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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240610BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B66B3/00 Z
B66B3/00 L
B66B1/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023110675
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佑樹
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-085442(JP,A)
【文献】特開2015-013732(JP,A)
【文献】特開2020-019649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置が設置された乗りかごと、
利用者による呼び情報の登録に応じて、前記乗りかごの運転を制御するエレベータ制御手段と、
前記利用者による前記乗りかごの利用履歴を示す履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段と、
前記履歴情報に基づき、前記利用者によって希望される映像コンテンツを前記表示装置に配信するための配信権限を前記利用者に付与する配信権限付与手段と、
前記配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツを前記表示装置に配信する配信制御手段と、
を備えることを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記履歴情報は、前記利用者が前記乗りかごに乗車した回数を示し、
前記配信権限付与手段は、
前記履歴情報によって示される前記利用者による乗車回数が予め設定された閾値以上の場合に、前記配信権限を前記利用者に付与することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記乗りかごには、カメラがさらに設置され、
前記履歴情報は、前記カメラによって撮影された画像に基づき、前記利用者が前記乗りかごに乗車したことが検知された場合に、前記利用者による乗車回数をカウントアップするように更新されることを特徴とする、
請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記配信権限は、前記利用者によって希望される映像コンテンツを、所定回数あるいは所定期間の間、前記表示装置に配信するための権限であることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記配信制御手段は、
前記乗りかごの状況が、前記配信権限が付与された利用者によって設定された配信条件を満たす場合に、前記利用者によって希望される映像コンテンツを前記表示装置に配信することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記配信条件は、前記配信権限が付与された利用者以外の他の利用者によって登録された行先階に関する条件と、前記配信権限が付与された利用者が前記他の利用者と同乗することの要否に関する条件とのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする、
請求項5に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗りかご内にサイネージが設けられたエレベータが普及してきている。サイネージには、例えば広告やニュース等が配信され、乗りかごに乗車した利用者に様々な情報を提供することができる。
【0003】
ところで、このようなサイネージに広告などの映像コンテンツを配信するためには、サイネージに映像コンテンツを配信するための権限(配信権限)を購入する必要がある。この配信権限は主に企業によって購入され、サイネージには、当該企業の商品やサービスをプロモーションするための広告が配信されることが多い。
【0004】
このように、サイネージを利用した広告配信は、企業による利用が多く、個人での利用は普及していないといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4951656号公報
【文献】特開2004-062419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、個人でも容易に、乗りかご内に設けられたサイネージに広告などの映像コンテンツを配信することが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、表示装置が設置された乗りかごと、利用者による呼び情報の登録に応じて、前記乗りかごの運転を制御するエレベータ制御手段と、前記利用者による前記乗りかごの利用履歴を示す履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段と、前記履歴情報に基づき、前記利用者によって希望される映像コンテンツを前記表示装置に配信するための配信権限を前記利用者に付与する配信権限付与手段と、前記配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツを前記表示装置に配信する配信制御手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、同実施形態における申請情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3図3は、同実施形態における履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。
図4図4は、同実施形態におけるエレベータシステムによって実行される一連の処理を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、同実施形態におけるエレベータシステムによって実行される別の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、本実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口上部にはカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向に向けて設置されている。カメラ12は、例えば魚眼レンズ等の超広角レンズを有し、180度以上の視野角で乗りかご11内を含む撮影対象を広範囲に撮影する。カメラ12は、1秒間に数コマ(例えば、30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。
【0011】
なお、カメラ12の設置場所は、かごドア13付近であれば、乗りかご11の出入口上部でなくてもよい。例えば、乗りかご11の出入口に近い天井面など、乗りかご11内の床面全域を含むかご室内全体と戸開時に出入口付近の乗場15を撮影可能な場所であればよい。
【0012】
乗りかご11には、かご室内表示装置14(例えば、サイネージ)が設けられている。詳細については後述するが、かご室内表示装置14には、配信権限が付与された利用者が配信したい映像コンテンツを表示させることができる。なお、かご室内表示装置14は、いわゆるタッチパネル機能を有した表示装置であってもよい。
【0013】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア16が設置されている。乗場ドア16は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア16はかごドア13に追従して開閉するだけである。
【0014】
エレベータ制御装置30は、他の装置(例えば、後述する利用者検知装置20やクラウドサーバ40など)と通信するための通信機能を有している。エレベータ制御装置30は、利用者によって登録された呼び情報に応答して乗りかご11の運転を制御する。
【0015】
本実施形態において、利用者は、乗場15に設置された図示せぬ乗場ボタンを用いて、当該乗場ボタンの設置階に乗りかご11を応答させる呼び情報を登録し、乗りかご11に設置された図示せぬ行先階ボタンを用いて、押下した行先階ボタンに対応する階床に乗りかご11を応答(移動)させる呼び情報を登録してもよい。あるいは、利用者は、自身の携帯端末3(例えば、スマートフォンやタブレット端末など)に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーション(以下、呼び登録アプリと表記)を用いて、乗車情報(乗車階と行先階)を含む呼び情報を登録してもよい。さらに、利用者は、乗場15に設置された図示せぬ乗場行先階登録装置(HDC: Hall Destination Controller)を用いて、上述した乗車情報を含む呼び情報を登録してもよい。
【0016】
なお、エレベータ制御装置30は、乗りかご11の運転制御の他にも、乗りかご11が乗車階や行先階に到着した時のかごドア13の戸開閉制御や、乗りかご11内の照明機器の点灯制御などを行う。
【0017】
本実施形態において、利用者は、かご室内表示装置14に所望の映像コンテンツを配信するために必要な配信権限の付与(配信権限の購入)を、クラウドサーバ40に希望することができる。例えば、利用者は、自身の携帯端末3を用いて、配信権限の付与を希望する旨の申請情報をクラウドサーバ40に送信する。詳細については後述するが、クラウドサーバ40は、受信された申請情報によって示される利用者が所望の条件を満たす場合に、当該利用者に上述した配信権限を付与する。なお、上述した申請情報には、配信権限の付与を希望した利用者を識別するためのユーザIDとして、携帯端末3の端末IDが少なくとも含まれることが望ましい。
【0018】
利用者検知装置20は、他の装置(例えば、カメラ12やエレベータ制御装置30など)と通信するための通信機能を有している。利用者検知装置20は、カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)をリアルタイムに解析する処理を実行する。このため、利用者検知装置20は、画像処理装置または画像解析装置と称されても構わない。図1に示すように、利用者検知装置20は、記憶部21と、利用者識別部22とを備えている。
【0019】
記憶部21には、カメラ12によって撮影された画像が逐次記憶される。また、記憶部21には、利用者識別部22の処理に必要なデータとして、配信権限の付与を希望した利用者の属性情報が予め記憶(保持)される。属性情報は、例えば、利用者の性別、利用者の年齢、利用者の顔画像など、利用者の特徴を示す情報である。
【0020】
利用者識別部22は、カメラ12によって撮影された画像に映る利用者が、配信権限の付与を希望した利用者であるかどうかを判別する処理を実行する。より詳しくは、利用者識別部22は、カメラ12によって撮影された画像と、記憶部21に予め記憶された属性情報とを照合し、当該画像に映る利用者の特徴が、当該属性情報によって示される配信権限の付与を希望した利用者の特徴と一致するかどうかに基づき、当該画像に映る利用者が配信権限の付与を希望した利用者であるかどうかを判別する。なお、利用者識別部22による上述した処理の結果は、エレベータ制御装置30を介して、クラウドサーバ40に通知される。
【0021】
クラウドサーバ40は、エレベータシステム1の関連企業によって構築されるクラウド上に設けられたサーバである。クラウドサーバ40は、上述した申請情報を受信する処理や、配信権限の付与を希望した利用者に配信権限を付与する処理、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信する処理などを実行する。
【0022】
図1に示すように、クラウドサーバ40は、申請情報記憶部41と、履歴情報記憶部42と、乗車回数カウント部43と、配信権限付与部44と、コンテンツ配信制御部45と、などを備えている。
【0023】
申請情報記憶部41は、利用者の携帯端末3から送信された申請情報を記憶している。ここで、図2を参照して、申請情報のデータ構造の一例を説明する。
【0024】
図2は、申請情報のデータ構造の一例を示す図である。図2に示すように、申請情報は、ユーザIDと、配信希望コンテンツと、配信条件とを対応づけて含む情報である。なお、申請情報のデータ構造は、図2に示したデータ構造に限られず、さらに別の情報が対応づけられてもよいし、図2に示した各種情報の一部が省略されてもよい。
【0025】
ユーザIDは、配信権限の付与を希望した利用者を識別するための情報であり、上述したように、当該申請情報を送信した携帯端末3の端末IDがこれに相当する。
【0026】
配信希望コンテンツは、配信権限の付与を希望した利用者がかご室内表示装置14に配信したい映像コンテンツである。なお、ここでは、配信希望コンテンツが、配信権限の付与を希望する利用者により申請情報としてクラウドサーバ40にアップロードされる場合を想定するが、これに限定されず、配信希望コンテンツは、上述した申請情報とは別に、配信権限の付与を希望する利用者によりアップロードされてもよいし、当該利用者から配信希望コンテンツのアップロードを委託された第三者(例えば、配信権限の付与を希望する利用者が配信したい映像コンテンツの著作権を保有する著作権者、配信権限の付与を希望する利用者が配信したい映像コンテンツを管理する団体(芸能事務所)など)によりアップロードされてもよい。
【0027】
配信条件は、配信希望コンテンツをかご内表示装置14に配信する際の乗りかご11の状況に関する条件であり、例えば、配信権限が付与された利用者以外の他の利用者によって登録された行先階に関する条件や、配信権限が付与された利用者が他の利用者と同乗することの要否に関する条件、などを含む。なお、ここでは、配信条件が、配信権限の付与を希望する利用者により申請情報として設定される場合を想定するが、これに限定されず、配信条件は、上述した申請情報とは別に設定されても構わない。例えば、配信条件は、配信権限の付与を既に希望した利用者が乗りかご11に乗車した後に、クラウドサーバ40から送信される問い合わせ(例えば、「先程乗車した条件で配信条件を設定しますか?」など)に、当該利用者が回答する形で設定されてもよい。
【0028】
例えば、図2に示す申請情報d1によれば、ユーザID「U_id001」によって識別される利用者が配信権限の付与を希望し、配信権限が付与された際には、乗りかご11の「行先階が5階である」場合に「映像コンテンツC1」をかご内表示装置14に配信したいことが示される。
【0029】
また、図2に示す申請情報d2によれば、ユーザID「U_id002」によって識別される利用者が配信権限の付与を希望し、配信権限が付与された際には、乗りかご11に「自身が他の利用者と同乗している」場合に「映像コンテンツC2」をかご室内表示装置14に配信したいことが示される。
【0030】
再度図1の説明に戻る。
履歴情報記憶部42は、配信権限の付与を希望した利用者によるエレベータの利用履歴を示す履歴情報を記憶している。ここで、図3を参照して、履歴情報のデータ構造の一例を説明する。
【0031】
図3は、履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。図3に示すように、履歴情報は、ユーザIDと、乗車回数とを対応づけて含む情報である。なお、履歴情報のデータ構造は、図3に示したデータ構造に限られず、さらに別の情報が対応づけられてもよい。例えば、図3に示す履歴情報d3によれば、ユーザID「U_id001」によって識別される配信権限の付与を希望した利用者による乗りかご11の乗車回数が「10回」であることが示される。
【0032】
再度図1の説明に戻る。
乗車回数カウント部43は、配信権限の付与を希望した利用者の乗車回数をカウントする。具体的には、乗車回数カウント部43は、配信権限の付与を希望した利用者が利用者検知装置20によって検知された場合に、当該利用者の乗車回数をカウントアップするように(つまり、当該利用者の乗車回数を1回分増やすように)、当該利用者の履歴情報を更新する。
【0033】
なお、乗車回数カウント部43は、1日にカウントアップ可能な乗車回数の上限値を有していてもよい。乗車回数カウント部43は、配信権限の付与を希望する利用者の1日の乗車回数が上述した上限値に達した場合、この旨を当該利用者に通知してもよい。これによれば、配信権限の付与を希望する利用者が、配信権限を得るためだけに何度も乗りかご11に乗車し、運行効率を過度に低下させるなど、他の利用者に迷惑がかかることを防ぐことができる。
【0034】
配信権限付与部44は、配信権限の付与を希望した利用者によるエレベータの利用履歴に応じて、当該利用者に配信権限を付与する。より詳しくは、配信権限付与部44は、配信権限の付与を希望した利用者の履歴情報を参照し、当該履歴情報によって示される当該利用者の乗車回数が予め設定された閾値以上の場合に、当該利用者に配信権限を付与する。
【0035】
なお、上述した閾値は任意の値に設定することが可能である。また、配信権限の付与を希望した利用者に、どのような配信権限を付与するかについても任意に設定することが可能である。例えば、上述した閾値の値が10回に設定され、乗車回数が10回以上になる度に、配信希望コンテンツをかご室内表示装置14に1回配信可能な配信権限が付与されるとしてもよい。あるいは、上述した閾値の値が20回に設定され、乗車回数が1カ月の間に20回以上になった場合に、配信希望コンテンツをかご室内表示装置14に3回配信可能な配信権限が付与されるとしてもよい。さらに、上述した閾値の値が30回に設定され、乗車回数が30回以上になった場合に、配信希望コンテンツをかご室内表示装置14に1週間の間(但し、1日に配信可能な回数の上限値は3回)配信可能な配信権限が付与されるとしてもよい。
【0036】
以上のように、本実施形態では一例として、配信権限が、配信希望コンテンツを、所定回数あるいは所定期間の間だけ限定的に、かご室内表示装置14に配信するための権限であるものとする。
【0037】
コンテンツ配信制御部45は、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツ(配信希望コンテンツ)をかご室内表示装置14に配信する処理を実行する。より詳しくは、コンテンツ配信制御部45は、乗りかご11の状況が、配信権限が付与された利用者によって予め設定された配信条件を満たす場合に、当該利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信する処理を実行する。
【0038】
ここで、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステム1によって実行される一連の処理について説明する。図4は、配信権限の付与を希望した利用者の乗車回数をカウントし、当該利用者に配信権限を付与する処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、エレベータ制御装置30は、利用者によって登録された呼び情報によって示される乗車階に乗りかご11を応答させる(ステップS1)。
【0040】
乗りかご11が乗車階に到着し、当該乗りかご11のかごドア13が戸開すると、当該乗りかご11内に設けられたカメラ12は、乗りかご11内および乗場15にいる利用者を含む画像を撮影する。利用者検知装置20の利用者識別部22は、カメラ12によって撮影された画像を解析し、当該画像に映る利用者が、配信権限の付与を希望した利用者であるかを判別する。
【0041】
より詳しくは、まず、利用者識別部22は、カメラ12によって撮影された画像と、記憶部21に予め記憶された属性情報とを照合する。そして、利用者識別部22は、画像に映る利用者の特徴が、属性情報によって示される配信権限の付与を希望した利用者の特徴と一致するかどうかに基づき、当該画像に映る利用者が、配信権限の付与を希望した利用者であるかを判別する(ステップS2)。
【0042】
ステップS2において、カメラ12によって撮影された画像に映る利用者が、配信権限の付与を希望した利用者であると判別された場合(ステップS2のYes)、利用者検知装置20は、ステップS2の結果として、配信権限の付与を希望した利用者が乗りかご11に乗車した旨の乗車通知をエレベータ制御装置30に送信する。エレベータ制御装置30は、利用者検知装置20から送信された乗車通知を受信すると、当該乗車通知をクラウドサーバ40に送信する。なお、上述した乗車通知には、乗りかご11に乗車したことが検知された利用者であって、配信権限の付与を希望した利用者を識別するためのユーザIDが少なくとも含まれることが望ましい。
【0043】
クラウドサーバ40の乗車回数カウント部43は、エレベータ制御装置30から送信された乗車通知を受信すると、当該乗車通知によって示されるユーザIDを含む履歴情報の乗車回数を1回分カウントアップするように、当該履歴情報を更新する(ステップS3)。
【0044】
続いて、配信権限付与部44は、ステップS3において更新された履歴情報を参照し、当該履歴情報によって示される乗車回数が予め設置された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0045】
ステップS4において、履歴情報によって示される乗車回数が閾値以上であると判定された場合(ステップS4のYes)、配信権限付与部44は、当該履歴情報に含まれるユーザIDによって識別される利用者に配信権限を付与し(ステップS5)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0046】
上述した配信権限の付与は、例えば、配信権限を付与する利用者のユーザIDを含む申請情報に、配信権限が付与されたことを識別可能なフラグを立てることで行われてもよい。これによれば、コンテンツ配信制御部45は、上述したフラグが立てられた申請情報を参照することで、配信権限が付与された利用者によって予め設定された配信条件を確認することができる。つまり、コンテンツ配信制御部45は、上述したフラグが立てられた申請情報を参照することで、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信するかどうかを判断することができる。
【0047】
なお、図4では、配信権限の付与を希望した利用者の乗車回数が、カメラ12によって撮影された画像に基づきカウントされる場合を示したが、当該利用者の乗車回数をカウントする方法はこの方法に限られない。
【0048】
例えば、配信権限の付与を希望した利用者が、呼び登録アプリを用いて呼び情報の登録を行う場合、当該利用者の乗車回数は、呼び登録アプリを用いて呼び情報を登録した回数に基づきカウントされてもよい。また、利用者は、自身の携帯端末3に表示させたQRコード(登録商標)などを、乗りかご11に設置された図示せぬ認証装置に読み込ませることで、乗りかご11に乗車したことをクラウドサーバ40に通知し、自身の乗車回数をカウントアップさせるとしてもよい。
【0049】
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステム1によって実行される別の処理について説明する。図5は、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信する処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは説明の便宜上、配信権限が付与された利用者以外の他の利用者によって呼び情報の登録が行われた場合を想定する。
【0050】
まず、エレベータ制御装置30は、他の利用者によって登録された呼び情報によって示される乗車階に乗りかご11を応答させる(ステップS11)。
【0051】
乗りかご11が乗車階に到着し、当該乗りかご11のかごドア13が戸開すると、当該乗りかご11内に設けられたカメラ12は、乗りかご11内および乗場15にいる利用者を含む画像を撮影する。利用者検知装置20の利用者識別部22は、カメラ12によって撮影された画像を解析し、配信権限の付与を希望し、配信権限が付与された利用者の有無を検知する。つまり、利用者識別部22は、配信権限が付与された利用者が、上述した他の利用者が乗車する乗りかご11に同乗しているかどうかを検知する。なお、利用者識別部22による検知の結果を示す結果情報は、エレベータ制御装置30に送信される。
【0052】
エレベータ制御装置30は、利用者検知装置20から送信された結果情報を受信すると、当該結果情報と、他の利用者によって登録された乗りかご11の行先階に関する行先階情報とを、クラウドサーバ40に送信する(ステップS12)。
【0053】
クラウドサーバ40のコンテンツ配信制御部45は、エレベータ制御装置30から送信された結果情報および行先階情報を受信すると、これら情報に基づき、乗りかご11の状況が、配信権限が付与された利用者によって予め設定された配信条件を満たすかどうかを判断する。より詳しくは、コンテンツ配信制御部45は、(1)配信権限が付与された利用者が他の利用者が乗車する乗りかご11に同乗しているかどうかを示す結果情報と、(2)他の利用者の行先階を示す行先階情報とに基づき、乗りかご11の状況が、上述した配信条件を満たすかどうかを判断する(ステップS13)。
【0054】
ステップS13において、乗りかご11の状況が配信条件を満たすと判断された場合(ステップS13のYes)、コンテンツ配信制御部45は、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信し(ステップS14)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るエレベータシステム1は、配信権限の付与を希望する利用者に対して、エレベータの利用履歴(例えば、乗りかご11の乗車回数)に基づき、かご室内表示装置14に映像コンテンツを配信するための配信権限を付与し、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信する。これによれば、配信権限の付与を希望する利用者は、エレベータに乗車するだけで、所望の映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信するための配信権限を取得(購入)することができる。
【0056】
つまり、以上説明した一実施形態によれば、個人でも容易に、乗りかご11内に設けられたかご室内表示装置14(例えば、サイネージ)に広告などの映像コンテンツを配信することが可能なエレベータシステム1を提供することができる。
【0057】
例えば、本実施形態に係るエレベータシステム1は、自身が好きになった対象(推し)を応援する活動(以下、「推し活」と表記)を行う利用者にとって有用である。推し活の1つに、自身の推しを広めるといった活動がある。この活動は、例えばSNS(Social Networking Service)などを利用して、自身の推しの魅力を発信することで、当該推しの魅力を他人にも知ってもらい、当該推しの新たなファンを獲得することを目的としている。
【0058】
本実施形態に係るエレベータシステム1は、このような推し活を行うユーザ(推し活ユーザ)に対して、推し活を行うことが可能な新たな手段(新たなプラットフォーム)を提供することができる。推し活ユーザは、乗りかご11の乗車回数に応じて付与される配信権限を取得し、自身の推しに関する映像コンテンツをかご室内表示装置14に配信することで、自身の推しを広める推し活を行うことができる。
【0059】
本実施形態に係るエレベータシステム1において、かご室内表示装置14に配信された映像コンテンツを視聴した視聴者は、当該映像コンテンツが誰の希望の下で配信された映像コンテンツであるかを特定することができない。つまり、本実施形態に係るエレベータシステム1によれば、推し活ユーザは、匿名性が担保された状態で、上述した推し活を行うことができる。SNSを利用した一般的な推し活では、当該推し活に反対するユーザ(アンチユーザ)から予期せぬ非難が殺到する事態(炎上)が発生し、推し活を継続することが困難になってしまうケースがある。しかしながら、本実施形態に係るエレベータシステム1によれば、このような炎上の発生のリスクなく、推し活を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1によれば、自身の推しに関する映像コンテンツを配信する際の配信条件として、自身が他人と乗りかご11に同乗している場合に配信する旨の配信条件を設定することにより、当該映像コンテンツを視聴した視聴者の反応を見ることができる。自身の推しを広めたい推し活ユーザにとって、他人の反応を見ることができることは、喜びとなり得る事項であり、本実施形態に係るエレベータシステム1は、このような推し活ユーザのニーズを満たすことができる。
【0061】
また、本実施形態に係るエレベータシステム1を、例えば、推し活の対象となるキャラクター商品などを取り扱う商業ビルにおいて提供することにより、推し活ユーザと、当該推し活ユーザの推しの対象に関連する事業を営むビル内事業者とを結び付け、推し活ユーザとビル内事業者との双方に対して次のような効果をもたらすことが期待できる。以下では一例として、推し活ユーザが、あるアニメのあるキャラクターを推しの対象とし、ビル内事業者が、アニメのキャラクター商品を取り扱う(販売する)アニメショップである場合を想定する。
【0062】
この場合、推し活ユーザは、自身の推しのキャラクター商品を取り扱うアニメショップが入っている商業ビルにおいて推し活を行うことができるため、アニメに興味のある人に対して推し活を行うことができる可能性が高く、効果的な推し活を行うことができる。また、ビル内事業者(この場合、アニメショップ)は、推し活ユーザによる推し活に基づく集客効果(例えば、推し活ユーザにより希望・配信された映像コンテンツを視聴したエレベータ利用者が、当該映像コンテンツに興味を持ち、アニメショップを訪れること等)を期待することができる。
【0063】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…エレベータシステム、11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、14…かご室内表示装置、15…乗場、16…乗場ドア、20…利用者検知装置、21…記憶部、22…利用者識別部、30…エレベータ制御装置、40…クラウドサーバ、41…申請情報記憶部、42…履歴情報記憶部、43…乗車回数カウント部、44…配信権限付与部、45…コンテンツ配信制御部。
【要約】
【課題】個人でも容易に、乗りかご内に設けられたサイネージに広告などの映像コンテンツを配信することが可能なエレベータシステムを提供すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、表示装置が設置された乗りかごと、利用者による呼び情報の登録に応じて、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御手段と、利用者による乗りかごの利用履歴を示す履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段と、履歴情報に基づき、表示装置に映像コンテンツを配信するための配信権限を利用者に付与する配信権限付与手段と、配信権限が付与された利用者によって希望される映像コンテンツを表示装置に配信する配信制御手段と、を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5