(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20240610BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240610BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20240610BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240610BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N27/00 A
G01N27/04 A
G01N27/22 A
A01G7/00 603
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2022554567
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010181
(87)【国際公開番号】W WO2021187386
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020045096
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、イノベーション創出強化研究推進事業『施設園芸の主要病害発生予測AIによる総合的病害予測・防除支援ソフトウェア開発』委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232564
【氏名又は名称】バイエルクロップサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092523(JP,A)
【文献】特開2009-076056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G05B 23/00-23/02
A01G 2/00-24/60
G01M 13/00-99/00
G06Q 50/00-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度センサ(31)の状態を診断する診断部(12b)を備える情報処理装置(10)であって、
前記診断部(12b)は、前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断するよう構成されており、
前記診断部(12b)は、前記湿度センサ(31)の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合、前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断するよう構成されて
おり、
前記情報処理装置(10)はさらに、前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断された場合、前記湿度センサ(31)の検出データの値を低下させる補正を行う補正部(12c)を備え、
前記補正部(12c)は、前記補正において、湿度100%を示す検出データに対しては、前記湿度センサ(31)の検出データの過去における推移に基づいて、湿度100%を超える仮想的な湿度である超湿度を推定し、推定された前記超湿度を低下させて得られる値を補正後の値として用いるよう構成されている、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記診断部(12b)は、前記湿度センサ(31)の1日における全検出データについての100%と前記基準割合との差に対応するパーセンタイル値が湿度100%となる日が前記基準期間続いた場合、前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断するよう構成されている、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断された場合、
前記湿度センサ(31)が劣化状態である旨を示す情報を出力する出力部(11)を備える、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記補正部(12c)は、前記補正において、前記湿度センサ(31)の劣化度合いに基づいて、前記湿度センサ(31)の検出データの値の低下度合いを変化させるよう構成されている、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記補正部(12c)は、前記補正において、前記湿度センサ(31)の劣化度合いに基づいて、前記超湿度を推定するよう構成されている、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
作物の病虫害リスクを前記湿度センサ(31)の検出データに基づいて予測する予測部(12a)を備え、
前記予測部(12a)は、前記湿度センサ(31)が劣化状態であると診断された場合、補正部(12c)により補正された前記湿度センサ(31)の検出データに基づいて、前記病虫害リスクを予測するよう構成されている、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途で、湿度センサが利用されている。湿度センサを使用している中で、種々の要因によって、湿度センサの検出データの値が真値から乖離する状況が生じる場合がある。ゆえに、そのような状況に適切に対応することが求められる。例えば、特許文献1には、湿度センサの校正を自動的に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、湿度センサは、長期に亘って使用され続けると、検出データが恒常的に過度に高い値を示す劣化状態となる。湿度センサが一旦劣化状態になると、劣化状態を解消することは困難である。なお、劣化状態を解消することができた場合であっても、劣化状態の解消には長い時間を要する。ゆえに、湿度センサを利用する場合には、湿度センサの劣化状態を適切に検知することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、湿度センサの劣化状態を適切に検知することが可能な情報処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、情報処理装置は、湿度センサの状態を診断する診断部を備える情報処理装置であって、診断部は、湿度センサの1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合、湿度センサが劣化状態であると診断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、湿度センサの劣化状態を適切に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る情報処理サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る情報処理サーバが行う湿度センサの状態診断に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る湿度センサの検出データの推移の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
<情報処理システムの構成>
図1を参照して、本発明の実施形態に係る情報処理システム1の構成について説明する。
【0011】
図1は、情報処理システム1の概略構成を示す模式図である。
【0012】
図1に示されるように、情報処理システム1は、情報処理サーバ10と、ユーザ端末20と、センサ装置30と、気象情報サーバ40とを備える。情報処理サーバ10、ユーザ端末20、センサ装置30および気象情報サーバ40は、無線の通信ネットワークを介して通信可能である。情報処理システム1は、農家であるユーザU1による栽培地C1での作物の栽培を支援するためのシステムである。なお、
図1では、栽培地C1がビニールハウスである例が示されているが、栽培地C1は、ビニールハウス以外の栽培地(例えば、覆われていない露地の栽培地等)であってもよい。
【0013】
なお、以下では、情報処理サーバ10が本発明に係る情報処理装置の一例に相当する場合を説明するが、本発明に係る情報処理装置は、情報処理サーバ10以外の他の装置(例えば、ユーザ端末20)であってもよい。また、本発明に係る情報処理装置の機能は、複数の装置(例えば、情報処理サーバ10およびユーザ端末20)によって実現されてもよい。例えば、本発明に係る情報処理装置の機能は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよい。
【0014】
情報処理サーバ10は、ユーザ端末20、センサ装置30および気象情報サーバ40の各装置から取得した情報を用いて、栽培地C1での作物の栽培に対して有益な情報をユーザ端末20に送信する。情報処理サーバ10から送信された情報は、ユーザ端末20により表示され、ユーザU1に通知される。
【0015】
具体的には、情報処理サーバ10は、各装置から取得した情報を用いて、作物の病虫害リスクを予測し、病虫害リスクの予測結果をユーザ端末20に送信する。病虫害リスクは、病虫害(つまり、病気による作物の被害である病害、または、虫による作物の被害である虫害)が発生するリスクである。また、情報処理サーバ10は、センサ装置30から取得した情報(具体的には、センサ装置30により検出される栽培地C1に関する各種検出データ)をユーザ端末20に送信してもよい。なお、情報処理サーバ10の構成の詳細については、後述する。
【0016】
ユーザ端末20は、ユーザU1により利用される情報処理端末(具体的には、スマートフォン)である。なお、
図1では、ユーザ端末20がスマートフォンである例が示されているが、ユーザ端末20は、スマートフォン以外の情報処理端末(例えば、タブレット端末または据置型のパーソナルコンピュータ等)であってもよい。
【0017】
ユーザ端末20は、ユーザU1による入力操作を受け付ける機能を有し、ユーザU1により入力される情報である入力情報を情報処理サーバ10に送信する。ユーザU1による入力情報は、例えば、栽培地C1の住所、栽培地C1のサイズ、作物の品種、作物の栽植密度、栽培開始時期、収穫時期、または、薬剤(例えば、農薬)の散布の履歴を示す情報等を含む。また、ユーザ端末20は、情報を視覚的に表示する機能を有し、情報処理サーバ10から受信した情報を表示する。
【0018】
センサ装置30は、栽培地C1内に設置されており、複数のセンサを備える。本実施形態では、センサ装置30は、栽培地C1内の湿度を検出する湿度センサ31を少なくとも備える。また、センサ装置30は、湿度センサ31以外のセンサとして、例えば、栽培地C1内の気温を検出する温度センサ、栽培地C1内の二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素濃度センサ、または、栽培地C1内での日射量を検出する日射量センサ等を備える。
【0019】
センサ装置30は、当該センサ装置30に設けられる各センサの検出データを情報処理サーバ10に送信する。例えば、各センサは、予め設定された時間間隔を空けた検出時点において各物理量を検出し、センサ装置30は、各検出時点において各センサの検出データを情報処理サーバ10に送信する。
【0020】
気象情報サーバ40は、気象情報を外部の装置に提供する。具体的には、気象情報サーバ40は、情報処理サーバ10からの要求に応じて、栽培地C1が含まれる地域の気象情報を情報処理サーバ10に送信する。気象情報は、気象に関する情報であり、例えば、外気の温度(つまり、外気温)、外気の湿度、日射量、または、雨量を示す情報等を含む。
【0021】
<情報処理サーバの構成>
図2を参照して、本発明の実施形態に係る情報処理サーバ10の構成について説明する。
【0022】
情報処理サーバ10は、例えば、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0023】
図2は、情報処理サーバ10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図2に示されるように、情報処理サーバ10は、例えば、通信部11と、制御部12と、記憶部13とを有する。なお、通信部11は、本発明に係る出力部の一例に相当する。
【0025】
通信部11は、情報処理システム1における各装置と通信する。具体的には、通信部11は、ユーザ端末20、センサ装置30および気象情報サーバ40の各装置から送信される情報を受信し、取得した情報を制御部12および記憶部13に出力する。また、通信部11は、制御部12によって生成された情報をユーザ端末20に送信する。
【0026】
制御部12は、ユーザ端末20に送信される情報を生成するための各種処理を行う。
図2に示されるように、制御部12は、例えば、プログラムと協働して機能する、予測部12aと、診断部12bと、補正部12cとを含む。
【0027】
予測部12aは、作物の病虫害リスクを予測する。具体的には、予測部12aは、事前に学習される予測モデルを用いて、作物の病虫害リスクを予測する。予測モデルは、ユーザ端末20、センサ装置30および気象情報サーバ40の各装置から送信される情報が入力されると、作物の病虫害リスクを出力する。予測モデルは、例えば、サポートベクタマシン等の既存のアルゴリズムに従って構築されてもよく、時系列モデルであってもよい。
【0028】
診断部12bは、センサ装置30の湿度センサ31の状態を診断する。具体的には、診断部12bは、湿度センサ31が劣化状態であるか否かを診断する。ここで、湿度センサ31は、電極間に設けられ高分子材料により形成される感湿材を有しており、感湿材において、吸湿(つまり、水分子の吸着)および脱湿(つまり、水分子の脱離)が生じる。湿度センサ31は、感湿材を通る電気信号の吸湿時と脱湿時との間での変化に基づいて、湿度を検出する。湿度センサ31は、吸湿時と脱湿時との間での感湿材の電気抵抗の変化を利用して湿度を検出する抵抗式湿度センサであってもよく、吸湿時と脱湿時との間での感湿材の電気容量の変化を利用して湿度を検出する容量式湿度センサであってもよい。ただし、湿度センサ31は、長期に亘って使用され続けると、感湿材に水分が溜まってしまうことによって、検出データが恒常的に過度に高い値を示す劣化状態となる場合がある。
【0029】
湿度センサ31が劣化状態となった場合、湿度センサ31の検出データの値が真値から乖離してしまう。ここで、湿度センサ31の検出データは、予測部12aによる病虫害リスクの予測に用いられる。ゆえに、湿度センサ31が劣化状態となった場合、病虫害リスクの予測精度が低下してしまう。よって、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、例えば、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報が通信部11によりユーザ端末20に送信され、湿度センサ31の交換がユーザU1に促される。
【0030】
補正部12cは、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、湿度センサ31の検出データの値を低下させる補正を行う。それにより、湿度センサ31が劣化状態となった場合に、湿度センサ31の検出データの値を真値に近づけることができる。ここで、予測部12aは、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、補正部12cにより補正された湿度センサ31の検出データに基づいて、病虫害リスクを予測してもよい。それにより、湿度センサ31が交換されるまでの間、病虫害リスクの予測精度の低下を抑制することができる。なお、補正部12cによる湿度センサ31の検出データの補正に関する処理の詳細については、後述する。
【0031】
記憶部13は、制御部12により行われる処理に利用される情報を記憶する。具体的には、記憶部13は、ユーザ端末20、センサ装置30および気象情報サーバ40の各装置から送信される情報を記憶する。
【0032】
上記のように、情報処理サーバ10では、診断部12bは、湿度センサ31の状態を診断する。ここで、診断部12bは、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断する。それにより、湿度センサ31の劣化状態を適切に検知することができる。このような、情報処理サーバ10により行われる湿度センサ31の状態診断に関する処理の詳細については、後述する。
【0033】
上記の基準割合および基準期間は、湿度センサ31が劣化状態になっていると経験上判断し得る値に適宜設定される。例えば、基準割合および基準期間は、劣化状態となっている湿度センサ31を予め用意し、当該湿度センサ31の検出データを収集して得られた検出データの傾向の分析結果に基づいて設定され得る。
【0034】
<情報処理サーバの動作>
図3および
図4を参照して、本発明の実施形態に係る情報処理サーバ10の動作について説明する。
【0035】
図3は、情報処理サーバ10が行う湿度センサ31の状態診断に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、
図3に示される処理フローは、湿度センサ31から情報処理サーバ10に検出データが送信されたことをトリガとして開始される。
図3におけるステップS101およびステップS105は、
図3に示される処理フローの開始および終了にそれぞれ対応する。
【0036】
なお、以下では、湿度センサ31の1日における全検出データについての100%と基準割合との差に対応するパーセンタイル値が湿度100%となる日が基準期間続いたことをもって、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いたと判断する例を説明する。ただし、パーセンタイル値を用いない他の方法によって、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いたか否かが判断されてもよい。
【0037】
図3に示される処理フローが開始されると、まず、ステップS102において、診断部12bは、湿度センサ31の1日における全検出データについての100%と基準割合との差に対応するパーセンタイル値が湿度100%となる日が基準期間続いたか否かを判定する。上記パーセンタイル値が湿度100%となる日が基準期間続いたと判定された場合(ステップS102/YES)、診断部12bは、湿度センサ31が劣化状態であると診断し、ステップS103に進む。一方、上記パーセンタイル値が湿度100%となる日が基準期間続いていないと判定された場合(ステップS102/NO)、診断部12bは、湿度センサ31が劣化状態ではないと診断し、
図3に示される処理フローは終了する。
【0038】
ステップS102において、例えば、基準割合が60%であり基準期間が10日である例では、診断部12bは、湿度センサ31の検出データの40パーセンタイル値が湿度100%となる日が10日続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断する。この例では、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が60%以上である日が10日続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断される。以下、基準割合が60%であり基準期間が10日である例について説明するが、基準割合および基準期間は、この例に特に限定されない。
【0039】
具体的には、診断部12bは、湿度センサ31の過去の日における全検出データを用いて、過去の日における40パーセンタイル値を特定することができる。ゆえに、診断部12bは、過去の日において、40パーセンタイル値が湿度100%であるか、湿度100%未満であるかを判断することができる。そして、過去の直近の10日間のいずれの日においても40パーセンタイル値が湿度100%である場合、ステップS102でYESと判定される。なお、過去の各日において、40パーセンタイル値が湿度100%であるか否かの判断は、例えば、湿度センサ31の1日における全検出データの検出が終了した後に行われてもよい。
【0040】
湿度センサ31の1日における全検出データの数は、例えば、湿度センサ31が10分おきに湿度を検出する場合、144個となる。ただし、湿度センサ31の検出時点の時間間隔は10分以外であってもよく、等間隔でなくてもよい。
【0041】
図4は、湿度センサ31の検出データの推移の一例を示す模式図である。
図4の横軸A1は時間を示し、縦軸A2は、湿度および40パーセンタイル値R1の値を示す。
図4では、1日目D1から19日目D19までの19日間における検出データの推移が実線L1によって示されている。また、
図4では、各日における検出データの40パーセンタイル値R1がドットによって示されている。なお、湿度センサ31の検出データは、1日において、昼に低下し、夜に上昇する。
【0042】
図4に示される例では、40パーセンタイル値R1が、2日目D2から6日目D6にかけて上昇し、6日目D6に湿度100%まで到達している。6日目D6以後の各日において、40パーセンタイル値R1は湿度100%となっている。ここで、6日目D6から15日目D15までの期間P1において、湿度センサ31の検出データの40パーセンタイル値R1が湿度100%となる日が10日続いている。ゆえに、16日目D16以降では、ステップS102において湿度センサ31が劣化状態であると診断される。
【0043】
なお、40パーセンタイル値R1が湿度100%未満となる日を1日または2日程度挟んで、40パーセンタイル値が湿度100%となる日が10日続いた場合であっても、診断部12bは、40パーセンタイル値が湿度100%となる日が10日続いたと判定してもよい。つまり、湿度100%を示す検出データの割合が基準割合未満である日を挟んで、湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合であっても、上記基準割合未満である日の日数が所定日数以下であった場合、診断部12bは、上記基準割合以上である日が基準期間続いたと判定してもよい。
【0044】
ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、通信部11は、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報をユーザ端末20に送信する。
【0045】
ステップS103では、例えば、通信部11は、送信した情報(つまり、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報)をユーザ端末20に表示させる。それにより、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報が、ユーザU1に通知される。ゆえに、湿度センサ31の交換がユーザU1に促される。なお、ユーザ端末20は、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報が情報処理サーバ10から送信される度に当該情報を表示してもよく、1日において設定された回数または時点に限って表示してもよい。
【0046】
ステップS103の次に、ステップS104において、補正部12cは、湿度センサ31の検出データの値を低下させる補正を行う。その後、
図3に示される処理フローは終了する。
【0047】
ステップS104の補正では、例えば、補正部12cは、湿度センサ31の検出データの値から所定値(例えば、10%)を減算することによって当該検出データの値を低下させてもよい。また、例えば、補正部12cは、湿度センサ31の検出データの値に対して所定比率(例えば、0.9)を乗算することによって当該検出データの値を低下させてもよい。上記減算における所定値、および、上記乗算における所定比率は、湿度センサ31の検出データの値が真値に近づき得るように適宜設定される。例えば、上記減算における所定値、および、上記乗算における所定比率は、劣化状態となっていない正常な湿度センサ31と、劣化状態となっている湿度センサ31とをそれぞれ予め用意し、各湿度センサ31の検出データを収集して得られた正常な湿度センサ31の検出データ、および、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データの比較結果(具体的には、湿度100%未満の値を示す検出データどうしの比較結果)に基づいて設定され得る。
【0048】
なお、上記減算における所定値、および、上記乗算における所定比率は、固定値であってもよく、パラメータに応じて変化する値であってもよい。ここで、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データの値を真値に適切に近づける観点では、補正部12cは、補正において、湿度センサ31の劣化度合いに基づいて、湿度センサ31の検出データの値の低下度合いを変化させることが好ましい。具体的には、補正部12cは、補正において、湿度センサ31の劣化度合いが高いほど、湿度センサ31の検出データの値の低下度合いを大きくする(例えば、上記減算における所定値を大きくする、または、上記乗算における所定比率を小さくする)ことが好ましい。なお、上記減算における所定値、および、上記乗算における所定比率は、劣化度合い以外のパラメータ(例えば、気温等)に応じて変化してもよい。
【0049】
補正部12cは、例えば、湿度センサ31の検出データの推移に基づいて、湿度センサ31の劣化度合いを特定することができる。例えば、補正部12cは、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合よりも大きな所定割合以上である日が所定期間続いた場合、湿度センサ31の劣化度合いが特に高いと判断することができる。
【0050】
補正部12cは、湿度センサ31の補正において、湿度100%を示す検出データに対しては、湿度センサ31の検出データの過去における推移に基づいて、湿度100%を超える仮想的な湿度である超湿度を推定し、推定された超湿度を低下させて得られる値を補正後の値として用いることが好ましい。超湿度は、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データの値が湿度100%を超えた数値範囲で正常な湿度センサ31の検出データに応じて変動できると仮定した場合における劣化状態となっている湿度センサ31の検出データを示す値である。
【0051】
例えば、
図4に示される例では、上述したように、16日目D16以降において、湿度センサ31が劣化状態であると診断され、検出データの補正が行われる。
図4では、16日目D16から19日目D19までにおける検出データに対して推定される超湿度の推移が二点鎖線L2によって示されている。補正部12cは、具体的には、事前に学習される推定モデルを用いて、超湿度を推定する。推定モデルは、湿度センサ31の検出データの過去における推移を示す情報が入力されると、湿度100%を示す検出データに対する超湿度を出力する。推定モデルは、例えば、サポートベクタマシン等の既存のアルゴリズムに従って構築されてもよく、時系列モデルであってもよい。
【0052】
また、
図4では、16日目D16から19日目D19までにおける検出データに対する超湿度を低下して得られた値の推移が破線L3によって示されている。例えば、補正部12cは、検出データに対する超湿度から所定値(例えば、10%)を減算することによって超湿度を低下させてもよい。また、例えば、補正部12cは、検出データに対する超湿度に対して所定比率(例えば、0.9)を乗算することによって超湿度を低下させてもよい。上記減算における所定値、および、上記乗算における所定比率は、ステップS104と同様に、湿度センサ31の検出データの値が真値に近づき得るように適宜設定され、固定値であってもよく、パラメータに応じて変化する値であってもよい。ここで、
図4に示される例では、破線L3によって示される値の一部が湿度100%を超えている。このように、超湿度を低下して得られた値が湿度100%を超える場合には、補正部12cは、例えば、湿度100%を補正後の値として用いる。
【0053】
上述したように、超湿度は、湿度100%を超えた数値範囲で正常な湿度センサ31の検出データに応じて変動する値である。ここで、超湿度を精度よく推定する観点では、補正部12cは、湿度センサ31の補正において、湿度センサ31の劣化度合いに基づいて、超湿度を推定することが好ましい。具体的には、補正部12cは、湿度センサ31の劣化度合いが高いほど、超湿度としてより大きな値を推定することが好ましい。
【0054】
<情報処理サーバの効果>
本発明の実施形態に係る情報処理サーバ10の効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係る情報処理サーバ10では、診断部12bは、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断する。上述したように、劣化状態となった湿度センサ31の検出データは、恒常的に過度に高い値を示す。ゆえに、湿度センサ31の検出データは湿度100%を示しやすくなる。よって、上記のように、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断することによって、湿度センサ31の劣化状態を適切に検知することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、診断部12bは、湿度センサ31の1日における全検出データについての100%と基準割合との差に対応するパーセンタイル値が湿度100%となる日が基準期間続いた場合、湿度センサ31が劣化状態であると診断することが好ましい。それにより、湿度センサ31の1日における全検出データのうち湿度100%を示す検出データの割合が基準割合以上である日が基準期間続いたか否かの判定を適切に実現することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、出力部(例えば、通信部11)は、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報を出力することが好ましい。それにより、湿度センサ31が劣化状態である旨を示す情報をユーザU1に通知し、湿度センサ31の交換をユーザU1に促すことができる。
【0058】
なお、上記では、情報処理サーバ10の通信部11が出力部として機能する例を説明したが、本発明に係る情報処理装置の機能がユーザ端末20によって実現される場合、例えば、ユーザ端末20の表示制御部(表示装置の動作を制御する機能部)が出力部に相当し得る。この場合、例えば、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、ユーザ端末20の表示制御部が、湿度センサ31が劣化状態である旨を表示装置に表示させる。
【0059】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、補正部12cは、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、湿度センサ31の検出データの値を低下させる補正を行うことが好ましい。それにより、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データの値を真値に近づけることができる。ゆえに、湿度センサ31が交換されるまでの間、湿度センサ31の検出データを用いた処理(例えば、補正部12cによる病虫害リスクの予測)を適切に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、補正部12cは、湿度センサ31の補正において、湿度センサ31の劣化度合いに基づいて、湿度センサ31の検出データの値の低下度合いを変化させることが好ましい。それにより、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データの値を真値に適切に近づけることができる。ゆえに、湿度センサ31が交換されるまでの間、湿度センサ31の検出データを用いた処理(例えば、補正部12cによる病虫害リスクの予測)をより適切に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、補正部12cは、湿度センサ31の補正において、湿度100%を示す検出データに対しては、湿度センサ31の検出データの過去における推移に基づいて、湿度100%を超える仮想的な湿度である超湿度を推定し、推定された超湿度を低下させて得られる値を補正後の値として用いることが好ましい。それにより、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データのうち湿度100%を示す検出データの値を真値に適切に近づけることができる。ゆえに、湿度センサ31が交換されるまでの間、湿度センサ31の検出データを用いた処理(例えば、補正部12cによる病虫害リスクの予測)をより適切に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、補正部12cは、湿度センサ31の補正において、湿度センサ31の劣化度合いに基づいて、超湿度を推定することが好ましい。それにより、超湿度を精度よく推定することができる。ゆえに、劣化状態となっている湿度センサ31の検出データのうち湿度100%を示す検出データの値を真値により適切に近づけることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る情報処理サーバ10では、予測部12aは、湿度センサ31が劣化状態であると診断された場合、補正部12cにより補正された湿度センサ31の検出データに基づいて、病虫害リスクを予測することが好ましい。それにより、湿度センサ31が交換されるまでの間、病虫害リスクの予測精度の低下を抑制することができる。
【0064】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0065】
例えば、上記では、農家であるユーザU1による栽培地C1での作物の栽培を支援するための情報処理システム1において利用される湿度センサ31について説明したが、本発明に係る湿度センサは、他の目的で用いられる湿度センサであってもよい。
【0066】
また、例えば、上記では、湿度センサ31の劣化状態の診断に関する処理について説明したが、上記で説明した処理における湿度センサ31は、検出データの上限が100%となっている他のセンサ(例えば、土壌水分センサ等)に置き換えられてもよい。
【0067】
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0068】
また、例えば、上記で説明した情報処理サーバ10による一連の制御処理は、ソフトウェア、ハードウェア、およびソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、情報処理装置の内部または外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。
【符号の説明】
【0069】
1 情報処理システム
10 情報処理サーバ(情報処理装置)
11 通信部(出力部)
12 制御部
12a 予測部
12b 診断部
12c 補正部
13 記憶部
20 ユーザ端末
30 センサ装置
31 湿度センサ
40 気象情報サーバ
C1 栽培地
U1 ユーザ