(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】限流ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/143 20060101AFI20240610BHJP
H01H 85/045 20060101ALI20240610BHJP
H01H 85/08 20060101ALI20240610BHJP
H01H 85/175 20060101ALI20240610BHJP
H01H 69/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01H85/143
H01H85/045 A
H01H85/08
H01H85/175
H01H69/02
(21)【出願番号】P 2022542182
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2020052356
(87)【国際公開番号】W WO2021151498
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591178562
【氏名又は名称】シュルター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schurter AG
【住所又は居所原語表記】Werkhofstrasse 8, 6005 Luzern, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン シブリ
(72)【発明者】
【氏名】ギド ズィグナー
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-65156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236675(US,A1)
【文献】国際公開第2013/125461(WO,A1)
【文献】特開2014-154284(JP,A)
【文献】特開2018-166099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/055 ー 85/175
H01H 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
限流ヒューズ(20)であって、
-内部空間(6)を取り囲む壁と、第1の開口部(7)と、前記第1の開口部に対向する第2の開口部(8)とを有する電気絶縁ハウジング(2)と、
-前記ハウジングの外側の第1の端子領域(3)から、前記第1の開口部を横切り、前記内部空間を横切り、前記第2の開口部を横切り、前記ハウジングの外側の第2の端子領域(4)まで延在する、一体的に形成された電気導体要素(1)と、
を備え、
前記導体要素は、断面が縮小された溶融部(5)を備え、前記溶融部は、前記内部空間に位置しており、前記導体要素における所定の最大許容電流を超えたときに溶融するように構成されており、
前記導体要素の第1の封止部(9)は、前記第1の開口部(7)を封止しており、前記導体要素の第2の封止部(10)は、前記第2の開口部(9)を封止して
おり、
前記導体要素の前記第2の封止部(10)は、前記内部空間(6)に向かって突出する突出部(11)を有し、前記突出部は、前記第2の開口部(8)の輪郭部上に支持されている、
限流ヒューズ(20)。
【請求項2】
前記導体要素(1)は、シートメタルである、請求項1に記載の限流ヒューズ。
【請求項3】
前記第1の端子領域(3)及び前記第2の端子領域(4)は、同一平面上にある、請求項1又は2に記載の限流ヒューズ。
【請求項4】
前記溶融部(5)は、前記内部空間(6)を横切って機械的に自立している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項5】
前記導体要素の前記第1の封止部(9)の断面は、形状及び寸法において前記第1の開口部(7)の断面に対応し、及び/又は、前記導体要素の前記第2の封止部(10)の断面は、形状及び寸法において前記第2の開口部(8)の断面に対応する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項6】
前記ハウジング(2)の前記壁と、前記導体要素の前記第1の封止部(9)と、前記導体要素の前記第2の封止部(10)とは、共に防塵筐体を形成する、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項7】
前記第2の開口部(8)の前記断面は、前記第1の開口部(7)の前記断面よりも大きい、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項8】
前記内部空間に面する少なくとも1つの溝が前記ハウジングに形成されており、特に、前記溝は、前記第1の端子領域及び前記第2の端子領域に隣接する前記ハウジングの底面に形成されている、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項9】
前記内部空間(6)の幾何学的形状は、前記第2の開口部(8)を通して一部品として取り外し可能な仮想コアのネガとして画定されている、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項10】
前記ハウジング(2)は、一体的に形成されている、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項11】
前記限流ヒューズは、前記ハウジング(2)及び前記導体要素(1)から構成されている、請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の限流ヒューズ。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の限流ヒューズを製造する方法であって、
a)内部空間(6)を取り囲む壁と、第1の開口部(7)と、前記第1の開口部に対向する第2の開口部(8)とを有する、一体的に形成された電気絶縁ハウジング(2)を用意するステップ(101)と、
b)断面が縮小された溶融部(5)を備えた、導電性の一体的に形成された導体要素(1)を用意するステップ(102)と、
c)前記溶融部(5)が前記内部空間(6)内に位置するまで、前記第1の開口部(7)又は前記第2の開口部(8)を通して前記導体要素(1)を導入するステップ(103)と、
d)前記導体要素を屈曲させて前記ハウジングの外側に第1の端子領域(3)及び第2の端子領域(4)を形成し、これにより、前記導体要素の第1の部分(9)によって前記第1の開口部(7)を封止し、前記導体要素の第2の部分によって前記第2の開口部(8)を封止するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
ステップa)において用意される前記導体要素(1)は、エンボス加工された突出部(11)を有するシートメタルであり、前記シートメタルは、前記第1の端子領域の範囲を定める第1の屈曲縁部を有し、前記シートメタルは、前記第2の開口部の対向する内側輪郭間において前記屈曲縁部と前記突出部との緊合を可能にする距離だけ前記突出部から離間した第2の屈曲縁部を有し、前記シートメタルは、前記第2の屈曲縁部と前記第1の端子領域に対向する端部との間の領域において平坦であり、
前記導体要素を導入する前記ステップc)は、前記導体要素の前記平坦領域を前記内部空間から前記第1の開口部を通して供給するステップを含み、
前記ステップd)は、前記第2の端子領域の範囲を定める第3の屈曲縁部を確立するステップと、次いで、前記第1の開口部に近接して第4の屈曲縁部を確立するステップとを含む、
請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限流ヒューズ及び限流ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
限流ヒューズは、電気技術分野において広く使用されている保護デバイスである。ヒューズは、例えば、電流が可融材料の一部を通って流れ、この電流が過剰になったときに可融材料が変位して電流が遮断されるように構成されている。限流ヒューズは、電流が所定の最大許容電流を超えた場合に確実に遮断されるという意味において、信頼性が高いことが望ましい。さらに、ヒューズは、通常の動作条件に対応する低い電流値においては電気回路を遮断しないようにしておく必要がある。
【0003】
公知のタイプのヒューズは、管状ハウジングの両端に導電性エンドキャップを有する管状絶縁ハウジングを備えている。ハウジングの内部を通って延在する可融ワイヤが2つのエンドキャップを接続している。可融ワイヤは、所定の最大許容電流がワイヤを通って流れるときに溶融するように寸法設定されている。ワイヤとエンドキャップとの間の接続には不具合が発生する可能性があり、即ち、ワイヤとエンドキャップとの間の接続に、定格電流よりも低い電流で破損が発生する可能性がある。定格電流が高ければ高いほど、かかるヒューズの早期トリガを高い信頼性で回避することがますます困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、少なくとも従来技術の問題を回避する代替の限流ヒューズを提供することである。本発明のより具体的な目的は、構造が単純で信頼性が高く、特に高電流の遮断に信頼性が高い限流ヒューズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の限流ヒューズによって達成される。
【0006】
本発明に係る限流ヒューズは、
-内部空間を取り囲む壁と、第1の開口部と、第1の開口部に対向する第2の開口部とを有する電気絶縁ハウジングと、
-ハウジングの外側の第1の端子領域から、第1の開口部を横切り、内部空間を横切り、第2の開口部を横切り、ハウジングの外側の第2の端子領域まで延在する、一体的に形成された電気導体要素と、
を備える。
【0007】
導体要素は、断面が縮小された溶融部を備える。溶融部は、内部空間に位置しており、導体要素における所定の最大許容電流を超えたときに溶融するように構成されている。導体要素の第1の封止部は第1の開口部を封止しており、導体要素の第2の封止部は第2の開口部を封止している。
【0008】
導体要素は導電性であり、一体的に形成されているので、導体要素は単一部品の可融要素を形成し、可融要素は、同時にヒューズの端子の機能を提供し、ヒューズのハウジングの開口部を閉鎖する。本発明者らは、これにより、製造が容易であって、高い信頼性を有するヒューズが得られることを見出した。
【0009】
限流ヒューズのハウジングは、上述した第1の開口部及び第2の開口部以外の他の開口部を有しないものとしてもよい。このようにして、ハウジングの管状のトポロジが得られる。ハウジングは、ヒューズが溶断したときに溶融した溶融部からの液滴がヒューズの隣接する要素又は近くの人に損傷を与えることを防止する。ハウジングは、ヒューズが溶断した際に温度上昇を受ける可能性のある材料から形成することができる。
【0010】
本発明の実施形態は、表面実装技術(SMT)を利用する用途を目的とする。少なくともこれらの場合において、ハウジングの材料は、260℃までの温度におけるリフロープロセスに耐えるように選択することができる。
【0011】
ハウジングの内部空間は、内部空間を横切る導体要素の部分を除いて、空であるものとしてよい。代替的に、内部空間は、アーク消弧材料(arc quenching material)で充填されるものとしてもよい。100アンペア(100A)以上の電流、例えば、最大2000アンペア又は最大10000アンペア(10kA)の電流など、最大許容電流が高くなるように設計された限流ヒューズに適したアーク消弧材料は、砂、特に石英砂であり得る。このように、限流ヒューズは、高電流領域又は超高電流領域で使用されるように適合させられる。近い将来、この領域の短絡電流を持つ電池及びアキュムレータが登場することを考えると、後者の電流範囲が特に有用であり得る。この場合、50Aから500Aの範囲の公称電流及び10kAまでの遮断容量が必要となり、本発明に係るヒューズによってこれを提供することができる。
【0012】
端子領域は、互いに離間しており、過電流から保護される電気デバイスと直列に限流ヒューズを接続することを可能とする。限流ヒューズは、導通状態と溶断状態との2つの状態を有する。導通状態、即ち、溶断されていない元の状態においては、導体要素は、第1の端子領域から第2の端子領域への電気的接触を提供する。ヒューズが溶断されると、即ち、所定の最大許容電流を超える電流によって導体要素の溶融部が溶融されると、第1の端子領域と第2の端子領域との間の電気的接続が遮断される。本発明に係る限流ヒューズは、非リセット型ヒューズであり、即ち、導通状態に戻ることはない。リセット機構は存在していない。
【0013】
第1の端子領域及び第2の端子領域は、導体要素によって直接に形成することができる。代替的に、第1の端子領域及び第2の端子領域は、端子がはんだ付けによって対応する導体パッドに容易に接続されるように、例えば、スズ又は銀の層などの層によって被覆されるものとしてもよい。代替例として、溶接、ねじ止め又はリベット止めによって端子を対応する導体に接続する手段を設けるものとしてもよい。
【0014】
ハウジングの第1の開口部及び第2の開口部が導体要素のそれぞれの封止部によってどのように封止又は閉鎖され得るかには、種々の選択肢が存在する。例えば、各封止部によって開口部が被覆されるものとしてもよい。他の例として、開口部の開放断面は、導体要素のそれぞれの封止部によって完全に充填されるものとしてもよい。
【0015】
導体要素の溶融部における縮小された断面は、導体要素の厚みの低減と導体要素の幅の低減とによって、溶融部の領域において導体要素を2つ以上の平行なストリップへ分離することによって実現されるものとしてよく、又は、例えば、ヒューズの溶融部を形成する分離された部分の前後の導体要素の厚みと比較して各々が低減された厚みを有する、2つ、3つ又はそれ以上の平行に延在するストリップに局所的に分離するなど、前述の可能性の組合せによって実現されるものとしてもよい。ストリップの数及びストリップの断面を変化させることによって、ヒューズの電流-時間特性を、所望の用途の必要性に応じて変化させることができる。
【0016】
電気導体要素に関して使用される「一体的に形成された」なる用語、及び、以下において説明する一部の実施形態においてハウジングに関して使用される「一体的に形成された」なる用語は、「単一部品として形成された」という意味を有する。これは、導体要素又はハウジングがそれぞれ、例えば、はんだ付け、溶接などによって確立される接続点、接続線若しくは接続面などの接合部のない、又は、機械的にインターロックする接続部のない、連続的な材料形成を伴うことを意味する。一体的に形成された導体要素は、例えば、圧延、切断、打ち抜き、エンボス加工又は屈曲加工によって、その最終形状を得ることができる。
【0017】
電気導体要素は、銅などの金属、又は、銅合金、例えば青銅若しくは黄銅、銀合金、又は、ステンレス鋼などの鉄合金などの金属合金から構成することができる。高い導電性又は非常に高い導電性を有する電気導体要素に適した金属合金は、銅-銀合金、銅-ジルコニウム合金、銅-亜鉛合金、銅-マグネシウム合金、銅-鉄合金、銅-クロム合金、銅-クロム-ジルコニウム合金、銅-ニッケル-リン合金及び銅-スズ合金の群に見出される。電気導体要素に適し、中程度の導電性を有する代替的な金属合金は、銅-ニッケル-シリコン合金、銅-ベリリウム合金、銅-ニッケル-スズ合金、銅-コバルト-ベリリウム合金及び銅-ニッケル-ベリリウム合金の群に見出される。
【0018】
ハウジングは、ポリマーを含み得る。ハウジングは、ハウジングの温度安定性を増加させる充填剤を含有するポリマーから構成することができる。ハウジングは、セラミック材料から構成することができる。ハウジングの材料は、最大電流に到達した場合に熱衝撃下においてハウジングにクラックが発生しないように選択することができ、この目的に特に適しているのは、ポリマーPA4T-GF30 FR(40)などのガラス繊維強化された高性能熱可塑性樹脂、特に高性能ポリアミドである。
【0019】
限流ヒューズの実施形態は、請求項2乃至12のいずれか一項に記載の特徴から得られる。
【0020】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、導体要素はシートメタルである。
【0021】
導体要素の外側輪郭は、導体要素をより大きいシートメタルから導体要素を打ち抜くことによって、又は、切断、例えばレーザ切断することによって、形成することができる。導体要素は、穿孔されるものとしてもよい。このステップにおいては、幅が低減された溶融部、又は、平行に延在する別個の部分を含む溶融部を製造することができる。シートメタルの部分領域の厚みは、断面が縮小された溶融部を製造するために、圧延又はプレスによって低減することができる。シートメタルは、最終形状、例えば、ハウジングの第1の開口部及び/又は第2の開口部を被覆する形態に容易に屈曲させることができる。端子領域の最終位置は、シートメタルの端部を所望の位置に屈曲させることによって達成することができる。
【0022】
シートメタルは、導体要素のための適当な材料に関連して上述したように、銅、青銅、黄銅、銅合金、銀合金、鋼、特にステンレス鋼などから構成することができる。
【0023】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、第1の端子領域及び第2の端子領域は同一平面上にある。
【0024】
端子領域が同一平面上にあるとは、第1の端子領域及び第2の端子領域が、共通の仮想平面において互いに離間して配置されることを意味する。この実施形態は、表面実装型デバイス(SMD)として設計されたヒューズに特に適しており、即ち、表面実装型技術(SMT)とも称されるリードレス用途に適している。端子領域は、ほぼ直方体形状のハウジングの底面に、ハウジングから離隔する方向へ向かって配置されるものとしてもよい。このように限流ヒューズをプリント回路基板上に配置し、リフローはんだ付けによって、第1の端子領域及び第2の端子領域をプリント回路基板上のはんだ付けパッドにはんだ付けすることができる。
【0025】
自動車用途に通常適用される既知のいわゆるブレードヒューズと比較すると、ブレードヒューズは、典型的には、生産チェーンの最終段階において手作業により取り付ける必要があり、これには比較的高いコストがかかるが、一方、本実施形態による限流ヒューズは、プリント回路基板上に自動的に配置することができ、標準的なリフロープロセスによってはんだ付けすることができるという利点を有する。
【0026】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、溶融部は、内部空間を横切って機械的に自立している。
【0027】
この実施形態においては、ワイヤインエア(wire-in-air)タイプの限流ヒューズを製造することができる。特に、溶融部は、ハウジングの内部空間を横切って斜めに延在するように配置することができる。断面の寸法と、溶融部における断面の形状と、導体要素の材料との組合せは、溶融部が機械的に自立するように適合させることができる。
【0028】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、導体要素の第1の封止部の断面は、形状及び寸法において第1の開口部の断面に対応する。代替として又は前述の実施形態と組み合わせて、導体要素の第2の封止部の断面は、形状及び寸法において第2の開口部の断面に対応する。
【0029】
一例として、それぞれの封止部のうちの1つは、矩形断面を有するものとしてもよく、例えば、封止部を形成するシートメタルの一部の厚み及び幅によって画定される矩形を有するものとしてもよい。この矩形断面は、ハウジングの矩形開口部に正確に緊合するように寸法設定されるものとしてよい。
【0030】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、導体要素の第2の封止部は、内部空間に向かって突出する突出部を有する。突出部は、第2の開口部の輪郭部上に支持される。
【0031】
突出部は、例えば、丸い基部を有するこぶ(hump)の形状又は細長いこぶの形状を有するものとしてよく、このこぶは、シートメタルにエンボス加工されるものとしてよい。突出部が開口部の輪郭部上に支持されることにより、少なくとも突出部が開口部の輪郭部に押し付けられる方向には、開口部を封止する封止部のずれが発生しないようにすることができる。この実施形態は、導電要素のそれぞれの封止部によって被覆されるハウジング内の比較的大きい開口部を有する実施形態との組合せにおいて、特に好適である。突出部によって防止されない他の方向への封止部の移動は、例えば、ハウジングの縁部の周囲に延在する導体要素の角度付き設計によって、例えば、突出部を有する面に直交する面上に端子領域を形成することによって、阻止することができる。
【0032】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、ハウジングの壁と、導体要素の第1の封止部と、導体要素の第2の封止部とは、共に防塵筐体を形成する。
【0033】
この実施形態においては、ハウジングと導電要素との間の間隙は、埃が間隙を通過することができないほど十分に小さく寸法設定されている。これにより、一方では、ヒューズの外側からダスト粒子がハウジング内に侵入することが防止され、他方では、ヒューズの溶断により生成される粒子からヒューズの周囲が保護される。ダスト粒子は、典型的には5マイクロメートル乃至100マイクロメートルの範囲の直径を有する。従って、間隙の幅は、さらに高い保護レベルを達成するために、5マイクロメートル未満又はさらに2マイクロメートル若しくは1マイクロメートル程度の小ささであるものとしてもよい。
【0034】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、第2の開口部の断面は、第1の開口部の断面よりも大きい。
【0035】
この実施形態は、ハウジングの開口部のサイズに関して非対称である。これにより、開口部の大きい側からの導体要素の挿入が容易となり、ヒューズの組み立てを簡単化することができる。より大きい第2の開口部を通して挿入された導体要素の端部を、よりタイトな寸法の第1の開口部内へとこれを通して導入するように設計された内部空間の漏斗型形状を、この実施形態と組み合わせることができる。ハウジングの一方の側の開口部が大きいため、導体要素は、ハウジング内部の空きスペースへと斜めに配置することができる。このようにして、水平に配置された溶融部と比較して溶融部の長さを増加させることができ、特に、溶融部は、直方体ハウジングの長辺よりも長くすることができる。
【0036】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、内部空間に面する少なくとも1つの溝がハウジングに形成される。特に、溝は、前記第1の端子領域及び前記第2の端子領域に隣接するハウジングの底面に形成することができる。
【0037】
本発明者らは、この実施形態においては、ヒューズの端子間に非常に高い絶縁抵抗が発生することを見出した。従って、この実施形態による限流ヒューズは、特に高電流用途に対して、即ち、2000アンペア以上の定格電流に対して高い遮断能力を有する。
【0038】
第1の端子領域及び第2の端子領域の両方に隣接する面が存在する場合、通常、使用時にこの面はプリント回路基板上にはんだ付けされ、底面と称されることが多い。溶融部における縮小された断面が2つ以上の平行なストリップとして形成される場合、溝の数はストリップの数に対応するものとしてよく、別個の溝がストリップのそれぞれ1つに対して平行にかつ近接して延在するものとしてもよい。使用時、これらの溝は、溶融部の下に、即ち、ヒューズの導通状態における溶融部の位置に対して重力方向に配置することができる。これにより、特に高いヒューズの電流遮断能力が得られる。
【0039】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、内部空間の幾何学的形状は、第2の開口部を通して一部品として取り外し可能な仮想コアのネガとして画定される。
【0040】
これは、上述したような溝を有する一実施形態の場合、1つ以上の溝を含むハウジングの内部空間が、この幾何学的形状を有することを意味する。ハウジングは、射出成形されたポリマー部品として、又は、一体的に成形されたコアを用いて焼結されたセラミック部品として、それぞれ、成形形態の一部として又は焼結形態の一部として、製造することができる。本実施形態は、一体的に形成されたコアが一部品として取り外し可能であり、コアが再使用可能であるという利点につながる。この幾何学的形状は、実際に得られるハウジングの一部としてコアが存在しないため、仮想コアを参照することによって説明される。
【0041】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、ハウジングは一体的に形成される。
【0042】
この実施形態は、ハウジングの製造が容易かつ低コストであるという利点を有する。さらに、一体的に形成されたハウジングにより、ヒューズが溶断した際に発生する熱衝撃によってばらばらに破損するリスクが低減される。従って、本実施形態は、高電流用途、即ち、最大2000アンペア以上の定格電流に特に適している。
【0043】
本発明に係る限流ヒューズの一実施形態においては、限流ヒューズは、ハウジング及び導体要素から構成される。
【0044】
本発明者らは、本発明に係る限流ヒューズが、2つの要素、即ち、非導電性ハウジングと、少なくとも溶融部の領域においてハウジングによって取り囲まれた導電性要素とのみを利用する、非常に単純な構成で実現され得ることを見出した。驚くべきことに、この単純な構成であっても、ハウジングの内部空間を適当に封止することができ、2つの部品を互いに適当に取り付けることができる。
【0045】
上述した実施形態の特徴は、互いに矛盾しない限り、組み合わせられるものとしてもよい。
【0046】
本発明の範囲には、さらに、請求項13に記載の方法がある。これは、本発明に係る限流ヒューズを製造する方法である。本発明に係る方法は、
a)内部空間を取り囲む壁と、第1の開口部と、第1の開口部に対向する第2の開口部とを有する、一体的に形成された電気絶縁ハウジングを用意するステップと、
b)断面が縮小された溶融部を備えた、導電性の一体的に形成された導体要素を用意するステップと、
c)溶融部が内部空間内に位置するまで、第1の開口部又は第2の開口部を通して導体要素を導入するステップと、
d)導体要素を屈曲させてハウジングの外側に第1の端子領域及び第2の端子領域を形成し、これにより、導体要素の第1の部分によって第1の開口部を封止し、導体要素の第2の部分によって第2の開口部を封止するステップと
を含む。
【0047】
本方法の変形例は、請求項14の特徴から得られる。
【0048】
本方法の変形例においては、ステップa)において用意される導体要素は、エンボス加工された突出部を有するシートメタルである。シートメタルは、第1の端子領域の範囲を定める第1の屈曲縁部を有する。シートメタルは、前記第2の開口部の対向する内側輪郭間において屈曲縁部と突出部との緊合を可能にする距離だけ突出部から離間した第2の屈曲縁部を有する。ステップa)において提供されるシートメタルは、前記第2の屈曲縁部と第1の端子領域に対向する端部との間の領域において平坦である。
【0049】
本方法のこの変形例においては、導体要素を導入するステップc)は、導体要素の平坦領域、即ち、シートメタルを内部空間から第1の開口部を通して供給するステップを含む。
【0050】
本方法のこの変形例においては、ステップd)は、第2の端子領域の範囲を定める第3の屈曲縁部を確立するステップと、次いで、第1の開口部に近接して第4の屈曲縁部を確立するステップとを含む。
【0051】
ステップd)の追加の屈曲ステップを適用した後、それまで平坦であったシートメタルの領域が屈曲され、シートメタルの後方移動が防止される。このようにして、ハウジング及び導体要素は、機械的に安定したユニットを構築する。
【0052】
ここで、本発明を、図面を用いてさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2a】限流ヒューズの一実施形態の斜視図である。
【
図2b】限流ヒューズの一実施形態の斜視図である。
【
図3a】限流ヒューズの一実施形態の側面図である。
【
図3b】限流ヒューズの一実施形態の側面図である。
【
図3c】限流ヒューズの一実施形態の側面図である。
【
図3d】限流ヒューズの一実施形態の側面図である。
【
図4a】限流ヒューズの3つの異なる実施形態の断面図である。
【
図4b】限流ヒューズの3つの異なる実施形態の断面図である。
【
図4c】限流ヒューズの3つの異なる実施形態の断面図である。
【
図5a】
図3に示されている限流ヒューズの一実施形態の製造中の3つの異なる状態を示す断面図である。
【
図5b】
図3に示されている限流ヒューズの一実施形態の製造中の3つの異なる状態を示す断面図である。
【
図5c】
図3に示されている限流ヒューズの一実施形態の製造中の3つの異なる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明に係る限流ヒューズ20を通る断面を概略的かつ簡単化して示している。このヒューズは、斜線により示された導体要素1と、クロスハッチングにより示されたハウジング2とを有している。ハウジングは、内部空間6を取り囲む壁を有する電気絶縁ハウジング2である。ハウジングは、第1の開口部7と、第1の開口部に対向する第2の開口部8とを有する。
【0055】
導体要素1は、一体的に形成された電気導体要素である。第1の端子領域3及び第2の端子領域4は、ハウジングの外側にある。断面が縮小された溶融部5は、ここでは厚みが低減されて示されており、導体要素の中央部を形成している。溶融部は、導体要素における所定の最大許容電流を超えたときに溶融するように構成されている。断面の縮小は、厚みの低減によって達成され得るだけでなく、この図においては視認することができない断面の縮小によっても達成することができる。
【0056】
導体要素は、前記第1の端子領域から、ハウジングの第1の開口部7を横切り、ハウジングの内部空間6を横切り、ハウジングの第2の開口部8を横切り、最終的に第2の端子領域4まで延在する一部品として形成されている。ハウジングの開口部は、導体要素の部分によって封止されている。導体要素の第1の封止部9は、第1の開口部7を封止している。導体要素の第2の封止部10は、第2の開口部9を封止している。ここに示されているバージョンにおいては、第1の封止部は、単に開口部7全体を充填する。第2の開口部8は、第1の開口部7よりも大きい。第2の開口部は、第2の封止部10によって被覆されている。ここに示されているバージョンにおいては、導体要素の封止部は、導体要素の特定の形状により、この位置に保持され、これにより、上下方向の移動を防止している。ここで、上下とは、本図における方向を指す。
【0057】
図2a)は、ハウジング2及び導体要素1の特定の設計を有する限流ヒューズの一実施形態の斜視図を示している。ハウジング及び完全なヒューズは、ほぼ直方体形状を有する。ハウジングの縁部は面取りされている。ハウジングは、2つ大きい延在方向(幅及び長さ)と、1つの小さい延在方向(この場合は高さ)とを有する。この実施形態でシートメタルとして形成されている導体要素1には、突出部11がエンボス加工されている。この突出部の機能は、次の図に関連してさらに説明される。
図2a)においては、端子領域3及び4が視認可能である。
図2b)は、
図2a)と同一のヒューズを示しているが、プリント回路基板上に配置することができるように、所定の位置において上下逆にしたものである。ここに示している実施形態は、リフローはんだ付けに適したSMDヒューズとして形成されている。
【0058】
図3a)乃至
図3d)は、
図2a)及び
図2b)に示したものと同一の実施形態の図を示している。
図3c)は、
図3a)、
図3b)及び
図3d)による視野の方向及び視野の切断面の位置を示している。
図3a)は、ハウジング2のみ、即ち、導体要素がない場合の側面図を示している。視野方向は、
図3c)において矢印Aによって示されており、これは、ヒューズの長手方向を示している。ここでは、ハウジングの第2の開口部8内を見ることができる。開口部8の輪郭に近接して凹部14が形成されている。凹部は、開口部の中央付近に形成され、形状及び寸法において導体要素1の突出部11に対応する(
図3b)及び
図3c)を参照)。凹部14と突出部11との組合せにより、形状嵌合接続部が得られ、導体要素とハウジングとの間の不要な相対移動が非常に容易な手段により防止される。2つの台形状断面の溝13が、ハウジングの内部空間の底面に形成されている。2つの溝は長手方向に延在している。
【0059】
図3b)は、ヒューズの中間面に沿った断面を示している。この図の視野方向は、
図3c)において矢印Bによって示されており、これはヒューズの横方向に対応する。導体要素1はハウジング2を横切って導通しており、ハウジングの外側に端子領域3及び4を形成している。この図の右側に示されているハウジングの開口部は、矩形の開口部であり、この開口部は、導体要素の厚みで完全に充填され、開口部が封止された状態となっている。導体要素は、この領域において第1の封止部9を形成している。この図の左側に示されているハウジングの大きい開口部は、第2の封止部10によって被覆されている。突出部11は、第2の封止部10の上側の角度付き部分と、第1の端子領域3に隣接する角度付き部分と共に、ハウジングの横方向位置及び高さ位置に対して封止部を定位置に保持している。導体要素の溶融部5は、溶融部5の前後における導体要素の幅と比較して、著しく幅が縮小された2つの平行なストリップとして形成される。図示の実施形態においては、溶融部における導電性材料の断面積は、全断面積の約15%まで低減される。
【0060】
図3d)は、
図3c)において矢印Dによって示されている上方向からの断面図を示している。切断面は水平面であり、ハウジングの内部空間の天井の真下に位置している。導体要素1を上から見た図である。図の左側においては、導体要素1は全幅及び全断面を有している。中央の切欠及び両側の切欠により、導体要素は2つの平行なストリップに縮小されており、これらは導体要素の溶融部5を形成している。2つのストリップの各々は、溝13の1つに対して平行に延在する。図の右側においては、切断面はハウジングの壁と交差する。
図3b)に見られるように、ハウジングの内部空間は、この領域において漏斗形状を有する。
【0061】
図4a)は、
図1の実施形態に対応する限流ヒューズの一実施形態を示している。導体要素1及びその溶融部5は、ハウジングの内部空間を斜めに横切って延在している。第1の端子領域3及び第2の端子領域4は同一平面上にあり、即ち、この断面において一点鎖線によって示されている共通の仮想平面12内に位置する。この実施形態は、SMDヒューズとして適している。
【0062】
図4b)は、ほぼ等しいサイズの2つの開口部を有する実施形態の変形例を示している。導体要素は、内部空間を横切って水平に延在する。端子部分は、同一の側面に屈曲されているので、この変形例においても、両方の端子領域3,4は、共通の仮想平面12内に位置する。
【0063】
図4c)は他の変形例を示しており、この場合、端子部分はヒューズの異なる側面に屈曲されている。このように、端子領域3,4はヒューズの対向する側面に画定されているため、カートリッジヒューズのように使用することができる。
【0064】
図5a)は、予備的な形状の導体要素1をハウジング2に挿入した後の状態を示している。左側の屈曲縁部及びエンボス加工された突出部は、挿入ステップの前に準備することができる。図示された状態においては、ハウジングの両方の開口部は既に封止されている。導体要素を形成するシートメタルの平坦な部分は、図の右側のハウジングから距離d1だけ突出している。
【0065】
図5b)は、追加の屈曲ステップ後の状態を示している。さらなる屈曲縁部の位置及び角度は、距離d2,d3,d4及び角度αによって指定することができる(以下の表を参照)。
【0066】
図5c)は、さらなる屈曲ステップの後であって、第2の端子をハウジングの底面の最終位置に配置する前の任意の中間状態を示している。この図の右側のハウジングの小さい開口部に近接して、別の屈曲縁部が形成される。形状は、距離d5及びd6並びに角度βによって指定される(以下の表を参照)。
【0067】
一例として、以下の距離及び角度を適用することができる。即ち、
【表1】
である。
【0068】
角度αは意図的に直角よりもわずかに小さく、例えば、0.5°乃至3°小さくして、端子部分がヒューズの下側の最終位置にきたときに圧入されるように作製することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 導体要素
2 ハウジング
3 第1の端子領域
4 第2の端子領域
5 溶融部
6 内部空間
7 (ハウジングの)第1の開口部
8 (ハウジングの)第2の開口部
9 (導体要素の)第1の封止部
10 (導体要素の)第2の封止部
11 (導体要素の)突出部
12 (両方の端子領域を含む)仮想平面
13 溝
14 凹部
20 限流ヒューズ
d1,d2,d3,d4,d5,d6 一実施形態による屈曲加工の定義に使用される寸法
α,β 一実施形態による屈曲加工の定義に使用される角度