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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20240611BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20240611BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240611BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240611BHJP
   B60L 50/51 20190101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K5/24 A
H02K5/04
H02K11/33
H02K7/116
B60L50/51
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019075219
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020174468
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】三木 孝広
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098646(WO,A1)
【文献】特開2012-240477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
H02K 5/04
H02K 11/33
H02K 7/116
B60L 50/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータから出力される回転運動を減速させる減速機構と、
外部から入力される電力を変換して前記モータへ供給する電力変換器と、
前記モータ、前記減速機構、および前記電力変換器を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記モータを収容する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの開口を覆うとともに、前記第1ハウジングとの間に位置する前記電力変換器を保持する第2ハウジングと、
を有し、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングに固定される周縁部と、
前記周縁部の内側に広がる底部と、
を有し、
前記底部は、前記電力変換器の上面を覆う主板部を有し、
前記主板部は、互いに角度の異なる第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面を接続する境界面と、を含み、
前記境界面は、上下方向に対して垂直に広がる面であり、
前記第1面および前記第2面は、前記境界面から遠ざかる方向へ高さが徐々に低下するように傾斜して形成され、
前記第1面、前記境界面、および前記第2面が、所定方向に隣接し、
前記第1面の前記所定方向の長さと、前記第2面の前記所定方向の長さと、前記境界面の前記所定方向の長さとが、互いに異なる、駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置であって、
前記電力変換器と電気的に接続された電気部品をさらに備え、
前記底部は、前記電気部品を覆う副板部と、
を有する、駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動装置であって、
前記第1面および前記第2面は、前記主板部の外表面に位置する、駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置であって、
前記主板部は、冷却媒体が通る流路を有し、
前記流路は、前記第1面と前記第2面との境界に沿って延びる、駆動装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の駆動装置であって、
前記第1面と前記第2面との境界は、前記モータの回転軸と平行に延びる、駆動装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記底部は、外表面に設けられた段差部を含む、駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動装置であって、
前記段差部は、前記主板部と前記副板部との境界に位置する、駆動装置。
【請求項8】
請求項4に記載の駆動装置であって、
前記底部は、外表面に設けられた凹部を含む、駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載の駆動装置であって、
前記凹部は、前記副板部の外表面に位置する、駆動装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の駆動装置であって、
前記凹部は曲面を含む、駆動装置。
【請求項11】
請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記流路と前記凹部とが同一直線上に配置される、駆動装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記底部の厚みが不均一である、駆動装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは鋳造品である、駆動装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記減速機構を収容する第3ハウジング
をさらに備える、駆動装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記モータの駆動を補助する補機をさらに備え、
前記補機は、前記電力変換器から電力が供給されることにより駆動する、駆動装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記電力変換器は、直流を交流に変換するインバータを有する、駆動装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の駆動装置であって、
車両に搭載され、前記車両の走行用の駆動力を出力する駆動装置。
【請求項18】
モータと、
前記モータから出力される回転運動を減速させる減速機構と、
外部から入力される電力を変換して前記モータへ供給する電力変換器と、
前記モータ、前記減速機構、および前記電力変換器を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記モータを収容する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの開口を覆うとともに、前記第1ハウジングとの間に位置する前記電力変換器を保持する第2ハウジングと、
を有し、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングに固定される周縁部と、
前記周縁部の内側に広がる底部と、
を有し、
前記底部は、前記電力変換器の上面を覆う主板部を有し、
前記主板部は、互いに角度の異なる第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面を接続する境界面と、を含み、
前記境界面は、上下方向に対して垂直に広がる面であり、
前記第1面および前記第2面は、前記境界面から遠ざかる方向へ高さが徐々に低下するように傾斜して形成され、
前記主板部は、冷却媒体が通る流路を有し、
前記流路は、前記第1面と前記第2面との境界に沿って延びる、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両には、モータを動力源とする駆動装置が搭載される。従来の駆動装置については、例えば、特開2001-119898号公報に記載されている。当該公報の駆動装置は、モータを収容する駆動装置ケース(10)と、インバータ、平滑用コンデンサ、および制御装置を収容するインバータケース(46)と、を有する。インバータケース(46)は、駆動装置ケース(10)の頂壁に固定される。また、インバータケース(46)は、筒状のフレーム(47)と、フレーム(47)の上に配設されたカバー(48)とから成る(段落0027,図1等参照)。なお、括弧で囲んだ数字は、上記公報における符号である。
【0003】
【文献】特開2001-119898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2001-119898号公報の構造では、インバータ、平滑用コンデンサ、および制御装置を保持するフレーム(47)とは別に、フレーム(47)を覆うカバー(48)が必要となる。このため、駆動装置の小型化が難しいという問題がある。駆動装置をより小型化するためには、インバータ、平滑用コンデンサ、および制御装置を保持するフレーム(47)の機能と、ケースの上面を覆うカバー(48)の機能とを、単一の部材で実現することが考えられる。
【0005】
ただし、フレームの機能とカバーの機能とを単一の部材で構成する場合、カバーの機能を果たす扁平な部材により、インバータ、平滑用コンデンサ、および制御装置が保持される。駆動装置の使用時に、この扁平な部材が振動すると、インバータ、平滑用コンデンサ、および制御装置にも振動が及ぶとともに、騒音の原因ともなる。
【0006】
本発明の目的は、駆動装置において、電力変換器を保持する部材の振動を抑制できる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
モータと、前記モータから出力される回転運動を減速させる減速機構と、外部から入力される電力を変換して前記モータへ供給する電力変換器と、前記モータ、前記減速機構、および前記電力変換器を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記モータを収容する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの開口を覆うとともに、前記第1ハウジングとの間に位置する前記電力変換器を保持する第2ハウジングと、を有し、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに固定される周縁部と、前記周縁部の内側に広がる底部と、を有し、前記底部は、前記電力変換器の上面を覆う主板部を有し、前記主板部は、互いに角度の異なる第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面を接続する境界面と、を含み、前記第1面および前記第2面は、前記境界面から遠ざかる方向へ高さが徐々に低下するように傾斜して形成されている
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2ハウジングの底部の振動を抑制できる。これにより、駆動装置の使用時の騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、駆動装置の斜視図である。
図2図2は、駆動装置の前面図である。
図3図3は、駆動装置の上面図である。
図4図4は、駆動装置の右側面図である。
図5図5は、駆動装置の左側面図である。
図6図6は、第2ハウジングの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、駆動装置1が車両に搭載された状態における「上下方向」、「前後方向」、および「左右方向」を使用して、各部の形状および位置関係を説明する。「左右方向」は車両の幅方向に相当し、車両の前方を向いた状態を基準に左右を説明する。ただし、車両に対する駆動装置1の搭載姿勢は、必ずしもこの実施形態に限定されない。
【0011】
<1.駆動装置の構成>
図1は、一実施形態に係る駆動装置1の斜視図である。図2は、駆動装置1の前面図である。図3は、駆動装置1の上面図である。図4は、駆動装置1の右側面図である。図5は、駆動装置1の左側面図である。この駆動装置1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両に搭載され、車両の走行用の駆動力を出力する装置(トラクションモータ)である。
【0012】
図1図5に示すように、本実施形態の駆動装置1は、モータ10、減速機構20、オイルポンプ30、電力変換器40、電気部品50、およびハウジング60を備える。
【0013】
モータ10は、左右方向に延びる回転軸Aを中心とする回転運動を発生させる装置である。モータ10は、ステータとロータとを有する。ステータは、ハウジング60に、直接または他の部材を介して固定される。ロータは、ステータに対して回転可能に支持される。ステータは、回転軸Aを中心として円環状に配列された複数のコイルを有する。ロータは、回転軸Aを中心として円環状に配列された複数のマグネットを有する。電力変換器40からコイルに駆動電流が供給されると、コイルとマグネットとの間に生じる回転磁界の作用により、ロータが、回転軸Aを中心として回転する。
【0014】
減速機構20は、モータ10から出力される回転運動を減速させる装置である。本実施形態では、モータ10の左側に、減速機構20が配置されている。減速機構20は、互いに噛み合う複数のギアにより、回転運動を伝達しつつ減速させる。減速機構20には、例えば、1つの太陽歯車と、その周囲に配置される複数の遊星歯車とを有する、遊星歯車機構が用いられる。ただし、減速機構20は、遊星歯車機構以外の機構であってもよい。減速機構20から出力される減速後の回転運動は、直接または他の動力伝達機構を介して、車両の車輪に伝達される。なお、他の動力伝達機構としては、例えば、左右の車輪に対し速度差をつけて回転運動を伝達する差動機構がある。
【0015】
オイルポンプ30は、モータ10および減速機構20にオイルを供給するための装置である。すなわち、オイルポンプ30は、モータ10の駆動を補助する補機の一例である。オイルポンプ30は、例えば、モータ10または減速機構20の下側に配置される。オイルポンプ30は、電力変換器40から電力が供給されることにより駆動する。オイルポンプ30が駆動すると、モータ10および減速機構20の各部にオイルが供給される。これにより、モータ10および減速機構20の各部品間の潤滑が行われるとともに、各部品の冷却が行われる。
【0016】
電力変換器40は、外部から入力される電力を変換して、モータ10およびオイルポンプ30へ、変換後の電力を供給する装置である。本実施形態では、電力変換器40は、モータ10の後側かつ上側に配置される。図6は、後述する第2ハウジング62の縦断面図である。図6中に二点鎖線で示したように、電力変換器40は、回路基板41、コンデンサ42、およびIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)43を有する。回路基板41、コンデンサ42、およびIGBT43は、いずれも板状であり、上下方向に積層配置される。コンデンサ42は、回路基板41の上側に位置する。IGBT43は、コンデンサ42のさらに上側に位置する。
【0017】
コンデンサ42およびIGBT43は、回路基板41に形成された電気回路と、電気的に接続されている。そして、回路基板41上の電気回路、コンデンサ42、およびIGBT43により、電力を直流から交流に変換するインバータが構成されている。電力変換器40は、外部から電気部品50を介して入力される電力を、当該インバータにより、直流から交流に変換する。そして、変換により得られる駆動電流を、モータ10およびオイルポンプ30へ供給する。
【0018】
電気部品50は、外部電源の入力端子51と、電力変換器40との間を電気的に接続する部品である。電気部品50には、例えば、バスバーやスイッチング回路が含まれる。本実施形態では、電気部品50は、電力変換器40に対して左側に配置されている。外部電源から入力端子51へ入力される電力は、電気部品50を介して、電力変換器40へ供給される。
【0019】
ハウジング60は、上述したモータ10、減速機構20、オイルポンプ30、電力変換器40、および電気部品50を内部に収容する筐体である。図1図5に示すように、本実施形態のハウジング60は、第1ハウジング61、第2ハウジング62、および第3ハウジング63を有する。第1ハウジング61、第2ハウジング62、および第3ハウジング63は、溶融した金属を金型に流し込んで硬化させることにより得られる鋳造品である。第1ハウジング61、第2ハウジング62、および第3ハウジング63を構成する金属には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。
【0020】
第1ハウジング61は、モータ10を収容する筐体である。第1ハウジング61は、上面の後部に開口を有する。第2ハウジング62は、第1ハウジング61の当該開口を覆う。また、第2ハウジング62は、第1ハウジング61との間に位置する電力変換器40を保持する。具体的には、図6に示すように、第2ハウジング62の下面に、ヒートシンク44を介して、電力変換器40が固定されている。また、電気部品50も、第2ハウジング62の下面に固定される。第3ハウジング63は、減速機構20を収容する筐体である。第3ハウジング63は、第1ハウジング61の左側の側面に固定される。
【0021】
<2.第2ハウジングの詳細>
続いて、第2ハウジング62の詳細な構造について、説明する。
【0022】
図1図5に示すように、第2ハウジング62は、周縁部70と頂底部80とを有する。周縁部70は、第2ハウジング62の周縁に沿う環状の部分である。周縁部70は、複数の締結孔71を有する。各締結孔71は、周縁部70を上下方向に貫通する。また、第1ハウジング61は、各締結孔71の下側にねじ孔を有する。駆動装置1の製造時には、締結孔71を介して、第1ハウジング61のねじ孔に、ボルト(図示省略)が締結される。これにより、第1ハウジング61に対して第2ハウジング62が固定される。
【0023】
頂底部80は、周縁部70の内側に広がる部分である。電力変換器40の上面は、頂底部80により覆われる。頂底部80は、左右方向および前後方向に、概ね板状に広がる。ただし、仮に、頂底部80が完全に平坦な薄板状であった場合、頂底部80が振動し、それにより騒音が発生する。このため、本実施形態の第2ハウジング62は、非平坦な振動抑制構造を有する。これにより、車両の走行時における頂底部80の振動が抑制される。その結果、駆動装置1の騒音を低減できる。
【0024】
第2ハウジング62の頂底部80は、主板部81と副板部82とを有する。副板部82は、主板部81の左側に位置する。主板部81は、電力変換器40の上側に位置する。すなわち、主板部81は、電力変換器40の上部を覆う。副板部82は、電気部品50の上側に位置する。すなわち、副板部82は、電気部品50の上部を覆う。
【0025】
主板部81の外表面である上面は、第1面811、第2面812、および境界面813を含む。境界面813は、主板部81の前後方向の中央付近において、左右方向に帯状に延びる。境界面813は、上下方向に対して垂直に広がる。第1面811は、境界面813よりも前側に位置する。第1面811は、境界面813から前側へ向かうにつれて、その高さが徐々に低下する傾斜面である。第2面812は、境界面813よりも後側に位置する。第2面812は、境界面813から後側へ向かうにつれて、その高さが徐々に低下する傾斜面である。
【0026】
本実施形態の振動抑制構造は、このように、互いに角度の異なる第1面811、第2面812,および境界面813を含む。これらの各面811,812,813は、振動の伝播の向きが異なる。このため、主板部81の外表面が、このような互いに角度の異なる複数の面を含むことで、主板部81の共振が抑制される。これにより、頂底部80の振動が抑制され、振動に伴う騒音も低減される。
【0027】
なお、境界面813は省略されていてもよい。すなわち、第1面811と第2面812とが、他の面を介することなく前後方向に隣接していてもよい。また、第1面811と第2面812とは、左右方向に隣接していてもよい。また、第1面811および第2面812のいずれか一方が、上下方向に対して垂直に広がる面であってもよい。また、主板部81の上面に、第1面811、第2面812、および境界面813の他に、振動抑制構造として機能する他の面が設けられていてもよい。すなわち、振動抑制構造としての主板部81の上面は、少なくとも、互いに角度の異なる2つの面を含んでいればよい。
【0028】
特に、本実施形態では、第1面811、第2面812、および境界面813の大きさが、互いに異なる。具体的には、第1面811の前後方向の長さと、第2面812の前後方向の長さと、境界面813の前後方向の長さとが、互いに異なる。このため、これらの各面811,812,813は、固有振動数が相違する。このように、各面811,812,813の寸法を相違させることで、これらの各面811,812,813の共振を、より抑制できる。したがって、頂底部80の振動および騒音を、より低減できる。
【0029】
また、図3に示すように、第2面812の後側縁部の一部は、締結孔71を避けるように、前方に向かって円弧状に窪む円弧部812aを有する。さらに、第1面811の右側縁部の一部は、締結孔71を避けるように、左方に向かって円弧状に窪む円弧部811aを有する。またさらに、第1面811の左側縁部の一部は、締結孔71を避けるように、右方に向かって円弧状に窪む円弧部811bを有する。このように、第1面811および第2面812においても、前後方向の長さが異なる部分、或いは左右方向の長さが異なる部分がある。すなわち、第1面811の単体および第2面812の単体においても、固有振動数が相違する部位がある。このように、各面811,812の単体においても寸法を相違させることで、これらの各面811,812の単体における共振を、より抑制できる。したがって、頂底部80の振動および騒音を、より低減できる。なお、外側に張り出す突出部ではなく円弧状に窪む円弧部811a,811b,812aとしたことにより、第2ハウジング62の大型化が抑制される。ひいては、駆動装置1の大型化が抑制される。
【0030】
図3中に破線で示したように、主板部81は、冷却媒体が通る流路814を有する。冷却媒体には、例えば、水が使用される。流路814は、往路814aと復路814bとを有する。往路814aの上流側の端部は、主板部81の右側面に開口する。往路814aは、境界面813の下方において、当該開口から主板部81の左端部まで、左向きに延びる。復路814bは、往路814aよりも上側に位置し、主板部81の左端部から、右向きに延びる。復路814bの下流側の端部は、主板部81の右側面に開口する。
【0031】
このように、流路814は、互いに角度の異なる第1面811と第2面812との境界に沿って延びる。このようにすれば、第1面811と第2面812との境界付近のスペースを、流路814として有効に利用できる。本実施形態では、第1面811と第2面812との境界は、モータ10の回転軸Aと平行に延びる。したがって、流路814も、モータ10の回転軸Aと平行に延びる。
【0032】
駆動装置1の使用時には、流路814に冷却媒体が導入される。これにより、電力変換器40において発生する熱が、ヒートシンク44を介して、流路814内の冷却媒体に吸収される。その結果、電力変換器40の過度な温度上昇が抑制される。特に、本実施形態では、電力変換器40の中で最も高温となるIGBT43の上側に近接した位置に、流路814が配置されている。このため、IGBT43の熱を、流路814内の冷却媒体へ、効率よく吸収させることができる。
【0033】
また、頂底部80の外表面は、主板部81と副板部82との境界に、段差部83を有する。本実施形態では、主板部81の上面よりも副板部82の上面の方が、下側に位置する。段差部83は、主板部81の上面の左端部と副板部82の上面の右端部との間で、上下方向に広がる段差面を有する。
【0034】
本実施形態の振動抑制構造は、このような段差部83を含む。段差部83を設ければ、段差部83の一方側から他方側への振動の伝播が抑制される。したがって、主板部81の振動が副板部82へ伝播することが、抑制される。また、副板部82の振動が主板部81へ伝播することも、抑制される。これにより、頂底部80の振動が抑制され、振動に伴う騒音も低減される。
【0035】
また、本実施形態では、副板部82の外表面である上面に、凹部821が設けられている。凹部821は、副板部82の上面から下側へ向けて凹む。また、凹部821は、副板部82の上面の右端部から左端部まで、左右方向に延びる。本実施形態の振動抑制構造は、このような凹部821を含む。このため、頂底部80において振動が伝播する際に、凹部821の位置において、振動の伝播の向きが変わる。これにより、頂底部80の振動が、より抑制される。したがって、振動に伴う騒音も、より低減される。
【0036】
特に、本実施形態の凹部821は、凹状の曲面により構成されている。具体的には、凹部821は、左右方向に見たときに円弧状となる曲面により、構成されている。曲面は、平面よりも振動を減衰させやすい。したがって、本実施形態の凹部821は、平面の組み合わせにより構成される凹部よりも、振動をより減衰させることができる。したがって、頂底部80の振動および騒音を、より低減できる。
【0037】
また、図3に示すように、本実施形態の凹部821は、上述した流路814と同じ前後方向の位置において、左右方向に延びる。すなわち、凹部821と流路814とは、同一直線上に配置される。このため、第2ハウジング62の製造工程において、流路814を切削により形成する際に、凹部821内の空間を利用して、切削用のバイトを移動させることができる。したがって、主板部81に、左右方向に延びる流路814を、容易に形成することができる。
【0038】
また、図6に示すように、第2ハウジング62の頂底部80は、貫通孔815を有する。貫通孔815は、第1面811の前側の位置において、主板部81を上下方向に貫通する。駆動装置1の製造時には、第1ハウジング61に第2ハウジング62を固定した後、電力変換器40の電気的な接続作業を、貫通孔815を介して行う。そして、接続作業の完了後に、貫通孔815の上部をプレート90で塞ぐ。
【0039】
プレート90は、主板部81に対して、ボルトの締結により固定される。このため、主板部81のうち、貫通孔815の周囲の部分は、他の部分より上下方向の厚みが厚い。また、主板部81のうち、流路814の周囲の部分も、他の部分より上下方向の厚みが厚い。すなわち、主板部81は、薄肉部と厚肉部とを有する。このように、頂底部80の上下方向の厚みを不均一にすれば、薄肉部と厚肉部とで、固有振動数を相違させることができる。したがって、頂底部80の共振を、より抑制できる。その結果、頂底部80の振動が抑制され、振動による騒音も低減される。
【0040】
また、図3に示すように、第2ハウジング62の周縁部70には、複数の締結孔71が、不均一な間隔で設けられている。すなわち、第1ハウジング61に対する第2ハウジング62の固定のためのボルトは、第2ハウジング62の周縁部70に、不均一な間隔で並ぶ。このようにすれば、周縁部70の隣り合う締結孔71の間の部分の固有振動数を、相違させることができる。したがって、第2ハウジング62の共振を、より抑制できる。その結果、第2ハウジング62の振動および騒音を、より低減できる。
【0041】
第2ハウジング62のうち、凹部821の下側の部分は、上下方向の厚みが特に薄い。しかしながら、本実施形態では、凹部821の前側に近接した位置と、凹部821の後側に近接した位置とに、一対の締結孔71が設けられている。すなわち、一対のボルトによる締結位置の間に、凹部821が位置する。これにより、凹部821付近の振動を抑制できる。
【0042】
以上のように、本実施形態の第2ハウジング62は、種々の振動抑制構造を有する。このため、第2ハウジング62は、第1ハウジング61の開口を塞ぐ扁平な形状であるにも拘わらず、車両の走行時における振動が抑制される。また、第2ハウジング62は、第1ハウジング61の開口を塞ぐカバーとしての機能と、電力変換器40を保持する機能と、の双方の機能を有する。したがって、これらの機能を果たすために複数の部材を用意する場合よりも、駆動装置1を小型化しやすい。
【0043】
<3.変形例>
以上、一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0044】
例えば、上記の実施形態では、流路814が、往路814aと復路814bとを有し、流路814の上流側の端部と下流側の端部とが、いずれも、主板部81の右側面に位置していた。しかしながら、流路814は、往路814aのみを有していてもよい。その場合、流路814の下流側の端部は、主板部81の左側面に位置していてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、電力変換器40が、直流を交流に変換するインバータを含んでいた。しかしながら、電力変換器40は、交流を周波数の異なる交流に変換するインバータを含んでいてもよい。また、電力変換器40は、インバータに代えて、直流を電圧の異なる直流に変換するDC-DCコンバータを含んでいてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態の駆動装置1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の車両に搭載されるものであった。しかしながら、同等の構造を有する駆動装置1を、二輪車や電車等の他の種類の車両に搭載してもよい。また、同等の構造を有する駆動装置1を、ドローンや飛行機等の飛行装置に搭載してもよい。すなわち、駆動装置1は、振動を伴う移動体に搭載されるものであればよい。
【0047】
また、各部品の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願は、駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 駆動装置
10 モータ
20 減速機構
30 オイルポンプ
40 電力変換器
41 回路基板
42 コンデンサ
43 IGBT
44 ヒートシンク
50 電気部品
51 入力端子
60 ハウジング
61 第1ハウジング
62 第2ハウジング
63 第3ハウジング
70 周縁部
71 締結孔
80 頂底部
81 主板部
82 副板部
83 段差部
90 プレート
811 第1面
812 第2面
813 境界面
814 流路
814a 往路
814b 復路
815 貫通孔
821 凹部
A 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6