(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240610BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240610BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240610BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240610BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240610BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240610BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240610BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240610BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 C
H01L29/80 H
H01L29/44 Y
H01L29/78 301B
H01L29/78 301V
H01L29/78 301W
H01L29/06 301F
(21)【出願番号】P 2023004427
(22)【出願日】2023-01-16
(62)【分割の表示】P 2019048043の分割
【原出願日】2019-03-15
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】洪 洪
(72)【発明者】
【氏名】磯部 康裕
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 啓
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】岩井 正明
(72)【発明者】
【氏名】細川 直範
(72)【発明者】
【氏名】小野村 正明
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098222(JP,A)
【文献】特開2011-210752(JP,A)
【文献】特開2018-157008(JP,A)
【文献】特開2017-123432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 29/41
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置したゲート電極と、
前記第2の窒化物半導体層上に位置し、前記ゲート電極と同じ高さの第1のフィールドプレート電極と、
前記第1のフィールドプレート電極よりも前記第2の電極側に位置し、前記第1のフィールドプレート電極の上方に設けられた第2のフィールドプレート電極と、
前記ゲート電極上に第1の導電層及び第2の導電層と、
を備え、
前記第1のフィールドプレート電極と前記第2のフィールドプレート電極は、前記第1の電極に電気的に接続し、
前記第1のフィールドプレート電極は、前記第1の電極と前記第2の電極の間に1つのみ存在
し、
前記第1の導電層と前記第2の電極との距離は、前記ゲート電極と前記第2の電極との距離以上であり、
前記第2の導電層と前記第2の電極との距離は、前記ゲート電極と前記第2の電極との距離以上である半導体装置。
【請求項2】
第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置したゲート電極と、
前記第2の窒化物半導体層上に位置し、前記ゲート電極と同じ高さの第1のフィールドプレート電極と、
前記第1のフィールドプレート電極よりも前記第2の電極側に位置し、前記第1のフィールドプレート電極の上方に設けられた第2のフィールドプレート電極と、
を備え、
前記第1のフィールドプレート電極と前記第2のフィールドプレート電極は、前記第1の電極に電気的に接続し
前記ゲート電極上に第1の導電層及び第2の導電層をさらに備え、
前記第1の導電層と前記第2の電極との距離は、前記ゲート電極と前記第2の電極との距離以上であり、
前記第2の導電層と前記第2の電極との距離は、前記ゲート電極と前記第2の電極との距離以上である半導体装置。
【請求項3】
第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
前記第1の窒化物半導体層の上に位置し、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置したゲート電極と、
前記第2の窒化物半導体層上に位置し、前記ゲート電極と同じ高さの第1のフィールドプレート電極と、
前記第1のフィールドプレート電極よりも前記第2の電極側に位置し、前記第1のフィールドプレート電極の上方に設けられた第2のフィールドプレート電極と、
を備え、
前記第1のフィールドプレート電極と前記第2のフィールドプレート電極は、前記第1の電極に電気的に接続し、
前記第1のフィールドプレート電極は、前記第1の電極と前記第2の電極の間に1つのみ存在し、
前記第1の電極と電気的に接続され、前記第2の電極方向に延伸し、前記ゲート電極の上方に位置している第3のフィールドプレート電極と
前記第2のフィールドプレート電極と前記第2の電極の間に第4のフィールドプレート電極をさらに備えた半導体装置。
【請求項4】
前記第1のフィールドプレート電極と前記第2のフィールドプレート電極の間に絶縁膜をさらに備えた請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極と前記第1のフィールドプレート電極との距離は、0.0μmより大きく10μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のフィールドプレート電極と前記第2のフィールドプレート電極は、前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層の積層方向において少なくとも一部重なる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極と前記第1のフィールドプレート電極は、同じ導電材料で構成される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の電極と電気的に接続され、前記第2の電極方向に延伸し、前記ゲート電極の上方に位置している第3のフィールドプレート電極と
前記第2のフィールドプレート電極と前記第2の電極の間に第4のフィールドプレート電極をさらに備えた請求項1
又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源回路やインバータ回路などの回路には、トランジスタやダイオードなどの半導体素子が用いられる。これらの半導体素子には高耐圧及び低オン抵抗が求められる。そして、耐圧とオン抵抗の関係には、素子材料で決まるトレードオフ関係がある。
【0003】
技術開発の進歩により、半導体素子は、主たる素子材料であるシリコンの限界近くまで低オン抵抗が実現されている。耐圧を更に向上させたり、オン抵抗を更に低減させたりするには、素子材料の変更が必要である。窒化ガリウムや窒化アルミニウムガリウムなどの窒化物半導体を半導体素子の素子材料として用いることで、素子材料で決まるトレードオフ関係を改善できる。このため、半導体素子の飛躍的な高耐圧化や低オン抵抗化が可能である。
【0004】
窒化物半導体を用いたトランジスタのスイッチング効率の特性指数としてオン抵抗で規格化したゲート・ドレイン間電荷量Ron・QGDが知られている。スイッチング効率を向上させるためには、Ron・QGDを下げることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スイッチング効率が優れた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の窒化物半導体層(チャネル層)と、第1の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層(バリア層)と、第2の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極(ソース電極)と、第1の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極(ドレイン電極)と、第1の電極と第2の電極との間に位置したゲート電極と、第2の窒化物半導体層上に位置し、ゲート電極と同じ高さの第1のフィールドプレート電極と、第1のフィールドプレート電極と第2の電極の間に位置した第2のフィールドプレート電極と、ゲート電極上に第1の導電層及び第2の導電層と、を備えた半導体装置。第1のフィールドプレート電極と第2のフィールドプレート電極は、第1の電極に電気的に接続し、第1のフィールドプレート電極は、第1の電極と第2の電極の間に1つのみ存在する。第1の導電層と第2の電極との距離は、ゲート電極と第2の電極との距離以上であり、第2の導電層と第2の電極との距離は、ゲート電極と第2の電極との距離以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材についてはその説明を省略する場合がある。
【0010】
本明細書中、「窒化物半導体層」は「GaN系半導体」を含む。「GaN系半導体」とは、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)及びそれらの中間組成を備える半導体の総称である。
【0011】
本明細書中、「アンドープ」とは、不純物濃度が2×1016cm-3以下であることを意味する。
【0012】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層3に電気的に接続された第1の電極と、第1の窒化物半導体層の上に位置し、第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に位置したゲート電極と、第2の窒化物半導体層上に位置し、ゲート電極と同じ高さの第1のフィールドプレート電極と、第1のフィールドプレート電極と第2の電極の間に位置した第2のフィールドプレート電極と、を備える。
【0014】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。半導体装置は、GaN系半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)100である。
【0015】
HEMT100は、基板1、バッファ層2、チャネル層3(第1の窒化物半導体層)、バリア層4(第2の窒化物半導体層)、ソース電極5(第1の電極)、ゲート電極6、ドレイン電極7(第2の電極)、第1のフィールドプレート電極8、第2のフィールドプレート電極9、第3のフィールドプレート電極10、及び、層間絶縁層11を備える。
【0016】
基板1は、例えば、シリコン(Si)で形成される。シリコン以外にも、例えば、サファイア(Al2O3)や炭化珪素(SiC)を適用することも可能である。
【0017】
基板1上に、バッファ層2が設けられる。バッファ層2は、基板1とチャネル層3との間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層2は、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlWGa1-WN(0<W≦1))の多層構造で形成される。
【0018】
チャネル層3は、バッファ層2上に設けられる。チャネル層3は電子走行層とも称される。チャネル層3は、例えば、アンドープの窒化アルミウムガリウム(AlXGa1-XN(0≦X<1))である。より具体的には、例えば、アンドープの窒化ガリウム(GaN)である。チャネル層3の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。実施形態において厚さは、チャネル層3を含めチャネル層3とバリア層4の積層方向における各部材の長さ(高さ)である。
【0019】
バリア層4は、チャネル層3上に設けられる。バリア層4は電子供給層とも称される。バリア層4のバンドギャップは、チャネル層3のバンドギャップよりも大きい。バリア層4は、例えば、アンドープの窒化アルミウムガリウム(AlYGa1-YN(0<Y≦1、X<Y))である。より具体的には、例えば、アンドープのAl0.25Ga0.75Nである。バリア層4の厚さは、例えば、2nm以上100nm以下である。
【0020】
チャネル層3とバリア層4との間は、ヘテロ接合界面となる。ヘテロ接合界面に2次元電子ガス(2DEG)が形成されHEMT100のキャリアとなる。
【0021】
第1の電極5は、例えばソース電極である。ソース電極5は、チャネル層3及びバリア層4の上に設けられる。ソース電極5は、チャネル層3及びバリア層4に電気的に接続される。ソース電極5は、例えば、バリア層4に直接的に接する。
【0022】
ソース電極5は、例えば、金属電極である。ソース電極5は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層構造である。ソース電極5と、バリア層4との間はオーミックコンタクトであることが望ましい。
【0023】
ゲート電極6は、チャネル層3及びバリア層4の上に設けられる。ゲート電極6は、チャネル層3及びバリア層4に電気的に接続される。ゲート電極6は、例えば、バリア層4に直接的に接する。ゲート電極6は、ソース電極5とドレイン電極7の間に設けられる。
【0024】
ゲート電極6は、例えば、窒化チタン(TiN)である。
【0025】
ゲート電極6とバリア層の間には、図示しないゲート絶縁膜を設け、半導体装置100をMIS(Metal Insulator Semiconductor)型HEMTとすることもできる。ゲート絶縁層は、例えば、酸化物又は酸窒化物である。ゲート絶縁層は、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸窒化シリコン、又は、酸窒化アルミニウムである。
【0026】
ドレイン電極7は、チャネル層3及びバリア層4の上に設けられる。ドレイン電極7は、チャネル層3及びバリア層4に電気的に接続される。ドレイン電極7は、例えば、バリア層4に接する。
【0027】
ドレイン電極7は、例えば、金属電極である。ドレイン電極7は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層構造である。ドレイン電極7と、バリア層4との間はオーミックコンタクトであることが望ましい。
【0028】
ソース電極5とドレイン電極7との距離は、例えば、5μm以上30μm以下である。
【0029】
なお、ソース電極5及びドレイン電極7は、チャネル層3に直接的に接する構造とすることも可能である。
【0030】
第1のフィールドプレート電極8は、バリア層4上に位置している。第1のフィールドプレート電極8は、ゲート電極6と同じ高さであることが好ましい。ゲート電極6の高さは、チャネル層3からゲート電極6の上面(チャネル層3側とは反対側の面)までの距離(d1)第1のフィールドプレート電極8の高さは、チャネル層3から第1のフィールドプレート電極8の上面(チャネル層3側とは反対側の面)までの距離(d2)である。である。|d1-d2|/(d1+d2)≦0.05を満たすとき、第1のフィールドプレート電極8の高さとゲート電極6の高さは同じである。
【0031】
第1のフィールドプレート電極8は、ソース電極5と電気的に接続されている。第1のフィールドプレート電極8は、横方向の電界を緩和している。
図1では、第1のフィールドプレート電極8は、バリア層4と直接的に接しているが、バリア層4と第1のフィールドプレート電極8の間には、
図1には示さない層を介在させてもよい。第1のフィールドプレート電極8は、ゲート電極6及びドレイン電極7と物理的に離間している。第1のフィールドプレート電極8は、ゲート電極6とドレイン電極7の間に位置している。
【0032】
第1のフィールドプレート電極8とゲート電極6の高さを同じにするために、ゲート電極6と第1のフィールドプレート電極8は、同じプロセスで形成された金属膜であることが好ましい。つまり、第1のフィールドプレート電極8は、ゲート電極6と同じ厚さで同じ導電材料で構成されていることが好ましい。
【0033】
第2のフィールドプレート電極9は、基板の厚さ方向から見た場合に、少なくとも一部が第1のフィールドプレート電極8よりもドレイン電極7側に位置し、第1のフィールドプレート電極8の上方に設けられている。チャネル層3及びバリア層4と離間して位置している。第2のフィールドプレート電極9は、横方向の電界を緩和している。第2のフィールドプレート電極9とバリア層4の間には、層間絶縁膜11が位置している。第2のフィールドプレート電極9は、ソース電極5と同電位となっている。第2のフィールドプレート電極9の厚さは、第1のフィールドプレート電極8の厚さの10倍以上である。第2のフィールドプレート電極9は、ソース電極5と電気的に接続されている。
【0034】
第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9を組み合わせることで、ソース-ドレイン間の電界集中を緩和しつつ、ゲート-ドレイン間の容量を減らすことができる。
【0035】
第3のフィールドプレート電極10は、ソース電極5と電気的に接続され、ドレイン電極7方向に延伸し、ゲート電極6の上方に位置している。第3のフィールドプレート電極10は、横方向の電界を緩和している。第3のフィールドプレート10は、ソース電極5と同電位となっている。第3のフィールドプレート電極10の延伸部分と第2の窒化物半導体層4の間には、ゲート電極5、第1のフィールドプレート電極8及び第2のフィールドプレート電極9が位置している。チャネル層3とバリア層4の積層方向において、第1のフィールドプレート電極8と第3のフィールドプレート電極10の間に第2のフィールドプレート電極9が位置している。第3のフィールドプレート電極10のドレイン電極7側の端面は、第2のフィールドプレート電極9のドレイン電極7側の端面よりもドレイン電極7側に位置している。第3のフィールドプレート電極10のドレイン電極7側の端面は、第2のフィールドプレート電極9のドレイン電極7側の端面よりもドレイン電極7側に位置している。
【0036】
実施形態の第1乃至第3のフィールドプレート電極は、いずれも
図1に示す断面では互いに直接的に接続していない。
図1に示す断面は、基板1の厚み方向に平行な面(ソース電極5からドレイン電極7に延びる線分が含まれるチャネル層3のバリア層4側の面に垂直な面)であって、ゲート電極6、第1のフィールドプレート電極8及び第2のフィールドプレート電極9が含まれている面である。ソース電極5は、図示しないソースパッドに接続しており、実施形態において示すフィールドプレート電極は、例えば、ソースパッドに接続している。
【0037】
層間絶縁膜11は、例えば、酸化物、窒化物である。層間絶縁膜11は、例えば、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン窒化物(SiN)、又は高誘電率(high-k)材料などである。high-k材料としては、酸化ハフニウム(HfO2)などが挙げられる。
【0038】
半導体層、半導体領域の元素の種類、元素濃度は、例えば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により測定することが可能である。また、元素濃度の相対的な高低は、例えば、SCM(Scanning Capacitance Microscopy)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の深さ、厚さ、幅、間隔などの距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の深さ、厚さ、幅、間隔などの距離は、例えば、SCM像とアトムプローブ像との比較画像からも求めることが可能である。
【0039】
第1のフィールドプレート電極8及び第2のフィールドプレート電極9が存在しない比較形態と比べて、ゲート-ドレイン間容量が減少し、かつ、電界集中が緩和する。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置の変形例である。
図2に第2の実施形態の半導体層101の模式断面図を示す。第2の実施形態の半導体装置101は、第1のフィールドプレート電極8上に絶縁膜12を有すること以外は、第1の実施形態の半導体装置100と共通する。第1の実施形態の変形例を含む実施形態においては、変更や付加された構成の一部又は全部を他の実施形態に採用することが出来る。
【0041】
図1や
図2の断面において、第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9が接していると、階段様形状のフィールドプレート電極となり、電界集中を緩和することは出来るが、第1のフィールドプレート電極8が存在しない比較形態に相当するためゲート-ドレイン間の容量を減らす観点からは好ましくない。そこで、第1のフィールドプレート電極8上に絶縁膜12を設けることで、
図2の断面において第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9の分離をより確実にすることが出来る。なお、絶縁膜12を設けない場合は、
図1のように層間絶縁膜11によって、第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9が分離している。第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9のチャネル層3とバリア層4の積層方向の距離は、絶縁膜12の有無にかかわらず、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
【0042】
第2の実施形態の半導体装置101を例に、第2の実施形態を含めたゲート電極6、第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9の位置関係について説明する。
図2には、d3~d8までの符号を用いて、ソース電極5からドレイン電極7に向かう方向における導電部材間の距離と導電部材の幅を表している。距離d3は、第1のフィールドプレート電極8とドレイン電極7の間の距離である。距離d4は、第1のフィールドプレート電極8のソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の幅である。距離d5は、ゲート電極6と第1のフィールドプレート電極8の間の距離である。距離d6は、第2のフィールドプレート電極9とドレイン電極7の間のソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の距離である。距離d7は、第2のフィールドプレート電極9のソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の幅である。距離d8は、第2のフィールドプレート電極9とゲート電極6の間のソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の距離である。距離d9は、ゲート電極6とドレイン電極7の間の距離である。
【0043】
ゲートとドレイン間の電界ピークを緩和する観点から、距離d3と距離d6は、d3>d6の関係を満たすことが好ましい。同観点から、距離d3と距離d6は、d3>1.1d6の関係を満たすことがより好ましい。距離d6が短すぎると、第2のフィールドプレート電極9のドレイン電極7側の端部に電界が集中しやすくなる。そこで、距離d6は、2.0μm以上20μm以下であることが好ましい。また、ゲート電極6とドレイン電極7の間の距離d9を基準にするとき、Cgd低減の観点から0.7d9≦d6≦0.9d9を満たすことが好ましい。
【0044】
ゲートとドレイン間の電界ピークを緩和する観点から距離d4と距離d7は、d4>d7の関係を満たすことが好ましい。同観点からd4>1.5d7の関係を満たすことが好ましい。Cgd低減の観点から距離d4は、1.0μm以上6.0μm以下であることが好ましい。同観点から距離d4は、2.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
【0045】
ゲートとドレイン間の電界ピークを緩和する観点から距離d5は、0.0μm<d5≦10μmを満たすことが好ましい。同観点から距離d5は、0.5μm<d5≦3.0μmを満たすことが好ましい。
【0046】
ゲートとドレイン間の電界ピークを緩和する観点から距離d8は、0.1μm<d8≦2.5μmを満たすことが好ましい。距離d5と距離d8は、d5>d8の関係を満たしていてもよいし、d5≦d8の関係を満たしてもよい。つまり、第2のフィールドプレート電極9のゲート電極6の端面が第1のフィールドプレート電極8のゲート電極6の端面よりもゲート電極6側に位置していてもよい。
【0047】
第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9はチャネル層3とバリア層4の積層方向に少なくとも一部重なってもよい。第1のフィールドプレート電極8と第2のフィールドプレート電極9はチャネル層3とバリア層4の積層方向に重なっているときは、(d4+d5)>d8の関係を満たす。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置の変形例である。
図3に第3の実施形態の半導体装置102の模式断面図を示す。第3の実施形態の半導体装置102は、ゲート電極6上に第1の導電層13と第2の導電層14を有し、第1のフィールドプレート電極8が階段様の形状をしていること以外は、第1の実施形態の半導体装置と共通する。
【0049】
第1の導電層13は、ゲート電極6上に位置し、ゲート電極6と電気的に接続されている。第1の導電層13は、ゲート電極6と第2の導電層14のコンタクトである。
図3の断面図では、第1の導電層13は、ゲート電極6及び第2の導電層14と電気的及び直接的に接続している。第1の導電層13は、ゲート電極6と第2の導電層14の間に位置している。第1の導電層13とドレイン電極7との距離は、ゲート電極6とドレイン電極7との距離d9以上である。第1の導電層13の幅(ソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の距離)は、ゲート電極6の幅よりも狭い。例えば、第1の導電層13の幅は、ゲート電極6の幅の0.5倍以下である。
【0050】
第1の導電層13は、例えば、金属層である。第1の導電層13は、例えば、アルミニウムである。第1の導電層13の電気比抵抗(Ωm ohm・m)は、ゲート電極6の電気比抵抗(Ωm ohm・m)よりも小さい。第1の導電層13がゲート電極6よりも低抵抗であることで、ゲート電極6から第2の導電層14までの部材全体の電気抵抗を下げることができる。第1の導電層13の電気比抵抗(Ωm ohm・m)は、ゲート電極6の電気比抵抗(Ωm ohm・m)の2分の1以下であることが低抵抗化の観点から好ましい。
【0051】
第2の導電層14は、第1の導電層13上に位置し、第1の導電層13と電気的に接続されている。
図3の断面図では、第2の導電層14は、第1の導電層13と電気的及び直接的に接続している。第2の導電層14は、第3のフィールドプレート電極10と第1の導電層13の間に位置している。第2の導電層14とドレイン電極7との距離は、ゲート電極6とドレイン電極7との距離d9以上である。
【0052】
第2の導電層14は、例えば、金属層である。第2の導電層14は、例えば、アルミニウムである。第2の導電層14の電気比抵抗(Ωm ohm・m)は、ゲート電極6の電気比抵抗(Ωm ohm・m)よりも小さい。第2の導電層14がゲート電極6よりも低抵抗であることで、ゲート電極6から第2の導電層14までの部材全体の電気抵抗を下げることができる。第1の導電層13の電気比抵抗(Ωm ohm・m)及び第2の導電層14の電気比抵抗(Ωm ohm・m)は、ゲート電極6の電気比抵抗(Ωm ohm・m)の2分の1以下であることが低抵抗化の観点から好ましい。
【0053】
第1の導電層13及び第2の導電層14を設けることで、QGDを低減しつつ、電界分布を良好とすることができる。第1の導電層13及び第2の導電層14のドレイン電極7側の端面は、ゲート電極6のドレイン電極7側の端面よりもソース電極5側に位置している。つまり、ゲート電極6には、フィールドプレート電極は設けられていない。ゲートフィールドプレートを採用することで、ゲート-ドレイン間の電界のピークを抑制することが出来るが、ゲート-ドレイン間の容量が増加してしまう。電界実施形態の構成を採用することにより、ゲート-ドレイン間の電界のピークを抑制し、さらに、QGDを低減することができる。ゲート-ドレイン間の電界のピークを抑制することで、電界集中を抑えることができる。そして、半導体装置100は、ゲート-ドレイン間の電界のピークが低減し、QGDが低いことで、スイッチング特性に優れる。
【0054】
第2の導電層14の厚さ(チャネル層3からバリア層4に向かう方向の距離)は、ゲート電極6の厚さの10倍以上であることが好ましい。ゲート電極6に対して十分に厚い第2の導電層14を用いることで、第2の導電層14からゲート電極6間の抵抗が低減する。
【0055】
第2の導電層14の幅(ソース電極5からドレイン電極7に向かう方向の距離)が狭いと低抵抗化の効果が少ない。そこで、第2の導電層14のソース電極5側の端面は、ゲート電極6のソース電極5側の端面よりもソース電極5側に位置していることが好ましい。
【0056】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置の変形例である。
図4に第4の実施形態の半導体装置103の模式断面図を示す。第4の実施形態の半導体装置103は、ゲート電極6とバリア層4の間に第3の窒化物半導体層15を有し、第2のフィールドプレート電極9とドレイン電極7の間に第4のフィールドプレート電極16を有すること以外は、第1の実施形態の半導体装置と共通する。
【0057】
第3の窒化物半導体層15は、p型不純物がドーピングされた窒化物半導体層であり、例えば、p型のAlGaNである。半導体装置103のゲート電極6の下に、p型の半導体層が設けられているため、ゲート電圧が0Vの際にゲート直下のチャネルが空乏化する。この形態とすることで半導体装置103は、ノーマリオフ動作の実現が可能となる。第3の窒化物半導体層15は、ゲート電極6と比べて非常に厚さの薄い層(例えば、数十分の一)であるので、第3の窒化物半導体層15とゲート電極の厚さの合計は、第1のフィールドプレート電極8と同程度の厚さになる。
【0058】
また、第4のフィールドプレート電極16を第2のフィールドプレート電極9とドレイン電極7の間にさらに設けてもよい。第4のフィールドプレート電極16を設けることで、電界集中をより緩和することができる。
【0059】
第4の実施形態の半導体装置103は、ゲート-ドレイン間容量が減少するだけでなく、さらにノーマリオフ動作が可能となるため、スイッチング効率の効率化の観点から好ましい。
【0060】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置の変形例である。
図5に第5の実施形態の半導体装置104の模式断面図を示す。第5の実施形態の半導体装置104は、底面がチャネル層3中に位置するトレンチ(リセス)を有し、ゲート絶縁膜17をゲート電極6とバリア層4の間にさらに具備し、トレンチ内にゲート電極6が位置すること以外は、第1の実施形態の半導体装置100と共通する。トレンチの底面がチャネル層3内に位置することにより、ゲート電極6下の二次元電子ガスが消滅する。この形態とすることで、半導体装置104はノーマリオフ動作の実現が可能となる。ゲート電極6の構造が異なる第5の実施形態においても、第1の実施形態と同様にゲート-ドレイン間の電界のピークとゲート-ドレイン間容量が低減し、スイッチング特性に優れた半導体装置104を提供することが出来る。
【0061】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、半導体装置に関する。第6の実施形態の半導体装置は、第1の実施形態と一部共通する。
図6に第6の実施形態の半導体装置105の模式断面図を示す。第6の実施形態の半導体装置105は、基板1、バッファ層2、チャネル層3、バリア層4、ソース電極5、ゲート電極6、ドレイン電極7、第1のフィールドプレート電極8、及び、層間絶縁層11を備える。ゲート-ドレイン間の容量を減らす観点から第1のフィールドプレート電極8をバリア層4と直接的に接する様に設けている。第1のフィールドプレート電極8は、ソース電極5からドレイン電極7に向かう方向におけるゲート電極6とドレイン電極7の間に位置し、バリア層4と直接的に接している。他の実施形態に記載した第2のフィールドプレート電極9もゲート-ドレイン間容量を減らす効果があるが、第2のフィールドプレート電極9を設けずに第1のフィールドプレート電極8を設けた形態の半導体装置の方が第1のフィールドプレート電極8を設けずに第2のフィールドプレート電極9を設けた形態の半導体装置よりゲート-ドレイン間容量を減らすことができる。
【0062】
第1のフィールドプレート電極8のバリア層4を向く面の全面は、バリア層4と直接的に接していることが好ましい。
【0063】
ゲート-ドレイン間の容量を減らす観点から、第1のフィールドプレート電極8の高さは、ゲート電極6と同じ高さであることが好ましい。第1のフィールドプレート電極8の位置などの好ましい条件に関しては、第1の実施形態と共通する。
【0064】
第1のフィールドプレート電極8の他にも他のフィールドプレート電極を設けるなどして、横方向の電界を緩和させることが好ましく、他のフィールドプレート電極を設けた場合においても、ゲート電極6とドレイン電極7の間に位置し、バリア層4と直接的に接した第1のフィールドプレート電極8が存在することによって、ゲート-ドレイン間容量を減少させ、スイッチング特性を向上させることが好ましい。
【0065】
図7と
図8に、実施形態の作用及び効果の説明図を示す。
図7及び
図8は、比較形態と実施形態のシミュレーション結果である。
図7は、Q
GD(縦軸)とV
GS(横軸)の関係を示すグラフである。
図8は、ゲート電極6からドレイン電極7方向(横軸)の電界分布(縦軸)を示している。実線は、第1の実施形態の半導体装置100の特性である。一点長鎖線は、半導体装置100から第1のフィールドプレート電極8及び第2のフィールドプレート電極9を省略した半導体装置(比較形態)の特性である。破線は、半導体装置100から第1のフィールドプレート電極8を省略した半導体装置(比較形態)の特性である。
図8に示す二点長鎖線は半導体装置100から第2のフィールドプレート電極9を省略した半導体装置(第6の実施形態に相当)の特性である。
図7及び
図8から、実施形態の半導体装置100は、ゲート-ドレイン間容量を低減しつつ、良好な電界分布を有することが確認される。また、第6の実施形態に相当する半導体装置(二点長鎖線)は、比較形態と比べてQGDが低減している。
図7に示した特性から第1のフィールドプレート電極8は、第2のフィールドプレート電極9と比べてゲート-ドレイン間容量の低減効果が大きいことがわかる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
100 半導体装置
1 基板
2 バッファ層
3 チャネル層(第1の窒化物半導体層、窒化物半導体層)
4 バリア層(第2の窒化物半導体層、窒化物半導体層)
5 ソース電極(第1の電極)
6 ゲート電極
7 ドレイン電極(第2の電極)
8 第1のフィールドプレート電極
9 第2のフィールドプレート電極
10 第3のフィールドプレート電極
11 層間絶縁膜
12 絶縁膜
13 第1の導電層
14 第2の導電層
15 第3の窒化物半導体層
16 第4のフィールドプレート電極
17 ゲート絶縁膜
100~105 半導体装置