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特許7500764石英よりも高い溶解性を有するシリカ原料を用いたオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】石英よりも高い溶解性を有するシリカ原料を用いたオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/18 20060101AFI20240610BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20240610BHJP
   C04B 18/167 20230101ALI20240610BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240610BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C04B28/18
C04B14/04 Z
C04B18/167
C04B40/02
C04B38/00 301Z
C04B38/00 302Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022564187
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021060093
(87)【国際公開番号】W WO2021219421
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】20171792.3
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504415913
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツア フォルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】シャムシャフシェジャニ タバン
(72)【発明者】
【氏名】ショーベル ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト ゼフェリン
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091945(JP,A)
【文献】国際公開第99/042418(WO,A1)
【文献】特開2006-026616(JP,A)
【文献】特開2005-330150(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154013(WO,A1)
【文献】Karakurt et al.,Cement & Concrete Composites,2009年10月13日,vol. 32,p. 1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、少なくとも12.5wt%のトバモライト含量及び少なくとも30wt%の非晶質CSH相含量を有し;
200~800kg/m の密度を有する;
オートクレーブ養生気泡コンクリート。
【請求項2】
オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、20wt%以下の残留石英含量を有する、請求項1に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリート。
【請求項3】
下記の特性の1又は2以上を有する、請求項1又は2に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリート:
- 205~250kg/mの密度において、少なくとも1.5MPaの圧縮強度;
- 255~300kg/mの密度において、少なくとも2.0MPaの圧縮強度;
- 305~350kg/mの密度において、少なくとも2.5MPaの圧縮強度;
- 355~400kg/mの密度において、少なくとも3.0MPaの圧縮強度;
- 405~450kg/mの密度において、少なくとも3.7MPaの圧縮強度;
- 455~500kg/mの密度において、少なくとも4.5MPaの圧縮強度;
- 505~550kg/mの密度において、少なくとも5.3MPaの圧縮強度;
- 555~600kg/mの密度において、少なくとも6.3MPaの圧縮強度;
- 605~650kg/mの密度において、少なくとも7.5MPaの圧縮強度;
- 655~700kg/mの密度において、少なくとも8.8MPaの圧縮強度;
- 705~800kg/mの密度において、少なくとも12.1MPaの圧縮強度。
【請求項4】
下記の特性の1又は2以上を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリート:
- 密度クラス0.35kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス2に合致する;
- 密度クラス0.40kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス2に合致する;
- 密度クラス0.45kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス2に合致する;
- 密度クラス0.50kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス4に合致する;
- 密度クラス0.55kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス4に合致する;
- 密度クラス0.60kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス4に合致する;
- 密度クラス0.65kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス6に合致する;
- 密度クラス0.70kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス8に合致する;及び/又は、
- 密度クラス0.80kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが圧縮強度クラス8に合致し;
上記密度クラス及び圧縮強度クラスは、DIN 20000-404に従って分類される。
【請求項5】
DIN 51004に従う示差熱分析(DTA)において、835~843℃の温度にてウォラストナイト(CaSiO)形成のピークを示す、請求項1~のいずれか1項に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリート。
【請求項6】
下記の工程を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法:
a) 水中にシリカ源及び酸化カルシウム源を有する懸濁液であって、上記シリカ源が少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有する懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)の懸濁液から高度多孔性グリーン固体を製造する工程;
c) 工程b)の高度多孔性グリーン固体を、飽和水蒸気の存在下で、100℃~170℃の温度にて蒸気養生する工程;及び、
d) 上記オートクレーブ養生気泡コンクリートを回収する工程。
【請求項7】
上記シリカ源が、上記可溶性シリカ種及び石英を、上記シリカ源の総重量に基づいて、石英に対する上記可溶性シリカ種の重量比50:50~100:0で有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶性シリカ種が、クリストバライト、トリジマイト、スティショバイト、飛灰、非晶質シリカ種及びこれらの混合物から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化カルシウム源が、セメント、生石灰、消石灰及びこれらの混合物から選択される、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)の上記懸濁液のカルシウム/ケイ素モル比(C/Sモル比)が、0.50~0.80である、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記懸濁液が、上記懸濁液中の固体物質の総量に対して、最大で25wt%の再利用粉末化オートクレーブ養生気泡コンクリートをさらに有することができ、上記再利用粉末化オートクレーブ養生気泡コンクリートは、上記再利用粉末化オートクレーブ養生気泡コンクリートのケイ素のモル量に従って、前記シリカ源に算入される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
シリカ源の、オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造のための使用であって、上記シリカ源が少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有し、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートが請求項1~11のいずれか1項に記載のオートクレーブ養生気泡コンクリートである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い圧縮強度を有するオートクレーブ養生気泡コンクリート(autoclaved aerated concrete)、可溶性シリカ種を有するシリカ源及び低い蒸気養生(steam curing)温度を用いた当該オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法、及び、オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造のための可溶性シリカ種を有するシリカ源の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動及び地球温暖化により、近年、「環境保護運動」又は「グリーンムーブメント」等のテーマが最優先事項となっている。建築材料分野も、その規模の大きさ並びにエネルギー及び原料に対するその巨大な需要のために大きな影響を受けている。
【0003】
通常のコンクリート及びレンガ(bricks)と比べて、オートクレーブ養生気泡コンクリート(AAC)は、エネルギー及び原料の消費量が小さい。このため、そしてその優れた熱絶縁性のために、AACは、将来において建築用の重要な要素として使用される高い潜在性を有している。
【0004】
現在、AAC製造の開発における大きな問題は、エネルギー消費及びそれに関連した二酸化炭素排出である。
【0005】
蒸気養生プロセス、及び、原料、すなわち石灰及びセメントの処理エネルギーが、AACの製造過程における主要なエネルギーのほとんどを占める。オートクレーブプロセスは、飽和蒸気条件下での高温、通常約180~200℃及び12~13barの圧力における混合物の水熱処理を有する。オートクレーブプロセスはAACの機械的特性に大きな影響を及ぼし、AAC製造の必須の工程である(Isu N、Ishida H、Mitsuda L、「Influence of quartz particle size on the chemical and mechanical properties of autoclaved aerated concrete (I) tobermorite formation」、Cement and Concrete Research、V.25、No.2、243~248頁、1995;Alexanderson J、「Relations between structure and mechanical properties of autoclaved aerated concrete」、Cement and Concrete Research、V.9、No.4、507-514頁、1979)。
【0006】
AAC製造の主要成分は、SiO源としての珪砂、CaO源としての石灰及びセメントである。建築材料としてのAACの製造においては、原料混合物中のシリカ源として石英を使用することが十分に確立されている。石英は、蒸気養生中の化学反応に供されるシリカの主要部分を提供する。
【0007】
AACの主要な特徴は、材料の密度は低めであるにもかかわらず(多孔質)、高い強度を有することである。強度が比較的高いことの原因は、生成物中のトバモライト(tobermorite)型ケイ酸カルシウム水和物(CSH)相の量が多く、これらのCSH相が、AACの微細構造中の結合成分であることである。蒸気養生プロセスは、第1にシリカ原料を溶解させるために、第2にCSH形成の条件を確立するために必要とされる。蒸気養生時間及び温度の低減は、関連した経済的利点をもたらすであろう。
【0008】
異なるシリカ原料の溶解挙動は大きく異なる。石英の水溶性は比較的低く、溶解速度も比較的遅い。従って、石英をAACのシリカ源として使用する場合には、かなり高い温度、すなわち180℃を超えるTでの蒸気養生が必要である。しかしながら、石英に比べてより高い水溶性を有するシリカ源では、蒸気養生温度をより低くできる可能性がある。これは、エネルギー消費における利点、すなわち、より低い養生温度、より短い養生時間、より少ないバインダー(セメント及び石灰)の使用及びさらにはより広範囲の原料の使用につながるであろう。
【0009】
しかしながら、より高い水溶性を有することで知られるこれらの他の型のシリカ材料(例えば、非晶質のもの(珪質土、アルカリ-シリカガラス(alkali-silica glass)、水ガラス(water glass))又はクリストバライト(cristobalite))では、AAC製造に期待される利点、例えば、より短い養生時間又はより高い強度値又はより少ないバインダー含量の配合を、十分なレベルで達成することが今日までできていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、エネルギー消費が小さいプロセスで製造することができ、高い機械的強度を有するAACに対する需要が当該技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造に可溶性シリカ種を有するシリカ源を使用し、蒸気養生温度を低くし、さらにカルシウム/ケイ素モル比を低い値に設定すると、高い圧縮強度を示すオートクレーブ養生気泡コンクリートが得られることが見出された。
【0012】
本発明の要約
本発明は、オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、少なくとも12.5wt%のトバモライト含量及び少なくとも30wt%の非晶質CSH相含量を有するオートクレーブ養生気泡コンクリートに関する。
【0013】
さらに、本発明は、下記の工程を有する、先に記載した又は以下に記載するオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法に関する:
a) 水中にシリカ源及び酸化カルシウム源を有する懸濁液であって、上記シリカ源が少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有する懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)の懸濁液から高度多孔性グリーン固体(green highly porous solid)を製造する工程;
c) 工程b)の高度多孔性グリーン固体を、飽和水蒸気の存在下で、100℃~170℃の温度にて蒸気養生する工程;及び、
d) 上記オートクレーブ養生気泡コンクリートを回収する工程。
【0014】
本発明の可溶性シリカ種は、25℃及びpH8.5において石英よりも高い水溶性(ppm)を有するシリカ種である。
【0015】
上記可溶性シリカ種は、25℃及びpH8.5において、少なくとも4.0ppmの、より好ましくは少なくとも5.0ppmの、最も好ましくは少なくとも20ppmの水溶性を有することが好ましい。
【0016】
上記25℃及びpH8.5における水溶性の上限は、1000ppm、例えば500ppmであることができる。
【0017】
石英は、25℃及びpH8.5において2.8ppmの水溶性を有する。
クリストバライトは、25℃及びpH8.5において6ppmの水溶性を有する。
トリジマイト(Tridymite)は、25℃及びpH8.5において4.5ppmの水溶性を有する。
スティショバイト(Stishovite)は、25℃及びpH8.5において11ppmの水溶性を有する。
非晶質シリカの極小粒子又は多孔質凝集体(porous aggregates)は、25℃において100~130ppmの水溶性を有する。
シリカガラスは、25℃において39ppmの水溶性を有する。
水ガラスは、25℃において60~90ppmの水溶性を有する。
【0018】
なおさらに、本発明は、少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有するシリカ源の、オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造のための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な記述
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、少なくとも12.5wt%の、より好ましくは少なくとも13.0wt%の、なおより好ましくは少なくとも13.5wt%の、最も好ましくは少なくとも14.0wt%のトバモライト含量を有する。
【0020】
トバモライト含量の上限は、通常、70.0wt%を超えず、好ましくは50.0wt%を超えない。
【0021】
トバモライト含量を測定するために、Rietveld法及び10%のZnOを内部標準として用いて、XRD定量分析を行った。
【0022】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、少なくとも30wt%の、好ましくは少なくとも35wt%の、より好ましくは少なくとも40wt%の、最も好ましくは少なくとも50wt%の非晶質CSH相含量を有する。
【0023】
非晶質CSH相含量の上限は、好ましくは70wt%を超えず、より好ましくは65wt%を超えず、なおより好ましくは60wt%を超えず、最も好ましくは58wt%を超えない。
【0024】
非晶質CSH相含量は、Rietveld法を用いて、XRD定量分析により決定される。
【0025】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、好ましくは20wt%以下の、より好ましくは17wt%以下の、なおより好ましくは14wt%以下の、最も好ましくは12wt%以下の残留石英含量を有する。
【0026】
残留石英構造含量の下限は、通常、少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも8wt%である。
【0027】
残留石英含量は、XRD定量分析により決定され、Rietveld法を用いて行われた。
【0028】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、オートクレーブ養生気泡コンクリートの総重量に対して、5.0wt%以下の、好ましくは4.0wt%以下の残留可溶性シリカ種の相の含量を好ましくは有する。
【0029】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくはいかなる残留可溶性シリカ種をも含有しない。特定の態様において、残留可溶性シリカ種含量の下限は、0.1wt%、例えば0.2wt%であることができる。
【0030】
残留可溶性シリカ種含量は、XRD定量分析により決定され、Rietveld法を用いて行われた。
【0031】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、DIN 51004に従う示差熱分析(DTA)において、835~843℃の温度にて、ウォラストナイト(wollastonite)(CaSiO)形成のピークを好ましくは示す。
【0032】
本発明のオートクレーブ養生気泡コンクリートは、200kg/m~800kg/mのすべての密度で製造することができる。
【0033】
所定の密度において、本発明のオートクレーブ養生気泡コンクリートは非常に高い圧縮強度を示すことが見出された。
【0034】
密度は、乾燥条件で、DIN EN 772-13に従って測定される。圧縮強度はDIN EN 772-1に従って測定される。
【0035】
205kg/m~250kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも1.5MPaの、好ましくは少なくとも1.7MPaの、より好ましくは少なくとも1.9MPaの、最も好ましくは少なくとも2.0MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0036】
200kg/m~250kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で5.0MPa、好ましくは最大で4.5MPaであることができる。
【0037】
255kg/m~300kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも2.0MPa、好ましくは少なくとも2.2MPa、より好ましくは少なくとも2.4MPa、最も好ましくは少なくとも2.6MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0038】
250kg/m~300kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で5.5MPa、好ましくは最大で5.0MPaであることができる。
【0039】
305kg/m~350kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも2.5MPa、好ましくは少なくとも2.7MPa、より好ましくは少なくとも3.0MPa、最も好ましくは少なくとも3.3MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0040】
300kg/m~350kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で6.0MPa、好ましくは最大で6.5MPaであることができる。
【0041】
355kg/m~400kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも3.0MPa、好ましくは少なくとも3.4MPa、より好ましくは少なくとも3.7MPa、最も好ましくは少なくとも4.1MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0042】
350kg/m~400kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で6.5MPa、好ましくは最大で6.0MPaであることができる。
【0043】
405kg/m~450kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも3.7MPa、好ましくは少なくとも4.1MPa、より好ましくは少なくとも4.5MPa、最も好ましくは少なくとも4.9MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0044】
400kg/m~450kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で7.0MPa、好ましくは最大で6.5MPaであることができる。
【0045】
455kg/m~500kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも4.5MPa、好ましくは少なくとも5.0MPa、より好ましくは少なくとも5.5MPa、最も好ましくは少なくとも5.9MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0046】
450kg/m~500kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で8.0MPa、好ましくは最大で7.5MPaであることができる。
【0047】
505kg/m~550kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも5.3MPa、好ましくは少なくとも5.9MPa、より好ましくは少なくとも6.5MPa、最も好ましくは少なくとも7.1MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0048】
500kg/m~550kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で9.0MPa、好ましくは最大で8.5MPaであることができる。
【0049】
555kg/m~600kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも6.3MPa、好ましくは少なくとも7.0MPa、より好ましくは少なくとも7.7MPa、最も好ましくは少なくとも8.4MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0050】
550kg/m~600kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で11.0MPa、好ましくは最大で10.5MPaであることができる。
【0051】
605kg/m~650kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも7.5MPa、好ましくは少なくとも8.3MPa、より好ましくは少なくとも9.1MPa、最も好ましくは少なくとも10.0MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0052】
600kg/m~650kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で13.0MPa、好ましくは最大で12.5MPaであることができる。
【0053】
655kg/m~700kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも8.8MPa、好ましくは少なくとも9.8MPa、より好ましくは少なくとも10.8MPa、最も好ましくは少なくとも11.7MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0054】
650kg/m~700kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で15.0MPa、好ましくは最大で14.5MPaであることができる。
【0055】
705kg/m~800kg/mの密度において、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、少なくとも12.1MPa、好ましくは少なくとも13.5MPa、より好ましくは少なくとも14.8MPa、最も好ましくは少なくとも16.2MPaの圧縮強度を好ましくは有する。
【0056】
750kg/m~800kg/mの密度に対する圧縮強度の上限は、最大で20.0MPa、好ましくは最大で19.5MPaであることができる。
【0057】
本発明のオートクレーブ養生気泡コンクリートは、DIN 20000-404に従って密度クラス及び圧縮強度クラスに分類することができる:
【0058】
密度クラス0.35kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス2に合致する。
密度クラス0.40kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス2に合致する。
密度クラス0.45kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス2、より好ましくは圧縮強度クラス4に合致する。
密度クラス0.50kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス4に合致する。
密度クラス0.55kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス4に合致する。
密度クラス0.60kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス4、より好ましくは圧縮強度クラス6に合致する。
密度クラス0.65kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス6に合致する。
密度クラス0.70kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス6、より好ましくは圧縮強度クラス8に合致する。
密度クラス0.80kg/dmにおいて、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは圧縮強度クラス8に合致する。
【0059】
本発明のオートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは上記の特性のすべての組み合わせを示し、最も好ましくは上記のすべての特性を示す。
【0060】
上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、先に記載した又は以下に記載する本発明の方法により好ましくは製造される。
【0061】
さらなる側面において、本発明は、好ましくは、下記の工程を有する、先に記載した又は以下に記載するオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造方法に関する:
a) 水中にシリカ源及び酸化カルシウム源を有する懸濁液であって、上記シリカ源が少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有する懸濁液を調製する工程;
b) 工程a)の懸濁液から高度多孔性グリーン固体を製造する工程;
c) 工程b)の高度多孔性グリーン固体を、飽和水蒸気の存在下で、100℃~170℃の温度にて蒸気養生する工程;及び、
d) 上記オートクレーブ養生気泡コンクリートを回収する工程。
【0062】
上記懸濁液は、好ましくは、シリカ源及び酸化カルシウム源を水と混合することにより製造される。
【0063】
上記シリカ源及び酸化カルシウム源は、好ましくは、固体形態、好ましくは粒子形態で上記懸濁液中に導入される。
【0064】
上記シリカ源は、通常、1μm~500μm、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~50μmの粒子サイズd50を有する固体粒子の形態である。
上記シリカ源は、通常、0.1μm~100μm、好ましくは0.5μm~50μm、より好ましくは1.0μm~20μmの粒子サイズd10を有する。
上記シリカ源は、通常、5μm~750μm、好ましくは15μm~500μm、より好ましくは25μm~250μmの粒子サイズd90を有する。
【0065】
上記酸化カルシウム源は、通常、0.5μm~300μm、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは5μm~50μmの粒子サイズd50を有する固体粒子の形態である。
上記酸化カルシウム源は、通常、0.1μm~100μm、好ましくは0.5μm~50μm、より好ましくは0.8μm~20μmの粒子サイズd10を有する。
上記酸化カルシウム源は、通常、2μm~500μm、好ましくは5μm~300μm、より好ましくは15μm~200μmの粒子サイズd90を有する。
【0066】
上記懸濁液中の固体に対する水の重量比は、好ましくは、0.2~1.5、より好ましくは0.4~1.5、最も好ましくは0.5~0.9の範囲内である。
【0067】
上記シリカ源は少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有し、このシリカ種は、石英よりも高い溶解性を有し、石英よりも高い溶解速度をも有する。
【0068】
好ましくは、上記シリカ源は、50~100wt%、より好ましくは60~100wt%、最も好ましくは70~100wt%の可溶性シリカ種を有する。
【0069】
一態様において、上記シリカ源は可溶性シリカ種からなる。
【0070】
別の態様において、上記シリカ源は、可溶性シリカ種に加えて石英を有することができる。
【0071】
石英に対する上記可溶性シリカ種の重量比は、上記シリカ源の総重量に基づいて、50:50~100:0、好ましくは60:40~100:0、最も好ましくは70:30~100:0である。
【0072】
上記可溶性シリカ種は、好ましくは、石英よりも高い溶解性を有する任意のシリカ種、例えば、クリストバライト、トリジマイト、スティショバイト、飛灰(fly ash)、及び、非晶質シリカ種、例えば、非晶質シリカの粒子又は多孔質凝集体、珪質土、シリカガラス、アルカリ-シリカガラス及び水ガラス、並びにこれらの混合物から選択される。非晶質シリカ種、例えば、非晶質シリカの粒子又は多孔質凝集体、珪質土、シリカガラス、アルカリ-シリカガラス、水ガラス及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0073】
上記酸化カルシウム源は、好ましくは、セメント、生石灰(burnt lime)、消石灰(hydrated lime)及びこれらの混合物から選択される。
【0074】
上記懸濁液中のシリカ源及び酸化カルシウム源の量は、好ましくは、上記懸濁液のカルシウム/ケイ素モル比(C/Sモル比)が、0.50~0.80、より好ましくは0.55~0.75、最も好ましくは0.60~0.70となるように選択される。
【0075】
上記懸濁液中の固体物質は、好ましくは、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、20~50wt%、より好ましくは25~45wt%、最も好ましくは27~42wt%の可溶性シリカ種を有する。
【0076】
上記懸濁液中の固体物質は、好ましくは、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、0~20wt%、より好ましくは0~15wt%、最も好ましくは0~12wt%の石英を有する。
【0077】
上記懸濁液中の固体物質は、好ましくは、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、20~50wt%、より好ましくは25~45wt%、最も好ましくは27~42wt%のセメントを有する。
【0078】
上記懸濁液中の固体物質は、好ましくは、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、0~20wt%、より好ましくは1~15wt%、最も好ましくは2~12wt%の石灰、例えば、生石灰又は消石灰又はこれらの混合物を有する。
【0079】
上記懸濁液の固体物質は、上記シリカ源及び酸化カルシウム源以外のさらなる成分をさらに有することができる。
【0080】
上記懸濁液中の固体物質は、好ましくは、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、0~15wt%、より好ましくは1~12wt%、最も好ましくは2~10wt%の硬石膏(anhydrite)を有する。
【0081】
上記硬石膏は、通常、蒸気養生中に触媒として作用する。
【0082】
上記懸濁液中の固体物質は、通常、所望の密度を達成するために十分な量のアルミニウム源をさらに有する。この量は、総固体物質の0.2wt%未満である。
【0083】
上記アルミニウム源は、上記酸化カルシウム源とともに、高度多孔性グリーン固体の製造中における気泡の化学的形成に寄与し、得られるオートクレーブ養生気泡コンクリートの密度の調節が行われる。
【0084】
上記懸濁液中の固体物質は、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、最大で25wt%、好ましくは最大で20wt%、より好ましくは最大で15wt%の再利用粉末化(recycled pulverized)オートクレーブ養生気泡コンクリートをさらに有することができる。
【0085】
上記再利用粉末化オートクレーブ養生気泡コンクリートが存在する場合には、それは、そのケイ素のモル量に従って、上記シリカ源にカウントされる。
【0086】
上記懸濁液中の固体物質は、上記懸濁液中の固体物質の総重量に対して、最大で25wt%、より好ましくは最大で20wt%、最も好ましくは最大で15wt%の1又は2種以上のフィラー、例えば炭酸カルシウムをさらに有することができる。
【0087】
上記フィラーが存在する場合には、通常、それは蒸気養生の間不活性であり、いかなるイオンをも放出しない。
【0088】
プロセス工程b)において、高度多孔性グリーン固体は、プロセス工程a)の懸濁液から形成される。
【0089】
上記高度多孔性グリーン固体の形成のために、上記懸濁液を、好ましくはモールド(mould)、好ましくは油を塗ったモールド中に注ぐ。
【0090】
上記懸濁液は、通常、モールド内で発泡し、膨張するが、これは、アルミニウム源から気泡が形成される化学反応ためである。
【0091】
発泡時間の後2~5時間の間に、懸濁液は、通常、硬化して気泡コンクリートケークとなり、これは高度多孔性グリーン固体のブロックに切り分けることができる。
【0092】
プロセス工程b)の高度多孔性グリーン固体は、次いで、プロセス工程c)において、飽和水蒸気の存在下で、100℃~170℃の温度にて蒸気養生される。
【0093】
蒸気養生工程の温度は、好ましくは110℃~165℃、より好ましくは115℃~160℃、なおより好ましくは120℃~155℃、さらにより好ましくは125℃~150℃、最も好ましくは130℃~145℃である。
【0094】
蒸気養生の間、圧力は飽和水蒸気雰囲気中において蒸気養生温度に対して調整される:
100℃の温度に対して、圧力は1.0bar(a)である。
111℃の温度に対して、圧力は1.5bar(a)である。
170℃の温度に対して、圧力は8.0bar(a)である。
【0095】
養生時間は、通常、2~15時間、好ましくは3~12時間の範囲内である。
【0096】
蒸気養生工程c)は、好ましくはオートクレーブ容器内で行われる。
【0097】
水蒸気は好ましくは蒸気発生器により供給される。
【0098】
蒸気養生工程の後、得られたオートクレーブ養生気泡コンクリートを回収する。
【0099】
当該オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは、先に記載した又は以下に記載するすべての特性を示す。
【0100】
なお別の側面において、本発明は、少なくとも50wt%の可溶性シリカ種を有するシリカ源の、オートクレーブ養生気泡コンクリートの製造のための使用に関する。
【0101】
この点に関し、上記シリカ源及び上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、好ましくは、先に記載した又は以下に記載するすべての態様のシリカ源及びオートクレーブ養生気泡コンクリートに関する。
【0102】
好ましくは、上記オートクレーブ養生気泡コンクリートは、先に記載した又は以下に記載する本発明の方法により製造されたオートクレーブ養生気泡コンクリートである。
【0103】
驚くべきことに、可溶性シリカ種を有するシリカ源を用いると、低めの温度の温和なオートクレーブ条件を用い、さらにカルシウム/ケイ素モル比を低い値に設定した場合、著しく高い圧縮強度を有するオートクレーブ養生気泡コンクリートが得られることが見出された。
【0104】
高い圧縮強度の理由は、上記オートクレーブ養生気泡コンクリート中のトバモライトの量が多めであることである。
【0105】
この点に関し、可溶性シリカ種を有するシリカ源を使用した場合、トバモライト形成が養生条件に依存することが見出された。シリカ源としての石英又は飛灰からオートクレーブ養生気泡コンクリートを製造する場合に通常使用される180~191℃付近の高い蒸気養生温度では、少量のトバモライトのみが形成され、低めの圧縮強度を有するオートクレーブ養生気泡コンクリートとなる。
【0106】
従って、養生温度及び圧力の低減は、可溶性シリカ種を有するシリカ源から、高い圧縮強度を有するオートクレーブ養生気泡コンクリートを得るための決定的な手段である。
【0107】
理論に縛られることなく述べれば、非晶質シリカ種等の可溶性シリカ種は、蒸気養生の間に溶解させるのに必要なエネルギーが石英よりも低いため、高温においては、可溶性シリカ種は石英よりも速く溶解し、これはマトリクスへの多量のケイ素の供給を引き起こし、初期に形成されるCSH相のC/Sモル比が低くなる過ぎるためトバモライト形成を阻害すると考えられている。
【0108】
この点に関し、CSH相中のC/Sモル比は2つの因子に依存する。第1に養生温度である。これは、上記したように、養生温度が低い程、初期に形成されるCSH相におけるC/S比が高くなるからである。第2に、出発材料、すなわち上記懸濁液中のC/Sモル比である。
【0109】
従って、プロセス工程a)の懸濁液中の固体物質として使用する原料混合物中の上記モル比を、上記の関係に適合させることも示唆される。
【0110】
この点に関し、170℃又はそれより低い養生温度で、プロセス工程a)の懸濁液中の固体物質として使用する原料混合物中において0.80以下の低いC/Sモル比を使用した場合に、良好な結果が得られることが見出された。
【0111】
従って、得られるオートクレーブ養生気泡コンクリートの高い圧縮強度は、低密度でありながらなお高い圧縮強度を有するオートクレーブ養生気泡コンクリート製品の製造を可能にし、これは得られるオートクレーブ養生気泡コンクリート製品の密度スペクトルを広げることになる。
【0112】
本発明の利点は下記の通りである:
- より低密度の新規なオートクレーブ養生気泡コンクリート製品が入手可能となり、これにより熱絶縁特性が改善されたオートクレーブ養生気泡コンクリート製品の製造が可能になる;
- コンクリート建築及びパネル用の各密度グレードにおいて圧縮強度が増大した新規なオートクレーブ養生気泡コンクリート製品が入手可能となる;
- バインダー(セメント及び石灰)の配合をより少なくして通常のオートクレーブ養生気泡コンクリート製品を製造することができる;
- より広い範囲のシリカ材料、特に非晶質シリカ種をオートクレーブ養生気泡コンクリートの製造に使用することができ、従って石英と置き換えることができる;
- 珪砂の省資源化が達成される;
- 高含量の非晶質シリカを有する産業廃棄物の再使用が可能となる;
- 蒸気養生中の温度及び圧力が低減されるため、エネルギー消費を減らすことができる;
- エネルギー消費の低減及びバインダー量の低減によりCO排出の減少が確立される。
【実施例
【0113】
1. 測定方法
a) 圧縮強度
圧縮強度はDIN EN 772-1に従って測定した。10x10x10cm3の立方体に切り分け、含水量が6±2質量%になるまで50℃で数日乾燥した後において。
【0114】
b) XRD分析
トバモライト、非晶質CSH相、残留石英及び可溶性シリカ種の残留相の量の測定については、Cu-Kα照射及びSilicon Strip Detektor(LynxEye)を備えたBruker D2 Phaser回折計を用いて、XRD分析を行った。すべての試料を、5-65°の2θ範囲にわたって、0.02°のステップサイズ及び4s/ステップで測定した。定性XRD分析は、国際回折データセンター(International Center for Diffraction Data)(ICDD)のデータベースに基づいて、DIFFRAC.EVAソフトウェアを用いて行った。XRD定量分析は、Rietveld法に基づき、DIFFRACplus TOPAS V 4.2ソフトウェア及び10%のZnOを内部標準として用いて行った。構造ファイル(Structure files)は、無機結晶構造データベース(Inorganic Crystal Structure Database)(ICSD)に基づいて同定した。XRD-Mill McCroneを用いたウェットミリング法(Wet milling method)を試料の調製について行った。各試料を、試料調整及びXRD測定を含めて3回測定し、値の平均をレポートした。
【0115】
c) 密度
乾燥仮比重(Dry bulk density)は、上記の立方体を105±5℃の温度にてオーヴン中で乾燥して恒量とした後、DIN EN 772-13に従って測定した。
【0116】
d) 示差熱分析(DTA)
DTA-TG測定を含む熱分析は、23~1200℃の温度範囲にわたって、10℃/分の加熱速度で、NETZSCH STA 409 CDを用いて行った。
【0117】
2. 懸濁液の調製
実施例、Inv Ex1並びにCE2、CE3及びCE4のオートクレーブ養生気泡コンクリート(AAC)ブロックの製造には、下記の表1に記載した固体成分、Comp1及びComp2を有する2種の懸濁液を調合した。
【0118】
Comp2の参照配合は、産業製造AACの配合比に類似のP4-500グレードに合わせた。これは、50~30%の石英、40~20%のセメント、5~15%の石灰、5~10%の硬石膏、10~20%の回収粉末化AAC及び0.05~0.09のアルミニウムペーストからなる。Comp1の本発明の懸濁液においては、50~80wt%の石英を、可溶性シリカ種としての珪藻土(DE)で置き換えた。
【0119】
アルミニウムの値は500kg/mの密度が得られるように設定した。固体に対する水の重量比は、懸濁液の流動性が適切となるように調節した。C/Sモル比は0.63~0.64の範囲に調節した。比較を容易にするために、すべてのシリカ源は、類似の粒子サイズ分布を有するように選択した。珪砂は、3.69μmのd10、20.4μmのd50及び65.6μmのd90の粒子分布を有していた。珪藻土は、8.01μmのd10、21.9μmのd50及び59.1μmのd90の粒子分布を有していた。セメントは、2μmのd10、10μmのd50及び27μmのd90の粒子分布を有していた。
【0120】
【表1】
【0121】
3. オートクレーブ養生気泡コンクリートブロックの製造
可溶性シリカ種及び石英を水と混合した。次いで、石灰、セメント及び硬石膏を加え、混合物を2分間撹拌した。次いで、アルミニウム懸濁液を加え、混合を30秒間繰り返した。スラリーをモールド中に注いだ。試料を室温で3時間貯蔵した。離型後、試料を、オートクレーブ中で、T=130~195℃の間の種々の温度及びp=2.8~14bar(a)の対応する蒸気圧にて、3~12時間の一定の範囲の間養生した。使用したオートクレーブは小型のもの(1,5m)であるが、外部上記供給を有する産業用オートクレーブと同等である。試料をオートクレーブから取り出した後、この試料を10x10x10cmの立方体に切り分け、含水量が6±2質量%になるまで50℃で数日間乾燥した。
【0122】
4. 試験及び定性分析
DIN EN 772-1に従う圧縮強度、X線回折(XRD)分析、走査電子顕微鏡(SEM)及び熱分析を含む種々の測定を行った。次の工程では、乾燥仮比重をDIN EN 772-13に従って測定した。この目的のために、上記立方体を、オーヴン中で105±5℃の温度にて、恒量となるまで乾燥した。定性的XRD分析を国際回折データセンター(ICDD)のデータベースに基づいて行った。XRD定量分析は、Rietveld法、及び、内部標準として10%のZnOを用いて行った。
【0123】
表2に、オートクレーブ条件、及び、AAC試料、Inv Ex1並びにCE2、CE3及びCE4の化学及び機械的特性を示す。
【0124】
この点において、AAC試料Inv Ex1は、本発明の方法を用いて、Comp1から製造した本発明のAAC試料である。AAC試料CE2は、より高い養生温度及び圧力を使用した方法を用いて、Comp1から製造した参照AACである。AAC試料CE3は、より高い養生温度及び圧力を使用した方法を用いて、Comp2から製造した本発明のAAC試料である。AAC試料CE4は、本発明の方法を用いて、Comp2から製造した参照AACである。
【0125】
【表2】