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特許7500845造粒体および樹脂組成物ならびにそれらの製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】造粒体および樹脂組成物ならびにそれらの製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240610BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240610BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240610BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240610BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/20 B CEQ
C08J5/06 CER
C08J5/06 CEZ
C08K5/05
C08K7/02
C08L1/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023136446
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】前田 麻美
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/187928(WO,A1)
【文献】特開2020-041084(JP,A)
【文献】特開2021-011559(JP,A)
【文献】特開2022-057221(JP,A)
【文献】特開2022-169489(JP,A)
【文献】特開平05-269736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の繊維状フィラー(A)と、有機材料(B)とを含み、かつ嵩密度が0.1~0.5g/cmである造粒体であって、
前記繊維状フィラー(A)の平均繊維径が0.5~100μmであり、
前記有機材料(B)が常温常圧で固体であり、
前記有機材料(B)の分子量が100~1000であり、
前記有機材料(B)が、疎水性骨格と極性基とを有する化合物であり、
前記疎水性骨格が、芳香族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群より選択された少なくとも一種を含み、
前記極性基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基およびアミド基からなる群より選択された少なくとも一種を含み、かつ
前記有機材料(B)の割合が、前記繊維状フィラー(A)100質量部に対して1~70質量部である、造粒体。
【請求項2】
前記造粒体が樹脂またはゴムとの混練に用いられる請求項1記載の造粒体。
【請求項3】
前記有機材料(B)が融点100℃以上の非繊維状有機材料である請求項1または2記載の造粒体。
【請求項4】
前記疎水性骨格が多環式芳香環である請求項1または2記載の造粒体。
【請求項5】
前記有機材料(B)が、下記式(1)で表される化合物である請求項1または2記載の造粒体。
【化1】
(式中、環Zはアレーン環、RおよびRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)
【請求項6】
前記式(1)において、Xが、基-(OA)m1-OH(式中、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数を示す)である請求項5記載の造粒体。
【請求項7】
前記繊維状フィラー(A)が、セルロース繊維である請求項1または2記載の造粒体。
【請求項8】
請求項1または2記載の造粒体と樹脂とを混練する樹脂混練工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2記載の造粒体とゴムとを混練するゴム混練工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物由来のフィラーを含む造粒体および樹脂組成物ならびにそれらの製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、幅広い用途、例えば、紙、フィルムやシートなどの材料、樹脂の複合材料(例えば、樹脂の補強剤)などに利用されている。また、ゴム組成物においても、ゴムの機械的特性を向上させるために、補強剤としてセルロースが添加されている。そこで、樹脂やゴムにセルロースを均一に分散させる方法が種々提案されている。
【0003】
特開2019-178266号公報(特許文献1)には、樹脂に配合される複合体として、セルロースと、このセルロースの表面の少なくとも一部を被覆し、かつ複数の水酸基を有するフルオレン化合物を含む被覆層とからなる複合体が開示されている。この文献では、セルロースナノファイバーとフルオレン化合物とを含む湿潤した複合体とポリプロピレンとを溶融混練して樹脂組成物を製造している。
【0004】
特開2020-128475号公報(特許文献2)には、セルロース繊維および微粒子の複合体を含有する樹脂混合用ハイブリッドフィラーが開示されている。前記微粒子としては、シリカ、四酸化三鉄、グラフェンなどの無機粒子などが記載されている。
【0005】
特開2022-001631号公報(特許文献3)には、樹脂と混合するためのセルロース繊維の乾燥粉末の製造方法として、セルロース繊維および水を含むスラリーを調製するスラリー調製工程、前記スラリーを減圧下で攪拌して、前記セルロース繊維の乾燥粉体を形成する造粒工程を含み、前記造粒工程において、前記攪拌によって形成されたセルロース繊維の粒子をチョッパ粉砕する製造方法が開示されている。
【0006】
特開2022-169489号公報(特許文献4)および特開2022-169490号公報(特許文献5)には、熱可塑性樹脂と混合するための乾燥体の製造方法として、微細セルロース繊維と分散剤と液体とを含む分散体から前記液体を除去して乾燥体を得る乾燥・造粒工程を含む製造方法が開示されている。
【0007】
特開2022-184494号公報(特許文献6)には、セルロースファイバー複合樹脂成形物の製造に用いられるセルロースファイバー複合樹脂原料の製造方法として、未解繊の疎水変性セルロースと、溶媒と、粒子状熱可塑性樹脂とをせん断混合し、セルロースを解繊するとともに、粒子状熱可塑性樹脂と複合化してセルロースファイバー複合樹脂原料を得る製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-178266号公報
【文献】特開2020-128475号公報
【文献】特開2022-001631号公報
【文献】特開2022-169489号公報
【文献】特開2022-169490号公報
【文献】特開2022-184494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2の複合体を樹脂やゴムに配合しても、樹脂やゴム中に均一にセルロースを分散させるのは困難である。また、特許文献3~6の製造方法で熱可塑性樹脂組成物を調製しても、セルロースを均一に分散せるための取り扱い性が低く、かつセルロースが熱可塑性樹脂中に高度に分散した組成物を調製するのは困難であった。
【0010】
従って、本発明の目的は、取り扱い性、混練機への供給性に優れ、かつ樹脂やゴム中における植物由来の繊維状フィラーの分散性に優れた造粒体および樹脂組成物ならびにそれらの製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、平均繊維径が0.5~100μmである植物由来の繊維状フィラー(A)と、常温常圧で固体であり、かつ分子量が100~1000である有機材料(B)とを組み合わせ、嵩密度を0.1~0.5g/cmに調整することにより、取り扱い性、混練機への供給性に優れ、かつ樹脂やゴム中における植物由来のフィラーの分散性に優れた造粒体を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本開示(または本発明)の態様[1]としての造粒体は、
植物由来の繊維状フィラー(A)と、有機材料(B)とを含み、かつ嵩密度が0.1~0.5g/cmである造粒体であって、
前記繊維状フィラー(A)の平均繊維径が0.5~100μmであり、
前記有機材料(B)が常温常圧で固体であり、かつ
前記有機材料(B)の分子量が100~1000である。
【0013】
本開示の態様[2]は、前記態様[1]において、前記有機材料(B)の割合が、前記繊維状フィラー(A)100質量部に対して1~70質量部である態様である。
【0014】
本開示の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記造粒体が樹脂またはゴムとの混練に用いられる態様である。
【0015】
本開示の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記有機材料(B)が融点100℃以上の非繊維状有機材料である態様である。
【0016】
本開示の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、前記有機材料(B)が、疎水性骨格と極性基とを有する化合物である態様である。
【0017】
本開示の態様[6]は、前記態様[5]において、前記疎水性骨格が多環式芳香環である態様である。
【0018】
本開示の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、前記有機材料(B)が、下記式(1)で表される化合物である態様である。
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、環Zはアレーン環、RおよびRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)
【0021】
本開示の態様[8]は、前記態様[7]の前記式(1)において、Xが、基-(OA)m1-OH(式中、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数を示す)である態様である。
【0022】
本開示の態様[9]は、前記態様[1]~[8]のいずれかの態様において、前記繊維状フィラー(A)が、セルロース繊維である態様である。
【0023】
本開示には、態様[10]として、植物由来の繊維状フィラー(A)の前駆体と、有機材料(B)の前駆体と、水とを混合し、混合物を得る混合工程と、得られた混合物を造粒して造粒体を得る造粒工程とを含む、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の造粒体の製造方法も含まれる。
【0024】
本開示の態様[11]は、前記態様[10]の造粒工程において、前記混合物を押出造粒する態様である。
【0025】
本開示には、態様[12]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の造粒体および樹脂を含む、樹脂組成物も含まれる。
【0026】
本開示の態様[13]は、前記態様[12]において、前記樹脂が熱可塑性樹脂である態様である。
【0027】
本開示には、態様[14]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の造粒体と樹脂とを混練する樹脂混練工程を含む、樹脂組成物の製造方法も含まれる。
【0028】
本開示には、態様[15]として、前記態様[12]または[13]の樹脂組成物の成形体であって、自動車部品、電気・電子部品、建築資材、土木資材、農業資材、包装資材、生活資材および光学部材から選択される部品または資材である、成形体も含まれる。
【0029】
本開示には、態様[16]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の造粒体およびゴムを含む、ゴム組成物も含まれる。
【0030】
本開示には、態様[17]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の造粒体とゴムとを混練するゴム混練工程を含む、ゴム組成物の製造方法も含まれる。
【0031】
本開示には、態様[18]として、前記態様[16]のゴム組成物の加硫物の成形体であって、ベルト、ロール、ガスケット、オイルシール、パッキン、ホース、窓枠ゴム、制振材、カーペットバッギング材、自動車用部材、タイヤまたは電線被覆物である、成形体も含まれる。
【0032】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0033】
さらに、本明細書および特許請求の範囲において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【発明の効果】
【0034】
本開示では、取り扱い性、混練機への供給性に優れ、かつ樹脂やゴム中における植物由来の繊維状フィラーの分散性に優れた造粒体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示の造粒体(または造粒物)は、平均繊維径が0.5~100μmである植物由来の繊維状フィラー(A)と、常温常圧で固体であり、かつ分子量が100~1000である有機材料(B)とを組み合わせ、嵩密度が0.1~0.5g/cmに調整されているため、取り扱い性、混練機への供給性に優れており、樹脂やゴム中に植物由来の繊維状フィラー(A)を均一に分散できる。さらに、本開示の造粒体を用いることにより、マスターバッチを調製することなく、各種の樹脂やゴムに対して繊維状フィラー(A)を均一に分散させることができる。
【0036】
[植物由来の繊維状フィラー(A)]
植物由来の繊維状フィラー(A)は、植物を原料とするフィラー(充填剤または強化剤)であり、繊維状であれば特に限定されない。
【0037】
植物原料としては、特に限定されず、木材、草本類、種子毛、竹、サトウキビなどが挙げられる。木材としては、マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなどの針葉樹;ブナ、カバ、ポプラ、カエデなどの広葉樹などが挙げられる。草本類としては、麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど麻類;ワラ;バガス;ミツマタなどが挙げられる。種子毛としては、コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなどが挙げられる。
【0038】
植物原料は、古紙、藁、食品残渣などであってもよい。食品残渣としては、茶抽出殻、コーヒー豆抽出殻、穀類の殻、柑橘類の皮、さとうきび粕、豆類の皮などが挙げられる。
【0039】
これらの植物原料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。植物原料は、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプが好ましい。パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなども木材パルプ;コットンリンターパルプなどの種子毛繊維パルプなどが汎用される。
【0040】
本開示の繊維状フィラー(A)は、これらの植物原料で形成されているのが好ましく、セルロース繊維(繊維状セルロース)が特に好ましい。
【0041】
セルロース繊維は、結晶性の高いセルロース繊維であってもよく、セルロース繊維の結晶化度は、例えば40~100%(例えば50~100%)、好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%、最も好ましくは75~99%であり、通常、結晶化度が60%以上(例えば60~98%)である。また、セルロース繊維の結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
【0042】
セルロース繊維は、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよく、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維(特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維)であってもよい。
【0043】
セルロース繊維の重合度は、組成物の機械的特性の点から、500以上であってもよく、好ましくは600以上(例えば600~10万)であってもよい。
【0044】
繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の平均繊維径は、0.5~100μmであればよいが、ミクロンオーダーであるのが好ましく、例えば1~80μm、好ましくは5~70μm、より好ましくは10~50μm、最も好ましくは30~45μmである。平均繊維径が小さすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合して混練すると、繊維状フィラー(A)同士が凝集し、繊維状フィラー(A)を均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合して混練すると、混練物の表面に繊維状フィラー(A)が浮き出て外観が低下する虞がある。
【0045】
繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の平均繊維長は、1μm以上(例えば1μm~100mm)程度の範囲から選択でき、例えば10μm以上(例えば0.01~50mm)、好ましくは100μm以上(例えば0.1~30mm)、さらに好ましくは300μm以上(例えば0.3~20mm)、より好ましくは500μm以上(例えば0.5~10mm)、最も好ましくは1mm以上(例えば1~5mm)である。平均繊維長が短すぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合しても機械的特性を充分に向上できない虞があり、逆に長すぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合しても繊維状フィラー(A)を均一に分散させるのが困難となる虞がある。
【0046】
繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5~10000)、好ましくは10以上(例えば10~5000)、さらに好ましくは15以上(例えば15~3000)、より好ましくは20以上(例えば20~100)、最も好ましくは25以上(例えば25~50)である。アスペクト比が小さすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合しても補強効果が低下する虞があり、アスペクト比が大きすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合しても繊維状フィラー(A)の均一な分散が困難となる虞がある。
【0047】
なお、本明細書および特許請求の範囲では、繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。また、前記繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、押出造粒されて得られた造粒体中における前記繊維状フィラー(A)の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比である。
【0048】
繊維状フィラー(A)(特に、セルロース繊維)の割合は、造粒体中10質量%以上であってもよく、例えば10~99質量%、好ましくは30~95質量%、さらに好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~85質量%、最も好ましくは70~80質量%である。繊維状フィラー(A)の割合が少なすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合しても繊維状フィラー(A)による補強効果が弱まり、樹脂やゴム組成物の機械的特性が向上できない虞があり、多すぎると、造粒体を調製するのが困難となったり、繊維状フィラー(A)の分散性が低下する虞がある。
【0049】
[有機材料(B)]
本開示の造粒体は、前記繊維状フィラー(A)に有機材料(B)を配合することにより、造粒性を担保できる。
【0050】
有機材料(B)は、常温常圧で固体であるため、取り扱い性に優れ、造粒体を容易に調製でき、かつ造粒体を樹脂やゴムに配合すると、前記繊維状フィラー(A)の分散性を向上でき、樹脂やゴム毎にマスターバッチを調製する必要がない。なお、常温は20℃であってもよく、常圧は大気圧(101.3kPa)であってもよい。
【0051】
有機材料(B)の分子量は、100~1000であり、好ましくは150~700、さらに好ましくは200~500、より好ましくは300~500、最も好ましくは400~500である。分子量が小さすぎると、造粒体を樹脂やゴムに配合して混練すると、有機材料(B)が揮発し、繊維状フィラー(A)を均一に分散できない虞があり、逆に大きすぎると、造粒体と樹脂やゴムとの相容性が低下する虞がある。
【0052】
有機材料(B)の形状は、特に限定されないが、非繊維状であってもよく、粒状(または粉末状)が好ましい。粒状は、球状、略球状、楕円体状、多角体状または多面体状、扁平状、棒状または柱状、不定形状などであってもよい。これらのうち、粒状としては、球状などの等方形状、略球状などの略等方形状が好ましい。そのため、粒状の有機材料において、短径に対する長径の割合(アスペクト比)は、1に近いアスペクト比が好ましく、例えば1~3、好ましくは1~2、さらに好ましくは1~1.5、より好ましくは1~1.3、最も好ましくは1~1.2である。
【0053】
有機材料(B)の平均粒径(D50)は、例えば0.01~50μm、好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1~10μm、最も好ましくは2~5μmである。有機材料(B)の平均粒径が小さすぎると、繊維状フィラー(A)と均一に混合するのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、造粒体を調製するのが困難となる虞がある。
【0054】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、有機材料(B)の平均粒径は、慣用の方法で測定でき、例えば、レーザー回折式粒度分布計を用いて体積基準で測定された中心粒径(D50)を意味する。
【0055】
有機材料(B)は、繊維状フィラー(A)との親和性を向上できる点から、極性基を有する化合物が好ましく、取り扱い性にも優れる点から、疎水性骨格と極性基とを有する化合物が特に好ましい。
【0056】
極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシ基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基、アミド基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基などのC1-4アルキル-カルボニル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などのC1-4アルコキシ基などが挙げられる。N置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN-モノC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの極性基は、塩やエステルなどの誘導体であってもよい。これらの極性基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基が好ましく、ヒドロキシル基が特に好ましい。有機材料(B)において、1分子中の極性基の数は、1以上であればよく、例えば1~6、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、より好ましくは2である。
【0057】
疎水性骨格としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素などが挙げられる。
【0058】
脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ペンタデカン、オクタデカンなどのC6-24アルカン;ヘキセン、オクテン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ペンタデセン、オクタデセンなどのC6-24アルケンなどが挙げられる。これらの脂肪族炭化水素は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、オクタデカンなどのC12-24アルカンが好ましい。
【0059】
芳香族炭化水素としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環;ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環;アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C12-16アレーン環;ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環;テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環;フルオレン環;ベンゾフルオレン環;ジベンゾフルオレン環などが挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ベンゼン環;ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環;ビフェニル環などのビC6-10アレーン環;フルオレン環が好ましい。
【0060】
脂環族炭化水素としては、前記芳香族炭化水素の水添物の他、シクロペンタン環、シクロヘプタン環、テトラリン環などが挙げられる。これらの脂環族炭化水素は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、シクロヘキサンなどのC6-10シクロアルカン環が好ましい。
【0061】
疎水性骨格は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群より選択された少なくとも1種であってもよく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群より選択された2種以上の組み合わせであってもよい。
【0062】
疎水性骨格が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群より選択された2種以上の組み合わせである場合、各炭化水素同士は、直接結合で連結されていてもよく、連結基を介して連結されていてもよい。連結基としては、アルキレン基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(スルフィド基)、スルホニル基などが挙げられる。連結基のアルキレン基としては、メチレン基、エチリデン基、エチレン基、イソプロピリデン基などのC1-4アルキレン基などが挙げられる。これらの炭化水素同士の組み合わせは、分子量が1000を超えない範囲であれば特に限定されないが、芳香族炭化水素同士の組み合わせが好ましく、フルオレン環と、ベンゼン環、ナフタレン環およびビフェニル環からなる群より選択された少なくとも1種のアレーン環との組み合わせが特に好ましい。
【0063】
疎水性骨格と極性基とを有する化合物としては、脂肪酸またはその誘導体、ビスフェノール類、フルオレン化合物などが汎用される。
【0064】
脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸などのC8-26飽和脂肪酸;オレイン酸、エルカ酸などのC8-26不飽和脂肪酸などが挙げられる。脂肪酸の誘導体としては、これらの脂肪酸に対応する脂肪酸アミド、脂肪酸アルキルエステルなどが挙げられる。脂肪酸アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステルなどのC1-4アルキルエステルなどが挙げられる。
【0065】
ビスフェノール類としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールG)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)などが挙げられる。ビスフェノール類は、エチレンオキシドなどのC2-4アルキレンオキシドが付加したアルキレンオキシド付加体であってもよい。アルキレンオキシド付加モル数は、例えば1~10モル、好ましくは1~5モル、さらに好ましくは1~3モルである。
【0066】
(多環式芳香環を含む有機材料)
本開示の造粒体では、樹脂やゴムに配合して混練すると、繊維状フィラー(A)を均一に分散でき、かつ混練後の樹脂組成物やゴム組成物の強度や弾性率などの機械的特性を向上できる点から、有機材料(B)としては、多環式芳香環を含む有機材料(疎水性骨格が多環式芳香環である有機材料)が好ましく、フルオレン環を含む有機材料がさらに好ましく、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物がより好ましく、前記式(1)で表される化合物が最も好ましい。
【0067】
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0068】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
【0069】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6-10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0070】
フルオレンの9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環(特にベンゼン環)などが好ましい。
【0071】
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。
【0072】
で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウおよび窒素原子から選択された少なくとも1種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1~3個、好ましくは1または2個であってもよい。
【0073】
前記官能基としては、例えば、基-[(OA)m1-Y](式中、Yはヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基またはメルカプト基であり、Aはアルキレン基であり、m1は0以上の整数である)、基-(CH)m2-COOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
【0074】
基-[(OA)m1-Y]において、YのN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN-モノアルキルアミノ基(N-モノC1-4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN-モノヒドロキシアルキルアミノ基(N-モノヒドロキシC1-4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0075】
アルキレン基Aには、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
【0076】
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm1は、0以上(例えば0~15、好ましくは0~10)の範囲から選択でき、例えば0~8(例えば1~8)、好ましくは0~5(例えば1~5)、さらに好ましくは0~4(例えば1~4)、特に0~3(例えば1~3)であってもよく、通常0~2(例えば0~1)であってもよい。なお、m1が2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一または異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0077】
基-(CH)m2-COORにおいて、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1-4アルキル基、特にC1-2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm2は、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。m2は、通常、0または1~2であってもよい。
【0078】
これらのうち、繊維状フィラー(A)の分散性を大きく向上できる点から、基Xは、Yがヒドロキシル基である基-[(OA)m1-OH][式中、Aはエチレン基などのC2-6アルキレン基(例えばC2-4アルキレン基、特にC2-3アルキレン基)、m1は0~5の整数(例えば0または1)である]が特に好ましい。
【0079】
前記式(1)において、環Zに置換した基Xの個数を示すnは、1以上であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2(特に1)であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0080】
基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2位、3位および4位からなる群より選択された少なくとも1種(特に、3位および/または4位、特に4位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特にnが1である場合、2,6位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環および/またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3位または4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2位,4位,5位,6位,2’位,3’位,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換していてもよい。
【0081】
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5-10シクロアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。
【0082】
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0083】
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0~8程度の整数であってもよく、0~4の整数、好ましくは0~3(例えば0~2)の整数、さらに好ましくは0または1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
【0084】
置換基Rとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ-カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基)などが挙げられる。
【0085】
これらの置換基Rのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基(特に、メチル基などのC1-3アルキル基)、カルボキシル基またはC1-2アルコキシ-カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0~4(例えば0~3)の整数、好ましくは0~2の整数(例えば0または1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一または異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一または異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一または異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位(2位、3位および/または7位など)であってもよい。
【0086】
これらのうち、好ましいフルオレン化合物としては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジまたはトリヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-フェニル-3-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-メチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-フェニル-3-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレンなどが挙げられる。特に好ましいフルオレン化合物は、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)などの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)などの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(BOPPEF)などの9,9-ビス(フェニル-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレンであり、最も好ましくはBPEFなどの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-フェニル)フルオレンである。
【0087】
これらのフルオレン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。なお、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
【0088】
前記式(1)で表されるフルオレン化合物の割合は、有機材料(B)中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0089】
(有機材料(B)の特性)
有機材料(B)は結晶または非晶であってもよく、結晶である場合、有機材料(B)の融点は、溶融混練可能な融点であればよいが、100℃以上(例えば100~250℃)であってもよく、例えば120~230℃、好ましくは130~200℃、特に好ましくは135~180℃、さらに好ましくは140~170℃、より好ましくは145~165℃、最も好ましくは150~163℃である。有機材料(B)が非晶の場合は、前記融点の範囲で溶融(または流動)可能であってもよい。有機材料(B)の融点が低すぎると、固体状態を保持できず、造粒体を製造するのが困難となる虞があり、逆に高すぎると、取り扱い性が困難となる虞がある。
【0090】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、有機材料(B)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)のDSC曲線におけるピークトップ温度を意味する。
【0091】
有機材料(B)は、造粒体と樹脂やゴムとの混練過程において、繊維状フィラー(A)を樹脂やゴム中に均一に分散し易い点から、繊維状フィラー(A)に対して、エーテル結合やエステル結合などの共有結合を形成して複合化(化学修飾)しない状態であるのが好ましい。有機材料(B)と繊維状フィラー(A)とが複合化している場合、水素結合などによって比較的緩やかに結合または親和して複合化するのが好ましい。緩やかな結合で複合化している場合、樹脂やゴム組成物中における繊維状フィラー(A)の自由度が高く、樹脂やゴム組成物の機械的特性(耐屈曲疲労性など)を向上できると推定できる。
【0092】
有機材料(B)[特に、前記式(1)で表されるフルオレン化合物]の割合は、繊維状フィラー(A)100質量部に対して、例えば1~70質量部、好ましくは5~50質量部、さらに好ましくは10~45質量部、より好ましくは20~40質量部、最も好ましくは30~35質量部である。有機材料(B)の割合が少なすぎると、造粒体の調製が困難となったり、繊維状フィラー(A)の分散性が低下する虞があり、逆に多すぎると、繊維状フィラー(A)による補強効果が弱まり、樹脂やゴム組成物の機械的特性が向上できない虞がある。
【0093】
(他の成分)
本開示の造粒体は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、接着剤、粘着剤、接着性改善剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、軟化剤、架橋剤、架橋助剤、補強剤、可塑剤、老化または酸化防止剤、着色剤、安定剤、離型剤、潤滑剤、難燃剤、制振付与剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。
【0094】
これらの添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、繊維状フィラー(A)100質量部に対して50質量部以下であってもよく、例えば0.01~50質量部、好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0095】
[造粒体の特性]
本開示の造粒体の形状は、特に限定されないが、粒状(または粉末状)が好ましい。粒状は、球状、略球状、楕円体状、多角体状または多面体状、扁平状、棒状または柱状、不定形状などであってもよい。これらのうち、粒状は、球状などの等方形状や、略球状や略円柱状などの略等方形状が好ましい。そのため、粒状の造粒体において、短径に対する長径の割合(アスペクト比)は、1に近いアスペクト比が好ましく、例えば1~3、好ましくは1~2、さらに好ましくは1~1.5、より好ましくは1~1.3、最も好ましくは1~1.2である。造粒体が円柱状である場合、長径は、円柱の高さおよび底面の円形状の直径のうち大きい方が相当し、短径は、円柱の高さおよび底面の円形状の直径のうち小さい方が相当する。
【0096】
造粒体の平均粒径(D50)は、例えば0.1~20mm、好ましくは1~10mm、さらに好ましくは1.5~5mm、より好ましくは2~4mm、最も好ましくは2.5~3.5mmである。造粒体の平均粒径が小さすぎると、繊維状フィラー(A)と均一に混合するのが困難となる虞があり、逆に大きすぎると、造粒体を調製するのが困難となる虞がある。
【0097】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、造粒体の平均粒径は、慣用の方法で測定でき、例えば、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の粒子を選択し、加算平均して算出してもよい。
【0098】
本開示の造粒体の嵩密度(かさ密度)は0.1~0.5g/cmであり、好ましくは0.13~0.4g/cm、さらに好ましくは0.15~0.3g/cm、より好ましくは0.18~0.25g/cm、最も好ましくは0.19~0.23g/cmである。嵩密度が小さすぎると、造粒体と樹脂やゴムとを混練すると、混練機スクリューへの噛み込みが低下して安定的なフィードができなくなる虞があり、逆に大きすぎると、造粒体が締まりすぎて混練機での分散が低下する虞がある。
【0099】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、造粒体の嵩密度は、メスシリンダーを用いて体積および質量を測定することにより求めることができ、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0100】
[造粒体の製造方法]
本開示の造粒体は、植物由来の繊維状フィラー(A)の前駆体と、有機材料(B)の前駆体と、水とを混合し、混合物を得る混合工程と、得られた混合物を造粒して造粒体を得る造粒工程とを経て得られる。本開示では、混合工程で水を用いることにより、前記前駆体同士を均一に混合し易く、安全性も高い。
【0101】
混合工程において、水の割合は、植物由来の繊維状フィラー(A)の前駆体100質量部に対して、例えば10~500質量部、好ましくは50~300質量部、さらに好ましくは100~250質量部、より好ましくは130~200質量部、最も好ましくは150~180質量部である。水の割合が少なすぎると、植物由来の繊維状フィラー(A)の前駆体と、有機材料(B)の前駆体とを均一に混合するのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、造粒体の生産性が低下する虞がある。
【0102】
前駆体同士の混合方法(または攪拌方法)としては、慣用の混合または攪拌手段により、例えば100~10000rpm、好ましくは500~5000rpm、さらに好ましくは1000~3000rpm、特に1500~2500rpm程度の回転速度で混練してもよい。
【0103】
慣用の混合または攪拌方法としては、ボールミル、タンブルミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。
【0104】
混合時間は、例えば1~100分、好ましくは3~60分、さらに好ましくは5~30分である。
【0105】
造粒工程において、造粒方法としては、慣用の造粒方法、例えば、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、解砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、溶解造粒などの造粒方法から選択できる。これらのうち、圧縮造粒、押出造粒が好ましく、目的の嵩密度を有する造粒体を製造し易い点から、押出造粒が特に好ましい。押出造粒は、ディスクペレッターなどの慣用の押出造粒機を用いて造粒できる。
【0106】
造粒温度は、常温~200℃程度の範囲で選択できるが、好ましくは常温~100℃、さらに好ましくは常温~50℃であり、混練により温度が上昇する可能性もあるため、簡便性の点から、通常、常温であり、非加熱状態で造粒してもよい。
【0107】
得られた造粒体は、乾燥工程に供してもよい。乾燥工程において、乾燥方法としては、自然乾燥であってもよいが、生産性などの点から、加熱して乾燥するのが好ましい。加熱温度は、例えば50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは80~120℃である。乾燥時間は、例えば1~24時間、好ましくは3~15時間、さらに好ましくは5~10時間である。
【0108】
[樹脂組成物]
本開示の樹脂組成物は、前記造粒体および樹脂を含む。前記造粒体は、粒状であり、かつ特定の嵩密度を有しているため、取り扱い性に優れており、例えば、前記造粒体と樹脂とを混練して樹脂組成物を調製する際に、フィーダーなどを介して混練機に円滑に供給できるとともに、樹脂と混練しても造粒体に含まれる繊維状フィラー(A)の凝集を抑制できる。そのため、樹脂組成物中に繊維状フィラー(A)を均一に分散でき、樹脂組成物の機械的特性を向上できる。
【0109】
(樹脂)
樹脂は、硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂)であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0110】
硬化性樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などフェノール樹脂;ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂;フラン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ジアリルフタレート樹脂;ビニルエステル樹脂(またはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂);多官能(メタ)アクリレート系樹脂;エポキシ樹脂;ウレタン樹脂;ビスマレイミド系樹脂などのポリイミド樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0111】
熱可塑性樹脂としては、鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)など)などの酢酸ビニル系樹脂;塩化ビニル単独重合体(PVC);塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニリデン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂;ポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル(LCP)などのポリエステル系樹脂;ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂などのポリカーボネート系樹脂;脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂またはアラミド樹脂などのポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM)などのポリアセタール系樹脂;ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリエーテルケトン系樹脂;フェノキシ樹脂;脂肪族ポリケトン樹脂などのポリケトン樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)などのポリスルホン系樹脂;ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル;ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミドなどの熱可塑性ポリイミド樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリジエン系TPE、塩素系TPE、フッ素系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE(TPA)などの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0112】
これらの樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0113】
熱可塑性樹脂の密度は、例えば、0.85~3g/cm程度の範囲から選択してもよく、例えば0.9~2.7g/cm、好ましくは0.95~2g/cm、さらに好ましくは0.95~1.5g/cmであってもよい。
【0114】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwは、例えば10000~10000000程度の範囲から選択してもよい。また、数平均分子量Mnは、例えば10000~1000000程度の範囲から選択してもよく、好ましくは50000~800000、好ましくは100000~500000、さらに好ましくは200000~400000である。分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1~50程度の範囲から選択してもよく、例えば2~25である。
【0115】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、GPCにより標準ポリスチレン換算で測定できる。
【0116】
熱可塑性樹脂のなかでも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアミド樹脂から選択された少なくとも1種を含むのが好ましく、ポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0117】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、α-オレフィンを主要な重合成分とする鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン類を重合成分として含む環状オレフィン系樹脂(エチレン-ノルボルネン共重合体などの環状オレフィン共重合体(COC)、ポリノルボルネン、ポリジシクロベンタジエン、ポリシクロペンタジエンもしくはこれらの水添物などの環状オレフィン類の付加もしくは開環重合体またはその水添物など)などが挙げられる。これらのうち、鎖状オレフィン系樹脂が好ましい。
【0118】
鎖状オレフィン系樹脂の重合成分であるα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのα-C2-20オレフィンなどが挙げられる。
【0119】
これらのα-オレフィンは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、α-C2-10オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンなどのα-C2-6オレフィンが特に好ましい。
【0120】
鎖状オレフィン系樹脂は、前記α-オレフィンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体における重合成分は、2種以上のα-オレフィンを含んでいてもよく、α-オレフィンとは異なる共重合性単量体を含んでいてもよい。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。
【0121】
共重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸またはこれらの無水物などの不飽和カルボン酸またはその酸無水物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル;1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエンなどの非共役アルカジエン;ブタジエン、イソプレンなどの共役アルカジエンなどが挙げられる。
【0122】
これらの共重合性単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。ポリエチレン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂が共重合性単量体を含む場合、構成単位全体に対する共重合性単量体の割合は、70モル%程度以下であってもよく、通常、50モル%以下、例えば、30モル%以下(例えば、0.01~30モル%)、好ましくは20モル%以下(例えば、0.1~20モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば、1~10モル%)である。
【0123】
代表的な鎖状オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ1-ブテン系樹脂、ポリ4-メチル-1-ペンテン系樹脂などのポリα-C2-6オレフィン系樹脂などが挙げられ、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂が特に好ましい。
【0124】
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などのポリエチレン;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-プロピレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(4-メチル-1-ペンテン)共重合体などのエチレン-(α-C3-10オレフィン)共重合体;無水マレイン酸変性ポリエチレンなどの変性ポリエチレン;塩素化ポリエチレン;アイオノマーなどが挙げられる。
【0125】
これらのポリエチレン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、HDPE、LLDPE、UHMWPEなどの分岐構造がほとんどない直鎖状ポリエチレンが好ましく、樹脂組成物の機械的特性の点から、HDPE、UHMWPE、なかでもHDPEが特に好ましい。
【0126】
ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K 6922-1に準拠して、0.910~0.980kg/m程度の範囲から選択でき、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、例えば0.930~0.970kg/m、好ましくは0.940~0.965kg/m、さらに好ましくは0.950~0.962kg/m、より好ましくは0.955~0.960kg/mである。
【0127】
ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 6922-2に準拠して、例えば3~80g/10分、好ましくは5~50g/10分、さらに好ましくは10~30g/10分、より好ましくは15~25g/10分である。MFRが小さすぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞があり、MFRが大きすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0128】
ポリエチレン系樹脂の融点(DSC法)は、ISO 11357-3に準拠して、例えば80~150℃、好ましくは100~145℃、さらに好ましくは120~140℃、より好ましくは130~135℃である。融点が低すぎると、樹脂組成物の耐熱性が低下する虞があり、融点が高すぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞がある。
【0129】
(ポリアセタール系樹脂)
ポリアセタール系樹脂には、実質的にオキシメチレン単位(-CHO-)の繰り返しのみからなるポリアセタールホモポリマー(単独重合体)と、オキシメチレン単位と少なくとも1種の共重合性単量体(コモノマー)単位とを含有するポリアセタールコポリマー(共重合体)が含まれる。ポリアセタール系樹脂は、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいが、熱安定性に優れ、広範な用途に利用できる観点からコポリマー(共重合体)である場合が多い。
【0130】
ポリアセタールコポリマー(共重合体)は、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。なお、ポリアセタールコポリマー(共重合体)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってもよい。
【0131】
前記コポリマーのコモノマー単位としては、オキシC2-6アルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(-OCHCH-)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基などのオキシC2-4アルキレン単位など)などが挙げられる。
【0132】
これらのコモノマー単位は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。コモノマー単位の割合は、ポリアセタール系樹脂全体に対し、例えば0.01~30モル%、好ましくは0.03~20モル%、さらに好ましくは0.03~15モル%である。
【0133】
具体的には、前記ポリアセタール系樹脂は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、トリオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマールなどの環状エーテルや環状ホルマールなどを主たる重合成分とする単独または共重合体であってもよい。
【0134】
前記ポリアセタール系樹脂は、他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなどのアルキルまたはアリールグリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのアルキレンまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル;アルキルまたはアリールグリシジルアルコール;β-プロピオラクトンなどの環状エステル;ビニルエーテルなどのビニル化合物などが挙げられる。
【0135】
前記ポリアセタール系樹脂の構造は、線状、分岐状であってもよく、架橋していてもよい。また、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化、イソシアネート化合物とのウレタン化、エーテル化などにより安定化してもよい。
【0136】
これらのポリアセタール系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0137】
ポリアセタール系樹脂の密度は、ISO 1183に準拠して、0.95~1.8g/cm程度の範囲から選択でき、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、例えば1~1.75g/cm)、好ましくは1.1~1.73g/cm、さらに好ましくは1.2~1.7g/cm、より好ましくは1.3~1.5g/cmである。
【0138】
ポリアセタール系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、ISO 1133(190℃、2.16kg荷重)に準拠して、例えば5~100g/10分、好ましくは10~80g/10分、さらに好ましくは30~60g/10分、より好ましくは40~50g/10分である。MFRが小さすぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞があり、MFRが大きすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0139】
ポリアセタール系樹脂の荷重たわみ温度は、ISO 75-1,2に準拠して、例えば60~200℃、好ましくは70~150℃、さらに好ましくは80~130℃、より好ましくは90~110℃である。荷重たわみ温度が低すぎると、樹脂組成物の耐熱性が低下する虞があり、逆に高すぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞がある。
【0140】
(ポリエステル系樹脂)
ポリエステル系樹脂としては、ジオール成分とジカルボン酸成分とを反応(縮合反応)させて得られるポリエステルなどが挙げられる。
【0141】
ジオール成分としては、アルカンジオール、ポリアルカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンなどの脂環族ジオール;ジヒドロキシアレーン、芳香脂肪族ジオール、ビスフェノール類などの芳香族ジオールなどが挙げられる。
【0142】
アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオールなどが挙げられる。
【0143】
ポリアルカンジオールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジまたはトリC2-4アルカンジオールなどが挙げられる。
【0144】
シクロアルカンジオールとしては、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオールなどが挙げられる。
【0145】
ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンとしては、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-8シクロアルカンなどが挙げられる。
【0146】
ジヒドロキシアレーンとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノールなどが挙げられる。
【0147】
芳香脂肪族ジオールとしては、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C6-10アレーンなどが挙げられる。
【0148】
ビスフェノール類としては、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1-10アルカンなどが挙げられる。
【0149】
これらのジオール成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのジオール成分のうち、エチレングリコールや1,4-ブタンジオールなどのC2-6アルカンジオールが好ましく、C2-5アルカンジオールがさらに好ましく、C3-5アルカンジオールがより好ましい。
【0150】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、これらのジカルボン酸の誘導体などが挙げられる。
【0151】
脂肪族カルボン酸としては、アルカンカルボン酸などが挙げられる。アルカンカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC2-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0152】
脂環族ジカルボン酸としては、シクロアルカンジカルボン酸、ジまたはトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。シクロアルカンジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。ジまたはトリシクロアルカンジカルボン酸としては、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸などが挙げられる。
【0153】
芳香族ジカルボン酸としては、アレーンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルアルカンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。アレーンジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などのC6-14アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。ビフェニルジカルボン酸としては、2,2’-ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。ジフェニルアルカンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2-ジ(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのジフェニルC1-10アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。ジフェニルケトンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などが挙げられる。ジフェニルエーテルジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。
【0154】
ジカルボン酸の誘導体としては、ジカルボン酸クロライドなどのジカルボン酸ハライド;ジカルボン酸無水物;メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。低級アルキルエステルは、C1-4アルキルエステルが好ましく、C1-2アルキルエステルが特に好ましい。
【0155】
これらのジカルボン酸成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸のうち、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカン-ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンカルボン酸などのアレーンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸などのC6-10アレーン-ジカルボン酸が特に好ましい。
【0156】
これらのポリエステル系樹脂のうち、機械的特性や耐熱性などの点から、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂、ポリアルキレンナフタレート系樹脂などのポリアルキレンアリレート系樹脂が好ましい。
【0157】
ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、アルキレンアリレート単位(特に、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-6アルキレンアリレート単位)のホモポリエステル、またはアルキレンアリレート単位の含有量が80モル%以上(特に90モル%以上)のコポリエステルが挙げられる。コポリエステルを構成する共重合性単量体としては、前述のジカルボン酸成分、ジオール成分の他、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトンなどのラクトンなどが挙げられる。これらの共重合性単量体のうち、イソフタル酸などのジカルボン酸成分などが汎用される。ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂などのポリC2-4アルキレンナフタレート系樹脂が好ましい。
【0158】
代表的なポリアルキレンアリレート系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2-10アルキレンC8-16アリレート;ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリC5-10シクロアルカン-ジC1-4アルキレンC8-16アリレートなどが挙げられる。
【0159】
これらのポリアルキレンアリレート系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2-6アルキレンC8-16アリレートが好ましく、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC3-5アルキレンC8-12アリレートが特に好ましい。
【0160】
これらのポリエステル樹脂は、ポリアルキレンアリレート系樹脂のように結晶性であってもよく、ポリアリレート系樹脂のように非晶性であってもよく、透明ポリエステル樹脂(非晶性透明ポリエステル樹脂)であってもよい。また、前述の共重合成分により、ポリエステル樹脂の結晶性を調整することもでき、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオールなどの非対称脂肪族ジオール成分;フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸成分などを用いて結晶性を調整してもよい。
【0161】
ポリエステル系樹脂の密度は、ISO 1183に準拠して、0.95~1.8g/cm程度の範囲から選択でき、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、例えば1~1.75g/cm)、好ましくは1~1.7g/cm、さらに好ましくは1.1~1.5g/cm、より好ましくは1.2~1.4g/cmである。
【0162】
ポリエステル系樹脂のメルトボリュームフローレート(MVR)は、ISO 1133(250℃、2.16kg荷重)に準拠して、例えば5~100cm/10分、好ましくは10~50cm/10分、さらに好ましくは15~40cm/10分、より好ましくは20~30cm/10分である。MVRが小さすぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞があり、MVRが大きすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0163】
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる評価方法に準拠して、3000~1000000程度の範囲から選択でき、例えば、5000~800000、好ましくは8000~600000、さらに好ましくは10000~500000、より好ましくは30000~500000である。
【0164】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば30~350℃、好ましくは40~300℃、さらに好ましくは50~250℃、より好ましくは60~200℃である。
【0165】
(ポリアミド系樹脂)
ポリアミド系樹脂は、脂肪族モノマー成分、脂環族モノマー成分および芳香族モノマー成分からなる群より選択された少なくとも1種で形成してもよい。これらのうち、脂肪族モノマー成分を含むのが好ましく、脂肪族モノマー成分が特に好ましい。
【0166】
なお、本明細書および請求の範囲において、後述するジカルボン酸などのカルボキシル基を有するモノマー成分は、酸クロリドなどの酸ハライド、酸無水物などのアミド形成性誘導体であってもよい。
【0167】
脂肪族モノマー成分としては、脂肪族ジアミン成分、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族アミノカルボン酸成分、ラクタム成分などが挙げられる。
【0168】
脂肪族ジアミン成分としては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状または分岐鎖状C2-20アルキレンジアミンなどが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C4-16アルキレンジアミンが好ましく、直鎖状または分岐鎖状C6-12アルキレンジアミンが特に好ましい。
【0169】
脂肪族ジカルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸(直鎖状または分岐鎖状アルカンジカルボン酸)、不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0170】
直鎖状または分岐鎖状アルカンジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C2-16アルカン-ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸などの直鎖状または分岐鎖状C4-12アルカン-ジカルボン酸が特に好ましい。
【0171】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0172】
脂肪族アミノカルボン酸成分としては、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノC2-20アルキル-カルボン酸などが挙げられる。これらのうち、アミノC3-16アルキル-カルボン酸が好ましく、アミノC5-11アルキル-カルボン酸が特に好ましい。
【0173】
ラクタム成分としては、前記脂肪族アミノカルボン酸に対応するラクタムであってもよく、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどの4~13員環のラクタムが挙げられる。これらのうち、7~13員環のラクタムが好ましい。
【0174】
脂環族モノマー成分は、脂環骨格(または脂肪族炭化水素環骨格)を有していればよく、例えば、脂環族ジアミン成分、脂環族ジカルボン酸成分、脂環族アミノカルボン酸成分が挙げられる。
【0175】
脂環族ジアミン成分としては、ジアミノシクロアルカン、ビス(アミノアルキル)シクロアルカン、ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンなどが挙げられる。
【0176】
ジアミノシクロアルカンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノC5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
【0177】
ビス(アミノアルキル)シクロアルカンとしては、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのビス(アミノC1-4アルキル)C5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
【0178】
ビス(アミノシクロヘキシル)アルカンとしては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロヘキシル)C1-6アルカン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノ-モノないしトリC1-6アルキル-C5-10シクロアルキル)C1-6アルカンなどが挙げられる。
【0179】
脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロアルカンジカルボン酸、架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸、架橋環式シクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
【0180】
シクロアルカンジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0181】
架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。
【0182】
シクロアルケンジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0183】
架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、ノルボルネンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
【0184】
脂環族アミノカルボン酸成分としては、アミノシクロアルカンカルボン酸などが挙げられ、具体的には、アミノシクロヘキサンカルボン酸などのアミノC5-10シクロアルカン-カルボン酸などが挙げられる。
【0185】
芳香族モノマー成分は、芳香環骨格を有していればよく、例えば、芳香族(または芳香脂肪族)ジアミン成分、芳香族(または芳香脂肪族)ジカルボン酸成分、芳香族(または芳香脂肪族)アミノカルボン酸成分などが例示できる。
【0186】
芳香族(または芳香脂肪族)ジアミン成分としては、例えば、ジアミノアレーン、ビス(アミノアルキル)アレーンなどが挙げられる。ジアミノアレーンとしては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミンなどの、m-キシリレンジアミンなどのジアミノC6-14アレーンなどが挙げられ、ビス(アミノアルキル)アレーンとしては、m-キシリレンジアミンなどのビス(アミノC1-4アルキル)アレーンなどが挙げられる。
【0187】
芳香族(または芳香脂肪族)ジカルボン酸成分としては、ベンゼンジカルボン酸、アルキルベンゼンジカルボン酸、多環式アレーンジカルボン酸、ジアリールアルカンジカルボン酸、ジアリールケトンジカルボン酸、ジアリールエーテルジカルボン酸、ジアリールスルフィドジカルボン酸、ジアリールスルホンジカルボン酸などが挙げられる。
【0188】
ベンゼンジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。アルキルベンゼンジカルボン酸としては、4-メチルイソフタル酸、5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
【0189】
多環式アレーンジカルボン酸としては、縮合多環式アレーンジカルボン酸、環集合アレーンジカルボン酸などが挙げられる。
【0190】
縮合多環式アレーンジカルボン酸としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;アントラセンジカルボン酸;フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸が挙げられ、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸が挙げられる。
【0191】
環集合アレーンジカルボン酸としては、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0192】
ジアリールアルカンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0193】
ジアリールケトンジカルボン酸としては、例えば、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0194】
ジアリールエーテルジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0195】
ジアリールスルフィドジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルフィド-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0196】
ジアリールスルホンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0197】
芳香族アミノカルボン酸成分としては、例えば、アミノアレーンカルボン酸などが挙げられる。アミノアレーンカルボン酸としては、アミノ安息香酸などのアミノC6-12アレーン-カルボン酸などが挙げられる。
【0198】
ポリアミド系樹脂は、これらのモノマー成分を単独でまたは2種以上組み合わせて形成でき、例えば、ジアミン成分およびジカルボン酸成分の重合、アミノカルボン酸成分および/またはラクタム成分の重合、ジアミン成分およびジカルボン酸成分とアミノカルボン酸成分および/またはラクタム成分との重合などにより形成してもよい。また、ポリアミド系樹脂は、単一のモノマー成分(単一のジアミン成分およびジカルボン酸成分、単一のアミノカルボン酸成分、または単一のラクタム成分)で形成されたホモポリアミドであってもよく、複数のモノマー成分が共重合したコポリアミドであってもよい。代表的なポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらのうち、脂肪族ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0199】
脂肪族ポリアミド樹脂は、脂肪族モノマー成分に由来する脂肪族モノマー単位で形成されていればよい。脂肪族ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのホモポリアミド;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族アミノカルボン酸成分および/または対応するラクタム成分のホモポリアミド;コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド66/12などの複数の脂肪族モノマー成分の共重合体(コポリアミド)などが挙げられる。
【0200】
なお、本明細書および請求の範囲において、コポリアミドにおける「/」は、前後に記載されたモノマー(単位)を共重合成分(共重合単位)としてコポリアミドが形成されることを意味する。すなわち、コポリアミド6/66は、ポリアミド6を形成する単位と、ポリアミド66を形成する単位とを有する共重合体であることを意味する。
【0201】
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、炭素数が、例えば4~12、好ましくは6~11、さらに好ましくは6~9のアルキレン基を有する脂肪族モノマー成分を含む脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。代表的な好ましい脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸成分とのホモポリアミド;ポリアミド6などの脂肪族アミノカルボン酸成分および/または対応するラクタム成分のホモポリアミドである。
【0202】
ポリアミド系樹脂の密度は、ISO 1183に準拠して、0.95~1.8g/cm程度の範囲から選択でき、樹脂組成物の機械的特性に優れる点から、例えば1~1.7g/cm)、好ましくは1~1.5g/cm、さらに好ましくは1.05~1.3g/cm、より好ましくは1.1~1.2g/cmである。
【0203】
ポリアミド系樹脂のメルトボリュームフローレート(MVR)は、ISO 1133(275℃、5kg荷重)に準拠して、例えば10~400cm/10分、好ましくは50~350cm/10分、さらに好ましくは100~300cm/10分、より好ましくは150~250cm/10分である。MVRが小さすぎると、樹脂組成物の溶融成形性が低下する虞があり、MVRが大きすぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0204】
ポリアミド系樹脂の数平均分子量Mnは、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる評価方法に準拠して、7000~1000000程度の範囲から選択でき、例えば10000~750000、好ましくは20000~500000、さらに好ましくは30000~500000、より好ましくは50000~500000である。
【0205】
(造粒体の割合)
造粒体の割合は、樹脂100質量部に対して1~100質量部程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、3~50質量部、5~30質量部、10~20質量部、13~18質量部、14~17質量部であり、最も好ましくは15~16質量部である。造粒体の割合が少なすぎると、植物由来の繊維状フィラー(A)を樹脂中に均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下する虞がある。
【0206】
(植物由来の繊維状フィラー)
本開示の樹脂組成物は、造粒体に含まれる植物由来の繊維状フィラー(A)(第1の植物由来の繊維状フィラー)に加えて、第2の植物由来の繊維状フィラーをさらに含んでいてもよい。第2の繊維状フィラーとしては、好ましい態様も含めて、造粒体に含まれる植物由来の繊維状フィラー(A)として例示された繊維状フィラーから選択できる。
【0207】
第2の植物由来の繊維状フィラーの割合は、樹脂100質量部に対して、100質量部以下であってもよく、例えば50質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下であり、例えば0.1~3質量部であってもよい。
【0208】
本開示の樹脂組成物は、植物由来の繊維状フィラーを樹脂組成物中に均一に分散し易い点から、造粒体が植物由来の繊維状フィラーを含むのが好ましい。そのため、本開示の樹脂組成物は、第2の植物由来の繊維状フィラーを実質的に含まないのが好ましく、完全に含まないのが特に好ましい。
【0209】
(添加剤)
本開示の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂などの樹脂に配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。前記添加剤としては、シランカップリング剤などのカップリング剤、軟化剤、架橋剤、架橋助剤、充填剤または補強剤、可塑剤、老化または酸化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、染顔料などの着色剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、離型剤、潤滑剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、制振付与剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、滑剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、接着剤、粘着剤、接着性改善剤、粘着付与剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0210】
前記添加剤の合計割合は、樹脂100質量部に対して1000質量部以下であってもよく、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.1~50質量部、さらに好ましくは0.5~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0211】
(樹脂組成物の特性)
本開示の樹脂組成物は、樹脂組成物中にセルロース繊維などの繊維状フィラー(A)が均一に分散しているため、機械的特性に優れている。
【0212】
本開示の樹脂組成物の曲げ強さは、例えば10MPa以上であってもよく、例えば10~300MPa、好ましくは20~200MPa、さらに好ましくは30~150MPaである。
【0213】
本開示の樹脂組成物の曲げ強さは、樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、例えば10~100MPa、好ましくは20~80MPa、さらに好ましくは22~50MPa、より好ましくは25~40MPa、最も好ましくは30~35MPaであってもよい。
【0214】
本開示の樹脂組成物の曲げ強さは、樹脂がポリアセタール系樹脂である場合、例えば30~300MPa、好ましくは50~200MPa、さらに好ましくは70~150MPa、より好ましくは80~100MPa、最も好ましくは85~95MPaであってもよい。
【0215】
本開示の樹脂組成物の曲げ強さは、樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば30~300MPa、好ましくは50~200MPa、さらに好ましくは70~150MPa、より好ましくは80~120MPa、最も好ましくは90~100MPaであってもよい。
【0216】
本開示の樹脂組成物の曲げ強さは、樹脂がポリアミド系樹脂である場合、例えば30~300MPa、好ましくは50~250MPa、さらに好ましくは70~200MPa、より好ましくは100~150MPa、最も好ましくは120~130MPaであってもよい。
【0217】
本開示の樹脂組成物の曲げ弾性率は1000MPa以上であってもよく、例えば1000~10000MPa、好ましくは1300~8000MPa、さらに好ましくは1500~5000MPaである。
【0218】
本開示の樹脂組成物の曲げ弾性率は、樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、例えば1000~3000MPa、好ましくは1200~2500MPa、さらに好ましくは1300~2000MPa、より好ましくは1400~1800MPa、最も好ましくは1500~1700MPaである。
【0219】
本開示の樹脂組成物の曲げ弾性率は、樹脂がポリアセタール系樹脂である場合、例えば2000~8000MPa、好ましくは2500~5000MPa、さらに好ましくは3000~4500MPa、より好ましくは3500~4000MPa、最も好ましくは3700~3900MPaである。
【0220】
本開示の樹脂組成物の曲げ弾性率は、樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば1500~8000MPa、好ましくは2000~5000MPa、さらに好ましくは2500~4000MPa、より好ましくは3000~3800MPa、最も好ましくは3400~3600MPaである。
【0221】
本開示の樹脂組成物の曲げ弾性率は、樹脂がポリアミド系樹脂である場合、例えば2000~8000MPa、好ましくは3000~5000MPa、さらに好ましくは3500~4500MPa、より好ましくは3800~4200MPa、最も好ましくは3900~4100MPaである。
【0222】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、樹脂組成物の曲げ強さおよび曲げ弾性率は、ISO 178に準じて測定できる。また、前記曲げ強さおよび曲げ弾性率は、補強剤および充填剤を含まない樹脂組成物で測定した曲げ強さおよび曲げ弾性率である。
【0223】
本開示の樹脂組成物の形状は、特に限定されず、ペレットなどの形態であってもよい。
【0224】
(樹脂組成物の製造方法)
本開示の樹脂組成物は、造粒体と樹脂とを混練する樹脂混練工程を含む方法で製造できる。前記樹脂混練工程において、造粒体と樹脂とを混練する方法は、樹脂の種類に応じて、慣用の混練方法であってもよい。混練方法としては、熱可塑性樹脂と造粒体と必要に応じて他の成分とを、乾式混合、溶融混練などの慣用の方法で混練する方法など挙げられる。これらの混練方法のうち、溶融混練が好ましい。
【0225】
溶融混練する場合、混練温度は、有機材料(B)の融点(または溶融温度)以上の温度であってもよく、例えば150~300℃、好ましくは170~280℃、さらに好ましくは180~250℃である。
【0226】
混練温度は、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、例えば170~250℃、好ましくは180~230℃、さらに好ましくは190~210℃である。
【0227】
混練温度は、熱可塑性樹脂がポリアセタール系樹脂である場合、例えば170~250℃、好ましくは180~230℃、さらに好ましくは190~210℃である。
【0228】
混練温度は、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば180~280℃、好ましくは200~250℃、さらに好ましくは220~240℃である。
【0229】
混練温度は、熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である場合、例えば180~280℃、好ましくは200~250℃、さらに好ましくは220~240℃である。
【0230】
溶融混練の方法としては、慣用の方法を利用でき、二軸押出混練機などの押出混練機を利用した方法であってもよい。スクリュー回転数は、例えば10~1000rpm、好ましくは50~300rpm、さらに好ましくは100~200rpmである。
【0231】
(成形体)
本開示の成形体は、前記樹脂組成物を慣用の成形法で成形することにより製造できる。慣用の成形法としては、圧縮成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などが挙げられる。樹脂が熱可塑性樹脂である場合、本開示の樹脂組成物は、溶融流動性に優れるため、これらの成形方法のうち、高度な溶融流動性が要求される成形方法、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法が好ましく、射出成形法が特に好ましい。
【0232】
射出成形法において、シリンダー温度は、例えば150~300℃、好ましくは180~280℃、さらに好ましくは180~260℃である。シリンダー温度が低すぎると、成形性が低下する虞があり、逆に高すぎると、成形体の機械的特性が低下する虞がある。
【0233】
シリンダー温度は、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、例えば150~250℃、好ましくは180~230℃、さらに好ましくは190~210℃である。
【0234】
シリンダー温度は、熱可塑性樹脂がポリアセタール系樹脂である場合、例えば150~250℃、好ましくは180~230℃、さらに好ましくは200~220℃である。
【0235】
シリンダー温度は、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば150~300℃、好ましくは220~280℃、さらに好ましくは240~260℃である。
【0236】
シリンダー温度は、熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である場合、例えば150~300℃、好ましくは220~280℃、さらに好ましくは240~260℃である。
【0237】
射出圧力は、例えば10~100MPa、好ましくは20~80MPa、さらに好ましくは40~60MPaである。
【0238】
金型温度は、例えば10~130℃、好ましくは15~120℃、さらに好ましくは20~100℃である。金型温度が低すぎると、成形体の生産性が低下する虞があり、逆に高すぎると、成形体の機械的特性が低下する虞がある。
【0239】
金型温度は、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、例えば10~100℃、好ましくは15~50℃、さらに好ましくは20~40℃である。
【0240】
金型温度は、熱可塑性樹脂がポリアセタール系樹脂である場合、例えば10~100℃、好ましくは20~70℃、さらに好ましくは30~50℃である。
【0241】
金型温度は、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば30~120℃、好ましくは50~90℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0242】
金型温度は、熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂である場合、例えば30~130℃、好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~90℃である。
【0243】
本開示の成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、線状または糸状などの一次元的構造体;フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造体;ブロック状、棒状、管状またはチューブ状、中空状などの三次元的構造体などが挙げられる。特に、本開示の樹脂組成物は、射出成形によって高い生産性で成形体を製造できるため、三次元的構造体であっても、高い生産性で製造できる。
【0244】
[ゴム組成物]
本開示のゴム組成物は、前記造粒体およびゴムを含む。前記造粒体は、粒状であり、かつ特定の嵩密度を有しているため、取り扱い性に優れており、例えば、前記造粒体とゴムとを混練してゴム組成物を調製する際に、混練機に円滑に供給できるとともに、ゴムと混練しても造粒体に含まれる繊維状フィラー(A)の凝集を抑制できる。そのため、ゴム組成物中に繊維状フィラー(A)を均一に分散でき、ゴム組成物の機械的特性を向上できる。
【0245】
(ゴム)
樹脂組成物に含まれるゴムは、未加硫のゴム成分である。ゴムとしては、特に限定されず、慣用のゴムを利用できる。慣用のゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム(ACM、ANM)、ブチルゴム(IIR)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FFKM、FKM)、含イオウゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのゴムのうち、繊維状フィラー(A)の分散性向上効果が大きい点から、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムが好ましい。
【0246】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム、ポリブタジエン[例えば、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエン(VBR)など]、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、水添ゴム(例えば、水素化BR、水素化NBR、水素化SBRなど)であってもよい。これらのジエン系ゴムは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0247】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-ブテンゴム、エチレン-1-ブテン-ジエンゴム、プロピレン-1-ブテン-ジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム、マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム(M-EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M-CM)などが挙げられる。オレフィン系ゴムに含まれるジエン単位(非共役ジエン単位)としては、例えば、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン由来の単位などが挙げられる。これらのオレフィン系ゴムは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0248】
なお、共重合ゴムは、ランダムまたはブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体などが含まれる。
【0249】
これらのうち、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムが好ましく、SBR、EPMおよびEPDMからなる群より選択された少なくとも1種が特に好ましい。
【0250】
なかでも、ゴム組成物の加硫物の硬度、引裂強度を高度に向上できる点から、ジエン系ゴムが好ましい。さらに、ジエン系ゴムの中でも、繊維状フィラー(A)の分散性向上効果が大きい点から、SBRなどの芳香族骨格または芳香環を有するジエン系ゴムが特に好ましい。
【0251】
ジエン系ゴムの割合は、ゴム中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0252】
(造粒体の割合)
造粒体の割合は、ゴム100質量部に対して1~100質量部程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、3~50質量部、5~40質量部、5.5~30質量部、6~20質量部、6~15質量部、6.5~12質量部であり、最も好ましくは7~10質量部である。造粒体の割合が少なすぎると、植物由来の繊維状フィラー(A)をゴム中に均一に分散させるのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物の成形性が低下する虞がある。
【0253】
(植物由来の繊維状フィラー)
本開示のゴム組成物は、造粒体に含まれる植物由来の繊維状フィラー(A)(第1の植物由来の繊維状フィラー)に加えて、第3の植物由来の繊維状フィラーをさらに含んでいてもよい。第3の繊維状フィラーとしては、好ましい態様も含めて、造粒体に含まれる植物由来の繊維状フィラー(A)として例示された繊維状フィラーから選択できる。
【0254】
第3の植物由来の繊維状フィラーの割合は、ゴム100質量部に対して、100質量部以下であってもよく、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、最も好ましくは1質量部以下であり、例えば0.1~2質量部であってもよい。
【0255】
本開示のゴム組成物は、植物由来の繊維状フィラーをゴム組成物中に均一に分散し易い点から、造粒体が植物由来の繊維状フィラーを含むのが好ましい。そのため、本開示のゴム組成物は、第3の植物由来の繊維状フィラーを実質的に含まないのが好ましく、完全に含まないのが特に好ましい。
【0256】
(添加剤)
本開示のゴム組成物は、ゴムに配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。前記添加剤としては、加硫剤(硫黄などの硫黄系加硫剤、有機過酸化物など)、加硫助剤、充填剤または補強剤(カーボンブラック、シリカ、短繊維など)、シランカップリング剤などのカップリング剤、軟化剤、可塑剤、老化または酸化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、染顔料などの着色剤、安定剤(紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、離型剤、潤滑剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、制振付与剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、滑剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、接着剤、粘着剤、接着性改善剤、粘着付与剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0257】
前記添加剤の合計割合は、ゴム100質量部に対して1000質量部以下であってもよく、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.1~50質量部、さらに好ましくは0.5~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0258】
(ゴム組成物の特性)
本開示のゴム組成物は、ゴム組成物中にセルロース繊維などの繊維状フィラー(A)が均一に分散しているため、機械的特性に優れている。
【0259】
本開示のゴム組成物の加硫物(架橋体)は、硬度が高い。本開示のゴム組成物の加硫物の硬度(タイプAデュロメータ)は30以上であってもよく、例えば35~50、好ましくは37~45、さらに好ましくは38~43、より好ましくは39~41である。
【0260】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、硬度(タイプAデュロメータ)は、ISO 7619-1に準拠し、デュロメータ(タイプA)を用いて測定できる。
【0261】
(ゴム組成物の製造方法)
本開示のゴム組成物は、造粒体とゴムとを混練するゴム混練工程を含む方法で製造できる。前記ゴム混練工程において、造粒体とゴムとを混練するは、ゴムの種類に応じて、慣用の混練方法であってもよい。混練方法としては、ミキシングローラなどのロール式混練機を用いて混練する方法、バンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー、押出機(一軸または二軸押出機など)などの密閉式混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。これらの混練方法のうち、繊維状フィラー(A)を均一に混練し易い点から、密閉式混練機を用いる混練方法が好ましく、ニーダーを用いる混練方法が特に好ましい。
【0262】
混練温度は、ゴムの種類に応じて適宜選択できるが、有機材料(B)の融点または溶融温度以上の温度であってもよく、例えば80~200℃、好ましくは100~150℃、さらに好ましくは105~140℃、より好ましくは110~135℃、最も好ましくは115~130℃である。
【0263】
スクリュー回転数は、例えば5~500rpm、好ましくは10~100rpm、さらに好ましくは30~50rpmである。混練時間は、例えば0.5~60分、好ましくは1~30分、さらに好ましくは3~10分である。
【0264】
(成形体)
本開示の成形体は、前記ゴム組成物を慣用の成形法で成形することにより製造できる。慣用の成形法としては、前記ゴム組成物を加硫(または架橋)する加硫工程を含む方法であればよい。
【0265】
加硫工程において、加硫温度は、ゴムの種類に応じて選択でき、例えば100~250℃、好ましくは130~200℃、さらに好ましくは140~190℃、より好ましくは145~180℃である。
【0266】
本開示の成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、線状または糸状などの一次元的構造体;フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造体;ブロック状、棒状、管状またはチューブ状、中空状などの三次元的構造体などが挙げられる。特に、本開示のゴム組成物は、射出成形によって高い生産性で成形体を製造できるため、三次元的構造体であっても、高い生産性で製造できる。
【実施例
【0267】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例で用いた原料、機器および評価方法は以下の通りである。
【0268】
[原料]
(植物由来の繊維状フィラー)
セルロース繊維:植物由来のパルプ(化学修飾されていない繊維、平均繊維径40μm、平均繊維長1mm以上)のシートを4mm×4mm角程度のチップ状に裁断したもの、嵩密度0.15g/cm
【0269】
(有機材料)
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製「BPEF」、分子量438.5、室温固体、粉末状、平均粒径3μm
ステアリン酸:東京化成工業(株)製、分子量284.5、室温固体、粉末状、平均粒径2μm
ステアリン酸アミド:東京化成工業(株)製、分子量283.5、室温固体、粉末状、平均粒径2μm
BisA-2EO:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)、富士フイルム和光純薬(株)製、分子量316.4、室温固体、粉末状、平均粒径2μm
PEG200:ポリエチレングリコール 200、東京化成工業(株)製、平均分子量190~210、室温液体。
【0270】
(熱可塑性樹脂)
高密度ポリエチレン樹脂(HDPE):日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HJ490」
ポリアセタール樹脂(POM):ポリプラスチックス(株)製「ジュラコン M450-44」
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバデュラン 5010R5」
ポリアミド6樹脂(PA6):ユニチカ(株)製「ユニチカナイロン A1030BRL」。
【0271】
(ゴム)
SBR:(株)ENEOSマテリアル製「ESBR 1502」。
【0272】
[使用機器]
混合機:カワタ(株)製「スーパーミキサー SMV-20B」
押出造粒機:ダルトン社製「ディスクペレッター F-5型」、ダイス径3mm
二軸押出機:(株)テクノベル製「MFU25W-45MG-NH」
射出成形機:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」
バッチ式ニーダー:(株)テクノベル製「MSR-60」
手動油圧真空加熱プレス機:(株)井元製作所製。
【0273】
[造粒性]
実施例1~6および比較例1~2において、セルロース繊維、有機材料および水を押出造粒機で造粒した際に、造粒性について、以下の基準で評価した。
【0274】
可:造粒が安定的に実施でき、生成物がペレット状に固まった
不可:生成物がペレット状に固まらず造粒できなかった。
【0275】
[造粒体の形状]
実施例1~6で得られた造粒体の形状について、以下の基準で評価した。
【0276】
○:ペレット状に近い
△:ペレット状だが表面のひび割れやささくれが多い。
【0277】
[嵩密度]
100mL容メスシリンダーに、実施例1~6で得られた造粒体および比較例4~5で得られた綿状体を、タップすることなく100mL分入れて内容物の質量を測定し、以下の式に従って嵩密度を算出した。
【0278】
嵩密度(g/cm)=内容物の質量(g)/容量(100cm)。
【0279】
[供給性]
実施例7~15および比較例3~12において、樹脂組成物を調製する際に、混練機である二軸押出機のフィーダーへの原料の供給性について、以下の基準で評価した。
【0280】
可:混練機へ安定して原料を供給できた
不可:ブリッジが発生し混練機へ原料を供給できなかった。
【0281】
[樹脂組成物またはゴム組成物の凝集性]
実施例7~15、比較例6、8、10および12で得られた樹脂組成物(混練物)、または実施例16~18で得られたゴム組成物(混練物)の表面における凝集物の有無を観察した結果を、以下の基準で評価した。
【0282】
無:混練物の表面に凝集物は見られなかった(詳細は以下の通り)
【0283】
(樹脂:無作為に抜き出した混練物のペレット(直径3mm程度、長さ3mm程度)
50個のうち、径0.5mm以上の凝集物が含まれたペレットが1個以下
ゴム:温度150℃にて75mm×75mm×2mmサイズのプレスシートを作製
した際に、プレスシートに含まれる径0.5mm以上の凝集物が1個以下)
【0284】
少:混練物の表面に凝集物がわずかに見られた(詳細は以下の通り)
【0285】
(樹脂:無作為に抜き出した混練物のペレット(直径3mm程度、長さ3mm程度)
50個のうち、径0.5mm以上の凝集物が含まれたペレットが2個以上
5個以下
ゴム:温度150℃にて75mm×75mm×2mmサイズのプレスシートを作製
した際に、プレスシートに含まれる径0.5mm以上の凝集物が2個以上
5個以下)
【0286】
多:混練物の表面に凝集物が多く見られた(詳細は以下の通り)
【0287】
(樹脂:無作為に抜き出した混練物のペレット(直径3mm程度、長さ3mm程度)
50個のうち、径0.5mm以上の凝集物が含まれたペレットが6個以上
ゴム:温度150℃にて75mm×75mm×2mmサイズのプレスシートを作製
した際に、プレスシートに含まれる径0.5mm以上の凝集物が6個以上)
【0288】
[曲げ強さおよび曲げ弾性率]
実施例7~15、比較例3および6~12で得られた短冊状試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率をISO 178に準じて測定した。
【0289】
[デュロメータ硬度]
実施例16~18および比較例13で得られたシート状試験片のデュロメータ硬度をISO 7619-1に準じて測定した。
【0290】
[実施例1]
セルロース繊維100質量部、BPEF 33.3質量部、水166.7質量部を、混合機を用いて回転数2000rpmにて10分間攪拌した。得られた混合物を、押出造粒機を用いて非加熱状態で造粒し、湿潤状態の造粒体を製造し、造粒性を評価した。続いて、真空乾燥機を用いて、得られた湿潤状態の造粒体100℃にて8時間乾燥し、水分を除去し、造粒体Aを得た。得られた造粒体Aの形状を評価した。
【0291】
[実施例2]
BPEFおよび水の割合を表1に示す割合に変更する以外は実施例1と同様にして造粒体Bを製造し、造粒性および造粒体Bの形状を評価した。
【0292】
[実施例3]
BPEFおよび水の割合を表1に示す割合に変更する以外は実施例1と同様にして造粒体Cを製造し、造粒性および造粒体Cの形状を評価した。
【0293】
[実施例4]
BPEFの代わりにステアリン酸を用いる以外は実施例1と同様にして造粒体Dを製造し、造粒性および造粒体Dの形状を評価した。
【0294】
[実施例5]
BPEFの代わりにステアリン酸アミドを用いる以外は実施例1と同様にして造粒体Eを製造し、造粒性および造粒体Eの形状を評価した。
【0295】
[実施例6]
BPEFの代わりにBisA-2EOを用いる以外は実施例1と同様にして造粒体Fを製造し、造粒性および造粒体Fの形状を評価した。
【0296】
[比較例1]
セルロース繊維100質量部、水100質量部を、混合機を用いて回転数2000rpmにて10分間攪拌した。得られた混合物を、押出造粒機を用いて造粒したが、ペレット状に固まらず、造粒できなかった。
【0297】
[比較例2]
セルロース繊維100質量部、PEG200 33.3質量部、水166.7質量部を、混合機を用いて回転数2000rpmにて10分間攪拌した。得られた混合物を、押出造粒機を用いて造粒したが、ペレット状に固まらず、造粒できなかった。
【0298】
実施例1~6および比較例1~2の組成および評価結果を表1に示す。
【0299】
【表1】
【0300】
表1から明らかなように、セルロース繊維と水のみを含む比較例1では生成物が固まらずに造粒できなかったことに対して、セルロース繊維と水の他にBPEFを添加する実施例1~3では、安定的に造粒することができた。なお、実施例1~3を比較すると、BPEF量が相対的に少ない実施例3では造粒体にひび割れやささくれが目立ったことに対して、BPEFが相対的に多い実施例1~2では造粒体の形状に問題がなかった。また、BPEFの代わりに各種の有機材料を使用した実施例4~6についても、実施例1~2と同様に問題なく造粒することができた。一方、BPEFの代わりに液状化合物である比較材料のPEG200を使用した比較例2では、比較例1と同様に生成物が固まらず造粒できなかった。
【0301】
[実施例7]
HDPE 86.7質量部、実施例1で得られた造粒体A 13.3質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にHDPEは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Aは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度30℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0302】
[実施例8]
HDPE 86.7質量部、BPEF 1.6質量部、実施例2で得られた造粒体B 11.7質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にHDPEおよびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Bは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度30℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0303】
[実施例9]
HDPE 86.7質量部、BPEF 2.3質量部、実施例3で得られた造粒体C 11.0質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にHDPEおよびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Cは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度30℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0304】
[実施例10~12]
造粒体Aの代わりに造粒体D~Fを用いる以外は実施例7と同様にして短冊状試験片を製造し、供給性および凝集性を評価し、試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0305】
[比較例3]
HDPEを、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂を調製し、供給性を評価した。混練の際にHDPEは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとした。得られた樹脂ペレットを、射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度30℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0306】
[比較例4]
(綿状体Aの調製)
押出造粒機での造粒を行わずに真空乾燥して水分を除去した以外は実施例1と同様にして綿状体Aを得た。得られた綿状体Aは綿状であり、嵩密度は0.06g/cmであった。
【0307】
(短冊状試験片の調製)
造粒体Aの代わりに綿状体Aを用いる以外は実施例7と同様にして混練を試みたが、綿状体Aの嵩密度が低いために混練機への供給不良が発生し、混練物を作製することができなかった。
【0308】
[比較例5]
(綿状体Bの調製)
セルロース繊維100g質量部に対して水を200g加えて家庭用ミキサーにて混合し、固形分33質量%の水湿潤体300gを得た。得られた水湿潤体に対してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300gおよびBPEF33.3gを加え、攪拌した後、80℃にて減圧して水およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去し、綿状体Bを得た。得られた綿状体Bの嵩密度は0.05g/cmであった。
【0309】
(短冊状試験片の調製)
造粒体Aの代わりに綿状体Bを用いる以外は実施例7と同様にして混練を試みたが、綿状体Bの嵩密度が低いために混練機への供給不良が発生し、混練物を作製することができなかった。
【0310】
[比較例6]
HDPE 86.7質量部、BPEF 3.3質量部、セルロース繊維10.0質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にHDPEおよびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、セルロース繊維は押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度30℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0311】
実施例7~12および比較例3~6の組成および評価結果を表2に示す。
【0312】
【表2】
【0313】
表2から明らかなように、HDPEのみを含む比較例3に対して、BPEF含有造粒体とHDPEを含む実施例7~9では、曲げ強さと曲げ弾性率が向上した。一方、比較例4~5ではHDPEと綿状体との混練を試みたが、綿状体の嵩密度が低いために混練機への供給不良が発生し、混練物を作製することができなかった。また、比較例6ではHDPE、セルロース繊維、BPEFとの混練を行ったが、セルロース繊維の分散性が不十分であり、混練物の表面に凝集物が多く見られた。この凝集物に起因してか、比較例6の曲げ強さ、曲げ弾性率は実施例7~9に比べて劣っていた。なお、実施例7~9を比較すると、BPEF量が相対的に少ない造粒体を用いた実施例9では、混練物の表面に凝集物が少し見られた。これについては、造粒体作製時のBPEF量が相対的に少なくなると乾燥時のセルロース繊維同士の凝集を完全には抑制できなくなるためではないかと考えられる。この凝集物に起因してか、実施例9の曲げ強さ、曲げ弾性率は実施例7および実施例8に比べて少し低くなった。なお、BPEF以外の各種有機材料含有造粒体とHDPEを含む実施例10~12は、BPEF含有造粒体を用いた実施例7~8と同様に、混練機への供給性および表面凝集物ともに問題なかった。しかし、用いた有機材料の骨格がBPEFに比較して多環式芳香環を有さない軟らかなものであったため、実施例10~12の曲げ強さ、曲げ弾性率は実施例7~8に比較して劣っていた。
【0314】
[実施例13]
POM 86.7質量部、実施例1で得られた造粒体A 13.3質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPOMは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Aは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0315】
[実施例14]
PBT 86.7質量部、実施例1で得られた造粒体A 13.3質量部を、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPBTは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Aは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度70℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0316】
[実施例15]
PA6 86.7質量部、実施例1で得られた造粒体A 13.3質量部を、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPA6は押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、造粒体Aは押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0317】
[比較例7]
POMを、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂を調製し、供給性を評価した。混練の際にPOMは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとした。得られた樹脂ペレットを、射出成形機を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0318】
[比較例8]
POM 86.7質量部、BPEF 3.3質量部、セルロース繊維10.0質量部を、二軸押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPOMおよびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、セルロース繊維は押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0319】
[比較例9]
PBTを、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂を調製し、供給性を評価した。混練の際にPBTは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとした。得られた樹脂ペレットを、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度70℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0320】
[比較例10]
PBT 86.7質量部、BPEF 3.3質量部、セルロース繊維10.0質量部を、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPBTおよびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、セルロース繊維は押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度70℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0321】
[比較例11]
PA6を、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂を調製し、供給性を評価した。混練の際にPA6はトップフィードを用いたトップフィードとした。得られた樹脂ペレットを、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0322】
[比較例12]
PA6 86.7質量部、BPEF 3.3質量部、セルロース繊維10.0質量部を、二軸押出機を用いて、温度230℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量約10kg/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製し、供給性および凝集性を評価した。混練の際にPA6およびBPEFは押出機のトップフィーダーを用いたトップフィードとし、セルロース繊維は押出機のサイドフィーダーを用いたサイドフィードとした。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、短冊状試験片を得た。得られた試験片の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
【0323】
実施例13~15および比較例7~12の組成および評価結果を表3に示す。
【0324】
【表3】
【0325】
表3から明らかなように、樹脂のみを含む比較例7、比較例9、比較例11に対して、対応する樹脂と造粒体を含む実施例13、実施例14、実施例15では、曲げ強さと曲げ弾性率が向上した。これに対して、比較例8、比較例10、比較例12では樹脂、セルロース繊維、BPEFとの混練を行ったが、セルロース繊維の分散性が不十分であり、混練物の表面に凝集物が多く見られた。この凝集物に起因してか、比較例8、比較例10、比較例12の曲げ強さ、曲げ弾性率は、対応する樹脂と造粒体を含む実施例13、実施例14、実施例15に比べて劣っていた。
【0326】
[実施例16]
SBR 93.3質量部、実施例1で得られた造粒体A 6.7質量部を、バッチ式ニーダーを用いて、温度120℃、スクリュー回転数40rpmで5分間混練し、塊状のゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を、手動油圧真空加熱プレス機を用いて、熱盤温度150℃の条件で2分間プレスし、シート状試験片を得た。
【0327】
[実施例17]
SBR 93.3質量部、BPEF 0.9質量部、実施例2で得られた造粒体B 5.8質量部を、バッチ式ニーダーを用いて、温度120℃、スクリュー回転数40rpmで5分間混練し、塊状のゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を、手動油圧真空加熱プレス機を用いて、熱盤温度150℃の条件で2分間プレスし、シート状試験片を得た。
【0328】
[実施例18]
SBR 93.3質量部、BPEF 1.2質量部、実施例3で得られた造粒体C 5.5質量部を、バッチ式ニーダーを用いて、温度120℃、スクリュー回転数40rpmで5分間混練し、塊状のゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を、手動油圧真空加熱プレス機を用いて、熱盤温度150℃の条件で2分間プレスし、シート状試験片を得た。
【0329】
[比較例13]
SBRを、手動油圧真空加熱プレス機を用いて、熱盤温度150℃の条件で2分間プレスし、シート状試験片を得た。
【0330】
実施例16~18および比較例13の組成および評価結果を表4に示す。
【0331】
【表4】
【0332】
表4から明らかなように、SBRのみを含む比較例13に対して、SBRと造粒体を含む実施例16~18では硬度が向上した。なお、実施例16~18を比較すると、造粒体中のBPEF量が少なくなる実施例16、実施例17、実施例18の順番に、混練物の表面凝集物が多くなる傾向が見られた。これについては、造粒体作製時のBPEF量が少なくなるほど、乾燥時のセルロース繊維同士の凝集抑制が不十分となるためではないかと考えられる。この凝集物に起因してか、造粒体中のBPEF量が少なくなる実施例16、実施例17、実施例18の順番に硬度が低下した。なお、ゴム組成物については、同じ造粒体を用いる樹脂組成物に比較して凝集物が発生しやすくなる傾向が見られた(実施例16と実施例7、実施例17と実施例8)。これについては、ゴム混練に用いるバッチ式ニーダーの方が、樹脂混練に用いる二軸押出機よりも剪断力が小さくなるため、凝集物が発生しやすかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0333】
本開示の造粒体は、樹脂やゴムへの分散性に優れ、樹脂やゴムの補強剤として利用できる。本開示の造粒体を含む樹脂組成物は、種々の分野の樹脂成形品[例えば、自動車部品、電気・電子部品、建築資材(壁材など)、土木資材、農業資材、包装資材(容器、緩衝材など)、生活資材(日用品など)、光学部材など]に利用できる。本開示の造粒体を含むゴム組成物は、各種の工業用部材(コンベアベルトなどのベルト;ゴムカバーロール、印刷ロールなどのロール;ガスケット;オイルシールなどのシール;パッキン;耐油ホースなどのホースなど)、建築部材(窓枠ゴム、制振材、カーペットバッギング材など)、輸送機部材(自動車用部材、タイヤ、動力伝達ベルトなど)、電気・電子機器部材(電線被覆物など)に利用できる。
【要約】
【課題】取り扱い性、混練機への供給性に優れ、かつ樹脂やゴム中における植物由来の繊維状フィラーの分散性に優れた造粒体を提供する。
【解決手段】平均繊維径が0.5~100μmである植物由来の繊維状フィラー(A)と、常温常圧で固体であり、かつ分子量が100~1000である有機材料(B)とを含み、かつ嵩密度が0.1~0.5g/cmである造粒体を調製する。前記有機材料(B)は、融点100℃以上の非繊維状材料であってもよい。前記有機材料(B)は、多環式芳香環などの疎水性骨格と極性基とを有する化合物であってもよい。前記繊維状フィラー(A)はセルロース繊維であってもよい。前記造粒体は、樹脂やゴムと混練して組成物を調製してもよい。
【選択図】なし