(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】固相-液相ハイブリッド電解質膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20240610BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240610BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2022538454
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2021095029
(87)【国際公開番号】W WO2021150097
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0007480
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン-スン・イ
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-536233(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043812(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0308565(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106531971(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
H01M 50/40 - 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)多数の固体高分子粒子が液体電解質及び揮発性有機溶媒に分散している分散液を用意する段階と、
(S2)前記分散液を基材上に塗布及び乾燥して多孔性構造体を収得する段階と、
(S3)前記多孔性構造体を加圧して固相-液相ハイブリッド電解質膜を収得する段階と、を含み、
前記多孔性構造体は、前記固体高分子粒子が充填されて互いに接触した状態であって、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成されており、
前記液体電解質は、前記多孔性構造体の気孔内を充填しており、かつ、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分、及び/または、前記固体高分子粒子の表面を囲み、
前記液体電解質の含量は、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量に対して1~20重量%であり、
前記揮発性有機溶媒は、液体電解質よりも揮発性が高い、固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項2】
前記揮発性有機溶媒の沸点が30℃~200℃である、請求項1に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項3】
前記揮発性有機溶媒が、アクリロニトリル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、塩化メチレン、二硫化炭素、四塩化炭素、またはこれらのうち2以上の混合物を含む、請求項1または2に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項4】
前記固体高分子粒子が、エンジニアリングプラスチック樹脂を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項5】
前記固体高分子粒子が、エンジニアリングプラスチック樹脂を含み、前記エンジニアリングプラスチック樹脂が、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレートのうちいずれか一つまたは二つ以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項6】
前記液体電解質が、有機溶媒として線状カーボネート、線状エステル及び線状エーテルのうち少なくともいずれか一つを含み、リチウム塩として金属陽イオンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項7】
前記揮発性有機溶媒と前記液体電解質との重量比が83:17~66:34である、請求項1から6のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項8】
前記(S3)段階の加圧が、前記固体高分子粒子を物理的に結合することで、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成された多孔性構造体を製造する段階である、請求項1から7のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項9】
前記基材が多孔性高分子基材または不織布基材を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記基材の内部の気孔が液体電解質で充填されている、請求項9に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法。
【請求項11】
多数の固体高分子粒子及び液体電解質を含み、
前記固体高分子粒子が充填されて互いに接触した状態であって、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成された多孔性構造体を含み、
前記液体電解質は、前記多孔性構造体の気孔内を充填しており、かつ、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分、及び/または、前記固体高分子粒子の表面を囲み、
前記液体電解質の含量は
、固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量に対して1~20重量%である、固相-液相ハイブリッド電解質膜。
【請求項12】
前記固相-液相ハイブリッド電解質膜が、多孔性高分子基材または不織布基材をさらに含む、請求項11に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜。
【請求項13】
前記
多孔性高分子基材または前記不織布基材の内部の気孔が液体電解質で充填されている、請求項12に記載の固相-液相ハイブリッド電解質膜。
【請求項14】
負極、正極及び前記負極と前記正極との間に介在された固相-液相ハイブリッド電解質膜を含み、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜は請求項11に記載のものであり、前記負極及び/または正極は固体電解質材料を含む、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相-液相ハイブリッド電解質膜及びその製造方法に関する。本出願は、2020年1月20日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0007480号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
車両、コンピュータ、携帯端末機の使用が増加するにつれてリチウム二次電池の重要性が高まっている。特に、軽量であって高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池の開発が求められている。このようなリチウム二次電池は、正極と負極との間に分離膜を介在させた後、液体電解質を注入して製造するか、または、正極と負極との間に固体電解質膜を介在させて製造する。
【0003】
このうち、液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極とが区画される構造であるため、変形や外部の衝撃によって分離膜が破損されれば短絡が生じ、過熱または爆発などの危険につながるおそれがある。
【0004】
一方、固体電解質を用いた全固体電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏れを防止できるため、電池の信頼性が向上する。しかし、固体電解質を使用しても、高エネルギー密度を有して工程性が改善された固体電解質膜の開発が依然として必要である。また、固体電解質の場合、低いイオン伝導度を有するため性能が低下する問題がある。
【0005】
また、従来の多孔性ポリオレフィン系の分離膜よりもかなり厚くてエネルギー密度が損失されるという解決すべき技術的課題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためのものであり、現在商用の固体電解質膜に比べて厚さが減少するとともに、イオン伝導度が確保された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することを目的とする。
【0007】
また、現在商用の固体電解質膜に比べて薄膜であるにもかかわらず、機械的強度が改善された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することを目的とする。
【0008】
また、現在商用の電解質膜に比べて薄膜であるにもかかわらず、厚さに対比した重量当りエネルギー密度が改善された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、工程性及び製品完成度を向上させることができる固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
一方、本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解できるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段、方法またはその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、下記具現例による固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法を提供する。
【0012】
第1具現例は、
(S1)多数の固体高分子粒子が液体電解質及び揮発性有機溶媒に分散している分散液を用意する段階と、
(S2)前記分散液を基材上に塗布及び乾燥して多孔性構造体を製造する段階と、
(S3)前記多孔性構造体を加圧して固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造する段階と、を含み、
前記多孔性構造体は、前記固体高分子粒子が充填されて互いに接触した状態であって、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成されており、
前記液体電解質は、前記多孔性構造体の気孔内、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分、または、前記固体高分子粒子の表面を囲み、
前記液体電解質の含量は、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量に対して1~20重量%であり、
前記有機溶媒は、液体電解質よりも揮発性が高い、固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法に関する。
【0013】
第2具現例によれば、第1具現例において、前記揮発性有機溶媒の沸点が30~200℃である。
【0014】
第3具現例によれば、第1または第2具現例において、前記揮発性有機溶媒が、アクリロニトリル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、塩化メチレン、二硫化炭素、四塩化炭素、またはこれらのうち2以上の混合物を含む。
【0015】
第4具現例によれば、第1~第3具現例のうちいずれか一つにおいて、前記固体高分子粒子がエンジニアリングプラスチック樹脂である。
【0016】
第5具現例によれば、第1~第4具現例のうちいずれか一つにおいて、前記固体高分子粒子が、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレートのうちいずれか一つまたは二つ以上を含む。
【0017】
第6具現例によれば、第1~第5具現例のうちいずれか一つにおいて、前記液体電解質が、有機溶媒として線状カーボネート、線状エステル及び線状エーテルのうち少なくともいずれか一つを含み、リチウム塩として金属陽イオンを含み得る。
【0018】
第7具現例によれば、第1~第6具現例のうちいずれか一つにおいて、前記揮発性有機溶媒と前記液体電解質との重量比が83:17~66:34である。
【0019】
第8具現例によれば、第1~第7具現例のうちいずれか一つにおいて、前記(S3)段階の加圧が、前記固体高分子粒子を物理的または化学的に結合することで、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成された多孔性構造体を製造する段階であり得る。
【0020】
第9具現例によれば、第1~第8具現例のうちいずれか一つにおいて、前記基材が多孔性高分子基材または不織布基材を含み得る。
【0021】
第10具現例によれば、第1~第9具現例のうちいずれか一つにおいて、前記基材は、内部の気孔が液体電解質で充填されている。
【0022】
第11具現例は、固相-液相ハイブリッド電解質膜に関し、
多数の固体高分子粒子及び液体電解質を含み、
前記固体高分子粒子が充填されて互いに接触した状態であって、前記固体高分子粒子同士の間に気孔構造が形成された多孔性構造体を含み、
前記液体電解質は、前記多孔性構造体の気孔内、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分、または、前記固体高分子粒子の表面を囲み、
前記液体電解質の含量は、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量に対して1~20重量%である、固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供する。
【0023】
第12具現例によれば、第11具現例において、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜が多孔性高分子基材または不織布基材をさらに含む。
【0024】
第13具現例によれば、第11または第12具現例において、前記基材は内部の気孔が液体電解質で充填されている。
【0025】
第14具現例は、リチウムイオン二次電池に関し、負極、正極及び前記負極と正極との間に介在された固相-液相ハイブリッド電解質膜を含み、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜は第11~第13具現例のうちいずれか一つによるものであり、前記負極及び/または正極は固体電解質材料を含む、リチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、無機物粒子ではなく固体高分子粒子を使用することで、変形が可能な固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0027】
また、圧縮可能な固体高分子粒子を使用することで、機械的強度が改善された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。固体電解質を使用しないため、外部加圧によって変形が可能な固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。また、高分子粒子同士が物理的に結合されているため、気孔度及び気孔チャネルの形成に有利である。
【0028】
本発明の一態様によれば、バインダー高分子を使用しないため、抵抗の低い固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0029】
一方、本発明の一態様によれば、少量の液体電解質を含むことで、漏液がないだけでなく、従来の固体電解質電池に比べて改善されたイオン伝導度を確保することができる。
【0030】
また、厚さに対比した重量当りエネルギー密度が改善された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0031】
また、工程性及び製品完成度を向上させることができる固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法を提供することができる。
【0032】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。これに先だち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0035】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0036】
また、本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0037】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0038】
詳細な説明における特定の用語は便宜上使用されるものであって、制限的なものではない。「右」、「左」、「上面」及び「下面」の単語は参照する図面における方向を示す。「内側に」及び「外側に」の単語は、それぞれ指定された装置、システム及びその部材の幾何学的中心に向かう方向及びそれから遠くなる方向を示す。「前方」、「後方」、「上方」、「下方」及びその関連単語及び語句は、参照する図面における位置及び方位を示すものであって、制限的なものではない。このような用語は上記の単語、その派生語及び類似意味の単語を含む。
【0039】
本発明は、固相-液相ハイブリッド電解質膜及びその製造方法に関する。
【0040】
本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜は、多数の固体高分子粒子及び少量の液体電解質を含む。このとき、前記液体電解質は、固体高分子粒子同士が面接触した部分、または、前記固体高分子粒子の表面を被覆しており、使用された液体電解質が少量であるため、固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造時に加圧段階を経ても液体電解質の漏液がないだけでなく、イオン伝導度が従来の固体電解質膜に比べて同等であるかまたは類似し、さらにイオン伝導度が均一である。
【0041】
このような固相-液相ハイブリッド電解質膜は、多数の固体高分子粒子が充填されて互いに接触した構造である。また、少量の液体電解質は、前記固体高分子粒子が形成した気孔チャネル内に含浸しているか、若しくは、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分または前記固体高分子粒子の表面を被覆している。
【0042】
このような固相-液相ハイブリッド電解質膜は、無機物粒子ではなく高分子粒子を使用することで、変形が可能である。また、固体電解質ではなく高分子粒子を使用することで、外部加圧によって変形が可能である。また、このような固体高分子粒子が物理的に結合されているため、気孔及び気孔チャネルの形成にも有利である。
【0043】
一方、少量の液体電解質を含んでいるため、漏液がないだけでなく、従来の固体電解質膜に比べて改善されたイオン伝導度を確保することができる。
【0044】
上述した固相-液相ハイブリッド電解質膜は、固体高分子粒子が充填されて形成された多孔性構造体内を少量の液体電解質で被覆することで製造し得る。
【0045】
本発明者等は、上述した固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造、特に、厚さに対比した重量当りエネルギー密度が高い固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造するために研究を行った。
【0046】
薄膜の固相-液相ハイブリッド電解質膜は、まず、固体高分子粒子によって形成された多孔性構造体を用いて厚膜を製造した後、加圧工程を経て薄膜に製造する。
【0047】
しかし、薄膜の電解質膜を製造するためには、多孔性構造体が形成された後にも固体状態、すなわち形態が維持されねばならず、同時に多孔性構造体を製造するために基材上に分散液を塗布する間には分散液の流動性が維持されねばならない。
【0048】
本発明者らは、このような問題をさらに解決するため、液体電解質よりも揮発性に優れた溶媒を追加的に含ませて薄膜の固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造方法を概略的に示した図である。以下、図面を参照して本発明をより詳しく説明する。
【0050】
図1の(a)を参照すると、まず、多数の固体高分子粒子11が液体電解質12及び揮発性有機溶媒13に分散している分散液14を用意する(S1)。
【0051】
前記固体高分子粒子11は、常温で固体であり、電解液に対する溶解度が低い高分子物質である。
【0052】
一方、本発明において、固体高分子粒子は、液体電解質で囲まれているものであって、液体電解質に対する溶解度が低いことが望ましい。また、耐化学性に優れた高分子であることが望ましい。
【0053】
具体的には、前記固体高分子粒子は、液体電解質または液体電解質の一成分として使用可能な有機溶媒、例えば、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=30:70(体積%)に含浸させた場合、20℃~30℃の範囲で30wt%未満の溶解度を有する。より具体的には、20%未満、15%未満、10%未満の溶解度を有し得る。これにより、前記固体高分子粒子は、溶媒に分散させた場合にも固形の状態で存在することができる。
【0054】
具体的には、前記固体高分子粒子は、エンジニアリングプラスチック樹脂であり得る。
【0055】
このとき、前記エンジニアリングプラスチック樹脂は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレートのうちいずれか一つまたは二つ以上を含み得る。
【0056】
このとき、前記エンジニアリングプラスチック樹脂は、分子量が100,000Da~10,000,000Daであり得る。
【0057】
前記固体高分子粒子は、一般的な商用の無機物粒子と異なって、圧縮性を有するものである。これにより、厚さに対比した重量当りエネルギー密度が増加したリチウム二次電池を提供することができる。また、従来の固体電解質ではなく固体高分子粒子を使用することで、変形が可能な固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。このような固体高分子粒子は、延性を有するものであるため、加圧または熱によって物理的または化学的に付着、結合または連結可能である。これにより、本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜は、別途のバインダー高分子を必要としない。すなわち、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜は、バインダー高分子を含まない。これにより、抵抗が減少した固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0058】
例えば、前記固体高分子粒子の平均粒径は、100nm~20μm、100nm~10μm、200nm~5μmまたは500nm~2μmであり得る。粒径を上記の数値範囲に制御することで、適切な大きさの気孔が形成されて短絡が起きず、気孔内に液体電解質を十分に含浸させることができる。
【0059】
前記液体電解質は、前記固体高分子粒子同士が面接触した部分に存在するか、または、前記固体高分子粒子の表面を囲んでいる。換言すれば、前記液体電解質は、前記固体高分子粒子の表面を全部または少なくとも一部被覆し得る。
【0060】
このような液体電解質の存在によって、イオン伝導度の高い固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0061】
本発明の具体的な一実施形態において、前記液体電解質は、前記固体高分子粒子を溶解させないものであって、優れた耐化学性及び耐電気化学性を有する。
【0062】
例えば、前記液体電解質は、A+B-のような構造の塩であり、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであり得るが、これらに限定されることはない。
【0063】
本発明において、前記揮発性有機溶媒は、上述した液体電解質に比べて揮発性が高いものである。すなわち、本発明において、前記揮発性有機溶媒は、前記分散液の流動性を確保すると同時に、分散液を後述する基材上にコーティングしてから乾燥するとき素早く揮発することで多孔性構造体の形成に役立つ因子である。
【0064】
これにより、前記揮発性有機溶媒は、沸点が30℃~200℃、40~150℃または50℃~100℃であり得る。
【0065】
または、前記揮発性有機溶媒の沸点は、使用される液体電解質に比べて5~100℃、10~90℃または30~80℃だけ低いものであり得る。
【0066】
または、前記揮発性有機溶媒は、蒸気圧が上述した液体電解質に比べて10~10000%、20~1000%または50~500%だけ高いものであり得る。
【0067】
さらに、前記揮発性有機溶媒は、前記固体高分子粒子を溶解させないものであって、優れた耐化学性及び耐電気化学性を有する。
【0068】
本発明の具体的な一実施形態において、前記揮発性有機溶媒は、アクリロニトリル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニルリル、メタノール、塩化メチレン、二硫化炭素、四塩化炭素、またはこれらのうち2以上の混合物であり得る。
【0069】
このとき、前記液体電解質と前記揮発性有機溶媒との重量比は、83:17~66:34、50:50~34:66または17:83~9:91であり得る。前記液体電解質と揮発性有機溶媒との重量比が上記の数値範囲内である場合、分散液を基材上に塗布した後のロールプレスなどの後工程に有利であり、適切なイオン伝導度を有する固相-液相ハイブリッド電解質膜が製造できる。
【0070】
その後、
図1の(b)に示されたように、前記分散液14を基材15上に塗布し乾燥して多孔性構造体を形成する(S2)。
【0071】
このとき、前記分散液を基材上に塗布する方法は、当業界で使用する通常の方法であればよく、特に制限されない。例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、ドロップコーティングであり得る。
【0072】
また、前記分散液を乾燥する方法は、当業界で使用する通常の方法であればよく、特に制限されない。
【0073】
ただし、前記分散液内の液体電解質は揮発せずに残留し、前記揮発性有機溶媒は揮発することが望ましい。
【0074】
これにより、乾燥温度は、使用される液体電解質及び揮発性有機溶媒の種類によって変わり得る。具体的には、液体電解質は揮発せず、揮発性有機溶媒は揮発する温度範囲で行われ得る。
【0075】
このとき、前記基材は、離型フィルム、多孔性高分子基材または電極のうちいずれか一つであり得る。前記基材が離型フィルムである場合、前記離型フィルムは最終的に収得された固相-液相ハイブリッド電解質膜から除去される。前記離型フィルムは、固相-液相ハイブリッド電解質膜の製造において型(mold)の役割のみを提供するだけで、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜が二次電池などの電気化学素子に適用される場合、前記離型フィルムは前記固相-液相ハイブリッド電解質膜から除去されて前記電気化学素子の構成要素として含まれない。このように分散液の塗布及び乾燥を通じて、固体高分子粒子同士が充填され、前記固体高分子粒子同士が面接触する空間に前記液体電解質が含浸される多孔性構造体を形成することができる。
【0076】
次いで、
図1の(c)に示されたように、前記多孔性構造体を加圧して固相-液相ハイブリッド電解質膜を形成する。
【0077】
このとき、前記加圧を通じて、多孔性構造体内の固体高分子粒子及び液体電解質が再配置され、加圧前に比べて厚さが減少した薄膜電解質膜を製造することができる。
【0078】
一方、前記加圧を通じて固体高分子粒子同士が物理的に結合するようになり、結着力が増加したハイブリッド電解質膜を製造することができる。一方、本発明の場合、前記固体高分子粒子は延性を有するものであるため、別途のバインダー高分子を必要としない。これにより、抵抗が減少した固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造することができる(
図1の(d))。
【0079】
一方、本発明の一実施形態において、分散液を乾燥した後、前記液体電解質は少量で存在する。これにより、漏液がないだけでなく、従来の固体電解質膜に比べてイオン伝導度が改善された固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。例えば、前記液体電解質の含量は、固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量対比1~20重量%である。より具体的には、前記液体電解質の含量は、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜の全体含量に対して1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上または5重量%以上であり得、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下または16重量%以下であり得る。一方、本発明の一実施形態において、前記液体電解質は少量で存在するにもかかわらず、イオン伝導度の高い固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供する。これは、前記液体電解質が前記固体高分子粒子の表面または面接触する部分に均一に分散して存在するためである。
【0080】
上述したように、少量の液体電解質が含まれた後の気孔度は、前記固体高分子粒子の全体含量に対して0~49体積%、1~40体積%、2~20体積%または5~10体積%であり得る。
【0081】
本発明における「気孔」は、多様な形態の気孔構造を有し、ポロシメトリー(porosimeter)を用いて測定されたか、または、FE-SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope、電界放出形走査電子顕微鏡)上で観察された気孔の平均大きさの一つでも上述した条件を満足すれば、本発明に含まれる。
【0082】
上述したように、少量の液体電解質が前記固相-液相ハイブリッド電解質膜内に均一に含浸しているため、イオン伝導度が10-4~5×10-3S/cmと高い固相-液相ハイブリッド電解質膜を提供することができる。
【0083】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜は、多孔性高分子基材または不織布基材をさらに含み得る。特に、本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜は、含浸される液体電解質の含量が多いため、上述した多孔性高分子基材または不織布基材上に形成するか、或いは、多孔性高分子基材または不織布基材を別途に介在する場合、機械的強度が高くて有利である。一方、本発明の具体的な一実施形態において、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜が多孔性高分子基材または不織布基材を含む場合、前記多孔性高分子基材または不織布基材に液体電解質が含浸されて内部の気孔が前記液体電解質で充填されていることが望ましい。
【0084】
具体的には、前記不織布基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレートまたはこれらの混合物から形成されたものであり得る。
【0085】
一方、前記不織布基材の気孔内に前記固体高分子粒子の一部が埋め込まれ得、このとき、前記固体高分子粒子及び基材の表面を前記液体電解質が囲み得る。
【0086】
一方、前記不織布基材の少なくとも一面に前記固体高分子粒子が位置し得、このとき、前記固体高分子粒子及び基材の表面を前記液体電解質が囲み得る。
【0087】
本発明の具体的な一実施形態において、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜は薄膜状であり、薄膜の厚さは10~500μm、20~300μmまたは40~100μmであり得る。本発明の一実施形態では、このように薄膜状の分離膜を提供することができ、以後リチウム二次電池を製造するとき、エネルギー密度の面で有利である。
【0088】
以下、本発明の固相-液相ハイブリッド電解質膜を含む二次電池について説明する。前記二次電池は、負極、正極、及び前記負極と正極との間に介在される固相-液相ハイブリッド電解質膜を含む。本発明において、前記二次電池とは、外部の電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変換して貯蔵しておき、必要なときに電気を作る装置を称する。通常、二次電池には、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池(NiCd)、ニッケル水素蓄電池(NiMH)、リチウムイオン電池などが含まれる。本発明の一実施形態において、前記二次電池はリチウムイオン二次電池であり得る。
【0089】
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層を含む。前記正極活物質層は、正極活物質及び導電材を含み、バインダー樹脂及び固体電解質材料のうち選択された1種以上を含み得る。また、前記正極活物質層は、電気化学的特性の補完や改善を目的として、多様な添加剤をさらに含み得る。
【0090】
前記正極活物質層は、正極活物質粒子同士の間に空き空間などによる気孔を有し得、これによって多孔性構造になり得る。前記正極活物質層は、約12vol%~35vol%の気孔度を有し得る。
【0091】
前記正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば特定の成分に限定されない。その非制限的な例としては、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4、LiMnO2など)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(xは0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLi2Mn3MO8(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3のうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0092】
一方、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層を含む。前記負極活物質層は、負極活物質及び導電材を含み、バインダー樹脂及び固体電解質材料のうち選択された1種以上を含み得る。また、前記負極活物質層は、電気化学的特性の補完や改善を目的として、多様な添加剤をさらに含み得る。
【0093】
前記負極活物質層は、負極活物質粒子同士の間に空き空間などによる気孔を有し得、これによって多孔性構造になり得る。前記負極活物質層は、約15vol%~40vol%の気孔度を有し得る。
【0094】
前記負極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用可能な物質であれば制限なく使用し得る。例えば、前記負極活物質は、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などから選択された1種または2種以上を使用し得る。具体的な一実施形態において、前記負極活物質は炭素系物質及び/またはSiを含み得る。
【0095】
一方、本発明において、前記正極集電体及び負極集電体は、それぞれ独立して、金属板などの電気伝導性を有して二次電池分野で公知の集電体を、電極の極性に合わせて適切に使用し得る。
【0096】
本発明において、前記導電材は、通常、電極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1wt%~30wt%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含み得る。
【0097】
本発明において、前記バインダー樹脂は、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であれば特に制限されず、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、電極層100wt%に対して1wt%~30wt%、または1wt%~10wt%の範囲で含まれ得る。
【0098】
一方、本発明において、それぞれの電極活物質層は、必要に応じて酸化安定添加剤、還元安定添加剤、難燃剤、熱安定剤、防曇剤(antifogging agent)などのような添加剤を1種以上含み得る。
【0099】
前記固体電解質材料は、還元安定性に優れた固体電解質を使用することが望ましい。本発明の固体電解質材料は、主にリチウムイオンを伝達する役割をするため、イオン伝導度の高い素材、例えば10-5S/cm以上、望ましくは10-4S/cm以上のものであれば何れも使用可能であり、特定の成分に限定されない。
【0100】
前記固体電解質材料としては、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料及び高分子系固体電解質材料から選択された1種以上を含み得る。
【0101】
前記高分子系固体電解質材料は、溶媒化した電解質塩に高分子樹脂が添加されて形成された高分子固体電解質であるか、または、有機溶媒と電解質塩を含む有機電解液、イオン性液体、モノマーまたはオリゴマーなどを高分子樹脂に含有させた高分子ゲル電解質であり得る。
【0102】
本発明の具体的な一実施形態において、前記高分子固体電解質としては、例えば、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレン誘導体、アルキレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルファイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが挙げられる。
【0103】
前記高分子固体電解質は、高分子樹脂として、ポリエチレンオキサイド(PEO)主鎖にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリシロキサン(pdms)及び/またはホスファゼンのような無定形高分子を共単量体として共重合させた枝状共重合体、櫛状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などを含み得、これら高分子の混合物を含んでもよい。
【0104】
また、前記高分子ゲル電解質は、電解質塩を含む有機電解液と高分子樹脂を含み、前記有機電解液は高分子樹脂の重量対比60~400重量部で含まれる。ゲル電解質に適用される高分子としては、特定の成分に限定されないが、例えば、ポリエーテル系、PVC系、PMMA系、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)などが挙げられ、これら高分子の混合物が含まれてもよい。
【0105】
さらに、前記電解質塩は、イオン化可能なリチウム塩であって、Li+X-で表され得る。このようなリチウム塩は、望ましくはLiTFSI、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3CO2、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、(CF3SO2)・2NLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウムイミド及びこれらの組合せからなる群より選択される1種であり得る。より望ましくは、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド)であり得る。
【0106】
本発明において、前記硫化物系固体電解質材料は、硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものであって、Li-P-S系ガラスやLi-P-S系ガラスセラミックを含み得る。このような硫化物系固体電解質の非制限的な例としては、Li2S-P2S5、Li2S-LiI-P2S5、Li2S-LiI-Li2O-P2S5、Li2S-LiBr-P2S5、Li2S-Li2O-P2S5、Li2S-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-P2O5、Li2S-P2S5-SiS2、Li2S-P2S5-SnS、Li2S-P2S5-Al2S3、Li2S-GeS2、Li2S-GeS2-ZnSなどが挙げられ、このうち一つ以上を含み得るが、これらに特に限定されない。
【0107】
また、前記酸化物系固体電解質材料は、酸素(O)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものである。その非制限的な例としては、LLTO系化合物、Li6La2CaTa2O12、Li6La2ANb2O12(AはCaまたはSr)、Li2Nd3TeSbO12、Li3BO2.5N0.5、Li9SiAlO8、LAGP系化合物、LATP系化合物、Li1+xTi2-xAlxSiy(PO4)3-y(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlxZr2-x(PO4)3(0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTixZr2-x(PO4)3(0≦x≦1、0≦y≦1)、LISICON系化合物、LIPON系化合物、ペロブスカイト系化合物、NASICON系化合物、及びLLZO系化合物から選択された1種以上を含み得るが、これらに特に限定されない。
【0108】
一方、本発明による二次電池は、前記負極、固相-液相ハイブリッド電解質膜、正極がそれぞれ一つ以上順次に積層された電極組立体を製造した後、これを電池外装材に収納する方法で製造され得る。前記電極組立体は、両側最外郭の電極の極性が相異なるバイセル(bi-cell)、または、両側最外郭の電極の極性が同一であるモノセル(mono-cell)で製造され得る。また、前記電極組立体は、目的とする電池特性に応じて、ゼリーロール型、積層型、積層/折畳み型で設けられ得る。
【0109】
本発明の具体的な一実施形態において、前記リチウムイオン二次電池は、電極組立体の他に、前記電池外装材に液体電解質がさらに注液されることなく、全固体電池の形態で製造され得る。または、前記固相-液相ハイブリッド電解質膜に含まれた液体電解質の他に、液体電解質が追加的に注液されて製造されてもよく、追加的に注液される液体電解質は前記固相-液相ハイブリッド電解質膜についての記載を参照できる。
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらに限定されることはない。
【0111】
実施例1
固体高分子粒子として粉末状のポリフェニレンスルファイド(平均粒径:10μm)が液体電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7(体積%)、LiPF6 1M、ビニレンカーボネート0.5重量%、フルオロエチルレンカーボネート1重量%)及び揮発性有機溶媒であるアセトニトリルに20:40:40wt%(重量比)の濃度で分散している分散液を製造した。
【0112】
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に分離膜(ポリエチレン、厚さ9μm)をさらに介在させ、前記分散液3mLを分離膜上に塗布した。その後、常温で一日間乾燥して厚さ53μmの固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。粒子同士の間及び/または粒子と分離膜との間の接触力を増大させ、厚さを減少させるため、ロールプレスして厚さ33μmの固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。その後、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを除去した。
【0113】
実施例2
分散液の比を20:20:60wt%にしたことを除き、実施例1と同様にして、乾燥後の厚さが48μm、ロールプレス後の厚さが26μmである固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。
【0114】
実施例3
揮発性有機溶媒としてアセトニトリルの代りにメチルエチルケトンを使用し、重量比が20:20:60wt%である分散液を用いて、乾燥後の厚さが50μm、ロールプレス後の厚さが28μmである固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。その他は、実施例2と同様に行った。
【0115】
実施例4
分散液をコーティングするとき、分離膜を使用せず、PET離型フィルム上に直接コーティングしたことを除き、実施例2と同様にして、乾燥後の厚さが235μm、ロールプレス後の厚さが155μmである固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造した。
【0116】
比較例1
分散液を製造するとき、揮発性有機溶媒を投入せず、固体高分子粒子と液体電解質との重量比が20:80であることを除き、実施例1と同様の方法で電解質膜を製造した。乾燥後に51μmの厚さが得られたが、ロールプレス過程で固体高分子粒子同士の間の接着力が低過ぎて電解質膜を製造することができなかった。
【0117】
比較例2
分散液を製造するとき、揮発性有機溶媒を投入せず、固体高分子粒子と液体電解質との重量比が50:50であることを除き、実施例1と同様の方法で電解質膜を製造した。しかし、分散液の流動性がなくてコーティングが不可能であった。
【0118】
比較例3
揮発性有機溶媒であるアセトニトリルの代りに、非揮発性有機溶媒であるジメチルホルムアミドを使用したことを除き、実施例2と同様の方法で、乾燥後の厚さが47μm、ロールプレス後の厚さが28μmである電解質膜を製造した。このとき、乾燥条件は、ジメチルホルムアミドを除去するため、100℃で24時間真空乾燥した。
【0119】
比較例4
分離膜を使用せず、比較例1の分散液を用いて離型フィルムに直接コーティングし、乾燥後に244μmの厚さが得られたが、ロールプレス過程で粒子同士の間の接着力が低過ぎて電解質膜を製造することができなかった。
【0120】
比較例5
揮発性有機溶媒であるアセトニトリル(AN)にポリエチレンオキサイド(PEO、Mw=4,000,000g/mol)を溶かして4wt%の高分子溶液を用意した。このとき、リチウム塩としてLiTFSIを[EO]/[Li+]=18/1(モル比)になるように一緒に投入した。前記高分子溶液をPEO及びリチウム塩が十分に溶けるように70℃で一晩撹拌した。次いで、開始剤と硬化剤を含む添加剤溶液を用意した。硬化剤としてはポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、Mw=575)、開始剤としては過酸化ベンゾイル(BPO)を使用し、PEGDAはPEO対比20wt%、BPOはPEGDA対比1wt%の量になるようにし、溶媒としてはアセトニトリルを使用した。前記添加剤溶液を投入した成分が十分に混合されるように約1時間撹拌した。その後、前記添加剤溶液を前記高分子溶液に添加し、二つの溶液を十分に混合した。混合した溶液を離型フィルムにドクターブレードを用いて塗布及びコーティングした。コーティングギャップは300μm、コーティング速度は20mm/分にした。前記溶液がコーティングされた離型フィルムをガラス板に移し、水平を維持しながら常温条件で一晩乾燥し、100℃で12時間真空乾燥した。このような方式で固体電解質膜を収得した。収得された固体電解質膜の厚さは約50μmであった。
【0121】
固相-液相ハイブリッド電解質膜のイオン伝導度の測定
各実施例及び比較例で収得した固相-液相ハイブリッド電解質膜を大きさ1.7671cm2の円形に打ち抜き、それを二枚のステンレス鋼の間に配置してコインセルを製作した。分析装置(VMP3、バイオロジック社製)を使用して常温、振幅10mV及びスキャンレンジ500khz~0.1MHzの条件で電気化学的インピーダンスを測定し、それに基づいてイオン伝導度を計算した。
【0122】
このとき、実施例1~4、比較例1~4は常温条件でイオン伝導度を測定し、比較例5は60℃条件でイオン伝導度を測定した。
【0123】
【0124】
表1から分かるように、本発明の一実施形態によれば、揮発性溶媒を追加した分散液を使用してフリー・スタンディング(free-standing)膜を製造することができた。分散液の濃度を低めてコーティングを可能にし、コーティング後の最終固形分を高めて強度を確保するため、適切な揮発性溶媒を添加し、固相と液相との比率を適切に調節することで、フリー・スタンディング膜を製造することができた。本発明の一実施形態による固相-液相ハイブリッド電解質膜は、従来のポリエチレンオキサイドで代表される固体電解質に比べて、物性やイオン伝導性などで優れた特性を示した(比較例5)。特に、分散液をコーティングする方法によって粒子で構成された形態の構造体と電解液とを組み合わせることで、イオン伝導性に優れる固相-液相ハイブリッド電解質膜を製造することができた。また、分離膜の導入により、50μm未満の薄膜の電解質膜を製造することができた。
【符号の説明】
【0125】
100:固相-液相ハイブリッド電解質膜
11:固体高分子粒子
12:液体電解質
13:揮発性有機溶媒
14:分散液
15:基材