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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20240611BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D183/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020181829
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072415
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】池堂 圭祐
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052390(WO,A1)
【文献】特表2022-507821(JP,A)
【文献】特開2012-72288(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162293(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0079966(US,A1)
【文献】特開2009-263522(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含有し、実質的に溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子
(B)アルコキシシラン類の加水分解縮合物が有するシラノール基をアセタール保護してなるポリシロキサン
【請求項2】
(C)光重合性モノマーを含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
(D)多官能チオール化合物を含有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置画面の視野角を拡大するために、画面材料を高屈折率にする必要があるが、材料中に高屈折率ナノ粒子の配合量を増量することで可能になる。高屈折率ナノ粒子とUVモノマーから構成されたコーティング剤は、車載機など、高温で長時間の耐熱性が求められる用途では、クラックが生じやすい。特に高屈折率化するためにナノ粒子の配合量を増加させると顕著にクラックが生じやすい。
このような耐熱性が求められる用途に適するとされる材料として、ポリシロキサンがあるが、アルコキシシランの加水分解・脱水縮合によってポリシロキサンを作製するには溶剤存在下で行う必要がある。その後ポリシロキサン作成後に溶剤を留去すると、ポリシロキサンがさらに高分子量化してしまい、固まってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-263522号公報
【文献】国際公開第2018/43407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決する課題は、形成した塗膜が耐熱性に優れ、かつ屈折率が高い活性エネルギー線硬化型組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
1.下記(A)及び(B)を含有し、実質的に溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子
(B)アルコキシシラン類の加水分解縮合物が有するシラノール基をアセタール保護してなるポリシロキサン
2.(C)光重合性モノマーを含有する1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
3.(D)多官能チオール化合物を含有する1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、形成した塗膜が耐熱性に優れ、かつ屈折率が高い活性エネルギー線硬化型組成物を得ることができる。
さらに硬化時において、チオールを介した結合が形成されるので硬化収縮を低減できる。この結果、硬化膜が高温環境下にあっても、さらにクラックの発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上記A~Fの要件を満たすものであり、以下に順に説明する。
<A.酸化ジルコニウム微粒子>
本発明において、A成分として使用できる酸化ジルコニウム微粒子は、表面処理されたものでもよく、されていないものでも良い。また球状でもよく、球状ではないものでも良い。
酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、1~50nmであることが好ましい。
そして、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましく、8nm以上であることが最も好ましい。また30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく15nm以下であることが最も好ましい。
平均粒子径が小さい程、より硬化塗膜の透明性が向上する。
酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径が1nm以上であることにより、分散性が向上する。また、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径が50nm以下であることにより、得られるハードコート層において光の散乱が発生しにくくなり、ハードコート層の透明性が高くなる。なお、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、動的光散乱法によって一次粒径を測定したものとする。
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の酸化ジルコニウム微粒子の含有量は、優れた塗膜硬度と高い屈折率を得るために、10.0~70.0質量%が好ましい。
その中でも、20.0質量%以上がより好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましく、50.0質量%以上が最も好ましい。また67.0質量%以下がより好ましく、65.0質量%以下がよりさらに好ましい。
含有量がこの範囲であると、硬化塗膜が十分な硬度を有し、適切な屈折率とすることが容易になる。
【0009】
<B.アルコキシシラン類の加水分解縮合物が有するシラノール基をアセタール保護してなるポリシロキサン>
本発明のアルコキシシラン類の加水分解縮合物が有するシラノール基をアセタール保護してなるポリシロキサンとして例えば下記の方法により合成した化合物を使用できる。
(アルコキシシラン類の加水分解縮合物)
アルコキシシラン類の加水分解縮合物は下記式(1)で示される化合物であり、アルコキシル基等の加水分解性の基を有するシラン化合物から公知の方法により得ることができる。
式(1)
aSi(OR)b(O H)cO(4- a - b - c)/2 ( 1 )
( 式中、Rは水素原子又は炭素数1~18の有機基から選択される1種又は2種以上の基、Rは炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基から選択される1種又は2種以上の基であり、a、b、及びcは任意に決めることができる。)
上記式(1)の化合物におけるRは、水素原子又は置換もしくは非置換の炭素数1~18、好ましくは1~10の一価の炭化水素基であり、例えば、水素原子; メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基; シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基; ビニル基、アリル基等のアルケニル基; フェニル基、ナフチル基等のアリール基; クロロメチル基、γ-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ-(メタ)アクリロキシプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基、γ-メルカプトプロピル基、γ-アミノプロピル基等の(メタ)アクリロキシ、エポキシ、メルカプト、アミノ基置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、フェニル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。
【0010】
の含有量aが0.3より小さい場合、4官能のシロキサン単位の含有量が多くなり、膜のクラックが発生し易くなる可能性がある。一方、a が1.6より大きい場合には、2官能のシロキサン単位の含有量が多くなり、膜に柔軟性が付与される反面、基材への密着性、及びアルカリ可溶性を発現させるために必須なシラノール基含有量が少なくなる可能性がある。
【0011】
は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であって、OR基は、シロキサン末端基のうちシラノール基(Si-OH)以外のものであり、加水分解前のアルコキシシラン類由来のアルコキシ残基或いはアルコキシシラン類の合成時の反応溶媒として用いたアルコールがシロキサンに導入されて生成したものである。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンの原料としては、安価なメトキシシラン、エトキシシランの使用が適するため、O R基としてはメトキシ基、エトキシ基の場合が多いが、これらに限定されない。
【0012】
上記式(1)のアルコキシシラン類の加水分解縮合物のポリシロキサンへの酸不安定基の導入は、シラノール基と酸不安定基原料との反応によってなされる。アルコキシ残基は関与しないため、含有量bは0でも良い。bが0.3より大きいと、末端基中のアルコキシ残基の割合が増え、相対的にシラノール基の総量が減少するので、酸不安定基の導入量が少なくなり、十分な解像度が得られないため好ましくない。
これらのアルコキシ残基量は、赤外吸収スペクトル又はアルカリクラッキングによるアルコール定量法等で定量可能である。実際、測定限界以下の量のものでも適用可能である。
【0013】
シラノール基含有量cは、ポリシロキサンの29Si-NMRを測定し、シロキサンの平均化学構造を算出することによって求めることができる。即ち、例えば、3官能加水分解性シランから合成されるT単位(RSi-O/2)のうち、下記式(2)に示した4 種類の構造単位(T0~T3)は、29Si-NMRスペクトルにおいて異なる化学シフトでシグナルが観測される。このシグナルの面積は、この構造の存在比を示すため、T0、T1、T2の存在比より、末端基(OX)のモル量%を算出できる。このモル量から、IR スペクトル等で別途求めたアルコキシ基残量を差し引くことで、ポリシロキサン中に含まれるシラノール基モル量を算出できる。
(式2)
【化1】
(X = H 又はRであり、Rは上記の通りである。)
【0014】
シラノール基(Si-OH)の含有量cが2を超える場合、4官能シロキサン単位(Q)を多く含むか又は3官能シロキサン単位(T)単独なら2量体構造で、全末端がシラノール基の場合に相当する。このようなポリシロキサンは、低分子であり皮膜形成能に乏しいだけでなく、硬化皮膜の耐クラック性が乏しいので好ましくない。cが0.001より小さい場合、本発明の置換にて導入する酸不安定基の含有量が極端に少なくなる可能性がある。
【0015】
このポリシロキサンの分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。標準ポリスチレンを基に作成した検量線から得られる重量平均分子量で300~200,000の範囲にあるものが好ましい。300より小さいと皮膜形成性、耐クラック性に乏しくなる場合があり、200,000より大きいと、現像時の現像液溶解性が著しく低下する場合がある。
【0016】
ポリシロキサンは、従来公知の方法で合成することができる。原料の加水分解性のアルコキシシラン類及び併用できるシラン化合物としては、以下に列挙するものが使用可能である。ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメトキシメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジエトキシメチルシラン、3-(4-ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4-ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシエラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のいわゆるシランカップリング剤以外に、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリクロルシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリクロルシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、プロピルメチルジクロルシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジクロルシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロルシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。またこれ以外にも、トリクロルハイドロジェンシラン、トリメトキシハイドロジェンシラン、トリエトキシハイドロジェンシラン等のハイドロジェンシラン類と、不飽和結合を有する有機基とをヒドロシリル化反応にて結合させることによって、所望のケイ素化合物を合成し、使用することも可能である。
加水分解性ケイ素化合物は1種単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0017】
このアルコキシシラン類が含有する加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。これは反応制御が容易であること及びハロゲンイオンの残存は本発明の用途には不適であることからクロルシランの使用は好ましくないことによる。
有機基については、前述したようにメチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、フェニル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましく、特にフェニル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基が最も適する。これら加水分解性基、有機基を有するシラン化合物を原料に用いるのが好ましい。
【0018】
上記加水分解性のアルコキシシラン類を加水分解及び縮合して、本発明に使用可能な加水分解縮合物を得る方法としては、水、又は水と有機溶剤中で加水分解性シラン化合物を加水分解する公知の方法が挙げられる。
加水分解に使用する水量は、加水分解性基1モルに対し1モル以上、好ましくは1.2モル以上である。水量が1モル未満だと、加水分解性基の加水分解が部分的にしか進行せず、加水分解性基が未反応のまま、比較的多量に残存することになる。未反応の加水分解性基が多く残存すると、その分シラノール基量が低下するため、本発明の目的には適さない。
【0019】
有機溶剤としては、水溶性、非水溶性を問わず、広く使用可能であるが、特にシラノール基含有シロキサンの溶解性が高い点から極性溶剤が好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、モノエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエーテル等が例示される。特に本発明に適するポリシロキサンとしては、留去し易いメタノール、エタノール等の低沸点アルコールが好ましい。
【0020】
加水分解及びそれに続く縮合反応時には、従来公知の加水分解触媒、縮合触媒の使用が可能である。特に酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性或いは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸等が好ましい。これらの例としては塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等の有機酸、表面にスルホン酸基、又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂等が挙げられる。加水分解触媒の量は、加水分解性基1モルに対して0.001~10モル%が好ましい。本発明用途においては、加熱によって分解し得るリン酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸が好ましい。
加水分解反応と縮合反応は、厳密には分離できず、加水分解反応中も一部縮合が進んでいる。従って、上記酸性触媒は両反応において触媒として機能するが、より縮合度を上げる場合は、別途縮合触媒を添加してもよい。これら縮合触媒の例としては、先に列挙した酸性化合物以外に、アンモニア、アミン類等の塩基性化合物及びアンモニウム塩類、チタン、亜鉛、ジルコニウム、スズ等の金属化合物等が挙げられる。
【0021】
次に、このポリシロキサンのシラノール基を酸不安定基に置換する方法を説明する。本発明に係るアセタール保護してなるポリシロキサンは、上記式(1)で示されるポリオルガノシロキサン(ポリシロキサン) に含まれる、ケイ素原子と直接結合している水酸基の一部の水素原子を下記式(3)で示される酸不安定基で置換及び/又は下記一般式(4)で示されるC-O-C基を有する架橋基により分子内又は分子間で架橋したものである。
式(3)
【化2】
(式中、R、Rは互いに独立して水素原子又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。Rは炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~20のアラルキル基を示す。RとR、RとR、RとRは互いに結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子及び酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合、環の形成に関与するR、R、Rは炭素数1~18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。)
【0022】
式(4)
【化3】
( 式中、R、R、R、R10は互いに独立して水素原子又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RとR、RとR10は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合、環の形成に関与するR、R、R、R10は炭素数1 ~17の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。Rは酸素原子を含んでもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基を示す。)
【0023】
上記式(3)の酸不安定基として、R及びRの炭素数1~6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
の炭素数1~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ヘキシル基、パルミチル基、n-ステアリル基、シクロプロピル基、コレステリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジメチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、ナフチル基、フリル基、ビフェニル基等が挙げられる。炭素数7~20のアラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、プロピルベンジル基、ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0025】
また、式(4)中、R、R、R、R10の炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。更にRにおいて炭素数1~6の酸素原子を含んでもよい2価の炭化水素基の例としては、アルキレン基のほか、下記のものが挙げられる。
式(5)
【化4】
なお、上記式(3)、(4)において、R、R、R又はR、R、R、R10が環を形成する場合の環の例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基が挙げられる。
【0026】
本発明中の、アルコキシシラン類の加水分解縮合物が有するシラノール基をアセタール保護してなるポリシロキサンは、上記ポリシロキサンを、酸触媒下、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n - ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec-ブチルビニルエーテル、エチル-1-プロペニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メチル-1-プロペニルエーテル、イソプロペニルメチルエーテル、イソプロペニルエチルエーテル、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン等のアルケニルエーテル化合物やエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,3-プロパンジオールジビニルエーテル、1,3-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル等のジアルケニルエーテル化合物の付加反応で得ることができる。
【0027】
更に、酸不安定基を導入する際の反応条件としては、溶媒としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル等の非プロトン性極性溶媒を単独或いは2 種以上混合して用いることができる。触媒の酸としては、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム塩等を用いることができる。
【0028】
<C.光重合性モノマー>
(単官能モノマー)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中に含有されても良い光重合性モノマーのうち、単官能モノマーとしては以下のものが挙げられる。
ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2 -エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等単官能の(メタ)アクリレートを挙げられる。
その他、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸、が挙げられる。
【0029】
このような単官能モノマーを含有する場合、活性エネルギー線硬化型組成物中に5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、15.0質量%以上がさらに好ましい。また活性エネルギー線硬化型組成物中に40.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、28.0質量%以下がさらに好ましい。
【0030】
(多官能モノマー)
多官能モノマーとしては、分子中に炭素-炭素不飽和結合を複数有する化合物であり、例えば以下の化合物を採用できる。
ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
このような多官能モノマーを含有する場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中に1.0~10.0質量%である。
【0031】
<D.多官能チオール化合物>
多官能チオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンから選ばれた一種以上が好ましい。
また、中でも、4官能以上のチオール化合物が好ましく、さらに粘度を低下させることができる。
さらに3官能以上の2級のチオールや4官能以上の2級のチオールとすることが好ましい。
これらの多官能のチオール化合物を含有する場合、その含有量は、光重合性成分と多官能チオール化合物の合計量に対して、0.5~10.0質量%が好ましい。そして5.0質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましく、1.8質量%以下が最も好ましい。多官能チオール化合物は、その添加をする効果を発揮できる範囲内にて含有量が少ないほうが好ましい。
多官能チオール化合物を含有させることにより、組成物の粘度が低下し、かつ塗膜耐熱性が向上する。
【0032】
<本発明の活性エネルギー線硬化型組成物及びその硬化物の物性>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、溶媒の添加なしで、その粘度が60mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、44mPa・s以下であることが更に好ましい。このような 低粘度であると、インクジェット用インク組成物にしたり、インキ組成物にしたり、表面コート剤組成物として使用したりする際に円滑に印刷や塗布することができる。
なお、粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、25℃で測定する。
そして、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は、その屈折率が1.60以上であることが好ましく、1.64以上がより好ましく、1.68以上が更に好ましい。このように屈折率が高いことにより形成された硬化被膜がより透明度を高く感じられ、美粧性に優れることになる。さらに表示装置の表示面表面に硬化被膜を形成することにより、その視野角を拡げることができる。
【0033】
<光重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に配合できる光重合開始剤は特に限定されない。
使用できる光重合開始剤として例えば下記のものが挙げられる。但し経時的に塗膜を黄変させる等の着色をさせる光重合性開始剤を使用しないことが好ましい。
ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819)、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されず、光重合性成分100質量部に対して0.3~1.5質量部が好ましく、中でも0.4質量部以上がより好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。
【0034】
<増感剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する増感剤(化合物)を使用できる。また十分に硬化可能であれば使用しなくても良い。なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。このような増感剤を用いることで、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、LED硬化性を向上できる。
【0035】
上記増感剤は、アントラセン系増感剤が好ましい、2以上の増感剤を併用してもよい。具体的には、増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤等である。市販品の代表例は、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製等である。
【0036】
増感剤を含有させる場合、好ましくは光重合性成分の総質量に対して0~8.0質量%である。8.0質量%を超えても効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。増感剤の含有量が8.0質量%を超える場合、インキ組成物は、増感剤を配合することによる効果が向上しにくく、過剰添加となる傾向がある。
【0037】
なお、活性エネルギー線硬化型組成物が色味の変化の影響を受けやすいクリアーであるので、活性エネルギー線硬化型組成物は、光増感剤とてして、チオキサントン系増感剤を初めとする変色の可能性があるものを含まないことが好ましい。
【0038】
<その他の成分>
活性エネルギー線硬化型組成物は、任意成分として、必要に応じて、種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤が配合されてもよい。任意成分は、たとえば、表面調整剤、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等である。また、ヒンダードアミン化合物を含有しても含有しなくても良く、チオール基含有ポリシルセスキオキサンや、ポリウレタン(メタ) アクリレートやアクリル系重合体を含有しないことが好ましい。
【0039】
(表面調整剤)
活性エネルギー線硬化型組成物は、表面調整剤を好適に含む。表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレン系表面調整剤等である。アセチレンジオール系表面調整剤は、ダイノール607、ダイノール609、EXP-4001、EXP-4300、オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)等である。シリコーン系界面活性剤は、BYK-307、333、347、348、349、345、378、3455(ビックケミー社製)等である。フッ素系界面活性剤は、F-410、444、553(DIC社製)、FS-65、34、35、31、30(デュポン社製)等である。
表面調整剤が含有される場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤の含有量は、インキ組成物の表面張力が塗膜形成に適した範囲となるための量であることが好ましく、インキ組成物中に0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0040】
(重合禁止剤)
重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤は、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等のヒンダードアミン、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等の重合禁止剤である。
【0041】
(消泡剤)
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック系消泡剤等である。
【0042】
(活性エネルギー線硬化型組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を製造する方法について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合し、必要により活性エネルギー線硬化型組成物の粘度を調整して得ることができる。
【0043】
(用途)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、中でも特に高い硬度や耐擦過性が要求され、かつ透明な非吸収性材料からなるガラスや基材の表面層に対して使用する場合に適している。非吸収性材料としては、樹脂を基材とする表面層に対して使用すること、さらに、該樹脂として塩化ビニル系重合体またはエチレン-酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる表面層を対象にして使用することが、耐水性等の点において好ましい。また、該樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、ターポリン、アクリル系樹脂等からなる表面層を対象にして使用することが、密着性等の点において好ましい。
これらの基材表面に本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の被膜を形成する手段としては公知の塗布手段や印刷手段を採用できる。
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は、接着性や粘着性を有しない。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によりパターンを形成、硬化する方法として、具体的には、バーコーター公知の塗布装置により、任意の基材に対して塗膜やパターンを形成し、その後活性エネルギー線を照射にて、塗膜やパターンを硬化できる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明の組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法も挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット用の低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンタヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を印字する装置としては、従来から使用されているインクジェットパターン形成用プリンター装置等が利用できる。 上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UVランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができ、環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が350~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
【実施例
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の顔料、分散剤、樹脂、溶剤及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0046】
(塗膜硬化性)
UV照射後の塗膜硬化性を塗膜表面のタックの有無により評価した。
UV照射強度 180mJ/cm
塗膜厚さ 1~2μm
○(タック無)
×(タック有)
【0047】
(塗膜耐熱性)
スピンコーターで設けた30μm厚さのUV硬化塗膜を有するサンプル片を、125℃で、8時間加熱した後の塗膜表面クラック有無を目視で確認した。
UV照射強度 180mJ/cm
○(クラック無)
△(クラック少し発生)
×(クラック有)
【0048】
(屈折率)
ガラス基板にスピンコーターで1μm厚さに塗布し、UV照射強度180mJ/cmで硬化して塗膜を作製し、反射分光膜厚計により測定した。
【0049】
(合成例1)
フェニルトリメトキシシラン86.25g
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン59.73g
水21.95g
リン酸0.85g
を混合し35分還流条件下撹拌した。
その後、テトラエトキシシラン10.07g
ジメチルジメトキシシラン29.05g
を20分かけて滴下し、さらに15分還流撹拌し、ダイアフラムポンプで減圧し70℃まで昇温した。
その後、エチルビニルエーテル105.39g
を10分かけて滴下し12時間室温で撹拌した。
その後減圧条件下80℃で20分撹拌して溶媒を留去して無溶剤シロキサン(式(1)中a=1.2)を得た。
【0050】
(合成例2)
合成例1において、テトラエトキシシランを5.03gとし、ジメチルジメトキシシラン31.95gとした以外は同様にして無溶剤シロキサン(式(1)中a=1.25)を得た。
【0051】
(合成例3)
合成例1において、エチルビニルエーテルを使用せず、アセタール保護をしなかった以外は同様にして無溶剤シロキサン(式(1)中a=1.2)を得た。
【0052】
(合成例4)
合成例1において、フェニルトリメトキシシランを使用せずに、メチルトリエトキシシラン77.56gに変更した以外は同様にして無溶剤シロキサン(式(1)中a=1.2)を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
(実施例1)
合成例1により得られたシロキサン0.175g、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)0.1g
イソボルニルアクリレート0.68g
フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819(IGM Resins B.V.製、光重合開始剤))0.059g
平均粒子径11nmの酸化ジルコニウムのメチルエチルケトン分散液(酸化ジルコニウム含有量70重量%)2.86g(屈折率が1.7になるようにジルコニア粒子を配合)を混合し減圧条件下50℃1時間撹拌し分散液のメチルエチルケトンを留去して活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0055】
(実施例2)
合成例1により得られたシロキサンを、合成例2により得られたシロキサンに代えた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0056】
(実施例3)
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を使用しなかった他は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0057】
(比較例1)
合成例1により得られたシロキサンを、合成例3により得られたシロキサンに代えた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を得た。この例で使用したシロキサンはアセタール保護されていない。
【0058】
(比較例2)
合成例1により得られたシロキサンを、合成例4により得られたシロキサンに代えた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0059】
本発明によれば、アセタール保護したアルコキシシラン類の加水分解縮合物を使用しため、塗膜耐熱性に優れた高屈折率の塗膜を得た。
これに対して、アセタール保護しないアルコキシシラン類の加水分解縮合物を使用した比較例1によれば、粘度が高くなりすぎたため、塗膜評価を適切に行えず、クラックが発生した。反応性が高いメチルトリエトキシシランを使用した比較例2によれば、塗膜耐熱性に劣った塗膜が得られ、クラックが発生した。