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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/12 20060101AFI20240610BHJP
   G11B 23/00 20060101ALI20240610BHJP
   G11B 19/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G11B33/12 313C
G11B23/00 K
G11B19/20 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023568647
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2022046090
(87)【国際公開番号】W WO2023120333
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021208588
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田邊 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-172671(JP,A)
【文献】特開2004-095054(JP,A)
【文献】特開2007-280514(JP,A)
【文献】国際公開第2011/101971(WO,A1)
【文献】特開2014-232558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/12
G11B 23/00
G11B 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を収容するベースと、
前記ベースに取り付けられるカバーと、
軸方向の一側が前記ベースに固定され前記軸方向の他側が前記カバーに固定され前記記録媒体を回転自在に支持するスピンドルシャフトと、
前記スピンドルシャフトを前記軸方向の他側で前記カバーに対して締結により固定る締結具と、を備え、
前記締結具は、前記カバーの被締結部に前記軸方向で当接する締結部を有し、
記被締結部は、前記スピンドルシャフトに前記軸方向で当接する平板部及び該平板部に対して傾斜したテーパー部を備え、前記テーパー部が前方向に対して傾斜した斜面を構成し
前記締結部は、前記被締結部に向けて前記軸方向に突出し前記軸方向に対する交差方向に弾性変形した状態で前記被締結部の斜面に当接して前記平板部を前記スピンドルシャフトに対して押圧すると共に前記被締結部及び前記締結部を前記交差方向に係合させる突起部を一体に備えた、
記録装置。
【請求項2】
請求項1の記録装置であって、
前記締結部の前記突起部は、記被締結部の前記斜面に前記交差方向の両側で係合する
記録装置。
【請求項3】
請求項2の記録装置であって、
前記テーパー部は、前記締結部に向けて前記方向で突出すると共に前記スピンドルシャフト側へ弾性変形により傾斜した板材からなり、記締結部の前記突起部に前記斜面を介して弾接る、
記録装置。
【請求項4】
請求項2の記録装置であって、
前記スピンドルシャフトは、前記締結部に向けて前記方向でテーパー状に突出する突出部を有し、
前記テーパー部は、前記突出部に沿って傾斜した板材からなる、
記録装置。
【請求項5】
請求項2の記録装置であって、
前記スピンドルシャフトは、前記締結部に対する反対側に向けて形成されたテーパー状の凹部を有し、
前記テーパー部は、前記凹部に沿って傾斜した板材からなる、
記録装置。
【請求項6】
記録媒体を収容するベースと、
前記ベースに取り付けられるカバーと、
軸方向の一側が前記ベースに固定され前記軸方向の他側が前記カバーに固定され前記記録媒体を回転自在に支持するスピンドルシャフトと、
前記スピンドルシャフトを前記軸方向の他側で前記カバーに対して締結により固定する締結具と、を備え、
前記締結具は、前記カバーの被締結部に前記軸方向で当接する締結部を有し、
前記被締結部は、前記スピンドルシャフトに前記軸方向で当接する平板部及び該平板部に対して傾斜したテーパー部を備え、前記テーパー部が前記軸方向に対して傾斜した斜面を構成し、
前記締結部は、前記被締結部に向けて前記軸方向に突出し前記被締結部の前記斜面に当接する突起部を一体に備え、
前記スピンドルシャフトは、前記締結部に対する反対側に向けて形成されたテーパー状の凹部を有し、
前記テーパー部は、前記凹部に沿って弾性変形により傾斜した板材からなり、前記締結部の前記突起部に弾接して前記平板部を前記スピンドルシャフトに対して押圧すると共に前記被締結部及び前記締結部を前記軸方向に対する交差方向に係合させる、
記録装置。
【請求項7】
記録媒体を収容するベースと、
前記ベースに取り付けられるカバーと、
軸方向の一側が前記ベースに固定され前記軸方向の他側が前記カバーに固定され前記記録媒体を回転自在に支持するスピンドルシャフトと、
前記スピンドルシャフトを前記軸方向の他側で前記カバーに対して締結により固定する締結具と、を備え、
前記締結具は、前記カバーの被締結部に前記軸方向で当接する締結部を有し、
前記被締結部は、前記スピンドルシャフトに前記軸方向で当接する平板部及び該平板部に対して傾斜したテーパー部を備え、前記テーパー部が前記軸方向に対して傾斜した斜面を構成し、
前記締結部は、前記被締結部に向けて前記軸方向に突出し前記被締結部の前記斜面に当接する突起部を一体に備え、
前記テーパー部は、前記締結部に向けて前記軸方向で突出すると共に前記スピンドルシャフト側へ弾性変形により傾斜した板材からなり、前記締結部の前記突起部に弾接して前記平板部を前記スピンドルシャフトに対して押圧すると共に前記被締結部及び前記締結部を前記軸方向に対する交差方向に係合させる、
記録装置。
【請求項8】
請求項5又は6の記録装置であって、
前記突起部は、外周面がテーパー状に形成され前記テーパー部を介して前記凹部に係合する軸部である、
記録装置。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項の記録装置であって、
前記突起部は、前記被締結部の前記斜面に当接する前記締結部の面を有する、
記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ等の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の記録装置としては、例えば特許文献1のように、回転する記録媒体としてのディスクに対しヘッド部を位置決めて情報の読み書きを行うディスク装置がある。かかるディスク装置において、ディスクの回転は、スピンドルモーターによって行われる。
【0003】
スピンドルモーターは、ベース及びカバーからなるハウジングに固定されたスピンドルシャフトを備え、このスピンドルシャフトにハブを介して複数のディスクが積層状態で回転自在に支持されている。
【0004】
スピンドルシャフトの固定では、スピンドルシャフトの軸方向の一側がベースに一体のボス部に固定され、スピンドルシャフトの軸方向の他側がカバーに突き当てられた状態でネジの締結によって固定されている。かかる構造では、スピンドルシャフトの両側を容易にベース及びカバーに固定することができる。
【0005】
しかし、スピンドルシャフトは、軸方向の他側がネジの締結によるカバーとの間の摩擦力で固定状態が保持されている。このため、衝撃により摩擦力以上の力が軸方向に対する交差方向に作用すると、かかる固定状態を保持できず、スピンドルシャフトが傾いてしまうおそれがあった。
【0006】
スピンドルシャフトが傾くと、ディスクに対するヘッド部の位置決め精度が低下し、情報の読み書きに影響が出るという問題があった。
【0007】
こうした問題は、特許文献2のテープ埋め込み型ドライブ等のように、スピンドルシャフト周りに記録媒体を回転自在に支持する他の記録装置にも生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-125053号公報
【文献】特開2020-129424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、スピンドルシャフトが傾きやすい点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、記録媒体を収容するベースと、前記ベースに取り付けられるカバーと、軸方向の一側が前記ベースに固定され前記軸方向の他側が前記カバーに固定され前記記録媒体を回転自在に支持するスピンドルシャフトと、前記スピンドルシャフトを前記軸方向の他側で前記カバーに対して締結により固定る締結具と、を備え、前記締結具は、前記カバーの被締結部に前記軸方向で当接する締結部を有し、前記被締結部は、前記スピンドルシャフトに前記軸方向で当接する平板部及び該平板部に対して傾斜したテーパー部を備え、前記テーパー部が前方向に対して傾斜した斜面を構成し前記締結部は、前記被締結部に向けて前記軸方向に突出し前記軸方向に対する交差方向に弾性変形した状態で前記被締結部の斜面に当接して前記平板部を前記スピンドルシャフトに対して押圧すると共に前記被締結部及び前記締結部を前記交差方向に係合させる突起部を一体に備えた、記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締結具とカバーとが斜面での当接により締結方向に対する交差方向に係合することで、スピンドルシャフトの傾きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例1に係る記録装置の平面図である。
図2図2(A)は、図1の記録装置のII-II線に係る概略断面図、図2(B)は、変形例に係る記録装置の概略断面図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、図2の一部を拡大して示す概略断面図であり、図3(A)は締結前の状態、図3(B)は締結後の状態である。
図4図4は、本発明の実施例2に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、本発明の実施例3に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図であり、図5(A)は締結前の状態、図5(B)は締結後の状態である。
図6図6は、実施例3の変形例に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
スピンドルシャフトの傾きを抑制するという目的を、締結具とカバーとを斜面で当接させることによって実現した。
【0014】
本発明の記録装置1は、図1図5のように、ベース7と、カバー9と、スピンドルシャフト15と、締結具19と、斜面27a、27bとを備える。
【0015】
ベース7は、記録媒体5、10を収容し、カバー9は、ベース7に取り付けられる。スピンドルシャフト15は、軸方向の一側がベース7に固定され、軸方向の他側がカバー9に固定され、記録媒体5、10を回転自在に支持する。締結具19は、スピンドルシャフト15を軸方向の他側でカバー9に対して締結により固定し、カバー9の被締結部25に当接する締結部21を有する。斜面27a、27bは、締結部21及び被締結部25の一方又は双方に備えられ、締結具19の締結方向に対して傾斜している。この斜面27a、27bでの当接により、被締結部25及び締結部21を締結方向に対する交差方向に係合する。
【0016】
斜面27a、27bは、締結部21及び被締結部25の一方又は双方に一体に設ける他、別部材に設けて締結部21及び被締結部25間に介在させる構成としてもよい。
【0017】
斜面27aを被締結部25に一体に設ける場合、被締結部25は、表面が締結方向に対して傾斜し被締結部25の斜面27aを構成するテーパー部29を有してもよい。この場合、締結部21は、被締結部25に向けて締結方向に突出し、被締結部25の斜面27aに締結方向に対する交差方向の両側で係合する突起部31を備える。
【0018】
テーパー部29は、弾性を有しない構成としてもよいが、弾性を有する構成とすることが好ましい。
【0019】
テーパー部29が弾性を有する構成とする場合、テーパー部29は、締結部21に向けて締結方向で突出すると共にスピンドルシャフト15側へ弾性変形により傾斜した板材からなり、被締結部25及び締結部21を斜面27aを介して弾接させてもよい。
【0020】
テーパー部29が弾性を有しない構成とする場合、スピンドルシャフト15は、締結部21に向けてテーパー状に締結方向に突出する突出部39を有し、テーパー部29は、突出部39に沿って傾斜した板材としてもよい。
【0021】
或いは、テーパー部29が弾性を有しない構成又は弾性を有する構成において、スピンドルシャフト15は、締結方向の締結部21に対する反対側に向けて形成されたテーパー状の凹部41を有し、テーパー部29は、凹部41に沿って傾斜した板材からなってもよい。テーパー部29は、弾性を有する構成において、締結方向でスピンドルシャフト15側へ弾性変形により傾斜し、被締結部25及び締結部21を斜面27aを介して弾接させてもよい。
【0022】
突起部31は、弾性を有しない構成としてもよいが、弾性を有する構成としてもよい。
【0023】
突起部31は、弾性を有する場合、締結方向に対する交差方向に弾性変形した状態で被締結部25の斜面27aに係合した壁部からなり、被締結部25及び締結部21を斜面27aを介して弾接させてもよい。
【0024】
突起部31は、弾性を有しない場合、外周面31aがテーパー状に形成され、テーパー部29を介して凹部41に係合する軸部としてもよい。
【0025】
また、突起部31は、被締結部25の斜面27aに当接する締結部21の斜面27bを有してもよい。
【実施例1】
【0026】
[記録装置の構成]
図1は、本発明の実施例1に係る記録装置の平面図である。図2(A)は、図1の記録装置のII-II線に係る概略断面図、図2(B)は、変形例に係る記録装置の概略断面図である。
【0027】
本実施例の記録装置1は、磁気ディスク装置であり、ハウジング3内の空間部3aに複数のディスク5を収容している。ディスク5は、本実施例の記録媒体を構成する。
【0028】
ハウジング3は、ベース7と、カバー9とで構成されている。
【0029】
ベース7は、アルミニウム等の金属からなり、記録装置1の厚み方向(以下、単に「厚み方向」と称する。)の一方が開口した箱状に構成されている。なお、ベース7は、ディスク5を収容可能な箱状であればよく、その限りにおいて適宜の形状を採用可能である。本実施例のベース7は、例えば平面視で略矩形形状となっている。なお、平面視とは、厚み方向から見た状態を意味し、平面及び底面を区別する意味ではない。
【0030】
このベース7は、厚み方向の一方の開口がアルミニウム等の金属の板材からなるカバー9を取り付けられて閉止される。カバー9とベース7の間にはガスケット11が介在し、これによってディスク5を収容するハウジング3内の空間部3aが密閉される。
【0031】
この密閉状の空間部3aには、例えばヘリウム等の空気よりも抵抗の少ないガスが封入される。なお、ハウジング3の空間部3aは、カバー9によって閉止しつつ、ガスケット11を省略して密閉しない構成も可能である。
【0032】
複数のディスク5は、厚み方向に積層され、スピンドルモーター13により回転可能に支持された構成となっている。これらディスク5は、キャリッジ(図示せず)により位置決められた磁気ヘッド(図示せず)を通じて情報の読み書きが行われるようになっている。
【0033】
なお、記録装置1は、磁気ディスク装置に限られず、光ディスク装置等の他のディスク装置やディスク装置以外の記録装置であってもよい。例えば、記録装置1は、図2(B)のように、テープ埋め込み型ドライブとしてもよい。この記録装置1では、二つのテープリール8間に巻き取られたテープフィルム10及び情報の読み書き用のヘッドアッセンブリ12がハウジング3内に収容されている。
【0034】
テープリール8間に巻き取られたテープフィルム10は、変形例のテープ埋め込み型ドライブにおける記録媒体を構成する。このテープフィルム10は、各テープリール8を介して、スピンドルモーター13により回転可能に支持される。
【0035】
スピンドルモーター13は、スピンドルシャフト15と、ハブ17とを備えている。テープ埋め込み型ドライブの場合、スピンドルモーター13は、ハブ17を有さず、テープリール8がスピンドルシャフト15と共動する。
【0036】
スピンドルシャフト15は、アルミニウム等の金属の棒状体であり、厚み方向に沿って配置されている。このスピンドルシャフト15には、ハブ17が回転自在に支持されている。ハブ17には、ディスク5が取り付けられている。
【0037】
従って、スピンドルシャフト15は、ハブ17を介してディスク5を回転自在に支持する。テープ埋め込み型ドライブの場合、スピンドルシャフト15周りにテープリール8に巻かれたテープフィルム10が回転自在に支持される。
【0038】
スピンドルシャフト15の軸方向の一側は、ベース7に固定され、軸方向の他側は、カバー9に固定されている。
【0039】
ベース7に対する固定は、適宜の固定方法を採用することが可能である。例えば、ベース7に形成された支持用の孔部7aに、スピンドルシャフト15の軸方向の一側が嵌合する。
【0040】
図3(A)及び図3(B)は、図2の一部を拡大して示す概略断面図であり、図3(A)は締結前の状態、図3(B)は締結後の状態である。
【0041】
カバー9に対する固定は、ネジ19による締結で行われている。従って、ネジ19は、本実施例の締結具を構成する。なお、締結具としては、ナット等の雌ネジ部材であってもよい。この場合、スピンドルシャフト15に雄ネジ部を設ければよい。
【0042】
ネジ19は、スピンドルシャフト15をカバー9に対して締結により固定する。すなわち、ネジ19は、ネジ頭部21から雄ネジ部23が突出して設けられている。雄ネジ部23がスピンドルシャフト15の軸方向の他側に設けられた雌ネジ部15aに螺合することで、ネジ頭部21がカバー9の被締結部25に当接する。
【0043】
従って、ネジ頭部21は、本実施例の締結部を構成する。なお、締結具を雌ネジ部材とする場合は、締結部は、雌ネジ部材自体によって構成される。
【0044】
被締結部25は、カバー9の周辺部9aに対して屈曲して設けられている。これにより、被締結部25は、カバー9の外部に面した表面で凹状になり、カバー9の内部に面した裏面で凸状になっている。この被締結部25は、裏面25aでスピンドルシャフト15の端面15bに当接してスピンドルシャフト15に対して締結されている。
【0045】
かかる被締結部25とネジ頭部21の双方には、斜面27a、27bが設けられている。なお、被締結部25とネジ頭部21の一方にのみ斜面を設けてもよい。
【0046】
斜面27a、27bは、ネジ19の締結方向に対して傾斜して設けられ、ネジ頭部21及び被締結部25は、斜面27a、27bでの当接により締結方向である厚み方向及びこの締結方向に対する交差方向である径方向に係合する。
【0047】
斜面27a、27bでの当接とは、締結開始から締結完了までの間において、斜面27a、27bによってネジ頭部21及び被締結部25相互が当接することをいう。本実施例では、締結開始時に斜面27a、27bの双方によって、締結完了時に斜面27aのみによって、ネジ頭部21及び被締結部25相互が当接する。
【0048】
かかる斜面27a、27bは、被締結部25のテーパー部29とネジ頭部21の突起部31とにそれぞれ設けられている。
【0049】
テーパー部29は、被締結部25の中央部に設けられている。テーパー部29の周囲は、被締結部25の平板状の平板部33が一体に設けられている。テーパー部29及び平板部33は、何れもカバー9の一部からなり、カバー9を構成する板材からなる。
【0050】
テーパー部29は、表面が厚み方向に対して傾斜し、被締結部25の斜面27aを構成する。本実施例のテーパー部29は、カバー9と同一の弾性を有する板材からなり、ネジ頭部21に向けて漸次径方向の寸法が小さくなるように厚み方向で突出する。なお、径方向は、スピンドルシャフト15の径方向をいう。
【0051】
かかるテーパー部29は、締結後において、ネジ頭部21の当接によりスピンドルシャフト15側へ弾性変形して傾斜している。これにより、テーパー部29は、被締結部25及びネジ頭部21を、斜面27aを介して弾接させる。
【0052】
本実施例において、テーパー部29は、ネジ19の雄ネジ部23を挿通する挿通孔35の周囲に、連続した周回状に設けられている。これにより、テーパー部29は、全周においてテーパー形状を有する。テーパー部29とスピンドルシャフト15との間には、空間部37が設けられている。この空間部37の範囲で、テーパー部29は、弾性変形が可能となっている。
【0053】
テーパー部29のテーパー角度は、特に限定はないが、例えば締結前においてテーパー部29の先端がカバー9の周辺部9aから厚み方向で突出しない範囲とする。ただし、テーパー部29の先端がカバー9の周辺部9aから突出してもよい。
【0054】
なお、テーパー部29は、複数の傾斜した板材からなる非連続の周回状とし、或いは周回状とせずにスピンドルシャフト15の中心を通る縦断面において径方向の両側に設けられた傾斜した板材としてもよい。ただし、複数の傾斜した板材は、周方向に等間隔で3本以上有するのが好ましい。
【0055】
突起部31は、ネジ頭部21から被締結部25に向けて厚み方向に突出し、被締結部25の斜面27aに径方向の両側で係合する。
【0056】
なお、径方向両側とは、スピンドルシャフト15の横断面において中心に対する径方向の両側をいい、スピンドルシャフト15の中心を通る縦断面における径方向の両側を含むが、かかる両側を必ずしも意味するものではない。例えば、突起部31が周方向の3点で被締結部25の斜面27aに係合する場合等も、係合箇所が横断面において中心に対する径方向の両側に位置すればよい。
【0057】
かかる突起部31は、周方向所定間隔を空けた3点以上の箇所で被締結部25の斜面27aに係合するのが好ましい。本実施例の突起部31は、ネジ頭部21の外縁に沿って周回状に設けられた壁部からなり、全周において被締結部25の斜面27aに係合する。なお、突起部31は、ネジ頭部21の外縁よりも内側に設けた壁部としてもよい。
【0058】
この係合は、締結前において、突起部31の内周に設けられたネジ頭部21の斜面27bを介して行われる。この斜面27bは、締結直前の状態で被締結部25の斜面27aに当接する。
【0059】
締結後において、突起部31の被締結部25の斜面27aへの係合は、突起部31の先端部により行われる。すなわち、突起部31は、径方向の外側に弾性変形した状態で先端部が被締結部25の斜面27aに係合して当接する。これにより、締結後では、ネジ頭部21の斜面27bが部分的に被締結部25の斜面27aに係合する。
【0060】
なお、突起部31の先端部は、突起部31の先端及びこの先端から基端側に偏倚した部位を含む。このため、締結後において、突起部31の先端のみが被締結部25の斜面27aに係合し、ネジ頭部21の斜面27bが被締結部25の斜面27aに係合しない構成としてもよい。突起部31の先端は、鋭角のエッジであるが、平坦にし、或いは曲面にしてもよい。
【0061】
ネジ頭部21の斜面27bは、被締結部25の斜面27aに対応して、被締結部25に向けて漸次径が大きくなるように傾斜している。斜面27a及び27bの傾斜角度は、締結前において同一であるのが好ましい。ただし、斜面27a及び27bの傾斜角度は、一方を他方に対して大きくしてもよい。なお、ネジ頭部21の斜面27bは省略することも可能である。
【0062】
かかる突起部31は、上記のように径方向に弾性変形した状態で被締結部25の斜面27aに係合し、被締結部25及びネジ頭部21を少なくとも斜面27aを介して弾接させる。本実施例では、被締結部25及びネジ19が相互に斜面27a及び27bを介して弾接する。ただし、突起部31は、弾性変形せずに被締結部25の斜面27aに係合する構成としてもよい。
【0063】
[スピンドルシャフトの固定]
本実施例の記録装置1では、図3のように、スピンドルシャフト15を固定する際、軸方向の一側をベース7に固定しておき、軸方向の他側をネジ19によってカバー9に締結により固定する。
【0064】
スピンドルシャフト15の軸方向の一側がベース7へ固定されると、スピンドルシャフト15の軸方向の他側では、端面15bがカバー9の被締結部25の裏面25aに当接する。この状態で、スピンドルシャフト15の雌ネジ部15aが、被締結部25の挿通孔35から外部に臨む。
【0065】
この雌ネジ部15aに対し、カバー9の挿通孔35を介してネジ19の雄ネジ部23を螺合する。この螺合が進むと、ネジ19のネジ頭部21が被締結部25に近接していき、ネジ頭部21の突起部31の斜面27bが被締結部25のテーパー部29の斜面27aに当接する。
【0066】
これによって、スピンドルシャフト15がカバー9に対して締結されていない締結前の状態となる。この締結前の状態では、スピンドルシャフト15の軸方向の他側が、ネジ19及び被締結部25を介してカバー9に対して径方向に位置決められる。従って、本実施例では、スピンドルシャフト15とカバー9との間を径方向に位置決めた状態で締結を開始できる。
【0067】
また、かかる状態では、テーパー部29の先端は、ネジ19のネジ頭部21の底面21aに対して厚み方向で隙間を有している。このため、テーパー部29の先端がネジ頭部21の底面21aに当接することによって生じ得るネジ19の傾斜や位置ずれ等を抑制できる。従って、本実施例では、締結前のより確実な位置決めが可能となる。
【0068】
この位置決め状態でネジ19の螺合をさらに進めることで、ネジ19により被締結部25とカバー9とを締結することができる。この締結時には、突起部31及びテーパー部29が相互に厚み方向に押圧されて弾性変形する。
【0069】
すなわち、突起部31は、テーパー部29の斜面27aに対して押し付けられ、斜面27aに沿って径方向に先端が拡がるように弾性変形する。一方、テーパー部29は、突起部31の先端によって押圧され、傾斜が緩くなるように弾性変形する。
【0070】
この締結状態では、突起部31及びテーパー部29が共に弾性力によって復元しようとする。これにより、突起部31は、全周でテーパー部29の斜面27aを径方向の内側に向けて押圧し、テーパー部29は、斜面27aを介して突起部31を径方向の外側に向けて押圧する。
【0071】
これら押圧により、ネジ頭部21が被締結部25に対して径方向に位置決められると共に保持される。従って、スピンドルシャフト15の軸方向の他側が、突起部31及びテーパー部29の弾性力をもってカバー9に対して径方向に確実に位置決められて保持される。
【0072】
また、この状態では、突起部31及びテーパー部29の弾性力によりネジ19の緩み止めがなされるため、スピンドルシャフト15の軸方向の他側をより確実に保持することができる。
【0073】
このように、本実施例では、スピンドルシャフト15の軸方向他側をカバー9に対して径方向に位置決めて確実に固定することができ、記録装置1に衝撃が加わってもスピンドルシャフト15の傾きを抑制することができる。
【実施例2】
【0074】
図4は、本発明の実施例2に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図である。なお、実施例2では、実施例1と基本構成が共通するため、対応する構成に同符号を付して、重複した説明を省略する。
【0075】
本実施例では、テーパー部29を締結の前後において弾性変形しないようにしたものである。
【0076】
本実施例のテーパー部29は、スピンドルシャフト15がネジ頭部21に向けて厚み方向でテーパー状に突出する突出部39を有し、テーパー部29が突出部39に沿って傾斜した板材からなる。従って、本実施例は、テーパー部29がスピンドルシャフト15の突出部39に支持されている点で実施例1と異なり、その他は、実施例1と同一である。
【0077】
本実施例では、ネジ19による被締結部25とスピンドルシャフト15との締結時に、ネジ頭部21の突起部31のみが弾性変形する。すなわち、突起部31は、実施例1と同様に、テーパー部29の斜面27aに対して押圧され、斜面27aに沿って径方向に先端が拡がるように弾性変形する。一方、テーパー部29は、突起部31に押圧されても、スピンドルシャフト15の突出部39により変形が抑制される。
【0078】
かかる実施例2でも、実施例1と同様に突起部31がテーパー部29の斜面27aを径方向の内側に向けて押圧するため、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
なお、斜面27aを有するテーパー部29に代えて、斜面27aを有しない断面矩形状等の突起をカバー9に設けてもよい。この場合、突起部31の斜面27bがネジ頭部21と被締結部25との当接を行わせる。
【実施例3】
【0080】
図5(A)及び図5(B)は、本発明の実施例3に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図であり、図5(A)は締結前の状態、図5(B)は締結後の状態である。なお、実施例3では、実施例1と基本構成が共通するため、対応する構成に同符号を付して、重複した説明を省略する。
【0081】
本実施例では、テーパー部29をネジ頭部21とは反対側に向けて凹状にしたものである。すなわち、本実施例では、スピンドルシャフト15がネジ頭部21に対する反対側に向けて形成されたテーパー状の凹部41を有し、テーパー部29が凹部41に沿って傾斜した板材からなる。
【0082】
また、本実施例では、突起部31を外周面31aがテーパー状に形成されテーパー部29を介して凹部41に係合する軸部としている。この突起部31は、弾性変形しない構成となっている。凹部41、テーパー部29、突起部31の外周面31aのテーパー角度は、同一に設定されている。
【0083】
締結前の状態においては、テーパー部29が構成されておらず、テーパー部29となる平板状のテーパー予定部43が挿通孔35の周囲に平板部33と連続して形成されている。締結時には、ネジ19の螺合が進むにつれて突起部31の外周面31aがテーパー予定部43を弾性変形させる。
【0084】
締結が完了すると、突起部31を外周面31aがテーパー状に形成され、テーパー部29を介して凹部41に係合する。なお、テーパー部29は、予め凹部41に沿った形状として、弾性変形しない構成としてもよい。
【0085】
この状態では、ネジ19の突起部31の斜面である外周面31aがテーパー部29により斜面27aを介して押圧され、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、テーパー部29がテーパー予定部43の弾性変形による場合は、加工によりテーパー部29を設ける必要が無く、製造を容易に行うことができる。
【0086】
図6は、変形例に係る記録装置の一部を拡大して示す概略断面図である。
【0087】
突起部31は、図6のように、実施例1と同様の弾性変形可能な構造としてもよい。すなわち、突起部31をネジ頭部21の外縁に設けられた壁部とし、先端の外周に斜面27bを設けている。
【0088】
締結時には、突起部31がテーパー予定部43と共に弾性変形し、締結後には、突起部31とテーパー部29とが相互に弾接する。
【0089】
かかる変形例においても、実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 記録装置
3 ハウジング
5 ディスク(記録媒体)
7 ベース
9 カバー
10 テープフィルム(記録媒体)
15 スピンドルシャフト
19 ネジ(締結具)
21 ネジ頭部(締結部)
25 被締結部
27a、27b 斜面
29 テーパー部
31 突起部
39 突出部
41 凹部


図1
図2
図3
図4
図5
図6