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特許7500775電気自動車用ロッカレインフォースメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電気自動車用ロッカレインフォースメント
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240610BHJP
   B62D 25/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D25/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022570320
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2020054691
(87)【国際公開番号】W WO2021234433
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アセンプート,ダン
(72)【発明者】
【氏名】メルジ,ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルシウス,ジョエル
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143476(JP,A)
【文献】特開2015-110959(JP,A)
【文献】特開2006-264476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッカ構成部品(31、39)間に形成された中空容積(35)内に配置された閉鎖断面レインフォースメント(34)を有するロッカ組立体(3)であって、レインフォースメント(34)は、前記ロッカ構成部品(31、39)の上部水平壁と上部フランジとの間の移行ゾーン内、および前記ロッカ構成部品(31、39)の下部水平壁と下部フランジとの間の移行ゾーン内に配置された組付ゾーンにおいてロッカ構成部品(31、39)に組み付けられ、前記移行ゾーン内で、ロッカ構成部品(31、39)の組付ゾーンの外側に延びるレインフォースメント(34)の各部品と上部フランジおよび下部フランジとの間にそれぞれ形成された角度αおよびβが、90°~180°の間に含まれる、ロッカ組立体。
【請求項2】
レインフォースメントが組み付けられるロッカ構成部品はロッカインナ(31)である、請求項1に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項3】
レインフォースメントが組み付けられるロッカ構成部品はロッカアウタ(39)である、請求項1に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項4】
レインフォースメント(34)は単一の部品から作られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項5】
レインフォースメント(34)は、レインフォースメント(34)を形成するように一体に組み付けられた少なくとも2つの相異なる部品から作られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項6】
レインフォースメント(34)は、フィラーワイヤ溶接技術を使用した溶接によってロッカ構成部品(31、39)に組み付けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項7】
レインフォースメント(34)は、MAG溶接によってロッカ構成部品(31、39)に組み付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項8】
レインフォースメント(34)は、ステッチの形態の不連続な組付ジョイント(316)を使用してロッカ構成部品(31、39)に組み付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項9】
ステッチは上部移行ゾーンおよび下部移行ゾーンのものであり、位置合わせされている、請求項8に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項10】
ステッチは上部移行ゾーンおよび下部移行ゾーンのものであり、オフセットされている、請求項8に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項11】
レインフォースメント(34)は、ロッカインナ(31)の垂直壁にさらに組み付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項12】
レインフォースメント(34)は、ロッカアウタ(31)の垂直壁にさらに組み付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項13】
任意の所与の横断面について、レインフォースメント(34)の閉鎖断面は、所与の横断面において中空容積(35)によって画定される断面積の少なくとも80%を超える面積を占める、請求項1~12のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項14】
任意の所与の横断面について、仰角方向におけるレインフォースメント(34)の最大寸法は、中空容積(35)の仰角方向における最大寸法の少なくとも75%であり、横断方向におけるレインフォースメント(34)の最大寸法は、中空容積(35)の横断方向における最大寸法の少なくとも75%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の補強ロッカ組立体(3)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のロッカ組立体(3)を製造するための組立プロセスであって、
-第1のロッカ構成部品(31、39)を提供するステップと、
-前記第1の構成部品(31、39)に対して閉鎖断面レインフォースメント(34)を事前組付位置に位置決めするステップと、
-少なくとも第1のロッカ構成部品(31、39)の上部フランジと上部水平壁との間の移行ゾーン内、およびロッカ構成部品(31、39)の下部フランジと下部水平壁との間の移行ゾーン内でレインフォースメント(34)を取り付けることによって、レインフォースメントを第1のロッカ構成部品(31、39)に固定するステップと、
-このようにして組み付けられた第1のロッカ構成部品(31、39)とレインフォースメント(34)を、残りのロッカ構成部品(31、39)に固定して、補強ロッカ組立体(3)を形成するステップと、
を備える組立プロセス。
【請求項16】
レインフォースメント(34)および第1のロッカ構成部品(31、39)は、フィラーワイヤ溶接技術を使用して組み立てられる、請求項15に記載の組立プロセス。
【請求項17】
レインフォースメント(34)および第1のロッカ構成部品(31、39)は、MAG溶接を使用して組み付けられる、請求項15または16に記載の組立プロセス。
【請求項18】
ロッカインナ(31)の垂直壁をレインフォースメント(34)に組み付けるステップをさらに備える、請求項15~17のいずれか一項に記載の組立プロセス。
【請求項19】
ロッカアウタ(39)の垂直壁をレインフォースメント(34)に組み付けるステップをさらに含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の組立プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用ロッカレインフォースメントに関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素レベルの増加および局所的な大気汚染レベルに関連する環境上の懸念および規制が、電動自動車の増加を促している。従来の内燃機関車両と比較して、電気自動車はより小型のエンジンを有し、燃料タンクも排気システムもない。一方、電気自動車は、内燃機関には存在しない大きな電池パックを有する。
【0003】
電気自動車の場合、保護される必要がある大きな電池パックがある。同じプラットフォーム上で、電池パックを有さない従来の内燃機関車両を含む、いくつかのタイプの車両が製造されることができる。
【0004】
電池横の側部構造を補強する必要がある。特に側面衝突の場合に電池パックを保護する1つの不可欠な構造要素は、ロッカ組立体である。前記ロッカ組立体は、車両の底部に沿って延びる中空容積を画定する閉鎖断面を形成するように一体に組み付けられた上部フランジおよび下部フランジを有する略U字形のインナロッカおよびアウタロッカからなる。
【0005】
ロッカ組立体を補強するために、1つの可能性は、ロッカ組立体の中空容積内に1つまたは複数のレインフォースメントを含めることである。そのようなレインフォースメントは、開放断面または閉鎖断面のいずれかを有することができる。
【0006】
開放断面レインフォースメントは、フランジならびにロッカインナおよびロッカアウタの垂直壁に溶接または機械的に組み付けることによって容易に組み立てられることができる。このような溶接プロセスは、たとえ補強要素がなくても、インナロッカパネルおよびアウタロッカパネルの下部フランジおよび上部フランジを互いに固定する溶接ステップがあるため、車両の組立てシーケンスに自然に組み込まれる。
【0007】
一方、閉鎖断面レインフォースメントは、一般に、衝撃から生じる圧縮荷重に対してより良好な耐性を示し、より良好な剛性性能も有する。しかしながら、そのような閉鎖断面レインフォースメントは、ロッカインナおよびロッカアウタのフランジ上にそれらを容易に組み付けることを可能にする表面を構造的に収容することができない。さらに、補強効果を最大にするために、ロッカ組立体の中空容積内の可能な限り最大の空間を占める断面を有するレインフォースメントを設計することは興味深い。
【0008】
閉鎖断面補強要素がロッカ組立体内で大きな空間を占めるこのような構成は、ロッカインナおよび/またはロッカアウタへのレインフォースメントの効率的な組付に関する問題を引き起こす。1つの問題は、例えば溶接ツールなどの組付ツールのアクセス性である。もう1つの問題は、良好な組付を確保するために必要な幾何公差である。ロッカインナおよびロッカアウタならびにレインフォースメントは、鋼などの高強度材料から作製され、それらは車両の客室の全長をカバーする大きな部品である。スプリングバックに関してよく知られている問題は、例えば、組立て前の部品の寸法公差により、それらをすべて一緒に固定することが困難になることを伴う。さらなる問題は、ロッカ組立体およびレインフォースメントの機械的効率である。実際に、組付ツールのアクセス性および幾何公差に関する上記の論点に対する1つの単純な問題は、容易にアクセス可能な組立体の前端および後端においてのみロッカインナおよび/またはロッカアウタにレインフォースメントを固定することである。しかしながら、そうするとき、レインフォースメントならびにロッカインナおよびロッカアウタは、衝撃の場合に最適な方法で協働しない。例えば、組立体の非常に局所的な要請であるポール衝突の場合、ポールの貫通力によって、ロッカアウタ、レインフォースメント、およびロッカインナが連続的に曲がる。レインフォースメントが車両の長さに沿ってロッカインナおよびロッカアウタに取り付けられていないため、レインフォースメントの屈曲部分がロッカインナおよびロッカアウタの周囲部分によって屈曲することが抑制されない。したがって、結果として、ポールの貫通力は、レインフォースメントが車両の長さに沿ってロッカインナおよびロッカアウタに固定された場合より高くなり、続いて起こる電池パックへのポールの貫通力はより高くなり、電池自体の損傷につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、ロッカ組立体によって形成された中空容積の大きな空間を占める閉鎖断面レインフォースメントを有するロッカ組立体を提供することによって、これらの課題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、ロッカ構成部品間に形成された中空容積内に配置された閉鎖断面レインフォースメントを有する補強ロッカ組立体に関し、レインフォースメントは、前記ロッカ構成部品の上部水平壁と上部フランジとの間の移行ゾーン内、および前記ロッカ構成部品の下部水平壁と下部フランジとの間の移行ゾーン内でロッカ構成部品に組み付けられ、前記移行ゾーン内で、ロッカ構成部品の外側に延びるレインフォースメントの枝部とフランジとの間に形成された角度αおよびβは、90°~180°の間に含まれる。
【0011】
上述の発明を適用することにより、中空容積内で利用可能な垂直空間全体に及び、連続的または半連続的な組立体において組立体の全長に亘ってロッカ構成部品に組み付けられることができる閉鎖断面レインフォースメントを有するロッカ組立体を形成することが可能である。得られたロッカ組立体は、閉鎖断面レインフォースメントの優れた機械的耐性、そのようなレインフォースメントのための利用可能な空間の最大限の使用、および少なくともそれが組み付けられるロッカ構成部品とレインフォースメントとの間の良好な協働のおかげで、側面衝突の場合に最適化された機械的耐性を有する。
【0012】
単独で、または任意の可能な技術的組合せに従って考慮される、本発明によるロッカ組立体の他の任意選択の特徴によれば、
-レインフォースメントが組み付けられるロッカ構成部品は、ロッカインナである。
-レインフォースメントが組み付けられるロッカ構成部品は、ロッカアウタである。
-レインフォースメントは、単一の部品から作られる。
-レインフォースメントは、レインフォースメントを形成するように一体に組み付けられた少なくとも2つの相異なる部品から作られる。
-レインフォースメントは、フィラーワイヤ技術を使用した溶接によって組み付けられる。
-レインフォースメントは、MAG溶接によって組み付けられる。
-レインフォースメントは、ステッチの形態の不連続な組付ジョイントを使用して組み付けられる。
-ステッチは、上部移行ゾーンと下部移行ゾーンとの間で位置合わせされる。
-ステッチは、上部移行ゾーンと下部移行ゾーンとの間でオフセットされる。
-レインフォースメントは、ロッカインナの垂直壁にさらに組み付けられる。
-レインフォースメントは、ロッカアウタの垂直壁にさらに組み付けられる。
-任意の所与の横断面について、レインフォースメントの閉鎖断面は、ロッカインナとロッカアウタとの間の中空容積によって画定される全表面積の少なくとも80%を超える表面積を占める。
-任意の所与の横断面について、仰角方向におけるレインフォースメントの最大寸法は、中空容積の仰角方向における最大寸法の少なくとも75%であり、横断方向におけるレインフォースメントの最大寸法は、中空容積の横断方向における最大寸法の少なくとも75%である。
【0013】
本発明はさらに、上述のロッカ組立体を製造するための方法に関し、
-ロッカ構成部品を提供するステップと、
-前記ロッカ構成部品に対して閉鎖断面レインフォースメントを事前組付位置に位置決めするステップと、
-少なくともロッカ構成部品の上部フランジと上部水平壁との間の移行ゾーン内、およびロッカ構成部品の下部フランジと下部水平壁との間の移行ゾーン内で閉鎖断面レインフォースメントを取り付けることによって、閉鎖断面レインフォースメントをロッカ構成部品に固定するステップと、
-このようにして組み付けられたロッカ構成部品およびレインフォースメントを残りのロッカ構成部品に固定して、補強ロッカ組立体を形成するステップと、
を備える。
【0014】
ロッカ構成部品の移行ゾーンと補強要素との間の組付点の上述の特定の形状および構成のおかげで、レインフォースメントをロッカ構成部品に固定するのに必要な組付ツールは、組付点にアクセスするのに十分な空間を有する。
【0015】
上述のプロセスの利点の1つは、閉鎖断面レインフォースメントの組み付けがインナロッカとアウタロッカとの間の基本的な組付プロセスを変更しないという事実によってもたらされる柔軟性である。これは、レインフォースメントの存在にかかわらず、同じロッカインナおよびロッカアウタ組付プロセスが実行され得ることを意味する。この柔軟性のおかげで、レインフォースメントの有無にかかわらず、同じ製造ラインで車両が製造されることができる。例えば、内燃機関車両、バッテリ電気自動車などの車両プラットフォームは、同じプラットフォーム上に組み立てられることができ、電池パックのない1つ目のプラットフォームは、ロッカ組立体にレインフォースメントを必要としないが、2つ目のプラットフォームは、補強ロッカ組立体によってもたらされる追加の電池パック保護の恩恵を受ける。
【0016】
任意選択で、レインフォースメントおよびロッカ構成部品は、フィラーワイヤ溶接技術を使用して組み付けられる。
【0017】
任意選択で、レインフォースメントおよびロッカ構成部品は、MAG溶接を使用して組み付けられる。
【0018】
任意選択で、上述の組付プロセスは、次のステップ、すなわち、
-ロッカインナの垂直壁をレインフォースメントに組み付けるステップと、
-ロッカアウタの垂直壁をレインフォースメントに組み付けるステップと、
を備える。
【0019】
本発明の他の態様および利点は、例として与えられ、添付の図面を参照してなされる以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による車両の全体斜視図である。
図2】本発明による車両の側面図である。
図3】本発明の一実施形態による補強ロッカ組立体の分解図である。
図4】本発明の異なる実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントに関する図2の軸線II-IIによる横断面図である。
図5】本発明の異なる実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントに関する図2の軸線II-IIによる横断面図である。
図6】本発明の異なる実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントに関する図2の軸線II-IIによる横断面図である。
図7】本発明の一実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントの斜視図である。
図8a】本発明の異なる実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントの側面図である。
図8b】本発明の異なる実施形態によるロッカ構成部品およびレインフォースメントの側面図である。
図9】本発明の一実施形態による補強ロッカ組立体に関する図2の軸II-IIによる横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明において、「上部」、「下部」、「前」、「後」、「横」および「長手」という用語は、搭載対象の車両の通常の方向に従って定義される。より具体的には、「上部」および「下部」という用語は、車両の仰角方向(すなわち、図2のZの方向)に従って定義され、「前」、「後」および「長手」という用語は、車両の前/後方向(すなわち、図2のLの方向)に従って定義され、「横」という用語は、車両の幅に応じて定義される。
【0022】
図1および図2を参照すると、フロアパネルの下に電池パック5が配置された電気自動車またはハイブリッド車1(以下、単に車両と呼ぶ)用の補強ロッカ組立体3が記載されている。補強ロッカ組立体3は、車両の側部構造の一部を形成する。それは、長手方向に延びる車両の客室に及ぶ。これは、以下の実施形態で説明するように、独立型の組立体とすることができ、または、例えば、それぞれがテーラード溶接ブランクから打ち抜かれた単一部品から作られたドアリングの内側および外側などのより大きな部品に統合されることができる。
【0023】
車両の側面構造は、側面衝突の場合に車両の乗員を保護するように設計されている。このような側面衝突は、例えば、European New Car Assessment Program(EuroNCAP)Pole Side Impactなどの様々な標準化された衝突試験で説明されており、この試験では、衝突時の相対初期速度32km/hを有する固定ポールによって車両が側面衝突される。もう1つの標準化された側面衝突試験は、EuroNCAP Advanced European Mobile Deformable Barrier(AE-MDB)Side Impactであり、この試験では、車両の長さの一部に及び、60km/hの速度で走行する1400kgの標準化されたバリアによって車両が側面衝突される。
【0024】
フロアパネルの下に電池パック5が配置された車両1の場合、側面構造は、電池パック5の損傷を防ぐ機能をさらに有する。補強ロッカ組立体3は、前記電池パック5と同じ高さに配置されているため、電池パックの保護に直接関与する。
【0025】
図3および図9を参照すると、補強ロッカ組立体3は、一体に組み付けられたときに中空容積35を形成する2つのロッカ構成部品31、39から構成される。車両のより内側に位置するロッカ構成部品31は、ロッカインナ31と呼ばれる。車両のより外側に位置するロッカ構成部品39は、ロッカアウタ39と呼ばれる。補強ロッカ組立体3は、中空容積35を占める閉鎖断面レインフォースメント34によって補強されている。
【0026】
中空容積35は、ロッカ構成部品31、39の間に含まれる容積を示すことを理解されたい。この容積は、ロッカ構成部品31、39間の組付点を含まない。例えば、この容積は、フランジにおける組付点を具備しない。実際に、フランジは、互いに対して平坦に組み付けられ、したがって、互いの間に大きな容積を含まない。
【0027】
明確にするために、閉鎖断面レインフォースメントが取り付けられるロッカ構成部品としてロッカインナ31を使用して、本発明を以下に説明する。しかしながら、本発明は、ロッカインナ31とロッカアウタ39との間で完全に対称であり、これらは両方とも、上部フランジおよび下部フランジを有する略U字形の断面を有し、ともに中空容積35を形成する同じ機能を有し、両方とも、補強ロッカ組立体3を形成するように組み付けられたときに個別にかつ相乗的に側面衝突に耐える機能を有することに留意されたい。
【0028】
図4を参照すると、ロッカインナ31は、垂直壁313によって互いに連結された上部水平壁312、下部水平壁314を備える略U字形の断面を有する。前記壁312、313および314は、必ずしも厳密に真っ直ぐではなく、例えば垂直部分314vによって連結された2つの垂直部分314haおよび314hbを備える図4の下壁314の場合のように、相異なる部分を備えることができることに留意されたい。そのような設計は、他の部品の存在に対応するため、または部品を剛性化して座屈に対する耐性を高めるために有利となり得る。図4では、下壁314はいくつかの部分を備えるが、これは限定的ではない特定の実施形態である。他の壁312および313も、特定の用途のために行われる制約および設計選択に従って、複数のそのような部分を含むことができる。
【0029】
上部フランジ311および下部フランジ315は、それぞれ上部水平壁312および下部水平壁314から延びる。前記フランジは、例えばそれらの長さに沿ったいくつかの領域においてそれらを互いにスポット溶接することによって、ロッカインナ31をロッカアウタ39の対向するフランジに組み付けるように設計される。補強ロッカ組立体の組み立てられた構成は図9に示されており、その上に、2つのロッカ構成部品31、39の組み付けられた対向するフランジを明確に見られることができる。
【0030】
図9を参照すると、以下単にレインフォースメント34と呼ばれる閉鎖断面レインフォースメント34は、中空容積35の容積の一部を占める。
【0031】
図4は、ロッカインナおよびロッカアウタのフランジを互いに固定することによってロッカアウタ39をさらに組み付けることによって補強ロッカ組立体3が完全に形成される前の、ロッカインナ31およびレインフォースメント34をそれらの組付位置で示している。レインフォースメントは、壁312、313および314内に含まれる容積の一部を占め、この限定された容積から外側に延びる。
【0032】
レインフォースメント34は、上部フランジ311と上部水平壁312との間の移行ゾーン内、および下部フランジ315と下部水平壁314との間の移行ゾーン内でロッカインナ31に組み付けられる。図4を参照すると、組付ツールが移行ゾーン内の組付領域にアクセスすることを可能にするために、フランジ311、315、およびロッカインナの外側に延びるレインフォースメント34の枝部によって画定される角度αおよびβは、少なくとも90°である。実際に、前記角度αまたはβの一方が90°未満である場合、組付ツールが組み付けを実行する必要があるアクセス領域は非常に狭くなり、特定の手段を実施し、特定のツーリングを使用して組み付けを実行する必要がある。これは、組立てコストと生産性に悪影響を及ぼす。既存のまたは考えられる組付ツールにとってアクセス領域が狭すぎて、組立体を事実上不可能にする可能性さえある。角度αおよびβを最大値180°に限定することも本発明の特徴の1つである。実際に、角度が180°を超える場合、レインフォースメント34の外側に延びる枝部とフランジ311またはフランジ315との相対的な位置決めは、工業的に不可能ではないにしても、それらを組み付けることを困難にする。なぜなら、それらは組み付け後に互いに容易に載置されないからである。
【0033】
上壁312と上部フランジ311との間の上部移行ゾーンにおけるロッカインナ31とレインフォースメント34との間の組み付けをさらに示すために、組付領域の拡大図が図4に示されている。組付ツールによって形成されたジョイント316が、本発明をよりよく理解するために具体化されている。図示されたジョイント316の特定の形状および外観は、説明のための例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0034】
特定の実施形態では、ジョイント316を製造するための組立技術は、部品を互いに固定するためにワイヤを使用するMAG溶接またはMIG溶接プロセスなどのフィラーワイヤを含む溶接作業である。もう1つの種類のフィラーワイヤ溶接技術は、フィラーワイヤを溶融するレーザビームを備える溶接ヘッドの使用とすることができる。
【0035】
有利には、フィラーワイヤ溶接技術を使用することにより、上述の組付領域においてロッカインナ31とレインフォースメント34との間に存在し得る隙間を埋めることが可能である。工業的状況では、特にスプリングバックの問題が生じやすい非常に高強度の鋼を使用する場合に、そのような隙間が頻繁に発生し、工業部品の非常に低い幾何公差に達することが不可能になる。有利には、フィラーワイヤ溶接プロセスを適用することにより、広範囲の幾何公差にわたって組付プロセスの工業的堅牢性および再現性が保証される。ロッカインナ31とレインフォースメント34との間の組付領域の記載された設計は、ロッカインナの壁312、313および314によって画定された容積の内側に向かってジョイント316の周りに開放空間を提供するように設計されることができる組付構成を提供するので、フィラーワイヤ溶接技術の適用に特に有利であることにも留意されたい。これは、次に、溶接作業から生じる蒸気がジョイント316から逃げるための十分な空間を提供し、それによってジョイント306内に気泡が閉じ込められるリスクを最小限に抑える。閉じ込められた気泡は、溶接ジョイントを弱め、特に亜鉛がコーティングされた部品に適用される場合、亜鉛の沸点が低いため、フィラーワイヤ溶接における周知の問題である。
【0036】
図7図8aおよび図8bに示す特定の実施形態では、ロッカインナ31とレインフォースメント34との間の組付ジョイント316は、長手方向の部品の長さに沿って連続していない。代わりに、これは長手方向に沿って分布された不連続なステッチからなる。有利には、不連続ステッチを使用して部品を固定することにより、組付時間が短縮され、組付ツールの摩耗が低減され、フィラーワイヤ溶接技術が使用される場合のフィラーワイヤの消耗が低減される。また、部品に組み込まれる溶融したフィラーワイヤの量が少なくなるため、組立体の全体的な重量も低減する。また、組み付けられた部品に弱点を引き起こす可能性がある熱影響領域の量も減少する。また、溶接プロセスの入熱によって引き起こされる部品の熱歪みのリスクを低減し、より良好な幾何公差を有する最終組立体を提供する。さらに、フィラーワイヤ溶接が使用される場合、溶接作業から生じる金属蒸気がステッチの側面で逃げるさらなる可能性があるため、ステッチ溶接も溶接ジョイント内の気泡形成のリスクを減少させる。最後に、たとえロッカインナ31とレインフォースメントとの間の組付ジョイントが連続的でなくても、ステッチが部品の長さの広い領域に沿って存在するという事実は、側面衝突の場合に部品間の非常に良好な機械的協働をなおも保証する。
【0037】
組付ジョイント316を形成する上述のステッチは、図8bに示すように、上部移行ゾーンと下部移行ゾーンのステッチの間で位置合わせされることができるか、または図8aに示すように長手方向にオフセットされ得る。有利には、オフセット構成を使用することは、溶接作業の入熱によってもたらされる熱歪み効果を緩和するのに役立つことができる。
【0038】
特定の実施形態では、レインフォースメント34は、例えば接着結合を使用してレインフォースメント34を垂直壁313に固定することによって、移行ゾーンの別の領域においてロッカインナ31にさらに組み付けられることができる。例えば、レインフォースメント34をロッカインナ31の内側に位置決めする前に、接着剤が塗布されることができる。接着剤は、レインフォースメント34の閉鎖断面の外側または垂直壁313あるいは両面に塗布されることができる。有利には、説明したようにレインフォースメント34をロッカインナ31にさらに固定することにより、2つの部品間の結合がさらに強化され、それにより、側面衝突の場合にそれらの積極的な協働が増加する。さらに、レインフォースメント34を移行ゾーン以外の領域でロッカインナ31に固定するこのステップは、両方の部品を移行ゾーン内で組み付ける上述のステップの前に実行されることができる。有利には、そうすることによって、両方の部品をそれぞれ互いにしっかりと固定したままにすることが可能であり、その結果、それらは移行ゾーン内での組付ステップ中に動かない。
【0039】
図4図5、および図6は、レインフォースメント34のいくつかの異なる可能な実施形態を示す。図4および図5のレインフォースメント34は両方とも単一の部品から作られており、例えば、ロール成形作業とそれに続く断面を閉鎖したままにする溶接作業によって製造されることができる。図5のレインフォースメントは、図4のレインフォースメントには存在しない、下部移行ゾーンにおいてロッカインナ31から外側に延びる壁の幾何学的変化があるという点で、図4のレインフォースメントとは異なる(下部移行ゾーンにおいてロッカインナから外側に延びるレインフォースメントの壁は、図4では真っ直ぐである)。そのような幾何学的特徴の影響は、角度βを増加させることであり、したがって、組付ツールが組付領域にアクセスして、下部移行ゾーンにおいて組付ジョイント316を生成するためのより多くの空間を残すことである。
【0040】
図4および図5に示されるレインフォースメント34はまた、側面衝突によって引き起こされる圧縮荷重に対する耐性を高めるための特定の特徴を示す。実際に、前記レインフォースメントの内側水平壁は、図5に示される2つの別個の平面内に延び、上部内側水平壁は平面341aおよび341bに沿って延び、下部内側水平壁は平面342aおよび342bに沿って延びる。このようなレインフォースメント34に、少なくとも2つの相異なる平面にわたって延びる水平壁を設けることによって、圧縮荷重に対するより高い耐性、特に圧縮荷重下での座屈に対するより良好な耐性を有するレインフォースメント34を設計することが可能である。
【0041】
図6に示すレインフォースメント34は、内側レインフォースメント34aおよび外側レインフォースメント34bの2つの別個の部品から作られ、これらは、例えばMAG溶接またはレーザ溶接によって一体に組み付けられてレインフォースメント34を形成する。内側レインフォースメント34aは、例えば、ロール成形および溶接によって作られる。外側レインフォースメント34bは、例えば、冷間スタンプまたは熱間スタンプによって作られる。一体に組み付けられたいくつかの相異なる部品から作られたレインフォースメント34を設けることにより、レインフォースメント34の相異なる部品における材料の使用を最適化することが可能である。単一の部品のみでは達成されることができない形状を有するレインフォースメント34を設計することも可能である。一体に組み付けられた少なくとも2つの相異なる部品から作製されたレインフォースメントの場合、組立体の幾何公差は、レインフォースメント34を構成する相異なるサブ部品の幾何公差の合成である。既に述べたように、関連するスプリングバック問題を有する高強度の鋼の使用は、高い幾何公差を誘発する可能性があり、この影響は、いくつかのサブ部品を含むレインフォースメント34の合成幾何公差の場合に増大する。この場合、工業的な大量生産構成で遭遇される幾何公差の分布に対応するために、前述のようにフィラーワイヤ溶接技術を適用することがさらに有利である。
【0042】
一般に、本発明は、角度αおよびβが90°~180°の範囲に含まれることを条件として、任意の形状の閉鎖断面レインフォースメント34を使用して適用されることができる。レインフォースメント34の形状、材料、および厚さは、中空容積35内にそれを取り付けることに関連する特定の制約、および側面衝突、および場合によっては本体剛性、正面衝突、後方衝突などの他の要件に関連する特定の要件を満たすように設計者によって調整される。考慮すべき他の制約には、とりわけ製造コストおよび部品重量が含まれる。
【0043】
ロッカインナ31およびレインフォースメント34が互いに固定されると、ロッカアウタ39が、補強ロッカ組立体3を形成するために、それぞれのフランジ領域においてロッカインナ31に固定される。前述したように、レインフォースメント34をロッカインナ31に組み付け、次いでこのサブ組立体をロッカアウタ39に組み付けることは、可能な一実施形態であり、これは簡略化のためにより詳細に説明された。しかしながら、本発明は、まずレインフォースメント34をロッカアウタ39に組み付け、次いでこのサブ組立体をロッカインナ31に固定することによって適用されることもでき、ロッカ構成部品31および39の両方は対称的な役割を果たす。
【0044】
レインフォースメント34およびロッカインナ31が移行ゾーン以外の領域、例えば垂直壁313の領域でさらに組み付けられる特定の実施形態に関して前述したように、特定の実施形態では、レインフォースメント34をロッカアウタ39に、例えばロッカアウタ39の垂直壁に沿って固定することも可能である。例えば、図9の特定の実施形態では、両方の部品が互いに接触している領域39aおよび39bにおいてレインフォースメント34をロッカアウタ39に固定することが可能である。これは、例えば接着結合によって行われることができる。接着剤は、例えば、レインフォースメント34またはロッカアウタ39あるいは両方の部品に塗布されることができる。有利には、これは、レインフォースメント34とロッカアウタ39との間の結合をさらに増加させ、それによって例えば側面衝突の圧縮荷重下での部品の協働をさらに促進する。
【0045】
上述の補強ロッカ組立体3は、側面衝突の場合に電池パック5を保護するのに適している。例えば、組立体の非常に局所的な要請であるポール衝突の場合、ポールの貫通力によって、ロッカアウタ、レインフォースメント、およびロッカインナが連続的に曲がる。レインフォースメントは、長手方向の部品の大きな長さにわたってロッカ構成部品31、39の少なくとも一方に良好に取り付けられているため、レインフォースメント34の屈曲部分は、レインフォースメントが取り付けられるロッカ構成部品31、39の周囲部分によって屈曲が抑制される。結果として、ポールの貫通力は、レインフォースメント34が車両の長さに沿ってロッカ構成部品31、39に固定されなかった場合より低くなる。したがって、続いて起こる電池パックへのポールの貫通力はより低くなり、それによって電池パックおよび電池セルが保護される。上述の補強ロッカ組立体3はまた、側面衝突の場合の車両の乗員の保護にも寄与する。それはまた、衝撃の荷重を吸収して車両の他の構造部品に伝達することによって、正面衝突または後方衝突の場合に能動的な役割を果たすことができる。それは、車両の全体的な剛性を高めることにさらに寄与することができる。
【0046】
補強ロッカ組立体3の強度に対するレインフォースメント34の影響を最大にするために、中空容積35内でレインフォースメント34の閉鎖断面が占める空間の量を最大にすることが有利である。特定の実施形態では、任意の所与の横断面について、レインフォースメント34の閉鎖断面は、中空容積35によって画定される全表面積の少なくとも80%を超える表面積を占める。特定の実施形態では、任意の所与の横断面について、仰角方向におけるレインフォースメント34の最大寸法は、中空容積35の仰角方向における最大寸法の少なくとも75%であり、横断方向におけるレインフォースメント34の最大寸法は、中空容積35の横断方向における最大寸法の少なくとも75%である。
【0047】
補強ロッカ組立体3の強度を最大にするために、非常に高強度の鋼を適用してロッカ構成部品31、39およびレインフォースメント34を製造することは興味深い。
【0048】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方は、950MPaを超える引張強度を有するプレス硬化鋼から作られる。一実施形態によれば、プレス硬化鋼の組成は、重量%で、0.06%≦C≦0.1%、1%≦Mn≦2%、Si≦0.5%、AI≦0.1%、0.02%≦Cr≦0.1%、0.02%≦Nb≦0.1%、0.0003%≦B≦0.01%、N≦0.01%、S≦0.003%、P≦0.020%、0.1%未満のCu、NiおよびMoを含み、残りは、鉄および精錬から生じた不可避の不純物である。この組成範囲では、この部品の降伏強度は700~950MPaの間に含まれ、引張強度は950~1200MPaの間に含まれ、曲げ角度は75°を超える。例えば、この部品は、Ductibor(R)1000から作られる。特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方は、1300MPaを超える引張強度を有するプレス硬化鋼から作られる。一実施形態によれば、鋼組成は、例えば、重量%で、0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%を含み、残りは、鉄および精錬から生じた不可避の不純物である。この組成範囲では、プレス硬化後の少なくとも1つのロッカ構成部品31、39の引張強度は、1300~1650MPaの間に含まれる。例えば、少なくとも1つのロッカ構成部品31、39はUsibor(R)1500から作られる。
【0049】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方は、1800MPaを超える引張強度を有するプレス硬化鋼から作られる。例えば、補強された非変形性部36の鋼組成は、重量%で、0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%を含み、残りは、鉄および精錬から生じた不可避の不純物である。この組成範囲では、プレス硬化後の少なくとも1つのロッカ構成部品31、39の引張強度は1800MPaより高い。例えば、少なくとも1つのロッカ構成部品31、39はUsibor(R)2000から作られる。
【0050】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、1100MPaより高い引張強度を有する完全マルテンサイト鋼から作られる。例えば、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、MartiNsite(R)1100から作られる。
【0051】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、1200MPaより高い引張強度を有する完全マルテンサイト鋼から作られる。例えば、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、MartiNsite(R)1200から作られる。
【0052】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、1300MPaより高い引張強度を有する完全マルテンサイト鋼から作られる。例えば、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、MartiNsite(R)1300から作られる。
【0053】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、1500MPaより高い引張強度を有する完全マルテンサイト鋼から作られる。例えば、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、MartiNsite(R)1500から作られる。
【0054】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、1700MPaより高い引張強度を有する完全マルテンサイト鋼から作られる。例えば、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、MartiNsite(R)1700から作られる。
【0055】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39の少なくとも一方またはレインフォースメント34は、亜鉛ベースのコーティングなどの腐食保護をもたらす金属コーティングでコーティングされる。
【0056】
特定の実施形態では、ロッカ構成部品31、39およびレインフォースメント34を製造するために使用される鋼の厚さは、1.0~2.0mmの間に含まれる。
【0057】
本発明はさらに、上述のような補強ロッカ組立体3を製造するための方法に関し、
-第1のロッカ組立体構成部品31、39を提供するステップと、
-前記第1のロッカ構成部品31、39に対して閉鎖断面レインフォースメント34を事前組付位置に位置決めするステップと、
-少なくとも第1のロッカ構成部品31、39の上部フランジと上部水平壁との間の移行ゾーン内、および第1のロッカ構成部品31、39の下部フランジと下部水平壁との間の移行ゾーン内でレインフォースメント34を取り付けることによって、レインフォースメントを前記第1のロッカ構成部品31、39に固定するステップと、
-このようにして得られた第1のロッカ構成部品31、39とレインフォースメント34との間の組立体を、他方のロッカ構成部品31、39に固定して、補強ロッカ組立体3を形成するステップと、
を備える。
【0058】
第1のロッカ構成部品31、39の移行ゾーンとレインフォースメント34との間の組付点の上述の特定の形状および構成のおかげで、レインフォースメント34を第1のロッカ構成部品31、39に固定するのに必要な組付ツールは、組付点にアクセスするのに十分な空間を有する。
【0059】
上述のプロセスの利点の1つは、レインフォースメント34の存在が第1のロッカ構成部品31と39との間の基本的な組付プロセスを変更しないという事実によってもたらされる柔軟性である。これは、レインフォースメント34の存在にかかわらず、同じ基本的なロッカ組付プロセスが実行され得ることを意味する。この柔軟性のおかげで、レインフォースメントの有無にかかわらず、同じ製造ラインで車両が製造されることができる。例えば、内燃機関車両、バッテリ電気自動車などの車両プラットフォームは、同じプラットフォーム上に組み立てられることができ、電池パックのない1つ目のプラットフォームは、ロッカ組立体にレインフォースメントを必要としないが、2つ目のプラットフォームは、補強ロッカ組立体3によってもたらされる追加の電池パック保護の恩恵を受ける。
【0060】
任意選択で、レインフォースメント34および第1のロッカ構成部品31、39は、フィラーワイヤ溶接技術によって組み付けられる。
【0061】
任意選択で、レインフォースメント34および第1のロッカ構成部品31、39は、MAG溶接によって組み付けられる。
【0062】
任意選択で、レインフォースメント34と第1のロッカ構成部品31、39との間の上述の組み立ては、ステッチとしても知られる不連続な組付ジョイント316を使用して行われる。任意選択で、上部移行ゾーンおよび下部移行ゾーンのステッチは互いに位置合わせされる。任意選択で、上部移行ゾーンおよび下部移行ゾーンのステッチは互いにオフセットされる。
【0063】
任意選択で、上述の組立プロセスは、次のステップ、すなわち、
-ロッカインナの垂直壁をレインフォースメントに組み付けるステップと、
-ロッカアウタの垂直壁をレインフォースメントに組み付けるステップと、
を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9