IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7500877装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法
<>
  • 特許-装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法 図1
  • 特許-装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法 図2
  • 特許-装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法 図3
  • 特許-装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法 図4
  • 特許-装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】装着可能パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61B5/00 N
A61B5/00 102A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023530752
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2021081912
(87)【国際公開番号】W WO2022112067
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】20209475.1
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】デリーモア キラン ハミルトン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フアイブレグツ ローレンシア ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0056650(US,A1)
【文献】特表2017-515616(JP,A)
【文献】国際公開第2019/183529(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263538(US,A1)
【文献】国際公開第2014/129212(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/079115(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/060689(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/038742(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/06-5/398
A61B 7/00-7/04
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの汗パラメータを測定するセンサを備えた装着可能パッチと、
前記装着可能パッチの交換の必要性を示すコントローラとを備え、
前記コントローラが、
前記少なくとも1つの汗パラメータを受信し、
前記少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較し、
前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて交換情報を決定し、
前記交換情報に基づいて、前記装着可能パッチの交換が必要であるという指示を出力する、装着可能パッチ・システム。
【請求項2】
前記交換情報が、
前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超えるという情報、及び/又は
前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す前記値が値閾値を超えるという情報を含む、請求項1に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項3】
時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す前記値が、時間の前記総量にわたる汗成分の測定量又は時間の前記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む、請求項1又は2に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項4】
前記装着可能パッチが、着用者のさらなる生理学的パラメータをモニタリングする少なくとも1つのさらなるセンサをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのさらなるセンサが、バイタル・サインをモニタリングするセンサ及びバイオマーカ用センサから選択される、請求項4に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの汗パラメータが、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項7】
汗センサが、少なくとも2つの汗パラメータを測定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項8】
前記装着可能パッチ・システムが、
前記装着可能パッチ・システムシステムの使用者に指示を送達する出力デバイス、及び/又は
前記装着可能パッチ・システムの使用者に前記指示を送達するための外部出力デバイスと通信する通信システムを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項9】
前記通信システムが、無線通信システムである、請求項8に記載の装着可能パッチ・システム。
【請求項10】
装着可能パッチの交換の必要性の指示を提供する方法であって、前記方法が、
前記装着可能パッチを装着している人の少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップと、
前記少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較するステップと、
交換情報を決定するステップであって、
前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は
前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて、交換情報を決定するステップと、
前記交換情報に基づいて、前記装着可能パッチの交換が必要である指示を提供するステップと
を有する、方法。
【請求項11】
前記交換情報は、前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超える、及び/又は前記少なくとも1つの汗パラメータが前記第1の閾値を超える時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す前記値が値閾値を超えるという情報を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの汗パラメータが、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度、及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップが、少なくとも2つの汗パラメータを測定することを有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
時間の総量に関する前記少なくとも1つの汗パラメータを示す前記値が、時間の前記総量にわたる汗成分の測定量又は時間の前記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ・プログラムが請求項1から8のいずれか一項に記載の装着可能パッチ・システム上で実行されたときに、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータ・プログラム・コードを含む、コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理的パラメータを検知するための装着可能パッチに関する。詳細には、本発明は、装着可能パッチの交換が必要な時期を決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床現場で患者のモニタリングに使用されるパッチは、様々な理由により、意図した使用寿命よりも早い交換が必要になる場合がある。これらは、材料の生体適合性が低いこと、通気性/透水性が低いこと、又はパッチと皮膚との間に溜まった汗の蓄積によって生じる皮膚刺激を含む。汗をかく又は体を洗うことから水分で粘着剤が弱まってパッチと皮膚との結合が悪くなり、これにより意図せずパッチの位置が変わる、すなわち、ずれる及び/又は回転する可能性があり、測定品質及び較正に対して悪影響がある。バイオマーカ分析に使用される試薬の枯渇、及びパッチ電極と皮膚との間の接触インピーダンスを低減するために使用される導電性ゲルの脱水も発生し、信号品質の劣化につながる。汗中の塩化ナトリウムとバッテリ内の金属との相互作用によって生じる腐食、又は汗のpH低下によって生じる酸腐食の結果、パッチ上のセンサに動力を供給するバッテリの劣化も発生し得る。
【0003】
患者ごとに異なる(年齢、性別、並びに薬剤、例えばコリンエステラーゼ阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、オピオイド、及び三環系抗鬱薬に影響を受ける発汗度などの要因による)モニタリング・パッチの最適な交換時期を決定することに、重要な未対処の課題が残されている。この最適な交換時期は、湿度及び周囲温度などの環境要因にも大きく依存する。病院でのモニタリング・パッチは、固定スケジュールで、例えば毎日の看護師の巡回中に、又はパッチが予期せず故障した場合は臨時で、交換されることが多い。固定スケジュールの場合、十分に機能しているパッチが不必要に交換され、看護師にとって時間とコストがかかり、臨時の場合、重大な瞬間にパッチの故障が発生し、一定期間にわたって患者の適切なモニタリングをしないままにしたり、又は看護師のアラーム疲労の一因となる過剰な誤アラームを誘発し、重大なアラームに対して応答しない可能性を引き起こしたりすることによって、患者の安全が損なわれるので、現在のパッチ交換方針はどちらの場合も最適とは言えない。
【0004】
米国特許第2017/0056650号では、パッチの寿命の終了を示す手段を備える医療デバイス用の電極パッチが記載されている。それによるパッチの寿命の終了を決定する1つのやり方は、パッチの汗への総曝露量を測定することを含む。
【0005】
本デバイスは、固定スケジュールで、又は故障時にパッチ交換するやり方よりも改良されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汗への総曝露量を寿命終了の指標として使用することで、パッチが必要よりも非常に早期に交換される可能性があることがやはり示されてきた。装着可能パッチの最適な交換時期を決定するのに役立ち得るシステム及び方法がいまだ必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、独立請求項によって定義されている。従属請求項は、有利な実施形態を定義している。
【0008】
本発明の一態様に従う実施形態によると、
少なくとも1つの汗パラメータを測定するセンサを備えた装着可能パッチと、
装着可能パッチの交換の必要性を示すコントローラとを備え、
コントローラが、
少なくとも1つの汗パラメータを受信し、
少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較し、
少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて交換情報を決定し、
交換情報に基づいて、装着可能パッチの交換が必要であるという指示を出力するように構成されている、装着可能パッチ・システムが提供される。
【0009】
臨床現場で患者のモニタリングに使用されるパッチは、様々な理由により、それらの意図した使用寿命よりも早い交換が必要になり得る。これらの理由は、汗をかく若しくは体を洗うことによる水分によって粘着剤が弱くなってパッチと皮膚との結合が悪くなり、これにより意図せずパッチの位置が変わる、すなわち、ずれる及び/若しくは回転する可能性があり、これにより測定品質及び較正に対して悪影響があること、バイオマーカ分析に使用される試薬の枯渇、パッチ電極と皮膚との間の接触インピーダンスを低減するために使用される導電性ゲルの脱水が生じ、これが信号品質の劣化につながること、又は、汗中の塩化ナトリウムとバッテリ内の金属との相互作用によって生じる腐食、若しくは汗のpH低下によって生じる酸腐食の結果、パッチ上のセンサに動力を供給するバッテリが劣化することを含む。
【0010】
そのため、パッチを交換する最適な時期は、単に患者が排出する汗の総量、又は患者が排出する汗の特定の内容物の総量の関数ではないことが多い。対照的に、ほとんどのパッチは、ある基準量の汗に耐えられるように設計されている。しかしながら、患者が排出する汗の量及びその組成は通常一定ではなく、時間経過とともに大きく変動する可能性がある。排出される汗の量又は排出される汗の1つ若しくは複数の成分の急増は、それらの使用寿命に大きく影響し得る。
【0011】
閾値を超えた、汗のボリューム及び/又は汗中の所与の成分の量にパッチが曝露される時間の長さを判定することで、パッチの交換の最適なタイミングをより精確に予測することができる。特に、閾値を超えた、汗のボリューム及び/又は汗中の所与の成分の量にパッチが曝露される場合に、その期間中に排出される汗の総量又は汗中の所与の成分の総量を決定することにより、パッチの交換の最適なタイミングをより精確に予測することが可能となる。特に、不必要に早くパッチを交換するのを避けることが可能である。
【0012】
交換情報は、例えば、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超える、及び/又は少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値がパラメータ閾値を超えるという情報を含む。
【0013】
時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値は、時間の上記総量にわたって排出された汗成分の測定量又は時間の上記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む。
【0014】
さらに、装着可能パッチは、着用者のさらなる生理学的パラメータをモニタリングするための少なくとも1つのさらなるセンサをさらに備える。
【0015】
パッチは、例えば、さらなる生理的パラメータをモニタリングする主機能を有することができ、汗センサは、パッチ交換の必要性を決定するために主に使用される。
【0016】
少なくとも1つのさらなるセンサを、バイタル・サインをモニタリングするセンサ、バイオマーカ用センサ、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0017】
本システムは、最も単純な形態では、汗パラメータのためのセンサの最適な交換時期を決定するために使用することができるが、さらなるセンサを含むパッチの最適な交換時期を決定するのに特に有用である。
【0018】
さらに、少なくとも1つの汗パラメータは、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0019】
上記のパラメータは、装着可能パッチの寿命に直接的な影響を与える可能性がある。したがって、汗パラメータとしてこれらのパラメータを使用することで、パッチの交換の最適なタイミングに関する特に精確な情報が提供される。
【0020】
さらに、汗センサは、少なくとも2つの汗パラメータを測定する。
【0021】
複数の汗パラメータを測定することにより、例えば、バッテリの故障又はパッチを着用者の体に取り付ける粘着剤の故障などの、汗の異なる成分に起因するパッチの複数の異なる故障モードを考慮することが可能になる。これにより、パッチの交換の最適なタイミングの決定の精度がさらに向上する。
【0022】
本システムは、
装着可能パッチ・システムの使用者に指示を送達する出力デバイス、及び/又は
装着可能パッチ・システムの使用者に指示を送達するための外部出力デバイスと通信する通信システムをさらに備える。
【0023】
特に、臨床現場では、パッチの交換が必要であるという情報が、パッチの交換の責任者によって適時受信されることを確実にするために、装着可能パッチの交換が必要であるという指示が、例えば中央モニタリング・ステーション又は患者を担当する看護師によって携帯されるデバイスに送信されると、有利になり得る。
【0024】
外来患者の場合、着用者が、パッチを自身で交換したり、又は着用者の医師若しくは看護師にパッチの交換が必要であることを通知したりできるように、パッチの交換が必要である指示を着用者に直接提供することが有用であり得る。
【0025】
通信システムは、無線通信システムであってよい。
【0026】
無線通信の使用は、看護師が定期的に病棟を巡回する臨床現場で特に便利である。
【0027】
本発明のさらなる態様に従う実施例によると、装着可能パッチの交換の必要性の指示を提供するための方法が提供される。本方法は、
装着可能パッチを装着している人の少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップと、
少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較するステップと、
交換情報を決定するステップであって、
少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は
少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて、交換情報を決定するステップと、
交換情報に基づいて、装着可能パッチの交換が必要である指示を提供するステップとを有する。
【0028】
交換情報は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超えるか、及び/又は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値が値閾値を超えるかの情報を含む。
【0029】
本方法により、人が装着したパッチの交換が必要な時期の、より正確な情報を提供することができる。特に、本方法は、不必要に早くパッチを交換することを避けるために使用することができる。
【0030】
さらに、少なくとも1つの汗パラメータは、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度、及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0031】
上記のパラメータは、装着可能パッチの寿命に直接影響を与え得る。したがって、これらのパラメータを汗パラメータとして使用することにより、パッチの交換の最適なタイミングについて特に精確な情報が提供される。
【0032】
さらに、少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップは、少なくとも2つの汗パラメータを測定することを有する。
【0033】
複数の汗パラメータを測定することにより、例えば、バッテリの故障又はパッチを着用者の体に取り付ける粘着剤の故障などの、汗の異なる成分に起因するパッチの複数の異なる故障モードを考慮することが可能になる。これにより、パッチの交換の最適なタイミングの決定の精度がさらに向上する。
【0034】
時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値は、時間の上記総量にわたって排出される汗成分の測定量又は時間の上記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む。
【0035】
本発明のさらなる態様に従う実施例によると、コンピュータ・プログラムであって、上記コンピュータ・プログラムがコンピュータ上で実行されたときに、上記方法を実施するように適合されたコンピュータ・プログラム・コードを含むコンピュータ・プログラムが提供される。
【0036】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照してより明らかになり、解明されるであろう。
【0037】
本発明のより良好な理解のために、また、本発明がどのように実施され得るかをより明確に示すために、ここで、例のためだけに添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による装着可能パッチ・システムの第1の実施例を示す図である。
図2】対象者によって排出されるナトリウムの量及び装着可能パッチの性能を経時的に追跡するグラフである。
図3】対象者によって排出されるナトリウムの量及び汗のボリューム並びに装着可能パッチの性能を経時的に追跡するグラフである。
図4】本発明による装着可能パッチ・システムの第2の実施例を示す図である。
図5】本発明の装着可能パッチの交換の必要性の指示を提供する方法の実施例に関するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明について図を参照して説明する。
【0040】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例証のみを目的としており、本発明の範囲を限定することは意図していないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付図面からより良好に理解されるであろう。図は単に模式的であり、縮尺通りには描かれていないことを理解されたい。また、図全体を通して、同じ参照番号は、同じ又は類似の部分を示すために使用されていることを理解されたい。
【0041】
本発明は、パッチの交換の必要性を示すシステム及び方法を提供する。本システムは、少なくとも1つの汗パラメータを測定するためのセンサを備える装着可能パッチと、装着可能パッチの交換の必要性を示すためのコントローラとを備えている。コントローラは、少なくとも1つの汗パラメータを受信し、少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較するように構成される。コントローラは、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量及び/又は少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて交換情報を決定し、交換情報に基づいて装脱可能パッチの交換が必要である指示を出力するようにさらに構成される。
【0042】
図1は、本発明の装着可能パッチ・システム10の実施例を示す。システム10は、少なくとも1つの汗パラメータを測定するためのセンサ14を備える装着可能パッチ12を備えている。システムは、コントローラ16をさらに備える。
【0043】
装着可能パッチ12は、装着可能パッチの任意の形態であり得る。最も基本的な形態において、パッチは少なくとも1つの汗パラメータを測定するためのパッチである。他の例では、装着可能パッチ12は、着用者のバイタル・サイン又は着用者によって排出されるバイオマーカなどの他のパラメータを測定するためのパッチであり得る。装用可能パッチ12は、薬物送達などのさらなる機能を果たすこともできる。
【0044】
センサ14は、例えば、人の発汗速度を示すパラメータを検知することができる任意のセンサであり得る。センサ14として採用可能なセンサの例としては、ガルバニック皮膚反応(GSR)センサ、熱量流量センサ、マイクロバランス又は共振に基づいたセンサが挙げられる。MEMS熱量流量センサは、例えばマイクロチャネルを通る汗の流れによって変調される温度プロファイルの非対称性を測定することによって、流量を測定する。マイクロバランス/共振に基づいたセンサ(例えば、水晶振動子マイクロバランス)は、水晶振動子の周波数における変化を測定することで、単位面積あたりの質量変動を測定する。他のセンサとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は乳酸などの、人が排出する汗の量を示すバイオマーカ用のセンサが挙げられる。センサは、例えば、電気化学的な測定に基づいて動作することができる。
【0045】
センサ14は、コントローラ16と通信する。通信は、Bluetooth又はNFC接続などの、有線又は無線であり得る。
【0046】
コントローラ16は、センサ14から汗パラメータを受信する。コントローラ16は、少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較し、交換情報を決定するように構成される。交換情報は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて決定される。コントローラ16は、交換情報に基づいて、装着可能パッチ12の交換が必要である指示を出力するようにさらに構成される。
【0047】
少なくとも1つの汗パラメータは、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度及びそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
一般に、パッチ寿命は、発汗速度が低く、発汗ボリュームが小さく、Naイオン又はKイオンへの曝露が少ないほど長くなると論理的に想定される。これにより、さらに、湿度及び温度が低く、発汗速度が典型的には小さい条件も、パッチ寿命が長くなることに結び付くことが予想される。試薬の枯渇に関しても同様の論理が成り立ち、発汗の速度及びボリュームが大きい場合のバイオマーカを検出するときは、より多くの試薬が消費される。
【0049】
そのため、従来は、性能劣化によるパッチ交換は、所与の汗パラメータの総合値によって決定されると想定されてきた。そのため、それぞれの汗パラメータの総合値が所定の閾値を超えると、パッチ故障が発生することが想定されてきた。
【0050】
しかしながら、いくつかの例では、汗パラメータは経時的に非単調に変動する。図2のグラフでは、そのような状況が示されている。これは、時間とともに増減するのが、例えば、汗のpH又は排出される(例えばインピーダンスで測定される)Na及びKイオンの量である場合だけでなく、汗のボリューム自体である場合にも起こり得る。さらに、パッチのタイプに固有の閾値より低い、汗又は汗の成分の1つ若しくは複数への曝露は、パッチの寿命に著しい影響は与えないことが認識されている。
【0051】
図2において、グラフ20は、パッチの着用者によって排出されたナトリウムの量の経時的な展開を例示的なやり方で示している。図2から、排出されるナトリウムの量は経時的に非単調に変動することが明らかである。ある期間ではナトリウムの量は第1の閾値22未満であり、他の時点では第1の閾値22を超えている。さらに、図2のグラフ24は、パッチの性能の経時的な展開を示している。開始時は性能が安定しており、パッチを交換する必要はない。これは、パッチを交換するには早すぎる期間「P」である。パッチは、着用者によって排出されるナトリウムに一定時間曝露された後、性能が劣化し始める。この場合、パッチの性能が劣化し始める時点が下限閾値26(Th)として定義される。この下限閾値26は、パッチを交換することが賢明である最も早い時点を示している。さらに劣化した後、パッチの性能が最小許容性能レベル28を下回る時点に到達する。この時点が上限閾値30(Th)として定義される。上限閾値30は、許容できない性能の損失、及び極端な場合にはパッチの破局的故障を避けるために、パッチを交換すべき最も遅い時点を示している。これらの時点の間にパッチ交換に最適な時期を表す期間Oが存在する。下限閾値26及び上限閾値30は、これらによってパッチの最適な交換時間枠を定義する。
【0052】
パッチの破局的故障は点29で表されている。
【0053】
図2に示されるケースなどの場合、単純な閾値アプローチでは、最適な交換時間枠を決定するのには不十分となる。代わりに、第1の閾値を超えて費やされた時間の総量Ttot,thrを使用して故障条件のより信頼性の高い推定を提供する。ここで、Ttot,thrは次式の通りである。
【数1】
この第1の閾値の例示的な値は、2.5nl/min/腺の発汗速度又は35mmol/hのナトリウムの排出速度であり得る。
【0054】
Δtthr.iは、汗特性の第1の閾値22を超えるi番目の時間長である。これらの時間長の全ての合計によって、閾値22を超える総期間が提供される。
【0055】
これによって、時間閾値Tmaxを超える最大許容時間の比率に基づいて、パッチの交換の必要性を、以下のように決定することができる。
tot,thr/Tmax≧1.0の場合 → 切迫した破局的故障 (1)
0.9≦Ttot,thr/Tmax<1の場合 → 故障注意 (2)
0.75≦Ttot,thr/Tmax<0.9の場合 → 最適交換時間枠 (3)
tot,thr/Tmax<0.75の場合 → 交換には早すぎる (4)
【0056】
ここで、Tmaxは経験的に決定してもよく、又は製造試験規格に基づいて決定してもよい。
【0057】
そのような状況の例としては、強度が変化する身体活動をしている個人が、変動可能な速度で汗を排出するように誘導されることが挙げられ、Naイオン濃度も変動可能である。そのような状況では、発汗速度及びナトリウム排出の速度は、ある期間は高く(第1の閾値より高く)、他の期間は低い(第1の閾値より低い)。例えば、そのような活動は、インターバル走若しくはパワーリフティング、又は、単に登り階段を上り、次いで平地を歩くことであり得る。個人が、発汗速度が2.5nl/min/腺の第1の閾値未満であり、及び/又はナトリウム排出の速度が35mmol/h(すなわち、汗のNa-イオン濃度の第1の閾値)未満である低強度の身体活動に15分を費やし、発汗速度が2.5nl/min/腺を超え、及び/又はナトリウム排出の速度が35mmol/Lを超える高強度の身体活動に30分費やすと仮定する。この場合、交換が必要になる前にどちらかの閾値を超えて許容される総時間は、Tmax=4時間である。この状況において、個人が、どちらかの閾値を超えて3時間より長くかつ3時間30分未満を費やすとき、理想的にはパッチを交換するべきである。
【0058】
もちろん、異なる判定結果の間に他の閾値を適用してもよいし、判定結果がより少なくてもよく、例えば、故障注意及び切迫した故障は、単一の故障指示としてグループ化されてもよい。
【0059】
また、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値が、パッチの最適な交換時間枠を決定するために使用される場合にも、同じアプローチを適用することができる。この場合、Tmaxに類似した値閾値が、最適な交換時間枠を決定するために使用される。
【0060】
時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値は、時間の上記総量にわたって排出された汗成分の測定量又は時間の上記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む。したがって、第1の閾値22を超える期間、汗パラメータの積分が取得される(すなわち、閾値22を超える部分のグラフ20の下の面積)。これは、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する汗パラメータを示す値であると考えられる。
【0061】
好ましくは、時間閾値及び/又は値閾値は、パッチ性能の劣化(すなわち、信号品質の劣化、完全な試薬枯渇又はバッテリ故障など)及び破局的な故障の発生前にパッチ交換を確実にするように選択される。実際には、状況に応じて、最適な交換時間枠は少なくとも数十分から数時間程度になる。
【0062】
上記で実証されたように、交換情報は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超える、及び/又は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値がパラメータ閾値を超えるという情報を含む。
【0063】
パラメータ閾値は、例えば、ナトリウム排出が第1の閾値を超える時間の間に排出されたナトリウムの総量を示す値である。
【0064】
いくつかの例では、システムは少なくとも2つの汗パラメータを測定する。
【0065】
システムが少なくとも2つの汗パラメータを測定し、パッチの2つの性能パラメータに基づいて最適な交換時間枠が決定される例示的なシナリオが、図3に示されている。
【0066】
図3は、やはり、非単調な汗パラメータ、この場合、経時的に排出される汗のボリュームの展開を図式化するグラフ20を示している。さらに、図3は、汗ボリュームについての第1の汗パラメータ閾値22も示している。この汗パラメータ閾値22は、図3にグラフ24で示される第1のパッチ性能パラメータに影響を与える閾値である。
【0067】
さらに、図3は、第2の汗パラメータ閾値32も示している。この第2の汗パラメータ閾値32は、図3にグラフ34で示される第2のパッチ性能パラメータに影響を与える閾値である。
【0068】
図3はさらに、図2の下限閾値26及び上限閾値28に類似して、第1のパッチ性能パラメータの性能が劣化し始める時点を示す第1の下限閾値26、及び第1のパッチ性能パラメータがその最小許容性能レベル28を下回る第1の上限閾値30を示している。さらに、図3は、第2のパッチ性能パラメータがその最小許容性能レベル38を下回る時点を示す、第2の上限閾値36も示している。
【0069】
図3に示す状況においては、最適なパッチ交換時間枠は、第1の下限閾値26と第2の上限閾値36との間である。
【0070】
この場合、2つ以上の性能パラメータを含む故障条件、すなわち複合故障条件に対して最適なパッチ交換時間枠が、これらによって決定される。この場合、利用される下限閾値及び上限閾値は、全てのパッチ性能パラメータの破局的故障を回避するために動的に適合される。これは、一般に、2つの性能パラメータの例示的な場合について、図3に描かれている最適な交換時間枠を短縮することにつながる。この場合、第1の閾値、時間閾値、及び値閾値のうちの2つ以上の値を定義する必要がある。実際には、状況に応じて、最適な交換時間枠は、やはり少なくとも数十分から数時間程度であり、看護師は、都合の良いときにパッチを交換するのに十分な時間を与えられるであろう。
【0071】
第1及び第2のパッチ性能パラメータの両方が第1及び第2の下限閾値を有するようなシステムである場合、最適なパッチ性能をできるだけ長い期間にわたって維持するために、交換時間枠が2つの下限閾値のうち高い方から開始すると定義することが好ましい。第1及び第2のパッチ性能パラメータの両方が第1及び第2の下限閾値並びに第1及び第2の上限閾値を有するようなシステムである場合、交換時間枠を、下限閾値のうちの高い方と上限閾値のうちの低い方との間と定義することが、パッチ故障を回避しながら最適なパッチ性能の時間を最大化するので、好ましい。また、3つ以上のパッチ・パラメータを有するシステムにおいても、同じアプローチを使用できる。
【0072】
装着可能パッチ12の交換が必要であるという指示を出力することは、例えば視覚的、聴覚的、又は触覚的な手段によって使用者に直接信号を提供することによって、及び/又は、例えば有線又は無線の通信インターフェースを介して外部出力デバイスに信号を送信することによって、行うことができる。
【0073】
パッチ交換が必要であることの指示は、例えば、受動的と能動的との両方の、視覚的、聴覚的又は触覚的な手段によって実現される。システムが外部出力デバイスと通信するための通信システムを備える場合、これは、パッチに無線接続されたスマートフォン又は他の携帯デバイスのユーザ・インターフェース上の警告を介したものであってよい(能動的視覚警告システム)。パッチが有線通信システムを介して外部出力デバイスに接続されることも可能ある。システムが出力デバイスを備えている場合、これは、点滅するLEDライト(能動的視覚警告システム)又はpHの変化によってトリガされる色変化インジケータ(受動的視覚警告システム)を介したものであってもよい。音声警告は、ビープ音などの単純な音を含んでもよく、又は音声メッセージでもあり得る。触覚的手段は、パッチの内部又は外部のいずれかで振動する要素の形態をとることができる。実際には、最適な交換時間枠内でパッチ交換の必要性の指示が、臨床的なワークフローと相補的なやり方で行われることが好ましい。臨床医に対するパッチ交換の必要性についての警告は、臨床業務が占める時間がより少なく、パッチ交換に適した瞬間を見つけるのに十分な時間を有し得る瞬間に行われることが理想的であろう。
【0074】
試薬の枯渇や電極の腐食による装着可能パッチの故障に加え、本システムは、パッチが初期位置から動いたことを使用者に警告するためにも使用される。これは、例えば、過度の発汗により、パッチを使用者の皮膚に取り付けるために使用される接着剤が、パッチをその最初の意図した場所に保持することができなくなる状況につながり、発生する。
【0075】
粘着剤がパッチをその意図した箇所に保持できないことは、パッチの移動及び/又は回転につながり、様々な結果をもたらし得る。パッチのそのような移動及び/又は回転によって影響を受ける2つの例示的な測定は、姿勢測定パッチ及びSpO測定パッチである。
【0076】
「姿勢測定パッチ」という表現は、それによって、例えばデバイスを装着している人が体を起こしているか(立っているか若しくは座っているか)、又は伏臥位、仰臥位、左側臥位、右側臥位などであるかを測定するパッチを指す。この情報自体がすでに、例えば褥瘡の予防のために、介護者にとって非常に有用である。さらにその情報は、例えば患者が歩行中か否かを判定するアルゴリズムにも使用される可能性がある。
【0077】
姿勢測定を正確に行うためには、体に対するパッチの向きを知る必要がある。これを達成するには、体型を考慮し、デバイスを体上に常に同じやり方で配置することが1つのやり方である。これを達成する別の方法は、パッチの較正による。センサがずれたり、又はより悪いことには回転したりする場合、体軸に対するパッチの決定された方向が変わるので、較正が有効でなくなる。
【0078】
上記の汗測定から、着用者が汗を大量に排出し、パッチがずれたり/回転したりした可能性が高いかを推測することができる。この場合、姿勢の再較正及び/若しくは発汗速度の離散化の補正を自動的にトリガすることができるか、又は看護師にパッチの取り外し/交換を勧めることが可能である。後者については、パッチが大量に溜まった汗に曝露されると思われ、パッチがずれたり及び/又は回転したりしやすいときは、事前に行うことも可能である。
【0079】
光学式血中酸素飽和度測定(すなわち、SpO測定)は、センサが取り付けられる体の部位に応じた実験定数(「較正定数」と呼ばれることが多い)を伴う繊細な測定である。したがって、SpOセンサを有するパッチが別の場所に移動したり、又は回転したりすると、これは、SpOの正しい計算のために使用すべき較正定数に影響を与える可能性がある。したがって、パッチが移動したときは、看護師がパッチを取り外し、交換するか、又は新しい位置に従って新しい較正定数を入力するように勧める必要がある。
【0080】
図4は、本発明の装着可能パッチ・システム10のさらなる実施例を示している。図1に示されるシステムに類似して、システム10は、少なくとも1つの汗パラメータを測定するためのセンサ14を備える装着可能パッチ12とコントローラ16とを備える。
【0081】
本システムは、着用者のさらなる生理的パラメータをモニタリングするためのさらなるセンサ40さらに備える。少なくとも1つのさらなるセンサは、バイタル・サインをモニタリングするためのセンサ及びバイオマーカ用のセンサから選択される。このさらなるセンサは、例えば、着用者の心機能をモニタリングするための1つ又は複数の電極、体から排出されるバイオマーカ用のセンサ、血中酸素センサ、又は姿勢センサ、例えばジャイロスコープ若しくは加速度計などの慣性センサを備えることができる。そのため本システムは、例えば、汗への曝露によって生じる腐食により電極性能が低下する場合、又はバイオマーカを検知するのに使用される試薬が、汗で溶出したり若しくは汗の分析で消費されたりして枯渇する場合に、パッチを交換するのに最適な時間枠を決定することができる。
【0082】
システムは、システムの使用者に指示を送達するための出力デバイス42、及び/又は、システムの使用者に指示を送達するための外部出力デバイスと通信するための通信システム44も備える。
【0083】
上記のように、パッチを交換する必要があるという指示は、任意の適切な手段によって、着用者に直接伝えられるか、又は着用者を担当する看護師などの別の使用者に伝えられるかのいずれかとできる。この手段には、視覚的、聴覚的、又は触覚的な情報伝達の手段が含まれる。この手段は、能動的なもの、例えば点滅するLED、スマートフォン若しくはタブレットへのメッセージ、ビープ音若しくは振動、又は受動的なもの、例えばインジケータの色変化を介するものであり得る。一実施例では、指示が、看護師によって携帯されるスマートフォン又はタブレットなどの外部デバイスに送信される。この場合、システムは、使用者に交換が行われるべき時間枠が提供されるように設計することができ、例えば、予定されている訪問中、又は混雑しない時間帯にパッチを交換することによって、交換が全体のスケジュール内に収まるように交換を計画することができる。或いは、パッチの交換が必要である指示を提供する手段をパッチ自体に内蔵することができる。
【0084】
図5は、本発明による装着可能パッチの交換の必要性の指示を提供するための方法50の実施例を示している。本方法は、パッチを装着する人の少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップ52と、少なくとも1つの汗パラメータを第1の閾値と比較するステップ54と、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量、及び/又は少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値に基づいて、交換情報を決定するステップ56と、交換情報に基づいて、装着可能パッチの交換が必要である指示を提供するステップ58とを有する。
【0085】
交換情報は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量が時間閾値を超える、及び/又は、少なくとも1つの汗パラメータが第1の閾値を超える時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値がパラメータ閾値を超えるという情報を含む。
【0086】
図5の方法は、人によって装着されるパッチの交換が必要な時期の、より正確な情報を提供することができる。特に、本方法は、不必要に早くパッチを交換することを避けるために使用することができる。
【0087】
測定するステップ52で測定される少なくとも1つの汗パラメータは、汗のボリューム、汗のpH、ナトリウムの排出の量又は速度、カリウムの排出の量又は速度、塩化物の排出の量又は速度、汗中に存在する少なくとも1つのバイオマーカの排出の量又は速度、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0088】
汗のボリューム、汗のpH、汗と共に排出される特定のイオンの量、又は汗と共に排出されるバイオマーカの量などのパラメータは、装着可能パッチの寿命に直接的な影響を有し得る。例えば、汗中に存在するイオンのうちのいくつかは、パッチに内蔵された電極を腐食させる作用を有し得る。さらに、汗中の特定のイオンの量が、皮膚の導電性、したがってパッチに内蔵されるバッテリの消耗に影響し得る。汗のpH及び汗のボリュームは、パッチを着用者の皮膚に取り付けるのに使用される粘着剤に影響を有し得る。バイオマーカ及び汗のボリュームは、分析目的でパッチ内に存在する反応物が消費される又は溶出されるスピードに影響し得る。したがって、汗パラメータとしてのそのようなパラメータを測定することにより、パッチの交換の最適なタイミングについての特に精確な情報を提供することができる。
【0089】
さらに、いくつかの実施例では、少なくとも1つの汗パラメータを測定するステップ52は、少なくとも2つの汗パラメータを測定することを有する。
【0090】
複数の汗パラメータを測定することにより、例えば、バッテリの故障又はパッチを着用者の体に取り付ける粘着剤の故障などの、汗の異なる成分に起因するパッチの複数の異なる故障モードを考慮することが可能になる。これにより、パッチの交換の最適なタイミングの決定の精度がさらに向上する。
【0091】
図5に示す方法において、時間の総量に関する少なくとも1つの汗パラメータを示す値は、時間の上記総量にわたる汗成分の測定量又は時間の上記総量にわたる排出の速度の、時間積分を含む。
【0092】
特許請求されている発明を実施する当業者であれば、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を研究することによって、開示の実施形態の変形例を理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「含む/備える」という語は、他の要素又はステップを排除せず、単数形の要素は、複数であることを排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の項目の機能を果たしてよい。方策は、互いに異なる従属請求項に記載されており、有利に組み合わせることができる。特許請求の範囲又は明細書において、「ように適合される」という用語が使用されている場合、「ように適合される」という用語は、「ように構成される」という用語と同意義であることを意図していることに留意されたい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【0093】
コンピュータ・プログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体などの適切な媒体に記憶/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムを介する配布などの、他の形態で配布されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5