる。調節微動による光斑光量密度の変化が視神経やその後の皮質による情報処理により検知され、眼球成長を促す信号が出され、近視が進む仕組みがあると考えられる。
【0071】
いずれの仕組みにしても、特許文献1に記載の発明のメカニズムとしては、眼球調節微動による物体点の網膜上の光斑の大きさの変化(又は光量密度変化)の知覚を利用して近視進行を抑制している。つまり、所定の眼球調節量当たりの光斑の大きさの変化量又は光量密度変化量が大きいほど、近視進行抑制効果が高いと考えられる(観点1)。
【0072】
上記調節微動で例示したように、該像が網膜の奥に存在する場合、物体からの光束が網膜において収束光束として入射している。収束光束が形成する光の波面を収束波面という。つまり、上記調節ラグ説に則れば、網膜に入射する波面が収束波面の時に近視が進行する。
【0073】
もしそうならば、逆に発散波面が網膜に入射する状況を作れば、近視進行を抑制することができる(観点2)。実際に特許文献1では、眼鏡レンズに第2の屈折領域を設け、第1の屈折領域を通過する光束が収束する焦点とは別に、第2の屈折領域を通過する光束を網膜の手前にて収束させている。第2の屈折領域を通過する光束が網膜の手前にて収束するということは、網膜に対しては発散波面が入射されることを意味する。
【0074】
上記観点1及び観点2に基づけば、網膜に発散光束を入射させつつ、所定の眼球調節量当たりの光斑の大きさ(又は光量密度)の変化を大きくすべく、該発散光束の発散度を大きくすることが、近視進行抑制効果の向上につながる。本明細書においては、該発散光束の発散度を大きくすることを、光斑を大きくすることと関連付けている。
【0075】
(光斑の大きさとデフォーカス領域の構成との関係)
以下、デフォーカス領域の構成により、どのように光斑の大きさが変化するかについて説明する。
【0076】
図3は、処方屈折力の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、眼鏡レンズの1つのデフォーカス領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。
【0077】
図3に示すように、無限遠方物体からの入射光束においてベース領域を通過する光束は、網膜上の位置Aに集光する。該入射光束においてデフォーカス領域を通過する光束は、網膜上の位置Aに発散光として入射し、網膜上にて光斑を形成する。デフォーカス領域の高さhで入射した光線の網膜上の点の高さhは、下記の式で表すことができる。
【数1】
【0078】
ここで、δはレンズ全体が高さhにおけるプリズム偏角で、デフォーカス領域によるプリズム偏角δdefと眼光学系(処方屈折力の眼鏡レンズと眼球の光学系全体)によるδeyeの和である。
【0079】
本発明の一態様では、特許文献1に記載のように、デフォーカス領域が凸状領域である場合を例示する。各凸状領域はレンズの機能を有するため、小玉レンズともいう。
【0080】
eyeは眼光学系の焦点距離で、Deyeは眼光学系の屈折力である。つまり、デフォーカス領域に入射した光は、網膜上に円形の光斑を形成し、その半径RPSFは、下記の式で表すことができる。
【数2】
ここで、δmaxは小玉レンズの最大プリズム偏角で、通常は小玉レンズの縁部でのプリズム偏角である。
【0081】
eyeに対して調節の分の屈折力Aを加えると、網膜上光斑の半径RPSF(A)は、下記の式で表すことができる。
【数3】
【0082】
更に、網膜上光斑の半径のAに対する導関数は、下記の式で表すことができる。
【数4】
【0083】
このように、光斑の大きさが調節によって減少する勾配は、小玉レンズの最大プリズム偏角δmaxに比例する。
【0084】
小玉レンズが球面形状と仮定し、焦点距離に比べて十分に小玉の高さが小さい場合、下記の式が成り立つ。
【数5】
ここで、Rdefは小玉レンズの半径、Ddefは小玉レンズの屈折力である。「小玉レンズの半径」は、小玉レンズが存在する部分のレンズ厚さ方向から見たときの半径である。説明の便宜上、小玉レンズの半径は、平面視での半径とする。
【0085】
本明細書における「屈折力」は、屈折力が最小となる方向aの屈折力と、屈折力が最大となる方向b(方向aに対して垂直方向)の屈折力との平均値である平均屈折力を指す。中央部の屈折力とは、例えば、本発明の一態様のようにデフォーカス領域が小玉状のセグメントである場合、平面視の中心における頂点屈折力のことを指す。
【0086】
「デフォーカスパワー」は、デフォーカス領域の形状及び/又は素材がもたらす屈折力であって、各デフォーカス領域に対応する焦点位置Xでのデフォーカス値の平均と、各デフォーカス領域以外の部分を通過した光線が収束する位置であって複数の焦点位置Xよりも奥側にある焦点位置Yでのフォーカス値との差を指す。別の言い方をすると、「デフォーカスパワー」とは、デフォーカス領域の所定箇所(中心箇所、周辺箇所、又は一つのデフォーカス領域全体)の最小屈折力と最大屈折力の平均値からベース領域の屈折力を差し引いた差分である。
【0087】
小玉レンズが球面形状と仮定した場合、[数5]が示すように、近視進行抑制効果は小玉のデフォーカスパワーだけではなく大きさも重要なファクターとなる。小玉レンズが非球面形状と仮定した場合、[数4]が示すように、最大プリズム偏角δmaxが重要なファクターとなる。
【0088】
実際、人間が感じるのは、最大プリズム偏角δmaxに対応する視角範囲のボヤケ(いわゆる光斑)である。通常、このボヤケの直径は2δmaxで表される。そのため、本明細書におけるDSAは最大プリズム偏角δmaxの2倍の値と等しい。
【0089】
一具体例を挙げると、半径が0.5mm、デフォーカスパワーが3.5Dの小玉レンズがデフォーカス領域である場合、DSAは以下の値となる。
DSA=2δmax=2×3.5×0.5/1000(radian)≒12分
【0090】
本明細書における「プリズム偏角」は、光線がレンズに入射する方向と出射する方向の角度を指す。
【0091】
図3に示すように、デフォーカス領域の中心箇所にはプリズムがなく、出射光線はベースレンズの出射光線同一であり、網膜中心に到達する。その一方、デフォーカス領域の周辺部はプリズムがあり、光線が網膜の中心から少しずれた位置に到達する。
【0092】
上述の通り、デフォーカス領域の最大プリズム偏角により、網膜上光斑の大きさが決定される。最大プリズム偏角は、通常、デフォーカス領域の縁部のプリズムにより決定される。つまり、デフォーカス領域のDSAはデフォーカス領域の縁部のプリズム偏角により決定される。デフォーカス領域が軸回転対称の表面の突起の場合、プリズム偏角は突起形状の断面曲線の勾配に比例する。この場合、突起形状の断面曲線の縁部の勾配を設計することで、デフォーカス領域のDSAを調整することができる
【0093】
(デフォーカス領域のDSAに係る好適例)
本発明の好適例では、眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域(例:小玉レンズ)のDSAが、眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域(例:小玉レンズ)のDSAよりも大きい。この構成は以下のように表現できる。
「DSAは、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に増加するのが好ましい。」
【0094】
なお、上記構成は、本発明の一態様において述べた「主として錐体向けの大きさの光斑をもたらすDSA」「主として桿体向けの大きさの光斑をもたらすDSA」を具体的な構成として表現している。そのため、本発明の一態様において述べた表現の代わりに上記好適な構成により本発明を表現してもよい。
【0095】
ちなみに、DSAが眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に増加する際、後掲の各実施例に示すように、段階的にDSAを増加させてもよい。例えば、眼鏡レンズの中心からの距離に応じて同心形状で区域を分け、各区域間では異なるDSAのデフォーカス領域を形成する一方、各区域内ではDSAを等しくしてもよい。そうではなく、連続的にDSAを増加させてもよい。いずれの場合も、「眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向にDSAを増加させる」という表現に含まれる。
【0096】
区域の数及び形状には限定は無いが、後掲の実施例の項目で挙げるようにデフォーカス領域を設ける区域の数は2~4が好ましく、区域の形状は同心円状又は同心楕円状であるのが好ましい。
【0097】
但し、本発明は、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かうに従ってデフォーカス領域のDSAが段々と増加するだけでなく、一部のデフォーカス領域のDSAが減少することを排除しない。その場合、各区域内でのDSAの平均値が、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かうに従って大きくなるよう設定すればよい。
【0098】
デフォーカス領域のDSAは、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向けて5.0分から50.0分の範囲内に収まるように変化するのが好ましく、8.0分から30.0分の範囲に収まるように変化するのがより好ましい。
【0099】
眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向に向けて、デフォーカス領域のDSAを増加させる際、デフォーカス領域所在位置の眼鏡レンズ中心からの距離を変数とした関数としてDSAを決めるとよい。この関数は連続単調増加の関数、ステップ関数のように段階的に増加する関数、又は両者の組み合わせが考えられる。
【0100】
眼鏡レンズの中央部にデフォーカス領域を形成しない場合、中央部のベース領域に最も近接するデフォーカス領域のDSAは5.0分以上とするのが好ましく、8.0分以上とするのがより好ましい。
【0101】
眼鏡レンズの中央寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAは5.0~15.0分の範囲内とするのが好ましく、7.0~13.0分の範囲内とするのがより好ましく、8.0~12.0分の範囲内とするのが更に好ましい。また、好適には、最も中央寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAが本段落に記載の範囲内である。
【0102】
眼鏡レンズの周辺寄りに配置されたデフォーカス領域のDSAは10.0~50.0分の範囲内とするのが好ましく、12.0~25.0分の範囲内とするのがより好ましく、14.0~20.0分の範囲内とするのが更に好ましい。また、好適には、最も周辺寄り(すなわちデフォーカス領域のうち最も眼鏡レンズ外縁)に配置されたデフォーカス領域のDSAが本段落に記載の範囲内である。
【0103】
デフォーカス領域のうち最大のDSAの値と最小のDSAの値との差が4.0~10.0分であるのが好ましく、5.0~9.0分であるのがより好ましい。この範囲であれば、DSAの差が大きすぎることに起因する違和感を低減できる。
【0104】
全デフォーカス領域の平均DSAは10.0~14.0分であるのが好ましく、11.0~13.0分であるのがより好ましい。本発明者の鋭意研究により、DSAが12.0分のときの光斑だと、眼鏡レンズの見え方に対する影響を低減しつつ、近視抑制に有効であるという知見が得られている。本段落の範囲は、この知見を基に規定している。
【0105】
後掲の実施例の項目にて示す区域分けを参照してDSAを規定してもよい。具体的には、実施例2~5を参照し、以下の規定を採用するのが好ましい。
【0106】
デフォーカス領域が形成された各区域1~3が同心で形成される場合、デフォーカス領域が形成された区域のうち眼鏡レンズの中央(例:芯取り中心)から最も近い区域1であって中央から4.50~9.75mmの環状の区域1では、DSA又は該区域1内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、5.0~15.0分の範囲内とするのが好ましく、7.0~13.0分の範囲内とするのがより好ましく、8.0~12.0分の範囲内とするのが更に好ましい。このとき、眼鏡レンズの中央を含む区域1の内側にデフォーカス領域が形成されている場合、該デフォーカス領域のDSA又はその平均値は、区域1でのDSA又はその平均値よりも低い値とするのが好ましい。
【0107】
区域1に隣接する環状の区域2であって中央から9.75~13.00mmの区域2では、DSA又は該区域2内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、8.0~30.0分の範囲内とするのが好ましく、9.0~20.0分の範囲内とするのがより好ましく、10.0~15.0分の範囲内とするのが更に好ましい。
【0108】
区域2に隣接する環状の区域3であって中央から13.00~16.25mmの区域3では、DSA又は該区域3内のデフォーカス領域のDSAの平均値は、9.0~30.0分の範囲内とするのが好ましく、12.0~25.0分の範囲内とするのがより好ましく、15.0~19.0分の範囲内とするのが更に好ましい。
【0109】
区域2のDSAの値(又はその平均値)から区域1のDSAの値(又はその平均値)を差し引いた値、すなわち区域1から区域2への増加量は、2.5~5.0分であるのが好ましく、3.0~5.0分であるのがより好ましく、3.5~5.0分であるのが更に好ましい。
【0110】
区域3のDSAの値(又はその平均値)から区域2のDSAの値(又はその平均値)を差し引いた値、すなわち区域2から区域3への増加量は、2.5~5.0分であるのが好ましく、3.0~5.0分であるのがより好ましく、3.5~5.0分であるのが更に好ましい。
【0111】
後掲の実施例では各区域内のデフォーカス領域は同一形状としている。その一方、本発明はこの態様に限定されない。例えば、4.50~9.75mmの環状の区域1内のデフォーカス領域の形状は同一でなくともよい。例えば区域同士の境界が、中央から13.00~16.25mmの範囲内に存在しても構わず、区域同士の境界は適宜設定可能である。その場合でも、各区域において、DSAの平均値が上記各数値範囲内に収まるのが好ましい。
【0112】
(デフォーカス領域がもたらすデフォーカスパワー及びデフォーカス領域の大きさについての好適例)
後掲の実施例1が示すように、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上(好適には90%以上、より好適には95%以上、更に好適には99%以上、特に好適には100%)の数のデフォーカス領域でのデフォーカスパワーの変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)である。その一方、眼鏡レンズの中心部から周辺部に向けてデフォーカス領域(径)を大きくしてもよい。このように、眼鏡レンズ上の位置であって眼鏡レンズの周辺に向かう方向に位置したデフォーカス領域であればあるほどデフォーカス領域(径)を大きくする好適例は、本発明を構成により表現した一態様である。径の具体的な数値に限定は無いが、例えば、眼鏡レンズ上のデフォーカス領域の直径の最小値は0.5~1.0mmの範囲内、最大値は0.8~1.3mmの範囲内であるのが好ましい。最大値と最小値の差は0.3~0.6mmの範囲内であるのが好ましい。
【0113】
後掲の実施例2が示すように、眼鏡レンズ上において、全デフォーカス領域の80%以上(好適には90%以上、より好適には95%以上、更に好適には99%以上、特に好適には100%)の数のデフォーカス領域での大きさの変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)である一方、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向けてデフォーカスパワーを大きくしてもよい。デフォーカスパワーの具体的な数値に限定は無いが、例えば、眼鏡レンズ上のデフォーカス領域がもたらすデフォーカスパワーの最小値は1.5~4.5D[単位:ディオプター]の範囲内、最大値は3.0~10.0Dの範囲内であるのが好ましい。最大値と最小値の差は1.0~5.0Dの範囲内であるのが好ましい。
【0114】
後掲の実施例3~5が示すように、デフォーカス領域の少なくともいずれかが軸回転対称形状であるのが好ましい。デフォーカス領域のうち眼鏡レンズの中央寄りに配置されたものは球面形状とし、周辺寄りに配置されたものは軸回転対称形状とするのが、眼鏡レンズの加工しやすさを鑑みるとより好ましい。その際、軸回転対称形状である各デフォーカス領域の中心箇所から周辺箇所に向けて屈折力を増加させるのが好ましい。なお、デフォーカス領域の「中心箇所」とは、平面視において重心となる箇所であり、デフォーカス領域が小玉レンズの場合は頂点となる箇所である。
【0115】
全デフォーカス領域の80%以上(好適には90%以上、より好適には95%以上、更に好適には99%以上、特に好適には100%)の数のデフォーカス領域での中心箇所の屈折力の変動幅が±10%内(好適には±5%内、更に好適には±1%内)であるのが好ましい。なお、本段落の記載に限らず、本明細書で述べる上記変動幅の範囲に収まるものは「等しい」又は「一定」と称する。変動幅を正の値とする場合、変動幅は100×(最大値-最小値)/最大値であってもよい。
【0116】
軸回転対称形状を有するデフォーカス領域の断面パワープロット(縦軸:DSA[分]、横軸:デフォーカス領域の中心箇所からの半径位置[mm])は、実施例3、4のように連続でもよいし、実施例5のように不連続でもよい。また、断面曲線が連続な場合、実施例3のように断面パワープロットが一つの数式により表されてもよいし、実施例4のように複数の数式により表されてもよい。
【0117】
以降、軸回転対称形状のことを回転対称非球面ともいう。
【0118】
<眼鏡レンズの一具体例>
複数のデフォーカス領域の配置の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、デフォーカス領域の外部からの視認性、デフォーカス領域によるデザイン性付与、デフォーカス領域による屈折力調整等の観点から決定できる。
【0119】
眼鏡レンズの中央部の周囲に周方向及び径方向に等間隔に、略円形状のデフォーカス領域が島状に(すなわち、互いに隣接することなく離間した状態で)配置されてもよい。デフォーカス領域の平面視での配置の一例としては、各凸部領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各デフォーカス領域の中心が配置)する例が挙げられる。
【0120】
図4は、各デフォーカス領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置された様子を示す概略平面図である。
【0121】
但し、本発明の一態様は特許文献1に記載の内容に限定されない。つまり、デフォーカス領域が互いに隣接することなく離間した状態であることに限定されず、互いに接触しても構わないし、数珠つなぎのように非独立での配置を採用してもよい。
【0122】
各々のデフォーカス領域は、例えば、以下のように構成される。デフォーカス領域の直径は、0.6~2.0mm程度が好適である。デフォーカス領域の突出高さ(突出量)は、0.1~10μm程度、好ましくは0.4~2.0μm程度が好適である。デフォーカス領域のDSAは、8.0~20.0分程度になるように設定されることが好適である。
【0123】
レンズ基材は、例えば、チオウレタン、アリル、アクリル、エピチオ等の熱硬化性樹脂材料によって形成されている。なお、レンズ基材を構成する樹脂材料としては、所望の屈折度が得られる他の樹脂材料を選択してもよい。また、樹脂材料ではなく、無機ガラス製のレンズ基材としてもよい。
【0124】
ハードコート膜は、例えば、熱可塑性樹脂又はUV硬化性樹脂を用いて形成されている。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。このようなハードコート膜の被覆によって、眼鏡レンズの耐久性向上が図れるようになる。
【0125】
反射防止膜は、例えば、ZrO、MgF、Al等の反射防止剤を真空蒸着により成膜することにより、形成されている。このような反射防止膜の被覆によって、眼鏡レンズを透した像の視認性向上が図れるようになる。
【0126】
上述したように、レンズ基材の物体側の面には、複数のデフォーカス領域が形成されている。従って、その面をハードコート膜及び反射防止膜によって被覆すると、レンズ基材におけるデフォーカス領域に倣って、ハードコート膜及び反射防止膜によっても複数のデフォーカス領域が形成されることになる。
【0127】
眼鏡レンズの製造にあたっては、まず、レンズ基材を、注型重合等の公知の成形法により成形する。例えば、複数の凹部が備わった成形面を有する成形型を用い、注型重合による成形を行うことにより、少なくとも一方の表面にデフォーカス領域を有するレンズ基材が得られる。
そして、レンズ基材を得たら、次いで、そのレンズ基材の表面に、ハードコート膜を成膜する。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。
ハードコート膜を成膜したら、更に、そのハードコート膜の表面に、反射防止膜を成膜する。ハードコート膜は、反射防止剤を真空蒸着により成膜することにより、形成することができる。
このような手順の製造方法により、物体側に向けて突出する複数のデフォーカス領域を物体側の面に有する眼鏡レンズが得られる。
【0128】
以上の工程を経て形成される被膜の膜厚は、例えば0.1~100μm(好ましくは0.5~5.0μm、更に好ましくは1.0~3.0μm)の範囲としてもよい。ただし、被膜の膜厚は、被膜に求められる機能に応じて決定されるものであり、例示した範囲に限定されるものではない。
【0129】
被膜の上には、更に一層以上の被膜を形成することもできる。そのような被膜の一例としては、反射防止膜、撥水性又は親水性の防汚膜、防曇膜等の各種被膜が挙げられる。これら被膜の形成方法については、公知技術を適用できる。
【実施例
【0130】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
実施例1、2では、デフォーカス領域の形状を球面とした。
実施例1では、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向において、デフォーカス領域のパワーは一定(変動幅0%)とし、デフォーカス領域の平面視の径を増加させた。
実施例2では、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向において、デフォーカス領域の平面視の径は一定(変動幅0%)とし、デフォーカス領域のパワーを増加させた。
【0132】
実施例3、4では、眼鏡レンズの中央寄りに区域1内にて配置されたデフォーカス領域の形状を球面とし、眼鏡レンズの周辺寄りに区域2、3内に配置されたデフォーカス領域の形状を回転対称非球面とした。
実施例3では、眼鏡レンズの中央部から周辺部に向かう方向において、デフォーカス領域の平面視の径もデフォーカス領域の中心箇所のパワーも一定(変動幅0%)としつつ、区域2、3の各々において、回転対称非球面形状のデフォーカス領域の断面パワープロットは一つの式で規定した。
実施例4では、実施例3とは異なり、区域2、3の各々において、回転対称非球面形状のデフォーカス領域の断面パワープロットは二つの式で規定した。但し、断面パワープロットは連続とした。
【0133】
実施例5では、全てのデフォーカス領域の形状を回転対称非球面とした。そして、実施例5では、区域1~3の各々において、回転対称非球面形状のデフォーカス領域の断面パワープロットは二つの式で規定した。その際、実施例4とは異なり、断面パワープロットは不連続とした。
【0134】
<実施例1>
以下の眼鏡レンズを作製した。なお、眼鏡レンズはレンズ基材のみからなり、レンズ基材に対する他物質による積層は行っていない。処方屈折力としてS(球面屈折力)は0.00Dとし、C(乱視屈折力)は0.00Dとした。
・レンズ基材の平面視での直径:100mm
・レンズ基材の種類:PC(ポリカーボネート)
・レンズ基材の屈折率:1.589
・デフォーカス領域の形成面:物体側の面
・デフォーカス領域の平面視での形状:正円
・デフォーカス領域の平面視での配置:各デフォーカス領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各デフォーカス領域の中心が配置)
・瞳孔径内の凸状領域の数:7個
上記の内容は、各実施例に共通の内容であるため、以降は記載を省略する。
【0135】
更に、実施例1では、以下の条件を採用した。
・デフォーカス領域の形状:球面
・デフォーカス領域の屈折力:3.50D
・デフォーカス領域の平面視での配置等:以下の通り。
眼鏡レンズの中央(芯取り中心)から半径4.00mmの範囲内:デフォーカス領域なし。
区域1(リング1):中心から半径4.00~9.75mmの範囲。リング1内のデフォーカス領域の直径は0.88mm、デフォーカス領域同士の間隔は1.20mm、DSAは10.59分である。
区域2(リング2):中心から半径9.75~15.40mmの範囲。リング2内のデフォーカス領域の直径は1.10mm、デフォーカス領域同士の間隔は1.50mm、DSAは13.24分である。
区域3(リング3):中心から半径15.40~19.25mmの範囲。リング3内のデフォーカス領域の直径は1.32mm、デフォーカス領域同士の間隔は1.80mm、DSAは15.88分である。
【0136】
図5は、実施例1の眼鏡レンズ上デフォーカス領域の分布を示す概略平面図である。
【0137】
<実施例2>
実施例2では、以下の条件を採用した。
・デフォーカス領域の形状:球面
・デフォーカス領域の直径:1.1mm
・デフォーカス領域のデフォーカス領域同士の間隔:1.5mm
・デフォーカス領域の平面視での配置等:以下の通り。
眼鏡レンズの中央(芯取り中心)から半径4.5mmの範囲内:デフォーカス領域なし。
区域1(リング1):中心から半径4.50~9.75mmの範囲。リング1内のデフォーカス領域の屈折力は2.50D、DSAは9.45分である。
区域2(リング2):中心から半径9.75~13.00mmの範囲。リング2内のデフォーカス領域の屈折力は3.50D、DSAは13.24分である。
区域3(リング3):中心から半径15.40~19.25mmの範囲。リング3内のデフォーカス領域の屈折力は4.50D、DSAは17.02分である。
【0138】
図6は、実施例2~5の眼鏡レンズ上デフォーカス領域の分布を示す概略平面図である。
【0139】
<実施例3>
実施例3では、以下の条件を採用した。
・デフォーカス領域の直径:1.1mm
・デフォーカス領域のデフォーカス領域同士の間隔:1.5mm
・デフォーカス領域の平面視での配置等:以下の通り。
眼鏡レンズの中央(芯取り中心)から半径4.5mmの範囲内:デフォーカス領域なし。
区域1(リング1):中心から半径4.50~9.75mmの範囲。デフォーカス領域の形状は球面である。デフォーカス領域の屈折力は2.50D、DSAは9.45分である。
区域2(リング2):中心から半径9.75~13.00mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.50D、DSAは13.24分である。
区域3(リング3):中心から半径15.40~19.25mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.50D、DSAは17.02分である。
【0140】
図7(a)は、実施例3のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数6】
【0141】
図7(b)は、実施例3のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数7】
【0142】
図8(a)は、実施例3のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数8】
【0143】
図8(b)は、実施例3のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数9】
【0144】
<実施例4>
実施例4では、以下の条件を採用した。
・デフォーカス領域の直径:1.1mm
・デフォーカス領域のデフォーカス領域同士の間隔:1.5mm
・デフォーカス領域の平面視での配置等:以下の通り。本段落に記載の内容は実施例3と同じである。
眼鏡レンズの中央(芯取り中心)から半径4.5mmの範囲内:デフォーカス領域なし。
区域1(リング1):中心から半径4.50~9.75mmの範囲。デフォーカス領域の形状は球面である。デフォーカス領域の屈折力は2.50D、DSAは9.45分である。
区域2(リング2):中心から半径9.75~13.00mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.50D、DSAは13.24分である。
区域3(リング3):中心から半径15.40~19.25mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.50D、DSAは17.02分である。
【0145】
図9(a)は、実施例4のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数10】
【0146】
図9(b)は、実施例4のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数11】
【0147】
図10(a)は、実施例4のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数12】
【0148】
図10(b)は、実施例4のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数13】
【0149】
<実施例5>
実施例5では、以下の条件を採用した。
・デフォーカス領域の直径:1.1mm
・デフォーカス領域のデフォーカス領域同士の間隔:1.5mm
・デフォーカス領域の平面視での配置等:以下の通り。
眼鏡レンズの中央(芯取り中心)から半径4.5mmの範囲内:デフォーカス領域なし。
区域1(リング1):中心から半径4.50~9.75mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.50D、DSAは9.45分である。
区域2(リング2):中心から半径9.75~13.00mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.00D、DSAは13.24分である。
区域3(リング3):中心から半径15.40~19.25mmの範囲。デフォーカス領域の形状は回転対称非球面である。デフォーカス領域の中心箇所の屈折力は2.00D、DSAは17.02分である。
なお、リング1~3内での断面パワープロットの勾配が不連続な点が少なくとも1点ある。
【0150】
図11は、実施例5のデフォーカス領域の断面概略図である。
【0151】
図12(a)は、実施例5のリング1のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数14】
【0152】
図12(b)は、実施例5のリング1のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数15】
【0153】
図13(a)は、実施例5のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数16】
【0154】
図13(b)は、実施例5のリング2のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数17】
【0155】
図14(a)は、実施例5のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、プリズム偏角δ[分]をY軸としたときのプロットである。プリズム偏角と半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数18】
【0156】
図14(b)は、実施例5のリング3のデフォーカス領域の中心箇所からの半径位置r[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときのプロットである。断面パワーと半径位置の関係は、以下の式で表される。
【数19】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14