(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】コーキング防止装置、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C23C 8/10 20060101AFI20240610BHJP
C22C 30/00 20060101ALN20240610BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20240610BHJP
C22C 38/34 20060101ALN20240610BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20240610BHJP
C22F 1/16 20060101ALN20240610BHJP
C21D 9/08 20060101ALN20240610BHJP
C21D 9/50 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
C23C8/10
C22C30/00
C22C38/00 302Z
C22C38/00 301Z
C22C38/34
C22F1/00 613
C22F1/00 626
C22F1/00 640A
C22F1/00 641A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/16 Z
C21D9/08 E
C21D9/08 F
C21D9/50 101A
(21)【出願番号】P 2022580164
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2021101435
(87)【国際公開番号】W WO2021259233
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】202010582144.8
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010582183.8
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010582969.X
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010582151.8
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王紅霞
(72)【発明者】
【氏名】王国清
(72)【発明者】
【氏名】王申祥
(72)【発明者】
【氏名】▲チア▼景省
(72)【発明者】
【氏名】張利軍
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101565807(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105087046(CN,A)
【文献】国際公開第2010/093034(WO,A1)
【文献】米国特許第05288345(US,A)
【文献】米国特許第05630887(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101565808(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106591845(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/10
C22C 30/00
C22C 38/00
C22C 38/34
C22F 1/00
C22F 1/16
C21D 9/08
C21D 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素分圧ガスを装置と接触反応させて、内面に酸化皮膜を含むコーキング防止装置を得るステップを含み、
前記低酸素分圧ガスの露点
が0℃~
10℃であ
り、
前記装置は合金炉管であり、
合金炉管では、金属元素はニッケル元素20~50wt%と鉄元素5~40wt%を含み、さらに、前記合金炉管では、上記鉄元素及びニッケル元素に加えて、クロム元素12~50wt%、マンガン元素0.2~3wt%、ケイ素元素1~3wt%、炭素元素0.1~0.75wt%、微量元素0~5wt%及び痕跡元素をさらに含み、前記微量元素は、ニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム及び希土類から選択される1種又は複数種であり、前記痕跡元素は硫黄及び/又はリンから選択され、
前記低酸素分圧ガスはH
2
OとCOのガス混合物であること、
を特徴とするコーキング防止装置の製造方法。
【請求項2】
低酸素分圧ガスを装置と接触反応させて、内面に酸化皮膜を含むコーキング防止装置を得るステップを含み、
前記低酸素分圧ガスの露点が-10℃~10℃であり、
前記装置は急冷ボイラであり、
接触反応前に、急冷ボイラチューブサイドの炉管中の鉄元素の総含有量は80~97wt%であり、上記鉄元素に加えて、クロム元素2~15wt%、モリブデン元素0.25~0.35wt%、マンガン元素0.55~0.65wt%、ケイ素元素0.5~1.9wt%、炭素元素0.14~0.17wt%、酸素元素<3wt%、微量元素0.15~0.65wt%をさらに含み、前記微量元素はAl、Nb、Ti、W及び希土類元素のうちの少なくとも1種であり、
前記低酸素分圧ガスはCO
2
とCOのガス混合物であること、
を特徴とするコーキング防止装置の製造方法。
【請求項3】
低酸素分圧ガスを装置と接触反応させて、内面に酸化皮膜を含むコーキング防止装置を得るステップを含み、
前記低酸素分圧ガスの露点が-5℃~5℃であり、
前記装置は軽質炭化水素の芳香族化反応器であり、
前記芳香族化反応器の合金材料はステンレス鋼304、316及び321から選択される少なくとも1種であり、
前記低酸素分圧ガスはCH
4
とH
2
Oのガス混合物であること、
を特徴とするコーキング防止装置の製造方法。
【請求項4】
前記酸化皮膜はクロム・マンガン酸化物と金属元素を含み、前記金属元素は鉄元素及び/又はニッケル元素である請求項1
~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記低酸素分圧ガスの露点及びコーキング防止装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量が以下の関係を満た
し、前記金属元素は鉄元素及び/又はニッケル元素である、請求項
4に記載の製造方法。
(W1-W2)/W1=aT
2+bT+c 式I
(式I中、-0.0039≦a≦-0.0001、0.001≦b≦0.0294、0.7269≦c≦0.8577、R
2≧0.879であり、
W1は接触反応前の装置中の金属元素の含有量(wt%)であり、W2は接触反応後の装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量(wt%)であり、Tは低酸素分圧ガスの露点(℃)である。)
【請求項6】
前記芳香族化反応器の合金材料はステンレス鋼304で
ある請求項
3に記載の製造方法。
【請求項7】
(W1-W2)/W1≧0.281である請求項
5に記載の製造方法。
【請求項8】
(W1-W2)/W1≧0.583である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
低酸素分圧ガスの露点を測定するステップを含む請求項1~
8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記接触反応の条件は、反応温度が400~1100℃、反応時間が5~100hであることを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接触反応の条件は、反応温度が600~1100℃であり、反応時間が5~72hであることを含む請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記合金炉管は炉管内に固定された強化伝熱部材を含む請求項
1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記強化伝熱部材はツイストスライス、内部リブ及び内部フィンから選択される少なくとも1種である請求項1
2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記強化伝熱部
材は長さが20~80cmであり、数が1~200本であり、炉管全体の様々なチューブサイドに亘って分布している請求項
13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2020年06月23日、2020年06月23日、2020年06月23日、2020年06月23日に提出された中国特許出願202010582151.8、202010582144.8、202010582969.X、202010582183.8の利益を主張しており、当該出願の内容は引用によりここに組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は石油炭化水素分解の分野及び軽質炭化水素の芳香族化装置の分野に関し、具体的には、コーキング防止装置、その製造方法及び使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
分解炉、急冷ボイラ及び芳香族化反応器などは石油化学工業でよく使われる装置であり、炭化水素類の分解によるエチレンの製造又は軽質炭化水素の芳香族化反応において重要な装置の1つである。上記装置の使用中の高温強度を確保するために、分解炉、急冷ボイラ及び芳香化反応器の材質は主にFe、Cr、Niなどの元素を含んでおり、分解炉、急冷ボイラ及び芳香族化反応器の運転条件の下で、装置中のFe及び/又はNi元素は装置内壁に触媒コーキングが発生し、浸炭などの現象が発生し、最終的に分解炉管、急冷ボイラのチューブサイドの炉管及び軽質炭化水素の芳香族化反応器などの装置内壁の炭素蓄積が深刻になり、層圧力低下が増加し、長期運転ができなくなる。また、重質炭化水素原料は、分解の過程で大量のラジカルコーキング及び重縮合コーキングを伴う。
【0004】
現在、コーキングと浸炭を緩和するためには、主に分解原料にコーキング抑制剤を添加する方法と反応器の内面にコーキング防止コーティングを塗布する方法との2つの方法が採用されている。コーキング抑制剤を添加して反応器の内面を鈍化させるか、又はコークスをガス化させる方法は、下流の製品に汚染をもたらすだけでなく、専用の注入装置を追加する必要があり、しかも、この方法は、低温コーキングに対する効果が低い。現在、反応器の内面に不活性コーティングを製造する方法が主に研究されており、この不活性コーティングは炭化水素類と分解炉管内面のFe及び/又はNiのような活性成分との接触を減少させ、これによって、Fe及び/又はNi活性成分による触媒コーキングを減少させることができる。一方、研究者はまた反応器内部の部材の増加、反応器内の圧力の減少、滞留時間の減少、分解温度の低下、分解原料の最適化などの対策を用いて分解過程中のラジカルコーキングと重縮合コーキングを減少させている。
【0005】
反応器の内面に保護層を形成する方法は、2種類の異なる形式がある。1つは溶射、熱スパッタリング、高温焼結、化学熱処理、化学気相堆積などの手段により、反応器の内面に保護層を形成することであり、このような方法の欠点は保護層が反応器の基体と十分に結合しておらず、剥離しやすいことであり、もう1つは、一定の温度、特定の雰囲気で処理することにより、反応器の内面にその場で酸化物保護層を生成させる方法であり、この方法の利点は、保護層が炉管基体との結合力が強く、剥離しにくいことである。
【0006】
カナダのNOVAケミカル社は、低酸素分圧雰囲気下で分解炉管の内面を処理してクロム・マンガンスピネル酸化皮膜を得るための一連の特許を開示しており、US5630887A、US6436202B1、US6824883B1、US7156979B2、US7488392B2等を含む。開示された資料によると、この技術はエタン、プロパンなどの軽質炭化水素を原料とするガス分解炉では良好なコーキング抑制効果を示したが、液体原料の分解過程でのコーキング防止効果は低い。ガス分解炉のコーキングは触媒コーキングを主とするため、酸化皮膜は炉管内の触媒コーキング活性を有するFe、Ni元素と炭化水素類コーキング源とを隔離させる。ナフサ、ディーゼル油などを原料とする液体分解炉では、そのコーキングも触媒コーキングを基礎とするが、重縮合コーキングは総コーキング量の50%以上を占め、その中で重縮合コーキングは完全に酸化皮膜を覆う。したがって、液体分解炉管内では、酸化皮膜が重縮合コーキングで覆われていないため、炉管の運転初期のみに酸化皮膜が有効であり、分解炉が中後期まで運転されると、酸化皮膜はその効果を発揮しない。
【0007】
CN105506713Aは、部材上にクロム系コーティングを形成する方法を開示しており、前記部材及び対電極を、3価クロム塩及びナノセラミック微粒子を含む電解液に浸漬するステップと、前記部材及び対電極に電流を印加するステップと、クロムとナノセラミック微粒子とを含むクロム系コーティング層を前記部材上に電気めっきするステップとを含む。電気めっきを通じてクロムコーティングを形成することによりFe、Ni元素が被覆される。
【0008】
CN103374705Aはマグネトロンスパッタリング装置を開示しており、この装置は反応室、チャック及びターゲット材を含み、前記チャックは前記反応室の底部に配置され、加工対象ワークを載置するために使用され、前記ターゲット材は前記反応室の上部に配置され、前記反応室の側壁の外側にはサイドマグネットが設けられており、また、前記サイドマグネットは前記チャックの上方に位置しており、前記チャックの縁部には補助マグネットがあり、前記補助マグネットの磁極は前記サイドマグネットの磁極と同一方向に配置され、前記補助マグネットと前記サイドマグネットとは磁気回路を形成し、前記磁気回路によりプラズマ中の金属イオンが前記反応室の縁部領域に向けて移動し、前記加工対象ワークの縁部領域へのターゲット材粒子の堆積量が増加する。不活性コーティングはマグネトロンスパッタリング装置により形成される。
【0009】
しかし、外来元素を塗布して形成されたこれらの不活性コーティングは、実際の工業使用の過程では寿命が短く、数サイクルの運転でコーティングが大量に剥がれてしまうことが多いため、これらのコーティングは工業で広く使用されていない。
【0010】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、装置の内壁のコーキング及び浸炭、装置の内面に酸化皮膜が製造されにくいという従来技術の課題を解決するために、コーキング防止装置、その製造方法及び使用を提供することである。低酸素分圧ガスの露点と処理前後の装置中のFe及び/又はNi金属元素の含有量との間の関係を制御することで、該方法によって製造された装置の内面に緻密で安定的な酸化皮膜を形成し、触媒コーキングの現象を抑制又は緩和し、装置の浸炭度を低下させ、装置の耐用年数を延ばす。
【0011】
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成させるために、本発明の第1態様は、
低酸素分圧ガスを装置と接触反応させて、内面に酸化皮膜を含むコーキング防止装置を得るステップを含み、
前記低酸素分圧ガスの露点が-40℃~40℃であることを特徴とするコーキング防止装置の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第2態様は、上記製造方法によって製造されるコーキング防止装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様は、上記コーキング防止装置の、分解炉、急冷ボイラ及び芳香族化反応器の少なくとも1種における使用を提供する。
【0014】
〔発明の効果〕
上記技術案によれば、本発明によるコーキング防止装置、その製造方法及び使用は以下の有益な効果が得られる。
【0015】
本発明は、低酸素分圧ガスの露点を制御し、特に低酸素分圧ガスの露点とコーキング防止装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量との間の関係を制御することによって、装置の内面に構造が緻密で安定的な酸化皮膜を形成することを確保し、触媒コーキングの現象を顕著に抑制又は緩和し、装置の浸炭度を低下させ、装置の耐用年数を延ばす。
【0016】
さらに、本発明によるコーキング防止装置の内面にはその場成長することにより生成された酸化皮膜を有し、得られた酸化皮膜と装置基体との結合力が高く、これによって、装置のコーキング及び浸炭の問題を解決するとともに、装置の長期間使用を可能とする。
【0017】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で開示された範囲の端点及び任意の値は全てこの正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個別の点値との間、及び個別の点値の間を互いに組み合わせて1つ又は複数の新しい数値範囲を構成してもよく、これらの数値の範囲は本明細書で具体的に開示されるものとしてみなすべきである。
【0018】
本発明の第1態様は、低酸素分圧ガスを装置と接触反応させて、内面に酸化皮膜を含むコーキング防止装置を得て、
前記低酸素分圧ガスの露点が-40℃~40℃である、ことを特徴とするコーキング防止装置の製造方法を提供する。
【0019】
本発明では、低酸素分圧雰囲気とは還元性雰囲気を指す。その中での酸素分圧は低いので、酸化の進行が非常に遅く、材料の表面に緻密な酸化皮膜の生成に有利である。酸素分圧とは、雰囲気中に存在する酸素ガスの占める圧力を意味し、低酸素分圧雰囲気では、雰囲気中の酸素ガスは主に酸素含有化合物(例えばH2O)の分解による酸素に由来する。
【0020】
工程でも、実験室でも、低酸素分圧雰囲気を取得することは困難であり、流量制御装置によって安定的な低酸素分圧雰囲気を取得することは非常に困難で、実現しにくい。本発明者らは理論分析及び大量の試験を通じて、驚くべきことに、混合ガスの露点を制御し、例えば低酸素分圧ガスの露点を-40℃~40℃に制御することによって、装置の内面に構造が緻密で安定的な酸化皮膜を形成し、触媒コーキングの現象を顕著に抑制又は緩和し、装置の浸炭度を低下させ、装置の耐用年数を延ばすことができることを発見した。
【0021】
本発明では、露点とは、空気中の飽和水蒸気が凝結して結露し始める温度であり、100%の相対湿度での周囲の環境の温度が露点温度である。
【0022】
本発明では、前記方法は低酸素分圧ガスの露点を測定するステップをさらに含む。
【0023】
本発明では、前記方法は、装置と接触する低酸素分圧ガスが本発明により限定される露点を有するように、低酸素分圧ガスを装置と接触反応させる前に、(市販の露点測定装置によって)低酸素分圧ガスの露点を測定することをさらに含む。
【0024】
さらに、前記方法は接触反応において、市販の露点測定装置によって接触反応体系中の低酸素分圧ガスの露点をリアルタイムで監視するステップをさらに含む。
【0025】
本発明によれば、前記装置の構成元素は鉄元素及び/又はニッケル元素を含む。
【0026】
本発明によれば、前記酸化皮膜はクロム・マンガン酸化物及び金属元素を含み、前記金属元素は鉄元素及び/又はニッケル元素である。
【0027】
本発明では、前記クロム・マンガン酸化物の組成はMnxCr3-xO4であり、xの値は0.5~2である。
【0028】
本発明では、接触反応前の装置中の金属元素の含有量及び接触反応後のコーキング防止装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量はエネルギー分散型X線分析(EDS)法によって測定される。
【0029】
本発明によれば、前記低酸素分圧ガスの露点とコーキング防止装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量とが以下の関係を満たす。
【0030】
(W1-W2)/W1=aT2+bT+c 式I
(式I中、-0.0039≦a≦-0.0001、0.001≦b≦0.0294、0.7269≦c≦0.8577、R2≧0.879であり、
ただし、W1は接触反応前の装置中の金属元素の含有量(wt%)であり、W2は接触反応後の装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量(wt%)であり、Tは低酸素分圧ガスの露点(℃)である。)
本発明では、低酸素分圧ガスの露点とコーキング防止装置の酸化皮膜中の金属元素の含有量とが上記関係を満たすように制御することによって、装置の内面に構造が緻密で安定的な酸化皮膜を形成することをさらに確保し、触媒コーキングの現象を顕著に抑制又は減少し、装置の浸炭度を低下させ、装置の耐用年数を延ばすことができる。
【0031】
本発明の一つの特定実施形態では、式I中、-0.0005≦a≦-0.0001、0.001≦b≦0.0035、0.7355≦c≦0.8577、R2≧0.9463である。
【0032】
本発明の一つの特定実施形態では、式I中、a=-0.0003、b=0.0035、c=0.7882、R2=0.9463である。
【0033】
本発明の一つの特定実施形態では、式I中、a=-0.0001、b=0.002、c=0.8577、R2=0.9785である。
【0034】
本発明の一つの特定実施形態では、式I中、a=-0.0003、b=0.001、c=0.7355、R2=0.9867である。
【0035】
本発明の一つの特定実施形態では、式I中、a=-0.0005、b=0.0022、c=0.7678、R2=0.98である。
【0036】
本発明によれば、式I中、(W1-W2)/W1≧0.281、好ましくは、(W1-W2)/W1≧0.583である。
【0037】
本発明の一つの特定実施形態では、(W1-W2)/W1≧0.791、好ましくは、(W1-W2)/W1≧0.861である。
【0038】
本発明の一つの特定実施形態では、(W1-W2)/W1≧0.587、好ましくは、(W1-W2)/W1≧0.690である。
【0039】
本発明の一つの特定実施形態では、(W1-W2)/W1≧0.594、好ましくは、(W1-W2)/W1≧0.797である。
【0040】
本発明によれば、前記装置は合金炉管、急冷ボイラ及び軽質炭化水素の芳香族化反応器から選択される少なくとも1種である。
【0041】
本発明では、前記合金炉管は従来技術に通常使用されるニッケル・クロム合金炉管であってもよい。
【0042】
本発明によれば、前記装置が合金炉管である場合、接触反応前の合金炉管中の金属元素の総含有量が25~90wt%である。
【0043】
具体的には、合金炉管では、前記金属元素はニッケル元素20~50wt%と鉄元素5~40wt%を含み、さらに、前記合金炉管では、上記鉄元素及びニッケル元素に加えて、クロム元素12~50wt%、マンガン元素0.2~3wt%、ケイ素元素1~3wt%、炭素元素0.1~0.75wt%、微量元素0~5wt%及び痕跡元素をさらに含む。
【0044】
さらに、合金炉管では、前記金属元素の総含有量は37~83wt%であり、具体的には、金属元素はニッケル元素25~48wt%と鉄元素12~35wt%を含み、前記合金炉管では、上記鉄元素及びニッケル元素に加えて、クロム元素20~38wt%、マンガン元素1~2.5wt%、ケイ素元素1~2wt%、炭素元素0.1~0.6wt%、微量元素0~3wt%及び痕跡元素を含む。
【0045】
本発明では、前記微量元素はニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム及び希土類から選択される1種又は複数種であり、前記痕跡元素は硫黄及び/又はリンから選択される。
【0046】
本発明によれば、前記装置が急冷ボイラである場合、接触反応前に、急冷ボイラチューブサイドの炉管中の金属元素の総含有量は76.4~98wt%である。
【0047】
本発明では、急冷ボイラチューブサイドの炉管中の金属元素は鉄元素であり、鉄元素に加えて、急冷ボイラのチューブサイドの炉管の合金にはクロム元素1.5~20wt%、モリブデン元素0.2~0.6wt%、マンガン元素0.3~0.8wt%、ケイ素元素0.4~2wt%、炭素元素0.1~0.2wt%、酸素元素<5wt%、微量元素0~1wt%をさらに含む。
【0048】
本発明では、前記急冷ボイラチューブサイドの炉管中の微量元素はAl、Nb、Ti、W及び希土類元素のうちの少なくとも1種である。
【0049】
本発明では、前記急冷ボイラは従来技術において一般的なボイラであり、従来技術において一般的な製造技術によって製造され得る。本発明では、前記急冷ボイラの管段は機械加工された後に、内面がつやつやしており、酸化皮膜がなく、酸素含有量が<5wt%である。
【0050】
さらに、前記装置が急冷ボイラである場合、接触反応前に、急冷ボイラチューブサイドの炉管中の金属元素(鉄元素)の総含有量は80~97wt%であり、上記金属元素(鉄元素)に加えて、クロム元素2~15wt%、モリブデン元素0.25~0.35wt%、マンガン元素0.55~0.65wt%、ケイ素元素0.5~1.9wt%、炭素元素0.14~0.17wt%、酸素元素<3wt%、微量元素0.15~0.65wt%をさらに含む。
【0051】
本発明では、前記急冷ボイラのチューブサイドの炉管の合金は本分野の一般的な合金、例えば15Mo3であってもよい。
【0052】
本発明によれば、前記芳香族化反応器の合金材料はステンレス鋼304、316及び321から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、前記芳香族化反応器の合金材料はステンレス鋼304であり、接触反応前の芳香族化反応器中の金属元素の含有量は68~81wt%である。
【0053】
本発明では、前記芳香族化反応器は従来技術において一般的な芳香族化反応器又は従来技術における一般的な製造技術によって製造された芳香族化反応器であってもよい。
【0054】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-30℃~30℃であり、式I中、-0.0005≦a≦-0.0003、0.001≦b≦0.0092、0.7355≦c≦0.8308、R2≧0.9539である。
【0055】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-20℃~20℃であり、式I中、-0.0006≦a≦-0.0003、0.001≦b≦0.0092、0.7269≦c≦0.8308、R2≧0.879である。
【0056】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-15℃~15℃であり、式I中、-0.0006≦a≦-0.0005、0.0021≦b≦0.0049、0.7419≦c≦0.8109、R2≧0.879である。
【0057】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-15℃~10℃であり、式I中、-0.0005≦a≦-0.0003、0.0021≦b≦0.0053、0.7419≦c≦0.8138、R2≧0.8943である。
【0058】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-10℃~10℃であり、式I中、a=-0.0005、b=0.0021、c=0.7419、R2=1である。
【0059】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は-5℃~5℃であり、式I中、a=-0.0039、b=0.0041、c=0.8333、R2=1である。
【0060】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は0℃~20℃であり、式I中、a=-0.0004、b=0.0092、c=0.8308、R2=1である。
【0061】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は0℃~10℃であり、式I中、a=-0.0022、b=0.0238、c=0.7787、R2=0.9887である。
【0062】
本発明の一つの特定実施形態では、前記低酸素分圧ガスの露点は2℃~8℃であり、式I中、a=-0.0028、b=0.0294、c=0.7678、R2=0.9995である。
【0063】
本発明によれば、前記低酸素分圧ガスはCO2及び/又はH2O及びCO、CH4、C2H6、C3H8、NH3、H2、N2、Ar、He、空気及び分解ガスから選択される少なくとも1種のガス混合物である。
【0064】
好ましくは、前記低酸素分圧ガスはCH4とH2Oのガス混合物、CO2とCOのガス混合物、H2OとCOのガス混合物及びH2OとH2のガス混合物から選択される少なくとも1種である。
【0065】
好ましくは、前記方法は低酸素分圧ガスの露点を測定するステップをさらに含む。
【0066】
本発明によれば、前記接触反応の条件は、反応温度が400~1100℃、好ましくは600~1100℃であり、反応時間が5~100h、好ましくは5~72hであることを含む。
【0067】
本発明の一つの特定実施形態では、前記接触反応の条件は、反応温度が750~1000℃、反応時間が20~50hであることを含む。
【0068】
本発明の一つの特定実施形態では、前記接触反応の条件は、接触温度が700~950℃、反応時間が10~80hであることを含む。
【0069】
本発明の一つの特定実施形態では、前記接触反応の条件は、接触温度が750~950℃、接触時間が20~60hであることを含む。
【0070】
本発明の一つの特定実施形態では、前記接触反応の条件は、反応温度が800~1050℃、反応時間が30~60hであることを含む。
【0071】
本発明では、低酸素分圧ガスの流速は100~500mL/min、好ましくは200~400mL/minである。
【0072】
本発明では、前記接触反応は、本分野において一般的な、所定の雰囲気を保持し得る装置、例えば、管状炉、縦型炉及び雰囲気ボックス炉のうちの少なくとも1種で行われてもよい。
【0073】
本発明によれば、前記装置は分解炉用合金炉管である。
【0074】
さらに、前記合金炉管は炉管内に固定された強化伝熱部材を含む。
【0075】
本発明では、本発明者らは、研究したところ、炉管内に強化伝熱部材が設けられることによって、炉管と低酸素分圧ガスを接触反応させる過程で、強化伝熱部材により低酸素分圧ガスの流動状態が変わり、低酸素分圧ガス中の痕跡量のO2が管壁に十分に接触でき、管壁全体が酸化され、形成された酸化皮膜中の金属元素の含有量がさらに低下することを見出した。
【0076】
これに対して、強化伝熱部材を含まない炉管を低酸素分圧ガスで処理する際には、ガスは層流状態をもって管壁に接触し、気流の中央にあるO2はほぼ管壁の酸化反応に関与しておらず、管壁は完全に酸化されず、形成された酸化皮膜中の金属元素の含有量が高い。
【0077】
また、この強化伝熱部材によって、分解過程では、管壁に近い分解ガスの流動状態が層流から乱流に変わり、炉管の内面の重縮合コーキングが分解ガスの流れにより剥がれてしまい、重縮合コーキングが一般的には多孔質コークスであるので、炉管の内壁への付着力が低い。このため、強化伝熱部材を含む炉管の内壁に付着したコークスは依然として触媒コーキングが主であり、このようにして、低酸素分圧で形成された酸化皮膜はその機能を十分に発揮し、分解炉の運転周期を顕著に延ばす。
【0078】
本発明では、前記強化伝熱部材は従来技術において一般的な、流体の流動状態を変更し、熱伝導率を高めることのできる部材であってもよく、例えばツイストスライス(twisted slice)、内部リブ及び内部フィンから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0079】
本発明では、強化伝熱部材が設けられる分解炉用合金炉管は本分野の常法によって得られる。例えば、分解炉用合金炉管は通常遠心鋳造によって鋳造されるものであり、管内強化伝熱部材を備える炉管は加工形式が異なり、例えば、管内にツイストスライス又は内部フィン部材を備える炉管の場合は、通常静的鋳造によって単体として鋳造され、一方、管内に内部リブ部材を備える炉管は炉管の内部にフィンを溶接することによって形成される。
【0080】
また、強化伝熱部材が設けられた分解炉用合金炉管は市販品として入手してもよく、例えばKellogg社製のプラムチューブ(管内に内部フィンが設けられた管)、Kubota社製のMERT管(管内に内部リブが設けられた管)及び中国石化社製のツイストスライス管(管内にツイストスライスが設けられた管)などである。
【0081】
本発明によれば、前記強化伝熱部材管は、長さが20~80cmであり、数が1~200本であり、炉管全体の様々なチューブサイドに亘って分布している。
【0082】
本発明の第2態様は、上記製造方法によって製造されるコーキング防止装置を提供する。
【0083】
本発明では、前記コーキング防止装置の内面はクロム・マンガン酸化物と金属元素を含む酸化皮膜を有する。
【0084】
本発明では、本発明者らは、研究したところ、本発明の前記コーキング防止装置が装置の高温でのコーキング及び浸炭の現象を緩和又は抑制できる原因として、本発明の前記技術案によって装置を低酸素分圧ガスと接触反応させると、装置中のCr元素、Mn元素が酸素と反応して形成した酸化物の活性がFe元素及び/又はNi元素よりも高いので、装置の内面のクロム、マンガン元素が極めて低い酸素分圧の条件で緩やかに酸化し、一方、鉄元素及び/又はニッケル元素はほぼ酸化されず、しかも、雰囲気の酸素分圧が極めて低いので、酸化の進行が非常に遅く、装置の内面には装置の基体との結合力が高く且つ緻密である酸化皮膜がその場で生成され、この酸化皮膜によって装置のコーキングに対して触媒作用を有する鉄、ニッケル元素が被覆され、装置の内壁の鉄元素及び/又はニッケル元素の含有量が低下し、装置のコーキング及び浸炭の現象が緩和又は抑制され、装置の運転周期が長くなることを見出した。
【0085】
本発明では、上記方法によって処理された装置の内面の酸化皮膜においては、鉄元素及び/又はニッケル元素の総含有量が低く、炭化水素類の分解又は芳香族化反応における触媒コーキングが抑制され、装置の運転周期が長くなり、装置を長期間使用する要件を満たす。
【0086】
本発明の第3態様は、上記コーキング防止装置の、分解炉、急冷ボイラ及び芳香族化反応器のうちの少なくとも1つにおける使用を提供する。
【0087】
本発明では、分解用原料はガス炭化水素類又は液体炭化水素類であってもよい。具体的には、前記ガス炭化水素類はエタン、プロパン、ブタン及び液化石油ガスのうちの少なくとも1種であり、前記液体炭化水素類はナフサ、コンデンセート、水素化分解テールオイル及びディーゼルオイルのうちの少なくとも1種である。
【0088】
本発明では、分解反応は従来技術の一般的な分解プロセスによって実施されてもよい。例えば、分解温度は770~880℃、水/油比は0.3~0.8である。好ましくは、ナフサの分解温度は830~850℃、水/油比は0.5~0.55である。
【0089】
本発明では、軽質炭化水素の芳香族化反応は従来技術の一般的な芳香族化反応条件に従って行われてもよい。具体的には、反応温度は280~530℃、反応圧力は0.3MPaである。
【0090】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、
装置の元素組成はエネルギー分散型X線分析(EDS)法によって測定される。
【0091】
低酸素分圧ガスの露点は市販の露点測定装置による検出方法により測定される。
【0092】
装置のコーキング量は赤外線計を用いてコーキングガス中のCOとCO2の濃度をオンラインで測定し、湿式ガス流量計を用いてコーキングガスの体積をオンラインで測定することにより計算される。
【0093】
分解原料は、物性として、蒸留範囲32.8~173.8℃、比重D20 0.7058g/mlのナフサを用いる。
【0094】
以下の実施例及び比較例では、
注入量200g/hの自作の試験室装置において、実験室規模分解炉管又は急冷ボイラの低酸素分圧雰囲気処理のシミュレーション及びナフサ分解によるエチレン製造におけるコーキングを評価する試験を行う。
【0095】
低酸素分圧雰囲気で処理した実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、HZSM-5触媒を用いて、原料としてノルマルヘキサンを用い、芳香族化反応条件:反応体積空間速度1h-1、反応温度500℃、水素/油体積比400:1、反応圧力0.3MPa、反応時間20時間とする。
【0096】
実施例1
炉管材質が35Cr45Niの産業用分解炉の輻射部の炉管に対して低酸素分圧ガス雰囲気による処理を行った。炉管合金の元素組成は(wt%):Cr:32.55、Ni:42.60、Fe:21.12、Mn:0.98、Si:1.41、Nb:0.64、C:0.53であり、他のものは0.17である。分解炉の輻射部の炉管内において互いに間隔を空けて軸方向に炉管と一体化したツイストスライス管を設け、ツイストスライスが180°捩じられた軸方向の長さを1ピッチとし、2つの隣接するツイストスライスの間の距離を15ピッチとし、長さを35cmとし、数を100本とし、炉管全体の様々なチューブサイドに分布した。使用される低酸素分圧ガスはCOと水蒸気のガス混合物であり、ここで、混合ガスの露点が5℃であり、処理温度が900℃であり、処理時間が50時間であり、輻射部の炉管の内壁の表面にはCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は9.93wt%である。
【0097】
低酸素分圧ガス雰囲気で処理された産業用分解炉において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料としてナフサを用い、ナフサの物性としては、蒸留範囲32.8~173.8℃、比重D20 0.7058g/mlであり、分解条件は、炉管の出口温度830℃、水/油比0.55とした。分解炉の運転周期は230日間に達する。
【0098】
実施例2
1本のツイストスライス管を含むHP40(Cr25Ni35)実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、炉管合金の元素組成は、Cr:25.1、Ni:35.2、Mn:1.0、Si:1.5、C:0.4、p<0.03、S<0.03であり、残量はFe(wt%)である。
【0099】
低酸素分圧雰囲気処理ガスとしてCOと水蒸気のガス混合物を用い、ここで、混合ガスの露点は5℃、低酸素分圧ガスの流速は400ml/min、処理温度は950℃、処理時間は30時間とした。炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は11.27wt%である。
【0100】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料としてナフサを用い、ナフサの物性としては、蒸留範囲32.8~173.8℃、比重D200.7058g/mlであり、分解条件は、分解温度845℃、水/油比0.5とした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より95.21%減少した。
【0101】
実施例3
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が8℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は12.88wt%である。
【0102】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より90.15%減少した。
【0103】
実施例4
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が2℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は13.29wt%である。
【0104】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より86.38%減少した。
【0105】
実施例5
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が10℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は14.80wt%である。
【0106】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より81.46%減少した。
【0107】
実施例6
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が0℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は15.89wt%である。
【0108】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より75.69%減少した。
【0109】
比較例1
低酸素分圧雰囲気処理を受けていないこと以外、実施例1と同じ炉型の産業用分解炉の輻射部の炉管を用いた。この産業用分解炉において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例1と同様にした。分解炉の運行周期は100日間である。
【0110】
比較例2
輻射部の炉管にはツイストスライスを備えず、低酸素分圧ガス雰囲気処理を受けていないこと以外、実施例1と同じ炉型の産業用分解炉の輻射部の炉管を用い、分解炉の運行周期は55日間である。
【0111】
実施例7
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が20℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は17.62wt%である。
【0112】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より33.90%減少した。
【0113】
実施例8
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が-10℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は19.01wt%である。
【0114】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より24.55%減少した。
【0115】
実施例9
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が-30℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は42.39wt%である。
【0116】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より17.15%減少した。
【0117】
実施例10
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が-40℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は51.72wt%である。
【0118】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より13.09%減少した。
【0119】
実施例11
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が-20℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は34.96wt%である。
【0120】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より18.64%減少した。
【0121】
実施例12
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が-15℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は26.98wt%である。
【0122】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より20.73%減少した。
【0123】
実施例13
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が15℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は15.4wt%である。
【0124】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より65.88%減少した。
【0125】
実施例14
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が30℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は27.94wt%である。
【0126】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より30.23%減少した。
【0127】
実施例15
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、COと水蒸気の混合ガスの露点が40℃であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は37.41wt%である。
【0128】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術においてツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より28.56%減少した。
【0129】
比較例3
ツイストスライスを備えず、低酸素分圧処理を受けていないこと以外、実施例2と同じ実験室規模炉管を用い、実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は100%である。
【0130】
実施例16
HP40(Cr25Ni35)実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、炉管合金の元素組成は(wt%):Cr:25.1、Ni:35.2、Mn:1、Si:1.5、C:0.4、P<0.03、S<0.03であり、残量はFeである。
【0131】
低酸素分圧雰囲気処理ガスとしてH2とH2Oのガス混合物を用い、ここで、混合ガスの露点は10℃、低酸素分圧ガスの流速は400ml/min、処理温度は950℃、処理時間は30時間とした。炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ3.76wt%及び4.58wt%である。
【0132】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料としてナフサを用い、その物性としては、蒸留範囲32.8~173.8℃、比重D20 0.7058g/mlであり、分解条件は、分解温度845℃、水/油比0.5とした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より91.85%減少した。
【0133】
実施例17
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が20℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ5.23wt%及び4.87wt%である。
【0134】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より87.65%減少した。
【0135】
実施例18
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が0℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ6.48wt%及び5.69wt%である。
【0136】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より80.65%減少した。
【0137】
実施例19
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が40℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ11.02wt%及び8.28wt%である。
【0138】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より51.87%減少した。
【0139】
実施例20
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が-40℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ15.89wt%及び13.95wt%である。
【0140】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より32.58%減少した。
【0141】
比較例4
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が50℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ20.13wt%及び19.78wt%である。
【0142】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より19.69%減少した。
【0143】
比較例5
実施例16と同じ実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、H2とH2O混合ガスの露点が-50℃であること以外、残りの処理条件は実施例16と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMnCr2O4であり、酸化皮膜中、鉄元素及びニッケル元素の含有量はそれぞれ25.09wt%及び24.95wt%である。
【0144】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は、従来技術において低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より13.48%減少した。
【0145】
比較例6
低酸素分圧で予備酸化処理を受けていないこと以外、実施例16と同様な実験室規模炉管を用い、実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例16と同様にした。実験室規模炉管のコーキング量は100%である。
【0146】
実施例21
15CrMoG管材による継目無鋼管を冷間引抜によりφ14×2の実験室規模炉管に製造し、機械加工によって炉管の内面をつやつやにし、酸化皮膜を取り除き、炉管合金の元素組成は(wt%):Cr:1.03、Mo:0.47、Mn:0.58、Si:0.32、C:0.16、O:2.13、Fe:96.87であり、残りは0.24である。
【0147】
低酸素分圧雰囲気処理ガスとしてCO2とCOのガス混合物を用い、ここで、混合ガスの露点は0℃、低酸素分圧ガスの流速は400ml/min、処理温度は900℃、処理時間は35時間とした。炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は25wt%である。
【0148】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解条件は分解温度845℃、水/油比0.5とした。実験の結果から明らかなように、本発明の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より88%減少した。
【0149】
実施例22
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が10℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は28wt%である。
【0150】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。本発明の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より82%減少した。
【0151】
実施例23
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が-10℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は32wt%である。
【0152】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。本発明の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より78%減少した。
【0153】
実施例24
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が20℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は35wt%である。
【0154】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。本発明の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より51%減少した。
【0155】
実施例25
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が-20℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は38wt%である。
【0156】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。本発明の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より40%減少した。
【0157】
実施例26
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が30℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は51wt%である。
【0158】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。処理後の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より21%減少した。
【0159】
実施例27
実施例21と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、CO2とCO混合ガスの露点が-30℃であること以外、残りの処理条件は実施例21と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn2CrO4であり、酸化皮膜中、鉄元素の含有量は57wt%である。
【0160】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。処理後の急冷ボイラのコーキング量は未処理の急冷ボイラのコーキング量より15%減少した。
【0161】
比較例7
低酸素分圧処理を受けていないこと以外、実施例21と同様な実験室規模炉管を用い、実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例21と同様にした。急冷ボイラのコーキング量は100%である。
【0162】
実施例28
304ステンレス鋼で製造されたφ35×9実験室規模試験装置において芳香族化反応器の低酸素分圧雰囲気処理及び軽質炭化水素の芳香族化反応の評価試験を行った。機械加工によって反応器の内面をつやつやにし、酸化皮膜を取り除き、反応器合金の元素組成は(wt%):Cr:18.05、Ni:7.71、Mn:1.43、Si:1.34、C:1.91、O:2.78、Al:0.64、Fe:66.14である。
【0163】
低酸素分圧雰囲気処理ガスとしてCH4とH2Oのガス混合物を用い、ここで、混合ガスの露点は3℃、低酸素分圧ガスの流速は400ml/min、処理温度は900℃、処理時間は30時間とした。炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は14wt%である。
【0164】
実験の結果から明らかなように、本発明の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より86%減少した。
【0165】
実施例29
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が5℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は18wt%である。
【0166】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。本発明の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より80%減少した。
【0167】
実施例30
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が-5℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は21wt%である。
【0168】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。本発明の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より76%減少した。
【0169】
実施例31
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が15℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は24wt%である。
【0170】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。本発明の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より50%減少した。
【0171】
実施例32
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が-15℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は28wt%である。
【0172】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。本発明の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より39%減少した。
【0173】
実施例33
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が25℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は37wt%である。
【0174】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。処理後の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より20%減少した。
【0175】
実施例34
実施例28と同様な実験室規模反応器を低酸素分圧で予備酸化処理し、CH4とH2O混合ガスの露点が-25℃であること以外、残りの処理条件は実施例28と同様であり、反応器の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn0.5Cr2.5O4であり、酸化皮膜中、鉄元素とニッケル元素との総含有量は45wt%である。
【0176】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。処理後の芳香族化反応器のコーキング量は未処理の芳香族化反応器のコーキング量より14%減少した。
【0177】
比較例8
低酸素分圧処理を受けていないこと以外、実施例28と同様な実験室規模反応器を用い、実験室規模反応器において軽質炭化水素の芳香族化反応を行い、触媒、反応原料及び反応条件を実施例28と同様にした。芳香族化反応器のコーキング量は100%である。
【0178】
比較例9
実施例2と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、水蒸気の低酸素分圧ガスに占める体積百分率が7.5%(対応する露点は41℃)であること以外、残りの処理条件は実施例2と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は52.85wt%である。
【0179】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例2と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より12.32%減少した。
【0180】
比較例10
実施例14と同様な実験室規模炉管を低酸素分圧で予備酸化処理し、水蒸気の低酸素分圧ガスに占める体積百分率が4.2%(対応する露点は30℃)であるように制御すること以外、残りの処理条件は実施例14と同様であり、炉管の内壁の表面には主にCr、Mn、Ni、Fe、O、Siなどの元素を含む酸化皮膜が形成された。酸化皮膜中のクロム・マンガン酸化物はMn1.5Cr1.5O4であり、酸化皮膜の総重量に対して、鉄元素及びニッケル元素の総含有量は38.08wt%である。
【0181】
低酸素分圧雰囲気で処理された実験室規模炉管において炭化水素類の蒸気分解反応を行い、分解原料及び分解条件を実施例14と同様にした。本発明の炉管のコーキング量は、従来技術において強化伝熱部材を備えず、低酸素分圧処理を受けていないHP40(Cr25Ni35)炉管のコーキング量より25.45%減少した。