IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許7500940印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム
<>
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図1
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図2
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図3
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図4
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図5
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図6
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図7
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図8
  • 特許-印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019176764
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053830
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】水澤 信忠
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0285821(US,A1)
【文献】国際公開第2017/217173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷領域において印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷媒体が載置されるベルトと、
前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する駆動部と、
テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドを指定する指定部と、
前記印刷媒体にテストパターンが印刷される場合の前記印刷媒体の位置を示す位置指示部と、
前記駆動部を制御する駆動制御部と、
前記印刷媒体に印刷された前記テストパターンを検出するパターン検出部と、
を備え
前記駆動制御部は、前記指定部により指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記駆動部を制御することにより、前記印刷媒体の位置を前記印刷領域とは異なる領域から前記印刷領域へと移動し、
前記駆動制御部は、前記パターン検出部の検出結果に基づいて、前記印刷ヘッドのアラ
イメントのずれを検出する、印刷装置。
【請求項2】
複数の前記印刷ヘッドを備え、
前記指定部は、前記印刷ヘッドのうち交換された交換ヘッドを、調整対象の前記印刷ヘッドとして指定する、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドは、画像印刷用の第1印刷媒体、および、前記テストパターンが印刷される前記印刷媒体であって前記第1印刷媒体とは異なる第2印刷媒体に対する印刷が可能であり、
前記駆動制御部は、前記印刷ヘッドにより前記第1印刷媒体に画像を印刷する場合、前記ベルトを第1方向に移動させて前記第1印刷媒体を搬送し、
前記テストパターンを印刷するために、前記指定部により指定された前記印刷ヘッドの位置まで前記第2印刷媒体を移動させる際に、前記第1方向とは異なる第2方向に前記ベルトを移動させる、請求項1またはに記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷媒体にテストパターンが印刷される場合の前記印刷媒体の位置を示す位置指示部を備え、
前記位置指示部により指示される位置は、前記第1方向において前記印刷ヘッドの下流である、請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第2印刷媒体は定型サイズのカット紙であり、前記第2印刷媒体に印刷された前記テストパターンを光学的に読み取ることにより前記印刷ヘッドのアライメントのずれを検出可能である、請求項3または4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体にテストパターンが印刷される場合の前記印刷媒体の位置を示す位置指示部と、長尺形状のベルト部材の両端を接合して無端形状に加工された前記ベルトと、を備え、
前記駆動制御部は、前記ベルトの接合部が、前記位置指示部により指示される位置から所定範囲に位置する場合に、前記印刷媒体が載置される前に前記ベルトを移動させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷ヘッドを搭載し、前記ベルトの移動方向と交差する方向に走査されるキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、基準位置から前記ベルトの表面までの距離を検出する距離検出部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記キャリッジの走査中における前記距離検出部の検出結果に基づき、前記ベルトの平面度が設定された条件を満たす領域を特定する、請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
印刷領域において印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、前記印刷媒体が載置されるベルトと、前記印刷媒体に印刷されたテストパターンを検出するパターン検出部と、を備え、前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する印刷装置の制御方法であって、
前記テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドが指定された場合に、指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記ベルトを移動させ、前記印刷媒体の位置を前記印刷領域とは異なる領域から前記印刷領域へと移動し、前記パターン検出部の検出結果に基づいて、前記印刷ヘッドのアライメントのずれを検出する、印刷装置の制御方法。
【請求項9】
印刷領域において印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、前記印刷媒体が載置されるベルトと、前記印刷媒体に印刷されたテストパターンを検出するパターン検出部と、を備え、前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する印刷装置を制御する制御部により実行される制御プログラムであって、
前記制御部により、
テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドが指定された場合に、指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記ベルトを移動させ、前記印刷媒体の位置を前記印刷領域とは異なる領域から前記印刷領域へと移動し、前記パターン検出部の検出結果に基づいて、前記印刷ヘッドのアライメントのずれを検出する、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置によりテストパターンを印刷することで、印刷ヘッドに関する調整を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ヘッドを走査させてインクを吐出し、媒体に画像を形成する画像形成装置により、テストパターンを形成させることで、走査方向におけるヘッドのアライメント調整を行う方法が開示されている。この方法では、媒体に形成されたテストパターンの線分を光学的に読み取ることにより、アライメント調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-199055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷ヘッドの調整を行う場合に、テストパターンを印刷するテスト用の媒体として、印刷装置が通常の印刷に使用する媒体と異なる媒体を用いることが考えられる。例えば、テスト用の媒体として、通常の印刷に使用される媒体よりもテストパターンの読み取りに適した媒体や、通常の印刷に使用される媒体よりも小さい媒体を用いることが考えられる。しかしながら、テスト用媒体が、印刷装置が通常の印刷に使用する媒体と異なる場合、テスト用媒体の位置を正確に合わせる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様は、印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、前記印刷媒体が載置されるベルトと、前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する駆動部と、テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドを指定する指定部と、前記印刷媒体にテストパターンが印刷される場合の前記印刷媒体の位置を示す位置指示部と、前記駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記指定部により指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記駆動部を制御することにより、前記印刷媒体の位置を調整する、印刷装置である。
印刷媒体の位置を、印刷ヘッドに対応する位置に調整できる。通常の印刷に使用する印刷媒体と、テストパターンの印刷に使用する印刷媒体とのサイズが一致していなくても、テストパターンを印刷できる。
【0006】
上記印刷装置において、前記印刷媒体に印刷された前記テストパターンを検出するパターン検出部を備え、前記駆動制御部は、前記パターン検出部の検出結果に基づいて、前記印刷ヘッドのアライメントのずれを検出する構成であってもよい。
テストパターンに基づきアライメントのずれを検出できる。
【0007】
上記印刷装置において、複数の前記印刷ヘッドを備え、前記指定部は、前記印刷ヘッドのうち交換された交換ヘッドを、調整対象の前記印刷ヘッドとして指定する構成であってもよい。
【0008】
上記印刷装置において、前記印刷ヘッドは、画像印刷用の第1印刷媒体、および、前記テストパターンが印刷される前記印刷媒体であって前記第1印刷媒体とは異なる第2印刷媒体に対する印刷が可能であり、前記駆動制御部は、前記印刷ヘッドにより前記第1印刷媒体に画像を印刷する場合、前記ベルトを第1方向に移動させて前記第1印刷媒体を搬送し、前記テストパターンを印刷するために、前記指定部により指定された前記印刷ヘッドの位置まで前記第2印刷媒体を移動させる際に、前記第1方向とは異なる第2方向に前記ベルトを移動させる構成であってもよい。
【0009】
上記印刷装置において、前記位置指示部により指示される位置は、前記第1方向において前記印刷ヘッドの下流であってもよい。
【0010】
上記印刷装置において、前記第2印刷媒体は定型サイズのカット紙であり、前記第2印刷媒体に印刷された前記テストパターンを光学的に読み取ることにより前記印刷ヘッドのアライメントのずれを検出可能であってもよい。
【0011】
上記印刷装置において、長尺形状のベルト部材の両端を接合して無端形状に加工された前記ベルトを備え、前記駆動制御部は、前記ベルトの接合部が、前記位置指示部により指示される位置から所定範囲に位置する場合に、前記印刷媒体が載置される前に前記ベルトを移動させる構成であってもよい。
【0012】
上記印刷装置において、前記印刷ヘッドを搭載し、前記ベルトの移動方向と交差する方向に走査されるキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、基準位置から前記ベルトの表面までの距離を検出する距離検出部と、を備え、前記駆動制御部は、前記キャリッジの走査中における前記距離検出部の検出結果に基づき、前記ベルトの平面度が設定された条件を満たす領域を特定する構成であってもよい。
【0013】
上記課題を解決する別の一態様は、印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、前記印刷媒体が載置されるベルトと、を備え、前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する印刷装置の制御方法であって、テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドが指定された場合に、指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記ベルトを移動させ、前記印刷媒体の位置を調整する、印刷装置の制御方法である。
【0014】
上記課題を解決するさらに別の一態様は、印刷媒体にインクを吐出する印刷ヘッドと、前記印刷媒体が載置されるベルトと、を備え、前記ベルトを移動させて前記印刷媒体を搬送する印刷装置を制御する制御部により実行される制御プログラムであって、前記制御部により、テストパターンを用いる調整対象の前記印刷ヘッドが指定された場合に、指定された調整対象の前記印刷ヘッドに対応して前記ベルトを移動させ、前記印刷媒体の位置を調整する、制御プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】プリンターの概略構成図。
図2】印刷ヘッドの構成の説明図。
図3】第1実施形態におけるプリンターの要部平面図。
図4】プリンターの斜視図。
図5】プリンターの機能的構成を示すブロック図。
図6】第1実施形態のプリンターの動作を示すフローチャート。
図7】第2実施形態におけるプリンターの要部平面図。
図8】第2実施形態のプリンターの動作を示すフローチャート。
図9】第2実施形態におけるディスプレイの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の印刷装置を適用した一例としてのプリンター1の概略構成図である。
図1、及び、後述する各図において、プリンター1の設置状態における前方を符号FRで示し、プリンター1の後方を符号RRで示す。また、プリンター1の右方を符号Rで示し、プリンター1の左方を符号Lで示し、プリンター1の上方を符号UPで示し、プリンター1の下方を符号DWで示す。
【0017】
プリンター1は、インクIKを吐出するインク吐出ユニット81を備え、印刷媒体WにインクIKを吐出して画像を形成するインクジェット式の印刷装置である。
プリンター1で使用される印刷媒体Wは、紙や合成樹脂製のシート等、各種の材料を用いることができ、例えば、普通紙、上質紙、及び光沢紙等のインクジェット記録用専用紙を利用できる。本実施形態では、印刷媒体Wとして、天然繊維や合成繊維等で構成された布帛を用いる構成を示す。プリンター1は、印刷媒体Wの印刷面にインクIKを付着させることで、印刷媒体Wの捺染を行う捺染印刷機として機能し、印刷媒体Wは被捺染材と呼ぶことができる。また、本実施形態では、印刷媒体Wのほか、プリンター1によってテスト用媒体51に印刷を行う。テスト用媒体51は、テストパターンの印刷に用いられる印刷媒体であり、例えば、インクIKの吸収および発色に優れた写真プリント用印刷用紙である。テスト用媒体51の幅および長さは印刷媒体Wよりも小さく、例えば、A3サイズのカット紙である。
【0018】
プリンター1は、印刷媒体Wを搬送する装置として、繰出装置2、従動ローラー10A、10B、10C、搬送ローラー3A、3B、搬送ベルト4、及び、巻取装置5を備える。これらの各部は後述する搬送機構140を構成する。
【0019】
繰出装置2は、ロール状に巻回された長尺の印刷媒体Wを搬送ベルト4に繰り出す装置である。繰出装置2は、印刷媒体Wの搬送方向Hにおいて最上流に位置する。繰出装置2は、回転軸2Aを図1において反時計回りに回転させ、回転軸2Aにセットされた印刷媒体Wを従動ローラー10A、10Bを介して搬送ベルト4に送る。
【0020】
搬送ローラー3A、3Bは、後述する搬送モーター141の動力によって搬送ベルト4を駆動する一対のローラーであり、少なくとも一方は駆動ローラーであって、他方は従動ローラーであってもよい。
搬送ベルト4は、ゴムや合成樹脂、或いはこれらと繊維の複合素材で構成される可撓性の矩形のシートを、端部を接合することにより無端形状に成型したベルトである。搬送ベルト4は、本発明のベルトの一例に対応する。搬送ベルト4は、搬送ローラー3A及び搬送ローラー3Bに掛け渡され、搬送ローラー3A、3Bの回転に伴ってプリンター1の前後方向に循環移動する。
プリンター1の前部において、繰出装置2によって繰り出された印刷媒体Wが搬送ベルト4に載置され、搬送ベルト4は、印刷媒体Wをプリンター1の後部に向けて、符号Hで示す搬送方向に搬送する。ここで、搬送ベルト4に印刷媒体Wが接触する位置を、載置開始位置I1とする。
【0021】
搬送ベルト4において、印刷媒体Wに接する当接面は、粘着性を有する。例えば、搬送ベルト4として、当接面に粘着層が形成されたグルーベルトを用いる場合、印刷媒体Wは粘着層の粘着力によって搬送ベルト4に保持され、搬送ベルト4とともに搬送方向Hに移動する。なお、搬送ベルト4はグルーベルトに限定されず、例えば、静電気により印刷媒体Wを吸着する静電吸着式のベルトを用いてもよい。
【0022】
後述するように、プリンター1は、搬送ローラー3A、3Bを逆方向に回転させることが可能である。この場合、搬送ベルト4は、印刷媒体Wを搬送方向Hに搬送する方向とは逆の方向に循環移動する。以下の説明において、印刷媒体Wを搬送方向Hに搬送する場合の搬送ベルト4の移動方向をベルト移動方向F1とする。また、ベルト移動方向F1の逆向きの搬送ベルト4の移動方向を、ベルト移動方向F2とする。ベルト移動方向F1は本発明の第1方向の一例に対応し、ベルト移動方向F2は第2方向の一例に対応する。
【0023】
プリンター1は、印刷媒体Wの移動経路に沿って、押付ローラー6、媒体センサー71、および、印刷ユニット8を備える。
押付ローラー6及び媒体センサー71は、搬送方向Hにおいて載置開始位置I1より下流に配置される。押付ローラー6は、図示しないバネ等の付勢機構により搬送ベルト4に向けて付勢され、印刷媒体Wを搬送ベルト4に押し付ける。これにより、印刷媒体Wは搬送ベルト4に強固に支持され、印刷媒体Wの浮き上がりが抑制される。印刷媒体Wに押付ローラー6のローラー痕が付かないように、押付ローラー6は印刷媒体Wの搬送に伴い回転自在である。
【0024】
媒体センサー71は、印刷媒体Wに向けて光を発する発光部、および、光を受光して検出する受光部を備える光センサーである。例えば、媒体センサー71は、受光部によって印刷媒体Wからの反射光を受光する反射型光センサーとして構成される。媒体センサー71の受光部が検出する光量に基づき、後述する制御部100は、媒体センサー71の直下における印刷媒体Wの有無を検出する。また、制御部100は、媒体センサー71の発光タイミングと受光タイミングとの差に基づき、媒体センサー71から印刷媒体Wの表面までの距離を検出してもよい。
【0025】
搬送方向Hにおいて媒体センサー71の下流には、印刷ユニット8が配置される。印刷ユニット8は、印刷媒体Wに画像を形成するインク吐出ユニット81と、インク吐出ユニット81を搭載するキャリッジ82と、キャリッジ82の印刷媒体Wに対する相対位置を調整するギャップ調整機構83と、を備える。また、キャリッジ82は、スキャンユニット72と、後述するベルトセンサー73とを有する。
【0026】
インク吐出ユニット81は、印刷媒体Wに向けて開口する複数のノズルを備え、ノズルからインクIKを印刷媒体Wに向けて噴射することにより、印刷媒体Wに画像を形成する。インクIKによって画像を形成する処理を、印刷と呼ぶ。また、インク吐出ユニット81においてノズルが開口する面をノズル面81Aと呼び、印刷媒体WにおいてインクIKが付着する面を印刷面と呼ぶ。
【0027】
インク吐出ユニット81にはインク供給路11が接続される。インク吐出ユニット81には、インク供給路11を経由して、図示しないインク貯留部からインクIKが供給される。インク吐出ユニット81の構成については図2を参照して後述する。
【0028】
キャリッジ82は、印刷媒体Wの上を、符号Kで示す走査方向に往復移動する。キャリッジ82の走査方向Kは搬送方向Hと交差する方向であり、本実施形態では、走査方向Kが搬送方向Hと直交する例を示す。
キャリッジ82の移動に伴い、インク吐出ユニット81が印刷媒体Wの上を走査方向Kに移動する。これにより、プリンター1は、走査方向K及び搬送方向Hに広がる範囲に画像を形成できる。
【0029】
ギャップ調整機構83は、キャリッジ82を上下方向に移動させることにより、印刷媒体Wとインク吐出ユニット81のノズル面81Aとの距離であるワークギャップWGを調整する。
【0030】
スキャンユニット72は、キャリッジ82に搭載され、印刷媒体Wに印刷された画像を光学的に読み取るスキャナーである。スキャンユニット72は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)スキャナーや、デジタルカメラで構成される。スキャンユニット72を、キャリッジ82とともに走査させることにより、印刷媒体Wに印刷された画像の全体をスキャンユニット72によって光学的に読み取ることができる。
【0031】
ベルトセンサー73は、スキャンユニット72とともにキャリッジ82に搭載される。ベルトセンサー73は、ベルトセンサー73からの距離を検出するセンサーであり、例えば、印刷媒体Wを載置していない搬送ベルト4とベルトセンサー73との間の距離を検出する。例えば、ベルトセンサー73には、搬送ベルト4に向けて赤外光を照射し、反射光を検出することによって測距を行う光学式TOF(Time Of Flight)センサーや、その他の測距センサー或いは近接センサーを用いることができる。ベルトセンサー73をキャリッジ82とともに走査方向Kに走査させることによって、走査方向Kに延びる範囲で、ベルトセンサー73と搬送ベルト4の粘着面との間の距離を測定できる。
【0032】
プリンター1は、印刷ユニット8を収容する外装15を有する。外装15は、印刷媒体Wの搬送方向Hの上方を覆う略箱形のケースである。本実施形態では、載置開始位置I1から印刷ユニット8までの範囲が外装15により覆われる。
【0033】
印刷ユニット8の下流において、印刷媒体Wは搬送ベルト4から引き剥がされ、従動ローラー10Cによってガイドされて、巻取装置5によって巻き取られる。印刷媒体Wが搬送ベルト4から離れる位置を、載置終了位置I2とする。
巻取装置5は、回転軸5Aを中心として図中反時計回りに回転することにより、回転軸5Aにセットされた巻取リールに、印刷媒体Wをロール状に巻き取る。
【0034】
従動ローラー10Cと巻取装置5との間には、乾燥ユニット9が配置される。乾燥ユニット9は、印刷媒体Wが巻取装置5に巻き取られる前に、印刷媒体Wに付着したインクIKを乾燥させる。例えば、乾燥ユニット9は、印刷媒体Wを収容するチャンバーと、チャンバーの内部に配置されたヒーターとを有し、印刷媒体Wを加熱して乾燥させる。乾燥ユニット9の位置は、搬送方向Hにおいてインク吐出ユニット81と巻取装置5との間であればよく、従動ローラー10Cの下流に限定されない。
【0035】
図2は、インク吐出ユニット81の構成を詳細に示す説明図である。図2には、インク吐出ユニット81をノズル面81Aから見た図、および、ノズル面81Aの拡大図を示す。
ノズル面81Aには、複数の印刷ヘッド90が、走査方向K、および、走査方向Kと直交する方向に並べて配置されている。
【0036】
印刷ヘッド90は、複数のチップ91を備える。図2の例では、印刷ヘッド90が、走査方向Kと直交する搬送方向Hに千鳥状に並ぶ4個のチップ91を有する。インク吐出ユニット81は、走査方向Kに8列、および、搬送方向Hに8列に並ぶ64個の印刷ヘッド90を有しており、256個のチップ91を備える。
【0037】
図2において下方の円内には、印刷ヘッド90の要部を拡大して示す。1個のチップ91は2列のノズル列92を有し、各々のノズル列92は、複数のノズル93が並んで構成され、各々のノズル93からインクIKが吐出される。1個のチップ91が有する2つのノズル列92は、それぞれ異なる色のインクIKに割り当てることができる。また、1個の印刷ヘッド90が有する8個のチップ91は、それぞれ同色のノズル列92を有する。従って、1個の印刷ヘッド90は2色のインクIKを吐出可能である。
【0038】
例えば、インク吐出ユニット81は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)のインクを吐出する構成とすることができる。また、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、オレンジ、グリーン、グレー、ライトグレー、ホワイト等のインクIKを吐出する構成であってもよく、メタリック色等のインクIKを吐出する構成であってもよい。また、印刷媒体WにおけるインクIKの浸透を促進する浸透液を、インク吐出ユニット81から吐出してもよい。インク吐出ユニット81が有するチップ91には、ノズル列92を単位として、吐出するインクIKの色が割り当てられ、インク吐出ユニット81により多色の印刷が可能である。
【0039】
印刷ヘッド90は、キャリッジ82に対し着脱可能である。すなわち、インク吐出ユニット81の印刷ヘッド90を交換可能である。例えば、ノズル列92においてインク吐出不良となったノズル93の数が所定数を超えた場合に、印刷ヘッド90を交換することで対処が可能である。
【0040】
印刷ヘッド90を交換した場合、交換された印刷ヘッド90のアライメントが、他の印刷ヘッド90と相違することがある。アライメントとは、例えば、印刷ヘッド90のノズル面81Aの傾きや高さをいう。例えば、キャリッジ82における交換後の印刷ヘッド90の位置が、交換前の印刷ヘッド90と一致しない場合、アライメントの差異、すなわちアライメントずれが発生する。
アライメントずれは、ノズル93から吐出されたインクIKが印刷媒体Wの表面に着弾するタイミングのずれを生じさせ、インクIKが印刷媒体Wに形成するドットの位置ずれを招く。アライメントのずれは、ノズル面81Aの高さや傾きのほか、ノズル93から吐出されたインクIKが印刷媒体Wに着弾する位置やタイミングに影響する各種の要素を含んでもよい。
高い印刷品質を維持するためには、印刷ヘッド90のアライメントずれを検出し、交換後の印刷ヘッド90が吐出するインクIKが、交換前の印刷ヘッド90と同じ位置にドットを形成するように、補正を行うことが望ましい。
【0041】
また、印刷ヘッド90を交換した場合に限らず、印刷ヘッド90の経年変化等が原因で、印刷ヘッド90のアライメントずれが発生することもある。このような場合も、アライメントずれを検出し、必要に応じて補正を行うことが有効である。
【0042】
プリンター1は、1個または複数の印刷ヘッド90を1単位として、アライメントずれの検出を行う機能を有する。この機能を、アライメントずれの検査と呼ぶ。具体的には、検査の対象である印刷ヘッド90によりテスト用の画像を印刷させ、印刷された画像をスキャンユニット72によって読み取り、検査対象の印刷ヘッド90が形成したドットの位置を検査する。テスト用の画像は、検査対象の印刷ヘッド90が有する全てのノズル93にドットを形成させることを目的として作成された画像であり、いわゆるテストパターンである。この検査では、例えば、交換前の印刷ヘッド90を基準とし、この基準の印刷ヘッド90と、交換後の印刷ヘッド90とのアライメントの差異を、ドットの位置の差異として検出する。
【0043】
テストパターンの印刷に使用される媒体は、印刷媒体Wを用いてもよいが、印刷媒体Wとは異なる媒体を用いることが好ましい。理由は、テストパターンをスキャンユニット72によって読み取るために搬送方向Hへの搬送を停止させる必要があること、テストパターンが印刷された部分を除去または廃棄する必要があること、等である。
また、検査の対象は、インク吐出ユニット81が備える印刷ヘッド90の一部であるから、テストパターンの印刷に、走査方向Kの全体に及ぶような大きな媒体を使う必要がない。
そこで、本実施形態では、印刷ヘッド90のアライメントずれの検査をする際に、テストパターンの印刷に、定型サイズのカット紙であるテスト用媒体51を用いる。テスト用媒体51は、普通紙や、いわゆるPPC用紙であってもよい。また、インクIKの吸収性および保持力に優れ、にじみを生じにくい特性を有する写真プリント用紙を用いてもよい。テスト用媒体51は、本発明の第2印刷媒体の一例に対応し、印刷媒体Wは第1印刷媒体の一例に対応する。
【0044】
図3は、プリンター1の要部平面図である。図3には搬送ベルト4に印刷媒体Wが載っていない状態を示している。
キャリッジ82は、走査方向Kにおいて、印刷媒体Wから右側に外れた位置まで移動可能である。この位置をホームポジションと呼ぶ。ホームポジションには、インク吐出ユニット81のノズルの詰まりを抑制するためのフラッシングやクリーニングなど、インク吐出ユニット81のメンテナンスを実行するためのメンテナンス機構が配置される。
【0045】
インク吐出ユニット81を走査方向Kに走査することによって画像を形成可能な領域を、図に印刷領域A1として示す。印刷領域A1は走査方向Kにおける印刷可能領域の外縁を示しており、搬送方向Hにおける印刷可能領域は、搬送ベルト4の移動により拡大される。
【0046】
図3には、一例として、縦594mm×横297mmのA3サイズのテスト用媒体51を用いる場合を示す。
搬送ベルト4は、載置終了位置I2に近い位置で外装15の外に露出しているので、テスト用媒体51は載置終了位置I2の近傍で搬送ベルト4に載置される。テスト用媒体51を載置する作業はプリンター1のオペレーターが実行する。オペレーターがテスト用媒体51を載置する位置は、テスト用媒体セット領域A11である。テスト用媒体セット領域A11は、オペレーターがテスト用媒体51を載せやすい位置に、予め設定されている。
【0047】
インク吐出ユニット81は、走査方向Kにおけるテスト用媒体51の位置にかかわらずテストパターンを印刷可能である。例えば、検査対象を印刷ヘッド90Aとした場合、走査方向Kにおいて印刷ヘッド90Aが印刷可能な範囲は、図に符号A2で示す印刷領域A2である。しかしながら、搬送ベルト4の平滑度等を考慮して、走査方向Kにおいて検査により好適なテスト用媒体51の位置が、予め決められていてもよい。
【0048】
図4は、プリンター1の斜視図であり、プリンター1を後方から見た図である。
図4に示すように、搬送ベルト4に印刷媒体Wが載置されていない状態では、外装15の後端部15Aから搬送ベルト4が露出する。テスト用媒体セット領域A11は、搬送ベルト4が外装15の外に露出する位置に設定される。
【0049】
外装15には、後端部15Aの上部に、マーカー16が配置されている。マーカー16は、オペレーターに対し、テスト用媒体51を搬送ベルト4に載置する位置を指示する表示部である。図4の例では、テスト用媒体51の両側端の位置を示す2個のマーカー16が外装15に取り付けられている。マーカー16は、外装15において視認可能であればよく、マーカー16の形状の部材を外装15に貼付したものであってもよいし、塗装や印刷により形成されていてもよい。
【0050】
マーカー16は、走査方向Kにおけるテスト用媒体51の位置を指示する位置指示部として機能する。また、マーカー16は、外装15に配置されているため、後端部15Aに合わせてテスト用媒体51を載置することを指示する機能を果たしている。従って、本実施形態のマーカー16は、ベルト移動方向F1、F2および走査方向Kにおけるテスト用媒体51のセット位置を指示する位置指示部として機能している。
なお、マーカー16とは別に、ベルト移動方向F1、F2におけるテスト用媒体51の位置を指示する位置指示部を配置してもよい。
【0051】
走査方向Kにおけるマーカー16の位置、および、ベルト移動方向F1における印刷領域A1の位置は、設定データ122に含まれ、記憶部120に記憶される。
【0052】
オペレーターが、テスト用媒体セット領域A11において、マーカー16が示す位置に合わせてテスト用媒体51を搬送ベルト4に載置すると、好適な条件で印刷ヘッド90Aのアライメントずれの検査を行うことができる。
【0053】
図3に示すように、テスト用媒体セット領域A11はインク吐出ユニット81よりもベルト移動方向F1において下流に位置する。プリンター1は、テスト用媒体51が搬送ベルト4に載置された後、搬送ベルト4をベルト移動方向F2に向けて移動させる。すなわち、印刷媒体Wに印刷を行う場合とは逆方向に搬送ベルト4を搬送し、テスト用媒体51を印刷領域A2まで移動させる。プリンター1は、インク吐出ユニット81を走査させながら検査対象の印刷ヘッド90Aによりインクを吐出させて、テスト用媒体51にテストパターンを印刷する。その後、プリンター1は、搬送ベルト4をベルト移動方向F1に移動させて、テスト用媒体51を、スキャンユニット72の位置に合わせて搬送方向Hに搬送する。プリンター1は、スキャンユニット72によって、テスト用媒体51に形成されたテストパターンのドットを読み取り、ドットの位置を検出することにより、検査対象の印刷ヘッド90Aのアライメントずれを検出する。さらに、プリンター1は、検査対象の印刷ヘッド90Aのアライメントずれを補正するための補正データを生成する。本実施形態の補正データは、印刷媒体Wへの印刷を行う際に、検査対象の印刷ヘッド90Aのノズル93からインクIKを吐出するタイミングを補正するためのデータである。補正データを用いることで、検査対象の印刷ヘッド90AがインクIKを吐出するタイミングを、他の印刷ヘッド90と整合させることができ、印刷ヘッド90の交換等による印刷品質の低下を抑制または防止できる。
【0054】
搬送ベルト4は、上述のように矩形のシートの端部を接合したベルトであり、シートの接合部分は、他の部分に比べて厚みや剛性が異なっている。この部分を継ぎ目41とし、図3に図示する。継ぎ目41は、搬送ベルト4の幅方向、すなわちプリンター1の左右方向に存在する。継ぎ目41は、本発明の接合部の一例に対応する。
【0055】
印刷ヘッド90のアライメントずれの検査において、テスト用媒体51が継ぎ目41に重なる位置に載置された場合、テスト用媒体51にわずかな歪みや凹凸が生じ、検査の精度に影響を与える可能性がある。このため、プリンター1は、テスト用媒体51が搬送ベルト4に載置される際に、継ぎ目41がテスト用媒体セット領域A11の中に位置しないように、搬送ベルト4を移動させる。
【0056】
図5は、プリンター1の機能的構成を示すブロック図である。
プリンター1は、制御部100を備える。
制御部100は、CPU、GPU、MPU等のプログラムを実行するプロセッサー110、及び、記憶部120を備え、プリンター1の各部を制御する。制御部100は、プロセッサー110が、記憶部120に記憶された制御プログラム121を読み出して処理を実行するように、ハードウェア、及びソフトウェアの協働により各種処理を実行する。制御プログラム121は、制御プログラムの一例に対応する。また、プロセッサー110は、制御プログラム121を読み出して実行することにより、入力検出部111、印刷制御部112、駆動制御部113、表示制御部114、及び、検出制御部115として機能する。
【0057】
記憶部120は、プロセッサー110が実行するプログラムや、プロセッサー110により処理されるデータを記憶する記憶領域を有する。記憶部120は、プロセッサー110が実行する制御プログラム121、及び、プリンター1の動作に関する各種の設定値を含む設定データ122を記憶する。
記憶部120は、プログラムやデータを不揮発的に記憶する不揮発性記憶領域を有する。また、記憶部120は、揮発性記憶領域を備え、プロセッサー110が実行するプログラムや処理対象のデータを一時的に記憶する構成としてもよい。
【0058】
制御部100には、印刷部101、通信部102、および、操作部103が接続される。印刷部101は、印刷ユニット8、搬送機構140、キャリッジ駆動機構150、乾燥ユニット9、媒体センサー71、スキャンユニット72、および、ベルトセンサー73を含む。
【0059】
制御部100は、インク吐出ユニット81を制御する。インク吐出ユニット81の各々の印刷ヘッド90は、ピエゾ素子や発熱素子によりノズル93からインクIKを吐出させる機構を備え、制御部100の制御に従ってインクIKを吐出する。
【0060】
搬送機構140は、印刷媒体Wを搬送する機構であり、繰出装置2、従動ローラー10A、10B、10C、搬送ローラー3A、3B、搬送ベルト4、及び、巻取装置5の他、これらを駆動する搬送モーター141を含む。制御部100は、搬送モーター141の駆動、停止、回転方向、および回転量を制御する。また、制御部100が搬送モーター141の回転速度を制御可能であってもよい。搬送モーター141は、本発明の駆動部の一例に対応する。
【0061】
キャリッジ駆動機構150は、キャリッジ82を走査方向に往復移動させる機構であり、駆動源としてのキャリッジモーター151、および、走査方向Kにおけるキャリッジ82の位置を検出するリニアエンコーダー152を含む。制御部100は、リニアエンコーダー152の出力に基づきキャリッジ82の位置を検出し、キャリッジモーター151を制御してキャリッジ82を移動させる。また、キャリッジ駆動機構150は、キャリッジ82の移動をガイドするガイド部材、キャリッジモーター151の動力をキャリッジ82に伝達するギヤやリンク等を含んでもよい。また、制御部100が、キャリッジモーター151の動作量等に基づきキャリッジ82の位置を特定可能な場合は、リニアエンコーダー152を省略してもよい。
【0062】
制御部100は、乾燥ユニット9が備えるヒーターのオン、オフ、加熱温度等を制御する。制御部100は、媒体センサー71の検出値を取得することにより、搬送ベルト4における印刷媒体Wの有無を検出する。制御部100は、スキャンユニット72の検出値を取得し、スキャンユニット72が読み取った画像を解析する。例えば、制御部100は、スキャンユニット72が読み取った画像から、ノズル93により形成されたドットの位置を特定することにより、アライメントずれを検出する。制御部100はベルトセンサー73の検出値を取得し、ベルトセンサー73から搬送ベルト4までの距離、および/または距離の変化を検出する。スキャンユニット72は、本発明のベルトのパターン検出部の一例に対応し、ベルトセンサー73は、本発明の距離検出部の一例に対応する。
【0063】
通信部102は、所定の通信規格に従ったコネクターやインターフェース回路等の通信ハードウェアにより構成され、制御部100の制御に従って、プリンター1の外部装置と通信する。プリンター1の外部装置は、例えば、コンピューターやサーバー装置である。制御部100は、通信部102によって外部装置から画像データ123を受信した場合、受信した画像データ123を記憶部120に記憶する。また、制御部100は、通信部102によって外部装置から印刷を指示するジョブデータ124を受信した場合、受信したジョブデータ124を記憶部120に記憶する。通信部102が実行する通信方式は有線通信であっても無線通信であってもよく、通信規格の種類は適宜に選択可能である。
【0064】
操作部103は、プリンター1のオペレーターによる操作を受け付ける。図5には、キーボード181、タッチパネル182、及び、ディスプレイ183を備える操作部103を一例として示すが、その他の入力デバイスを備えてもよい。
【0065】
キーボード181は、オペレーターにより操作される複数のキーを有し、操作されたキーを示す操作データを制御部100に出力する。ディスプレイ183は、液晶ディスプレイパネル等の表示画面を有し、制御部100の制御に従って、プリンター1の動作に関する各種情報を表示する。タッチパネル182は、ディスプレイ183の表示画面に重ねて配置され、表示画面に対する接触操作を検出し、接触位置を示す操作データを制御部100に出力する。
【0066】
記憶部120は、制御プログラム121、及び設定データ122のほか、画像データ123、ジョブデータ124、ベルト位置データ125、検出データ126、および、ヘッド補正データ127を記憶する。
画像データ123は、プリンター1により印刷される画像のデータであり、アライメントずれの検査で印刷されるテストパターンの画像を含む。ジョブデータ124は、プリンター1が実行する印刷ジョブのデータである。ベルト位置データ125は、搬送ベルト4の周回方向における継ぎ目41の位置を示すデータである。ベルト位置データ125は、例えば、搬送ベルト4における基準位置から継ぎ目41までの距離を示すデータであってもよい。また、例えば、ベルト位置データ125は、現在の継ぎ目41の位置を、インク吐出ユニット81や外装15の位置、載置開始位置I1、載置終了位置I2等を基準とする相対位置で示すデータであってもよい。
【0067】
検出データ126は、媒体センサー71、スキャンユニット72、およびベルトセンサー73を含む各種センサーが出力した検出値やデータを含む。例えば、媒体センサー71の検出値、スキャンユニット72により読み取られた画像、ベルトセンサー73の検出値等を含む。
【0068】
ヘッド補正データ127は、印刷ヘッド90の動作を補正するためのデータであり、アライメントずれの検査の結果に基づいて生成される。例えば、ヘッド補正データ127は、印刷ヘッド90がインクIKを吐出するタイミングを初期値からシフトさせるデータである。
【0069】
入力検出部111は、操作部103から入力される操作データに基づき、オペレーターによる入力操作を検出し、入力された内容を取得する。入力検出部111は、通信部102を介して受信したデータを処理する。例えば、入力検出部111は、通信部102により画像データ123やジョブデータ124を受信した場合、受信したデータを記憶部120に記憶させる。
【0070】
印刷制御部112は、ジョブデータ124に従って印刷部101を制御し、印刷部101により印刷媒体Wに印刷を実行する。
また、印刷制御部112は、印刷ヘッド90のアライメントずれの検査を実行する。印刷制御部112は、インク吐出ユニット81における印刷ヘッド90の交換を、インク吐出ユニット81に対する制御や操作部103に対する入力により検知した場合、検査対象の印刷ヘッド90を特定して、アライメントずれの検査を行う。印刷制御部112は、検査対象の印刷ヘッド90によりテストパターンを印刷させ、スキャンユニット72によってテストパターンの画像を読み取らせ、読み取られた画像に基づきヘッド補正データ127を生成し、記憶部120に記憶させる。印刷制御部112は、本発明の指定部の一例に対応する。
【0071】
駆動制御部113は、搬送モーター141を制御して、搬送ベルト4の移動方向や移動量、および、印刷媒体Wの搬送を制御する。また、リニアエンコーダー152の検出値に基づきキャリッジモーター151を制御して、キャリッジ82の走査を制御する。駆動制御部113は、印刷媒体Wに印刷を行う際に、印刷制御部112がインク吐出ユニット81を駆動するタイミングに合わせて、キャリッジ82及び搬送ベルト4を動作させる。
【0072】
駆動制御部113は、印刷ヘッド90のアライメントずれの検査が実行される際に、搬送モーター141を駆動して、搬送ベルト4を移動させる。例えば、継ぎ目41がテスト用媒体セット領域A11に重ならないように搬送ベルト4を移動させる制御を行う。また、例えば、テスト用媒体51を印刷領域A1に移動させる制御、及び、テストパターンが印刷されたテスト用媒体51をスキャンユニット72の位置に移動させる制御を行う。
【0073】
表示制御部114は、ディスプレイ183を制御して、各種の画像を表示させる。
検出制御部115は、媒体センサー71、スキャンユニット72、および、ベルトセンサー73を制御して、各センサーの検出値や読み取られた画像を取得し、検出データ126として記憶部120に記憶させる。
【0074】
図6は、プリンター1の動作を示すフローチャートであり、アライメントずれの検査に係る動作を示す。
図6に示す動作はプロセッサー110の制御により実行され、ステップS11-S15、S17-S18、S21-S22は印刷制御部112の動作に相当し、S16、S18は駆動制御部113の動作に相当する。ステップS19は印刷制御部112及び駆動制御部113の動作に相当し、ステップS20は印刷制御部112及び検出制御部115の動作に相当する。
【0075】
制御部100は、印刷ヘッド90が交換されたことを検知して(ステップS11)、アライメントずれの検査の対象となる印刷ヘッド90を特定する(ステップS12)。
【0076】
制御部100は、搬送ベルト4の継ぎ目41の位置を特定し(ステップS13)、テスト用媒体セット領域A11と継ぎ目41とが重なっているか否かを判定する(ステップS14)。テスト用媒体セット領域A11と継ぎ目41とが重なっていると判定した場合(ステップS14;YES)、制御部100は、継ぎ目41がテスト用媒体セット領域A11の外に出るまでに必要な搬送ベルト4の移動量を算出し、決定する(ステップS15)。制御部100は、ステップS15で決定した移動量に従って搬送モーター141を正転させ、搬送ベルト4をベルト移動方向F1に移動させ、搬送モーター141を停止させる(ステップS16)。ステップS15では、搬送モーター141を逆転させて搬送ベルト4をベルト移動方向F2に移動させてもよい。
【0077】
制御部100は、オペレーターがテスト用媒体セット領域A11にテスト用媒体51を載置したか否かを判定し(ステップS17)、テスト用媒体51が載置されない間は(ステップS17;NO)、待機する。例えば、オペレーターは、テスト用媒体51を搬送ベルト4に載置した後、テスト用媒体51のセットが完了したことを操作部103の操作により入力する。テスト用媒体51のセットが完了した場合(ステップS17;YES)、制御部100は、搬送モーター141を逆転させて搬送ベルト4をベルト移動方向F2に移動させ、テスト用媒体51を搬送する(ステップS18)。ステップS18では、テスト用媒体51が、検査対象の印刷ヘッド90の印刷位置である印刷領域A2に搬送される。
【0078】
制御部100は、検査対象の印刷ヘッド90によりテストパターンを印刷させる(ステップS19)。制御部100は、設定データ122を参照し、マーカー16の位置に合わせてテストパターンを印刷する。印刷後、制御部100は、テスト用媒体51に印刷されたテストパターンをスキャンユニット72によって読み取る(ステップS20)。制御部100は、ステップS20を実行する前に、搬送モーター141を動作させてテスト用媒体51をスキャンユニット72の読み取り位置まで搬送してもよい。
【0079】
制御部100は、スキャンユニット72の読み取り画像を解析して、検査対象の印刷ヘッド90のアライメントずれを検出する(ステップS21)。ステップS21で、制御部100は、検査対象の印刷ヘッド90により形成されたドットの位置を特定し、基準位置からのドットの位置のずれを求めることにより、アライメントずれを求める。例えば、制御部100は、印刷ヘッド90が交換されたことを検知した場合、交換前の印刷ヘッド90が形成したドットと、検査対象の印刷ヘッド90が形成したドットとの位置のずれ量を算出する。
【0080】
制御部100は、アライメントずれを補正するためのヘッド補正データ127を生成し、検査対象の印刷ヘッド90に対応する補正データとして記憶部120に記憶させる。例えば、制御部100は、ステップS21で求めたドットの位置のずれ量に対応する吐出タイミングの補正値を算出し、ヘッド補正データ127とする。
【0081】
印刷制御部112は、ジョブデータ124に従って印刷媒体Wに対する通常の印刷を行う際に、ヘッド補正データ127を参照して、印刷ヘッド90のインクIKの吐出タイミングを調整する。
【0082】
以上説明したように、本発明を適用した第1実施形態のプリンター1は、印刷媒体W及びテスト用媒体51にインクを吐出する印刷ヘッド90と、印刷媒体W及びテスト用媒体51が載置される搬送ベルト4と、を備える。プリンター1は、搬送ベルト4を移動させて印刷媒体Wまたはテスト用媒体51を搬送する搬送モーター141と、テストパターンを用いる調整対象の印刷ヘッド90を指定する印刷制御部112と、を備える。また、テスト用媒体51にテストパターンが印刷される場合のテスト用媒体51の位置を示すマーカー16と、搬送モーター141を制御する駆動制御部113と、を備える。駆動制御部113は、印刷制御部112により指定された検査対象の印刷ヘッド90に対応して搬送モーター141を制御することにより、テスト用媒体51の位置を調整する。
【0083】
プリンター1の制御方法によれば、テストパターンを用いる調整対象の印刷ヘッド90が指定された場合に、指定された検査対象の印刷ヘッド90に対応して搬送ベルト4を移動させ、テスト用媒体51の位置を調整する。
【0084】
制御プログラム121は、制御部100により、テストパターンを用いる調整対象の90が指定された場合に、指定された検査対象の印刷ヘッド90に対応して搬送ベルト4を移動させ、テスト用媒体51の位置を調整するプログラムである。
【0085】
本発明の印刷装置、印刷装置の制御方法、および、制御プログラムを適用したプリンター1によれば、テスト用媒体51の位置を、調整対象の印刷ヘッド90に対応する位置に調整できる。このため、印刷ヘッド90の調整を行う際にテスト用媒体51をセットする位置、および、テスト用媒体51のサイズの制約が緩和され、より容易に、印刷ヘッド90に関する調整を行うことが可能となる。
【0086】
例えば、印刷ヘッド90を検査する際に、テスト用媒体51を、検査対象の印刷ヘッド90の印刷位置から離れた位置にセットすることが可能となる。また、例えば、テスト用媒体51のサイズは、テストパターンの印刷に十分なサイズであればよく、走査方向Kにおける印刷領域A1の大きさより小さくてもよい。従って、印刷ヘッド90の検査の負荷を軽減することができる。さらに、テスト用媒体51のサイズや位置に関する制約が緩和されるため、テスト用媒体51の選択の自由度が高まる。例えば、印刷媒体Wよりもテストパターンの印刷に適しているテスト用媒体51を使用することにより、テストパターンを用いる検査や調整の精度を高めることが可能となる。
【0087】
特に、プリンター1が、1-2m或いはそれ以上の幅の印刷媒体Wに印刷を行う大型の印刷装置である場合、印刷媒体Wと同等のサイズのテスト用媒体51を用意することは容易ではない。また、印刷媒体Wが布帛である場合に、印刷媒体Wをテストパターンの印刷に利用すると、巻取装置5に巻き取られた印刷媒体Wからテストパターンを印刷した部分を除去する作業を要する。また、調整で消費される印刷媒体Wのコストは無視できない。
さらに、布帛に形成されたドットの位置を正確にスキャンユニット72で検出し、アライメントずれを検出することも容易ではない。スキャンユニット72は搬送方向Hにおいて乾燥ユニット9の上流に位置するので、乾燥ユニット9で乾燥される前の印刷媒体Wにおいてテストパターンのドットを検出することになり、検出精度を高めることは難しい。
【0088】
プリンター1が印刷ヘッド90の調整や検査の際に、印刷媒体Wよりも小さなテスト用媒体51を利用可能であれば、上記の課題は解消する。すなわち、安価で取り扱いに優れた定型サイズのテスト用媒体51を用いることにより、印刷媒体Wをテストパターンの印刷で消費することがなく、印刷ヘッド90の調整に係るコストと労力の負担を軽減できる。さらに、テスト用媒体51をセットする位置がキャリッジ82の位置に制限されず、外装15の外であってもよく、オペレーターの作業負担が大幅に軽減される。また、テスト用媒体51は、搬送ベルト4が載置されていない状態の搬送ベルト4にセットされる。このため、印刷ヘッド90を交換するためにプリンター1から印刷媒体Wを取り外した状態で、交換後の印刷ヘッド90の調整を行うことができるという利点がある。また、インクIKの吸収性やドットの明瞭性に優れたテスト用媒体51を用いれば、ドットの位置を高精度で検出できる。従って、大判の印刷媒体Wに印刷を行う大型のプリンター1に本発明を適用すると、テストパターンを用いる検査や調整の負担を軽減し、精度を高める効果が顕著である。
【0089】
プリンター1は、テスト用媒体51に印刷されたテストパターンを検出するスキャンユニット72を備え、駆動制御部113は、スキャンユニット72の検出結果に基づいて、印刷ヘッド90のアライメントのずれを検出可能である。この構成によれば、テストパターンをテスト用媒体51に印刷し、印刷したテストパターンを検出することで、アライメントのずれを高精度で検出できる。
【0090】
プリンター1は複数の印刷ヘッド90を備え、印刷制御部112は、印刷ヘッド90のうち交換された印刷ヘッド90を、検査対象の印刷ヘッド90として指定する。ここで、検査対象の印刷ヘッド90は交換ヘッドに相当する。この構成によれば、印刷ヘッド90の交換に伴うアライメントずれを検出し、印刷ヘッド90を交換した場合であっても印刷品質を維持できる。
【0091】
印刷ヘッド90は、画像印刷用の印刷媒体W、および、テストパターンが印刷される媒体であって印刷媒体Wとは異なるテスト用媒体51に対する印刷が可能である。駆動制御部113は、印刷ヘッド90により印刷媒体Wに画像を印刷する場合、搬送ベルト4をベルト移動方向F1に移動させて印刷媒体Wを搬送する。駆動制御部113は、テストパターンを印刷するために、印刷制御部112により指定された印刷ヘッド90の位置までテスト用媒体51を移動させる際に、ベルト移動方向F1とは異なるベルト移動方向F2に搬送ベルト4を移動させる。この構成によれば、搬送ベルト4を、印刷媒体Wに対する印刷時とは異なる方向に移動させて、テスト用媒体51の位置を印刷ヘッド90に合わせることができる。従って、テスト用媒体51をセットする位置の自由度がより一層高まり、オペレーターがテスト用媒体51をセットする作業の負担を軽減できる。
【0092】
マーカー16により指示されるテスト用媒体51の位置は、ベルト移動方向F1において印刷ヘッド90の下流とすることができる。この構成によれば、オペレーターがテスト用媒体51をセットする作業の負担を、より一層軽減できる。
【0093】
テスト用媒体51は、定型サイズのカット紙であり、プリンター1は、テスト用媒体51に印刷されたテストパターンを光学的に読み取ることにより印刷ヘッド90のアライメントのずれを検出する。テスト用媒体51が定型サイズであることから、テストパターンの発色に優れたテスト用媒体51を用いることが可能となる。このため、より高精度で、アライメントのずれを検出できる。
【0094】
プリンター1は、長尺形状のベルト部材の両端を接合して無端形状に加工された搬送ベルト4を備える。駆動制御部113は、搬送ベルト4の継ぎ目41が、マーカー16により指示されるテスト用媒体51の位置から所定範囲、例えばテスト用媒体セット領域A11に位置する場合に、印刷媒体Wが載置される前にベルトを移動させる。この構成によれば、搬送ベルト4の継ぎ目41を避けてテスト用媒体51をセットすることができ、アライメントのずれの調整を、より高精度で行うことができる。
【0095】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態におけるプリンター1の要部平面図であり、ベルトセンサー73による検出結果のグラフを合わせて図示する。
第2実施形態におけるプリンター1の構成は、第1実施形態と共通である。第2実施形態では、プリンター1がベルトセンサー73を用いて、搬送ベルト4の粘着面の高さを検出し、検出した高さをアライメントのずれの調整に利用する動作例を説明する。
【0096】
ベルトセンサー73は、キャリッジ82の直下の搬送ベルト4に向けて光を発し、反射光を検出することでベルトセンサー73と搬送ベルト4との間の距離を検出する。キャリッジ82は、上述した図示しないガイドに沿って一定の高さで走査される。このため、ベルトセンサー73により検出される距離は、搬送ベルト4の表面の高さの変動を示している。
【0097】
例えば、図7に符号A12で示す領域で、ベルトセンサー73により検出を行う場合を想定する。被検出領域A12は走査方向Kに延びる領域であり、ベルトセンサー73は、被検出領域A12を走査方向Kに移動しながら検出を行う。ベルトセンサー73の検出値を、走査方向Kにおける位置と対応付けることで、図中に符号Dで示すように、走査方向Kにおける搬送ベルト4の高さの分布SGが得られる。
搬送ベルト4の平面度は、ベルト移動方向F1における位置によって異なる可能性がある。このため、被検出領域A12は、予め設定されたテスト用媒体セット領域A11の中であることが好ましい。
【0098】
テスト用媒体51をセットする位置において搬送ベルト4の高さの変動が小さければ、テスト用媒体51の歪みが小さいため、アライメントのずれを、より高精度で検出できる。そこで、プリンター1は、被検出領域A12における搬送ベルト4の高さの検出結果から、被検出領域A12において搬送ベルト4の高さの変動が小さい領域、すなわち搬送ベルト4の平面度が高い領域を選択して、テスト用媒体51を載置する位置に決定する。この領域を、テスト用媒体セット領域A15とする。テスト用媒体セット領域A15の走査方向Kにおける大きさは、テスト用媒体51の幅方向のサイズに合わせて設定される。テスト用媒体セット領域A15では、搬送ベルト4の高さの変動幅G1が、被検出領域A12における他の部分よりも小さく、平面度が高い。
【0099】
このように、プリンター1は、テスト用媒体セット領域A11において、ベルトセンサー73を用いた検出結果から搬送ベルト4の平面度が高いテスト用媒体セット領域A15を設定する。これにより、より高精度で印刷ヘッド90のアライメントのずれの検査を行うことができる。
【0100】
図8は、第2実施形態のプリンター1の動作を示すフローチャートである。図8において、図6に示した第1実施形態の動作と共通する処理には、同ステップ番号を付し、説明を省略する。図8に示す動作において、ステップS31、S34は印刷制御部112の動作に相当し、ステップS32、S35は駆動制御部113の動作に相当する。ステップS33は検出制御部115の動作に相当し、ステップS36は表示制御部114の動作に相当する。
【0101】
ステップS13で継ぎ目41の位置を特定した後、制御部100は、継ぎ目41の位置、および、ベルトセンサー73の検出位置に基づき、搬送ベルト4の移動量を算出する(ステップS31)。詳細には、継ぎ目41から外れた位置となるテスト用媒体セット領域A11を設定し、テスト用媒体セット領域A11がベルトセンサー73の直下となるように搬送ベルト4の移動量を算出する(ステップS31)。
【0102】
制御部100は、ステップS31で算出した移動量に基づき、搬送モーター141を正転させ、搬送ベルト4をベルト移動方向F1に移動させる(ステップS32)。ステップS32で、制御部100は、搬送モーター141を逆転させて搬送ベルト4をベルト移動方向F2に移動させてもよい。
【0103】
制御部100は、キャリッジ82を走査させて、ベルトセンサー73によって被検出領域A12の検出を行い、検出結果を取得する(ステップS33)。ステップS33で得られる検出結果を、リニアエンコーダー152により検出されるキャリッジ82の位置と対応付けることで、高さの分布SGが得られる。
制御部100は、ステップS33の検出結果と、予め設定されたテスト用媒体51のサイズとに基づいて、テスト用媒体セット領域A15を特定する(ステップS34)。制御部100は、テスト用媒体セット領域A15の位置を、設定データ122の一部として記憶部120に記憶させる。
【0104】
制御部100は、被検出領域A12を含むテスト用媒体セット領域A11が、オペレーターがテスト用媒体51をセットする位置に達するように、搬送モーター141を駆動して搬送ベルト4を移動させる(ステップS35)。例えば、テスト用媒体セット領域A11が、後端部15Aに達するまで搬送ベルト4を移動させる。
【0105】
制御部100は、ステップS34で特定したテスト用媒体セット領域A15をオペレーターに案内する(ステップS36)。例えば、制御部100は、ディスプレイ183に、テスト用媒体51の位置を案内する画面を表示させる。
【0106】
図9は、第2実施形態におけるディスプレイ183の表示例を示す図である。
図9に示す表示例では、プリンター1の外観と、プリンター1におけるテスト用媒体51のセット位置とを示す案内画像191が表示される。また、オペレーターに対し、案内画像191が示す位置にテスト用媒体51をセットするように案内するメッセージ192が表示される。この場合、ディスプレイ183は、本発明の位置指示部の一例に対応する。
【0107】
制御部100は、オペレーターがテスト用媒体セット領域A11にテスト用媒体51を載置したか否かを判定し(ステップS17)、テスト用媒体51が載置されない間は(ステップS17;NO)、待機する。テスト用媒体51のセットが完了した場合(ステップS17;YES)、制御部100は、搬送モーター141を逆転させて搬送ベルト4をベルト移動方向F2に移動させ、テスト用媒体51を搬送する(ステップS18)。ステップS18では、テスト用媒体51が、検査対象の印刷ヘッド90の印刷位置である印刷領域A2に搬送される。その後、制御部100は、図6を参照して説明した動作と同様に、印刷ヘッド90によりテストパターンを印刷させ、印刷されたテストパターンをスキャンユニット72によって読み取り、ヘッド補正データ127を生成する。
【0108】
本発明を適用した第2実施形態のプリンター1によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに、プリンター1は、搬送ベルト4のベルト移動方向F1、F2と交差する方向に走査されるキャリッジ82と、キャリッジ82に搭載され、基準位置からベルトの表面までの距離を検出するベルトセンサー73と、を備える。駆動制御部113は、キャリッジ82の走査中におけるベルトセンサー73の検出結果に基づき、搬送ベルト4の平面度が設定された条件を満たすテスト用媒体セット領域A15を特定する。これにより、印刷ヘッド90の調整を行うときの搬送ベルト4の状態を反映して、テスト用媒体51のセット位置を決定するので、より高精度で印刷ヘッド90の調整を行うことができる。
【0109】
上記した各実施形態は、本発明を適用した一具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
例えば、上述した第1実施形態の動作を行う場合、プリンター1がベルトセンサー73を備えている必要はなく、ベルトセンサー73を省略した構成としてもよい。
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、プリンター1が、複数の印刷ヘッド90を有するインク吐出ユニット81を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、1個の印刷ヘッド90を有する印刷装置に本発明を適用してもよい。
【0111】
また、第2実施形態において、テスト用媒体セット領域A15の位置をオペレーターに案内する手段は、ディスプレイ183による表示に限定されない。例えば、外装15の後端部15A側の面に表示画面やLEDインジケーターを設置し、これらの表示によってテスト用媒体51の位置を案内してもよい。また、プリンター1から離れた位置にある他のコンピューターに、テスト用媒体セット領域A15の位置を示すデータを送信してもよい。この場合、プリンター1からデータを受信した他のコンピューターが、テスト用媒体51の位置を案内する画面を表示してもよい。
【0112】
また、上記の各実施形態では、ロール状に巻き回された印刷媒体Wを搬送して、画像を印刷するプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、印刷対象の布帛等の印刷媒体Wを固定して保持し、インク吐出ユニット81を印刷媒体Wに対して相対的に移動させて、印刷を行う印刷装置にも本発明を適用できる。例えば、衣類や縫製生地を印刷媒体Wとして固定し、印刷媒体Wにインクを吐出して印刷する、いわゆるガーメントプリンターに本発明を適用してもよい。また、布帛に限らず、ニット生地、紙、合成樹脂製のシート等に印刷を行う印刷装置に本発明を適用してもよい。
【0113】
また、本発明の適用対象は、印刷装置として単独で使用される装置に限定されず、例えば、複写機能やスキャン機能を有する複合機やPOS端末装置等、印刷以外の機能を有する装置に適用してもよい。
【0114】
また、プリンター1は、紫外線の照射により硬化するインクIKを利用する装置であってもよく、この場合、乾燥ユニット9に代えて、プリンター1に紫外線照射装置を設けてもよい。また、プリンター1は、乾燥ユニット9で乾燥された印刷媒体Wを洗浄する洗浄装置を備える構成であってもよく、その他のプリンター1の細部構成については任意に変更可能である。
【0115】
また、制御部100の各機能部は、上記のようにプロセッサー110が実行する制御プログラム121として構成することができるほか、制御プログラム121が組み込まれたハードウェア回路により実現することも可能である。また、制御プログラム121を、伝送媒体を介してプリンター1がサーバー装置等から受信する構成であってもよい。
【0116】
また、制御部100の機能は、複数のプロセッサー、又は、半導体チップにより実現してもよい。
【0117】
また、例えば、図6及び図8に示す動作のステップ単位は、プリンター1の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…プリンター(印刷装置)、4…搬送ベルト(ベルト)、8…印刷ユニット、11…インク供給路、15…外装、15A…後端部、16…マーカー(位置指示部)、41…継ぎ目(接合部)、51…テスト用媒体(第2印刷媒体)、71…媒体センサー、72…スキャンユニット(パターン検出部)、73…ベルトセンサー(距離検出部)、81…インク吐出ユニット、81A…ノズル面、82…キャリッジ、83…ギャップ調整機構、90、90A…印刷ヘッド、91…チップ、92…ノズル列、93…ノズル、100…制御部、101…印刷部、103…操作部、110…プロセッサー、111…入力検出部、112…印刷制御部(指定部)、113…駆動制御部、115…検出制御部、120…記憶部、121…制御プログラム、122…設定データ、123…画像データ、124…ジョブデータ、125…ベルト位置データ、126…検出データ、127…ヘッド補正データ、140…搬送機構、141…搬送モーター(駆動部)、150…キャリッジ駆動機構、151…キャリッジモーター、152…リニアエンコーダー、183…ディスプレイ(位置指示部)、F1…ベルト移動方向(第1方向)、F2…ベルト移動方向(第2方向)、H…搬送方向、IK…インク、K…走査方向、W…印刷媒体(第1印刷媒体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9