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特許7500855太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/072 20120101AFI20240610BHJP
【FI】
H01L31/06 400
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023501618
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021026048
(87)【国際公開番号】W WO2023281760
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 和重
(72)【発明者】
【氏名】水野 幸民
(72)【発明者】
【氏名】保西 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 直之
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖孝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 六月
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146120(WO,A1)
【文献】特開2017-135261(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109309136(CN,A)
【文献】CHUA, Danny et al.,Enhancement of the open circuit voltage of Cu2O/Ga2O3 heterojunction solar cells through the mitigation of interfacial recombination,AIP Advances,2019年05月02日,Vol.9,pp.055203-1 - 055203-6
【文献】MINAMI, Tadatsugu et al.,Heterojunction solar cell with 6% efficiency based on an n-type aluminum-gallium-oxide thin film and p-type sodium-doped Cu2O sheet,Applied Physics Express,Vol.8,2015年01月28日,pp.022301-1 - 022301-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/06-31/078
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p電極と、
前記p電極上には亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物を主体とするp型光吸収層と、
前記p型光吸収層上にGaを含む酸化物を含むn型層と、
前記n型層上にn電極と、を有し、
前記p型光吸収層と前記n型層の間に第1領域を含み、
前記第1領域は、前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に2nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に2nm以下までの深さの位置までの領域であり、
前記第1領域中には、CuGaM1及びOが含まれ、
前記M1は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
前記第1領域のCuGaM1及びOの比は、a1:b1:c1:d1であり、
前記a1、前記b1、前記c1及び前記d1は、1.80≦a1≦2.20、0.005≦b1≦0.05、0≦c1≦0.20及び0.60≦d1≦1.00を満たす太陽電池。
【請求項2】
前記p型光吸収層は、CuM2で表される酸化物を90wt%以上含み、
前記CuM2で表される酸化物のM2は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Ga、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、
前記e、前記f及び前記gは、1.80≦e≦2.01、0.00≦f≦0.20及び0.98≦g≦1.02を満たす請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1領域中にはCu相がさらに含まれる請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第2領域とし、
前記第2領域のCuGaM1及びOの比は、a2:b2:c2:d2であり、
前記a2、前記b2、前記c2及び前記d2は、1.90≦a2≦2.10、0.00≦b2≦0.01、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たす請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第3領域とし、
前記第3領域のCuGaM1及びOの比は、a3:b3:c3:d3であり、
前記a3、前記b3、前記c3及び前記d3は、0≦a3≦0.05、2.8≦b3≦3.2、0≦c3≦0.4及び1.8≦d3≦2.2を満たす請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1領域はCuO相をさらに含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記n型層は、Gaを主成分とする酸化物を含み、
前記n型層に含まれる金属元素のうち、40原子%以上がGaである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記n型層は、Sn、Sb、Cu、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であるM3とGaを含む酸化物を含む請求項1ないし7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記p型光吸収層と前記n型層の境界から前記p型光吸収層側に10nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層の前記p電極側の表面の位置までの領域を第4領域とし、
第4領域中のCuGaM1及びOの比は、a4:b4:c4:d4であり、
前記a4、前記b4、前記c4及び前記d4は、1.8≦a4≦2.1、0≦b4≦0.001、0≦c4≦0.2及び0.9≦d4≦1.0を満たす請求項1ないし8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第2領域とし、
前記第2領域のCuGaM1及びOの比は、a2:b2:c2:d2であり、
前記a2、前記b2、前記c2及び前記d2は、1.90≦a2≦2.10、0.00≦b2≦0.01、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たし、
前記a1、前記a2、前記b1、前記b2、前記c1、前記c2、前記d1及び前記d2は、0.87≦a2/a1≦1.16、0≦b2/b1≦0.2、0≦c2/c1≦2及び1≦d2/d1≦1.33を満たす請求項1ないし9のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第3領域とし、
前記第3領域のCuGaM1及びOの比は、a3:b3:c3:d3であり、
前記a3、前記b3、前記c3及び前記d3は、0≦a3≦0.05、2.8≦b3≦3.2、0≦c3≦0.4及び1.8≦d3≦2.2を満たし、
前記a1、前記a3、前記b1、前記b3、前記c1、前記c3、前記d1及び前記d3は、0.006≦a3/a1≦0.02、100≦b3/b1≦500、0.5≦c3/c1≦0.8及び1.8≦d3/d1≦3を満たす請求項1ないし10のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記p型光吸収層と前記n型層の境界から前記p型光吸収層側に10nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層の前記p電極側の表面の位置までの領域を第4領域とし、
第4領域中のCuGaM1及びOの比は、a4:b4:c4:d4であり、
前記a4、前記b4、前記c4及び前記d4は、1.8≦a4≦2.1、0≦b4≦0.001、0≦c4≦0.2及び0.9≦d4≦1.0を満たし、
前記a1、前記a4、前記b1、前記b4、前記c1、前記c4、前記d1及び前記d4は、0.82≦a4/a1≦1、0≦b4/b1≦0.02、0≦c4/c1≦2及び1≦d4/d1≦1.6を満たす請求項1ないし11のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記p型光吸収層の全体のCuの原子濃度をCCuとし、
前記p型光吸収層の全体のGa濃度をCGaとするとき、
前記CCu及び前記CGaは、0≦CGa/CCu≦0.001を満たす請求項1ないし12のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項14】
記第4領域中にCu Ga M1及びOが含まれる相が含まれる場合のCuGaM1及びOが含まれる相の最大含有比率は、1.0%以下である請求項12に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1領域は、層状で、
前記第1領域の厚さは、前記p型光吸収層の厚さの0.001%以上0.2%以下であり、
前記第1領域に含まれるCuGaM1及びOの総原子数は、前記第1領域中の95atom%以上100atom%以下である請求項1ないし14のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記第1領域は、CuGaM1及びOが含まれる相を含み、
前記CuGaM1及びOが含まれる相のCuGaM1及びOの比をa:b:c:dとするとき、0.65≦a/(a+b+c+d)≦0.72、0.001≦b/a≦0.01、0.005≦c/a≦0.05及び0.27≦d/(a+b+c+d)≦0.31を満たし、
前記第1領域の半分以上にCuGaM1及びOが含まれる相が含まれている請求項1ないし15のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記p型光吸収層に含まれるGaは、前記n型層から拡散したGaであり、
前記n型層に含まれるCuは、前記p型光吸収層から拡散したCuである請求項1ないし16のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の太陽電池と、
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
【請求項19】
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の太陽電池又は請求項18に記載の多接合型太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
【請求項20】
請求項19に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい太陽電池の1つに、亜酸化銅(CuO)を光吸収層に用いた太陽電池がある。CuOはワイドギャップ半導体である。CuOは地球上に豊富に存在する銅と酸素からなる安全かつ安価な材料であるため、高効率かつ低コストな太陽電池が実現できると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-46196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、変換効率に優れた太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の太陽電池は、p電極と、p電極上には亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物を主体とするp型光吸収層と、p型光吸収層上にGaを含む酸化物を含むn型層と、n型層上にn電極と、を有する。p型光吸収層とn型層の間に第1領域を含み、第1領域は、p型光吸収層とn型層の界面からn型層側に2nmまでの深さの位置からp型光吸収層とn型層の界面からp型光吸収層側に2nm以下までの深さの位置までの領域であり、第1領域中には、CuGaM1及びOが含まれる。M1は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群から選ばれる1種以上の元素である。第1領域のCuGaM1及びOの比は、a1:b1:c1:d1であり、a1、b1、c1及びd1は、1.80≦a1≦2.20、0.005≦b1≦0.05、0≦c1≦0.20及び0.60≦d1≦1.00を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の太陽電池の断面図。
図2図2は、実施形態の太陽電池の分析スポットを説明する図。
図3図3は、実施形態の多接合型太陽電池の断面図。
図4図4は、実施形態の太陽電池モジュールの斜視図。
図5図5は、実施形態の太陽電池モジュールの断面図。
図6図6は、実施形態の太陽光発電システムの構成図。
図7図7は、実施形態の車両の模式図。
図8図8は、実施形態の飛翔体の模式図。
図9図9は、実施例に関する表。
図10図10は、実施例に関する表。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、特に記載が無い限り、25℃、1気圧(大気)における物性値を示している。
(第1実施形態)
第1実施形態は、太陽電池に関する。図1に、第1実施形態の太陽電池100の断面図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池100は、基板1、第1電極であるp電極2と、p型光吸収層3と、n型層4と、第2電極であるn電極5を有する。n型層4のn電極5との間等には、図示しない中間層が含まれていてもよい。太陽光はn電極5側、p電極2側いずれから入射しても良いが、n電極5側から入射するのがより好ましい。実施形態の太陽電池100は、透過型の太陽電池であるため、多接合型太陽電池のトップセル(光入射側)に用いることが好ましい。図1では基板1をp電極2のp型光吸収層3側とは反対側に設けているが、基板1をn電極5のn型層4側とは反対側に設けてもよい。以下は、図1に示す形態について説明するが、基板1の位置が異なること以外はn電極5側に基板1が設けられた形態も同様である。実施形態の太陽電池100は、n電極5側からp電極2側に向かって光が入射する。
【0008】
基板1は、透明な基板である。基板1には、光を透過するアクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)など)、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンやポリエーテルイミドなどの有機系の基板やソーダライムガラス、白板ガラス、化学強化ガラスや石英などの無機系の基板を用いることができる。基板1は、上記に挙げた基板を積層してもよい。
【0009】
p電極2は、基板1上に設けられており、基板1とp型光吸収層3との間に配置されている。p電極2は、p型光吸収層3とオーミック接合することが好ましい。p電極2は、p型光吸収層3側に設けられた光透過性を有する導電層である。p電極2の厚さは、典型的には、100nm以上2,000nm以下である。図1では、p電極2は、p型光吸収層3と直接接している。p電極2は、1層以上の酸化物透明導電膜を含むことが好ましい。酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al-doped Zinc Oxide;AZO)、ボロンドープ酸化亜鉛(Boron-doped Zinc Oxide;BZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Gallium-doped Zinc Oxide;GZO)、ドープされた酸化スズ、チタンドープ酸化インジウム(Titanium-doped Indium Oxide;ITiO)、酸化インジウム酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide;IZO)や酸化インジウムガリウム亜鉛(Indium Gallium Zinc Oxide;IGZO)、水素ドープ酸化インジウム(Hydrogen-doped Indium Oxide;IOH)などの半導体導電膜を用いることができ、特に限定されない。酸化物透明導電膜は、複数の膜を持つ積層膜であってもよい。酸化スズなどの膜へのドーパントとしては、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上であれば特に限定されない。p電極2は、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素がドープされた酸化スズ膜が含まれることが好ましい。ドープされた酸化スズ膜において、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素は、酸化スズ膜に含まれるスズに対して10原子%以下含まれることが好ましい。p電極2として、酸化物透明導電膜と金属膜を積層した積層膜を用いることができる。金属膜は、厚さが1nm以上2μm以下であることが好ましく、金属膜に含まれる金属(合金を含む)は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。また、p電極2は、酸化物透明導電膜と基板1の間、又は、酸化物透明導電膜とp型光吸収層3の間にドット状、ライン状もしくはメッシュ状の電極(金属、合金、グラフェン、導電性窒化物及び導電性酸化物からなる群より選ばれる1種以上)を含むことが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、酸化物透明導電膜に対して開口率が50%以上であることが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。p電極2に金属膜を用いる場合、透過性の観点から5nm以下程度の膜厚とすることが好ましい。ライン状やメッシュ状の金属膜を用いる場合、透過性は開口部で確保されるため、金属膜の膜厚に関してはこの限りではない。
【0010】
酸化物透明導電膜のp型光吸収層3側の最表面にはドープされた酸化スズ膜が設けられていることが好ましい。酸化物透明導電膜のp型光吸収層3側の最表面に設けられているドープされた酸化スズ膜の少なくとも一部がp型光吸収層3と直接的に接していることが好ましい。
【0011】
p型光吸収層3は、p型の半導体層である。p型光吸収層3は、p電極2と直接的に接していても良いし、p電極2との電気的なコンタクトを確保できる限り、他の層が存在していても良い。p型光吸収層3は、電極2とn型層4との間に配置される。p型光吸収層3はn型層4と直接的に接している。p型光吸収層3は、Cuを主成分とする金属の酸化物の半導体層である。Cuを主成分とする金属の酸化物は、亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物である。p型光吸収層3は、亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の多結晶であることが好ましい。亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物は、平均組成がCuM2で表される酸化物である。平均組成とは、p型光吸収層3の厚さ方向と平面方向で複数点測定して得られる組成の平均値から得られる組成である。M2は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Ga、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。e、f及びgは、1.80≦e≦2.01、0.00≦f≦0.20及び0.98≦g≦1.02を満たすことが好ましい。p型光吸収層3の90wt%以上100wt%以下は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることが好ましい。p型光吸収層3の95wt%以上100wt%以下は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがより好ましい。p型光吸収層3の98wt%以上100wt%以下は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがさらにより好ましい。p型光吸収層3は、p型光吸収層3は、異相であるCu又は/及びCuOをほとんど含まないことが好ましい。p型光吸収層3に含まれる異相が少なく結晶性が良いとp型光吸収層3の透光性が高くなるため好ましい。p型光吸収層3にM2の元素が含まれると、p型光吸収層3のバンドギャップを調整することができる。p型光吸収層3のバンドギャップは、2.0eV以上2.2eV以下であることが好ましい。かかる範囲のバンドギャップであると、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用い、実施形態の太陽電池をトップセルに用いた多接合型太陽電池において、トップセル及びボトムセルの両方で太陽光を効率よく利用できる。p型光吸収層3は、Sn又は/及びSbを含むことが好ましい。p型光吸収層3のSnやSbは、p型光吸収層3に添加されたものでもよいし、p電極2に由来するものでもよい。p型光吸収層3に含まれるGaは、p型光吸収層3を成膜する原料には含まれず、n型層4に含まれるGaがp型光吸収層3に拡散したものである。n型層4の成膜時に他の元素も用いる場合はこれらの元素もp型光吸収層3に拡散する場合がある。
【0012】
上記p型光吸収層3の組成比は、p型光吸収層3の全体の組成比である。また、上記のp型光吸収層3の化合物組成比は、p型光吸収層3において全体的に満たすことが好ましい。なお、Sn及びSbのp型光吸収層3中の濃度が高いと、欠陥が増加して、キャリア再結合が増えてしまう。そこで、p型光吸収層3中のSb及びSnの合計体積濃度は、1.5x1019atoms/cm以下が好ましい。
【0013】
p型光吸収層3の組成は、p型光吸収層3の厚さをdとする場合、p電極2側のp型光吸収層3の表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。p型光吸収層3の化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、p型光吸収層3は、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、分析はn型層の表面からの各距離において図2の分析スポットを説明する図に示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポット(A1~A9)を例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。p型光吸収層3の組成を分析する場合、D1はp型光吸収層3の幅方向の長さであり、D2はp型光吸収層3の奥行き方向の長さである。
【0014】
p型光吸収層3の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、1,000nm以上10,000nm以下が好ましい。
【0015】
p型光吸収層3は、結晶性の高い亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物を含むため、p型光吸収層3を構成する結晶は大粒径を含む。p型光吸収層3の亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の結晶の直径(外接円直径)がp型光吸収層3の厚さの80%以上100%以下である結晶がp型光吸収層3に含まれる。p型光吸収層3の亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の結晶の直径(外接円直径)がp型光吸収層3の厚さの80%以上である結晶の断面積は、p型光吸収層3の断面積の80%以上を占めることが好ましい。大粒径のp型光吸収層3の亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の結晶は、透過性及び変換効率に優れるため、太陽電池の変換効率の向上に寄与する。また、第1領域6が存在し、かつ、p型光吸収層3の亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の結晶が大粒径であることで、さらに変換効率が向上する。
【0016】
p型光吸収層3は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0017】
n型層4は、n型の半導体層である。n型層4は、p型光吸収層3とn電極5との間に配置される。n型層4は、p型光吸収層3のp電極2と接した面とは反対側の面と直接接している。n型層4はGaを含む酸化物半導体層であって、Gaを主成分とする化合物(酸化物)を含むことが好ましい。n型層4はGaを主成分とする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaを主成分とする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaを主成分とする酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。n型層4は、単層又は多層である。n型層4に含まれる金属元素のうち、Gaが40原子%以上であることが好ましく、50原子%以上であることがより好ましい。n型層4に含まれる金属元素は、p型光吸収層3側からn電極5側に傾斜していてもよい。
【0018】
n型層4は、M3で表される元素とGaを含む酸化物を含むことが好ましい。Gaを主成分とする酸化物は、例えば、M3で表される元素とGaを含む酸化物である。n型層4は、Sn、Sb、Cu、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であるM3とGaを含む酸化物を含むことが好ましい。n型層4は、Sn、Sb、Cu、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であるM3とGaを含む酸化物を90wt%以上100wt%以下含むことが好ましい。n型層4のGaを主成分とする化合物は、平均組成がGaM3で表されるM3とGaを含む酸化物であることが好ましい。h、i及びjは、1.8≦h≦2.1、0≦i≦0.2及び2.9≦j≦3.1を満たすことが好ましい。
【0019】
n型層4の90wt%以上100wt%以下は、M3とGaを含む酸化物であることが好ましい。n型層4の95wt%以上100wt%以下は、M3とGaを含む酸化物であることがより好ましい。n型層4の98wt%以上100wt%以下は、M3とGaを含む酸化物で表される化合物であることがさらにより好ましい。n型層4に含まれるCuは、n型層4を成膜する原料には含まれず、p型光吸収層3に含まれるCuがn型層4に拡散したものである。p型光吸収層3の成膜時に他の元素も用いる場合はこれらの元素もn型層4に拡散する場合がある。
【0020】
n型層4の膜厚は、典型的には、3nm以上100nm以下である。n型層4の厚さが3nm未満であるとn型層4のカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。n型層4の厚さが50nmを超えるとn型層4の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、n型層4の厚さは3nm以上20nm以下がより好ましく、5nm以上20nm以下がさらにより好ましい。
【0021】
なお、n型層4の化合物の組成は、特に条件を付けなければn型層4全体の平均組成である。n型層4の組成は、n型層4の厚さをdとする場合、p型光吸収層3側のn型層4の表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。n型層4の化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、n型層4は、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、n型層4が非常に薄い場合(例えば5nm以下)は、p型光吸収層3側のn型層4の表面から0.5dの深さにおける組成をn型層4の全体の組成とみなすことができる。なお、分析はn型層4の表面からの各距離において図2の分析スポットを説明する図に示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポット(A1~A9)を例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。n型層4の組成を分析する場合、D1はn型層4の幅方向の長さであり、D2はn型層4の奥行き方向の長さである。
【0022】
Si系などの一般的な太陽電池では、発電効率を高めるためにp型光吸収層3の伝導帯下端(Conduction Band Minimum:CBM)とn型層4(多層の場合は、p型光吸収層3側のn型層4)の伝導帯下端の差が小さくなり、再結合速度が10cm/sec以下程度になるn型層4が好ましい。しかし、発明者らの研究により、亜酸化銅酸化物(複合酸化物)を光吸収層に用いた太陽電池では伝導帯下端の差が小さくて、再結合速度が遅い形態とは真逆で、伝導帯下端の差がある程度大きく、さらに。再結合速度が速い場合において、発電効率が向上することが分かった。p型光吸収層3の伝導帯下端とn型層4の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[n型層4の伝導帯下端])は、0.5eVより大きく1.0eV以下であることが好ましい。
【0023】
p型光吸収層3とn型層4の間に第1領域6を含むことが好ましい。第1領域6は、p型光吸収層3とn型層4の遷移領域である。第1領域6には、p型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥になるp型光吸収層3の亜酸化銅酸化物と亜酸化銅の複合酸化物の異相が含まれる。第1領域6には、Cu、Ga、M1で表される元素及び酸素が含まれる。
【0024】
第1領域6は、p型光吸収層3とn型層4の境界からn型層4側に2nmまでの深さの位置(第1点)からp型光吸収層3とn型層4の境界からp型光吸収層3側に2nm以下までの深さの位置(第2点)までの領域である。CuOをp型光吸収層3に用いた太陽電池では4nm幅の非常に薄い領域に欠陥が有ることで、再結合速度が速まり発電効率が向上する。p型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥となる異相が存在する領域が例えば10nm幅など厚い場合、変換効率は大きく低下してしまう。欠陥となる異相とは、p型光吸収層3の第4領域に対する異相であり、かつ、n型層4の第3領域に対する異相である。
【0025】
p型光吸収層3とn型層4の境界は明瞭でない場合がある。p型光吸収層3とn型層4の境界が明瞭ではない場合は、p型光吸収層3とn型層4の間の不明瞭な部分の中心部分をp型光吸収層3とn型層4の境界とする。p型光吸収層3とn型層4の境界は、平面ではなくて凹凸面を有している場合がある。p型光吸収層3とn型層4の境界は、p型光吸収層3とn型層4の断面を観察して特定することができる。p型光吸収層3とn型層4の間の不明瞭な部分に異相が含まれることから、p型光吸収層3とn型層4の間の不明瞭な部分の幅は、p型光吸収層3とn型層4の積層方向に0nm以上10nm以下であり、1nm以上5nm以下であることが好ましく、2nm以上4nm以下であることがより好ましい。
【0026】
第1領域6は、島状ではなく層状であることが好ましい。島状に第1領域6が存在すると再結合速度が速い領域と遅い領域の両方が存在してしまう。層状の第1領域6がp型光吸収層3とn型層4の間に存在していることが好ましい。層状の第1p領域6がp型光吸収層3とn型層4の間に存在しているということは、p型光吸収層3とn型層4の間に途切れず連続的に第1領域6が存在していることを意味する。層状の第1領域6がp型光吸収層3とn型層4の間に存在しているということは、p型光吸収層3とn型層4の積層方向において、p型光吸収層3とn型層4の間に第1領域6が存在しない部分は無いことを意味する。第1領域6の厚さが2nm未満であると、第1領域6が島状に存在し易くなり、再結合速度が大きく異なる領域が存在し易くなる。
【0027】
第1領域6には、p型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥となる異相が含まれることが好ましい。p型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥となる異相は、p型光吸収層3に含まれる金属元素とn型層4に含まれる金属元素の両方を含むことが好ましい。M1は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群から選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。p型光吸収層3のM2の元素として含まれている元素及びn型層4のM3の元素として含まれている元素がM1の元素であることが好ましい。p型光吸収層3にGa以外のM2の元素が含まれず、かつ、n型層4にM3の元素が含まれない場合は、第1領域6中にM1の元素が含まれない。p型光吸収層3にGa以外のM2の元素が含まれず、かつ、n型層4にM3の元素が含まれる場合は、第1領域6のM1の元素はn型層4に含まれるM3の元素であることが好ましい。p型光吸収層3にGa以外にもM2の元素が含まれ、かつ、n型層4にM3の元素が含まれない場合は、第1領域6のM1の元素はp型光吸収層3に含まれるGa以外のM2の元素であることが好ましい。
【0028】
第1領域6のCuGaM1及びOの比(Cu:Ga:M1:O)は、a1:b1:c1:d1である。a1、b1、c1及びd1は、1.80≦a1≦2.20、0.005≦b1≦0.05、0≦c1≦0.20及び0.60≦d1≦1.00を満たすことが好ましく、1.80≦a1≦2.05、0.005≦b1≦0.02、0≦c1≦0.20及び0.60≦d1≦0.90を満たすことがより好ましい。第1領域中のCuM2で表される酸化物の平均含有比率は、p型光吸収層中の亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物の平均含有比率の50%以下であることが好ましい。
【0029】
第1領域6に含まれるCuGaM1及びOの総原子数は、第1領域6中の95atom%以上100atom%以下であり、98atom%以上100atom%以下であることが好ましい。第1領域6中のCuGaM1及びO以外の元素は不純物などの不可避的な元素であり、第1領域6中に含まれる不可避的な元素の原子濃度は、第1領域6中のCuGaM1及びO以外の元素のいずれの原子濃度よりも低い。
【0030】
第1領域6の厚さは、p型光吸収層3の厚さよりも非常に薄いことが好ましい。そこで、第1領域6の厚さは、p型光吸収層3の厚さの0.001%以上0.2%以下が好ましく、0.005%以上0.1%以下がより好ましい。また、第1領域6の厚さは、p型光吸収層3の厚さとn型層4の厚さの和の0.001%以上0.2%以下が好ましく、0.005%以上0.1%以下がより好ましい。
【0031】
p型光吸収層3中のn型層4との境界近傍において、Gaが含まれる部分にはp型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥となる相が含まれる。M2の元素にはGaが含まれていて、p型光吸収層3中においてこのGaが含まれている相(例えばアモルファス相又は結晶の外接円直径が1nm以下の微結晶)が異相である。Gaが含まれている相は、より具体的には、Cu、Ga、M1及びOを含む相が異相である。p型光吸収層3は、第1領域6を除いた領域においては、実質的にGaを含まない。従って、p型光吸収層3において、Gaが含まれている相は異相であり、異相は第1領域6に位置選択的に存在している。
【0032】
また、n型層4中のp型光吸収層3との境界近傍において、Cuが含まれる部分にはp型光吸収層3とn型層4の接合部分の欠陥となる相が含まれる。M3の元素にはCuが含まれていて、n型層4中においてこのCuが含まれている相(例えばアモルファス相又は結晶の外接円直径が1nm以下の微結晶)が異相である。p型光吸収層3における異相はn型層4においても異相である。Cuが含まれている相はより具体的にはp型光吸収層3の異相と同じCu、Ga、M1及びOを含む相である。n型層4は、第1領域6除いた領域においては、実質的にCuを含まない。従って、n型層4において、Cuを含む相は、異相であり、異相は第1領域6に位置選択的に存在している。
【0033】
前記第1領域6を除くp型光吸収層3に含まれるGa濃度は、p型光吸収層3に含まれる金属元素に対して0atom%以上0.05atom%以下であることが好ましく、0atom%以上0.00005atom%以下であることがより好ましい。また、第1領域6を除くn型層4に含まれるCu濃度は、n型層4に含まれる金属元素に対して0atom%以上10atom%以下であることが好ましく、0atom%以上1atom%以下であることがより好ましい。第1領域6を除くn型層4に含まれるCuの原子濃度は、第1領域6を除くp型光吸収層3に含まれるGa原子濃度の10倍以上になる。これは、p型光吸収層3の膜厚がn型層4の厚さの少なくとも10倍以上であるため、拡散する距離が短くてもn型層4の比較的深部にまでCuが拡散することが理由である。p型光吸収層3側から拡散するCu量とn型層4側から拡散するGa量の差が大きいと、p型光吸収層3及び/又はn型層4の特性低下の原因になる場合がある。そこで、第1領域6を除くp型光吸収層3に含まれるGaの原子数は、第1領域を除くn型層4に含まれるCuの原子数の0。2倍以上7倍以下であることが好ましい。
【0034】
CuGaM1及びOが含まれる相とは、CuGaM1及びOの比(Cu:Ga:M1:O)をa:b:c:dとするとき、0.65≦a/(a+b+c+d)≦0.72、0.001≦b/a≦0.01、0.005≦c/a≦0.05及び0.27≦d/(a+b+c+d)≦0.31を満たす相である。下記に説明する分析スポット(A1~A9)において、少なくとも1つのスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれるとき、CuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれることを意味する。
【0035】
過半数(5)以上のスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれることがより好ましく、全てのスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれることがさらにより好ましい。過半数(5)未満のスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれるとき、第1領域6の半分未満にCuGaM1及びOが含まれる相が含まれていることを意味する。過半数(5)以上のスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれるとき、第1領域6の半分以上にCuGaM1及びOが含まれる相が含まれていることを意味する。全てのスポットにCuGaM1及びOが含まれる相が第1領域6に含まれるとき、第1領域6の全体にCuGaM1及びOが含まれる相が含まれていることを意味する。上記のCuGaM1及びOが含まれる相が存在する比率の定義については、第1領域6以外の他の領域についても同様である。
【0036】
p型光吸収層3とn型層4の境界からp型光吸収層3側に5nmまでの深さの位置(起点)からp型光吸収層3とn型層4の境界からp型光吸収層3側に10nm以下までの深さの位置(終点)までの領域を第2領域とする。このとき、第2領域中のCuGaM1及びOの比(Cu:Ga:M1:O)は、a2:b2:c2:d2である。a2、b2、c2及びd2は、1.90≦a2≦2.10、0.00≦b2≦0.01、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たすことが好ましく、1.95≦a2≦2.05、0≦b2≦0.001、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たすことがより好ましい。異相がp型光吸収層3側には実質的に存在せず、非常に狭い第1領域6に局所的に異相が存在することで、バルクのp型光吸収層3の再結合速度を増加させずに、p型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度を高めることができる。第2領域には、CuGaM1及びOが含まれる相が全体的には含まれないことが好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が半分以上は含まれないことがより好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が含まれないことがさらにより好ましい。
【0037】
上記観点から第2領域は、Gaを実質的に含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されていることが好ましく、Gaを含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されていることが好ましい。そこで、0.87≦a2/a1≦1.16、0≦b2/b1≦0.2、0≦c2/c1≦2及び1≦d2/d1≦1.33を満たすことが好ましく、0.96≦a2/a1≦1.13、0≦b2/b1≦0.15、0≦c2/c1≦1.75及び1.25≦d2/d1≦1.33を満たすことがより好ましい。また、上記観点から、-0.3≦(a2-a1)≦0.3、0≦(b1-b2)<b1、-0.1≦(c1-c2)<c1及び-0.2≦(d2-d1)≦0.4を満たすことがより好ましい。b2=0を満たすことがさらにより好ましい。
【0038】
第2領域は、Gaを実質的に含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されている場合、第2領域中のGaの比率(b2/(a2+b2+c2+d2))が第1領域6中のGaの比率(b1/(a1+b1+c1+d1))よりも低くなっている。従って、(b2/(a2+b2+c2+d2))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことが好ましく、10(b2/(a2+b2+c2+d2))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがより好ましく、50(b2/(a2+b2+c2+d2))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがさらにより好ましい。
【0039】
第1領域6中、第2領域中、後述する第3領域中及び第4領域中のCuGaM1及びOが含まれる相の存在確認、組成及び平均含有比率は、SIMS、走査型顕微鏡付きエネルギー分散型分光分析(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometry:SEM-EDX)、透過型顕微鏡付きエネルギー分散型分光分析(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometry:TEM-EDX)又はエネルギー分散型分光分析(Energy Dispersive X-ray Spectrometry:EDX)による組成分析で求まる。明細書中において0、0.0や0.00などの表現は、対象の元素や化合物(相)などが含まないことを表している。分析において検出限界以下の場合及び/又は定量限界以下の場合も対象の元素などが含まれないとみなす。
【0040】
p型光吸収層3とn型層4の境界からn型層4側に5nmまでの深さの位置(起点)からp型光吸収層3とn型層4の境界からn型層4側に10nm以下までの深さの位置(終点)までの領域を第3領域とする。このとき、第3領域中のCuGaM1及びOの比(Cu:Ga:M1:O)は、a3:b3:c3:d3である。a3、b3、c3及びd3は、0≦a3≦0.05、2.8≦b3≦3.2、0≦c3≦0.4及び1.8≦d3≦2.2を満たすことが好ましく、0≦a3≦0.03、2.9≦b3≦3.1、0≦c3≦0.3及び1.9≦d3≦2.1を満たすことがより好ましい。異相がn型層4側には実質的に存在せず、非常に狭い第1領域6に局所的に異相が存在することで、バルクである第3領域のn型層4の電子トラップ密度を増加させずに、p型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度を高めることができる。第3領域には、CuGaM1及びOが含まれる相が全体的には含まれないことが好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が半分以上は含まれないことがより好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が含まれないことがさらにより好ましい。
【0041】
第3領域中のCu含有率は、第1領域6中のCu含有率よりも少ないことが好ましい。そこで、0.006≦a3/a1≦0.02、100≦b3/b1≦500、0.5≦c3/c1≦0.8及び1.8≦d3/d1≦3を満たすことが好ましく、0.1≦a3/a1≦0.16、200≦b3/b1≦450、0.5≦c3/c1≦0.7及び2≦d3/d1≦2.6を満たすことがより好ましい。a3=0を満たすことがさらにより好ましい。
【0042】
第3領域中のCu含有率は、第1領域6中のCu含有率よりも少ない場合、第3領域中のCuの比率(a3/(a3+b3+c3+d3))が第1領域6中のCuの比率(a1/(a1+b1+c1+d1))よりも低くなっている。従って、(a3/(a3+b3+c3+d3))<(a1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことが好ましく、10(a3/(a3+b3+c3+d3))<(a1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがより好ましく、50(a3/(a3+b3+c3+d3))<(a1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがさらにより好ましい。
【0043】
また、第3領域中のCu含有率は、第1領域6中のCu含有率よりも少ない場合、第3領域中のGaの比率(b3/(a3+b3+c3+d3))が第1領域6中のGaの比率(b1/(a1+b1+c1+d1))よりも高くなっている。従って、(b3/(a3+b3+c3+d3))>(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことが好ましく、(b3/(a3+b3+c3+d3))>10(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがより好ましく、(b3/(a3+b3+c3+d3))>50(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがさらにより好ましい。
【0044】
第1領域6中には、Cu相がさらに含まれていてもよい。Cu相が第1領域6に含まれることで、p型光吸収層3とn型層4の境界に欠陥が生じてp型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度が速くなることが好ましい。また、第1領域6中には、CuO相がさらに含まれていてもよい。
【0045】
p型光吸収層3の全体に含まれるGa含有比率は、低いが好ましい。異相が第1領域6を除いたp型光吸収層3側には実質的に存在せず、非常に狭い第1領域6に局所的に異相が存在することで、バルクである第4領域のp型光吸収層3での再結合速度を増加させずに、p型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度を高めることができる。そこで、p型光吸収層3の全体のCuの原子濃度をCCuとし、p型光吸収層全体のGa濃度をCGaとするとき、0≦CGa/CCu≦0.001を満たすことが好ましく、0≦CGa/CCu≦0.000001を満たすことがより好ましい。
【0046】
n型層4中のCuの含有比率は、非常に低いことが好ましい。そこで、n型層4中に含まれる金属元素に占めるCu原子の比率は、0.0%以上0.1%以下であることが好ましい。異相が第1領域6を除いたn型層4側には実質的に存在せず、非常に狭い第1領域6に局所的に異相が存在することで、バルクである第3領域のn型層4の電子トラップ密度を増加させずに、p型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度を高めることができる。
【0047】
p型光吸収層3とn型層4の境界からp型光吸収層3側に10nmまでの深さの位置(起点)からp型光吸収層3のp電極側の表面の位置(終点)までの領域を第4領域とする。このとき、第4領域中のCuGaM1及びOの比(Cu:Ga:M1:O)は、a4:b4:c4:d4である。a4、b4、c4及びd4は、1.8≦a4≦2.1、0≦b4≦0.001、0≦c4≦0.2及び0.9≦d4≦1.0を満たすことが好ましく、1.8≦a4≦2.03、0≦b4≦0.000001、0≦c4≦0.2及び0.95≦d4≦1を満たすことがより好ましい。異相が第1領域6を除いたp型光吸収層3側には実質的に存在せず、非常に狭い第1領域6に局所的に異相が存在することで、バルクである第4領域のp型光吸収層3での再結合速度を増加させずに、p型光吸収層3とn型層4の境界における再結合速度を高めることができる。第4領域には、CuGaM1及びOが含まれる相が全体的には含まれないことが好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が半分以上は含まれないことがより好ましく、CuGaM1及びOが含まれる相が含まれないことがさらにより好ましい。
【0048】
第4領域は、Gaを実質的に含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されていることが好ましく、Gaを含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されていることが好ましい。そこで、0.82≦a4/a1≦1、0≦b4/b1≦0.02、0≦c4/c1≦2及び1≦d4/d1≦1.6を満たすことが好ましく、0.9≦a4/a1≦1、0≦b4/b1≦0.00005、0≦c4/c1≦1.9及び1.3≦d4/d1≦1.5を満たすことがより好ましい。b4=0を満たすことがさらにより好ましい。
【0049】
第4領域は、Gaを実質的に含まない亜酸化銅酸化物又は/及び亜酸化銅酸化物の複合酸化物で構成されている場合、第4領域中のGaの比率(b4/(a4+b4+c4+d4))が第1領域6中のGaの比率(b1/(a1+b1+c1+d1))よりも低くなっている。従って、10(b4/(a4+b4+c4+d4))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことが好ましく、40(b4/(a4+b4+c4+d4))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがより好ましく、100(b4/(a4+b4+c4+d4))<(b1/(a1+b1+c1+d1))を満たすことがさらにより好ましい。
【0050】
また、第4領域中のCuGaM1及びOが含まれる相の平均含有率は、第2領域6中のCuGaM1及びOが含まれる相の平均含有率以下である場合、第4領域中のGaの比率(b4/(a4+b4+c4+d4))が第2領域中のGaの比率(b2/(a2+b2+c2+d2))以下になる。従って、(b4/(a4+b4+c4+d4))≦(b2/(a2+b2+c2+d2))を満たすことが好ましく、5(b4/(a4+b4+c4+d4))≦(b2/(a2+b2+c2+d2))を満たすことがより好ましく、10(b4/(a4+b4+c4+d4))≦(b2/(a2+b2+c2+d2))を満たすことがさらにより好ましい。
【0051】
n電極5は、可視光に対して、光透過性を有するn型層4側の電極である。n電極5とp型光吸収層3によってn型層4を挟んでいる。n型層4とn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。n電極5には、酸化物透明導電膜を用いることが好ましい。n電極5で用いられる酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、チタンドープ酸化インジウム、酸化インジウムガリウム亜鉛及び水素ドープ酸化インジウムからなる群より選ばれる1種以上の半導体導電膜であることが好ましい。酸化スズなどの膜へのドーパントとしては、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上であれば特に限定されない。n電極5は、酸化物透明導電膜を低抵抗化するために、メッシュやライン形状の電極を含むことができる。メッシュやライン形状の電極には、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。n電極5には、グラフェンも用いることができる。グラフェンは、銀ナノワイヤと積層させることが好ましい。
【0052】
n電極5の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、特に限定はないが、典型的には、50nm以上2μm以下である。
【0053】
n電極5は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態は、多接合型太陽電池に関する。図3に第2実施形態の多接合型太陽電池の断面概念図を示す。図3の多接合型太陽電池200は、光入射側に第1実施形態の太陽電池(第1太陽電池)100と、第2太陽電池201を有する。第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、第1実施形態の太陽電池100のp型光吸収層3よりも小さいバンドギャップを有する。なお、実施形態の多接合型太陽電池200は、3以上の太陽電池を接合させた太陽電池も含まれる。
【0055】
第1実施形態の第1太陽電池100のp型光吸収層3のバンドギャップが2.0eV-2.2eV程度であるため、第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、1.0eV以上1.6eV以下であることが好ましい。第2太陽電池の光吸収層としては、Inの含有比率が高いCIGS系及びCdTe系からなる群から選ばれる1種以上の化合物半導体層、結晶シリコン及びペロブスカイト型化合物からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態は、太陽電池モジュールに関する。図4に第3実施形態の太陽電池モジュール300の斜視図を示す。図4の太陽電池モジュール300は、第1太陽電池モジュール301と第2太陽電池モジュール302を積層した太陽電池モジュールである。第1太陽電池モジュール301は、光入射側であり、第1実施形態の太陽電池100を用いている。第2太陽電池モジュール302には、第2太陽電池201を用いることが好ましい。第1太陽電池モジュール301には、第2から第4実施形態の太陽電池101-103も使用することができる。
【0057】
図5に太陽電池モジュール300の断面図を示す。図5では、第1太陽電池モジュール301の構造を詳細に示し、第2太陽電池モジュール302の構造は示していない。第2太陽電池モジュール302では、用いる太陽電池の光吸収層などに応じて適宜、太陽電池モジュールの構造を選択する。図5の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池100(太陽電池セル)が横方向に並んで配線304で電気的に直列に接続した破線で囲われたサブモジュール303が複数含まれ、複数のサブモジュール303が電気的に並列もしくは直列に接続している。隣り合うサブモジュール303は、バスバー305で電気的に接続している。
【0058】
隣り合う太陽電池100は、上部側のn電極5と下部側のp電極2が配線304によって接続している。第3実施形態の太陽電池100も第1実施形態の太陽電池100と同様に、基板1、p電極2、p型光吸収層3、n型層4とn電極5を有する。サブモジュール303中の太陽電池100の両端は、バスバー305と接続し、バスバー305が複数のサブモジュール303を電気的に並列もしくは直列に接続し、第2太陽電池モジュール302との出力電圧を調整するように構成されていることが好ましい。なお、第3実施形態に示す太陽電池100の接続形態は一例であり、他の接続形態によって太陽電池モジュールを構成することができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態は太陽光発電システムに関する。第4実施形態の太陽電池モジュールは、第4実施形態の太陽光発電システムにおいて、発電を行う発電機として用いることができる。実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールを用いて発電を行うものであって、具体的には、発電を行う太陽電池モジュールと、発電した電気を電力変換する手段と、発電した電気をためる蓄電手段又は発電した電気を消費する負荷とを有する。図6に実施形態の太陽光発電システム400の構成図を示す。図6の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール401(300)と、コンバーター402と、蓄電池403と、負荷404とを有する。蓄電池403と負荷404は、どちらか一方を省略しても良い。負荷404は、蓄電池403に蓄えられた電気エネルギーを利用することもできる構成にしてもよい。コンバーター402は、DC-DCコンバーター、DC-ACコンバーター、AC-ACコンバーターなど変圧や直流交流変換などの電力変換を行う回路又は素子を含む装置である。コンバーター402の構成は、発電電圧、蓄電池403や負荷404の構成に応じて好適な構成を採用すればよい。
【0060】
太陽電池モジュール300に含まれる受光したサブモジュール303に含まれる太陽電池セルが発電し、その電気エネルギーは、コンバーター402で変換され、蓄電池403で蓄えられるか、負荷404で消費される。太陽電池モジュール401には、太陽電池モジュール401を常に太陽に向けるための太陽光追尾駆動装置を設けたり、太陽光を集光する集光体を設けたり、発電効率を向上させるための装置等を付加することが好ましい。
【0061】
太陽光発電システム400は、住居、商業施設や工場などの不動産に用いられたり、車両、航空機や電子機器などの動産に用いられたりすることが好ましい。実施形態の変換効率に優れた太陽電池を太陽電池モジュールに用いることで、発電量の増加が期待される。
【0062】
太陽光発電システム400の利用例として車両を示す。図7に車両500の構成概念図を示す。図7の車両500は、車体501、太陽電池モジュール502、電力変換装置503、蓄電池504、モーター505とタイヤ(ホイール)506を有する。車体501の上部に設けられた太陽電池モジュール502で発電した電力は、電力変換装置503変換されて、蓄電池504にて充電されるか、モーター505等の負荷で電力が消費される。太陽電池モジュール502又は蓄電池504から供給される電力を用いてモーター505によってタイヤ(ホイール)506を回転させることにより車両500を動かすことができる。太陽電池モジュール502としては、多接合型ではなく、第1実施形態の太陽電池100等を備えた第1太陽電池モジュールだけで構成されていてもよい。透過性のある太陽電池モジュール502を採用する場合は、車体501の上部に加え、車体501の側面に発電する窓として太陽電池モジュール502を使用することも好ましい。
【0063】
太陽光発電システム400の利用例として飛翔体(ドローン)を示す。飛翔体は、太陽電池モジュール401を用いている。本実施形態にかかる飛翔体の構成を、図9の飛翔体600の模式図を用いて簡単に説明する。飛翔体600は、太陽電池モジュール401、機体骨格601、モーター602、回転翼603と制御ユニット604を有する。太陽電池モジュール401、モーター602、回転翼603と制御ユニット604は、機体骨格601に配置している。制御ユニット604は、太陽電池モジュール401から出力した電力を変換したり、出力調整したりする。モーター602は太陽電池モジュール401から出力された電力を用いて、回転翼603を回転させる。実施形態の太陽電池モジュール401を有する本構成の飛翔体600とすることで、より多くの電力を用いて飛行することができる飛翔体が提供される。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
ガラス基板上に、裏面側のp電極として、ガラスと接する側に上面にITO(In:Sn=80:20、膜厚20nm)とATO(Sn:Sb=98:2 150μm)を堆積する。透明なp電極上に酸素、アルゴンガス雰囲気中でスパッタリング法により500℃で加熱してCuO光吸収層を成膜する。その後、CuO光吸収層の表面を200℃の酸素を含む雰囲気で一部酸化させる。次いでALD法により、n型層としてGa1.92Al0.083.00を10nm堆積し、さらにZn0.80Sn0.201.2を14nm堆積させる。n型層上にn電極としてAZO透明導電膜を堆積する。そして、反射防止膜としてMgF膜を成膜することで太陽電池を得る。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0065】
(実施例2)
n型層としてGa1.92Al0.083.00に代ってGa1.95Al0.053.00を12nm堆積させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0066】
(実施例3)
n型層としてGa1.92Al0.083.00に代ってGaを11nm堆積させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0067】
(実施例4)
n型層としてGa1.92Al0.083.00に代ってGaを10nm堆積させ、さらにZn0.80Sn0.201.2に代ってGa1.70Sn0.303.15を12nm堆積させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0068】
(実施例5)
Siを含むCuO光吸収層を成膜すること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0069】
(実施例6)
n型層を順次堆積した後に150度で加熱すること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0070】
(実施例7)
n型層としてGa1.92Al0.083.00に代って酸素欠損のあるGa1.95Al0.052.50を10nm堆積させ、さらにZn0.80Sn0.201.2を堆積後に150度で加熱すること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0071】
(実施例8)
n型層としてGaを30nm堆積させること以外は、実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0072】
(実施例9)
Sb及びSnをドープさせたCuOをp電極上に堆積させ、n型層としてGaを30nm堆積させること以外は、実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0073】
(比較例1)
CuO光吸収層の表面を500℃の酸素雰囲気で酸化させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0074】
(比較例2)
CuO光吸収層の表面酸化を行なわない以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0075】
(比較例3)
CuO光吸収層の表面を100℃の過酸化水素雰囲気で酸化させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0076】
(比較例4)
CuO光吸収層の表面を室温の水蒸気雰囲気で酸化させること以外は実施例1と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0077】
(比較例5)
n型層を順次堆積した後に400度で加熱すること以外は実施例5と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0078】
(比較例6)
n型層としてGa1.92Al0.083.00に代って酸素欠損のあるGa1.95Al0.052.50を10nm堆積させ、さらにZn0.80Sn0.201.2を堆積後に400度で加熱すること以外は実施例7と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0079】
(比較例7)
CuO光吸収層の表面を500℃の酸素雰囲気で酸化させる以外は、実施例8と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0080】
(比較例8)
CuO光吸収層の表面を500℃の酸素雰囲気で酸化させる以外は、実施例9と同様に太陽電池を作製する。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。
【0081】
AM1.5Gの光源を模擬したソーラーシミュレータを用い、その光源下で基準となるSiセルを用いて1sunになるように光量を調節する。測定は大気圧下で測定室内の気温は25℃とする。電圧をスイープし、電流密度(電流をセル面積で割ったもの)を測定する。横軸を電圧、縦軸を電流密度とした際に、横軸と交わる点が開放電圧Vocとなり、縦軸と交わる点が短絡電流密度Jscとなる。測定曲線上において、電圧と電流密度を掛け合わせ、最大になる点をそれぞれVmpp、Jmpp(マキシマムパワーポイント)とすると、FF=(Vmpp*Jmpp)/(Voc*Jsc)であり、変換効率Eff.はEff.=Voc*Jsc*FFで求まる。
【0082】
図9の実施例に関する表に実施例及び比較例の短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性をまとめて示す。
【0083】
透光性は、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が75%以上である場合をAと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%以上75%未満である場合をBと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%未満である場合をCと評価する。
【0084】
Jscは、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例1のJscに対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例1のJscに対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0085】
Vocは、比較例1の変換効率に対して1.3倍以上である場合をAと評価し、比較例1のVocに対して1.1倍以上1.3倍未満である場合をBと評価して、比較例1のVocに対して1.1倍未満である場合をCと評価する。
【0086】
FFは、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例1のFFに対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例1のFFに対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0087】
変換効率は、比較例1の変換効率に対して1.5倍以上である場合をAと評価し、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上1.5倍未満である場合をBと評価して、比較例1の変換効率に対して1.1倍未満である場合をCと評価する。
【0088】
実施例8の透光性、Jsc、Voc、FF、及び変換効率の評価において、比較基準とする比較例は比較例1ではなく比較例7である。実施例9の透光性、Jsc、Voc、FF、及び変換効率の評価において、比較基準とする比較例は比較例1ではなく比較例8である。
【0089】
図10にCuGaM1及びOが含まれる相のM1の元素(表中 M1)、CuGaM1及びOの比であるa1:b1:c1:d1(表中 R1)、第2領域中のCuGaM1及びOの比であるa1:b1:c1:d1(表中 R2)、第3領域中のCuGaM1及びOの比であるa1:b1:c1:d1(表中 R3)、第4領域中のCuGaM1及びOの比であるa1:b1:c1:d1(表中 R4)、第1領域中のCu相の有無(表中 Cu相)及び第1領域中のCuO相の有無(表中 CuO相)を示す。
【0090】
図9、10の表から分るように、第1領域に局所的にCuGaM1及びOが含まれる相が存在することで、Jscが向上し、太陽電池の変換効率が向上する。実施例の太陽電池をトップセルに用い、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用いた多接合型太陽電池においても同様に変換効率が向上する。
明細書中一部の元素は、元素記号のみで示している。
以下、実施形態の技術案を付記する。
技術案1
p電極と、
前記p電極上には亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物を主体とするp型光吸収層と、
前記p型光吸収層上にGaを含む酸化物を含むn型層と、
前記n型層上にn電極と、を有し、
前記p型光吸収層と前記n型層の間に第1領域を含み、
前記第1領域は、前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に2nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に2nm以下までの深さの位置までの領域であり、
前記第1領域中には、CuGaM1及びOが含まれ、
前記M1は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
前記第1領域のCuGaM1及びOの比は、a1:b1:c1:d1であり、
前記a1、前記b1、前記c1及び前記d1は、1.80≦a1≦2.20、0.005≦b1≦0.05、0≦c1≦0.20及び0.60≦d1≦1.00を満たす太陽電池。
技術案2
前記p型光吸収層は、CuM2で表される酸化物を90wt%以上含み、
前記CuM2で表される酸化物のM2は、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Ga、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、
前記e、前記f及び前記gは、1.80≦e≦2.01、0.00≦f≦0.20及び0.98≦g≦1.02を満たす技術案1に記載の太陽電池。
技術案3
前記第1領域中にはCu相がさらに含まれる技術案1又は2に記載の太陽電池。
技術案4
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第2領域とし、
前記第2領域のCuGaM1及びOの比は、a2:b2:c2:d2であり、
前記a2、前記b2、前記c2及び前記d2は、1.90≦a2≦2.10、0.00≦b2≦0.01、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たす技術案1ないし3のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案5
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第3領域とし、
前記第3領域のCuGaM1及びOの比は、a3:b3:c3:d3であり、
前記a3、前記b3、前記c3及び前記d3は、0≦a3≦0.05、2.8≦b3≦3.2、0≦c3≦0.4及び1.8≦d3≦2.2を満たす技術案1ないし3のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案6
前記第1領域は、CuO相をさらに含む技術案1ないし5のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案7
前記n型層は、Gaを主成分とする酸化物を含み、
前記n型層に含まれる金属元素のうち、40原子%以上がGaである技術案1ないし6のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案8
前記n型層は、Sn、Sb、Cu、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、In、Zn、Mg、Si、Ge、N、B、Ti、Hf、Zr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素であるM3とGaを含む酸化物を含む技術案1ないし7のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案9
前記p型光吸収層と前記n型層の境界から前記p型光吸収層側に10nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層の前記p電極側の表面の位置までの領域を第4領域とし、
第4領域中のCuGaM1及びOの比は、a4:b4:c4:d4であり、
前記a4、前記b4、前記c4及び前記d4は、1.8≦a4≦2.1、0≦b4≦0.001、0≦c4≦0.2及び0.9≦d4≦1.0を満たす技術案1ないし8のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案10
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第2領域とし、
前記第2領域のCuGaM1及びOの比は、a2:b2:c2:d2であり、
前記a2、前記b2、前記c2及び前記d2は、1.90≦a2≦2.10、0.00≦b2≦0.01、0≦c2≦0.20及び0.80≦d2≦1.00を満たし、
前記a1、前記a2、前記b1、前記b2、前記c1、前記c2、前記d1及び前記d2は、0.87≦a2/a1≦1.16、0≦b2/b1≦0.2、0≦c2/c1≦2及び1≦d2/d1≦1.33を満たす技術案1ないし9のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案11
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に5nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記n型層側に10nm以下までの深さの位置までの領域を第3領域とし、
前記第3領域のCuGaM1及びOの比は、a3:b3:c3:d3であり、
前記a3、前記b3、前記c3及び前記d3は、0≦a3≦0.05、2.8≦b3≦3.2、0≦c3≦0.4及び1.8≦d3≦2.2を満たし、
前記a1、前記a3、前記b1、前記b3、前記c1、前記c3、前記d1及び前記d3は、0.006≦a3/a1≦0.02、100≦b3/b1≦500、0.5≦c3/c1≦0.8及び1.8≦d3/d1≦3を満たす技術案1ないし10のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案12
前記p型光吸収層と前記n型層の境界から前記p型光吸収層側に10nmまでの深さの位置から前記p型光吸収層の前記p電極側の表面の位置までの領域を第4領域とし、
第4領域中のCuGaM1及びOの比は、a4:b4:c4:d4であり、
前記a4、前記b4、前記c4及び前記d4は、1.8≦a4≦2.1、0≦b4≦0.001、0≦c4≦0.2及び0.9≦d4≦1.0を満たし、
前記a1、前記a4、前記b1、前記b4、前記c1、前記c4、前記d1及び前記d4は、0.82≦a4/a1≦1、0≦b4/b1≦0.02、0≦c4/c1≦2及び1≦d4/d1≦1.6を満たす技術案1ないし11のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案13
前記p型光吸収層の全体のCuの原子濃度をCCuとし、
前記p型光吸収層の全体のGa濃度をCGaとするとき、
前記CCu及び前記CGaは、0≦CGa/CCu≦0.001を満たす技術案1ないし12のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案14
前記p型光吸収層と前記n型層の界面から前記p型光吸収層側に10nmまでの深さのところから前記p型光吸収層のp電極側の表面のところまでの領域を第4領域とし、
前記第4領域中のCuGaM1及びOが含まれる相の最大含有比率は、1.0%以下である技術案1ないし13のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案15
前記第1領域は、層状で、
前記第1領域の厚さは、前記p型光吸収層の厚さの0.001%以上0.2%以下であり、
前記第1領域に含まれるCuGaM1及びOの総原子数は、前記第1領域中の95atom%以上100atom%以下である技術案1ないし14のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案16
前記第1領域は、CuGaM1及びOが含まれる相を含み、
前記CuGaM1及びOが含まれる相のCuGaM1及びOの比をa:b:c:dとするとき、0.65≦a/(a+b+c+d)≦0.72、0.001≦b/a≦0.01、0.005≦c/a≦0.05及び0.27≦d/(a+b+c+d)≦0.31を満たし、
前記第1領域の半分以上にCuGaM1及びOが含まれる相が含まれている技術案1ないし15のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案17
前記p型光吸収層に含まれるGaは、前記n型層から拡散したGaであり、
前記n型層に含まれるCuは、前記p型光吸収層から拡散したCuである技術案1ないし16のいずれか1案に記載の太陽電池。
技術案18
技術案1ないし17のいずれか1案に記載の太陽電池と、
技術案1ないし17のいずれか1案に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
技術案19
技術案1ないし17のいずれか1案に記載の太陽電池又は技術案18に記載の多接合型太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
技術案20
技術案19に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定解釈されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成することができる。例えば、変形例の様に異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0092】
100,101…太陽電池(第1太陽電池)、1…基板、2…p電極(第1p電極2a、第2p電極2b)、3…p型光吸収層、4…n型層、5…n電極
200…多接合型太陽電池、201…第2太陽電池、
300…太陽電池モジュール、6…基板、301第1太陽電池モジュール、302…第2太陽電池モジュール、303…サブモジュール、304…バスバー、
400…太陽光発電システム、401…太陽電池モジュール、402…コンバーター、403…蓄電池、404…負荷
500…車両、501…車体、502…太陽電池モジュール、503…電力変換装置、504…蓄電池、505…モーター、506…タイヤ(ホイール)
600…飛翔体、601…機体骨格、602…モーター、603…回転翼、604…制御ユニット


図1
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図10