(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】クーラント供給装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240610BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240610BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
B23Q11/10 Z
B01D17/04 501D
(21)【出願番号】P 2023219547
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】船越 元気
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-127706(JP,U)
【文献】特開昭56-017604(JP,A)
【文献】特開2020-151685(JP,A)
【文献】特開2017-077535(JP,A)
【文献】特開2000-288304(JP,A)
【文献】特開平10-165704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00 - 11/14
B24B 55/00 - 57/02
B01D 17/022
B01D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)工作機械に供給された第1クーラントと、(ii)供給された場所から前記第1クーラントと一緒に流れてくる(a)工作くずと(b)前記第1クーラント
中に分散した分散油と
(c)前記第1クーラントの液面に浮上している浮上油と、を貯留するクーラントタンクと、
前記クーラントタンクに貯留されているクーラントから採取した第2クーラントから前記工作くずを分離するくず分離部と、
前記くず分離部で分離処理された第3クーラントから前記分散油を分離する親水撥油フィルタと、
前記クーラントタンクに貯留された第1クーラントから前記浮上油を分離する浮上油分離部と、
前記浮上油分離部によって前記第1クーラントから分離された前記浮上油を前記親水撥油フィルタが設けられた油分離槽に移送する第1移送部と、を備える、クーラント供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクーラント供給装置であって、
前記くず分離部は、前記クーラントタンクに貯留された第1クーラントを採取する採取口を含み、
前記採取口は、前記クーラントタンクに貯留された第1クーラントの液面よりも下に位置する、クーラント供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載のクーラント供給装置であって、
前記クーラント供給装置は更に、
前記親水撥油フィルタによって前記分散油が分離されたクーラントを前記クーラントタンクに移送する第4移送部を備える、クーラント供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に付設される装置として、工作機械の加工領域に水溶性のクーラントを供給するクーラント供給装置が知られている。クーラント供給装置から供給されたクーラントは、工具刃先やワークを冷却したり、加工によって生じた工作くずを加工領域外に排出したりする。
【0003】
工作機械は可動する機構を備えるため、工作機械には潤滑油が供給される。そのため、加工領域に供給されたクーラントは、潤滑油が混入した状態でクーラントタンクに回収される。また、ワークが加工されると、工作くずが生じる。そのため、クーラントは工作くずが混入した状態でクーラントタンクに回収される。潤滑油や工作くずが混入すると、クーラントの性能が低下しやすい。また、タンク中のクーラント表層に油膜が形成されることにより、嫌気性の細菌が繁殖して腐敗臭が発生しやすい。
【0004】
このような課題に対し、例えば特許文献1は次のようなクーラント供給装置を開示する。すなわち、クーラント供給装置は、工作機械で使用されたクーラントを貯留する貯留タンクと、貯留タンクから工作くず及び液面に広がった油を含むクーラントを吸引するノズルとを備える。クーラント供給装置は更に、ノズルによって吸引したクーラントから工作くず等を回収するスラッジ分離脱水機と、工作くずを取り除いたクーラントから油を分離する粗粒化エレメントを備える。スラッジ分離脱水機は、袋状のフィルタを含む。袋状のフィルタは、繊維がランダムに分散している不織布等で構成される。袋状のフィルタは、通過するクーラントをろ過し、クーラントから工作くずを分離する。粗粒化エレメントは、不織布等の極細繊維シートで構成される。粗粒化エレメントは、通過するクーラント中の油を捕捉、凝集、粗大化し、分離する。粗粒化エレメントを通過したクーラントは、貯留タンクに戻され、再度工作機械に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作くず及び油を含むクーラントを浄化する方法として、フィルタによってクーラントをろ過する方法がある。しかしながら、工作くず及び油の両方をろ過する場合、工作くずによってフィルタに目詰まりが生じやすい。そのため、フィルタの寿命が短くなりやすく、交換頻度が多くなりやすい。これに対し、特許文献1のクーラント供給装置では、工作くずを分離した後、油を分離する。これにより、油を分離するフィルタが長寿命化される。
【0007】
ところで、クーラントに含まれる油としては、クーラント液面に浮上している浮上油、クーラント液中に分散している分散油等がある。浮上油は、一般に、200μm以上の大きさを有する。分散油は、一般に、2-10μmの大きさを有する。そのため、浮上油の分離に比べて、分散油の分離は難しい。
【0008】
特許文献1のクーラント供給装置では、分散油は粗粒化エレメントで分離される。粗粒化エレメントを通過するクーラントは、繊維シートの孔(繊維同士の隙間)を通る。クーラント中の分散油は、繊維シートの孔に捕捉される。繊維シートの孔の大きさを設定することで、所望の大きさの分散油をクーラントから分離することができる。しかしながら、繊維シートの孔が小さすぎると、微小な分散油を捕捉することができる一方、繊維シートの孔が目詰まりしやすい。繊維シートの孔が大きすぎると、穴の目詰まりが低減される一方、微小な分散油が分離されにくい。
【0009】
本発明は、クーラント中に含まれる分散油を分離するとともにフィルタの目詰まりを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクーラント供給装置は、
(i)工作機械に供給された第1クーラントと、(ii)供給された場所から前記第1クーラントと一緒に流れてくる(a)工作くずと(b)前記第1クーラントから分散した分散油と、を貯留するクーラントタンクと、
前記クーラントタンクに貯留されているクーラントから採取した第2クーラントから前記工作くずを分離するくず分離部と、
前記くず分離部で分離処理された第3クーラントから前記分散油を分離する親水撥油フィルタと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクーラント供給装置では、分散油を分離する前にくず分離部によってクーラントから工作くずが分離される。その後、親水撥油フィルタによって工作くずが分離されたクーラントから分散油が分離される。そのため、親水撥油フィルタは、工作くずによって目詰まりしにくい。また、親水撥油フィルタは、撥油性を有する。そのため、フィルタへの分散油の付着が低減され、フィルタが分散油によって目詰まりしにくい。したがって、上記のクーラント供給装置によれば、クーラント中に含まれる分散油を分離するとともにフィルタの目詰まりを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態のクーラント供給装置及び工作機械の概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のクーラント供給装置における親水撥油フィルタを説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の変形例1のクーラント供給装置の概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の変形例2のクーラント供給装置の概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のクーラント供給装置と工作機械との配置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態のクーラント供給装置及び工作機械の概略図である。クーラント供給装置1は、工作機械3に付設される。クーラント供給装置1は、液状のクーラントを工作機械3に供給する。クーラントは、特に限定されない。クーラントは、例えば工作機械に用いられる公知のクーラントが適用される。クーラントは、例えば水性のクーラントである。工作機械3は、特に限定されない。工作機械3は、クーラント供給装置1から供給されたクーラントを用いて、ワーク及び工具の冷却等をする。
【0015】
クーラント供給装置1は、クーラントタンク11と、くず分離部12と、分散油分離部13とを備える。クーラント供給装置1におけるクーラントの浄化処理の流れは、概略的には次の通りである。クーラントタンク11に貯留された第1クーラントC1は、工作機械3に供給される。工作機械3に供給された第1クーラントC1は、クーラントタンク11に還流される。クーラントタンク11に貯留された第1クーラントC1は、くず分離部12に供給された後、分散油分離部13に供給される。分散油分離部13に供給されたクーラントは、クーラントタンク11に戻る。以下、各構成について詳述する。
【0016】
クーラントタンク11は、第1次槽111と、第2次槽112とを含む。第1次槽111は、工作機械3に供給する第1クーラントC1を貯留する。第1次槽111の形状は特に限定されない。第1次槽111は、例えば平面視で、矩形状を有する。第1次槽111から工作機械3へ第1クーラントC1を供給するために、クーラント供給装置1は供給部14を備える。供給部14は、供給管141と、供給ポンプ142とを含む。供給管141は、第1次槽111内の第1クーラントC1中に没する第1端部を含む。第1端部は、第1クーラントC1の液面よりも下に位置するように設けられる。供給管141は、工作機械3に接続される第2端部を含む。第2端部の接続先は特に限定されない。第2端部は、例えば工作機械3の被洗浄部に接続される。被洗浄部は、例えばオイルパン等である。供給ポンプ142は、供給管141内のクーラントの流れを調整できるように設けられる。このような構成により、供給部14は、第1次槽111に貯留される第1クーラントC1を工作機械3へ供給する。
【0017】
第1次槽111は、工作機械3で使用された第1クーラントC1を貯留する。工作機械3から第1次槽111へ第1クーラントC1を戻すために、クーラント供給装置1は還流部15を備える。還流部15は、還流管151を含む。還流管151は、工作機械3に接続される第1端部を含む。第1端部の接続先は特に限定されない。第1端部は、例えば工作機械3のクーラント回収部に接続される。還流管151は、第1次槽111へ戻す第1クーラントC1を吐出する第2端部を含む。第2端部は、第1次槽111の第1クーラントC1の液面よりも上に位置するように設けられてもよいし、第1クーラントC1中に没するように設けられてもよい。このような構成により、還流部15は、工作機械3から第1次槽111へ第1クーラントC1を還流する。なお、還流管151の第2端部にフィルタ152が設けられてもよい。フィルタ152は、例えば大きな工作くず等を分離する。
【0018】
供給部14及び還流部15によって、第1クーラントC1は、第1次槽111と工作機械3とを循環する。工作機械3では、切削、研削等の加工により工作くずが生じる。また、工作機械3では、潤滑油、切削油等が使用される。そのため、還流部15には、工作機械3に供給された第1クーラントC1と一緒に工作くず及び分散油が流れる。第1次槽111に貯留される第1クーラントC1は、工作くず及び液中に分散している分散油を含む。
【0019】
第2次槽112は、第1次槽111に隣接するように設けられる。第2次槽112の形状は特に限定されない。第2次槽112は、例えば平面視で、矩形状を有する。第2次槽112は、第1次槽111側に設けられた側壁1121を含む。側壁1121は、開口1122を含む。第2次槽112は、開口1122を通して第2次槽112内の第4クーラントC4が第1次槽111に流れ込むように構成される。
【0020】
くず分離部12は、クーラントタンク11から採取したクーラント(第2クーラントC2と呼ぶ)から工作くずを分離する。くず分離部12は、配管121と、ポンプ122と、遠心分離フィルタ123とを含む。配管121は、第1次槽111に貯留された第1クーラントC1を採取する採取口1211を含む。採取口1211は、第1次槽111に貯留された第1クーラントC1の液面よりも下に位置する。配管121において、採取口1211と異なる端部は遠心分離フィルタ123に接続される。ポンプ122は、配管121内の第2クーラントC2の流れを調整できるように設けられる。ポンプ122及び配管121によって吸引された第2クーラントC2は、工作くず及び分散油を含む。この第2クーラントC2は、遠心分離フィルタ123に供給される。遠心分離フィルタ123は、遠心力を利用して第2クーラントC2から工作くずを分離させる。遠心分離フィルタ123は、プロペラを用いて供給された第2クーラントC2に渦状の流れを生じさせる。遠心分離フィルタ123は、工作くずをフィルタの下部に集める。遠心分離フィルタ123は、工作くずが分離されたクーラント(第3クーラントC3と呼ぶ)を上部から吐出する。
【0021】
くず分離部12によって工作くずが分離された第3クーラントC3の一部は、第2移送部17によって分散油分離部13に移送される。第2移送部17は、クーラントを移送する第2移送管171を含む。第2移送管171は、くず分離部12のクーラント吐出口に接続される第1端部を含む。第2移送管171は、分散油分離部13に第3クーラントC3を吐出する第2端部を含む。第2移送部17は、管内の第3クーラントC3の流れを制御するポンプを含んでいてもよい。
【0022】
くず分離部12によって工作くずが分離された第3クーラントC3の残りは、第3移送部18によって第2次槽112に移送される。第3移送部18は、クーラントを移送する第3移送管181を含む。第3移送管181は、第2移送管171の途中に接続される第1端部を含む。第3移送管181と第2移送管171との接続部分には、絞り弁182が設けられる。絞り弁182は、くず分離部12から第3移送管181へ流れるクーラント量と、くず分離部12から第2移送管171へ流れるクーラント量とを調整する。第3移送管181は、第2次槽112に第3クーラントC3を吐出する第2端部を含む。第3移送部18は、管内の第3クーラントC3の流れを制御するポンプを含んでいてもよい。
【0023】
分散油分離部13は、油分離槽131と、親水撥油フィルタ132とを含む。油分離槽131は、くず分離部12から供給された第3クーラントC3を貯留する。油分離槽131は、工作くずが分離された第3クーラントC3を貯留する。油分離槽131は、分散油を含む第3クーラントC3を貯留する。油分離槽131の形状は、特に限定されない。油分離槽131は、例えば平面視で、矩形状を有する。親水撥油フィルタ132は、油分離槽131内に設けられる。親水撥油フィルタ132は、くず分離部12によって工作くずが分離された第3クーラントC3から分散油を分離する。親水撥油フィルタ132は、親水性を有するとともに撥油性を有する。
【0024】
図2(A)は本実施形態のクーラント供給装置における親水撥油フィルタの外観図であり、
図2(B)は親水撥油フィルタの断面図である。親水撥油フィルタ132は、第1エンドプレート1321と、第2エンドプレート1322と、アウターチューブ1325と、親水撥油ろ材1324と、インナーチューブ1323とを含む。
【0025】
第1エンドプレート1321は、中空の円筒形状を有する。第2エンドプレート1322は、第1エンドプレート1321と同様の形状を有する。第1エンドプレート1321及び第2エンドプレート1322は、インナーチューブ1323、親水撥油ろ材1324及びアウターチューブ1325を挟み込み、固定する。
【0026】
インナーチューブ1323は、中空の円筒形状を有する。インナーチューブ1323は、第1エンドプレート1321及び第2エンドプレートと実質的に同軸となるように設けられる。インナーチューブ1323は、半径方向にインナーチューブ1323を貫通する少なくとも1つの貫通孔1326を含む。少なくとも1つの貫通孔1326は、インナーチューブ1323の内面及び外面に開口する。少なくとも1つの貫通孔1326のサイズは、特に限定されない。少なくとも1つの貫通孔1326のサイズは、分散油の平均サイズよりも大きい。インナーチューブ1323の材質は、特に限定されない。好ましくは、インナーチューブ1323は、撥油素材で構成される。
【0027】
親水撥油ろ材1324は、インナーチューブ1323の外側に設けられる。親水撥油ろ材1324は、インナーチューブ1323を一周にわたって取り囲むように設けられる。ただし、親水撥油ろ材1324は、インナーチューブ1323の外面の少なくとも一部を取り囲むように設けられてもよい。親水撥油ろ材1324は、軸方向視で蛇腹形状を有する。親水撥油ろ材1324は、クーラント及び分散油を通過させるようにメッシュ構造を有する。親水撥油ろ材1324は、クーラントを通過させるように複数の網目を有する。網目のサイズは、分散油の平均サイズよりも小さい。ただし、網目のサイズは、分散油の平均サイズよりも大きくてもよい。網目のサイズは、実質的に分散油を通過させないような大きさであればよい。親水撥油ろ材1324は、撥油素材で構成される。撥油素材は、撥油性を有していれば特に限定されない。撥油素材は、例えば撥油性ポリプロピレンである。
【0028】
アウターチューブ1325は、中空の円筒形状を有する。アウターチューブ1325は、第1エンドプレート1321及び第2エンドプレートと実質的に同軸となるように設けられる。アウターチューブ1325は、半径方向にアウターチューブ1325を貫通する少なくとも1つの貫通孔1327を含む。少なくとも1つの貫通孔1327は、アウターチューブ1325の内面及び外面に開口する。少なくとも1つの貫通孔1327のサイズは、特に限定されない。少なくとも1つの貫通孔1327のサイズは、分散油の平均サイズよりも大きい。好ましくは、少なくとも1つの貫通孔1327のサイズは、インナーチューブ1323の貫通孔1326よりも小さい。アウターチューブ1325の材質は、特に限定されない。好ましくは、アウターチューブ1325は、撥油素材で構成される。
【0029】
このような構成の親水撥油フィルタ132は、油分離槽131内に設けられる。油分離槽131内にくず分離部12から第3クーラントC3が供給されると、当該第3クーラントC3はアウターチューブ1325の貫通孔1327から親水撥油フィルタ132に流れ込む。アウターチューブ1325を通過したクーラントは、親水撥油ろ材1324に到達する。親水撥油ろ材1324は、分散油を弾き、分散油を含まないクーラント(第5クーラントC5と呼ぶ)を通過させる。親水撥油ろ材1324で弾かれた分散油は、アウターチューブ1325を通り、親水撥油フィルタ132の外に出る。親水撥油フィルタ132の外に出た分散油は、他の分散油の油滴と合一し、油分離槽131の液面に浮上する。一方、親水撥油ろ材1324を通過したクーラントは、インナーチューブ1323の貫通孔1326を通過し、親水撥油フィルタ132の中空部分に到達する。このように親水撥油フィルタ132を通過した第5クーラントC5を回収することで、工作くず及び分散油が分離されたクーラントが得られる。
【0030】
図1を参照して、親水撥油フィルタ132によって分散油が分離された第5クーラントC5は、第4移送部19によって第2次槽112に移送される。第4移送部19は、第5クーラントC5を移送する第4移送管191を含む。第4移送管191は、油分離槽131に接続される第1端部を含む。第1端部は、親水撥油フィルタ132を通過した第5クーラントC5を採取できるように設けられる。第4移送管191は、第2次槽112に第5クーラントC5を吐出する第2端部を含む。第4移送部19は、管内の第5クーラントC5の流れを制御するポンプを含んでいてもよい。
【0031】
以上説明したように、クーラント供給装置1では、分散油を分離する前にくず分離部12によってクーラントから工作くずが分離される。その後、分散油分離部13によって工作くずが分離されたクーラントから分散油が分離される。そのため、分散油分離部13において親水撥油フィルタ132は、工作くずによって目詰まりしにくい。また、親水撥油フィルタ132は、撥油性を有する。そのため、親水撥油フィルタ132への分散油の付着が低減され、親水撥油フィルタ132が分散油によって目詰まりしにくい。したがって、クーラント供給装置1によれば、クーラント中に含まれる分散油を分離するとともにフィルタの目詰まりを低減することができる。
【0032】
<変形例1>
図3は、本実施形態の変形例1のクーラント供給装置の概略図である。このクーラント供給装置1Aは、上述のクーラント供給装置1に浮上油を回収する機構が追加された構成を有する。クーラント供給装置1Aにおいて、浮上油を回収する構成以外の構成は、上述のクーラント供給装置1と同じである。
【0033】
クーラント供給装置1Aにおいて、第1次槽111には、工作くず及び分散油に加えて、第1クーラントC1の液面に浮上している浮上油が貯留される。クーラント供給装置1Aは、第1次槽111に貯留された第1クーラントC1から浮上油を分離する浮上油分離部20を備える。
【0034】
浮上油分離部20は、第1次槽111に貯留される第1クーラントC1の液面に浮上している浮上油を回収する。浮上油分離部20は、例えばベルト式、スクリュー式、ディスク式、吸引式のオイルスキマ等である。ベルト式オイルスキマは、一部が第1クーラントC1に没する回転ベルトを含む。ベルト式オイルスキマは、回転ベルトに浮上油を付着させ第1次槽111から浮上油を回収する。スクリュー式オイルスキマは、一部が第1クーラントC1に没するスクリューを含む。スクリュー式オイルスキマは、スクリューを回転さえることで浮上油を回収する。ディスク式オイルスキマは、一部が第1クーラントC1に没する回転ディスクを含む。ディスク式オイルスキマは、回転ディスクに浮上油を付着させ第1次槽111から浮上油を回収する。吸引式のオイルスキマは、浮上油に接するように設けられた吸引ノズルを含む。吸引式のオイルスキマは、吸引ノズルで浮上油を吸引することで浮上油を回収する。ただし、浮上油分離部20は、ベルト式、スクリュー式、ディスク式、吸引式のオイルスキマに限定されず、浮上油を回収できる機構であればよい。
【0035】
浮上油分離部20によって回収された浮上油は、第1移送部16によって分散油分離部13に移送される。第1移送部16は、浮上油を移送する移送通路161を含む。移送通路161は、浮上油を移送可能であれば特に限定されない。移送通路161は、例えばベルトコンベア、配管等である。移送通路は、浮上油分離部20が回収した浮上油を受け取る第1端部を含む。移送通路161は、分散油分離部13における油分離槽131に浮上油を吐出する第2端部を含む。第2端部は、油分離槽131に貯留された第3クーラントC3の液面よりも上に設けられる。ただし、第2端部は、油分離槽131に貯留された第3クーラントC3の液面よりも下に設けられてもよい。
【0036】
クーラント供給装置1Aは更に、第1移送部16によって分散油分離部13に移送された浮上油を回収する廃油回収機構21を備える。廃油回収機構21は、特に限定されない。廃油回収機構21は、例えば上述のベルト式、スクリュー式、ディスク式、吸引式のオイルスキマ等である。
【0037】
このように、変形例1に係るクーラント供給装置1Aでは、第1次槽111に貯留される浮上油を回収する。そのため、浮上油分離部20、上述のくず分離部12及び分散油分離部13によって、工作くず及び分散油に加えて浮上油も分離される。したがって、クーラント供給装置1Aによれば、クーラントの浄化性能がより向上する。
【0038】
また、クーラント供給装置1Aでは、浮上油分離部20が第1次槽111において浮上油を分離する。そのため、第1次槽111からくず分離部12及び分散油分離部13に供給されるクーラントに浮上油が混入しにくい。したがって、クーラント供給装置1Aによれば、くず分離部12及び分散油分離部13の油分離機能への負荷を低減でき、くず分離部12及び分散油分離部13を長寿命化できる。
【0039】
また、例えば工作機械がある程度の期間稼働しない場合、第1次槽111に貯留される第1クーラントC1は、第1次槽111と工作機械3とを循環しない。そのため、第1次槽111は静状態となり、第1次槽111内で第1クーラントC1の流れが生じにくい。この場合、第1次槽111に浮上油が生じやすい。そのため、第1次槽111の静状態が続くと、浮上油によって第1クーラントC1の劣化が促進される。これに対し、クーラント供給装置1Aでは、第1クーラントC1が循環していない場合であっても浮上油分離部20によって第1次槽111から浮上油を分離できる。したがって、クーラント供給装置1Aによれば、工作機械の稼働、非稼働によらず、クーラントを浄化できる。
【0040】
更に、クーラント供給装置1Aでは、第1移送部16が、第1次槽111の浮上油を分散油分離部13に移送する。分散油分離部13に移送された浮上油は、油分離槽131に貯留される第3クーラントC3の液面に浮上する。ここで、分散油分離部13では、親水撥油フィルタ132によって弾かれた分散油が、凝集される。その結果、粗大化した分散油は油分離槽131に貯留される第3クーラントC3の液面に浮上する。すなわち、油分離槽131において第3クーラントC3の液面には、浮上油だけでなく粗大化した分散油も浮いている。廃油回収機構21が、油分離槽131の第3クーラントC3の液面に浮上している油を回収すれば、浮上油及び分散油の両方がまとめて回収される。浮上油及び分散油それぞれを回収する廃油回収機構を設ける必要がない。したがって、クーラント供給装置1Aによれば、浮上油及び分散油を効率的に回収することができ、クーラント供給装置の構造をコンパクトにできる。
【0041】
なお、変形例1に係るクーラント供給装置1Aでは、第1次槽111の浮上油を分散油分離部13に移送し、回収する構成について説明した。しかしながら、第1次槽111の浮上油は、第1次槽111で回収されてもよい。すなわち、クーラント供給装置1Aは、第1移送部16を含まなくてもよい。
【0042】
<変形例2>
図4は、本実施形態の変形例2のクーラント供給装置の概略図である。このクーラント供給装置1Bは、上述のクーラント供給装置1に第1次槽111の第1クーラントC1を攪拌する攪拌部が追加された構成を有する。クーラント供給装置1Bにおいて、攪拌部以外の構成は、上述のクーラント供給装置1と同じである。
【0043】
前記クーラント供給装置1Bは更に、第1次槽111に貯留される第1クーラントC1を攪拌する攪拌部22を備える。攪拌部22は、攪拌ポンプ221と、配管222とを含む。配管222の両端部は、第1次槽111の第1クーラントC1に没している。攪拌ポンプ221により、配管222の一方の端部に流れ込んだクーラントが、他方の端部から吐出される。これにより、第1次槽111内の第1クーラントC1が攪拌される。ただし、攪拌部22の構成はこれに限定されない。攪拌部22は、第1次槽111の第1クーラントC1に流れを生じさせることができる構成であればよい。
【0044】
第1次槽111において、工作くずは、槽内の底に沈殿しやすい。攪拌部22によって第1次槽111内の第1クーラントC1が攪拌されることで、沈殿している工作くずが第1クーラントC1の液中に巻き上げられやすい。したがって、クーラント供給装置1Bによれば、工作くずの回収効率が高まる。
【0045】
図5は、本実施形態のクーラント供給装置と工作機械との配置関係の一例を示す図である。クーラント供給装置1,1A,1Bは、少なくとも一部が工作機械3の下部に収容されるように設けられる。より詳細には、工作機械3は、工具を保持する工具主軸31、ワークを保持するワーク主軸32,33を含む。工作機械3は、工具主軸31及びワーク主軸32,33によってワークを加工する加工室34を含む。加工室34は、スプラッシュガード等で形成される空間である。工作機械3に供給されたクーラントは、例えば加工室34内に噴射される。加工室34内に噴射されたクーラントは、工作くずとともにチップコンベア35に回収される。チップコンベア35は、工作くずを工作機械3の外に搬送する。工作機械3の外に搬送された工作くずは、バケット36に収容される。チップコンベア35の下には、第1次槽111が設けられる。チップコンベア35は、回収したクーラントを下方に向けて排出するように構成される。第1次槽111は、チップコンベア35から排出されたクーラントを受けるように設けられる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0047】
例えば、上述のクーラント供給装置1,1A,1Bでは、クーラントタンク11は、第1次槽111及び第2次槽112を含む。しかしながら、クーラントタンク11は、第2次槽112を含まなくてもよい。くず分離部12及び分散油分離部13から第2次槽112に流れ込むクーラントは、第1次槽111に流れ込んでもよい。
【0048】
上述のクーラント供給装置1,1A,1Bでは、親水撥油フィルタ132は、全体として中空の円筒形状を有する。しかしながら、親水撥油フィルタ132の形状は、これに限定されない。また、親水撥油フィルタ132において、ろ過対象のクーラントはフィルタを外側から内側に向かって通過してもよいし、内側から外側に向かって通過してもよい。要するに、親水撥油フィルタ132は、クーラントから分散油を分離できるように構成されていればよい。
【0049】
上述のクーラント供給装置1,1A,1Bでは、くず分離部12が工作くずを分離する。これは、くず分離部12が、クーラントに含まれる工作くずの全てを必ず分離することを意味するものではない。くず分離部12は、クーラントに含まれる全ての工作くずを分離してもよいし、一部を分離してもよい。分散油分離部13及び浮上油分離部20についても同様である。
【0050】
上述のクーラント供給装置1,1A,1Bでは、分散油分離部13が親水撥油フィルタ132を含む。しかしながら、分散油分離部13は、親水撥油フィルタ132に加えて他のフィルタを含んでいてもよい。他のフィルタは、例えば、親油フィルタ、気泡式油分離装置等である。親油フィルタは、親油性の繊維で構成される。親油フィルタは、分散油が吸着することで分散油を捕捉し、分離する。親油フィルタは、例えば不織布等である。気泡式油分離装置は、気泡を発生させる。気泡式油分離装置は、発生させた気泡に分散油を吸着させ分離する。
【0051】
上述のクーラント供給装置1,1A,1Bでは、第1次槽111に貯留された第1クーラントC1が工作機械3へ供給される。しかしながら、工作機械3へ供給されるクーラントは、第1次槽111以外の部分に貯留されたものであってもよい。例えば、第2次槽112に貯留された第4クーラントC4が工作機械3へ供給されてもよい。油分離槽131に貯留された第3クーラントC3が工作機械3へ供給されてもよい。親水撥油フィルタ132によって分散油が除去された第5クーラントC5が工作機械3へ供給されてもよい。
【0052】
上述の説明において、浮上油及び分散油は、油滴として存在するものを指す。浮上油及び分散油は、クーラントに乳化した油分とは異なる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A,1B:クーラント供給装置
11 :クーラントタンク
111 :第1次槽
112 :第2次槽
12 :くず分離部
121 :配管
1211 :採取口
122 :ポンプ
123 :遠心分離フィルタ
13 :分散油分離部
131 :油分離槽
132 :親水撥油フィルタ
1321 :第1エンドプレート
1322 :第2エンドプレート
1323 :インナーチューブ
1324 :親水撥油ろ材
1325 :アウターチューブ
1326,1327:貫通孔
14 :供給部
15 :還流部
16 :第1移送部
161 :移送通路
17 :第2移送部
171 :第2移送管
18 :第3移送部
181 :第3移送管
182 :絞り弁
19 :第4移送部
191 :第4移送管
20 :浮上油分離部
21 :廃油回収機構
22 :攪拌部
221 :攪拌ポンプ
222 :配管
C1-C5:クーラント
3 :工作機械
【要約】
【課題】クーラント中に含まれる分散油を分離するとともにフィルタの目詰まりを低減する。
【解決手段】クーラント供給装置1は、(i)工作機械3に供給された第1クーラントC1と、(ii)供給された場所から第1クーラントと一緒に流れてくる(a)工作くずと(b)第1クーラントから分散した分散油と、を貯留するクーラントタンク11と、クーラントタンク11に貯留されているクーラントから採取した第2クーラントC2から前記工作くずを分離するくず分離部12と、くず分離部で分離処理された第3クーラントC3から分散油を分離する親水撥油フィルタ132と、を備える。
【選択図】
図1