(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240610BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F04B39/00 A
F04C29/00 U
(21)【出願番号】P 2023568191
(86)(22)【出願日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2023026880
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 晃啓
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051271(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/083981(WO,A1)
【文献】特開2022-089538(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230515(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/189698(WO,A1)
【文献】特開平09-287057(JP,A)
【文献】特開平06-184692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロフルオロオレフィン冷媒を50質量%以上含む冷媒と、冷凍機油とが封入される高圧チャンバタイプの密閉容器と、
前記密閉容器に収容され、鉄系材料により形成される表面に形成された、前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒に由来するフッ素を含む膜の表面において摺動する摺動部を有する圧縮機構部と、を備え、
前記冷凍機油は、ポリビニルエーテル又はポリオールエステルの少なくとも一方の冷凍機油を含み、
40℃における前記冷凍機油の動粘度が10mm
2/s以上40mm
2/s以下であ
り、
前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒は、R1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種である
ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記冷媒は、前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒以外の少なくとも一部として、R32を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記鉄系材料は、炭素鋼又はクロムモリブデン鋼である
ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、蒸発器とを備え、
前記圧縮機は、
ハイドロフルオロオレフィン冷媒を50質量%以上含む冷媒と、冷凍機油とが封入される高圧チャンバタイプの密閉容器と、
前記密閉容器に収容され、鉄系材料により形成される表面に
形成された、前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒に由来するフッ素を含む膜の表面において摺動する摺動部を有する圧縮機構部と、を備え、
前記冷凍機油は、ポリビニルエーテル又はポリオールエステルの少なくとも一方の冷凍機油を含み、
40℃における前記冷凍機油の動粘度が10mm
2/s以上40mm
2/s以下であ
り、
前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒は、R1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種である
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、冷凍庫、業務用空調機等の冷凍サイクル装置で主流となっているR410A冷媒は、地球温暖化係数(GWP)が2090と高く、地球温暖化抑制を目的にGWP値の低い冷媒への変更が行われている。例えば、次世代の低GWP候補冷媒のR454C冷媒は、R1234yfを78.5質量%含み、R32を21.5質量%含む混合冷媒である。
【0003】
特許文献1の要約書には「冷媒と冷凍機油とを含む組成物であって、前記冷媒は、HFO-1141、HFO-1132(E/Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びHFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種の冷媒を含み、前記冷凍機油は、エンジニアリングプラスチック、有機膜、無機膜、ガラス及び金属部からなる群から選ばれる少なくとも一種で構成される基材との接触角が0.1°≦Θ≦90°である、ことを特徴とする組成物。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイドロフルオロオレフィン冷媒(以下HFO冷媒)とハイドロフルオロカーボン冷媒(以下HFC冷媒)との併用する場合、HFO冷媒とHFC冷媒との使用比率によっては、例えば冷凍能力等の性能が併用しない場合よりも低下することがある。例えば、R454C冷媒で試算すると、JIS-B8600「冷媒用圧縮機の定格温度条件」の表1の定格温度H条件では、理論冷凍能力がR410A冷媒と比較すると約35%低下する。冷凍能力の確保のためには、インバータで駆動される圧縮機の場合、運転回転数(回転速度)を増加させることで対応できる。しかし、軸受のPV値が回転速度の増加分だけ増大する。このため、高い摺動性を有することが好ましい。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、冷媒の不均化について検討されている(段落0059等)。しかし、圧縮機の摺動部(軸受等)において、摺動性を向上させる検討は行われていない。
本開示が解決しようとする課題は、摺動部における摺動性を向上させた圧縮機及び冷凍サイクル装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の圧縮機は、ハイドロフルオロオレフィン冷媒を50質量%以上含む冷媒と、冷凍機油とが封入される高圧チャンバタイプの密閉容器と、前記密閉容器に収容され、鉄系材料により形成される表面に形成された、前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒に由来するフッ素を含む膜の表面において摺動する摺動部を有する圧縮機構部と、を備え、前記冷凍機油は、ポリビニルエーテル又はポリオールエステルの少なくとも一方の冷凍機油を含み、40℃における前記冷凍機油の動粘度が10mm2/s以上40mm2/s以下であり、前記ハイドロフルオロオレフィン冷媒は、R1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種である。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、摺動部における摺動性を向上させた圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】冷媒の種類及び冷凍機油の動粘度と、PV値との関係を示すグラフである。
【
図4】本開示の冷凍サイクル装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0011】
図1は、本開示の圧縮機を示す断面図である。圧縮機100は、ガス状の冷媒を圧縮する機器であり、例えばスクロール圧縮機である。圧縮機100は、密閉容器1と、密閉容器1に収容された圧縮機構部8とを備える。圧縮機構部8は、フレーム3と、クランク軸4(駆動軸)と、主軸受5と、旋回軸受6とを備える。これらのうち、クランク軸4と主軸受5との接触部分に、摺動部9が形成される。従って、圧縮機構部8は、摺動部9を有する。なお、摺動部9はクランク軸4と主軸受5と間に限定されず、圧縮機100において摺動する部分であればどこでもよい。
【0012】
密閉容器1は、高圧チャンバタイプである。密閉容器1には、圧縮機構部8のほかにも、電動機7等が収容される。密閉容器1には、HFO冷媒(ハイドロフルオロオレフィン冷媒)を50質量%以上含む冷媒と、冷凍機油とが封入される。冷凍機油は、密閉容器1の内側下部で油溜まりMとしても存在する。密閉容器1は、冷媒を吸入する吸入パイプPaと、圧縮機構部8で圧縮された冷媒を排出する吐出パイプPbとを備える。吸入パイプPaは、後記の吸入回路13(
図4)に接続される。吐出パイプPbは、後記の吐出回路14(
図4)に接続される。
【0013】
圧縮機構部8は、クランク軸4の回転に伴って、冷媒を圧縮する機構である。圧縮機構部8は、固定スクロール21と、旋回スクロール22と、を備える。固定スクロール21は、密閉容器1内に固定される固定部材である。固定スクロール21は、円板状を呈する肉厚の台板21aと、台板21aの下側に立設される渦巻状のラップ21bと、を備える。旋回スクロール22は、その旋回によって固定スクロール21との間に圧縮室Cを形成する移動部材である。旋回スクロール22は、円板状の台板22aと、台板22aに立設される渦巻状のラップ22bと、クランク軸4の上端部に嵌合されるボス部22cと、を備える。旋回スクロール22はフレーム3に支持される。
【0014】
圧縮室Cは、ラップ21bとラップ22bとの間に形成される。圧縮室Cは、ガス状の冷媒を圧縮する空間であり、ラップ22bの外線側及び内線側にそれぞれ形成される。台板21aの中心付近には、圧縮室Cで圧縮された冷媒を密閉容器1内の上部空間に導く吐出口Vが設けられる。
【0015】
クランク軸4は、上下方向に延び、例えば鉄系材料(炭素鋼、クロムモリブデン鋼等)により構成される。クランク軸4は、主軸4aと、主軸4aの上側に連なる鍔部4bと、鍔部4bの上側に連なる偏心部4cと、を備える。主軸受5は、クランク軸4の上部を回転自在に軸支するものである。主軸受5は、フレーム3に固定される。主軸受5は例えばスラスト軸受であり、クランク軸4の表面41に対し、回転可能に接触する。旋回軸受6は、偏心部4cを回転自在に軸支するものである。
【0016】
主軸受5とクランク軸4との間には、上記のように、摺動部9が形成される。摺動部9は鉄系材料により構成され、本開示の例では、表面41を備えるクランク軸4及び主軸受5が鉄系材料で構成される。ここでいう鉄系材料は、例えば、炭素鋼又はクロムモリブデン鋼である。これらは高い硬度を有するため、これらを使用することで耐摩耗性に優れ、高い信頼性を有する圧縮機100を得ることができる。
【0017】
図2は、摺動部9近傍を示す断面図である。摺動部9のうち鉄系材料により形成されるクランク軸4(部材の一例)の表面41には、HFO冷媒に由来するフッ素を含む膜42(後記の物理吸着膜及び化学吸着膜)が形成される。膜42は、通常は、圧縮機100(
図1)の使用に伴うクランク軸4の回転により形成されるが、圧縮機100の使用前(例えば工場出荷時)に形成されてもよい。
【0018】
密閉容器1(
図1)に封入された冷媒は、上記のように、HFO冷媒を50質量%以上含む。HFO冷媒は、分子中に二重結合(不飽和結合)を含む不飽和冷媒である。二重結合は、クランク軸4の摺動状態で、鉄系材料により形成される表面41に強い吸着性を示す。このため、HFO冷媒は、表面41において、冷媒により構成される物理吸着膜(膜42)を形成する。これにより、物理吸着膜は高い摺動性を示すことから、クランク軸4の摺動性が向上する。
【0019】
また、形成された物理吸着膜の少なくとも一部は、摺動により生じた摩擦熱によって分解される。これにより、分解された物理吸着膜は、フッ素化合物により構成される化学吸着膜(膜42)に変化する。化学吸着膜は、クランク軸4の摺動に対し、上記の物理吸着膜よりも更に高い摺動性を示す。これにより、摺動部9でのクランク軸4の摺動性を更に向上でき、圧縮機100の耐焼き付き性及び信頼性を向上できる。
【0020】
図3は、冷媒の種類及び冷凍機油の動粘度と、PV値との関係を示すグラフである。
図3のグラフは、横軸が0.24のときの軸受PV値の値を100%とした相対的なグラフである。横軸は、クランク軸4の許容傾斜角に対する、クランク軸4の実際の傾斜角を示す。横軸の数値が1に近いほど、クランク軸4の傾斜が大きいといえる。従って、横軸の数値が大きいほど、摺動部9の状態が厳しい条件になっているといえる。縦軸は、主軸受5(
図2)のPV値(限界PV値)を示す。PV値は面圧(p)と表面速度(v)との積であり、摩擦熱と相関する。PV値が大きいほど摺動性が高く、耐久性が優れるといえる。従って、クランク軸4の許容傾斜角に対する、クランク軸4の実際の傾斜角が小さいほど、PV値は高くなる。
【0021】
実線のグラフ(実施例1)は、冷媒としてR454C、冷凍機油としてポリビニルエーテル(40℃における動粘度32mm2/s)を使用した結果である。R454Cは、R1234yf(HFO冷媒)を78.5質量%と、R32(HFC冷媒)を21.5質量%と、の割合で含む冷媒である。破線のグラフ(比較例1)は、冷媒としてR410A、冷凍機油としてポリビニルエーテル(40℃における動粘度68mm2/s)を使用した結果である。R410Aは、R125(HFO冷媒)を50質量%と、R32(HFC冷媒)を50質量%と、の割合で含む冷媒である。
【0022】
一点鎖線のグラフ(比較例2)は、冷媒としてR448A、冷凍機油としてポリビニルエーテル(40℃における動粘度32mm2/s)を使用した結果である。R448Aは、R1234yf(HFO冷媒)を20質量%と、R1234ze(HFO冷媒)を7質量%と、R32(HFO冷媒)を26質量%と、R125(HFC冷媒)を26質量%と、R134a(HFO冷媒)を21質量%と、の割合で含む冷媒である。従って、R448Aでは、HFO冷媒が27質量%、HFC冷媒が73質量%の割合で含まれる。
【0023】
以上の点を以下の表1に纏めた。
【0024】
【0025】
通常は、冷凍機油の動粘度が大きいほど摺動性が高い。このため、動粘度が比較的高い比較例1では、大きなPV値を示すことから、高い摺動性(耐久性)を有するといえる。しかし、実施例1のグラフは、比較例1のグラフの概ね同じ位置に存在する。従って、動粘度が相対的に低い実施例1でも、高い摺動性(耐久性)を有することがわかった。この減少は、上記
図2を参照したメカニズムに起因すると考えられる。即ち、実施例1の動粘度は比較例1の動粘度よりも低いため、冷媒を考慮しなければ摺動性も低くなると考えられるが、その低さを補うように、実施例1の冷媒が作用したためと考えられる。換言すれば、冷凍機油の動粘度が低くても、所定比率以上のHFO冷媒を使用することで、摺動性を向上できる。
【0026】
別の観点では、実施例1と比較例2とでは、冷凍機油の動粘度が同じである。従って、冷凍機油に起因する作用だけを考慮すれば、PV値に関するグラフの位置はほぼ同じになると考えられる。しかし、使用した冷媒におけるHFO冷媒の比率が全く異なる。このような比率の相違により、実施例1のPV値が、比較例2のPV値よりも全体的に約20%程度も増加した。従って、単にHFO冷媒を任意の量で使用するのではなく、HFO冷媒を本開示の範囲(HFO冷媒を50質量%以上含む)で使用することで、摺動性を向上できることがわかった。
【0027】
また、密閉容器1(
図1)に封入された冷凍機油について、40℃における冷凍機油の動粘度が10mm
2/s以上40mm
2/s以下である。これにより、相対的に低い動粘度を有する冷凍機油を使用しても、高い摺動性を得ることができる。特に、40mm
2/s以下にすることで、冷凍機油の粘性抵抗、摩擦抵抗等を低く抑え、圧縮機100の効率を向上できる。
【0028】
冷凍機油は、ポリビニルエーテル又はポリオールエステルの少なくとも一方の冷凍機油を含む。特にポリビニルエーテルは空気及び水に対して高い耐久性を有する。このため、ポリビニルエーテルは、例えば長い配管長を有する冷凍サイクル装置200(
図4)において好適に使用できる。一方で、ポリオールエステルは、ポリビニルエーテルよりは空気及び水に対する耐久性が低い。このため、ポリオールエステルは、相対的に短い配管長を有する冷凍サイクル装置200(
図4)に好適に使用できる。
【0029】
密閉容器1(
図1)に封入された冷媒は、上記のように、HFO冷媒を50質量%以上(少なくとも50質量%)含む。HFO冷媒の含有量は、封入された冷媒全体に対して、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下である。冷媒は、HFO冷媒とHFC冷媒とを併用することが好ましい。併用によりHFO冷媒とHFC冷媒との各機能(例えば摺動性、冷凍能力等)を何れも発揮できる。
【0030】
HFO冷媒は、例えば、R1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種を含む。これらは高い冷凍能力を有する一方で、低い地球温暖化係数(GWP)を有する。従って、これらのうちの少なくとも一種を含むことで、地球環境への負荷が小さく、高性能な圧縮機100を得ることができる。
【0031】
このとき、冷媒は、HFO冷媒以外の少なくとも一部として、R32を含むことが好ましい。R32は、汎用されており高い冷凍性能を有するとともに、HFC冷媒の中では低いGWPを有する。このため、地球環境への負荷が小さく、高性能な圧縮機100を得ることができる。
【0032】
また、別の実施形態では、HFO冷媒は、R1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種である第1冷媒と、R1132(E)又はR1123のうちの少なくとも一種である第2冷媒と、を含む。そして、封入されるHFO冷媒の全体において、第1冷媒は50質量%以上の割合で含まれ、第2冷媒は50質量%未満の割合で含まれる。このようにすることで、使用されるHFO冷媒の中でもR1234yf又はR1234zeのうちの少なくとも一種である第1冷媒の比率を向上させて、これらによる機能(安定性、冷媒能力、効率等)を高めることができる。
【0033】
第2冷媒がR1132(E)を含む場合、第1冷媒は、HFO冷媒全体に対して好ましくは65質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上85質量%以下、特に好ましくは70質量%以上80質量%以下である。また、第2冷媒がR1123を含む場合、第1冷媒は、HFO冷媒全体に対して好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは55質量%以上80質量%以下、特に好ましくは55質量%以上70質量%以下である。
【0034】
図4は、本開示の冷凍サイクル装置200を示す系統図である。冷凍サイクル装置200は、図示の例では空調機であるが、例えば冷凍機、ショーケース等でもよい。冷凍サイクル装置200は、圧縮機100と、室外側熱交換器26(凝縮器又は蒸発器の一例)と、暖房用の電子膨張弁27及び冷房用の電子膨張弁29(何れも膨張機構の一例)と、室内側熱交換器11(蒸発器又は凝縮器の一例)と、を備える。圧縮機100と、室外側熱交換器26と、電子膨張弁27,29と、室内側熱交換器11とが配管(不図示)で接続されることで吐出回路14を冷媒が循環し、冷凍サイクルが形成される。冷凍サイクルは、閉回路である。室外側熱交換器26には送風機25が付設される。室内側熱交換器11には送風機10が付設される。
【0035】
冷凍サイクル装置200は、更に、圧縮機100の吐出回路14中に備えられた油分離器23と、油分離器23から圧縮機100に冷凍機油を戻す直列回路12とを備える。直列回路12は、圧縮機100の内側下部に形成された油溜まりM(
図1)に冷凍機油を戻す回路である。冷凍サイクル装置200は、更に、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁24と、レシーバ28と、アキュームレータ15と、吸入回路13とを備える。
【0036】
冷凍サイクル装置200には、例えば、上記実施例1で使用した冷媒であるR454Cを使用できる。冷凍サイクル装置200は、上記
図1~
図3を参照して説明した圧縮機100を備える。このため、圧縮機100の摺動部9(
図1)における摺動性が高く、冷凍サイクル装置200の信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0037】
1 密閉容器
100 圧縮機
11 室内側熱交換器
200 冷凍サイクル装置
21 固定スクロール
22 旋回スクロール
26 室外側熱交換器
4 クランク軸
41 表面
42 膜
4a 主軸
5 主軸受
6 旋回軸受
8 圧縮機構部
9 摺動部
【要約】
摺動部における摺動性を向上させた圧縮機を提供する。この課題の解決のため、圧縮機100は、ハイドロフルオロオレフィン冷媒を50質量%以上含む冷媒と、冷凍機油とを封入した高圧チャンバタイプの密閉容器1と、密閉容器1に収容され、鉄系材料により構成される摺動部9を有する圧縮機構部8と、を備え、前記冷凍機油は、ポリビニルエーテル又はポリオールエステルの少なくとも一方の冷凍機油を含み、40℃における前記冷凍機油の動粘度が10mm2/s以上40mm2/s以下である。