(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ネットワーク制御装置、ネットワーク制御システム、ネットワーク制御方法、及び無線ネットワークシステム構築方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20240610BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20240610BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20240610BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20240610BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W40/02
H04W52/02
H04W92/20 110
(21)【出願番号】P 2022558848
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023863
(87)【国際公開番号】W WO2022091476
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2020181832
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、令和2年度における第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 弘明
(72)【発明者】
【氏名】奥田 雅久
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516499(JP,A)
【文献】特開2010-148088(JP,A)
【文献】特表2019-511177(JP,A)
【文献】特表2008-533848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理を実行するプロセッサを備えたネットワーク制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、
収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、
前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたはユーザ端末に通知することを特徴とするネットワーク制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記バックホール回線におけるトラヒックの状況に基づいて、前記対象ネットワーク全体の電力効率を求めることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の前記ネットワーク制御装置、複数の前記基地局、及び1以上の前記ローカルサービスサーバを有するネットワーク制御システム。
【請求項4】
複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理をプロセッサにより実行するネットワーク制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、
収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、
前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたはユーザ端末に通知することを特徴とするネットワーク制御方法。
【請求項5】
複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークシステムを構築する処理を情報処理装置により行う無線ネットワークシステム構築方法であって、
前記情報処理装置は、
ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、
収集した情報に基づいて、前記ローカルサービスサーバの配置を、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定することを特徴とする無線ネットワークシステム構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネットワークにおける通信経路を制御するネットワーク制御装置、ネットワーク制御システム、ネットワーク制御方法、及び無線ネットワークシステム構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルネットワークの分野では、5G(第5世代移動体通信システム)が商用化の段階にある。このような5Gでは、利用される周波数が高く、1つの基地局のサービスエリアが小さくなるため、基地局をより高密度に配置する必要が生じる。そのため、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線のネットワークを構築することが考えられる。
【0003】
一方、有線通信路が前提である環境下では、バックホール回線は固定的に提供され、通信経路が自由に変更されるものではない。しかし、無線マルチホップ通信で構成されるバックホール回線のネットワークでは、通信経路を自由に変更できる。そこで、環境の変化などに応じて、無線マルチホップ通信(多段の無線リレー)で構成されるバックホール回線のネットワークにおける通信経路をフレキシブルに構築する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2018/096839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、ある地域で発生した需要をその地域内で供給する地産地消型の移動体通信サービスが注目されている。この地産地消型の移動体通信サービスでは、遅延の低減及びトラヒックの軽減を図ることができる。また、地産地消型の移動体通信サービスを5Gにおいて実現する、いわゆるローカル5Gも提案されている。
【0006】
この地産地消型の移動体通信サービスでは、ユーザ端末にサービスを提供するローカルサービスサーバが基地局に併設される。しかしながら、上記従来技術では、ローカルサービスサーバ(MECサーバ)の配置については考慮されていない。したがって、上記従来技術では、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定できないという問題があった。
【0007】
また、複数の基地局間の無線マルチホップ通信により構成されるバックホール回線のネットワークにおいても、ネットワーク全体の消費電力を増大させないもしくは低減しつつ、ユーザ端末の通信速度を向上すること、すなわち、電力効率を改善することが強く望まれる。前記従来の技術では、ネットワーク全体の電力効率を高めることについては考慮されていない。電力効率は例えば次式で表すことができる。
電力効率[Mbit/Joule]={端末通信速度の合計[Mbps]}
÷{システム全体の消費電力[W]}
【0008】
そこで、本開示は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共に、ローカルサービスサーバを含む地産地消型のネットワークにおいて、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定してユーザ端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減する、すなわち無線ネットワークシステムの電力効率を改善することができる、ネットワーク制御装置、ネットワーク制御システム、ネットワーク制御方法、及び無線ネットワークシステム構築方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のネットワーク制御装置は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理を実行するプロセッサを備えたネットワーク制御装置であって、前記プロセッサは、前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたはユーザ端末に通知する構成とする。
【0010】
また、本開示のネットワーク制御システムは、前記ネットワーク制御装置、複数の前記基地局、及び1以上の前記ローカルサービスサーバを有する構成とする。
【0011】
また、本開示のネットワーク制御方法は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理をプロセッサにより実行するネットワーク制御方法であって、前記プロセッサは、前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたはユーザ端末に通知する構成とする。
【0012】
また、本開示の無線ネットワークシステム構築方法は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークシステムを構築する処理を情報処理装置により行う無線ネットワークシステム構築方法であって、前記情報処理装置は、ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ローカルサービスサーバの配置を、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ネットワーク制御装置が、ネットワークの全体の電力効率が向上するように、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御すると同時に、既設の基地局の起動停止を制御し、また、既設のローカルサービスサーバの起動停止を制御する。これにより、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定してユーザ端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減し、無線通信の電力効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る無線ネットワークシステムの全体構成図
【
図2】アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の配置状況の一例を示す説明図
【
図3】ネットワーク制御サーバ4の概略構成を示すブロック図
【
図4】ネットワーク制御サーバ4の動作手順を示すフロー図
【
図5】ネットワーク制御サーバ4で行われる処理の手順を示すフロー図
【
図6】バックホール回線の経路制御に用いられるルーティングテーブルの要素を示す説明図
【
図8】ネットワーク制御サーバ4の経路制御に用いられるパスコストの隣接行列の一例を示す説明図
【
図9】アクセスポイント2をグループ化するか否かによる違いを示す説明図およびグラフ
【
図10】対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が6基の場合)のデータトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフ
【
図11】対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が9基の場合)のデータトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフ
【
図12】対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が9基から7基に減らされた場合)を示す説明図
【
図13】
図12に示した各形態に応じたデータトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理を実行するプロセッサを備えたネットワーク制御装置であって、前記プロセッサは、前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたは前記ユーザ端末に通知する構成とする。
【0016】
これによると、ネットワーク制御装置が、ネットワークの全体の電力効率が向上するように、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御すると同時に、既設の基地局の起動停止を制御し、また、既設のローカルサービスサーバの起動停止を制御する。これにより、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定してユーザ端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減し、電力効率を改善することができる。
【0017】
また、第2の発明は、前記プロセッサは、前記バックホール回線におけるトラヒックの状況に基づいて、前記対象ネットワーク全体の電力効率を求める構成とする。
【0018】
これによると、データトラヒック(ユーザ端末の通信データサイズ)の状況に応じて、対象ネットワーク全体の電力効率を適切に求めることができる。
【0019】
また、第3の発明は、前記ネットワーク制御装置、複数の前記基地局、及び1以上の前記ローカルサービスサーバを有するネットワーク制御システムとする。
【0020】
これによると、第1の発明と同様に、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定してユーザ端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減し、電力効率を改善することができる。
【0021】
また、第4の発明は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークにおいて、ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を制御する処理をプロセッサにより実行するネットワーク制御方法であって、前記プロセッサは、前記ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ユーザ端末と前記ローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路、前記基地局のグループ、既設の前記基地局のうちの稼働させる前記基地局、および既設の前記ローカルサービスサーバのうちの稼働させる前記ローカルサービスサーバを、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定し、前記通信経路に関する経路情報と、前記基地局または前記ローカルサービスサーバの起動停止を指示する電力制御情報とを、前記基地局または前記ローカルサービスサーバまたはユーザ端末に通知する構成とする。
【0022】
これによると、第1の発明と同様に、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定してユーザ端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減し、電力効率を改善することができる。
【0023】
また、第5の発明は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共にローカルサービスサーバを含むネットワークシステムを構築する処理を情報処理装置により行う無線ネットワークシステム構築方法であって、前記情報処理装置は、ユーザ端末、前記基地局、および前記ローカルサービスサーバに関する情報を収集し、収集した情報に基づいて、前記ローカルサービスサーバの配置を、対象ネットワーク全体の電力効率が最適となるように設定する構成とする。
【0024】
これによると、ローカルサービスサーバの位置を最適化する、すなわち、最適な位置にローカルサービスサーバを設置することができる。これにより、ローカルサービスサーバの設置数を少なく抑えることができるため、システム全体の消費電力を削減し、電力効率を改善することができる。また、システムの設置や運用の費用をも削減することができる。
【0025】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る無線ネットワークシステムの全体構成図である。
【0027】
無線ネットワークシステム1(ネットワーク制御システム)は、アクセスポイント2(基地局)と、ローカルサービスサーバ3と、ネットワーク制御サーバ4(ネットワーク制御装置)と、ユーザ端末5とを備える。
【0028】
アクセスポイント2は、5Gの無線通信方式によるアクセス回線によりユーザ端末5と接続される。また、アクセスポイント2は、隣接するアクセスポイント2との間にバックホール回線が形成される。また、複数のアクセスポイント2によるマルチホップ通信により、バックホール回線のネットワークが形成され、これによりユーザ端末5をローカルサービスサーバ3に接続するための通信経路が構成される。
【0029】
ローカルサービスサーバ3は、いわゆるローカル5Gのためのサービスを提供するものであり、移動するユーザ端末5と物理的に近い位置において、ユーザ端末5に提供するサービスに関する種々のアプリケーション(プログラム)を実行する。各ローカルサービスサーバ3の配置には、特に制限はないが、ここではアクセスポイント2のいずれかに接続される。なお、ローカルサービスサーバ3は、エッジサーバ、MEC(Multi-access Edge Computing)サーバとも呼称される。
【0030】
ネットワーク制御サーバ4は、地産地消型の無線ネットワークシステム1全体の情報を収容する。また、コアネットワーク11と連携して、アクセスポイント2間のバックホール回線をインターネット12(データネットワーク)に接続させるよう、ネットワーク制御サーバ4は、コアネットワーク11の一部を構成してもよいし、また、インターネット12に接続されてもよい。
【0031】
また、ネットワーク制御サーバ4は、ユーザ端末5とローカルサービスサーバ3とを結ぶバックホール回線による通信経路を制御する。また、ネットワーク制御サーバ4は、経路制御のため、ユーザ端末5、アクセスポイント2、およびローカルサービスサーバ3に関する情報をアクセスポイント2から収集して管理する。具体的には、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の位置や、ユーザ端末5およびバックホール回線の接続状況や、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の消費電力などに関する情報が管理される。
【0032】
また、ネットワーク制御サーバ4は、経路制御により決定した通信経路に関する経路情報を、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3に通知する。さらに、本実施形態では、ネットワーク制御サーバ4が、経路制御に伴って、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の稼働状況を制御し、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の起動停止(装置電源のオン/オフ)に関する電力制御情報を、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3に通知する。
【0033】
また、ネットワーク制御サーバ4は、経路制御に伴って、アクセスポイント2をグループ化する。すなわち、ユーザ端末5を1基のローカルサービスサーバ3に接続させる通信経路を構成する複数のアクセスポイント2が、1つのグループ(アクセスポイント2群)として取り扱われる。ネットワーク制御サーバ4は、アクセスポイント2のグループの変更に関する情報を、アクセスポイント2に通知する。また、ネットワーク制御サーバ4は、ユーザ端末5のサービスの品質要求に応じて、接続先となるアクセスポイント2の優先度に関する情報(テーブル)を作成して、アクセスポイント2に通知する。
【0034】
ユーザ端末5は、例えばスマートフォンやタブレット端末、無線通信機能を持った車両等である。このユーザ端末5は、アクセス回線によりアクセスポイント2に接続され、複数のアクセスポイント2により構成されるバックホール回線を経由して、ローカルサービスサーバ3と通信を行うことにより、ローカルサービスサーバ3のサービスを利用することができる。また、ユーザ端末5は、バックホール回線およびコアネットワーク11を介して、インターネット12(データネットワーク)上のサービスを利用することができる。
【0035】
この無線ネットワークシステム1は、ローカルサービスサーバ3、およびネットワーク制御サーバ4によるコア連携機能により、N3IWF(Non-3GPP Interworking Function)、TNAF/TNGF、TWAF/TWIFの技術を用いて、Non-3GPP Access(WiGig(登録商標)やWLAN)を収容するコアネットワーク11と連携することも可能である。
【0036】
また、この無線ネットワークシステム1では、ユーザ端末5とローカルサービスサーバ3およびインターネット12(データネットワーク)との間の経路制御だけでなく、WebAPIにより、アクセスポイント2で収集した情報をユーザ端末5に配信する情報配信サービスが行われてもよい。具体的には、車両の交通量、交通規制、迂回誘導、および道路工事計画などに関する交通情報を、車両の運転者に提供してもよく、また、都市計画、災害対策などに関する公共施策情報の公開に活用してもよい。
【0037】
次に、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の配置について説明する。
図2は、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の配置状況の一例を示す説明図である。
【0038】
図2に示す例では、幹線系道路と支線系道路とが交差する道路網の適所(例えば交差点)にアクセスポイント2(AP)が設置されている。一部のアクセスポイント2にはローカルサービスサーバ3(LSS)が接続されている。道路上のユーザ端末5(UE)は、近傍のアクセスポイント2にアクセス回線を介して接続される。隣接するアクセスポイント2の間にはバックホール回線が形成される。
【0039】
本実施形態では、道路上のユーザ端末5の位置、移動方向および移動速度が数値化され、ユーザ端末5の移動経路に基づいて交差道路網が構成され、これにより交通流モデルが定義される。この交通流モデルは、対象ネットワーク(バックホール回線)のトラヒック状況を推定するためのトラヒックモデルの生成に利用される。
【0040】
次に、ネットワーク制御サーバ4の概略構成について説明する。
図3は、ネットワーク制御サーバ4の概略構成を示すブロック図である。
【0041】
ネットワーク制御サーバ4は、通信部21と、メモリ22と、プロセッサ23と、を備えている。
【0042】
通信部21は、コアネットワーク11を介してアクセスポイント2、ローカルサービスサーバ3、およびユーザ端末5と通信を行うための通信回路を備える。なお、コアネットワーク11を経由せずに通信部21とアクセスポイント2が接続されてもよい。
【0043】
メモリ22は、プロセッサ23で実行されるプログラムなどを記憶する。また、メモリ22は、データベースの登録情報を記憶する。このデータベースには、ユーザ端末5に関する情報、機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の配置に関する情報、無線品質に関する情報、データトラヒックおよび交通トラヒックに関する情報、ならびに通信経路に関する情報などが登録される。
【0044】
プロセッサ23は、メモリ22に記憶されたプログラムを実行することで、バックホール回線のネットワークの経路制御に係る各種の処理を行う。本実施形態では、プロセッサ23が、情報収集処理、トラヒックモデル生成処理、パスコスト算出処理、通信経路生成処理、候補経路選択処理、トラヒック推定処理、電力効率算出処理、最適経路選定処理、および制御情報通知処理などを行う。
【0045】
情報収集処理では、プロセッサ23が、アクセスポイント2から各種の情報を収集する。例えば、アクセス回線およびバックホール回線のトラヒックの状況、具体的には、ユーザスループット(通信速度)や、ユーザデータの方向、通信量、優先度、および通信時間や、ユーザ端末5の接続数や、各アクセス回線のMCS(Modulation and Coding Scheme:変調および符号化方式)、SINR(信号対干渉ノイズ比:Signal to Interference plus Noise Ratio)や、アクセス回線およびバックホール回線の輻輳状態等の情報がアクセスポイント2から収集される。また、ユーザ端末5の位置、方向および速度の情報がアクセスポイント2から収集される。また、機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の位置、消費電力、および処理負荷率の情報がアクセスポイント2から収集される。これらの収集した情報は、ネットワーク制御サーバ4内に構築されたデータベースに登録される。
【0046】
トラヒックモデル生成処理では、プロセッサ23が、対象ネットワーク(バックホール回線)のトラヒック状況を推定するためのトラヒックモデルを生成する。このトラヒックモデルは、交通地図データ、アクセスポイント2の設置情報(位置情報)、および交通トラヒックに関する情報に基づいて生成される。このとき、ユーザ端末5の位置、移動方向および移動速度が数値化され、ユーザ端末5の移動経路に基づいて交差道路網が構成され、これにより交通流モデルが定義される。
【0047】
パスコスト算出処理では、プロセッサ23が、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクのパスコスト(リンクコスト)を算出する。このパスコスト(リンクコスト)は、接続されたユーザ端末5の台数、対象ネットワーク(バックホール回線)の可用帯域、遅延等に基づいて算出される。また、対象ネットワーク(バックホール回線)における通信経路全体のパスコストが、リンクコストの総和として算出される。
【0048】
通信経路生成処理では、プロセッサ23が、対象ネットワーク(バックホール回線)において有効な通信経路を生成する。具体的には、対象ネットワークを構成するアクセスポイント2間の接続状況(無線リンクの有無)、ローカルサービスサーバ3の位置(ローカルサービスサーバ3が接続されたアクセスポイント2の位置)に基づいて、コアネットワーク11からのツリー構造として、通信経路が生成される。
【0049】
候補経路選択処理では、プロセッサ23が、有効な通信経路の中から、最適経路の候補となる候補経路を選択する。この候補経路では、ユーザデータの伝送のためのマルチホップ通信に関係するアクセスポイント2やその間のバックホール回線が規定される他に、稼働させるアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3も規定される。
【0050】
ここで、ユーザ端末5の交通状況(交通量)などに応じた候補経路の設定テーブルを予め作成しておき、時間帯ごとの交通状況、天気、ユーザ端末5に関する事故といった環境状況に応じて、候補経路を選択するものとしてもよい。これにより、動的な総当りで候補経路を選択する面倒を省くことができる。
【0051】
また、候補経路選択処理では、パスコストを最小化する経路を候補経路として選択することができる。このとき、可用帯域幅やユーザ端末5の接続数に基づいて、アクセスポイント2間の無線リンクごとのコスト(リンクコスト:リンクの長さ)を設定する。そして、ユーザ端末5からローカルサービスサーバ3までの最短経路を求める。具体的には、最小全域木、すなわち、パスコスト(リンクコストの総和)を最小化する全域木を、候補経路として求める。このとき、例えば、リンクの長さ(リンクコスト)の総和(通信経路全体のパスコスト)を目的関数として、その目的関数を最小化する線形計画問題として処理することができる。
【0052】
また、候補経路選択処理では、可用帯域幅(データ総流量、スループット)を最大化する経路を候補経路として選択することができる。
【0053】
トラヒック推定処理では、プロセッサ23が、候補経路ごとに、トラヒックモデルを用いて、対象ネットワーク(バックホール回線)における実際のトラヒック状況を推定する。このとき、対象ネットワークの無線伝搬および回線接続に関する情報を取得し、その情報に基づいて、トラヒックモデルを用いて、候補経路ごとに、データトラヒック量(通信速度)を推定する。ユーザ端末5とアクセスポイント2との間のアクセス回線も含めてデータトラヒック量を推定してもよい。
【0054】
電力効率算出処理では、プロセッサ23が、候補経路ごとに、データトラヒック(通信速度の合計値)に基づいて、電力効率(単位情報量当たりの消費エネルギー)を算出する。この電力効率は、次式のように、ユーザ端末の通信速度の合計値を、対象ネットワーク全体の消費電力で除算することで求めることができる。
電力効率[Mbit/Joule]={通信速度の合計値[Mbps]}÷{対象ネットワーク全体の消費電力[W]}
【0055】
ここで、対象ネットワーク全体の消費電力は、対象ネットワーク内で稼働中の機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の消費電力の合計値である。したがって、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の稼働数が減ると、システム全体の電力が小さくなるため、電力効率が高くなる。
【0056】
最適経路選定処理では、プロセッサ23が、候補経路ごとの電力効率を比較して、電力効率を最大化する候補経路を最適経路として選定する。このとき、最適経路に含まれないアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3は停止されるものとして除外され、稼働させるアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3が決定される。なお、ユーザ端末5のデータトラヒック量に応じて電力効率が変化するため、最適経路はユーザ端末5のデータトラヒック量に応じて異なる。
【0057】
ここで、例えば、対象ネットワーク(バックホール回線)のホップ数(無線リンク数)が少なく、スループット(通信速度の合計値、データトラヒック量)が大きくなると、電力効率が高くなる。したがって、最適経路選定処理では、スループットの最大化から電力効率の最大化を図る線形計画問題として、最適経路を導出することができる。
【0058】
また、最適経路選定処理においては、パスコストを最小化するために一般的な経路制御で用いられる全域木方式のルーティングプロトコルが採用されてよい。当該ルーティングプロトコルを用いた最適経路の算出においては、アクセスポイント間の経路選択メトリックとなるコストとして一般的に用いられる通信速度の逆数比(InvCap)やホップ数(MinHop)に加え、グループ化の重み付けが用いられる。当該ルーティングプロトコルは、実用耐性が確保されているため利用しやすく、また分散制御で準静的に経路設定することができるため軽い処理負荷での電力効率改善に寄与する。
【0059】
制御情報通知処理では、プロセッサ23が、制御情報として、バックホール回線の通信経路に関する経路情報、および機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の起動停止に関する電力制御情報を、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3に通知する。
【0060】
なお、ネットワーク制御サーバ4で行われる対象ネットワーク(バックホール回線)の経路制御では、L2スイッチおよびL3スイッチや、MPLS(Multi-Protocol Label Switching)等のパケット転送技術、OSPF(Open Shortest Path First)等のルーティングプロトコルが用いられるものとしてもよい。また、経路制御では、コアネットワーク11の連携に関する技術として、ネットワークスライシング、5G無線QoS(Quality of Service)制御および電力制御、5GNR(New Radio)の基地局への通信振分けの技術が用いられるものとしてもよい。また、経路制御では、無線メッシュネットワークに関する技術として、802.11sや、WiFi(登録商標)SON(Self-Organizing Network)等を適用するものとしてもよい。
【0061】
次に、ネットワーク制御サーバ4の動作手順について説明する。
図4は、ネットワーク制御サーバ4の動作手順を示すフロー図である。
【0062】
ネットワーク制御サーバ4では、
図4(A)に示す情報収集に関するフローが周期T1(例えば300秒)で定期的に実行される。
【0063】
このフローでは、まず、プロセッサ23が、所定の情報をアクセスポイント2から収集する(ST101)。次に、プロセッサ23が、アクセスポイント2から収集した情報を、データベースに登録する(ST102)。このデータベースには、ユーザ端末5に関する情報(位置情報など)、機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の配置に関する情報、無線回線品質に関する情報、データトラヒックおよび交通トラヒックに関する情報、および経路情報などが登録される。
【0064】
次に、プロセッサ23が、交通地図データ、アクセスポイント2の設置情報、および交通トラヒックに関する情報に基づいて、トラヒックモデルを生成する(ST103)。
【0065】
次に、プロセッサ23が、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクのパスコスト(リンクコスト)を算出する(ST104)。
【0066】
なお、アクセスポイント2は、自装置、ユーザ端末5、およびローカルサービスサーバ3に関する所定の情報を収集して、自装置のメモリ22に格納し、ネットワーク制御サーバ4からの要求に応じて、所要の情報をネットワーク制御サーバ4に送信する。また、アクセスポイント2で行われる情報収集は、周期T0(例えば60秒)で定期的に実行される。
【0067】
また、ネットワーク制御サーバ4では、
図4(B)に示す監視に関するフローが周期T2(例えば10分)で定期的に実行される。
【0068】
このフローでは、プロセッサ23が、アクセスポイント2、ローカルサービスサーバ3、およびバックホール回線に関する監視を行う(ST111)。この監視では、輻輳傾向、機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の故障、ユーザ端末5の事故などが検知される。
【0069】
また、ネットワーク制御サーバ4では、
図4(C)に示す経路更新に関するフローが周期T3(例えば1時間)で定期的に実行される。なお、
図4(B)に示すフローで、輻輳傾向、機器(アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3)の故障、天気の変化、ユーザ端末5に関する事故などの環境変化が検知された場合、周期T3を待たずに割込みでフローが開始される。
【0070】
また、本実施形態では、例えば朝昼晩といった時間帯ごとに交通状況を予測する処理が定期的に実行され、その交通予測により取得した時間帯単位の交通状況の変化を機に、経路更新に関するフローが開始されてもよい。
【0071】
このフローでは、まず、プロセッサ23が、有効な通信経路の中から、最適経路の候補となる候補経路を選択する(ST121)。このとき、例えば、パスコストを最小化する経路を候補経路として選択する。なお、ネットワーク制御サーバ4では、対象ネットワーク(バックホール回線)における有効な通信経路が予め生成される。
【0072】
また、プロセッサ23が、候補経路に関して、トラヒックモデルに基づいて、対象ネットワーク(バックホール回線)における実際のトラヒック状況を推定し、通信データサイズ(データトラヒック量)を取得する(ST122)。
【0073】
次に、プロセッサ23が、候補経路ごとに、通信データサイズ(データトラヒック量)に基づいて、電力効率を算出する(ST123)。
【0074】
次に、プロセッサ23が、候補経路ごとの電力効率を比較して、電力効率を最大化する候補経路を最適経路として選定する(ST124)。
【0075】
次に、プロセッサ23が、制御情報として、バックホール回線の通信経路に関する経路情報、および機器(アクセスポイント2またはローカルサービスサーバ3)の起動停止に関する電力制御情報を、アクセスポイント2またはローカルサービスサーバ3またはユーザ端末5に通知する(ST125)。
【0076】
アクセスポイント2またはローカルサービスサーバ3は、通知された電力制御情報をもとに装置の消費電力を制御する。ユーザ端末5は、通知された経路情報をもとに、接続するアクセスポイント2やローカルサービスサーバ3を再設定してもよいし、動的に通信経路を設定してもよい。
【0077】
次に、ネットワーク制御サーバ4で行われる処理の手順について説明する。
図5は、ネットワーク制御サーバ4で行われる処理の手順を示すフロー図である。
【0078】
ネットワーク制御サーバ4では、まず、プロセッサ23が、アクセスポイント2の位置情報をメモリ22から読み込む(ST201)。また、プロセッサ23が、アクセスポイント2の無線および電力に関する情報をメモリ22から読み込む(ST202)。また、プロセッサ23が、各ユーザ端末5の無線情報と、各ユーザ端末5の各時刻の位置情報とをメモリ22から読み込む(ST203)。
【0079】
次に、プロセッサ23が、ユーザ端末5の通信データサイズと接続先のローカルサービスサーバ3を設定する(ST204)。次に、プロセッサ23が、ルーティングテーブルのメトリック(通信経路の優先順位)に基づいて、通信経路を選択する(ST205)。次に、プロセッサ23が、選択した通信経路によるユーザ端末5の通信速度(ユーザ端末5から接続先のローカルサービスサーバ3までの通信速度)を計算する(ST206)。次に、プロセッサ23が、別の通信経路によるユーザ端末5の通信速度を計算する(ST207)。次に、プロセッサ23が、対象ネットワーク全体の通信速度と消費電力から電力効率を通信経路ごとに集計する(ST208)。
【0080】
次に、プロセッサ23が、所定の終了条件を満足するか否かを判定する(ST209)。このとき、終了条件として、電力効率が最適な通信経路であるか否かを判定する。また、終了条件として、ユーザ端末5が対象ネットワーク外に移動したか否かを判定する。
【0081】
ここで、終了条件を満足する場合には(ST209でYes)、通信経路ごとの通信速度の時間的な遷移状況を比較する(ST210)。一方、終了条件を満足しない場合には(ST209でNo)、ST204に戻り、プロセッサ23が、ユーザ端末5の通信データサイズと接続先のローカルサービスサーバ3を設定する処理をやり直す。
【0082】
なお、ユーザ端末5の交通状況を想定して事前に導出した最適な通信経路のパターンテーブルを作成しておき、交通状況の時間帯、天気、事故といった環境状況に応じて、通信経路を選択してもよい。これにより、上記のように通信経路を算出して電力効率を都度計算する場合に比べ、処理時間を短縮することができる。
【0083】
次に、バックホール回線の経路制御に用いられるルーティングテーブルについて説明する。
図6は、ルーティングテーブルの要素を示す説明図である。
【0084】
ネットワーク制御サーバ4は、
図6に示す登録内容のルーティングテーブル(経路表、経路情報)を作成して、バックホール回線の経路制御を行う。このルーティングテーブルは、各アクセスポイント2が保持する。
【0085】
このルーティングテーブルには、宛先ネットワーク、ネクストホップ、出力インタフェース、情報源、およびメトリックの各要素に関する情報が登録される。
【0086】
宛先ネットワークの要素は、ユーザ端末5にサービスを提供するローカルサービスサーバ3のネットワークアドレスおよびネットマスクの情報である。ネクストホップの要素は、宛先ネットワークに到達するために、次に隣接するどのアクセスポイント2にデータを転送すればよいのかを規定した情報である。出力インタフェースの要素は、自装置(アクセスポイント2)の出力インタフェースに関する情報であり、具体的には、ネクストホップのアクセスポイント2にデータを転送するためには、アクセスポイント2が自装置のどのインタフェースから出力すればよいのかを規定した情報である。なお、アクセスポイント2は、バックホール回線の経路構成を、アンテナやL2スイッチのポートのアップ/ダウンで設定変更してもよい。情報源の要素は、ルーティングテーブルに記載された情報の情報源に関する情報であり、具体的には、ネットワーク管理者により手動で設定されたものか、経路制御アルゴリズムによる計算結果かを明示する情報である。メトリックの要素は、同一の宛先ネットワークへの経路が複数存在する場合に、各経路に付与する優先順位に関する情報であり、具体的には、無線品質、ホップ数、パスコストに関する情報である。
【0087】
ここで、本実施形態では、バックホール回線の経路制御における候補経路選択において、まず、隣接するアクセスポイント2間の無線品質に基づいて候補経路を選択する制御方式を用いることができる。
【0088】
また、候補経路選択では、ユーザ端末5からローカルサービスサーバ3(宛先ネットワーク)までのホップ数を最小化する経路を候補経路として選択する制御方式、例えば、RIP(Routing Information Protocol)の技術を用いることができる。
【0089】
また、候補経路選択では、対象ネットワーク(バックホール回線)全体のパスコスト(リンクコストの総和)を最小化する経路を候補経路として選択する制御方式、例えば、OSPF(Open Shortest Path First)の技術を用いることができる。
【0090】
この場合、第1に、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクの可用帯域幅に基づく方式がある。例えばOSPFでは、帯域幅が大きいほどパスコストの値が小さくなるので、帯域幅が大きい経路が最適とみなされる。また、第2に、各アクセスポイント2のアクセス回線に接続するユーザ端末5の数に基づく方式がある。また、第3に、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクを使用するユーザ端末5の数に基づく方式がある。また、第4に、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクの使用時の可用帯域幅に基づく方式がある。
【0091】
なお、更新タイミングに関しては、静的な制御と、プロアクティブ型の制御(5-30分~)と、リアクティブ型の制御(動的)とがある。また、第2から第4の方式は、ロードバランスを考慮してスループットを改善するものである。
【0092】
次に、対象ネットワーク(バックホール回線)におけるパスコストについて説明する。
図7は、対象ネットワークの形態の一例を示す説明図である。
【0093】
ネットワーク制御サーバ4では、複数のアクセスポイント2で構成される対象ネットワーク(バックホール回線)に関して、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクのパスコスト(リンクコスト)の総和を算出する。このパスコストの総和を最小化する通信経路が、最適経路の候補となる候補経路として選択される。また、通信経路は、全域木(全ての枝葉が連結し、かつ、閉路を含まない状態)として設定される。すなわち、パスコスト(リンクコスト)の総和が最小となる全域木が、候補経路として選択される。
【0094】
図7に示す例は、対象ネットワーク(バックホール回線)にアクセスポイント2が6基設置された場合である。
【0095】
特に、
図7(A-1),(A-2),(A-3)に示す例は、パスコストが、バックホール回線の伝送帯域の逆数として設定される場合である。この場合、例えば、WiGig(登録商標)でMCS12(MCSインデックスが12)の通信方式(最大通信速度:4,620Mbps)では、パスコストが1となり、MCS8の通信方式(最大通信速度:2,310Mbps)では、パスコストが2となり、MCS4の通信方式(最大通信速度:1,155Mbps)では、パスコストが4となる。
【0096】
一方、
図7(B-1),(B-2),(B-3)に示す例は、アクセスポイント2のグループ化が行われる場合である。この場合、パスコストが、バックホール回線の伝送帯域の逆数として設定されると共に、グループ間の回線に関してパスコストがグループ内の回線に対する輻輳度合いの比にあたる2倍に設定される。この輻輳度合いの比は調整可能な値であり、パスコストが通信速度の逆数比であることにより導出される。よって輻輳区間が多いネットワークトポロジーの場合は、この輻輳度合いの比に基づいてパスコストを設定しなおしてもよい。このようにローカルサービスサーバ3への経路をグループ化して重み付けすると、グループ内での経路を選択しやすくなるため、スループット及び電力効率が改善される。
【0097】
また、パスコストが、ユーザ端末5が接続されたアクセスポイント2からローカルサービスサーバ3が接続されたアクセスポイント2までのホップ数として設定されてもよい。この場合、アクセスポイント2が6基の場合は、
図7(B-2)に示す例と同様であり、アクセスポイント2が8基の場合は、
図7(B-3)に示す例と同様である。このホップ数による設定も、グループ化をコストに反映しているため、スループット及び電力効率が改善される。
【0098】
また、アクセスポイント2のグループごとにパスコストが設定され、そのグループごとのパスコストが統合されることで、全域木として通信経路全体のパスコストが設定されてもよい。この場合、全域木が2つある場合として、
図7(B-1),(B-2),(B-3)に示す例と同様である。
【0099】
次に、ネットワーク制御サーバ4の経路制御に用いられるパスコストの隣接行列について説明する。
図8は、パスコストの隣接行列の一例を示す説明図である。
【0100】
ネットワーク制御サーバ4では、対象ネットワーク(バックホール回線)に関するパスコストを算出して、パスコストの総和を最小化する通信経路が、最適経路の候補となる候補経路として選択される。このとき、パスコストが、
図8(B-1),(B-2)に示す隣接行列により表現される。この隣接行列は、#mのアクセスポイント2と#nのアクセスポイント2との間のMCS値を表す。
【0101】
図8(A)に示す例は、対象ネットワーク(バックホール回線)にアクセスポイント2が6基設置された場合である。この場合、
図8(B-1),(B-2)に示すように、6×6の隣接行列が用いられる。
【0102】
また、ここでは、パスコストが、対象ネットワーク(バックホール回線)の伝送帯域の逆数として設定される。また、例えば、WiGig(商標登録)でMCS12(4,620Mbps)の場合にパスコストが1となり、MCS8(2,310Mbps)の場合にパスコストが2となり、MCS4の場合にパスコストが4となる。
【0103】
ここで、まず、#mのアクセスポイント2と#nのアクセスポイント2との距離から、WiGig(登録商標)の通信方式の場合のMCS値(回線速度比の逆数)が設定される。また、同一のアクセスポイント2同士の場合(m=n)には、無線リンクが成り立たないため、MCS値は「0」に設定される。
【0104】
また、
図8(A)に示す例では、#2,#5のアクセスポイント2(AP)にはそれぞれローカルサービスサーバ3(LSS)が接続される。また、#1,#3,#4,#6のアクセスポイント2は対象ネットワーク(バックホール回線)の端に位置し、#2,#5のアクセスポイント2は対象ネットワークの中間に位置するものとして、回線数の上限が設定される。
【0105】
また、各アクセスポイント2(各行)の回線数を上限として、MCS値が上位、具体的には、MCS値が小さい方から2番目までの順位となる組み合わせを残し、他の組み合わせのMCS値が「0」に設定される。
図8(B-1)に示す例では、MCS値が「1.8」、「2」、「3.7」、「12」となり、
図8(B-2)に示す例では、MCS値が下位の「3.7」、「12」が「0」となる。
【0106】
このようにしてパスコストの隣接行列が設定されると、この隣接行列に基づいて、隣接するアクセスポイント2間の無線リンクのパスコスト(リンクコスト)の総和が、対象ネットワーク(バックホール回線)のパスコストとして算出される。
【0107】
次に、アクセスポイント2のグループ化について説明する。
図9は、アクセスポイント2をグループ化するか否かによる違いを示す説明図である。
図9(A-1),(A-2)は、対象ネットワークの形態の一例を示す。
図9(B)は、データトラヒックの一例を示すグラフである。
【0108】
対象ネットワーク(バックホール回線)の経路制御では、アクセスポイント2がグループ化される。なお、本実施形態では、稼働させるアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3が適宜に変化し、この稼働させるアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の変化に応じてアクセスポイント2のグループが変化する。
【0109】
ここで、グループとは、1基のローカルサービスサーバ3にユーザ端末5を接続するための通信経路を構成する複数のアクセスポイント2、具体的には、ユーザ端末5が接続されるアクセスポイント2と、ローカルサービスサーバ3が接続されるアクセスポイント2と、その2つのアクセスポイント2間をマルチホップ通信で結ぶアクセスポイント2とで構成される。
【0110】
図9(A-1),(A-2)は、対象ネットワーク(バックホール回線)に6基のアクセスポイント2が設置された例である。6基のアクセスポイント2のうち2基のアクセスポイント2にはそれぞれローカルサービスサーバ3が接続されている。
図9(A-1)に示す例は、接続回線を優先した場合、具体的には、RSSI(受信信号強度:Received Signal Strength Indicator)に基づく経路制御の場合の通信経路の一例である。この場合、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3はグループ化されない。一方、
図9(A-2)に示す例は、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3がグループ化された場合の通信経路の一例である。
【0111】
図9(B)に示すグラフの横軸は、通信データサイズ、具体的には、ユーザ端末5からアクセスポイント2に送信されるデータサイズ(Mbps)である。また、グラフの縦軸は、対象ネットワーク(バックホール回線)全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)(Mbps)である。このグラフでは、通信データサイズとデータトラヒックとの関係を表す直線の傾きが、通信の輻輳の影響により変化する。
【0112】
このグラフにより、アクセスポイント2をグループ化しない場合とアクセスポイント2をグループ化した場合とでデータトラヒックに2倍の差が現れることがわかる。
【0113】
次に、対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が6基の場合)について説明する。
図10は、データトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフである。
【0114】
本実施形態では、対象ネットワーク(バックホール回線)全体の電力効率を指標として経路制御が行われる。具体的には、ユーザ端末5が接続可能なアクセスポイント2の稼働数を所定数とした場合、例えば、設置された全てのアクセスポイント2を稼働させた場合に、ローカルサービスサーバ3の稼働数を変数として、ローカルサービスサーバ3の稼働数に応じた電力効率を比較する。そして、実際に使用される通信速度に応じて電力効率が最大となる数のローカルサービスサーバ3を稼働させる。
【0115】
図10に示す例は、対象ネットワーク(バックホール回線)にアクセスポイント2が6基設置されている場合である。この場合、全てのアクセスポイント2を稼働させた場合に、ローカルサービスサーバ3の稼働数(設置数)を1基~6基とした場合の電力効率を比較する。
【0116】
図10(A)に示すグラフの横軸は、通信データサイズ、具体的には、ローカルサービスサーバ3に接続されたアクセスポイント2に向けてユーザ端末5から送信されるデータサイズ(Mbps)である。また、グラフの縦軸は、対象ネットワーク(バックホール回線)全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)の平均値(Mbps)である。
【0117】
このグラフにより、ローカルサービスサーバ3の稼働数を増すことで、輻輳が減ることにより、対象ネットワーク全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)も増加することがわかる。
【0118】
一方、
図10(B)に示すグラフの横軸は、
図10(A)に示すグラフと同様に、通信データサイズ(Mbps)である。また、グラフの縦軸は、対象ネットワーク(バックホール回線)全体の電力効率(Mbit/Joule)である。
【0119】
このグラフにより、例えばローカルサービスサーバ3(LSS)が1基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が2基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が3基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が6基の場合が最適となる範囲とがあり、通信データサイズに応じたローカルサービスサーバ3の稼働数の最適値がある。したがって、実際に使用される通信速度(通信データサイズ)に応じて、適切な数のローカルサービスサーバ3を稼働させる制御を行うことで、対象ネットワーク全体の電力効率を向上させることができる。
【0120】
また、輻輳の影響により、ローカルサービスサーバ3の稼働数をアクセスポイント2の稼働数の3分の1とした場合、具体的には、アクセスポイント2の稼働数が2基の場合に、電力効率を33%向上させることができる。
【0121】
次に、対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が9基の場合)について説明する。
図11は、データトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフである。
【0122】
図11に示す例は、対象ネットワーク(バックホール回線)にアクセスポイント2が9基設置されている場合である。この場合、全てのアクセスポイント2を稼働させた場合に、ローカルサービスサーバ3の稼働数(設置数)を1基~9基とした場合の電力効率を比較する。
【0123】
図11(A)に示すグラフの横軸および縦軸はそれぞれ、
図11(A)に示す例と同様に、通信データサイズ(Mbps)、および対象ネットワーク(バックホール回線)全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)の平均値(Mbps)である。
【0124】
このグラフにより、ローカルサービスサーバ3の稼働数を増すことで、輻輳が減ることにより、対象ネットワーク全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)も増加することがわかる。
【0125】
一方、
図11(B)に示すグラフの横軸および縦軸はそれぞれ、
図10(B)に示す例と同様に、通信データサイズ(Mbps)、および対象ネットワーク(バックホール回線)全体の電力効率(Mbit/Joule)である。
【0126】
このグラフにより、例えばローカルサービスサーバ3(LSS)が1基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が2基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が3基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が4基の場合が最適となる範囲と、ローカルサービスサーバ3が9基の場合が最適となる範囲とがあり、通信データサイズに応じたローカルサービスサーバ3の稼働数の最適値がある。したがって、実際に使用される通信速度(通信データサイズ)に応じて、適切な数のローカルサービスサーバ3を稼働させる制御を行うことで、対象ネットワーク全体の電力効率を向上させることができる。
【0127】
また、
図10に示す例、すなわち、アクセスポイント2の稼働数が6基の場合と同様に、輻輳の影響により、ローカルサービスサーバ3の稼働数をアクセスポイント2の稼働数の3分の1とした場合、具体的には、アクセスポイント2の稼働数が3基の場合に、対象ネットワーク全体の電力効率を33%向上させることができる。
【0128】
次に、対象ネットワークの形態の一例(アクセスポイント2が9基から7基に減らされた場合)について説明する。
図12は、対象ネットワークの形態の一例を示す説明図である。
図13は、
図12に示した各形態に応じたデータトラヒックおよび電力効率の一例を示すグラフである。
【0129】
図12に示す例は、対象ネットワーク(バックホール回線)にアクセスポイント2(AP)が9基設置されている場合である。また、
図12(A)に示す例では、ローカルサービスサーバ3(LSS)が2基稼働する場合である。
図12(B)に示す例は、ローカルサービスサーバ3が3基稼働する場合である。
図12(C)に示す例は、9基のアクセスポイント2に接続された全てのローカルサービスサーバ3が稼働する場合である。
図12(D),(E)に示す例はそれぞれ、
図12(A),(B)に示す例よりアクセスポイント2の稼働数を2基減らして7基とした場合である。
【0130】
図13(A)に示すグラフの横軸および縦軸はそれぞれ、
図13(A)に示す例と同様に、通信データサイズ(Mbps)、および対象ネットワーク(バックホール回線)全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)の平均値(Mbps)である。
【0131】
このグラフにより、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の稼働数を減らすと、対象ネットワーク全体のデータトラヒック(通信速度の合計値)も減少することがわかる。
【0132】
一方、
図13(B)に示すグラフの横軸および縦軸はそれぞれ、
図13(B)に示す例と同様に、通信データサイズ(Mbps)、および対象ネットワーク(バックホール回線)全体の電力効率(Mbit/Joule)である。
【0133】
このグラフにより、例えばアクセスポイント2を7基、ローカルサービスサーバ3を2基とした場合が最適となる範囲と、アクセスポイント2を7基、ローカルサービスサーバ3を3基とした場合が最適となる範囲と、アクセスポイント2を9基、ローカルサービスサーバ3を3基とした場合が最適となる範囲と、アクセスポイント2を9基、ローカルサービスサーバ3を9基とした場合が最適となる範囲とがあり、通信データサイズに応じたアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の稼働数の最適値がある。したがって、実際に使用される通信速度(通信データサイズ)に応じて、適切な数のアクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3を稼働させる制御を行うことで、対象ネットワーク全体の電力効率を向上させることができる。
【0134】
また、アクセスポイント2の稼働数を9基とし、ローカルサービスサーバ3の稼働数も9基とした最大構成の場合に比較して、アクセスポイント2の稼働数が7基で、ローカルサービスサーバ3の稼働数が3基の場合には、対象ネットワーク全体の電力効率を50%向上させることができる。また、アクセスポイント2の稼働数が9基で、ローカルサービスサーバ3の稼働数が3基の場合には、最大構成の場合に比較して、対象ネットワーク全体の電力効率を33%向上させることができる。
【0135】
このように本実施形態では、ネットワーク制御サーバ4が、対象ネットワーク(バックホール回線)の経路制御において、対象ネットワーク全体の電力効率が向上するように、ユーザ端末5とローカルサービスサーバ3とを結ぶ通信経路を制御すると同時に、既設のアクセスポイント2の起動停止を制御し、また、既設のローカルサービスサーバ3の起動停止を制御する。これにより、ユーザ端末5とローカルサービスサーバ3とを結ぶ通信経路を適切に選定して端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減することができる。
【0136】
ところで、本実施形態では、無線ネットワークシステム1の運用時に、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の稼働状況を制御して、アクセスポイント2およびローカルサービスサーバ3の配置の最適化を図るものとした。一方、このような無線ネットワークシステム1の運用時の他に、無線ネットワークシステム1を構築する際に、ローカルサービスサーバ3の配置を最適化することもできる。すなわち、ローカルサービスサーバ3を設置する際に、ネットワーク全体の電力効率が最適となるように、ローカルサービスサーバ3の配置を設定することができる。この処理は、ネットワーク制御サーバ4で行われてもよいが、ネットワーク制御サーバ4とは別の適宜な情報処理装置で行われてもよい。
【0137】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示に係るネットワーク制御装置、ネットワーク制御システム、ネットワーク制御方法、及び無線ネットワークシステム構築方法は、複数の基地局間の無線マルチホップ通信によりバックホール回線が構成されると共に、ローカルサービスサーバを含む地産地消型のネットワークにおいて、ユーザ端末とローカルサービスサーバとを結ぶ通信経路を適切に選定して端末の通信速度を向上すると共に、システム全体の消費電力を削減する、つまり無線通信の電力効率を改善することができる効果を有し、ネットワークにおける通信経路を制御するネットワーク制御装置、ネットワーク制御システム、ネットワーク制御方法、及び無線ネットワークシステム構築方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 無線ネットワークシステム(ネットワーク制御システム)
2 アクセスポイント(基地局)
3 ローカルサービスサーバ
4 ネットワーク制御サーバ(ネットワーク制御装置)
5 ユーザ端末
11 コアネットワーク
12 インターネット
21 通信部
22 メモリ
23 プロセッサ