(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電極の品質評価方法および電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240610BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240610BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2022560123
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 KR2021004070
(87)【国際公開番号】W WO2021210818
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0044899
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119927
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・スプ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・イル・ラ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ハン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ミ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ソク・チョ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-283123(JP,A)
【文献】特開2010-102873(JP,A)
【文献】特表2020-516021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体および前記集電体上に形成された活物質層を含み、圧延工程を経ていない電極を準備するステップと、
光学系を用いて前記活物質層の色座標値を測定するステップと、
前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合には良品と判断し、既定の電極品質評価基準を満たさない場合には不良と判断するステップと、
を含
み、
前記色座標値がL
*
値、a
*
値、及び白色度値であり、前記既定の電極品質評価基準は、L
*
値が35.4以上、a
*
値が0.78以上、且つ、白色度値が7以上である、電極の品質評価方法。
【請求項2】
前記光学系は、分光光度計または色差計である、請求項
1に記載の電極の品質評価方法。
【請求項3】
前記色差計は、接触式または非接触式色差計である、請求項
2に記載の電極の品質評価方法。
【請求項4】
集電体上に活物質、導電材、およびバインダーを含むスラリーを塗布した後に乾燥させて活物質層を形成し、圧延工程を経ていない電極を製造するステップと、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法で電極の品質を評価するステップと、
良品と判断された電極を圧延するステップと、
を含む、電極の製造方法。
【請求項5】
前記スラリーを0.005g/cm
2~0.050g/cm
2のローディング量で塗布する、請求項
4に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥時に必要な総熱量は、下記式1を満たす、請求項
4又は
5に記載の電極の製造方法。
[式1]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(46.30-L
*値)/0.0077
式1中、
前記L
*値は、既定の電極品質評価基準で、35.4以上である。
【請求項7】
前記乾燥時に必要な総熱量は、下記式2を満たす、請求項
4から
6のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
[式2]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(1.09-a
*値)/2.19×10
-5
式2中、
前記a
*値は、既定の電極品質評価基準で、0.78以上である。
【請求項8】
前記乾燥時に必要な総熱量は、下記式3を満たす、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
[式3]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(13.06-白色度値)/0.0041
式3中、
前記白色度値は、既定の電極品質評価基準で、7以上である。
【請求項9】
前記乾燥は、1000kW~1450kWの総熱量で乾燥させる、請求項
4から
8のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記活物質層の厚さは、50μm~500μmである、請求項
4から
9のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月13日付けの韓国特許出願第10-2020-0044899号および2020年09月17日付けの韓国特許出願第10-2020-0119927号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、圧延前の電極の簡単な色座標値の測定により電極の品質を評価する方法、およびそれに応じた方法で電極の品質を評価するステップを含む電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に知られた電極の品質検査項目としては、接着力、厚さ、ローディング量などが挙げられる。電極の品質検査項目のうち接着力は、電極の組立工程で脱離が発生した電極、または活性化工程で電極剥離(peel-off)が発生した電極などを取り除くための項目として非常に重要な品質検査項目である。
【0004】
しかしながら、電極の接着力を確認するためには圧延工程を必ず経なければならず、リアルタイムで電極の品質を評価できないという問題がある。
そこで、圧延工程前に物性評価により電極の品質を評価できる方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、圧延前の電極に対する簡単な色座標値の測定により不良電極を圧延前に取り除くことができる電極の品質評価方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によると、本発明は、圧延前の電極の色座標値を測定することで、不良電極を簡単かつ迅速に取り除くことができる電極の品質評価方法に関し、具体的に、集電体および前記集電体上に形成された活物質層を含み、圧延工程を経ていない電極を準備するステップと、光学系を用いて前記活物質層の色座標値を測定するステップと、前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合には良品と判断し、既定の電極品質評価基準を満たさない場合には不良と判断するステップと、を含む、電極の品質評価方法を提供する。
【0007】
また、他の実施形態によると、本発明は、集電体上に活物質、導電材、およびバインダーを含むスラリーを塗布した後に乾燥させて活物質層を形成し、圧延工程を経ていない電極を製造するステップと、上述した方法で電極の品質を評価するステップと、良品と判断された電極を圧延するステップと、を含む、電極の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電極の品質評価方法は、圧延前の電極の色座標値を測定することで、不良電極を簡単かつ迅速に取り除くことができる。すなわち、圧延工程を経なくても不良電極を選別することができ、よって、電極完成品の不良率を著しく下げることができる。
【0009】
また、本発明によると、圧延前の簡単な色座標値の測定により圧延後の物性である接着力を予測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0011】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
<電極の品質評価方法>
本発明に係る電極の品質評価方法は、圧延前の電極の色座標値を測定することで、不良電極を簡単かつ迅速に取り除くことができる電極の品質評価方法に関し、具体的に、集電体および前記集電体上に形成された活物質層を含み、圧延工程を経ていない電極を準備するステップと、光学系を用いて前記活物質層の色座標値を測定するステップと、前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合には良品と判断し、既定の電極品質評価基準を満たさない場合には不良と判断するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記光学系を用いて測定された、圧延工程を経ていない電極の活物質層の色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合、前記電極が圧延工程を経ると、集電体と活物質層との間の接着力に優れており、接着力不良が発生しない。例えば、本発明により良品と分類された電極が圧延工程を経ると、電極の集電体と活物質層との間の接着力が40gf/20mm以上に確保されることができる。
【0014】
本発明によると、圧延前の簡単な色座標値の測定により圧延後の物性である接着力を予測することができ、不良電極を圧延前に取り除くことができる。すなわち、圧延工程を経なくても不良電極を取り除くことができ、これにより、電極完成品の不良率を著しく下げることができる。
【0015】
以下、本発明に係る電極の品質評価方法の各ステップについてさらに詳しく説明する。
圧延工程を経ていない電極を準備するステップ
本発明は、集電体および前記集電体上に形成された活物質層を含み、圧延工程を経ていない電極を準備するステップを含む。
【0016】
本発明は、既存の電池電極の品質評価のように圧延工程を経た電極を評価するのではなく、圧延工程を経ていない電極を用いて電池電極の品質を評価して圧延工程前に不良電極を取り除き、圧延工程後の不良率を著しく下げることができる。
【0017】
電極の活物質層の色座標値を測定するステップ
本発明は、光学系を用いて前記活物質層の色座標値を測定するステップを含む。
【0018】
前記光学系は、光源およびイメージセンサを含む装置であり、前記光学系を用いて前記電極それぞれの活物質層を撮影すると、前記電極それぞれの活物質層表面の色情報が色座標値に変換されて検出される。前記イメージセンサは、入ってくる光を電気的信号に変換する素子であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサであってもよい。
【0019】
本発明によると、前記光学系は、分光光度計(spectrophotometer)または色差計(colorimeter)であってもよい。
前記色座標値は、3次元色空間内で座標で表される数値を称し、例えば、前記色座標値は、L*、a*、または白色度値であってもよい。
【0020】
本発明によると、活物質層の色座標値の測定は、接触式または非接触式色差計により測定してもよい。すなわち、前記色差計は、接触式または非接触式色差計であってもよい。非接触式色差計を用いる場合、サンプルに直接接触することなく測定することができるため、測定が簡便であり、連続生産工程中に測定が可能であるという長所がある。
【0021】
活物質層の色座標値の測定は、例えば、色差計としてコニカミノルタ社のCM2600dを用いて測定してもよい。具体的に、色差計としてコニカミノルタ社のCM2600dを用いて、測定モードをSCI(Specular Component Included)またはSCE(Specular Component Excluded)とし、標準光源D65(色温度:6500K)、CIE 1976 10°標準観測者に設定した後、白色補正後に測定しようとする位置に色差計を接触させて測定してもよい。
【0022】
測定された色座標値を既定の電極品質評価基準と比較して良品または不良と判断するステップ
本発明は、前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合には良品と判断し、既定の電極品質評価基準を満たさない場合には不良と判断するステップを含む。
【0023】
測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合、圧延後の集電体と活物質層との間の優れた接着力を確保することができるため、圧延工程を経た電極の不良率を著しく下げることができる。
【0024】
本発明によると、前記色座標値がL*値である場合、前記既定の電極品質評価基準は、L*値が35.4以上であってもよく、好ましくは35.4以上40以下であってもよい。
【0025】
本発明によると、前記色座標値がa*値である場合、前記既定の電極品質評価基準は、a*値が0.78以上であってもよく、好ましくは0.78以上0.96以下であってもよい。
【0026】
本発明によると、前記色座標値が白色度値である場合、前記既定の電極品質評価基準は、白色度値が7以上であってもよく、好ましくは7以上9以下であってもよい。
【0027】
これは、L*、a*、および白色度値に対し、既定の電極品質評価基準が前記範囲を満たしてこそ、圧延後の集電体と活物質層との間の優れた接着力を確保することができ、電極完成品の不良率を著しく下げることができるためである。
【0028】
前記比較の結果、前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たして良品と分類された電極は、圧延工程を経ると、電極の品質に優れることができる。具体的に、本発明に係る電極の品質評価方法により良品と分類された電極は、圧延工程を経ると、集電体と活物質層との間の接着力に優れることができる。例えば、集電体と活物質層との間の接着力が40gf/20mm以上に確保されることができる。
【0029】
<電極の製造方法>
本発明に係る電極の製造方法は、集電体上に活物質、導電材、およびバインダーを含むスラリーを塗布した後に乾燥させて活物質層を形成し、圧延工程を経ていない電極を製造するステップと、上述した方法で電極の品質を評価するステップと、良品と判断された電極を圧延するステップと、を含むことを特徴とする。
【0030】
以下、本発明に係る電極の製造方法の各ステップについてさらに詳しく説明する。
圧延工程を経ていない電極を製造するステップ
本発明は、集電体上に活物質、導電材、およびバインダーを含むスラリーを塗布した後に乾燥させて活物質層を形成し、圧延工程を経ていない電極を製造するステップを含む。前記活物質層は、前記集電体の一面または両面上に形成されてもよい。
【0031】
前記集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、正極集電体の場合、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよく、負極集電体の場合、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。
【0032】
前記集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極材または負極材の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0033】
前記スラリーは、活物質、導電材、およびバインダーを溶媒中に溶解または分散させて製造してもよい。
前記活物質が正極活物質である場合、前記正極活物質は、リチウムの可逆的な挿入及び脱離が可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムのような1種以上の遷移金属およびリチウムを含むリチウム複合金属酸化物であってもよい。より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMnYO2(0<Y<1)、LiMn2-zNizO4(0<Z<2)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1O2(0<Y1<1)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2O2(0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1O4(0<Z1<2)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NipCoqMnr1)O2(0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)、またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O4(0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3MS2)O2(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1)などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0034】
前記活物質が負極活物質である場合、前記負極活物質としては、当業界で用いられる多様な負極活物質、例えば、炭素系負極活物質、シリコン系負極活物質、金属合金などが用いられてもよい。
【0035】
前記炭素系負極活物質としては、当業界で用いられる多様な炭素系負極活物質、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)のようなグラファイト系物質;熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)、および石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素、ソフトカーボン(soft carbon)、ハードカーボン(hard carbon)などが用いられてもよい。前記炭素系負極活物質の形状は、特に制限されず、無定形、板状、鱗片状、球状、または繊維状などのような多様な形状の物質が用いられてもよい。
【0036】
前記シリコン系負極活物質は、金属シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx、ここで、0<x<2)、シリコン炭化物(SiC)、およびSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0037】
前記活物質は、活物質層の総重量に対して80重量%~99重量%、より具体的には、80重量%~98重量%、または85重量%~98重量%の含量で含まれてもよい。活物質の含量が前記範囲内である場合、優れた容量特性および電気化学的特性を得ることができる。
【0038】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学的変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0039】
前記導電材は、活物質層の総重量に対して0.5重量%~30重量%、より具体的には、0.5重量%~15重量%、または0.5重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0040】
前記バインダーは、活物質粒子間の付着および活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。前記バインダーの具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0041】
前記バインダーは、活物質層の総重量に対して0.5重量%~30重量%、より具体的には、0.5重量%~15重量%、または0.5重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0042】
前記溶媒は、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)、または水などであってもよく、この中の1種の単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率、作業性などを考慮して、スラリーが適切な粘度を有するように調節可能な程度であればよく、特に限定されない。
【0043】
本発明によると、集電体上に活物質、導電材、およびバインダーを含むスラリーを0.005g/cm2~0.050g/cm2のローディング量で塗布した後に乾燥させて活物質層を形成させることができる。スラリーのローディング量は、好ましくは0.005g/cm2~0.030g/cm2であってもよく、より好ましくは0.005g/cm2~0.025g/cm2であってもよい。スラリーのローディング量が前記範囲内である場合、活物質層が適切な厚さに形成されて電極に不良が発生しないため、電極の品質に優れることができる。
【0044】
本発明によると、前記乾燥時に必要な総熱量は、下記式1~式3を満たしてもよい。
【0045】
[式1]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(46.30-L*値)/0.0077
【0046】
式1中、
前記L*値は、既定の電極品質評価基準で、35.4以上である。
【0047】
[式2]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(1.09-a*値)/2.19×10-5
【0048】
式2中、
前記a*値は、既定の電極品質評価基準で、0.78以上である。
【0049】
[式3]
乾燥時に必要な総熱量(kW)=(13.06-白色度値)/0.0041
【0050】
式3中、
前記白色度値は、既定の電極品質評価基準で、7以上である。
【0051】
本発明の発明者は、光学系を用いて測定されたL*値、a*値、または白色度値と接着力との間の関係式を式4~式6のように導出し、これにより、接着不良が発生しないL*値、a*値、または白色度値の範囲を導出した。
【0052】
[式4]
L*値=(圧延前の電極の接着力+464.40)/14.24
【0053】
[式5]
a*値=(圧延前の電極の接着力+319.02)/462.87
【0054】
[式6]
白色度値=(圧延前の電極の接着力+143.97)/25.27
【0055】
式4~式6中、
前記接着力は、圧延前の電極の接着力であり、圧延前の電極を両面テープを用いてスライドグラスに付着した後、UTM機器(Lloyed社)を用いて、100mm/minの速度条件で90°の角度で電極を引っ張り、スライドグラスから剥離される力を測定したものである。
前記接着力は、40gf/20mm以上である。
【0056】
また、L*値、a*値、または白色度値と乾燥時に必要な総熱量との間の関係式を式1~式3のように導出し、これにより、電極の接着不良が発生しない乾燥条件を導出した。乾燥時に必要な総熱量が前記式1~式3を満たす場合、電極に不良が発生しないため、電極の品質に優れることができる。
【0057】
本発明によると、前記乾燥は、1000kW~1450kWの総熱量で乾燥させてもよい。前記乾燥は、好ましくは1100kW~1400kWの総熱量で乾燥させてもよい。乾燥時の総熱量が前記範囲内である場合、電極に不良が発生しないように乾燥されることで、電極の品質に優れることができる。
【0058】
本発明によると、前記活物質層の厚さは50μm~500μmであってもよい。前記活物質層の厚さは、好ましくは50μm~250μmであってもよい。活物質層の厚さが前記範囲内である場合、活物質層の性能を最大限発現させながらも、電極の不良率を著しく下げることができる。
【0059】
電極の品質を評価するステップ
本発明に係る電極の製造方法は、上述した方法で電極の品質を評価するステップを含む。
【0060】
すなわち、製造された電極を用いて、光学系により前記電極活物質層の色座標値を測定し、前記測定された色座標値が既定の電極品質評価基準を満たす場合には良品と判断し、既定の電極品質評価基準を満たさない場合には不良と判断するステップを含む。具体的な内容は上述したとおりである。
【0061】
良品と判断された電極を圧延するステップ
本発明は、良品と判断された電極を圧延して電極を製造するステップを含む。
上記のように、本発明に係る電極の品質評価方法により良品と判断された電極は、圧延を経た後にリチウム二次電池を製造するのに用いられてもよく、この場合、前記リチウム二次電池は、不良率が著しく低い。
【0062】
前記リチウム二次電池は、携帯電話、ノートブックコンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0064】
製造例1
水55重量部に、天然黒鉛41重量部、導電材0.5重量部、SBR 2.5重量部、およびCMC 1重量部を混合し、スラリーを製造した。
【0065】
厚さ8μmの銅集電体の一面に前記スラリーを0.014g/cm2のローディング量で塗布した後、1190kWの総熱量で乾燥させて厚さ144μmの活物質層を形成させ、電極を製造した。集電体の他面に同一処方および同一工程条件で活物質層を形成させ、銅集電体の両面に形成された総活物質層の厚さが288μmである電極を製造した。
【0066】
製造例2
電極の製造時に1257kWの総熱量で乾燥させることを除いては、製造例1と同様の方法で電極を製造した。
【0067】
製造例3
電極の製造時に1396kWの総熱量で乾燥させることを除いては、製造例1と同様の方法で電極を製造した。
【0068】
製造例4
電極の製造時に1480kWの総熱量で乾燥させることを除いては、製造例1と同様の方法で電極を製造した。
【0069】
実施例:電極の品質評価
色差計としてコニカミノルタ社のCM2600dを用いて、測定モードをSCIとし、標準光源D65(色温度:6500K)、CIE 1976 10°標準観測者に設定した後、白色補正後に測定しようとする位置に色差計を接触させ、製造例1~4で製造された電極それぞれの活物質層の色座標L*値、a*値、および白色度値を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0070】
【0071】
製造例1~4で製造された電極それぞれの活物質層の色座標値を既定の電極品質評価基準(L*値:35.4以上、a*値:0.78以上、白色度:7以上)と比較した結果、製造例1~3の電極は、測定された色座標L*値、a*値、および白色度がいずれも既定の電極品質評価基準を満たしたところ、良品と判断した。
【0072】
これに対し、製造例4の電極は、測定された色座標L*値、a*値、および白色度がいずれも既定の電極品質評価基準を満たしていないところ、不良と判断した。
【0073】
実験例:圧延前の電極の接着力の測定
製造例1~4で製造された電極を両面テープを用いてスライドグラスに付着した後、UTM機器(Lloyed社)を用いて、100mm/minの速度条件で90°の角度で電極を引っ張り、スライドグラスから剥離される力を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0074】
【0075】
前記表2に示されたように、本発明に係る電極の品質評価方法により良品と分類された製造例1~3の電極の場合は、圧延工程後の電極の接着力が40gf/20mm以上であって優れることを確認することができる。
【0076】
これに対し、測定された色座標L*値、a*値、および白色度がいずれも既定の電極品質評価基準を満たさない製造例4の電極の場合は、圧延工程後の電極の接着力が32.9gf/20mmであって、電極として用いられるのに物性が良くないことを確認することができる。すなわち、接着力が不良であることを確認することができる。
【0077】
したがって、本発明によると、圧延前の簡単な色座標値の測定により圧延後の物性である接着力を予測することができ、不良電極を圧延前に取り除くことができることが分かる。すなわち、圧延工程を経なくても不良電極を取り除くことができ、これにより、電極完成品の不良率を著しく下げることができることが分かる。