(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】炊飯設備の自動管理システム
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A47J27/14 K
(21)【出願番号】P 2019174523
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】植野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 茂
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-277743(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105373003(CN,A)
【文献】特開2004-113686(JP,A)
【文献】特開平10-169990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
F24C 1/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯設備の自動管理システムであって、
前記炊飯設備で行われる炊飯米の生産工程において測定乃至入力された原料データ、環境データ、加工データ、及び炊飯結果データを取得する工程データ取得部と、
前記工程データ取得部が取得したデータを関連付けた炊飯データを記憶する炊飯データ記憶部と、
炊飯設備から、これから炊飯する原料米の原料データ、前記炊飯設備の設置された環境の環境データ、及び目標とする炊飯結果データを含む加工データ要求を受信する要求受信部と、
前記加工データ要求と、前記炊飯データ記憶部に記憶された炊飯データとに基づいて、
前記加工データ要求に含まれる原料データ及び環境データが示す状況において、前記加工データ要求に含まれる炊飯結果データに適合する炊飯米を炊飯するための加工データを解析する解析部と、
前記解析部による解析結果を加工データ応答として前記炊飯設備へと送信する応答送信部と、
作業者が操作する端末と、
を備え、
前記端末の操作に基づいて、
前記要求受信部は、炊飯設備から、既に炊飯された原料米の原料データ、前記炊飯設備の設置された環境の環境データ、炊飯結果データ、及び前記炊飯結果データの調整内容を含む炊飯結果調整データを含む加工データ調整要求を受信し、
前記加工データ調整要求と、前記炊飯データ記憶部に記憶された炊飯データとに基づいて、前記加工データ調整要求に含まれる炊飯結果の調整内容を実現する前記加工データの調整量を解析する調整解析部を更に備え、
前記応答送信部は、前記調整解析部による解析結果を加工データ調整応答として前記炊飯設備へと送信する、ものであり、
目標とする炊飯結果が得られなかった場合に、作業者が前記端末を操作することで、当該目標とする炊飯結果を得るために必要な加工データの調整を要求することを可能と
し、
前記炊飯データ記憶部に記憶された炊飯データの集合に、前記工程データ取得部が取得したデータが含まれ得るか否かを判定し、含まれ得ないと判定した場合に前記炊飯設備に異常があると検出する異常検出部を更に備えたことを特徴とする炊飯設備の自動管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯設備の自動管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯工場では、荷受けした米を貯米し、その後、複数の工程を経て炊飯米が生産される(例えば、特許文献1~3等)。
図7は、炊飯工場におけるご飯の生産工程400のフローを示している。
荷受け工程402では、作業者が手動で原料米の品質を検査する。原料米の検査では、整粒歩合、水分、水浸割れ、食味値等が測定され、原料米に異常がないかを確認する。異常がない原料米は、貯米され(貯米工程404)、洗米(洗米工程406)、浸漬(浸漬工程408)された後に、炊飯(炊飯工程410)、蒸らし(蒸らし工程412)されて炊飯米となる。
【0003】
洗米工程406以降の工程では、外気温度等を参考にして作業者が手動で水温や浸漬時間、加熱パターン等を調整し、データを測定しながら各工程が実行される。また、炊飯米が炊きあがると、作業者は炊きあがり後の炊飯米から硬さ、粘り、歩留り、味、色等を測定する品質検査が行われる。品質検査の結果として得られた各測定値のデータは、作業者がまとめて管理し、以降の作業に活用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4088968号公報
【文献】特許第6326874号公報
【文献】特許第6056390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原料米の切替時期や季節の移り変わる時期は、原料米の品質が大きく変化する。そのため、この様な時期においては、作業者は荷受け工程402における原料米の品質検査を注意して行っている。しかしながら、それ以外の時期においては比較的原料米の品質は安定しているため、作業者によるデータ取りは簡素なものになりがちである。そして、この様な時期に生産した製品である炊飯米に異常があった場合、簡素なデータしか記録されていないため、製品異常の原因を特定するために改めて疑わしき項目を調査していく必要が生じる。
【0006】
また、製品の改善をしようとしても、作業者の熟練度によっては解決できない可能性もある。製品の問題点には、機械が正常な状態で運用されていない可能性もあり、あまりメンテナンスを行っていない設備では早期に発覚することが難しい。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、熟練していない作業者であっても容易に原料に係るデータや加工に係るデータを管理し、運用することを可能とするシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の問題を解決するために、炊飯米の生産の各工程において設置したセンサや測定器の情報(原料データ、加工データ、炊飯結果データ)を取得して管理するシステムを提供する。本発明の一態様によるシステムは、原料米の品質検査時、加工条件の設定時、炊飯米の品質検査時に得られたデータを蓄積し、蓄積したデータを解析して得られた結果に基づいて、製品品質が安定するように各工程の設定値を自動で調整する。
【0009】
本発明の他の態様によれば、炊飯時に取得されたデータの異常に基づいて炊飯設備の異常を自動的に検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓄積されたデータに基づいて、作業者が目標とする食味値や硬さ、粘りなどの炊飯結果を実現するために設定するべき加水量や加熱パターン、加水温度を容易に取得できるため、求められる炊飯米の品質へと容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の自動管理システムが管理する炊飯設備の例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による自動管理システムの概略的なハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による自動管理システムの機能を示すブロック図である。
【
図4】炊飯データ記憶部に記憶される炊飯データの例を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による自動管理システムの機能を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による自動管理システムの機能を示すブロック図である。
【
図7】炊飯米の生産工程について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に添付図面を参照して本発明による炊飯設備の自動管理システムの実施例を詳細に説明する。
図1は本発明における自動管理システム1が管理する炊飯設備4の概略的な構成図を例示する。本発明の実施の形態において炊飯設備4は、炊飯釜5を洗浄する洗浄装置10と、洗米済みの原料米を供給する供給装置20、浸漬水を吸水させる浸漬部を備えた浸漬装置30と、前記浸漬装置30で浸漬水を吸水した米粒を水切りした後、炊飯釜5に配米するとともに炊飯水を加水する配米・加水装置40と、前記炊飯釜5に食油や調味料を投入し撹拌する調味料投入・撹拌装置50と、前記炊飯釜5に具材を投入する具材投入位置60と、前記炊飯釜5に蓋を被せる蓋被せ装置70と、前記炊飯釜5を加熱し炊飯する炊飯部及び炊飯後の炊飯釜5を搬送しながら蒸らしを行う蒸らし部を有する炊飯・蒸らし装置80と、蒸らし後の米飯に酢を散布可能な酢散布装置90と、炊飯釜5を反転させて米飯を取り出し、該取り出した米飯をほぐす反転・ほぐし装置100を備える。
【0013】
炊飯設備4は、炊飯設備4を構成する各装置と有線又は無線の通信路で接続された端末6を備える。端末6は、パソコン等のコンピュータであって良い。端末6は、通信線を介して炊飯設備4を構成する各装置から該装置の動作状態を取得して図示しない表示部に表示することができる。また、端末6は、通信線を介して炊飯設備4を構成する各装置に対して制御指令を送ることができる。端末6には、炊飯設備4の型番や、炊飯設備4を構成する各装置の型番、炊飯設備4の所有者の識別情報、炊飯設備4の設置位置、炊飯設備4で炊飯米の生産工程の作業者の識別情報等を予め記憶しておいても良い。端末6は、炊飯設備4をメンテナンスした際に、メンテナンスした装置の型番やメンテナンス内容(交換部品等)を含むメンテナンス情報を入力して記憶できるようにしても良い。端末6は、必要に応じて有線又は無線の通信路を介して、後述する管理コンピュータとの間で要求及び応答のやり取りできるように構成されていても良い。
【0014】
炊飯設備4では、炊飯米の生産工程を実行するに際して、炊飯釜5はコンベア9や図示しないリフト、ロボット等の運搬装置により各装置間を移送され所定の位置に載置される。炊飯設備4は、貯米庫に貯米されている原料米が供給装置20から原料米が供給されると、浸漬装置30において洗米工程406及び浸漬工程408が、炊飯・蒸らし装置80において炊飯工程410及び蒸らし工程412が実行される。炊飯設備4では、少なくとも配米・加水装置40、炊飯・蒸らし装置80に対して米の炊飯時に係る加工データを設定することができる。加工データは、例えば加水量、加水温度、浸水時間、加熱時間、加熱温度等が例示される。加工データは、作業者が手動で設定するように構成しても良いし、例えば炊飯設備4を構成する各装置を有線又は無線の通信路を介して管理コンピュータと接続し、管理コンピュータから自動的に加工データを設定できるように構成しても良い。また、加工データは、作業者が手動で管理コンピュータに対して入力できるように構成しても良いし、例えば炊飯設備4を構成する各装置を有線又は無線の通信路を介して管理コンピュータと接続し、管理コンピュータに対して自動的に加工データを送信できるように構成しても良い。
【0015】
炊飯設備4では、貯米庫に設置された原料米測定器22により貯米庫に貯米される原料米の白度や水分量、質量等を含む原料データが測定される。原料データには、供給装置20に設定された又は端末6から設定された原料米の品種情報を含んで良い。また、炊飯設備4では、蒸らし工程412が完了した後に、反転・ほぐし装置100に設置された炊飯米測定器102により、食味値、硬さ、粘り値、焦げ量、質量等の炊飯結果データが測定される。更に、炊飯設備4では、炊飯設備4の近傍に設置された環境測定器8により、原料米の炊飯を行う環境の温度や湿度、気圧、日時等の環境データが測定される。これら測定器で測定されたデータは、作業者が手動で管理コンピュータに対して入力するようにしても良いし、例えば炊飯設備4を構成する各装置を有線又は無線の通信路を介して管理コンピュータと接続し、管理コンピュータに対して自動的に測定結果のデータを送信できるように構成しても良い。
【0016】
図2は、第1実施形態による炊飯設備の自動管理システムの概略的なハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態による自動管理システム1は、少なくとも1つの炊飯設備4と、管理コンピュータ110とから構成される。
【0017】
本実施形態による炊飯設備4は、有線又は無線の通信路2を介して管理コンピュータ110と接続されている。管理コンピュータ110は、通信路2を介して各炊飯設備4において測定された原料データ、加工データ、炊飯結果データ、環境データを取得して記憶することができる。また、管理コンピュータ110は、取得乃至記憶したデータに基づいて所定の演算処理を行うことで炊飯設備4を制御するための加工データを算出し、通信路2を介して算出した加工データを各炊飯設備4に設定することができる。
【0018】
管理コンピュータ110は、上述のデータ取得処理や炊飯設備4の制御処理を行うCPU等のプロセッサ112、制御処理工程を規定するプログラムや炊飯設備4から取得したデータを少なくとも一時的に記憶するメモリ114を含む。管理コンピュータ110は、パソコン等のコンピュータや、ホストコンピュータ等のサーバであってもよい。
【0019】
プロセッサ112は、システム・プログラムに従って管理コンピュータ110の各構成要素を制御する。メモリ114は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Randam Access Memory)、フラッシュメモリー、磁気記憶装置等で構成され、予めシステム・プログラム等を記憶しておく他、入力部116b、通信部118等を介して外部から取得したデータや、各種プログラム等を記憶する。
【0020】
表示部116aは、プロセッサ112による制御に基づいて、メモリ114に記憶されたデータやプログラムを表示する。表示部116aは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにより構成して良い。入力部116bは、キーボードやポインティングデバイス等から構成され、ユーザによる操作に基づく指示やデータ等を受け取る。通信部118は、プロセッサ112による制御に基づいて、通信路2を介して炊飯設備4との間で通信を行い、データ等のやり取りを行う。
【0021】
図3は、本実施形態による自動管理システム1を構成する管理コンピュータ110が備える機能をブロック図で示したものである。
図3に示す、工程データ取得部120,炊飯データ記憶部122,要求受信部124、解析部126、応答送信部128の各ブロックは、管理コンピュータ110が備える機能をブロックとして示したものである。これら各機能は、管理コンピュータ110が備えたプロセッサ112が、メモリ114、表示部116a、入力部116b、通信部118の各構成を制御することで実現される。
【0022】
管理コンピュータ110が備える工程データ取得部120は、各炊飯設備4において炊飯米の生産工程が行われた際に、通信路2を介して炊飯された原料米の原料データ、炊飯時の環境データ、加工データ、炊飯した炊飯米の炊飯結果データを取得して、取得した各データを関連付けた炊飯データとして炊飯データ記憶部122に記憶する。工程データ取得部120は、少なくとも1つの炊飯米の生産工程において取得されるデータを、他の生産工程において取得されたデータと識別可能な炊飯データとして炊飯データ記憶部122に記憶する。工程データ取得部120は、原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データに加えて、炊飯設備の生産工程が実行された時刻、炊飯設備4の型番、炊飯設備4を構成する各装置の型番、炊飯設備4の所有者の識別情報、炊飯設備4の設置位置、炊飯設備4で炊飯米の生産工程の作業者の識別情報等の情報を取得し、各データと関連付けて炊飯データ記憶部122に記憶するようにしても良い。
【0023】
管理コンピュータ110が備える炊飯データ記憶部122は、例えばメモリ114上に設けられたデータベースとして構築される。
図4は、炊飯データ記憶部122に記憶されるデータの例である。炊飯データ記憶部122は、工程データ取得部が取得したデータを検索可能な状態で記憶する。炊飯データ記憶部122は、解析部126からの要求に応じてデータを検索して出力する。
【0024】
管理コンピュータ110が備える要求受信部124は、通信路2を介して各炊飯設備4からの加工データに係る要求を受信する。炊飯設備4からの加工データ要求には、少なくとも原料データ、環境データ、及び目標とする炊飯結果データを含む。なお、炊飯設備4からの加工データ要求には、原料データ、環境データ、炊飯結果データに含み得るすべてのデータ項目を必ずしも含む必要は無い。要求受信部124が受信した加工データ要求は、解析部126へと出力される。
【0025】
管理コンピュータ110が備える解析部126は、要求受信部124から入力された加工データ要求、及び炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データに基づいて、加工データ要求に含まれる原料データ及び環境データのデータ項目が示す状況で、加工データ要求に含まれる炊飯結果データのデータ項目に適合する炊飯米が得られる加工データを解析する。解析部126は、最も単純に実装するのであれば、加工データ要求をキーとして炊飯データ記憶部122に記憶される炊飯データに対して類似データ検索処理を実行し、最も類似する炊飯データに含まれる加工データを解析結果として出力するようにしても良い。この時、解析部126は、加工データ要求に含まれるデータ項目をベクトルと見たて、炊飯データ記憶部122に記憶されている各炊飯データについて同じデータ項目をベクトルとした場合の、両者の距離が最も小さい炊飯データを、加工要求に類似する炊飯データであると判断すれば良い。この時、各データ項目の重要度に応じた重み係数を設定するようにしても良い。
【0026】
解析部126は、最も類似する炊飯データに含まれる加工データを解析結果として出力する以外にも、例えば、予め定めた閾値内の距離に入る複数の炊飯データを検索し、これら検索された複数の炊飯データに含まれる加工データの平均値や中央値等の統計値を解析結果として出力するように構成しても良い。この場合、検索された複数の炊飯データに含まれる加工データに対して公知の外れ値検定を行い、極端に異なる加工データについては統計値の算出対象から外すようにしても良い。また、加工データのデータ項目を軸としたN次空間を定義し、該N次空間に検索された複数の炊飯データに含まれる加工データをプロットした場合の密度分布を算出した上で、密度の高い位置のデータ項目の値を解析結果として出力するようにしても良い。密度の高い山が複数ある場合には、それぞれの山の位置のデータ項目の値を、複数の加工データの候補として出力するようにしても良い。この時、密度の高さに応じて、複数の加工データに対して順位を付与するようにしても良い。
【0027】
解析部126は、機械学習の手法により加工データ要求に含まれる炊飯結果データのデータ項目に適合する炊飯米が得られる加工データを解析するように構成しても良い。この場合、解析部126は、予め炊飯データ記憶部122に記憶されているデータを用いて推定モデルを生成しておき、生成した推定モデルを用いて、加工データ要求に含まれる原料データ及び環境データのデータ項目が示す状況で、加工データ要求に含まれる炊飯結果データのデータ項目に適合する炊飯米が得られる加工データを解析する。例えば、ニューラルネットワークを推定モデルとして用いる場合には、予め炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データの、原料データ、環境データ、炊飯結果データのデータ項目を入力とし、加工データを出力とした学習処理を行いニューラルネットワークの推定モデルを生成する。そして、生成したモデルに対して、加工データ要求に含まれる原料データ、環境データ、炊飯結果データを入力することで、出力としての加工データを解析結果として得る。機械学習の手法は、例えばニューラルネットワーク、多変量解析、サポートベクタマシン等の様々な公知のアルゴリズムを用いるようにしても良い。
【0028】
管理コンピュータ110が備える応答送信部128は、通信路2を介して、加工データ要求に対する応答である加工データ応答を炊飯設備4へ送信する。応答送信部128は、解析部126が解析した結果を加工データ応答として炊飯設備4へ送信する。加工データ応答には、1又は複数の加工データが含まれ得る。
【0029】
上記構成を備えた自動管理システム1を用いた炊飯米の生産工程について説明する。炊飯米の生産工程の作業者は、炊飯設備4を用いて生産工程を始める際に、炊飯設備4が備えた端末6を操作して、原料データ、環境データ、及び目標とする炊飯結果データを含む加工データ要求を作成する。原料データ、環境データについては、原料米測定器22及び環境測定器8で測定されたデータを用い、また、原料米の品種情報や、目標とする炊飯結果データについては、作業者が必要に応じて端末6に入力すれば良い。このようにして作成された加工データ要求を、管理コンピュータ110に対して送信する。管理コンピュータ110は、受信した加工データ要求と、炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データを用いた解析を行い、解析結果として1又は複数の加工データを含む加工データ応答を炊飯設備4に対して送信する。加工データ応答に1つの加工データが含まれている場合には、自動で、又は端末6に表示した上で作業者の指示により炊飯設備4を構成する各装置に対して該加工データが設定され、炊飯米の生産工程が開始される。また、加工データ応答に複数の加工データが含まれている場合には、該複数の加工データは端末6に表示され、作業者が選択した加工データが炊飯設備4を構成する各装置に対して設定され、炊飯米の生産工程が開始される。
【0030】
本実施形態による炊飯設備の自動管理システム1によれば、管理下に有る炊飯設備4で行われた炊飯米の生産工程において取得可能なデータを管理コンピュータ110で自動的に取得して管理することが可能となる。また、炊飯に用いる原料米のデータと環境のデータを測定し、目標とする炊飯結果を指定することで、過去に行われてきた炊飯の結果を解析してより適切な加工データを取得することができる。そのため、熟練していない作業者であっても容易に原料に係るデータや加工に係るデータ等を管理する事が可能となり、これらデータを利用して容易に炊飯設備4を利用した炊飯米の生産工程を行うことが可能となる。
【0031】
図5は、第2実施形態による自動管理システム1を構成する管理コンピュータ110が備える機能をブロック図で示したものである。
図5に示す、工程データ取得部120、炊飯データ記憶部122、要求受信部124、解析部126、応答送信部128、調整量解析部130の各ブロックは、管理コンピュータ110が備える機能をブロックとして示したものである。これら各機能は、管理コンピュータ110が備えたプロセッサ112が、メモリ114、表示部116a、入力部116b、通信部118の各構成を制御することで実現される。
【0032】
管理コンピュータ110が備える工程データ取得部120、炊飯データ記憶部122、解析部126については、第1実施形態による管理コンピュータ110の各機能と同様の機能を備える。
【0033】
本実施形態による管理コンピュータ110が備える要求受信部124は、通信路2を介して各炊飯設備4からの加工データ要求、及び加工データ調整要求を受信する。要求受信部124は、加工データ要求を受信すると、受信した加工データ要求を解析部126へ出力する。一方で、加工データ調整要求には、少なくとも原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データ、及び炊飯結果調整データを含む。炊飯結果調整データは、調整したい炊飯結果データのデータ項目と調整方向及び調整量とを含む。なお、炊飯設備4からの加工データ要求には、原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データ、炊飯結果調整データに含み得るすべてのデータ項目を必ずしも含む必要は無い。要求受信部124は、加工データ調整要求を受信すると、受信した加工データ調整要求を調整量解析部130へ出力する。
【0034】
管理コンピュータ110が備える調整量解析部130は、要求受信部124から入力された加工データ調整要求、及び炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データに基づいて、加工データ調整要求に含まれる原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データのデータ項目が示す状況で、加工データ調整要求に含まれる炊飯結果調整データが示す炊飯結果データの調整を実現する加工データの各データ項目の調整量を解析する。
【0035】
調整量解析部130の解析処理の例としては、炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データから加工データの調整を行っているデータを抽出し、その加工データの調整結果としての炊飯結果データの変化が、炊飯結果調整データと類似するものを検索する方法が考えられる。この方法を取る場合、最初に炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データを、同一の作業者、同一の炊飯設備、同一の原料データでまとめた上で、炊飯日時順でソートする。次に、ソートされた炊飯データの前後で加工データに対して調整(変更)がある炊飯データの組を抽出する。そして、抽出した炊飯データの組における炊飯結果データのデータ項目の変化が、炊飯結果調整データが示す炊飯結果データの調整と類似するものを検索する。そして、検索された炊飯結果データの組において、加工データ調整要求に含まれる原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データに最も類似する炊飯結果データの組で行われている加工データの各データ項目の調整量を解析結果として出力する。
【0036】
調整量解析部130は、炊飯結果調整データが示す炊飯結果データの調整と最も類似する炊飯データの組から解析結果として出力する以外にも、例えば、予め定めた閾値内の距離に入る複数の炊飯データの組を検索し、これら検索された複数の炊飯データの組における加工データの各データ項目の調整量の平均値や中央値等の統計値を解析結果として出力するように構成しても良い。この場合、検索された複数の炊飯データの組における加工データの調整量に対して公知の外れ値検定を行い、極端に異なる加工データの調整をしている炊飯データの組については統計値の算出対象から外すようにしても良い。また、加工データのデータ項目を軸としたN次空間を定義し、該N次空間に検索された複数の炊飯データの組に含まれる加工データの調整量をプロットした場合の密度分布を算出した上で、密度の高い位置における加工データの調整量の値を解析結果として出力するようにしても良い。密度の高い山が複数ある場合には、それぞれの山の位置の加工データの調整量の値を、複数の加工データの調整量の候補として出力するようにしても良い。この時、密度の高さに応じて、複数の加工データの調整量に対して順位を付与するようにしても良い。
【0037】
調整量解析部130は、機械学習の手法により加工データ調整要求に含まれる炊飯結果調整データに適合する加工データの調整量を解析するように構成しても良い。この場合、調整量解析部130は、予め炊飯データ記憶部122に記憶されているデータを用いて推定モデルを生成しておき、生成した推定モデルを用いて、加工データ調整要求に含まれる原料データ、環境データ、炊飯結果データのデータ項目が示す状況で、加工データ調整要求に含まれる炊飯結果調整データに適合する加工データの調整量を解析する。例えば、ニューラルネットワークを推定モデルとして用いる場合には、予め炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データを、同一の作業者、同一の炊飯設備、同一の原料データでまとめた上で、炊飯日時順でソートする。次に、ソートされた炊飯データの前後で加工データに対して調整(変更)がある炊飯データの組を抽出する。そして、抽出した炊飯データの組における、時間的に前の炊飯データに含まれる原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データ、及び炊飯データの組における炊飯結果データのデータ項目の変化を入力とし、炊飯データの組における加工データの調整量を出力とした学習処理を行いニューラルネットワークの推定モデルを生成する。そして、生成したモデルに対して、加工データ調整要求に含まれる原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データ、及び炊飯結果調整データを入力することで、出力としての加工データの調整量を解析結果として得る。機械学習の手法は、例えばニューラルネットワーク、多変量解析、サポートベクタマシン等の様々な公知のアルゴリズムを用いるようにしても良い。
【0038】
本実施形態による管理コンピュータ110が備える応答送信部128は、通信路2を介して、加工データ要求に対する応答である加工データ応答を炊飯設備4へ送信する。また、応答送信部128は、通信路2を介して、加工データ調整要求に対する応答である加工データ調整応答を炊飯設備4に送信する。応答送信部128は、解析部126が解析した結果を加工データ応答として、また、調整量解析部130が解析した結果を加工データ調整応答として炊飯設備4へ送信する。加工データ応答には、1又は複数の加工データが含まれ得る。また、加工データ調整応答には、1又は複数の加工データの調整量が含まれ得る。
【0039】
上記構成を備えた自動管理システム1を用いた炊飯米の生産工程について説明する。炊飯米の生産工程の作業者は、炊飯設備4を用いて生産工程を始める際に、炊飯設備4が備えた端末6を操作して、原料データ、環境データ、及び目標とする炊飯結果データを含む加工データ要求を作成する。原料データ、環境データについては、原料米測定器22及び環境測定器8で測定されたデータを用い、また、原料米の品種情報や、目標とする炊飯結果データについては、作業者が必要に応じて端末6に入力すれば良い。このようにして作成された加工データ要求を、管理コンピュータ110に対して送信する。管理コンピュータ110は、受信した加工データ要求と、炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データを用いた解析を行い、解析結果として1又は複数の加工データを含む加工データ応答を炊飯設備4に対して送信する。加工データ応答に1つの加工データが含まれている場合には、自動で、又は端末6に表示した上で作業者の指示により炊飯設備4を構成する各装置に対して該加工データが設定され、炊飯米の生産工程が開始される。また、加工データ応答に複数の加工データが含まれている場合には、該複数の加工データは端末6に表示され、作業者が選択した加工データが炊飯設備4を構成する各装置に対して設定され、炊飯米の生産工程が開始される。
【0040】
ここで、炊飯米の生産工程が行われた結果、何らかの要因により目標としていた炊飯結果が得られないことがある。例えば、同一品種であっても、新米であったり古米であったりする場合、新米と古米がブレンドされている場合、また、保管状態が良かった場合と悪かった場合などには、測定された原料米の原料データに基づいて解析したとしても、目標とする炊飯結果が得られない場合もある。その様な場合に、作業者は、炊飯設備4が備えた端末6を操作して、目標とする炊飯結果が得られなかった際の原料データ、環境データ、加工データ、及び炊飯結果データと、該炊飯結果データをどのように調整するのかを示す炊飯結果調整データを含む加工データ調整要求を作成する。このようにして作成された加工データ調整要求を、管理コンピュータ110に対して送信する。管理コンピュータ110は、受信した加工データ調整要求と、炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データを用いた解析を行い、解析結果として1又は複数の加工データの調整量を含む加工データ調整応答を炊飯設備4に対して送信する。加工データ調整応答に1つの加工データが含まれている場合には、自動で、又は端末6に表示した上で作業者の指示により炊飯設備4を構成する各装置に対して加工データの調整が行われ、炊飯米の生産工程が再開される。また、加工データ応答に複数の加工データの調整量が含まれている場合には、該複数の加工データの調整量が端末6に表示され、作業者が選択した加工データの調整量に基づいて炊飯設備4を構成する各装置の加工データが調整され、炊飯米の生産工程が再開される。
【0041】
本実施形態による炊飯設備の自動管理システム1によれば、管理下に有る炊飯設備4で行われた炊飯米の生産工程において、目標とする炊飯結果が得られなかった場合に、目標とする炊飯結果を得るために必要な加工データの調整を過去に行われてきた炊飯の結果を解析して取得することができる。そのため、熟練していない作業者であっても容易に炊飯設備4を利用した炊飯米の生産工程を行うことが可能となる。
【0042】
図6は、第3実施形態による自動管理システム1を構成する管理コンピュータ110が備える機能をブロック図で示したものである。
図6に示す、工程データ取得部120、炊飯データ記憶部122、要求受信部124、解析部126、応答送信部128、異常検出部132の各ブロックは、管理コンピュータ110が備える機能をブロックとして示したものである。これら各機能は、管理コンピュータ110が備えたプロセッサ112が、メモリ114、表示部116a、入力部116b、通信部118の各構成を制御することで実現される。
【0043】
管理コンピュータ110が備える炊飯データ記憶部122、要求受信部124、解析部126については、第1実施形態による管理コンピュータ110の各機能と同様の機能を備える。
【0044】
本実施形態による管理コンピュータ110が備える工程データ取得部120は、各炊飯設備4において炊飯米の生産工程が行われた際に、通信路2を介して炊飯された原料米の原料データ、炊飯時の環境データ、加工データ、炊飯した炊飯米の炊飯結果データを取得して、取得した各データを異常検出部132へ出力する。
【0045】
管理コンピュータ110が備える異常検出部132は、工程データ取得部120から入力された原料データ、環境データ、加工データ、炊飯結果データと、炊飯データ記憶部122に記憶された炊飯データとに基づいて、炊飯設備4に異常が発生していない否かを検出する。異常検出部132は、例えば、炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データに含まれる原料データ、環境データの集合に対して、工程データ取得部120から入力された原料データ、環境データが含まれ得るか否かを判定する。工程データ取得部120から入力された原料データ、環境データが集合に含まれる場合は、原料米測定器22や環境測定器8に異常が発生していないと判定し、含まれない場合は原料米測定器22や環境測定器8に異常が発生していると判定する。この判定は、例えば公知の外れ値検定やクラスタ分析により行うことができる。異常検出部132は、炊飯設備4に異常が発生していると判定した場合には、その旨を異常が発生していると判定した原因となる原料データ、環境データと共に応答送信部128に対して通知する。
【0046】
また、異常検出部132は、例えば、工程データ取得部120から入力された原料データ、環境データ、加工データをキーとして炊飯データ記憶部122に記憶されている炊飯データから類似する(データ間の距離が予め定めた所定の閾値内の)原料データ、環境データ、加工データを含む複数の炊飯データを検索する。そして、検索された複数の炊飯データに含まれる炊飯結果データの集合に対して、工程データ取得部120から入力された炊飯結果データが含まれ得るか否かを判定する。工程データ取得部120から入力された炊飯結果データが集合に含まれる場合は炊飯設備4に異常が発生していないと判定し、含まれない場合は炊飯設備4に異常が発生していると判定する。この判定は、例えば公知の外れ値検定やクラスタ分析により行うことができる。異常検出部132は、炊飯設備4に異常が発生していないと判定した場合には、工程データ取得部120から入力されたデータを関連付けて炊飯データとして炊飯データ記憶部122に記憶する。また、異常検出部132は、炊飯設備4に異常が発生していると判定した場合には、その旨を異常が発生していると判定した原因となる炊飯結果データと共に応答送信部128に対して通知する。
【0047】
本実施形態による管理コンピュータ110が備える応答送信部128は、通信路2を介して、加工データ要求に対する応答である加工データ応答を炊飯設備4へ送信する。応答送信部128は、解析部126が解析した結果を加工データ応答として炊飯設備4へ送信する。加工データ応答には、1又は複数の加工データが含まれ得る。また、応答送信部128は、異常検出部132から炊飯設備4に異常が発生している旨の通知があった場合、異常が発生していると判定した原因となるデータを含む異常発生通知を炊飯設備4へ送信する。
【0048】
なお、本実施形態において説明した異常検出部132の機能は、第2実施形態による自動管理システムに対しても容易に導入可能である。
【0049】
上記構成を備えた自動管理システム1では、炊飯米の生産工程において正常に炊飯設備4が動作している限りは、炊飯データ記憶部122に対して炊飯データが蓄積されるとともに、作業者からの要求に応じてより適切な加工データが提供される。一方で、炊飯米の生産工程において炊飯設備4に異常が生じた場合、炊飯米の炊飯結果データに何らかの異常が生じる。そして、そのような炊飯結果データが管理コンピュータ110に送られると、管理コンピュータ110において炊飯結果データの異常が検出され、異常発生通知が炊飯設備4に送信される。異常発生通知を炊飯設備4が受信すると、端末6がアラートを通知し、異常であると検出されたデータを表示する。作業者は、異常であると検出されたデータを参照して、原料米測定器22や環境測定器8、炊飯設備4を構成する各装置のいずれに異常が発生したのかを判断して、メンテナンス対応をすることができる。
【0050】
本実施形態による炊飯設備の自動管理システム1によれば、管理下に有る炊飯設備4で行われた炊飯米の生産工程において、炊飯設備4に異常が発生した場合に、アラートの通知と共に異常が有ると判定したデータを確認することができる。そのため、熟練していない作業者であっても容易に炊飯設備4の異常を判断してメンテナンス作業を行うことができる。
【0051】
以上、ここまで本発明のいくつかの実施例を述べてきたが、本発明を実施する具体的手法は上述の実施例に制限されるものではない。本発明の実施が可能である限りにおいて適宜に設計や動作手順等の変更をなし得る。例えば、本発明に用いられる構成要素の機能発揮を補助する用に供する装置、回路等の補助的要素については、適宜に付加および省略可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 自動管理システム
2 通信路
4 炊飯設備
5 炊飯釜
6 端末
8 環境測定器
9 コンベア
10 洗浄装置
20 供給装置
22 原料米測定器
30 浸漬装置
40 配米・加水装置
50 調味料投入・撹拌装置
60 具材投入位置
70 蓋被せ装置
80 炊飯・蒸らし装置
90 酢散布装置
100 反転・ほぐし装置
102 炊飯米測定器
110 管理コンピュータ
112 プロセッサ
114 メモリ
116a 表示部
116b 入力部
118 通信部
120 工程データ取得部
122 炊飯データ記憶部
124 要求受信部
126 解析部
128 応答送信部
130 調整量解析部
132 異常検出部
400 生産工程
402 荷受け工程
404 貯米工程
406 洗米工程
408 浸漬工程
410 炊飯工程
412 蒸らし工程