(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】建築用構造材の据付装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240610BHJP
B66B 13/30 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B66B7/00 M
B66B7/00 J
B66B13/30 L
(21)【出願番号】P 2023091815
(22)【出願日】2023-06-02
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石原 義之
(72)【発明者】
【氏名】大明 準治
(72)【発明者】
【氏名】肥後 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀樹
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-147118(JP,A)
【文献】特開昭58-197176(JP,A)
【文献】特開2023-047601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に取り付ける建築用構造材を把持する把持部と、
前記把持部の位置を調整する位置調整部と、
前記位置調整部に搭載され、前記建物
における前記把持部の基準位置を検知する基準検知部と、
前記基準検知部からの情報をもとに前記位置調整部を制御する動作計画部と、を備え、
前記動作計画部は、設置後の建築用構造材の基準位置からのずれ
量を基に、設置前の建築用構造材の補正位置を算出する状態特性算出部を有し、
前記把持部によって、前記建築用構造材を前記補正位置に設置し、前記補正位置において前記建物に前記建築用構造材を取り付ける建築用構造材の据付装置。
【請求項2】
前記位置調整部は、建物に設けられた昇降路内を昇降するゴンドラに取り付けてある請求項1に記載の据付装置。
【請求項3】
前記ゴンドラにはゴンドラ剛性を検出する剛性検知センサが搭載され、
前記動作計画部は、剛性算出部と、状態特性算出部とを備え、
剛性算出部はゴンドラ剛性検知センサの情報を基にゴンドラ剛性を算出し、状態特性算出部は前記ゴンドラ剛性を基に前記状態特性算出部で補正位置を算出する請求項2に記載の据付装置。
【請求項4】
前記ゴンドラは、前記建築用構造材を固定するボルトを締めたりゆるめたりするボルト締結機構を先端に有するアームを備える請求項2に記載の据付装置。
【請求項5】
前記動作計画部は、前記建築用構造材の固定時の基準位置からのずれを基に、前記ボルトの締結順を算出するボルト締結順判断部を備える、請求項4に記載の据付装置。
【請求項6】
前記アームは、前記ゴンドラに対して、水平方向に動作する直動機構を介して接続されている請求項4に記載の据付装置。
【請求項7】
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部は、エレベータ昇降路を昇降する籠用レールもしくはレール据付用基準部を前記基準位置とする請求項1に記載の据付装置。
【請求項8】
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部は、前記エレベータ昇降路の形状を前記基準位置とする請求項1に記載の据付装置。
【請求項9】
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部はエレベータ昇降路の
基準位置を検知する
請求項1に記載の据付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、建築用構造材の据付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の構造材(以下「建築用構造材」という)として、柱、梁、窓枠やエレベータ用の敷居(フロア側敷居)等が公知である。
【0003】
建築用構造材としての敷居は、エレベータ用のドアの据付のために、建物に固定する作業を行わなければならない。しかし、重い敷居を精度よく設置しなければならないことや、振動するゴンドラ上で作業しなければならないこと等から、作業員の負担が大きく、熟練も必要である。このような作業の省力化、省人化、安全性確保のための装置や機構が、従来から種々の提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-28672号公報
【文献】国際公開第2022/102267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、敷居の据付は手作業でおこなうことに限られており、傾きの調整や据え付け等の作業を自動でおこなうことができる建築用構造材の据付装置が望まれていた。
本実施形態の目的は、敷居等の建築用構造材の据付を自動でおこなうことができる据付装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、建物に取り付ける建築用構造材を把持する把持部と、前記把持部の位置を調整する位置調整部と、前記位置調整部に搭載され、前記建物における前記把持部の基準位置を検知する基準検知部と、前記基準検知部からの情報をもとに前記位置調整部を制御する動作計画部と、を備え、前記動作計画部は、設置後の建築用構造材の基準位置からのずれ量を基に、設置前の建築用構造材の補正位置を算出する状態特性算出部を有し、前記把持部によって、前記建築用構造材を前記補正位置に設置し、前記補正位置において前記建物に前記建築用構造材を取り付ける建築用構造材の据付装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る据付装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すアームを抜き出して示す正面図である。
【
図4】第1実施形態に係る据付装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る据付装置が昇降路にあるときの敷居との関係における概略構成を示す斜視図である。
【
図6】据付装置の作業工程を示すフロチャートである。
【
図7】ボルトの締付によりずれが生じる理由を説明する図であり、(a)はボルト締結前の敷居の位置を示す正面図であり、(b)はボルト締結後の敷居の位置を示す正面図である。
【
図8】ボルトのずれを補正した状態の図であって、(a)はボルト締結前の敷居の位置を示す正面図であり、(b)はボルト締結後の敷居の位置を示す正面図である。
【
図9】敷居のボルトによる据え付け締付工程を示すフロチャートである。
【
図10】ボルト締結順序を変えたときの状態を説明する図であり、敷居の据付状態を示す正面図である。
【
図11】第2実施形態に係る据付装置の斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る据付装置の概略的構成を示す図であり、昇降路の横断面図である。
【
図13】第4実施形態に係る据付装置の概略的構成を示す図であり、昇降路の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態にかかる据付装置について、
図1~10を参照して説明する。
図1及び
図4に示すように、据付装置1は、ゴンドラ2と、建築用構造材Mを把持する把持部3と、位置調整機構(位置調整部)5(
図5参照)と、基準検知部7(
図5参照)と、動作計画部9とを備えている。
建築用構造材Mは、柱、梁、窓枠等があるが、本実施形態ではエレベータ昇降路の各フロアに設置する敷居である。
【0009】
図1に示すように、建築用構造材としての敷居M(以下単に、「敷居M」という)は、エレベータの昇降路11内において各フロアの開口13の下縁13aに取り付けるものであり、敷居にはフロア側ドアが設置される。
敷居Mは、予めフロア毎に、開口13の下縁13aに仮止めしてある。仮止めは、フロア側からしても良いし、ゴンドラ2から行っても良いが、本実施形態ではフロア側から仮止めしてある。
【0010】
図2に示すように、敷居Mは水平方向に長い長尺であり、各フロアの開口13の下縁に、複数の止め片14にそれぞれボルト又はナット16(以下「ボルト16」とする)で仮止めされている。各止め片14には、長孔14aが形成してあり、ボルト16の止め位置を調整自在になっている。
【0011】
図1に示すように、ゴンドラ2は、作業用ゴンドラであり、作業員が搭乗可能であるが、本実施形態では、無人状態で昇降路内を移動して、敷居Mを設置する。
ゴンドラ2は昇降用ロープ2aに吊下げられており、巻き上げ機(図示せず)の駆動により、昇降路11内を昇降自在であり、所定の位置で停止する。
ゴンドラ2の移動は移動制御プログラム15(
図4参照)により昇降路内を昇降するようになっている。移動制御プログラム15については、後述する。
ゴンドラ2には、把持部3と、アーム17とが設けられている。
【0012】
把持部3は、敷居Mを把持するものであり、図示していないが、例えば、ホークリフトのような下爪で敷居Mの下面を支持すると共に上爪で上から押えて、敷居Mを上下で挟み持っている。
図4及び
図5に示すように、把持部3には、位置調整機構5が設けてあり、位置調整機構5は、把持部3の基準位置を検知する基準検知部7を備えている。この基準検知部7は、ピアノ線検知センサ7aと、腰墨検知センサ7bと、傾斜センサ7cとで構成されている。
【0013】
図5に示すように、ピアノ線検知センサ7aは、開口13の左右に対応して2つ設けてあり、昇降路11内に垂下されている左右のピアノ線19a、19bを各々検知する。ピアノ線19a、19bは、昇降路11内に互いに所定間隔を空けて2本垂下されている。
腰墨検知センサ7bは、建物に付された腰墨Nを検知するものであり、例えばカメラである。腰墨は、昇降路内に付されていても良いが、本実施形態では、各フロアの床に載置したレーザ照射器21により、印が付されているフロアの開口13の縁にレーザ光(可視光)が投影されている。
【0014】
レーザ照射器21は、任意の角度に向けて可視光を照射するものである。
腰墨検知センサ7bが腰墨Nを検知することにより、位置調整機構5の高さを求めることができる。
傾斜センサ7cは、把持部3が把持している敷居Mの傾斜を検知する。傾斜は、X軸の軸周りの傾斜及びY軸の軸周りの傾斜である。
【0015】
左右2つのピアノ線検知センサ7a、7a、腰墨検知センサ7b、傾斜センサ7cにより、X軸、Y軸、Z軸における6自由度の位置を検知することができる。
位置調整機構5は、
図5に示すように、敷居M側から、X軸回転機構23、Y軸回転機構25、Z方向(上下方向)移動機構27、Z軸回転機構29、X方向移動機構31及びY方向移動機構33を備えており、各機構23、25、27、29、31、33を設けることにより、検知した6自由度の位置に対して補正した位置に移動させることができる。
【0016】
次に、アーム17について、説明する。
図3に示すように、アーム17は、台座17aと、第1腕部17bと、第1関節17cと、第2腕部17dと、第2関節17eと、電動ドライバー17fと、ソケット17gとがゴンドラの固定側から順次設けてある。
【0017】
この第1実施形態では、
図1に示すように、台座17aは、ゴンドラ2の上部に固定されている。第1腕部17bは台座17aを回転軸として水平方向に180°旋回可能であり、第2腕部17dは第1関節17cを回転軸として水平方向に180°旋回可能である。電動ドライバー17fは、ソケット17gを回転してソケットが係合しているボルト16を緩めたり、締め付けたりする。電動ドライバー17fは、第2関節17eを回転軸として水平方向に180°旋回可能である。尚、第3ソケット17gには、先端にボルトの頭又はナットを保持する六角形状の凹みが形成されている。
台座17aと第1腕部17b及び第1腕部17bと第2腕部17dに跨って配置しているのは、駆動電力及び駆動信号を伝達する伝達部材18である。
【0018】
次に、
図4に示す動作計画部9について、説明する。
動作計画部9は、エレベータ昇降路11の中央制御室や建屋に設置した制御盤に設けたり、作業員のパソコンに組み込まれている。この動作計画部9に設けた各プログラムに基づいて、ゴンドラ2の移動、敷居Mの位置制御、アーム17による敷居Mの据付作業(ボルトを緩めたり、ボルトの締め付け)をおこなう。
動作計画部9は、移動制御プログラム15、状態特性算出部37、ゴンドラ剛性算出部39、ボルト締結順判断部41を備えている。
【0019】
移動制御プログラム15は、エレベータ昇降路11内におけるゴンドラ2の移動を制御するものである。
図5に示すように、各フロアに仮止めしてある敷居Mを正しい位置に固定する(据え付ける)けるために、敷居Mの高さにゴンドラ2を移動する。ゴンドラ2は下のフロアから順に上へ移動しても良いし、上のフロアから順に下に移動しても良い。
【0020】
移動制御プログラム15の制御フローを
図6に示す。まず、所定の階(例えば、最上階)のフロアの敷居高さにゴンドラ2を移動する(ステップS1)
次に、把持部3(
図1参照)が仮止めしてある敷居Mを把持する(ステップS2)。
続いて、ゴンドラ2に取り付けてあるアーム17が、敷居Mを仮止めしているボルトを緩める(ステップS3)。
【0021】
次に、位置調整機構5で敷居Mの位置を調整する(ステップS4)。このステップ4では、
図4に参照されるように、状態算出部37が、位置調整機構5の基準検知部7における各センサ7a、7b、7cの検知信号を受けて、その検知信号に基づいて位置制御部43から駆動信号を受けて、位置調整機構5のX軸回転機構23(
図5参照)、Y軸回転機構25(
図5参照)、Z方向移動機構27(
図5参照)、Z軸回転機構29(
図5参照)、X方向移動機構31(
図5参照)、Y方向移動機構33(
図5参照)を駆動して、敷居Mを設置する位置を調整し、ステップS5に移行する。
ステップS5では、アーム17がボルト16を締めて敷居Mの設置(据付)を完了し、ゴンドラ2を次の敷居位置へ移動する(ステップS6)する。
【0022】
敷居Mの設置は、次のようにしておこなう。
図4に示すように、ゴンドラ剛性算出部39は、ゴンドラ2に設けてあるゴンドラ剛性検知センサ45の検知信号を受けて、状態特性算出部37にゴンドラ剛性の値を送る。状態特性算出部37は前述した基準検知部7から受けた各種の値と、ゴンドラ剛性の値とに基づいて位置制御量を決定し、位置制御部43に制御信号を送り、X軸回転機構23(
図5参照)、Y軸回転機構25(
図5参照)、Z方向移動機構27(
図5参照)、Z軸回転機構29(
図5参照)、X方向移動機構31(
図5参照)、Y方向移動機構33(
図5参照)の駆動量を制御する。
ゴンドラ剛性とは、各機構23、25、27、29、31、33が駆動したときに受ける反力の値であり、予め実験等により決定されている値である。
【0023】
次に、ボルト締結順判断部41について説明する。ボルト締結順判断部41は、状態特性算出部37からの算出信号を受けることで、位置調整機構5の状態を加味して敷居Mのボルト16の締結順序を決定する。そして、ボルト締結順判断部41は、ボルト16の締結順序にしたがって、アーム制御部47によりアーム17の駆動を制御する。
【0024】
図9を参照して、アーム17によるボルト締結順序について説明するが、まず、締結順序が必要な理由について説明する。
図7に敷居Mの取付状態を示す。位置調整機構5により基準位置Tに合わせた状態でボルト16(
図2参照)を締結しても、多数のボルト16、長孔14aによる自由度が高い低い、ゴンドラの剛性、部材の剛性、摩擦、ボルト締結力の強さの影響で、
図7(a)に示すように、ボルト締結前の敷居Mの位置を基準位置(破線)Tに合わせていても、
図7(b)に示すように、ボルト締結後の敷居Mの敷居の基準位置(正確な位置)Tからずれて固定されてしまうことがある。
【0025】
これに対して、
図8に本発明の据付装置1に係る敷居Mの取付状態を示す。あらかじめ基準位置Tからずらして、補正したボルト締結前の敷居Tの位置に合わせた状態から、所定の順序(後述する)でボルト16を締結することによって、ボルト締結後の敷居Mの位置は正確な敷居の位置に固定することができる。
そこで、本実施の形態では、据付装置1は、ボルト締結順判断部41を有し、敷居Mを固定するためのボルト締結順序を状態特性算出部37からの算出信号を受けてボルト締結順序を決定し、その順序にしたがって敷居Mのボルトを締める。
【0026】
図9を参照して、その締結順序について具体的に説明する。
図9は据付装置1に係る動作フローを示している。
プログラムが開始すると、敷居Mを基準検知部7(
図4参照)からの情報をもとに、まずは、状態特性算出部37が算出した位置に、把持部3の位置を位置調整機構5(
図4参照)で基準位置に合わせる(ステップS1)。
次に、
図10の1-Aで示すように、アーム17でボルト16を締めて、敷居Mを固定する(ステップS2)。例えば、ボルトは予め決められた順序a、b、c、dの順序で締める。
その後、基準検知部7(
図4参照)の情報もとに、固定後の敷居Mの基準位置Tからのずれ(
図7(b)参照)を算出する(ステップS3)。例えば、
図10の1-Bに示すように、正確な敷居位置(基準位置)Tに対して敷居Mの位置にずれが生じることがある。
【0027】
次に、閾値判断ステップ(ステップS4)で、敷居Mの基準位置Tからのずれが、予め定めた所定の閾値以下か否かを判断する。ずれが閾値以下(YES)であれば、動作は終了する。一方、閾値判断ステップ(ステップS4)で、敷居Mの基準位置Tからのずれが、閾値以下でない(NO)であれば、ステップS5に移行する。
【0028】
ステップS5では、ゴンドラ剛性検知センサ45(
図4参照)の情報をもとに、ゴンドラ2の剛性算出部39(
図4参照)でゴンドラ2の剛性を算出する。
次にステップS6で、基準検知部7の情報と、ステップS5で算出したゴンドラ剛性をもとに、補正位置(補正するべき位置)を算出する。
【0029】
次に、基準検知部7(
図4参照)の情報をもとに状態特性算出部37が演算し、ボルト締結順判断部41でボルト16の締結順を判断する(ステップS7)。
その後、アーム17で各ボルト16をゆるめ、敷居Mを調整できる状態にし、位置調整機構5(
図5参照)で、必要に応じてX軸回転機構23(
図5参照)、Y軸回転機構25(
図5参照)、その他の機構25、27、29,31、33(
図5参照)を駆動して、補正位置に合わせる(ステップS9)。
【0030】
そして、算出したボルトの締結順に従ってアーム17でボルト16を締める(ステップS10)。次に、ステップS4に戻り、再度、基準検知部の情報もとに固定後の敷居の基準位置からのずれを算出する。このようにして、ステップS4~ステップS10を繰り返す。
【0031】
なお、ボルト締結順判断部41では、ボルト締結時にずれの大きかった場所に近い位置にあるボルト16から締結することによってボルト締結後の敷居Mのずれを小さくすることができる。
例えば、
図10の1-Aに示すように、a、b、c、dの順序でボルトを締めたときに同
図1-Bに示すように、c、d側のずれ量が大きかった場合には、各ボルトa、b、c、dを全て緩めて、ボルト締結順序を
図10の2-Aに示すように、c、d、a、bの締結順序で締める。
これにより、
図10の2-Bに示すように、敷居Mは基準位置Tに納めることができる。
【0032】
つぎに、第1実施形態にかかる据付装置1の効果について説明する。
据付装置1の動作計画部9は、
図10に示すように、設置後の敷居Mの基準位置Tからのずれを基に、設置前の敷居Mの補正位置を算出する状態特性算出部37(
図4参照)を有しているので、敷居Mが基準位置からのずれに応じて正しい位置に補正して据付できる。
図1に示すように、位置調整機構5は、建物に設けられた昇降路11内を昇降するゴンドラ2に取り付けているから、各フロアにゴンドラ2を移動して据付作業ができるから、作業性が良い。
【0033】
図4に示すように、ゴンドラ2には、ゴンドラ剛性を検出する剛性検知センサ45が搭載され、動作計画部9は、ゴンドラ剛性算出部39と、状態特性算出部37とを備え、ゴンドラ剛性算出部39はゴンドラ剛性検知センサ45の情報を基にゴンドラ剛性を算出し、状態特性算出部37はゴンドラ剛性を基に状態特性算出部37で補正位置を算出するので、ゴンドラ剛性を加味しているから、敷居Mの補正位置の精度を高めることができる。
ゴンドラ2は、敷居Mを固定するボルト16を締めたりゆるめたりするボルト締結機構(電動ドライバー17f、ソケット17g等)を先端に有するアーム17(
図3参照)を備えているので、アームの位置制御により容易にボルト16の締結や締め直しができるから、操作性が良い。
【0034】
図4に示すように、動作計画部9は、敷居Mの固定時の基準位置からのずれを基に、ボルト締結順判断部41でボルト16の締結順を算出するから、基準位置からずれが小さい場合には、締結し直さなくて済み(
図9に示すステップS3、ステップS4参照)、作業効率が良い。
【0035】
以下に、他の実施形態を説明するが、以下に説明する実施形態では、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の説明を省略し、以下の説明では、第1実施形態と主に異なる点を説明する。
【0036】
(第2実施形態)
図11に第2実施形態に係る据付装置1を示している。
この第2実施形態では、アーム17の台座17aは、ゴンドラ2に設けた走行レール51に沿って直動する直動機構53を設けたことが第1実施形態と異なっている。このように、ゴンドラ2にアーム17の直動機構53を設けることにより、小型のアーム17でも作業範囲を広くとることができる。
【0037】
(第3実施形態)
図12に第3実施形態に係る据付装置1を示す。この第3形態の据付装置1では、基準検知部7(
図4参照)の構成が異なっている。この第3実施形態では、基準検知部7にはピアノ線出センサ7aがなく、これに変えて、レールセンサ55を設けている。レールセンサ55は昇降路内のエレベータの籠用レール57の位置を検知し、この情報をもとに、敷居Mの位置を合わせる。これにより、昇降路11内にピアノ線がない状態でも敷居Mの位置を合わせることができる。
【0038】
(第4実施形態)
図13に第4実施形態に係る据付装置1を示す。この第4実施形態では、基準検知部7(
図4参照)の構成が異なっている。この第3実施形態では、基準検知部7にはピアノ線検知センサ7aがなく、これに変えて、壁面基準センサ59を設けている。壁面基準センサ59は、昇降路11の側壁等の壁面61の基準を検知し、この情報をもとに、敷居Mの位置を合わせる。これにより、第3実施形態と同様に、ピアノ線がない状態でも敷居の位置を合わせることができる。
【0039】
尚、
図13では壁面基準センサ59は、一方の壁面61と一方と直交する他方の壁面62を検知しているが、墨N(
図5参照)が付されているいずれか一方の壁面61又は62のみを検知してもよい。
【0040】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載可能な他の形態に係る発明を付記する。
[1]
建物に取り付ける建築用構造材を把持する把持部と
前記把持部の位置を調整する位置調整部と、
前記位置調整部に搭載され、前記建物の位置基準を検知する基準検知部と、
前記基準検知部からの情報をもとに前記位置調整部を制御する動作計画部と、を備え、
前記動作計画部は、設置後の建築用構造材の基準位置からのずれを基に、設置前の建築用構造材の補正位置を算出する状態特性算出部を有する建築用構造材の据付装置。
[2]
前記位置調整部は、建物に設けられた昇降路内を昇降するゴンドラに取り付けてある[1]に記載の据付装置。
[3]
前記ゴンドラにはゴンドラ剛性を検出する剛性検知センサが搭載され、
前記動作計画部は、剛性算出部と、状態特性算出部とを備え、
剛性算出部はゴンドラ剛性検知センサの情報を基にゴンドラ剛性を算出し、状態特性算出部は前記ゴンドラ剛性を基に前記状態特性算出部で補正位置を算出する[2]に記載の据付装置。
[4]
前記ゴンドラは、前記建築用構造材を固定するボルトを締めたりゆるめたりするボルト締結機構を先端に有するアームを備える[2]又は[3]に記載の据付装置。
[5]
前記動作計画部は、前記建築用構造材の固定時の基準位置からのずれを基に、前記ボルトの締結順を算出するボルト締結順判断部を備える、[2]~[4]のいずれか一つに記載の据付装置。
[6]
前記アームは、前記ゴンドラに対して、水平方向に動作する直動機構を介して接続されている[4]又は[5]に記載の据付装置。
[7]
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部は、エレベータ昇降路を昇降する籠用レールもしくはレール据付用基準部を前記基準位置とする[1]~[6]のいずれか一つに記載の据付装置。
[8]
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部は、エレベータ昇降路の形状を前記基準位置とする[1]~[7]のいずれか一つに記載の据付装置。
[9]
前記建築用構造材は、エレベータ昇降路のフロア開口に設ける敷居であり、
前記基準検知部はエレベータ昇降路の位置基準を検知する[1]~[7]のいずれか一つに記載の据付装置。
【符号の説明】
【0041】
1…据付装置、2…ゴンドラ、3…把持部、5…位置調整機構(位置調整部)、7…基準検知部、9…動作計画部、11…昇降路、17…アーム、17g…ソケット(ボルト締結機構)、37…状態特性算出部、39…ゴンドラ剛性算出部、41…ボルト締結順判断部、53…直動機構、M…敷居(建築構造材)。
【要約】
【課題】エレベータの昇降路にエレベータ機材を容易に且つ高精度で取り付けできるエレベータ機材の基準位置設定方法、エレベータ機材の設置方法、エレベータ機材の基準位置設定装置及び基準位置設定システムを提供することにある。
【解決手段】レーザ可視光を照射する2つ以上のレーザ照射器を用いて、エレベータ昇降路に設置するエレベータ機材の基準位置を設定する基準位置設定方法であって、建屋墨にレーザ可視光を合わせて各レーザ照射器の位置を特定するレーザ照射器位置特定工程と、 位置が特定された前記各レーザ照射器からエレベータ機材の設置位置へ向けてレーザ可視光を照射し、レーザ可視光の交点をエレベータ機材の基準位置としてマーキングするマーキング工程と、を備える。
【選択図】
図1