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特許7500889デッキスラブ、デッキスラブの施工方法、デッキスラブの設計方法、および情報処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】デッキスラブ、デッキスラブの施工方法、デッキスラブの設計方法、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20240610BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20240610BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240610BHJP
【FI】
E04B5/40 C ESW
E04B1/16 E
G06F30/13
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2024013171
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小橋 資子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 鐘悟
(72)【発明者】
【氏名】関 勝輝
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-124253(JP,A)
【文献】特開2021-161793(JP,A)
【文献】特開2002-039930(JP,A)
【文献】日本建築学会,合成スラブ構造設計指針・同解説,日本,丸善株式会社,1985年02月15日,第135-139頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04B 1/16
G06F 30/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が150mm以下の開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントM12とは、下記式(D)に基づいて算出される前記デッキスラブに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【請求項2】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が450mm以下の開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブの許容負方向曲げモーメントM45と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる負方向曲げモーメントM7とのうち、前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは、下記式(N)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【請求項3】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(O)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM9と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブの許容正方向曲げモーメントM89と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブの許容負方向曲げモーメントM910と、有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aと、前記有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる負方向最大曲げモーメントM1Bとのうち、
前記許容正方向曲げモーメントM89と前記正方向最大曲げモーメントM1Aとは、下記式(T)を満たし、
前記許容負方向曲げモーメントM910と前記負方向最大曲げモーメントM1Bとは、下記式(U)を満たし、
前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブの切断方法、開口部の位置、開口部の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ支持間距離、デッキスラブの断面性能、デッキスラブの材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁の条件、柱の条件、建築物の構造、梁とデッキプレートの接合方法、デッキスラブの許容応力度のうち、少なくとも一つを含む、ことを特徴とする、
デッキスラブ。
M8=cZc×Fc/3…(O)
(上記式(O)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(O)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(Q)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M910≧M1B…(U)
【請求項4】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が150mmを超え、600mm以下の大きさの開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【請求項5】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が450mmを超える大きさの開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブの許容負方向曲げモーメントM45と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる負方向曲げモーメントM7と、のうち、
前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(M)を満たし、
前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは下記式(N)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブの上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【請求項6】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が600mmを超える大きさの開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、
下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブの断面のコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【請求項7】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が300mmより大きい開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、
下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【請求項8】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が300mmより大きい開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、
下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブの許容負方向曲げモーメントM45と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブに生じる負方向曲げモーメントM7と、のうち、
前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(M)を満たし、
前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは、下記式(N)を満たすことを特徴とする、
デッキスラブ。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【請求項9】
開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、
前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、前記デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となり、
開口幅が300mmより大きい開口部を有し、
実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、
下記式(O)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブの鋼材で決まる許容曲げモーメントM9と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブの許容正方向曲げモーメントM89と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブの許容負方向曲げモーメントM910と、有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aと、有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる負方向最大曲げモーメントM1Bと、のうち、
前記許容正方向曲げモーメントM89と前記正方向最大曲げモーメントM1Aとは、下記式(T)を満たし、
前記許容負方向曲げモーメントM910と前記負方向最大曲げモーメントM1Bとは、下記式(U)を満たし、
前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブの切断方法、開口部の位置、開口部の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ支持間距離、デッキスラブの断面性能、デッキスラブの材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁の条件、柱の条件、建築物の構造、梁とデッキプレートの接合方法、デッキスラブの許容応力度のうち、少なくとも一つを含む、
ことを特徴とする、
デッキスラブ。
M8=cZc×Fc/3…(O)
(上記式(O)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(O)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(R)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M910≧M1B…(U)
【請求項10】
開口補強筋および開口補強梁を有しない、請求項から、およびのいずれか1項に記載のデッキスラブ。
【請求項11】
開口補強筋および開口補強梁を有しない、前記開口部の開口幅が450mm以下である、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項12】
開口補強筋は有するものの、開口補強梁を有しない、請求項またはに記載のデッキスラブ。
【請求項13】
開口補強筋は有するものの、開口補強梁を有しない、前記開口部の開口幅が600mm以下である、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項14】
開口補強筋は有するものの、開口補強梁を有しない、前記開口部の開口幅が450mmを超える大きさを有する、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項15】
開口補強梁を有する、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項16】
開口補強梁を有し、前記開口部の開口幅が600mmより大きい開口部を有する、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項17】
D51以下の線径の開口補強筋を有する、請求項、および13から16のいずれか1項に記載のデッキスラブ。
【請求項18】
前記デッキプレート上のコンクリート山上厚は、50mm以上、100mm以下に設定される、請求項からのいずれか1項に記載のデッキスラブ。
【請求項19】
前記デッキプレート上のコンクリート山上厚は、80mm以上に設定される、開口補強筋および開口補強梁を有しない、請求項に記載のデッキスラブ。
【請求項20】
2つ以上の複数の開口部を有する、請求項からのいずれか1項に記載のデッキスラブ。
【請求項21】
デッキプレートを設置し、前記デッキプレート上にコンクリートを打設する、請求項からのいずれか1項に記載のデッキスラブの施工方法であって、
デッキプレートを設置するステップと、
前記デッキプレート上にコンクリートを打設するステップと、
前記デッキスラブの一部を切断し、開口部を設けるステップと、を有する、
デッキスラブの施工方法。
【請求項22】
請求項21に記載のデッキスラブの施工方法であって、
開口補強筋を設置するステップを更に有する、
デッキスラブの施工方法。
【請求項23】
請求項21に記載のデッキスラブの施工方法であって、
開口補強梁を設置するステップを更に有する、
デッキスラブの施工方法。
【請求項24】
請求項からのいずれか1項に記載のデッキスラブを設計するデッキスラブの設計方法であって、デッキプレートの降伏点を205N/mm以上の値に設定する、デッキスラブの設計方法。
【請求項25】
デッキスラブの設計を支援するための情報処理システムであって、
通信ネットワークを介して接続された情報処理端末から送信された、前記デッキスラブに開口部を設ける際の検討に必要となる情報である開口部検討情報を受け付ける入力受付部と、
前記開口部検討情報に基づいて、前記デッキスラブの許容曲げモーメントと、前記開口部を設けた場合に前記デッキスラブに生じる曲げモーメントの計算を行う演算部と、
前記演算部によって算出された前記デッキスラブの許容曲げモーメントと、前記曲げモーメントの計算結果を前記通信ネットワークを介して前記情報処理端末に送信する出力部と、を有し、
前記開口部検討情報は、デッキスラブの切断方法に関する情報と、開口部の位置に関する情報と、開口部の寸法に関する情報と、耐火補強筋に関する情報と、デッキスラブ支持間距離に関する情報と、デッキスラブの断面性能に関する情報と、デッキスラブの材料強度に関する情報と、固定荷重および積載荷重に関する情報と、設計荷重変更の有無に関する情報と、梁の条件に関する情報と、柱の条件に関する情報と、建築物の構造に関する情報と、梁とデッキプレートの接合方法に関する情報と、デッキスラブの許容応力度に関する情報と、を含む、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキスラブ、デッキスラブの施工方法、デッキスラブの設計方法、および情報処理システムに関し、例えば、開口部を有するデッキスラブ、デッキスラブの施工方法、デッキスラブの設計方法、および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デッキスラブは鉄骨造建築物をメインに床の標準仕様として普及している。デッキスラブには、開口部が形成される場合がある。
開口部を有するデッキスラブ、デッキスラブの施工方法、およびデッキスラブの設計方法として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-124253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これまでに知られている開口部を有するデッキスラブ、デッキスラブの施工方法、およびデッキスラブの設計方法は、開口部の補強を不要または低減することができるものは一定の条件下に限られており、開口部の補強を不要または低減することができるデッキスラブの適用範囲は限定されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、適用範囲を拡大した開口部の補強を不要または低減することができるデッキスラブ、デッキスラブの施工方法、およびデッキスラブの設計方法、情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な実施の形態に係るデッキスラブは、開口部を有するデッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを有するデッキスラブであって、デッキスラブに生じる曲げモーメントの大きさは、デッキスラブの許容曲げモーメントの大きさ以下の値となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開口部の補強を不要または低減することができるデッキスラブの適用範囲を拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】開口部の補強が不要なデッキスラブの平面図である。
図1B】補強筋による補強を有した開口部を有するデッキスラブの平面図である。
図2A】開口部の補強が不要なデッキスラブのA―A断面図である。
図2B】補強筋による補強を有した開口部を有するデッキスラブのA―A断面図である。
図3A】正方向曲げモーメントが作用する、計算対象となるデッキスラブの両端ピン支持モデル図である。
図3B】正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントが作用する、計算対象となるデッキスラブの両端固定モデル図である。
図4】複数の開口部を有するデッキスラブにより構成された床組の平面図である。
図5A】有限要素法による発生モーメント計算を行う対象となる床組の平面図である。
図5B】有限要素法による発生モーメント計算を行った床組の解析結果である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る開口部構造計算システムの構成例および情報処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
図7】情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る開口部構造計算システムの構成例およびクライアント端末装置の機能ブロック構成を示す図である。
図9】クライアント端末装置のハードウェア構成を示す図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に係る開口部を有するデッキスラブの施工方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施形態における開口部を有するデッキスラブの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、各実施の形態における構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0010】
〔1〕本発明の一態様に係るデッキスラブ(1、1A)は、開口部(3)を有するデッキプレート(2)、及びデッキプレート(2)上に打設されたコンクリート(7)を有するデッキスラブ(1、1A)であって、前記デッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0、M6、M7、M1A、M1B)の大きさは、前記デッキスラブ(1、1A)の許容曲げモーメント(M12、M34、M45、M89、M910)の大きさ以下の値となることを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が150mm以下の開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M1)と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M2)と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメント(M12)とは、下記式(D)に基づいて算出される前記デッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0)との関係において、下記式(E)を満たすことが好ましい。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0012】
〔3〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が450mm以下の開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M3)と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M4)と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容正方向曲げモーメント(M34)と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M5)と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M45)と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる正方向曲げモーメント(M6)と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる負方向曲げモーメント(M7)とのうち、前記許容正方向曲げモーメント(M34)と前記正方向曲げモーメント(M6)とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメント(M45)と前記負方向曲げモーメント(M7)とは、下記式(N)を満たすことが好ましい。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0013】
〔4〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(О)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M8)と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M9)と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容正方向曲げモーメント(M89)と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M10)と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M910)と、有限要素法により算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる正方向最大曲げモーメント(M1A)と、前記有限要素法により算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる負方向最大曲げモーメント(M1B)とのうち、前記許容正方向曲げモーメント(M89)と前記正方向最大曲げモーメント(M1A)とは、下記式(T)を満たし、前記許容負方向曲げモーメント(M910)と前記負方向最大曲げモーメント(M1B)とは、下記式(U)を満たし、前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブ(1、1A)の切断方法、開口部(3)の位置、開口部(3)の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ(1、1A)支持間距離、デッキスラブ(1、1A)の断面性能、デッキスラブ(1、1A)の材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁(32、33)の条件、柱(31、41)の条件、建築物の構造、梁(32、33)とデッキプレート(2)の接合方法、デッキスラブ(1、1A)の許容応力度のうちのうち、少なくとも一つを含むことが好ましい。
M8=cZc×Fc/3…(О)
(上記式(О)において、cZcはデッキスラブの圧縮側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの引張側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(О)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(R)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M910≧M1B…(U)
【0014】
〔5〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が150mmを超え、600mm以下の大きさの開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M1)と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M2)と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントである(M12)とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0)との関係において、下記式(E)を満たすことが好ましい。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0015】
〔6〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が450mmを超える大きさの開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M3)と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M4)と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容正方向曲げモーメント(M34)と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M5)と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M45)と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる正方向曲げモーメント(M6)と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる負方向曲げモーメント(M7)と、のうち、前記許容正方向曲げモーメント(M34)と前記正方向曲げモーメント(M6)とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメント(M45)と前記負方向曲げモーメント(M7)とは下記式(N)を満たすことが好ましい。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブの上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0016】
〔7〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が600mmを超える大きさの開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M1)と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M2)と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントである(M12)とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0)との関係において、下記式(E)を満たすことが好ましい。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0017】
〔8〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が300mmより大きい開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M1)と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M2)と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントである(M12)とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0)との関係において、下記式(E)を満たすことが好ましい。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0018】
〔9〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が300mmより大きい開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M3)と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M4)と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容正方向曲げモーメント(M34)と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M5)と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M45)と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる正方向曲げモーメント(M6)と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる負方向曲げモーメント(M7)と、のうち、前記許容正方向曲げモーメント(M34)と前記正方向曲げモーメント(M6)とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメント(M45)と前記負方向曲げモーメント(M7)とは、下記式(N)を満たすことが好ましい。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0019】
〔10〕上記〔1〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口幅(XB)が300mmより大きい開口部(3)を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(O)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M8)と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の鋼材で決まる許容曲げモーメント(M9)と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容正方向曲げモーメント(M89)と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)のコンクリートで決まる許容曲げモーメント(M10)と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M910)と、有限要素法により算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる正方向最大曲げモーメント(M1A)と、有限要素法により算出されるデッキスラブ(1、1A)に生じる負方向最大曲げモーメント(M1B)と、のうち、前記許容正方向曲げモーメント(M89)と前記正方向最大曲げモーメント(M1A)とは、下記式(T)を満たし、前記許容負方向曲げモーメント(M910)と前記負方向最大曲げモーメント(M1B)とは、下記式(U)を満たし、前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブ(1、1A)の切断方法、開口部(3)の位置、開口部(3)の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ(1、1A)支持間距離、デッキスラブ(1、1A)の断面性能、デッキスラブ(1、1A)の材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁(32、33)の条件、柱(31、41)の条件、建築物の構造、梁(32、33)とデッキプレート(2)の接合方法、デッキスラブ(1、1A)の許容応力度のうち、少なくとも一つを含むことが好ましい。
M8=cZc×Fc/3…(O)
(上記式(O)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(O)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(R)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M910≧M1B…(U)
【0020】
〔11〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1)は、開口補強筋(6)および開口補強梁を有しないことが好ましい。
【0021】
〔12〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口補強筋(6)および開口補強梁を有さず、前記開口部(3)の開口幅(XB)が450mm以下であることが好ましい。
【0022】
〔13〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1A)は、開口補強筋(6)は有するものの、開口補強梁を有しないことが好ましい。
【0023】
〔14〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1A)は、開口補強筋(6)は有するものの、開口補強梁を有さず、前記開口部(3)の開口幅(XB)が600mm以下であることが好ましい。
【0024】
〔15〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1A)は、開口補強筋(6)は有するものの、開口補強梁を有さず、前記開口部(3)の開口幅(XB)が450mmを超える大きさを有することが好ましい。
【0025】
〔16〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口補強梁を有することが好ましい。
【0026】
〔17〕上記〔1〕乃至〔10〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、開口補強梁を有し、前記開口部(3)の開口幅(XB)が600mmより大きい開口部(3)を有することが好ましい。
【0027】
〔18〕上記〔13〕乃至〔17〕に記載のデッキスラブ(1A)は、D51以下の線径の開口補強筋(6)を有することが好ましい。
【0028】
〔19〕上記〔1〕乃至〔18〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、デッキプレート(2)上のコンクリート(7)山上厚が、50mm以上、100mm以下に設定されることが好ましい。
【0029】
〔20〕上記〔1〕乃至〔19〕に記載のデッキスラブ(1)は、デッキプレート(2)上のコンクリート(7)山上厚は、80mm以上に設定される、開口補強筋(6)および開口補強梁を有しないことが好ましい。
【0030】
〔21〕上記〔1〕乃至〔20〕に記載のデッキスラブ(1、1A)は、2つ以上の複数の開口部(3)を有することが好ましい。
【0031】
〔22〕本発明の一態様に係るデッキスラブ(1、1A)の施工方法は、前記デッキプレート(2)上にコンクリート(7)を打設する、上記〔1〕乃至〔21〕に記載のデッキスラブ(1、1A)の施工方法であって、デッキプレート(2)を設置するステップ(ステップS3)と、前記デッキプレート(2)上にコンクリート(7)を打設するステップと(ステップS6)、前記デッキスラブ(1、1A)の一部を切断し、開口部(3)を設けるステップ(ステップS7)と、を有することを特徴とする。
【0032】
〔23〕上記〔22〕に記載のデッキスラブ(1A)の施工方法は、開口補強筋(6)を設置するステップ(ステップS5)を更に有することが好ましい。
【0033】
〔24〕上記〔22〕乃至〔23〕に記載のデッキスラブ(1、1A)の施工方法は、開口補強梁を設置するステップ(ステップS2)を更に有することが好ましい。
【0034】
〔25〕本発明の一態様に係るデッキスラブ(1、1A)の設計方法は、上記〔1〕乃至〔21〕に記載のデッキスラブ(1、1A)の設計方法であって、デッキプレート(2)の降伏点を205N/mm以上の値に設定することを特徴とする。
【0035】
〔26〕本発明の一態様に係る情報処理システム(10)は、デッキスラブ(1、1A)の設計を支援するための情報処理システム(10)であって、通信ネットワーク(300)を介して接続された情報処理端末(200)から送信された、前記デッキスラブ(1、1A)に開口部(3)を設ける際の検討に必要となる情報である開口部検討情報(122)を受け付ける入力受付部(111)と、前記開口部検討情報(122)に基づいて、前記デッキスラブ(1、1A)の許容曲げモーメント(M12、M34、M45、M89、M910)と、前記開口部(3)を設けた場合に前記デッキスラブ(1、1A)に生じる曲げモーメント(M0、M6、M7、M1A、M1B)の計算を行う演算部(112)と、前記演算部(112)によって算出された前記デッキスラブ(1、1A)の許容曲げモーメント(M12、M34、M45、M89、M910)と、前記曲げモーメント(M0、M6、M7、M1A、M1B)の計算結果を前記通信ネットワーク(300)を介して前記情報処理端末(200)に送信する出力部(113)と、を有し、前記開口部検討情報(122)は、デッキスラブ(1、1A)の切断方法に関する情報と、開口部(3)の位置に関する情報と、開口部(3)の寸法に関する情報と、耐火補強筋に関する情報と、デッキスラブ(1、1A)支持間距離に関する情報と、デッキスラブ(1、1A)の断面性能に関する情報と、デッキスラブ(1、1A)の材料強度に関する情報と、固定荷重および積載荷重に関する情報と、設計荷重変更の有無に関する情報と、梁(32、33)の条件に関する情報と、柱(31、41)の条件に関する情報と、建築物の構造に関する情報と、梁(32、33)とデッキプレート(2)の接合方法に関する情報と、デッキスラブ(1、1A)の許容応力度に関する情報と、を含むことを特徴とする。
【0036】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0037】
<<第1の実施の形態>>
図1Aは、開口部の補強が不要なデッキスラブの平面図である。
図1Bは、補強筋による補強を有した開口部を有するデッキスラブの平面図である。
図2Aは、開口部の補強が不要なデッキスラブのA―A断面図である。
図2Bは、補強筋による補強を有した開口部を有するデッキスラブのA―A断面図である。
第1の実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、例えば、建築物の床、屋上又は天井等に用いられるものである。デッキスラブ1、1Aは、例えば、鋼材により形成されたデッキプレート2の上にコンクリート7が打設されることにより形成される。なお、説明の都合上、図1Aおよび図1Bにおいてはデッキプレート2の上に打設されたコンクリート7は省略されている。
図1A乃至図2Bに示すように、デッキスラブ1、1Aのうち、デッキプレート21には、矩形状の開口部3が設けられている。開口部3は、デッキプレート2の延在方向であるY方向にYB、デッキプレート2の延在方向に交差する方向であるX方向にXBの大きさを有する。
なお、デッキスラブ1は、後述する設計手法に基づいて耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要であることが確認された、開口部3を有するデッキスラブであり、デッキスラブ1Aは、後述する設計手法に基づいて耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要であることが確認された、開口部3を有するデッキスラブである。
ここで、デッキスラブには、構造材として用いられるデッキ合成スラブや、鉄筋付きデッキ等から構成されるRCスラブのみならず、型枠材として用いられるフラットデッキから構成されるRCスラブも含まれる。
また、デッキスラブ1、1Aともに、コンクリート7のひび割れ拡大を防止するために図示しない標準配筋の鉄筋または溶接金網がコンクリート7内に埋設される。
【0038】
デッキスラブ1、1Aには、デッキプレート2自身の質量によって発生する荷重(デッキプレート自重)、コンクリート7自身の質量によって発生する荷重(コンクリート自重)、建築基準法施行令第85条において、室の種類毎に定められた積載荷重、積載荷重以外であってデッキプレート2以外の天井、屋根仕上げ、断熱材、増し打ちコンクリート等の質量によって発生する荷重(固定荷重)などといった荷重が作用する。これらの荷重が作用することにより、デッキスラブ1、1Aには曲げモーメントが発生する。
デッキスラブ1、1Aに作用する荷重は、通常、デッキスラブ1全体で負担することが可能である。しかし、開口部3を設けると、デッキスラブ1、1Aに作用する荷重を負担することができる材料が減少することとなる。そのため、デッキスラブ1、1Aに開口部3を設けることにより、切断された材料が負担していた荷重は、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担することとなる。
しかし、切断された材料が負担していた荷重は、開口部3が設けられていないデッキプレート22に対する伝達手段を有しない限り、デッキスラブ1、1Aのうち、開口部3を有するデッキプレート21と、その上部のコンクリート7のみで負担することとなる。
そこで、デッキスラブ1Aには、配力筋5や開口補強筋6を設けることにより、開口部3が設けられていないデッキプレート22に荷重を分配し、デッキプレート21に隣接するデッキプレート22と、その上部のコンクリート7にまで荷重を負担させることができる。
【0039】
耐力補強筋4は、開口部3のスラブ断面が保有していた許容応力を代わりに負担するために設置する。配力筋5や開口補強筋6とは異なり、デッキプレート22に荷重を分配させるものではない。
配力筋5は、切断された材料が負担していた荷重をX方向に伝達するために設置する。
開口補強筋6は、開口部周辺のひび割れを抑制するために設置する。
【0040】
なお、開口部3の大きさが一定以上になると、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみでは、デッキスラブ1Aに開口部3を設けることにより、切断された材料が負担していた荷重の大きさが、開口部3以外のデッキスラブ1Aの材料が負担できる許容応力を超えてしまう場合が考えられる。
その場合は、開口部3の周囲に梁を設置することで、必要となる強度条件を充足させることが考えられる。
【0041】
「デッキプレート床構造設計・施工規準」においては、開口部がΦ150mm以下の寸法であれば、耐力補強筋や配力筋、開口補強筋による補強や、梁による補強が不要であることが示唆されている。
【0042】
しかし、「デッキプレート床構造設計・施工規準」にて示唆されている、配筋や梁による補強が不要となる開口部の寸法の大きさは、強度解析手法が未発達の時代に設定された数値であり、当時のデッキスラブの耐力に関する実験結果に基づいて設定された数値である。
そこで、強度解析手法が発達した現在であれば、より合理的な強度解析手法を用いることで、配筋や梁による補強が不要となる開口部の寸法の範囲を拡大することができるのではないかと、本願発明者は考えた。
開口部の寸法に対応した、合理的な強度解析手法を用いることで、配筋や梁による補強が不要となる開口部の寸法の範囲を拡大することができることを本願発明者は見出した。
具体的な配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブ1、1Aの開口部の寸法の範囲と、その設計手法については後述する。
【0043】
図3Aは、正方向曲げモーメントが作用する、計算対象となるデッキスラブの両端ピン支持モデル図である。
図3Bは、正方向曲げモーメントおよび負方向曲げモーメントが作用する、計算対象となるデッキスラブの両端固定支持モデル図である。
【0044】
≪補強不要となるデッキスラブ開口範囲の算出方法≫
具体的な配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブの開口部3の寸法の範囲と、その設計手法について、図3Aおよび図3Bのデッキスラブのモデル図を用いながら説明する。
補強不要となるデッキスラブ開口範囲の算出方法として、代表的に、以下に示す3種類の方法について説明する。
【0045】
≪一方向のモーメントのみに基づいた構造計算によるデッキスラブ開口範囲の算出方法≫
まずは、図3Aのデッキスラブのモデル図を用いながら説明する。
図3Aは、X方向の支持間距離がLである、両端ピン支持梁構造を有するデッキスラブ1および1A(以下、「デッキスラブ1および1A」をまとめて「デッキスラブ1」と称する)に対して、Z軸においてマイナス方向(当該方向を「正方向」と称する)に等分布荷重Wが作用していることを示した例である。
図3Aの正方向に作用する等分布荷重Wによって、デッキスラブ1には正方向の曲げモーメントM0が生じる。
図3Aに示したデッキプレート構造のモデル図において、デッキスラブ1の支持間距離をL、デッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、正方向に作用する等分布荷重Wによりデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM0とすると、以下の関係式が成立することが一般に知られる。
【0046】
M0=W×(L^2)/8 ・・・(1)
【0047】
ところで、デッキスラブ1に開口部3を設けると、先述したように、切断された材料が負担していた荷重は、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担することとなる。
このようにデッキスラブ1に開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担することとなった、切断された材料が負担していた分の荷重をadWとした場合、図3Aに示したデッキプレート構造のモデル図において、デッキスラブ1の支持間距離をL、デッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、正方向に作用する等分布荷重Wによりデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM0とすると、以下の関係式が成立する。
【0048】
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8} ・・・(2)
【0049】
ここで、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、開口部3を設けていないデッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、開口部3のX方向の大きさをXBとすると、開口部3の両隣のデッキスラブ1で均等に負担するとして、以下の関係式が成立する。
【0050】
adW=XB×W/2…(3)
【0051】
一方で、デッキスラブ1には材料の降伏点に基づく許容曲げモーメントが存在する。
デッキスラブ1のコンクリート側断面係数をcZc、コンクリート7の設計基準強度をFc、長期許容応力度を考慮した係数を3とすると、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1については、以下の関係式が成立する。
【0052】
M1=cZc×Fc/3…(4)
また、デッキスラブ1の鋼材側断面係数をcZt、鋼材の許容応力度の基準強度(降伏点)をF、長期許容応力度を考慮した係数を1.5とすると、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM2については、以下の関係式が成立する。
なお、鋼材には、デッキプレートのみならず、溶接金網や鉄筋、補強筋等も含まれる。
【0053】
M2=cZt×F/1.5…(5)
上記式(4)、(5)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、デッキスラブのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と鋼材で決まる許容曲げモーメントM2の値のうち、より大きい値を採用すればよいことから、以下の関係式が成立する。
【0054】
M12=MAX(M1,M2)…(6)
なお、MAX(M1,M2)とは、式(4)乃至(5)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを意味している。
【0055】
上記式(2)、(6)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0との関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0056】
M12≧M0…(7)
【0057】
上記(1)乃至(7)に基づいて、本願発明者は耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲を検討した。
【0058】
Y方向の支持間距離Lが3000mm、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wが7220N/mであって、開口部3のX方向の大きさXBが150mm、Y方向の大きさが900mmの場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、542N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0は8733N・mとなった。
また、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wを7220から10420N/mに変更した場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、782N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0は12603N・mとなった。
【0059】
一方、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcが2280×{(10^3)(mm3)}、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtが86.7×{(10^3)(mm^3)}、コンクリート7の設計基準強度Fcが18N/mm、鋼材の許容応力度の基準強度(降伏点)Fが205N/mmの場合、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1は13680N・m、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM2は、11849N・mとなり、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、13680N・mとなった。
【0060】
ここで、耐力補正率を適用する場合を考える。
耐力補正率とは、「実耐力/長期許容荷重」で求められる値である。なお、長期許容荷重とは、前述の「デッキプレート床構造設計・施工規準」に基づいて、許容応力度設計により算出した長期の許容荷重である。
【0061】
上記(1)乃至(7)によって算出される設計値は、耐力の安全率が高めに設定された上で算出される値であることから、実耐力に相当する載荷試験による実験値とは一致しないことが通常である。
そのため、上述した耐力補正率を考慮することにより、算出される設計値(許容正方向曲げモーメントM12)を実耐力に相当する値に補正することが可能である。
【0062】
例えば、耐力補正率を考慮しない場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、13680N・mであるが、耐力補正率を1.5とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、20520N・m、耐力補正率を2.0とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、27360N・mとなる。
【0063】
以上の結果から、開口部3のX方向の大きさが、150mm以下であれば、降伏点Fが205N/mmのデッキプレート2を採用した場合においても、長期許容荷重に対し、1.5以上の耐力補正率を有していることから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要であることが確認できた。
つまり、従来知られていた、開口部3のX方向の大きさが、150mm以下の場合に耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となるデッキスラブは、デッキプレートの降伏点Fが235N/mmより大きい値であって、長期許容荷重に対し、2.0より大きい耐力補正率を有していることが条件であったが、今回の結果から、デッキプレートの降伏点Fが205N/mmより大きい値であって、長期許容荷重に対し、1.5より大きい耐力補正率を有している範囲のデッキスラブであれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要であることが確認できた。
【0064】
また、デッキスラブ1に対して、耐力補強筋4による補強を行う場合、耐力補強筋4の許容応力度を ft、耐力補強筋4の断面積をat、耐力補強筋4の圧縮縁からの距離をrd、耐力補強筋4の本数をNとすると、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAについて、以下の関係式が成立する。
【0065】
MA={7×(at×N)×ft×rd}/8…(8)
【0066】
上記式(2)、(6)、(8)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0との関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0067】
M12+MA≧M0…(9)
【0068】
上記(1)乃至(9)に基づいて、本願発明者は耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要となる、開口部3の大きさの範囲を検討した。
【0069】
Y方向の支持間距離Lが3000mm、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wが7220N/mであって、開口部3のX方向の大きさXBが600mm、Y方向の大きさが900mmの場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、2166N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0は10563N・mとなった。
また、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wを7220から10420N/mに変更した場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、3126N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0は15243N・mとなった。
【0070】
一方、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcが2280×(10^3)mm、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtが86.7×(10^3)mm、コンクリート7の設計基準強度Fcが18N/mm、鋼材の許容応力度の基準強度(降伏点)Fが205N/mmの場合、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1は13680N・m、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM2は、11849N・mとなり、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12は、13680N・mとなった。
【0071】
ここで、耐力補強筋4の許容応力度ftが195N/mm、耐力補強筋4の断面積atが1.27×(10^2)mm(呼び径D13の鉄筋)、耐力補強筋4の圧縮縁からの距離rdが83.5mm、耐力補強筋4の本数Nが2(開口部3のX方向の左右に配筋)の場合、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAは3619N・mとなった。
そのため、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、17299N・mとなった。
【0072】
ここで、耐力補正率を1.5とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、25948N・m、耐力補正率を2.0とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM12と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、34598N・mとなる。
【0073】
以上の結果から、開口部3のX方向の大きさが、600mm程度であっても、降伏点Fが205N/mmのデッキプレート2を採用した場合においても、長期許容荷重に対し、1.5以上の耐力補正率を有していることから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要であることが確認できた。
【0074】
≪二方向のモーメントに基づいた構造計算によるデッキスラブ開口範囲の算出方法≫
次に、図3Bのデッキスラブのモデル図を用いながら説明する。
図3Bは、Y方向の支持間距離がLである、両端固定支持梁構造を有するデッキスラブ1に対して、Z軸においてマイナス方向(当該方向を「正方向」と称する)に等分布荷重Wが作用していることを示した例である。
図3Aにおいては、正方向の曲げモーメントに対して安全側の検討をするためにデッキスラブ1には正方向の曲げモーメントM0のみが発生すると仮定した上で、上記(1)乃至(3)を用いることで、デッキスラブ1に発生する曲げモーメントを算出していた。
しかし、図3Bに示すように、デッキスラブ1に発生する曲げモーメントについて、より詳細に検討すると、両端固定支持梁構造を有するデッキスラブ1に対して正方向に作用する等分布荷重Wによって、デッキスラブ1には正方向の曲げモーメントM6と、Z軸においてプラス方向(当該方向を「負方向」と称する)の曲げモーメントM7が生じることが分かる。
【0075】
図3Bに示したデッキプレート構造のモデル図において、デッキスラブ1の支持間距離をL、デッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、正方向に作用する等分布荷重Wによりデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM6とすると、以下の関係式が成立する。
【0076】
M6=W×(L^2)/24 ・・・(10)
【0077】
図3Bに示したデッキプレート構造のモデル図において、デッキスラブ1の支持間距離をL、デッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、正方向に作用する等分布荷重Wによりデッキスラブ1に発生する負方向の曲げモーメントをM7とすると、以下の関係式が成立する。
【0078】
M7=W×(L^2)/12 ・・・(11)
【0079】
図3Aの場合と同様にデッキスラブ1に開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担することとなった、切断された材料が負担していた分の荷重をadWとした場合、図3Bに示したデッキプレート構造のモデル図において、デッキスラブ1の支持間距離をL、デッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、正方向に作用する等分布荷重Wによりデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM6、負方向の曲げモーメントをM7とすると、以下の関係式が成立する。
【0080】
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24} ・・・(12)
【0081】
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12} ・・・(13)
【0082】
なお、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、上記式(3)と同様にして求められる。
【0083】
adW=XB×W/2…(14)
【0084】
なお、上記式(10)および(12)は、固定端を鉄骨梁とした場合の固定度を考慮した式である。
しかし、固定端を鉄筋コンクリート梁とした場合、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6を算出する際には、固定端にひび割れが入ることによって固定度が低下するリスクを考慮することが望ましい。
よって、固定端を鉄筋コンクリート梁とした場合は、上記式(10)および(12)に固定度が低下するリスクを考慮した係数4/3を乗算した、以下の式(15)および(16)を採用することができる。
【0085】
M6={W×(L^2)/18} ・・・(15)
【0086】
M6={W×(L^2)/18}+{adW×(L^2)/18} ・・・(16)
【0087】
図3Aの場合と同様に、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3については、上記式(4)で求めたデッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と同様にして求められる。
【0088】
M3=cZc×Fc/3…(17)
【0089】
また、図3Aの場合と同様に、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM4については、上記式(5)で求めたデッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と同様にして求められる。
【0090】
M4=cZt×F/1.5…(18)
【0091】
上記式(17)、(18)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と鋼材で決まる許容曲げモーメントM4の値のうち、より大きい値を採用すればよいことから、以下の関係式が成立する。
【0092】
M34=MAX(M3,M4)…(19)
なお、MAX(M3,M4)とは、式(17)乃至(18)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを意味している。
【0093】
デッキスラブ1上端の断面係数をeZt、コンクリートの設計基準強度をFcとすると、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5については、以下の関係式が成立する。
【0094】
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(20)
【0095】
上記式(18)、(20)を考慮すると、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と鋼材で決まる許容曲げモーメントM4の値のうち、より大きい値を採用すればよいことから、以下の関係式が成立する。
【0096】
M45=MAX(M4,M5)…(21)
なお、MAX(M4,M5)とは、式(18)および(20)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。
【0097】
上記式(12)、(19)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM6との関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0098】
M34≧M6…(22)
【0099】
上記式(13)、(21)を考慮すると、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、デッキスラブ1に発生する負方向の曲げモーメントをM7との関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0100】
M45≧M7…(23)
【0101】
上記式(1)乃至(2)および(10)乃至(13)から、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6の絶対値と、負方向の曲げモーメントM7の絶対値は、図3Aにおけるデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0の絶対値よりも小さくなることが分かる。
そのため、上記式(22)乃至(23)に基づいて算出する、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲は、上記式(7)に基づいて算出する、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲よりも広い範囲となることが分かる。
【0102】
上記式(10)乃至(23)に基づいて、本願発明者は耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲を検討した。
【0103】
Y方向の支持間距離Lが3000mm、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wが7220N/mであって、開口部3のX方向の大きさXBが450mm、Y方向の大きさが900mmの場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、1625N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6は、上記式(12)を適用した場合は3318N・m(絶対値)、上記式(16)を適用した場合は4423N・m(絶対値)、負方向の曲げモーメントM7は6635N・m(絶対値)となった。
なお、上記式(1)に基づいて、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0を算出すると、9953N・mとなった。
また、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wを7220から10420N/mに変更した場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、2345N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6は、上記式(12)を適用した場合は4788N・m(絶対値)、上記式(16)を適用した場合は6383N・m(絶対値)、負方向の曲げモーメントM7は9574N・m(絶対値)となった。
なお、上記式(1)に基づいて、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0を算出すると、14363N・mとなった。
【0104】
一方、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcが2280×(10^3)mm、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtが86.7×(10^3)mm、デッキスラブ1上端の断面係数eZtが2690×(10^3)mm、コンクリート7の設計基準強度Fcが18N/mm、鋼材の許容応力度の基準強度(降伏点)Fが205N/mmの場合、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3は13680N・m、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM4は、11849N・m、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5は、7076N・mとなり、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、13680N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、11849N・mとなった。
【0105】
ここで、耐力補正率を1.5とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、20520N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、17773N・m、耐力補正率を2.0とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、27360N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、23698N・mとなる。
【0106】
以上の結果から、開口部3のX方向の大きさが、450mm以下であれば、降伏点Fが205N/mmのデッキプレート2を採用した場合においても、長期許容荷重に対し、1.5以上の耐力補正率を有していることから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要であることが確認できた。
【0107】
また、デッキスラブ1に対して、耐力補強筋4による補強を行う場合、耐力補強筋4の許容応力度をft、耐力補強筋4の断面積をat、耐力補強筋4の圧縮縁からの距離をrd、耐力補強筋4の本数をNとすると、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAについて、以下の関係式が成立する。
【0108】
MA={7×(at×N)×ft×rd}/8…(24)
【0109】
上記式(12)、(13)、(19)、(21)、(24)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34と、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAは、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0との関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0110】
M34+MA≧M6…(25)
【0111】
M45+MA≧M7…(26)
【0112】
上記(10)乃至(26)に基づいて、本願発明者は耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要となる、開口部3の大きさの範囲を検討した。
【0113】
Y方向の支持間距離Lが3000mm、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wが7220N/mであって、開口部3のX方向の大きさXBが600mm、Y方向の大きさが900mmの場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、2166N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6は、上記式(12)を適用した場合は3521N・m(絶対値)、上記式(16)を適用した場合は4694N・m(絶対値)、負方向の曲げモーメントM7は7042N・m(絶対値)となった。
なお、上記式(1)に基づいて、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0を算出すると、10563N・mとなった。
また、デッキスラブ1に作用する等分布荷重Wを7220から10420N/mに変更した場合、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、3126N/mとなることから、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM6は、上記式(12)を適用した場合は5081N・m(絶対値)、上記式(16)を適用した場合は6773N・m(絶対値)、負方向の曲げモーメントM7は10160N・m(絶対値)となった。
なお、上記式(1)に基づいて、開口部3を設けた場合にデッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントM0を算出すると、15243N・mとなった。
【0114】
一方、デッキスラブ1のコンクリート側断面係数cZcが2280×(10^3)mm、デッキスラブ1の鋼材側断面係数cZtが86.7×(10^3)mm、デッキスラブ1上端の断面係数eZtが2690×(10^3)mm、コンクリート7の設計基準強度Fcが18N/mm、鋼材の許容応力度の基準強度(降伏点)Fが205N/mmの場合、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3は13680N・m、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM4は、11849N・m、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5は、7076N・mとなり、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34は、13680N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45は、11849N・mとなった。
【0115】
ここで、耐力補強筋4の許容応力度ftが195N/mm、耐力補強筋4の断面積atが1.27×(10^2)mm(呼び径D13の鉄筋)、耐力補強筋4の圧縮縁からの距離rdが83.5mm、耐力補強筋4の本数Nが2(開口部3のX方向の左右に配筋)の場合、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAは3619N・mとなった。
そのため、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、17299N・mとなった。
また、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、15468N・mとなった。
【0116】
ここで、耐力補正率を1.5とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、25949N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、23202N・m、耐力補正率を2.0とした場合のデッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM34と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、34598N・m、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM45と、耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMAの合計は、30936N・mとなる。
【0117】
以上の結果から、開口部3のX方向の大きさが、600mm以下であれば、降伏点Fが205N/mmのデッキプレート2を採用した場合においても、長期許容荷重に対し、1.5以上の耐力補正率を有していることから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要であることが確認できた。
【0118】
図4は、開口部を有するデッキスラブにより構成された床組の平面図である。
【0119】
図4において、柱31A~D、大梁32A~Dに囲まれた空間の中に、小梁33A、33Bが設置され、大梁32A、小梁33A、33B、大梁32Cに亘るようにデッキプレート2が敷き詰められている。
デッキプレート2が敷き詰められている領域34には、複数の開口部3A、3Bが設けられている。
【0120】
上述した、デッキスラブ1に開口部3を設ける場合に、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる開口部3の大きさの範囲や、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要となる、開口部3の大きさの範囲の考え方は、複数の開口部3A、3Bが存在する場合においても同様である。
すなわち、図3A図3Bのデッキスラブのモデル図を用いた計算の際には、一つの開口部3のX方向の大きさをXBとして、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWを計算していたが、図4のように複数の開口部3A、3Bが存在する場合には、開口部3AのX方向の大きさをXB1、開口部3BのX方向の大きさをXB2とすると、XB=XB1+XB2として扱うことができる。
【0121】
具体的には、開口部3を設けることにより、開口部3以外のデッキスラブ1の材料で代わりに負担する荷重adWは、開口部3を設けていないデッキスラブ1に作用する等分布荷重をW、開口部3AのX方向の大きさをXB1、開口部3BのX方向の大きさをXB2とすると、以下の関係式が成立する。
【0122】
adW=(XB1+XB2)×W/2…(27)
【0123】
よって、上記式(27)と(1)乃至(26)に基づいて、デッキスラブ1に複数の開口部3A、3Bを設ける場合には、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる開口部3の大きさの範囲や、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要となる、開口部3の大きさの範囲を算出することが可能である。なお、本検討例において荷重Wはデッキスラブ1の長辺方向(X方向)の固定度を考慮していない。長辺方向(X方向)の固定度を考慮し周辺固定スラブとして発生するモーメントを算出する際のWは、周辺の梁とスラブの固定度を考慮して適切に減少することが可能である。つまり、周辺固定条件を精査することでより詳細な補強検討が可能である。
【0124】
≪有限要素法を用いた補強不要となるデッキスラブ開口範囲の算出方法≫
次に、有限要素法を用いた、配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブの開口部の寸法の範囲の算出方法について説明する。
【0125】
図5Aは、有限要素法による発生モーメント計算を行う対象となる床組の平面図の例である。
図5Bは、有限要素法による発生モーメント計算を行った床組の解析結果の例である。
【0126】
図5Aにおいて、柱41に囲まれた領域内にデッキスラブが敷き詰められた床組の有限要素法による構造解析モデル40が示されている。
構造解析モデル40には、構造物を複数の有限個の要素に分割された、メッシュ42が示されている。
【0127】
有限要素法(FEM:Finite Element Method)による構造解析においては、構造解析対象となる構造物を構造解析モデル40のようにモデル化し、構造解析モデル40の構成要素を有限個の要素に分割する。有限個の要素に分割された、構成要素43の集合体はメッシュ42と称される。
構造解析対象となる構造物を、小さな領域から構成される構成要素43の集合体であるメッシュ42に切り分け、構成要素43のそれぞれに対して関数や方程式などを用いた単純計算を繰り返すことで、解析対象となるメッシュ42全体の静的解析、動的解析が可能となる。
また、構造解析モデル40に作用させる荷重は任意に設定することが可能である。
【0128】
次に、有限要素法による構造解析における具体的な配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブの開口部の寸法の範囲と、その設計手法について説明する。
【0129】
許容曲げモーメントの算出方法については、図3A図3Bの場合と同様である。
すなわち、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8については、上記式(4)、(17)で求めたデッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1、M3と同様にして求められる。
【0130】
M8=cZc×Fc/3…(28)
【0131】
また、デッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM9については、上記式(5)、(18)で求めたデッキスラブ1の鋼材で決まる許容曲げモーメントM2、M4と同様にして求められる。
【0132】
M9=cZt×F/1.5…(29)
【0133】
上記式(28)、(29)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM89は、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8と鋼材で決まる許容曲げモーメントM9の値のうち、より大きい値を採用すればよいことから、以下の関係式が成立する。
【0134】
M89=MAX(M8,M9)…(30)
なお、MAX(M8,M9)とは、式(28)乃至(29)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを意味している。
【0135】
デッキスラブ1上端の断面係数をeZt、コンクリートの設計基準強度をFcとすると、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10については、以下の関係式が成立する。
【0136】
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(31)
【0137】
上記式(29)、(31)を考慮すると、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM910は、デッキスラブ1のコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10と鋼材で決まる許容曲げモーメントM9の値のうち、より大きい値を採用すればよいことから、以下の関係式が成立する。
【0138】
M910=MAX(M9,M10)…(32)
なお、MAX(M9,M10)とは、式(29)および(31)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを意味している。
【0139】
有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aは、入力要素として、デッキスラブの切断方法、開口部3の位置、開口部3の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ支持間距離、デッキスラブの断面性能、デッキスラブの材料強度、積載荷重および固定荷重、設計荷重変更の有無、梁の条件、柱の条件、建築物の構造、梁とデッキプレートの接合方法、デッキスラブの許容応力度のうち、少なくとも一つを含むことにより、算出される。
【0140】
また、有限要素法により算出されるデッキスラブに生じる負方向最大曲げモーメントM1Bは、入力要素として、デッキスラブ切断の方法、開口部3の位置、開口部3の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ支持間距離、デッキスラブの断面性能、デッキスラブの材料強度、積載荷重および固定荷重、設計荷重変更の有無、梁の条件、柱の条件、建築物の構造、梁とデッキプレートの接合方法、デッキスラブの許容応力度のうち、少なくとも一つを含むことにより、算出される。
【0141】
デッキスラブの切断方法には、コンクリート硬化前に切断するか、コンクリート硬化後に切断するか、コンクリート硬化後のコアドリルによる切断方法に関する情報が含まれる。
【0142】
開口部3の位置には、独立した開口部3であるか、連続した開口部3であるか、不規則な開口部であるか、デッキスラブ1の平面上で配置される開口部3の座標位置、複数の開口部3であるか否かに関する情報が含まれる。また、複数の開口部3を有する場合には、それぞれの開口部3についての上記情報が含まれる。
【0143】
開口部3の寸法には、例えば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる開口部3の大きさの範囲や、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強は不要となる、開口部3の位置や大きさの範囲を定めることができる、具体的な寸法の値に関する情報が含まれる。
例えば、開口部3のX方向の大きさXBが900mmより大きいか否か、開口部3のX方向の大きさXBが450mm、Y方向の大きさが450mmよりも大きいか否かに関する情報が含まれる。
【0144】
耐火補強筋に関する仕様には、耐火補強筋の有無、耐火補強筋を切断するか否かに関する情報が含まれる。
【0145】
デッキスラブ支持間距離には、デッキプレートの延在方向に支持されているか否か、デッキプレートの幅方向に支持されているか否か、大梁や小梁との間隔に関する情報が含まれる。
【0146】
積載荷重は、建築基準法施行令第85条において、室の種類毎に定められた積載荷重を指す。
固定荷重は、積載荷重以外であってデッキプレート以外の天井、屋根仕上げ、断熱材、増し打ちコンクリート等の質量によって発生する荷重である。
【0147】
梁の条件には、梁の寸法、梁の材質、合成梁であるか否かに関する情報等が含まれる。
【0148】
柱の条件には、柱の寸法、柱の材質に関する情報等が含まれる。
【0149】
建築物の構造には、鉄骨造であるか否か、RC造であるか否か、木造であるか否かに関する情報等が含まれる。
【0150】
梁とデッキプレートの接合方法には、スタッド溶接であるか否か、焼抜き栓溶接であるか否か、打込み鋲による接合であるか否か、スポット溶接やボルト接合、ドリルねじ接合等であるか否か、に関する情報が含まれる。
【0151】
デッキスラブの許容応力度には、長期許容応力度と中期許容応力度、短期許容応力度、一時使用時の許容応力度等に関する情報が含まれる。
【0152】
上記式(30)を考慮すると、デッキスラブ1の許容正方向曲げモーメントM89は、デッキスラブ1に発生する正方向の曲げモーメントをM1Aとの関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0153】
M89≧M1A…(33)
【0154】
上記式(31)を考慮すると、デッキスラブ1の許容負方向曲げモーメントM910は、デッキスラブ1に発生する負方向の最大曲げモーメントをM1Bとの関係において、以下の関係式を満たせば、デッキスラブ1は設計上の要求を満たしているといえる。
【0155】
M910≧M1B…(34)
【0156】
有限要素法によりデッキスラブに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aと、デッキスラブ1に発生する負方向最大曲げモーメントM1Bを算出した上で、上記式(33)、(34)を考慮すると、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲は、図3A図3Bにて算出した場合と比較し、具体的な設計条件に応じて、より正確に算出することができる。
【0157】
図5Bにおいて、有限要素法により、柱41に囲まれた領域内にデッキスラブが敷き詰められた床組の構造解析モデル40に発生するモーメント計算を行った解析結果が示されている。
図5B中、構成要素44に最大曲げモーメントが発生している。
構成要素44に発生した曲げモーメントの大きさを確認することにより、具体的な耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が不要となる、開口部3の大きさの範囲の値を確認することが可能である。
【0158】
≪開口部構造計算システム≫
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る開口部構造計算システムの構成例および情報処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
【0159】
同図に示される情報処理システム10は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算を支援するためのシステムである。以下、情報処理システム10を「開口部構造計算システム10」とも称する。
具体的には、開口部構造計算システム10は、特定の建築物の設計を行う際に建築資材としてデッキスラブ1を用いて、デッキスラブ1に開口部3を設けた場合、システム利用者が指定した開口部の仕様に関する情報(以下、「開口部検討情報122」とも称する。)に基づいて、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを確認するためのシステムである。
【0160】
図6に示すように、開口部構造計算システム10は、情報処理装置100と、クライアント端末装置200とを備えている。情報処理装置100とクライアント端末装置200とは、ネットワーク300に接続され、ネットワーク300を介して情報処理装置100とクライアント端末装置200との間でデータの送受信が可能となっている。
なお、図6では、開口部構造計算システム10において、1つのクライアント端末装置200がネットワーク300に接続されている場合が示されているが、複数のクライアント端末装置200がネットワーク300に接続されてもよい。
ネットワーク300は、例えばローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)である。
【0161】
なお、以下の説明において、情報処理装置100を単に「サーバ100」とも称する。
また、以下の説明において、サーバ100を操作するユーザを「システム利用者」とも称する。
【0162】
先ず、サーバ100のハードウェア構成について説明する。
【0163】
図7は、開口部構造計算システム10を構成する、サーバ100のハードウェア構成を示す図である。
【0164】
サーバ100は、ハードウェア資源として、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F(Interface)装置104、出力装置105、およびバス106を備えている。
【0165】
演算装置101は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置102は、演算装置101に各種のデータ処理を実行させるためのプログラムと、演算装置101によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータとを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0166】
ここで、プログラム102Aは、コンピュータをサーバ100として機能させるための開口部構造計算プログラムを含み、例えば、記憶装置102に予めインストールされている。
【0167】
また、データ102Bは、開口部構造計算プログラム用データとして、開口部検討情報122等を含む。
【0168】
なお、プログラムおよびデータは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0169】
入力装置103は、外部から情報の入力を検出する機能部であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等から構成されている。I/F装置104は、外部との情報の送受を行う機能部であり、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0170】
出力装置105は、演算装置101によるデータ処理によって得られた情報等を出力する機能部である。出力装置105としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、コンソールユニット等の表示装置を例示することができる。バス106は、演算装置101、記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、および出力装置105を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0171】
サーバ100において、各演算装置101が各記憶装置102に記憶されたプログラムおよびデータにしたがって演算を実行し、各サーバにおける記憶装置102、入力装置103、I/F装置104、出力装置105、およびバス106を制御することにより、サーバ100における各機能ブロック(入力受付部111、演算部112、出力部113、および記憶部121)が実現される。
【0172】
次に、サーバ100の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0173】
図6に示すように、サーバ100は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算を支援するための機能ブロックとして、入力受付部111、演算部112、出力部113、および記憶部121を有する。
これらの機能ブロックは、サーバ100を構成するハードウェア資源とソフトウェアとの協働によって実現される。
【0174】
上記ソフトウェアは、本実施の形態に係るデッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算の支援(ネイティブアプリケーション)を実現するためのプログラムであって、例えば、予め外部機器(例えば外部記憶媒体)からダウンロードされて、サーバ100内の記憶装置(例えば記憶部121)に記憶されている。
【0175】
なお、上記プログラムは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、CD-ROMやフラッシュメモリ等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0176】
入力受付部111は、システム利用者が図7における入力装置103を介して入力したデータや、サーバ100の外部から入力されたデータを受け付ける機能部である。具体例として、入力受付部111は、ネットワーク300を介して接続されたクライアント端末装置200から送信されたリクエストを受け付け、受け付けたリクエストに応じた処理の実行をサーバ100内の各機能部に対して指示する。
【0177】
例えば、入力受付部111は、ネットワーク300を介して接続されたクライアント端末装置200から送信された開口部検討情報122を受け付け、当該開口部検討情報を記憶部121に記憶させる。
また、例えば、入力受付部111は、システム利用者が図7における入力装置103を介して入力した開口部検討情報122を受け付け、当該開口部検討情報122を記憶部121に記憶させる。
なお、開口部検討情報122はシステム管理者によってあらかじめを記憶部121に記憶させておくことができる。
【0178】
また、例えば、入力受付部111は、開口部検討情報122によって指定されたデッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算の実行を指示するリクエストを受け付けた場合に、演算部112に対してデッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算の実行を指示するとともに、出力部113に対して演算部112による計算結果をレスポンスとしてクライアント端末装置200に出力するよう指示する。
【0179】
演算部112は、開口部3を有するデッキスラブ1の構造計算に係る各種演算を行う機能部である。具体的には、演算部112は、記憶部121に記憶された開口部検討情報122に基づいて、デッキスラブ1に開口部3を設けた際に発生する最大の曲げモーメントと、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントを算出し、当該算出結果を演算結果123として記憶部121に記憶させる。
具体的には、演算部112は、記憶部121に記憶された開口部検討情報122に基づいて、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算を実行する。例えば、演算部112は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算として、開口部検討情報122によって指定された開口部3を設けたデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントを算出する。また、演算部112は、算出した最大曲げモーメントが基準を満たすか否かを判定する判定処理と、開口部3を設けたデッキスラブ1に対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを判定する判定処理を行う。更に、演算部112は、算出した最大曲げモーメントを含む算出結果と上記判定処理による判定結果とを演算結果123として記憶部121に記憶させる。
【0180】
ここで、一方向のモーメントのみに基づいた構造計算によるデッキスラブ開口範囲の算出方法を適用する場合、演算部112は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際に発生する最大の曲げモーメントM0と、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントM12とを、上記式(1)乃至(9)に基づいて算出する。
また、二方向のモーメントに基づいた構造計算によるデッキスラブ開口範囲の算出方法を適用する場合、演算部112は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際に発生する最大の曲げモーメントM6、M7と、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントM34、M45とを、上記式(10)乃至(27)に基づいて算出する。
また、有限要素法を用いた補強不要となるデッキスラブ開口範囲の算出方法を適用する場合、演算部112は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際に発生する最大の曲げモーメントM1A、M1Bと、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントM89、M910とを、上記式(28)乃至(34)に基づいて算出する。
【0181】
出力部113は、データをサーバ100の外部に出力する機能部である。具体例として、出力部113は、演算結果123に記憶されている演算結果を、ネットワーク300を介してクライアント端末装置200に送信する。また、例えば、出力部113は、図7における出力装置105を介してシステム利用者に演算結果を表示させる。
なお、演算結果123には、開口部3を設けたデッキスラブ1が最大曲げモーメントが基準を満たすか否かを示す判定結果と、開口部3を設けたデッキスラブ1に対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを示す判定結果との両方が含まれていてもよいし、何れか一方が含まれていてもよい。
【0182】
記憶部121は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算の支援に係る各種データを記憶する機能部である。
例えば、記憶部121には、入力受付部111が受け付けた開口部検討情報122と、演算部112による演算結果123とが記憶される。
【0183】
開口部検討情報122は、あらかじめシステム管理者等によって用意された、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算に関する情報を含む。例えば、開口部検討情報122には、デッキスラブの切断方法、開口部3の位置、開口部3の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ支持間距離、デッキスラブの断面性能、デッキスラブの材料強度、積載荷重および固定荷重、設計荷重変更の有無、梁の条件、柱の条件、建築物の構造、梁とデッキプレートの接合方法、デッキスラブの許容応力度に関する情報が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0184】
なお、記憶部121に記憶される開口部検討情報122には、システム利用者が入力した情報のみならず、システム管理者等によって事前に用意された情報が含まれていてもよい。
【0185】
演算結果123は、記憶部121の一部を構成する情報であり、演算部112において算出された、開口部検討情報122によって指定された開口部3を設けたデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントの値と、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントの値と、開口部3を設けたデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントの値が基準値(例えば、デッキスラブ1の材料や構造上、許容される最大曲げモーメントの値)を満たすか否かを示す判定結果と、開口部3を設けたデッキスラブ1に対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを示す判定結果に関する情報を含む。
【0186】
次に、クライアント端末装置200のハードウェア構成について説明する。
【0187】
図9は、開口部構造計算システム10を構成する、クライアント端末装置200のハードウェア構成を示す図である。
【0188】
クライアント端末装置200は、ハードウェア資源として、演算装置201、記憶装置202、入力装置203、I/F(Interface)装置204、出力装置205、およびバス206を備えている。
【0189】
演算装置201は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって構成されている。記憶装置202は、演算装置201に各種のデータ処理を実行させるためのプログラムと、演算装置201によるデータ処理で利用されるパラメータや演算結果等のデータとを記憶する記憶領域を有し、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD、およびフラッシュメモリ等から構成されている。
【0190】
ここで、プログラムは、コンピュータをクライアント端末装置200として機能させるためのOSやブラウザ等のプログラムを含み、例えば、記憶装置202に予めインストールされている。
【0191】
入力装置203は、外部から情報の入力を検出する機能部であり、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、またはタッチパネル等から構成されている。I/F装置204は、外部との情報の送受を行う機能部であり、有線または無線によって通信を行うための通信制御回路や入出力ポート、アンテナ等から構成されている。
【0192】
出力装置205は、演算装置201によるデータ処理によって得られた情報等を出力する機能部である。出力装置205としては、SSDやHDD等の外部記憶装置や、LCD(Liquid Crystal Display)および有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置を例示することができる。バス206は、演算装置201、記憶装置202、入力装置203、I/F装置204、および出力装置205を相互に接続し、これらの装置間でデータの授受を可能にする機能部である。
【0193】
クライアント端末装置200は、演算装置201が記憶装置202に記憶されたプログラムにしたがって演算を実行し、記憶装置202、入力装置203、I/F装置204、出力装置205、およびバス206を制御することにより、図8に示したクライアント端末装置200の各機能ブロック(入力インターフェース部211、送信部212、データ受付部213、表示部214、制御部215)が実現される。
【0194】
例えば、入力インターフェース部211、送信部212、データ受付部213、表示部214、および制御部215は、クライアント端末装置200にあらかじめインストールされたOS(Operating System)とブラウザのプログラムによって実現される。つまり、ブラウザは、例えば、予め外部機器(例えばインターネット上のサーバ)からダウンロードされて、後述するクライアント端末装置200内の記憶装置202に記憶されている。
【0195】
次に、クライアント端末装置200の各機能ブロックについて詳細に説明する。
【0196】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る開口部構造計算システムの構成例およびクライアント端末装置の機能ブロック構成を示す図である。
【0197】
クライアント端末装置200は、デッキプレートの構造計算結果等の取得を希望するシステム利用者が使用する情報処理装置(プログラム処理装置)である。図8に示すように、クライアント端末装置200は、入力インターフェース部211、送信部212、データ受付部213、表示部214、制御部215を有する。
これらの機能部は、クライアント端末装置200を構成するハードウェア資源とソフトウェアとの協働によって実現される。
【0198】
入力インターフェース部211は、システム利用者による各種データの入力と各種指示を受け付ける機能部である。
【0199】
具体的には、入力インターフェース部211は、開口部検討情報122の入力を受け付ける。例えば、入力インターフェース部211は、Webブラウザによって表示部214に表示されるWebページの入力フォームにシステム利用者によって入力された値等を開口部検討情報122として受け付ける。
【0200】
また、入力インターフェース部211は、入力された開口部検討情報122に基づくデッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算として、開口部検討情報122によって指定された開口部3を設けたデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメント算出の実行の指示を受け付ける。更に、入力インターフェース部211は、算出した最大曲げモーメントが基準を満たすか否かを判定する判定処理と、開口部3を設けたデッキスラブ1に対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを判定する判定処理の実行の指示を受け付ける。例えば、入力インターフェース部211は、表示部214の画面に表示されるWebブラウザの実行ボタンが選択(クリック)された場合に、構造計算や判定処理の実行の指示を受け付ける。
入力インターフェース部211は、受け付けた各種データおよび各種指示を制御部215に与える。
【0201】
送信部212は、システム利用者が入力インターフェース部211を介して入力した指示に応じたリクエストと各種データをサーバ100に送信する機能部である。例えば、送信部212は、システム利用者が入力インターフェース部211を介して入力した指示に応じて、開口部検討情報122と、当該開口部検討情報122に基づく処理(構造計算および判定処理)の実行の指示とを含むリクエストをネットワーク300を介してサーバ100に送信する。
【0202】
データ受付部213は、サーバ100から送信された各種データを受け付ける機能部である。具体的には、データ受付部213は、送信部212から出力されたリクエストに応じたレスポンスをネットワーク300を介してサーバ100から受け付ける。例えば、クライアント端末装置200がWebブラウザを介してサーバ100にアクセスした場合に、データ受付部213は、サーバ100から送信されたHTMLファイルを受信し、制御部215に与える。制御部215は、受信したHTMLファイルに基づくWebページを表示部214の画面に表示させる。また、データ受付部213は、送信部212から出力されたリクエストに応じたレスポンスとして、開口部3を設けたデッキスラブ1の構造計算や判定処理の結果を受信し、制御部215に与える。制御部215は、受信した開口部3を設けたデッキスラブ1の構造計算や判定処理の結果を表示部214に表示させる。
【0203】
表示部214は、各種情報を表示する機能部である。表示部214は、例えば、WebブラウザによってWebページを表示する。また、表示部214は、送信部212が送信したリクエストに応じて、サーバ100の出力部113から送信されたレスポンスに含まれる情報を表示する。
【0204】
制御部215は、クライアント端末装置200の各機能部を統括的に制御する機能部である。例えば、制御部215は、システム利用者が入力インターフェース部211を介して入力した指示に応じて、開口部検討情報122およびリクエストをネットワーク300を介してサーバ100に送信するよう送信部212に指示する。また、制御部215は、リクエストに応じてサーバ100から送信されたレスポンスに含まれる情報を表示するよう表示部214に指示する。
【0205】
次に、開口部構造計算システム10の利用方法の一例について述べる。
【0206】
デッキスラブの開口部施工検討の主体者は、建築物の構造設計者ではなく、建築物に設置される設備の稼働に必要な配管、ケーブル等の配置ルートを検討する設備設計担当者である場合が多い。設備設計担当者は、開口補強の強度計算に関する専門知識を有していないことから、開口部の構造強度上の制約条件や必要な補強方法については、構造設計者に検討依頼を行い、構造設計者の検討完了後、開口部の切断作業に着手する必要がある。そのため、設備設計担当者の開口部施工内容の検討開始から、開口部の切断作業に着手するまでに時間を要しており、施工期間の長期化を招く一因となっている。
【0207】
本発明の実施の形態に係る開口部構造計算システム10を用いれば、設備設計担当者がクライアント端末装置200において開口部検討情報122を入力することで、情報処理装置100は、デッキスラブ1に開口部3を設けた際の構造計算として、開口部検討情報122によって指定された開口部3を設けたデッキスラブ1に生じる最大曲げモーメントを算出する。また、情報処理装置100は、算出した最大曲げモーメントが基準を満たすか否かを判定する判定処理と、開口部3を設けたデッキスラブ1に対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを判定する判定処理を行う。
そのため、設備設計担当者は、情報処理装置100から送信された、開口部検討情報122に基づいて算出された演算結果123を、クライアント端末装置200の表示画面においてタイムリーに確認することが可能である。
【0208】
また、構造設計者は、設備設計担当者が入力した開口部検討情報122によって算出された演算結果123を任意のタイミングで確認するのみでよく、開口部施工内容の検討を自ら実施することが不要となる。
【0209】
そのため、本発明の実施の形態に係る開口部構造計算システム10によれば、設備設計担当者と建築物の構造設計者の間で、開口部施工内容の検討内容がタイムリーに共有されることにより、開口部施工内容の検討開始から開口部の切断作業に着手するまでの時間が短縮されることから、施工期間を短縮することが可能となる。
【0210】
なお、設備設計担当者が開口部検討情報122を入力する際、開口補強の強度計算に関する専門知識を有していないことから、必要となる開口部検討情報122の全てを入力できない場合が考えられる。
その場合には、情報処理装置100に開口部構造計算プログラム102Aに対応した自動会話プログラム(チャットボット)をインストールしておくことで、開口補強の強度計算に必要となる開口部検討情報122のうち、不足している情報を情報処理装置100から設備設計担当者に対して能動的に問い合わせることが可能である。
【0211】
≪開口部を有するデッキスラブの施工方法≫
本発明の第1の実施の形態に係る開口部を有するデッキスラブの施工方法について、以下に示す。
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る開口部を有するデッキスラブの施工方法を示すフローチャートである。
【0212】
まず、上記式(1)乃至(34)の計算結果から、開口部3を設けた場合のデッキスラブ1に対し、開口部3の周囲に梁による補強が必要であるか否かを判断する(ステップS1)。
開口部3の周囲に梁による補強が不要である場合(ステップS1:No)、ステップS3に移る。
開口部3の周囲に梁による補強が必要である場合(ステップS1:Yes)、デッキスラブ1の開口部3の周囲に梁を設置し(ステップS2)、ステップS3に移る。
次に、デッキスラブの施工領域に対し、デッキプレート2を設置する(ステップS3)。
【0213】
次に、上記式(1)乃至(34)の計算結果から、開口部3を設けた場合のデッキスラブ1に対し、開口部3の周囲に耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強が必要であるか否かを判断する(ステップS4)。
耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強が不要である場合(ステップS4:No)、ステップS6に移る。
耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強が必要である場合(ステップS4:Yes)、デッキスラブ1の開口部3の周囲に耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6を設置し(ステップS5)、ステップS6に移る。
【0214】
次に、デッキプレート2の上にコンクリート7を打設する(ステップS6)。この時、開口部3としてデッキスラブ1を切断する一部の領域には、コンクリート7が流れ込まないようにしておくことが一般的である。
コンクリート7が固化した後、デッキスラブ1の所望の位置に開口部3を設けるために、デッキスラブ1の一部の領域を切断する(ステップS7)。
【0215】
以上の方法により、開口部3を有するデッキスラブ1に対し、開口部3の周囲に耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強が必要な場合には、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強を行うことができ、開口部3の周囲に耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強が不要な場合には、デッキスラブ1に対する不要な補強作業を省略することが可能である。
【0216】
以上、実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、上述したように開口部3を有するデッキプレート2、及びデッキプレート2上に打設されたコンクリート7を有するデッキスラブ1、1Aであって、デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさはデッキスラブ1の許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさ以下の値となることを特徴とする。
【0217】
これによれば、デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさとデッキスラブ1、1Aの許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを算出することができることから、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさと、許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを比較し、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの値が許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の値以下の値となれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要であることが確認できる。
したがって、開口部3の補強を不要または低減することができるデッキスラブ1、1Aの適用範囲を拡大することができる。
【0218】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが150mm以下の開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントM12とは、下記式(D)に基づいて算出される前記デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たす。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0219】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM12≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0220】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが450mm以下の開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M45)と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる負方向曲げモーメントM7とのうち、前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(L)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは、下記式(N)を満たす。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0221】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM34≧発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45≧発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0222】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(O)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM9と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの許容正方向曲げモーメントM89と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M910)と、有限要素法により算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aと、前記有限要素法により算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる負方向最大曲げモーメントM1Bとのうち、前記許容正方向曲げモーメントM89と前記正方向最大曲げモーメントM1Aとは、下記式(T)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM910と前記負方向最大曲げモーメントM1Bとは、下記式(U)を満たし、前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブ1、1Aの切断方法、開口部3の位置、開口部3の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ1支持間距離、デッキスラブ1、1Aの断面性能、デッキスラブ1、1Aの材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁32、33の条件、柱31、41の条件、建築物の構造、梁32、33とデッキプレート2の接合方法、デッキスラブ1、1Aの許容応力度のうちのうち、少なくとも一つを含む。
M8=cZc×Fc/3…(O)
(上記式(O)において、cZcはデッキスラブの圧縮側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの引張側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(O)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(R)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M10≧M1B…(U)
【0223】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM89≧発生正方向最大曲げモーメントM1Aかつ、許容負方向曲げモーメントM910≧発生負方向最大曲げモーメントM1Bの関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0224】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが150mmを超え、600mm以下の大きさの開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たす。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブ開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0225】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM12≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、許容正方向曲げモーメントM12+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0226】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが450mmを超える大きさの開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメントM45と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる負方向曲げモーメントM7と、のうち、前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは下記式(N)を満たす。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0227】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM34≧発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45≧発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、許容正方向曲げモーメントM34+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0228】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが600mmを超える大きさの開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、1.5以上、2.0未満の大きさを有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たす。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0229】
これによれば、許容正方向曲げモーメントM12≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、許容正方向曲げモーメントM12+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、許容正方向曲げモーメントM12+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA<発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、梁による補強が必要となる範囲に該当することから、梁による補強が必要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0230】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが300mmより大きい開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(A)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM1と、下記式(B)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM2と、下記式(C)に基づいて算出される許容正方向曲げモーメントであるM12とは、下記式(D)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0との関係において、下記式(E)を満たす。
M1=cZc×Fc/3…(A)
(上記式(A)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M2=cZt×F/1.5…(B)
(上記式(B)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M12=MAX(M1,M2)…(C)
(上記式(C)において、MAX(M1,M2)とは、式(A)乃至(B)によって得られたM1とM2の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M0={W×(L^2)/8}+{adW×(L^2)/8}…(D)
(上記式(D)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M12≧M0…(E)
【0231】
これによれば、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM12≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM12+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM12+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA<発生曲げモーメントM0の関係が成立する範囲であれば、梁による補強が必要となる範囲に該当することから、梁による補強が必要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0232】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが300mmより大きい開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(F)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM3と、下記式(G)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM4と、下記式(H)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの許容正方向曲げモーメントM34と、下記式(I)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM5と、下記式(J)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M45)と、下記式(K)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる正方向曲げモーメントM6と、下記式(L)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる負方向曲げモーメントM7と、のうち、前記許容正方向曲げモーメントM34と前記正方向曲げモーメントM6とは、下記式(M)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM45と前記負方向曲げモーメントM7とは、下記式(N)を満たす。
M3=cZc×Fc/3…(F)
(上記式(F)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M4=cZt×F/1.5…(G)
(上記式(G)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M34=MAX(M3,M4)…(H)
(上記式(H)において、MAX(M3,M4)とは、式(F)乃至(G)によって得られたM3とM4の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M5=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(I)
(上記式(I)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M45=MAX(M4,M5)…(J)
(上記式(J)において、MAX(M4,M5)とは、式(G)および(I)によって得られたM4とM5の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M6={W×(L^2)/24}+{adW×(L^2)/24}…(K)
(上記式(K)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M7={W×(L^2)/12}+{adW×(L^2)/12}…(L)
(上記式(L)において、Wはデッキスラブに作用する等分布荷重を表し、adWはデッキスラブに開口部を設けたことにより増加する荷重を表し、Lはデッキスラブ支持間距離を表す。)
M34≧M6…(M)
M45≧M7…(N)
【0233】
これによれば、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM34≧発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45≧発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM34+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA≧発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強のみを実施し、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
また、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM34+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA<発生正方向曲げモーメントM6かつ、許容負方向曲げモーメントM45+耐力補強筋4により増加する許容曲げモーメントMA<発生負方向曲げモーメントM7の関係が成立する範囲であれば、梁による補強が必要となる範囲に該当することから、梁による補強が必要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0234】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口幅XBが300mmより大きい開口部3を有し、実耐力に対して許容応力度設計によって算出される長期許容荷重を除することにより得られる耐力補正率が、2.0より大きい値を有し、下記式(O)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM8と、下記式(P)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの鋼材で決まる許容曲げモーメントM9と、下記式(Q)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aの許容正方向曲げモーメントM89と、下記式(R)に基づいて算出されるデッキスラブ1、1Aのコンクリートで決まる許容曲げモーメントM10と、下記式(S)に基づいて算出されるデッキスラブ(1、1A)の許容負方向曲げモーメント(M910)と、有限要素法により算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる正方向最大曲げモーメントM1Aと、有限要素法により算出されるデッキスラブ1、1Aに生じる負方向最大曲げモーメントM1Bと、のうち、前記許容正方向曲げモーメントM89と前記正方向最大曲げモーメントM1Aとは、下記式(T)を満たし、前記許容負方向曲げモーメントM910と前記負方向最大曲げモーメントM1Bとは、下記式(U)を満たし、前記有限要素法は、入力要素として、デッキスラブ1、1Aの切断方法、開口部3の位置、開口部3の寸法、耐火補強筋に関する仕様、デッキスラブ1支持間距離、デッキスラブ1、1Aの断面性能、デッキスラブ1、1Aの材料強度、固定荷重および積載荷重、設計荷重変更の有無、梁32、33の条件、柱31、41の条件、建築物の構造、梁32、33とデッキスラブ1、1Aの接合方法、デッキスラブ1、1Aの許容応力度のうち、少なくとも一つを含む。
M8=cZc×Fc/3…(O)
(上記式(O)において、cZcはデッキスラブのコンクリート側断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M9=cZt×F/1.5…(P)
(上記式(P)において、cZtはデッキスラブの鋼材側断面係数を表し、Fは鋼材の許容応力度の基準強度を表す。)
M89=MAX(M8,M9)…(Q)
(上記式(Q)において、MAX(M8,M9)とは、式(O)乃至(P)によって得られたM8とM9の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M10=0.62×{(Fc)^(1/2)}×eZt…(R)
(上記式(R)において、eZtはデッキスラブ上端の断面係数を表し、Fcはコンクリートの設計基準強度を表す。)
M910=MAX(M9,M10)…(S)
(上記式(S)において、MAX(M9,M10)とは、式(P)および(R)によって得られたM9とM10の値のうち、より大きい値を採用することを表す。)
M89≧M1A…(T)
M910≧M1B…(U)
【0235】
これによれば、耐力補正率が、2.0より大きい値となる範囲においても、許容正方向曲げモーメントM89≧発生正方向最大曲げモーメントM1Aかつ、許容負方向曲げモーメントM910≧発生負方向最大曲げモーメントM1Bの関係が成立する範囲であれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる範囲に該当することから、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要となる具体的な範囲を検討することができる。
【0236】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1は、開口補強筋6および開口補強梁を有しない。
【0237】
これによれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要であるデッキスラブ1を利用することができる。
【0238】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1Aは、開口補強筋6は有するものの、開口補強梁を有しない。
【0239】
これによれば、開口補強筋6は必要であるものの、梁による補強が不要であるデッキスラブ1Aを利用することができる。
【0240】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、開口補強梁を有する。
【0241】
これによれば、開口補強梁による補強が必要なデッキスラブ1、1Aを利用することができる。
【0242】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1Aは、D51以下の線径の開口補強筋6を有する。
【0243】
これによれば、開口補強筋6が必要である場合に、合理的な線径を有する補強筋を有するデッキスラブ1Aを利用することができる。
【0244】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、デッキプレート2上のコンクリート7山上厚が、50mm以上、100mm以下に設定される。
【0245】
これによれば、合理的なコンクリート7山上厚を有する補強筋を有するデッキスラブ1、1Aを利用することができる。
【0246】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1は、デッキプレート2上のコンクリート7山上厚は、80mm以上に設定され、開口補強筋6および開口補強梁を有しない。
【0247】
これによれば、開口補強筋6および開口補強梁による補強を必要としない、合理的なコンクリート7山上厚を有するデッキスラブ1を利用することができる。
【0248】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aは、2つ以上の複数の開口部3を有する。
【0249】
これによれば、複数の開口部3を有する場合であっても、デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさとデッキスラブ1、1Aの許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを算出することができることから、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさと、許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを比較し、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの値が許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の値以下の値となれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要であることが確認できる。
したがって、開口部3の補強を不要または低減することができるデッキスラブ1、1Aの適用範囲を拡大することができる。
【0250】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aの施工方法は、前記デッキプレート2上にコンクリート7を打設するデッキスラブ1、1Aの施工方法であって、デッキプレート2を設置するステップ(ステップS3)と、前記デッキプレート2上にコンクリート7を打設するステップと(ステップS6)、前記デッキスラブ1、1Aの一部を切断し、開口部3を設けるステップ(ステップS7)と、を有する。
【0251】
これによれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要であるデッキスラブ1、1Aの施工方法を利用することができる。
【0252】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1Aの施工方法は、開口補強筋6を設置するステップ(ステップS5)を更に有する。
【0253】
これによれば、開口補強筋6は必要であるものの、梁による補強が不要であるデッキスラブ1Aの施工方法を利用することができる。
【0254】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aの施工方法は、開口補強梁を設置するステップを設置するステップ(ステップS2)を更に有する。
【0255】
これによれば、開口補強梁による補強が必要なデッキスラブ1、1Aの施工方法を利用することができる。
【0256】
また、本実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aの設計方法は、デッキプレート2の降伏点を205N/mm以上の値に設定する。
【0257】
これによれば、デッキプレート2の降伏点として一般的に適用される、235N/mmよりも小さな降伏点を有するデッキプレート2についても、デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさとデッキスラブ1の許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを算出することができることから、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさと、許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさを比較し、曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの値が許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の値以下の値となれば、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6、梁による補強が不要であることが確認できる。
したがって、開口部3の補強を不要または低減することができるデッキスラブ1、1Aの適用範囲を拡大することができる。
【0258】
また、本実施の形態に係る情報処理システム10は、デッキスラブ1、1Aの設計を支援するための情報処理システム10であって、通信ネットワーク300を介して接続された情報処理端末200から送信された、前記デッキスラブ1、1Aに開口部3を設ける際の検討に必要となる情報である開口部検討情報122を受け付ける入力受付部111と、前記開口部検討情報122に基づいて、前記デッキスラブ1、1Aの許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910と、前記開口部3を設けた場合に前記デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの計算を行う演算部112と、前記演算部112によって算出された前記デッキスラブ1、1Aの許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910と、前記曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの計算結果を前記通信ネットワーク300を介して前記情報処理端末200に送信する出力部113と、を有し、前記開口部検討情報122は、デッキスラブ1、1Aの切断方法に関する情報と、開口部3の位置に関する情報と、開口部3の寸法に関する情報と、耐火補強筋に関する情報と、デッキスラブ1、1A支持間距離に関する情報と、デッキスラブ1、1Aの断面性能に関する情報と、デッキスラブ1、1Aの材料強度に関する情報と、固定荷重および積載荷重に関する情報と、設計荷重変更の有無に関する情報と、梁32、33の条件に関する情報と、柱31、41の条件に関する情報と、建築物の構造に関する情報と、梁32、33とデッキプレート2の接合方法に関する情報と、デッキスラブ1、1Aの許容応力度に関する情報と、を含むことを特徴とする。
【0259】
これによれば、設備設計担当者がクライアント端末装置200において開口部検討情報122を入力することで、情報処理装置100は、デッキスラブ1、1Aに開口部3を設けた際の構造計算として、開口部検討情報122によって指定された開口部3を設けたデッキスラブ1、1Aに生じる最大曲げモーメントを算出する。また、情報処理装置100は、算出した最大曲げモーメントが基準を満たすか否かを判定する判定処理と、開口部3を設けたデッキスラブ1、1Aに対し、耐力補強筋4や配力筋5、開口補強筋6による補強や、梁による補強が必要であるか否かを判定する判定処理を行う。
そのため、設備設計担当者は、情報処理装置100から送信された、開口部検討情報122に基づいて算出された演算結果123を、クライアント端末装置200の表示画面においてタイムリーに確認することが可能である。
【0260】
また、構造設計者は、設備設計担当者が入力した開口部検討情報122によって算出された、開口部施工内容の検討を自ら実施することが不要となる。
【0261】
そのため、本発明の実施の形態に係る開口部構造計算システム10によれば、設備設計担当者と建築物の構造設計者の間で、開口部施工内容の検討内容がタイムリーに共有されることにより、開口部施工内容の検討開始から開口部の切断作業に着手するまでの時間が短縮されることから、施工期間を短縮することが可能となる。
【0262】
≪第2の実施の形態≫
図11は、本発明の第2の実施形態における開口部を有するデッキスラブの平面図である。
第2の実施の形態に係るデッキスラブ1Bは、図10に示すように、デッキスラブ1Aのうち、デッキプレート21に、円形上の開口部3Cが設けられている。開口部3Cは、直径XDの大きさを有する。
【0263】
第1の実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aには、矩形状の開口部3が設けられていたが、第2の実施の形態に係るデッキスラブ1Bには、円形上の開口部3Cが設けられている。上述した、配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブの開口部の寸法の範囲と、その設計手法については、開口部3が円形であっても、適用することが可能である。
第1の実施の形態に係るデッキスラブ1、1Aにおいて、X方向に大きさとしてXBを適用していた各計算式を、開口部3Cの直径である、XDに置き換えることで、第1の実施の形態と同様に配筋や梁による補強が不要となるデッキスラブの開口部の寸法の範囲を算出することが可能である。
【0264】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0265】
例えば、本発明の第1の実施の形態に係る開口部構造計算システム10はネットワーク300に接続された開口部構造計算情報処理装置100とクライアント端末装置200により実現されているが、ネットワーク300は、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)に限らず、例えばインターネットに代表される広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)であってもよい。
すなわち、開口部構造計算システム10を提供する事業者が所有する開口部構造計算情報処理装置100に対し、開口部構造計算システム10を利用するシステム利用者は、自らが所有するクライアント端末装置200をインターネットを経由して接続し、開口部構造計算システム10の機能を利用することとしてもよい。
【0266】
例えば、本発明の第1の実施の形態に係る開口部を有するデッキスラブの施工方法においては、デッキプレート2を設置するステップS3と、コンクリート7を打設するステップS6の後にデッキスラブ1、1Aの切断を行うステップS7とする順番としたが、デッキプレート2を設置するステップS3の後にデッキスラブ1、1Aの切断を行うステップS7を実施し、その後にコンクリート7を打設するステップS6を実施する順番としてもよい。
【符号の説明】
【0267】
1 デッキスラブ
2 デッキプレート
21 開口部が設けられたデッキプレート
22 開口部が設けられていないデッキプレート
3 開口部
4 耐力補強筋
5 配力筋
6 開口補強筋
7 コンクリート
31 柱
32 大梁
33 小梁
40 有限要素法による構造解析モデル
41 柱
42 メッシュ
43 構成要素
44 最大曲げモーメントが発生した構成要素
10 開口部構造計算システム
100 開口部構造計算情報処理装置
101 演算装置
102 記憶装置
102A プログラム
102B データ
103 入力装置
104 I/F装置
105 出力装置
106 バス
111 入力受付部
112 演算部
113 出力部
121 記憶部
122 開口部検討情報
123 演算結果
200 クライアント端末装置
201 演算装置
202 記憶装置
203 入力装置
204 I/F装置
205 出力装置
206 バス
211 入力インターフェース部
212 送信部
213 データ受付部
214 表示部
215 制御部
300 ネットワーク
【要約】
【課題】適用範囲を拡大した開口部の補強を不要または低減することができるデッキスラブ、デッキスラブの施工方法、およびデッキスラブの設計方法、情報処理システムを提供すること。
【解決手段】デッキスラブ1、1Aは、開口部3を有するデッキプレート2、及びデッキプレート2上に打設されたコンクリート7を有するデッキスラブ1、1Aであって、デッキスラブ1、1Aに生じる曲げモーメントM0、M6、M7、M1A、M1Bの大きさはデッキスラブ1の許容曲げモーメントM12、M34、M45、M89、M910の大きさ以下の値となる条件を満たすことで得られる。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11