(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】インプラントセット、およびインプラントの挿入の準備のための方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/28 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61F2/28
(21)【出願番号】P 2021558948
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059755
(87)【国際公開番号】W WO2020212179
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102019110385.1
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512242697
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテクニック ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Karl Leibinger Medizintechnik GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbingerstr. 10 Muhlheim 78570 GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アクス, アデム
(72)【発明者】
【氏名】ライナウアー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム, トビアス
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-104811(JP,U)
【文献】特表2007-536038(JP,A)
【文献】特開2004-130113(JP,A)
【文献】特開平08-150160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0043358(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0033016(US,A1)
【文献】特表2012-511408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者専用のインプラントと、前記インプラントの外側輪郭部に適合し、前記インプラントを収容する移送装置と、前記インプラントに骨細片および/もしくは組織構造を充填するための、かつ/または前記骨細片を押圧するためのツールとを有するインプラントセットにおいて、前記インプラントが、前記ツールの少なくとも1つの端部の外側輪郭部が適合する内側輪郭部を有し、前記ツールと前記移送装置との間で前記インプラントの前記内側輪郭部内の骨細片を押圧できるように、前記インプラントの前記外側輪郭部が、前記移送装置
の内側輪郭部に接触して位置することを特徴とするインプラントセット。
【請求項2】
前記ツー
ルが、棒として構成される少なくとも2つの端
部を有することを特徴とする、請求項1に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項3】
前記ツー
ルの前記端
部が異なる断面形状を有することを特徴とする、請求項2に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項4】
前記ツー
ルの第1の部
分が円形の断面を有し、かつ/または前記ツー
ルの第2の部
分が長方形の断面を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項5】
前記移送装
置が、前記ツールを材料結合、形状結合、および/または力結合の方法で保持するために準備されたツール受け
部を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項6】
前記ツール受け
部が、前記ツー
ルと前記移送装
置との間に所定の分断点を形成し、かつ/または前記ツー
ルの前記外側輪郭部に適合することを特徴とする、請求項5に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項7】
前記移送装
置が、本
体と、複数の側面で前記インプラン
トを保持するための、かつ/または前記インプラン
トに接触するための閉鎖
体とを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項8】
前記閉鎖
体が、前記インプラン
トを取り囲むように前記閉鎖
体が前記本
体の一
部に当接する第1の位置と、前記閉鎖
体が前記本体の前記一
部から離間する第2の位置との間で、前記本
体に対して変位可能であることを特徴とする、請求項7に記載のインプラントセット。
【請求項9】
前記インプラン
トが、少なくとも部分的に、格子状構造、菱形構造、もしくはハニカム構造、または細孔構造を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項10】
前記インプラン
トが、骨細片で充填され得る凹部および/または骨細片で充填され得る貫通孔を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のインプラントセッ
ト。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のインプラントセッ
トによるインプラン
トの挿入を準備するための方法であって、
第1のステップでは、前記インプラン
トが前記移送装
置に挿入され、
その後、第2のステップでは、前記ツー
ルを用いて前記インプラン
トに骨細片が充填され、
その後、第3のステップでは、前記ツー
ルと前記移送装
置との間で前記ツー
ルを用いて前記インプラン
トに前記骨細片が押し込まれる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インプラントセットに関する。さらに、本発明は、インプラントの挿入を準備するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨空洞の充填および/または骨再生のために、患者専用のカスタムメイドのインプラントが使用される。これらのインプラントは、3次元の複雑な形状を有し、患者および/またはインプラント部位に応じて互いに著しく異なる。これらのインプラントを、骨細片および/または軟骨もしくは骨軟骨組織構造などの他の組織構造で充填し、またはこれらのインプラントを支持的に骨に固定するために使用する、補助手段、ツール、または構造化された装置は、現時点では存在しない。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を回避または少なくとも低減することである。特に、インプラントの特に効率的で最適化された準備および/または取り扱いを可能にする、インプラントセット、およびインプラントの挿入を準備する方法が提案されるべきである。
【0004】
本発明の目的は、特許請求項1の特徴を有するインプラントセット、および特許請求項10の特徴を有する方法によって解決される。有利な実施形態を、従属請求項において特許請求し、以下でより詳細に説明する。
【0005】
より具体的には、本発明によれば、インプラントセットが提案される。インプラントセットは、患者専用のインプラント、特に顎部クランプ、または上顎のための顎部プレートを有する。さらに、インプラントの外側輪郭部に適合し、インプラントが挿入/配置される移送装置を、インプラントセットは備える。内側輪郭部は、好ましくは、インプラントの外側輪郭部、少なくとも外側輪郭部の一部に対して、いくつかの側面において、例えばボウル状の様式で、かつ/または、平らな様式および/もしくは同一平面の様式/嵌合する様式で対応する。さらに、インプラントセットは、例えば、インプラントに骨細片を充填して骨細片を押圧するためのタペット状のツールを有する。
【0006】
さらに、軟部組織、例えば軟骨、コラーゲン材料、または骨-軟骨混合物を骨細片の代わりに使用し、ツールをこれらの材料を組織保存して締め固めることに使用するように、インプラントセットは構築されてもよい。インプラントは、ツールの少なくとも端部の外側輪郭部が適合する内側輪郭部を有する。言い換えれば、特にその端部におけるツールの形状は、その形状がインプラントの形状、特にインプラントの貫通孔などの内側輪郭部に少なくとも部分的に対応するように、インプラントの形状に適合する。ツールは、必要とされる最小限の時間および/もしくは力でインプラントを固定する機能を有するインタフェースとして機能してもよく、かつ/または、インプラントに骨細片を充填し、および/もしくはインプラントの中においてこれらの骨細片を圧縮する機能を有するインタフェースとして機能してもよい。ツールはまた、特定のエネルギー伝達のための機能を有するか否かにかかわらず、インタフェースとして機能してもよい。
【0007】
インプラントの外側輪郭部が、ツールと移送装置との間で(インプラントの内側輪郭部の中で)インプラントの内側輪郭部内の骨細片が押圧されてもよいように、移送装置の内側輪郭部に接触して位置することが特に好ましい。言い換えれば、特に好ましい実施形態によれば、インプラントは、例えば外側輪郭部に向かって開いた、貫通孔などの(第1の)開口部を(内側輪郭部として)有してもよく、開口部は、インプラントが移送装置にある/挿入されると、移送装置の内側輪郭部によって閉じられ、好ましくはインプラントの外側輪郭部に沿って同一平面上にある。これにより、骨細片は、インプラント部位で骨と直接表面接触しながら、押圧中に脱落することなく開口部で押圧されることが可能になる。特に、骨細片は、インプラントの貫通孔の片側の入口開口部を通して充填されてもよく、入口開口部から開始してツールによって押圧されてもよい。第1の開口が移送装置によって閉じられているということは、押圧中に骨細片が脱落するのを防止するが、同時に、骨細片は、移送装置から取り外されたときに、インプラントの同一平面の外側輪郭部/外面が貫通孔の中で押圧された骨細片によって形成されるように押圧されてもよい。
【0008】
これは、例えば、骨細片をインプラントに充填してもよく、ツールの外形が骨細片が位置するインプラントの凹部の輪郭に対応するときにツールによって均一に締め固めることができるという利点を有する。骨細片を充填することにより、インプラントの強度を簡単な方法で高めてもよい。したがって、ツールは、汎用的な方法で複数の用途に使用してもよく、その結果、必要なツールの数が少なくなる。特に、インプラントを損傷するリスクなしにツールを特に容易にインプラントに挿入することができるので、ツールの外側輪郭部はインプラントの内側輪郭部よりもわずかに小さい。
【0009】
好ましい実施形態によれば、ツールは、棒として構成される少なくとも2つの端部を有してもよい。したがって、2つの端部を、インプラントの内側輪郭部の異なる部分に使用してもよい。ツールの棒形状構成は、ツールがインプラントの深い凹部にもはめ込まれることを可能にする。好ましくは、ツールは、少なくとも部分的に、長手方向の延在部にわたって一定の断面を有する。
【0010】
実施形態の有利なさらなる発展形態によれば、ツールの端部は、異なる断面形状を有してもよい。例えば、ツールの一部は、円形断面、特に円形断面を有してもよい。ツールの一部は、楕円形の断面を有してもよい。円形断面は、例えばインプラントに充填された骨細片を圧縮することおよび/または締め固めることのために、インプラントの穿孔、特に歯科用穿孔/歯科用孔などの孔にはめ込まれるのに特に適している。部分が角度のある断面、例えば三角形、長方形、または正方形の断面を有することも可能である。このような断面形状は、例えばインプラントのスリット状のくぼみで骨細片を圧縮するのに適している。
【0011】
あるいは、ツールは、ツール嵌込形状を有する部分を有してもよい。例えば、ツール嵌込形状は、クロススロット、トルクス(登録商標)、六角形、またはアレンドライブの外形を有してもよい。したがって、ツールは、挿入トルクまたは抽出トルクを加えるために使用してもよい。
【0012】
ツールはまた、へら形状、スプーン形状、またはスコップ形状を有する部分を有してもよい。このような幾何学的形状は、好適には、骨細片または他のより柔らかい組織構造、例えば軟骨を容器からインプラントの中に充填するために使用してもよい。部分が長方形断面を有する場合、それはスコップとしてもスリット状のくぼみに対する締め固め部としても適している。
【0013】
好ましい実施形態によれば、ツールは、ツールの容易な把持および/または取り扱いを可能にする把持領域を有してもよい。特に、把持領域は、両側またはすべての側で平ら化された円形プロファイルを有してもよく、または好ましくは丸みを帯びた縁部および/またはわずかに球形の側面を有する長方形断面を有してもよく、これにより、片手での特に良好な把持を簡単な方法で可能にする。
【0014】
好ましい実施形態では、遠位面とも呼ばれてもよいツールの前側/前面は、凸状/球状、凹状、または平面状/平らであってもよい。平面またはわずかに球形の前面が特に適していることが証明されており、この理由は、この形状により、骨細片を特に均一に押圧することが可能になるからである。
【0015】
ツールは、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ステンレス鋼、チタン、セラミック、またはこれらの材料の組み合わせで構成してもよい。好ましくは、ツールはポリアミドで構成される。ツールは、コーティングおよび/または表面改質を有してもよい。さらに、ツールは、好ましくは無菌であってもよい。
【0016】
好ましい実施形態によれば、移送装置は、ツールを材料結合、形状結合、および/または力結合の方法で保持するために準備されたツール受け部を有してもよい。好ましくは、ツールは、ツール受け部に着脱可能に、すなわち、再取付可能に受け入れられてもよい。特に好ましくは、ツールは、ツールを使用せずに、すなわち別のツールを使用せずに、ツール受け部から取り外してもよい。実施形態の有利なさらなる発展形態によれば、ツール受け部は、ツールと移送装置との間に所定の分断点を形成してもよく、かつ/または、例えばツールの外側輪郭部への取付け部として適合してもよい。これにより、必要なツールが使用できる状態であることを確実にする。
【0017】
有利な実施形態によれば、移送装置は、複数の側面でインプラントを保持する、かつ/またはインプラントに接触するための本体および閉鎖体を有してもよい。このようにして、特に骨細片または軟骨細片を充填するために、インプラントを本体と閉鎖体との間にしっかりと保持してもよい。
【0018】
特に好ましいさらなる発展形態によれば、閉鎖体は、好ましくは直線的に、本体に対して変位可能であり、特に変位可能に導かれてもよい。あるいは、閉鎖体は、本体に対して枢動可能または折り畳み可能であってもよい。特に、閉鎖体は、インプラントを好ましくは完全にまたは複数の側面で取り囲むように閉鎖体が本体の一部に当接する第1の位置と、閉鎖体が本体の一部から離間する第2の位置との間で本体に対して変位可能である。特に、閉鎖体の変位がレールによって形状結合の方法で導かれることが好ましい。例えば、レールは、本体(または閉鎖体)に形成された溝と、閉鎖体(または本体)に形成された対応する突起部とによって形成される。溝は、例えば、蟻継ぎの形状を有してもよい。
【0019】
実施形態によれば、移送装置はインプラントのための受け部を有し、受け部は閉鎖体と本体とによって形成される。受け部は、例えば、ボウル状の形状を有してもよい。例えば、受け部は、ベル形断面または円形断面/ベル形の内側輪郭部形状を有してもよい。
【0020】
有利なさらなる発展形態では、閉鎖体(または本体)はピンを有してもよく、本体(または閉鎖体)は対応する孔を有してもよく、ピンは第1の位置で孔にはめ込まれる。その結果、移送装置は、第1の位置で特に高い安定性を有する。特に、ピン(または鋲もしくはボルト)が、閉鎖体が本体に対して変位可能である方向に平行な方向に延びていると有利である。さらに、ツールをツール受け部に挿入してもよいツールの挿入方向が、閉鎖体が本体に対して変位可能である方向に平行に向けられることが好ましい。このようにして、特に小型のインプラントセットを提供してもよい。
【0021】
移送装置は、例えば、閉鎖体から突出する把持突起部を有してもよい。この把持突起部により、移送装置を容易に把持および/または移送することができる。
【0022】
移送装置は、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ステンレス鋼、チタン、セラミック、またはこれらの材料の組み合わせで構成してもよい。好ましくは、移送装置はポリアミドで構成される。移送装置は、コーティングおよび/または表面改質を有してもよい。さらに、移送装置は、好ましくは無菌であってもよい。
【0023】
好ましい実施形態によれば、インプラントは、顎部クランプまたは顎部プレートとして構成されてもよい。特に、顎部プレートとして構成されるインプラントでは、骨細片での充填が特に有益であることが示されている。
【0024】
有利な実施形態では、インプラントは、少なくとも部分的に、格子状構造、菱形構造、もしくはハニカム構造、または細孔構造を有してもよい。この構造により、インプラントの中の骨細片を押し込むことが可能になる。例えば、インプラントは、例えばU字形またはV字形の輪郭を有するシェルの形状を有してもよい。
【0025】
好ましい実施形態によれば、インプラントは、歯科用穿孔として機能する少なくとも1つの凹部、特に貫通孔を有してもよい。例えば、インプラントは、骨細片で充填されてもよい、2つの貫通孔および/または棒状のくぼみを有する。
【0026】
インプラントは、吸収性骨置換材料で構成されてもよい。インプラントは、好ましくは、ヒドロキシルアパタイト(HA)、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、二相性リン酸カルシウム(BCP)、マグネシウム(Mg)、MgCaZn、バイオガラス、モリブデン(Mo)、またはこれらの材料の組み合わせで構成される。さらに、インプラントは、好ましくは無菌であってもよい。
【0027】
本発明によれば、本発明によるインプラントセットによるインプラントの挿入を準備する方法も提案される。予備ステップでは、インプラントを挿入できるように移送装置を開いてもよい。第1のステップでは、インプラントが移送装置に挿入される。その後、移送装置を閉じてもよい。その後、第2のステップでは、骨細片が、ツール、特に第1のツール部分を用いてインプラントに充填される。その後、第3のステップでは、骨細片は、ツール、特に第2のツール部分によってインプラントの中に押し込まれる。この目的のために、ツールは、貫通孔またはインプラントの凹部/くぼみに押し込まれる。その後、移送装置を開き、インプラントを移送装置から取り外してもよい。最後に、インプラントは頭蓋骨、例えば上顎に固定される。ツールはまた、インプラントを保持および/もしくは固定するために、かつ/または骨細片を上顎に押圧するために使用されてもよい。
【0028】
本発明を図面を用いて以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明によるインプラントセットの移送装置およびツールの斜視図である。
【
図2】インプラント、移送装置、およびツールを有するインプラントセットの斜視図である。
【
図6】インプラントセットと、インプラントを準備する方法のステップとの斜視図である。
【
図7】インプラントセットと、インプラントを準備する方法のステップとの、別の斜視図である。
【
図8】インプラントセットと、インプラントを準備する方法のステップとの、さらに別の斜視図である。
【
図9】インプラントセットと、インプラントを準備する方法のステップとの、またさらに別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は、本質的に単なる概略図であり、本発明を理解する目的のみを意図している。同一の要素には同じ参照符号を付している。
【0031】
図1および
図2は、本発明によるインプラントセット1の斜視図を示す。インプラントセット1は、患者専用のインプラント2を有する。インプラント2は、骨置換材料から作られた個別のインプラントとして構成されている。インプラント2は、特に吸収性骨空洞充填物として使用され、かつ/または骨再生のために使用される。インプラント2は
図1には示していない。インプラントセット1は移送装置3を有する。移送装置3は、インプラント2の形状、特に外側輪郭部に適合する。移送装置3は、インプラント2を保持、移送、および/またはインプラント2に骨細片を充填するために使用される。インプラント2は、移送装置3に収容されている(
図2を比較されたい)。インプラントセット1はまた、ツール4を有する。ツール4は、インプラント2を、例えば骨細片で充填するために使用されてもよい。ツール4はまた、好ましくはインプラント2の中において材料、特に骨細片を圧縮するために使用されてもよい。ツール4は、インプラント2の形状、特にインプラント2の内側輪郭部に適合する少なくとも1つの端部5、6を有する。
【0032】
図3は、ツール4の斜視図を示す。ツール4は、タペット状または棒状である。この形状は、ツール4が、ツール4の長手方向を横断する横断方向に沿ってよりも、ツール4の長手方向に沿って実質的により大きな延在部を有することを意味する。例えば、長手方向の延在部は、横断方向の延在部の少なくとも2倍の長さであってもよい。あるいは、ツールは、例えば、十字キーの形状を有してもよいが、これは図示されていない。図示する実施形態では、ツール4は、第1の端部5と、第1の端部5の反対側の第2の端部6とを有する。ツール4は、2つの端部5の間に配置された把持領域7を有する。ツール4は、1つ以上、例えば2つの材料から構成してもよい。ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ステンレス鋼、チタン、セラミック、またはこれらの材料の組み合わせが、特に適切な材料であることが分かっている。好ましくは、ツール4は、セラミックで構成される。
【0033】
第1の端部5に配置された第1のツール部分8は、略長方形の断面を有する。第1のツール部分8の断面は、長手方向においてその延在部にわたって一定である。第1のツール部分8は、丸みを帯びた縁部を有する。第1のツール部分8の前面9は、平面または平らである。しかしながら、前面9はまた、凹状または凸状であってもよいが、これは図示されていない。長方形断面に起因して、第1のツール部分8は、以下で第1の側面10と称する2つの幅広い側面と、以下で第2の側面11と称する2つの幅が狭い側面とを有する。第1の側面10の1つは、例えば、骨細片を拾い上げてインプラント2に充填することができるスコップとして使用してもよい。例えば、骨細片は、骨盤などの身体部分から採取されてもよい。好ましくは、取り出された骨細片は、例えばはさみを用いてステンレス鋼カップなどの容器の中で粉砕され、ツール4によって、特に第1のツール部分8の第1の側面10によって容器から取り出される。
【0034】
第2の端部6に配置された第2のツール部分12は、実質的に丸い、特に円形の断面を有する。第2のツール部分12の断面は、長手方向においてその延在部にわたって一定である。第2のツール部分12の前面13は、平面または平らである。しかしながら、前面13はまた、凹状または凸状であってもよいが、これは図示されていない。第2のツール部分12は、外周面14を有する。第2のツール部分12の前面13は、特にインプラント2の中において骨細片を締め固めることまたは押圧することのために使用される。好ましくは、第2のツール部分12の外側輪郭部は、少なくとも部分的にインプラント2の内側輪郭部、特にインプラント2の歯科用孔の内側輪郭部に対応し、これは以下により詳細に説明し、特に均一に締め固めることを可能にする。
【0035】
把持領域7は、略長方形、例えば正方形の断面を有する。把持領域7は、丸みを帯びた縁部を有する。把持領域7は、4つの側面15を有する。図示する実施形態では、2つの対向する第1の側面15は、わずかに凸状、すなわち外側に向かって球形である。特に、第1の側面15は長手方向に球形であってもよく、その結果、断面は把持領域8の中心で最大であり、外側に向かって長手方向に小さくなる。しかしながら、第1の側面15はまた、平面または凹状であってもよいが、これは図示されていない。図示する実施形態では、2つの対向する第2の側面16は平面であるが、これが図示されていなくても、凸状または凹状であってもよい。
【0036】
図4および
図5は、ツール4の可能な使用を示す。図示する実施形態では、インプラント2は頭蓋骨、特に上顎17に取り付けられている。ツール4は、インプラント2を保持および/または固定するために使用してもよい。ツール4はまた、ツール4、特に第2のツール部分12が骨細片を上顎17に向かう方向に圧縮するという点で、上顎17に取り付けられたインプラント2の中において骨細片を追加で圧縮することに使用されてもよい。しかしながら、ツール4は、主に、以下でより詳細に説明するインプラント2の挿入を準備するために使用されてもよい。
【0037】
インプラント2および移送装置3の特徴は、
図6~
図9を参照してより詳細に説明する。インプラント2の挿入を準備するための本発明による方法も説明する。
【0038】
移送装置3は、インプラント2のための受け部18を有する。図示する実施形態では、受け部18は、特に正確な嵌合および/または形状でインプラント2を挿入することができる移送装置3の凹部として設計されている。図示する実施形態では、受け部18は、一方の側面、特に垂直方向の上方に開口している。また、移送装置3は、例えば、プレート状の底部19を有する。受け部18は、ボウル20によって形成される。
【0039】
ボウル20は、多部分構造を有する。ボウル20は、ボウル20の一部、例えばほぼボウルの半分を形成する第1のボウル部分21を有する。第1のボウル部分21は、底部19に固定的に接続されている。あるいは、第1のボウル部分21は、底部19に対して移動可能であってもよい。第1のボウル部分21は、底部19と一体的にまたはモノリシックに形成されてもよい。しかしながら、第1のボウル部分21は、底部19から分離した構成要素として形成され、底部19に取り付けられてもよい。第1のボウル部分21および底部19は、移送装置3の本体を形成する。ボウル20は、ボウル20の一部、例えば(異なる)ボウルの半分を形成する第2のボウル部分22を備える。第1のボウル部分21は、第2のボウル部分22と別個に形成されている。第2のボウル部分22は、第1のボウル部分21に対して移動可能、特に変位可能である。あるいは、第2のボウル部分22は、第1のボウル部分21に対して枢動可能、回転可能、または折り畳み可能であってもよい。
【0040】
ボウル20は、開位置および閉位置に移動してもよい。
図6に示す開位置では、2つのボウル部分21、22は離間する。特に、2つのボウル部分21、22は、離間する距離によってインプラント2が受け部18に押し込まれ、または挿入することができる程度まで互いに離間する。したがって、距離は、インプラント2の最大幅よりも長いことが好ましい。
図7に示す閉位置では、受け部18が閉じた輪郭を有するように、2つのボウル部分21、22は互いに接触して位置する。受け部18の輪郭は、特にインプラント2の外側輪郭部に対応する。閉位置では、インプラント2を受け部18に挿入したり、受け部18から取り外したりすることはできない(またはすべきではない)。
【0041】
ボウル20を開閉するために、閉鎖体を形成する第2のボウル部分22は、第1のボウル部分21に対して変位されてもよい。底部19と第2のボウル部分22との間には、レール23が形成されて、変位を導く。レール23は、底部19の溝24、および第2のボウル部分22の突起部25によって形成される。突起部25は、底部に近接して、すなわち第2のボウル部分22の底に面する(下側の)側面に配置されている。あるいは、第2のボウル部分2に溝を形成し、底部19に突起部を形成してもよい。溝24の断面は、突起部25の断面に対応する。図示する実施形態では、断面は蟻継ぎ形状を有する。したがって、断面は、第2のボウル部分22に向かう方向に先細になり、その結果、第2のボウル部分22を底部に垂直な方向に取り外すことができない。溝24は、以下、変位方向と称する方向に延びている。溝24は、移送装置3の外側に向かって開口を有する。したがって、第2のボウル部分22は、ボウル20を開閉するための溝24において変位方向に沿って変位してもよい。第2のボウル部分22は、レール23を介して、底部19に形状結合の方法で(垂直方向に)取り付けられているが、変位方向に沿って(直線的に)変位可能に取り付けられている。
【0042】
第2のボウル部分22には、第1のボウル部分21の方向に突出する2つのピン26が形成されている。ピン26は1つだけ設けられるのでもよい。3つ以上のピン、例えば3つまたは4つのピンを設けてもよい。ピン26は、変位方向に沿って延びている。第1のボウル部分21には、対応する数の孔27が形成されている。孔27は、ピン26の直径に適合する。孔27は、ピン26がボウル20を閉じる際に孔27にはめ込まれるように、変位方向においてピン26と位置合わせされる。好ましくは、ピン26および孔27は、移送装置3の安定性を高め、かつ/または意図しない開口部を防止する力結合接続を形成する。あるいは、ピンは第1のボウル部分21に形成されてもよく、孔は第2のボウル部分22に形成されてもよいが、これは図示されていない。
【0043】
移送装置3は、ツール受け部28を有する。ツール4は、材料結合、形状結合、および/または力結合の方法でツール受け部に保持されてもよい。図示する実施形態では、ツール受け部28は取付け部として構成されている。取付け部は、2つの保持アーム29、例えば下側保持アームおよび上側保持アームによって形成され、それらの間にツール4を挿入してもよい。保持アーム29は、ツール4の外側輪郭部、例えば把持領域7の輪郭に合致される。ツール4は、変位方向に取付け部に挿入されてもよい。ツール4は、ツール受け部28に着脱可能に取り付けられる。したがって、ツール4は、特にツールなしでツール受け部28から取り外されてもよく、ツール受け部28に再取り付けされてもよい。あるいは、ツール4は、所定の分断点によって材料結合の方法でツール受け部28に固定されてもよいが、図示されていない。
【0044】
底部19によって把持突起部30が形成される。底部19は、移送装置3が底部19で把持されてもよいように、ボウル20から突出する。例えば、把持突起部30は、ボウル20の反対側面またはすべての側面に突出してもよい。
【0045】
言い換えれば、移送装置3、特に受け部18の内側輪郭部形状は、インプラント2の形状、特に外側輪郭部形状に形成される。受け部18の内側輪郭部形状は、例えば、ベル形であってもよいし、略三角形状または略長方形状であってもよい。インプラント2の1つの側面は、特に同一平面上で受け部18の底面31上に置かれる。底面31は、一部が第1のボウル部分21によって形成され、一部が第2のボウル部分22によって形成される。
【0046】
移送装置3は、1つ以上、例えば2つの材料から構成されてもよい。ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ステンレス鋼、チタン、セラミック、またはこれらの材料の組み合わせが、特に適切な材料であることが証明されている。移送装置3は、セラミックで構成されていることが好ましい。
【0047】
インプラント2は、個別のインプラントとして構成されるので、用途および患者に応じて設計が異なる。図示する実施形態では、インプラント2はU字形またはV字形である。インプラント2の形状は、シェルとして説明することもできる。インプラント2には、2つの貫通孔32が形成されており、これは、歯科用孔または歯科用穿孔として説明してもよい。インプラントには1つの貫通孔のみが形成されてもよい。あるいは、例えば3つ、4つ、5つ、または6つの、3つ以上の貫通孔が形成されてもよい。貫通孔32は、移送装置3に挿入されたときの垂直方向に対応する方向に延びている。貫通孔32は、インプラント2に形成されたウェブ状のくぼみ33によって接続されている。インプラント2は、細孔構造またはハニカム構造とも呼ばれるラチス構造/格子構造を有する。
【0048】
インプラント2が受け部18に挿入されると、インプラント2、特に貫通孔32は、ツール4を使用して骨細片で充填されてもよい。この目的のために、骨細片は、ツール4の第1のツール部分8によって貫通孔32に充填され、例えばすくい上げられる。貫通孔32の形状に対応する外側輪郭部を有する第2のツール部分12は、骨細片を締め固めるために使用される。この目的のために、第2のツール部分12の前側面13は、貫通孔32に挿入され、移送装置3の底面31に接触して押し付けられる(
図7を比較されたい)。骨細片は、骨細片の硬さ、個別の骨細片の異なる形状、添加された血液、およびインプラント2の格子構造に起因して、塊を形成する。したがって、インプラント2が移送装置3から取り外されても、骨細片はインプラント2に付着したままである。
【0049】
図8は、インプラント2のくぼみ33がツール4によって骨細片で充填されていることを示す。第1のツール部分8の形状は、くぼみ33の形状に対応している。骨細片は、ツール4をくぼみ33に押し込むことによって締め固められ、かつ/または押圧される。
【0050】
インプラント2を埋め込むことができるようにするために、移送装置3、特にボウル20が開かれる。その後、骨細片で充填されたインプラント2を移送装置3から取り外してもよい(
図9を比較されたい)。
【0051】
インプラント2は、ヒドロキシルアパタイト(HA)、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、二相性リン酸カルシウム(BCP)、マグネシウム(Mg)、MgCaZn、バイオガラス、モリブデン(Mo)、またはこれらの材料の組み合わせなどの骨置換材料で構成される。