(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B66B25/00 Z
(21)【出願番号】P 2023100868
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 克也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-138997(JP,A)
【文献】国際公開第2021/261315(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204549781(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設置された複数台の乗客コンベアと、
前記施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末と
、
前記第1管理者とは異なる第2管理者によって使用される第2携帯端末と
を具備し、
前記複数台の乗客コンベアの各々は、近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板を含み、
前記第1携帯端末は、
前記第1携帯端末が前記複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと前記近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを表示する表示処理手段と、
前記第1乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付ける操作受付手段と、
前記受け付けられた第1操作に基づいて、前記第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を、前記近距離無線通信により前記第1乗客コンベアに送信する第1送信手段と
を含み、
前記第1乗客コンベアの運転は、前記送信された制御信号に基づいて制御され
、
前記表示処理手段は、前記第1乗客コンベアが少なくとも操作開始時点で運転中であるか否かを更に表示し、
前記第2携帯端末は、前記第1乗客コンベアが運転中であるか否かを表示する
乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記複数台の乗客コンベアの各々は、当該乗客コンベアの異常を検知して当該乗客コンベアの運転を自動的に停止する安全装置の動作を監視する遠隔監視装置を更に含み、
前記
表示処理手段及び
前記第2携帯端
末は、前記安全装置が動作したことを更に表示する
請求項
1記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
施設に設置された複数台の乗客コンベアと、
前記施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末と
を具備し、
前記複数台の乗客コンベアの各々は、近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板を含み、
前記第1携帯端末は、
前記第1携帯端末が前記複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと前記近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを表示する表示処理手段と、
前記第1乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付ける操作受付手段と、
前記受け付けられた第1操作に基づいて、前記第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を、前記近距離無線通信により前記第1乗客コンベアに送信する第1送信手段と
を含み、
前記第1乗客コンベアの運転は、前記送信された制御信号に基づいて制御され、
前記操作受付手段は、オペレータとの通話を指示する第2操作を受け付け、
前記第1携帯端末は、前記受け付けられた第2操作に基づいて、前記第1乗客コンベアを識別するための識別情報を前記オペレータによって使用されるオペレータ端末に送信する第2送信手段を更に含む
乗客コンベアシステム。
【請求項4】
施設に設置された近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板を含む複数台の乗客コンベアの制御方法であって、
前記施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末が前記複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと前記近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを当該第1携帯端末に表示することと、
前記第1携帯端末が前記乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付けることと、
前記第1携帯端末が、前記受け付けられた第1操作に基づいて、前記第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を、前記近距離無線通信により前記第1乗客コンベアに送信することと
を具備し、
前記第1乗客コンベアの運転は、前記送信された制御信号に基づいて制御され
、
前記表示することは、前記第1乗客コンベアが少なくとも操作開始時点で運転中であるか否かを更に表示することを含み、
前記第1管理者とは異なる第2管理者によって使用される第2携帯端末は、前記第1乗客コンベアが運転中であるか否かを表示する
制御方法。
【請求項5】
施設に設置された近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板を含む複数台の乗客コンベアの制御方法であって、
前記施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末が前記複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと前記近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを当該第1携帯端末に表示することと、
前記第1携帯端末が前記乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付けることと、
前記第1携帯端末が、前記受け付けられた第1操作に基づいて、前記第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を、前記近距離無線通信により前記第1乗客コンベアに送信することと
を具備し、
前記第1乗客コンベアの運転は、前記送信された制御信号に基づいて制御され、
前記受け付けることは、オペレータとの通話を指示する第2操作を受け付けることを含み、
前記第1携帯端末は、前記受け付けられた第2操作に基づいて、前記第1乗客コンベアを識別するための識別情報を前記オペレータによって使用されるオペレータ端末に送信する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアシステム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型の商業施設には多台数のエスカレータ(乗客コンベア)が設置されている。このような商業施設の管理者(以下、施設管理者と表記)は、当該商業施設の営業開始時に1台ずつエスカレータの運転を開始(つまり、エスカレータを起動)し、当該商業施設の営業終了時に1台ずつエスカレータの運転を停止する必要がある。
【0003】
このようなエスカレータの運転を開始及び停止する作業は、運転キーを使用して行われるため、非常に労力がかかる。このため、エスカレータの運転を開始及び停止する作業を行う施設管理者の負担を軽減する仕組みが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、管理者の負担を軽減することが可能な乗客コンベアシステム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る乗客コンベアシステムは、施設に設置された複数台の乗客コンベアと、前記施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末と、前記第1管理者とは異なる第2管理者によって使用される第2携帯端末とを具備する。前記複数台の乗客コンベアの各々は、近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板を含む。前記第1携帯端末は、前記第1携帯端末が前記複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと前記近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを表示する表示処理手段と、前記第1乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付ける操作受付手段と、前記受け付けられた第1操作に基づいて、前記第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を、前記近距離無線通信により前記第1乗客コンベアに送信する第1送信手段とを含む。前記第1乗客コンベアの運転は、前記送信された制御信号に基づいて制御される。前記表示処理手段は、前記第1乗客コンベアが少なくとも操作開始時点で運転中であるか否かを更に表示する。前記第2携帯端末は、前記第1乗客コンベアが運転中であるか否かを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態におけるエスカレータの概略構成例を示す図。
【
図2】エスカレータの乗り口近辺を拡大して示す図。
【
図4】本実施形態に係るエスカレータシステムの構成の一例を示す図。
【
図5】複数台のエスカレータの運転を開始する場合における携帯端末の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図9】複数台のエスカレータの運転を停止する場合における携帯端末の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図13】複数台のエスカレータの各々の運転状態を複数の施設管理者間で共有するエスカレータシステムの動作の概要を説明するための図。
【
図14】第2実施形態に係るエスカレータシステムの動作の概要を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における乗客コンベアの概略構成例を示す。本実施形態においては乗客コンベアがエスカレータである場合について説明するが、当該乗客コンベアは、動く歩道等であってもよい。
【0009】
図1に示すように、エスカレータ10は、例えば建物の下階と上階との間に傾斜して設置される。なお、
図1に示す例では、下階側がエスカレータ10の乗り口であり、上階側がエスカレータ10の降り口である場合を想定している。
【0010】
図1に示すエスカレータ10は、隙間なく連結された複数の踏段(ステップ)11を下部機械室12(乗り口)と上部機械室13(降り口)との間で循環移動させることで、踏段11上に搭乗した乗客(利用客)を搬送するように構成されている。
【0011】
複数の踏段11は、無端状の連結チェーン14によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス15内に配置されている。トラス15の内部には、下部スプロケット16と上部スプロケット17とが配置されており、これらの間に連結チェーン14が巻き掛けられている。
【0012】
図1に示す例では、上部スプロケット17にモータや減速機等を有する駆動装置18が連結されている。この駆動装置18により、連結チェーン14が巻き掛けられている下部スプロケット16及び上部スプロケット17が回転し、当該連結チェーン14を介して複数の踏段11が案内レール(図示せず)にガイドされながら下部機械室12と上部機械室13との間を循環移動する。なお、
図1においては、駆動装置18が上部スプロケット17に連結されているが、当該駆動装置18は、下部スプロケット16に連結されていてもよい。
【0013】
また、トラス15の上部には、各踏段11の両側面と対向するように一対のスカートガード(図示せず)が踏段11の移動方向に沿って設置されている。この一対のスカートガード上部にそれぞれ欄干19が立設されている。換言すれば、欄干19は、各踏段11の両側にそれぞれ立設されている。欄干19の周囲にはベルト状のハンドレール20が装着されている。ハンドレール20は、踏段11に搭乗している乗客が把持する手すりであり、例えば駆動装置18の駆動力が伝達されることで、踏段11の移動と同期して周回する。
【0014】
エスカレータ10の乗降口(乗り口及び降り口)は下部機械室12及び上部機械室13の上部に位置し、当該乗降口には、乗降板22及び23がそれぞれ取り外し可能に設置されている。乗降板22及び23は、下部機械室12及び上部機械室13の天井に相当する。乗客は、エスカレータ10(踏段11)に乗り込む際に乗降板22の上を通行し、エスカレータ10(踏段11)から降りる際に乗降板23の上を通行する。
【0015】
上部機械室13には、駆動装置18の他に、制御装置21が設置されている。制御装置21は、エスカレータ10の運転を制御するために当該エスカレータ10に設置されている各種機器の動作を制御する。
【0016】
図2は、エスカレータ10の乗り口近辺を拡大して示す図である。
図1においては省略されていたが、
図2に示すように、欄干19は、一対のスカートガード24の上部に立設されている。また、スカートガード24には、操作盤25が設けられている。
【0017】
ここで、
図3を参照して、操作盤25の一例について説明する。
図3に示すように、操作盤25には、非常停止ボタン25aと、エスカレータ10の運転キーを挿入することが可能な第1~第3キー挿入口25b~25dが配置されている。
【0018】
非常停止ボタン25aは、運転キーを所持していない状況においてエスカレータ10の運転を非常停止することができるように設けられている。なお、誤って非常停止ボタン25aが押下されることを防止するために、当該非常停止ボタン25aには例えば乱用防止カバーが取り付けられている。
【0019】
第1キー挿入口25bは、エスカレータ10の運転を開始する(つまり、エスカレータ10を起動する)ために設けられている。第1キー挿入口25bに運転キーが挿入され、当該運転キーが左方向(つまり、「下降」の方向)に回されると、エスカレータ10の下降方向の運転が開始される。なお、エスカレータ10の下降方向の運転とは、上階側が乗り口、下階側が降り口となるようにエスカレータ10の複数の踏段11を下降方向に移動させる運転をいう。一方、第1キー挿入口25bに運転キーが挿入され、当該運転キーが右方向(つまり、「上昇」の方向)に回されると、エスカレータ10の上昇方向の運転が開始される。なお、エスカレータ10の上昇方向の運転とは、下階側が乗り口、上階側が降り口となるようにエスカレータ10の複数の踏段11を上昇方向に移動させる運転をいう。
【0020】
第2キー挿入口25cは、エスカレータ10の運転を停止するために設けられている。第2キー挿入口25cに運転キーが挿入され、当該運転キーが左方向(つまり、「停止」の方向)に回されると、エスカレータ10の運転が停止される。一方、第2キー挿入口25cに運転キーが挿入され、当該運転キーが右方向(つまり、「ブザー」の方向)に回されると、エスカレータ10に設けられているスピーカから警報音が出力される(つまり、ブザーが鳴動する)。
【0021】
第3キー挿入口25dは、エスカレータ10に設けられている照明を利用するために設けられている。第3キー挿入口25dに運転キーが挿入され、当該運転キーが右方向(つまり、「点灯」の方向)に回されると、照明が点灯する。一方、第3キー挿入口25dに運転キーが挿入され、当該運転キーが左方向(つまり、「消灯」の方向)に回されると、照明が消灯する。
【0022】
なお、上記した操作盤25は制御装置21と接続されており、エスカレータ10(の動作)は、当該操作盤25に対する操作(非常停止ボタン25aを押下する操作及び第1~第3キー挿入口25b~25dに運転キーを挿入して左右方向に回す操作)に従って、制御装置21により制御される。
【0023】
ところで、例えば商業施設等にはエスカレータ10が設置されているが、当該商業施設の営業開始時には、当該商業施設の管理者(施設管理者)が操作盤25に配置されている第1キー挿入口25bに運転キーを挿入してエスカレータ10の運転を開始する(エスカレータ10を起動する)必要がある。同様に、商業施設の営業終了時には、施設管理者が操作盤25に配置されている第2キー挿入口25cに運転キーを挿入してエスカレータ10の運転を停止する必要がある。
【0024】
大型の商業施設には多台数のエスカレータ10が設置(納入)されていることが一般的であるが、上記したように運転キーを使用してエスカレータ10の運転を開始または停止する作業を多台数のエスカレータ10の全てに対して1台ずつ行うことは非常に労力がかかる。特に上記した
図2に示すような位置に操作盤25が設けられている場合には、当該操作盤25(キー挿入口)に運転キーを挿入するために毎回かがむ必要があるため、施設管理者の身体的負担が大きい。
【0025】
そこで、本実施形態においては、施設管理者が携帯(所持)する端末装置(以下、携帯端末と表記)を用いてエスカレータ10の運転を制御することが可能なエスカレータシステム(乗客コンベアシステム)について説明する。
【0026】
図4は、本実施形態に係るエスカレータシステム100の構成の一例を示す。
図4に示すように、エスカレータシステム100は、エスカレータ10及び携帯端末200を備える。なお、本実施形態においては、施設に複数台のエスカレータ10が設置されている場合を想定しているが、
図4においては、便宜的に、複数台のエスカレータ10のうちの1台のエスカレータ10のみが示されている。
【0027】
ここで、本実施形態において、エスカレータ10は、近距離無線通信を実行することが可能に構成されているものとする。具体的には、近距離無線通信としてBluetooth(登録商標)に基づく無線通信が実行される。
【0028】
この場合、エスカレータ10は、近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板(Bluetooth基板)26を備える。近距離無線通信基板26は、リレー回路27を介して制御装置21と接続されている。
【0029】
携帯端末200は、施設管理者によって使用される電子機器(情報処理装置)であって、例えばスマートフォン等によって実現される。以下の説明においては、携帯端末200がスマートフォンであるものとして説明するが、当該携帯端末200は、施設管理者が携帯することが可能であれば、例えばタブレット端末等の他の電子機器であってもよい。
【0030】
携帯端末200は、表示処理部201、操作受付部202及び通信処理部203を含む。なお、これらの各部201~203は、例えば携帯端末200が備えるCPUのようなプロセッサ(図示せず)が所定のアプリケーションプログラム(以下、運転管理アプリケーションと表記)を実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、各部201~203の一部または全てはIC(Integrated Circuit)のようなハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0031】
表示処理部201は、例えば商業施設に設置されているエスカレータ10の運転を管理するための画面(以下、運転管理画面と表記)を表示する。この運転管理画面には、携帯端末200がエスカレータ10と近距離無線通信(Bluetoothに基づく無線通信)を実行することが可能な範囲内にあること等が表示される。
【0032】
操作受付部202は、表示処理部201によって表示された運転管理画面に対する施設管理者の操作を受け付ける。なお、携帯端末200がスマートフォンである場合、操作受付部202によって受け付けられる操作は、タッチスクリーンディスプレイに表示される運転管理画面上に施設管理者の指を接触させる操作(タップ操作)等を含む。
【0033】
通信処理部203は、操作受付部202によって受け付けられた施設管理者の操作に基づいて、携帯端末200と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内に設置されているエスカレータ10の運転を開始または停止する制御信号を、当該近距離無線通信により当該エスカレータ10に送信する。
【0034】
通信処理部203によって送信された制御信号は、エスカレータ10に備えられる近距離無線通信基板26において受信され、リレー回路27を介して制御装置21に出力される。
【0035】
本実施形態において制御装置21は、上記したように携帯端末200から送信された制御信号に基づいてエスカレータ10の運転を制御する。
【0036】
以下、本実施形態に係るエスカレータシステム100の動作について説明する。まず、
図5のフローチャートを参照して、商業施設の営業開始時に複数台のエスカレータ10の運転を開始する場合における携帯端末200の処理手順の一例について説明する。すなわち、
図5に示す処理が実行される時点では、複数台のエスカレータ10の運転は全て停止しているものとする。
【0037】
ここで、複数台のエスカレータ10の運転を開始する場合、施設管理者は、携帯端末200において運転管理アプリケーションを起動する。これにより、携帯端末200上で運転管理アプリケーションが動作し、当該携帯端末200には、運転管理画面が表示される。
【0038】
図6は、運転管理画面の一例を示す。ここでは商業施設に第1エスカレータ10(1号機)及び第2エスカレータ10(2号機)を含む複数台のエスカレータ10が設置されている場合を想定している。なお、第1エスカレータ10(1号機)は1階から2階に移動する上昇方向の運転を行うべきエスカレータであり、第2エスカレータ10(2号機)は2階から3階に移動する上昇方向の運転を行うべきエスカレータであるものとする。
【0039】
この場合、
図6に示す運転管理画面210は、第1エスカレータ10の運転を管理するための第1管理領域211と、第2エスカレータ10の運転を管理するための第2管理領域212とを含む。なお、
図6においては、第1及び第2エスカレータ10以外のエスカレータ10の運転を管理するための管理領域については省略されている。
【0040】
第1管理領域211には、近距離無線通信マーク211a、第1運転開始ボタン211b、第2運転開始ボタン211c、運転停止ボタン211d及び連絡ボタン211eが配置されている。
【0041】
近距離無線通信マーク211aは、携帯端末200が第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあるか否かを通知(表示)するためのマークである。近距離無線通信マーク211aは、携帯端末200が第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にある場合に点灯し、当該近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にない場合に消灯する。
【0042】
第1運転開始ボタン211bは、第1エスカレータ10の上昇方向の運転の開始を指示するためのボタンである。
【0043】
第2運転開始ボタン211cは、第1エスカレータ10の下降方向の運転の開始を指示するためのボタンである。
【0044】
運転停止ボタン211dは、第1エスカレータ10の運転の停止を指示するためのボタンである。
【0045】
連絡ボタン211eは、例えばサービス情報センター(オペレーションセンター)に配置されているオペレータとの通話を指示するためのボタンである。
【0046】
ここでは、第1管理領域211について説明したが、第2管理領域212についても同様である。具体的には、第2管理領域212には、上記した近距離無線通信マーク211a、第1運転開始ボタン211b、第2運転開始ボタン211c、運転停止ボタン211d及び連絡ボタン211eと同様の近距離無線通信マーク212a、第1運転開始ボタン212b、第2運転開始ボタン212c、運転停止ボタン212d及び連絡ボタン212eが配置されている。
【0047】
上記した運転管理画面210が携帯端末200に表示された場合、施設管理者は、当該携帯端末200を所持した状態で、例えば第1エスカレータ10が設置されている場所に移動する。
【0048】
ここで、携帯端末200が例えば第1エスカレータ10に備えられている近距離無線通信基板26と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内に進入すると、携帯端末200は、当該近距離無線通信基板26から送信される当該近距離無線通信基板26に割り当てられている識別情報(ID)を受信することができる。携帯端末200は、このように受信された識別情報に基づいて、第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することが可能であること(つまり、通信可能な第1エスカレータ10)を検出することができる(ステップS1)。
【0049】
ステップS1において第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することが可能であることが検出されると、表示処理部201は、上記した運転管理画面を更新する(ステップS2)。
【0050】
この場合、上記した
図6に示す運転管理画面210は
図7に示す運転管理画面210に更新され、当該運転管理画面210においては、第1管理領域211に配置されている近距離無線通信マーク211aが点灯する。これによれば、施設管理者は、携帯端末200が第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することができる範囲内にあることを容易に把握することができる。
【0051】
ステップS2の処理が実行されると、施設管理者は、運転管理画面210を介して、第1エスカレータ10の運転の開始を指示する操作(以下、運転開始操作と表記)を行うことができる。このような運転開始操作は、操作受付部202によって受け付けられる(ステップS3)。
【0052】
ここで、ステップS3において受け付けられた運転開始操作が運転管理画面210に含まれる第1管理領域211に配置されている第1運転開始ボタン211bに対するタップ操作であるものとすると、通信処理部203は、当該運転開始操作に基づいて、第1エスカレータ10の上昇方向の運転を開始する制御信号(以下、運転開始信号と表記)を近距離無線通信により第1エスカレータ10に送信する(ステップS4)。
【0053】
ステップS4において送信された運転開始信号は、第1エスカレータ10に備えられている近距離無線通信基板26において受信される。第1エスカレータ10に備えられている制御装置21は、近距離無線通信基板26において受信された運転開始信号をリレー回路27を介して取得し、当該運転開始信号に基づいて第1エスカレータ10の上昇方向の運転を開始する。
【0054】
なお、上記したように運転管理画面210において運転開始操作が行われた場合、当該運転開始操作が行われたことを示す運転開始操作情報が操作履歴として携帯端末200内に保持される。なお、上記したように運転開始操作が行われることによって第1エスカレータ10の運転が開始されるため、運転開始操作情報は、当該第1エスカレータ10が運転中であることを示す運転状態情報であるといえる。
【0055】
このような運転開始操作情報によれば、表示処理部201は、
図8に示すように運転管理画面210において第1管理領域211に配置されている第1運転開始ボタン211bを点灯させ、第1エスカレータ10が運転中であることを継続的に表示することができる。
【0056】
なお、ここでは第1運転開始ボタン211bを点灯させることによって第1エスカレータ10が運転中であることを表示するものとして説明したが、例えば運転管理画面210に含まれる第1管理領域211中に運転中マーク(図示せず)を別途設け、当該運転中マークを点灯させることによって当該第1エスカレータ10が運転中であることを表示してもよい。いずれの場合であっても、操作開始時点に運転中であるか否か表示できる手段であればよい。
【0057】
詳しい説明を略するが、上記したように第1エスカレータ10の運転が開始されると、施設管理者は、例えば第2エスカレータ10(に備えられている近距離無線通信基板26)と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内に移動して、運転管理画面210上で運転開始操作(第2管理領域212に配置されている第1運転開始ボタン212bに対するタップ操作)を行うことによって、当該第2エスカレータ10の運転を開始することができる。
【0058】
ここでは第1及び第2エスカレータ10の運転が開始される場合について説明したが、当該第1及び第2エスカレータ10以外のエスカレータ10についても同様に携帯端末200から運転を開始することができる。
【0059】
次に、
図9のフローチャートを参照して、商業施設の営業終了時に複数台のエスカレータ10の運転を停止する場合における携帯端末200の処理手順の一例について説明する。すなわち、
図9に示す処理が実行される時点では、複数台のエスカレータ10は運転中であるものとする。
【0060】
ここで、複数台のエスカレータ10の運転を停止する場合、施設管理者は、携帯端末200において運転管理アプリケーションを起動する。これにより、携帯端末200上で運転管理アプリケーションが動作し、当該携帯端末200には、
図10に示す運転管理画面が表示される。なお、
図10においては、
図6等と同一の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
上記したように運転開始操作情報が携帯端末200内に保持されていることにより、
図10に示す運転管理画面210においては、第1管理領域211に配置されている第1運転開始ボタン211bが点灯しており、第1エスカレータ10が上昇方向の運転中であることが表示されている。同様に、運転管理画面210においては、第2管理領域212に配置されている第1運転開始ボタン212bが点灯しており、第2エスカレータ10が上昇方向の運転中であることが表示されている。
【0062】
ここで、施設管理者が携帯端末200を所持したまま第1エスカレータ10が設置されている場所に移動すると、上記した
図5に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS11及びS12の処理が実行される。この場合、
図10に示す運転管理画面210は
図11に示す運転管理画面210に更新され、当該運転管理画面210においては、第1管理領域211に配置されている近距離無線通信マーク211aが点灯する。
【0063】
ステップS12の処理が実行されると、施設管理者は、運転管理画面210を介して、第1エスカレータ10の運転の停止を指示する操作(以下、運転停止操作と表記)を行うことができる。なお、この場合における運転停止操作は、運転管理画面210に含まれる第1管理領域211に配置されている運転停止ボタン211dに対するタップ操作を含む。このような運転停止操作は、操作受付部202によって受け付けられる(ステップS13)。
【0064】
通信処理部203は、ステップS13において受け付けられた運転停止操作に基づいて、第1エスカレータ10の運転を停止する制御信号(以下、運転停止信号と表記)を近距離無線通信により第1エスカレータ10に送信する(ステップS14)。
【0065】
ステップ14において送信された運転停止信号は、第1エスカレータ10に備えられている近距離無線通信基板26において受信される。第1エスカレータ10に備えられている制御装置21は、近距離無線通信基板26において受信された運転停止信号をリレー回路27を介して取得し、当該運転停止信号に基づいて第1エスカレータ10の運転を停止する。
【0066】
なお、上記したように運転管理画面210において運転停止操作が行われた場合、当該運転停止操作が行われたことを示す運転停止操作情報が操作履歴として携帯端末200内に保持される。なお、上記したように運転停止操作が行われることによって第1エスカレータ10の運転が停止されるため、運転停止操作情報は、当該第1エスカレータ10の運転中でないことを示す運転状態情報であるといえる。
【0067】
このような運転停止操作情報によれば、表示処理部201は、
図12に示すように運転管理画面210において第1管理領域211に配置されている第1運転開始ボタン211bを消灯させ、第1エスカレータ10が運転中でないことを表示することができる。
【0068】
なお、第1エスカレータ10が運転中でないことは、上記したように第1管理領域211中に別途設けられた運転中マークを消灯させることによって表示されてもよい。
【0069】
詳しい説明を省略するが、上記したように第1エスカレータ10の運転が停止されると、施設管理者は、例えば第2エスカレータ10(に備えられている近距離無線通信基板26)と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内に移動して、運転管理画面210上で運転停止操作(第2管理領域212に配置されている運転停止ボタン212dに対するタップ操作)を行うことによって、当該第2エスカレータ10の運転を停止することができる。
【0070】
ここでは、第1及び第2エスカレータ10の運転が停止される場合について説明したが、当該第1及び第2エスカレータ10以外のエスカレータ10についても同様に携帯端末200から運転を停止することができる。
【0071】
上記したように本実施形態において、施設に設置された複数台のエスカレータ10(乗客コンベア)の各々は、近距離無線通信を実行するための近距離無線通信基板26を含み、携帯端末200は、当該携帯端末200が複数台のエスカレータ10のうちの例えば第1エスカレータ10と近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを表示し、当該第1エスカレータ10の運転の開始または停止を指示する操作を受け付け、当該受け付けられた操作に基づいて、第1エスカレータ10の運転を開始または停止する制御信号を近距離無線通信により当該第1エスカレータ10に送信する。第1エスカレータの運転は、このように携帯端末200から送信された制御信号に基づいて制御される。
【0072】
なお、本実施形態における近距離無線通信基板26はBluetooth基板を含み、本実施形態においては、複数台のエスカレータ10の各々と携帯端末200との間でBluetoothに基づく無線通信が実行される場合を想定している。
【0073】
本実施形態においては、上記した構成により、施設管理者は携帯端末200を操作することによって複数台のエスカレータ10の各々の運転を開始または停止することが可能であるため、上記したように運転キーを使用して1台ずつ作業を行う場合と比較して、施設管理者の負担を軽減することができる。
【0074】
また、本実施形態は、例えば既設のエスカレータ10本体をネットワークに接続するような作業が不要であり、既設のエスカレータ10に近距離無線通信基板26(及びリレー回路27)を追加することによって容易に実現することが可能である。
【0075】
更に、本実施形態においては、運転開始操作情報及び運転停止操作情報を保持しておき、第1エスカレータ10が運転中であるか否か(つまり、操作履歴に基づく運転状態)を表示する構成により、例えば第1エスカレータ10から離れた場所であっても当該第1エスカレータ10の運転を開始または停止したことを確認することができる。これによれば、施設に設置されている複数台のエスカレータ10の運転状態を容易に把握する(一括して管理する)ことが可能となり、運転の開始または停止をし忘れるといった事態を回避することができるため、複数台のエスカレータ10の管理の効率及び精度を向上させることができる。
【0076】
また、エスカレータ10の運転の開始または停止は、当該エスカレータ10の周辺の安全性を確認した上で行う必要がある。例えば遠隔地からエスカレータ10の運転の開始または停止を行う場合におけるエスカレータ10の周辺の安全性の確認は例えば監視カメラ等を設置することによって実現することができるが、このような監視カメラの設置はエスカレータシステム100の導入コストの増大の要因となる。これに対して、本実施形態においては、複数台のエスカレータ10の各々と携帯端末200との間で近距離無線通信を実行する構成とすることにより、複数台のエスカレータ10の各々の近傍に移動して安全性を確認した上で運転開始操作または運転停止操作を行うことを施設管理者に促すことができる。これによれば、本実施形態においては、上記したような導入コストを抑制しながら、危険な状態でエスカレータ10の運転を開始または停止するような事態を避けることができる。
【0077】
また、本実施形態における運転管理画面には複数のエスカレータ10の各々の運転を管理する管理領域毎に連絡ボタンが配置されており、施設管理者は、例えば第1エスカレータ10の運転を適切に開始または停止することができないような場合には、当該第1エスカレータ10の運転を管理する第1管理領域211に配置されている連絡ボタン211eに対するタップ操作(以下、連絡操作と表記)を行うことができる。このような連絡操作が携帯端末200に含まれる操作受付部202によって受け付けられた場合には、施設管理者は、当該携帯端末200を使用してオペレータと通話することができる。
【0078】
なお、上記したように第1エスカレータ10を管理するための第1管理領域211に配置されている連絡ボタン211eに対するタップ操作(連絡操作)が行われた場合には、当該第1エスカレータ10を識別するための識別情報(例えば、1号機等の情報)をオペレータによって使用されるオペレータ端末に送信する(つまり、当該識別情報がオペレータ端末に表示される)構成としてもよい。これによれば、連絡(問い合わせ等)の対象となるエスカレータ10を事前にオペレータに知らせることができるため、施設管理者とオペレータとの通話を円滑に行うことができるようになる。
【0079】
更に、複数台のエスカレータ10の各々には危険防止のために当該エスカレータ10の異常を検知して当該エスカレータの運転を自動的に停止する(非常停止する)ように動作する安全装置が設けられているが、例えばUSBコネクタ等を介して当該安全装置の動作履歴等の情報を当該エスカレータ10から取得するように構成された携帯コンソールと称される機器が知られている。このように携帯コンソールによって取得される情報はBluetoothのような近距離無線通信で送信可能であるため、本実施形態における携帯端末200に当該携帯コンソールの機能を付加しても構わない。
【0080】
ところで、本実施形態においては携帯端末200から施設に設置されている複数台のエスカレータ10の運転を開始または停止する場合を想定しているが、当該大型の商業施設の場合には設置されているエスカレータ10の数が多く、例えば複数の施設管理者で当該複数のエスカレータ10の運転を開始または停止することが考えられる。
【0081】
この場合、複数台のエスカレータ10の運転を効率的に開始または停止するためには、例えば当該複数台のエスカレータ10の各々の運転状態を当該複数の施設管理者間で共有する必要がある。
【0082】
ここで、
図13を参照して、複数台のエスカレータ10の各々の運転状態を複数の施設管理者間で共有するエスカレータシステム100の動作の概要について説明する。なお、
図13においては、複数台のエスカレータ10として、第1エスカレータ10a及び第2エスカレータ10bが示されている。
【0083】
まず、例えば第1施設管理者M1が第1携帯端末200aを操作することによって施設に設置されている第1エスカレータ10aの運転を開始する場合を想定する。この場合、第1施設管理者M1は、第1エスカレータ10aと近距離無線通信を実行することが可能な範囲内に移動して、第1携帯端末200aに表示される運転管理画面210上で第1エスカレータ10aの運転の開始を指示する運転開始操作を行うことによって、当該第1エスカレータ10aの運転を開始することができる。なお、第1携帯端末200aに表示される運転管理画面210及び当該運転管理画面210上で行われる運転開始操作については上記した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0084】
この場合、第1エスカレータ10aの運転の開始を指示する運転開始操作が行われたことを示す運転開始操作情報が第1携帯端末200a内に保持され、第1携帯端末200aに表示される運転管理画面210においては、第1エスカレータ10aの運転を管理するための第1管理領域211に配置されている例えば第1運転開始ボタン211bが点灯する。
【0085】
ここで、第1携帯端末200aは、例えばスマートフォン等であり、LTE(Long Term Evolution)または5G等の通信規格に基づくモバイルネットワーク300に接続可能である。また、エスカレータシステム100においては、例えば各施設に設置されている複数台のエスカレータ10を管理するサーバ装置(以下、総合管理サーバと表記)400が用意されている。なお、総合管理サーバ400は、例えば施設の情報、当該施設に設置されているエスカレータ10の情報及び当該施設管理者の情報等を管理する。
【0086】
この場合、第1携帯端末200aは、モバイルネットワーク300を介して、上記したように第1携帯端末200a内に保持された運転開始操作情報を総合管理サーバ400に送信する(ステップS21)。総合管理サーバ400は、このように第1携帯端末200aから送信された運転開始操作情報に基づいて、第1エスカレータ10が運転中であること(つまり、当該第1エスカレータ10の運転状態)を把握することができる。
【0087】
総合管理サーバ400は、モバイルネットワーク300を介して、上記した第1携帯端末200aから送信された運転開始操作情報を、第1施設管理者M1とは異なる第2施設管理者M2が所持する第2携帯端末200bに送信する(ステップS22)。
【0088】
この場合、第2携帯端末200bは、総合管理サーバ400から送信された運転開始操作情報を受信し、当該運転開始操作情報を当該第2携帯端末200bの運転管理画面210に反映(表示)する。この場合、第2携帯端末200bの運転管理画面210においては、第1エスカレータ10aの運転を管理するための第1管理領域211に配置されている第1運転開始ボタン211bが点灯する。
【0089】
これによれば、第2施設管理者M2は、例えば第1エスカレータ10とは異なる場所にいる場合であっても、当該第1エスカレータ10の運転の開始を指示する運転開始操作が行われたこと(つまり、当該第1エスカレータ10が運転中であること)を把握することができる。すなわち、このような構成であれば、例えば第1エスカレータ10aが既に運転中であるにもかかわらず、第2施設管理者が当該第1エスカレータ10aの運転を開始するために第1エスカレータ10aの場所に移動するようなことを回避することができる。
【0090】
ここでは第1エスカレータ10aの運転が開始される場合について説明したが、第2エスカレータ10bの運転が開始される場合についても同様である。具体的には、第2施設管理者M2によって第2エスカレータ10bの運転の開始を指示する運転開始操作が行われた場合、当該運転開始操作を示す運転開始操作情報は、モバイルネットワーク300を介して、第2携帯端末200bから総合管理サーバ400に送信され、当該総合管理サーバ400から第1携帯端末200aに送信され、当該第1携帯端末200aの運転管理画面210に反映(表示)される。これによれば、第1施設管理者M1は、例えば第2エスカレータ10bとは異なる場所にいる場合であっても、当該第2エスカレータ10bの運転の開始を指示する運転開始操作が行われたこと(つまり、当該第2エスカレータ10bが運転中であること)を把握することができる。すなわち、このような構成であれば、例えば第2エスカレータ10bが既に運転中であるにもかかわらず、第1施設管理者が当該第2エスカレータ10bの運転を開始するために第2エスカレータ10bの場所に移動するようなことを回避することができる。
【0091】
なお、ここでは運転開始操作が行われた場合について説明したが、運転停止操作が行われた場合には、上記した運転開始操作情報を運転停止操作情報として同様に動作すればよい。
【0092】
本実施形態においては、上記したように施設に設置されている複数台のエスカレータ10に対する操作情報(運転状態)をリアルタイムで複数の携帯端末200(に表示される運転管理画面210)に反映することにより、複数台のエスカレータ10の各々をモバイルネットワーク300等に接続することなく、当該複数台のエスカレータ10の運転状態の見える化を実現することができる。これによれば、施設管理者による複数台のエスカレータ10の運転を開始または停止する作業の効率を向上させることができる。
【0093】
更に、本実施形態における運転管理アプリケーションが例えば複数のメーカによって製造されるエスカレータ10に対応するように実装されている場合には、施設に複数のメーカによって製造されるエスカレータ10が設置されているような環境において複数の運転キーを管理する手間を軽減することが可能となる。
【0094】
なお、本実施形態においては上記したように携帯端末200(第1携帯端末200a及び第2携帯端末200b)において行われた運転開始操作情報及び運転停止操作情報が当該携帯端末200内に保持されるものとして説明したが、当該運転開始操作情報及び運転停止操作情報(操作履歴)を用いてデータベースを構築し、当該データベースをエスカレータ10の保守やその他の処理に利用してもよい。
【0095】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係るエスカレータシステムの構成については前述した第1実施形態と同様であるため、本実施形態に係るエスカレータシステムの説明においては、適宜、前述した
図1~
図4等を用いる。
【0096】
前述した第1実施形態において説明したように複数台のエスカレータ10の各々には安全装置が設けられているが、本実施形態は、当該複数台のエスカレータ10に当該安全装置の動作を監視する遠隔監視装置が更に設けられている点で、当該第1実施形態とは異なる。なお、遠隔監視装置は、安全装置の動作を含む例えばエスカレータ10の各種状態を監視するように構成されている。
【0097】
以下、
図14を参照して、本実施形態に係るエスカレータシステム100の動作の概要について説明する。
図14においては、前述した
図13と同一の部分には同一の参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0098】
本実施形態において、第1エスカレータ10aには、第1遠隔監視装置28aが設けられている。同様に、第2エスカレータ10bには、第2遠隔監視装置28bが設けられている。第1遠隔監視装置28a及び第2遠隔監視装置28bは、モバイルネットワーク300を介して、遠隔監視サーバ500と通信可能に接続されている。遠隔監視サーバ500は、施設に設置されている複数台のエスカレータ10の状態を監視するためのサーバ装置であり、更に総合管理サーバ400と接続されている。
【0099】
ここで、第1エスカレータ10a及び第2エスカレータ10bが運転中である場合を想定する。この場合において第1エスカレータ10aに設けられている安全装置(以下、第1安全装置と表記)が動作したものとすると、当該第1安全装置が動作したことが当該第1エスカレータ10aに設けられている第1遠隔監視装置28aによって検出される。
【0100】
上記したように第1遠隔監視装置28aによって第1安全装置が動作したことが検出された場合、モバイルネットワーク300を介して、当該第1安全装置が動作したことを示す安全装置動作情報が当該第1遠隔監視装置28aから遠隔監視サーバ500に送信される(ステップS31)。
【0101】
更に、遠隔監視サーバ500は、第1遠隔監視装置28aから送信された安全装置動作情報を総合管理サーバ400に送信する(ステップS32)。
【0102】
このような安全装置動作情報により、総合管理サーバ400及び遠隔監視サーバ500は、第1安全装置が動作することによって第1エスカレータ10aの運転が非常停止されたことを把握することができる。この場合、遠隔監視サーバ500は、第1安全装置が動作したことによって第1エスカレータ10aの運転が停止されたことを例えば保守員等に通知することができる。
【0103】
次に、総合管理サーバ400は、モバイルネットワーク300を介して、安全装置動作情報を第1携帯端末200aに送信する(ステップS33)。
【0104】
この場合、第1携帯端末200aは、総合管理サーバ400から送信された安全装置動作情報を受信し、当該安全装置動作情報を当該第1携帯端末200aの運転管理画面に反映(表示)する。
【0105】
ここで、
図15は、本実施形態における運転管理画面の一例を示す。なお、
図15においては、前述した
図6等と同一の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0106】
図15に示すように、本実施形態における運転管理画面210に含まれる第1管理領域211には、安全装置マーク211fが更に配置されている。同様に、運転管理画面210に含まれる第2管理領域212には、安全装置マーク212fが更に配置されている。なお、詳しい説明においては省略するが、
図15に示す運転管理画面210(第1管理領域211及び第2管理領域212)においては、第1エスカレータ10a及び第2エスカレータ10bが運転中であることが示されている。
【0107】
ここで、上記したように第1安全装置が動作したことを示す安全装置動作情報が運転管理画面210に反映されると、上記した
図15に示す運転管理画面210は、
図16に示す運転管理画面210に更新される。この場合、運転管理画面210において第1管理領域211に配置されている安全装置マーク211fが点灯する。これにより、第1施設管理者M1は、第1安全装置が動作することによって第1エスカレータ10aの運転が非常停止されたことを容易に把握することができる。
【0108】
同様に、総合管理サーバ400は、モバイルネットワーク300を介して、安全装置動作情報を第2携帯端末200bに送信する(ステップS34)。
【0109】
この場合、第2携帯端末200bは、総合管理サーバ400から送信された安全装置動作情報を受信し、当該安全装置動作情報を当該第2携帯端末200bの運転管理画面に反映(表示)する。この場合、第2携帯端末200bには上記した
図16に示す運転管理画面210と同様の画面が表示されるため、第2施設管理者M2は、第1安全装置が動作することによって第1エスカレータ10aの運転が非常停止されたことを容易に把握することができる。
【0110】
ここでは第1エスカレータ10aに設けられている第1安全装置が動作した場合について説明したが、例えば第2エスカレータ10に設けられている安全装置(以下、第2安全装置と表記)が動作した場合についても同様である。詳しい説明については省略するが、第2安全装置が動作した場合には、第1携帯端末200a及び第2携帯端末200bの運転管理画面210において第2管理領域212に配置されている安全装置マーク212fが点灯する。
【0111】
なお、第1携帯端末200a及び第2携帯端末200b上で運転開始操作または運転停止操作が行われた場合の動作については、前述した第1実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0112】
上記したように本実施形態において、複数台のエスカレータ10の各々は安全装置の動作を監視する遠隔監視装置を含み、携帯端末200は、当該安全装置が動作したこと(を示す安全装置動作情報)を表示することができる。
【0113】
前述した第1実施形態においては複数台のエスカレータ10の各々に設けられている安全装置が動作することによる当該エスカレータ10の運転の停止を運転管理画面において把握することはできないが、本実施形態においては、上記した構成により、当該安全装置が動作することによるエスカレータ10の運転の停止を容易に把握することができる。
【0114】
なお、上記したように安全装置が動作した場合には運転管理画面における安全装置マークが点灯されるが、当該安全装置マークは、例えば施設管理者によって確認されるまで継続して点灯するものとする。この場合、安全装置マークは、例えば対応するエスカレータ10の運転が施設管理者によって再開されたタイミングで消灯してもよいし、当該施設管理者の操作に応じて消灯してもよい。ただし、安全装置には例えば踏段11とスカートガード24との間に異物が挟まることにより動作するもの、インレット(ハンドレール20の入り込み口)に手や異物が挟まることにより動作するもの、連結チェーン14等の切断により動作するものがあるが、安全装置マークが点灯及び消灯するタイミングや当該安全装置マークが点灯した際の色彩等は、動作した安全装置の種類に応じて異なっていてもよい。
【0115】
また、上記した遠隔監視装置は前述した運転キーを使用したエスカレータ10の運転の開始または停止を検出することも可能であるため、本実施形態においては、当該運転キーを使用した第3者によるエスカレータ10の運転の開始または停止(を示す情報)を運転管理画面に表示してもよい。更に、本実施形態における運転管理画面には、遠隔監視装置において検出される他の情報が表示されても構わない。
【0116】
なお、本実施形態において第1携帯端末200a及び第2携帯端末200bは、モバイルネットワーク300(総合管理サーバ400及び遠隔監視サーバ500)経由で第1エスカレータ10aに設けられている第1遠隔監視装置28a及び第2エスカレータ10bに設けられている第2遠隔監視装置28bと通信可能に接続されているといえる。このため、運転開始信号または運転停止信号をモバイルネットワーク300を介して例えば第1携帯端末200aから第1遠隔監視装置28aに送信した場合でも、当該第1遠隔監視装置28aが設けられている第1エスカレータ10aの運転を開始または停止することができると考えられる。
【0117】
しかしながら、この場合にはエスカレータ10の周辺の安全性を確認することなく当該エスカレータ10の運転が開始または停止される可能性があるため、本実施形態においては、当該エスカレータ10の運転を開始または停止する際の安全性を確保するための制約として、前述した第1実施形態と同様に、近距離無線通信により運転開始信号または運転停止信号をエスカレータ10に送信する構成を採用するものとする。
【0118】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、施設管理者の負担を軽減することが可能な乗客コンベアシステム及び制御方法を提供することができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
10,10a,10b…エスカレータ(乗客コンベア)、11…踏段、12…下部機械室、13…上部機械室、14…連結チェーン、15…トラス、16…下部スプロケット、17…上部スプロケット、18…駆動装置、19…欄干、20…ハンドレール、21…制御装置、22,23…乗降板、24…スカートガード、25…操作盤、26…近距離無線通信基板、27…リレー回路、28a,28b…遠隔監視装置、100…エスカレータシステム(乗客コンベアシステム)、200,200a,200b…携帯端末、201…表示処理部、202…操作受付部、203…通信処理部、300…モバイルネットワーク、400…総合管理サーバ、500…遠隔監視サーバ。
【要約】
【課題】管理者の負担を軽減することが可能な乗客コンベアシステム及び制御方法を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る乗客コンベアシステムは、施設に設置された複数台の乗客コンベアと施設の第1管理者によって使用される第1携帯端末とを具備する。複数台の乗客コンベアの各々は、近距離無線通信基板を含む。第1携帯端末は、第1携帯端末が複数台の乗客コンベアのうちの第1乗客コンベアと近距離無線通信を実行することが可能な範囲内にあることを表示する表示処理手段と、第1乗客コンベアの運転の開始または停止を指示する第1操作を受け付ける操作受付手段と、第1操作に基づいて第1乗客コンベアの運転を開始または停止する制御信号を近距離無線通信により第1乗客コンベアに送信する第1送信手段とを含む。第1乗客コンベアの運転は、制御信号に基づいて制御される。
【選択図】
図4