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特許7500920輻射情報算出装置および温度情報算出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】輻射情報算出装置および温度情報算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/48 20220101AFI20240611BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01J5/48 A
B60H1/00 101F
B60H1/00 101J
B60H1/00 101Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019009438
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020117052
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 政幸
(72)【発明者】
【氏名】竹田 弘
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217886(JP,A)
【文献】特開平10-230728(JP,A)
【文献】特開平09-286220(JP,A)
【文献】特開2005-007923(JP,A)
【文献】特開2017-030377(JP,A)
【文献】特開2008-002721(JP,A)
【文献】特開2006-240609(JP,A)
【文献】特開平06-117836(JP,A)
【文献】久保田 拓也 他,自動車室内における乗員への車室内長波放射と日射の影響,システム制御情報学会論文誌,2010年,Vol.23 No.6,p.115~127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00- G01J 5/90
G01J 1/02
G01J 1/42- G01J 1/46
B60H 1/00
F24F 11/00- F24F 11/89
G01K 13/00
G01N 25/00- G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、
前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120、130)と、
前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、
前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、
前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、
前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し
前記サーモグラフィは日射の向きの情報を含み、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、
前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、
前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、輻射情報算出装置。
【請求項2】
記サーモグラフィは、前記車両の車室の天井の温度を表す画素群と、前記車両のリアガラスの温度を表す画素群と、前記車両のサイドガラスの温度を表す画素群と、を含む請求項1に記載の輻射情報算出装置。
【請求項3】
車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、
前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120、130)と、
前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、
前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、
前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、
前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し
前記サーモグラフィは、前記車両の車室の天井の温度を表す画素群と、前記車両のリアガラスの温度を表す画素群と、前記車両のサイドガラスの温度を表す画素群と、を含み、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、
前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、
前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、輻射情報算出装置。
【請求項4】
車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、
前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120、130)と、
前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、
前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、
前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、
前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、
前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、
前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、
前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、温度情報算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射情報算出装置および温度情報算出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員が受ける輻射の量を算出するための技術が開示されている。具体的には、シートベルトの表面に反射部が形成され、当該反射部から到達する赤外線を検知部が検知し、検知された赤外線に基づいて算出部が車室内の輻射温度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の検討によれば、特許文献1の技術では、反射部のある部分を代表点として輻射温度を算出しているに過ぎないので、乗員の温熱感をきめ細かく把握できない。車室内の温熱環境が著しく不均一であるからである。具体的には、乗員の複数の身体部位は、受ける輻射の量も近傍の空気の温度も、互いに大きく異なる。これは、例えば、天井、フロントガラス、サイドガラス等、車室内の異なる位置に異なる温度の複数の部材が存在し、複数の身体部位がそれら複数の部材のどれから主に影響を受けやすいかも、身体部位毎に大きく異なるからである。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、車両の乗員の複数の身体部位毎に、受ける輻射の量、または、近傍の空気の温度を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120、130)と、前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し前記サーモグラフィは日射の向きの情報を含み、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、輻射情報算出装置である。
また、請求項3に記載の発明は、車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120)と、前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し前記サーモグラフィは、前記車両の車室の天井の温度を表す画素群と、前記車両のリアガラスの温度を表す画素群と、前記車両のサイドガラスの温度を表す画素群と、を含み、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、射情報算出装置である。
また、請求項に記載の発明は、車両(2)の車室に露出する複数の部材の温度が反映された複数種類の部材温度情報を取得する取得部(110)と、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を、算出する算出部(120、130)と、前記算出部が算出した前記複数の輻射情報を出力する出力部(140)と、を備え、前記取得部は、赤外線カメラ(21)によって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含み、前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル(61)によって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出し、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報に基づいて、前記車室内の乗員(6)の複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出し、前記出力部は、前記算出部が算出した前記複数の空気温度情報を出力し、前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する、温度情報算出装置である。
【0007】
このようにして、車室内の乗員の複数の身体部位にそれぞれ対応する複数の輻射情報が算出される。上述の通り、乗員の複数の身体部位は、受ける輻射の量が互いに大きく異なる場合がある。発明者の検討によれば、その理由は2つある。1つは、車室の異なる位置に露出して異なる温度となる複数の部材が存在することである。もう1つは、複数の身体部位は、それら複数の部材のどれから主に輻射を受けるかが、まちまちだということである。
【0008】
したがって、車両の車室に露出する複数の部材の温度が反映された部材温度情報に基づいてこれら複数の輻射情報が算出されることで、このような車室特有の事情に合わせて、適切な情報に基づいた複数の輻射情報の算出が実現される。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】空調装置が搭載される車両の概略図である。
図2】空調ケースおよびその周辺の機器の構成図である。
図3】空調装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】赤外線カメラの撮影範囲内に含まれる部材を示す図である。
図5】受ける輻射量を算出する対象の身体部位および近傍の温度を算出する対象の身体部位を示す図である。
図6】輻射・温度算出処理のフローチャートである。
図7】一事例における太陽の位置およびサーモグラフィの各画素の値を示す図である。
図8】サーモグラフィの画素値を濃度で表した図である。
図9】一事例における太陽の位置およびサーモグラフィの各画素の値を示す図である。
図10】サーモグラフィの画素値を濃度で表した図である。
図11】輻射情報を算出する処理の概要を示す図である。
図12】空気温度情報を算出する処理の概要を示す図である。
図13】教師データの取得範囲と、
図14】所定の条件下において輻射情報用の学習済みモデルによって算出された輻射情報のグラフである。
図15】所定の条件下において空気温度情報の学習済みモデルによって算出された空気温度情報のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について説明する。図1図2図3に示すように、本実施形態にかかる車両用の空調装置10は、車両2に搭載される。車両の車室内には、運転者である乗員6が着座する前席3、および運転者以外の乗員が着座する後席4が設けられている。空調装置10は、車両2の車室内の空気の温度を調整する装置である。
【0015】
空調装置10は、エアコンECU40、空調ケース11、内外気切替ドア12、遠心ファン131、エバポレータ14、ヒータコア15、エアミックスドア16、フェイスドア17、フットドア18、フェイスダクト51、フットダクト52、デフロスタダクト53、風向調整板110、赤外線カメラ21、外気温センサ22、内気温センサ23、日射センサ24、フェイス温度センサ25、フット温度センサ26、デフロスタ温度センサ27、フロントガラス温度センサ28、ファンアクチュエータ131a、エアミックスアクチュエータ16a、吹出モードアクチュエータ17a、内外気モードアクチュエータ12a、風向アクチュエータ110a等を備えている。
【0016】
空調ケース11は、インストルメントパネル8内に設けられ、温度調整されて車室内に吹き出される空気が通る通風路111を囲む。
【0017】
内外気切替ドア12は、内気導入口112の開口面積と、外気導入口113の開口面積を調整する部材である。内外気切替ドア12は、内気導入口112と外気導入口113のうち、一方の開口部を開くほど他方の開口部を閉じるように回転動作する。これにより、内外気切替ドア12は、通風路111に導入される内気の風量と外気の風量の割合(すなわち、内外気比率)を調整することが可能である。ここで、内気は、車室内空気であり、外気は、車室外空気である。内外気モードアクチュエータ12aは、内外気切替ドア12を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
【0018】
遠心ファン131は、回転することで、内気導入口112が開口していればそこから内気を、外気導入口113が開口していればそこから外気を、通風路111内に導入し、導入した空気を、通風路111内における遠心ファン131の空気流れ下流側に送る。ファンアクチュエータ131aは、遠心ファン131を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
【0019】
エバポレータ14は、通風路111内で、遠心ファン131の空気流れ下流に、配置される。エバポレータ14は、遠心ファン131から送られた空気を冷却する。エバポレータ14は、図示していない圧縮機、凝縮器および膨張弁などと共に周知の冷凍サイクルを構成している。この冷凍サイクルも、空調装置10の構成要素である。当該冷凍サイクルを流れる冷媒がエバポレータ14内を通る際、冷媒と空気が熱交換する。この熱交換により、冷媒が蒸発し、空気が冷やされる。
【0020】
ヒータコア15は、通風路111内で、エバポレータ14の空気流れ下流に、配置されている。ヒータコア15は、エバポレータ14を通過した空気を加熱する。ヒータコア15には、エンジン冷却水が流れ、このエンジン冷却水と空気とが熱交換することで空気が加熱される。
【0021】
エアミックスドア16は、エバポレータ14とヒータコア15との間に設けられている。エアミックスドア16は、エバポレータ14を通過した後にヒータコア15を迂回して流れる風量と、エバポレータ14を通過した後にヒータコア15を通過する風量との割合すなわちエアミックス比率を調整するドアである。エアミックスアクチュエータ16aは、エアミックスドア16を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
【0022】
図3に示すように、空調ケース11には、通風路111の空気流れ方向下流側に、通風路111から車室内に空気を送風するためのフェイス開口部114、フット開口部115、デフロスタ開口部116が形成されている。通風路111のうち、ヒータコア15を迂回した空気とヒータコア15を通った空気とが混合されるエアミックス空間から、これらフェイス開口部114、フット開口部115、デフロスタ開口部116に空気が流れる。
【0023】
フェイス開口部114、フット開口部115およびデフロスタ開口部116には、それぞれの開口部を開閉するためのモード切替ドアが設けられている。モード切替ドアは、フェイスドア17、フットドア18およびデフロスタドア19により構成されている。フェイスドア17は、フェイス開口部114を開閉する。フットドア18は、フット開口部115を開閉する。デフロスタドア19は、デフロスタ開口部116を開閉する。
【0024】
吹出モードアクチュエータ17aは、これらフェイスドア17、フットドア18、デフロスタドア19を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。エアミックスアクチュエータ16aによって、吹出口モードが制御される。吹出口モードには、例えば、フェイスモード、フットモード、デフロスタモード、バイレベルモードがある。フェイスモードは、フェイスドア17が開いてフットドア18、デフロスタドア19が閉じる吹出口モードである。フットモードは、フットドア18が開いてフェイスドア17、デフロスタドア19が閉じる吹出口モードである。デフロスタモードは、デフロスタドア19が開いてフェイスドア17、フットドア18が閉じる吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイスドア17、フットドア18が開いて、デフロスタドア19が閉じる吹出口モードである。
【0025】
フェイスダクト51は、一端がフェイス開口部114に接続され、他端であるフェイス吹出口100がインストルメントパネル8において前席3のシートバックに対向する位置に開口している。通風路111からフェイス開口部114を通った空気は、このフェイスダクト51に流れ込み、フェイスダクト51内を通った後、フェイス吹出口100から車室内に吹き出される。フェイス吹出口100から吹き出された空気は、前席3に着座する乗員6の上半身またはその周囲に向けて流れる。
【0026】
フットダクト52は、一端がフット開口部115に接続され、他端であるフット吹出口101がインストルメントパネル8において前席3のシートクッションの前方の足元空間に対向して開口している。通風路111からフット開口部115を通った空気は、このフットダクト52に流れ込み、フットダクト52内を通った後、フット吹出口101から車室内に吹き出される。フット吹出口101から吹き出された空気は、前席3に着座する乗員6の足元またはその周囲に向けて流れる。
【0027】
デフロスタダクト53は、一端がデフロスタ開口部116に接続され、他端であるデフロスタ吹出口102がインストルメントパネル8においてフロントガラスに対向して開口している。通風路111からデフロスタ開口部116を通った空気は、このデフロスタダクト53に流れ込み、デフロスタダクト53内を通った後、デフロスタ吹出口102から車室内に吹き出される。デフロスタ吹出口102から吹き出された空気は、フロントガラスまたはその周囲に向けて流れる。
【0028】
このように、フェイス吹出口100、フット吹出口101、デフロスタ吹出口102は、車室内の異なる位置に開口している。そして、前席3に着座する乗員6の身体部位のうち、上半身に属する身体部位は、フェイス吹出口100から吹き出される空気の影響を最も強く受ける。また、前席3に着座する乗員6の身体部位のうち、下半身に属する身体部位は、フット吹出口101から吹き出される空気の影響を最も強く受ける。
【0029】
また、図2に示すように、フェイス吹出口100には、風向調整板110が取り付けられている。風向調整板110は、フェイス吹出口100から車室内に吹き出される空気の向きを調整する。具体的には、風向調整板110の姿勢が変化することで、フェイス吹出口100から吹き出される空気の流れの向きを、車幅方向および車両上下方向に変える。風向アクチュエータ110aは、風向調整板110を駆動するアクチュエータであり、図3に示すように、エアコンECU40によって制御される。
【0030】
赤外線カメラ21は、あらかじめ決められた撮影範囲内から放射される赤外線を取得し、取得した赤外線に基づいて、当該撮影範囲内の位置毎の表面温度を画素値として表す画像を生成して出力するセンサである。当該画像はサーモグラフィの撮影範囲内には、図4に示すように、前席3、後席4、助手席、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、車室内の天井36が含まれる。
【0031】
このような撮影範囲を実現する車室内の赤外線カメラ21の位置としては、例えば図1に示すように、車両の左右方向中央部分における、フロントガラスの上端部近傍がある。
この部分から後方を俯瞰撮影すると、図4に示したような部材がサーモグラフィに含まれる。この部分にルームミラーが設置されている場合は、赤外線カメラ21はルームミラーに取り付けられてもよい。
【0032】
このような前席3、後席4、助手席、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36は、車室に露出する部材である。これら部材は、温度に応じた熱輻射を行うので、乗員への輻射の量および乗員の近傍の空気の温度に大きく影響する。しかも、これら部材の温度は、車両の置かれた環境は走行状況に応じて、非一様に大きく変化する。したがって、車室の異なる位置に露出して異なる温度となる複数の部材が存在することになる。そして、複数の身体部位は、それら複数の部材のどれから主に輻射等の熱的影響を受けるかが、まちまちである。したがって、後述する通り、これら複数の部材の温度が反映された部材温度情報等に基づいて、複数の身体部位の輻射情報および空気温度情報が算出される。複数の身体部位の輻射情報は、当該複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す。複数の身体部位の空気温度情報は、当該複数の身体部位にそれぞれ対応して、対応先の身体部位の近傍の空気の温度を表す。
【0033】
外気温センサ22は、車室外の空気(すなわち外気)の温度に応じた検出信号を出力するセンサである。内気温センサ23は、車室内の空気(すなわち内気)の温度に応じた検出信号を出力するセンサである。日射センサ24は、車室内への日射量に応じた検出信号を出力するセンサである。
【0034】
フェイス温度センサ25は、フェイスダクト51を通ってフェイス吹出口100から吹き出される空気の温度を、フェイス吹出口100において検出するセンサである。フット温度センサ26は、フットダクト52を通ってフット吹出口101から吹き出される空気の温度を、フット吹出口101において検出するセンサである。デフロスタ温度センサ27は、デフロスタダクト53を通ってデフロスタ吹出口102から吹き出される空気の温度を、デフロスタ吹出口102において検出するセンサである。フロントガラス温度センサ28は、車両2のフロントガラスの温度を検出するセンサである。
【0035】
エアコンECU40は、CPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を有するCPUが、ROMまたはフラッシュメモリに記憶されたプログラムを実行することで、後述する各種処理を実現し、それら処理において、RAMをワークメモリとして使用する。エアコンECU40は、輻射情報算出装置に対応すると共に、温度情報算出装置にも対応する。フラッシュメモリは、書き込み可能な不揮発性記憶媒体である。RAM、ROM、フラッシュメモリは、いずれも、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0036】
以下、上記のように構成された空調装置10の作動について説明する。エアコンECU40は、図3に示すように、輻射・温度算出処理40Aと、空調制御処理40Bとを、同時並行的に実行するようになっている。
【0037】
エアコンECU40は、輻射・温度算出処理40Aを実行することで、乗員6の複数の身体部位の輻射情報および乗員6の複数の身体部位の空気温度情報を算出する。
【0038】
輻射情報を算出する対象の身体部位は、図5の三角印で示すように、乗員6の右側頭部、左側頭部、顔、右肩、左肩、右肘、左肘、腹部、右膝、左膝、右脛、左脛の12部位である。空気温度情報を算出する対象の身体部位は、図5の丸印で示すように、乗員6の顔、頸、右肩、左肩、胸部、右肘、左肘、右手、左手、腹部、右膝、左膝、右脛、左脛、右足、左足の16部位である。輻射・温度算出処理40Aの詳細については後述する。
【0039】
エアコンECU40は、空調制御処理40Bを実行することで、空調ケース11から車室内に吹き出される空気の温度を調整する。具体的には、エアコンECU40は、空調制御処理40Bにおいて、車両にいる人が不図示の温度設定スイッチを操作して設定した設定温度Tsetと、外気温センサ22、内気温センサ23、日射センサ24の検出信号に基づいた外気温Tam、内気温Tr、および日射量Tsとに基づいて、以下の式に従って目標吹出温度TAOを、繰り返し(例えば定期的に1秒周期で)算出する。

TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
但し、Kset、Kr、Kam、Ksは、制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0040】
そして、エアコンECU40は、目標吹出温度TAOが算出される度に、算出された目標吹出温度TAOに応じて、周知の方法で、遠心ファン131の送風量、エアミックス比率、吹出口モード、内外気比率を決定する。
【0041】
また、エアコンECU40は、目標吹出温度TAOが算出される度に、フェイス吹出口100における風向を決定する。具体的には、輻射・温度算出処理40Aで算出された複数の身体部位の輻射情報および複数の身体部位の空気温度情報に基づいて、風向を決定してもよい。例えば、エアコンECU40は、複数の身体部位のうち、受ける輻射量が最も多い部位を特定し、特定した部位に向いた方向としてあらかじめ定められた方向を、風向として決定してもよい。あるいは、エアコンECU40は、図示しない操作パネルに対する乗員の操作内容に従って、風向を決定してもよい。
【0042】
そして、エアコンECU40は、決定した送風量、エアミックス比率、吹出口モード、内外気比率、風向を実現させる。具体的には、ファンアクチュエータ131a、エアミックスアクチュエータ16a、吹出モードアクチュエータ17a、内外気モードアクチュエータ12a、風向アクチュエータ110aを作動させることで、それらを実現する。
【0043】
ここで、輻射・温度算出処理40Aの詳細について説明する。エアコンECU40は、輻射・温度算出処理40Aを実現するため、図6に示すフローチャートを繰り返し実行する。
【0044】
図6の処理において、エアコンECU40は、まずステップ110で、吹出風情報、車内環境情報、および、車外環境情報を取得する。
【0045】
吹出風情報は、フェイス吹出口100、フット吹出口101、デフロスタ吹出口102から車室内に吹き出される空気に関する情報である。具体的には、吹出風情報は、吹出風温度、吹出風量、吹出口モード、風向等を含む。
【0046】
吹出風温度は、フェイス温度センサ25、フット温度センサ26、デフロスタ温度センサ27によって検出された最新の温度である。空調ケース11から車室内に送風が行われる場合、フェイス吹出口100、フット吹出口101、デフロスタ吹出口102のうちの少なくとも1つを通って空気が車室内に吹き出される。したがって、フェイス温度センサ25、フット温度センサ26、デフロスタ温度センサ27のうち少なくとも1つは、空調ケース11から車室内に吹き出される空気の温度を検出する。
【0047】
吹出風量は、空調制御処理40Bで決定された遠心ファン131の送風量の最新値である。吹出口モードは、空調制御処理40Bで決定された吹出口モードの最新値である。風向は、空調制御処理40Bで決定された風向の最新値である。
【0048】
車内環境情報は、車室内の温度環境を示す情報である。具体的には、車内環境情報は、内気温度、フロントガラス温度、天井温度、等を含む。内気温度は、内気温センサ23によって検出された最新の温度である。フロントガラス温度は、フロントガラス温度センサ28によって検出された最新の温度である。
【0049】
サイドガラス温度は、運転席側サイドガラス33の温度および助手席側サイドガラス34の温度である。リアガラス温度は、リアガラス35の温度である。ドアトリム温度は、運転席側ドアトリム31の温度および助手席側ドアトリム32の温度である。天井温度は、車室内の天井36の温度である。
【0050】
サイドガラス温度、リアガラス温度、ドアトリム温度、および天井温度は、赤外線カメラ21によって取得されたサーモグラフィに含まれている。それは、図4に示したように、赤外線カメラ21の撮影範囲に運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36が含まれるからである。しかも、サーモグラフィ中、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36の各々は、複数の画素(すなわち画素群)を占める。したがって、サーモグラフィは、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36のそれぞれの温度分布の情報も含んでいる。
【0051】
エアコンECU40は、ステップ110では、赤外線カメラ21から最新のサーモグラフィを取得することで、これらサイドガラス温度、リアガラス温度、ドアトリム温度、および天井温度を取得できる。
【0052】
なお、これら車内環境情報のうち、フロントガラス温度、サイドガラス温度、リアガラス温度、ドアトリム温度、天井温度は、車室に露出する複数の部材31~36の温度が反映された部材温度情報である。そして、サーモグラフィは、車室に露出する複数の部材31~36の温度が反映された部材温度情報を含む。
【0053】
車外環境情報は、車室外の温度環境を示す情報である。具体的には、車外環境情報は、外気温度、日射量、日射向き、等を含む。外気温度は、外気温センサ22によって検出された最新の温度である。日射量は、日射センサ24によって検出された最新の日射量である。
【0054】
日射向きは、車両2を基準とした日射の向きを示す情報である。この日射向きは赤外線カメラ21によって取得されたサーモグラフィに含まれている。それは、図4に示したように、サーモグラフィは、車室内を撮影範囲に含むからである。日射向きが変化すると、車室内における光の照射量の分布が変化し、その結果、車室内の温度分布も変化する。特に、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、リアガラス35の各々の温度は、日射向きによって温度が大きく変化する。
【0055】
実際、図7図8図9図10に示すように、車両2に対する太陽の位置が変化すると、車室内の温度分布が大きく変化する。図7図9は、太陽の位置と、サーモグラフィの各画素の輝度値とを示す。サーモグラフィは、上側が車両後方側、下側が車両前方側に対応する。図8は、図7と同じサーモグラフィの輝度値を濃度で表したものである。図10は、図9と同じサーモグラフィの輝度値を濃度で表したものである。濃度が高いほど、輝度値が高い。
【0056】
図7図8に示すように、太陽の光が車両2の直上から入射する場合、天井に該当する部分の温度が非常に高温になり、車室内における温度分布の左右差は少ない。また、図9図10に示すように、車両2の運転席側後方から車室内に光が入射する場合、運転席側サイドガラス33とリアガラス35の温度が高温になる。それと共に、車室内では、太陽に近い位置ほど温度が高くなる。エアコンECU40は、ステップ110では、赤外線カメラ21から最新のサーモグラフィを取得することで、日射向きの情報を取得できる。このように、サーモグラフィは日射向きの情報を含む。
【0057】
エアコンECU40は、ステップ110に続き、ステップ120で、乗員6の複数の身体部位の輻射情報を算出する。具体的には、図11に示すように、輻射情報用の学習済みモデル61に、直前のステップ110で取得した吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報のすべてを、説明変数として入力する。これにより、エアコンECU40は、学習済みモデル61から目的変数として出力された値を、上述の12箇所の身体部位の輻射情報として取得する。学習済みモデル61が出力する複数の身体部位の輻射情報の各々は、当該身体部位が受ける輻射の量である。出力される輻射の量は、例えば、放射照度[W/m]であってもよい。
【0058】
ここで、学習済みモデル61について説明する。学習済みモデル61は、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリにあらかじめ記録されたニューラルネットワークである。ニューラルネットワークとしては、例えば、CNN(Convolution Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long short-term memory)等の周知のニューラルネットワークが採用されてもよい。
【0059】
学習済みモデル61は、吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報が説明変数として入力された場合に、それら説明変数の値が実現されている状態において乗員6の上記複数の身体部位のそれぞれが受ける輻射の量を、輻射情報として出力する。このために、学習済みモデル61は、実際の車両における実験結果を教師データとして用いた教師あり学習によって、あらかじめ学習された状態で、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリに記録される。
【0060】
ここで、説明変数の一部と輻射情報との相関関係について説明する。フロントガラス温度は、乗員6の周り、主に上半身への輻射を上昇させる要因である。サイドガラス温度は、乗員の左側への輻射または右側への輻射を変化させる要因である。リアガラス温度は、乗員の後方への輻射を変化させる要因である。天井温度は、主に乗員の頭から胸の範囲への輻射を変化させる要因である。また、外気温度は、直接的な要因というよりも、フロントガラス温度、サイドガラス温度、天井温度に影響ある因子であり、それ故、輻射と強い相関がある。日射量は、乗員周りの主に上半身の輻射を上昇させる要因である。日射向きは、日射量と組み合せて活用できる情報である。具体的には、日射向きと輻射の相関関係は、日射向きに強く依存する。したがって、これらの量は、乗員6の複数の身体部位が受ける輻射の量を学習済みモデル61を用いて算出する際の説明変数として、適切である。
【0061】
エアコンECU40は、ステップ120に続き、ステップ130で、乗員6の複数の身体部位の空気温度情報を算出する。具体的には、図11に示すように、空気温度情報用の学習済みモデル62に、直前のステップ110で取得した吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報のすべてを、説明変数として入力する。これにより、エアコンECU40は、学習済みモデル62から目的変数として出力された値を、上述の16箇所の身体部位の空気温度情報として取得する。学習済みモデル62が出力する複数の身体部位の空気温度情報の各々は、当該身体部位の近傍の空気の温度である。
【0062】
ここで、学習済みモデル62について説明する。学習済みモデル62は、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリにあらかじめ記録されたニューラルネットワークである。ニューラルネットワークとしては、例えば、CNN、RNN、LSTM等の周知のニューラルネットワークが採用されてもよい。
【0063】
学習済みモデル62は、吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報が説明変数として入力された場合に、それら説明変数の値が実現されている状態における、乗員6の上記複数の身体部位のそれぞれの近傍の空気の温度を、空気温度情報として出力する。このために、学習済みモデル62は、実際の車両における実験結果を教師データとして用いた教師あり学習によって、あらかじめ学習された状態で、エアコンECU40のROMまたはフラッシュメモリに記録される。
【0064】
ここで、説明変数の一部と空気温度情報との相関関係について説明する。吹出空気温度は、車室内全体の空気温度を作っている要素であり、その中に存在する乗員6の周りの空気温度と強い相関がある。吹出風の風量が強いと、乗員6の周りの空気が動かされ、弱いと動かない。したがって、吹出風の風量は、乗員6の周りの空気温度と強い相関がある。
【0065】
フェイスモードの場合、乗員6の上半身周りの空気温の変化が大きく、フットモードの場合、乗員6の下半身周りの空気温の変化が大きくなる。したがって、吹出口モードは乗員6の近傍の空気の温度と強い相関がある。風向が変化すると、吹出風が乗員6のどの部分に主に当たるかが大きく変化する。従って、風向は乗員6の近傍の空気の温度と強い相関がある。内気温度は、車室内全体の温度を代表する量であり、乗員6の周りの空気全体のベース温度と考えることができる。したがって、内気温度は、乗員6の近傍の空気の温度と強い相関がある。
【0066】
フロントガラス温度は、外気温、および進行方向前方からの日射量に大きく依存し、乗員周り、主に上半身の空気温を上昇させる要因である。サイドガラス温度は、外気温、および偏日射により横方向からの日射量に大きく依存し、乗員6の左右の空気温を変化させる要因である。リアガラス温度は、乗員の後方の空気の温度を変化させる要因である。天井温度は、主に乗員の頭から胸の範囲の周囲の空気温度を上昇させる要因である。外気温度は、直接的な要因というよりも、フロントガラス温度、サイドガラス温度、天井温度に影響ある因子である。したがって、外気温度は乗員6の周囲の空気温度と強い相関がある。
【0067】
日射量は、乗員周りの主に上半身の空気の温度を上昇させる要因である。日射向きは、日射量と組み合せて活用できる情報である。具体的には、日射向きと乗員6の周りの空気の温度の相関関係は、日射向きに強く依存する。
【0068】
したがって、これらの量は、乗員6の複数の身体部位の近傍の空気の温度を学習済みモデル62を用いて算出する際の説明変数として、適切である。
【0069】
エアコンECU40は、ステップ130に続くステップ140で、直前のステップ120、130で算出した複数の身体部位の輻射情報および複数の人体の空気温度情報を、RAMまたはフラッシュメモリに出力する。これにより、RAMまたはフラッシュメモリに、当該複数の身体部位の輻射情報および複数の人体の空気温度情報が記録される。このように記録された複数の身体部位の輻射情報および複数の人体の空気温度情報は、既に説明した通り、例えば、空調制御処理40Bにおいて風向の決定の際に使用される。
【0070】
ここで、学習済みモデル61、62の作成方法について、説明する。学習済みモデル61、62の作成は、エアコンECU40ではない他の学習モデル作成装置が行う。
【0071】
まず、学習済みモデル61、62の作成者は、教師データを作成して、学習モデル作成装置に記録される。使用される教師データは、上述の通り、実際の車両における実験結果である。実験用の車両には、図3で示した赤外線カメラ21およびセンサ22~28が搭載される。更に実験用の車両には、運転席に着座する乗員の上記複数の身体部位が受ける輻射の量を検出できるセンサ、および、当該乗員の上記複数の身体部位の近傍における空気の温度を検出できるセンサが、搭載される。
【0072】
そして、例えば、図13の黒丸点に示すように、外気温度-20℃、日射量0W/mの真冬、外気温度10℃、日射量500W/mの中間期、外気温度30℃、日射量1000W/mの夏期等の、23種類の実験環境において、実験が行われる。具体的には、各実験環境において、実験用の車両に搭載された上述の赤外線カメラおよびセンサから、所定時間(例えば1時間)、繰り返し(例えば定期的に1秒周期で)、検出信号を取得する。検出信号を取得する1回のタイミングで、1セットの教師データが取得される。
【0073】
そして、学習モデル作成装置は、このような実験によって得られた複数セットの教師データを用いて、誤差逆伝播法等により、学習済みモデル61、62の学習を行う。この学習の結果、学習済みモデル61、62に相当するニューラルネットワークの重み等が決定される。その際、学習済みモデル61を作成する場合は、これら教師データの各々について、当該教師データ中の吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報を説明変数とし、当該教師データ中の輻射情報を目的変数の正解データとする。また、学習済みモデル62を作成する場合は、これら教師データの各々について、当該教師データ中の吹出風情報、車内環境情報、および車外環境情報を説明変数とし、当該教師データ中の空気温度情報を目的変数の正解データとする。
【0074】
図14に、所定の条件下において、エアコンECU40が輻射情報用の学習済みモデル61によって算出した輻射情報を示す。図15に、同じ所定の条件下において、エアコンECU40が空気温度情報用の学習済みモデル62によって算出した空気温度情報を示す。所定の条件としては、吹出口モードがバイレベルモードで、外気温が30℃で、日射量が500W/mで、日射が車両の直上から来ているという条件である。
【0075】
図14に示すように、乗員6の全身12箇所の身体部位が受ける輻射の量として算出された値は、現実の値との差の絶対値が、20分間に亘って、20W/m2以下である。また、図15に示すように、乗員6の全身16箇所の身体部位の近傍の空気の温度として算出された値は、現実の値との差の絶対値が、20分間に亘って、3℃以下である。このように、学習済みモデル61、62とも、算出値と実際の値との誤差すなわち推定誤差が十分小さい。
【0076】
以上説明した通り、エアコンECU40は、部材温度情報に基づいて、車室内の乗員6の複数の身体部位の輻射情報および乗員6の複数の身体部位の空気温度情報を算出する。上述の通り、乗員の複数の身体部位は、受ける輻射の量が互いに大きく異なる場合がある。発明者の検討によれば、その理由は2つある。1つは、車室の異なる位置に露出して異なる温度となる複数の部材が存在することである。もう1つは、複数の身体部位は、それら複数の部材のどれから主に輻射を受けるかが、まちまちだということである。
【0077】
したがって、車両の車室に露出する複数の部材の温度が反映された部材温度情報に基づいてこれら複数の輻射情報が算出されることで、このような車室特有の事情に合わせて、適切な情報に基づいた複数の輻射情報の算出が実現される。
【0078】
また、乗員6の複数の身体部位は、近傍の温度が互いに大きく異なる場合がある。発明者の検討によれば、その理由は2つある。1つは、車室の異なる位置に露出して異なる温度となる複数の部材が存在することである。もう1つは、複数の身体部位は、それら複数の部材のどれから主に熱的影響を受けるかが、まちまちだということである。
【0079】
したがって、車室に露出する複数の部材の温度が反映された部材温度情報に基づいてこれら複数の空気温度情報が算出されることで、車室特有の事情に合わせて、適切な情報に基づいた複数の空気温度情報の算出が実現される。
【0080】
また、サーモグラフィは、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36の各々の温度分布を表す画素群を含む。1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群をサーモグラフィが含んでいる場合、各部材の代表温度を取得する場合とは違い、各部材の温度分布も反映して複数の輻射情報を算出することができる。したがって、複数の輻射情報の算出精度が向上する。そして、各部材の温度分布を取得するセンサとしては、サーモグラフィを生成できる赤外線カメラ21が好適である。
【0081】
また、サーモグラフィは日射の向きの情報を含んでいる。このようにすることで、サーモグラフィから、日射の向きという、車室内への輻射の不均一の大きな要因となり得る情報を取得することができる。
【0082】
また、サーモグラフィは、天井36の温度を表す画素群と、リアガラス35の温度を表す画素群と、運転席側サイドガラス33の温度を表す画素群と、助手席側サイドガラス34の温度を表す画素群と、を含む。このようにすることで、サーモグラフィから、乗員を囲む大きな部材の温度を反映した情報を取得することができる。
【0083】
また、エアコンECU40は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデル61、62によって、部材温度情報を含む説明変数から、複数の輻射情報および複数の空気温度情報を含む目的変数を算出する。サーモグラフィを利用して複数の輻射情報および複数の空気温度情報を算出する場合には、算出の基礎となる情報の量が膨大になる。そのような場合、算出に学習済みモデルを用いることで、算出のためのアルゴリズムの開発負担が大幅に軽減される。
【0084】
また、エアコンECU40は、部材温度情報と吹出風情報とに基づいて、複数の空気温度情報を算出する。空調装置10から車室内に吹き出される風に関する情報である吹出風情報は、そもそも車室内の空気の温度を調整するものだから、乗員の複数の身体部位の近傍における空気の温度に強く影響を及ぼす。したがって、複数の空気温度情報を算出する基礎として吹出風情報も利用することで、複数の空気温度情報をより正確に算出することができる。
【0085】
なお、本実施形態において、エアコンECU40が、図6のステップ110を実行することで取得部に対応し、ステップ120、130を実行することで算出部に対応し、ステップ140を実行することで出力部に対応する。
【0086】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。また、本発明は、上記実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち明らかに矛盾する組み合わせを除く任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。

本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0087】
(変形例1)
上記実施形態では、複数の身体部位の輻射情報、複数の身体部位の空気温度情報を算出する対象は、運転席の乗員6のみである。しかし、複数の身体部位の輻射情報、複数の身体部位の空気温度情報を算出する対象として、助手席の乗員が含まれてもよいし、後席4の乗員が含まれてもよい。複数の身体部位の輻射情報、複数の身体部位の空気温度情報を算出する対象は、運転席以外の車両2の座席の乗員のみであってもよい。
【0088】
(変形例2)
上記実施形態では、サーモグラフィは、車室に露出する複数の部材31~36の温度が反映された部材温度情報のうち、リアガラス温度以外の情報を含んでいる。しかし、サーモグラフィは、リアガラス温度情報を含んでいてもよい。例えば、赤外線カメラ21の撮影範囲がフロントガラスも含んでいれば、それが実現される。そのような撮影範囲を実現できる赤外線カメラ21の位置としては、車室内の天井の前後方向中央部がある。
【0089】
(変形例3)
上記実施形態では、学習済みモデル61、62に入力される説明変数としてサーモグラフィが含まれている。しかし、学習済みモデル61、62に入力される説明変数にサーモグラフィが含まれなくてもよい。その場合、学習済みモデル61、62に入力される説明変数に、サイドガラス温度、リアガラス温度、ドアトリム温度、天井温度を含めるためには、対応する部材のセンサから出力される検出信号に基づく温度を説明変数としてもよい。ここで、対応する部材のセンサは、具体的には、運転席側ドアトリム31、助手席側ドアトリム32、運転席側サイドガラス33、助手席側サイドガラス34、リアガラス35、天井36の各々に設けられた、当該部材の温度を検出する温度センサ(例えば熱電対)である。なおこの場合、学習済みモデル61、62は、学習の時点で、当該検出信号に基づく温度が教師データとして使用される。
【0090】
(変形例4)
上記実施形態において、エアコンECU40は、空調制御処理40Bにおいてフェイス吹出口100から吹き出される空気の風向を調整することができる。しかし、エアコンECU40は、フェイス吹出口100から吹き出される空気の風向を調整できなくてもよい。その場合、学習済みモデル61、62の学習時も使用時も、風向情報としては、所定のデフォルト値が入力される。このデフォルト値は、通常の使用環境で実現する可能性が最も高いとしてあらかじめ決められた値である。
【0091】
(変形例5)
上記実施形態では、学習済みモデル61、62に入力される吹出風温度は、フェイス温度センサ25、フット温度センサ26、デフロスタ温度センサ27の検出信号に基づく温度であった。しかし、フェイス温度センサ25、フット温度センサ26、デフロスタ温度センサ27は、必ずしも空調装置10に備えられていなくてもよい。空調装置10がそれらセンサ25、26、27を備えていない場合、エアコンECU40は、フェイス吹出口100、フット吹出口101、デフロスタ吹出口102から吹き出される空気の温度を推定してもよい。そして、それら推定値を吹出風温度として学習済みモデル61、62に入力してもよい。
【0092】
具体的には、エアコンECU40は、エバポレータ温度、エアミックス比率、エンジン水温の3つの量の最新値に基づいて、吹出口100、101、102のうち現在の吹出口モードによれば開いている吹出口100、101、102の空気の温度を推定する。ここで、エバポレータ温度は、エバポレータ14のすぐ下流に配置された温度センサによって検出される。また、エンジン水温は、ヒータコア15内のエンジン水温の配管に設けられた温度センサによって検出される。
【0093】
あるいは、空調装置10がセンサ25、26、27を備えていない場合、学習済みモデル61、62に入力される説明変数のうち、吹出風温度をエバポレータ温度、エアミックス比率、エンジン水温に置き換えられてもよい。
【0094】
(変形例6)
輻射情報、空気温度情報の算出対象となる複数の身体部位は、上記実施形態に記載されたようなものに限られない。複数の身体部位の数は、上記実施形態における数よりも多くても少なくてもよい。
【0095】
(変形例7)
上記実施形態では、輻射・温度算出処理40Aで算出された輻射情報、空気温度情報が空調制御処理40Bで風向を決定するために用いられている。しかし、輻射・温度算出処理40Aで算出された輻射情報、空気温度情報は、空調制御処理40Bで用いられず、単にエアコンECU40のフラッシュメモリに記録されるだけでもよい。その場合でも、情報収集用途の役には立つ。
【0096】
(変形例8)
上記実施形態では、エアコンECU40は、図6のステップ140で、複数の身体部位の輻射情報および複数の人体の空気温度情報を、RAMまたはフラッシュメモリに出力している。しかし、複数の身体部位の輻射情報および複数の人体の空気温度情報の出力先は、RAM、フラッシュメモリ以外のものでもよい。例えば、出力先は、車室内の他の装置であってもよいし、車両2の外部のサーバであってもよい。
【0097】
(変形例9)
上記実施形態では、エアコンECU40は、輻射・温度算出処理40Aにおいて、輻射情報を算出して空気温度情報を算出しないようになっていてもよい。あるいは、エアコンECU40は、輻射・温度算出処理40Aにおいて、空気温度情報を算出して輻射情報を算出しないようになっていてもよい。
【0098】
(変形例10)
上記実施形態では、輻射・温度算出処理40Aは、エアコンECU40によって実行されている。しかし、輻射・温度算出処理40Aは、エアコンECU40以外の装置で実行されてもよい。例えば、輻射・温度算出処理40Aは、エアコンECU40以外の車両2に搭載された車載装置で実行されてもよい。その場合、当該車載装置が、輻射情報算出装置および温度情報算出装置に対応する。また例えば、輻射・温度算出処理40Aは、車両2の外部のサーバで実行されてもよい。その場合、当該サーバが、輻射情報算出装置および温度情報算出装置に対応する。
【0099】
(変形例11)
サーモグラフィは、インストルメントパネルも撮影範囲に含まれていてもよい。その場合、説明変数には、インストルメントパネルの温度の情報も含まれる。
【0100】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、輻射情報算出装置は、部材温度情報に基づいて、車室内の乗員の複数の身体部位にそれぞれ対応して対応先の身体部位が受ける輻射の量を表す複数の輻射情報を算出する。
【0101】
また、第2の観点によれば、前記取得部は、赤外線カメラによって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、前記サーモグラフィは、前記複数の部材のうち1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群を含む。
【0102】
1つ以上の部材の各々の温度分布を表す画素群をサーモグラフィが含んでいる場合、各部材の代表温度を取得する場合とは違い、各部材の温度分布も反映して複数の輻射情報を算出することができる。したがって、複数の輻射情報の算出精度が向上する。そして、各部材の温度分布を取得するセンサとしては、サーモグラフィを生成できる赤外線カメラが好適である。
【0103】
また、第3の観点によれば、前記取得部は、赤外線カメラによって生成された車室内のサーモグラフィを取得し、前記サーモグラフィは日射の向きの情報を含んでいる。このようにすることで、サーモグラフィから、日射の向きという、車室内への輻射の不均一の大きな要因となり得る情報を取得することができる。
【0104】
また、第4の観点によれば、前記取得部は、赤外線カメラによって生成された車室内のサーモグラフィを、前記部材温度情報の一部を含む画像として取得し、前記サーモグラフィは、前記車両の車室の天井の温度を表す画素群と、前記車両のリアガラスの温度を表す画素群と、前記車両のサイドガラスの温度を表す画素群と、を含む。このようにすることで、サーモグラフィから、リアガラス、サイドガラス、天井という、乗員を囲む大きな部材の温度を反映した情報を取得することができる。
【0105】
また、第5の観点によれば、前記算出部は、教師あり学習によって学習されたニューラルネットワークの学習済みモデルによって、前記部材温度情報を含む説明変数から、前記複数の輻射情報を含む目的変数を算出する。
【0106】
サーモグラフィを利用して複数の輻射情報を算出する場合には、算出の基礎となる情報の量が膨大になる。そのような場合、算出に学習済みモデルを用いることで、算出のためのアルゴリズムの開発負担が大幅に軽減される。
【0107】
また、第6の観点によれば、温度情報算出装置は、部材温度情報に基づいて、車室内の乗員の複数の身体部位にそれぞれ対応して対応先の身体部位の近傍における空気の温度を表す複数の空気温度情報を算出する。
【0108】
また、第7の観点によれば、前記取得部は、前記車両に搭載された空調装置から車室内に吹き出される風の温度、風量、吹出口の位置、風向のうち1つ以上を含む吹出風情報を取得し、前記算出部は、前記取得部が取得した前記部材温度情報と前記吹出風情報とに基づいて、前記複数の空気温度情報を算出する。
【0109】
空調装置から車室内に吹き出される風に関する情報である吹出風情報は、そもそも車室内の空気の温度を調整するものだから、乗員の複数の身体部位の近傍における空気の温度に強く影響を及ぼす。したがって、複数の空気温度情報を算出する基礎として吹出風情報も利用することで、複数の空気温度情報をより正確に算出することができる。
【符号の説明】
【0110】
2 車両
6 乗員
40 エアコンECU
図1
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