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特許7500758シールユニットを備えたシールアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】シールユニットを備えたシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3252 20160101AFI20240610BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240610BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240610BHJP
【FI】
F16J15/3252
F16J15/18 C
F16J15/3204 201
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022561076
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021059053
(87)【国際公開番号】W WO2021204871
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】102020204514.3
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519299094
【氏名又は名称】トレレボリ シーリング ソリューションズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Sealing Solutions Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Schockenriedstrasse 1, 70565 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴァルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン コロジェイ
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04376541(US,A)
【文献】特開2008-281025(JP,A)
【文献】特開2002-266881(JP,A)
【文献】実開昭61-082176(JP,U)
【文献】国際公開第2017/051869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3252
F16J 15/18
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールアセンブリ(10)であって、ハウジング(12)と、該ハウジング(12)内に回転軸線(16)を中心として回転可能に支承された軸(14)と、前記ハウジング(12)と前記軸(14)との間に形成されたシール間隙(22)を前記ハウジング(12)の外側Aに対して密封するためのシールユニット(24)とを備え、
前記シールユニット(24)は、
・ シールリング(26)であって、保持区分(30)とシールリップ(32)とを備え、該シールリップ(32)は、前記保持区分(30)から半径方向外向きに延在していて、前記ハウジング(12)のシール面(36)に軸線方向で動的に封止するように接触している、シールリング(26)と、
・ 内向きに緊締する緊締リング(28)であって、前記シールリング(26)の材料内に埋め込まれて配置されていて、前記保持区分(30)を保持溝(40)内に軸線方向で位置固定しかつ前記保持区分(30)を全周にわたって予荷重を加えた状態で前記軸(14)に静的に封止するように当て付ける緊締リングと
を備える、シールアセンブリ(10)において、
前記シールリング(26)の前記保持区分(30)は、内周側に、前記保持溝(40)内に係合する環状のシールフランジ(54)を有し、前記緊締リング(28)は、前記外側Aから接近が可能である複数の工具係合部(44,46,64)を有し、
前記シールリング(26)の前記保持区分(30)は、複数の工具係合部(44,46,64)を備えた歯付きの縁区分(62)を有し、前記工具係合部(44,46,64)は、周方向において、それぞれ両側で前記縁区分(62)の歯(66)によって画定されていることを特徴とする、シールアセンブリ(10)。
【請求項2】
前記緊締リング(28)は、少なくとも部分的に半径方向で前記保持溝(40)内に係合することを特徴とする、請求項1記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記緊締リング(28)は、ポリマー材料または金属から成っていることを特徴とする、請求項1または2記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記緊締リング(28)は、スリットを有して形成されていて、その自由端区分(48)にそれぞれ1つの工具係合部(44,46,64)を有することを特徴とする、請求項1記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項5】
前記工具係合部(44,46,64)のうちの少なくとも一部は、前記緊締リング(28)の周方向で相前後して並置されていることを特徴とする、請求項1または4記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項6】
前記工具係合部(44,46,64)のうちの少なくとも一部は、それぞれ前記外側Aに向かって開放した盲孔の形態で形成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項7】
前記工具係合部(44,46,64)のうちの少なくとも一部は、前記緊締リング(28)の軸線方向の貫通切欠きとして形成されており、該貫通切欠きは、軸線方向外側で前記シールリング(26)によって完全に封止するように覆われていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項8】
前記シールリング(26)は、前記工具係合部(44,46,64)を密封するための、解離可能に配置された複数の閉鎖要素(72)を有し、該閉鎖要素(72)は、前記シールリング(26)の残りの部分に接着、溶着またはプレス嵌めされて前記シールリング(26)および/または前記緊締リング(28)に保持されて配置されていることを特徴とする、請求項7記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項9】
前記閉鎖要素(72)は、前記シールリング(26)の残りの部分と同じ材料から成っており、かつ/または複数の前記閉鎖要素(72)は、互いに一体に形成されていることを特徴とする、請求項8記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項10】
前記工具係合部(44,46,64)のうちの少なくとも一部は、軸線方向で前記保持区分(30)の環状のシールフランジ(54)によって画定されており、該シールフランジ(54)は、前記保持溝(40)の内側の溝側面(70)に封止するように接触していることを特徴とする、請求項記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項11】
前記シールリング(26)の前記保持区分(30)は、前記保持溝(40)の外側の支持ゾーンSにおいて半径方向で前記軸(14)の周面(60)に支持されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項12】
前記支持ゾーンSは、軸線方向において、前記シールリップ(32)の動的なシール平面Eに対して相対的に外向きにずらされて配置されているか、または前記動的なシール平面Eは、前記支持ゾーンSと交差していることを特徴とする、請求項11記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項13】
前記緊締リング(28)は、複数の第1のリングセグメント(50)と複数の第2のリングセグメント(52)とを有し、該第1のリングセグメント(50)と該第2のリングセグメント(52)とは、周方向で交互に相前後して位置するように配置されており、前記第1のリングセグメント(50)は、前記第2のリングセグメント(52)よりも少なく弾性変形可能であり、前記第1のリングセグメント(50)は、前記第2のリングセグメント(52)を介して互いにフレキシブルに結合されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のシールアセンブリ(10)。
【請求項14】
前記緊締リング(28)の前記工具係合部(44,46,64)のうちの少なくとも一部は、それぞれ前記複数の第1のリングセグメント(50)のうちの1つの第1のリングセグメントによって形成されていることを特徴とする、請求項13記載のシールアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールユニットを備えたシールアセンブリに関する。多くの使用分野では、実際のところ、シール作用が不十分でしかないことが多い単純なシールリングまたは単純なシールディスクを備えたシールアセンブリが使用される。このようなシールアセンブリは、自転車、電動自転車(=Eバイク)、いわゆる電動アシスト自転車、電動工具、農業機器のほか、衛生用途における器具、食品用途、冷凍機、操舵機構、小型変速機等にも見られることが多い。
【0002】
シールユニットは軸に配置されていて、半径方向外側の縁領域でハウジングに支持されている。この場合、このハウジングの該当シール面へのシールユニットの、動的に封止する十分に大きな接触加圧は、制限されてしか付与されていないことが多い。さらに、軸に対するシールユニットの静的なシール装着にも、ほんの僅かな充足度しか達成することができないことが多い。これによって、不純物、例えば水または汚染パーティクルがハウジング内に簡単に侵入し、そこに機能的な損傷を与え、軸を支承するために使用される支承部材の摩耗を高めてしまう。
米国特許出願公開第2003/0006113号明細書および米国特許出願公開第2015/0192196号明細書に基づき、自動車エンジンのクランク軸伝動式の補機用のプーリユニットが公知である。このプーリユニットは、プーリと軸本体との間のシール間隙を密封するためのシールアセンブリを有している。
米国特許出願公開第2003/0156772号明細書に基づき、シール構造体を備えたウォータポンプ軸受が公知である。シール構造体は、環状の第1および第2のシールユニットを備えている。これらの第1および第2のシールユニットは、それぞれポンプ軸と外輪との間のシール間隙を密封している。
欧州特許出願公開第0789152号明細書に基づき、転がり軸受が公知である。この公知の転がり軸受では、シールプレリングが、転がり軸受の外輪と内輪との間の間隙を密封している。
独国特許出願公開第102012202910号明細書に基づき、2つの構成部材をシール本体とシールリップとによって密封するためのシールアセンブリが公知である。この公知のシールアセンブリでは、シール本体が、第1の構成部材に配置されており、シールリップが、第2の構成部材に封止するように接触している。
【0003】
したがって、本発明の課題は、構造がコンパクトであると同時に封止能が改善されていて、可能な限り簡単に組み付けることもできるし、取り外すこともできる、シールユニットを備えたシールアセンブリを提供することである。
【0004】
本発明に関する課題は、請求項1に記載した特徴を有するシールアセンブリによって解決される。本発明の改良形態は、従属請求項および明細書に記載してある。
【0005】
本発明に係るシールアセンブリは、特に自転車、電動自転車、電動工具、農業機器のほか、衛生用途における器具、食品用途、冷凍機、操舵機構、小型変速機およびこれに類するものにも適している。シールアセンブリは、ハウジングと、このハウジング内に回転軸線を中心として回転可能に支承された軸とを備えている。ハウジングと軸との間に形成されたシール間隙をシールアセンブリの外側に対して密封するために、シールリングと、このシールリングの弾性変形可能な材料内に少なくとも部分的に埋め込まれて配置された緊締リングとを備えたシールユニットが用いられる。これによって、シールリングと緊締リングとが、一緒に取扱い可能な構成ユニットもしくは組付けユニットを形成している。シールユニットは、特にコンパクトな構造高さで実現することができる。シールリングは、保持区分とシールリップとを有しており、このシールリップは、保持区分から半径方向外向きに延在していて、回転軸線に対して軸線方向でハウジングのシール面に動的にシールするように接触している。半径方向内向き緊締するように形成された緊締リングによって、シールリングの保持区分が、軸に設けられた保持溝内に軸線方向で位置固定され、保持区分が、全周にわたって予荷重が加えられた状態で軸に静的にシールするように当て付けられる。これによって、シールユニットを軸に相対回動不能に位置固定することができる。したがって、シールユニットによって、シール間隙の確実な静的かつ動的な密封が可能となるため、シール間隙内への水または不純物の望ましくない侵入が、冒頭に記載したシールユニットに比べて確実に阻止される。例えば高圧/蒸気噴流洗浄に対するより高レベルの防護等級さえ達成することができる。これによって、全体として、軸の支承部材、例えば、自転車/電動アシスト自転車のクランク軸の内側軸受を過剰な摩耗、誤機能または汚れに起因した破壊に対してすら確実に防護することができる。さらに、シールリング内に少なくとも部分的に組み込まれた緊締リングに基づき、シールユニットを簡単に取り外して、保守作業のためにもしくは摩耗時に交換することができる。さらに、軸に設けられた保持溝内でのシールリングの軸線方向の位置固定によって、ハウジングへのシールリップの十分に大きな接触加圧ひいてはシールユニットの有効な動的な封止能を永続的に保証することができる。
本発明によれば、シールリングの保持区分が、内周側に、保持溝内に係合する環状のシールフランジを有している。このようなシールフランジによって、軸に対するシールユニットの特に確実な静的な封止能を保証することができる。保持フランジ自体は、半径方向および/または軸線方向で保持溝の側面もしくは溝底に静的に封止するように接触していてよい。
【0006】
本発明の好適な改良形態によれば、緊締リングが、少なくとも部分的に半径方向で保持溝内に係合する。これによって、シールリングもしくはシールユニット全体を軸に対して相対的に、(軸の回転軸線に対して)予め設定された軸線方向の位置にかつ作用するモーメントに対して特に確実に位置固定することができる。
【0007】
本発明の好適な実施形態によれば、緊締リングがポリマー材料から成っている。このことは、製造技術的な利点を提供する。さらに、これによって、ハウジングの領域における望ましくない電気化学的な腐食を阻止することができ、シールユニットを特に少ない質量で提供することができる。しかしながら、代替的には、緊締リングは金属から成っていてもよい。これによって、緊締リングの特に大きな耐久性および耐荷性を保証することができる。さらに、シールユニットの製造に際して、場合によっては、規格化された緊締リングを使用することができる。このことは、コスト利点を提供する。
【0008】
一実施形態によれば、シールユニットもしくは緊締リングが、複数の工具係合部または工具係合切欠きを有している。工具係合部には、好ましくは、シールユニットの外側から(破壊なしに)工具の接近が可能である。工具係合部によって、好ましくは、緊締リングもしくはシールユニット全体の拡張が可能となり、したがって、シールユニットの簡単な組付けもしくは取外しが可能となる。
【0009】
工具係合部は、一構造形態によれば、少なくとも部分的に緊締リングの(軸線方向の)貫通切欠きの形態で形成されていてよい。この構造形態では、シールリングが、緊締リングの工具係合部を、好ましくは軸線方向外側で封止するように覆っている。このために、本発明の好適な改良形態によれば、シールリングが、このシールリングの残りの部分に解離可能に配置された1つ以上の閉鎖要素を有していてよい。各々の閉鎖要素は、それぞれ1つの工具係合部に差し通され、プレス嵌めされて封止するように工具係合部に保持されて配置されていてよい。これによって、緊締リングへの各々の閉鎖要素の特に確実な自己位置固定が可能となる。当然ながら、閉鎖要素の各々は、シールリングの残りの部分に固定されていてもよく、例えば不動に接着されていてよい。各々の閉鎖要素は、好適には、シールリングの残りの部分と同じ材料から成っている。複数の閉鎖要素または全ての閉鎖要素は、互いに一体に形成されていてよい。このことは、製造技術的な利点を提供し、取扱いを簡略化する。
【0010】
本発明によれば、緊締リングが、2つよりも多くの工具係合部を有していてよい。本発明の特に好適な改良形態によれば、緊締リングの工具係合部のうちの一部が、緊締リングの周方向で、好適には規則的に互いに離間させられて、相前後して並置されている。これによって、緊締リングへの特に可変の工具接近が可能となる。これによって、シールユニットの組付け/取外しをさらに一層簡略化することができる。工具係合部のうちの少なくとも一部はその形状付与および/または大きさに関して、工具、特にねじ回しの規定の刃形部の係合に合わせられていてよい。
【0011】
本発明の全く特に好適な改良形態によれば、緊締リングの工具係合部のうちの少なくとも一部が、盲孔の形態で形成されている。これによって、こういった工具係合部をシールリングの材料によって密封することが不要となる。これによって、シール装置を特に廉価にかつコンパクトな構造高さで実現することができる。緊締リングは、この箇所には、シールリングの材料による封止するような軸線方向の被覆を必要としない。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、緊締リングが、半径方向にスリットを有して形成されていてよい。したがって、緊締リングは、周方向で完全に閉じられていない。この場合、緊締リングはその両方の自由端部分に、特に(いわゆる)アイレットの形態のそれぞれ1つ前述した工具係合部を有していてよい。このことは、特に金属から製造された緊締リングの場合に有利である。
【0014】
本発明の代替的な実施形態によれば、保持区分が、内周側に少なくとも部分的に、保持溝内に係合する歯付きの縁区分を有している。これによって、シールユニットの組付けおよび取外しを容易にすることができ、材料使用が減じられたシールリングを実現することができる。同時に、歯付きの縁区分は、ポケット状の工具係合部を規定していてよい。この工具係合部は、密封の理由から、好ましくは軸線方向で保持区分の環状の(精巧な)シール鍔もしくはシールフランジによって画定されている。シール鍔/シールフランジは、少なくとも部分的にシールユニットの裏面を形成していてよい。シール鍔もしくはシールフランジは、保持溝の内側の溝側面に軸線方向で封止するように接触していてよい。
【0015】
特に好適な実施形態によれば、シールリングの保持区分は、保持溝の外側の支持ゾーンにおいて、好適には全周にわたって封止するように軸の周面に支持されている。言い換えると、保持区分は保持溝から、軸の回転軸線に対して軸線方向で保持溝から外向きに離れる方向に延在していて、接触して軸を取り囲んでいる。これによって、保持区分が、過剰に変形させられるかまたは保持溝から持ち上げられることなしに、片側でより大きなモーメントを受け止めることができる。全体として、これによって、シールユニットの小さな構造高さで、ハウジングへのシールリップの特に大きな動的な接触加圧を実現することができる。さらに、保持溝の外側にシールリングと軸との間の更なる静的なシールゾーンもしくは静的なシール平面を実現することができる。全体として、このことは、シールユニットのシール機能に役立つ。
【0016】
シールリングの保持区分の前述した支持ゾーンが、シールリップの動的なシール平面に対して軸線方向外向きにずらされて配置されていると、シールリングの保持区分が、特に大きなモーメントを受け止めることができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、緊締リングが、複数の第1のリングセグメントと複数の第2のリングセグメントとを有しており、これらの第1のリングセグメントと第2のリングセグメントとが、緊締リングの周方向で交互に相前後して位置するように配置されており、第2のリングセグメントよりも少なく弾性変形可能である第1のリングセグメントが、第2のリングセグメントを介して互いに結合されていてよい。この構造形態は、特にポリマー製ばねリングの場合に有利である。第2のリングセグメントによって、シールユニットの組付けおよび場合によっては取外しのためにも必要となるような、緊締リングの弾性的な拡張が可能となる。
【0018】
緊締リングの前述した工具係合部は、有利には、それぞれ複数の第1のリングセグメントのうちの1つの第1のリングセグメントによって形成されていてよい。
【0019】
本発明によれば、シールリングは、好ましくはシールリング材料の射出成形により緊締リングに固着されている。これによって、シール装置の特に廉価な大量生産が可能となる。本発明によれば、緊締リング自体が、特に射出成形部材、打抜き加工部材または3Dプリント部材として形成されていてよい。
【0020】
本発明の更なる利点は、明細書および図面から明らかとなる。以下に、本発明を、図面に示した実施例に基づき詳しく説明する。図説する実施形態は、限定的な列挙と解すべきものではなく、むしろ、本発明を説明するための例示的な特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ここでは例えばボトムブラケットシール装置の形態のシール装置であって、ハウジングと、このハウジング内に回転可能に配置されていて、クランクが取り付けられた軸とを備え、この軸とハウジングとの間に形成された支承間隙もしくはシール間隙を密封するために、シールユニットが用いられる、シール装置の部分的な断面図である。
図2図1に示したシールユニットに類似のシールユニットの任意の斜視図である。
図3図2に示したシールユニットの第1の断面図である。
図4図2に示したシールユニットを備えたシールアセンブリの断面図である。
図5】シールユニットの別の実施例の表側の斜視図である。
図6図5に示したシールユニットに類似のシールユニットの詳細部分図である。
図7】金属製の緊締リングと縁側の工具係合部とを備えたシールユニットの別の実施例の表側の斜視図である。
図8図7に示したシールユニットの裏面図である。
図9】スナップリングとして形成された緊締リングを備えたシールユニットの裏面図である。
図10】緊締リングの工具係合部を封止するように閉鎖するための一体形の閉鎖要素を備えた図9に示したシールユニットの正面図である。
図11図9に示したシールユニットの、図9にA-Aで示した切断平面の断面図である。
【0022】
図1には、図示の構成では単なる一例として、自転車、電動アシスト自転車およびこれに類するもの用のボトムブラケットシールアセンブリの形態のシールアセンブリ10が示してある。このシールアセンブリ10は、ハウジング12と軸14とを備えている。この軸14は、図示の構成では、ハウジング12に差し通されていて、このハウジング12内に回転軸線16を中心として回転可能に支承されている。軸14の両端には、自体公知のクランク18が取り付けられていてよい。軸14を支承するために、図示の構成では、少なくとも2つの内側軸受20が用いられている。これらの内側軸受20のうち、図1には、図示の理由から、1つの内側軸受20しか示していない。この内側軸受20の個別構成部材は、それぞれ分離不能なユニットとして形成されていてよい。また、内側軸受20は、自体公知のように、いわゆるカートリッジ軸受として形成されていてもよい。ハウジング12と軸14との間に形成されたシール間隙22をシールアセンブリ10の外側または汚れ側Aに対して密封するために、全体に符号24を付したシールユニットが用いられている。このシールユニット24は、シールリング26と緊締リング28とを備えている。シールリング26は、弾性変形可能、好適にはゴム弾性変形可能な基材から成っている。基材として、特にエラストマーが適している。シールリング26は、保持区分30と、この保持区分30からシールリング26もしくはシールユニット24の中心軸線34に対して半径方向外向きに延在するシールリップ32とを有している。このシールリップはシールエッジ35を有している。シールリング26の中心軸線34は、回転軸線16に合致している。シールリップ32はその基材に内在する固有弾性に基づき、動的なシール平面Eの領域におけるハウジング12のシール面36に軸線方向で動的に封止するように接触している。このシール面36は、図1によれば、特にハウジング12の端面38によって形成されていてよい。
【0023】
緊締リング28は、シールリング26の保持区分30を、軸14に設けられた保持溝40内に軸線方向で固定するために働き、シールリング26の保持区分30を、半径方向に予荷重を加えた状態で軸14に全周にわたって静的に封止するように当て付けることを保証している。
【0024】
シールリング26の弾性変形可能な基材は、例えば、この基材の射出成形により緊締リング28に固着されていてよい。
【0025】
図2図4には、図1に示したシールユニット24に十分対応するシールユニット24が示してある。
【0026】
シールユニット24は、組付け状態で外側(A、図1参照)に向けられた表面42に複数の工具係合部44,46を有している。これらの工具係合部44,46は、図示の構成では、それぞれ緊締リング28によって形成されている。工具係合部44,46は、図示の構成では、それぞれ表面42に向かって開放した盲孔切欠きとして形成されている。
【0027】
第1の工具係合部44は、シールユニット24の組付け/取外しのために緊締リング28を拡張することができる緊締リングプライヤまたはこれに類するものを係合するために役立つ。緊締リング28は、図示の構成では、周方向で閉じられて形成されているものの、代替的な構造形態によれば、半径方向にスリットを有して形成されていてもよい。この場合には、緊締リング28は、(周方向で)互いに向かい合う2つの自由端区分48を有している。これら両方の端区分48は、好ましくは第1の工具係合部44を備えている。
【0028】
第2の工具係合部46は、緊締リング28の周方向で規則的に互いに離間させられて相前後して並置されている。これらの第2の工具係合部46は、特に方形の開放横断面を有していてよく、例えばねじ回し(図示せず)の工具刃を係合するために役立ち得る。この第2の工具係合部46によって、シールユニット24を特殊工具なしに、ただし、場合によっては破壊して、保持溝40内の組付け位置(図1)から持ち上げることができる。
【0029】
緊締リング28は、図3および図4によれば、複数の第1のリングセグメント50と複数の第2のリングセグメント52とを有している。これらの第1のリングセグメント50と第2のリングセグメント52とは、緊締リング28の周方向で交互に相前後して位置するように配置されている。第1のリングセグメント50は、図示の構成では、それぞれ工具係合部44,46のうちの一方を形成していて、半径方向において、第1のリングセグメントを互いにフレキシブルに結合する第2のリングセグメント52よりも少なく弾性変形可能である。これにより、シールリング26および緊締リング28の一緒の拡開と、軸(14、図1)へのシールリング26および緊締リング28の軸線方向での外嵌とによって、シールユニット24の組付けを簡単にすることができる。
【0030】
緊締リング28は、シールリング26の材料よりも大きなモジュラスを有する材料、図示の構成ではポリマー材料から成っている。緊締リング28は、射出成形部材として形成されていてもよいし、3Dプリント部材として形成されていてもよい。
【0031】
図2図4に示したシールユニット24の保持区分は、図3および図4によれば、内周側の組付けおよびシールフランジ54を有している。この組付けおよびシールフランジ54は、保持区分30の残りの部分から半径方向で中心軸線34の方向に延在している。シールフランジ54は、方形の横断面形状と、好ましくは円形の内側横断面もしくは円形の内側輪郭とを有していてよい。シールフランジ54は、シールユニット24の組付け状態でシールリング26の全周にわたって保持溝40(図4)内に封止するように係合している。この場合、シールフランジ54は、保持溝40の溝底56に半径方向で静的に封止するように接触している。これによって、軸14とシールユニット24との間に第1の静的なシールゾーン58が形成されている。注意すべき点として、緊締リング28は、図3および図4から明らかであるように、周方向で断続的にしか、つまり、セグメントごとにしか保持溝40内に係合することができない。この場合、特に有利には、緊締リング28はその少なくとも第1のリングセグメント50で保持溝40内に係合している。
【0032】
図4によれば、シールユニット24は、保持溝40から離れるように軸線方向で外側Aに向かって延在している。保持区分30は、保持溝40の外側の支持ゾーンSで軸14の周面60に半径方向で全周にわたって支持されている。これによって、1つには、シールリップ32とハウジング12のシール面36との間の十分な接触加圧が可能となる。さらに、保持区分30が軸14に全周にわたって封止するように当て付けられている場合、軸14とシールユニット24との間に別の静的なシールゾーン58が形成されている。これによって、シールリング26は、互いに軸線方向で離間させられた少なくとも2つのシールゾーン58の領域で軸14に静的に封止するように接触している。
【0033】
シールユニット24は、図4によれば、十分に軸線方向の遊びを伴って保持溝40内に配置されてよい。これによって、シールユニット24の組付けが容易になり、保持区分30に生じる可能性がある損傷が阻止される。
【0034】
図5には、別のシールユニット24が示してある。この別のシールユニット24は、前述したシールユニット24と異なり、主として、シールリング26の保持区分30が、内周側に、ポケット状の第3の工具係合部64を備えた歯付きの縁区分62を有している。第3の工具係合部64は、周方向で互いに離間させられて相前後して並置されていて、それぞれ両側で縁区分62の歯66によって画定されている。この歯66は、保持区分30の残りの部分から中心軸線34に向かって半径方向に突出している。
【0035】
図6によれば、第3の工具係合部64は、軸線方向でシールユニット24の裏面68の方向において、それぞれシールリング26の内周側のシールフランジ54によって画定されていてよい。シールユニット24の組付け状態では、保持区分30がその縁側の歯66で保持溝40(図1および図4)内に係合しているのに対して、保持溝40の内部での保持区分30の静的なシール作用は、(精巧な)シールフランジ54によって達成される。このシールフランジ54は、保持溝40の内側の溝側面70に軸線方向で全周にわたって封止するように接触している。より中心の方に配置された第3の工具係合部64によって、シールユニット24をその組付けのために一層効率よく拡張するかもしくは軸14に設けられた保持溝40からさらに簡単に持ち上げることが可能となる。
【0036】
シールユニット24の緊締リング28は、図7および図8に示したシールユニット24の実施例によれば、金属から成っていてもよい。図示の構成では、緊締リング28は、例えば、スリットを有していない(=全周にわたって閉じられた)波形リングとして形成されている。この波形リングは、少なくとも部分的にシールリング26の材料内に埋め込まれた状態で保持されて配置されている。緊締リング28は、シールユニット24の確実な封止能を保証するために、表側で(組付け状態で外側Aに向かって)シールリング26の弾性変形可能な材料によって完全に覆われている。シールユニット24は、図示の構成では単なる一例として、図5および図6に関連して前述したポケット状の第3の工具係合部64を備えている。注意すべき点として、シールユニットは、金属製の緊締リングの場合でも、第3の工具係合部64に対して付加的または代替的に、前述した第1の工具係合部44もしくは第2の工具係合部46のうちの複数を有していてよい。
【0037】
図9図11に示したシールユニット24によれば、緊締リング28は、代替的に、金属から成る(スリットを有する)スナップリングの形態で形成されていてもよい。このスナップリングは、シールリングの材料内に少なくとも部分的に埋め込まれている。緊締リング28の両方の自由端区分48は、それぞれ緊締プライヤ(図示せず)を収容するための、図示の構成ではアイレットの形態の第1の工具係合部44を備えて形成されている。緊締リング28は、シールユニット24の裏面68に配置されている。密封の理由から、緊締リング28は、軸線方向において表側でシールリング26の材料によって完全に覆われている。シールリング26は、1つ以上の栓体または閉鎖要素72を備えていてよい。この栓体または閉鎖要素72は、それぞれシールユニット24の表面42から緊締リング28の両方のアイレット内に延在していて、このアイレットを流体密にかつパーティクル密に閉鎖している。当然ながら、シールリングは、それぞれ閉鎖要素72用の貫通切欠き(詳細には図示せず)を有している。この貫通切欠きは、第1の工具係合部44に軸線方向で整合して配置されている。閉鎖要素72は、必要に応じて、シールリング26の残りの部分に不動に接着されていてよい。代替的または付加的に、各々の閉鎖要素72は、図9に示した切断平面A-Aに沿った図11による断面図に示したように、緊締リング28の第1の工具係合部44内にプレス嵌めされた状態で保持されて配置されていてよい。閉鎖要素72は、互いに一体に形成されていてよい。
【0038】
シールリング26は、保持区分30に、図2図4に示した実施例による環状のシールフランジ54を有していてもよいし、精巧なシールフランジ54(図7図10参照)を備えた歯付きの保持区分を有していてもよい。
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