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特許7500950赤外パスフィルター、及び固体撮像素子用フィルター、並びに固体撮像素子
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  • 特許-赤外パスフィルター、及び固体撮像素子用フィルター、並びに固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】赤外パスフィルター、及び固体撮像素子用フィルター、並びに固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240611BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240611BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20 101
H01L27/146 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019196181
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021071507
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 忠俊
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103628(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/043428(WO,A1)
【文献】特開2017-142412(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189855(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142804(WO,A1)
【文献】特開2016-177079(JP,A)
【文献】特開2019-061216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/20
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルターであって、黒色色材として平均粒径50~300nmのペリレン顔料のみ含有し、その含有率が40~70重量%である赤外パスフィルター。
【請求項2】
前記ペリレン顔料の平均粒径が128~300nmである請求項1に記載の赤外パスフィルター。
【請求項3】
可視領域及び近赤外領域の一部である波長400~800nmの光の平均透過率が30%以下であり、近赤外領域の波長900~1000nmの光の平均透過率が70%以上である請求項1又は2に記載の赤外パスフィルター。
【請求項4】
アクリル重合体を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の赤外パスフィルター。
【請求項5】
前記アクリル重合体がメタクリル酸フェニル由来のアクリル重合体である請求項4に記載の赤外パスフィルター。
【請求項6】
光電変換素子に対して光の入射側の位置に、複数の各色用のカラーフィルターと、請求項1~5のいずれか一項に記載の赤外パスフィルターと、を備える固体撮像素子用フィルター。
【請求項7】
前記複数の各色用のカラーフィルター及び前記赤外パスフィルターよりもさらに光の入射側の位置に、赤外カットフィルターを備え、前記赤外カットフィルターは、平面視で前記赤外パスフィルターに重なる位置に貫通孔を備える、請求項6に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項8】
前記複数の各色用のカラーフィルター及び前記赤外パスフィルターよりもさらに光の入射側の位置に、前記赤外パスフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層を備え、前記バリア層の酸素透過率は5.0cc/m/day/atom以下である、請求項6又は7に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項9】
複数の光電変換素子と、請求項6~8のいずれか一項に記載の固体撮像素子用フィルターと、を備える固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外パスフィルター、及びそれを備える固体撮像素子用フィルター、並びにそれらを備える固体撮像素子に関する.
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。光電変換素子の上方に、各画素に対応するように各色用のカラーフィルターが設けられ、カラーフィルターの上方には、各画素に対応してマイクロレンズが設けられており、マイクロレンズによって集光された光が、カラーフィルターによって着色され、光電変換素子へ入射するように構成されている。
【0003】
可視光画像だけではなく赤外光画像を撮像する固体撮像素子は、複数の光電変換素子の上に各色用のカラーフィルターと、赤外用の光電変換素子上に赤外パスフィルターを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
赤外パスフィルターは、赤外用の光電変換素子が検出し得る可視光を遮蔽して、赤外用の光電変換素子による赤外光の検出精度を高める。赤外パスフィルターの構成材料は、例えば、ビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色色材である(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
赤外光の検出を可能にした固体撮像素子の適用範囲の可能性は、可視光を検出する固体撮像素子の適用範囲に限られず、それ以外の様々な用途に及んでいる。従って、赤外パスフィルターの耐久性、ひいては、固体撮像素子の耐久性を高める技術は、様々な状況下での監視や分析用に向けた固体撮像素子の普及を格段に促進し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-91535号公報
【文献】特開2016-177273号公報
【文献】特開2018-119077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、赤外パスフィルターの構成材料は、光電変換素子などの構成材料と比べて耐熱性や耐光性などの耐久性が高い材料とは言いがたい。また、前記従来技術に記載の赤外パスフィルターは可視光を十分に遮光するためにいくつかの着色剤を混ぜている。混ぜている着色剤の内一つでも耐久性が低い着色剤があると赤外パスフィルターとしては耐久性が低いものとなる。様々な状況下での監視や分析に向けた固体撮像素子の普及を格段に促進し得るためには、赤外パスフィルターの赤外光の検出精度、ひいては、固体撮像素子の可視光と赤外光の分光検出精度を高める必要がある。
【0008】
本発明の目的は、可視光画像だけではなく赤外光画像を撮像する固体撮像素子の耐久性を向上する赤外パスフィルター、およびそれを備える固体撮像素子用フィルター、並びに該固体撮像素子用フィルターを備える固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の赤外パスフィルターは、可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルターであって、平均粒径50~300nmのペリレン顔料を40~70重量%含有する赤外パスフィルターである。
【0010】
上記赤外パスフィルターは、可視領域および近赤外領域の一部である波長400~800nmの光の平均透過率が30%以下であり、近赤外領域の波長900~1000nmの光の平均透過率が70%以上であることが好ましい。
【0011】
上記赤外パスフィルターにおいては、アクリル重合体を含有することが好ましい。アクリル重合体を含有することによって、耐久性の高い赤外パスフィルターを提供する可能性を高めることができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の固体撮像素子用フィルターは、光電変換素子に対して光の入射側の位置に、複数の各色用のカラーフィルターと、上記の本発明の赤外パスフィルターと、を備える。
【0013】
上記固体撮像素子用フィルターは、上記複数の各色用のカラーフィルター及び上記赤外パスフィルターよりもさらに光の入射側の位置に、赤外カットフィルターを備えることが好ましい。
【0014】
上記赤外カットフィルターは、平面視で上記赤外パスフィルターに重なる位置に貫通孔を備える。
【0015】
上記固体撮像素子用フィルターは、上記複数の各色用のカラーフィルター及び上記赤外パスフィルターよりもさらに光の入射側の位置に、上記赤外パスフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層を備え、バリア層の酸素透過率は5.0cc/m2/day/atom以下であることが好ましい。このようなバリア層を備えることによって、耐久性の高い固体撮像素子用フィルターを提供する可能性を高めることができる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の固体撮像素子は、複数の光電変換素子と、上記本発明の固体撮像素子用フィルターと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固体撮像素子の耐久性を向上させる赤外パスフィルター、およびそれを備える固体撮像素子用フィルター、並びに該固体撮像素子用フィルターを備える固体撮像素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の固体撮像素子の一実施形態の、X-Y平面内の一単位を、Z方向に各構成要素に分解して例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本発明の赤外カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、および固体撮像素子における一実施形態を説明する。図1は、実際には積層され一体化した固体撮像素子のX-Y平面内の一単位を、Z方向に各構成要素に分解して例示する概略斜視図である。なお、本実施形態において、赤外光とは800nm以上~1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光を意味し、近赤外光とは赤外光のなかで特に800nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光を意味する。
【0020】
[固体撮像素子]
図1で示すように、固体撮像素子(一単位)10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11からなる。複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pからなる。赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を電気信号に変換する。
【0021】
<固体撮像素子用フィルター>
本発明の固体撮像素子用フィルターは、複数の可視光用のカラーフィルター12R、12G、12B、及び本発明の赤外パスフィルター12Pを備え、複数の可視光用のマイクロレンズ15R、15G、15B、赤外光用マイクロレンズ15Pを備える。また、赤外カットフィルター13を備えることが好ましく、バリア層14を備えることがさらに好ましい。図1の固体撮像素子用フィルター10Fは、これらすべての構成要素を備える形態を示している。
以下、固体撮像素子用フィルター10Fを構成する各要素について説明する。
【0022】
(カラーフィルター)
可視光用のカラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に、緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に、青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に、それぞれ平面視で重なる位置にある。
【0023】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。まず赤色用感光性樹脂を含む塗膜が、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。次に赤色用フィルター12Rは、前記塗膜に対し、赤色用フィルター12Rの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。なお、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bも、順次赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
【0024】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色組成物に含有される顔料としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。使用することができる顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。
以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0025】
青色用フィルターの青色着色組成物に用いられる青色色素としては、例えばC.I.Pigment Blue15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、81等の顔料が挙げられ、中でもC.I.Pigment Blue15:6が好ましい。調色用の紫色色素としては、例えばC.I.Pigment Violet1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の顔料が挙げられ、中でもC.I.Pigment Violet23が好ましい。
【0026】
赤色着色組成物は、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、C.I.Pigment Orange36、43、51、55、59、61、71、73等の赤色顔料、および必要に応じ調色用として、後述の黄色色素を用いて得られる組成物である。
【0027】
また、緑色着色組成物は、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37、58、59等の緑色顔料、および必要に応じ調色用として後述の黄色色素を用いて得られる組成物である。
【0028】
調色用の黄色色素としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等の顔料が挙げられ、中でもC.I.Pigment Yellow13、150、185が好ましい。
【0029】
(赤外パスフィルター)
固体撮像素子用フィルター10Fは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に赤外パスフィルター12Pを備える。赤外パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光をカットする。それによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、800nm以上1100nm以下の波長を有する近赤外光である。
【0030】
前記のように、赤外パスフィルター12Pは、可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルターであり、構成材料は、黒色顔料と、透明樹脂とを含む。黒色顔料は、単一で黒色を有するペリレン顔料が好ましい。例えばアゾ系やメチン系などの黒色色材は、熱と光に対する耐久性が低く、2種以上の色材によって黒色を有する混合物の場合、含有する色素のうち一つでも耐久性が低い顔料があると赤外パスフィルターとしては耐久性が低いものとなってしまう。また、可視領域の波長400~800nmの光の平均透過率が30%より高くなり、可視領域の光を遮断できなくなるため、赤外光用光電変換素子11Pがノイズとなる可視光も検出してしまい、検出精度の低い固体撮像素子となってしまう。
【0031】
本発明の赤外パスフィルター12Pに含有するペリレン顔料の平均粒径は50~300nmであり、より好ましくは50~100nmである。平均粒径が50nmより小さいと顔料の表面積が大きくなるため、熱や光のエネルギーを吸収して、顔料自体が分解しやすくなり、耐久性が低いものとなってしまう。また、平均粒径が300nmより大きいと赤外パスフィルターの膜の表面の凹凸が大きくなるため、表面の凹凸で入射光が反射、散乱しやすくなり、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光が減り、検出精度の低い固体撮像素子となってしまう。
【0032】
顔料の平均粒径は、顔料分散体(ミルベース)中の顔料粒子の平均粒径(D50)の数値を意味する。具体的には、動的光散乱法で測定したものであり、例えば日機装株式会社の「Nanotrac UPA-EX150」で測定される平均粒径である。
【0033】
本発明の赤外パスフィルター12Pは、ペリレン顔料を40~70重量%含有している。ペリレン顔料の含有量が40重量%より少ないと可視領域の光を遮断できなくなるため、赤外光用光電変換素子11Pにノイズとなる可視光も検出してしまい、検出精度の低い固体撮像素子となってしまう。また、ペリレン顔料の含有量が70重量%より多いと顔料以外の含有物が少なくなるため、塗膜形成の際にひび割れや表面凹凸などが発生しやすくなり、均一な膜に形成できなくなってしまう。
【0034】
赤外パスフィルター12Pの透過スペクトルは、波長400~800nmの光の平均透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。波長400~800nmの光の平均透過率が30%より高いと、可視領域の光を遮断できなくなるため、赤外光用光電変換素子11Pがノイズとなる可視光も検出してしまい、検出精度の低い固体撮像素子となってしまう。また、近赤外領域900~1000nmの光の平均透過率が70%以上となることが好ましく、80%以上となることがより好ましい。近赤外領域900~1000nmの光の平均透過率が70%より低いと、赤外パスフィルターを透過する近赤外光が少なくなるため、検出精度の低い固体撮像素子となってしまう。
【0035】
850nmの波長を有する近赤外光、および、940nmの波長を有する近赤外光は、大気中に含まれる水蒸気によって吸収され、取り除かれる。赤外用光電変換素子11Pは、これら850nmの波長を有する近赤外光、および、940nmの波長を有する近赤外光の少なくとも一方を検出対象とする。
【0036】
特に、太陽光スペクトルは、940nm付近に水蒸気の吸収を起因とする吸収帯を有しているためスペクトル強度が低下するという特徴がある。従って、940nmの波長を有する近赤外光は、固体撮像素子を屋外及び日中に使用する際には、外乱光となる太陽光の影響を受けにくくなる。従って、使用する光源の中心波長を940nmにすれば、ノイズの少ない固体撮像素子の提供が可能となる。そこで、赤外用光電変換素子11Pは、940nmの波長を有する近赤外光を検出対象とすることが好ましい。
【0037】
赤外パスフィルター12Pを形成するバインダー樹脂は耐久性に優れたアクリル重合体が好ましい。アクリル重合体は、アクリル酸またはメタクリル酸を含むモノマーが重合した高分子化合物である。アクリル酸を含むモノマーがアクリレートであり、メタクリル酸を含むモノマーがメタクリレートである。なお、アクリル重合体は、上述したアクリルモノマー以外のモノマーを含んでもよい。
【0038】
上述したアクリルモノマー以外のモノマーは、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、および、ジエン系モノマーなどであってよい。スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、および、ベンジルスチレンなどであってよい。
【0039】
(メタ)アクリルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および、2‐エチルヘキシルメタクリレートなどであってよい。ビニルエステル系モノマーは、例えば、酢酸ビニルなどであってよい。ビニルエーテル系モノマーは、例えば、ビニルメチルエーテルなどであってよい。ハロゲン元素含有ビニル系モノマーは、例えば、塩化ビニルなどであってよい。ジエン系モノマー
は、例えば、ブタジエン、および、イソブチレンなどであってよい。アクリル重合体は、上述したアクリルモノマー以外のモノマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0040】
また、アクリル重合体は、アクリル重合体が有する極性を調整するためのモノマーを含有してもよい。極性を調整するためのモノマーは、酸基または水酸基をアクリル重合体に付加する。こうしたモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸-2ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸-4‐ヒドロキシフェニルなどであってよい。
【0041】
また、アクリル重合体が、2種以上のアクリルモノマーが重合された共重合体である場合には、アクリル重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれの構造を有していてもよい。アクリル重合体の構造がランダム共重合体であれば、製造工程が容易である。そのため、ランダム共重合体は、他の共重合体よりも好ましい。
【0042】
アクリル重合体を得るための重合方法は、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、および、リビングアニオン重合などであってよい。アクリル重合体を得るための重合方法には、工業的に生産が容易なことから、ラジカル重合が選択されることが好ましい。ラジカル重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、および、懸濁重合法などであってよい。ラジカル重合には、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いることによって、アクリル重合体における分子量の制御が容易である。さらに、アクリルモノマーの重合後にアクリル重合体を含む溶液を溶液の状態のまま固体撮像素子用フィルターの製造に使用することができる。
【0043】
ラジカル重合では、上述したアクリルモノマーを重合溶剤によって希釈した後に、ラジカル重合開始剤を加えてアクリルモノマーの重合を行ってもよい。
【0044】
重合溶剤は、エステル系溶剤、アルコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、および、アルコール系溶剤などであってよい。エステル系溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t‐ブチル、乳酸メチル、および、乳酸エチルなどであってよい。アルコールエーテル系溶剤は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、および、3‐メトキシ‐3-メチル‐1‐ブタノールなどであってよい。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。
【0045】
芳香族系溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶剤は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2‐メチル‐2‐ブタノールなどであってよい。このうち、ケトン系溶剤、および、エステル系溶剤は、固体撮像素子用フィルターの製造に用いることができるため好ましい。なお、上述した重合溶剤において、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
ラジカル重合において、重合溶剤を使用する量は特に限定されないが、アクリルモノマーの合計を100重量部に設定する場合に、重合溶剤の使用量は、1重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
【0047】
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物およびアゾ化合物などであってよい。過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、および、ジ‐t‐ブチルパーオキシドなどであってよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)、および、2,2’‐アゾビス[2‐メチル‐N‐(2‐ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などであってよい。
【0048】
ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリルモノマーの合計を100重量部に設定した場合に、0.0001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.001重量部以上15重量部以下であることがより好ましく、0.005重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤は、アクリルモノマーおよび重合溶剤に対して、重合開始前に添加されてもよいし、重合反応系中に滴下されてもよい。ラジカル重合開始剤をアクリルモノマーおよび重合溶剤に対して重合反応系中に滴下することによって、重合による発熱を抑制することができるため好ましい。
【0049】
赤外パスフィルター12Pの構成材料は、屈折率を調整するために、無機酸化物の粒子を含有することが可能である。熱や光に対する耐久性が高い無機酸化物の粒子を含有すると赤外パスフィルターの耐久性も向上する。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。赤外パスフィルター12Pは、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有することができる。
【0050】
赤外パスフィルター12Pは、例えば、300nm以上3μm以下の厚さを有することが可能である。
【0051】
赤外パスフィルター12Pは、黒色顔料とアクリル重合体を含む硬化性組成物により塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法、またはドライエッチング法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。
【0052】
黒色顔料を、樹脂などの着色剤担体および/または溶剤中に、必要に応じて分散助剤と一緒に、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して分散体を製造し、アクリル重合体と溶剤を混合することで硬化性組成物を得ることができる。
【0053】
黒色顔料などの着色剤を分散する際に、適宜、樹脂型分散剤、界面活性剤等の分散助剤を含有してもよい。分散助剤は、分散後の着色剤の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて分散した組成物は、分光特性および粘度安定性が良好になる。
【0054】
樹脂型分散剤は、添加顔料に吸着する性質を有する着色剤親和性部位と、着色剤担体と相溶性のある部位とを有し、添加着色剤に吸着して着色剤担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独、または2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0055】
樹脂型分散剤は、顔料全量に対して5~200重量%程度使用することが好ましく、成膜性の観点から10~100重量%程度使用することがより好ましい。
【0056】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-1
01、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WS、またはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、チバ・ジャパン社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0057】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0058】
樹脂型分散剤、界面活性剤を添加する場合の配合量は、着色剤100重量部に対し、好ましくは0.1~55重量部、さらに好ましくは0.1~45重量部である。樹脂型分散剤、界面活性剤の配合量が、0.1重量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が55重量部より多いと、過剰な分散剤により分散に悪影響を及ぼすことがある。
【0059】
赤外パスフィルター12Pの形成にフォトリソグラフィー法を用いる場合の赤外パスフィルター12Pの構成材料は、黒色顔料とアクリル重合体を含む感光性組成物である。感光性組成物には光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、レベリング剤などが含まれる。
【0060】
光重合開始剤としてはアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤などが1種を単独で、または2種以上を混合して用いられる。
【0061】
重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;N-ビニルピロリドン;スチレンおよびその誘導体、α-メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のその他のビニル化合物、およびポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマーなどのマクロモノマー類などが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
有機溶剤としては、例えば乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ-ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造、またはポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製FZ-2122、ビックケミー社製BYK-333などが挙げられる。ポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK-310、BYK-370などが挙げられる。ポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、ポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。これらは1種を単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
赤外パスフィルター12Pの形成にドライエッチング法を用いる場合は、赤外パスフィルター12Pの構成材料としては黒色顔料とアクリル重合体を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は感光性組成物である必要はない。硬化性組成物はさらに透明樹脂を含んでも良い。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外パスフィルター12Pは、塗布法などを用いた成膜によって形成される。また、硬化性組成物には硬化剤や架橋剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0065】
(赤外カットフィルター)
上記の各色用のカラーフィルターは有機カラーフィルターであり、赤外光のカット機能がないため、人間の視覚感度域外(例えば700nmより長波長側)の光が光電変換素子に入射する場合がある。このため、撮像素子で得られる撮影対象の色は、人間が目視で観察した撮影対象の色と異なる場合があるという問題が発生する。
【0066】
前記のような人間の視覚感度域外の光により影響を受ける色分離を避けるため、赤外カットフィルターが用いられる。すなわち、赤外カットフィルターで、入射光から赤外光をカットする。しかる後、赤外光をカットされた光を各カラーフィルターに入射させ、赤外光の影響を削減する。
【0067】
本発明の固体撮像素子用フィルター10Fは、上記複数の各色用のカラーフィルター12R、12G、12B、及び上記赤外パスフィルター10Pよりもさらに光の入射側の位置に、赤外カットフィルター13を備えることが好ましく、赤外カットフィルター13は、平面視で赤外パスフィルター10Pに重なる位置に貫通孔13Hを備える。
【0068】
貫通孔13Hを備えることにより、赤外パスフィルター12Pに入射する赤外光が、赤外カットフィルター13によりカットされることはない。赤外カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに対しては共通して赤外光をカットする。
【0069】
赤外カットフィルター13を形成する際には、赤外光カット色素、および、アクリル重合体を含む塗布液、および有機溶剤を各色用フィルター12R、12G、12B、12P上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜をポストベークによって熱硬化させる。これにより、赤外カットフィルター13が形成される。
【0070】
赤外カットフィルター13に備える貫通孔13Hは、フォトリソグラフィー法、またはドライエッチング法を用いたパターニング等の加工方法によって形成される。フォトリソグラフィー法を用いる場合の赤外カットフィルター13の構成材料は、赤外吸収色素を含む感光性組成物である。感光性組成物にはバインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、レベリング剤などが含まれ、赤外パスフィルター12Pの構成材料に記載したものを用いることができる。
【0071】
赤外カットフィルター13に備える貫通孔13Hの形成にドライエッチング法を用いる場合は、赤外カットフィルター13の構成材料としては赤外吸収色素を含む硬化性組成物であり、透明樹脂を含む。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外カットフィルター13は、塗布法などを用いた成膜によって形成される。また、硬化性組成物には硬化剤や架橋剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0072】
(バリア層)
本発明の固体撮像素子用フィルター10Fは、上記複数の各色用のカラーフィルター12R、12G、12B、及び上記赤外パスフィルター10Pよりもさらに光の入射側の位置に、赤外パスフィルター10Pを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層14を備え、バリア層14の酸素透過率は5.0cc/m2/day/atom以下であることが好ましい。
【0073】
バリア層14は、赤外パスフィルター12Pの酸化源の透過を抑制する。酸化源は、酸素および水などである。バリア層14によって赤外パスフィルター12Pに酸化源が到達することが抑制されるため、赤外パスフィルター12Pが酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外パスフィルター12Pの耐光性を向上することが可能である。
【0074】
バリア層14を形成する材料は、無機化合物であって、珪素化合物であることが好ましい。そのようなバリア層14を形成する材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、および、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0075】
バリア層14は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成することができる。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、赤外カットフィルター13が形成された基板に対し、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリングによる成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、赤外カットフィルター13が形成された基板に対し、シランと酸素とを用いたCVDによる成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。
【0076】
バリア層14の酸素透過率、および、厚み、可視光領域透過率は、下記[A1]から[A3]の少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。
[A1]JIS K 7126-2006に準拠した酸素透過率が5.0cc/m2/day/atom以下である。
[A2]バリア層14の厚みが10nm以上500nm以下である。
[A3]バリア層14の可視光領域透過率(平均)が90%以上である。
[A1]を満たす構成であれば、赤外パスフィルター12Pに酸化源が到達すること、特に、酸素が到達することが十分に抑制される。なお、赤外パスフィルター12Pの耐光性がさらに高められる観点では、酸素透過率は、3.0cc/m2/day/atom以下であることが好ましく、1.0cc/m2/day/atom以下であることがより好ましく、0.7cc/m2/day/atom以下であることがさらに好ましい。
【0077】
[A2]を満たす構成であれば、[A1]、[A3]を満たす構成材料の選択が容易である。さらに、バリア層14にクラックが生じることが抑制可能でもある。[A3]を満たす構成であれば、可視光がバリア層14で吸収されてしまうことが十分に抑制される。
【0078】
バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。例えば、バリア層14は、単層では[A1]を満たさない層を積層して[A1]を満たすようにした積層構造であってもよい。
【0079】
図1の固体撮像素子の一実施形態の例では、バリア層14は、赤外カットフィルター13よりもさらに光の入射側の位置にしている。これにより、バリア層14によって赤外カットフィルター13に酸化源が到達することが抑制されるため、赤外カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外カットフィルター13の耐光性が向上、つまりは、固体撮像素子の耐光性を向上することが可能となる。
【0080】
(マイクロレンズ)
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、青色用マイクロレンズ15B、および、赤外光用マイクロレンズ15Pから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に、緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に、青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に、赤外光用マイクロレンズ15Pは、赤外パスフィルター12Pに対し光の入射側に、いずれもマイクロレンズとフィルターとが平面視で重なる位置にある。
【0081】
各マイクロレンズ15R、15G、15B、15Pは、外表面である入射面15Sを備える。各マイクロレンズ15R、15G、15B、15Pは、入射面15Sに入る光を各光電変換素子11R、11G、11B、11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。
【0082】
各マイクロレンズ15R、15G、15B、15Pは、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。
【0083】
なお、赤外カットフィルターがマイクロレンズであってもよい。この場合には、光電変換素子に向けて光を取り込む機能を有したマイクロレンズが、赤外光のカット機能を兼ね備えるため、固体撮像素子用フィルターが備える層構造の簡素化が可能である。
【実施例
【0084】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
以下に示す順序で、赤外パスフィルター、およびそれを備える固体撮像素子用フィルター、並びに該固体撮像素子用フィルターを作製し、耐久性を評価した。
【0085】
<実施例1>
(顔料分散体(以下、分散体と略記)1の製造)
ペリレン顔料、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色剤 ペリレン顔料BASF社製Lumogen Black K0088 :12.0部分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-2001:19.6部
溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :68.4部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、分散体1を得た。
【0086】
(分散体1の顔料粒子の平均粒径)
得られた分散体1の顔料粒子の平均粒径(D50)を、Nanotrac UPA-EX150(日機装社製)で測定したところ、平均粒径が128nmであることが認められた。
【0087】
(アクリル重合体1の製造)
60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を重合溶剤として準備し、40重量部のメタクリル酸フェニル(C10H10O2)をアクリルモノマーとして準備し、0.60重量部のベンゾイルペルオキシド(BPO)をラジカル重合開始剤として準備した。これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌および還流した。これにより、アクリル重合体1を得た。
【0088】
<赤外パスフィルター1の製造>
上記分散体1を93.5部と上記アクリル重合体1を6.5部で混合し、スターラーにて1時間攪拌後、5μmのフィルターで濾過し、硬化性組成物1を得た。硬化性組成物1をガラス基板上にスピンコーターにて、ポストベーク後の膜厚が1μmになるように塗布し、70℃のホットプレートで1分間乾燥した後、さらに230℃のホットプレートで3分間ポストベーク処理を行い、ペリレン顔料を50重量%含有する赤外パスフィルター1を得た。
【0089】
<赤外パスフィルター1の評価>
ガラス上に形成した赤外パスフィルター1の波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。結果、可視領域の400~800nmの光の平均透過率が19%であり、近赤外領域の900~1000nmの光の平均透過率が86%であった。ノイズとなる可視領域の光を遮断でき、かつ近赤外領域の光を透過できる良好な赤外パスフィルターであることが分かった。
【0090】
ガラス上に形成した赤外パスフィルター1を、さらに250℃のホットプレートで10分間加熱処理した後、波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定したところ、熱処理前に比べ、400~800nmの光の平均透過率の変化量は0.1%、900~1000nmの光の平均透過率の変化量は1.4%であり、処理前後の分光透過率曲線同士がほぼ重なっており、極めて耐熱性が高い赤外パスフィルターであることが分かった。
【0091】
ガラス上に形成した赤外パスフィルター1を、キセノンランプで10万ルクスの光を24時間照射した後、波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定したところ、処理前に比べ、400~800nmの光の平均透過率の変化量は0.5%、900~1000nmの光の平均透過率の変化量は0.8%であり、処理前後の分光透過率曲線同士が重なっており、極めて耐光性も高い赤外パスフィルターであることが分かった。
【0092】
(バリア層の評価)
予備テストとして、PETフィルム上に、シランと酸素とを用いたCVD法により膜厚50nmの酸化珪素から構成されるバリア層を形成した。形成したバリア層の酸素透過率を酸素透過率測定装置OX-TRAN(MOCON社製)を用いて測定したところ、1.1cc/m2/day/atomであることを確認した。
【0093】
<固体撮像素子用フィルターの製造と評価>
ガラス上に形成した赤外パスフィルター1上に、前記と同じ条件で形成したバリア層を積層し、マイクロレンズを備えない固体撮像素子用フィルターの形態とした。該赤外パスフィルター1を、キセノンランプで10万ルクスの光を200時間照射した後、波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定したところ、処理前に比べ、400~800nmの光の平均透過率の変化量は0.3%、900~1000nmの光の平均透過率の変化量は0.4%であり、処理前後の分光透過率曲線同士も重なっており、バリア層を積層することで、さらに耐光性が高い固体撮像素子用フィルターとなることが分かった。
【0094】
<実施例2>
(分散体2の製造と平均粒径)
上記実施例1に記載の分散体1と同じ条件で製造した混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、分散体2を得た。得られた分散体2の顔料粒子の平均粒径(D50)を、Nanotrac UPA-EX150(日機装社製)で測定したところ、平均粒径が233nmであることが認められた。
【0095】
<赤外パスフィルター2の製造>
上記分散体2を93.5部と、上記実施例1に記載した上記アクリル重合体1を6.5部で混合し、スターラーにて1時間攪拌後、5μmのフィルターで濾過し、硬化性組成物2を得た。硬化性組成物2をガラス基板上にスピンコーターにて塗布し、70℃のホットプレートで1分間乾燥した後、さらに230℃のホットプレートで3分間ポストベーク処理を行い、ペリレン顔料を50重量%含有する赤外パスフィルター2を得た。
【0096】
<赤外パスフィルター2の評価>
ガラス上に形成した赤外パスフィルター2の波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。結果、可視領域の400~800nmの光の平均透過率が14%であり、近赤外領域の900~1000nmの光の平均透過率が79%であった。ノイズとなる可視領域の光を遮断でき、かつ近赤外領域の光を透過できる良好な赤外パスフィルターであることが分かった。
【0097】
<比較例1>
上記実施例1に記載の分散体1の製造方法で、分散時間だけを3時間に延ばしたところ、分散途中に分散液が高粘度になり、つまり分散液が過剰分散によりゲル化してしまい、その後溶剤を添加しても粘度が下がることなく、塗液の安定性がなくなり、それ以降の評価ができない状態となってしまった。つまりは、平均粒径50nm未満の分散体を製造することはできないことが分かった。
【0098】
<比較例2>
(分散体3の製造と平均粒径)
ペリレン顔料、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色剤 ペリレン顔料BASF社製Lumogen Black K0088 :14.5部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-2001:15.8部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :69.7部
その後、直径1mmのガラスビーズを用いて、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間分散した。その後、5μmのフィルターで濾過し、分散体3を得た。得られた分散体3の顔料粒子の平均粒径(D50)を、Nanotrac UPA-EX150(日機装社製)で測定したところ、平均粒径が334nmと大きい状態であることが認められた。顔料に対し分散剤の量が少な過ぎるため分散状態があまく、粒径が300nmより大きくなったことが分かった。
【0099】
<赤外パスフィルター3の製造と評価>
上記分散体3を85部と上記アクリル重合体1を15部で混合し、スターラーにて1時間攪拌後、5μmのフィルターで濾過し、硬化性組成物3を得た。硬化性組成物3をガラス基板上にスピンコーターにて塗布し、70℃のホットプレートで1分間乾燥した後、さらに230℃のホットプレートで3分間ポストベーク処理を行い、ペリレン顔料を50重量%含有する赤外パスフィルター3を得た。ガラス上に形成した赤外パスフィルター3は、膜が白濁した(艶消しブラック)状態になり、表面凹凸が大きいことが認められた。赤外パスフィルター3の組成物である分散体3の平均粒径も334nmと300nmより大きいため、成膜すると表面凹凸が発生し、入射光が反射、散乱することにより、光の透過率が低下しまうことが分かった。赤外パスフィルター3を用いた固体撮像素子も、赤外光用光電変換素子が検出し得る赤外光が減り、検出精度の低い固体撮像素子となってしまうことが分かった。
【0100】
<比較例3>
(分散体4の製造と平均粒径)
ペリレン顔料、分散剤および溶剤の各組成物を、下記重量部での混合物として均一になるように攪拌混合した。
着色剤 ペリレン顔料BASF社製Lumogen Black K0088 :22.0部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-2001:19.6部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :68.4部
その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ディスパー分散機DISPERMATLC55(英弘精機社製)で1時間分散したところ、分散液がゲル化(高粘度化)しており、5μmのフィルターで濾過できなかった。得られた分散体4の顔料粒子の平均粒径(D50)を、Nanotrac UPA-EX150(日機装社製)で測定したところ、平均粒径が342nmと大きい状態であることが認められた。これは、顔料に対し分散剤の量が少な過ぎる分散体4では、ペリレン顔料濃度が71重量%と70重量%より高くなり、分散できていないためである。
【0101】
<赤外パスフィルター4の製造と評価>
上記分散体4をガラス基板上にスピンコーターにて塗布し、70℃のホットプレートで1分間乾燥した後、さらに230℃のホットプレートで3分間ポストベーク処理を行い、赤外パスフィルター4を得たが、比較例2と同様に赤外パスフィルター4は、膜が白濁した(艶消しブラック)状態になり、表面凹凸が大きいことが認められた。赤外パスフィルター4の組成物である分散体4の平均粒径が342nmと300nmより大きいため、成膜すると表面凹凸が発生し、入射光が反射、散乱することにより、光の透過率が低下しまうことが分かった。赤外パスフィルター4を用いた固体撮像素子も、赤外光用光電変換素子が検出し得る赤外光が減り、検出精度の低い固体撮像素子となってしまうことが分かった。
【0102】
<比較例4>
<赤外パスフィルター5の製造と評価>
上記分散体1を79部と上記アクリル重合体1を21部で混合し、スターラーにて1時間攪拌後、5μmのフィルターで濾過し、硬化性組成物4を得た。硬化性組成物4をガラス基板上にスピンコーターにて、ポストベーク後の膜厚が1μmになるように塗布し、70℃のホットプレートで1分間乾燥した後、さらに230℃のホットプレートで3分間ポストベーク処理を行い、赤外パスフィルター5を得た。
【0103】
ガラス上に形成した赤外パスフィルター5の波長400~1100nmの光の分光透過率を分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。結果、可視領域の400~800nmの光の平均透過率が33%であり、近赤外領域の900~1000nmの光の平均透過率が95%であった。分散体1が79部と小さいため、ペリレン顔料濃度が38重量%と、40重量%より少ない赤外パスフィルター5では、可視領域の光を十分に遮断できない赤外パスフィルターであることが分かった。赤外パスフィルター5を用いた固体撮像素子は、可視領域の光を十分に遮断できないため、赤外光用光電変換素子にノイズとなる可視光も検出してしまい、検出精度の低い固体撮像素子となってしまうことが分かった。
【符号の説明】
【0104】
10…固体撮像素子(一単位)
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
11R…赤色用光電変換素子
11G…緑色用光電変換素子
11B…青色用光電変換素子
11P…赤外光用光電変換素子
12R…赤色用カラーフィルター(赤色用フィルター)
12G…緑色用カラーフィルター(緑色用フィルター)
12B…青色用カラーフィルター(青色用フィルター)
12P…赤外パスフィルター
13…赤外カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15R…赤色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15B…青色用マイクロレンズ
15P…赤外光用マイクロレンズ
15S…入射面
図1