IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特許7500773工事支援装置、工事支援方法、および、工事支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】工事支援装置、工事支援方法、および、工事支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240610BHJP
【FI】
G06Q50/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022569691
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007504
(87)【国際公開番号】W WO2022130652
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/047539
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】笠原 孝保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】田山 宗徳
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/100678(WO,A1)
【文献】特開2009-282804(JP,A)
【文献】特開平11-104984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場における作業対象物および作業ロボットの状態を示す作業環境について、計画段階での作業環境である現地計画環境をもとにした、3次元空間の作業環境での時間変化に対応した工事に関するシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを作成するシミュレータと、
実行段階での作業環境である現地実行環境を測定した結果、前記現地計画環境から前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかを検出する環境差分検出部と、を備え、
前記環境差分検出部によって前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかがが検出されたときには、前記シミュレータは、前記現地実行環境をもとにしたシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを再計画ることを特徴とする
工事支援装置。
【請求項2】
前記シミュレータは、前記現地実行環境を模型として形成したモックアップ実行環境から、前記現地実行環境をもとにしたシミュレーション処理を動作させるためのデータモデルを取得することを特徴とする
請求項1に記載の工事支援装置。
【請求項3】
前記シミュレータは、
前記現地計画環境での前記作業ロボットの動作を示す映像データと、前記現地実行環境での前記作業ロボットの動作を示す映像データとを並べて表示するとともに、
前記現地計画環境での前記作業計画データを示すガントチャートと、前記現地実行環境での前記作業計画データを示すガントチャートとを並べて表示することを特徴とする
請求項1に記載の工事支援装置。
【請求項4】
前記作業ロボットの動作ログから各部位の累積損傷や累積照射量を推定して、前記作業ロボットのメインテナンス計画を更新するメインテナンス装置を更に備える、
請求項1に記載の工事支援装置。
【請求項5】
前記メインテナンス装置は、
前記作業ロボットのメインテナンスに係る手順を端末に表示させる試験手順表示部と、
前記作業ロボットの試験結果を判定する試験結果判定部と、を備える、
請求項に記載の工事支援装置。
【請求項6】
前記メインテナンス装置は、
前記作業ロボットに対する試験手順を端末に表示する試験手順表示部と、
前記作業ロボットの試験結果を可視化する試験結果可視化部と、
を更に備える、
請求項に記載の工事支援装置。
【請求項7】
前記メインテナンス装置は、
前記作業ロボットに対する部品交換作業や修理作業の指示を端末に表示させる作業指示部、
を更に備える、請求項に記載の工事支援装置。
【請求項8】
前記作業ロボットは、自身の動作ログから各部位の累積損傷や累積照射量を推定して、前記作業ロボットのメインテナンス計画を更新する、
請求項1に記載の工事支援装置。
【請求項9】
前記作業計画データに対する承認の入力を受けて前記作業計画データをもとにした前記作業ロボットの動作を許可するとともに、承認後の前記作業計画データのデータ書き換えを禁止するデータロック処理を行うデータ管理装置を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の工事支援装置。
【請求項10】
工事支援装置はシミュレータと環境差分検出部を有しており、
前記シミュレータは、
作業現場における作業対象物および作業ロボットの状態を示す作業環境について、計画段階での作業環境である現地計画環境をもとにした、3次元空間の作業環境での時間変化に対応した工事に関するシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを作成し、
前記環境差分検出部は、実行段階での作業環境である現地実行環境を測定した結果、前記現地計画環境から前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかを検出し、
前記環境差分検出部によって前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかがが検出されたときには、前記シミュレータは、前記現地実行環境をもとにしたシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを再計画することを特徴とする
工事支援方法。
【請求項11】
コンピュータに、
作業現場における作業対象物および作業ロボットの状態を示す作業環境について、計画段階での作業環境である現地計画環境をもとにした、3次元空間の作業環境での時間変化に対応した工事に関するシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを作成する手順、
実行段階での作業環境である現地実行環境を測定した結果、前記現地計画環境から前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかを検出したときには、前記現地実行環境をもとにしたシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための前記作業計画データを再計画する手順、
を実行させるための工事支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事支援装置、工事支援方法、および、工事支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場における施工管理に係る情報は、施工図、施工計画書、施工記録など様々な種類がある。これらの情報を管理部門と現場の作業員とで円滑にやり取りすることが、工事の進捗において重要である。
そこで、特許文献1には、施工管理に必要な図面や書類を一元管理することで、現場で必要な図面や書類がいつでも簡単に引き出せる建築現場施工管理一元化システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-92082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解体現場のがれきの大きさや、そのがれきを除去するための重機の位置など、建築現場の状態を示す作業環境は、時々刻々と変化する。この作業環境の変化には、あらかじめ解体計画に盛り込んである想定内の変化だけでなく、計画時には想定していなかった変化も存在する。
【0005】
以下、想定外の環境変化の事例を例示する。
(事例1)建築物の地盤が安定したものとして計画していたが、実際は土砂崩れなどにより建築物付近の足場が不安定になったり、建築物付近へと移動する道路が使用できなくなったりしてしまった。
(事例2)災害によりがれき化した建築物について、外部から目視可能ながれきを想定して解体計画を立案したが、実際に解体途中に内部から予期せぬ大きながれきが発見されてしまった。
(事例3)古い建築物なので設計図も古いものしか残されておらず、実際に解体途中に設計図には記載されない増改築が発見されてしまった。
【0006】
このような想定外の環境変化を原因として、作業を一時中断して計画をやり直す手戻りが発生する。しかし、特許文献1などの従来の施工管理システムでは、「計画→実行」といった想定内の安定した工事を対象とした業務フローしか扱っておらず、環境変化にロバストなシステムは提供されていなかった。よって、管理機関と現場作業とのやりとりには時間がかかってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、想定外の環境変化が発生する工事現場でも、工事の進捗遅延を抑制することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の工事支援装置は以下の特徴を有する。
本発明の工事支援装置は、作業現場における作業対象物および作業ロボットの状態を示す作業環境について、計画段階での作業環境である現地計画環境をもとにした、3次元空間の作業環境での時間変化に対応した工事に関するシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを作成するシミュレータと、実行段階での作業環境である現地実行環境を測定した結果、前記現地計画環境から前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかを検出する環境差分検出部と、を備え、前記環境差分検出部によって前記作業対象物の配置の差分、前記作業対象物の体積の差分、前記作業対象物に対する処理時間の差分、前記作業ロボットの動作の差分のうち何れかがが検出されたときには、前記シミュレータは、前記現地実行環境をもとにしたシミュレーション処理により、前記作業ロボットの動作データを規定するための作業計画データを再計画することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、想定外の環境変化が発生する工事現場でも、工事の進捗遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に関する工事支援システムの構成図である。
図2】本実施形態に関する工程管理装置の動作を示すフローチャートである。
図3】本実施形態に関する操作エリアシステムの構成図である。
図4A】本実施形態に関する施工図・要領書データベースの格納データの一例である。
図4B】本実施形態に関する施工図・要領書データベースの格納データの一例である。
図5A】本実施形態に関する施工図・要領書データベースの格納データの一例である。
図5B】本実施形態に関する施工図・要領書データベースの格納データの一例である。
図5C】本実施形態に関する施工図・要領書データベースの格納データの一例である。
図6】本実施形態に関する作業環境システムの構成図である。
図7】本実施形態に関するデータ管理装置の構成図である。
図8】本実施形態に関する遠隔作業管理サーバの構成図である。
図9】本実施形態に関する工事支援システムを構成する各装置のハードウェア構成図である。
図10】本実施形態に関する遠隔ロボット動作計画システムの全体動作を示すフローチャートである。
図11】本実施形態に関する映像再生保存部が出力する運用画面図の概要である。
図12A】本実施形態に関する映像再生保存部が出力する図11の詳細を示す運用画面図である。
図12B】本実施形態に関する映像再生保存部が出力する図11の詳細を示す運用画面図である。
図12C】本実施形態に関する映像再生保存部が出力する図11の詳細を示す運用画面図である。
図13】本実施形態に関する現地計画環境での計画処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】本実施形態に関するモックアップ計画環境での計画処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】本実施形態に関する現地実行環境での実行処理の詳細を示すフローチャートである。
図16】本実施形態に関するモックアップ実行環境での実行処理の詳細を示すフローチャートである。
図17】本実施形態に関する現地実行環境でのシミュレーション処理の詳細を示すフローチャートである。
図18】本実施形態に関する図16のモックアップ実行環境での実行処理の具体例を示すフローチャートである。
図19】本実施形態に関する現地実行環境での現地作業を実行する処理の詳細を示すフローチャートである。
図20A】本実施形態に関するモックアップ試験結果データベースの登録データの一例を示すテーブルである。
図20B】本実施形態に関するモックアップ試験結果データベースの登録データの一例を示すテーブルである。
図20C】本実施形態に関するモックアップ試験結果データベースの登録データの一例を示すテーブルである。
図21A】本実施形態に関するモックアップ試験結果データベースの登録データの一例を示す説明図である。
図21B】本実施形態に関するモックアップ試験結果データベースの登録データの一例を示す説明図である。
図22A】本実施形態に関する図20Aから図20C図21A図21Bの登録データをもとにした環境差分の判定処理の一例を示す説明図である。
図22B】本実施形態に関する図20Aから図20C図21A図21Bの登録データをもとにした環境差分の判定処理の一例を示す説明図である。
図22C】本実施形態に関する図20Aから図20C図21A図21Bの登録データをもとにした環境差分の判定処理の一例を示す説明図である。
図23】本実施形態に関する図22Aから図22Cの環境差分の判定処理に対する後処理を示すフローチャートである。
図24】本実施形態に関するモックアップ実行環境でのモックアップ試験を実行する処理の詳細を示すフローチャートである。
図25】本実施形態に関する映像再生保存部が図11の運用画面図を生成する処理の詳細を示すフローチャートである。
図26】本実施形態に関する図15の現地実行環境での実行処理に対して、ロボット動作の差分検知処理を追加したフローチャートである。
図27A】本実施形態に関する図26のロボット動作の差分検知処理に用いられる画面図である。
図27B】本実施形態に関する図26のロボット動作の差分検知処理に用いられる画面図である。
図28】データ管理装置を導入する前の煩雑な承認フローを示す図である。
図29】本実施形態に関するデータ管理装置を導入することで、図28の承認フローが一元化されたことを示す図である。
図30】本実施形態の第1変形例に関する工事支援システムの構成図である。
図31】操作エリアシステムの構成を示す図である。
図32A】ロボットログのうち、動作ログを示す図である。
図32B】ロボットログのうち、位置情報ログを示す図である。
図32C】ロボットログのうち、エラーログを示す図である。
図33】作業エリアデータを示す図である。
図34】作業計画データを示す図である。
図35】メインテナンスシステムの構成を示すブロック図である。
図36】メインテナンス判定処理の概要を示すフローチャートである。
図37】メインテナンス判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図38】メインテナンス装置により表示される画面例を示す図である。
図39】単体機能試験架台に乗せて自動で試験する構成を示す図である。
図40】作業員の画面指示により試験およびメインテナンスを手動で実施する構成を示す図である。
図41】本実施形態の第2変形例に関する作業ロボットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本実施形態を説明する。
【0012】
図1は、工事支援システム9の構成図である。
工事支援システム9は、遠隔ロボット動作計画システム1と、データ管理装置30と、遠隔作業管理サーバ40と、工程管理装置5と、構外工場システム6とがネットワークで接続されて構成される。サーバ管理者91は、遠隔作業管理サーバ40を管理する。
遠隔ロボット動作計画システム1は、操作エリア内に構築される操作エリアシステム10と、作業環境内に構築される作業環境システム20とを有する。遠隔ロボット動作計画システム1では、操作エリアからの遠隔指示に従い、作業環境内で作業が行われる。
【0013】
プロジェクト責任者92(工事発注顧客と同義とする)は、IT端末を用いて、操作エリアシステム10に対して計画策定・更新を行うとともに、データ管理装置30に対して承認依頼、審査、承認を行う。ここで承認依頼、審査、承認を実施するプロジェクト責任者92は同一人物であっても、別の人物であってもよい。また、プロジェクト責任者92は、操作エリアシステム10およびデータ管理装置30から管理データの閲覧を行う。管理データとは、工事支援システム9が管理する工事に関するデータの総称であり、以下に例示される。
・作業環境を撮影した映像データや点群データ(以降は映像データと表記する)
・シミュレータ100(図3)によるシミュレーションの結果として出力される作業計画施工図(以下「施工図」)のデータ
・作業環境で行われる作業に関する作業要領書(以下「要領書」)のデータ
・工事支援システム9の各種データベースに格納されたデータ
なお、管理データとして例示した作業計画施工図と作業要領書は映像、シミュレーション動作から構成されるものとし、後述する各種データベースと連携したデジタルデータを示す。
【0014】
工事責任者93(工事実施メーカと同義とする)は、IT端末を用いて、操作エリアシステム10に対して計画策定・更新を行うとともに、データ管理装置30においてプロジェクト責任者92に対して承認依頼を行う。プロジェクト責任者92はデータ管理装置30において審査・承認を実施する。また、工事責任者93は、操作エリアシステム10およびデータ管理装置30からアクセス制限付きの管理データの閲覧を行う。
現場作業者94は、IT端末を用いて、作業環境システム20およびデータ管理装置30からアクセス制限付きの管理データの閲覧を行う。構内関連企業作業者95は、IT端末を用いて、作業環境システム20からアクセス制限付きの管理データの閲覧を行う。
【0015】
構外工場システム6の工事責任者96および装置準備メーカ97は、IT端末を用いて、工程管理装置5からアクセス制限付きの管理データの閲覧を行う。装置準備メーカ97は、構外工場システム6の工事責任者96からの指示に応じて作業を実行する。
これにより、構外工場(工事責任者)や地方工場(装置準備メーカ)も、アクセス制限付きの管理データ(工事情報)を即時に閲覧できる。また、工事の進捗状況に基づいて、構外工場システム6は、工場での準備や試験を更新できる。また、プロジェクト責任者92や工事責任者93、現場作業者94、構内関連企業作業者95、構外工場システム6の工事責任者96、装置準備メーカ97が同様のデータを共有することで、工事進捗における時間損失を最適化することができる。
【0016】
図2は、工程管理装置5の動作を示すフローチャートである。
操作エリアシステム10内のシミュレータ100(図3)は、3次元空間の作業環境での時間変化に対応した工事のシミュレーション(つまり、4次元作業シミュレーション)を行う。そして、シミュレータ100は、工事のシミュレーション結果から管理データ(施工図、要領書)を作成する(ステップS601)。そして、シミュレータ100は、要領書の作業工数計算結果を工程管理装置5へ提示する(ステップS602)。
工程管理装置5は、以下の管理データを各ユーザ階層に提示する(ステップS603)。
・更新版の工程データ
・各種データ(施工動画データ、画面の閲覧用データ、施工図、要領書)
これにより、工程管理装置5は、ステップS604にて集中監視室(プロジェクト責任者92などの工事発注者)に提示し、ステップS605にて現場事務所(工事責任者93)に提示し、ステップS606にて現場(現場作業者94)に提示すると、図2の処理を終了する。これにより、それぞれ最新の管理データが閲覧可能となる。
【0017】
図3は、操作エリアシステム10の構成図である。
操作エリアシステム10は、シミュレータ100と、データ更新装置11と、ロボ制御装置12と、シーケンス変換装置13と、複数ロボ協調制御装置14とを有する。データ更新装置11は、シミュレータ100内のデータベースを更新する。その他の装置の詳細は後記する。
【0018】
シミュレータ100は、管理データを格納するデータベースとして、シミュレーション上での仮想的な環境モデルを格納する環境データベース101と、シミュレーション上での仮想的なロボモデルを格納するロボモデルデータベース102と、作業進捗データベース103(説明は後記)と、施工図・要領書データベース104(詳細は図4A図4B図5Aから図5C)と、モックアップ試験結果データベース105とを有する。
モックアップ試験結果データベース105には、作業環境のモックアップ(模型)を用いた過去の試験の実績データとして、手順データベース、加工データベース、ロボ動作データベースなどの各種モックアップのデータベースが格納される(詳細は図20Aから図20C図21A図21B)。
【0019】
シミュレータ100は、処理部として、動作記録部111と、環境差分検出部112と、映像再生保存部113と、衝突判定部114と、作業工数計算部115と、複数ロボット協調動作部116とを有する。これらの各処理部の詳細は後記する。
【0020】
図4A図4Bは、施工図・要領書データベース104の格納データの一例である。
図4Aに示したUML(Unified Modeling Language)のシーケンス図201は、要領書として施工図・要領書データベース104に格納される。ここでは、作業員(複数)が各工程(資材搬入、資材設置、解体操作、廃棄物回収、資材片付け)を3体のロボットR1~R3と共同作業するシーケンスが例示される。このシーケンスは、グレーチング上をエリアAとし、ペデスタル下をエリアBとしたときに異なるエリアで異種ロボットが共同作業する場面で実行される。
【0021】
作業員が、ロボットR2に資材の搬入を指示すると(ステップS2011)、ロボットR2は資材を搬入する。ロボットR2は、資材の搬入が終了すると、ロボットR1にその旨を通知する(ステップS2012)。そして、作業員は、ロボットR2に資材の設置を指示する(ステップS2013)。ロボットR1は、資材の搬入終了が通知され、かつ資材の設置の指示を受けると、搬入された資材を設置する。
【0022】
次に作業員は、ロボットR3に設備の解体操作を指示すると(ステップS2014)、ロボットR3は設備を解体する。ロボットR3は、設備の解体が終了すると、ロボットR1にその旨を通知する(ステップS2016)。そして、作業員は、ロボットR1に廃棄物の回収を指示する(ステップS2016)。ロボットR1は、設備の解体終了が通知され、かつ廃棄物の回収の指示を受けると、廃棄物を回収する。ロボットR1は、廃棄物の回収が終了すると、ロボットR2にその旨を通知する(ステップS2018)。
【0023】
次に作業員は、ロボットR3に、資材の片づけを指示する(ステップS2017)。ロボットR2は、廃棄物の回収が通知され(ステップS2018)、かつ資材の片づけが指示されると、資材の片づけを開始する。
【0024】
図4Bに示したUMLのアクティビティ図202は、シーケンス図201と同様の内容を示す要領書として施工図・要領書データベース104に格納される。
作業員は、資材の搬入を指示したのち(ステップS2021)、資材の設置を指示する(ステップS2022)。ステップS2023にて、作業員は、不足資材があるならば、ステップS2021に戻り、資材の設置が完了したならば、ステップS2024に進む。
【0025】
次に作業員は、切断操作を指示したのち(ステップS2024)、切断片の格納を指示する(ステップS2025)。ステップS2026にて、作業員は、切断片の残りがあるならば、ステップS2024に戻り、切断片が無くなったならば、ステップS2027に進む。
【0026】
次に作業員は、廃棄物の回収を指示したのち(ステップS2027)、資材の片づけを指示する(ステップS2028)。ステップS2029にて、作業員は、片づけられていない資材が残っていたならば、ステップS2027に戻り、資材の片づけが完了したならば、図4Bのアクティビティを完了する。
【0027】
図5Aから図5Cは、施工図・要領書データベース104の格納データの一例である。
図5Aに示すリソース、シナリオ対応テーブル203は、要領書として施工図・要領書データベース104に格納される。リソース、シナリオ対応テーブル203は、作業ロボット22(図6)などのリソース(アクティビティ要素)と、そのリソースが実行するシナリオ(動作パターン)とを対応付ける。
なお、現場環境モデルの変更に対応して、対応アクティビティ要素(例えばリソースR3にシナリオA2を割り当てる旨の丸印)を更新してもよい。
【0028】
さらに、要領書は、対応アクティビティ要素の時間変化を示すグラフ204や、対応アクティビティ要素の動作軌跡を示すグラフ205を含んでいてもよい。
【0029】
図5Bは、対応アクティビティ要素の時間変化を示すグラフ204を示している。
このグラフ204の縦軸は、ロボットの関節角度を示し、横軸は動作時間を示している。粗い破線はロボットの第1関節の角度を示し、細かい破線はロボットの第2関節の角度を示している。
【0030】
図5Cは、対応アクティビティ要素の動作軌跡を示すグラフ205を示している。
グラフ205の縦軸は、エリアAの所定位置を原点とするY方向の座標を示し、横軸はX方向の座標を示している。障害物2051,2052は、エリアA内の障害物である。クローラ軌跡2053は、このロボットがエリアAを巡回したときの軌跡を示している。
【0031】
図6は、作業環境システム20の構成図である。作業環境には、時々刻々と変化する作業対象物21(図示はがれきの山)と、その作業対象物21を処理する作業ロボット22とが存在する。そして、作業環境システム20は、作業環境に関する各種情報を扱う処理装置として、環境地図生成装置23と、映像取得装置24と、ロボ動作監視装置25と、作業進捗記録装置26が備えられている。
環境地図生成装置23は、作業対象物21と作業ロボット22とを含めた作業環境の空間配置を地図データとして作成する。映像取得装置24は、作業環境の監視映像を撮影する。ロボ動作監視装置25は、作業ロボット22の動作データを監視する。
作業進捗記録装置26は、環境地図生成装置23と、映像取得装置24と、ロボ動作監視装置25とからそれぞれ取得したデータを、作業進捗に沿って時間軸で整理して、作業進捗データベース103に記録する。
【0032】
図3に戻り、映像再生保存部113は、映像取得装置24が撮影した作業環境の映像データを管理データとして作業員のIT端末で再生および保存させる。つまり、作業環境の映像データは、施工図・要領書に添付される管理データとなる。このように、作業員が目視で直感的に認識できる映像データを付加することで、作業員による環境認識性と、それに伴う作業効率性と、作業精度とを向上できる。なお、ここでは映像データで説明したが、映像データの一部として構成される画像データや、静止画像データであってもよい。
【0033】
衝突判定部114は、作業環境内で作業ロボット22と、その他の物体(作業対象物21だけでなく、建物の柱や壁なども)との間でシミュレータ100上での空間衝突を判定する。これにより、例えば、ロボットアームが壁にぶつからないような動作データを作成できる。
【0034】
シーケンス変換装置13は、責任者またはオペレータが人手で作成した図4の要領書などの作業シーケンス(人間が理解しやすいフォーマット)を、「アームを30cmだけ右に動かせ」などの作業制御シーケンス(ロボットが扱いやすいフォーマット)へとデータ変換する。これにより、オペレータ等の作業負担を低減できる。
ロボ制御装置12は、作業制御シーケンスに基づいて作業ロボット22を制御する。また、ロボ制御装置12は、オペレータから直接作業制御シーケンスのリモコン操作を受けて、作業ロボット22を制御してもよい。
【0035】
作業進捗データベース103には、作業進捗記録装置26が記録した作業進捗の時間情報として、単位作業あたりの作業時間(作業工数)の実測値が記録されている。動作記録部111は、仮想空間で作業ロボット22を模擬した仮想ロボットの動作を記録する。そして、作業工数計算部115は、動作記録部111が記録した作業のタイムスタンプを参照することで、単位作業あたりの作業時間(作業工数)の理論値を算出する。
これにより、シミュレータ100は、作業時間(作業工数)の理論値と実測値とを比較して、作業ロボット22の作業進捗(たとえば現在の解体工程は計画よりも5分遅れているなど)を求め、その作業進捗を管理データとして工程管理装置5などの外部に通知できる。
【0036】
図7は、データ管理装置30の構成図である。
データ管理装置30は、電子審査承認部31と、閲覧範囲制限部32と、データ保管部33と、承認行為後データロック部34と、版数更新部35とを有する。
データ保管部33には、遠隔ロボット動作計画システム1から提供される管理データが格納される。
電子審査承認部31は、データ保管部33の管理データに対してプロジェクト責任者92による電子審査および承認を受け付ける。閲覧範囲制限部32は、管理データに対して閲覧範囲をアクセス制限する。
承認行為後データロック部34は、電子審査承認部31によって承認された管理データに対して、書き込みができないようにデータロックする。版数更新部35は、電子審査承認部31によって承認された管理データごとに、データが古い順に版数を割り当てる。
従来においては頻繁な環境変化に対応して管理データの版数更新頻度が高くなり、それに伴うヒューマンエラーが発生する確率が高くなるが、データ管理装置30を備えることで情報伝達における時間差がなくなり、さらにプロジェクト責任者92や工事責任者93、現場作業者94、構内関連企業作業者95、構外工場システム6の工事責任者96、装置準備メーカ97が同様の版数のデータを共有することで、工事進捗における時間損失を最適化することができる。
さらに、管理データの移し替えによる間違え・ヒューマンエラーの発生を防ぐことができ、プロジェクト責任者92や工事責任者93、現場作業者94、構内関連企業作業者95、構外工場システム6の工事責任者96、装置準備メーカ97のいずれに対しても時間ロスを発生させないことが可能となる。
【0037】
図8は、遠隔作業管理サーバ40の構成図である。
遠隔作業管理サーバ40は、第1保存部41と、第2保存部42と、第3保存部43とを有する。
第1保存部41には、遠隔ロボット動作計画システム1が提供する管理データ(施工図・要領書データベース104のデータなど)が保存される。第2保存部42には、データ管理装置30が提供する管理データ(データ保管部33内の承認されたデータなど)が保存される。
第3保存部43には、モックアップ試験データ管理装置7が提供する管理データ(モックアップ試験結果データベース105のデータなど)が保存される。つまり、遠隔作業管理サーバ40は、3種類の管理データを一元化して保存するとともに、その保存した管理データを更新する。
【0038】
図9は、工事支援システム9を構成する各装置のハードウェア構成図である。
シミュレータ100やデータ管理装置30や遠隔作業管理サーバ40などのコンピュータ900は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを有する。
通信I/F905は、外部の通信装置915と接続される。入出力I/F906は、入出力装置916と接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体917に記録して配布したりすることも可能である。
【0039】
以下、作業が行われる段階について、「作業環境」に関する用語を定義する。工事は計画段階でロボットの動作データを作成詳細にしてから、実行段階へと移行する。
まず、遠隔ロボット動作計画システム1の操作エリアシステム10では、シミュレータ100をもとにした計画段階において、所定の作業環境を想定した計画を立案する。この計画段階で想定される作業環境を「計画環境」とする。
一方、遠隔ロボット動作計画システム1の作業環境システム20では、作業ロボット22を動作させる実行段階において、実際の作業環境で作業を遂行する。この実行段階における作業環境を「実行環境」とする。
【0040】
次に、作業が行われる場所について、「作業環境」に関する用語を定義する。
「現地環境」とは、原子力発電所などの実際の作業現場での作業環境である。「モックアップ(mock up)環境」とは、実際の作業現場とは別の場所において、現地環境を模したモックアップ(模型)で構築された作業環境である。
モックアップ環境では、現地環境にて実際に作業を実行する前に、作業対象物21の模型および作業ロボット22の模型を用いて、作業を実行する前準備となる訓練やデータ収集などが行われる。よって、モックアップ環境と現地環境とは、なるべく同じ寸法があれば収集するデータ精度が高まるが、コストの関係で現地環境を縮小したモックアップ環境を構築してもよい。
【0041】
なお、現地環境だけでなくモックアップ環境においても、計画段階→実行段階(つまり、モックアップを用いた試験)が行われる。よって、2通りの段階と2通りの場所との組み合わせにより、以下の4通りの作業環境が定義される。
・現地環境での計画段階での仮想的な作業環境である「現地計画環境」。
・現地環境での実行段階での物理的な作業環境である「現地実行環境」。
・モックアップ環境での計画段階での仮想的な作業環境である「モックアップ計画環境」。
・モックアップ環境での実行(試験)段階での物理的な作業環境である「モックアップ実行環境」。
これらの4通りの作業環境それぞれについて個別に、プロジェクト責任者92がデータ管理装置30(電子審査承認部31)を介して、作業環境に対応した作業計画データ(主に施工図・要領書)を承認することが望ましい。この承認により、意図せぬ作業が行われることを予防できる。なお、工事形態によっては、モックアップを用いた試験におけるプロジェクト責任者92の承認は不要となる場合もある。
【0042】
また、環境の変化とは、「計画環境」から「実行環境」に移行した際に初めて観測された環境の差分であり、現地計画環境から現地実行環境への変化だけでなく、モックアップ計画環境からモックアップ実行環境への変化も発生しうる。
例えば、現地計画環境から現地実行環境への変化とは、現地計画環境では想定していなかった重機の電源ケーブルが、現地実行環境では、作業ロボット22の脚(駆動部)に絡まって走行を妨害した事象が観測された場合である。
また、モックアップ計画環境からモックアップ実行環境への変化とは、例えば、モックアップ計画環境では充分な切断性能があると想定していた切断機をモックアップ実行環境で使用してみたところ、模型の柱を切断するのに性能不足であった場合である。
【0043】
図10は、遠隔ロボット動作計画システム1の全体動作を示すフローチャートである。
シミュレータ100は、現地計画環境に基づき作業計画データを作成する(ステップS100、詳細は図13)。即ち、計画段階での作業環境である現地計画環境をもとにした第1のシミュレーション処理により、作業計画データを作成する。
現地に存在するロボ制御装置12は、ステップS100で作成された作業計画データを現地実行環境で実行する(ステップS200、詳細は図15)。ここで、現地計画環境から現地実行環境への環境の変化が観測された場合、シミュレータ100は、現地実行環境に基づき作業計画データを更新(つまり再計画)する。
即ち、実行段階での作業環境である現地実行環境を測定した結果、前記現地計画環境から差分が発生したときには、前記現地実行環境をもとにした第2のシミュレーション処理により、作業計画データを更新する。
【0044】
また、環境の変化への再計画として、シミュレータ100がすでに保持している管理データでは不足する場合には、ステップS200の途中で呼び出される端子Aから遷移し、シミュレータ100は、モックアップ計画環境に基づき作業計画データを作成する(ステップS300、詳細は図14)。その後、シミュレータ100は、ステップS300で作成された作業計画データをモックアップ実行環境で実行する(ステップS400、詳細は図16)。
【0045】
図11は、映像再生保存部113が出力する運用画面図の概要である。
運用画面210には、管理データである複数の映像データが比較できるように上下左右に並べて表示される。運用画面210の左右に並べられた映像データは、左側が計画環境のもので、右側が実行環境のものである。また、運用画面210のたて方向に並べられた映像データは、(1)~(5)の順に、下側に行くほど工事が進行していく。
(1)初期モックアップ試験(第1のモックアップ環境)
(2)施工に対して厳しい寸法を採用したモックアップ試験(第2のモックアップ環境)
(3)調査結果を反映したモックアップ試験(第3のモックアップ環境)
(4)現地工事前(第1の現地環境)
(5)現地工事(第2の現地環境)
これにより、運用画面210を参照したオペレータなどは、左側の計画環境から右側の実行環境への環境の変化を目視できる。そして、管理者は、環境変化に対応するために様々なモックアップ環境としてモックアップを構築することで、モックアップ試験結果データベース105の登録データを充実させておく。なお、左右の画面で表示する映像は必ずしも同一時間帯の映像である必要はない。例えば左側の画面には、右側の画面で表示している実映像に対して、過去もしくは未来の状態を表示することも可能である。
【0046】
図12Aから図12Cは、映像再生保存部113が出力する図11の詳細を示す運用画面図である。
図12Aに示すようにシミュレータ100は、運用画面221の計画環境の映像データと、運用画面222の実行環境の映像データとを左右に並べて表示する。ここで環境の変化として、運用画面221には存在しないが、運用画面222では柱形状のがれき222Xが想定外に発見されたとする。この柱形状のがれき222Xは、例えば作業環境に配置した作業ロボット22で計画された要領では作業ができないとシミュレータ100を利用して判断する。
【0047】
図12Bに示すガントチャート223は、運用画面221(計画環境)に対応して事前に計画された施工図・要領書データベース104のデータである。図12Cに示すガントチャート224は、運用画面222(実行環境)に対応してガントチャート223を修正したデータである。
【0048】
ガントチャート223の切断工程の開始時点223Xで、柱形状のがれき222Xが想定外に発見された。よって、ガントチャート224は、柱形状のがれき222Xの追加処理分を考慮し、対象物把持時点224Xから各工程が延長されている(斜線の四角形で図示)。
このように、運用画面221、222の比較用の表示に加えて、その2つの環境の変化が影響する計画の変更についても、ガントチャート223、224の比較用の表示を併せて行う。
【0049】
これにより、プロジェクト責任者92は、単にガントチャート223からガントチャート224に工事期間が延長したことを知るよりも、その延長の原因(柱形状のがれき222X)を併せて知ることで、工事期間の延長に納得して承認をしやすくできる。
上記の例では、延長の原因が柱形状のがれき222Xという視認可能な物体としたが、同じ工程をしているときの作業時刻(図では「03:30:03」)が左右で異なるときにも、作業遅延により新たな工程を作成してもよい。
なお、図12Aから図12Cでは作業環境に配置した作業ロボット22を利用して計画変更を実施することで現場作業を継続できる事例を示したが、作業ロボット22では作業ができない場合もある。その際には、作業を一時中断し、モックアップ試験に移行することもあり得る。
【0050】
図13は、現地計画環境での計画処理(ステップS100)の詳細を示すフローチャートである。
シミュレータ100は、ロボモデルデータベース102に格納するロボモデルと、環境データベース101に格納する環境モデルとの入力を受け付ける(ステップS101)。シミュレータ100は、ステップS101のモデルに従い模擬環境中でのシミュレーションを実行する(ステップS102)。
【0051】
シミュレータ100は、ステップS102のシミュレーション結果に基づき作業計画データ(施工図・要領書)を作成して、施工図・要領書データベース104に保存する(ステップS103)。
プロジェクト責任者92は、データ管理装置30(電子審査承認部31)を利用して、シミュレータ100から通知されたステップS103の保存データをデジタル審査・承認する(ステップS104)。これにより、現地実行環境での実行処理(ステップS200)が許可される。
【0052】
図14は、モックアップ計画環境での計画処理(ステップS300)の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートは、基本的には図13の現地計画環境をモックアップ計画環境に置き換えたものである。
シミュレータ100は、現地環境の変化(現地計画環境→現地実行環境)を踏まえたモックアップ計画環境の工法などを再検討する(ステップS301)。シミュレータ100は、ステップS301のモックアップ計画環境に必要な装置、設備等のデータを準備して模擬環境中でのシミュレーションを実行する(ステップS302)。
【0053】
シミュレータ100は、ステップS302のシミュレーション結果に基づき、作業計画データ(施工図・要領書)を作成して、施工図・要領書データベース104に保存する(ステップS303)。
プロジェクト責任者92は、データ管理装置30(電子審査承認部31)を利用して、シミュレータ100から通知されたステップS303の保存データをデジタル審査・承認する(ステップS304)。これにより、モックアップ実行環境での実行処理(ステップS400)が許可される。
【0054】
図15は、現地実行環境での実行処理(ステップS200)の詳細を示すフローチャートである。
シミュレータ100は、環境地図生成装置23が測定した現地環境の管理データを現在の現地実行環境として取得する(ステップS201)。シミュレータ100(環境差分検出部112)は、ステップS201の現地実行環境と、ステップS100のシミュレーション時の現地計画環境とを比較し(ステップS202)、両環境の差分を抽出する。
シミュレータ100(環境差分検出部112)は、ステップS202で比較した両環境の差分があるか否かを判定する(ステップS210)。シミュレータ100は、ステップS210でYesならステップS211に進み、NoならステップS260に進む。
【0055】
シミュレータ100は、作業ロボット22の作業を一旦停止し、現地実行環境に合わせた作業シミュレーションを実行する(ステップS211)。シミュレータ100は、ステップS211の作業シミュレーションにより計画変更が発生するか否かを判定する(ステップS220)。シミュレータ100は、ステップS220でYesならステップS230に進み、NoならステップS260に進む。
例えば、作業対象物21(がれきの)配置が計画時から変化していても(ステップS210)、その変化の差分が小さい(岩が数cmずれているなど)ときには、シミュレータ100は、計画を変更しなくてもよい(ステップS220,No)。
【0056】
シミュレータ100は、計画変更に伴いモックアップ試験が必要か否かを判定する(ステップS230)。シミュレータ100は、ステップS230でYesなら現場作業を一時中断し(ステップS231)、端子Aから図10のモックアップ計画環境での計画処理(ステップS300)に移行する。シミュレータ100は、ステップS230でNoならステップS240に進む。例えば、以下に列挙する場面ではモックアップ試験が必要である(ステップS230でYes)。
(場面A)現地実行環境に存在する作業対象物21(柱など)の切断時間が想定外に長引いており、当初の計画で想定していた作業対象物21の材料とは別の材料が使われていた場合。
(場面B)現地実行環境に配備された現在の作業ロボット22では処理不可能な作業対象物21(太すぎる柱など)が見つかり、新たな作業ロボット22(高性能な切断機)を導入しようとする。しかし、その新たな作業ロボット22に対するロボモデルがロボモデルデータベース102にもモックアップ試験結果データベース105にも未登録の場合。
(場面C)現地実行環境に存在する建造物のレイアウトが、当初の現地計画環境から土砂崩れなどにより大きく変化したため、現地計画環境をベースとした計画の前提が成り立たなくなってしまった場合。
【0057】
シミュレータ100は、計画変更に伴いステップS211で実行したシミュレーションにより作業計画データ(計画図と要領書)を更新して(ステップS240)、その結果を施工図・要領書データベース104に格納する。そして、プロジェクト責任者92はデータ管理装置30(電子審査承認部31)を利用して、シミュレータ100から通知されたステップS240の更新データをデジタル審査・承認する(ステップS250)。
【0058】
操作エリアシステム10(ロボ制御装置12)からの制御命令(承認された施工図・要領書データベース104の作業計画データ)に基づき、作業環境システム20(作業ロボット22)は、現地実行環境での作業を実行する(ステップS260)。
シミュレータ100は、作業中の作業ロボット22の動作ログをロボ動作監視装置25から取得して動作記録部111に格納する(ステップS271)。
【0059】
シミュレータ100は、作業対象物21のがれきがある程度片付いて量が減少したなどの作業ロボット22の作業により変化した現地実行環境を、環境地図生成装置23から取得して環境データベース101に格納する(ステップS272)。
シミュレータ100は、ステップS272で取得した現在の現地実行環境でがれきなどの作業対象物21が完全に処理(除去)されたなど、工事の目的が達成されたか否かを判定する(ステップS273)。シミュレータ100は、ステップS273でYesなら処理を終了し、NoならステップS201に戻る。
【0060】
図16は、モックアップ実行環境での実行処理(ステップS400)の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートは、基本的には図15の現地環境(現地計画環境、現地実行環境)をモックアップ環境(モックアップ計画環境、モックアップ実行環境)に置き換えたものであり、ステップ番号の下2桁が対応する(ステップS201→ステップS401)。その他の図15図16との相違点を以下に列挙する。
図15のモックアップ試験に移行する処理(ステップS230,ステップS231)は、図16では不要である。
図15のステップS273では工事の達成による終了判定としたが、図16のステップS473では作業ロボット22の最適な動作が抽出できたか否かを判定することで、モックアップ試験の終了判定としている。最適な動作とは、例えば、がれきの柱を切断するという目的を達成したうえで、その切断に要した時間が充分に短い時間で済んだなどである。
図16では新たにステップS480として、ステップS473までのモックアップ試験結果とシミュレーション結果とを反映して、モックアップ試験結果データベース105などの各種データベースを更新する処理が追加される。
【0061】
図17は、現地実行環境でのシミュレーション処理(ステップS211)の詳細を示すフローチャートである。図17ではステップS211の詳細を示すが、モックアップ実行環境でのシミュレーション処理(ステップS411)も同様の処理である。
ステップS211Aとして、シミュレータ100は、作業における各種の構成要素(作業エリア、周辺構造物、作業ロボット22、作業環境、作業動作)を抽出する。ステップS211Aの処理には、以下の処理を含めてもよい。
・人手による各種構成要素の分類処理。
・3D図面や映像、人手を介した機械学習によるクラスタリング処理。
【0062】
ステップS211Bとして、シミュレータ100は、ステップS211Aで抽出(選択)した各種構成要素に紐づく過去実績(作業環境、機材、モックアップやシミュレータ映像、動作ログ)をクラスタリングもしくはフィルタリングする。ステップS211Bの処理には、以下の処理を含めてもよい。
・機械学習によるクラスタリング/フィルタリング処理。記号「A/B」は、AまたはBの少なくとも1つを示す。
・過去実績の紐づけによる人手によるクラスタリング/フィルタリング処理。
【0063】
ステップS211Cとして、シミュレータ100は、ステップS211Bでクラスタリング/フィルタリングされた過去実績の類似動作ログをランキングして上位動作ログを表示する。ステップS211Cのランキングには、以下のランキングを含めてもよい。
・機械学習によるランキング、もしくはディープニューラルネットや再帰型ニューラルネットによる動作ログの成功率算出結果ランキング。
・ランキング項目(作業工数、追加装置数、追加作業員数、コスト等)を状況に応じた係数で重み付けし、類似動作をランキング。
【0064】
ステップS211Dとして、シミュレータ100は、ステップS211Cで表示された動作ログから実施する動作ログを選択し、シミュレータで実行する。ステップS211Dの処理には、以下の処理を含めてもよい。
・責任者などによる動作ログを選択する処理。
・ディープニューラルネットや再帰型ニューラルネットによる動作ログの成功率算出結果による選択処理。
【0065】
ステップS211Eとして、シミュレータ100は、ステップS211Dの実行結果として動作が成立したか否かを判定する。シミュレータ100は、ステップS211EでYesなら処理を完了し、NoならステップS211Dに戻る。
【0066】
図18は、図16のモックアップ実行環境での実行処理(ステップS400)の具体例を示すフローチャートである。図18ではステップS411の詳細を示すが、現地実行環境でのシミュレーション処理(ステップS211)も同様の処理である。
シミュレータ100は、ステップS401で測定されるモックアップ実行環境の対象エリア、シナリオ、ロボットの組み合わせを指定する(ステップS501)。この指定は1通りでもよいし、複数の異なる組み合わせを順にループ処理として試してもよい。
シミュレータ100は、ステップS402の環境比較処理として、ステップS501で指定された対象エリアのモックアップ計画環境とモックアップ実行環境との差分を抽出する(ステップS502)。
【0067】
シミュレータ100は、ステップS410の判定処理として、ステップS502で比較した両環境の差分となる物体(作業対象物21、作業ロボット22、建物の構造物など)の体積の差分が所定閾値(ΔV)を超過したか否かを判定する(ステップS503)。シミュレータ100は、ステップS503でYesならステップS511に進み、NoならステップS521に進む。以下、ステップS511以降は、計画図と要領書との更新処理(ステップS440)の具体例である。
シミュレータ100は、新しいモックアップ実行環境におけるアクティビティ要素(作業ロボット22などの作業主体)のロボ動作パターンが、すでにライブラリ(モックアップ試験結果データベース105)に存在するときには(ステップS521,Yes)、そのライブラリからロボ動作パターン読み込み(ステップS522)、処理をステップS515に移行する。一方、シミュレータ100は、ステップS521でNoならステップS512に移行する。
【0068】
シミュレータ100は、古いモックアップ計画環境に対して、新しいモックアップ実行環境で発見された障害物オブジェクトを追加し、新しいモックアップ実行環境には存在しないオブジェクトを消去する(ステップS511)。
シミュレータ100(衝突判定部114)は、ステップS511で処理されたモックアップ計画環境において、ロボット移動機構の初期位置から目的位置までの最短かつ非干渉となる作業ロボット22の経路を計算する(ステップS512)。
【0069】
シミュレータ100は、経路の目的位置でのアーム関節の最小回転角度などの作業の動作を計算し(ステップS513)、アクティビティ要素ごとのステップS512,S513の計算結果をライブラリに保存する(ステップS514)。
シミュレータ100は、作業ロボット22の作業時間を計算し、その結果を工程ガントチャート(図12B図12C)に反映する(ステップS515)。
【0070】
図19は、現地実行環境での現地作業を実行する処理(ステップS260)の詳細を示すフローチャートである。図19ではステップS260の詳細を示すが、モックアップ実行環境でのシミュレーション処理(ステップS460)も同様の処理である。
シーケンス変換装置13は、施工図・要領書データベース104内の施工図・要領書を、作業制御シーケンスに変換する(ステップS261)。ロボ制御装置12は、ステップS261の作業制御シーケンスに従い、各作業ロボット22を制御する(ステップS262)。
作業環境(現地実行環境)での環境地図生成装置23およびロボ動作監視装置25は、ステップS262で制御される各作業ロボット22の状態を把握する(ステップS263)。
【0071】
シーケンス変換装置13は、これから行う作業について、作業制御シーケンス変換処理が必要か否かを判定する(ステップS264)。シーケンス変換装置13は、ステップS264でNoならステップS265に進み、YesならステップS261に戻る。ロボ制御装置12は、作業が完了したか否かを判定する(ステップS265)。ロボ制御装置12は、ステップS265でYesなら処理を完了し、NoならステップS262に戻る。
【0072】
図20Aから図20Cは、モックアップ試験結果データベース105の登録データの一例を示すテーブルである。
テーブル231は、作業対象物21の材質および作業対象物21を処理する工法の組み合わせごとに、作業時間が登録される。例えば材質Aのがれきをレーザ工法で切断するときには、0.5[h]の作業時間を要する。
同様に、テーブル232は、作業ロボット22の経路および作業対象物21が存在する地理的な領域の組み合わせごとに、作業時間が登録される。また、テーブル233は、作業対象物21の形状および作業対象物21を処理する工法の組み合わせごとに、作業時間が登録される。
【0073】
図21A図21Bは、モックアップ試験結果データベース105の登録データの一例を示す説明図である。
図21Aに示すように、モックアップ設備情報241では、円形のモックアップ設備を4分割した領域A1~領域A4が形成され、各領域には作業対象物21の模型が配置されている。領域A1の作業対象物21へと向かう作業ロボット22は、経路Raまたは経路Rbのいずれかの経路を通過して作業対象物21の作業現場まで到達する。
図21Bに示すように、がれき情報242では、モックアップ設備情報241の領域A1に配備された円柱状の作業対象物21の模型の候補として、互いに材質や形状が異なる3種類の模型が登録されている。
【0074】
図22Aから図22Cは、図20Aから図20C図21A図21Bの登録データをもとにした環境差分の判定処理(ステップS210)の一例を示す説明図である。
図22Aに示す実機情報251では、図21Aのモックアップ設備情報241と同様に、4分割された領域A1d~領域A4dと、2種類の経路Rad、Rbdとが存在する。
図22Bに示すテーブル252は、図20Aのテーブル231と同様に、作業対象物21の材質および作業対象物21を処理する工法の組み合わせごとに、作業時間が登録される形式である。一方、このテーブル252には、現地実行環境での実測値が登録され、モックアップ実行環境での実測値を格納するテーブル231とは異なる。
【0075】
図22Cに示すグラフ253は、縦軸に作業進捗データベース103に登録された加工時間(柱の切断時間)を示し、横軸に加工量(柱の切断度合い)を示す。
現地計画環境では柱の材料が柔らかいもの(加工時間が短くて済むもの)として、計画253Aで示すように、切断完了まで0.5[h]で済む計画を立てていた。しかし、実際に現地実行環境で柱の切断を行っていると、実績253Cで示すように、0.3[h]の時点で1/4程度の加工量しか作業が進んでいない。
よって、シミュレータ100は、当初の現地計画環境で想定されていた柱の柔らかい材料が誤りであり、実際の現地実行環境に存在する硬い材料の柱を切断するため、1.0[h]の作業時間を要する計画253Bに変更する。シミュレータ100は、具体的には、がれき情報242に登録された別の材料に選択し直す。
【0076】
図23は、図22Aから図22Cの環境差分の判定処理に対する後処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、ステップS260の後に実行される。
シミュレータ100は、図22Aの実機情報251の領域A1dにおいて、例えば「加工法1(グラインダ)、動作経路Rad、材質A(推定)、形状1」の条件で施工する(ステップS801)。
【0077】
シミュレータ100は、ステップS801の加工時間の実績からAI(Artificial Intelligence)を用いて材質を推定する(ステップS802)。この推定が正しいなら(ステップS802,Yes)、シミュレータ100は、加工を継続する(ステップS803)。シミュレータ100は、図22Cの計画253Aのように、この推定が誤りなら(ステップS802,No)、ステップS811に処理を進める。
【0078】
シミュレータ100は、図22Cの計画253Bのように、新たな材質をモックアップ試験結果データベース105から検索する。検索で見つかった場合(ステップS811,Yes)、シミュレータ100は、ステップS812に進み、新たな材質や新たな加工方法等に変更することで(ステップS812)、計画書・要領書を変更し(ステップS813)、その承認をプロジェクト責任者92から受ける(ステップS814)。
検索で見つからなかった場合(ステップS811,No)、シミュレータ100は、新たな材質を推定するために必要なデータが収集できるまで(ステップS822,No)、再モックアップ試験を繰り返し実行する(ステップS821)。そのため、シミュレータ100は、端子Aからモックアップ計画環境に基づく作業計画(ステップS300)に処理を移行する。
【0079】
図24は、モックアップ実行環境でのモックアップ試験を実行する処理(ステップS460)の詳細を示すフローチャートである。
まず、図16のステップS401の前に、シミュレータ100は、図21Aで示したように実機干渉物の撤去場所を複数の領域に区分する(ステップS401B)。ステップS402以降は、図16で説明した通りである。以下、ステップS460の詳細を説明する。
シミュレータ100は、ステップS401Bの領域ごとに、対象物の材質や形状を複数想定した試験を実行する(ステップS461)。シミュレータ100(作業工数計算部115)は、ステップS461の試験結果を整理し、図20Aから図20Cで示した各データベースに格納し(ステップS462)、その格納されたデータ(材質、形状、加工法)を組み合わせて、施工時間を評価する(ステップS463)。
【0080】
図25は、映像再生保存部113が図11の運用画面図を生成する処理(ステップS700)の詳細を示すフローチャートである。
図11の縦1つ目の、(1)初期モックアップ試験の比較画面を作成するために、映像再生保存部113は、計画図とモックアップ設備との比較(ステップS701)およびモックアップ設備寸法を反映した3Dを用いたシミュレーションとモックアップ試験との比較(ステップS702)を行う。
図11の縦2つ目の、(2)施工に対して厳しい寸法を採用したモックアップ試験の比較画面を作成するために、映像再生保存部113は、モックアップ設備の厳しめの寸法を反映した3Dを用いたシミュレーションと、モックアップ試験との比較(ステップS703)を行う。
【0081】
図11の縦3つ目の、(3)調査結果を反映したモックアップ試験の比較画面を作成するために、映像再生保存部113は、調査結果の寸法を反映した3Dを用いたシミュレーションと、モックアップ試験との比較(ステップS704)を行う。
図11の縦4つ目の、(4)現地工事前の比較画面を作成するために、映像再生保存部113は、最終モックアップ/トレーニング映像と、実機工事環境取込み映像+シミュレーション動画との比較(ステップS705)を行う。
図11の縦5つ目の、(5)現地工事の比較画面を作成するために、映像再生保存部113は、実機工事環境取込み映像+シミュレーション動画と、実映像との比較(ステップS706)を行う。
【0082】
図26は、図15の現地実行環境での実行処理に対して、ロボット動作の差分検知処理(ステップS280)を追加したフローチャートである。
図27A図27Bは、図26のロボット動作の差分検知処理(ステップS280)に用いられる画面図である。なお、図27Aに示す画面261はモックアップ環境での作業の映像データである。図27Bに示す画面262は、画面261のモックアップ環境でのモックアップ試験の後に行われた現地環境での作業の映像データである。
複数ロボット協調動作部116は、複数ロボ協調制御装置14を介して、複数の作業ロボット22を協調動作させてもよい。ここで、複数の作業ロボット22のうちの1台の動作が転倒する(符号262X)などの異常が発生すると、正常な動作(符号261X)からのロボット動作の差分が発生することもある。
そこで、シミュレータ100は、ロボット動作の差分処理を検知すると(ステップS280,Yes)、その事象を環境変化として扱うことで、ステップS220以降の再計画処理を実行させる。
【0083】
以下、ステップS280において3種類の動作差分の検知方法を例示する。
(検知方法1)オペレータや責任者などは、画面261、262から目視で動作差分を検知する。そして、オペレータの手動操作(ハードウェアもしくはGUI上のストップボタン)で作業を一旦停止させる。
(検知方法2)シミュレータ100は、ある時間の画像フレームを抽出して両映像(画面261、262)の差分を検出する。作業に影響がないごく微小な変化は差分しきい値を設けることで、検知レベルを調整可能である。
(検知方法3)シミュレータ100は、ある時間範囲における映像を抽出して両映像(画面261、262)の差分微分値を検出する。作業に影響がないごく微小な変化は差分しきい値を設けることで、検知レベルを調整可能である。
【0084】
以上説明したように、本実施形態のシミュレータ100は、環境の変化に合わせて作業計画データを変更する仕組みが備わっている。これにより、想定外の環境の変化が発生しても、作業の中断とやり直しが円滑に進行する。
また、本実施形態のデータ管理装置30は、図1のプロジェクト責任者92、工事責任者93などの複数のユーザが工事に必要なデータの読み書きを一元化して行えるようにしている。以下、データ管理装置30の効果を説明する。
【0085】
図28は、データ管理装置30を導入する前の煩雑な承認フローを示す図である。
手順302において、装置準備メーカ301は、装置の準備を実施し、手順303において、工事実施メーカ311に、装置に関する各種情報(モックアップ試験など)を提出する。工事実施メーカ311(図1の工事責任者93など)は、1社以上の装置準備メーカ301から準備された装置に関する各種情報(モックアップ試験など)の提出を受け付ける(手順303)。工事実施メーカ311は、工法の検討時点から工事の完了時点までの工事に必要な各種書類(打合せ図書、承認図面、…、決定図面)を作成する(手順312)。工事発注顧客321(図1のプロジェクト責任者92など)は、紙またはデータで工事実施メーカ311から提出された各種書類をその都度承認する必要があり、その手間は煩雑である。
【0086】
図29は、データ管理装置30を導入することで、図28の承認フローが一元化されたことを示す図である。
データ管理装置30は、図28の手順303,312などの書類作成や書類受け渡しの業務フローを、自身の装置内でデジタルデータとして一元化する。
これにより、工事発注顧客321は、時々刻々と変化する作業環境(未知環境下の非定型な遠隔作業工事)に応じて工事実施メーカ311が頻繁に更新する管理データを、その都度迅速に審査および承認することができる。さらに、計画の更新結果を即時に現場の工事に反映させるとともに、顧客および社内関係者間の情報共有を迅速にできる。
【0087】
《第1の変形例》
図30は、本実施形態の第1変形例の工事支援システム9Aの構成図である。
工事支援システム9Aは、遠隔ロボット動作計画システム1Aにメインテナンスシステム80を備えており、図1とは異なる操作エリアシステム10Aを備えている点が、図1の工事支援システム9とは異なる。それ以外は、図1の工事支援システム9と同様に構成されている。この工事支援システム9Aは、図1に示した工事支援システム9の機能に加えて更に、作業ロボットのメインテナンスを考慮したものである。
【0088】
メインテナンスシステム80は、作業ロボットのメインテナンス作業を支援するメインテナンス装置であり、例えばメインテナンス室に設置されたサーバコンピュータとして構成される。このメインテナンスシステム80は、工事支援システム9Aの各部と相互に通信可能である。
【0089】
図31は、操作エリアシステム10Aの構成を示す図である。
変形例の操作エリアシステム10Aは、シミュレータ100Aを備えている。変形例のシミュレータ100Aは、図3に示したシミュレータ100と同様の構成に加えて更に、ロボットログ117を記憶部に格納している。
また、環境データベース101には、図33に示す作業エリアデータ1011が格納されている。施工図・要領書データベース104には、図34に示す作業計画データ1041が格納されている。
【0090】
ロボットログ117は、図31Aに示す動作ログ1171と、図31Bに示す位置情報ログ1172と、図31Cに示すエラーログ1173とを含んで構成される。このロボットログ117は、各作業ロボットが現場環境で動作したときのログである。このログを解析することにより、シミュレータ100は、各作業ロボットのメインテナンス時期を好適に更新可能である。
【0091】
図32Aは、ロボットログ117のうち、動作ログ1171を示す図である。
動作ログ1171は、日時欄とジョイント1,2…欄を含んで構成される。ジョイント欄には、この作業ロボットのジョイントが成す角度を格納する角度欄と、ジョイントと本体との相対位置を格納する相対位置欄が含まれる。ジョイント欄には更に、油圧欄や温度欄が含まれる場合もある。この動作ログ1171は、作業ロボットごとに記録されている。
【0092】
図32Bは、ロボットログ117のうち、位置情報ログ1172を示す図である。
位置情報ログ1172は、日時欄と絶対位置欄と速度欄とを含んで構成される。位置情報ログ1172は、作業ロボットごと且つ日時ごとに、その絶対位置と速度とが記録されている。この位置情報ログ1172と、位置に応じた線量がマップされている作業エリアデータ1011を参照することにより、各作業ロボットの累積線量を推定可能である。
【0093】
図32Cは、ロボットログ117のうち、エラーログ1173を示す図である。
エラーログ1173は、日時欄とエラーID欄とを含んで構成される。エラーログ1173は、作業ロボットごとに記録されている。
【0094】
図33は、作業エリアデータ1011を示す図である。
作業エリアデータ1011は、環境データベース101に格納されており、日時欄とエリアID欄と絶対位置欄と線量率欄とを含んで構成される。日時欄には、日時が格納される。エリアID欄には、この作業エリアの識別子が格納される。絶対位置欄には、この作業エリアの絶対位置が格納される。線量率欄には、この作業エリアの線量率が格納される。
【0095】
例えばメインテナンスシステム80が、この作業エリアデータ119と位置情報ログ1172とを参照することにより、各作業ロボットの累積線量を推定可能である。
【0096】
図34は、作業計画データ1041を示す図である。
作業計画データ1041は、施工図・要領書データベース104に格納されている。作業計画データ1041は、アクティビティ名欄と、プロジェクト名欄と、実績開始日欄と、実績終了日欄と、ロール欄と、開始欄と、終了欄と、作業員欄と、領域コード欄と、線量率欄と、気温欄とを含んで構成される。
【0097】
アクティビティ名欄には、この作業の名称が格納される。プロジェクト名欄には、この作業が属するプロジェクトの名称が格納される。実績開始日欄には、この作業が実際に開始した日時が格納される。実績終了日欄には、この作業が実際に終了した日時が格納される。ロール欄には、この作業に割り当てた作業ロボットがコードで格納される。開始欄には、この作業の開始予定日時が格納される。終了欄には、この作業の終了予定日時が格納される。作業員欄には、この作業に割り当てられた作業員が格納される。領域コード欄には、この作業が行われる領域のコードが格納される。線量率欄には、この作業によって被曝した線量率が格納される。気温欄には、この作業が実行されたときの平均気温が格納される。
【0098】
図35は、メインテナンスシステム80の概要を示すブロック図である。
メインテナンスシステム80は、CPUとメモリと大容量記憶部を備えたコンピュータであり、メインテナンス計画801と、メインテナンスデータ802とを格納している。メインテナンスシステム80は更に、電子工程803と、検査要領データベース804と、検査基準データベース805と、評価結果ログ806と、環境3Dモデル807と、ロボットモデル808と、放射線管理データベース809と、交換寿命判定データベース800とを格納している。メインテナンスシステム80は、作業ロボットのメインテナンスを支援するサーバコンピュータである。
【0099】
メインテナンス計画801には、各作業ロボット22をメインテナンスするための計画情報が格納される。メインテナンスデータ802には、各作業ロボット22の各部の累積損傷や累積線量が格納される。
【0100】
電子工程803には、作業ロボットを自動でメインテナンスするときの工程が格納される。電子工程803を参照することにより、試験手順表示部83は、作業者のタブレット端末811やAR(Augmented Reality)グラス812などに試験手順を表示させることができる。
【0101】
検査要領データベース804には、作業ロボットを手作業で検査するときの手順が格納される。検査要領データベース804を参照することにより、ロボット試験手動実行部85は、作業員による作業ロボットの試験をサポートすることができる。
検査基準データベース805には、作業ロボットの検査基準が格納される。評価結果ログ806には、作業ロボットの評価結果のログが格納される。
【0102】
環境3Dモデル807には、作業ロボットを実環境下で評価するための三次元モデルデータが格納される。ロボットモデル808には、この作業ロボットをシミュレーションするためのモデルデータが格納される。
【0103】
放射線管理データベース809には、各作業ロボットの累積線量が格納される。
交換寿命判定データベース800には、作業ロボットの各部品の交換寿命を判定するための基準が格納される。交換寿命判定データベース800を参照することにより、メインテナンス判定部81は、作業ロボットを構成する各部品を交換すべきか否かを判定可能である。
【0104】
メインテナンスシステム80は、処理部として、メインテナンス判定部81と、メンテ情報抽出部82と、試験手順表示部83と、ロボット試験自動実行部84と、ロボット試験手動実行部85とを備える。メインテナンスシステム80は更に、試験ログ蓄積部86と、試験結果判定部87と、試験結果可視化部88と、部品交換・修理作業指示部89を備える。
【0105】
メインテナンス判定部81は、各作業ロボットの累積損傷や累積線量を評価して、メインテナンス時期を判定する部位である。メインテナンス判定部81は、動作負荷分析部81aと累積線量分析部81bとを含んで構成される。動作負荷分析部81aは、作業ロボットを構成するジョイント等の動作回数から動作負荷を分析する部位である。累積線量分析部81bは、位置情報ログと作業エリアデータとから累積線量を推定する部位である。
メンテ情報抽出部82は、この作業ロボットのメインテナンス情報を抽出する部位である。試験手順表示部83は、作業員が持つタブレット端末811やARグラス812などに試験手順を表示させる部位である。
【0106】
ロボット試験自動実行部84は、作業ロボットに対する試験を自動実行する部位である。ロボット試験手動実行部85は、作業員による作業ロボットの試験をサポートする部位である。
試験ログ蓄積部86は、評価結果ログ806に、作業ロボットの試験ログを蓄積する部位である。
【0107】
試験結果判定部87は、作業ロボットに対する試験結果を判定する部位であり、かつ、作業ロボットの使用に問題がないか否かを判定する部位である。試験結果可視化部88は、作業ロボットに対する試験結果を可視化する部位である。試験結果可視化部88が可視化した画面の例を、後記する図38に示す。部品交換・修理作業指示部89は、作業ロボットの部品交換作業や修理作業をタブレット端末811やARグラス812に表示させて作業員に指示する部位である。
【0108】
作業員は、入出力デバイス810のうちタブレット端末811か、またはARグラス812とヘッドセット813の組み合わせにより、メインテナンスシステム80からの指示を受けて作業ロボットをメインテナンスする。作業員は、タブレット端末811か、またはARグラス812により、メインテナンスした作業ロボットが動作試験にパスしたか否かの通知を受ける。なお、タブレット端末811は、タッチパネルディスプレイと無線通信部を有する情報端末である。ARグラス812は、眼鏡型の情報端末である。
【0109】
図34は、作業ロボットのメインテナンス判定処理を示すフローチャートである。
このメインテナンス判定処理は、例えば図15に示した現地実行環境での実行処理のステップS271の処理の詳細である。
【0110】
メインテナンスシステム80のメインテナンス判定部81は、操作エリアシステム10Aからロボットログ117を取得する(ステップS901)。そしてメインテナンス判定部81は、新たに取得したログにエラーのログがあるか否かを判定する(ステップS902)。メインテナンス判定部81は、エラーのログがあるならば(ステップS902,Yes)、ステップS903に進み、エラーのログが無いならば(ステップS902,No)、ステップS904に進む。
【0111】
ステップS903において、メインテナンス判定部81は、このエラーが重大エラーであるか否かを判定する。メインテナンス判定部81は、このエラーが重大エラーならば(ステップS903,Yes)、ステップS910に進む。ステップS910において、メインテナンス判定部81は、この作業ロボットにメインテナンスが必要である旨を遠隔作業管理サーバ40などに通知すると、図34の処理を終了する。このとき、当該作業ロボットは使用が中止されて、メインテナンスが行われる。
メインテナンス判定部81は、このエラーが重大エラーでないならば(ステップS903,No)、ステップS904に進む。
【0112】
ステップS904において、メインテナンス判定部81は、動作ログ1171の分析により、エラー原因や各部位の累積損傷や累積照射量を推定すると、この機器(作業ロボット)の利用計画を読み込む(ステップS905)。メインテナンス判定部81は、メインテナンス計画801を更新する(ステップS906)。ステップS906の処理の詳細は、後記する図35で説明する。
【0113】
更にメインテナンス判定部81は、作業計画を更新すると(ステップS907)、この作業ロボットのメインテナンス時期であるか否かを判定する(ステップS908)。メインテナンス判定部81は、この作業ロボットのメインテナンス時期であれば(ステップS908,Yes)、ステップS910に進む。
ステップS910において、メインテナンス判定部81は、この作業ロボットにメインテナンスが必要である旨を遠隔作業管理サーバ40などに通知すると、図34の処理を終了し、作業ロボットのメインテナンス時期でなければ(ステップS908,No)、ステップS909に進む。
【0114】
メインテナンス判定部81は、ログ取得のトリガーが発生するまで待ち(ステップS909)、ログ取得のトリガーが発生すると、ステップS901の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。なお、ログ取得のトリガーは、所定期間の経過でもよく、所定の累積線量に達したことでもよい。
【0115】
図37は、メインテナンス判定処理の詳細を示すフローチャートである。この処理は、図36のステップS904~S907に対応する。
メインテナンス判定部81は、動作ログ1171からジョイントごとの動作回数や動作負荷を推定する(ステップS9041)。メインテナンス判定部81は、推定したジョイントごとの動作回数や動作負荷を、メインテナンスデータ802に蓄積する。
メインテナンス判定部81は、ステップS9041の処理と並行して、位置情報ログ1072と作業エリアデータ1011から、この作業ロボットの累積線量を推定する(ステップS9042)。メインテナンス判定部81は、推定した累積線量を、メインテナンスデータ802に蓄積する。
【0116】
そして、メインテナンス判定部81は、この作業ロボットの設計値とメインテナンスデータ802から、この作業ロボットの損傷マージンと線量マージンを推定する(ステップS9043)。メインテナンス判定部81は、作業計画データ1041から損傷マージンおよび線量マージン直前の当該作業ロボットへの割り当て作業を抽出する(ステップS905)。この作業ロボットへの割り当て作業とは、この機器の利用計画のことである。
【0117】
そして、メインテナンス判定部81は、この作業ロボットの損傷マージンと線量マージンに基づき、この作業ロボットのメインテナンス計画121を修正して更新し(ステップS906)、作業計画データ1041を更新し、図37の処理を終了する。これ以降、メインテナンス判定部81は、図36のステップS908に進む。
【0118】
図38は、メインテナンスシステム80により表示される画面821を示す図である。
この画面821は、作業ロボットの試験結果を示す画面であり、タブレット端末811やARグラス812に表示される。
【0119】
画面821には、試験結果欄822とテスト終了ボタン823と再テストボタン824とキャンセルボタン825と、発話アイコン826とが表示されている。
試験結果欄822には、試験名の「クローラ回転テスト」と、各試験項目の数値とが表示されている。
【0120】
テスト終了ボタン823は、このクローラ回転テストを終了するボタンである。再テストボタン824は、このクローラ回転テストのテストを再び実行するボタンである。キャンセルボタン825は、この試験結果をキャンセルして格納させないためのボタンである、発話アイコン826は、発話中であることを示すアイコンである。作業員は、ボタンのかわりに発話より、試験の終了や再テストやキャンセルを指示することができる。
【0121】
図39は、作業ロボット22を単体機能試験架台に乗せて自動で試験する構成を示す図である。この構成において、作業員99は、作業架台から離れて、軽防護服を着て、作業ロボット22の自動検査を実行する。
【0122】
遠隔作業管理サーバ40は、メインテナンスシステム80の全体動作を監視する部位である。遠隔作業管理サーバ40の指示により、試験手順表示部83は、タブレット端末811に試験手順を表示させる。そして、ロボット試験自動実行部84は、コントローラ841a~841dを介してカメラ842a,842bや音響センサ843や作業ロボット22を制御して、各種試験を実施する。
【0123】
カメラ842aは、単体機能試験架台を撮影するカメラであり、コントローラ841aに接続されて制御されると共に、センサ接続端861aに接続されて、撮影画像を出力する。
【0124】
カメラ842bは、単体機能試験架台を撮影するカメラであり、コントローラ841bに接続されて制御されると共に、センサ接続端861bに接続されて、撮影画像を出力する。なお、作業ロボット22の各部には、モーションマーカが付与されているので、カメラ842a,842bの撮影画像を解析することにより、各ジョイントの動作を試験することができる。
【0125】
作業ロボット22は、コントローラ841cに接続されて制御されると共に、センサ接続端861cに接続されている。音響センサ843は、コントローラ841dに接続されて制御されると共に、センサ接続端861dに接続されている。
【0126】
試験ログ蓄積部86は、センサ接続端861a~861dに接続されており、試験結果が入力される。試験ログ蓄積部86は、入力された試験結果を評価結果ログ806に蓄積すると共に、試験結果判定部87に出力する。
【0127】
試験結果判定部87は、入力された試験結果から累積線量を推定して、放射線管理データベース809に格納し、交換寿命判定データベース800を参照しつつ、各交換部品の寿命を判定する。判定した各交換部品の寿命は、遠隔作業管理サーバ40とタブレット端末811に送信される。これにより作業員99は、試験中の作業ロボット22の状態を知ることができる。
【0128】
図40は、作業員99の画面指示により、作業ロボット22の試験およびメインテナンスを手動で実施する構成を示す図である。作業員99は、ゴーグルと防護服を付けて単体機能試験架台の近くに行き、画面指示によりロボット単体テストを実施し、直接に作業ロボット22の部品を交換する。
【0129】
ここでは、図39のロボット試験自動実行部84に代わり、ロボット試験手動実行部85が、作業ロボット22の手動試験の実行をサポートする。ロボット試験手動実行部85は、作業員99によるタブレット端末811の操作に基づき、作業ロボット22やカメラ842a,842bや音響センサ843に制御信号を送信する。
【0130】
そして、試験結果判定部87が、試験ログに基づいて作業ロボット22の交換部品の何れかが寿命であることを判定すると、部品交換・修理作業指示部89に通知する。部品交換・修理作業指示部89は、交換すべき部品の作業手順や、修理すべき部品の修理手順をタブレット端末811に送信する。タブレット端末811には、交換すべき部品の作業手順や、修理すべき部品の修理手順が表示される。これにより作業員99は、紙の作業手順書や修理手順書を持つことなく、交換すべき部品の作業手順や、修理すべき部品の修理手順を知ることができる。
【0131】
《第2の変形例》
第2の変形例は、第1の変形例とは異なり、作業ロボットが自身のロボットログを分析して、自律的にメインテナンス時期を判定するものである。
【0132】
作業ロボット22は、不図示のCPUとメモリと大容量記憶部を備えており、環境データベース2201およびそれに含まれる作業エリアデータ22011と、作業計画データ2202と、ロボットログ2203と、メインテナンス計画2204と、メインテナンスデータ2205と、を大容量記憶部に格納している。そして、作業ロボット22のCPUが制御プログラムを実行することにより、動作記録部2211とメインテナンス判定部2212とを具現化する。このメインテナンス判定部2212は、自身の累積損傷や累積線量を評価して、メインテナンス時期を判定する部位である。メインテナンス判定部2212は、動作負荷分析部2212aと累積線量分析部2212bとを含んで構成される。動作負荷分析部2212aは、自身を構成するジョイント等の動作回数から動作負荷を分析する部位である。累積線量分析部2212bは、ロボットログ2203の位置情報ログと作業エリアデータ22011とから累積線量を推定する部位である。なお、この作業ロボット22に線量計を設けて、計測した線量を累積して累積線量を算出してもよく、限定されない。
【0133】
作業ロボット22は、通信部2213により、図31に示したシミュレータ100Aと通信する。これにより作業ロボット22は、シミュレータ100Aの環境データベース101および作業計画データ1041と、自身の環境データベース2201および作業計画データ2202を同期させる。そして、作業ロボット22は、通信部2213により、図35に示したメインテナンスシステム80と通信する。これにより作業ロボット22は、メインテナンスシステム80のメインテナンス計画801およびメインテナンスデータ802と、自身のメインテナンス計画2204およびメインテナンスデータ2205を同期させる。
【0134】
そして、動作記録部2211は、自身の動作ログをロボットログ2203に記録する。メインテナンス判定部2212は、図36図37のフローチャートと同様の処理によってロボットログ2203を解析して、メインテナンス時期を更新し、自身がメインテナンスすべきであることを外部に通知する。ロボットログ2203のデータ量が大きい場合、作業ロボット22が自律的にロボットログ2203を解析することで、通信トラヒック量を抑制することができる。
【0135】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0136】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体におくことができる。また、クラウドを活用することもできる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LAN(Local Area Network)に限定せず、有線LANやその他の通信手段に変更してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 遠隔ロボット動作計画システム
5 工程管理装置
6 構外工場システム
7 モックアップ試験データ管理装置
9,9A 工事支援システム
10,10A 操作エリアシステム
11 データ更新装置
12 ロボ制御装置
13 シーケンス変換装置
14 複数ロボ協調制御装置
20 作業環境システム
21 作業対象物
22 作業ロボット
23 環境地図生成装置
24 映像取得装置
25 ロボ動作監視装置
26 作業進捗記録装置
30 データ管理装置
31 電子審査承認部
32 閲覧範囲制限部
33 データ保管部
34 承認行為後データロック部
35 版数更新部
40 遠隔作業管理サーバ
41 第1保存部
42 第2保存部
43 第3保存部
100,100A シミュレータ
101 環境データベース
1011 作業エリアデータ
102 ロボモデルデータベース
103 作業進捗データベース
104 施工図・要領書データベース
1041 作業計画データ
105 モックアップ試験結果データベース
111 動作記録部
113 映像再生保存部
112 環境差分検出部
114 衝突判定部
115 作業工数計算部
116 複数ロボット協調動作部
117 ロボットログ
80 メインテナンスシステム
801 メインテナンス計画
802 メインテナンスデータ
803 電子工程
804 検査要領データベース
805 検査基準データベース
806 評価結果ログ
807 環境3Dモデル
808 ロボットモデル
809 放射線管理データベース
800 交換寿命判定データベース
81 メインテナンス判定部
81a 動作負荷分析部
81b 累積線量分析部
82 メンテ情報抽出部
83 試験手順表示部
84 ロボット試験自動実行部
842a,842b カメラ
843 音響センサ
85 ロボット試験手動実行部
86 試験ログ蓄積部
87 試験結果判定部
88 試験結果可視化部
89 部品交換・修理作業指示部 (作業指示部)
810 入出力デバイス
811 タブレット端末 (端末)
812 ARグラス (端末)
813 ヘッドセット
821 画面
822 試験結果欄
823 テスト終了ボタン
824 再テストボタン
825 キャンセルボタン
826 発話アイコン
2201 環境データベース
22011 作業エリアデータ
2202 作業計画データ
2203 ロボットログ
2204 メインテナンス計画
2205 メインテナンスデータ
2211 動作記録部
2212 メインテナンス判定部
2212a 動作負荷分析部
2212b 累積線量分析部
2213 通信部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図32C
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41