(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】成形炸薬アセンブリ
(51)【国際特許分類】
F42B 1/028 20060101AFI20240610BHJP
F42B 1/032 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F42B1/028
F42B1/032
(21)【出願番号】P 2022537584
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 SE2020050051
(87)【国際公開番号】W WO2021150151
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】508167634
【氏名又は名称】サーブ エービー
【氏名又は名称原語表記】SAAB AB
【住所又は居所原語表記】581 88 Linkoping Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ビョルクグレン, ビクター
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02496252(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 1/028
F42B 1/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(2)と回転対称ライナ(3)とを備える成形炸薬アセンブリ(1)であって、前記ケーシング(2)と前記ライナ(3)とが、長手方向中心軸線(A)を中心として同軸に配置されており、前記ケーシング(2)と前記ライナ(3)とがともに、火薬を収容するように構成される容積部(V)を画定している、成形炸薬アセンブリ(1)において、前記ライナ(3)が、
円錐台の形状を有するか、チューリップ形状であるか、トランペット形状であるか、または不完全な半球形状であり、基端部(4a)と反対側の切頭端部(4b)とを含み、前記基端部(4a)において前記ケーシング(2)に接続されている、第1の長手方向セクション(4)と、
円錐台の形状を有し、基端部(5a)と反対側の切頭端部(5b)とを含む第2の長手方向セクション(5)であって、前記第2の長手方向セクション(5)の前記切頭端部(5b)が、前記第1の長手方向セクション(4)の前記切頭端部(4b)に直接接続されているか、または中間長手方向セクション(7)によって接続されている、第2の長手方向セクション(5)と、
前記第2の長手方向セクション(5)の前記基端部(5a)に直接接続されており、円錐、蛋形、または半球の形状を有する、第3の長手方向セクション(6)と
を備え、
前記第3の長手方向セクション(6)と前記第2の長手方向セクション(5)との接続部において、前記第3の長手方向セクション(6)の放射状内面(6c)の接線と、前記第2の長手方向セクション(5)の放射状内面(5c)の接線とが、80°~130°の角βを形成しており、
前記中間長手方向セクション(7)が存在する場合、前記中間長手方向セクション(7)が、第1の長手方向部分(71)と第2の長手方向部分(72)とからなり、前記第1の長手方向部分(71)が前記第1の長手方向セクション(4)に直接接続されており、前記第2の長手方向部分(72)が前記第2の長手方向セクション(5)に直接接続されており、前記第1の長手方向部分(71)が、円錐台の形状であり、前記第2の長手方向セクション(5)の円錐角よりも小さい円錐角を有し、
前記第3の長手方向セクション(6)が、前記ライナ(3)の長手方向延長(l
3
)の最大20%である長手方向延長(l
6
)を有し、
前記第1の長手方向セクション(4)が、前記ライナ(3)の長手方向延長(l
3)の少なくとも50%である長手方向延長(l
4)を有する
ことを特徴とする、成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記第1の長手方向セクション(4)が、前記ライナ(3)の長手方向延長(l
3)の最大でも80%である長手方向延長(l
4)を有する、請求項1に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記第2の長手方向セクション(5)の前記切頭端部(5b)における内径が、前記第1の長手方向セクション(4)の前記基端部(4a)における内径の20%~40%、好ましくは20~35%の範囲内である、請求項1
または2に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記第3の長手方向セクション(6)が、前記第1の長手方向セクション(4)の前記基端部における直径の5%~85%、好ましくは20%~60%の範囲の半径を有する蛋形または半球の形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記ライナ(3)が、0.1~5mmの壁厚を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記ライナが、2~25g/cm
3の密度を有する金属材料で作られている、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記中間長手方向セクション(7)が存在する場合、前記中間セクション(7)の前記第1の長手方向部分(71)の放射状内面の接線と、前記中間セクション(7)の前記第2の長手方向部分(72)の放射状内面の、前記第2の長手方向部分(72)の放射状延長の中間の接線とが、前記角βよりも小さい角γを形成している、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形炸薬アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、成形炸薬アセンブリ(shapedcharge assembly)に関する。
【背景技術】
【0002】
成形炸薬は、火薬のエネルギーの効果を集中させるように成形された爆発性火薬である。そのような成形炸薬は、一般に、ケーシングとライナとを備え、それらの間に火薬を収容する容積部をともに画定する。ライナは、典型的には、半球もしくは円錐の形態を有してもよく、またはトランペット形状であってもよい。火薬が爆発すると、ライナは崩壊して前方に押し出され、それによってジェットを形成する。ジェット先端は、毎秒10キロメートルより速く進む場合があるが、ジェット尾部は、かなり遅い速度を有する。ジェット特性、ひいては成形炸薬の貫入能力は、とりわけ、ライナの形状、放出されるエネルギー、ならびにライナの質量および組成に依存する。
【0003】
例えば円錐形状を有する従来知られている成形炸薬ライナは、十分な貫入能力を実質的に有するが、爆轟時にさらに深い貫入を提供し得るジェットを形成するライナを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、例えば均質装甲など、装甲に対して、形成されたジェットの改善された貫入能力を提供することができる成形炸薬アセンブリである。
【0005】
この目的は、添付の独立請求項の主題によって達成される。
【0006】
本開示によれば、成形炸薬アセンブリが提供される。成形炸薬アセンブリは、ケーシングと回転対称ライナとを備える。ケーシングおよびライナは、長手方向中心軸線を中心として同軸に配置される。ケーシングとライナとはともに、火薬を収容するように構成される容積部を画定する。ライナは、円錐台の形状を有するか、チューリップ形状であるか、トランペット形状であるか、または不完全な半球形状であり、基端部と反対側の切頭端部とを含んでいる、第1の長手方向セクションを備え、第1の長手方向セクションは、その基端部においてケーシングに接続されている。ライナは、さらに、円錐台の形状を有し、基端部と反対側の切頭端部とを含む第2の長手方向セクションを備え、第2の長手方向セクションの切頭端部は、第1の長手方向セクションの切頭端部に直接接続されているか、または中間長手方向セクションによって接続されている。ライナは、さらに、第2の長手方向セクションの基端部に直接接続された第3の長手方向セクションを備え、第3の長手方向セクションは、円錐、蛋形、または半球の形状を有する。第3の長手方向セクションと第2の長手方向セクションとの接続部において、第3の長手方向セクションの放射状内面の接線と、第2の長手方向セクションの放射状内面の接線とが、80°~130°の角βを形成する。存在する場合、中間長手方向セクションは、第1の長手方向部分と第2の長手方向部分とからなり、第1の長手方向部分は第1の長手方向セクションに直接接続され、第2の長手方向部分は第2の長手方向セクションに直接接続され、第1の長手方向部分は円錐台の形状であり、第2の長手方向セクションの円錐角よりも小さい円錐角を有する。
【0007】
本開示による成形炸薬アセンブリによって、ライナを特定の構成とした結果として、より大きな貫入深さを達成する場合がある。より具体的には、ライナを特定の構成とした結果として、貫入ジェットのより速い速度が達成され、これにより貫入深さが増加する。
【0008】
第3の長手方向セクションは、例えば、ライナの長手方向延長の最大20%である長手方向延長を有してもよい。第1の長手方向セクションは、例えば、ライナの長手方向延長の少なくとも50%である長手方向延長を有してもよい。第1の長手方向セクションは、ライナの長手方向延長の最大で80%である長手方向延長を有してもよい。第2の長手方向セクションの切頭端部における内径は、第1の長手方向セクションの基端部における内径の20%~40%、好ましくは20~35%の範囲内であってもよい。第3の長手方向セクションは、第1の長手方向セクションの基端部における第1の長手方向セクションの直径の5%~85%、好ましくは20%~60%の範囲の半径を有する、蛋形または半球の形状を有してもよい。
【0009】
ライナは、0.1~5mmの壁厚を有してもよい。これにより、ライナの意図された崩壊が容易になり、ひいてはジェット特性が改善される。
【0010】
ライナは、例えば、2g/cm3~25g/cm3の密度を有する金属材料で作ってもよい。それにより、ライナは、従来のライナ製造方法に従って容易に製造することができ、さらに従来のライナと比較してより大きな貫入深さを提供することができる。
【0011】
第1および第2の長手方向部分を含む中間セクションが存在する場合、前記第1の長手方向部分の放射状内面の接線と、第2の長手方向部分の放射状内面の接線とは、角βよりも小さい角γを形成してもよく、前記第2の長手方向部分の放射状内面の接線は、第2の長手方向部分の放射状延長の中間にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1a】円錐形状を有する従来のライナを備える、成形炸薬アセンブリの断面図である。
【
図1b】トランペット形状のライナを有する従来のライナを備える、成形炸薬アセンブリの断面図である。
【
図2】本開示の第1の例示的な実施形態による、ライナを備える成形炸薬アセンブリの半断面図である。
【
図2a】爆轟の直後であり、ライナが崩壊し始めた時点における、
図2に示された成形炸薬アセンブリを示す図である。
【
図3】本開示の第2の例示的な実施形態による、ライナを備える成形炸薬アセンブリの半断面図である。
【
図4】本開示の第3の例示的な実施形態による、ライナを備える成形炸薬アセンブリの半断面図である。
【
図5】比較用ライナを備える、成形炸薬アセンブリの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態および添付図面を参照して、本発明を以下でより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、図面に記載および/または示された例示的な実施形態に限定されず、添付の独立請求項の各々の範囲内で変更されてもよい。さらに、図面は、本発明またはその特徴をより明確に説明するために、いくつかの特徴が誇張されている場合があるので、必ずしも縮尺通りに描かれていると見なされるものではない。
【0014】
図1aは、ケーシング20と、円錐形状を有する従来のライナ30とを備える、成形炸薬アセンブリ10の断面図を示す。ケーシング20とライナ30とは回転対称であり、成形炸薬アセンブリの中心軸線Aを中心として同軸に配置される。ライナ30は、その基端部31においてケーシング20に接続されている。ケーシング20とライナ30とはともに、爆発する火薬を収容するように構成される容積部Vを画定する。ケーシング20は、爆轟装置が火薬を爆発させるように配置され得る開口部22を備える。容積部V内に配置された火薬は、このようにして、ケーシング、ライナ、および爆轟装置によって包まれることになる。火薬が爆発すると、ライナは、爆轟前面によって引き起こされる衝撃波の結果として崩壊し、ジェットを形成することになり、このジェットは、図に示す矢印の方向に進むことになる。ターゲットにおいて結果として生じる貫入深さは、ジェット特性に依存する。
【0015】
より具体的には、
図1aに示すようなライナの崩壊は、ライナの先端で始まる。これは、ライナの先端が、ライナの中で衝撃波が到達する最初の部分であるからである。崩壊が続くと、ライナの材料は、成形炸薬アセンブリの中心軸線に沿って放出方向に接合し、したがって結果として生じるジェットを形成する。結果として生じるジェットの先端は、ジェットの終端よりもはるかに速い速度を有することになり、したがって、ジェットは、短時間の後に、非常に速い速度を有する貫入部分と、より遅い速度を有するスラグとに分割されることになる。
【0016】
図1bは、別の例の成形炸薬アセンブリ10’の断面図を示す。成形炸薬アセンブリ10’は、
図1aに示す成形炸薬アセンブリと類似しており、回転対称ケーシング20と回転対称ライナ30’とを備える。しかしながら、ライナ30’は、ライナ30の円錐形状とは対照的に、トランペット形状を有する。
【0017】
本開示による成形炸薬アセンブリは、
図1aおよび
図1bにそれぞれ示す、ライナ30および30’とは異なる形状を有するライナを備える。より具体的には、本開示による成形炸薬アセンブリは、以下でより詳細に説明する複数の長手方向セクションを備えるライナを備える。長手方向セクションは、崩壊中にライナに複数のジェット部分を一時的に形成させ、それらのジェット部分が組み合わされて、結果として生じるジェットが放出される。
【0018】
本開示によれば、ケーシングと回転対称ライナとを備える、成形炸薬アセンブリが提供される。ケーシングとライナとはともに、長手方向中心軸線を中心として同軸に配置され、火薬を収容するように構成される容積部を画定する。ケーシングとライナとはともに、火薬を収容するように構成される容積部を画定する。ライナは、円錐台の形状を有するか、チューリップ形状であるか、トランペット形状であるか、または不完全な半球形状である、第1の長手方向セクションを備える。第1の長手方向セクションは、第1の長手方向セクションの直径が最大である基端部と、第1の長手方向セクションの直径が最小である反対側の切頭端部とを含む。第1の長手方向セクションは、その基端部においてケーシングに接続されている。第1の長手方向セクションとケーシングとの接続部は、ライナを成形炸薬のケーシングに接続するための任意の既知の手段によって実施されてもよく、したがって、本開示ではさらに説明しないものとする。
【0019】
ライナは、円錐台の形状を有し、第2の長手方向端部の直径が最大である基端部と、第2の長手方向端部の直径が最小である反対側の切頭端部とを含む、第2の長手方向セクションを備える。第2の長手方向セクションの切頭端部は、第1の長手方向セクションの切頭端部に直接接続されているか、または中間長手方向セクションによって接続されている。
【0020】
ライナは、さらに、第2の長手方向セクションの基端部に直接接続された、第3の長手方向セクションを備える。第3の長手方向セクションは、円錐、蛋形または半球の形状を有する。第3の長手方向セクションと第2の長手方向セクションとの接続部において、第3の長手方向セクションの放射状内面の接線と、第2の長手方向セクションの放射状内面の接線とが、80°~130°、好ましくは100°~125°の角βを形成する。
【0021】
存在する場合、中間長手方向セクションは、第1の長手方向部分と第2の長手方向部分とからなる。このような場合、第1の長手方向部分は第1の長手方向セクションに直接接続され、第2の長手方向部分は第2の長手方向セクションに直接接続されている。第1の長手方向部分と第2の長手方向部分は、互いに直接接続されている。さらに、中間セクションの第1の長手方向部分は円錐台の形状であり、第2の長手方向セクションの円錐角よりも小さい円錐角を有する。
【0022】
第3の長手方向セクションは、ライナの長手方向延長と比較して、比較的短い長手方向延長を適切に有するべきである。第3の長手方向セクションは、例えば、ライナの長手方向延長の最大20%である長手方向延長を有してもよい。それにより、崩壊中に形成されるジェット部分は、中心軸線に沿って交わることになり、第3の長手方向セクションと第2の長手方向セクションとの接続部の材料によって形成されるジェット部分は、ジェットを形成するライナの第1の材料から生じるジェット部分の材料で掃引されてもよい。
【0023】
第1の長手方向セクションは、ライナの長手方向延長の少なくとも50%である長手方向延長を有してもよく、例えば、ライナの長手方向延長の80%までであってもよい。
【0024】
第2の長手方向延長の切頭端部における内径は、第1の長手方向セクションの基端部における内径の20%~40%(端の値を含む)、好ましくは20%~35%内であってもよい。
【0025】
第3の長手方向セクションが蛋形または半球の形状を有する場合、その蛋形または半球の半径は、適切には、第1の長手方向セクションの基端部における直径の直径の5%~85%、好ましくは20%~60%であってもよい。
【0026】
ライナは、ライナが容易に崩壊し、所望のジェットを形成することを可能にする壁厚を有するべきである。例えば、ライナは、0.1~5mmの壁厚を有してもよい。好ましくは、ライナの壁厚は1~5mm、より好ましくは1~3mm、最も好ましくは1.5~2.5mmである。
【0027】
ライナは、好適には、2g/cm3~25g/cm3、好ましくは2~20g/cm3の密度を有する。「密度」という用語は、ライナが材料の混合物で構成される場合、平均密度を意味する。
【0028】
ライナは、例えば、銅、タングステン、または銅もしくはタングステンをベースとする合金などの金属材料で作ってもよい。しかしながら、必要に応じて、他の材料をも使用してライナを形成してもよい。ライナを形成することができる他の材料の例には、ポリマー材料、セラミック、またはそれらの混合物、ならびにポリマー材料と金属材料との混合物が含まれる。
【0029】
ライナは、必要に応じてコーティングをさらに含んでもよい。例示的な一実施形態によれば、アルミニウム粉末の層が、火薬に面するように構成されるライナの表面に接着される。そのような出力の粒径は、例えば、50~500μm、好ましくは100~300μmの範囲であってもよい。
【0030】
第1の長手方向部分と第2の長手方向部分とを含む中間セクションが存在する場合、前記第1の長手方向部分の放射状内面の接線と、前記第2の長手方向部分の放射状内面の接線とが、角γを形成する。ここで、前記第2の長手方向部分の放射状内面の接線は、第2の長手方向部分の放射状延長の中間にある。角γは、角βよりも小さくてもよい。
【0031】
図2は、本開示の第1の例示的な実施形態による、成形炸薬アセンブリ1の半断面図を示す。成形炸薬アセンブリ1は、回転対称ケーシング2と回転対称ライナ3とを備える。ケーシング2とライナとはともに、成形炸薬アセンブリ1の中心軸線Aを中心として同軸に配置され、火薬のための容積部Vを画定する。ライナ3は、第1の長手方向セクション4と、第2の長手方向セクション5と、第3の長手方向セクション6とからなる。第1の長手方向セクション4は円錐台の形状を有し、したがって、基端部4aと反対側の切頭端部4bとを含む。第1の長手方向セクション4は、その基端部においてケーシング2に接続されている。第2の長手方向セクション5も円錐台の形状を有し、したがって、基端部5aと切頭端部5bとを含む。第2の長手方向セクション5の切頭端部5bは、第1の長手方向セクション4の切頭端部4bに面し、それに接続されている。より具体的には、第2の長手方向セクション5の切頭端部5bは、第1の長手方向セクションの切頭端部4bに中間セクションなしに直接接続されている。ライナは、さらに、第2の長手方向セクション5の基端部5aに直接接続された、第3の長手方向セクション6を含む。
図2に示す第3の長手方向セクション6は、蛋形の形状を有する。しかしながら、第3の長手方向セクション6は、必要に応じて、代替的に円錐または半球の形状を有してもよい。第3の長手方向セクション6は、成形炸薬アセンブリの起爆端部の近くに配置され、第1の長手方向セクション4は、成形炸薬アセンブリの放出端部に配置される。
【0032】
図2に示すように、第3の長手方向セクションと第2の長手方向セクションとの接続部において、第3の長手方向セクション6の放射状内面6cの接線と、第2の長手方向セクションの放射状内面5cの接線とが、角βを形成する。角βは、80°~130°の範囲であってもよい。さらに、第2の長手方向セクション5と第3の長手方向セクション6との接続部は、ライナの周方向先端部15を形成するものとして説明されてもよい。
【0033】
図2に示すように、ライナ3の長手方向延長l
3は、ケーシングの長手方向延長l
2よりも小さい。さらに、第1の長手方向セクション4の長手方向延長l
4は、典型的には、第2の長手方向セクション5の長手方向延長l
5ならびに第3の長手方向セクション6の長手方向延長l
6よりも長い長手方向延長を有してもよい。第1の長手方向セクション4の長手方向延長l
4は、適切に、ライナ3の長手方向延長l
3の少なくとも50%、および/またはライナ3の長手方向延長l
3の最大でも80%であり得る。第3の長手方向セクション6は、例えば、ライナ3の長手方向延長l
3の最大でも20%である長手方向延長l
6を有し得る。
【0034】
第1の長手方向セクション4は、その基端部4aにおける半径を有し、この半径はしたがって、ケーシング2に接続されるライナの終端における半径r
3と同じである。
図2はまた、第2の長手方向セクション5の切頭端部5bにおける内半径r
5を示す。第2の長手方向セクション5の切頭端部5bにおけるr
5は、例えば、第1の長手方向セクションの基端部における内半径r
3の20%~40%の範囲内であってもよい。
【0035】
図2aは、火薬が爆発され、ライナ3が崩壊し始めた直後であるが、ジェットが形成される前の、
図2に示すような成形炸薬アセンブリを概略的に示す。図から分かるように、第3の長手方向セクション6の先端の材料は、成形炸薬の中心軸線Aに沿って、放出の方向に、第1のジェット部分を形成する。さらに、(
図2に示す)周方向先端部15の材料は、
図2aの矢印によって示された第2のジェット部分を形成し、第2のジェット部分は、中心軸線に対して傾斜した、放出方向の方向を有する。第2のジェット部分は、第1のジェット部分によって「掃引される」。したがって、中心軸線に沿って崩壊したライナの材料の衝突は、
図1bに示すような従来の円錐形ライナで生じる中心軸線での直接衝突と比較して、より緩やかになる。したがって、衝突点に対する衝突速度は、円錐形ライナと比較して低下し、結果として生じるジェットは、円錐形ライナと比較してかなり速い速度を有するように設計され得る。これにより、ターゲットの貫入深さが増加する。
【0036】
図3は、本開示の第2の例示的な実施形態による、成形炸薬アセンブリ1の半断面図を示す。第2の例示的な実施形態による成形炸薬アセンブリは、
図2に示す第1の例示的な実施形態による成形炸薬アセンブリと類似しているが、ライナ3の第1の長手方向セクション4は、異なる形状を有する。
図3に示すライナ3の第1の長手方向セクション4は、チューリップ形状である。
【0037】
図4は、本開示の第3の例示的な実施形態による、成形炸薬アセンブリ1の半断面図を示す。
図2および
図3に示す成形炸薬アセンブリとは対照的に、
図4に示す成形炸薬アセンブリは、第1の長手方向セクション4が第2の長手方向セクション5に直接接続されていないライナを備える。
【0038】
代わりに、第1の長手方向セクション4と第2の長手方向セクション5との間に、中間長手方向セクション7が存在する。より具体的には、第2の長手方向セクション5の切頭端部5bは、中間長手方向セクション7を用いて第1の長手方向セクション4の切頭端部4bに接続されている。中間長手方向セクション7は、第1の長手方向部分71と第2の長手方向部分72とからなる。第1の長手方向部分71は、第1の長手方向セクション4に直接接続されている。さらに、第2の長手方向部分72は、第2の長手方向セクション5に直接接続されている。第1の長手方向部分71は円錐台の形状を有し、第2の長手方向セクション5の円錐角よりも小さい円錐角を有する。言い換えると、中心軸線Aに対する第1の長手方向部分71の傾斜は、中心軸線Aに対する第2の長手方向セクション5の傾斜よりも小さい。
【0039】
図4に示すように、第1および第2の長手方向部分71、71は、放射状部分によって互いに接続されてもよい。しかしながら、中間長手方向セクションの第1および第2の長手方向部分は、それらの内面が接続点において鋭角を形成するように互いに接続されることも妥当である。
【0040】
第2の長手方向部分72は、放射状延長を有すると説明されてもよく、これは、本開示では、第2の長手方向部分72が第2の長手方向セクション5に接続する、中心軸線Aに平行な第1の平面と、第2の長手方向部分72が第1の長手方向部分71に接続する、中心軸線Aに平行な第2の平面との間の距離を意味すると考えられる。
図4に示すように、中間セクション7の第1の長手方向部分71の放射状内面の接線と、第2の長手方向部分72の放射状内面の接線とが、第2の長手方向部分72の放射状延長の中間で、図に示すように角γを形成する。角γは、角βよりも小さくてもよい。
【0041】
図5は、本開示による成形炸薬アセンブリの一部ではない、比較用例による成形炸薬アセンブリ100の半断面図を示す。成形炸薬アセンブリ100は、ケーシング2とライナ300とを備える。ライナ300は、
図2から
図4に示すライナ3と同様に、第1の長手方向セクション4と、第2の長手方向セクション5と、第3の長手方向セクション6とを含む。しかしながら、
図2および
図3に示すライナ3とは対照的に、ライナ300において、第2の長手方向セクション5は、第1の長手方向セクション4に直接接続されていない。さらに、ライナ300は、第2の長手方向セクションが、(
図4に示す中間セクション7に類似した)第1の中間セクション70と、第2の中間セクション80とによって、第1の長手方向セクション4に接続されているという点で、
図4に示すライナ3とは異なる。言い換えれば、中間長手方向セクション70は、第1の長手方向部分と第2の長手方向部分から構成されず、第1の長手方向部分は、第1の長手方向セクション4に直接接続され、第2の長手方向部分は、第2の長手方向セクション5に直接接続されている。第2の中間長手方向セクションも、第1の長手方向部分と第2の長手方向部分から構成されず、第1の長手方向部分は、第1の長手方向セクション4に直接接続され、第2の長手方向部分は、第2の長手方向セクション5に直接接続されている。
【0042】
方法論
様々な形状のライナが、シミュレーション試験によって調査されてきた。Ansys Workbench17.2および19.0において実施された700を超えるシミュレーションにおいて、500を超えるモデルが試験されてきた。モデルを、SpaceClaimで作成し、Explicit Dynamicsでメッシュ化し、2D回転対称性によってAutodynで解析した。すべてのモデルについて、速度プロファイルと、ジェット長と、ジェット質量とに関するジェットデータを計算した。様々なモデルに従って、Euler体を火薬とライナとで充填することによってシミュレーションを準備した。Euler体を弾頭の5mm後方に配置し、その外端が、ライナがケーシングに取り付けられた点の100mm前になるように延在させた。Euler体の高さは50mmであり、要素サイズはミリメートルあたり3要素であった。波形整形器をモデルに設けた場合、Euler体は、波形整形器の終端までしか延在しない。材料の自由流出をすべての縁に沿って定義した。標点を、Euler体の中心線と、後端(すなわち、ジェットがEuler体を出た点)とに沿って定義した。一部のモデルは場合によっては短い時間ステップにより損なわれるので、火薬の起爆後50μsで、すべての火薬材料を消去した。標点における速度とEuler体を出る銅の総質量とを、シミュレーション後に保存した。
【0043】
貫入モデルを、ジェットデータのモデルと同じに設定した。貫入モデルの場合、どのスタンドオフをシミュレーションしたかに応じて、Euler体が205mm、300mm、または400mm延びたという違いがあった。その後、Euler体はさらに700mm延びた(スタンドオフが400mmである場合は900mm)。これらの700mmは、均質圧延装甲(RHA)で充填され、縁に沿った流出がなかった。ジェットの先端が停止した時点でシミュレーションを終了した。場合によっては、ジェットがEuler体の後端部に衝突した場合、RHA部分が伸長した。
【0044】
実施例
図1b、
図2、
図3、
図4、および
図5に示すようなライナを備える成形炸薬アセンブリを、205mmのスタンドオフで試験した。均質圧延装甲をターゲットとして使用した。貫入深さを以下の表1に示すように記録した。ライナはすべて銅で作った。さらに、
図2から
図5に示すライナを備えるアセンブリはすべて、放出端部における直径が同じライナ(爆発体に基づいて計算して約84mm)、ならびに同じ長手方向延長のライナおよびケーシング(爆発体に基づいて計算して約150mm)を有した。
図1bに示すライナを備える成形炸薬アセンブリは、わずかに小さいサイズであった。
【0045】
結果から明らかなように、
図2から
図4に示すライナを備える成形炸薬アセンブリは、
図1bに示すようなライナを備える従来の成形炸薬アセンブリと比較して、かなり大きな貫入深さをもたらす。
図1bに示すライナを備える成形炸薬アセンブリのサイズはわずかに小さかったが、前記サイズの差は、
図2から
図4に示すライナについて得られた貫入深さの増加に比例しない。さらに、
図2から
図4に示す成形炸薬アセンブリの貫入深さはまた、
図5に示す成形炸薬アセンブリの貫入深さよりもかなり大きいことが分かる。
【0046】