(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/36 20060101AFI20240610BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240610BHJP
B65H 9/14 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B65H5/36
B65H5/06 F
B65H9/14
(21)【出願番号】P 2023045730
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2018122287の分割
【原出願日】2018-06-27
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 要
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-302381(JP,A)
【文献】実開平05-003241(JP,U)
【文献】特開平11-165916(JP,A)
【文献】特開2004-189371(JP,A)
【文献】特開2003-212393(JP,A)
【文献】特開2004-299884(JP,A)
【文献】特開2006-176236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0094892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 5/04- 5/20
B65H 5/24- 5/38
B65H 9/00- 9/20
B65H 13/00-15/02
B65H 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置される載置部と、
前記載置部の下方に配置され、シートが排出される排出部と、
前記載置部に載置されたシートを給送する給送手段と、
前記給送手段により給送されたシートを1枚ずつに分離する分離手段と、
前記分離手段により分離されたシートが搬送されるシート搬送路であって、シート搬送方向に直交する幅方向から視て下方へ湾曲した湾曲部を有するシート搬送路と、
前記シート搬送路を搬送されるシートの画像を読み取る読取手段と、
前記分離手段により分離されたシートを、前記湾曲部を介して前記読取手段へ搬送するローラ対と、
前記シート搬送路の前記湾曲部を形成し、シートの第1面に対向し、シートを案内する第1ガイドと、
前記第1ガイドと共に前記シート搬送路の前記湾曲部を形成し、シートの前記第1面とは反対の第2面に対向する第2ガイドと、
前記ローラ対のニップ部に対して前記シート搬送方向の上流に配置された揺動支点を中心に揺動可能であり、前記シート搬送方向において前記ニップ部の上流から下流に延びる可動ガイドと、
前記可動ガイドを前記第2ガイドに近付く方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記可動ガイドは、前記シート搬送方向において前記ニップ部よりも下流に位置する下流部を有し、
前記可動ガイドの前記下流部は、前記シート搬送路の前記湾曲部において、前記ローラ対により搬送されるシートに押圧されることによって、前記第2ガイドから離間する方向に移動可能である、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記可動ガイドの前記下流部は、前
記ローラ対
により搬送されるシート
に押圧されていない状態で
は前記第2ガイドに当接し
ている、
ことを特徴とする請求項1に記載の
画像読取装置。
【請求項3】
前記可動ガイドの前記下流部は、前記湾曲部に沿って湾曲している、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の
画像読取装置。
【請求項4】
前記第1ガイド
及び前記可動ガイドは、前記湾曲部に沿って湾曲したシートの内側の面と対向するように配置され、
前記第2ガイドは、前記湾曲部に沿って湾曲したシートの外側の面と対向するように配置されている、
ことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の
画像読取装置。
【請求項5】
前記第1ガイド
及び前記可動ガイドは、前記湾曲部に沿って湾曲したシートの外側の面と対向するように配置され、
前記第2ガイドは、前記湾曲部に沿って湾曲したシートの内側の面と対向するように配置されている、
ことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の
画像読取装置。
【請求項6】
前記可動ガイドは、前記シート搬送方向において前記ニップ部よりも上流に位置する上流部を有し、
前記可動ガイドの前記上流部は、前記シート搬送方向の下流へ向かうほど前記第2ガイドに向かって突出するように、前記第1ガイドのガイド面に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の
画像読取装置。
【請求項7】
前
記ローラ対は、ローラ軸と、前記ローラ軸に支持される複数のローラ本体と、を有し、
前記可動ガイドは、前記ローラ軸の軸方向において前記複数のローラ本体の間を通って前記シート搬送方向に延びている、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の
画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機等の画像形成装置において、原稿となるシートを自動的に給送する原稿給送装置(Auto Document Feeder 以下ADFと呼ぶ)を備えた画像読取装置が知られている。この種の画像読取装置は、ADFによって原稿を搬送しながら、原稿の表面を光学的に走査して画像情報を読み取る。
【0003】
近年、多様なシートに対応可能な画像読取装置が求められており、ADFについても、原稿の種類(坪量や材質等)に関わらず、読取画像の傾きの原因となる原稿の斜行を防ぐことが求められている。特許文献1には、原稿トレイから画像読取部に至る搬送経路上の2箇所にレジストレーションローラ対を配置し、画像の読み取りが行われるまでに原稿の斜行補正を2回行うことが可能な原稿読取装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートが湾曲した搬送路を搬送される過程でシートの姿勢が乱れてシートの斜行が発生することがある。これは、搬送路が原稿の厚さ方向に一定の幅を有しているため、シートが湾曲した搬送路をどのような経路で通過するかによって搬送距離が変化するためである。
【0006】
そこで、本発明は、シートを安定した姿勢で搬送することが可能な画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートが載置される載置部と、前記載置部の下方に配置され、シートが排出される排出部と、前記載置部に載置されたシートを給送する給送手段と、前記給送手段により給送されたシートを1枚ずつに分離する分離手段と、前記分離手段により分離されたシートが搬送されるシート搬送路であって、シート搬送方向に直交する幅方向から視て下方へ湾曲した湾曲部を有するシート搬送路と、前記シート搬送路を搬送されるシートの画像を読み取る読取手段と、前記分離手段により分離されたシートを、前記湾曲部を介して前記読取手段へ搬送するローラ対と、前記シート搬送路の前記湾曲部を形成し、シートの第1面に対向し、シートを案内する第1ガイドと、前記第1ガイドと共に前記シート搬送路の前記湾曲部を形成し、シートの前記第1面とは反対の第2面に対向する第2ガイドと、前記ローラ対のニップ部に対して前記シート搬送方向の上流に配置された揺動支点を中心に揺動可能であり、前記シート搬送方向において前記ニップ部の上流から下流に延びる可動ガイドと、前記可動ガイドを前記第2ガイドに近付く方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記可動ガイドは、前記シート搬送方向において前記ニップ部よりも下流に位置する下流部を有し、前記可動ガイドの前記下流部は、前記シート搬送路の前記湾曲部において、前記ローラ対により搬送されるシートに押圧されることによって、前記第2ガイドから離間する方向に移動可能である、ことを特徴とする画像読取装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートを安定した姿勢で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】画像形成装置に搭載される画像読取装置の概略図。
【
図4】実施例1に係るADFの一部(a)及び原稿押さえ部材(b)を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
(画像形成装置)
まず、画像形成装置の一例であるプリンタ101の構成について
図1を参照しながら説明する。プリンタ101は、
図1に示すように、プリンタ本体101Aと、画像読取装置1と、を備えた複合機である。プリンタ本体101Aは、記録媒体として用いられる記録材Pに画像を形成する。プリンタ本体101Aの上方に配置された画像読取装置1は、読取装置本体1BとADF1Aとを備え、原稿Dとして用いられるシートの原稿面を光学的に走査して画像情報を読み取る。記録材P又は原稿Dとして用いられるシートには、薄紙及び厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート(OHP)等のプラスチックフィルム、コート紙等の表面処理がされた紙、封筒等の特殊形状のシート、及び布が含まれる。
【0012】
プリンタ本体101Aは、記録材Pに画像を形成する画像形成部133と、画像形成部133に記録材Pを給送するシート給送部134と、を有している。シート給送部134は、互いに異なるサイズのシートを収納可能なシート収納部137a,137b,137c,137dを備えている。各シート収納部に収納されたシートは、ピックアップローラ112によって繰り出され、フィードローラ113a及びリタードローラ113bによって1枚ずつ分離されて、対応する搬送ローラ対131へと受け渡される。そして、記録材Pは、シート搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラ対131を順に受け渡されることで、レジストレーションローラ対136へと搬送される。
【0013】
なお、ユーザによって手差しトレイ137eに載置された記録材Pは、給送ローラ138によってプリンタ本体101Aの内部に給送され、レジストレーションローラ対136へと搬送される。レジストレーションローラ対136は、記録材Pの先端を停止させて斜行を補正すると共に、画像形成部133によるトナー像の形成プロセスである作像動作の進行に合わせて記録材Pの搬送を再開する。
【0014】
記録材Pに画像を形成する画像形成部133は、感光体である感光ドラム121を備えた電子写真方式の画像形成ユニットである。感光ドラム121は、記録材Pの搬送方向に沿って回転可能であり、感光ドラム121の周囲には帯電器118、露光装置123、現像器124、転写帯電器125、分離帯電器126、及びクリーナ127が配置されている。帯電器118は感光ドラム121の表面を一様に帯電させ、露光装置123は画像読取装置1等から入力される画像情報に基づいて感光ドラム121を露光し、ドラム上に静電潜像を形成する。
【0015】
現像器124は、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を収容しており、感光ドラム121に帯電したトナーを供給することで静電潜像をトナー像に現像する。感光ドラム121に担持されたトナー像は、転写帯電器125が形成するバイアス電界により、レジストレーションローラ対136から搬送される記録材Pに転写される。トナー像を転写された記録材Pは、分離帯電器が形成するバイアス電界によって感光ドラム121から離間し、定着前搬送部128によって定着部129へ向けて搬送される。なお、記録材Pに転写されずに感光ドラム121に残留した転写残トナー等の付着物はクリーナ127によって除去され、感光ドラム121は次の作像動作に備える。
【0016】
定着部129に搬送された記録材Pは、ローラ対に挟持されて加圧されながら加熱され、トナーの溶融・固着により画像を定着させられる。画像出力が完了している場合、定着画像が得られた記録材Pは、排出ローラ対116を介して、プリンタ本体101Aの外方に突出した排出トレイ130に排出される。両面印刷において記録材Pの裏面に画像を形成する場合、定着部129を通過した記録材Pは、反転部139によって表面と裏面とを入れ替えられ、両面搬送部140によってレジストレーションローラ対136へと搬送される。そして、画像形成部133によって再び画像を形成された記録材Pは、排出トレイ130に排出される。
【0017】
以上説明した画像形成部133はシートに画像を形成する画像形成手段の一例であり、中間転写体を介して記録材Pに画像を転写する中間転写方式を採用してもよい。また、電子写真システム以外の画像形成手段(例えば、インクジェット方式又はオフセット印刷方式)を用いてもよい。
【0018】
(画像読取装置)
次に、
図2を参照して、画像読取装置1の構成を説明する。
図2に示すように、画像読取装置1は、読取装置本体1Bと、本実施形態のシート搬送装置であるADF1Aとによって構成される。また、画像読取装置1は、読取装置本体1Bに配置された第1読取部11と、ADF1Aに配置された第2読取部12と、を備えている。以下、画像読取装置1を構成する各要素について説明する。
【0019】
第1読取部11は、原稿D(
図1参照)の一方の面から画像情報を読み取る。また、第2読取部12は、原稿Dの他方の面から画像情報を読み取る。第1読取部11及び第2読取部12は、原稿に対して光を照射する露光ランプと、光電変換素子からなるイメージセンサと、不図示のミラーやレンズ等と、を有している。露光ランプから照射され、原稿Dによって反射された反射光は、ミラーやレンズを介してイメージセンサに結像され、光電変換されて画像データとなる。第1読取部11及び第2読取部12によって得られた画像データは、プリンタ本体101Aの制御部132(
図1参照)に伝送される。ただし、第1読取部11及び第2読取部12は常に両面の同時読取りを実行するとは限らず、片面のみの読取りも可能である。
【0020】
読取装置本体1Bは、プリンタ本体101Aの上面に固定されている(
図1参照)。読取装置本体1Bの上面には、
図2に示すように、フラットベッド型の原稿台28が配置されている。第1読取部11は、図中左右方向に移動可能なキャリッジ(不図示)に支持されており、
図2に示す位置から、原稿台28に沿って原稿台28の全長に亘って移動可能である。
【0021】
ADF1Aは、図中奥側に配置された不図示のヒンジ機構によって、読取装置本体1Bに対して上下方向に開閉可能に支持されており、読取装置本体1Bの原稿台28に対向して押圧板29が形成されている。ADF1Aは、第2読取部12の他に、原稿トレイ2と、原稿搬送部23と、排出トレイ3とを備えている。原稿トレイ2は、ユーザによって載置された原稿Dを支持する。原稿搬送部23は、内部に原稿搬送路230が形成されており、原稿トレイ2に載置された原稿Dを、原稿搬送路230を介して第1読取部11及び第2読取部12に給送する。第1読取部11及び第2読取部12によって画像情報が読み取られた原稿Dは、排出トレイ3に排出される。
【0022】
原稿搬送部23について詳しく説明する。原稿搬送部23は、ピックアップローラ4と、フィードローラ5と、分離ローラ6と、レジストレーションローラ対(以下、レジローラ対とする)7と、搬送ローラ対8,9と、排出ローラ対10とを備える。これらのローラは、原稿搬送路230におけるシートの移動方向(以下、シート搬送方向とする)に沿って順に配置されている。なお、排出トレイ3は原稿トレイ2の下方に位置し、シート搬送方向に直交するシートの幅方向から視たとき(
図2の視点)、原稿搬送路230はU字状に湾曲している。
【0023】
ピックアップローラ4は、本実施形態においてシートを給送する給送手段であり、原稿トレイ2に載置された原稿Dの上面に当接して最上位の原稿を給送する。フィードローラ5及び分離ローラ6は、ピックアップローラ4から受け取った原稿Dを1枚ずつに分離しながら、シート搬送方向の下流へ搬送する。分離ローラ6は、フィードローラ5に圧接され、トルクリミッタを介して搬送方向に逆らう方向の回転駆動が入力されている。なお、このようなリタード方式に代えて、固定された軸にトルクリミッタを介して連結されたローラ部材や、パッド状の分離部材を用いてもよい。
【0024】
本実施形態のレジストレーション手段であるレジローラ対7は、フィードローラ5から搬送される原稿Dのシート搬送方向の下流端(以下、先端とする)をニップ部で受け止め、原稿Dを撓ませて斜行を補正する。また、レジローラ対7は、斜行が補正された原稿Dを、原稿搬送路230の屈曲部を介して搬送する。レジローラ対7から送り出された原稿Dは、搬送ローラ対8を介して搬送され、第1読取部11及び第2読取部12によって画像が読み取られる。画像が読み取られた原稿Dは、搬送ローラ対9を介して排出ローラ対10に受け渡され、排出ローラ対10によって排出トレイ3に排出される。
【0025】
なお、ここではプリンタ本体101Aと連結された画像読取装置1について説明したが、画像読取装置1は、画像形成装置とは独立した画像読取装置としても使用可能である。その場合、第1読取部11及び第2読取部12によって読み取られた画像情報は、有線又は無線の通信手段を介して外部のコンピュータに伝送されるか、或いは画像読取装置内部の記憶装置に格納された後、記憶媒体又は外部のコンピュータに伝送される。また、後述の実施例で説明する構成は、2つの画像読取部(11,12)によって原稿の両面から並行して画像を読み取り可能な構成に限らず、いずれか一方のみを有する画像読取装置にも適用可能である。
【0026】
ここで、画像読取装置1のADF1Aによって搬送される原稿Dに斜行が生じるメカニズムについて説明する。
【0027】
上述のADF1Aにおいて、フィードローラ5から送り出された原稿Dは、停止状態のレジローラ対7のニップ部に所定の深さまで先端が侵入することで、先端の移動が規制されて撓んだ状態となり、先端がニップ部に倣うようにして斜行補正される。しかし、ニップ部の上流側において原稿Dの姿勢が安定していないと、十分に斜行が補正されない可能性がある。例えば、シート搬送方向から視て原稿Dの湾曲が生じていると、原稿Dの先端の一部がニップ部の所定の深さまで侵入することなく、ニップ部より上流側でレジローラ対7又は搬送ガイド等に引っ掛かってしまうことがある。この場合、原稿Dはレジローラ対7の斜行補正作用を受けることができず、斜行が残った状態で原稿Dがレジローラ対7から送り出されてしまう。
【0028】
また、レジローラ対7で斜行補正が行われた後に、下流側の搬送ローラ対8(
図2参照)へ向けて搬送される過程で原稿Dの姿勢が乱れることもある。これは、原稿搬送路230が原稿Dの厚さ方向に一定の幅を有しているため、原稿搬送路230をどのような経路で通過するかによってレジローラ対7から搬送ローラ対9までの搬送距離が変化するためである。原稿Dの先端の一部が、湾曲した原稿搬送路230の内側に沿って移動し、他の一部が原稿搬送路230の外側に沿って移動するような場合、先端が搬送ローラ対8に到達するタイミングにずれが生じる。搬送ローラ対8では斜行補正を行わないため、搬送ローラ対8への到達タイミングのずれは、搬送ローラ対8から送り出される原稿Dの先端の傾きを生じさせる。これにより、レジローラ対7によって斜行補正された後、搬送ローラ対8から送り出された原稿Dに斜行が生じた状態となる。
【実施例1】
【0029】
第1の実施例(実施例1)では、可動ガイドである原稿押さえ部材を用いることで原稿Dの斜行を抑制する。以下、本実施例の原稿押さえ部材について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、特に断らない限り、以下の説明における「上流」又は「下流」とは、それぞれ原稿搬送路230の各地点におけるシート搬送方向の上流又は下流を表すものとする。
【0030】
図3に示すように、ADF1Aは、レジローラ対7の付近で原稿搬送路230を形成するガイド部材として、上面ガイド21及び下面ガイド22を備えている。上面ガイド21は、原稿Dの上面(原稿トレイ2に載置された状態における原稿Dの上面)に対向し、下面ガイド22は、原稿Dの下面に対向する。上面ガイド21及び下面ガイド22は、それぞれ、レジローラ対7のニップ部より上流のレジ前ガイド面211,221と、ニップ部より下流のレジ後ガイド面212,222とを有している。なお、ニップ部より上流又は下流とは、レジローラ対7のニップ位置N1を基準とするシート搬送方向の位置関係を指している。ニップ位置N1は、幅方向から視てレジローラ対7のローラ軸71,72の軸線同士を結ぶ直線が原稿搬送路230を通過する箇所のシート搬送方向の位置とする。
【0031】
原稿押さえ部材24は、上面ガイド21と同じ側に、つまり原稿Dの上面と対向するように配置される。原稿押さえ部材24は、レジローラ対7のニップ位置N1に対して上流側と下流側とに延び、ニップ位置N1より上流に位置する軸部24Aを揺動中心にして図中上下方向に揺動可能である。つまり、原稿押さえ部材24は、レジローラ対7のニップ部より上流の上流部241と、ニップ部より下流の下流部242とを有し、下流部242が下面ガイド22に接近又は離間する方向に移動可能である。
【0032】
上面ガイド21は本実施例の第1ガイドであり、下面ガイド22は本実施例の第2ガイドである。なお、第1ガイドは可動ガイドと共にシートの第1面に対向し、第2ガイドがシートの第1面とは反対の第2面に対向するものとする。
【0033】
上面ガイド21及び下面ガイド22のレジ前ガイド面211,221は、レジローラ対7に先端が突き当たった原稿Dの撓みを許容する空間を形成している。本実施例では、上面ガイド21に上方に向かって凹んだ凹部21uが設けられることで、原稿搬送路230の厚さ方向の幅Wが上流及び下流に比べて大きく設定された箇所が設けられている。
【0034】
原稿押さえ部材24の上流部241は、原稿Dの先端をレジローラ対7のニップ部に案内できるように上面ガイド21に対して傾斜している。具体的には、上面ガイド21のレジ前ガイド面211がレジローラ対7のニップ位置N1から上流側に延出する部分21aに対して、シート搬送方向の下流へ向かうほど下面ガイド22に近付くように上流部241が突出している。従って、原稿Dの幅方向から視たとき、原稿押さえ部材24は、上面ガイド21及び下面ガイド22によって規定される原稿搬送路230の厚さ方向の幅に比べて、レジローラ対7の上流側における原稿Dの通過位置を制限している。
【0035】
レジローラ対7の下流側において、原稿搬送路230は湾曲している。即ち、上面ガイド21及び下面ガイド22のレジ後ガイド面212,222の少なくとも一部が、原稿Dの幅方向から視て湾曲した湾曲部となっている。レジローラ対7から図中左方に送り出される原稿Dは、原稿搬送路230の湾曲により下方へ案内される。上面ガイド21のレジ後ガイド面212は湾曲の外側に位置し、下面ガイド22のレジ後ガイド面222は湾曲の内側に位置する。また、原稿押さえ部材24の下流部242の少なくとも一部は、下面ガイド22のレジ後ガイド面222の湾曲に沿って湾曲している。本実施例では、レジ後ガイド面222及び下流部242は、いずれも幅方向から視て略円弧状に形成される。
【0036】
図4(a)に示すように、原稿押さえ部材24はレジローラ対7の複数のローラ本体7a,7b,7cの間を通ってシート搬送方向に延びている。本実施例において、レジローラ対7はローラ軸71,72にそれぞれ3つのローラ本体7a,7b,7cが取付けられることで構成されている。原稿押さえ部材24は、ローラ軸71,72の軸方向(原稿の幅方向)において中央のローラ本体7bの両側に、幅方向において対称な2箇所に配置されている。
【0037】
図4(b)に示すように、原稿押さえ部材24の揺動支点となる軸部24Aには、ねじりコイルバネ25が取付けられる。ねじりコイルバネ25は、一端においてADF1Aのフレームに係合し、他端において原稿押さえ部材24に係合している。ねじりコイルバネ25は、原稿押さえ部材24を下面ガイド22に近付ける方向(
図3における反時計回り方向)のモーメントを発生させる。また、原稿Dの搬送が行われていないとき、原稿押さえ部材24の下流部242は、上面ガイド21のレジ後ガイド面212から突出した状態で下面ガイド22に当接し、原稿Dに押圧されることで下面ガイド22から離間する。なお、ねじりコイルバネ25は付勢部材の一例であり、他の弾性部材を用いてもよく、或いは原稿押さえ部材24が自重により下面ガイド22に当接する構成としてもよい。
【0038】
なお、湾曲した原稿搬送路230の内側に位置する下面ガイド22のレジ後ガイド面222には、原稿Dの搬送抵抗を低減するため、シート搬送方向に延びる複数のリブ223及び複数のコロ224が配置されている(
図4(a))。本実施例の場合、各原稿押さえ部材24は幅方向においてコロ224と異なる位置に配置され、コロ224と接触しないように配置される。
【0039】
また、
図4(b)に示すように、原稿押さえ部材24は、上流部241に比べて下流部242の方が、シート搬送方向により長い構成であると好適である。これは、後述のレジローラ対7の下流で原稿Dの姿勢を安定させる作用が得られやすくなるためである。
【0040】
(原稿押さえ部材の作用)
本実施例の構成により得られる作用について説明する。原稿Dの幅方向から視て、原稿押さえ部材24の上流部241は、レジローラ対7の上流側において原稿搬送路230の幅を制限している(
図3参照)。このため、原稿Dの先端をレジローラ対7のニップ部へ向けて案内し、レジローラ対7に接近する前の原稿Dの姿勢に関わらず、原稿Dの先端をレジローラ対7の各ローラ本体7a~7cに当接させることができる。即ち、幅方向の全域に亘り、原稿Dの先端がレジローラ対7のニップ部に所定の深さまで進入した状態で斜行補正が行われるため、レジローラ対7による斜行補正の精度が高まる。
【0041】
また、原稿押さえ部材24の下流部242は、原稿Dが搬送されていないときは下面ガイド22に当接し、原稿Dに押圧されることで下面ガイド22から離間する方向に揺動する。つまり、レジローラ対7から送り出される原稿Dは、原稿押さえ部材24を上方に押し上げながら搬送ローラ対8に向かって搬送される。
【0042】
ここで、原稿押さえ部材24がない従来の構成では、原稿Dが曲げ剛性の比較的低い薄いシート(例えば薄紙)である場合に原稿Dの姿勢が変化しやすかった。そして、第1読取部11及び第2読取部12に到達するまでに原稿Dの斜行が厚紙等に比べて生じやすい傾向があった。本実施例の構成では、原稿押さえ部材24の下流部242によって原稿Dの通過経路が制限されるため、原稿Dの姿勢変化が規制される。このため、レジローラ対7によって斜行補正された原稿Dに新たに斜行が生じることを防いで、原稿Dを安定した姿勢で搬送することができる。そして、第1読取部11及び第2読取部12によって読み取られる画像データの傾きを低減することができる。
【0043】
また、原稿Dが曲げ剛性の比較的高いシート(例えば厚紙)である場合には、原稿押さえ部材24は、薄紙の場合に比べて下面ガイド22から離間した位置まで退避する。このように原稿押さえ部材24が退避することで、原稿Dの通過経路が過度に制限されて搬送抵抗が大きくなり、搬送不良が生じる可能性を低減することができる。
【0044】
このように、原稿押さえ部材24をレジローラ対7のニップ部の上流側から下流側まで延設し、かつ下流部242が下面ガイド22に接近及び離間するように移動可能な構成としたため、多様な原稿Dを安定した姿勢で搬送することが可能となった。
【0045】
なお、原稿Dとして想定される主なシート種類に合わせて、ねじりコイルバネ25のバネ定数を変更する等して、原稿押さえ部材24を下面ガイド22へ向けて付勢する付勢力の大きさを変更すると好適である。また、少なくとも下流部242が下面ガイド22に対して接近又は離間するように移動可能な構成であればよく、原稿押さえ部材24は揺動支点を中心に揺動(回動)する部材に限らない。
【実施例2】
【0046】
上記実施例1では、原稿押さえ部材24を上面ガイド21と同じ側に(つまり原稿Dの上面に対向するように)配置する構成を説明したが、第2の実施例(実施例2)では、下面ガイドと同じ側に原稿押さえ部材を配置する。以下、実施例1と同様の構成・作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、本実施例の原稿押さえ部材34は、原稿搬送路230の下方に配置される。原稿押さえ部材34は、レジローラ対7のニップ位置N1から上流に延びる上流部341及びニップ位置N1から下流に延びる下流部342を有し、軸部34Aを中心にして図中上下方向に揺動する。また、軸部34Aには不図示のねじりコイルバネが装着されている。原稿押さえ部材34は、ねじりコイルバネの付勢力により、下流部342において上面ガイド31のレジ後ガイド面312に当接している。
【0048】
本実施例では、下面ガイド32が第1ガイドに相当し、上面ガイド31が第2ガイドに相当する。本実施例の可動ガイドである原稿押さえ部材34は、下流部が第2ガイドである上面ガイド31に接近又は離間するように移動可能である。
【0049】
原稿押さえ部材34の上流部341は、下面ガイド32のレジ前ガイド面321に対して、シート搬送方向の下流に向かうほど厚さ方向に突出する(上面ガイド31のレジ前ガイド面311に接近する)ように傾斜している。つまり、上流部341によってレジローラ対7の上流側において原稿Dの幅方向から視た原稿搬送路230の幅が制限され、原稿Dの先端がレジローラ対7のニップ部に案内される。
【0050】
また、原稿押さえ部材34の下流部342は、原稿Dが搬送されていないときは下面ガイド32のレジ後ガイド面322から突出した状態で上面ガイド31のレジ後ガイド面312に当接し、原稿Dに押圧されることで上面ガイド31から離間する。このため、薄紙等の通過経路を制限して斜行の発生を防ぎつつ、原稿押さえ部材34を設けたことによる厚紙等の搬送不良を回避することができる。
【0051】
即ち、本実施例の構成を採用した場合も、実施例1と同様に、レジローラ対7の上流側及び下流側の両方における原稿押さえ部材34の作用により、シートを安定した姿勢で搬送することが可能となる。これにより、第1読取部11及び第2読取部12に搬入される原稿Dの姿勢が安定するため、傾きの少ない画像データを取得することが可能となる。
【0052】
(その他の実施形態)
以上の実施例1,2では、ADF1Aに可動ガイドとしての原稿押さえ部材24,34を配置した構成について説明したが、他のシート搬送装置に可動ガイドを配置してもよい。例えば、上述のプリンタ本体101A(
図1参照)において、レジストレーションローラ対136の上流側及び下流側に延びる可動ガイドを配置してもよい。その場合、実施例1,2で説明した原稿押さえ部材24,34と同様の作用により、画像形成部133に給送される記録材Pの姿勢が安定するため、傾きの少ない出力画像を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1…画像読取装置/1A,101A…シート搬送装置(ADF、プリンタ本体)/7,136…レジストレーションローラ対(レジローラ対)/11,12…画像読取手段(第1読取部、第2読取部)/21…第1ガイド(上面ガイド)/22…第2ガイド(下面ガイド)/24,34…可動ガイド(原稿押さえ部材)/241,341…上流部/242,342…下流部/31…第2ガイド(上面ガイド)/32…第1ガイド(下面ガイド)/101…画像形成装置(プリンタ)/133…画像形成手段(画像形成部)/D,P…シート(原稿、記録材)