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特許7500792パワーエレクトロニクスアセンブリ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】パワーエレクトロニクスアセンブリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240610BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240610BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240610BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
H05K1/02 F
H05K3/46 U
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010925
(22)【出願日】2023-01-27
(65)【公開番号】P2023110904
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】17/587,255
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】フォン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ヤンホー
(72)【発明者】
【氏名】請川 紘嗣
(72)【発明者】
【氏名】エルカン デデ
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0176896(US,A1)
【文献】米国特許第10334756(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2022/022323(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/042038(US,A1)
【文献】特開2012-200141(JP,A)
【文献】特開2013-149920(JP,A)
【文献】実開平2-068493(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02;
3/46;
7/20
H01L 23/36;
23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーエレクトロニクスアセンブリであって、
複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、
前記PCBと接触する冷却板であって、
電気絶縁材料から構成され、第1の空洞及び第2の空洞を具備するマニホールドと、
前記第1の空洞内に配置され、前記複数の導電層の第1の導電層に接触する第1のヒートシンクと、
前記第2の空洞内に配置され、前記複数の導電層の第2の導電層に接触する第2のヒートシンクと、を具備する、冷却板と、
を具備し、
前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクは、誘電体被覆層を有する、
パワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項2】
前記マニホールドは誘電性冷却剤用の入口を含み、前記誘電性冷却剤は前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項3】
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に位置決めされた複数の溝部をさらに具備し、それによって、前記第1の空洞を前記第2の空洞から電気的に絶縁し、前記複数の溝部は前記冷却板と接触している、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項4】
前記冷却板と接触する第2のPCBをさらに具備し、前記第2のPCBは、前記冷却板に熱的に結合された導電層を有する、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項5】
前記冷却板と接触するコンデンサパックをさらに具備し、前記コンデンサパックは前記冷却板に熱的に結合される、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項6】
前記冷却板は複数の開口を具備し、
前記コンデンサパックは複数のフィンを具備し、
前記複数のフィンのそれぞれは、前記複数の開口のうちの開口内に配置される、請求項5に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項7】
前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクは、前記PCBに直接接合される、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項8】
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に配置された複数のピンをさらに具備し、それによって、前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクを通る冷却剤の流れを真っ直ぐにする、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項9】
車両冷却システム用のパワーエレクトロニクスアセンブリであって、前記アセンブリは、
複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、
前記PCBと接触する冷却板であって、
誘電性冷却剤源に流体結合された入口と、
電気絶縁材料から構成され、第1の空洞、第2の空洞及び冷却剤ポケットを具備するマニホールドと、
前記第1の空洞内に配置され、前記複数の導電層の第1の導電層と前記冷却剤ポケットとに接触する第1のヒートシンクと、
前記第2の空洞内に配置され、前記複数の導電層の第2の導電層と前記冷却剤ポケットとに接触する第2のヒートシンクと、
前記冷却剤ポケットに流体結合された出口と、を具備する、冷却板と、
を具備し、
前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクは、誘電体被覆層を有する、
パワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項10】
前記誘電性冷却剤は、前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項11】
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に位置決めされた複数の溝部をさらに具備し、それによって、前記第1の空洞を前記第2の空洞から電気的に絶縁し、前記複数の溝部は前記冷却板と接触している、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項12】
前記冷却板と接触する第2のPCBをさらに具備し、前記第2のPCBは、前記冷却板に熱的に結合されたパワーデバイスを有する、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項13】
前記冷却板と接触するコンデンサパックをさらに具備し、前記コンデンサパックは前記冷却板に熱的に結合される、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項14】
前記冷却板は複数の開口を具備し、
前記コンデンサパックは複数のフィンを具備し、
前記複数のフィンのそれぞれは、前記複数の開口のうちの開口内に配置される、
請求項13に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項15】
前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクは、前記PCBに直接結合される、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項16】
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に配置された複数のピンをさらに具備し、それによって、前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクを通る冷却剤の流れを真っ直ぐにする、請求項9に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
【請求項17】
パワーエレクトロニクスアセンブリの製造方法であって、
電気絶縁材料から構成された、冷却板のマニホールド内に第1の空洞及び第2の空洞を作成することと、
第1のヒートシンクを、複数の導電層の第1の導電層と接触させ、前記第1の空洞内に設置することと、
第2のヒートシンクを、複数の導電層の第2の導電層と接触させ、前記第2の空洞内に設置することと、
前記複数の導電層をプリント回路基板(PCB)上に設置することと、
前記PCBを前記冷却板と接触させることと、
を含み、
前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクは、誘電体被覆層を有する、
方法。
【請求項18】
前記マニホールドは、誘電性冷却剤を受容するように構成され、前記誘電性冷却剤は、前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、パワーエレクトロニクスアセンブリ及びその製造方法に概ね関し、さらに具体的には、冷却部品と一体化されたパワーエレクトロニクスアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
車両にエレクトロニクスを使用することが増えたため、電子システムをいっそうコンパクトにする必要がある。このようなパワーエレクトロニクスアセンブリの部品の1つには、パワーデバイスが組み込まれたプリント回路基板(PCB)が挙げられる。パワーデバイスが埋め込まれたPCBでは、パワーデバイスによって生成される熱のため、広範な冷却が必要になる場合がある。そのような冷却要件を満たすために、冷却板を使用する場合がある。
【0003】
従来、PCBに埋め込まれたパワーデバイスを電気的に絶縁するために、冷却板とPCBとの間に電気絶縁層を設置している。電気絶縁層と電気絶縁層上に設置された熱界面材料(TIM)とにより、PCBのサイズと総熱抵抗が増大する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリのための装置が、複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、PCBと接触する冷却板とを備える。冷却板は、電気絶縁材料から構成され、第1の空洞及び第2の空洞を備えるマニホールドを備える。冷却板は、第1の空洞内に位置決めされ、複数の導電層に熱的に結合された第1のヒートシンクをさらに備える。冷却板は、第2の空洞内に位置決めされ、複数の導電層に熱的に結合された第2のヒートシンクをさらに備える。
【0005】
別の実施形態では、車両冷却システム用のパワーエレクトロニクスアセンブリのための装置が、複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、PCBと接触する冷却板とを備える。冷却板は、誘電性冷却剤源に流体結合された入口を備える。冷却板は、電気絶縁材料から構成されたマニホールドをさらに備え、第1の空洞、第2の空洞及び冷却剤ポケットを備える。冷却板は、第1の空洞内に位置決めされ、複数の導電層と冷却剤ポケットとに熱的に結合された第1のヒートシンクをさらに備える。冷却板は、第2の空洞内に位置決めされ、複数の導電層と冷却剤ポケットとに熱的に結合された第2のヒートシンクをさらに備える。冷却板は、冷却材ポケットに流体結合された出口をさらに備える。
【0006】
さらに別の実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリを製造する方法には、電気絶縁材料から構成された、冷却板のマニホールド内に第1の空洞及び第2の空洞を作成するステップが含まれる。この方法は、第1の空洞内に第1のヒートシンクを設置するステップをさらに含む。この方法は、第2の空洞内に第2のヒートシンクを設置するステップをさらに含む。この方法は、プリント回路基板(PCB)上に複数の導電層を設置するステップをさらに含む。この方法は、PCBを冷却板と接触させるステップをさらに含む。
【0007】
本明細書に記載の実施形態によって提供される、これまでに挙げた特徴をはじめとする特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、さらに完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面に記載の実施形態は、本質的に例示的で説明的なものであり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図するものではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、類似の構造を類似の参照番号で示している以下の図面と併せて読むと理解することができる。
【0009】
図1A】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、ヒートシンクを有する冷却板とを備える例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリの分解斜視図を概略的に示す図である。
図1B】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の電力端子を有する例示的なPCBの第1の表面を概略的に示す図である。
図1C】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による例示的なPCBの断面を概略的に示す図である。
図2】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の空洞及びヒートシンクを有する例示的な冷却板の分解斜視図を概略的に示す図である。
図3】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の空洞及びヒートシンクを有する例示的な冷却板の斜視図を概略的に示す図である。
図4】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の空洞及び複数のピンを有する例示的な冷却板の上面図を概略的に示す図である。
図5】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の空洞を有する例示的な冷却板の第1の側面図を概略的に示す図である。
図6】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の空洞及びヒートシンクを有する例示的な冷却板の別の第1の側面図を概略的に示す図である。
図7】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、ヒートシンク上に電気絶縁層を有する例示的な冷却板の図6のA-Aに沿った側断面図を概略的に示す図である。
図8】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、冷却板全体にわたって電気絶縁層を有する別の例示的な冷却板の図6のA-Aに沿った側断面図を概略的に示す図である。
図9】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数の溝部を有するさらに別の例示的な冷却板の図6のA-Aに沿った側断面図を概略的に示す図である。
図10】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、複数のパワーデバイスを有するPCBと、ヒートシンクを有する冷却板と、コンデンサパックとを備える、例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリの分解斜視図を概略的に示す図である。
図11】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、ヒートシンクと、複数の空洞と、複数の開口を有するカバーとを有する冷却板を概略的に示す図である。
図12】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、冷却板用の複数の開口を有するカバーを概略的に示す図である。
図13】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、第1の構成での複数のパワーデバイスピン及び複数のコンデンサピンの側断面図を概略的に示す図である。
図14】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、第2の構成での複数のパワーデバイスピン及び複数のコンデンサピンの側断面図を概略的に示す図である。
図15】本明細書に示し説明する1つ又は複数の実施形態による、第3の構成での複数のパワーデバイスピン及び複数のコンデンサピンの側断面図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で説明する実施形態では、複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)のほか、PCBと接触する冷却板を含むパワーエレクトロニクスアセンブリを対象とする。冷却板は、電気絶縁材料から構成されたマニホールドと、内部にヒートシンクが位置決めされた空洞とを有する。ヒートシンクは、複数の導電層に熱的に結合される。本明細書に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリは、電気絶縁層の必要性を回避するか最小化したり、及び/又は全体的な熱抵抗を低減したりする。熱抵抗が低減するため、冷却プロセスがさらに効率的になり、それによって冷却板をいっそう薄くすることができる。これにより、全体のパッケージサイズがコンパクトになり、冷却能力が向上する。実施形態では、本明細書に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリは、誘電性冷却剤を利用し、モータ冷却システム(例えば、インホイールモータ)などの誘電性冷却剤も利用する他の冷却システムに組み込むことができる。
【0011】
方法及び装置のさまざまな実施形態と、方法及び装置の動作とを本明細書でさらに詳細に説明する。可能な限り常に、同一又は類似の部品を参照するために、図面全体を通して同一の参照番号を使用する。
【0012】
従来のパワーデバイス内蔵PCB構成では、さまざまな電圧のパワーデバイスを互いから電気的に絶縁するために、PCBと冷却板との間に電気絶縁層が必要になる場合がある。電気絶縁層を使用する場合にはこのほか、電気絶縁層の1つ又は複数の面に断熱材(TIM)を使用して、PCBから冷却板までの冷却速度を高めてもよい。電気絶縁層とTIM層を追加することにより、PCBの総熱抵抗が増大する可能性がある。パワーデバイスからの熱流束が高く、PCB内での熱拡散が不十分であり、追加の層のために総熱抵抗が増大することにより、従来のパワーエレクトロニクスアセンブリの冷却能力は低い。このため、パワーエレクトロニクスアセンブリは、パワーデバイスを冷却するための冷却能力が低いために、電力出力が低下する。さらに、このような追加の層により、パワーエレクトロニクスアセンブリ構成のパッケージサイズが大きくなり、パワーエレクトロニクスアセンブリを設置し得る場所が制限される(例えば、車両内の特定の場所のみになる)。
【0013】
本明細書に示し説明する各構造では、パッケージサイズがコンパクトであり、熱抵抗が減少し、流量分布がさらに良好になることにより、従来の構造(例えば、パワーエレクトロニクスアセンブリ)よりも優れた利点を提供し、このような利点はいずれも、冷却能力を高める。さらに、本明細書に示し説明する構造はこのほか、従来とは異なる空間で展開可能であったり、及び/又は既存の部品と統合されたりしてもよい。例えば、本明細書に示し説明する構造は、モータ冷却システム(例えば、インホイールモータ)又は誘電性冷却剤を使用する他のシステムと一体化されて、その結果、誘電性冷却剤を複数の目的に使用することができる。
【0014】
ここで図1A図1Cを参照すると、体積プロファイルが低下し、電力密度が増大し、電気インダクタンスが低下したパワーエレクトロニクスアセンブリ100の一実施形態を概ね示している。いくつかの実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、例えば、電気自動車のモータ冷却システムと統合されるなどした電気自動車で利用される。他の実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気駆動パワーデバイス、例えば、ハイブリッド車両、任意の電気モータ、発電機、工業用工具、家庭用電化製品、あるいはコンパクトなパッケージサイズを必要とする任意の他の電気駆動パワーデバイスなどで使用される。パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、多層プリント回路基板(PCB)102及び冷却板112を概ね備えてもよい。PCB102は、第1の表面108と、第1の表面108の反対側で平行な第2の表面110とを有してもよい。PCB102の第1及び/又は第2の表面108、110に、論理回路などの受動部品及び/又は電気部品のうちの1つ又は複数を取り付けてもよい。1つ又は複数の受動部品及び/又は電気部品は、1つ又は複数の抵抗器、コンデンサ、インダクタ、ダイオード、発振器、トランジスタ、集積回路、スイッチ、端子などを備えてもよい。第1の表面108又は第2の表面110はこのほか、本明細書でさらに詳細に説明するように、1つ又は複数のデバイスに接続するための1つ又は複数の端子を備えてもよい。
【0015】
ここで図1Bを参照すると、複数の電力端子を有した状態で示すPCB102の第2の表面110を示している。複数の電力端子は、N端子160と、1つ又は複数のO端子162(例えば、U端子162a、V端子162b及びW端子162c)と、パワーエレクトロニクスアセンブリ100を(図示しない)1つ又は複数のデバイスに電気的に結合するように構成されたP端子164とを備えてもよい。以下に説明するように、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、あるタイプの電流を第1の電流から第2の電流(例えば、ACからDC、DCからACなど)に変換するように動作可能であってもよい。いくつかの実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、代わりに、第1の電圧を第2の電圧に変換するように構成され得ることが検討される。このため、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、変換器接続形態、逆変換回路接続形態などで配置されてもよい。
【0016】
ここで図1Cを参照すると、PCB102の断面を、図1Bに示した複数の受動部品及び/又は電気部品のない状態で示している。本明細書でさらに詳細に説明し、図1Aに概略的に示すように、1つ又は複数の冷却板112を、PCB102の第1の表面108及び第2の表面110のうちの少なくとも1つに取り付けてもよい。このほか、本明細書でさらに詳細に説明するように、PCB102内に配置された複数の導電層183は、PCB102内に埋め込まれた1つ又は複数のパワーデバイス170を冷却板112に熱的に結合し、その結果、冷却板112が、1つ又は複数のパワーデバイス170から熱を引き離すことにより、1つ又は複数のパワーデバイス170を冷却してもよい。本明細書に記載の複数のパワーデバイス170は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、逆導通IGBT(RC-IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、パワーMOSFET、ダイオード、トランジスタ及び/又はその組み合わせなどが挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない1つ又は複数の半導体デバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のパワーデバイスのうちの少なくとも1つが、ワイドバンドギャップ半導体を含んでも、炭化ケイ素(SiC)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化ホウ素(BN)などが挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない任意の適切な材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、複数のパワーデバイスは、高電流及び/又は高電力(例えば、5kW、10kW、20kW、30kW、40kW、50kW、60kW、70kW、80kW、90kW、100kW、110kW、120kW、130kW、140kW又は150kW、あるいはその間の任意の値以上)を有するパワーモジュール内で、高温(例えば、100°C、150°C、175°C、200°C、225°C又は250°Cを超える温度)下で動作する場合があり、パワーモジュールの継続的な動作のために除去する必要がある大量の熱を生成する場合がある。
【0017】
パワーデバイス170の各々は、パワーデバイスアセンブリ168の一部であってもよく、その結果、それぞれが導電性基板172と、導電性基板172内に埋め込まれた(例えば、銅、アルミニウム、亜鉛などから形成された)パワーデバイス170とを備える1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリ168がPCB102内に埋め込まれる。例えば、空洞174を導電性基板172内に形成してもよく、パワーデバイス170を空洞174内に位置決めし、導電性基板172に接合してもよい(例えば、焼結、はんだ付けなどの任意の従来の接合技術を使用してもよい)。次いで、1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリ168はPCB102内に埋め込まれてもよく、その結果、さまざまな導電層アーキテクチャが1つ又は複数のパワーデバイス170(又はパワーデバイスアセンブリ168)に結合されて、特定の接続形態(例えば、逆変換回路接続形態、変換器接続形態など)を達成する。例えば、1つ又は複数のパワーデバイスアセンブリ168は、第1のパワーデバイスアセンブリ168a及び第2のパワーデバイスアセンブリ168bを含む対で配置され得る複数のパワーデバイスアセンブリ168を含んでもよい。例えば、逆変換回路接続形態では、3対のパワーデバイスアセンブリ168が存在してもよい。いくつかの実施形態では、パワーデバイスアセンブリの対を並列接続形態で配置してもよい。例えば、逆変換回路には、6つのパワーデバイスアセンブリを含むパワーデバイスアセンブリ168の1つの配列が含まれてもよく、それによって3対のパワーデバイスアセンブリを提供する。並列接続形態では、計12個のパワーデバイスアセンブリに対して、6個のパワーデバイスアセンブリの2つの配列を提供してもよい。同じように、パワーデバイスアセンブリ168の3つ以上の層があってもよい。例えば、別の並列接続形態では、計18個のパワーデバイスアセンブリに対して、6個のパワーデバイスアセンブリの3つの配列を提供してもよい。
【0018】
冷却板112は、本明細書でさらに詳細に説明するように、1つ又は複数のパワーデバイス170によって生成された熱を除去する任意のデバイス又はデバイスの組み合わせを含んでもよい。実施形態では、グリース層が、冷却板112とPCB102との間で相互作用して、それ以外では、PCB102と冷却板112のさまざまな層との間に形成され得る断熱エアポケットを排除することによって、熱抵抗を減少させたり、及び/又は熱伝導率を増大させたりする。実施形態では、グリース層は、PCB102を冷却板112から電気的に絶縁するために電気絶縁性であってもよく、いくつかの実施形態では電気絶縁層を形成してもよい。グリース層は、例えば、エポキシ、シリコーン、ウレタン、アクリレート、金属、金属合金又はその任意の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
冷却板112は、冷却板112及びPCB102の層のそれぞれを通って延在する(図示しない)複数の締結具(例えば、ボルト)を介してPCB102に固定されてもよい。しかし、他の結合技術が検討されており、可能性がある。例えば、(図示しない)外部ハウジング又はケージが、冷却板112をPCB102に取り付けてもよい。
【0020】
一般に、非導電性基板(例えば、誘電体ポリマー層)のシート/層上に積層されたり、及び/又は同シート/層間に積層されたりするさまざまな導電経路を形成して、一体型で均一な厚さのPCBを形成するためにエッチングされた導電性材料(例えば、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、その任意の組み合わせなど)の1つ又は複数の層からPCBを形成する。本開示によるPCB102は、(図1Cに示すように)1つ又は複数のパワーデバイス170がPCB102内に完全に収容されるように、1つ又は複数のパワーデバイス170周りに共に積層された複数の層を含む。上述のように、複数の導電層183は、PCB102の第1の面108上に配置され、1つ又は複数のパワーデバイス170との間の電気伝導と、1つ又は複数のパワーデバイス170と冷却板112との間の熱伝導の両方を提供する。
【0021】
図1Aは、複数の導電層183を有するPCB102の第1の表面108を示す。底部N層186と、(底部U層188a、底部V層188b及び底部W層188cを含む)底部O層188と、底部P層182とから構成される複数の導電層183は、1つ又は複数のパワーデバイス170及び/又はパワーデバイスアセンブリ168から離れた複数の導電層176を介してPCB102を通る熱伝達を可能にするために冷却板112と接触し得る第1の表面108上に露出される。
【0022】
図示の実施形態では、N導電層アーキテクチャ184を、(図示しない)第1の複数の導電ビアを介して第1のパワーデバイス170a又は第1のパワーデバイスアセンブリ168aに結合する。O導電層アーキテクチャ185を、(図示しない)第2の複数の導電ビアを介して第1のパワーデバイス170a及び/又は第1のパワーデバイスアセンブリ168aに結合する。例えば、導電性O層188は、第2の複数の導電性ビアの一部を介して導電性基板172の表面に結合されてもよい。P導電層アーキテクチャ180を、(図示しない)第4の複数の導電ビアを介して第2のパワーデバイス170bに結合する。このため、電気を、N端子160にてN導電層アーキテクチャ184に接続された電源と、第1のパワーデバイス170aの上面と、第1のパワーデバイスアセンブリ168aの導電性基板172の表面と、第2のパワーデバイス170bの上面へのO導電層アーキテクチャ185と、第2のパワーデバイスアセンブリ168bの導電性基板172の表面にあるP導電層アーキテクチャ180との間で流してもよい。図1Cに示すように、冷却板112は、N導電層アーキテクチャ184と、O導電層アーキテクチャ185と、1つ又は複数のパワーデバイス170から冷却板112へのP導電層アーキテクチャ180とのそれぞれを含む複数の導電層176を通しても熱を伝導し得るように、PCB102の第2の表面110に取り付けられてもよい。
【0023】
複数の電力デバイス170のそれぞれが、複数のパワーデバイス170のうちの他のものの(同じであるか異なる場合がある)電圧とは無関係である特定の電圧を有してもよい。この電圧の変動性により、パワーデバイスを互いに電気的に絶縁することが必要になる場合がある。複数のパワーデバイス170が複数の導電層183に電気的に結合されているため、複数の導電層183のそれぞれはこのほか、それぞれのパワーデバイスに相関する特定の電圧を有する場合がある。第1の表面108上の絶縁層104が、複数の導電層183のそれぞれを互いから電気的に分離してもよい。
【0024】
PCB用のパワーモジュールの従来の実施形態では、PCBから冷却板への熱流束を減少させる電気絶縁層及びTIM層からの熱抵抗が増大するため、電力出力を下げる必要がある場合がある。このため、従来の実施形態の電力出力要件を満たすために、追加のPCBを追加してもよい。
【0025】
しかし、本実施形態では、複数の導電層183を冷却板112に直接熱的に結合する。本明細書でさらに詳細に考察するように、この構成により、複数の導電層183を介して複数のパワーデバイス170からヒートシンク126へのさらに効率的かつ効果的な熱拡散及び熱伝達が可能になる。さらに、絶縁層などの構成要素をなくすことにより、結果として得られるパワーエレクトロニクスアセンブリ100の小型化が向上する(例えば、結果として得られるパワーエレクトロニクスアセンブリ100の全体のサイズが小さくなる)。
【0026】
ここで図1図4を概ね参照すると、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は冷却板112を備える。冷却板112は、第1の面114、第2の面116、入口118、出口120、マニホールド122、冷却剤ポケット124、複数のヒートシンク126、複数のピン128及びカバー130を概ね備える。第2の面116は、第1の面114の反対側に位置決めされる。冷却板112は、PCB102の構成要素、特に、複数の導電層183を介してPCB102内に埋め込まれた複数のパワーデバイス170を冷却する。このため、冷却板112は、第1の表面108と接触する(例えば、取り外し可能に結合される、当接する)。
【0027】
冷却材を、収集された熱エネルギーの媒体として冷却板内で使用する。従来のシステムでは、冷却剤の熱伝導率が大きくなるため、非誘電性冷却剤を使用していた。しかし、非誘電性冷却剤を用いると、構成要素が互いから電子的に適切に絶縁されていない場合、シールが破損した場合などに、パワーエレクトロニクスアセンブリに電気的短絡を引き起こす可能性がある。本開示では、誘電性冷却剤を冷却流体として利用する。従来のシステムと比較して、誘電性冷却剤は電荷を帯びていないため、放電を防止するか急速に抑える。誘電性冷却剤を、脂肪族、シリコーン、フルオロカーボンなどから構成してもよい。
【0028】
そのような誘電性冷却剤の1つが、電気自動車の冷却システムで使用されるような油性の冷却剤である。そのため、本実施形態を、車両の他の冷却部品と物理的及び/又は流体的に統合してもよい。例えば、実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気自動車の電気モータに結合されてもよい。実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリは、電気モータに電気的に統合される。実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、冷却剤タンクを電気モータと共有する(例えば、両方が流体結合される)。実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気モータと流体的に直列であり、その結果、パワーエレクトロニクスアセンブリ100は、電気モータへ誘電性冷却剤を出力するか、電気モータから誘電性冷却剤を受け取る。その結果、パワーエレクトロニクスアセンブリ100をはじめとする車両構成要素を冷却するために利用することができる冷却システムが少なくなるため、以前のシステムに比べてサイズがさらにコンパクトになる。
【0029】
入口118及び出口120は、冷却剤が入口118を通ってマニホールド122の冷却剤ポケット124に導入され得るように構成される。マニホールド122は、マニホールド122がPCB102の複数の導電層106と熱的に接触するように冷却板112内に特に配置され、これにより、冷却板112にて、複数のパワーデバイス170によって生成された熱を伴う熱伝達の発生を可能にする。
【0030】
具体的には、入口118を介して導入された冷却剤は、PCB102と接触するマニホールド122の表面に衝突し、その表面から熱を抽出するように、冷却剤ポケット124を通って流れる。冷却剤は、出口120を通ってマニホールド122から流出してもよい。図には示していないが、入口118及び出口120は、ポンプ、凝縮器、タンク、ラジエータ及び/又は他の冷却システム構成要素に流体結合されてもよい。誘電性冷却剤を使用する実施形態では、入口118及び出口120は、誘電性冷却剤を利用する他の装置に流体結合される。例えば、入口118は、誘電性冷却剤を利用する別の装置から誘電性冷却剤を受け取る場合があったり、及び/又は出口120は、誘電性冷却剤を利用する別の装置に誘電性冷却剤を提供する場合があったりする。別の例では、入口118は、誘電性冷却剤を利用する他のデバイスと共有される冷却剤タンクから誘電性冷却剤を受け取る場合があり、出口は、誘電性冷却剤を利用する他のデバイスと共有される冷却剤タンクに誘電性冷却剤を提供する場合がある。
【0031】
図1及び図2は、それぞれが互いにほぼ平行に概ね配置され、冷却板112の第2の面116から延在する入口118及び出口120を示しているが、本開示はそのような状態に限定されない。即ち、いくつかの実施形態では、入口118及び出口120のいずれか又は両方が冷却板112の他の表面から延在してもよい。
【0032】
マニホールド122内の冷却剤は、カバー130によって包含される。このため、カバー130は、マニホールド122の幅及び長さに沿って延在し、マニホールド122に結合される(例えば、接着される、締結される)。カバー130は、アルミニウム、プラスチックなどから構成されてもよい。入口118及び出口120が第2の面116から延びる実施形態では、カバー130は、入口118及び出口120のための入口穴及び出口穴をそれぞれ形成する。いくつかの実施形態では、マニホールド122は、カバーが必要ないように構成されてもよい。
【0033】
ここで図3を参照すると、冷却剤ポケット124を示している。冷却剤ポケット124は、マニホールド122の第2の面116内に形成された(例えば、機械加工、成形、3D印刷などによって形成された)ポケットである。冷却剤が入口を介してマニホールド122に流入後、冷却剤は冷却剤ポケット124に収集される。冷却剤ポケット124は、冷却剤が複数のヒートシンク126に均等に分配されるように、複数のヒートシンク126と相互作用する前に冷却剤を導く。実施形態では、冷却剤ポケット124は、冷却要件が高くなっているヒートシンクに追加の冷却剤が提供されるように、冷却剤を導く。
【0034】
冷却剤ポケット124は、入口118の下流にて、冷却剤が複数のヒートシンク126と相互作用する前に、入口くさび形プロファイル124aを形成する。入口くさび形プロファイル124aは、冷却剤が入口118から複数のヒートシンク126に流れるにつれて増大する断面積を有し、それによって、複数のヒートシンク126のそれぞれへの流れの分配を均衡させる。冷却剤ポケット124はこのほか、冷却剤が複数のヒートシンク126と相互作用した後、出口120を通って冷却剤ポケット124から流出する前に、出口くさび形プロファイル124bを形成する。出口くさび形プロファイル124bは、冷却剤が複数のヒートシンク126から出口120に流れるにつれて減少する断面積を有し、それにより、複数のヒートシンク126と相互作用した後、流れの分配を均衡させる。
【0035】
冷却板用の従来のマニホールドは、金属などの導電性材料から構成される。このため、電圧が変化するPCBのパワーデバイスが電気的に短絡するのを防止するために、冷却板とPCBとの間に電気絶縁層が必要となる場合がある。さらに、PCBからマニホールドへの熱流束を増大させるために、電気絶縁層の両側にTIM層が必要になる場合がある。このような追加層により、熱抵抗が増大し、パワーエレクトロニクスアセンブリのパッケージサイズが増大する。
【0036】
図5図6を参照すると、いくつかの実施形態によるマニホールド122及び複数のヒートシンク126を示している。マニホールド122は、概ね平面であり、プラスチック、セラミックなどの電気絶縁材料から構成される。いくつかの実施形態では、マニホールド122は、電気絶縁材料で被覆される。電気絶縁材料は、複数の導電層183を互いから電気的に絶縁し、それにより、電気絶縁層及び電気絶縁層の両面上のTIM層が必要なくなる。マニホールド122は、鋳造、3D印刷、機械加工などによって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、単一のTIM層(例えば、グリースなど)がPCB102と冷却板112との間に設置される。
【0037】
パワーエレクトロニクスアセンブリ100の熱抵抗が減少するため、PCB102を冷却板112に直接接触させることにより、冷却板112の冷却能力が向上する。このため、冷却板112の厚さ(例えば、第1の面114から第2の面116までの距離)が減少する。いくつかの実施形態では、冷却板112は、約5mmから約10mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、冷却板112は、約8mmから約12mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、冷却板112は、約9mmから約15mmの厚さを有する。冷却板112の厚さが減少したことにより、パワーエレクトロニクスアセンブリ100では、従来の設計と比較して、パッケージサイズが小さくなり、熱設計がさらに効率的になる。さらに、複数のパワーデバイスの電力出力は、冷却能力が向上したために増大する場合がある。
【0038】
図5に示すように、マニホールド122はその中に複数の空洞132を形成する。空洞132のそれぞれを、複数のヒートシンク126のうちの1つがその中に受容され得るように、成形したり、サイズ決めしたり、及び/又は配置したりしてもよい。即ち、複数の空洞132のそれぞれの形状は、複数のヒートシンク126の対応するヒートシンクが空洞132内に受容され、適所に接合されるように形成されてもよい。複数の空洞132のそれぞれは、複数のヒートシンク126のそれぞれのヒートシンク本体126aを受容するために、マニホールド122の一部に沿って延在する凹部132aを含む。さらに、複数の空洞132のそれぞれは、複数のヒートシンク126のそれぞれのフィン126bを受容するために、マニホールド122の深さの始めから終わりまで延びる(例えば、第1の面114から第2の面116まで延びる)貫通孔132bを含む。例えば、複数の空洞132は、複数のヒートシンク126の(図6に示す)第1のヒートシンク138に適合する形状の第1の空洞134と、複数のヒートシンク126の(図6に示す)第2のヒートシンク140に適合する形状の第2の空洞136とを含んでもよい。
【0039】
複数の空洞132のうちの対応する1つの内部で複数のヒートシンク126のそれぞれを接合するために、さまざまな接合技術を実施してもよい。例えば、誘導加熱、プラスチックはんだ付け、焼結又は他の接合プロセスを実施してもよい。いくつかの実施形態では、複数のヒートシンク126のそれぞれのフィン126bは、マイクロチャネル、プレートフィン、ピンフィン又はその組み合わせを含む。複数のヒートシンク126のそれぞれは、アルミニウム又は銅などの熱伝導性材料から作成されてもよい。複数のヒートシンク126のそれぞれは、熱伝導性材料の固体ブロックから機械加工されてもよい。いくつかの実施形態では、複数のヒートシンク126のそれぞれを、鍛造するか、押し出し成形するか、3D印刷してもよい。
【0040】
図3に示すように、複数のピン128は、複数のヒートシンク126のフィン126bの間に位置決めされる。複数のピン128の上面128aが、冷却剤ポケット124を越えて一定距離延在し、その結果、カバーが取り付けられたときに複数のピン128がカバー130(図1図2)と接触するようになる。接触エリアは、カバー130をマニホールド122に接合するための追加の接合エリアを提供する。複数のピン128の各ピンは、平坦な側面を有する。いくつかの実施形態では、側面は、複数のヒートシンク126のフィン126bに平行であり、それによって、複数のヒートシンク126の間の冷却剤の流れの渦を減少させる(例えば、渦流を減少させる)。このようにして、冷却剤流の再循環が緩和され、冷却剤流が複数のヒートシンク126から吸収する熱流束が多くなる。
【0041】
図1図6に示す冷却板112は、本明細書に記載の実施形態による任意の数の構成を有してもよい。図7図9は、図6のA-Aに沿ったさまざまな代替の例示的構成を示す。ここで図7を参照すると、A-Aに沿った冷却板112の側断面図を、さまざまな実施形態に従って示している。いくつかの実施形態では、ヒートシンク本体126aは、複数のヒートシンク126とPCB102との間の接着を改善するヒートシンクポリイミド被覆702又は任意の類似の被覆で少なくとも部分的に被覆される。パワーエレクトロニクスアセンブリ100が組み立てられると、ヒートシンクポリイミド被覆702aは、複数のヒートシンク126のそれぞれを第1の表面108に接着し、それによって、複数のヒートシンク126のそれぞれとPCB102との間の接触表面積を増大させる。このようにして、複数の導電層183を介したパワーデバイスから複数のヒートシンク126への熱流束の割合が大きくなる。さらに、ヒートシンクポリイミド被覆702は、複数のヒートシンク126とPCB102との間に薄い電気絶縁を提供する。
【0042】
ここで図8を参照すると、A-Aに沿った冷却板112の側断面図を、さまざまな実施形態に従って示している。図7と比較すると、ヒートシンク本体126aを被覆する代わりに、第2の面116は、冷却板112と第1の表面108との間の接着を改善する冷却板ポリイミド被覆802又は任意の類似の被覆で少なくとも部分的に被覆される。冷却板ポリイミド被覆802は、第2の面116全体に沿って(例えば、マニホールド122及び各ヒートシンク本体126aに沿って)延びるか、部分的に第2の面116に沿って延びる。パワーエレクトロニクスアセンブリ100が組み立てられると、冷却板ポリイミド被覆802は、第2の面116を複数のヒートシンク126のそれぞれに接着し、それによって複数のヒートシンク126のそれぞれとPCB102との間の接触表面積を増大させる。このようにして、複数の導電層183を介してパワーデバイス170から複数のヒートシンク126への熱流束の割合が大きくなる。さらに、冷却板ポリイミド被覆802は、複数のヒートシンク126とPCB102との間に薄い電気絶縁を提供する。
【0043】
従来のシステムでは、冷却性能を高めるために非誘電性冷却剤が必要になる場合がある。本開示の実施形態では、複数のヒートシンク126のそれぞれは、各ヒートシンク本体126aに沿って誘電体被覆層で被覆される。誘電体被覆層は、SiO又は任意の他の適切な誘電体被覆層であり得る。誘電体被覆層はこのほか、(例えば、熱伝導率を高め、冷却板112への接合を高めるための)ニッケル、金、銅などの追加の金属被覆を含んでもよい。ヒートシンクポリイミド被覆702を有する実施形態では、ヒートシンクポリイミド被覆702は誘電体被覆層上に塗布される。
【0044】
ここで図9を参照すると、さまざまな実施形態による、図6のA-Aに沿った冷却板112の側断面図を示している。このような実施形態では、複数の溝部902が第2の面116内に形成される。実施形態では、図7に記載のヒートシンクポリイミド被覆702又は図8の冷却板ポリイミド被覆802は、複数の溝部902と共に使用されてもよい。複数の溝部902は、複数のヒートシンク126のそれぞれの間に位置決めされる。電子アセンブリでは、部品が電子的な沿面距離に対して脆弱な場合がある。電子的な沿面距離は、隣接する2つの導電性部品によって作成される電気経路である。部品はさまざまな電圧で動作するため、隣接する部品の動作電圧とは異なる電圧になる可能性があるため、沿面距離が隣接する部品に損傷を与える可能性がある。複数の溝部902は、複数のヒートシンク126のそれぞれの間の長さを物理的に増大させることによって、複数のヒートシンク126のそれぞれの間の放電距離を増大させる。換言すれば、電気的な沿面距離は、複数のヒートシンクのうちの隣接するヒートシンクまでさらに深く延びなければならない。このため、複数の溝部902は、沿面距離からの追加の保護を提供する。いくつかの実施形態では、複数の溝部902のそれぞれは、約0.10インチから約0.30インチの深さ(例えば、冷却板112に形成される深さ)によって形成される。いくつかの実施形態では、複数の溝部902のそれぞれは、約0.25インチから約0.50インチの深さを形成する。いくつかの実施形態では、複数の溝部902のそれぞれは、約0.50インチから約1.00インチの深さを形成する。
【0045】
ここで図10を参照すると、例示的なパワーエレクトロニクスアセンブリ1000の分解斜視図を示している。パワーエレクトロニクスアセンブリ1000は、PCB1002に埋め込まれた複数のパワーデバイスを有するPCB1002を含む。パワーエレクトロニクスアセンブリ1000はこのほか、冷却板1012を備える。冷却板1012は、電気絶縁材料から構成されたマニホールド1022、第1の面1014、第1の面1014の反対側の第2の面1016、入口1018、出口1020、冷却剤ポケット1124、複数のヒートシンク1126、複数の溝部1128及びカバー1030を備える。説明したように、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000は、パワーエレクトロニクスアセンブリ100と実質的に類似するものであってもよい。しかし、パワーエレクトロニクスアセンブリはこのほか、コンデンサパック1034を備えてもよい。実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000は、コンデンサパック1034などの電力貯蔵デバイスを使用してもよい。
【0046】
コンデンサパック1034は、冷却板1012に結合される。実施形態では、コンデンサパック1034は、電気エネルギーを貯蔵し、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000に放出する。実施形態では、コンデンサパック1034は、電気エネルギーを貯蔵し、コンデンサパック1034に電気的に結合された他のデバイスに放出する。コンデンサパック1034は、第1のコンデンサ面1036と、第1のコンデンサ面1036の反対側に位置決めされた第2のコンデンサ面1038とを備える。第1のコンデンサ面1036は、冷却板1012の第2の面1016と接触している。第1のコンデンサ面1036は、銅、金、銀、アルミニウム又はその合金などの高い熱伝導率を有する材料から構成されてもよく、それによって、第1のコンデンサ面1036から第2の面1016への熱流束を増大させる。
【0047】
コンデンサパック1034は、入口開口1040及び出口開口1042を備える。入口開口1040及び出口開口1042のそれぞれは、第1のコンデンサ面1036から第2のコンデンサ面1038まで延びる貫通孔を形成する。パワーエレクトロニクスアセンブリ1000が組み立てられた状態にあるとき、入口1018及び出口1020がコンデンサパック1034を通って延びるように、入口1018は入口開口1040に挿入され、出口1020は出口開口1042に挿入される。
【0048】
このような実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000は、PCB1002とコンデンサパック1034の両方に両面冷却を提供する。冷却板1012は、PCB1002とコンデンサパック1034との間に位置決めされるほか、PCB1002とコンデンサパック1034の両方に熱的に結合されているため、冷却板1012は、PCB1002とコンデンサパック1034の両方を冷却してもよい。これは、コンデンサパック1034のための二次冷却システムの必要性を低減するため、有利である。いくつかの実施形態では、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000は、コンデンサパック1034の代わりに、PCB1002と(図示しない)第2のPCBの両方に両面冷却を提供することが理解される。このような実施形態では、入口開口1040及び出口開口1042は、PCB1002又は第2のPCBのいずれかに形成された開口を通って延びてもよい。実施形態では、入口開口1040及び出口開口1042は、冷却板1012の側壁から延びてもよい。
【0049】
図10に示すコンデンサパック1034は、本明細書に記載の実施形態による任意の数の構成を有してもよい。コンデンサパック1034は、その1つ又は複数の表面から延びるコンデンサフィン1302を備えてもよい。コンデンサフィン1302は、銅、アルミニウム又は任意の他の適切な材料から構成されてもよい。本明細書でさらに詳細に考察するように、コンデンサフィン1302は、(図10図11に示す)カバー1030の複数の開口1130を通って延在する。コンデンサフィン1302は、マニホールド1022内に位置決めされた冷却剤と相互作用する。コンデンサフィン1302は、コンデンサパック1034に熱的に結合され、それによって、コンデンサフィン1302が冷却剤と相互作用するときに、コンデンサパック1034に追加の冷却を提供する。
【0050】
従来のシステムでは、(例えば、冷却板1012内の冷却剤に暴露された場合などに)互いに接触し、腐食環境内にあるさまざまな金属が、1つの金属の腐食を加速させる可能性がある。コンデンサフィン1302と複数のヒートシンク1126のヒートシンクフィン1304は両方とも、冷却板1012内の冷却剤内に少なくとも部分的に位置決めされる。この腐食環境では、第1の金属(例えば、アルミニウム)から構成されたコンデンサフィン1302は陽極(例えば、正に帯電した電極)として機能し、第2の金属(例えば、銅)から構成されたヒートシンクフィン1304は陰極(例えば、負に帯電した電極)として機能する。電子が陽極から陰極に移動し、その結果、陰極の腐食が加速する。図13図15は、複数のヒートシンク1126のヒートシンクフィン1304に対するコンデンサフィン1302の位置の例示的構成を示す。
【0051】
ここで図13を参照すると、アルミニウム製コンデンサフィン1302が銅製ヒートシンクフィン1304と接触するのを防止するために、コンデンサフィン1302がヒートシンクフィン1304に対して互い違いに配置している第1の構成の一実施形態を示している。換言すれば、アルミニウム製コンデンサフィン1302は、銅製ヒートシンクフィン1304と平行に延在するが、銅製ヒートシンクフィン1304とは接触しない。冷却剤が、マニホールド1022に流入し、コンデンサフィン1302及びヒートシンクフィン1304の両方と相互作用し、それによって、コンデンサパック1034及び複数のヒートシンク1126をそれぞれ冷却する。互い違いに配置する構成により、腐食の速度が低下する。
【0052】
ここで図14を参照すると、アルミニウム製コンデンサフィン1302が銅製ヒートシンクフィン1304と接触するのを防止するために、コンデンサフィン1302がヒートシンクフィン1304に対して互い違いに配置している第2の構成の一実施形態を示している。換言すれば、アルミニウム製コンデンサフィン1302は、銅製ヒートシンクフィン1304と平行に延在するが、銅製ヒートシンクフィン1304とは接触しない。第2の構成では、コンデンサフィン1302のそれぞれは、ヒートシンクフィン1304のそれぞれに近づいて位置決めされる。この構成により、(例えば、図13と比較して)断面積が小さくなる。流体チャネル1306の断面積が小さくなると、冷却剤がコンデンサフィン1302とヒートシンクフィン1304との間の流体チャネル1306を通過するときに、冷却剤の速度が増大する。速度が増大すると、コンデンサフィン1302及びヒートシンクフィン1304と相互作用する冷却剤が多くなる。これにより、コンデンサフィン1302及びヒートシンクフィン1304の冷却速度がそれぞれ増大する。
【0053】
ここで図15を参照すると、コンデンサフィン1302及びヒートシンクフィン1304を別の互い違いに配置する構成で示している第3の構成の一実施形態を示している。
図13図14と比較して、コンデンサパック1034が備えるコンデンサフィン1302が少ない。コンデンサフィン1302の数は、コンデンサパック1034の冷却要件に依存してもよい。さらに、備えるコンデンサフィン1302を少なくすることによって、冷却剤内に位置決めされる異なる金属材料が少なくなるため、腐食の加速率を低減する可能性がある。
【0054】
ここで図11図12を参照すると、冷却板1012を示している。このような実施形態では、カバー1030は、カバー1030の深さの始めから終わりまで延びる複数の開口1130を備える。(図13図15に示す)コンデンサフィン1302は、コンデンサパック1034から複数の開口1130を通って少なくとも部分的に延在する。複数の開口1130は、マニホールド1022の冷却剤ポケット1024全体にわたって位置決めされる。このようにして、コンデンサフィン1302は、コンデンサパック1034の冷却を強化するために冷却剤と相互作用する。
【0055】
いくつかの実施形態では、カバー1030は、そこから延びる複数のフィン構造1202をさらに備える。複数のフィン構造1202は、アルミニウム又は銅などの熱伝導性材料から構成されてもよい。複数のフィン構造1202は、カバー1030の深さ全体にわたって延びてもよい。複数のヒートシンク1026のそれぞれは、フィン構造1202のうちの1つと接触し、それによって、複数のヒートシンク1026をフィン構造1202に結合する。次に、複数のフィン構造1202は、複数のヒートシンク1026が受け取った熱を、カバー1030の他の構成要素に提供してもよい。複数のフィン構造1202は、複数のヒートシンク1126に追加の冷却経路を提供し、それによってコンデンサパック1034から冷却板1012への熱流束を増大させる。このようにして、マニホールド1022は、冷却能力を増大させる。
【0056】
このような実施形態では、複数の開口1130の追加の開口を、マニホールド1022内の複数のヒートシンク1126の上方に位置決めする。このようにして、パワーエレクトロニクスアセンブリ1000が組み立てられた状態にあるとき、コンデンサフィン1302は、複数の開口1130を通って延在する。例えば、コンデンサフィン1302は、ヒートシンクフィン1304と一直線上に並べてもよい(例えば、各コンデンサフィン1302は、1つのヒートシンクフィン1304と一直線上に並ぶ)。
【0057】
上記から、複数のパワーデバイスが埋め込まれたプリント回路基板(PCB)のほか、PCBと接触する冷却板を備えるパワーエレクトロニクスアセンブリを対象とする実施形態を、本明細書で定義していることが理解されよう。冷却板は、電気絶縁材料から構成されたマニホールドと、内部にヒートシンクが位置決めされた空洞とを有する。ヒートシンクは、複数のパワーデバイスに熱的に結合される。本明細書に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリは、電気絶縁層の必要性を回避するか最小化したり、及び/又は全体的な熱抵抗を低減したりする。熱抵抗が減少するため、冷却プロセスがさらに効率的になり、それにより、冷却板をさらに薄くすることができる。これにより、全体のパッケージサイズがコンパクトになり、冷却能力が向上する。実施形態では、本明細書に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリは、誘電性冷却剤を利用するほか、誘電性冷却剤を利用するモータ冷却システム(例えば、インホイールモータ)などの他の冷却システムに組み込むことができる。
【0058】
「実質的に」及び「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定又は他の表現に起因する可能性がある固有の不確実性の程度を表すために本明細書で使用し得ることに留意されたい。このような用語はこのほか、問題となっている主題の基本的な機能に変化をもたらすことなく、量的表現が、規定の基準から変化し得る程度を表すために本明細書で使用する。
【0059】
本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな変更及び修正を施し得ることを理解されたい。さらに、特許請求される主題のさまざまな態様を本明細書で説明してきたが、そのような態様を組み合わせて利用する必要はない。このため、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題の範囲内にあるそのような変更及び修正をいずれも網羅することを意図している。
【0060】
当業者であれば、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対してさまざまな修正及び変形を施すことができることが明らかであろう。このため、本明細書は、本明細書に記載されたさまざまな実施形態の修正及び変形を網羅することを意図しており、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内及びその均等物の範囲内にある。
【0061】
〔例1〕
パワーエレクトロニクスアセンブリであって、
複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、
前記PCBと接触する冷却板であって、
電気絶縁材料から構成され、第1の空洞及び第2の空洞を具備するマニホールドと、
前記第1の空洞内に配置され、前記複数の導電層に熱的に結合された第1のヒートシンクと、
前記第2の空洞内に配置され、前記複数の導電層に熱的に結合された第2のヒートシンクと、を具備する、冷却板と、
を具備する、パワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例2〕
前記マニホールドは、誘電性冷却剤用の入口を含み、前記誘電性冷却剤は、前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例3〕
前記第1のヒートシンクは、前記複数の導電層の第1の導電層と接触し、前記第2のヒートシンクは、前記複数の導電層の第2の導電層と接触し、前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクの両方は誘電体被覆層を有する、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例4〕
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に位置決めされた複数の溝部をさらに具備し、それによって、前記第1の空洞を前記第2の空洞から電気的に絶縁し、前記複数の溝部は前記冷却板と接触している、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例5〕
前記冷却板と接触する第2のPCBをさらに具備し、前記第2のPCBは、前記冷却板に熱的に結合された導電層を有する、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例6〕
前記冷却板と接触するコンデンサパックをさらに具備し、前記コンデンサパックは前記冷却板に熱的に結合される、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例7〕
前記冷却板は複数の開口を具備し、
前記コンデンサパックは複数のフィンを具備し、
前記複数のフィンのそれぞれは、前記複数の開口のうちの開口内に配置される、例6に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例8〕
前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクは、前記PCBに直接接合される、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例9〕
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に配置された複数のピンをさらに具備し、それによって、前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクを通る冷却剤の流れを真っ直ぐにする、例1に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例10〕
車両冷却システム用のパワーエレクトロニクスアセンブリであって、前記アセンブリは、
複数の導電層を有するプリント回路基板(PCB)と、
前記PCBと接触する冷却板であって、
誘電性冷却剤源に流体結合された入口と、
電気絶縁材料から構成され、第1の空洞、第2の空洞及び冷却剤ポケットを具備するマニホールドと、
前記第1の空洞内に配置され、前記複数の導電層と前記冷却剤ポケットとに熱的に結合された第1のヒートシンクと、
前記第2の空洞内に配置され、前記複数の導電層と前記冷却剤ポケットとに熱的に結合された第2のヒートシンクと、
前記冷却剤ポケットに流体結合された出口と、を具備する、冷却板と、
を具備する、パワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例11〕
前記誘電性冷却剤は、前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例12〕
前記第1のヒートシンクは、前記複数の導電層の第1の導電層と接触し、前記第2のヒートシンクは、前記複数の導電層の第2の導電層と接触し、前記第1のヒートシンクと前記第2のヒートシンクの両方は誘電体被覆層を有する、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例13〕
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に位置決めされた複数の溝部をさらに具備し、それによって、前記第1の空洞を前記第2の空洞から電気的に絶縁し、前記複数の溝部は前記冷却板と接触している、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例14〕
前記冷却板と接触する第2のPCBをさらに具備し、前記第2のPCBは、前記冷却板に熱的に結合されたパワーデバイスを有する、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例15〕
前記冷却板と接触するコンデンサパックをさらに具備し、前記コンデンサパックは前記冷却板に熱的に結合される、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例16〕
前記冷却板は複数の開口を具備し、
前記コンデンサパックは複数のフィンを具備し、
前記複数のフィンのそれぞれは、前記複数の開口のうちの開口内に配置される、例15に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例17〕
前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクは、前記PCBに直接接合される、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例18〕
前記マニホールドは、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間に配置された複数のピンをさらに具備し、それによって、前記第1のヒートシンク及び前記第2のヒートシンクを通る冷却剤の流れを真っ直ぐにする、例10に記載のパワーエレクトロニクスアセンブリ。
〔例19〕
パワーエレクトロニクスアセンブリの製造方法であって、
電気絶縁材料から構成された、冷却板のマニホールド内に第1の空洞及び第2の空洞を作成することと、
第1のヒートシンクを前記第1の空洞内に設置することと、
第2のヒートシンクを前記第2の空洞内に設置することと、
複数の導電層をプリント回路基板(PCB)上に設置することと、
前記PCBを前記冷却板と接触させることと、
を含む、方法。
〔例20〕
前記マニホールドは、誘電性冷却剤を受容するように構成され、前記誘電性冷却剤は、前記第1のヒートシンクを前記第2のヒートシンクから電気的に絶縁する、例19に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15