(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】エレベータ装置、ブレーキトルク計測方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240610BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20240610BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B66B5/00 D
H02P29/024
B66B1/34 A
B66B1/34 B
(21)【出願番号】P 2023090764
(22)【出願日】2023-06-01
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高上 遼馬
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-133096(JP,A)
【文献】特開2011-057329(JP,A)
【文献】特開2013-023357(JP,A)
【文献】特開2022-187898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 1/00- 1/52
B66B 11/00-11/08
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置の乗りかごの昇降を駆動するモータに電力を供給する電源を備えるエレベータ装置において、
前記電源は、
第1周波数のクロックを出力する第1発振回路と、
前記第1周波数より低い第2周波数のクロックを出力する第2発振回路と、
前記第1発振回路の出力と前記第2発振回路の出力とを切り替える切替回路と、
前記切替回路により選択されたクロックでスイッチング動作するスイッチング素子と、
を有し、
前記切替回路は、ブレーキトルク計測時であることを示す信号を受信すると、前記第1発振回路の出力から前記第2発振回路の出力に切り替え、
前記電源は、利用者を運搬するための前記乗りかごの昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作し、前記モータの回転を抑制するブレーキのブレーキトルク計測時における前記乗りかごの昇降運行時には、前記第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作し、
前記電源が前記第2周波数のクロックでスイッチング動作しているときの、前記スイッチング素子がオン状態であるときのオン電圧と前記スイッチング素子に流れる電流に基づいて、前記スイッチング素子のオン抵抗を求め、求めたオン抵抗の値に基づいて前記スイッチング素子の寿命に至るまでの時間を推定する寿命推定部を有する、
エレベータ装置。
【請求項2】
前記寿命推定部は、スイッチング素子の動作時間に対するスイッチング素子のオン抵抗の増加特性を示すデータに基づいて、スイッチング素子が寿命に至るまでの時間を推定する、
請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
ブレーキトルク計測時における乗りかごの昇降を駆動するモータに電力を供給する電源のスイッチング周波数を、利用者を運搬するための前記乗りかごの昇降運行時における第1周波数から前記第1周波数より低い第2周波数に切り替える周波数切替工程と、
前記電源のスイッチング周波数を前記第2周波数に切り替えた状態で、前記モータに供給する電流を変化させて前記モータの回転を抑制するブレーキのブレーキトルクを計測するブレーキトルク計測工程
と、
前記電源のスイッチング周波数を前記第2周波数に切り替えた状態で、スイッチング素子がオン状態であるときの前記スイッチング素子のオン電圧と前記スイッチング素子に流れる電流を計測する計測工程と、
計測した前記電流と前記電圧に基づいて、前記スイッチング素子のオン抵抗を求める工程と、
求めたオン抵抗の値に基づいて前記スイッチング素子の寿命に至るまでの時間を推定する寿命推定工程と、
を含むブレーキトルク計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置、ブレーキトルク計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置に使用されているブレーキは、所望のトルクが得られているか否かを確認するためのブレーキトルク検査が定期的に行われる。従来方法による検査では、乗りかごの昇降を駆動するモータの電流や乗りかごの制動距離等を計測することで、ブレーキトルクを計測している。
【0003】
この計測は、乗りかごの通常の昇降運行時よりも大きなトルクをモータが発生するようにして行うので、モータを駆動する電源にとっては、大きな負荷となる。したがって、モータを駆動する電源の寿命を低減する要因となる。
【0004】
電源に使用されている部品の寿命劣化の検知方法については、様々な方法が提案されている。しかし、ブレーキトルク検査に起因する電源の寿命低減を抑制することについての提案は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の事情によりなされたもので、ブレーキトルク検査に起因する電源の寿命低減を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための実施形態に係るエレベータ装置は、エレベータ装置の乗りかごの昇降を駆動するモータに電力を供給する電源を備える。電源は、第1周波数のクロックを出力する第1発振回路と、第1周波数より低い第2周波数のクロックを出力する第2発振回路と、第1発振回路の出力と前記第2発振回路の出力とを切り替える切替回路と、切替回路により選択されたクロックでスイッチング動作するスイッチング素子と、を有する。切替回路は、ブレーキトルク計測時であることを示す信号を受信すると、第1発振回路の出力から前記第2発振回路の出力に切り替える。電源は、利用者を運搬するための乗りかごの昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作し、モータの回転を抑制するブレーキのブレーキトルク計測時における乗りかごの昇降運行時には、第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作する。エレベータ装置は、電源が第2周波数のクロックでスイッチング動作しているときの、スイッチング素子がオン状態であるときのオン電圧とスイッチング素子に流れる電流に基づいて、スイッチング素子のオン抵抗を求め、求めたオン抵抗の値に基づいてスイッチング素子の寿命に至るまでの時間を推定する寿命推定部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るエレベータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る駆動ユニットのブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るインバータの構成図である。
【
図6】本実施形態に係る制御ユニットの物理的ブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る制御ユニットの機能的ブロック図である。
【
図8】本実施形態に係るインバータのスイッチング素子の発熱について説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係るインバータのスイッチング素子の発熱について説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係るブレーキトルク計測処理について説明するためのフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る寿命推定処理について説明するためのフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係るブレーキトルク計測において計測される電流波形について説明するための図である。
【
図13】本実施形態に係るブレーキトルク計測において計測される電流波形について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。本実施形態の説明に用いる図およびフローチャートは一例を示すものである。
【0010】
本実施形態に係るエレベータ装置は、エレベータ装置の乗りかごの昇降を駆動するモータに電力を供給する電源(インバータ)を備えている。電源は、乗りかごの通常の昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作し、ブレーキトルク計測時には、第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作する。また、本実施形態に係るエレベータ装置は、電源が第2周波数のクロックでスイッチング動作しているときのスイッチング素子がオン状態であるときのスイッチング素子のオン電圧とスイッチング素子に流れる電流を計測し、計測した電流と電圧の値に基づいてスイッチング素子のオン抵抗を求め、求めたオン抵抗の値に基づいてスイッチング素子の寿命に至るまでの時間を推定する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、商業施設や居住施設などの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。
図1に示されるように、エレベータ装置10は、乗りかご31、カウンタウエイト50、昇降モータ40、ガイドレール21~24、制御盤70(エレベータ制御装置)を有している。
【0012】
ガイドレール21~24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21と22は、乗りかご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23と24は、カウンタウエイト50を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23と24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。
図1では、カウンタウエイト50のガイドレール23と24が、乗りかご31のガイドレール21と22に対してX軸方向に離間して配置されている。なお、ガイドレール21~24の配置は、
図1に示される配置に限定されるものではない。
【0013】
乗りかご31は、利用者を収容して昇降路100を昇降するユニットである。乗りかご31は、ガイドレール21と22の間に配置され、ガイドレール21と22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0014】
乗りかご31の+X側の側面には、内部に出入りするための開口部31aが形成されている。開口部31aは、乗りかご31の側面に沿って移動する一対の扉32によって、閉塞或いは開放される。扉32は、開閉モータ(
図1では、図示略)によって開閉される。
【0015】
カウンタウエイト50は、ガイドレール23と24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト50の重量は、乗りかご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。
【0016】
昇降モータ40は、乗りかご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ40は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ40の回転軸にはプーリー42が固定されている。
【0017】
昇降モータ40のプーリー42には、ワイヤ43が巻き回されている。ワイヤ43は、一端が、乗りかご31に固定され、他端が、カウンタウエイト50に固定されている。
【0018】
制御盤70は、昇降路100に配置されている。制御盤70には、昇降モータ40や乗りかご31に設けられた機器等を制御するための制御装置が収容されている。
【0019】
図2は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、制御盤70に収容される制御ユニット80および駆動ユニット91と、乗りかご31に設けられる操作パネル36と、を含んで構成される。
【0020】
操作パネル36は、乗りかご31の内壁面に設けられている。操作パネル36は、乗りかご31の利用者から、行き先階などを受け付けるためのインタフェースである。利用者は、操作パネル36を操作することで、乗りかご31の行き先階などの登録や、扉32の開閉を行うことができる。操作パネル36は、
図1に示されるケーブル44を介して、制御盤70に収容される制御ユニット80に接続されている。
【0021】
図2に示す駆動ユニット91は、昇降モータ40に電力を供給することで、昇降モータ40を駆動する。駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ40を駆動する。
【0022】
制御ユニット80は、操作パネル36もしくは各フロアの呼びパネルからの入力に基づいて、駆動ユニット91を制御する。例えば、制御ユニット80が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を正転させると、乗りかご31が上昇するとともに、カウンタウエイト50が下降する。制御ユニット80が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を逆転させると、乗りかご31が下降するとともに、カウンタウエイト50が上昇する。
【0023】
図3は、駆動ユニット91のブロック図である。駆動ユニット91は、コンバータ11とインバータ13とを有する。コンバータ11は、商用電源1から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源装置である。コンバータ11は、スイッチングレギュレータで構成されている。本実施形態においては、コンバータ11は、アース電位に対してプラスとなる電圧とマイナスとなる電圧をインバータ13に供給している。インバータ13は、コンバータ11から供給される直流電圧を所定の周波数で所定の電圧の交流電圧に変換し、昇降モータ40に電力を供給する電源装置である。インバータ13は、スイッチングレギュレータで構成されている。
【0024】
図4は、インバータ13の回路例である。インバータ13は、スイッチング素子132と発振回路134を有している。
図4は、3相フルブリッジインバータの回路例であるので、6個のスイッチング素子132を有している。スイッチング素子132は、トランジスタもしくはFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)、絶縁ゲート型バイポーラートランジスター(IGTB:Insulated Gate Bipolar Transistor)等で構成される。発振回路134は、所定の周波数のクロックをスイッチング素子132それぞれのベース(FETの場合はゲート)に供給する。端子P1と端子P2間には、コンバータ11が出力する直流電圧が印加される。スイッチング素子132は、ベースに供給されたクロックがハイレベルの期間ON状態となり、ローレベルの期間OFF状態となる。インバータ13は、発振回路134がスイッチング素子132それぞれのベースに印加するクロックのduty(ハイレベルとローレベルの時間比率)を変えることで出力電力(出力電流)を制御される。発振回路134は、制御ユニット80の制御に基づいて、出力するクロックのdutyを変更する。端子P3とP4とP5には、3相交流電流(3相交流電圧)が出力される。端子P3とP4とP5は、昇降モータ40に接続される。
【0025】
インバータ13から昇降モータ40に供給される電流をモニタする際には、電流モニタ137を用いてインバータ13の出力をモニタする。電流モニタ137は、
図4に示すインバータ13の出力側に配置され、3相それぞれの出力電流を計測する。電流モニタ137には、例えば、電流プローブを用いる。また、スイッチング素子132それぞれのソースとエミッタ間の電圧をモニタする際には、電圧モニタ138を用いてスイッチング素子132それぞれのソースとエミッタ間の電圧をモニタする。なお、電流モニタ137と電圧モニタ138は、計測時のみ取付け、エレベータ装置の運行時には取り外しておく。
【0026】
図5は、発振回路134の構成図である。発振回路134は、第1発振回路1341、第2発振回路1342、切替回路1343を有する。第1発振回路1341は、第1周波数のクロックを出力する。第1周波数は、例えば、8kHzである。第2発振回路1342は、第1周波数より低い第2周波数のクロックを出力する。第2周波数は、例えば、1kHzである。例えば、第2発振回路1342は、第1発振回路1341が出力するクロックを8分周することで、第1周波数より低い第2周波数のクロックを出力する。切替回路1343は、ブレーキトルク計測時であることを示す信号を制御ユニット80から受信すると、第1発振回路1341の出力から第2発振回路1342の出力に切り替えてクロックを出力する。制御ユニット80は、乗りかご31の通常の昇降運行時には第1周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力し、ブレーキトルク計測時には第2周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力する。したがって、スイッチング素子132は、乗りかご31の通常の昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作し、ブレーキトルク計測時には、第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作する。
【0027】
図6は、制御ユニット80の物理的なブロック図である。制御ユニット80は、バス85を介して相互接続されるCPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、およびインタフェース部84を有するコンピュータである。CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、および各種パラメータなどを記憶している。
【0028】
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。操作パネル36と駆動ユニット91とは、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。また、インタフェース部84には、キーボード、ディスプレイ等で構成された入出力装置93が接続される。
【0029】
図7は、制御ユニット80の機能的なブロック図である。制御ユニット80は、ブレーキトルク計測部72と寿命推定装置76を有する。
【0030】
ブレーキトルク計測部72は、インバータ13のスイッチング周波数を第2周波数に切り替えた状態で、昇降モータ40に供給する電流を変化させて昇降モータ40の回転を抑制するブレーキのブレーキトルクを計測する。具体的には、ブレーキトルク計測部72は、昇降モータ40の回転を検出する回転センサ17から出力される信号を監視し、昇降モータ40が回転したことを示す信号を受信したときの、電流モニタ137から受信した電流値に基づいて、ブレーキトルクを計測する。昇降モータ40が回転した時の昇降モータ40の出力トルクが、ブレーキトルクの値である。昇降モータ40の出力トルクは、昇降モータ40に供給される電流の値に比例することが知られている。昇降モータ40に供給される電流の値に対する昇降モータ40の出力トルクの値は、予め計測され、例えば、テーブルとして記憶部に記憶されている。ブレーキトルク計測部72は、テーブルを参照することで、昇降モータ40に供給される電流の値に対応するブレーキトルクの値を取得する。そして、ブレーキトルク計測部72は、取得したブレーキトルクの値を入出力装置93に出力する。
【0031】
寿命推定装置76は、オン抵抗計算部77と寿命推定部78を有する。オン抵抗計算部77は、インバータ13が第2周波数でスイッチング動作しているときの、スイッチング素子132がオン状態であるときのスイッチング素子132のオン電圧とスイッチング素子132に流れる電流に基づいて、スイッチング素子132のオン抵抗を計算する。寿命推定部78は、オン抵抗計算部77が求めたスイッチング素子132のオン抵抗の値に基づいてスイッチング素子132の寿命に至るまでの時間を推定する。そして、寿命推定部78は、スイッチング素子132が寿命に達したか否かの判断結果を入出力装置93に出力する。
【0032】
ここで、
図8と
図9を参照して、スイッチング素子132の発熱量について説明する。
図8は、スイッチング素子132のベース(FETの場合はゲート)に供給されるクロックである。スイッチング周波fswは、
図8に示す時間Tの逆数(fsw=1/T)である。
図9に示す電流Icは、スイッチング素子132のコレクタからエミッタ(FETの場合はドレインからソース)に流れる電流である。
図9に示す電圧V
CEは、コレクタとエミッタ(FETの場合はドレインとソース)間の電圧である。クロックがハイレベルの時、スイッチング素子132はON状態となり、コレクタとエミッタ間(FETの場合はドレインとソース間)に電流が流れる。
【0033】
ベースにハイレベルの信号が印加されると、ベースの浮遊容量に電荷が蓄積されるにしたがって、ベース電圧が徐々に上昇する(
図9のt1の期間)。ベース電圧の上昇に伴って、コレクタとエミッタ間の電圧V
CEは徐々に低下し、コレクタからエミッタに流れる電流Icは徐々に増加する。
図9のt2の期間、スイッチング素子132は、オン状態となる。
図9のt2の期間における電圧V
CEがスイッチング素子132のオン電圧であり、
図9のt2の期間における電流Icがスイッチング素子132のオン電流である。ベースに印加される信号がローレベルになると、ベースの浮遊容量に蓄積された電荷が放電されるにしたがって、ベース電圧が徐々に下降する(
図9のt3の期間)。ベース電圧の下降に伴って、コレクタとエミッタ間の電圧V
CEは徐々に上昇し、コレクタからエミッタに流れる電流Icは徐々に低下する。
図9のt4の期間、スイッチング素子132はオフ状態となり、コレクタからエミッタに流れる電流Icは零になる。
【0034】
スイッチング素子132の発熱量は、電圧V
CEと電流Icの積に比例する。したがって、スイッチング素子132は、
図9のt4の期間には発熱しない。スイッチング素子132のオン状態(t2の期間)における電圧V
CEは、例えば、0.1V程度なので、
図9のt2の期間におけるスイッチング素子132の発熱量は小さい。しかし、
図9のt1の期間およびt3の期間においては、電圧V
CEも電流Icも大きな値となるので、スイッチング素子132の発熱量は大きい。
【0035】
ここで、スイッチング素子132のスイッチング周波数とスイッチング素子132の発熱量との関係について説明する。スイッチング素子132のベース電圧の変化速度は、スイッチング素子132とベースにクロックを供給する回路のドライブ能力によって決まる。したがって、
図9のt1の期間およびt3の期間(立ち上がり時間と立下り時間)はスイッチング周波数にかかわらず同じである。スイッチング周波数を低くすると
図9のt2の期間およびt4の期間は長くなり、スイッチング周波数を高くすると
図9のt2の期間およびt4の期間は短くなる。したがって、スイッチング周波数により、(t1+t3)/Tの値が変化することとなる。(t1+t3)/Tの値が小さいほど、単位時間当たりの発熱している時間が短くなるので、スイッチング素子132の発熱量は小さくなる。したがって、スイッチング素子132の温度上昇も低くなる。スイッチング素子132は、発熱量が大きいほど温度が高くなる。温度が高いほど寿命を計算する際の熱加速度が大きくなるので、温度が高いほどスイッチング素子132の寿命低減度は大きくなる。
【0036】
次に、
図10に示されるフローチャートを参照しながら、ブレーキトルク計測処理について説明する。下記の制御は、補助記憶部83に記憶されたプログラムに基づいて行われ、制御の主体は制御ユニット80(CPU81)である。電流モニタ137を
図4に示すようにインバータ13の出力側に配置する。配置された電流モニタ137は、インバータ13から昇降モータ40に供給される電流を計測し、制御ユニット80に計測値を通知する。また、回転センサ17は、昇降モータ40の回転を計測し、制御ユニット80に計測値を通知している。
【0037】
制御ユニット80は、乗りかご31の通常の昇降運行時には第1周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力している。制御ユニット80は、ブレーキトルク計測時には、第2周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力する(ステップS11)。ブレーキトルク計測時には乗りかご31の通常の昇降運行時よりも大きな電流を昇降モータ40に供給する。昇降モータ40に供給する電流に応じてインバータ13のスイッチング素子132の発熱量も増加する。この温度上昇を抑制するために、ブレーキトルク計測時には、スイッチング素子132のスイッチング周波数を乗りかご31の通常の昇降運行時のスイッチング周波数である第1周波数(例えば、8kHz)より低い第2周波数(例えば、1kHz)とする。
【0038】
また、制御ユニット80は、昇降モータ40のブレーキ設定を片方閉じ設定とする(ステップS12)。ブレーキは、例えば、ディスクブレーキで構成されており、ディスクブレーキにより昇降モータの回転軸を押圧することで、ブレーキをかけている。乗りかご31のブレーキは、安全のため2つのブレーキを備えている。片方閉じ設定とは、2つのうちの一方のブレーキを有効とし、他方のブレーキがかからない状態の設定をいう。なお、一方のブレーキについてのブレーキトルク計測後、他方のブレーキについてのブレーキトルク計測も行う。
【0039】
次に、制御ユニット80は、昇降モータ40に供給する電流が徐々に大きくなるようにインバータ13を制御する(ステップS13)。制御ユニット80は、例えば、第2発振回路1342が出力するクロックのduty(ハイレベルである時間の割合)を増加することで、昇降モータ40に供給する電流が徐々に大きくなるようにインバータ13を制御する。
【0040】
次に、制御ユニット80は、昇降モータ40(巻上機)が回転したか否かを判断する(ステップS14)。昇降モータ40の回転は、昇降モータ40の回転を検出する回転センサ17により検出される。制御ユニット80は、回転センサ17から出力される信号を監視することで、昇降モータ40が回転したか否かを判断する。
【0041】
制御ユニット80は、昇降モータ40が回転したことを検出しない場合(ステップS14:No)、昇降モータ40に供給する電流の増加を継続する(ステップS13)。一方、制御ユニット80は、昇降モータ40が回転したことを検出した場合(ステップS14:Yes)、ステップS15の処理に移行する。
【0042】
制御ユニット80は、昇降モータ40が回転したことを検出した時の電流モニタ137による電流の計測値を記録する(ステップS15)。
【0043】
次に、制御ユニット80は、記憶部に記憶されたテーブルを参照して、昇降モータ40が回転したときの昇降モータ40に供給された電流値に基づいて、ブレーキトルクを求める(ステップS16)。昇降モータ40が回転した時の昇降モータ40の出力トルクが、ブレーキトルクの値である。昇降モータ40の出力トルクは、昇降モータ40に供給される電流の値に比例することが知られている。昇降モータ40に供給される電流の値に対する昇降モータ40の出力トルクの値は、予め計測され、例えば、テーブルとして記憶部に記憶されている。制御ユニット80は、テーブルを参照することで、昇降モータ40に供給される電流の値に対応するブレーキトルクの値を取得する。
【0044】
次に、制御ユニット80は、求めたブレーキトルクの値が定められた基準値を満たしているか否かを判断する。そして、制御ユニット80は、ブレーキトルクの値が基準値を満たしているか否かの判断結果を入出力装置93に出力する(ステップS17)。
【0045】
制御ユニット80は、第1周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力し(ステップS18)、ブレーキトルク計測処理を終了する。
【0046】
次に、
図11を参照して寿命推定処理について説明する。ここでは、インバータ13を構成する部品の中で最もMTBF(Mean Time Between Failure)が大きいスイッチング素子132の寿命推定を行うことで、インバータ13の寿命推定を行う場合について説明する。寿命推定処理においてスイッチング素子132がオン状態であるときのスイッチング素子132のオン電圧とスイッチング素子132に流れる電流を計測するときには、電流モニタ137を
図4に示すようにインバータ13の出力側に配置する。また、電圧モニタ138をスイッチング素子132それぞれのソースとエミッタ間の電圧をモニタするように配置する。
【0047】
制御ユニット80は、乗りかご31の通常の昇降運行時には、第1周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力している。制御ユニット80は、寿命推定処理時時には、第2周波数のクロックを選択する制御信号を切替回路1343に出力する(ステップS31)。ステップS31の処理は、
図10のステップS11の処理と兼ねることができる。したがって、寿命推定処理は、ブレーキトルク計測処理と同時に行うことができる。
【0048】
次に、寿命推定装置76のオン抵抗計算部77は、スイッチング素子132それぞれを流れる電流Icの値とスイッチング素子132それぞれの電圧V
CEの値を取得する(ステップS32)。スイッチング素子132それぞれを流れる電流Icの値は、電流モニタ137により寿命推定装置76に供給されている。また、スイッチング素子132それぞれの電圧V
CEの値は、電圧モニタ138により寿命推定装置76に供給されている。オン抵抗計算部77は、例えば、
図9に示す(t1+t2)および(t3+t4)の中間のタイミングで、電流Icの値と電圧V
CEの値を取得する。電流モニタ137と電圧モニタ138は、第2発振回路1342が出力するクロックに同期させることで、電流Icの値と電圧V
CEの値を取得するタイミングを取得するようにしてもよい。
【0049】
図12は、第2周波数でスイッチング動作するスイッチング素子132の
電流Ic波形の例である。
電流Ic波形は、ローレベルからハイレベルに推移する際、図に示すようにリンギングすることが多い。
図12では記載していないが、
電流Ic波形は、ハイレベルからローレベルに推移する際にもリンギングすることがある。
電圧V
CE
波形も同様にリンギングすることが多い。波形にリンギングがある期間に電流Icの値と電圧V
CEの値を取得すると、データのばらつきが大きくなり計測精度が低下する。オン抵抗計算部77は、
図9に示す
(t1+t2)の中間のタイミングで、電流Icの値と電圧V
CEの値を取得する。
図12に黒丸で示すタイミングPmは、
電流Icの値を取得するタイミングの一例を示している。ブレーキトルク計測時は、第2周波数でスイッチング素子132をスイッチングしているので、電圧
V
CE
と電流Icのリンギングが
図12に示す
(t1+t2)の中間のタイミングまで継続することはない
。
【0050】
図13は、第1周波数でスイッチング動作するスイッチング素子132の
電流Ic波形の例である。例えば、第1周波数(8kHz)は第2周波数(1kHz)の8倍である。なお、
図12と
図13の時間軸は同じではない。第1周波数でスイッチング素子132をスイッチングする場合、波形の中ほどまでリンギングが継続することがある。したがって、第1周波数でスイッチング素子132をスイッチングした状態で電流Icの値と電圧V
CEの値を取得すると、データのばらつきが大きくなり計測精度が低くなる恐れがある。
【0051】
次に、オン抵抗計算部77は、スイッチング素子132のオン抵抗を計算する(ステップS33)。制御ユニット80は、昇降モータ40に供給する電流を変える際、例えば、1秒ごとにステップ的に電流値が変化するように、インバータ13のスイッチング素子132に供給するクロックのdutyを制御する。オン抵抗計算部77は、例えば、dutyが同じ期間(1秒間)に取得したスイッチング素子132のオン抵抗の平均値を計算する(ステップS34)。オン抵抗計算部77は、dutyが変更されて電流Icが変わるごとに、スイッチング素子132のオン抵抗の平均値を計算する。なお、ブレーキトルク計測処理と並行して寿命推定処理を行う場合、ステップS13およびステップS14において徐々に電流が増加されるので、増加する電流ごとにスイッチング素子132のオン抵抗を計算する。
【0052】
次に、寿命推定部78は、求めたオン抵抗の値に基づいてスイッチング素子132の寿命に至るまでの時間を推定する。寿命推定部78は、第1閾値と第2閾値を設定し、求めたオン抵抗の平均値と第1閾値および第2閾値を比較する。第1閾値は、スイッチング素子132が寿命に達してはいないが、寿命に達したと判断するオン抵抗の値に近いオン抵抗の値である。第2閾値は、スイッチング素子132が寿命に達したと判断するオン抵抗の値である。スイッチング素子132が寿命に達したと判断するオン抵抗の第2閾値の値は、部品の規格と設計値に基づいて設定される。第1閾値は、オン抵抗が第1閾値から第2閾値に至るまでの時間が例えば2月程度となるように設定する。
【0053】
まず、寿命推定部78は、求めたオン抵抗の平均値の値が、第1閾値以下であるか否かを判断する(ステップS35)。求めたオン抵抗の平均値が第1閾値以下である場合(ステップS35:Yes)、寿命推定部78は、スイッチング素子132が寿命に達するまでに余裕があると判断する(ステップS39)。
【0054】
一方、求めたオン抵抗の平均値の値が第1閾値以上である場合(ステップS35:No)、寿命推定部78は、求めたオン抵抗の平均値の値が第2閾値以下であるか否かを判断する(ステップS36)。求めたオン抵抗の平均値の値が第2閾値以下である場合(ステップS36:Yes)、寿命推定部78は、スイッチング素子132の寿命が近いと判断する(ステップS38)。
【0055】
寿命推定部78は、スイッチング素子の動作時間に対するスイッチング素子132のオン抵抗の増加特性を示すデータに基づいて、スイッチング素子132が寿命に至るまでの時間を推定する。具体的には、スイッチング素子132の動作時間に対するスイッチング素子132のオン抵抗の増加特性を示すデータを、予めテーブルとして作成して記憶部に記憶しておく。スイッチング素子132のオン抵抗が所定の値になるまでの時間がスイッチング素子132の余命時間である。寿命推定部78は、そのテーブルを参照することで、スイッチング素子132の計測したオン抵抗に対応する余命時間を計算する。そして、寿命推定部78は、スイッチング素子132の余命時間を入出力装置93に表示する。
【0056】
一方、求めたオン抵抗の平均値の値が第2閾値以上である場合(ステップS36:No)、寿命推定部78は、スイッチング素子132が寿命に達したと判断する(ステップS37)。そして、寿命推定部78は、「スイッチング素子132が寿命に達したのでインバータ13を交換してください。」等の警告を入出力装置93に表示する。以上で、寿命推定処理の説明を終了する。
【0057】
ブレーキトルク計測時におけるスイッチング素子に流れる電流は、通常運行時よりも大きく、スイッチング素子の発熱量も大きい。スイッチング素子は、発熱量が大きいほど劣化における温度加速係数が大きくなる。したがって、ブレーキトルク計測を行うことによるスイッチング素子の寿命低減を無視することができない。実施形態に係るエレベータ装置は、インバータ13のスイッチング素子132を、利用者を運搬するための乗りかごの昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作させ、ブレーキトルク計測時には第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作させる。スイッチング素子132の発熱量は、スイッチング周波数が低いほど抑制される。したがって、実施形態に係るエレベータ装置は、ブレーキトルク計測を行うことによるスイッチング素子132の寿命低減を抑制することができる。
【0058】
最も大きな電流が流れるブレーキトルク計測時の電流とその電流による発熱量を考慮して、スイッチング素子の絶対定格は決められる。実施形態に係るエレベータ装置は、ブレーキトルク計測時における発熱量を低減できるので、インバータ13に使用するスイッチング素子として絶対定格の小さいスイッチング素子を選択することができる。また、スイッチング素子の発熱量が小さいので、スイッチング素子を冷却するための放熱回路を簡略化できる。これにより、インバータ13を小型化でき、コストの低減を図ることができる。
【0059】
また、実施形態に係るエレベータ装置の寿命推定部78は、インバータ13が第2周波数のクロックでスイッチング動作しているときの、スイッチング素子132がオン状態であるときのオン電圧とスイッチング素子132に流れる電流に基づいて、スイッチング素子132のオン抵抗を求め、求めたオン抵抗の値に基づいてスイッチング素子132の寿命に至るまでの時間を推定する。第2周波数は、リンギングの継続時間を考慮して設定される。したがって、第2周波数でスイッチング素子132をスイッチングする場合、波形の中ほどまでリンギングが継続することはない。したがって、第2周波数でスイッチング素子132をスイッチングした状態で電流Icの値と電圧VCEの値を取得することにより、スイッチング素子132のオン抵抗の計測精度を向上することができる。
【0060】
また、上述したブレーキトルク計測処理と寿命推定処理の計測は同時に行うことができる。したがって、実施形態に係るエレベータ装置は、保守作業の効率を向上することができる。ブレーキトルク計測処理では、昇降モータ40に供給する電流を零から最大電流まで徐々に増加して計測する。したがって、通常運行時の駆動電流も含めたすべての電流の範囲におけるスイッチング素子132のオン抵抗を計測することができるので、寿命推定処理を正確に行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記の説明では、ステップS35とステップS36の説明で、スイッチング素子132のオン抵抗の絶対値に基づいてスイッチング素子132の寿命判断を行う場合について説明した。しかし、スイッチング素子132の寿命判断をこれに限定する必要はない。たとえば、インバータ13の使用を開始したときのオン抵抗(初期時のオン抵抗)に対する計測時のオン抵抗の増加度に基づいてスイッチング素子132の寿命に至るまでの時間を推定してもよい。また、前回計測時のオン抵抗に対する今回計測したオン抵抗の増加度に基づいてスイッチング素子132の寿命に至るまでの時間を推定してもよい。スイッチング素子132は、寿命が近付くとオン抵抗が急速に増加するという特徴があるからである。
【0062】
また、横軸を昇降モータ40に供給する電流、縦軸をスイッチング素子132のオン抵抗としたグラフを作成し、インバータ13の使用を開始したときのグラフもしくは前回計測時のグラフと今回計測時のグラフとを比較し、例えば、相関度が所定の閾値以下になった場合に、スイッチング素子132が寿命に至ったと判断するようにしてもよい。
図11のステップS35とステップS36に閾値を相関度に対応する値としてもよい。この手法は、電流の増加に対するオン抵抗の変化の度合いに基づいてスイッチング素子132の評価を行うものであり、ブレーキトルク計測時の電流値を超えた電流範囲(取得したデータの範囲外)を含めたスイッチング素子132の特性評価を行うことができるこという効果がある。
【0063】
また、上記の説明では、スイッチング素子132をスイッチングする第1周波数を8kHz、第2周波数を1kHzとして説明したが、第1周波数と第2周波数をこの周波数に限定する必要はない。例えば、第1周波数を50kHz、80kHzなどの上述の実施形態よりも高めの周波数としてもよい。第2周波数は、電流と電圧の計測タイミングである
図12に黒丸で示すタイミングPmが、スイッチングによるリンギングに影響されることがない周波数であればよい。また、上記の説明では、第2発振回路1342は、第1発振回路1341が出力するクロックを分周することで第2周波数のクロックを作成する場合について説明したが、第1発振回路1341が出力するクロックを分周することなく、第2周波数のクロックを作成してもよい。
【0064】
また、
図12を用いた上記の説明では、電圧と電流を1回のスイッチング周期に1回計測する場合について説明したが、1回のスイッチング周期に複数回計測するようにしてもよい。また、取得した波形をAD変換し、電圧および電流の値が所定の範囲であるデータの平均値をとってもよい。また、データの分散値を計算し、所定の値以下の分散値が継続している期間の中間時間のデータを用いてオン抵抗を計算してもよい。
【0065】
また、上記の説明では、ブレーキトルク計測処理と寿命推定処理の計測を同時に行う場合について説明したが、ブレーキトルク計測処理と寿命推定処理を独立に行ってもよい。
【0066】
また、上記の説明では、スイッチング素子132それぞれのソースとエミッタ間の電圧をモニタする電圧モニタ138と電流モニタ137を計測時のみ取付け、エレベータ装置の運行時には取り外しておく場合について説明したが、電流モニタ137と電圧モニタ138をエレベータ装置の運行時にもインバータ13に配置しておいてもよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 商用電源
10 エレベータ装置
11 コンバータ
13 インバータ
132 スイッチング素子
134 発振回路
1341 第1発振回路
1342 第2発振回路
1343 切替回路
137 電流モニタ
138 電圧モニタ
17 回転センサ
21~24 ガイドレール
31 乗りかご
31a 開口部
32 扉
36 操作パネル
40 昇降モータ
42 プーリー
43 ワイヤ
44 ケーブル
50 カウンタウエイト
70 制御盤
76 寿命推定装置
77 オン抵抗計算部
78 寿命推定部
80 制御ユニット
81 CPU
82 主記憶部
83 補助記憶部
84 インタフェース部
85 バス
91 駆動ユニット
93 入出力装置
100 昇降路
【要約】
【課題】ブレーキトルク検査に起因する電源の寿命低減を抑制する。
【解決手段】実施形態に係るエレベータ制御装置は、エレベータ装置の乗りかごの昇降を駆動するモータに電力を供給する電源を備える。電源は、利用者を運搬するための乗りかごの昇降運行時には第1周波数でスイッチング動作し、モータの回転を抑制するブレーキのブレーキトルク計測時における乗りかごの昇降運行時には、第1周波数より低い第2周波数でスイッチング動作する。
【選択図】
図10